(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】金属箔、それを備えた金属箔を有するキャリア、及びそれを含むプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/09 20060101AFI20231219BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H05K1/09 A
H05K1/03 630H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535734
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2021018712
(87)【国際公開番号】W WO2022124842
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0172267
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514122502
【氏名又は名称】ワイエムティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポ ムク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ クン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ナク ウン
(72)【発明者】
【氏名】シム、チュ ヨン
【テーマコード(参考)】
4E351
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351BB30
4E351BB33
4E351CC14
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD10
4E351DD19
4E351DD54
4E351GG07
(57)【要約】
本発明は、粗面を有する金属箔、前記金属箔を備えたキャリア付き金属箔、及び前記金属箔を用いて製造されたプリント回路基板に関する。前記粗面は、前記金属箔の形成時に自然に形成される。前記粗面を形成することにより、前記金属箔に絶縁樹脂基板に対する高い接着強度を持たせることができ、改善された効率でプリント回路基板を製造することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の頂部が平坦な突起を備えた金属箔。
【請求項2】
前記複数の突起の各々が、円錐台形状又は多角錐台形状を有する突出部、及び前記突出部の上端に形成された平坦部を備える、請求項1に記載の金属箔。
【請求項3】
前記突出部が、前記突出部の表面上に形成された複数のマイクロ突起を有する、請求項2に記載の金属箔。
【請求項4】
前記突出部が、0.05~0.3μmの表面粗さ(Ra)を有する、請求項2に記載の金属箔。
【請求項5】
前記突出部の高さ(b)の、前記突出部の基部の長さ(a)に対する比が、0.4:1~1.5:1(b:a)である、請求項2に記載の金属箔。
【請求項6】
前記平坦部の長さ(c)の、前記突出部の基部の長さ(a)に対する比が、0.1:1~0.7:1(c/a)である、請求項2に記載の金属箔。
【請求項7】
前記多角錐台形状が、五角錐台形状、六角錐台形状、七角錐台形状、及び八角錐台形状からなる群より選択される、請求項2に記載の金属箔。
【請求項8】
前記複数の突起が、無電解めっきによって形成される、請求項1に記載の金属箔。
【請求項9】
キャリア、前記キャリア上に形成された剥離層、及び前記剥離層上に形成された金属層を備え、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の金属箔が前記金属層として用いられる、キャリア付き金属箔。
【請求項10】
金属回路層を備えたプリント回路基板であって、回路配線が形成された請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の金属箔が、前記金属回路層として用いられる、プリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面を有する金属箔、それを備えた金属箔を有するキャリア、及び前記金属箔を用いて製造されたプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板は、典型的には、金属箔を絶縁樹脂基板に接着し、回路配線のために金属箔をエッチングすることによって製造することができる。回路配線中に金属箔が剥離することを防止するために、金属箔と絶縁樹脂基板との間の高い接着強度が必要とされる。
【0003】
金属箔と絶縁樹脂基板との間の接着性を高めるために、様々な提案が成されてきた。例えば、金属箔と絶縁樹脂基板との間の接着強度は、金属箔の面を粗面化して面上に凹凸を形成し、金属箔の凹凸面上に絶縁樹脂基板を置き、絶縁樹脂基板をプレスして絶縁樹脂基板を金属箔に接着することによって高められる。具体的には、特許文献1は、樹脂層側の銅箔の面の電解、ブラスト処理、又は酸化-還元による粗い突起の形成によって銅箔と樹脂層との間の接着性を向上させる方法を開示している。
【0004】
