(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】低トレンチ量のシングルモード超低損失光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/036 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G02B6/036
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535684
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2021062312
(87)【国際公開番号】W WO2022125607
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】へブゲン,ペーター ゴットフリート
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ,ヘイゼル ベントン ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,スニグダラジ クマール
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB05
2H250AB06
2H250AB07
2H250AB08
2H250AB09
2H250AB10
2H250AB15
2H250AB18
2H250AD14
2H250AD32
2H250AD44
2H250AD45
2H250AE25
2H250AE26
2H250AE27
2H250AE63
2H250AE64
(57)【要約】
本件開示の各実施形態は、低トレンチ量のシングルモード超低損失光ファイバ(10)を含む。シングルモード光ファイバは第1コア領域(16)と、該第1コア領域を包囲しているとともにそこに直に隣接しており、量Vが14%Δμm2以下である第2コア領域(18)と、該コア領域を包囲しているクラッド領域(20)とから構成されており、該光ファイバは、ケーブル遮断波長が1260nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6μmないし9.7μm、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9μmないし11μmであり、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルモード光ファイバであって、該光ファイバは、
α値が1.5≦α≦10の範囲にあるとともに2.5μm≦r
1≦8μmを満たす外半径r
1まで及び、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ
1(r)を示すとともに最小相対屈折率Δ
1MINおよび最大相対屈折率Δ
1MAXを有しており、該相対屈折率が半径r=2μmで測定された場合は-0.35≦Δ
1MIN≦-0.05である第1コア領域と、
第1コア領域を包囲しているとともにそこに直に隣接して10μm≦r
2≦22μmを満たす外半径r
2にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした負の相対屈折率百分率プロファイルΔ
2(r)を示すとともに最小相対屈折率百分率Δ
2MINが-0.47%≦Δ
2MIN≦-0.3%を満たしており、量Vが14%Δμm
2以下ある第2コア領域と、
該コアを包囲しており、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ
3(r)を示し、最小相対屈折率Δ
3MINが-0.45%≦Δ
3MIN≦-0.2%を満たしているクラッド領域とを備えており、
該光ファイバはケーブル遮断波長が1260nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)、および、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である、シングルモード光ファイバ。
【請求項2】
前記第2コア領域の量Vは0%Δμm
2ないし9%Δμm
2である、請求項1に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項3】
前記光ファイバは、40mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.5dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す、請求項1または請求項2に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項4】
1≦r
2/r
1≦9、r
1≦8μm、尚かつ、r
2≦20μmである、請求項1から請求項3のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項5】
2.5≦r
2/r
1≦5である、請求項1から請求項3のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項6】
シングルモード光ファイバであって、該光ファイバは、
α値が1.5≦α≦10の範囲にあるとともに2.5μm≦r
1≦8μmを満たす外半径r
1にまで及び、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ
1(r)を示すとともに最小相対屈折率Δ
1MINおよび最大相対屈折率Δ
1MAXを有しており、該相対屈折率が半径r=2μmで測定された場合は-0.35≦Δ
1MIN≦-0.05である第1コア領域と、
第1コア領域を包囲して環状であるとともにそこに直に隣接して10μm≦r
2≦22μmを満たす外半径r
2にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした負の相対屈折率百分率プロファイルΔ
2(r)を示すとともに最小相対屈折率百分率Δ
2MINが-0.47%≦Δ
2MIN≦-0.3%を満たしており、量Vが14%Δμm
2以下ある第2コア領域と、
該コアを包囲しており、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ
3(r)を示し、最小相対屈折率Δ
3MINが-0.55%≦Δ
3MIN≦-0.3%を満たしているクラッド領域とを備えており、
該光ファイバはケーブル遮断波長が1530nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)、および、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である、シングルモード光ファイバ。
【請求項7】
前記第2コア領域の前記量Vは0%Δμm
2ないし9%Δμm
2である、請求項6に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項8】
前記環状の第2コア領域の前記量Vは2%Δμm
2ないし9%Δμm
2である、請求項6または請求項7に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項9】
前記光ファイバは、50mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.05dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す、請求項6から請求項8のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項10】
1≦r
