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  • 特表-関節の炎症性障害のための併用療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】関節の炎症性障害のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20231219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K45/00
A61P19/02
A61P37/06
A61P29/00
A61P29/00 101
A61K39/395 N
A61K31/519
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535539
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 AU2021051463
(87)【国際公開番号】W WO2022120421
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2020904573
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519367599
【氏名又は名称】セルバトゥス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィンレイソン、ウェイン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C085AA14
4C085BB17
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB08
4C086ZC19
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA10
4C087NA05
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB15
(57)【要約】
本明細書では、免疫抑制剤;並びに、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリボランスから選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、関節の炎症性疾患、任意に関節リウマチ、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法が開示される。特定の実施形態では、本方法は、免疫抑制剤、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合せの投与を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)免疫抑制剤;並びに、
(ii)ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液
の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、
関節の炎症性疾患、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法。
【請求項2】
前記炎症性疾患は炎症性関節炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患は関節リウマチである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫抑制剤はTNF阻害剤である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記TNF阻害剤はアダリムマブである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫抑制剤はJAK阻害剤である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記JAK阻害剤はトファシチニブである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ラクトバチルス種は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合せを含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アダリムマブ、並びに
ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合せ
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
トファシチニブ、並びに
ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合せ
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫抑制剤、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する前記培養上清若しくは無細胞濾液は、同じ投与用組成物中に配合されている、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫抑制剤、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する前記培養上清若しくは無細胞濾液は、異なる投与用組成物中に配合されている、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫抑制剤の投与、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する培養上清若しくは無細胞濾液の投与は、順次又は同時である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(i)免疫抑制剤;並びに、
(ii)ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液
の関節の炎症性疾患、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための薬剤の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、関節の炎症性障害(任意に関節リウマチ)を治療又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症とは、感染症及び外傷からの身体の保護を助ける正常な応答機構である。しかしながら、異常な又は制御されない炎症応答は、急性又は慢性の炎症性及び自己免疫性の障害又は状態の発症をもたらし得る。特に、ウイルス、真菌、及び病原性細菌によって引き起こされる感染症は、胃腸管、関節、皮膚、及び尿路の組織などの様々な組織において過剰かつ持続的な炎症応答を誘発し、有害な急性炎症及び急性炎症状態を引き起こし得る。これらはまた、慢性炎症状態及び自己免疫状態の発症における重要なリスク因子である。慢性の炎症性及び自己免疫性の状態は、衰弱性であり、患者に大きな不快感及び痛みを引き起こし得る。更に、そのような状態は、世界的な年齢の集団として有病率が増加している。
【0003】
関節リウマチとは、世界人口のおよそ1%に影響を及ぼす慢性自己免疫疾患である。関節リウマチは、最終的に軟骨及び骨の破壊、関節変形及び可動性の喪失をもたらし得る、関節の滑膜表層(synovial lining)における炎症及び細胞増殖を特徴とする。関節リウマチは、通常、いくつかの関節で同時に、多くの場合は対称的に問題を引き起こす。初期の関節リウマチは、手首、手、足首、及び足の関節などの小さな関節へ最初に発症する傾向がある。疾患が進行するにつれて、肩、肘、膝、腰、顎、及び首の関節もまた関与するようになり得る。関節リウマチは、限られた、広範に有効な治療選択肢を有する不均一な疾患である。現在、治癒は存在せず、治療は本質的に、疼痛の軽減、炎症の低減、並びに関節損傷及び骨破壊の停止又は遅延に対するものである。
【0004】
ステロイドとは、何十年もの間にわたり信頼されてきた、主要な治療用抗炎症剤である。より最近では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が、炎症を管理又は治療するために一般的に採用され始めている。しかしながら、そのような薬剤の継続的な使用は重大な不利益及び副作用を伴う。例えば、NSAIDの継続的な使用に関連して、胃潰瘍及び出血を含む著しい副作用がある。加えて、NSAIDは、治療の長さ及び薬物の種類に応じて、消化管に病変を生じることがよく知られている。この問題は、炎症状態及び関連した疼痛を管理するために長期治療が必要とされる慢性炎症性疾患の治療など、治療を長期間延長しなければならない場合に特に重要である。
