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特表2023-554020光学面をクリーニングするための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】光学面をクリーニングするための装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/62 20060101AFI20231219BHJP
   B08B 7/02 20060101ALI20231219BHJP
   B06B 1/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60S1/62 120D
B08B7/02
B60S1/62 110B
B06B1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535958
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021085483
(87)【国際公開番号】W WO2022128914
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2013212
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518202367
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド リール
(71)【出願人】
【識別番号】522111633
【氏名又は名称】セントラール リール アンスティテュート
(71)【出願人】
【識別番号】522111644
【氏名又は名称】ユニベルシテ ポリテクニーク オー-ド-フランス
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、ボードワン
(72)【発明者】
【氏名】ラビンダー、シュタニ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、ブルタグノル
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン、ペレ
【テーマコード(参考)】
3B116
3D225
5D107
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB51
3B116BC05
3D225AA11
3D225AC18
3D225AD22
5D107CC01
5D107CD03
5D107FF08
(57)【要約】
発明は:-光学面(10);-光学面に音響的に結合される少なくとも1つのウエーブトランスデューサー(70)を含む、光学面をクリーニングするためのクリーニングユニット(15)を備える装置(5)であって、ウエーブトランスデューサーは、圧電層(80)と、圧電層に接触する逆極性の電極(85)とを含み、光学面を伝播する少なくとも1つの表面超音波(W)又はラム波(W)を生成するように構成され;-光学面は、ウエーブトランスデューサーと重ならない少なくとも1つの光学的関心領域(100)を有し、装置は、光学的関心領域(100)を通して放射線(R)を検知及び/又は発するように構成される機器アイテム(20)を備える、装置(5)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(5)であって、
- 光学面(10)と、
- 前記光学面に音響的に結合される少なくとも1つのウエーブトランスデューサー(70)を含む、前記光学面をクリーニングするためのユニット(15)と、を含み、
前記ウエーブトランスデューサーは、圧電層(80)と、前記圧電層に接触する逆極性の電極(85)とを含み、前記光学面を伝播する少なくとも1つの超音波表面波(W)又はラム波(W)を生成するように構成され、
- 前記光学面は、前記ウエーブトランスデューサーと重ならない少なくとも1つの光学的関心領域(100)を有し、
前記装置は、前記光学的関心領域(100)を介して放射線(R)を検知及び/又は発するように構成される機器アイテム(20)を含む、装置(5)。
【請求項2】
前記ウエーブトランスデューサーは、前記機器アイテムの光学フィールド(F)の外側に配置される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光学的関心領域を介して前記光学装置により検知される前記放射線を、好ましくは当該放射線のみを、分析するように構成される処理ユニットを含む請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記トランスデューサーは、前記光学面の周辺部に配置される請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ウエーブトランスデューサーは、前記光学面のエッジから、前記光学面の長さの10%未満又は5%未満の距離にわたって延びる請