2/r
1≦9、r
1≦8μm、尚かつ、r
2≦20μmである、請求項6から請求項9のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項11】
2.5≦r
2/r
1≦5である、請求項6から請求項10のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は合衆国法典第35巻第119条に基づき、2020年12月11日出願の米国特許仮出願第63/124,455号の優先権の利益を主張するものであるが、当該仮出願の内容は、ここに引例に挙げることによりその全体に依拠するとともに本願の一部を構成しているものとする。
【技術分野】
【0002】
本件開示は光ファイバに関するものである。より具体的には、本件開示はシングルモード光ファイバに関するものである。極めて具体的には、本件開示は低トレンチ量のシングルモード超低損失光ファイバに関連している。
【背景技術】
【0003】
遠隔通信システムは、海底適用例と地上適用例の両方で、長距離に亘って劣化させずに信号を伝送することができる光ファイバが要件となる。減衰や曲げ損失などのような光ファイバ属性が信号劣化の一因となっている。目下の海底適用例と地上適用例の要件として、光ファイバの曲げ直径が大きい(例えば、50mmないし70mm範囲)という向上した曲げ性能がある一方で、そのような適用例に好適な上記以外の光学的属性(例えば、モードフィ-ルド径、ケーブル遮断、および、減衰)を維持することも必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の改善が望まれている。それに応じて、本願発明者らは、大きな曲げ直径で低い曲げ損失を示すシングルモード光ファイバを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件開示の第1の実施形態はシングルモード光ファイバを含んでおり、該光ファイバは以下のものを構成要素の一部に備えている。すなわち、α値が1.5≦α≦10の範囲にあるとともに2.5μm≦r1≦8μmを満たす外半径r1にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ1(r)を示しており、最小相対屈折率Δ1MINおよび最大相対屈折率Δ1MAXを有しており、該相対屈折率が半径r=2μmで測定された場合-0.35≦Δ1MIN≦-0.05である第1コア領域と、第1コア領域を包囲しているとともにそこに直に隣接しており、10μm≦r2≦22μmを満たす外半径r2にまで及び、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした負の相対屈折率百分率プロファイルΔ2(r)を示し、最小相対屈折率百分率Δ2MINが-0.47%≦Δ2MIN≦-0.3%であり、量Vが14%Δμm2以下ある第2コア領域と、該コアを包囲しており、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ3(r)を示し、最小相対屈折率Δ3MINが-0.45%≦Δ3MIN≦-0.2%であるクラッド領域とを備えており、該光ファイバはケーブル遮断が1260nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)、および、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である。
【0006】
本件開示の第2の実施形態は、第1の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが0%Δμm2ないし9%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0007】
本件開示の第3の実施形態は、第1の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが4%Δμm2ないし9%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0008】
本件開示の第4の実施形態は、第1の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし7%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0009】
本件開示の第5の実施形態は、第1の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし9%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
0010 本件開示の第6の実施形態は、第1の実施形態において、上記光ファイバが、30mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.75dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0010】
本件開示の第7の実施形態は、第1の実施形態において、上記光ファイバが、40mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.5dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0011】
本件開示の第8の実施形態は、第1の実施形態において、上記光ファイバが、50mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.05dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0012】
本件開示の第9の実施形態は、第1の実施形態において、上記光ファイバが、60mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.005dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0013】
本件開示の第10の実施形態は、第1の実施形態において、1≦r2/r1≦9、r1≦8μm、尚かつ、r2≦20μmである態様を含んでいるとよい。
【0014】
本件開示の第11の実施形態は、第1の実施形態において、2.5≦r2/r1≦5である態様を含んでいるとよい。
【0015】
本件開示の第12の実施形態は、第1の実施形態において、上記光ファイバが零分散波長λ0を示し、1300nm≦λ0≦1324nmである態様を含んでいるとよい。
【0016】
本件開示の第13の実施形態は、第1の実施形態において、上記光ファイバが1db/km以下のマイクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0017】
本件開示の第14の実施形態はシングルモード光ファイバを含んでおり、該光ファイバは、α値が1.5≦α≦10の範囲にあるとともに2.5μm≦r1≦8μmを満たす外半径r1にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ1(r)を示しており、最小相対屈折率Δ1MINおよび最大相対屈折率Δ1MAXを有しており、該相対屈折率が半径r=2μmで測定された場合-0.35≦Δ1MIN≦-0.05である第1コア領域と、第1コア領域を包囲して環状をなしているとともにそこに直に隣接しており、10μm≦r2≦22μmを満たす外半径r2にまで及び、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした負の相対屈折率百分率プロファイルΔ2(r)を示し、最小相対屈折率百分率Δ2MINが-0.47%≦Δ2MIN≦-0.3%であり、量Vが14%Δμm2以下ある第2コア領域と、該コアを包囲しており、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ3(r)を示し、最小相対屈折率百分率Δ3MINが-0.55%≦Δ3MIN≦-0.3%であるクラッド領域とを備えており、該光ファイバはケーブル遮断が1530nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)、および、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である。