しかし、この方法は、金属箔のさらなる粗面化がプリント回路基板の製造効率を低下させるという問題点を有する。さらに、金属箔の面上に凹凸を形成することは、高周波数シグナルの伝送効率を低下させることもある。携帯型電子デバイスの性能がますます向上して行く傾向にある中で、高周波数シグナル伝送の損失は、大量の情報を迅速に処理するために最小限に抑える必要がある。しかし、凹凸は、金属箔の面を非常に粗くして、高周波数シグナル伝送に対する障害物となり、結果として、非効率的な高周波数シグナル伝送をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2018-0019190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、絶縁樹脂基板に対する高い接着強度を有し、高周波数シグナルの伝送効率の低下を防止することができる金属箔を提供することを意図する。
【0007】
本発明はまた、前記金属箔を備えたキャリア付き金属箔を提供することを意図する。
【0008】
本発明はまた、前記金属箔を備えたプリント回路基板を提供することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数の頂部が平坦な突起を備えた金属箔を提供する。
【0010】
前記複数の突起の各々は、円錐台形状又は多角錐台形状を有する突出部、及び前記突出部の上端に形成された平坦部を備えていてもよい。
【0011】
前記突出部は、前記突出部の表面上に形成された複数のマイクロ突起を有していてもよい。
【0012】
前記突出部は、0.05~0.3μmの表面粗さ(Ra)を有していてもよい。
【0013】
前記突出部の高さ(b)の、前記突出部の基部の長さ(a)に対する比は、0.4:1~1.5:1(b:a)であってもよい。
【0014】
前記平坦部の長さ(c)の、前記突出部の基部の長さ(a)に対する比は、0.1:1~0.7:1(c/a)であってもよい。
【0015】
前記多角錐台形状は、五角錐台形状、六角錐台形状、七角錐台形状、及び八角錐台形状からなる群より選択されてもよい。
【0016】
前記複数の突起は、無電解めっきによって形成されてもよい。
【0017】
本発明のさらなる態様は、キャリア、前記キャリア上に形成された剥離層、及び前記剥離層上に形成された金属層を備え、前記金属箔が前記金属層として用いられる、キャリア付き金属箔を提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、金属回路層を備えたプリント回路基板であって、回路配線が形成された前記金属箔が、前記金属回路層として用いられる、プリント回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る金属箔の面上に頂部が平坦な突起を形成することにより、金属箔に絶縁樹脂基板に対する高い接着強度をもたせることができ、高周波数シグナル伝送の損失を最小限に抑えることが可能となる。複数の突起は、無電解めっきの過程で本発明の金属箔上に自然に形成されるため、先行技術とは異なり、金属箔上に凹凸を形成するための追加の粗面化を行う必要性がなくなる。したがって、本発明に係る金属箔を使用することで、高い効率でプリント回路基板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る金属箔の面の一部を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る金属箔上に形成され得る突起の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書及び請求項で用いられる専門用語及び語は、通常の意味又は辞書の意味に限定されるものとして解釈されるべきではなく、本発明者が、自身の発明を最も良く表すように専門用語の概念を適切に定義できるという原理に基づいた、本発明の技術的思想に対応する意味及び概念として解釈されるべきである。
【0022】
ある要素が別の要素の「上に(on)」存在するとして言及される場合は、その要素は、前記他方の要素の上に直接存在してよく、又は介在要素が存在していてもよいことが理解される。ある要素及び別の要素が互いに対する位置を変化させる場合、「上に(on)」は、「下に(under)」として解釈される場合もある。
【0023】
次に、本発明について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1を参照すると、本発明の金属箔100は、複数の頂部が平坦な突起10を備える。突起10は、金属箔100の面から垂直方向上向きに突出している金属結晶粒子であってもよい。具体的には、複数の突起10の各々は、突出部11及び平坦部12を備えていてもよい。
【0025】
突起10の突出部11は、金属箔100の面から突出している部分であり、円錐台形状又は多角錐台形状を有していてもよい。具体的には、
図2に示されるように、突出部11は、平坦な面(側面)を持つ円錐台形状又は角のある面を持つ多角錐台形状を有する。この形状は、金属箔の絶縁樹脂基板に対する固定性を高めることができ、それによって、金属箔100を高い接着強度で絶縁樹脂基板に接着することができる。より具体的には、突出部11は、五角錐台形状、六角錐台形状、七角錐台形状、及び八角錐台形状からなる群より選択される少なくとも1種の多角錐台形状を有していてもよい。
