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  • 特表-がんを治療するための材料及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】がんを治療するための材料及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/407 20060101AFI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K31/407
A61P35/00
A61P13/02
A61K9/19
A61K47/34
A61K47/04
A61K47/38
A61K9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535631
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2021061499
(87)【国際公開番号】W WO2022123480
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/124,111
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516388333
【氏名又は名称】ウロゲン ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ハイオニディ,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】ティシポリ,オメル
(72)【発明者】
【氏名】コノーティ,マリナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA29
4C076BB17
4C076BB28
4C076CC17
4C076CC27
4C076DD09M
4C076DD09P
4C076DD21A
4C076EE23M
4C076EE23P
4C076EE31
4C076EE49P
4C076FF31
4C076FF35
4C076GG47
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB03
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA27
4C086MA44
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA81
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、全般に、局所治療用治療剤の持続放出のための医薬組成物、手段及び方法に関する。本発明は、特に、患部組織に適用される徐放性生体適合性ヒドロゲル中に凍結乾燥マイトマイシンCを包埋することによるがん疾患の局所治療のための手段及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと、
b)マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む治療有効量の凍結乾燥医薬組成物と、
を含む組成物。
【請求項2】
マイトマイシンCが、組成物の総重量に基づいて約0.05w/v.%~約1w/v.%の濃度で組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中のマイトマイシンCの飽和濃度が、組成物の総重量に基づいて約4mg/mL~約7mg/mLである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中のマイトマイシンCの飽和濃度が、組成物の総重量に基づいて約5.2mg/g~約7.0mg/gである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
マイトマイシンCと前記増量剤とが、約1:3~約1:20の比で前記凍結乾燥医薬組成物中に存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
マイトマイシンCと前記増量剤とが、約1:4~約1:15の比、好ましくは約1:6~約1:10の比で前記凍結乾燥医薬組成物中に存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
マイトマイシンCと前記増量剤とが、約1:8の比で前記凍結乾燥医薬組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記増量剤が尿素である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの逆熱ゲル化剤がポロキサマーを含み、好ましくは、前記ポロキサマーが、ポロキサマー407、ポロキサマー188、ポロキサマー338、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの逆熱ゲル化剤がポロキサマー407である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0.1%~約1.8%(w/w)のポリエチレングリコールを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリエチレングリコールが、PEG-400又はPEG-800、好ましくはPEG-400である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約0.1%~約1.8%(w/w)のPEG-400を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約0.01%~約1%(w/w)、好ましくは約0.01%~約0.5%(w/w)、より好ましくは約0.01%~約0.3%(w/w)の粘膜付着性ポリマーを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記粘膜付着性ポリマーが、セルロース、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、PVP、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、脂肪及び脂肪酸誘導体、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記粘膜付着性ポリマーがセルロース誘導体である、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記セルロース誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボマー、アルギネート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)からなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記粘膜付着性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含み、好ましくは前記粘膜付着性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約0.01%~約0.5%(w/w)、好ましくは約0.01%~約0.3%(w/w)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
体腔内への点滴注入又は局所投与に適合している、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
ヒドロゲルの形態である、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
約4℃~約12℃の温度で約500mPa・s未満の粘度を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
約4℃~約6℃の温度で約50mPa・s~約200mPa・sの粘度を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
約13℃~約15℃の温度で約500mPa・s未満の粘度を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
約18℃~約20℃の温度で約3000Pa・s~約10000Pa・sの粘度を有する、請求項1から25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、20μmより大きい微視粒子を1mlあたり5000個以下、好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり3000個以下、より好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり2000個以下有する、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び/又は1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンをさらに含み、これらの化合物が存在する場合、それぞれが組成物中に0.5% w/w未満の量で存在する、請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
がんの治療に使用するための、請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記がんが尿路がんであり、好ましくは前記尿路がんが膀胱がん又は上部尿路上皮がん(UTUC)である、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
がんを治療するための方法であって、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象に、体腔内に、又は局所的に投与する工程を含む方法。
【請求項32】
前記がんが尿路がん、好ましくは膀胱がん又は上部尿路上皮がん(UTUC)であり、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物が、それを必要とする対象の尿路内に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
投与する工程が、請求項1から30のいずれか一項に記載の組成物を尿路などの内部体腔に導入する工程、及び前記組成物を尿路などの内部体腔の内面の少なくとも一部に適用する工程を含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記内部体腔が尿路、好ましくは膀胱又は上部尿路である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
マイトマイシンCが、以下の条件下:
体温において;pH約4.5~約8.0の範囲において、及び約3~約24時間の時間範囲において約80%の率で、
前記尿路の内部体腔内に放出される工程をさらに含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、少なくとも4時間前記内部体腔内に留まる、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
成分(a)及び(b)を含むキットであって、
成分(a)が、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを含み、
成分(b)が、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む治療有効量の凍結乾燥医薬組成物を含む、
キット。
【請求項38】
成分(b)が成分(a)中で再構成される、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
再構成に要する時間が約15分以下である、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
マイトマイシンCと前記増量剤とが、約1:3~約1:20の比で前記凍結乾燥医薬組成物中に存在する、請求項37から39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