【0018】
本件開示の第15の実施形態は、第14の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが0%Δμm2ないし9%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0019】
本件開示の第16の実施形態は、第14の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが4%Δμm2ないし9%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0020】
本件開示の第17の実施形態は、第14の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし7%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0021】
本件開示の第18の実施形態は、第14の実施形態において、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし9%Δμm2である態様を含んでいるとよい。
【0022】
本件開示の第19の実施形態は、第14の実施形態において、上記光ファイバが、60mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.005dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0023】
本件開示の第20の実施形態は、第14の実施形態において、上記光ファイバが、30mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.75dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0024】
本件開示の第21の実施形態は、第14の実施形態において、上記光ファイバが、40mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.5dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0025】
本件開示の第22の実施形態は、第14の実施形態において、上記光ファイバが、50mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.05dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0026】
本件開示の第23の実施形態は、第14の実施形態において、1≦r2/r1≦9、r1≦8μm、尚かつ、r2≦20μmである態様を含んでいるとよい。
【0027】
本件開示の第24の実施形態は、第14の実施形態において、2.5≦r2/r1≦5である態様を含んでいるとよい。
【0028】
本件開示の第25の実施形態は、第14の実施形態において、上記光ファイバが零分散波長λ0を示し、1300nm≦λ0≦1324nmである態様を含んでいるとよい。
【0029】
本件開示の第26の実施形態は、第14の実施形態において、上記光ファイバが1db/km以下のマイクロベンド損失を示す態様を含んでいるとよい。
【0030】
上記以外の各種の特徴および利点は、後段以降の詳細な説明に明示されており、部分的には当業者にはその説明から容易に明らかになるであろうし、或いは、本願の文章による説明や特許請求の範囲は元より、添付の図面にも説明されているとおりに各実施形態を実施することにより認識されるだろう。
【0031】
前述の概説と後段以降の詳細な説明は両方とも具体例に過ぎず、特許請求の範囲の本質および特徴を理解するための概要または枠組みを提示するよう意図しているものと理解するべきである。
【0032】
添付図面は、更なる理解を供与するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成している。図面は、本件開示の選択された各態様を例示しており、説明とともに、本件開示に包含されている各種の方法、製品、および、構成の原理および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本件開示の幾つかの実施形態による光ファイバの概略図。
【
図2】本件開示の幾つかの実施形態による、
図1の光ファイバの具体的な屈折率プロファイルを例示した概略図。
【
図3】本件開示の幾つかの実施形態によるシングルモード光ファイバの相対屈折率プロファイルを描いた図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本件開示は、実現可能にする教示として供与されているのであって、以下の説明、図面、各具体例、および、特許請求の範囲を参照することにより一層容易に理解することができる。この目的を達成するために、本明細書に記載の各実施形態の様々な態様に多くの変更を加えても尚、有利な結果を得られることを当業者なら認識し、正しく評価するであろう。また、本件の各実施形態の所望の利点の一部は、特徴の一部を選択しても残余の特徴は利用せずに得られることも明らかとなるであろう。従って、多くの修正および改変を行うことができるうえに、そうすることが或る状況では望ましい場合さえあり、それらは本件開示の一部であることを当業者なら認識するであろう。よって、本件開示は、別途の指定がない限り、開示されている特定の構成、物品、装置、および、方法に限定されないものと理解するべきである。また、本明細書で使用されている用語は、特定の態様を説明することを目的としているにすぎず、限定することを意図したものではないことも理解するべきである。
【0035】
本明細書およびそこに添付した特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義させたい幾つかの用語について言及してゆく。
【0036】
「放射方向位置」または放射方向座標「r」は、光ファイバの中心線(r=0)との相対的な放射方向位置を指す。長さ寸法「ミクロン(μm)」は、本明細書ではミクロン(または、ミクロンズ)もしくはマイクロメ-トルと呼称される。ミクロンに基づく面積寸法は、本明細書では平方ミクロン(micrоn2)または平方マイクロメートル(μm2)と呼称される。
【0037】