【0026】
突出部11の各々は、その表面積を増加させることによって絶縁樹脂基板に対する接着性を高めるために、複数のマイクロ突起11aを有していてもよい。マイクロ突起11aを形成することにより、突出部11の表面粗さ(Ra)を0.05~0.3μm、特には0.08~0.2μmとすることができる。ここで、突出部11の表面粗さ(Ra)は、平坦部12を除いた突出部11の側面の表面粗さとして定められる。
【0027】
一方、各突出部11の高さ(b)の、突出部11の基部の長さ(a)に対する比は、0.4:1~1.5:1(b:a)、特には0.6:1~1.2:1(b:a)の範囲内であってもよい。比(b:a)が、上記で定める範囲内にある場合、金属箔100と絶縁樹脂基板との間の接着性を高めることができ、高周波数シグナル伝送の損失を最小限に抑えることができる。
【0028】
突起10の平坦部12は、突出部11の上端部の平坦面である。平坦部12は、円錐台形状又は多角錐台形状を有する突出部11の上面であってもよい。先行技術によると、粒子が、金属箔の面から鋭角的に又は丸く突出して、金属箔の面を非常に粗くする凹凸を形成する。凹凸を形成することにより、絶縁樹脂基板に対する接着性を高めることができるが、高周波数シグナル伝送の損失がもたらされる。対照的に、突起10の上面(上端部)を形成する平坦部12は、その平坦性によって、本発明の金属箔100に比較的低い表面粗さを持たせることができる。比較的低い表面粗さによって、高周波数シグナル伝送の損失が最小限に抑えられる。具体的には、平坦部12は、円形、楕円形状又は多角形の形状を有していてもよい。微細な凹凸が密に形成されて平坦面をもたらしてもよく、これも、平坦部12の範囲内に包含されると見なすことができる。
【0029】
突起10の各々において、平坦部12の長さ(c)の、突出部11の基部の長さ(a)に対する比は、0.1:1~0.7:1、特には0.2:1~0.6:1の範囲内であってもよい。比(c:a)が、上記で定める範囲内にある場合、金属箔100と絶縁樹脂基板との間の接着性を高めることができ、高周波数シグナル伝送の損失を最小限に抑えることができる。平坦部12の長さ(c)は、平坦部12の平面内の最大長さを意味する。
【0030】
金属箔100の単位面積(1μm2)当たりの突起10の数は、金属箔100と絶縁樹脂基板との間の接着性、高周波数シグナルの伝送効率、金属箔100の回路配線解像度などを考慮して、25以下、特には5~20、より特には7~15であってもよい。
【0031】
突起10は、無電解めっきによって形成されてもよい。具体的には、突起10は、無電解めっきによって金属シード箔を形成し、その後金属シード箔上で結晶粒を連続的に成長させることによって、金属箔100の面上に形成することができる。先行技術によると、凹凸は、金属箔の追加的な粗面化によって形成される。対照的に、複数の突起10は、本発明の金属箔100を形成する過程で、自然に粗面を形成する。したがって、追加の粗面化の必要性がなくなり、金属箔100の形成及び/又はプリント回路基板の製造を、高い効率で行うことができるようになる。加えて、無電解めっきは、電気めっきと比べて、金属箔100をより薄く、より多孔性のものとする。
【0032】
金属箔100の形成に用いられる無電解めっき溶液の組成は特に限定されず、金属イオン源及び窒素化合物を含んでいてもよい。
【0033】
金属イオン源は、具体的には、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅、スルファミン酸銅、及びこれらの混合物からなる群より選択される銅イオン源であってもよい。金属イオン源は、0.5~300g/L、特には100~250g/Lの濃度で存在していてもよい。
【0034】
窒素化合物は、金属イオンを拡散して、金属イオン源によって形成された金属シード箔の面上に複数の突起10を形成する。具体的には、窒素化合物は、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、ピリダジン、メチルピペリジン、1,2-ジ-(2-ピリジル)エチレン、1,2-ジ-(ピリジル)エチレン、2,2’-ジピリジルアミン、2,2’-ビピリジル、2,2’-ビピリミジン、6,6’-ジメチル-2,2’-ジピリジル、ジ-2-フリルケトン、N,N,N’,N’-テトラエチレンジアミン、1,8-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、テルピリジン、及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。窒素化合物は、0.01~10g/L、特には0.05~1g/Lの濃度で存在していてもよい。
【0035】
無電解めっき溶液は、キレート剤、pH調整剤、及び還元剤からなる群より選択される1種又は複数種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0036】
