(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】SOFC燃料電池又はSOEC反応器をホットスタンバイモードで運転するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231219BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20231219BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20231219BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20231219BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231219BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20231219BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20231219BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20231219BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231219BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M8/04 H
C25B15/00 303
C25B9/70
C25B1/042
C25B9/00 A
H01M8/04746
H01M8/04955
H01M8/0656
H01M8/04537
H01M8/04701
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535573
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021085206
(87)【国際公開番号】W WO2022123015
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ラクロワ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・エカール
【テーマコード(参考)】
4K021
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC06
4K021DC01
4K021DC03
5H127AA07
5H127AC05
5H127CC17
5H127DA08
5H127DB55
5H127DC02
5H127DC09
5H127DC29
5H127DC56
5H127DC57
5H127DC58
5H127DC74
(57)【要約】
本発明は、固体酸化物型の基本的な電気化学セル(SOEC)のスタックを有する燃料電池(SOFC)又は高温電解若しくは共電解反応器(1)をホットスタンバイモードで運転するための方法であって、それぞれスタックから流出する若しくはスタックに印加される電流が欠如する所与の期間中、又は電池若しくは反応器の温度が上昇若しくは低下することが求められるとき、又はセル電圧が閾値未満に降下したとき、水素/水電極(H2/H2O)側の区画に、所与の期間中に一定の間隔で、安全ガスのパルスを供給し、前記区画に存在するガスを更新する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物型の基本的な電気化学セル(SOEC)のスタックを有する燃料電池(SOFC)又は高温共電解若しくは電解反応器(1)をホットスタンバイモードで運転するための方法であって、前記スタックに電流が出ていかない及び/若しくは印加されない所与の期間、又は前記電池若しくは前記反応器の温度が上昇若しくは低下されるべきであるとき、又はセル電圧が閾値未満に降下したとき、水素/水(H
2/H
2O)電極側の区画に、前記所与の期間に一定の間隔で、安全ガスのパルスを供給し、前記区画に存在する前記ガスを更新する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記安全ガスが、純水素(H
2)及び窒素で希釈された、好ましくは窒素で1体積%~5体積%に希釈された水素(H
2)の中から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安全ガスのパルスを供給する工程が、0.8V以下のセル電圧閾値に対して実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記安全ガスのパルスの流量が10NmL/分/cm
2未満、好ましくは5NmL/分/cm
2未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素/水(H
2/H
2O)電極側の前記区画に安全ガスのパルスが供給されないとき、前記ガスの移動による前記反応器又は前記燃料電池の冷却を制限するために、前記反応器又は前記燃料電池のすべてのガス供給ラインが閉じられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記安全ガスのパルシングと同時に、又は前記安全ガスのパルシングから時間的にずらして、酸素(O