「屈折率プロファイル」とは、屈折率または相対屈折率と導波路ファイバ半径との間の関係のことである。隣接し合うコア領域同士間またはコア領域とクラッド領域の間に段差境界があるものとして本明細書に示されている相対屈折率プロファイルの場合、処理条件の規定の変更が、隣接し合う領域間の界面ではっきりした段差境界を得る妨げとなる場合がある。屈折率プロファイルの境界が本明細書では屈折率の段階変化であるように示されているかも知れないが、実際の境界は丸みを帯びていたり、そうでなければ、完全な段階関数特性から逸脱していることもあると理解するべきである。更に、相対屈折率の値は、コア領域、各クラッド領域のいずれか、または、その各種組合せの範囲内の放射方向位置に応じて変動することがあることも理解されよう。相対屈折率が光ファイバの特定領域(コア領域、各クラッド領域のいずれか、または、その各種組合せ)の放射方向位置に応じて変動する場合、相対屈折率は実際の関数依存性または近似関数依存性に関して、もしくは、当該領域に適用できる平均値に関して表わすことができる。別途の指定のない限り、或る領域(コア領域、各クラッド領域のいずれか、または、その各種組合せ)の相対屈折率が単一の値として表わされている場合、当該領域内の相対屈折率は一定またはほぼ一定であり、その単一の値に一致しているものと解されるか、または、その単一の値が当該領域内の放射方向位置に伴って一定ではない相対屈折率従属性の平均値を表わしているものと解される。設計によるものであるか、通常の製造ばらつきの結果によるものであるかに関わらず、相対屈折率の放射方向位置への従属性は、傾きのある直線だったり、曲線だったり、そうでなければ、一定でない場合がある。
【0038】
「相対屈折率」または「相対屈折率百分率」は、次のように定義される。
【0039】
【0040】
ここでは、特に指定のない限り、n(r)は光ファイバの中心線からの放射方向距離 r における屈折率であり、ncは1550nm波長におけるシリカの屈折率である。本明細書で使用されている場合、別途の指定のない限り、相対屈折率をΔで表わし、その値は「%」の単位で与えられている。或る領域の屈折率がシリカの屈折率よりも小さい場合、相対屈折率百分率は負であり、屈折率の落ち込みがあると呼称され、別途の指定がない限り、相対屈折率が負側最大になる点で算定される。或る領域の屈折率がシリカの屈折率よりも大きい場合、相対屈折率百分率は正であり、当該領域は屈折率が一段高い、または、正の屈折率を示していると言えるが、別途の指定がない限り、相対屈折率が正側最大になる点で算定される。「アップドーパント」とは、ド-プ剤で不純物添加処理していない純シリカ(SiO2)に対して屈折率を一段高める傾向を有するド-プ剤であると本明細書では見なす。「ダウンドーパント」とは、ド-プ剤で不純物添加処理していない純シリカに対して屈折率を低下させる傾向を有するド-プ剤であると本明細書では見なされる。アップドーパントは、それ以外の、アップドーパントではない1種類以上のド-プ剤も添加されている場合、負の相対屈折率を示す光ファイバ領域に存在していることがある。同様に、上記アップドーパントとは別の、アップドーパントではない1種類以上のド-プ剤は、正の相対屈折率を示す光ファイバ領域に存在していることもある。ダウンドーパントは、それ以外の、ダウンドーパントではない1種類以上のド-プ剤も添加されている場合、正の相対屈折率を示す光ファイバ領域に存在していることがある。同様に、上記ダウンドーパントとは別の、ダウンドーパントではない1種類以上のド-プ剤は、負の相対屈折率を示す光ファイバ領域に存在していることもある。一実施形態では、ド-プ剤で不純物添加処理されていないガラスは純シリカガラスである。ド-プ剤で不純物添加処理されていないガラスが純シリカガラスの場合、アップドーパントとしては塩素(Cl)、臭素(Br)、ゲルマニウム(Ge),アルミニウム(Al)、リン(P)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオビウム(Nb)、タンタラム(Ta)などが挙げられるが、ダウンドーパントにはフッ素(F)、ホウ素(B)などが挙げられる。
【0041】
導波路ファイバの「色分散」は、本明細書では別途の注記がなければ「分散」とだけ呼ぶが、材料分散、導波路分散、および、モード間分散の総和である。シングルモード導波路ファイバの場合、モード間分散は零である。2モード型の分散値は、モード間の分散が零であることを前提としている。零分散波長(λ0)は、分散の値が零を示す際の波長である。分散勾配とは、波長に対する分散の変化率のことである。
【0042】
「実効断面積」は次のように定義される。
【0043】
【0044】
ここで、f(r)は導波された光信号の電場の横方向成分であり、r は光ファイバ内の放射方向の位置である。本明細書で使用されている場合、「実効断面積」すなわち「Aeff」は、別途の注記がない限り、1550nm波長における光学的実効断面積を指す。
【0045】
「αプロファイル」(「アルファ・プロファイル」とも呼ばれる)という用語は相対屈折率プロファイルを指しているが、単位を「%」とするΔ(r)に関連して表わされており、その場合、rは半径であり、次の等式に従う。
【0046】
【0047】
ここで、r0はΔ(r)が最大になる点であり、r1はΔ(r)が零になる点であり、また、rはri≦r≦rfの範囲内にあり、この場合、riはαプロファイルの開始点、rfはαプロファイルの最終点、また、αは実数である。
【0048】
光ファイバのモードフィ-ルド径(MFD)は次のように定義される。
【0049】
【0050】
ここでは、f(r)は導波された光信号の電界分布の横成分であり、rは光ファイバ内の放射方向位置である。「モードフィ-ルド径」すなわち「MFD」は該光信号の波長に従属して決まり、別途の注記がない限り、本明細書では1550nm波長を指すものと解される。本明細書に記載されているMFDについての式は、1310nm波長と1550nm波長に有効である。
【0051】
「トレンチ量」は次のように定義される。
【0052】
【0053】
ここで、rTrench,innerは屈折率プロファイルのトレンチ領域の内半径であり、rTrench,оuterは屈折率プロファイルのトレンチ領域の外半径であり、ΔTrench(r)は屈折率プロファイルのトレンチ領域の相対屈折率であり、rは光ファイバ内の放射方向位置である。トレンチ量は絶対値であるとともに正の量であり、本明細書では単位を%Δ平方ミクロン、%Δ-平方ミクロン(パーセント・デルタ・マイナス・スクエアマイクロン)、%Δ-μm2(パーセント・デルタ・マイナス・スクエアマイクロミータ)、または、%Δμm2で表わしてゆくが、そのために、これらの単位は本明細書では互換的に使われることがある。
【0054】
導波路ファイバの曲げ抵抗は、所定の試験条件下での誘導減衰によって推し量ることができる。
【0055】
曲げ試験の1つのタイプは、横荷重マイクロベンド試験である。このいわゆる「横荷重」試験では、所定の長さの導波路ファイバを2枚の平板の間に設置する。70番のワイヤメッシュがプレートのうちの一方に取り付けられている。既知の長さの導波路ファイバを両プレート間にサンドイッチ状に挟んで、両プレートを一緒に30ニュートンの力で押圧しながら基準減衰を測定する。次に、70ニュートンの力を両プレートに加えて、単位をdB/mとする減衰増加を測定する。この減衰増加が、導波路の横荷重ワイヤメッシュ(LLWM)減衰である。
【0056】
もう1つ別なタイプの曲げ試験は、マクロベンドが原因である光ファイバの減衰を測定する。より具体的には、導波路ファイバの曲げ抵抗は、所定の試験条件下での誘導減衰により推し量ることができるが、例えば、所定の直径の芯棒の周囲に光ファイバを配備する、すなわち巻き付けることにより推し量り、具体的には、10mm径、20mm径、30mm径、これらと同様の径のうちいずれかの径の芯棒の周囲に1回転巻いた(例えば、「1巻き×10mm径のマクロベンド損失」または「1巻き×20mm径のマクロベンド損失」)うえで、1巻きあたりの減衰増加を測定することにより、推し量ることができる。
【0057】
「ピンアレイ」曲げ試験は、マクロベンド損失に対する導波路ファイバの相対抵抗を比較する目的で利用される。この試験を実施するには、本質的に誘導曲げ損失のない導波路ファイバの減衰損失を測定する。次に、導波路ファイバをピンアレイの周囲に張って減衰を再度測定する。曲げによって誘導される損失は、測定された2種類の減衰の差である。ピンアレイは、10本からなる1組の円筒状ピンが1列に配置されて平坦面上の固定垂直位置に保持された構成である。ピンの間隔は中心から別の中心まで5mmである。ピン径は0.67mmである。試験中、十分な張力を付与することで、導波管ファイバをピン表面の一部になじませる。