具体的には、キレート剤は、酒石酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、マロン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸二カリウム、ヒダントイン、1-メチルヒダントイン、1,3-ジメチルヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、ニトリロ酢酸、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、N-ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ペンタヒドロキシプロピルジエチレントリアミン、及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。キレート剤は、0.5~600g/L、特には300~450g/Lの濃度で存在していてもよい。
【0037】
具体的には、pH調整剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。pH調整剤は、無電解めっき溶液のpHを、8以上、特には10~14、より特には11~13.5に調整し得る。
【0038】
具体的には、還元剤は、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、グリオキシル酸、ホウ水素化合物、ジメチルアミンボラン、及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。還元剤は、1~20g/L、特には5~20g/Lの濃度で存在していてもよい。
【0039】
金属箔100を形成するための無電解めっきの条件は、金属箔100の厚さに応じて適宜調節され得る。具体的には、無電解めっき温度は、20~60℃、特には25~40℃であってもよく、無電解めっき時間は、2~30分間、特には5~20分間であってよい。
【0040】
無電解めっきによって形成される金属箔100の厚さは、5μm以下、特には0.1~1μmであってもよい。金属箔100の成分は特に限定されず、プリント回路基板の回路層を形成することができる任意の既知の金属であってもよい。具体的には、金属は、銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、及びこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0041】
本発明はまた、前記金属箔を備えたキャリア付き金属箔を提供する。具体的には、キャリア付き金属箔は、キャリア、剥離層、及び金属層を備え、前記金属箔が、金属層として用いられる。キャリア付き金属箔について、以下で詳細に説明する。
【0042】
本発明に係るキャリア付き金属箔のキャリアは、キャリア付き金属箔の輸送又は使用時に金属層が変形するのを防ぐ役割がある。キャリア300は、銅又はアルミニウムなどの金属から作製される。或いは、キャリア300は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、又はテフロンなどのポリマーから作製されてもよい。キャリアの厚さは、具体的には、10~50μmであってもよい。
【0043】
キャリア付き金属箔の剥離層は、絶縁樹脂基板に接着されたキャリア付き金属箔からキャリアが容易に除去されるように設計される。剥離層は、単層構造を有していてもよく、又は多層構造を有していてよい。具体的には、剥離層は、有機材料としての窒素環式化合物、並びにニッケル、モリブデン、コバルト、リン、マンガン、及び鉄からなる群より選択される金属を含有する単層構造を有していてもよい。或いは、剥離層は、窒素環式化合物から構成される有機層が、ニッケル、モリブデン、コバルト、リン、マンガン、及び鉄からなる群より選択される1種又は複数種の金属を含む合金層に接着されている多層構造を有していてもよい。剥離層は、30nm~1μmの厚さを有していてもよい。
【0044】
キャリア付き金属箔の金属層としては、上記金属箔が用いられるため、その詳細な説明は省略する。
【0045】
本発明のキャリア付き金属箔は、金属層の機械的強度及び導電性を高めるために金属層上に形成される電解金属層をさらに備えていてもよい。電解金属層は、金属層と同一の成分から構成されていてもよく、又は異なる成分から構成されていてもよい。
【0046】
本発明のキャリア付き金属箔は、金属層を錆から保護するために金属層上に形成される防錆層をさらに備えていてもよい。例えば、防錆層は、亜鉛又はクロムを含んでいてもよい。
【0047】
本発明のキャリア付き金属箔は、その性能を向上させるためにキャリアと剥離層の合金層との間に形成される拡散バリア層をさらに備えていてもよい。例えば、拡散バリア層は、ニッケル又はリンを含んでいてもよい。
【0048】
本発明のキャリア付き金属箔は、剥離層の有機層と金属層との間に形成される酸化バリア層をさらに備えていてもよい。例えば、酸化バリア層は、ニッケル又はリンを含んでいてもよい。
【0049】
本発明はまた、上記金属箔を用いて製造されるプリント回路基板を提供する。具体的には、本発明のプリント回路基板は、金属回路層及び絶縁樹脂層を備える。金属回路層は、上記金属箔に由来し、このことについて以下で述べる。
【0050】