2)電極側の前記区画が中性ガス又は大幅に酸素を欠乏させたガスを使用してパージされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記安全ガスのパルシングと同時に、その温度を維持するために前記スタックが加熱される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スタックと接触する加熱底板を使用して前記スタックが加熱される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の反応器(SOEC)を含む、パワーツーガスユニットと称されるユニットで実装される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物燃料電池(SOFC)の分野、及び水若しくはCO2の高温電解(HTE、又は「高温水蒸気電解(High Temperature Steam Electrolysis)」の略であるHTSE)、又は水蒸気と二酸化炭素CO2の共電解、更に固体酸化物電解セル(SOEC)の分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、生成停止中、すなわち出力電流若しくは入力電流がゼロの場合、及び/又はセルが切断された場合、利用可能な電気のレベルが低い場合、又は反応物へのアクセスが不十分な場合の、スタンバイと称されるモードでのSOFC燃料電池、又はユニットの電解若しくは共電解反応器の運転に関する。
【背景技術】
【0003】
水の電解は、以下の反応:H2O→H2+1/2O2に従い、電流を使用して水をガス状の二水素と二酸素に分解する電解反応である。
【0004】
水の電解を行うには、高温、典型的には600℃~1000℃で行うことが有利であり、これは、反応に必要なエネルギーの一部を電気よりも安価な熱によって供給することができ、これは反応の活性化が高温でより効果的であり、貴金属触媒を必要としないためである。高温電解を実装するために、SOEC(「固体酸化物電解質セル(Solid Oxide Electrolyte Cell)」)型の電解槽を使用することが公知であり、この電解槽は、それぞれ相互に重ね合わされた陽極/電解質/陰極の少なくとも3つの層からなる固体酸化物電解セルを有する基本的なユニットのスタック、並びにバイポーラプレート又はインターコネクターとも称される金属合金製相互接続プレートからなる。インターコネクターの機能は、電流の通過と各セル近傍のガス(HTE電解槽では注入された水蒸気、抽出された水素及び酸素、SOFCセルでは注入された空気及び水素、並びに抽出された水)の循環の両方を確保し、セルの陽極側と陰極側のそれぞれのガスが循環する区画である陽極区画と陰極区画を分離することである。高温水蒸気電解、HTEを行うために、H2O水蒸気が陰極区画に注入される。セルに印加される電流の影響により、水素電極(陰極)と電解質の間の界面で水蒸気の形態の水の分子の解離が起こり、この解離により二水素ガス、H2及び酸素イオンが生成される。二水素は、水素区画の出口で収集され除去される。酸素イオンO2-は電解質中を泳動し、電解質と酸素電極(陽極)の間の界面で二酸素に再結合する。
【0005】
図1に模式的に示されるように、各基本的な電解セル1は、一般に膜の形態の固体電解質3の両側に配置された陰極2及び陽極4によって形成される。2つの電極(陰極及び陽極)2、4は、多孔質材料からなる電子伝導体であり、電解質3は気密性の電子絶縁体及びイオン伝導体である。電解質は、特に陰イオン伝導体、より詳細にはO
2-イオンの陰イオン伝導体であってもよく、その場合、電解槽は陰イオン電解槽と称される。
【0006】
電気化学反応は、電子伝導体のそれぞれとイオン伝導体の間の界面で起こる。
【0007】
陰極2では、半反応は次の通りである:
2H2O+4e-→2H2+2O2-。
【0008】
陽極4では、半反応は次の通りである:
2O2-→O2+4e-。
【0009】
2つの電極2、4の間に介在する電解質3は、陽極4と陰極2の間に課される電位差によって生じる電界の影響を受けてO2-イオンが泳動する場所である。
【0010】
CO2の電解は、水の電解と同じ原理で作用するが、例外として陰極での半反応は次の通りになる:
2CO2+4e-→2CO+2O2-。
【0011】
電池モードでは、半反応は逆転するが、電解質中を泳動するO2-イオンが常に存在する。
【0012】
図1の括弧の間に示されるように、陰極入口の水蒸気は、水素、H
2を伴ってもよく、出口で生成され回収される水素は、水蒸気を伴ってもよい。同様に、破線で示されるように、空気等の排出ガスを任意に入口から注入して、生成された酸素を除去してもよい。排出ガスの注入は、熱調節器として作用する追加的な機能を有する。
【0013】
基本的な電解反応器は、陰極2、電解質3及び陽極4を備えた上述の基本的なセル、並びに電気、水力及び熱分配機能をもたらす2つの単極コネクターからなる。
【0014】
生成される水素及び酸素の流量を増加させるために、複数の基本的な電解セルを相互に積層し、一般にバイポーラ相互接続プレート又はインターコネクターと称される相互接続デバイスでそれらを分離することが公知である。アセンブリは、電解槽(電解反応器)の電気供給手段及びガス供給手段を担う2つの端部相互接続プレートの間に位置する。