【0058】
理論上のファイバ遮断波長、または、「理論上のファイバ遮断」、もしくは、「理論上の遮断」とは、所与のモードについて、誘導光がそのモードではそれを超えて伝播できない波長のことである。数学的定義は、ジュノム(Jeunhomme)著『シングルモードファイバ光学(Single Mode Fiber Optics』39頁-44頁、ニューヨーク州マーセル・デッカ社、1990年刊に見られるが、そこでは、理論上のファイバ遮断とは、モード伝播定数が外側クラッド内の平面波伝播定数と等しくなる波長である、と説明されている。
【0059】
実効的ファイバ遮断は理論上の遮断よりも低いが、これは、曲げ、機械圧、または、その両方により誘発される損失が原因である。この文脈では、遮断とは、LP11モードとLP02モードのうち高い方を指している。LP11とLP02は一般的に測定値の違いが顕著ではないが、(マルチモード基準技術を利用している場合は)双方ともスペクトル測定で多段差として明瞭であり、すなわち、測定された遮断よりも長い波長のモードでは出力が全く観察されない。実際のファイバ遮断は、標準2mファイバ遮断試験、すなわち、光ファイバ試験手順FOTP-80(米国電子産業同盟・米国通信工業協会規格EIA-TIA-455-80)により測定することで、「ファイバ遮断波長」を得ることができるが、これは「2mファイバ遮断」または「測定遮断」としても周知である。FOTP-80標準試験を実施することで、制御された量の曲げを利用して高次モードを取り除いてしまうか、当該光ファイバの標準スペクトル応答をマルチモードファイバのスペクトル応答にしてしまうか、いずれかの結果を得る。
【0060】
ケーブル配線遮断波長、または「ケーブル遮断」は通例は測定されたファイバ遮断よりも低いが、これは、ケーブル配線環境の曲げと機械圧のレベルのほうが高いのが原因である。実際のケーブル配線条件は、米国電子産業同盟規格EIA-445の光ファイバ試験手順(FOTP)に記載されているケーブル配線遮断試験により近似させることができるが、これは、EIA-TIAの光ファイバ規格、すなわち、米国電子産業同盟・米国通信工業協会の光ファイバ規格の一部であり、FOTPの規格と呼ぶほうが広く周知されている。ケーブル遮断の測定は、EIA-455-170送信電力によるシングルモードファイバのケーブル遮断波長、すなわち、「FOTP-170」に記載されている。本明細書で別途の注記がない限り、光学特性(分散、分散勾配など)はLP01モードについての報告を記すものとする。
【0061】
光ファイバの曲げ抵抗は、所定の試験条件下で曲げが誘発した減衰により推し量ることができる。本明細書では、曲げ損失は芯棒巻付け試験により判定した。芯棒巻付け試験では、指定された直径を有する芯棒の周囲にファイバを巻き、巻付け配置にあるファイバの1550nm波長での減衰を判定する。曲げ損失は巻付け配置にない(真直ぐな)配置のファイバの減衰と比較した場合の、巻付け配置にあるファイバの減衰増加として報告する。本明細書では、曲げ損失は単位をdB/1巻きとして報告されており、1巻きは芯棒の外周を取り巻いてファイバを1回巻いたものに一致する。
【0062】
1550nm波長におけるモードフィールド径(MFD)のケーブル遮断波長に対する比率(1550nm波長でのMFD/ケーブル遮断波長、単位μm)は、本明細書ではMACCと定めている。
【0063】
導波路ファイバ通信リンク、略してリンクは、光信号の送信機と、光信号の受信機と、或る長さの1本または複数本の導波路ファイバであって、ファイバそれぞれの両端が送信機および受信機に光接続されていることで双方の間で光信号を伝播させるようにした導波路ファイバとから構成されている。導波路ファイバの長さは複数のより短い長さ部分から構成されており、該複数の長さ部分は端と端を直列に配置して重ね継ぎまたは接合により一緒にすることができる。リンクには更に別な光学構成部材が設けられていてもよく、例えば、光増幅器、光減衰器、光アイソレータ、光スイッチ、光フィルタ、多重化装置または分波装置などが挙げられる。1群の相互接続されたリンクを通信システムとして示す場合もある。
【0064】
本明細書で使用されるような或るスパンの光ファイバには、或る長さの1本の光ファイバまたは複数本が一緒に直列融着された光ファイバが含まれるが、これらファイバは光デバイス相互間、例えば、2つの光増幅器相互の間や、多重化装置と光増幅器の間に伸びている。スパンとは、本明細書に開示されているような光ファイバの1つ以上の区分を含んでいることもあり、また、例えば、スパンの端付近の残留分散などのような、所望のシステム性能またはパラメータを達成するために選択されるような他の光ファイバの1つ以上の区分を更に含んでいることもある。
【0065】
図1は本発明の光ファイバの一実施形態の横断面図を例示しており、概ね各文書全体に亘り参照番号10で示されている。光ファイバ10には、中心ファイバ軸線22(光ファイバ10の中心線であり、放射方向位置r=0を規定している)がある。導波路ファイバ10はコア12を備えており、その実効断面積(A
eff)は1550nm波長においては70μm
2より広く(1550nm波長において、例えば、70μm
2ないし110μm
2、75μm
2ないし104μm
2、または、75μm
2ないし97μm
2)、α値は1.5≦α≦10の範囲である。導波路ファイバ10は、コアを包囲しているクラッド20を備えている。実施形態によっては、コアとクラッドとの間に介在層または介在領域が存在していてよいものもある。コア領域の屈折率プロファイルは、減衰損失を最小限に抑えるように設計されているとよい。
【0066】
以下にさらに説明してゆくように、コア領域の相対屈折率とクラッド領域の相対屈折率とは異なっていてもよい。上記領域は各々がシリカガラスまたはシリカ系ガラスから形成されているとよい。シリカ系ガラスは、1種類以上の元素で不純物添加処理したシリカガラス、すなわち、改質されたシリカガラスである。屈折率の変動は、当業者に周知の各種技術を利用して目標の屈折率または屈折率プロファイルをもたらすことが分かっているレベルでアップドーパントまたはダウンドーパントを組み入れることによって達成するとよい。アップドーパントは、ドープ剤による不純物添加処理されていないガラス組成と比較して、ガラスの屈折率を増加させるドープ剤である。ダウンドーパントは、ドープ剤処理されていないガラス組成と比較して、ガラスの屈折率を低下させるドープ剤である。一実施形態では、ドープ剤による不純物添加処理されていないガラスは純シリカガラスである。ドープ剤による不純物添加処理されていないガラスが純シリカガラスである場合は、アップドーパントとしては、Cl、Br、Ge、Al、P、Ti、Zr、Nb、Taなどが挙げられ、ダウンドーパントとしては、F、Bなどが挙げられる。屈折率が一定である領域は不純物添加処理をせずに形成されてもよいし、或いは、均一な濃度で不純物添加処理することにより形成されるとよい。ドープ剤の空間分布が不均一であるのが原因で、屈折率にばらつきがある領域が形成される恐れがある。
【0067】
コアは光ファイバの中心部分を形成しており、形状が概ね円筒形であることが分かる。更に、クラッド領域は形状が概ね環状であることも分かる。環状領域は、内半径と外半径の観点から特徴付けることができる。本明細書では、半径位置r1および半径位置r2は、それぞれに、第1コア領域の最外半径および第2コア領域の最外半径を指している。2つの領域が互いに直に隣接し合っている場合、その2つの領域のうちの内側のものの外半径は、その2つの領域のうち外側のものの内半径と一致している。一実施形態では、例えば、ファイバは第1コア領域を含んでいる。そのような実施形態では、半径r1は、第1コア領域の外半径に一致している。