マイトマイシンCと前記増量剤とが、約1:4~約1:15の比、好ましくは約1:6~約1:10の比で前記凍結乾燥医薬組成物中に存在する、請求項37から40のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
マイトマイシンCと前記増量剤とが、約1:8の比で前記凍結乾燥医薬組成物中に存在する、請求項37から41のいずれか一項に記載のキット。
【請求項43】
前記増量剤が尿素である、請求項37から42のいずれか一項に記載のキット。
【請求項44】
前記少なくとも1つの逆熱ゲル化剤がポロキサマーを含み、好ましくは、前記ポロキサマーが、ポロキサマー407、ポロキサマー188、ポロキサマー338、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37から43のいずれか一項に記載のキット。
【請求項45】
前記少なくとも1つの逆熱ゲル化剤がポロキサマー407である、請求項37から44のいずれか一項に記載のキット。
【請求項46】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0.1%~約1.8%(w/w)のポリエチレングリコールを含む、請求項37から45のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
前記ポリエチレングリコールが、PEG-400又はPEG-800、好ましくはPEG-400である、請求項37から46のいずれか一項に記載のキット。
【請求項48】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約0.1%~約1.8%(w/w)のPEG-400を含む、請求項37から47のいずれか一項に記載のキット。
【請求項49】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約0.01%~約1%(w/w)、好ましくは約0.01%~約0.5%(w/w)、より好ましくは約0.01%~約0.3%(w/w)の粘膜付着性ポリマーを含む、請求項37から48のいずれか一項に記載のキット。
【請求項50】
前記粘膜付着性ポリマーが、セルロース、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、PVP、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、脂肪及び脂肪酸誘導体、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項37から49のいずれか一項に記載のキット。
【請求項51】
前記粘膜付着性ポリマーがセルロース誘導体である、請求項37から50のいずれか一項に記載のキット。
【請求項52】
前記セルロース誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボマー、アルギネート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)からなる群から選択される、請求項51に記載のキット。
【請求項54】
前記粘膜付着性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含み、好ましくは前記粘膜付着性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項37から53のいずれか一項に記載のキット。
【請求項55】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約0.01%~約0.5%(w/w)、好ましくは約0.01%~約0.3%(w/w)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項37から54のいずれか一項に記載のキット。
【請求項56】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約4℃~約12℃の温度で約500mPa・s未満、好ましくは約4℃~約12℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する、請求項37から55のいずれか一項に記載のキット。
【請求項57】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約4℃~約6℃の温度で約50mPa・s~約200mPa・sの粘度を有する、請求項37から56のいずれか一項に記載のキット。
【請求項58】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約13℃~約15℃の温度で約500mPa・s未満の粘度を有する、請求項37から57のいずれか一項に記載のキット。
【請求項59】
前記生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、約18℃~約20℃の温度で約3000Pa・s~約10000Pa・sの粘度を有する、請求項37から58のいずれか一項に記載のキット。
【請求項60】
成分(a)中での成分(b)の再構成時に、前記再構成された混合物が、1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び/又は1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンを、それぞれ再構成の8時間後に0.5% w/w未満、好ましくは再構成の24時間後に1.0% w/w未満の量で含む、請求項37から59のいずれか一項に記載のキット。
【請求項61】
成分(b)が成分(a)中で再構成される場合、前記再構成された混合物が、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、20μmより大きい微視粒子を1mlあたり5000個以下、好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり3000個以下、より好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり2000個以下有する、請求項37から60のいずれか一項に記載のキット。
【請求項62】
がん、好ましくは尿路がんの治療に使用するための、請求項37から61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
前記尿路がんが膀胱がん又は上部尿路上皮がん(UTUC)である、請求項62に記載の使用のためのキット。
【請求項64】
がんを治療する方法であって、請求項37から63のいずれか一項に記載のキットの成分(a)及び成分(b)を提供する工程、成分(a)中で成分(b)を再構成する工程、並びに前記成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を、それを必要とする対象に、体腔内に、又は局所的に投与する工程を含む方法。
【請求項65】
前記がんが尿路がん、好ましくは膀胱がん又は上部尿路上皮がん(UTUC)であり、前記成分(a)と成分(b)との再構成された混合物が、それを必要とする対象の尿路内に投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
投与する工程が、
前記成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を尿路などの内部体腔に導入する工程、及び前記成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を内部体腔の内面の少なくとも一部に適用する工程を含む、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項67】
前記内部体腔が尿路、好ましくは上部尿路又は膀胱である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
マイトマイシンCが、以下の条件下:
体温において;pH約4.5~約8.0の範囲において、及び約3~約24時間の時間範囲において約80%の率で、
尿路の前記内部体腔内に放出される工程をさらに含む、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記組成物が、少なくとも6時間前記内部体腔内に留まる、請求項66から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと組み合わせて含む、がんの治療に使用するための凍結乾燥医薬組成物。
【請求項71】
前記がんが尿路がん、好ましくは膀胱がん又は上部尿路上皮がん(UTUC)である、請求項70に記載の使用のための凍結乾燥医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、局所治療用治療剤の持続放出のための医薬組成物、手段及び方法に関する。本発明は、特に、患部組織に適用される徐放性生体適合性ヒドロゲル中に凍結乾燥マイトマイシンCを包埋することによるがん疾患の局所治療のための手段及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
i.疾患の局所(Topical/Local)治療
薬物が送達される方法は、その有効性に大きな影響を有し得る。多くの場合、薬物は、血液系に全身的に導入され、血液系はその後、全身の血流を介して薬物を送達する。このアクセスの形態は、広く全身治療と呼ばれる。他の場合には、より標的化された送達は、治療効果を標的臓器に集中させ、治療上の利益を提供し、副作用を回避することができる。いくつかの薬物は、最大の利益が得られる最適な濃度範囲を有し、この範囲より上又は下の濃度は毒性であり得るか、又は治療上の利益を全くもたらさない可能性がある。本発明の文脈において、特定の組織又は臓器に直接アクセスすることによってそれらに影響を及ぼす治療は、上記の全身治療とは対照的に、局所(topical or local)治療と呼ばれる。薬物の持続放出は、典型的には、ポリマーの外への拡散又は経時的なポリマーの希釈により、制御された速度で薬物を放出するポリマーを含み得る。薬物の局所投与は、薬物が組織に入る速度又は濃度及び薬物の薬物動態を変化させ得るので、したがって、正しく設計された材料は、薬物レベルを増加させるか又は薬物放出速度を制御することによって治療効果を最適化することができる。
【0003】
ii.局所投与される薬物
局所投与され得る薬物の中には、以下のファミリーに属する薬物がある:
1.抗新生物薬
2.化学療法剤
3.抗感染症剤(例えば、抗菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬)(
4.泌尿生殖器系薬物
5.抗炎症性製品
6.鎮痛薬
7.筋骨格系作用薬
8.血液及び造血臓器に作用する薬物(抗出血剤、抗血栓剤、抗貧血薬)
9.皮膚科用薬(抗真菌剤、防腐剤)
10.胃腸系(抗肥満、酸関連障害)
【0004】
腔特性の特定値は、これらの腔内の疾患の治療に適した局所薬の開発において慎重な考慮を必要とする。
【0005】
iii.化学療法-抗がん薬-マイトマイシンC
がん治療として使用される多くの化学療法(抗新生物)薬はDNAに結合し、合成阻害及び鎖切断をもたらす。いくつかの膀胱内点滴注入では、化学療法薬は約1mg/mlの用量濃度で1~2時間のセッションで投与されることが知られている。
【0006】
膀胱がんの治療の具体的事例では、治療有効性における重要なパラメータである化学療法薬による膀胱組織浸透は、化学療法薬の濃度と線形関係を示す(Gao X,Au JL,Badalament RA,Wientjes MG.Bladder tissue uptake of mitomycin C during intravesical therapy is linear with drug concentration in urine.Clin Cancer Res.1998 Jan;4(1):139-43)を参照されたい)。さらに、化学療法薬の浸透は、隣接する正常な尿路上皮よりも腫瘍組織において高い。Gaoらは、40mg/20mlのマイトマイシンC(MMC)を注入した場合、20mg/20mlと比較して、組織中2倍濃度のMMCを実証した:ヒト膀胱腫瘍は、正常膀胱組織よりも有意に高いMMC組織取り込みを有した。
【0007】
