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特表2023-553964少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法
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  • 特表-少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法 図1
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  • 特表-少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法 図3
  • 特表-少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法 図4A
  • 特表-少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法 図4B
  • 特表-少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】少なくとも1つの質量分析装置のパラメータ設定を最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20231219BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20231219BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20231219BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N27/62 E
H01J49/00 310
H01J49/42 150
H01J49/00 500
H01J49/04 450
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535565
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021085190
(87)【国際公開番号】W WO2022123005
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20213473.0
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティーマン、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】インテルマン、ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041AA06
2G041CA01
2G041EA12
2G041FA10
2G041GA03
2G041GA09
2G041GA13
2G041JA05
2G041KA01
2G041LA09
(57)【要約】
単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置(110)の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法が開示される。本方法は、a)質量分析装置(110)を用いて目的の分析物を検出するための少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップであって、分析物検出窓が、分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、分析物の中心質量電荷比値が、小数点第2位以下を有する目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップと、b)質量分析装置(110)を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、内部標準検出窓が、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、内部標準物質の中心質量電荷比値が、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置(110)の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法であって、
a)前記質量分析装置(110)を用いて目的の分析物を検出するための少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップであって、前記分析物検出窓が、前記分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、前記分析物の前記中心質量電荷比値が、小数点第2位以下を有する前記目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された前記目的の分析物の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップと、
b)前記質量分析装置(110)を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、前記内部標準検出窓が、前記内部標準物質の中心質量電荷比値および前記予め定義された幅によって定義され、前記内部標準物質の前記中心質量電荷比値が、前記目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する前記内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された前記内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記目的の分析物の前記理論上の質量電荷比値が、小数点第2位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された前記目的の分析物の前記質量電荷比値が、小数点第2位を有し、前記目的の分析物に対して計算された前記内部標準物質の前記質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された前記内部標準物質の前記質量電荷比値が、小数点第2位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的の分析物の前記理論上の質量電荷比値が、少なくとも小数点第3位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された前記目的の分析物の前記質量電荷比値が、少なくとも小数点第3位を有し、前記目的の分析物に対して計算された前記内部標準物質の前記質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された前記内部標準物質の前記質量電荷比値が、少なくとも小数点第3位を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記内部標準物質が、前記目的の分析物と構造的に類似した化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記内部標準物質が、前記分析物の同位体標識バージョンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記質量分析装置(110)が、多重反応監視用に構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記質量分析装置(110)が、3つの四重極を備える三連四重極質量分析装置を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記三連四重極質量分析装置の第1の四重極Q1および/または第3の四重極Q3のそれぞれについて分析物検出窓および内部標準検出窓を決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記パラメータ設定の少なくとも1つのさらなるパラメータを最適化することを含み、前記内部標準物質の前記検出のための前記さらなるパラメータが、分析物試料を使用して決定された前記分析物の検出のための前記さらなるパラメータに調和される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記さらなるパラメータが、イオン源ガス、噴霧ガス、プローブ位置、イオン噴霧電圧、乾燥ガス、デクラスタリング電位、カーテンガスの圧力または流れ、入射電位、集束レンズ、イオンプレフィルタ、Q1 m/z値および分解能、イオンエネルギー、出射レンズ、衝突エネルギー、衝突ガス、衝突セル出射電位、Q3 m/z値および分解能、検出器設定/電圧からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、複数のパラメータを最適化することを含み、前記複数のパラメータを最適化することが、最適化手順にしたがい、前記最適化手順が、
i)少なくとも1つの分析物試料を使用して前記質量分析装置(110)の第1の四重極を質量走査モードで作動させることによって、前記分析物の親イオンの初期質量電荷比パラメータを決定するステップと、
ii)前記分析物試料を使用し、前記親イオンの最終的な質量電荷比パラメータを決定するために前記親イオンの前記質量電荷比の決定を繰り返すことによって、デクラスタリング電位を最適化するステップと、
iii)前記分析物試料を使用して前記質量分析装置(110)の第3の四重極を質量走査モードで作動させることによって、プロダクトイオンについての初期質量電荷比パラメータを決定するステップと、
iv)前記分析物試料を使用してプロダクトイオンについての衝突エネルギーを最適化するステップと、
v)前記分析物試料を使用してプロダクトイオンについてのセル出射電位を最適化するステップと、
vi)ステップiii)を繰り返し、それによってプロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータを決定するステップと、
vii)ステップa)を実行することによって、前記親イオンの決定された前記最終的な質量電荷比パラメータおよびプロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータを最適化するステップであって、前記親イオンの前記最終的な質量電荷比パラメータが、小数点第2位以下を有する前記親イオンの理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された前記親イオンの質量電荷比値に設定され、プロダクトイオンについての前記最終的な質量電荷比パラメータが、小数点第2位以下を有する前記プロダクトイオンのそれぞれの理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された前記プロダクトイオンのそれぞれの質量電荷比値に設定される、最終的な質量電荷比パラメータを最適化するステップと、