【0005】
より最近では、進歩により、関節リウマチの治療に対する新規アプローチの開発がもたらされている。トファシチニブは、小分子であり、ヤヌスキナーゼ(JAK)1及びJAK3、並びに程度は低いがJAK2の強力な選択的阻害剤である。JAKは、いくつかのインターロイキンを含む複数のサイトカインに対する表面受容体によるシグナル伝達活性を媒介する。トファシチニブ(Xeljanz(登録商標))は、通常は1日2回経口投与され、中程度から重度の活動性関節リウマチの治療、特に1又は複数の従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(メトトレキサート、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、及びスルファサラジンなど)に対する応答が不適切であった患者の治療に適応される。関節リウマチの治療に対する代替アプローチは、腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤、例えばモノクローナル抗体であるアダリムマブなどを採用することであった。アダリムマブ(Humira(登録商標))は、TNFαに特異的に結合し、かつTNFαを中和する、組換えIgG1抗体である。単剤療法として、又はメトトレキサートと組み合わせて、皮下注射によって投与されたアダリムマブは、特に1又は複数の従来の疾患修飾性抗リウマチ薬に対して不適切に応答した患者において、中等度から重度の活動性関節リウマチの治療に適応される。
【0006】
最近の改善にもかかわらず、関節リウマチの治療は、多くの場合不十分なままである。関節リウマチなどの関節の炎症状態の治療のための新規の改善された治療選択肢の開発が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、
(i)免疫抑制剤;並びに、
(ii)ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液
の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、
関節の炎症性疾患、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法を提供する。
【0008】
通常、関節の炎症性疾患は炎症性関節炎である。炎症性関節炎は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎であってもよい。特定の実施形態では、関節の炎症性疾患は、関節リウマチである。
【0009】
ある実施形態では、免疫抑制剤は、TNF阻害剤である。例示的な実施形態では、TNF阻害剤は、アダリムマブである。
【0010】
ある実施形態では、免疫抑制剤は、JAK阻害剤である。例示的な実施形態では、JAK阻害剤は、トファシチニブである。
【0011】
1又は複数のラクトバチルス種は、ラクトバチルス種のうち少なくとも3種類の組み合せを含んでもよく、該組み合わせは、任意にL.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエを含む。したがって、ある実施形態では、本方法は、L.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエの組み合せ、又は該組み合わせに由来する培養上清若しくは無細胞濾液を、対象へ投与することを含む。
【0012】
ある実施形態では、本方法は、TNF阻害剤(任意にアダリムマブ)、並びにL.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエの組み合せ、又は該組み合わせに由来する培養上清若しくは無細胞濾液の有効量を、対象へ投与することを含む。
【0013】
別の実施形態では、本方法は、JAK阻害剤(任意にトファシチニブ)、並びにL.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエの組み合せ、又は該組み合わせに由来する培養上清若しくは無細胞濾液の有効量を、対象へ投与することを含む。
【0014】
免疫抑制剤、及び1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する培養上清又は無細胞濾液は、同じ投与用組成物中に配合されてもよい。あるいは、免疫抑制剤及び1又は複数のラクトバチルス種は、別個の組成物で投与されてもよい。そのような別個の投与は、順次であってもよく、又は同時であってもよい。
【0015】
免疫抑制剤、及び1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する培養上清又は無細胞濾液は、同じ経路又は異なる経路、例えば、経口、舌下、局所、又は非経口で投与されてもよい。
【0016】
本開示の別の態様は、
(i)免疫抑制剤;並びに、
(ii)ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液
の関節の炎症性疾患、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための薬剤の製造における使用を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、免疫抑制剤は、TNF阻害剤(任意にアダリムマブ)、及びJAK阻害剤(任意にトファシチニブ)から選択される。
【0018】
特定の実施形態では、1又は複数のラクトバチルス種は、L.ブフネリ、L.パラカゼイ及びL.ゼアエの組み合せを含む。したがって、ある実施形態では、薬剤は、L.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエの組み合せ、又は該組み合わせに由来する培養上清若しくは無細胞濾液を含む。
【0019】
ある実施形態では、薬剤は、TNF阻害剤(任意にアダリムマブ)、並びにL.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエの組み合せ、又は該組み合わせに由来する培養上清若しくは無細胞濾液を含む。
【0020】
ある実施形態では、薬剤は、JAK阻害剤(任意にトファシチニブ)、並びにL.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエの組み合せ、又は該組み合わせに由来する培養上清若しくは無細胞濾液を含む。
【0021】
上記の態様及び実施形態によれば、及び本明細書に記載され例示されるように、通常、免疫抑制剤と1又は複数のラクトバチルス種との組み合せは、相乗的な組み合せである。
【0022】
本開示の態様及び実施形態によれば、本方法は、L.ブフネリ、L.パラカゼイ、及びL.ゼアエを含む微生物生物学的製剤組成物(microbial biotherapeutic composition)を対象へ投与することを含み得る。この微生物生物学的製剤組成物は、例えば、液体又は固体の単位剤形、食品、又は飲料の形態で投与されてもよい。
【0023】
本開示の例示的な実施形態は、以下の図面を参照して、非限定的な例としてのみ本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1に記載される治療後のコラーゲン抗体誘発関節炎(CAIA)マウスモデルのマウスにおける臨床スコア(4本の足について合計した足体積)を示す図である。番号1~番号7(破線で示す)は、それぞれ、実施例1の処置グループ1~処置グループ7を表す。1:未処置(陰性対照)、2:CAIA対照、3:CAIA+SVTの組み合せ、4:CAIA+トファシチニブ、5:CAIA+トファシチニブ+SVTの組み合せ、6:CAIA+アダリムマブ、7:CAIA+アダリムマブ+SVTの組み合せ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等のいずれの方法及び材料も本開示の実施又は試験において使用することができるが、典型的な方法及び材料が記載される。
【0026】
本明細書において、冠詞「a」及び「an」は、1つ、又は1つより多い(すなわち、少なくとも1)冠詞の文法上の目的語を指すために用いられる。例として、「ある要素(an element)」は、1つの要素、又は1つより多い要素を意味する。
【0027】
本明細書の文脈において、用語「約」は、同様の機能又は結果を達成する観点から、当業者が記載された値と等価であると考えるであろう数の範囲を指すものと理解される。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈上別段必要としない限り、「含む(comprise)」との単語、及びその変形、例えば「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」は、記載された整数若しくはステップ又は一群の整数若しくはステップを含むが、その他の任意の整数若しくはステップ又は一群の整数若しくはステップを除外しないことを意味するものと理解されるであろう。