【0068】
このファイバの具体例の屈折率プロファイル(半径に対する相対屈折率Δ)を
図2に概略的に示している。
図2は、半径位置r
0から半径位置r
1にまで及んでいるとともに相対屈折率がΔ
1である第1コア領域16と、半径位置r
1から半径位置r
2にまで及んでいるとともに相対屈折率がΔ
2である第2コア領域18とを有しているファイバの相対屈折率プロファイルを示している。プロファイルでは第1コア領域16が最も高い相対屈折率を有している。
【0069】
図2に示されている実施形態では、コア12は、第1コア領域16と、第1コア領域16を包囲しているとともにそこに直に隣接している第2コア領域18とから構成されている。本明細書で使用されている場合、「直に隣接している」とは、直接的な物理的接触状態にあることを意味しており、直接的な物理的接触とは触れ合っている関係を指す。
【0070】
実施形態によっては、コア12はゲルマニウム(Ge)を含まない場合もある。
【0071】
第1コア領域16はα値が1.5≦α≦10(例えば、2≦α≦8、1.5≦α≦6、1.5≦α≦4.5、2≦α≦4、または、2≦α≦3.5)の範囲であり、外半径r1にまで及んでおり、その場合、2.5μm≦r1≦8μmであり、3μm≦r1≦7μmであるのが推奨されるが、3.5μm≦r1≦6μmであるのがより推奨される。第1コア領域16はまた、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ1(r)を示し、最小相対屈折率Δ1MINおよび最大相対屈折率Δ1MAXを有し、半径r=2μmで測定された相対屈折率Δ1の範囲(a)は、-0.15≦Δ1(r=2μm)≦0.1である。実施形態によっては、-0.08≦Δ1(r=2μm)≦0.1、または-0.15%≦Δ1(r=2μm)≦0.05である場合もある。実施形態によっては、Δ1MAX=Δ1(r=2μm)である。実施形態によっては、-0.35%≦Δ1MIN≦-0.05%のものもあり、例えば、-0.3%≦Δ1MIN≦-0.1%、または、-0.35%≦Δ1MIN≦-0.1%である場合もある。
【0072】
実施形態によっては、第2コア領域18はフッ素添加処理されている。第2コア領域18は、第1コア領域16を包囲しているうえにそこに直に隣接している。通常、本明細書に記載の各実施形態によれば、第2コア領域18は、0.6重量%ないし2.5重量%のフッ素を含有しており、例えば、0.6重量%ないし2重量%、または、0.9重量%ないし2重量%を含有している。
【0073】
第2コア領域18は、10μm≦r2≦22μm(例えば、11μm≦r2≦20μmまたは12μm≦r2≦18μm)の範囲の半径r2にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とする負の相対屈折率百分率プロファイルΔ2(r)を示す。相対屈折率Δ2は第1コア領域16の相対屈折率Δ1以下になるようにすることで、第2コア領域18がコア12の相対屈折率プロファイルにトレンチ(溝)を形成するようにしてもよい。本明細書で使用される場合、「トレンチ」という用語は、放射方向横断面で、第1コア領域16とクラッド20によって包囲されているコア12の領域を指す。クラッド屈折率は基準点として20ミクロン(μm)に設定されており、トレンチ量の算定は20ミクロン(μm)のクラッド屈折率基準点に基づいている。実施形態によっては、第2コア領域18のトレンチ量Vが14%Δμm2以下であるものもある。実施形態によっては、第2コア領域18のトレンチ量Vが、0%Δμm2ないし8%Δμm2である場合もある。実施形態によっては、第2コア領域18のトレンチ量Vが4%Δμm2ないし8%Δμm2である場合もある。実施形態によっては、第2コア領域18のトレンチ量Vが4%Δμm2ないし6%Δμm2である場合もある。
【0074】
最小相対屈折率百分率Δ2MINの範囲(a)は、Δ2MIN≦Δ1(r=2μm)かつΔ2MIN≦Δ1MINである。幾つかの好ましい実施形態では、-0.47%≦Δ2MIN≦-0.3%であり、他の好ましい各実施形態では、-0.46%≦Δ2MIN≦-0.36%である。例えば、Δ2MINは、-0.29%、-0.3%、-0.35%、-0.38%、-0.4%、-0.42%、-0.47%、または、これらの数値間にあればどのような数値であってもよい。少なくとも幾つかの実施形態で-0.35%≦Δ2(r=r1)≦-0.05%であることに留意するべきである。
【0075】
第2コア領域18が比較的平坦な屈折率プロファイルΔ2MAX-Δ2MIN≦0.03%を示している場合、半径r2はクラッド20の始まりに一致するものと定義されることに留意するべきだる。具体例によっては、第2コア領域18は、クラッド20の始まりの直前の、半径r2でΔ2MIN値に達する。
【0076】
実施形態によっては、比率r2/r1が1≦r2/r1≦9を満たすものもある。r1≦8μm、尚且つ、r2≦20μmであるのが推奨される。実施形態によっては、該比率が2.5≦r2/r1≦5(または、0.2≦r1/r2≦0.4)を満たす場合もある。
【0077】
クラッド20はコア12を包囲しているとともに、純シリカに相対的に測定されて単位を%とする相対屈折率百分率Δ3(r)がΔ3(r)≧Δ2MINであるのを示すが、その場合、遮断は1260nm以下である。実施形態によっては、遮断が1530nm以下である場合、Δ3(r)はΔ2以下である。幾つかの具体的な実施形態では、Δ3(r)≧Δ2MINである。幾つかの具体的な実施形態では、Δ3(r)≧Δ2MAXである。クラッド20は、最小相対屈折率百分率Δ3MINを-0.4%≦Δ3MIN≦-0.2%の範囲で示しているのが推奨される。実施形態によっては、Δ3MINは-0.4%未満であるものもある。クラッド20は半径r3にまで及んでいる。幾つかの具体的な実施形態では、コア12およびクラッド20は、ダウンドーパントとしてフッ素(F)を含有している。第1コア領域16中の、また、第2コア領域18中のフッ素の量は、半径の増加に伴って増大するのが推奨される。フッ素濃度は0重量%から2.0重量%まで増大し得るのが推奨されるが、より推奨されるのは0重量%から1.8重量%までの増大で、例えば、0重量%から1.6重量%まで増大するのがより推奨される。
【0078】
幾つかの具体的な実施形態では、コア12は少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物ドープ剤を含有しており、例えば、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、リベジウム(Rb)などがある。幾つかの具体的な実施形態では、コア12は、K2Oをカリウム(K)の重量にして5ppmないし1000ppmの量で含有しており、カリウム重量にして5ppmと500ppmの間の量がより推奨され、カリウム重量にして5ppmと300ppmの間の量が最も推奨される。光ファイバ10は塩素を含有していてもよい。塩素の量はコア12中の重量にして3500ppm未満であり、尚且つ、クラッド20中の重量にして500ppm未満であるのが推奨される。実施形態によっては、光ファイバは塩素(Cl)添加処理されたコアを備えているものもあり、その場合、第1コア領域16中の塩素は1500ppmないし10000ppm、または、1500ppmないし3500ppmである。塩素添加処理されたコアは塩素添加の量に基づいて屈折率を上昇させることになるせいで、光ファイバの周囲の各区分はそれに応じてコアに対して調整されることになる。 「ppm」という用語は、別途の特記がない限り、重量にして百万分の1すなわち重量ppmを指しており、重量に基づく測定値は1万分の1で乗算することによりppmに変換することができる。
【0079】