viii)ステップb)を実行することによって、前記内部標準物質の親イオンおよびプロダクトイオンの初期質量電荷比パラメータを最適化するステップであって、前記内部標準物質の前記親イオンの前記初期質量電荷比パラメータが、前記目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する質量電荷比値に設定され、前記内部標準物質の前記プロダクトイオンの前記初期質量電荷比パラメータが、前記目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する質量電荷比値に設定される、初期質量電荷比パラメータを最適化するステップと、
ix)前記質量分析装置を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、前記内部標準検出窓が、前記内部標準物質の中心質量電荷比値および前記予め定義された幅によって定義され、前記内部標準物質の前記中心質量電荷比値が、前記目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する前記内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された前記内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップと、
x)前記内部標準物質のプロダクトイオンについてのデクラスタリング電位、衝突エネルギー、およびセル出射電位のうちの1つまたは複数を、前記分析物の前記プロダクトイオンについての前記衝突エネルギー、および前記分析物の前記プロダクトイオンについての前記セル出射電位にそれぞれ調和させるステップと
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
定量的多重反応監視のための方法であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法によって最適化された少なくとも1つのパラメータ設定を使用して、単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置(110)に対して少なくとも1つの定量的アッセイを実行することを含む、方法。
【請求項13】
質量分析装置(110)であって、請求項1から11に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または請求項12に記載の定量的多重反応監視のための方法を実行するように構成された少なくとも1つの制御ユニットを備える、質量分析装置(110)。
【請求項14】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令が、プログラムが請求項13に記載の質量分析装置(110)の制御ユニットによって実行されると、前記制御ユニットに、請求項1から11に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または請求項12に記載の定量的多重反応監視のための方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項15】
命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、プログラムが質量分析装置に言及している先行する請求項のいずれか一項に記載の質量分析装置(110)の制御ユニットによって実行されると、前記制御ユニットに、請求項1から11に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または請求項12に記載の定量的多重反応監視のための方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの質量分析装置の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法、質量分析装置、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析と結合された液体クロマトグラフィ(LC-MS)またはタンデム質量分析(LC-MS/MS)アッセイなどの質量分析(MS)装置を使用してアッセイを実行するために、アッセイパラメータの設定が定義および/または設定および最適化される必要がある。最適化は、いくつかのパラメータを調整および/または調節することを含み得る。例えば、最適化されるべきパラメータは、タンデムMS多重反応監視(MRM)遷移の場合、イオン源ガス、カーテンガス、イオン噴霧電圧、温度、デクラスタリング電位、入射電位、集束レンズ、プレフィルタ、イオンエネルギー、衝突エネルギー、衝突ガス、セル出射電位、MS分解能、原料ガス流量、原料ガス圧力などの質量スケールであり得る。具体的には、実験が1つまたは複数の特定のイオンに関する定量的データを必要とする定量的質量分析の場合、質量分析方法は、特定の分析物標準に対して最適化される必要がある。
【0003】
ほとんどの質量分析システムは、低分解能質量フィルタを使用し、単位分解能、すなわち2つのピークを1質量単位離れて分離するのに十分な分解能で動作する。三連四重極MS法展開のような低分解能質量分析システムでは、分析物固有のパラメータ設定が決定された半自動最適化手法を使用することがよく知られている。通常、最適化されるべきパラメータは、質量軸または検出窓である。通常、質量軸の調節は、必要な精度のレベルで既知のm/zを有するイオンを有する注入された調整化合物を使用して行われる。典型的には、質量スケールの最適化のために、0.1~0.2amuの質量軸精度を有する単位質量分解能(±0.35amu)が許容される範囲であるため、イオン種の質量電荷比には小数点第1位が使用される。実験の偏りおよび誤差はm/z比に強く影響するため、より正確な設定は適用することができない。
【0004】
定量的質量分析アッセイでは、正確な結果を達成するために内部標準の使用が強く推奨される。
【0005】
分析物および内部標準は、それらの物理的特性および化学的特性の僅かな差しか有し得ないが、それらの比の僅かな変動が発生し、較正区間内の結果精度に直接影響する。これらの変動の理由は完全には理解されておらず、アッセイの新たな較正によってこれらの変動を補正することが一般に受け入れられている。較正により、分析物と内部標準との間の比は、分析物の量に対して数学的関係になる。したがって、第一に、機器質量軸は、適切に機能する機器を保証するように調節され得る。第二に、分析物および内部標準のための方法を設定し、感度および選択性を保証するために、方法の調整および/または最適化が実行され得る。その後、方法および/またはアッセイは、正確な結果を保証するために較正され得る。
【0006】
解決すべき課題
したがって、本発明の目的は、既知の方法、装置、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品の上述した欠点を回避する、少なくとも1つの質量分析装置の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法、質量分析装置、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品を提供することである。特に、方法および装置は、較正間隔が延長され得るように最適化安定性を改善するものとする。
【発明の概要】
【0007】
概要
この課題は、独立請求項の特徴を有する少なくとも1つの質量分析装置の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法、質量分析装置、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品によって対処される。単独で、または任意の組み合わせで実現されてもよい有利な実施形態は、従属請求項ならびに明細書全体に記載されている。
【0008】
以下で使用される場合、「有する(have)」、「備える(comprise)」、もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的変形は、包括的に使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つまたは複数の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で、且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つまたは複数のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0009】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在してもよいことを示す「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または1回を超えて存在してもよいという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」という表現は繰り返されない。
【0010】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を、いかなる方法によっても制約することを意図されていない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関していかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関していかなる制限も伴わず、そのようなやり方で導入される特徴を本発明の他の任意の特徴または任意ではない特徴と組み合わせる可能性に関していかなる制限も伴わない任意の特徴であるように意図される。
【0011】
本発明の第1の態様では、単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法が開示される。好ましくは、本方法は、コンピュータ実装方法である。
【0012】
本明細書で使用される「コンピュータ実装方法」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/または少なくとも1つのコンピュータネットワークを含む方法を指し得る。コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークは、本発明にかかる方法の方法ステップのうちの少なくとも1つを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備え得る。好ましくは、方法ステップのそれぞれは、コンピュータおよび/またはコンピュータネットワークによって実行される。本方法は、完全に自動的に、具体的にはユーザ相互作用なしに実行されてもよい。本明細書で使用される「自動的に」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのコンピュータおよび/またはコンピュータネットワークおよび/または機械によって、特に手動の動作および/またはユーザとの相互作用なしに完全に実行されるプロセスを指し得る。