化学療法薬の抗腫瘍効果は、濃度及び曝露時間に依存する。Schmittgenら(Schmittgen TD,Wientjes MG,Badalament RA,Au JL.Pharmacodynamics of mitomycin C in cultured human bladder tumors.Cancer Res.1991 Aug 1;51(15):3849-56を参照されたい)は、TCC細胞培養及びヒト膀胱腫瘍組織培養の両方において、MMCへの曝露時間を短縮した場合、同様の細胞殺傷効果を得るためには、より高い濃度が必要であることを実証した。
【0008】
証明された結論は、より長い治療期間にわたって最適な薬物濃度(治療効果)を維持することが、治療有効性を向上させるであろうということである。
【0009】
iv.膀胱及び他の内腔の局所治療に必要な特性
膀胱などの内部体腔の疾患を治療するための1つのアプローチは、適切な組成物に取り込まれた治療剤の局所適用である。そのような組成物は、以下の特性の1つ又はそれ以上を必要とする:
・適切なレオロジー特性(粘度、チキソトロピー、G’、G")-内腔への材料の導入に必要
・付着性-薬物送達を向上させるため
・十分な柔軟性を提供するための機械的特性-治療中の内腔の体積及び形状の自然変化に従うため
・生体適合性
・組成物が完全に溶解/分解する前に内腔又は固形腫瘍内に留まる持続時間
・毒性が増加しない薬物のバイオアベイラビリティの増加
・適切な医薬品有効成分(API)-局所(topical/local)有効成分としての使用が公知の薬物から選択される医療用薬物又は薬物誘導体
・ヒドロゲルにおける薬物又はAPIの良好な負荷。特定の臨床プロトコルのために、ヒドロゲル内に混合された薬物又はAPIの量及び濃度は、所定のレベルに設定されなければならない。
・臓器組織又は内層に対する実際の薬物濃度が、各治療に関して混合物がそこにおいて最適となるような、制御された様式で薬物を放出するヒドロゲルの能力。薬物の放出プロファイル及び標的組織へのその吸着を決定するのは、正確には混合物の具体的組成である。例えば、特定の薬剤を所与の濃度で添加することにより、組成物の負荷容量の増加、又は内臓内層による吸収のより容易な向上が提供される。
・薬物バイアビリティ。ヒドロゲルは、治療を通して放出される量が最適な治療効果を有するように、ヒドロゲル内に混合される薬物又はAPIのバイアビリティ期間を減少させないように設計及び試験される。
【0010】
v.当分野で公知の表在性膀胱がん(SBC)治療の制限
SBCは、高再発型のがんである。再発を低下させるためには、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)の直後に単回膀胱内化学療法点滴注入で患者を治療することが必要であると考えられる。
【0011】
7つの無作為化試験(追跡調査の中央値が3.4年の患者1,476名)のメタ解析では、腫瘍切除(TUR)直後の1回の化学療法点滴注入が再発の相対リスクを40%低下させることが実証された(Sylvester RJ,Oosterlinck W,van der Meijden AP.A single immediate postoperative instillation of chemotherapy decreases the risk of recurrence in patients with stage Ta T1 bladder cancer:a meta-analysis of published results of randomized clinical trials.J Urol.2004 Jun;171(6 Pt 1):2186-90を参照されたい)。点滴注入のタイミングは重要である:全ての研究において、点滴注入は24時間以内に投与された。研究は、最初の点滴注入を24時間以内に行わなかった場合、再発のリスクが2倍増加したことを報告した(Kaasinen E,Rintala E,Hellstrom P,Viitanen J,Juusela H,Rajala P,Korhonen H,Liukkonen T;FinnBladder Group.Factors explaining recurrence in patients undergoing chemoimmunotherapy regimens for frequently recurring superficial bladder carcinoma.Eur Urol.2002 Aug;42(2):167-74を参照されたい)。
【0012】
切除及び最初の即時治療の後、患者は、腫瘍の進行及び再発のリスクによって層別化する必要がある:
・疾患の進行/再発のリスクが低い(30%)患者-さらなる点滴注入は必要ない。
・中リスク患者(40~50%)-通常、さらに6セッションのマイトマイシンC(MMC)化学療法の点滴注入を受ける。
・高リスク患者(20%)は、6回のバチルス・カルメット・ゲラン(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)膀胱内点滴注入で治療される。
【0013】
表在性膀胱がんに対する現在の標準的な局所化学療法治療(膀胱内点滴注入)の有効性は、化学療法濃度及びそれが排出されるまでの時間に対する制御がないため制限される。標準治療を2時間に延長しようとする試みにおいて、一部の医師は、膀胱の酸性度を低下させ、点滴注入前に尿量を減少させ、最小体積の生理食塩水に溶解した最大濃度の化学療法を点滴注入するように行動条件を指示する。
【0014】
本発明の1つの目的は、マイトマイシンC及び増量剤を含む凍結乾燥医薬組成物と、ヒドロゲル、より具体的には以下の特性を有する熱可逆性ヒドロゲルとを含む安定な組成物を提供することである:親水性である;均質な形態で十分に高い薬物濃度(治療閾値を超える)で臓器組織全体に薬物を良好に送達する;約5℃などの低温では液体であり、体温では半固体(流動しない)であり、容易に適用される;生体適合性である;治療剤の連続した持続放出を提供する;治療剤の放出速度が、薬剤の濃度及びヒドロゲルの分解/溶解速度によって決定される;並びにヒドロゲルが分解/溶解した後、身体自身の自然のプロセスによって身体から排出される。
【0015】
本発明のさらなる目的は、本発明の組成物及びキットを使用して、限定するものではないが、尿路がんなどのがんを治療する方法を提供することである。本発明の組成物又はキットの再構成された成分は、局所的(topically or locally)に適用され得る。局所投与は、身体空間(body space)又は体腔への投与を含み得る。局所投与には、腫瘍への投与又は腫瘍内への投与が含まれ得る。
【0016】
本発明のさらなる目的は、マイトマイシンCの、混合される本発明の熱可逆性ヒドロゲル中での迅速な再構成を提供し、したがって組成物又はキットの成分の再構成された混合物の調製を容易にすることである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、熱可逆性ヒドロゲルと、マイトマイシンC及び増量剤を含む凍結乾燥医薬組成物とを含む、増大した貯蔵安定性を有する組成物を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、熱可逆性ヒドロゲルと、マイトマイシンC及び増量剤を含む凍結乾燥医薬組成物とを含む、溶解度の増加、不溶性の可視粒子及び微視粒子の数の減少、及び負荷容量の増大を有する組成物を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、熱可逆性ヒドロゲルと、マイトマイシンC及び増量剤を含む凍結乾燥医薬組成物とを含む、組成物中の主な不純物の量が減少している組成物を提供することである。不純物の減少は、とりわけ、熱可逆性ヒドロゲル及び凍結乾燥マイトマイシンを含む組成物の貯蔵安定性の向上をもたらす。本発明の組成物のこの向上した安定性は、組成物を使用することができる、例えばそれを必要とする対象に投与又は適用することができる期間の延長を提供する。
【0020】
点滴注入を意図する場合、組成物が異なる温度にわたって特定の粘度プロファイルを示して、低粘度での点滴注入を可能にし、点滴注入後及びより高い温度で、腔からの組成物の流出を回避し、腔内での十分な滞留時間を可能にするために十分な高い粘度を可能にすることがさらに望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Gao X, Au JL, Badalament RA, Wientjes MG. Bladder tissue uptake of mitomycin C during intravesical therapy is linear with drug concentration in urine. Clin Cancer Res.1998 Jan;4(1):139-43
【非特許文献2】Schmittgen TD, Wientjes MG, Badalament RA, Au JL.Pharmacodynamics of mitomycin C in cultured human bladder tumors. Cancer Res.1991 Aug 1;51(15):3849-56
【非特許文献3】Sylvester RJ, Oosterlinck W, van der Meijden AP. A single immediate postoperative instillation of chemotherapy decreases the risk of recurrence in patients with stage Ta T1 bladder cancer:a meta-analysis of published results of randomized clinical trials. J Urol.2004 Jun;171(6 Pt 1):2186-90
【非特許文献4】Kaasinen E, Rintala E, Hellstrom P, Viitanen J, Juusela H, Rajala P, Korhonen H, Liukkonen T; FinnBladder Group. Factors explaining recurrence in patients undergoing chemoimmunotherapy regimens for frequently recurring superficial bladder carcinoma. Eur Urol.2002 Aug;42(2):167-74
【発明の概要】
【0022】
特許請求の範囲で定義される本発明は、上記の目的を満たすように設計されている。本発明は、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと、凍結乾燥医薬組成物とを組み合わせた、内腔に集中する疾患の局所治療に特に適した一連の系を含む。
【0023】
一態様では、本発明は、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む治療有効量の凍結乾燥医薬組成物とを含む組成物に関する。
【0024】
別の態様では、本発明は、成分(a)及び(b)を含むキットであって、成分(a)が、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを含み、成分(b)が、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む治療有効量の凍結乾燥医薬組成物を含むキットに関する。
【0025】
別の態様では、本発明は、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと組み合わせて含む、尿路がんなどのがんの治療に使用するための凍結乾燥医薬組成物に関する。
【0026】
別の態様では、本発明は、尿路がんなどのがんの治療に使用するための本発明の組成物に関する。
【0027】
別の態様では、本発明は、尿路がんなどのがんを治療する方法であって、本発明による組成物を尿路などの体腔に、又はそれを必要とする対象に局所的に投与する工程を含む方法に関する。
【0028】
別の態様では、本発明は、尿路がんなどのがんの治療に使用するための本発明のキットに関する。
【0029】
別の態様では、本発明は、尿路がんなどのがんを治療する方法であって、本発明によるキットの成分(a)及び成分(b)を提供する工程、成分(a)中で成分(b)を再構成する工程、並びに成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を尿路などの体腔に、又はそれを必要とする対象に局所的に投与する工程を含む方法に関する。
【0030】
いくつかの態様では、がんは、限定するものではないが、尿路、GI管、又は腸などの内部体腔内に存在する。
【0031】