【0015】
高温水電解槽(HTE)は、少なくとも1つの電解セルを含み、一般に複数の電解セルが相互に積層し、各基本的なセルは、電解質、陰極及び陽極によって形成され、電解質は陽極と陰極の間に介在する。
【0016】
1つ又は複数の電極と電気的に接触する流体及び電気相互接続デバイスは、一般に電流を導入及び収集する機能を提供し、ガスの循環のために1つ又は複数のチャンバー/区画を区切る。
【0017】
したがって、「陰極」区画チャンバーの機能は、電流と水蒸気を分配し、更に接触している陰極で水素を回収することである。
【0018】
「陽極」区画チャンバーの機能は、電流を分配し、更に接触している陽極で生成された酸素を、任意に排出ガスを利用して回収することである。
【0019】
図2は、先行技術による高温水蒸気電解槽の基本的なユニットの分解図である。このHTE電解槽は、インターコネクター5で交互にスタックされた固体酸化物(SOEC)型の複数の基本的な電解セルC1、C2等を有する。各セルC1、C2等は、その間に電解質3.1、3.2等が配置される陰極2.1、2.2等及び陽極4.1、4.2からなる。電解セルのアセンブリには、直列に電流が供給され、並列にガスが供給される。
【0020】
インターコネクター5は金属合金製の部品であり、インターコネクター5と隣接する陰極2.1の間の容積、及びインターコネクター5と隣接する陽極4.2の間の容積によってそれぞれ画定される陰極区画50と陽極区画51の間の分離を提供する。また、セル間のガスの分配も確保する。各基本的なユニットへの水蒸気の注入は、陰極区画50で行われる。陰極2.1、2.2等で生成された水素及び残留水蒸気の収集は、セルC1、C2等の下流の陰極区画50で、セルC1、C2等による水蒸気の解離後に行われる。陽極4.2で生成された酸素の収集は、セルC1、C2等の下流の陽極区画51で、セルC1、C2等による水蒸気の解離後に行われる。
【0021】
インターコネクター5は、隣接する電極、すなわち陽極4.2と陰極2.1の間の接触、好ましくは直接接触により、セルC1とC2の間の電流の通過を保証する。
【0022】
固体酸化物燃料電池、SOFCでは、使用されるセルC1、C2等、及びインターコネクター5は同じ構成要素であるが、動作は、逆の電流方向、並びに陰極区画となった区画に供給される空気又は酸素O2、並びに陽極区画となった区画に供給される燃料としての水素及び/又はメタンCH4を伴い、直前で説明されたHTE電解槽のものとは逆である。
【0023】
材料に関しては、固体電解質はガスに対して不透過性の材料であり、このことは500℃超で酸素原子がO2-イオンの形態で拡散することを可能にするはずである。
【0024】
SOEC/SOFC電池の各電極に関しては、一般に、水素/H2O側((共)電解モードでは陰極、SOFC電池モードでは陽極)のシリカ及びニッケルを主成分とする多孔質サーメットからなる。
【0025】
動作するには、水素/H2O側のサーメットがニッケルを含む必要があり、ニッケルは還元形態を含む。これは、この還元金属がH-O結合を切断する役割を果たすためである。しかし、O2-イオンは、電流がないときでも、空気/O2側のサーメットから電解質を通してH2側のサーメットに向かって泳動することができる。
【0026】
また、SOFC電池又はHTE/SOEC電解反応器若しくは共電解反応器が起動すると、後者に関してより詳細には、電気生成が断続的になる可能性がある場合、電流の欠如がしばしば生じ得る場合がある。
【0027】
SOFC燃料電池又はHTE/SOEC共電解若しくは電解反応器の温度をそのまま維持することを保証し、一方でそれらを損傷させる可能性のある過度に急速な熱サイクルを回避し、他方ではHTE/SOEC反応器のために電気が再び利用可能になるとすぐに素早く起動するか、又はセルのために生成された電流を利用するという点で選択肢を提供することが必要であることが証明されている。このような運転モードは、「スタンバイ」又は「ホットスタンバイ」モードという用語で公知である。
【0028】
電流がゼロの場合、上記のO2-イオンの流れは少ないが、典型的に700℃~800℃の作動温度に長時間保たれたセルでは、前記流れによるH2側のサーメットの酸化が徐々に確認される場合がある。
【0029】
SOEC反応器又はSOFC燃料電池をホットスタンバイモードで、すなわち、実質的に瞬時に起動するのに十分な高温に保ちながらこのような酸化のリスクを制限するために、最も普及している方法は、H2/H2O側のチャンバーを純水素又は不活性ガスで希釈された水素の連続的な流れでフラッシングする工程からなる。
【0030】
安全上及びコスト上の理由から、窒素中およそ5%のH2の安全ガスが好まれる傾向にある。安全ガスは、容器から提供されるか、又は専用の電解反応器及び/若しくは空気分離ユニット(ASU)によってその場で生成されてもよく、これにより特に高純度の酸素、窒素及び希ガスが生成される。
【0031】
しかし、この安全ガスによる連続的なフラッシングは、以下の点でコストがかかる:
- 実装される材料:安全ガスを再利用してループで循環させることができるが、生成される水素の汚染を回避するために、起動のたびにパージされる必要がある、
- 電気消費:ガスは、特にサーキュレーターを利用して移動させなければならない、
- 熱消費:安全ガスは、SOEC反応器又はSOFC燃料電池の高温チャンバーに到着する前に、これらを冷却しないように予熱されなければならない。