【0029】
本明細書で用いられる用語「有効量」は、その意味の範囲内において非毒性であるが、所望の治療効果を提供するために十分な量の組成物を含む。必要とされる正確な量は、治療される種、対象の年齢及び全身状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、及び投与様式などの要因に応じて、対象ごとに異なるであろう。いかなる場合についても、適切な「有効量」は、日常的な実験のみを用いて当業者によって決定されてもよい。
【0030】
本明細書で用いられる用語「対象」は、哺乳動物を指し、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、乳牛、ウマ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、パフォーマンス用動物(例えば、競走馬)、及び捕獲された野生動物を含む。例示的実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0031】
本明細書で用いられる「治療する(treating)」、「治療(treatment)」などの用語は、疾患の重症度を低減させることを含む、関節の炎症性疾患又はそのような疾患の少なくとも1つの症状を、改善するか、又はこれらの進行を妨げる、遅延させる、若しくは逆転させる、全ての用途を指す。したがって、治療は、対象が疾患の完全な排除、又は疾患からの回復まで治療されることを必ずしも意味しない。
【0032】
本明細書で用いられる用語「任意に」は、それに続いて記載される特徴が存在していてもしていなくてもよいことを意味するか、又はそれに続いて記載される事象又は状況が発生しても発生しなくてもよいことを意味する。したがって、本明細書は、特徴が存在している実施形態及び特徴が存在していない実施形態、並びに事象又は状況が発生している実施形態及び事象又は状況が発生していない実施形態を含み、かつ包含すると理解されるであろう。
【0033】
本明細書の文脈において、用語「微生物生物学的製剤(microbial biotherapeutic)」は、最も広い解釈を与えられるべきであり、有効量で対象に投与された場合に対象における健康上の利益を促進する、微生物細胞の集団又は調製物、あるいは微生物細胞の集団又は調製物の構成要素を指すと理解される。
【0034】
本明細書の文脈において、用語「プレバイオティクス」は、その最も広い解釈を与えられるべきであり、消化器官中の共生有益細菌の増殖及び/又は活性を刺激する、任意の非消化性物質を指すと理解される。
【0035】
本明細書の文脈において、用語「食品」、「食品類」、「飲料」又は「飲料類」は、健康食品及び健康飲料、機能性食品及び機能性飲料、並びに特定の健康用途のための食品及び飲料を含むが、これらに限定されない。本発明のそのような食品又は飲料がヒト以外の対象に使用される場合、これらの用語は、家畜飼料を含むように用いられ得る。
【0036】
本明細書は、
(i)免疫抑制剤;並びに、
(ii)ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は該1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液
の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、
関節の炎症性疾患、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法を提供する。
【0037】
本開示の方法が関連する炎症性疾患は、通常、炎症性関節炎である。炎症性関節炎は、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎から選択され得る。特定の実施形態では、炎症性疾患は、関節リウマチである。
【0038】
本開示の実施形態は、関節の炎症性疾患に罹患している対象における1又は複数の炎症促進性サイトカインの発現を低減させることを含んでもよく、ここで、観察される低減は、前記治療を行っていない対象において観察される炎症促進性サイトカインの発現レベルに対するものである。そのような低減は、炎症促進性サイトカインの発現レベルの正常化を含んでいてもよい。例示的な炎症促進性サイトカインとしては、IL-6及びIL-1βなどのインターロイキン、KC-GRO(ケラチノサイト走化性因子/ヒト成長調節性癌遺伝子)及びTNFαが挙げられる。
【0039】
本開示の方法は、炎症性疾患に関連する炎症を阻害し得る。「抑制する(inhibit)」との用語、及びその変形、例えば、「抑制(inhibition)」、「抑制する(inhibits)」、「低減させる(reduces)」、「低減する(reducing)」などは、炎症性疾患に関連する炎症の重症度の改善(すなわち、低減)を意味するために、本明細書では互換的に使用される。
【0040】
本開示の方法は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリボランスから選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は該1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清又は無細胞濾液と組み合せた、免疫抑制剤の投与を利用する。本明細書に例示されるように、通常、免疫抑制剤と前記1又は複数のラクトバチルス種との組み合せは、相乗的な組み合せである。
【0041】
特定の実施形態では、免疫抑制剤は、例えば、TNF阻害剤、JAK阻害剤、又はカルシニューリン阻害剤であってもよい。好適なTNF阻害剤としては、これらに限定されないが、アダリムマブ、インフリキシマブ、ナタリズマブ、及びこれらの後発生物製剤などのモノクローナル抗体が挙げられるが、エタネルセプトは含まれない。JAK阻害剤は、選択的阻害剤であってもよく、又は非選択的阻害剤であってもよく、例えば、JAK1阻害剤、JAK2阻害剤、JAK1/JAK2阻害剤、又はJAK3阻害剤であってもよい。例示的なJAK阻害剤としては、これらに限定されないが、トファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、及びフェドラチニブが挙げられる。好適なカルシニューリン阻害剤としては、シクロスポリンA、タクロリムス、及びこれらの類似体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
特定の実施形態では、免疫抑制剤は、関節リウマチなどの関節の炎症性疾患の治療において、単独の治療剤として使用された場合、少なくとも部分的効果を有することが知られているものである。
【0043】
例示的な実施形態では、免疫抑制剤は、TNF阻害剤(任意にアダリムマブ)又はJAK阻害剤(任意にトファシチニブ)である。
【0044】
本開示の方法は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリボランスから選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清又は無細胞濾液の投与を利用する。いくつかの分類学的な不一致及び不確実性の観点から、ラクトバチルス・ゼアエはまた、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)と称されることもある。しかしながら、これは確定されておらず、L.ゼアエは別個のものとみなしてもよい(http://lactotax.embl.de/wuyts/lactotax/参照)。本開示の目的のために、L.ゼアエの命名が保持される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、同じ組成物中又は異なる組成物中の、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリボランスから選択される1又は複数のラクトバチルス種の投与を意図する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ及びラクトバチルス・ゼアエの、同じ又は異なる組成物中での投与を意図する。
【0046】
以下の説明において、ラクトバチルス種、又はラクトバチルスが培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液の投与の文脈において、及びこれらを含む組成物の文脈において、用語「ラクトバチルス」は、本明細書で定義された特定のラクトバチルス種自体を指すのみではなく、本明細書で定義された特定のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清又は無細胞濾液を広く指すようにも使用されてもよい。