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記トランスデューサーは、前記光学面のエッジから30mm未満、好ましくは20mm未満、好ましくは10mm未満の距離にわたって延びる請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記圧電層は、前記光学面の一面(45、90)上に延びる少なくとも1つのストリップ(B)を形成する請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記圧電層は、前記光学的関心領域を少なくとも部分的に縁取る周囲部(130)を形成する請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
同じ圧電層を共有する複数のウエーブトランスデューサーを含む請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ウエーブトランスデューサーは前記光学面と接触し、特に、例えば前記トランスデューサーを前記光学面に音響的に結合させる高分子接着剤によって、又は分子付着によって、又は前記光学面と前記圧電層との間に接着を提供する薄い金属層によって、又は前記圧電層の一部及び/又は前記光学面の一部を溶融するステップを含み、当該ステップに続いて前記圧電層及び前記光学面を一緒に圧縮するステップが行われるプロセスによって、前記トランスデューサーは前記光学面に固定され、前記光学面及び前記圧電層のそれぞれの溶融される部分が互いに接触する請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記光学面は、音響伝導部(150)、好ましくはガラスで作られる音響伝導部(150)、を含み、前記ウエーブトランスデューサーは、前記音響伝導部に対して音響的に結合され、好ましくは前記音響伝導部に接触する請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記光学面は、音響遮断部(180)及び前記音響伝導部(150)を含む積み重ね部を含み、これらは互いに積み重ねられる請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記音響伝導部は、前記音響遮断部に取り外し可能に取り付けられる請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記機器アイテムは、レンズ(178)である前記光学面を含み、又は前記光学面は、前記機器アイテムの保護部材(35)である請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
特に0.1MHz~60MHzに含まれる周波数を有する超音波表面波に関し、前記圧電層の厚さは、5*λ以下であり、好ましくは1.5*λ以下であり、好ましくはλ以下であり、或いは0.5*λ以下である請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記圧電層は、1μm~300μmの厚さを有する請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の装置を含む、ビークル、好ましくは自動化ビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して光学面に接触する物体をクリーニング除去するための装置に関する。
【発明の概要】
【0002】
様々な分野で、光学面上の物体、特に雨滴、氷又は雪、の付着に関連する影響を克服する必要がある。
【0003】
液滴を回転させることでそれらを表面から除去することは既知の慣行である。しかし、そのような技術は、数平方センチメートルよりも大きな面積を持つ表面には適していない。
【0004】
表面の疎水性をコントロールするための電界の使用も、例えばKR20180086173A1から、既知である。この技術は、(ElectroWetting On Devicesを表す)頭文字語EWODによって知られており、2つの電極間に電位差を与え、表面を電気的に分極させ、その濡れ性を変化させることを含む。そして分極の位置をコントロールすることで、滴を移動させることができる。しかし、この技術は特定の材料とともにしか実行されることができず、濡れ性がコントロールされる表面全体にわたって電極が特に精度良く配置されることが必要である。
【0005】
また、例えば動力車両のフロントガラスのワイパーによって、液体に機械的な力を加えることもよく知られた慣行である。しかし、ワイパーは、ドライバーに利用可能な視野を制限する。またそれは、フロントガラスの表面に堆積した油状の粒子を拡散する。また、ワイパーブレードのラバーは定期的に更新されることが必要である。
【0006】