他の態様では、本発明は、それを必要とする対象への本発明による組成物の局所投与、例えば限定するものではないが、固形腫瘍内への注射によって固形がんを治療する方法に関する。
【0032】
他の態様では、本発明は、局所投与、例えば限定するものではないが、固形腫瘍内への注射によって固形がんを治療する方法であって、本発明によるキットの成分(a)及び成分(b)を提供する工程、成分(a)中で成分(b)を再構成する工程、並びに成分(a)と成分(b)との再構成された混合物をそれを必要とする対象の固形腫瘍に局所的に投与する工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、一定の剪断応力に対する組成物G及びEの機械的抵抗を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明では、本発明の様々な態様について記載する。説明の目的のために、本発明の完全な理解を提供するために具体的な詳細が記載されている。本発明の本質的な性質に影響を及ぼすことのない、詳細が異なる本発明の他の実施形態が存在することは、当業者には明らかであると思われる。したがって、本発明は、本明細書に記載されたものによって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に示されたもののみによって限定され、適切な範囲は、前記特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ決定される。
【0035】
以下の定義は、本発明の文脈に関して提供される。
【0036】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、単数のみを指定するように明示的に述べられていない限り、単数と複数の両方を指定する。
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」及び「からなる(consisting of)」の両方を包含すると解釈されるべきであり、両方の意味は、本発明による実施形態を具体的に意図し、したがって個別に開示する。
【0037】
用語「約(about)」及び一般に範囲の使用は、用語「約(about)」によって修飾されるか否かにかかわらず、理解される数が本明細書に記載の正確な数に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱しない限り、引用された範囲によって包含される範囲を指すことが意図されることを意味する。本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈上である程度変化する。使用される文脈を考慮すると、当業者には明確でない用語の使用がある場合、「約」は、特定の用語又は値の最大±10%、例えば最大±5%を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「内腔」という用語は、例えば、限定するものではないが、口、脳、リンパ節、膀胱、腸、食道、直腸、肺、膣、胃、腎盂などの開口部を通してアクセス可能であるか、又は低侵襲手術、例えば胸膜、腹部、腹膜、骨盤などによってアクセス可能である体内の部分を表すために使用される。定義には、画像ガイド下腹腔鏡技術によってアクセス可能な、脂肪組織内の人工的に作製された又は拡大された腔、及び内臓、例えば腎臓、心臓、腸などの中の線維性カプセルが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、そのような治療を必要とする対象に薬物が投与されることに対して特定の薬理学的効果を提供する、対象における薬物投与量、組織濃度又は血漿濃度をそれぞれ意味する。便宜上、例示的な投薬量、薬物送達量、治療有効量及び治療レベルを、成人対象に関して以下に提供する。当業者は、特定の対象及び/又は状態/疾患を治療するために、必要に応じて標準的な慣行に従ってそのような量を調整することができる。
【0040】
本明細書で使用される「ゲル」又は「ヒドロゲル」という用語は、低温(例えば、約5℃)で液体であり、より高温(14℃超)で固化する、本発明で定義される生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを指す。上記のようなゲルは、インビボで固体である。「固体」及び「半固体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これは、固体又は半固体材料が液体ではなく、したがって流動することができない材料であることを意味する。
【0041】
「薬物」、「有効成分」、「医薬品有効成分」、「API」、及び「治療剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
マイトマイシンC及びMMCは、本明細書において互換的に使用される。
【0042】
本発明は、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと、マイトマイシンCの凍結乾燥医薬組成物とを含む組成物及びキットに関する。本明細書に列挙される全ての実施形態は、特に明記しない限り、方法及び治療における使用を含む本発明による組成物及びキットの両方を指すことが理解されよう。
【0043】
上記のように、本発明の一態様は、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む治療有効量の凍結乾燥医薬組成物とを含む組成物である。
【0044】
本発明のさらなる態様は、成分(a)及び(b)を含むキットであって、成分(a)が、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを含み、成分(b)が、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む治療有効量の凍結乾燥医薬組成物を含むキットである。
【0045】
本発明のさらなる態様は、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を、約15%~約35%(w/w)の少なくとも1つの逆熱ゲル化剤、約0.01%~約5%(w/w)の粘膜付着性ポリマー、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有する約0%~約2.5%(w/w)のポリエチレングリコール、及び残部水を含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルと組み合わせて含む、内部体腔がん、例えば尿路がんなどのがんの治療に使用するための、又は固形腫瘍に注射するための凍結乾燥医薬組成物である。
【0046】
したがって、本発明は、凍結乾燥マイトマイシンC(MMC)と混合された、持続放出特性を有する生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを提供する。このヒドロゲルは、カテーテル又は任意の他の手段を介して、限定するものではないが、尿路などの体腔に挿入することができる。このヒドロゲルは体腔内で固化し、予定された治療領域、例えば膀胱又は腎盂で薬物リザーバを形成する。ゲルからのMMCの拡散及び尿によるゲルの侵食は、薬物を組織に送達し、長期間の高い局所薬物濃度をもたらすが、全身曝露は低い。したがって、この系は、バイオアベイラビリティを高め、毒性を低減し、治療有効性を改善する。さらに、ヒドロゲルに有意な濃度のMMCを負荷し、ヒドロゲルを腫瘍にわたって実質的に直接長時間適用することにより、ヒドロゲルと密接に接触している非切除腫瘍を取り除くことができる。
【0047】
本発明は、全てのこれらの要件を満たすことができるヒドロゲル系の必要な特性を決定するために、治療される内腔の特性及び前記治療の具体的要件に基づくそのようなゲル組成物の設計を提供する。
【0048】
本発明はまた、ヒトにおける障害の治療及び/又は予防を意図した医薬品を製造するための新規な組成物及びキットの使用を含む。これらの医薬品は、投与手段と組み合わせることができ、その結果、組成物を最小限の侵襲様式で体腔に導入し、薬物への腔組織の長期かつ増強された曝露を提供することができ、したがって薬物の治療効果の改善及び組織損傷の減少に関して治療有効性を改善することができる。本発明のヒドロゲルは生体適合性であり、体液、例えば尿、漿液、リンパ液に溶解し、その後、身体から排出される。ヒドロゲルは腔を閉塞せず、生体体液は腔内を流動し、体積及び形状の自然な変化に適応する。
【0049】
マイトマイシンC(MMC)
ヒドロゲルから放出されたMMCへの標的組織の長期曝露の目的は、他の臓器への潜在的な全身有害作用を低減しながら、その標的組織の局所治療における薬物の有効性を高めることである。具体例として、ヒドロゲルから放出された抗がん薬MMCへのがん細胞の長期曝露の目的は、がん細胞を死滅させる薬物の有効性を高め、したがって、患者の身体の他の部分に対する化学療法の全身効果を低下させながら、がん腫瘍の再発率を潜在的に低下させることである。
【0050】
がんのタイプ及びその位置に応じて、例えば、限定された空間条件に起因して、MMCを含む生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの適用され得る量に関して制限が存在し得る。さらに、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを介して適用されるMMCをより高い投薬量で必要とするがんタイプが存在し得る。
【0051】
MMCは、組成物の総重量に基づいて広い範囲で本発明の組成物及びキット中に存在することができる。一実施形態では、MMCは、組成物の総重量に基づいて約0.05w/v.%~約1w/v.%の濃度で本発明の組成物中に存在する。別の実施形態では、MMCは、キットの成分(a)及び成分(b)の総重量に基づいて約0.05w/v.%~約1w/v.%の濃度で本発明のキット中に存在する。
【0052】
高投薬量のMMCが必要とされる場合、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に高濃度のMMCを提供することが実質的に必要とされる。したがって、ヒドロゲル内で向上した溶解効果を示す医薬組成物、すなわち、向上した飽和濃度及びゲル中のMMC濃度を効果的に増加させる可能性を有する組成物を開発する必要がある。
【0053】
一実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中のマイトマイシンCの飽和濃度は、組成物の総重量に基づいて約4mg/mL~約7mg/mLである。好ましくは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中のマイトマイシンCの飽和濃度は、組成物の総重量に基づいて約5.2mg/mL~約7mg/mLである。別の実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中のマイトマイシンCの飽和濃度は、本発明によるキットの再構成後の成分(a)及び成分(b)の総重量に基づいて、約4mg/mL~約7mg/mL、好ましくは約5.2mg/mL~約7mg/mLである。
【0054】
MMC:増量剤の比
好ましくは、有効成分(MMC)は凍結乾燥形態である。有効成分は、結晶形態及び/若しくは非晶質形態、又はそれらの任意の混合物を含む。
【0055】
一実施形態では、マイトマイシンCと増量剤とは、約1:3~約1:20、例えば約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:11、約1:12、約1:13、約1:14、約1:15、約1:16、約1:17、約1:18、約1:19又は約1:20の比で凍結乾燥医薬組成物中に存在する。好ましくは、マイトマイシンCと増量剤とは、約1:4~約1:15の比で凍結乾燥医薬組成物中に存在する。より好ましくは、マイトマイシンCと増量剤とは、約1:6~約1:10、例えば約1:7~約1:9の比で凍結乾燥医薬組成物中に存在する。さらにより好ましくは、マイトマイシンCと増量剤とは、約1:8の比で凍結乾燥医薬組成物中に存在する。MMCと増量剤との比への言及は重量比を指すことが理解されよう。
【0056】
本発明の組成物及びキットは、マイトマイシンC及び尿素含有増量剤を含む凍結乾燥医薬組成物を含む。好ましくは、増量剤は尿素である。
【0057】
一実施形態では、MMCに加えてさらなるAPIが本発明の組成物又はキット中に存在し得る。
【0058】