【0047】
本開示の方法は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリボランスのうち任意の2種、3種、4種、5種、又は6種全てのラクトバチルス種の投与、又は前記ラクトバチルスのうちの2種、3種、4種、5種、又は6種全てが培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液の投与を含んでいてもよい。そのような実施形態では、細菌は、別々に培養されてもよく、又は一緒に培養されてもよい。したがって、この投与は、本明細書中に記載されるラクトバチルス種のうち2種、3種、4種、5種、又は6種全ての組み合せを含む組成物の投与を含んでいてもよい。同様に、前記ラクトバチルスのうちの2種、3種、4種、5種、又は6種全てが培養された培養液に由来する培養上清又は無細胞濾液が投与される場合、培養上清又は無細胞濾液は、複数のラクトバチルス種の個々の培養物に由来しており、前記上清又は無細胞濾液が投与前に組み合わされてもよく、あるいは、本明細書に記載されるラクトバチルス種のうち2種、3種、4種、5種、又は6種全ての混合培養物に由来してもよい。
【0048】
例示的な実施形態では、本開示の方法は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエの組み合せ、又はこれらの培養上清若しくは無細胞濾液の投与を含む。特定の例示的な実施形態では、本開示の方法は、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエの組み合せの投与を含む。
【0049】
本明細書ではまた、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合せ、又は前記ラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、関節の炎症性疾患、又は関節の炎症性疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法が提供される。任意に、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合せが投与される。
【0050】
ラクトバチルス・ブフネリは、国際公開第2013/063658号に以前記載された、受託番号V11/022946として入手可能なラクトバチルス・ブフネリLb23であってもよい。L.ブフネリは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(Belgian Co-Ordinated Collections of Micro-organisms)(BCCM)に受託番号LMGP-31293としてブダペスト条約に従って寄託された、L.ブフネリSVT 06B1(別の名称SVT-23により言及されることもある)であってもよい。
【0051】
ラクトバチルス・パラカゼイは、国際公開第2014/172758号に以前記載された(「T9」株と称される)、受託番号V12/022849として入手可能なラクトバチルス・パラカゼイLp9であってもよい。ラクトバチルス・パラカゼイは、2019年2月27日にルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMGP-31290としてベブダペスト条約に従って寄託された、ラクトバチルス・パラカゼイSVT 04P1(別の名称SVT-09により言及されることもある)であってもよい。
【0052】
ラクトバチルス・ゼアエは、国際公開第2013/063658号に以前記載された、受託番号V11/022948として入手可能なラクトバチルス・ゼアエLz26であってもよい。ラクトバチルス・ゼアエは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMGP-31295としてブダペスト条約に従って寄託された、ラクトバチルス・ゼアエSVT 08Z1(別の名称SVT-26により言及されることもある)であってもよい。
【0053】
ラクトバチルス・ラピは、国際公開第2013/063658号に以前記載された、受託番号V11/022947として入手可能なラクトバチルス・ラピLr24であってもよい。ラクトバチルス・ラピは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMGP-31294としてブダペスト条約に従って寄託された、ラクトバチルス・ラピSVT 07R1(別の名称SVT-24により言及されることもある)であってもよい。
【0054】
ラクトバチルス・パラファラギニスは、国際公開第2013/063658号に以前記載された、受託番号V11/022945として入手可能なラクトバチルス・パラファラギニスLp18であってもよい。ラクトバチルス・パラファラギニスは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMGP-31292としてブダペスト条約に従って寄託された、ラクトバチルス・パラファラギニスSVT 05P2(別の名称SVT-18により言及されることもある)であってもよい。
【0055】
ラクトバチルス・ディオリボランスは、国際公開第2014/172758号に以前記載された(「N3」株と称される)、受託番号V12/022847として入手可能なラクトバチルス・ディオリボランスLd3であってもよい。ラクトバチルス・ディオリボランスは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMGP-31287としてブダペスト条約に従って寄託された、ラクトバチルス・ディオリボランスSVT 01D1(別の名称SVT-03により言及されることもある)であってもよい。
【0056】
ラクトバチルス生物自体が投与される場合、本開示の方法に従って投与される個々のラクトバチルス種の濃度は、採用される個々の種の同一性及び数、治療される炎症性疾患の正確な性質及び重症度、組成物が適用される形態、及び組成物が適用される手段を含む、様々な要因に依存することになる。任意の所与の場合について、適切な濃度は、日常的な実験のみを用いて当業者によって決定されてもよい。例示のみの目的で、ラクトバチルス種の濃度、又は組み合せの場合は存在している各々の種の濃度は、約1×10cfu/mL~約1×1011cfu/mLであってもよく、約1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、約5×10cfu/mL、1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、約5×10cfu/mL、1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、約5×10cfu/mL、1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、約5×10cfu/mL、1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、約5×10cfu/mL、1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、約5×10cfu/mL、1×10cfu/mL、約2.5×10cfu/mL、又は約5×10cfu/mL、約1×1010cfu/mL、約1.5×1010cfu/mL、約2.5×1010cfu/mL、約5×1010cfu/mL、又は約1×1011cfu/mLであってもよい。
【0057】
本開示では、本明細書に記載されるラクトバチルス種のバリアントの使用も意図されている。本明細書で使用される場合、用語「バリアント」は、本明細書に開示及び例示される種の天然のバリアント又は突然変異体及び特別に開発されたバリアント又は突然変異体の両方を指す。バリアントは、炎症状態の治療又は予防に関して同様の有利な特性を有しているのであれば、本明細書に例示される具体的な種と同じ識別可能な生物学的特徴を有していてもよく、有していなくてもよい。本明細書で例示されるバリアントを調製するための好適な方法の実例としては、これらに限定されないが、挿入性エレメント若しくはトランスポゾンにより、又は相同組換えにより媒介される技術などの遺伝子組み込み技術、遺伝子を改変する、挿入する、欠失させる、活性化させる、又はサイレンシングするための他の組換えDNA技術、種内プロトプラスト融合、紫外線若しくはX線の照射による突然変異誘発、又はニトロソグアニジン、メチルメタンスルホネン酸、及びナイトロジェンマスタードなどの化学変異原での処理による突然変異誘発、及びバクテリオファージ媒介形質導入が挙げられる。好適で適用可能な方法は当技術分野で周知であり、例えば、とりわけ、J. H. Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1972); J. H. Miller, A Short Course in Bacterial Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1992); 及びJ. Sambrook, D. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)に記載されている。