【0013】
本明細書で使用される「質量分析」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、イオンの質量対電荷比を決定するための分析技術を指し得る。質量分析は、少なくとも1つの質量分析器であるおよび/または少なくとも1つの質量分析器を備える少なくとも1つの質量分析装置を使用して実行され得る。本明細書で使用される場合、「質量分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量電荷比(m/z)に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された分析器を指し得る。
【0014】
質量分析装置は、少なくとも1つの四重極分析器であり得るか、またはそれを備え得る。本明細書で使用される場合、「四重極質量分析器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量フィルタとして少なくとも1つの四重極を備える質量分析器を指し得る。本明細書で使用される場合、「質量フィルタ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量電荷比m/zにしたがって質量フィルタに注入されるイオンを選択するように構成された装置を指し得る。質量フィルタは、2対の電極を備える。電極は、棒状であってもよく、特に円柱状であってもよい。理想的な場合、電極は、双曲線であってもよい。電極は、同一に設計されてもよい。電極は、共通の軸、例えばz軸に沿って平行に延在するように配置されてもよい。四重極質量分析器は、質量フィルタの2対の電極間に少なくとも1つの直流(DC)電圧および少なくとも1つの交流(AC)電圧を印加するように構成された少なくとも1つの電源回路を備え得る。電源回路は、各対向する電極対を同一の電位に保持するように構成され得る。電源回路は、一定の質量電荷比m/z内のイオンについてのみ安定した軌道が可能であるように、電極対の電荷の符号を周期的に変化させるように構成され得る。質量フィルタにおけるイオンの軌道は、マシュー微分方程式によって記述され得る。異なるm/z値のイオンを測定するために、異なるm/z値を有するイオンが検出器に伝達され得るように、DC電圧およびAC電圧が時間につれて変更されてもよい。
【0015】
質量分析装置は、多重反応監視用に構成され得る。本明細書で使用される「多重反応監視(MRM)」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析、具体的にはタンデム質量分析に使用される方法であって、1つまたは複数の前駆イオンからの複数のプロダクトイオンが監視される方法を指し得る。本明細書で使用される場合、「監視」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、複数のプロダクトイオンの判定および/または検出を指し得る。四重極質量分析器は、複数の四重極を備えてもよい。質量分析装置は、3つの四重極を備える三連四重極質量分析装置を備え得る。
【0016】
質量分析装置は、少なくとも1つのイオン化源を備え得る。本明細書で使用される場合、「イオン源」としても示される「イオン化源」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、例えば中性ガス分子からイオンを生成するように構成された装置を指し得る。イオン化源は、少なくとも1つの電子衝撃(EI)源または少なくとも1つの化学イオン化(CI)源などの少なくとも1つの気相イオン化源、少なくとも1つのプラズマ脱離(PDMS)源、少なくとも1つの高速原子衝撃(FAB)源、少なくとも1つの二次イオン質量分析(SIMS)源、少なくとも1つのレーザ脱離(LDMS)源、および少なくとも1つのマトリックス支援レーザ脱離(MALDI)源などの少なくとも1つの脱離イオン化源、少なくとも1つのサーモスプレー(TSP)源、少なくとも1つの大気圧化学イオン化(APCI)源、少なくとも1つのエレクトロスプレー(ESI)源、および少なくとも1つの大気圧イオン化(API)源などの少なくとも1つの噴霧イオン化源からなる群から選択される少なくとも1つの源であり得るか、またはそれらを含み得る。
【0017】
質量分析装置は、少なくとも1つの検出器を備え得る。本明細書で使用される場合、「検出器」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、到来するイオンを検出するように構成された装置を指し得る。検出器は、荷電粒子を検出するように構成され得る。検出器は、少なくとも1つの電子増倍器であり得るか、またはそれを備え得る。
【0018】
質量分析装置は、液体クロマトグラフィ質量分析装置であり得るか、またはそれを備え得る。質量分析装置は、液体クロマトグラフとも呼ばれる少なくとも1つの液体クロマトグラフィ装置に接続されてもよく、および/または少なくとも1つの液体クロマトグラフィ装置を備えてもよい。液体クロマトグラフは、質量分析装置のための試料調製に使用されてもよい。少なくとも1つのガスクロマトグラフなど、試料調製の他の実施形態が可能であり得る。本明細書で使用される「液体クロマトグラフィ質量分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、液体クロマトグラフィと質量分析との組み合わせを指し得る。質量分析装置は、少なくとも1つの液体クロマトグラフを備え得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置であり得るか、あるいはこれらを備え得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、液体クロマトグラフィ(LC)装置と、この場合には質量フィルタである質量分析(MS)装置とを備え得て、LC装置および質量フィルタは、少なくとも1つのインターフェースを介して連結される。LC装置とMS装置とを連結するインターフェースは、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成されたイオン化源を備え得る。インターフェースは、イオン化源と質量フィルタとの間に配置された少なくとも1つのイオン移動度モジュールをさらに備えてもよい。例えば、イオン移動度モジュールは、高電界非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)モジュールであり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ(LC)装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析装置を用いて1つまたは複数の分析物を検出するために、試料の1つまたは複数の目的の分析物を試料の他の成分から分離するように構成された分析モジュールを指し得る。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備え得る。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよく、または複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、目的の分析物の分離および/または溶出および/または遷移を行うために移動相が圧送される固定相を有し得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの目的の分析物をそれぞれが含む試料の自動的な前処理および調製のための試料調製ステーションをさらに備え得る。
【0020】
質量分析装置は、単位質量分解能とも呼ばれる単位分解能で動作するように構成されている。本明細書で使用される「分解能」という用語は、質量分析装置が異なる質量電荷比の2つのピークを区別する能力の尺度を指し得る。本明細書で使用される「単位分解能で動作する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、1質量単位だけ異なる2つのイオンを分離するための質量分析装置の適合性を指し得る。「単位分解能」という用語は、±0.1から±0.4amu、好ましくは±0.2から±0.35の範囲の質量分解能を指し得る。具体的には、質量分析装置は、約±0.35amuの質量分解能を有し得る。具体的には、質量分析装置は、いわゆる低分解能質量分析装置であってもよい。質量スケールの最適化のための既知の低分解能質量分析装置では、0.1~0.2amuの質量軸精度を有する単位質量分解能、例えば±0.35amuが許容範囲であるため、イオン種の質量電荷比には小数点第1位が使用される。実験の偏りおよび誤差がm/z比に強く影響するため、適用することができない既知の装置および方法について、より正確な設定が考慮される。以下に詳細に概説されるように、本出願は、小数点第2位以下を使用することを提案する。m/z比に小数点第2位以下を使用することは、信号強度に有意差と、ピーク面積比(分析物/内部標準)についての改善された精度をもたらすことが分かった。特に、実際の面積比は変動の影響を受けにくく、これにより改善された較正および/または堅牢性および安定性をもたらす。したがって、この方法的特徴を適用することにより、較正間隔が延長され得る。
【0021】
本明細書で使用される「パラメータ設定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析装置によって実行される少なくとも1つのアッセイを定義するパラメータの値および/または範囲を指し得る。アッセイは、定量的アッセイであり得る。例えば、パラメータ設定は、質量スケール、タンデムMSのMRM遷移、セル出射電位、MS分解能、ソースガス流量/圧力、温度ソースガス温度、イオンソースガス、カーテンガス、イオン噴霧電圧、温度、デクラスタリング電位、入射電位、集束レンズ、プレフィルタ、イオンエネルギー、衝突エネルギー、衝突ガスなどのパラメータのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0022】
本明細書で使用されるパラメータ設定を「最適化する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの最適化問題を解くプロセスを指し得る。最適化することは、アッセイを定義するパラメータ設定の少なくとも1つのパラメータを評価および/または調整および/または選択することを含み得る。最適化することは、いくつかの基準、例えば測定されたピークの最小強度損失などに関して最良のパラメータ値を選択することを含み得る。最適化することは、最大化および/または最小化などの極値を決定することを含み得る。最適化することは、最も堅牢なパラメータ設定、例えばグラフのプラトーを最適として定義することを含み得る。具体的には、本方法は、分析物検出窓および内部標準検出窓、特にそれらの中心質量電荷比値を最適化することを含み得る。