プリント回路基板の金属回路層は、回路配線が形成されている層である。金属回路層は、上記金属箔上に回路配線を形成することによって得られる。金属箔は、プリント回路基板の小型化及び高解像度を確実にする。具体的には、本発明のプリント回路基板は、絶縁樹脂基板と金属箔とを接着して積層体を形成し、積層体をエッチングして金属箔上に回路配線を形成することによって製造される。金属箔は、高い接着強度で絶縁樹脂基板に接着され、比較的小さい厚さを有し、微細で高解像度の回路配線を金属箔上に形成することができる。加えて、金属箔上に形成される回路配線は、絶縁樹脂基板に対する高い接着強度を有する。
【0051】
回路配線の形成方法に対して、特に制限はない。例えば、回路配線は、サブトラクティブ法、アディティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法、又はモディファイドセミアディティブ法によって形成されてもよい。
【0052】
プリント回路基板の絶縁樹脂層は、金属回路層上に形成される絶縁層である。絶縁樹脂層は、本技術分野において周知の任意の適切な絶縁樹脂基板であってもよい。具体的には、絶縁樹脂層は、周知の樹脂が無機繊維又は有機繊維中に含浸された構造を有する樹脂基板であってもよい。例えば、樹脂基板は、プリプレグであってもよい。
【0053】
本発明のプリント回路基板は、絶縁樹脂基板を用いて製造されてもよく、又は絶縁樹脂基板を用いないコアレスプロセスによって製造されてもよい。
【0054】
本発明を、以下の例を参照してより具体的に説明する。しかし、これらの例は、例示の目的で提供されるものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な改変及び変更が可能であることは理解される。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
銅(Cu)箔キャリアを、剥離層(ニッケル及びモリブデンから構成される合金層+メルカプトベンゾトリアゾールナトリウムから構成される有機層)に接着して、積層体を作製した。積層体を、無電解めっき浴中で無電解めっきに掛けて、厚さ1μmの金属箔(銅箔)を剥離層上に形成した。金属イオン源として190~200g/LのCuSO4・5H2O、窒素化合物として0.01~0.1g/Lのグアニン、キレート剤として405~420g/Lの酒石酸カリウムナトリウム、pH調整剤としてNaOH、及び還元剤として28%のホルムアルデヒドを含有する無電解めっき溶液を、無電解めっきに用いた。無電解めっきは、30℃で10分間にわたって行った。
【0056】
[比較例1]
無電解めっきを、金属イオン源として200~210g/LのCuSO4・5H2O及びNiSO4・6H2O、窒素化合物として0.5~0.8g/Lの2,2-ビピリジン、キレート剤として405~420g/Lの酒石酸カリウムナトリウム、及び還元剤として28%のホルムアルデヒドを含有する無電解めっき溶液中、34℃で20分間にわたって行ったことを除いて、実施例1と同様にして金属箔(銅箔)を形成した。
【0057】
[試験例1]
実施例1及び比較例1で形成した金属箔の表面と断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)及びイオンビームクロスセクションポリッシャ(CP)で分析した。結果を
図3及び
図4に示す。
【0058】
図3及び
図4を参照すると、実施例1の本発明の金属箔は、複数の頂部の面が平坦な突起を有していた一方、比較例1の金属箔は、複数の頂部の面に角がある突起を有していた。
【0059】
[試験例2]
実施例1及び比較例1で形成した金属箔の各々の接着性を、以下の手順によって評価した。SUS板、クラフト紙、剥離フィルム、絶縁樹脂基板(DS-7409HG)、実施例1又は比較例1で形成した金属箔(剥離層を含む)、クラフト紙、及びSUS板を、この順番で積層し、真空下、3.5MPaの圧力及び200℃の温度で100分間にわたってプレスして、積層体を作製した。クラフト紙及びSUS板を、剥離層を介して積層体から除去した後、金属箔と絶縁樹脂基板との間の剥離強度を、IPC-TM-650試験法(BMSP-90P剥離試験機、試験速度:50mm/分、試験角度:90°)で評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0060】
表1の結果から分かるように、実施例1の本発明の金属箔を備えた積層体の金属箔と絶縁樹脂基板との間の剥離強度の方が高かった。
【0061】
[試験例3]
実施例1及び比較例1で形成した金属箔の各々を備えるプリント回路基板の高周波数シグナル伝送性能を、以下の手順によって評価した。銅箔(18μm厚)、絶縁樹脂基板(DS-7402、50μm厚)、及び実施例1又は比較例1で形成した金属箔を、この順番で積層し、mSAPによって配線(幅:40μm、長さ:10cm)を金属箔上に形成した。絶縁樹脂基板(DS-7402)及び銅箔を、配線を形成した金属箔上に積層し、スルーホール加工を施してプリント回路基板を製造した。プリント回路基板の高周波数シグナル伝送性能を、PNA N5225A(KEYSIGHT)を用いて測定した。S
21パラメータ(dB)を、10MHz~40GHzで測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0062】
表2の結果から、実施例1の金属箔を備えるプリント回路基板の高周波数シグナル伝送性能の方が高いことが示された。
【符号の説明】
【0063】
100:金属箔
10: 突起
11: 突出部
11a:マイクロ突起
12: 平坦部
【国際調査報告】