【0058】
本明細書で用いられる用語「バリアント」はまた、本明細書に記載されるラクトバチルス種の系統学的に近縁の種である微生物株、並びにrRNA遺伝子、伸長因子遺伝子及び開始因子遺伝子、RNAポリメラーゼサブユニット遺伝子、DNAジャイレース遺伝子、熱ショックタンパク質遺伝子、及びrecA遺伝子などの系統学的に情報価値のあるマーカの1又は複数で、本明細書に記載される種と実質的な配列同一性を有する微生物株も包含される。例えば、本明細書で意図されている「バリアント」株の16S rRNA遺伝子は、本明細書に開示される株と、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を共有していてもよい。
【0059】
本明細書に記載されるラクトバチルス種、及びその組み合せ、又は培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液は、通常、本開示に従って組成物の形態で投与される。種の組み合せ、又は複数の種の培養に由来する培養上清若しくは無細胞濾液の実施形態において、当業者は、投与される種、上清、若しくは濾液のそれぞれが、同じ組成物に含有されている必要はないことを理解するであろう。投与が別個である場合、投与は順次であってもよく、又は同時であってもよい。
【0060】
同様に、免疫抑制剤は、1又は複数のラクトバチルス種、又は培養上清若しくは無細胞濾液と同じ組成物で投与されてもよく、1又は複数のラクトバチルス種、又は培養上清、若しくは無細胞濾液として投与されてもよく、又は異なる組成物で投与されてもよい。異なる組成物中に免疫抑制剤が存在する場合、この組成物は、順次に投与されてもよく、又は同時に投与されてもよい。
【0061】
本開示に従って使用するための組成物は、関連する構成成分を混合し、得られた混合物を対象への投与に適した投与剤形に配合することによって調製されてもよい。したがって、この組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤(excipient)、及び/又は補助剤(adjuvant)を含んでいてもよい。担体、希釈剤、賦形剤、及び補助剤は、組成物の他の構成成分と適合性という点で「許容可能」でなければならず、組成物を投与される対象に対して有害であってはならない。投与のために好適な組成物を調製する方法、並びに局所投与、経口投与、又は舌下投与用に配合される組成物中での使用に適した担体、希釈剤、賦形剤、及び補助剤は、当業者に周知である。例示的な実施形態では、組成物は、過剰な培養液を除去するために細胞培養後に(例えば、遠心分離及び/又は濾過によって)濃縮された、微生物性生物学的製剤株の1又は複数を含み得る。したがって、この組成物は、残留した食品等級培地中に1又は複数の微生物生物学的製剤株を含んでいてもよい。あるいは、組成物は、滅菌等張性生理食塩水又は3%スクロースを含む担体を用いて配合されてもよい。
【0062】
組成物は、任意の適当な又は好適な経路により投与されてもよく、これらに限定されないが、経口、舌下、頬側、直腸内、局所、鼻腔内、眼内内、経粘膜、腸管内、経腸、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、脳室内、脳内、膀胱内、静脈内、又は腹腔内を含む様々な経路により投与されてもよい。適切な経路は、例えば、治療される炎症性疾患の性質及び重症度に依存し得る。免疫抑制剤が、1又は複数のラクトバチルス種、又は培養上清若しくは無細胞濾液とは異なる組成物で投与される場合、組成物の投与経路は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
一例として、1又は複数のラクトバチルス種を含む組成物、又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培養液に由来する培養上清若しくは無細胞濾液を含む組成物は、経口投与されてもよく、免疫抑制剤を含む組成物は、経口投与されてもよく、又は注射によって投与されてもよい。例えば、トファシチニブを含む組成物が経口投与されてもよく、アダリムマブを含む組成物が皮下注射によって投与されてもよい。
【0064】
したがって、本開示の方法は、同じ組成物又は異なる組成物中で、同じ経路又は異なる経路を介して、記載される組み合せの構成成分の投与を意図する。本開示の方法の例示的な実施形態は、1又は複数のラクトバチルス株、及びトファシチニブなどの免疫抑制剤の経口投与を含み、ここで、前記ラクトバチルス株及びCsA又はトファシチニブは、同じ組成物中又は異なる組成物中にある。本開示の方法の例示的な実施形態は、1又は複数のラクトバチルス株の経口投与、及びアダリムマブなどの免疫抑制剤の注射(任意に皮下注射)による投与を含む。
【0065】
組成物は、本開示に従って、任意の好適な形態、通常は、固体形態又は液体形態で投与されてもよい。例えば、組成物は、当業者に周知の方法及び技術を用いて、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、カプレット剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、オブラート(wafer)、顆粒剤、粉末剤、ゲル剤、ペースト剤、溶液、クリーム剤、スプレー剤、懸濁液、可溶性分包(sachet)、ロゼンジ(lozenge)、発泡性錠剤、チュアブル錠剤、及び多層錠剤などに配合されてもよい。経口投与のために、ラクトバチルス又は組成物は、様々な飲料、食品製品、栄養補助食品、栄養補給剤、食品添加物、医薬品、店頭販売用製剤、及び動物飼料補給剤中に好都合に組み込まれてもよい。局所適用のため、好適な溶媒(vehicle)としては、これらに限定されないが、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、フォーム剤、スプレー剤、油剤、及び粉末剤などが挙げられる。組成物はまた、通常は液体又は半液体の形態で、経皮パッチ、絆創膏(plaster)、及び包帯又は親水コロイド被覆材などの創傷被覆材中に含浸されてもよい。
【0066】
当業者に理解されるように、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤の選択は、投与経路、並びに症状の性質及び重症度、及び治療される対象に依存することになる。特定の担体又は送達系、及び投与経路は、当業者により容易に決定され得る。当業者は、従来のアプローチを用いて本開示の方法において有用である適切な剤型を容易に決定することができるであろう。
【0067】
例えば、本開示の組成物は、許容可能な希釈剤(生理食塩水及び滅菌水など)を含有する液体の形態で、投与用に配合されてもよく、又は所望の質感、稠度、粘度、及び外観を付与するための許容可能な希釈剤又は担体を含有するローション剤、クリーム剤、又はゲル剤の形態であってもよい。許容可能な希釈剤及び担体は、当業者に周知であり、これらに制限されないが、エトキシ化界面活性剤及び非エトキシ化界面活性剤、脂肪アルコール、脂肪酸、炭化水素油(パーム油、ヤシ油、及び鉱物油など)、カカオバターワックス、シリコン油、pHバランサー、セルロース誘導体、乳化剤(例えば、非イオン性有機塩基及び非イオン性無機塩基)、保存剤、ワックスエステル、ステロイドアルコール、トリグリセリドエステルなど、リン脂質(例えば、レシチン及びセファリン)、多価アルコールエステル、脂肪アルコールエステル、親水性ラノリン誘導体、及び親水性ミツロウ誘導体などが挙げられる。
【0068】
ラクトバチルスは、当技術分野において周知の薬学的に許容可能な担体を用いて、経口投与に好適な投与量に容易に配合され得る。これらの担体は、糖類、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張食塩水、及び発熱性物質除去水から選択されてもよい。
【0069】