【0023】
本方法は、例として、所与の順序で実行され得る以下のステップ:
a)質量分析装置を用いて目的の分析物を検出するための少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップであって、分析物検出窓が、分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、分析物の中心質量電荷比値が、小数点第2位以下を有する目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップと、
b)質量分析装置を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、内部標準検出窓が、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、内部標準物質の中心質量電荷比値が、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップと
を含む。
【0024】
しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、方法ステップの1つまたは複数を1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、方法ステップの2つ以上を同時にまたは適時に重複して実行することが可能である。本方法は、記載されていないさらなる方法ステップを含んでもよい。
【0025】
質量分析装置は、目的の分析物を含む少なくとも1つの試料を分析するように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、生物学的試料および/または内部標準試料などの任意の試験試料を指し得る。試料は、1つまたは複数の目的の分析物を含み得る。例えば、試料は、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水液、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む生理学的液からなる群から選択されてもよい。試料は、それぞれの供給源から得られたものとして直接使用されてもよく、または前処理および/または試料調製ワークフローに供されてもよい。例えば、目的の分析物は、一般に、ビタミン、ビタミンD、依存性薬物、治療薬、ホルモン、および代謝産物であり得る。
【0026】
試料に関するさらなる詳細については、例えば、その全開示が参照により本明細書に含まれる欧州特許出願公開第3 425 369号明細書を参照されたい。他の目的の分析物も可能である。
【0027】
内部標準物質は、目的の分析物と構造的に類似した化合物であり得る。例えば、試料は、少なくとも1つの内部標準物質を添加することによって前処理されてもよい。前記試料は、既知の濃度の少なくとも1つの内部標準物質を含み得る。内部標準物質は、構造的に類似した化合物であり得るか、またはそれを含み得る。内部標準物質は、分析物の同位体標識バージョン、好ましくは目的の分析物のアイソトポログであり得る。構造的類似性が高いほど、性能は良好である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「分析物検出窓」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、目的の分析物の検出および/または測定が行われる質量電荷比の範囲またはフレームを指し得る。
【0029】
本明細書で使用される「内部標準検出窓」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、内部標準物質の検出および/または測定が行われる質量電荷比の範囲またはフレームを指し得る。
【0030】
分析物検出窓および/または内部標準検出窓のそれぞれは、例えば質量分析装置の少なくとも1つのデータベースに記憶された初期設定を有し得る。本明細書で使用される検出窓の「設定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、検出窓の一方または双方の限界、特に質量電荷比下限および質量電荷比上限の値を指し得る。具体的には、設定は、検出窓の下限、すなわち検出が開始する質量電荷比値、および検出窓の上限、すなわち検出が停止する質量電荷比値の一方または双方を含み得る。分析物検出窓は、分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義される。予め定義された幅はまた、MS分解能として表され得る。内部標準検出窓は、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義される。「中心質量電荷比値」という用語は、質量電荷比の範囲またはフレームの中心を指し得る。予め定義された幅は、0.7amu(すなわち、±0.35amu)であり得る。しかしながら、他の幅が可能であってもよい。
【0031】
分析物の中心質量電荷比値は、小数点第2位以下を有する目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値に設定される。内部標準物質の中心の質量電荷比値は、小数点第2位以下を有する目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される。本明細書で使用される場合、「に設定される」という用語は、初期中心質量電荷比値をアッセイにより適した値に調節および/または調整および/または選択するプロセスを指し得る。例えば、分析物の理論上の質量電荷比は、計算された質量電荷比であってもよく、および/または少なくとも1つのデータベースから得られてもよい。追加的または代替的に、分析物の電荷比値は、実験値に設定されてもよい。本明細書で使用される場合、「高分解能質量分析測定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、高分解能質量分析装置を使用して実行される測定を指し得る。高分解能質量分析装置は、少なくとも小数点第4位を有するm/z測定を実行するように構成されてもよく、少なくとも小数点第3位は重要である。高分解能質量分析装置は、分子式の解明および/または分子の質量欠陥の測定のために構成され得る。既知の最適化手法とは対照的に、本発明にかかる方法は、実験的手法と理論的手法との組み合わせを提案する。例えば、分析物の質量電荷比値が計算されてもよく、または少なくとも高分解能MS測定によって決定されてもよく、内部標準物質についてのm/z値が分析物に対して計算されてもよい。電圧のような質量分析装置のパラメータ設定の他のパラメータは、実験的に決定されてもよい。
【0032】
目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第2位以下を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第2位以下を有する。好ましくは、目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第2位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第2位を有する。目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値は、小数点第2位を有し得る。より好ましくは、目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第3位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第3位を有する。目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値は、小数点第3位を有し得る。
【0033】
低分解能MSシステムが使用されたが、驚くべきことに、m/z比に小数点第2位以下を使用すると、ピーク面積比(分析物/内部標準)が変動の影響を受けにくくなり、改善された較正安定性をもたらすことが分かった。さらに、信号強度の改善された精度が観察され得る。したがって、この方法的特徴を適用することにより、較正間隔が延長され得る。さらなる評価は、双方の分子種がそれらの質量欠陥において異なり、これが典型的には小数点第1位または第2位のm/z比の偏差を引き起こすことを示した。同位体標識された内部標準については、典型的には、小数点第2位の差が生じる。得られた信号強度は初期較正によってカバーされるが、変動する質量軸は、強度関数の非線形性に起因して変動するピーク面積比をもたらす。この偏差は、「未較正」の偏差、したがって試験結果の偏りを引き起こす。m/z比に小数点第2位以下を使用すると、分析物と内部標準との間の性能差を低減することができ、面積比の発生する偏りを大幅に低減することができる。
【0034】
上記で概説したように、質量分析装置は、3つの四重極を備え得る。第1の四重極Q1では、親イオンとも呼ばれる前駆イオンが単離され得る。前駆イオンは、第1の四重極Q1によって予め選択され得る目的のイオンであり得る。第2の四重極Q2内では、それは、フラグメントイオンまたはプロダクトイオンとも呼ばれる娘イオンに断片化され得る。第3の四重極Q3は、前記フラグメントイオンをフィルタリングおよび/または選択するために使用され得る。分析物検出窓および内部標準検出窓の決定は、第1の四重極および第3の四重極に対して実行され得る。本方法は、三連四重極質量分析装置の第1の四重極Q1および/または第3の四重極Q3のそれぞれについて分析物検出窓および内部標準検出窓を決定することを含み得る。
【0035】