光ファイバ10の相対屈折率プロファイルは、1550nmの波長λで0.17dB/km以下の減衰、例えば、1550nmの波長λで0.145dB/kmないし0.17dB/kmの減衰をもたらすよう選択されるが、0.145dB/kmないし0.165dB/kmがより推奨され、0.145dB/kmないし0.160dB/kmが最も推奨される。減衰値は、1550nmの波長λで0.15dB/kmないし0.17dB/km、または、0.145dB/kmないし0.165dB/kmであればよいが、例えば、0.149dB/km、0.15dB/km、0.152dB/km、0.153dB/km、0.155dB/km、0.158dB/km、0.16dB/km、0.162dB/km、0.165dB/km、0.168dB/km、0.17dB/km であってもよい。
【0080】
少なくとも幾つかの実施形態では、光ファイバは零分散波長λ0を有しており、1300nm≦λ0≦1324nmである。少なくとも幾つかの実施形態で、光ファイバは1310nm波長でのモードフィールド径(MFD)が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)である。少なくとも幾つかの実施形態で、光ファイバは1550nm波長でのモードフィールド径(MFD)が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)である。少なくとも幾つかの実施形態では、光ファイバはケーブル遮断が1530nm未満である。少なくとも幾つかの実施形態では、光ファイバはケーブル遮断が1260nm未満である。
【0081】
実施形態によっては、ファイバを30mm径の芯棒に巻き付けた場合、1550nm波長でのマクロベンド損失は0.75dB/1巻き未満であるものもある。実施形態によっては、ファイバを40mm径の芯棒に巻き付けた場合、1550nm波長でのマクロベンド損失は0.5dB/1巻き未満であるものもある。実施形態によっては、ファイバを50mm径の芯棒に巻き付けた場合、1550nm波長でのマクロベンド損失は0.05dB/1巻き未満であるものもある。実施形態によっては、ファイバを60mm径の芯棒に巻き付けた場合、1550nm波長でのマクロベンド損失は0.005dB/1巻き未満であるものもある。
【0082】
図3は、本件開示の或る実施形態による3種類の具体例のシングルモード光ファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ファイバULLP0のグラフは、モデル化したトレンチ量が14.5%Δμm
2である比較例ファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ファイバULLP1のグラフは、モデル化したトレンチ量が8.75%Δμm
2 である本件開示による或るファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ファイバULLP2のグラフは、モデル化したトレンチ量が6.36%Δμm
2である本件開示によるファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ファイバULLP3のグラフは、モデル化したトレンチ量が4.16%Δμm
2である本件開示による或るファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ファイバULLP1、ファイバULLP2、および、ファイバULLP3の各プロファイルでは、ファイバULLP0の比較プロファイルと比較して、第2界面部位を減少させることで、より低いトレンチ量を達成している。表1、表2、および、表3は、トレンチ量が14%Δμm
2以下である具体例のファイバ1ないしファイバ12の光学特性を列挙している。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
本発明のファイバのコアおよびクラッドは、当技術分野で周知の各種の方法により、単一工程の操作または多数工程の操作で製造することができる。好適な方法としては、火炎燃焼法、火炎酸化法、火炎加水分解法、外付け気相成長法(OVD)、内付け気相成長法(IVD)、気相軸付け法(VAD)、二重るつぼ法、ロッド・イン・チューブ法、ケーン・イン・スート法、不純物添加堆積シリカ法などが挙げられる。多様な化学気相成長(CVD)法が周知であり、本発明の光ファイバに使用されるコア領域およびクラッド領域を製造するのに適している。これらには、外付け化学気相成長法、軸付け気相成長法、改良版化学気相成長(MCVD)法、内付け気相成長法、プラズマ化学気相成長(PECVD)法などが含まれている。
【0087】
シリカに適した前駆体には、塩化ケイ素(SiCl4)や各種の有機ケイ素化合物などが挙げられる。有機ケイ素化合物としては、炭素を含む各種のケイ素化合物が挙げられる。有機ケイ素化合物が、酸素、水素、または、その両方を含んでいる場合もある。有機ケイ素化合物の具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、シリコンアルコキシド類(Si(OR)4)、オルガノシラン類(SiR4)、Si(OR)xR4-xなどが挙げられるが、ここで、Rは炭素含有有機基または水素であり、また、Rは、少なくとも1つのRが炭素含有有機基であるという条件付きで、存在物質ごとに同じであっても異なっていてもよい。塩素添加処理に適した前駆体には、塩素(Cl2)、テトラクロロシラン(SiCl4)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)、ヘキサクロロジシロキサン(Si2OCl6)、トリクロロシラン(SiCl3H)、テトラクロロメタン(CCl4)などが挙げられる。フッ素添加処理に適した前駆体には、フッ素(F2)、テトラフルオロメタン(CF4)、テトラフルオロシラン(SiF4)などがある。
【0088】
本発明の真髄または範囲から逸脱することなしに多様な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかになるであろう。本発明の真髄および内容を組み込んでいる本件開示の実施形態の各種コンビネーション、各種サブコンビネーション、および、各種変形が当業者に想起され得るのであるから、本発明は、添付の特許請求の範囲の各請求項とその均等物の範囲に入るすべてを含むものと解釈されるべきである。
【0089】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0090】
実施形態1
シングルモード光ファイバであって、該光ファイバ、
α値が1.5≦α≦10の範囲にあるとともに2.5μm≦r1≦8μmを満たす外半径r1にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ1(r)を示しており、最小相対屈折率Δ1MINおよび最大相対屈折率Δ1MAXを有しており、該相対屈折率が半径r=2μmで測定された場合-0.35≦Δ1MIN≦-0.05である第1コア領域と、
第1コア領域を包囲しているとともにそこに直に隣接しており、10μm≦r2≦22μmを満たす外半径r2にまで及び、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした負の相対屈折率百分率プロファイルΔ2(r)を示し、最小相対屈折率百分率Δ2MINが-0.47%≦Δ2MIN≦-0.3%であり、量Vが14%Δμm2以下ある第2コア領域と、
該コアを包囲しており、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ3(r)を示し、最小相対屈折率Δ3MINが-0.45%≦Δ3MIN≦-0.2%であるクラッド領域とを備えており、