局所投与することができ、本発明の組成物又はキットにさらに含まれ得る薬物の中には、下記のような以下のファミリーに属する薬物がある、
1.抗新生物薬
2.化学療法剤
3.抗感染症剤(例えば、抗菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬)
4.抗炎症性製品
5.血液及び造血臓器に作用する薬物(抗出血剤、抗血栓剤、抗貧血薬)
6.抗がん薬
7.麻酔薬
8.免疫療法薬
9.ワクチン
10.生細胞
11.生存生物
12.創傷治癒を促進する増殖因子及び物質
13.免疫調節剤
【0059】
本発明は、長期間にわたって制御された様式でMMCを単独で、又は他の有効成分(API)と組み合わせて放出する生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルを提供する。そのような期間は、最大30時間続き得る。
【0060】
さらに、本発明の組成物は、MMCの特定の放出プロファイルを提供し得る。拘束力のない例として、有効成分の平均放出率は、3時間で80%~24時間で80%の間で変動し得る。好ましくは、MMCの80%が約3~12時間で放出される。さらにより好ましくは、MMCの80%が約4~8時間で放出される。
【0061】
基準として、化学療法薬は、患者が忍容可能な最大濃度レベルで投与される。化学療法薬への曝露時間を増加させることによって、有効性のさらなる改善を得ることができる。本発明は、臓器全体にわたる活性薬物の滞留時間並びに組織曝露を増加させることによってこれを達成するように設計される。
【0062】
APIのより長い曝露時間は明確な利点を有し、(1又は複数の)有効成分の制御放出を有する医薬品の使用におけるAPIへの長期曝露は、改善された治療が達成され得る時間枠を実質的に延長可能にすることが期待される。MMCの制御放出を有する本発明の医薬形態の使用は、実質的により一定の薬物レベルを達成し、レベルピークの発生を回避し、したがって、例えば治療有効性を改善し、望ましくない副作用の頻度及び強度を低減することが期待される。
【0063】
さらに、本発明の組成物及びキットの使用は、投与頻度の低減を可能にし、したがって、患者による改善された受容及びコンプライアンスをもたらす。
【0064】
同様に、MMCの制御放出は、副作用の増加、治療の信頼性及び安全性に対する悪影響を生じることなく、曝露を延長することが期待される。
【0065】
ヒドロゲル:
本発明の組成物及びキットに含まれるヒドロゲルは、少なくとも1つの逆熱ゲル化剤を含む。好ましくは、逆熱ゲル化剤はポロキサマーである。ポロキサマーは、逆熱ゲル化組成物を生成するPEG-PPG-PEG(PEG=ポリエチレングリコール及びPPG=ポリプロピレングリコール)と呼ばれるトリ-ブロックコポリマーの群を示し、すなわち、粘度が再び低下する点まで温度の上昇と共に粘度が上昇するという特徴を有する。特に、ポロキサマー407は、10℃を超えるが、ヒトの体温、すなわち37℃より低いゲル化温度を有する。この特性は、低温では液体状態で身体の内腔に注射又は注入され、その後、組成物が温められると、体腔の内壁への最適な送達のための薬物リザーバとして機能する半固体ゲルに固化する能力を、化合物を含有する組成物に付与し得る。
【0066】
本発明のヒドロゲルは、内部体腔の内面上への治療剤の均一な送達及び連続した持続放出を提供する。
【0067】
一般に、本発明のヒドロゲルは、例えば局所治療のために、膀胱、口、鼻及び副鼻腔、胆嚢、食道、直腸、肺、膣、子宮、胃、腎盂、胸膜、腹部、腹膜、骨盤、肝臓、腎臓、心臓、腸、脳、リンパ節及び脊柱などを含む様々な内部体腔に、又は注射若しくは任意の同様の手段によって固形腫瘍に直接適用することができる。
【0068】
ポロキサマー407(PF-127)は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーから構成される非イオン性界面活性剤である。低濃度(10-4~10-5%)では、それらは単分子ミセルを形成するが、より高濃度では、疎水性中心コアと、外部媒体に面した親水性ポリオキシエチレン鎖からなる多分子凝集体を生じる。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ミセル化は、所与の温度で、臨界ミセル濃度を超える、選択された溶媒中のブロックコポリマーの希薄溶液中で起こる。臨界ゲル濃度を超えるより高い濃度では、ミセルは格子に秩序化することができる。
【0069】
一般的に使用されるポロキサマーとしては、ポロキサマー188(F-68グレード)、ポロキサマー237(F-87グレード)、ポロキサマー338(F-108グレード)及びポロキサマー407(F-127グレード)が挙げられ、これらは水に自由に溶解する。F-127は、良好な可溶化能力、低い毒性を有し、したがって、薬物送達系のための良好な媒体と考えられる。
【0070】
一実施形態では、少なくとも1つのポロキサマーは、ポロキサマー188、ポロキサマー338、及びポロキサマー407から選択される。好ましくは、少なくとも1つのポロキサマーはポロキサマー407である。
【0071】
少なくとも1つの逆熱ゲル化剤は、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約15%~約35%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。好ましい実施形態では、逆熱ゲル化剤はポリキサマー407であり、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約15%~約35%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。
【0072】
本発明の組成物及びキットは、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有するポリエチレングリコールをさらに含む。一実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG-400又はPEG-800である。好ましくは、ポリエチレングリコールはPEG-400である。
【0073】
平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有するポリエチレングリコールは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約0%~約2.5%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。好ましくは、平均分子量約300g/mol~約1000g/molを有するポリエチレングリコールは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約0.1%~約1.8%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。好ましい実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、約0.1%~約1.8%(w/w)のPEG-400を含む。
【0074】
本発明の組成物及びキットは、粘膜付着性ポリマーをさらに含む。
【0075】
一実施形態では、粘膜付着性ポリマーは、セルロース、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、PVP、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、脂肪及び脂肪酸誘導体、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、粘膜付着性ポリマーはセルロース誘導体である。一実施形態では、セルロース誘導体は、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボマー、アルギネート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0076】
好ましくは、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)からなる群から選択される。より好ましくは、セルロース誘導体はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0077】
一実施形態では、粘膜付着性ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。好ましくは、粘膜付着性ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0078】
粘膜付着性ポリマーは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約0.01%~約5%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。
【0079】
一実施形態では、粘膜付着性ポリマーは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて、約0.01%~約4.5%(w/w)、例えば約0.01%~約4%(w/w)、約0.01%~約3.5%(w/w)、約0.01%~約3%(w/w)、約0.01%~約2.5%(w/w)、約0.01%~約2%(w/w)、又は約0.01%~約1.5%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。好ましくは、粘膜付着性ポリマーは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約0.01%~約1%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。より好ましくは、粘膜付着性ポリマーは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約0.01%~約0.5%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。さらにより好ましくは、粘膜付着性ポリマーは、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの総重量に基づいて約0.01%~約0.3%(w/w)の量で生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中に含まれる。
【0080】
好ましい実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、約0.01%~約0.5%(w/w)、好ましくは約0.01%~約0.3%(w/w)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。
【0081】
好ましい一実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、約15%~約35%(w/w)のポロキサマー407、約0.01%~約5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、約0%~約2.5%のPEG-400、及び残部の水を含む。
【0082】
別の好ましい一実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、約15%~約35%(w/w)のポロキサマー407、約0.01%~約0.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、約0%~約2.5%のPEG-400、及び残部の水を含む。
【0083】
別の好ましい一実施形態では、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、約20%~約30%(w/w)のポロキサマー407、約0.1%~約0.3%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、約0.1%~約1.8%のPEG-400、及び残部の水を含む。
【0084】
本発明の組成物及びキットは、局所投与、例えば直接注射又は点滴注入に適合させることができる。本発明の組成物及びキットは、好ましくは、膀胱内点滴注入に適合している。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、本明細書に記載のヒドロゲルは、
(a)増粘化合物;
(b)pH調整物質;
(c)可溶化剤;並びに