本方法は、目的の分析物を含む少なくとも1つの分析物試料を使用して、分析物および内部標準物質の検出のための少なくとも1つのさらなるパラメータを最適化することを含み得る。さらなるパラメータは、特に、少なくとも1つの遷移固有パラメータであってもよい。内部標準物質の検出のためのさらなるパラメータは、分析物試料を使用して決定された分析物の検出のためのさらなるパラメータに調和され得る。本明細書で使用される「調和される」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、内部標準物質の検出のためのさらなるパラメータを、分析物の検出のためのさらなるパラメータの値に設定することを指し得る。さらなるパラメータは、イオン源ガス、噴霧ガス、プローブ位置、イオン噴霧電圧、乾燥ガス、デクラスタリング電位、カーテンガスの圧力または流れ、入射電位、集束レンズ、イオンプレフィルタ、Q1 m/z値および分解能、イオンエネルギー、出射レンズ、衝突エネルギー、衝突ガス、衝突セル出射電位、Q3 m/z値および分解能、検出器設定/電圧からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータであってもよい。例えば、さらなるパラメータは、以下の順序で最適化されてもよい:1.イオン源ガス;1a.噴霧ガス、品質/同一性、温度、流量/圧力、1b.プローブ位置(x、y、z位置)、1c.イオン噴霧電圧、1d.乾燥ガス、品質/同一性、温度、流量/圧力、2.デクラスタリング電位、3.カーテンガス圧/流量、4.入射電位、5.集束レンズ、6.イオンプレフィルタ、7.Q1 m/z値および分解能、8.イオンエネルギー、9.出射レンズ、10集束レンズ、11.イオンプレフィルタ、12.衝突エネルギー、13.衝突ガス;品質/同一性、圧力/流量、14.衝突セル出射電位、15集束レンズ、16.イオンプレフィルタ、17.Q3 m/z値および分解能、18.イオンエネルギー、19.出射レンズ、20.検出器の設定/電圧。さらなるパラメータは、記載された順序で最適化されてもよい。しかしながら、他の順序も可能である。例えば、1a~1dの予備値が使用されて、2~19を最適化し得る。20は、分析物非固有であり得る。デクラスタリング電位(DP)は、イオンが一緒にクラスタリングするのを防ぐように構成された質量分析装置にイオンが入るオリフィスに印加される電圧であり得る。質量分析装置の入口には、入射電位(EP)が印加される。衝突エネルギー(CE)は、イオンが第2の四重極Q2に入るときの加速の速度を指し得る。衝突エネルギーが高いほど、断片化は大きくなる。衝突セル電位(CXP)は、第2の四重極Q2から第3の四重極Q3にイオンを集束および加速するために印加され得る。イオン噴霧電圧(IS)は、試料がイオン化されるイオン噴霧針の先端に印加される電圧を指す。
【0036】
本方法は、特に分析物検出窓および内部標準検出窓に加えて、複数のパラメータを最適化することを含み得る。複数のパラメータの最適化は、最適化手順にしたい得る。最適化手順は、以下のステップ:
i)少なくとも1つの分析物試料を使用して質量分析装置の第1の四重極を質量走査モードで作動させることによって、分析物の親イオンの初期質量電荷比パラメータを決定するステップ、
ii)分析物試料を使用し、親イオンの最終的な質量電荷比パラメータを決定するために親イオンの質量電荷比の決定を繰り返すことによって、デクラスタリング電位を最適化するステップ、
iii)分析物試料を使用して質量分析装置の第3の四重極を質量走査モードで作動させることによって、プロダクトイオンについての初期質量電荷比パラメータを決定するステップ、
iv)分析物試料を使用してプロダクトイオンについての衝突エネルギーを最適化するステップ、
v)分析物試料を使用してプロダクトイオンについてのセル出射電位を最適化するステップ、
vi)ステップiii)を繰り返し、それによってプロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータを決定するステップ、
vii)ステップa)を実行することによって、親イオンの決定された最終的な質量電荷比パラメータおよびプロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータを最適化するステップであって、親イオンの最終的な質量電荷比パラメータが、小数点第2位以下を有する親イオンの理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された親イオンの質量電荷比値に設定され、プロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータが、小数点第2位以下を有するプロダクトイオンのそれぞれの理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定されたプロダクトイオンのそれぞれの質量電荷比値に設定される、最終的な質量電荷比パラメータを最適化するステップ、
viii)ステップb)を実行することによって、内部標準物質の親イオンおよびプロダクトイオンの初期質量電荷比パラメータを最適化するステップであって、内部標準物質の親イオンの初期質量電荷比パラメータが、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する質量電荷比値に設定され、内部標準物質のプロダクトイオンの初期質量電荷比パラメータが、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する質量電荷比値に設定される、初期質量電荷比パラメータを最適化するステップ、
ix)内部標準物質のプロダクトイオンのためのデクラスタリング電位、衝突エネルギー、およびセル出射電位のうちの1つまたは複数を、分析物の初期プロダクトイオンのための衝突エネルギー、および分析物のプロダクトイオンのためのセル出射電位にそれぞれ調和させるステップ
を含み得る。
【0037】
ステップi)は省略されてもよく、理論値が使用されてもよい。あるいは、ステップi)は、ステップii)に必要であるため、最適化が適切に機能しているかどうかを決定するために実行されてもよい。他の全てのパラメータについては、デフォルト値が使用されてもよい。上記で概説したような方法ステップを実行することにより、他の全てのパラメータが直接的または間接的に最適化され得る。
【0038】
「質量電荷比パラメータ」という用語は、検出窓、特に中央の質量電荷比値を指し得る。
【0039】
本発明のさらなる態様では、定量的多重反応監視のための方法が開示される。本方法は、本発明にかかる、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法によって最適化された少なくとも1つのパラメータ設定を使用して、単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置で少なくとも1つの定量的アッセイを実行することを含む。したがって、定義および実施形態に関して、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法に関して概説された定義および実施形態が参照される。
【0040】
さらなる態様では、質量分析装置が開示される。質量分析装置は、本発明にかかる、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または本発明にかかる定量的多重反応監視のための方法を実行するように構成された少なくとも1つの制御ユニットを備える。したがって、定義および実施形態に関して、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法に関して概説された定義および実施形態が参照される。
【0041】
さらに本明細書で使用される場合、「制御ユニット」という用語は、一般に、好ましくは少なくとも1つのデータ処理装置を使用することによって、より好ましくは少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、上述した方法ステップを実行するように適合された任意の装置を指す。したがって、例として、少なくとも1つの制御ユニットは、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理装置を備え得る。制御ユニットは、指定された動作のうちの1つまたは複数を実行するための1つまたは複数のハードウェア要素を提供してもよく、および/または指定された動作のうちの1つまたは複数を実行するために実行されるソフトウェアを1つまたは複数のプロセッサに提供してもよい。
【0042】
質量分析装置は、多重反応監視用に構成された少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析装置を備え得る。質量分析装置、特に制御ユニットは、少なくとも1つのパラメータ設定、特に初期パラメータ設定および/または最適化されたパラメータ設定を記憶するように構成された少なくとも1つのデータベースを備え得る。質量分析装置は、少なくとも1つの評価装置をさらに備えてもよく、評価装置は、測定信号を評価し、それによって少なくとも1つの測定値、特に濃度を決定するように構成されている。評価装置は、制御ユニットの一部であってもよく、または別個の装置であってもよい。
【0043】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つまたは2つ以上の実施形態において、本発明にかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムがさらに開示および提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読データキャリア」および「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令が記憶されたハードウェア記憶媒体などの非一時的データ記憶手段を指し得る。コンピュータ可読データキャリアまたは記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であり得るか、またはそれを含み得る。
【0045】
したがって、具体的には、上述したような方法ステップの1つ、2つ以上、または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行され得る。
【0046】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つまたは2つ以上の実施形態において、本発明にかかる方法を実行するために、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品が本明細書にさらに開示および提案される。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。
【0047】
本明細書にさらに開示および提案されるのは、コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークにロードした後、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは2つ以上にかかる方法を実行し得るデータ構造が記憶されたデータキャリアである。
【0048】
本明細書にさらに開示および提案されるのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つまたは2つ以上にかかる方法を実行するために、機械可読キャリアに記憶されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリアおよび/またはコンピュータ可読記憶媒体上に存在し得る。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0049】
最後に、本明細書に開示および提案されるのは、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは2つ以上にかかる方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0050】