【0032】
安全ガスの流れの代替としての他の解決策が文献から公知である。
【0033】
例えば、特許US9,005,827B2は、ニッケルNiのNiOへの再酸化を防ぐために、各セルを700~1500mVの範囲のセル電圧で低電流を印加した状態で運転し続ける方法を記載している。
【0034】
特許JP2626395B2も、SOFC電池の動作時に部分的に酸化し得るサーメットを還元させ、それにより電池の寿命を延ばすために、SOFC電池を定期的に電解モードで使用することを提案している。
【0035】
対照的に、SOEC又は共電解反応器の動作を逆にする、すなわちSOFC燃料電池モードで運転し、水素H2、合成ガス(水素H2と一酸化炭素COの混合物)、又はメタンから電流を生成することも公知であり、これにより反応器の温度を維持することが可能になる。これには、外部電源から利用可能な電気がなくなるため、必ずしも回収可能ではない電流が生成されるという大きな欠点がある。更に、別の大きな欠点は、燃料、すなわちH2、合成ガス又はメタンが、このように反応器の温度を維持する目的だけのために消費される、すなわち燃焼され、別の可燃性生成物を得ることなく、現時点で必ずしも回収可能ではない電気だけが得られることである。
【0036】
特許出願US2003/0235752は、ニッケル等のゲッター材料の配置を提案しており、ゲッター材料は、サーメットの代わりに酸化されるように、水素区画に入る流れ中の微量の酸素と反応することができる。この解決策により、依然として存在する微量の酸素が添加された材料によって捕捉されるため、実質的に純粋な窒素(H2を含まない)によってフラッシングを行うことが可能になり得る。このようなフラッシングガス(純窒素)は、比較的安価であるという利点があるが、この実装は、電解質中へのO2-イオンの泳動、又はコンプレッサーの使用及び予熱の必要性によるフラッシングガスのエネルギー消費の問題を解決しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】米国特許第9,005,827号明細書
【特許文献2】特許第2626395号公報
【特許文献3】米国特許第2003/0235752号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
したがって、特に前述の欠点を克服するために、SOEC反応器又はSOFC燃料電池の酸化のリスクを制限しつつ、ホットスタンバイモードを維持するための既存の解決策を改善する必要性がある。
【0039】
本発明の目的は、この必要性を少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
これを行うために、本発明は、固体酸化物型の基本的な電気化学セル(SOEC)のスタックを有する燃料電池(SOFC)又は高温共電解若しくは電解反応器をホットスタンバイモードで運転するための方法であって、スタックに電流が出ていかない及び/若しくは印加されない所与の期間、又は電池若しくは反応器の温度が上昇若しくは低下されるべきであるとき、又はセル電圧が閾値未満に降下したとき、水素/水(H2/H2O)電極側の区画に、所与の期間に一定の間隔で、安全ガスのパルスを供給し、前記区画に存在するガスを更新する工程を含む、方法に関する。
【0041】
ここで、且つ本発明の文脈において、「ホットスタンバイモード」は、出口(セル)又は入口(SOEC反応器)における電流の欠如のために動作が停止している間、SOFC燃料電池又はSOEC電解反応器を通常の動作温度、典型的に700℃~800℃に保つことを意味すると理解される。
【0042】
安全ガスは、純水素(H2)及び窒素で希釈された、好ましくは窒素で1体積%~5体積%に希釈された水素(H2)の中から有利に選択される。窒素でおよそ3体積%に希釈された水素(H2)が最適である。
【0043】
有利には、スタックの電圧はモニターされる。セル電圧が0.8V又はそれより低い値を超えると、ガスのパルスが送達される。言い換えれば、安全ガスのパルスを供給する工程は、有利には0.8V以下のセル電圧閾値に対して実行される。
【0044】
また有利には、安全ガスのパルスの流量は、10NmL/分/cm2以下又は未満、好ましくは5NmL/分/cm2未満である。典型的には、流量は約6NmL/分/cm2である。
【0045】
パルスの流量、間隔及び持続時間は、設置の構成、及びセルスタックと測定及び制御ユニットの間の容積/距離の比に依存する。パルスのプロファイル(ゼロ流量と最大流量の間のランプ)は、電気化学システムに有害となり得る「ウォーターハンマー」の影響を制限するために、スタックのモデル及び供給ラインの構成によっても有利に変化させることができる。
【0046】
有利な変形によれば、水素/水(H2/H2O)電極側の区画に安全ガスのパルスが供給されないとき、ガスの移動による反応器又は燃料電池の冷却を制限するために、反応器又は燃料電池のすべてのガス供給ラインが閉じられる。
【0047】
有利な実施形態によれば、安全ガスのパルシングと同時に、又は安全ガスのパルシングから時間的にずらして、酸素(O2)電極側の区画が中性ガス又は大幅に酸素を欠乏させたガスを使用してパージされる。これにより、酸素分圧の低減によって電解質に向かって送られるO2-イオンの流れが低減するか、或いは排除される。
【0048】