更に、自律走行動力車両は、道路上の他の車両の距離や速度を検出するための多数のセンサーを含む。また、そのようなセンサー、例えばライダー(lidars)、は、天候及び泥はねの影響を受け、頻繁なクリーニングが必要である。しかしフロントガラス用ワイパーは、そのようなセンサーの小さな領域をクリーニングするのには適していない。また、車両内への組み込みを容易にするため、そのようなセンサーはコンパクトにすることが必要である。US2016/0170203A1は、超音波を利用して車載カメラをクリーニングするための装置を記載する。
【0007】
光学面から物体、特に液体、を効率的に除去するための装置が依然として必要とされている。
【0008】
発明は、このニーズに応えようとするものであり、以下を含む装置を提案する:
- 光学面、
- 光学面に音響的につながれた少なくとも1つのウエーブトランスデューサー(wave transducer)を含む、光学面をクリーニングするためのユニットであって、
ウエーブトランスデューサーが、圧電層と、圧電層に接触する逆極性の電極とを含み、光学面に伝播する少なくとも1つの超音波表面波又はラム(Lamb)波を発生させるように構成される、ユニット、
- 光学面は、ウエーブトランスデューサーと重ならない少なくとも1つの光学的関心領域を有し、
その装置は、光学的関心領域を通して放射線を検知及び/又は出射するように構成される機器アイテムを含む。
【0009】
したがって発明による装置は、超音波表面波の伝搬によって光学面が効率的にクリーニングされることを可能にし、それによって光学面に接触する物体、例えば雨滴、が光学面を介した放射線の効率的な伝達を妨げない。「層」という用語は、通常、表面上に塗布又は堆積された均一に広がったものを意味する。
【0010】
好ましくは、トランスデューサーは、機器アイテムの光学フィールドの外側に配置される。したがってトランスデューサーが機器アイテムに与えうる潜在的な遮光効果は、限定的である。光学面を介した放射線の検知及び/又は出射が最適化される。「光学フィールド」の用語は、機器アイテムが放射線を出射することができる空間の部分及び/又は放射線を検知することができる空間の部分を指す。
【0011】
放射線は、可視光線及び/又は赤外線及び/又は紫外線の放射線であってもよい。
【0012】
装置は、機器アイテムによって検知された全ての放射線の中から、光学的関心領域を通過した部分のみを分析するように構成される処理ユニットを含みうる。特に、そのような分析ユニットは、トランスデューサーの全部又は一部が機器アイテムの光学フィールド内に含まれる変形例において適合される。
【0013】
好ましくは、トランスデューサーは、光学面の外周部に配置される。したがって、このように、機器アイテムの機能とのその低い相互作用に加え、トランスデューサーは、例えば光学面を支える支持体によって、容易に保護されることができる。
【0014】
好ましくは、ウエーブトランスデューサーは、光学面の一エッジから、光学面の長さの10%未満又は5%未満の距離にわたって延びる。「光学面の長さ」という用語は、光学面の1つの面に沿って、光学面の2つの対向するエッジを隔てる距離を意味する。
【0015】
好ましくは、トランスデューサーは、光学面の一エッジから30mm未満、好ましくは20mm未満、好ましくは10mm未満の距離にわたって延びる。
【0016】
トランスデューサーは、好ましくは、光学面に接触している。
【0017】
トランスデューサーは、様々な方法で光学面に固定されうる。
【0018】
例えば、トランスデューサーは、光学面上に転写されるフォイル(foil)の形態をとりうる。「フォイル」という用語は、薄い可撓性フィルムを、特に100μm未満の厚さを持つものを、意味する。
【0019】
それは、特に音響的にもトランスデューサーを光学面に取り付けるポリマー接着剤によって、光学面に接着されうる。接着剤は紫外線硬化型であってもよい。それは、例えばエポキシ樹脂である。トランスデューサーは、光学面と圧電層との間の接着を提供する薄い金属層によって又は分子付着(molecular adhesion)によって、取り付けられうる。その層は、低融点、すなわち200℃よりも低い融点、を有する金属又は合金、例えばインジウム合金、で作られうる。変形例として、金属層は、200℃を超える融点を有する金属又は合金、例えばアルミニウム及び/又は金合金、で作られうる。
【0020】
分子付着を介した接合の例は、「Glass-on-LiNbO3 heterostructure formed via two-step plasma activated low-temperature direct bonding method」, J. Xu et al., Applied Surface Science 459 (2018) 621-629, doi: 10.1016/j.apsusc.2018.08.031において述べられている。別の変形例によれば、圧電層の一部及び/又は光学面の一部を溶融するステップを含むプロセスであって、その後に圧電層及び光学面を一緒に圧縮することを含むステップが続くプロセスによって、トランスデューサーは光学面に固定されうるものであり、光学面及び圧電層のそれぞれの溶融部分は互いに接触している。別の変形例によれば、低融点合金で作られる接着層をトランスデューサーの一部及び光学面の一部にそれぞれ堆積させることと、前記接着層を少なくとも部分的に溶融させることと、そして圧電層及び光学面を圧縮することとを含むプロセスであって、光学面及び圧電層に面した面と反対側の面である接着層の面が圧縮中に互いに接触させられることを含むプロセスによって、トランスデューサーは光学面に固定されてもよい。接着層は、カソードスパッタリングによって又は薄層の適用の分野で用いられる蒸発技術を使用して、適用されうる。