本発明のコンピュータ実装態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたは複数にかかる方法のうちの1つまたは複数の方法ステップまたは全ての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。一般に、これらの方法ステップは、試料の提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含み得る。
【0051】
具体的には、本明細書において、以下:
- プロセッサが、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造、
- プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータプログラム、
- コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- プログラム手段がコンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に記憶された、先行する実施形態にかかるプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶部および/または作業記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
- コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体上に記憶され得、または記憶される、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品
がさらに開示される。
【0052】
要約すると、さらに可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態が想定され得る。
【0053】
実施形態1 単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法であって、
a)質量分析装置を用いて目的の分析物を検出するための少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップであって、分析物検出窓が、分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、分析物の中心質量電荷比値が、小数点第2位以下を有する目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップと、
b)質量分析装置を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、内部標準検出窓が、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、内部標準物質の中心質量電荷比値が、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップと
を含む、方法。
【0054】
実施形態2 目的の分析物の理論上の質量電荷比値が、小数点第2位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値が、小数点第2位を有し、目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値が、小数点第2位を有する、先行する実施形態に記載の方法。
【0055】
実施形態3 目的の分析物の理論上の質量電荷比値が、少なくとも小数点第3位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値が、少なくとも小数点第3位を有し、目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値が、少なくとも小数点第3位を有する、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
実施形態4 内部標準物質が、目的の分析物と構造的に類似した化合物である、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
実施形態5 内部標準物質が、分析物の同位体標識バージョンである、先行する実施形態に記載の方法。
【0058】
実施形態6 予め定義された幅が0.7amuである、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
実施形態7 質量分析装置が、多重反応監視用に構成されている、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
実施形態8 質量分析装置が、3つの四重極を備える三連四重極質量分析装置を備える、先行する実施形態に記載の方法。
【0061】
実施形態9 方法が、三連四重極質量分析装置の第1の四重極Q1および/または第3の四重極Q3のそれぞれについて分析物検出窓および内部標準検出窓を決定することを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0062】
実施形態10 方法が、パラメータ設定の少なくとも1つのさらなるパラメータを最適化することを含み、内部標準物質の検出のためのさらなるパラメータが、分析物試料を使用して決定された分析物の検出のためのさらなるパラメータに調和される、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
実施形態11 さらなるパラメータが、イオン源ガス、噴霧ガス、プローブ位置、イオン噴霧電圧、乾燥ガス、デクラスタリング電位、カーテンガスの圧力または流れ、入射電位、集束レンズ、イオンプレフィルタ、Q1 m/z値および分解能、イオンエネルギー、出射レンズ、衝突エネルギー、衝突ガス、衝突セル出射電位、Q3 m/z値および分解能、検出器設定/電圧からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータである、先行する実施形態に記載の方法。
【0064】
実施形態12 方法が、複数のパラメータを最適化することを含み、複数のパラメータを最適化することが、最適化手順にしたがい、最適化手順が、
i)少なくとも1つの分析物試料を使用して質量分析装置の第1の四重極を質量走査モードで作動させることによって、分析物の親イオンの初期質量電荷比パラメータを決定するステップと、
ii)分析物試料を使用し、親イオンの最終的な質量電荷比パラメータを決定するために親イオンの質量電荷比の決定を繰り返すことによって、デクラスタリング電位を最適化するステップと、
iii)分析物試料を使用して質量分析装置の第3の四重極を質量走査モードで作動させることによって、プロダクトイオンについての初期質量電荷比パラメータを決定するステップと、
iv)分析物試料を使用してプロダクトイオンについての衝突エネルギーを最適化するステップと、
v)分析物試料を使用してプロダクトイオンについてのセル出射電位を最適化するステップと、
vi)ステップiii)を繰り返し、それによってプロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータを決定するステップと、
vii)ステップa)を実行することによって、親イオンの決定された最終的な質量電荷比パラメータおよびプロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータを最適化するステップであって、親イオンの最終的な質量電荷比パラメータが、小数点第2位以下を有する親イオンの理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された親イオンの質量電荷比値に設定され、プロダクトイオンについての最終的な質量電荷比パラメータが、小数点第2位以下を有するプロダクトイオンのそれぞれの理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定されたプロダクトイオンのそれぞれの質量電荷比値に設定される、最終的な質量電荷比パラメータを最適化するステップと、
viii)ステップb)を実行することによって、内部標準物質の親イオンおよびプロダクトイオンの初期質量電荷比パラメータを最適化するステップであって、内部標準物質の親イオンの初期質量電荷比パラメータが、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する質量電荷比値に設定され、内部標準物質のプロダクトイオンの初期質量電荷比パラメータが、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する質量電荷比値に設定される、初期質量電荷比パラメータを最適化するステップと、
ix)質量分析装置を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、内部標準検出窓が、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、内部標準物質の中心質量電荷比値が、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップと、
x)内部標準物質のプロダクトイオンについてのデクラスタリング電位、衝突エネルギー、およびセル出射電位のうちの1つまたは複数を、分析物のプロダクトイオンについての衝突エネルギー、および分析物のプロダクトイオンについてのセル出射電位にそれぞれ調和させるステップと
を含む、先行する実施形態のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
実施形態13 定量的多重反応監視のための方法であって、先行する実施形態のいずれか一項に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法によって最適化された少なくとも1つのパラメータ設定を使用して、単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置に対して少なくとも1つの定量的アッセイを実行することを含む、方法。
【0066】
実施形態14 質量分析装置であって、実施形態1から12に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または実施形態13に記載の定量的多重反応監視のための方法を実行するように構成された少なくとも1つの制御ユニットを備える、質量分析装置。
【0067】
実施形態15 命令を含むコンピュータプログラムであって、命令が、プログラムが先行する実施形態に記載の質量分析装置の制御ユニットによって実行されると、制御ユニットに、実施形態1から12に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または実施形態13に記載の定量的多重反応監視のための方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【0068】