本開示による経口使用に適した担体、希釈剤、賦形剤、及び補助剤のいくつかの例としては、流動パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、及びレシチンが挙げられる。さらに、これらの経口製剤は、好適な香味剤及び着色剤を含んでいてもよい。カプセル剤の形態で使用される場合、カプセルは、崩壊を遅延させるモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの化合物で被覆されてもよい。補助剤としては、通常、軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤、及び緩衝剤が挙げられる。注射可能な溶液又は注射可能な懸濁液として投与するために、非毒性非経口の許容可能な希釈剤又は担体としては、リンゲル液、等張食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、及び1,2プロピレングリコールが挙げられ得る。
【0070】
経口投与のための固体形態は、ヒト及び獣医学的薬務において許容可能な結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香味料、被覆剤、保存剤、潤滑剤、及び/又は時間遅延剤を含んでいてもよい。好適な結合剤としては、アカシアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、又はポリエチレングリコールが挙げられる。好適な甘味料としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、又はサッカリンが挙げられる。好適な崩壊剤としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、又は寒天が挙げられる。好適な希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又は第二リン酸カルシウムが挙げられる。好適な香味剤としては、ペパーミント油、ウィンターグリーン香料、サクランボ香料、オレンジ香料、又はラズベリー香料が挙げられる。好適な被覆剤としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はこれらのエステルのポリマー又はコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラック、又はグルテンが挙げられる。好適な防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、又は重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。好適な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又はタルクが挙げられる。好適な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンが挙げられる。
【0071】
経口投与のための液体形態は、上記の薬剤に加えて、液体担体を含んでいてもよい。好適な液体担体としては、水、油(例えば、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、落花生油、ヤシ油など)、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、又はこれらの混合物が挙げられる。経口投与用の懸濁液は、分散剤及び/又は懸濁剤をさらに含んでいてもよい。好適な懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、又はアセチルアルコールが挙げられる。好適な分散剤としては、レシチン、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル(例えば、ステアリン酸、ポリオキシエチレンソルビトールモノ-(又はジ-)オレエート、-ステアレート又は-ラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-又はジ-オレエート、-ステアレート、又は-ラウレートなど)が挙げられる。経口投与のためのエマルジョンは、1又は複数の乳化剤をさらに含んでいてもよい。好適な乳化剤としては、上に例示される分散剤、又はグアーガム、アカシアゴム、若しくはトラガカントゴムなどの天然ガムが挙げられる。
【0072】
好適な非経口投与可能な組成物の調製方法は当業者に周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Science, 15th ed.,Mack Publishing Company, Easton, Pa.に詳述されている。
【0073】
局所投与用に配合される組成物の場合、薬学的に許容可能な希釈剤の例は、脱塩水又は蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ピーナッツ油などのゴマ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油、又はヤシ油などの野菜をベースとした油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、及びメチルフェニルポリソルポキサンなどのポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;流動パラフィン、軟質パラフィン、又はスクアランなどの鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;低級アルカノール、例えば、エタノール又はイソプロパノール;低級アラルカノール(aralkanol);低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、又はグリセリン;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、又はオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラギーナン;トラガカントゴム又はアラビアゴム、及びワセリンである。
【0074】
他の実施形態では、組成物は、ポビドン又はプロピレングリコールなどの懸濁剤及び/又は保湿剤、並びに水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン(TEA)、若しくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの組成物の粘度を調整するための中和剤をさらに含んでいてもよい。
【0075】
本開示の組成物は、治療又は予防される状態、その状態の重症度、及び所望の結果に応じて、例えば、週に1回又は複数回、任意に、例えば、週に1回、2日に1回、1日に1回、1日に2回、又は1日に3回投与されてもよい。対象による投与期間もまた、治療又は予防される状態、その状態の重症度、及び所望の結果に応じて変動することになる。対象により投与される組成物の量は、投与される微生物の同一性、治療又は予防される状態の性質及び重症度、対象の年齢及び一般的な健康状態、並びに所望の結果を含む、様々な要因の範囲に応じて変化することになる。好適な投与レジメンは当業者により容易に決定され得る。
【0076】
例示的な実施形態では、約10cfu/mL~1011cfu/mLの最終濃度で約1mL~約25mLのラクトバチルス種の液体配合物が、1日1回、1日2回、又はより頻繁に、対象へ投与されてもよい。液体製剤の容量は、例えば、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、約10mL、約11mL、約12mL、約13mL、約14mL、約15mL、約16mL、約17mL、約18mL、約19mL、約20mL、約21mL、約22mL、約23mL、約24mL、又は約25mLであってもよい。
【0077】
免疫抑制剤と、1又は複数のラクトバチルス種又は培養上清若しくは無細胞濾液との組み合せは、1又は複数の他の治療剤、例えば、これらに限定されないが、抗生物質、抗菌剤、防腐剤、麻酔剤、抗炎症剤、免疫抑制剤と、ステロイド及びNSAIDなど、炎症状態の治療に適用される他の治療剤と組み合わせて投与されてもよい。本明細書に記載の組成物及び本開示の対象に関して、そのような追加の薬剤の投与は、同じ時間であってもよく、又は異なる時間であってもよく、すなわち同時であってもよく、又は順次であってもよく、かつ同じ経路で投与されてもよく、又は異なる経路でもよい投与されてもよい。
【0078】