(d)タイトジャンクション調整剤及び透過性増強剤
から選択される少なくとも1つの成分を追加で含むことができる。
【0086】
増粘化合物は、ポリカルボフィル(ジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のポリマー)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポリビニルピロリドン(PVP)である。同様に、他の天然、合成又は部分合成ポリマー、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、他のヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート、ゼラチン、カルボポール、デンプン又はデンプン誘導体、並びにグアーガム及びキサンタンガムのようなガムを使用することも可能である。
【0087】
pH調整物質には、酸、塩基及び緩衝剤が含まれる。これらの物質の添加は、APIを安定化させることを可能にする。
【0088】
好ましく使用される可溶化剤化合物は、PEG、DMSO、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びシクロデキストリンである。
【0089】
タイトジャンクション調整剤及び透過性増強剤としては、DMSO、過酸化水素、プロピレングリコール、オレイン酸、セチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸イソプロピル、Tween 80、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、メチルスルホニルメタンが挙げられる。
【0090】
体腔内におけるMMCの放出率
有効成分の制御放出を伴う本発明による生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、好ましくは、3~24時間の間の時間間隔において80%の平均放出率(3時間で80%及び24時間で80%)を有する。
【0091】
特に好ましい実施形態では、マイトマイシンCは、以下の条件下:体温において;pH約4.5~約8.0の範囲において、及び約3~約24時間の時間範囲において約80%の率で、限定するものではないが、尿路などの内部体腔内に放出される。
【0092】
有効成分の制御放出を有する本発明の組成物は、MMCを含む急速放出形態の膀胱内液体溶液と比較して、有効成分の放出が改変されている、特に放出が有意に遅い全ての組成物を指すことを強調すべきである。
【0093】
好ましくは、マイトマイシンCは凍結乾燥形態である。凍結乾燥MMCは、結晶形態若しくは非晶質形態で、又はその結晶形態と非晶質形態との任意の混合物で提示することができる。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、局所的に使用されることが意図される組成物及びキットが提供される。したがって、前記ヒドロゲルを用いて体腔内に薬物リザーバを形成可能にするように、開口部(天然又は人工のいずれか)を介して身体の臓器に前記医薬組成物をそのように適用可能にする装置を有することが有用であると思われる。そのような組成物は、(i)体腔内での1又は複数の薬物の制御放出を可能にする;(b)ヒドロゲルの段階的希釈を可能にする;及び(c)合理的な期間内に身体から排出される。
【0095】
本発明の組成物は、マイトマイシンC(MMC)に加えて、がんのより効率的な治療のための種々の薬物をさらに含むことができる。
【0096】
組成物の粘度
一実施形態では、本発明の組成物は、約4℃~約12℃の温度で約500mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、本発明の組成物は、約4℃~約12℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。
【0097】
一実施形態では、本発明の組成物は、約4℃~約6℃の温度で約50mPa・s~約1500mPa・sの粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約4℃~約6℃の温度で約300mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、本発明の組成物は、約4℃~約6℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約5℃の温度で約300mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、本発明の組成物は、約5℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。
【0098】
一実施形態では、本発明の組成物は、約13℃~約15℃の温度で約1000mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約13℃~約15℃の温度で約300mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約13℃~約15℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約14℃の温度で約500mPa・s未満、例えば約200mPa・s未満の粘度を有する。
【0099】
一実施形態では、本発明の組成物は、約18℃~約20℃の温度で約3000Pa・s~約10000Pa・sの粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約18℃~約20℃の温度で約3500Pa・s~約7000Pa・sの粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約18℃~約20℃の温度で約3800Pa・s~約6500Pa・sの粘度を有する。一実施形態では、本発明の組成物は、約19℃の温度で約4000Pa・s~約6000Pa・sの粘度を有する。
【0100】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約4℃~約12℃の温度で約500mPa・s未満の粘度を有する。好ましくは、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約4℃~約12℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。
【0101】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約4℃~約6℃の温度で約50mPa・s~約1500mPa・sの粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約4℃~約6℃の温度で約300mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約4℃~約6℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約5℃の温度で約300mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約5℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。
【0102】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約13℃~約15℃の温度で約1000mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約13℃~約15℃の温度で約300mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約13℃~約15℃の温度で約200mPa・s未満の粘度を有する。一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約14℃の温度で約500mPa・s未満、例えば約200mPa・s未満の粘度を有する。
【0103】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約18℃~約20℃の温度で約3000Pa・s~約10000Pa・sの粘度を有する。
【0104】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約18℃~約20℃の温度で約3500Pa・s~約7000Pa・sの粘度を有する。
【0105】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約18℃~約20℃の温度で約3800Pa・s~約6500Pa・sの粘度を有する。
【0106】
一実施形態では、本発明のキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、ヒドロゲル中での成分(b)の再構成時に約19℃の温度で約4000Pa・s~約6000Pa・sの粘度を有する。
【0107】
本発明による生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用するなど、当分野で公知の従来の方法で決定することができる。例えば、粘度は、スピンドルSC4-14、熱電対、及び小型サンプルアダプタチャンバSC4-6R(P)を含む「低粘度」(LV)及び「通常粘度」(RV)ブルックフィールド粘度計を使用して、温度の関数として試験することができる。LVブルックフィールド粘度計の粘度は、ゲル化点より低い温度について100rpm又は200rpmのスピンドル速度を使用して測定することができる。RVブルックフィールド粘度計の粘度は、ゲル化点より高い温度について0.1rpmのスピンドル速度を使用して測定することができる。
【0108】
ゲル化点は、粘度の急激な増加が観察される温度として決定することができる。
【0109】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルからの薬物の放出は、ゲルが身体に適用された後に同時に起こる2つの現象:(1)ゲルから水性媒体への薬物拡散(例えば、尿);(2)ゲル自体の水性媒体への溶解;に起因して起こると考えられる。
【0110】
重ねて、いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明の文脈における生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルの非限定的な例では、組成物の親水性が有利な特徴であると考えられる:それは、薬物が本質的に放出され、膀胱などの腔内に異物のポリマー組成物残留物を残すことなく治療セッションが終了した後に、ポリマー組成物が尿中に徐々に溶解することを可能にする。
【0111】
本発明の組成物及びキットに含まれる生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルは、逆熱ゲル化(RTG)特性を有するので、低温で自由流動性の低粘度液体として注射することができ、体温に曝露されるとゲルを形成する。生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルとMMCとを含む組成物及びキットは、優れたレオロジー特性、高い生体付着能力及び高い治療有効性を提示する。
【0112】
ゲル化点
ゲル化温度(ゲル化点)は、組成物の設計における1つのパラメータである。それは、標的組織の組成物の送達を可能にし、投与後の点滴注入及び固化の前に成分(a)と(b)との混合を可能にするようなものであるべきである。ゲル化温度はまた、ヒドロゲルの強度及び溶解速度に関連すると思われ、したがって、長期にわたる曝露に必要な温度であるべきである。
【0113】
ヒドロゲルの柔軟性は、筋肉の拡大/縮小又は屈曲のサイクルを介して体積及び形状並びに自然な変化に適応可能にするために必要である。例えば、本発明の組成物が点滴注入されるときの膀胱の体積は100mlであり、尿で自然に満たされるとき、膀胱の体積は300ml、さらにはそれ以上に増大し得る。本発明の組成物は、体温における高い粘度(すなわち、4000Pa・s~約6000Pa・s)に由来する物理的強度によって、そのような膨張及びつぶれのサイクルに耐えるように設計される。
【0114】
溶解度