有利な変形によれば、SOEC反応器又はSOFC燃料電池を収容するチャンバーを通る対流による熱損失を補うために、安全ガスのパルスと同時に、その温度を維持するためにスタックが加熱される。この変形によれば、スタックと接触する加熱底板を使用してスタックが加熱される。
【0049】
本発明による方法は、有利には、複数の反応器(SOEC)を含む、パワーツーガス(power-to-gas)ユニットと称されるユニットで実装され得る。
【0050】
その結果、本発明は本質的に、ホットスタンバイモードにある固体酸化物電気化学セルシステム(SOEC反応器又はSOFC燃料電池)において、H2/H2O区画/チャンバーに安全ガスを一定間隔で断続的に送達することからなる。
【0051】
このように、存在するガスを適切な安全ガスで定期的に更新することにより、水素電極のサーメットが酸化するリスクが排除される。
【0052】
更に、安全ガスの断続的な流れの使用は、反応器/SOFC燃料電池が配置されたチャンバー内のガスの対流による冷却を排除する効果を有する。
【0053】
ホットチャンバーによる熱損失は、チャンバー自体を加熱するか、又はセルのスタックを加熱することによって直接的に、特にスタックと接触する底板を加熱することによって補うことができる。
【0054】
安全ガスによるフラッシングの頻度及びその量(流量、持続時間)は、実装される電気化学システムの関数として設定する必要がある。より詳細には、以下の設定を行うことができる:
- 泳動しやすいO2-イオンの流れに直接影響するセルの種類及び製造業者に応じて:これは、セルを構成する層(H2及びO2側のサーメット、電解質)の様々な厚さに依存するため、変動する可能性がある、
- O2循環区画側のO2の分圧に応じて:区画の分圧が高いほど、O2側のサーメットが酸化されやすくなり、これによりO2サーメット/電解質界面でO2-イオンを作り出す駆動力が増加する、
- 安全ガスのリザーバー/サーキュレーターからの配管の容積:移動距離が長ければ長いほど、またこれが示す容積が大きければ大きいほど、電気化学セルのスタックの雰囲気を更新するためにガスを注入する必要性の程度が大きくなる、
-安全ガス中の還元剤、特に水素の濃度:このガスの還元効果が大きいほど、スタックの還元雰囲気を更新するのに必要な体積が小さくなる。
【0055】
最後に、本発明は多くの利点をもたらし、中でも以下に言及することができる:
- SOFC燃料電池又はSOEC反応器のサーメットの酸化を回避するのにちょうど十分な安全ガスを消費することにより、エネルギーコストを削減する、
- 安全ガスを供給するために必要なハードウェアへの負荷が最小限に抑えられるため、投資コストが低下するとともに寿命が長くなる。
【0056】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の図を参照した非限定的な例示によって与えられる、本発明の実装例の詳細な説明を読むことによってより明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】高温水電解槽の動作原理を示す概略図である。
【
図2】インターコネクターを含む高温水蒸気電解槽の一部の概略分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1及び
図2は、前文で既に述べられている。したがって、以下では記載されない。
【0059】
また、記載される電解槽又は燃料電池は、高温で動作する固体酸化物型(「固体酸化物電解質セル(Solid Oxide Electrolyte Cell)」の略であるSOEC、又は「固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)」の略であるSOFC)のものであることが明記される。結果として、電解セル又はスタックの構成部品(陽極/電解質/陰極)はすべてセラミックスである。電解槽(電解反応器)又はセルの高温動作温度は、典型的に600℃~1000℃である。典型的に、陰極支持(CSC)型の本発明によるSOEC電解セルの特徴は、下のTable 1(表1)で以下の通り示されるものであってもよい。
【0060】
【0061】
本発明によれば、SOEC反応器又はSOFC燃料電池がホットスタンバイモードにあるとき、安全ガスはH2/H2O区画/チャンバーに一定間隔で断続的に送達される。
【0062】
安全ガスは、有利には窒素でおよそ3体積%に希釈された水素(H2)である。
【0063】
有利には、スタックの電圧はモニターされる。セル電圧が0.8V又はそれより低い値を超えると、安全ガスのパルスが送達される。
【0064】
典型的に、安全ガスのパルスの流量は約6NmL/分/cm2である。
【0065】
本発明は、直前に記載された例に限定されず、示された例の特徴は、特に示されない変形の範囲内で一緒に組み合わされ得る。
【0066】
本発明の範囲から逸脱することなく、さらなる変形及び改良が想定されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 基本的な電解セル/電解反応器/共電解反応器
2 陰極
2.1 陰極
2.2 陰極
3 固体電解質
3.1 電解質
3.2 電解質
4 陽極
4.1 陽極
4.2 陽極
5 インターコネクター
50 陰極区画
51 陽極区画
C1 基本的な電解セル
C2 基本的な電解セル
【国際調査報告】