該光ファイバはケーブル遮断が1260nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)、および、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である。
【0091】
実施形態2
実施形態1の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが0%Δμm2ないし9%Δμm2である。
【0092】
実施形態3
実施形態1の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが4%Δμm2ないし9%Δμm2である。
【0093】
実施形態4
実施形態1の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし7%Δμm2である。
【0094】
実施形態5
実施形態1の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし9%Δμm2である。
【0095】
実施形態6
実施形態1の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、30mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.75dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0096】
実施形態7
実施形態1の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、40mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.5dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0097】
実施形態8
実施形態1の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、50mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.05dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0098】
実施形態9
実施形態1の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、60mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.005dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0099】
実施形態10
実施形態1の光ファイバにおいて、1≦r2/r1≦9、r1≦8μm、尚かつ、r2≦20μmである。
【0100】
実施形態11
実施形態1の光ファイバにおいて、2.5≦r2/r1≦5である。
【0101】
実施形態12
実施形態1の光ファイバにおいて、上記光ファイバが零分散波長λ0を示し、1300nm≦λ0≦1324nmである。
【0102】
実施形態13
実施形態1の光ファイバにおいて、上記光ファイバが1db/km以下のマイクロベンド損失を示す。
【0103】
実施形態14
シングルモード光ファイバであって、該光ファイバは、
α値が1.5≦α≦10の範囲にあるとともに2.5μm≦r1≦8μmを満たす外半径r1にまで及んでおり、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ1(r)を示しており、最小相対屈折率Δ1MINおよび最大相対屈折率Δ1MAXを有しており、該相対屈折率が半径r=2μmで測定された場合-0.35≦Δ1MIN≦-0.05である第1コア領域と、
第1コア領域を包囲して環状をなしているとともにそこに直に隣接しており、10μm≦r2≦22μmを満たす外半径r2にまで及び、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした負の相対屈折率百分率プロファイルΔ2(r)を示し、最小相対屈折率百分率Δ2MINが-0.47%≦Δ2MIN≦-0.3%であり、量Vが14%Δμm2以下ある第2コア領域と、
該コアを包囲しており、純シリカに相対的に測定されて単位を%とした相対屈折率百分率プロファイルΔ3(r)を示し、最小相対屈折率百分率Δ3MINが-0.55%≦Δ3MIN≦-0.3%であるクラッド領域とを備えており、
該光ファイバはケーブル遮断が1530nm未満であり、1310nm波長でのモードフィ-ルド径が8.6ミクロン(μm)ないし9.7ミクロン(μm)、1550nm波長でのモードフィ-ルド径が9.9ミクロン(μm)ないし11ミクロン(μm)、および、1550nm波長での減衰が0.17dB/km以下である。
【0104】
実施形態15
実施形態14の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが0%Δμm2ないし9%Δμm2である。
【0105】
実施形態16
実施形態14の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが4%Δμm2ないし9%Δμm2である。
【0106】
実施形態17
実施形態14の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし7%Δμm2である。
【0107】
実施形態18
実施形態14の光ファイバにおいて、上記環状の第2コア領域の量Vが2%Δμm2ないし9%Δμm2である。
【0108】
実施形態19
実施形態14の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、60mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.005dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0109】
実施形態20
実施形態14の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、30mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.75dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0110】
実施形態21
実施形態14の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、40mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.5dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0111】
実施形態22
実施形態14の光ファイバにおいて、上記光ファイバが、50mm径の芯棒に巻き付けられた場合、0.05dB/1巻き未満のマクロベンド損失を示す。
【0112】
実施形態23
実施形態14の光ファイバにおいて、1≦r2/r1≦9、r1≦8μm、尚かつ、r2≦20μmである。
【0113】
実施形態24
実施形態14の光ファイバにおいて、2.5≦r2/r1≦5である。
【0114】
実施形態25
実施形態14の光ファイバにおいて、上記光ファイバが零分散波長λ0を示し、1300nm≦λ0≦1324nmである。
【0115】
実施形態26
実施形態14の光ファイバにおいて、上記光ファイバが1db/km以下のマイクロベンド損失を示す。
【符号の説明】
【0116】
10 光ファイア
12 コア
16 第1コア領域
18 第2コア領域
20 クラッド
22 中心ファイバ軸線
【国際調査報告】