本発明者らは、驚くべきことに、MMCを含む凍結乾燥医薬組成物の増量剤が尿素を含む場合、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲル中においてより高い飽和濃度のMMCを得ることができることを見出した。
【0115】
本発明による組成物及びキットの成分(a)と(b)との再構成された混合物は、溶解していない可視粒子及び少量の微視粒子を含むことなくより良好な溶解度を有することが望ましい。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、可視粒子及び微視粒子の数が減少した本発明による組成物及び再構成された混合物が、より高い均一性及びより高い有効性を有するヒドロゲルをもたらすと考えている。
【0116】
本発明者らは、驚くべきことに、生体適合性粘膜付着性熱可逆性ヒドロゲルが、増量剤として尿素を含む本発明による凍結乾燥医薬組成物と一緒になることにより、溶解していない可視粒子及び微視粒子の数が著しく減少したヒドロゲルをもたらすことを見出した。本発明による可視粒子は、100μmより大きい粒子である。本発明による微視粒子は、1μm~100μmの範囲のサイズを有する粒子として理解されるべきである。微視粒子の数は、フローイメージング顕微鏡法などの当分野で適用される任意の従来の手段によって決定することができる。増量剤として尿素を使用することによって、マンニトールなどの他の増量剤と比較して可視粒子及び微視粒子の数を有意に減少させることができると考えられる。
【0117】
好ましくは、本発明による組成物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、10μmより大きい微視粒子を1mlあたり1万個以下、好ましくは10μmより大きい微視粒子を1mlあたり9000個以下、より好ましくは10μmより大きい微視粒子を1mlあたり8000個以下有する。
【0118】
好ましくは、本発明による組成物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、20μmより大きい微視粒子を1mlあたり5000個以下、好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり3000個以下、より好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり2000個以下有する。
【0119】
好ましくは、本発明による組成物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、50μmより大きい微視粒子を1mlあたり100個以下、好ましくは50μmより大きい微視粒子を1mlあたり80個以下、より好ましくは50μmより大きい微視粒子を1mlあたり60個以下有する。
【0120】
より好ましくは、本発明による組成物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、100μmより大きい粒子を1mlあたり50個以下、好ましくは100μmより大きい粒子を1mlあたり30個以下、より好ましくは100μmより大きい粒子を1mlあたり20個以下を有する。
【0121】
好ましくは、本発明によるキットの成分(b)が成分(a)中で再構成される場合、再構成された混合物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、10μmより大きい微視粒子を1mlあたり1万個以下、好ましくは10μmより大きい微視粒子を1mlあたり9000個以下、より好ましくは10μmより大きい微視粒子を1mlあたり8000個以下有する。
【0122】
好ましくは、本発明によるキットの成分(b)が成分(a)中で再構成される場合、再構成された混合物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、20μmより大きい微視粒子を1mlあたり5000個以下、好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり3000個以下、より好ましくは20μmより大きい微視粒子を1mlあたり2000個以下有する。
【0123】
好ましくは、本発明によるキットの成分(b)が成分(a)中で再構成される場合、再構成された混合物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、50μmより大きい微視粒子を1mlあたり100個以下、好ましくは50μmより大きい微視粒子を1mlあたり80個以下、より好ましくは50μmより大きい微視粒子を1mlあたり60個以下有する。
【0124】
より好ましくは、本発明によるキットの成分(b)が成分(a)中で再構成される場合、再構成された混合物は、フローイメージング顕微鏡法によって決定される場合、100μmより大きい粒子を1mlあたり50個以下、好ましくは100μmより大きい粒子を1mlあたり30個以下、より好ましくは100μmより大きい粒子を1mlあたり20個以下を有する。
【0125】
本発明はまた、ヒトにおける障害の治療及び/又は予防を意図した医薬品を製造するための新規な組成物及びキットの使用を含む。
【0126】
一実施形態では、本発明による組成物及びキットは、尿路がんの治療に使用するためのものである。
【0127】
一実施形態では、本発明は、尿路がんを治療する方法であって、本発明の組成物をそれを必要とする対象の尿路内に投与する工程を含む方法を提供する。
【0128】
一実施形態では、投与する工程は、本発明の組成物を尿路の内部体腔内に導入する工程、前記組成物を尿路の内部体腔の内面の少なくとも一部に適用する工程、前記組成物を尿路の内部体腔の内面に付着させる工程を含む。
【0129】
一実施形態では、本発明は、尿路がんを治療する方法であって、本発明のキットの成分(a)及び成分(b)を提供する工程、成分(a)中で成分(b)を再構成する工程、並びに成分(a)と成分(b)との再構成された混合物をそれを必要とする対象の尿路内に投与する工程を含む方法を提供する。
【0130】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明のキットの成分(b)の凍結乾燥医薬組成物の増量剤が尿素を含む場合、成分(a)と(b)との迅速な再構成が提供され得ることを見出した。すなわち、成分(a)中での成分(b)の再構成には、15分以下、例えば10分以下、好ましくは7分以下、及びより好ましくは5分以下しかかからない。好ましくは、成分(b)は、10分以下、より好ましくは7分以下、及びさらにより好ましくは5分以下で成分(a)に完全に溶解する。
【0131】
さらに、本発明の組成物は、優れた安定性を有し、分解生成物がより少ないと考えられる。成分(a)と(b)とを再構成した後の本発明によるキットについても同様である。
【0132】
成分(a)と(b)との再構成された混合物は安定であり、患者への投与前に一定期間貯蔵できることがさらに望ましい。本発明者らは、驚くべきことに、MMCを含む凍結乾燥医薬組成物の増量剤が尿素を含む場合、成分(a)と(b)との再構成後に貯蔵安定性が増加し、再構成された混合物をより長く貯蔵及び使用できることを見出した。したがって、本発明による組成物は、同様に、増大した貯蔵安定性を示す。この点において、本発明者らは、驚くべきことに、凍結乾燥医薬組成物の増量剤が尿素を含む場合、マンニトールなどの他の増量剤と比較して不純物の量を減少させ得ることを見出した。一実施形態では、本発明によるキットの組成物並びに成分(a)と(b)との再構成された混合物は、最大48時間、最大36時間又は最大24時間貯蔵することができる。
【0133】
一実施形態では、不純物は、1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン、1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン、又はそれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、これらの化合物が存在する場合、それぞれ、0.5% w/w未満、好ましくは0.1% w/w未満の量で組成物中に存在する。一実施形態では、1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び/又は1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンが存在する場合、再構成直後(T=0時間)に、0.5% w/w未満、好ましくは0.1% w/w未満の量で成分(a)と成分(b)との再構成された混合物中に存在する。一実施形態では、1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び/又は1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンが存在する場合、再構成の8時間後に0.5% w/w未満、好ましくは再構成の24時間後に1.0%の量で成分(a)と成分(b)との再構成された混合物中に存在する。不純物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの当分野で公知の任意の適切な方法によって決定することができる。
【0134】
一実施形態では、投与する工程は、成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を尿路の内部体腔内に導入する工程、前記成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を尿路の内部体腔の内面の少なくとも一部に適用する工程、前記成分(a)と成分(b)との再構成された混合物を尿路の内部体腔の内面に付着させる工程を含む。
【0135】
好ましくは、尿路の内部体腔は膀胱又は上部尿路である。
【0136】
好ましくは、尿路がんは膀胱がん又は上部尿路上皮がん(UTUC)である。
【0137】
以下に提示される非限定的な例は、多様な組成物によって提供される、その工学的性質が、異なる放出プロファイル、流動特性、点滴注入温度、コーティング層の厚さ、及び内腔に適用される具体的治療によって必要とされる追加の特徴を付与することを可能にする多用途性を示す。
【0138】
一実施形態では、本発明の組成物又は本発明のキットの再構成された成分(a)と(b)との混合物は、カテーテルを使用して本質的に空の膀胱に挿入される。組成物は、約1℃~約18℃の範囲の低温で、より好ましくは約10℃~約18℃の範囲の温度で挿入され、材料の粘度は、膀胱内で自由に流動できるほど十分に低い。液体材料が膀胱に流入すると、それは体温によって自然に加熱され、最終的にその温度に達する。組成物の温度がゲル化温度に達すると、それは液相から粘性ゲル相に移行する。本発明の方法は、組成物が有効量の活性物質を組織に確実に送達するように設計される。
【0139】
本発明の組成物の多用途性及びその物理化学的特性を制御する能力は、疼痛の軽減、炎症及び他の望ましくない効果の回避を含む化学療法治療において所望され得る追加の有効成分の持続放出投薬の組み込み及び最適化を可能にし得る。したがって、抗がん剤として働く有効成分MMCの他に、麻酔薬(例えば、リドカイン)、凝固剤(例えば、プロコンバーチン)抗凝固剤(ヘパリンのような)、抗炎症薬(ステロイド及び非ステロイド系)などの他の薬物を、SBCを患う患者の医学的要求に従って、最適な治療のために多様な有効成分の徐放の効果を利用してゲル組成物中に組み込むことができる。
【0140】
本発明の組成物及びキットは、有効成分としてMMCを含む。具体的には、抗がん薬マイトマイシンC(MMC)は、インビトロ設定で実験的に利用され、動物標本の膀胱内壁及びインビボ試験に適用されている。別のAPIを含むか、又は含まないMMCは制御された様式で放出され、膀胱内の滞留時間は、習慣性の1~2時間(排尿まで)に代わって最大30時間程度である。
【0141】
本発明は、上記及び特許請求の範囲で定義されるように、内部体腔へのMMCの送達に望ましい医薬組成物の特性の要件を満たすように設計される。本発明の組成物の特性は以下の通りである:
(a)かなりの期間薬物送達を持続するゲルの能力に大きく影響する腔内の高度に液体の環境を克服する/耐える(ゲル溶解速度は、治療期間、したがって治療有効性を増加させるために可能な限り低くすべきである);
(b)注射器/医療機器の詰まりのリスクなしに簡単な点滴注入を可能にする望ましい温度(例えば、体内温度)でゲル化させる;
(c)カテーテル送達ゲル点滴注入を可能にするのに十分低い粘度及び腔内での長い滞留(滞留時間がより長い)を可能にするのに十分高い粘度を有する