採用され得る追加の抗炎症剤の非限定的な例としては、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ハロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン二酢酸エステル、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、デスオキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、モメタゾンフロ酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、フルランドレノリド、トリアムシノロンアセトニド、モメタゾンフロ酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、デソニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、デソニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセポン酸エステル、ヒドロコルチゾンブテプラート、メチルプレドニゾロンアセポン酸エステル、モメタゾンフロ酸エステル、及びプレドニカルバートなどのステロイド系及び非ステロイド系化合物が挙げられる。好適な非ステロイド系抗炎症化合物の非限定的な例としては、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ピロキシカム、ベンジダミン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、フィロコキシブ、及びリコフェロン、半合成グリコサミノグリコサンエーテル(semi-synthetic glycosaminoglycosan ether)、フラバノール、フラボノイド、イソフラボン、及び誘導体が挙げられる。抗炎症剤は、例えば、シクロスポリンA、6-チオグアニン、スルファサラジン、メサラミン(5-アミノサリチル酸)、エタネルセプト、プレドニゾロン、又はバルサラジドなどのサイトカインシグナル伝達の抑制剤であってもよい。
【0079】
抗感染剤は、対象における感染を処理する任意の薬剤であってもよい。特定の実施形態では、抗感染剤は、アポトーシス小体を介して、細胞間を、全体として又は部分的に伝達(transfer)されることが可能な、感染性生物を殺傷するか、又は増殖は阻害することが可能である。好適な抗感染剤としては、これらに限定されないが、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗原虫剤、又はこれらの組み合せが挙げられる。
【0080】
例示的な抗ウイルス剤としては、これらに限定されないが、アバカビル硫酸塩、アシクロビル(特に、アシクロビルナトリウム)、アデホビル、アマンタジン(特に、塩酸アマンタジン)、アンプレナビル、アンプリゲン(ampligen)、アタザナビル、シドホビル、ダルナビル、デラビルジン(特に、メシル酸デラビルジン)、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エルビテグラビル、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン(特に、ホミビルセンナトリウム)、ホスカネット(特に、ホスカルネットナトリウム)、ガンシクロビル、イバシタビン、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル(特に、インジナビル硫酸塩)、イノシンプラノベクス、ラミブジン、ロピナビル、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ネルフィナビル(特に、ネルフィナビルメシル酸塩)、ネビラピン、ニタゾキサニド、オセルタミビル(特に、オセルタミビルリン酸塩)、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン(特に、リマンタジン塩酸塩)、リトナビル、サキナビル(特に、サキナビルメシル酸塩)、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トロマンタジン、ウミフェノビル(umifenovir)、バラシクロビル(特に、バラシクロビル塩酸塩)、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、並びにこれらの薬学的に許容可能な塩及び組み合せが挙げられる。
【0081】
例示的な抗菌剤としては、これらに限定されないが、キノロン(例えば、アミフロキサシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキソリニン酸、ペフロキサシン、ロソクサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、ゲミフロキサシン、及びガレノキサシン)、テトラサイクリン、グリシルサイクリン、及びオキサゾリジノン(例えば、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、チゲサイクリン;リネゾリド、エペレゾリド)、グリコペプチド、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ミノマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン)、β-ラクタム(例えば、イミペネム、メロペネム、ビアペネム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリル、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セフメタゾール、セフォキシチン、セフォテタン、アズトレオナム、カルモナム、フロモキセフ、モキサラクタム、アムジノシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、ベンジルペニシリン、カルフェシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペラシリン、スルベニシリン、テモシリン、チカルシリン、セフジトレン、SC004、KY-020、セフジニル、セフチブテン、FK-312、S-1090、CP-0467、BK-218、FK-037、DQ-2556、FK-518、セフォゾプラン、ME1228、KP-736、CP-6232、Ro 09-1227、OPC-20000、LY206763)、リファマイシン、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、オレアンドマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン)、ケトライド(例えば、テリスロマイシン、セスロマイシン)、クーママイシン、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、クロラムフェニコール、クロファジミン、シクロセリン、ダプソン、エタンブトール塩酸塩、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン、リファンピン、リファペンチン、及びストレプトマイシン硫酸塩が挙げられる。
【0082】
例示的な抗原虫剤としては、これらに限定されないが、アトバコン、メトロニダゾール塩酸塩を含むメトロニダゾール、ペンタミジンイセチオン酸塩を含むペンタミジン、クロロキン塩酸塩及びクロロキンリン酸塩を含むクロロキン、ドキシサイクリン、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、メフロキン塩酸塩を含むメフロキン、プリマキンリン酸塩を含むプリマキン、ピリメタミン、スルファドキシンと併用されるピリメタミン、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、キニーネ、キニジン、スルファジアジン、アーテメータ、ルメファントリン、アルテスナート、ニタゾキサニド、スラミン、メラルソプロール、エフロルニチン、ニフルチモックス、スチボグルコン酸ナトリウムを含むスチボグルコン酸塩、リポソームアムホテリシンBを含むアムホテリシンB、ミルテホシン、パロモマイシン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、並びにこれらの薬学的に許容可能な塩及び組み合せが挙げられる。
【0083】
例示的な免疫抑制剤としては、これらに限定されないが、例えば、ブデソニド、プレドニゾン、及びプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;例えば、シロリムス及びエベロリムスなどのmTOR阻害剤;例えば、セルトリズマブ、ウステキヌマブ、及びベドリズマブなどのモノクローナル抗体、並びにこれらの後発生物製剤などが挙げられる。
【0084】
例示的な実施形態では、本明細書に記載される1又は複数のラクトバチルス種は、微生物生物学的製剤組成物の形態で提供及び投与される。そのような組成物は、1又は複数の追加的な微生物、例えば、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、及びサッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)などをさらに含んでいてもよい。