実施形態16 命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、プログラムが先行する実施形態のいずれか一項に記載の質量分析装置の制御ユニットによって実行されると、制御ユニットに、実施形態1から12に記載の、少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法および/または実施形態13に記載の定量的多重反応監視のための方法を実行させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【図面の簡単な説明】
【0069】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。ここで、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方式で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。ここで、これらの図の同一の参照符号は、同一または機能的に匹敵する要素を指す。
【0070】
図では以下のとおりである。
【0071】
図1】少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法の実施形態を示している。
図2】本発明にかかる質量分析装置の実施形態を示している。
図3】小数点第1位対第2位を使用する理論的影響である。
図4A】小数点第1位対第3位についての実験データを示している。
図4B】小数点第1位対第3位についての実験データを示している。
図4C】小数点第1位対第3位についての実験データを示している。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
図1は、単位分解能で動作する少なくとも1つの質量分析装置110の少なくとも1つのパラメータ設定を最適化するための方法a、特にコンピュータ実装方法の実施形態のフローチャートを示している。
【0073】
本発明にかかる質量分析装置110の実施形態が図2に示されている。質量分析装置110は、質量電荷比(m/z)に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された分析器であり得る。
【0074】
質量分析装置110は、少なくとも1つの四重極分析器112であり得るか、またはそれを備え得る。四重極質量分析器112は、質量フィルタとして少なくとも1つの四重極を備える少なくとも1つの質量分析器であるか、またはそれを備える。質量フィルタは、質量電荷比m/zにしたがって質量フィルタに注入されるイオンを選択するように構成され得る。質量フィルタは、2対の電極を備える。電極は、棒状であってもよく、特に円柱状であってもよい。理想的な場合、電極は、双曲線であってもよい。電極は、同一に設計されてもよい。電極は、共通の軸、例えばz軸に沿って平行に延在するように配置されてもよい。四重極質量分析器112は、質量フィルタの2対の電極間に少なくとも1つの直流(DC)電圧および少なくとも1つの交流(AC)電圧を印加するように構成された少なくとも1つの電源回路を備え得る。電源回路は、各対向する電極対を同一の電位に保持するように構成され得る。電源回路は、一定の質量電荷比m/z内のイオンについてのみ安定した軌道が可能であるように、電極対の電荷の符号を周期的に変化させるように構成され得る。質量フィルタにおけるイオンの軌道は、マシュー微分方程式によって記述され得る。異なるm/z値のイオンを測定するために、異なるm/z値を有するイオンが検出器114に伝達され得るように、DC電圧およびAC電圧が時間につれて変更されてもよい。
【0075】
質量分析装置110は、多重反応監視用に構成され得る。四重極質量分析器112は、複数の四重極を備え得る。質量分析装置110は、図2のQ1、Q2、Q3で示される3つの四重極を備える三連四重極質量分析装置を備え得る。
【0076】
質量分析装置110は、少なくとも1つのイオン化源116を備え得る。イオン化源116は、例えば中性ガス分子からイオンを生成するように構成され得る。イオン化源116は、少なくとも1つの電子衝撃(EI)源または少なくとも1つの化学イオン化(CI)源などの少なくとも1つの気相イオン化源、少なくとも1つのプラズマ脱離(PDMS)源、少なくとも1つの高速原子衝撃(FAB)源、少なくとも1つの二次イオン質量分析(SIMS)源、少なくとも1つのレーザ脱離(LDMS)源、および少なくとも1つのマトリックス支援レーザ脱離(MALDI)源などの少なくとも1つの脱離イオン化源、少なくとも1つのサーモスプレー(TSP)源、少なくとも1つの大気圧化学イオン化(APCI)源、少なくとも1つのエレクトロスプレー(ESI)源、および少なくとも1つの大気圧イオン化(API)源などの少なくとも1つの噴霧イオン化源からなる群から選択される少なくとも1つの源であり得るか、またはそれを含み得る。
【0077】
イオンは、カーテンプレート118およびオリフィスプレート120において質量分析装置110に入る。質量分析装置110は、第1の真空段階に四重極イオンガイドを備えてもよい。その後、イオンは、開口(IQ0)を通過し、追加の四重極イオンガイド(Q0)および追加の開口(IQ1、またはST1)を有する第2の真空段階に到達する。第1の四重極Q1では、親イオンとも呼ばれる前駆イオンが単離され得る。前駆イオンは、第1の四重極Q1によって予め選択され得る目的のイオンであり得る。第2の四重極Q2、特に第2の四重極Q2の衝突セル内で、前駆イオンは、フラグメントイオンまたはプロダクトイオンとも呼ばれる娘イオンに断片化され得る。第3の四重極Q3は、前記フラグメントイオンをフィルタリングおよび/または選択するために使用され得る。Q2四重極は、中間レンズIQ2(またはST2)およびIQ3(またはST3)によって第1の四重極Q1および第3の四重極Q3から分離される。フラグメントイオンは、出射レンズ122を通過し、検出器114に衝突し得る。検出器114は、到来するイオンを検出するように構成され得る。検出器114は、荷電粒子を検出するように構成され得る。検出器114は、少なくとも1つの電子増倍管であり得るか、またはそれを備え得る。
【0078】
質量分析装置110は、図2は示されていない液体クロマトグラフィ質量分析装置であり得るか、またはそれを備え得る。質量分析装置110は、液体クロマトグラフとも呼ばれる少なくとも1つの液体クロマトグラフィ装置に接続されてもよく、および/または少なくとも1つの液体クロマトグラフィ装置を備えてもよい。液体クロマトグラフは、質量分析装置110のための試料調製に使用されてもよい。少なくとも1つのガスクロマトグラフなど、試料調製の他の実施形態が可能であり得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置であり得るか、あるいはこれらを備え得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、液体クロマトグラフィ(LC)装置と、この場合には質量フィルタである質量分析(MS)装置とを備え得て、LC装置および質量フィルタは、少なくとも1つのインターフェースを介して連結される。LC装置とMS装置とを連結するインターフェースは、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成されたイオン化源116を備え得る。インターフェースは、イオン化源116と質量フィルタとの間に配置された少なくとも1つのイオン移動度モジュールをさらに備えてもよい。例えば、イオン移動度モジュールは、高電界非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)モジュールであり得る。
【0079】
質量分析装置110は、単位質量分解能とも呼ばれる単位分解能で動作するように構成されている。質量分析装置110は、1つの質量単位だけ異なる2つのイオンを分離するように構成されている。単位分解能は、±0.1から±0.4amu、好ましくは±0.2から±0.35の範囲であり得る。具体的には、質量分析装置110は、約±0.35amuの質量分解能を有し得る。具体的には、質量分析装置110は、いわゆる低分解能質量分析装置であってもよい。質量スケールの最適化のための既知の低分解能質量分析装置では、0.1~0.2amuの質量軸精度を有する単位質量分解能、例えば±0.35amuが一般的な設定であるため、イオン種の質量電荷比には小数点第1位が使用される。実験の偏りおよび誤差がm/z比に強く影響するため、適用することができない既知の装置および方法について、より正確な設定が考慮される。以下に詳細に概説されるように、本出願は、小数点第2位以下を使用することを提案する。m/z比に小数点第2位以下を使用することは、信号強度に有意差と、ピーク面積比(分析物/内部標準)についての改善された精度をもたらすことが分かった。特に、実際の面積比は変動の影響を受けにくく、これにより改善された較正および/または堅牢性および安定性をもたらす。したがって、この方法的特徴を適用することにより、較正間隔が延長され得る。
【0080】
パラメータ設定は、質量分析装置110によって実行される少なくとも1つのアッセイを定義するパラメータの値および/または範囲を含み得る。アッセイは、定量的アッセイであり得る。例えば、パラメータ設定は、質量スケール、タンデムMSのMRM遷移、セル出射電位、MS分解能、ソースガス流量/圧力、温度ソースガス温度、イオンソースガス、カーテンガス、イオン噴霧電圧、温度、デクラスタリング電位、入射電位、集束レンズ、プレフィルタ、イオンエネルギー、衝突エネルギー、衝突ガスなどのパラメータのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0081】
パラメータ設定を最適化することは、少なくとも1つの最適化問題を解くプロセスを含み得る。最適化することは、アッセイを定義するパラメータ設定の少なくとも1つのパラメータを評価および/または調整および/または選択することを含み得る。最適化することは、いくつかの基準、例えば測定されたピークの最小強度損失などに関して最良のパラメータ値を選択することを含み得る。最適化することは、最大化および/または最小化などの極値を決定することを含み得る。最適化することは、最も堅牢なパラメータ設定、例えばグラフのプラトーを最適として定義することを含み得る。具体的には、本方法は、分析物検出窓および内部標準検出窓、特にそれらの中心質量電荷比値を最適化することを含み得る。
【0082】
図1に示すように、本方法は、例として、所与の順序で実行され得る以下のステップ:
a)(参照符号124)質量分析装置110を用いて目的の分析物を検出するための少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップであって、分析物検出窓が、分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、分析物の中心質量電荷比値が、小数点第2位以下を有する目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの分析物検出窓を決定するステップと、