(d)尿路内の高度に液体の環境にもかかわらず、カテーテル補助点滴注入を可能にするには粘性が高すぎることのない、局所薬物送達の増加を可能にするのに十分な粘膜付着性を有する;
(e)標的領域に薬物を効果的に送達するのに十分な長さの期間及び長い使用期間にわたって安定である。
【0142】
本明細書に開示された実施形態が複数の可能性の例を示すにすぎないことは、当業者にとって明らかであると思われる。したがって、ここに示す実施形態は、これらの特徴及び構成の限定を形成すると理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組み合わせ及び構成は、本発明の範囲に従って選択することができる。本発明の1つの特定の態様(例えば、本発明の組成物)に関連して本明細書に記載される全ての実施形態及び好ましい実施形態は、本発明によるキット、医薬組成物、使用及び方法などの本発明の全ての他の態様にも同様に適用される。
【0143】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは限定として解釈されるべきではない。
【実施例
【0144】
以下の実施例では、熱可逆性ヒドロゲルと、i)MMC及び増量剤として尿素を含む凍結乾燥組成物、又はii)MMC及び増量剤としてマンニトールを含む凍結乾燥組成物とを含む製剤を試験した。
本実施例で使用した熱可逆性ヒドロゲルは、ポロキサマー407(PF-127)(27.0% w/w);ポリエチレングリコール、平均MW=400(PEG-400)(1.0% w/w);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(0.2% w/w)、及び残部(71.8%)再蒸留水を含んでいた。
【0145】
MMC及びマンニトールを含む凍結乾燥組成物は1:2 w/wのMMC:マンニトールで構成されており、例えばAccordHealthcareから市販されていた。
【0146】
MMC及び尿素を含む凍結乾燥組成物は、米国特許出願第2016/256391号に記載の方法に従って、以下のマイトマイシン/尿素比で製造した:
a)1:4 w/w MMC:尿素
b)1:5 w/w MMC:尿素
c)1:6 w/w MMC:尿素
d)1:8 w/w MMC:尿素
e)1:10 w/w MMC:尿素
f)1:15 w/w MMC:尿素
【0147】
熱可逆性ヒドロゲル中で再構成されたMMCを含む凍結乾燥組成物を表1に要約する。
表1:凍結乾燥組成物
【表1】
【0148】
ヒドロゲル中のMMC濃度は、以下の実施例において特に明記しない限り、4mg/mLであった。以下の実施例では、特に明記しない限り、MMCを含む凍結乾燥組成物を以下のプロトコルに従って熱可逆性ヒドロゲル中で再構成した:2mlの注射用水をプレウェッティング溶液として4mlのヒドロゲルと混合し、MMCを含む凍結乾燥組成物を該プレウェッティング溶液と混合し、続いて混合物に14mL ヒドロゲルを添加した。
【0149】
実施例1a:再構成後の可視粒子
可視粒子を、ヒドロゲルと混合した後の組成物A(参照組成物)、E及びFについて試験した。可視粒子の数は、FlowCam(登録商標)機器(動的画像分析)によって決定した。FlowCam(登録商標)機器試験用のサンプルは、試験前に水で1:1に希釈した。結果を表2に要約する。
表2:組成物中の可視粒子の数
【表2】
【0150】
表2に示すように、増量剤として尿素を含む本発明による組成物E及びFは、組成物Aと比較して可視粒子を全く示さなかった。
【0151】
実施例1b:-20℃における保持時間中の可視粒子
ヒドロゲルと混合した後の可視粒子を、(-20℃)で9日間まで貯蔵した後の組成物A及びEについて試験した。可視粒子の数は目視観察により決定した。結果を表3に要約する。
表3:-20℃で貯蔵した後の可視粒子
【表3】
NT:未試験
【0152】
表3に示すように、増量剤として尿素を含む本発明による組成物Eは、-20℃で少なくとも9日間の貯蔵後に可視粒子を全く示さず、それと比較して、増量剤としてマンニトールを含む組成物Aは、4日間の貯蔵後に多くの可視粒子が観察された。
【0153】
溶解度及び可視粒子に関して、組成物Eは組成物Aと比較して使用中の保持時間が長いことが明らかに観察されている。したがって、再構成後の貯蔵安定性は著しく増加しており、組成物をより長く保存して使用することができる。
【0154】
実施例2:微視粒子
微視粒子の数及びそれらの分布を組成物A(参照組成物)並びに本発明による組成物E及びGについて試験した。微視粒子の数及び分布は、FlowCam(登録商標)機器(動的画像分析)によって決定した。検査前にサンプルを2倍に希釈した。結果を表4に要約する。
表4:微視粒子の数
【表4】
*スティックは、0.01~0.74のアスペクト比(直径の比)及び7~500μmの直径(面積基準直径)を有する粒子である。
【0155】
表4に示すように、増量剤として尿素を含む本発明による組成物E及びGは、増量剤としてマンニトールを含む組成物Aと比較して有意に少ない微視粒子を示した。
【0156】
実施例3:再構成時間
凍結乾燥組成物は、患者投与の前に溶液に再構成しなければならず、この点で、長い再構成時間は理想的ではない。再構成時間は、凍結乾燥薬物の開発において非常に重要なパラメータである。MMCを含む凍結乾燥組成物を以下のプロトコルに従って熱可逆性ヒドロゲル中で再構成した:2mlの注射用水をプレウェッティング溶液として4mlのヒドロゲルと混合し、MMCを含む凍結乾燥組成物を該プレウェッティング溶液と混合し、続いて混合物に14mL ヒドロゲルを添加した。組成物調製のための再構成時間は、実質的に全てのマイトマイシンがゲル内に溶解した時間として推定された。
表5:再構成時間
【表5】
【0157】
表5に示すように、尿素を1:8(MMC:尿素)で含む組成物Eは、有意に短い再構成時間を示す。有意に短い再構成時間は、製品の使用を単純化する非常に重要なパラメータである。
【0158】
実施例4:不純物の評価
組成物A(参照組成物)並びに本発明による組成物E及びGの不純物を決定した。
【0159】
不純物1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンは、極性溶媒中で発生する、マイトマイシンの一般的に公知の不純物である。
【0160】
不純物1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンを、組成物A(参照組成物)及び本発明によるEにおいて4mg/mLのマイトマイシン濃度で、組成物再構成の直後(T=0)に、並びに30℃で8時間(T=8時間)及び24時間(T=24時間)貯蔵後に試験した。
【0161】
MMCを含む凍結乾燥組成物を以下のプロトコルに従って熱可逆性ヒドロゲル中で再構成した:2mlの注射用水をプレウェッティング溶液として4mlのヒドロゲルと混合し、MMCを含む凍結乾燥組成物を該プレウェッティング溶液と混合し、続いて混合物に14mL ヒドロゲルを添加した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して不純物を試験した。結果を、それぞれ表6及び表7に要約する。
表6:T=0における組成物A及びE、4mg/ml MMC中の不純物
【表6】
表7:30℃において8時間及び24時間貯蔵後の組成物A及びE、4mg/ml MMC中の不純物
【表7】
【0162】
表6及び表7に示すように、増量剤として尿素を含む本発明の組成物Eは、増量剤としてマンニトールを含む組成物Aと比較して、再構成後T=0、T=8時間及びT=24時間で有意に少ない不純物を示す。特に、不純物1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンの量は、本発明による組成物において有意に少ない。したがって、再構成後に貯蔵安定性が著しく向上し、再構成された混合物をより長く貯蔵及び使用することができる。再構成後のより長い安定性は、製品の使用を単純化する重要なパラメータである。
【0163】
不純物1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンを、組成物A(参照組成物)、本発明によるE及びGにおいて、最終MMC濃度 1.33mg/mLで、組成物再構成の直後(T=0)に、並びに30℃で8時間(T=8時間)及び24時間(T=24時間)及び48時間(T=48時間)貯蔵後にさらに決定した。MMCを含む凍結乾燥組成物を以下のプロトコルに従って熱可逆性ヒドロゲル中で再構成した:2mlの注射用水をプレウェッティング溶液として4mlのヒドロゲルと混合し、MMCを含む凍結乾燥組成物を該プレウェッティング溶液と混合し、続いて混合物に14mL ヒドロゲルを添加した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して不純物を試験した。結果を表8に要約する。
表8:T=0並びに30℃において24時間及び48時間貯蔵の組成物A、E及びG、1.33mg/ml MMC中の不純物
【表8】
【0164】
表8に示すように、本発明の組成物E及びGは、1.33mg/mlのMMC濃度で組成物を調製した場合、再構成後T=0、T=24時間及びT=48時間で組成物Aと比較して少ない不純物を示した。特に、不純物1,2-トランス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセン及び1,2-シス-1-ヒドロキシ-2,7-ジアミノミトセンの量は、有意に少ない。したがって、マンニトールを尿素で置き換えることにより、貯蔵安定性を有意に向上させることができた。
【0165】
実施例5:粘度及びゲル化温度
本発明による増量剤として尿素を含む組成物の粘度及びゲル化温度を決定し、マンニトールを含む組成物A(参照組成物)と比較した。
【0166】
被験組成物の粘度は、スピンドルSC4-14、熱電対、及び小型サンプルアダプタチャンバSC4-6R(P)を含む「低粘度」(LV)及び「通常粘度」(RV)ブルックフィールド粘度計を使用して、温度の関数として試験した。LVブルックフィールド粘度計の粘度は、ゲル化点より低い温度について100rpm又は200rpmのスピンドル速度を使用して測定した。RVブルックフィールド粘度計の粘度は、ゲル化点より高い温度について0.1rpmのスピンドル速度を使用して測定した。ゲル化点は、粘度の急激な増加が観察される温度として決定した。
【0167】
14℃及び19℃で決定した粘度並びに組成物A(参照組成物)及び組成物B~Gのゲル化温度を表9に要約する。
表9:14℃及び19℃並びにゲル化温度での粘度
【表9】
【0168】
表9に示すように、組成物A及びB~Fの粘度及びゲル化点は、4600Pa・s~5700Pa・sの範囲内である。本発明者らは、ゲル化点が低いほど、及び粘度高いほど、より長い滞留時間及び有効成分への長期にわたる曝露に寄与すると考えている。
【0169】
実施例6:機械的特性
水性環境における一定の剪断応力に対する機械的抵抗を、フローピークホールド試験によって組成物G及びEについて決定した。この試験は、泌尿器系の応力状態をシミュレートし、泌尿器系内の異なる組成物の比較挙動を予測するために開発された。より長い応力時間で機械的破壊を示す組成物は、尿系での使用が好ましく、より長い曝露時間を提供することがと予想される。
【0170】
DHR-1レオメーター(TA-Instruments)を使用して、250Paの一定の剪断応力及び1Nの軸力下で時間の関数としてのフローピークホールド試験を適用した。
【0171】
図1に示すように、水性環境における一定の剪断応力に対する組成物Eの機械的抵抗は、組成物Gの機械的抵抗よりも高い(すなわち、粘度の急激な低下によって示される機械的破壊に、より長い時間を要する)。したがって、驚くべきことに、1:8のMMC:尿素の比(組成物E)がヒドロゲルの優れた機械的特性をもたらすことが見出された。
【0172】
実施例7:ヒドロゲルへの溶解度
尿素又はマンニトールを含有する凍結乾燥MMCの、ヒドロゲル中での溶解度を試験した。凍結乾燥MMCをヒドロゲル内に過剰に配合し(凍結乾燥MMC:ヒドロゲルが1:2の重量比)、2~8℃で1時間撹拌した。遠心分離、続いて0.45μmフィルタによる濾過によって得られたサンプルの粒子を含まない部分を、HPLCによって分析した。
【0173】
結果を表10に要約する。
表10:ヒドロゲル中でのMMCの溶解度
【表10】
【0174】
表10に示すように、増量剤として尿素を含む本発明の組成物Eは、増量剤としてマンニトールを有する組成物Aと比較して、熱可逆性ヒドロゲル中でのより高いMMC溶解度を示す。
図1
【国際調査報告】