【0085】
微生物生物学的製剤組成物は、1又は複数のプレバイオティクス成分を含んでいてもよい。好適なプレバイオティクスとしては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マンナンオリゴ糖、タンパク質をベースとしたモエギイガイ抽出物、並びに様々なプレバイオティクス含有食品、例えば、生タマネギ、生ネギ、生チコリーの根、及び生アーティチョークが挙げられる。特定の実施形態では、プレバイオティクスはフラクトオリゴ糖である。
【0086】
本明細書に記載されるラクトバチルス種を含む組成物は、上記の任意の投与形態を含む、任意の好適な形態で投与されてもよい。微生物生物学的製剤組成物は、任意の種類の飲料若しくは食品製品(例えば、水、フルーツジュース、又はヨーグルト)中への使用者による混合に適した粉末形態で、又は飲料若しくは他の食品製品が存在しない場合は粉末としての消費に適した粉末形態で、使用者に提供されてもよい。したがって、微生物生物学的製剤組成物は、様々な食品及び/又は飲料製品、栄養補助食品、サプリメント、食品添加物、及び店頭販売用製剤中に都合よく組み込まれ得る。食品又は食品添加物は、粉末などの固体形態であってもよく、又は液体形態であってもよい。飲料又は食品の種類の具体例としては、これらに限定されないが、水をベースとした飲料、ミルクをベースとした飲料、ヨーグルトをベースとした飲料、その他の乳製品をベースとした飲料、豆乳若しくはオーツミルクなどの乳代用品をベースとした飲料、又はジュースをベースとした飲料、水、清涼飲料、炭酸飲料、及び栄養飲料(飲料の濃縮原液、及びそのような飲料を調製するための乾燥粉末を含む);クラッカー、パン、マフィン、ロールケーキ、ベーグル、ビスケット、シリアル、ミューズリバーなどのバー、及び健康食品バーなどの焼き菓子、ドレッシング、ソース、カスタード、ヨーグルト、プリン、包装済み冷凍食品、スープ、及び菓子類が挙げられる。
【0087】
本明細書における任意の先行出版物(又はそれから派生する情報)に対する言及、又は任意の既知の事項に対する言及は、先行刊行物(又はそれから派生する情報)又は既知の事項が、本明細書が関連する試みの分野における共通の一般知識の一部を形成することについての同意若しくは承認、又は任意の形態の提案として解釈されるものではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0088】
ここで、本開示を以下の具体例を参照して説明するが、これは本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0089】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本明細書の記載全体の開示の一般的な性質をいかなる方法によっても限定するものと解釈されるべきではない。
【0090】
実施例1.コラーゲン抗体誘発関節炎(CAIA)マウスモデル
本研究では、本発明者らは、関節リウマチの検証済みマウスモデルであるコラーゲン抗体誘発関節炎(CAIA)モデルを使用して、3種類の微生物生物学的製剤細菌株であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブフネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)を含む組成物の有効性を、関節リウマチの既知の治療法(トファシチニブ及びアダリムマブ)と比較し、微生物生物学的製剤と組み合わせたこれらの既知の治療法の効果を比較した。
【0091】
雌の8~9週齢BALB/cマウスを以下の7つのグループに分けた。
・グループ1:未処理(陰性対照)グループ(n=8)。
・グループ2:CAIA+溶媒(0.9%滅菌生理食塩水+2.5%スクロース)(n=12)。
・グループ3:CAIA+3.0×1010cfu/mL濃度のSVT 04P1、SVT 06B1及びSVT 08Z1の組み合せ(n=12)。
・グループ4:30mg/kg用量のCAIA+トファシチニブ(n=12)。
・グループ5:30mg/kg用量のCAIA+トファシチニブ+3.0×1010cfu/mL濃度のSVT 04P1、SVT 06B1及びSVT 08Z1の組み合せ(n=12)。
・グループ6:CAIA+3mg/kg用量のアダリムマブ(n=12)。
・グループ7:CAIA+3mg/kg用量のアダリムマブ+3.0×1010cfu/mLの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1及びSVT 08Z1の組み合せ(n=12)。
【0092】
0日目にArthritomab(MD Biosciences)の0.2mL単回注射により、グループ2~グループ7で関節炎を誘発した(CAIA)。6日目に動物にLPSのブースト注射を行った。グループ2の動物に、1日目から17日目まで毎日、強制経口投与によって、0.5mLの投与量で溶媒(0.9%滅菌生理食塩水+2.5%スクロース)を投与した。グループ3~グループ7に、1日目から17日目まで毎日、試験項目を行った。ラクトバチルスの組み合せ(SVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1)を0.5mLの投与量で強制経口投与によって投与した(グループ3、グループ5、及びグループ7)。トファシチニブを10mL/kgの投与量で強制経口投与によって投与した(グループ4及びグループ5)。アダリムマブを10mL/kgの投与量で皮下注射によって投与した(グループ6及びグループ7)。
【0093】
全ての動物について生存中観察を行った。投与前に1回、及び処理開始後から1日おきに体重を記録した。疾患スコアリングは、前処理に1回行い、5日目から週に1回行った。プレシスモメータを用いて後肢の足体積を測定し、体積の和を計算した。要するに、プレシスモメータは、炎症誘発性腫脹の正確な測定のために設計された体積計である。プレシスモメータは水で満たされたセルからなり、セルに足が足首関節と共に浸される。トランスデューサは、体積変位によって引き起こされる水位の差を記録し、腫脹に起因する正確な体積増加のLCD読み取り値を提供する。
【0094】
四肢の臨床スコア(スコア0~4)を、以下のスコアリングプロトコルに基づいて評価した。スコア0:正常、スコア1:足の中央(足根)、足首関節、又は指に限定された、紅斑及び軽度腫脹、スコア2:足首から足の中央に及ぶ紅斑及び軽度腫脹(2つのセグメント)、スコア3:足首から中足骨関節に及ぶ紅斑及び中程度腫脹(2つのセグメント)、スコア4:足首、足、及び指を包含する紅斑及び重度腫脹。
【0095】
図1に示されるように、トファシチニブとラクトバチルス株との組み合せで処理されたマウス(グループ5)の臨床スコアは、トファシチニブ単独で処理されたマウス(グループ4)と比較して、10日目から17日目まで有意に低かった。アダリムマブとラクトバチルス株との組み合せで処理したマウス(グループ7)の臨床スコアは、アダリムマブ単独で治療したマウス(グループ6)と比較して、8日目から17日目まで有意に低かった。
【0096】
寄託の詳細
ブダペスト条約に従って寄託された生物学的材料の詳細は、本明細書で前述した。寄託された株は、国際出願番号PCT/AU2019/051092号(国際公開第2020/073088号)に以前に記載されている。要約すれば以下の通りである。
【0097】
ラクトバチルス・パラファラギニスSVT 05P2は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31292としてブダペスト条約に従って寄託された。
【0098】
ラクトバチルス・ブフネリSVT 06B1は、受2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に託番号LMG P-31293としてブダペスト条約に従って寄託された。
【0099】
ラクトバチルス・ゼアエSVT 08Z1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31295としてブダペスト条約に従って寄託された。
【0100】
L.ラピSVT 07R1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31294としてブダペスト条約に従って寄託された。
【0101】
ラクトバチルス・パラカゼイSVT 04P1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31290としてブダペスト条約に従って寄託された。
【0102】
ラクトバチルス・ディオリボランスSVT 01D1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31287としてブダペスト条約に従って寄託された。
図1
【国際調査報告】