b)(参照符号126)質量分析装置110を用いて内部標準物質を検出するための少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップであって、内部標準検出窓が、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義され、内部標準物質の中心質量電荷比値が、目的の分析物に対して計算された小数点第2位以下を有する内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される、少なくとも1つの内部標準検出窓を決定するステップと
を含む。
【0083】
上記で概説したように、質量分析装置110は、3つの四重極を備え得る。分析物検出窓および内部標準検出窓の決定は、第1の四重極および第3の四重極に対して実行され得る。本方法は、三連四重極質量分析装置110の第1の四重極Q1および/または第3の四重極Q3のそれぞれについて分析物検出窓および内部標準検出窓を決定することを含み得る。
【0084】
質量分析装置110は、目的の分析物を含む少なくとも1つの試料を分析するように構成されてもよい。試料は、生物学的試料および/または内部標準試料などの任意の試験試料であり得る。試料は、1つまたは複数の目的の分析物を含み得る。例えば、試料は、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水液、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む生理学的液からなる群から選択されてもよい。試料は、それぞれの供給源から得られたものとして直接使用されてもよく、または前処理および/または試料調製ワークフローに供されてもよい。例えば、目的の分析物は、一般に、ビタミン、ビタミンD、依存性薬物、治療薬、ホルモン、および代謝産物であり得る。
【0085】
試料に関するさらなる詳細については、例えば、その全開示が参照により本明細書に含まれる欧州特許出願公開第3 425 369号明細書を参照されたい。他の目的の分析物も可能である。
【0086】
内部標準物質は、目的の分析物と構造的に類似した化合物であり得る。例えば、試料は、少なくとも1つの内部標準物質を添加することによって前処理されてもよい。前記試料は、既知の濃度の少なくとも1つの内部標準物質を含み得る。内部標準物質は、構造的に類似した化合物であり得るか、またはそれを含み得る。内部標準物質は、分析物の同位体標識バージョン、好ましくは目的の分析物のアイソトポログであり得る。構造的類似性が高いほど、性能は良好である。
【0087】
分析物検出窓は、目的の分析物の検出および/または測定が実行される質量電荷比の範囲またはフレームであってもよい。内部標準検出窓は、内部標準物質の検出および/または測定が実行される質量電荷比の範囲またはフレームである。分析物検出窓および/または内部標準検出窓のそれぞれは、例えば質量分析装置119の少なくとも1つのデータベースに記憶された初期設定を有し得る。それぞれの検出窓の設定は、検出窓の一方または双方の限界、特に質量電荷比下限および質量電荷比上限の値を含み得る。具体的には、設定は、検出窓の下限、すなわち検出が開始する質量電荷比値、および検出窓の上限、すなわち検出が停止する質量電荷比値の一方または双方を含み得る。分析物検出窓は、分析物の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義される。内部標準検出窓は、内部標準物質の中心質量電荷比値および予め定義された幅によって定義される。中心質量電荷比値は、質量電荷比の範囲またはフレームの中心であり得る。予め定義された幅は、0.7amu(すなわち、±0.35amu)であり得る。しかしながら、他の幅が可能であってもよい。
【0088】
分析物の中心質量電荷比値は、小数点第2位以下を有する目的の分析物の理論上の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値に設定される。内部標準物質の中心の質量電荷比値は、小数点第2位以下を有する目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または小数点第2位以下を有する高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値に設定される。例えば、分析物の理論上の質量電荷比は、計算された質量電荷比であってもよく、および/または少なくとも1つのデータベースから得られてもよい。追加的または代替的に、分析物の電荷比値は、実験値に設定されてもよい。高分解能質量分析測定は、高分解能質量分析装置を使用して実行される測定を含み得る。高分解能質量分析装置は、少なくとも小数点第4位を有するm/z測定を実行するように構成されてもよく、少なくとも小数点第3位は重要である。高分解能質量分析装置は、分子式の解明および/または分子の質量欠陥の測定のために構成され得る。既知の最適化手法とは対照的に、本発明にかかる方法は、実験的手法と理論的手法との組み合わせを提案する。例えば、分析物の質量電荷比値が計算されてもよく、または少なくとも高分解能MS測定によって決定されてもよく、内部標準物質についてのm/z値が分析物に対して計算されてもよい。電圧のような質量分析装置110のパラメータ設定の他のパラメータは、実験的に決定されてもよい。
【0089】
目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第2位以下を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第2位以下を有する。目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第2位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第2位を有する。目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値は、小数点第2位を有し得る。目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第3位を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第3位を有する。目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値は、小数点第3位を有し得る。目的の分析物の理論上の質量電荷比値は、小数点第4位以下を有し、および/または高分解能質量分析測定によって決定された目的の分析物の質量電荷比値は、小数点第4位以下を有する。目的の分析物に対して計算された内部標準物質の質量電荷比値および/または高分解能質量分析測定によって決定された内部標準物質の質量電荷比値は、小数点第4位以下を有し得る。
【0090】
低分解能MSシステムが使用されたが、驚くべきことに、m/z比に小数点第2位以下を使用すると、ピーク面積比(分析物/内部標準)が変動の影響を受けにくくなり、改善された較正安定性をもたらすことが分かった。さらに、信号強度の改善された精度が観察され得る。したがって、この方法的特徴を適用することにより、較正間隔が延長され得る。さらなる評価は、双方の分子種がそれらの質量欠陥において異なり、これが典型的には小数点第1位または第2位のm/z比の偏差を引き起こすことを示した。同位体標識された内部標準については、典型的には、小数点第2位の差が生じる。得られた信号強度は初期較正によってカバーされるが、変動する質量軸は、強度関数の非線形性に起因して変動するピーク面積比をもたらす。この偏差は、「未較正」の偏差、したがって試験結果の偏りを引き起こす。m/z比に小数点第2位以下を使用すると、分析物と内部標準との間の性能差を低減することができ、面積比の発生する偏りを大幅に低減することができる。
【0091】
図3は、小数点第1位(正方形)および小数点第2位(三角形)を使用した分析物(左側のプロット)ならびに小数点第1位(正方形)および小数点第2位(三角形)を使用した内部標準物質(右側のプロット)について、正確に調節された質量軸を使用した相対信号強度対m/zのシミュレーションの2つの上側プロットの結果を示している。小数点第2位の場合、相対信号強度の差は観察されることがない。小数点第1位のみの場合、アッセイ較正によってカバーされる偏差が見出され得る。図3は、下側の2つのプロットにおいて、小数点第1位(正方形)および小数点第2位(三角形)を使用した分析物(左側のプロット)ならびに小数点第1位(正方形)および小数点第2位(三角形)を使用した内部標準物質(右側のプロット)について、0.01amuの質量軸シフト後の強度対m/zのシミュレーションの結果を示している。やはり、小数点第2位の場合、差は観察されることがない。しかしながら、小数点第1位のみでは、より大きな偏差が観察され得る。変動する質量軸は、強度関数の非線形性に起因して変動するピーク面積比をもたらす。この偏差は、「未較正」の偏差、したがって試験結果の偏りを引き起こす。このシミュレーションは、m/z比に小数点第2位以下を使用すると、分析物と内部標準との間の性能差を低減することができ、面積比の発生する偏りを大幅に低減することができることを示している。
【0092】
図4Aから図4Cは、以下の分析物テストステロン(図4A)、シクロスポリンA(図4B)、フェニトイン(図4C)についての小数点第1位対第3位についての実験データを示している。各実験について、3試料×6反復×12ブロックを与え、t=0時間でアッセイ較正をともなって66時間以内に216試料の処理が実行された。各試料の既知の目標値に対する相対回収率を計算することを含む偏り分析が実行された。さらに、変動係数(cv)を計算することを含む精度分析が実行された。
【0093】
テストステロンについては、以下の実験結果が得られた。
【0094】
【表1】
【0095】
シクロスポリンAについて、以下の実験結果が得られた。
【0096】
【表2】
【0097】
フェニトインについては、以下の実験結果が得られた。
【0098】
【表3】
【0099】
したがって、各分析物について、MRM遷移に小数点第1位ではなく小数点第3位を使用することによって堅牢性が大幅に高められ得ることが示されている。偏りは、較正安定性を高め、最適化頻度を低減することが可能であるように、経時的に小さくなる。さらに、小数点第1位ではなく小数点第3位をMRM遷移に使用すると、精度が僅かに改善され得る。cvが小さいほど高い精度をもたらす。
【符号の説明】
【0100】
110 質量分析装置
112 四重極質量分析器
114 検出器
116 イオン化源
118 カーテンプレート
120 カーテンプレート118およびオリフィスプレート
122 出射レンズ
124 ステップa)
126 ステップb)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】