【0021】
トランスデューサーは、光学面と機器アイテムとの間に配置されてもよい。したがって、トランスデューサーは、光学面によって天候及び/又は突起物から保護されうる。好ましくは、トランスデューサーは、機器アイテムの反対側の面であって、堆積しうる物体、例えば雨滴、が接触する面に到達するように、ラム波を生成するように形作られる。
【0022】
ある変形例において、光学面は、トランスデューサーと機器アイテムとの間に配置されうる。そして好ましくは、トランスデューサーは、機器アイテムと対向する光学面の面に接触している。それは、その面を伝播する超音波表面波を出射するように構成されうる。特に、装置は、トランスデューサーに重ねられ且つトランスデューサーのための保護ハウジングを定めるように形作られたカバーを含みうる。
【0023】
好ましくは、圧電層は、光学面の面上に延びるストリップの形態である。好ましくは、そのストリップは、光学面のエッジに沿って、好ましくは光学面のエッジに平行に、延びる。
【0024】
特に、圧電層は、光学的関心領域を少なくとも部分的に、特に全体的に、縁取る周囲部を形成しうる。周囲部の外側輪郭及び/又は内側輪郭は、圧電層が適用される光学面のその面の輪郭と相似させうる。
【0025】
圧電層の厚さは、超音波表面波の波長λに基づいて選択されうる。好ましいものとして、圧電層の厚さは、特に0.1MHz~60MHzに含まれる周波数を有する超音波表面波に関し、5*λ以下であり、好ましくは1.5*λ以下であり、好ましくはλ以下であり、更に好ましくは0.5*λ以下である。
【0026】
圧電層は、1μm~300μmの厚さを有してもよい。それは、100μm以下、50μmよりも小さい、或いは10μmよりも小さい厚さを有してもよい。
【0027】
圧電層の厚さに対する光学面の厚さの比は、好ましくは2よりも大きく、より好ましくは10よりも大きく、更に好ましくは50よりも大きい。
【0028】
それは、物理蒸着、化学蒸着、マグネトロンスパッタリング及び電子サイクロトロン共鳴から選ばれるプロセスを用いて、光学面に適用されてもよい。
【0029】
圧電層は、ニオブ酸リチウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛及びそれらの混合物によって形成されるグループから選択される材料で作られてもよい。
【0030】
圧電層は、光に対して不透明であってもよい。ある変形例において、その層は透明であってもよい。
【0031】
「透明」の用語は、可視範囲の光放射に対して、及び/又は、赤外線範囲の放射に対して、及び/又は、紫外線範囲の放射に対して、透明であることを意味する。
【0032】
電極は逆極性であり、すなわちそれらは逆符号の電気電圧で電気的に電力供給されることが意図されている。
【0033】
極性電極は、各々、ブランチを含む櫛部を有してもよく、当該ブランチからフィンガーが延びる。その櫛部は、好ましくは、指間(interdigital)である。
【0034】
櫛部のフィンガーの各々は、超音波表面波又はラム波の基本波長を4で割った値に等しい幅を有していてもよく、櫛部の連続する2本のフィンガーの間隔は、超音波表面波又はラム波の基本波長を4で割った値に等しくてもよい。フィンガー間の間隔は、トランスデューサーの共振周波数を決め、当業者であれば容易にトランスデューサーの共振周波数を決めることができる。逆極性の電極に交流電圧を印加することは、圧電材料に機械的応答を誘発させて、結果として超音波表面波の又はラム波の発生をもたらし、それは光学面において伝播する。
【0035】
電極は、金属で作られてもよい。それらは、クロム、アルミニウム、又はチタンなどの付着促進層と金などの導電層との組み合わせによって、作られてもよい。
【0036】
変形例において、電極は、例えばインジウムスズ酸化物、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びそれらの混合物から選択される導電性透明酸化物から作られてもよい。特に、トランスデューサーは透明であってもよく、そのような電極とニオブ酸リチウム又は酸化亜鉛の透明圧電層とから形成されてもよい。したがって、トランスデューサーは、例えば光学面のクリーニングを最適化するために、影の付与によって機器アイテムの機能を著しく妨げることなく、機器アイテムの光学フィールドにおいて、有利に配置されうる。
【0037】
電極は、蒸発やスパッタリングによって圧電層が適用されてもよく、フォトリソグラフィーを用いて形作られてもよい。
【0038】
それらは、例えばインクジェット印刷を用いて、印刷されてもよい。特に、それらは、例えば柔軟な熱可塑性材料から作られる、フォイルに印刷されてもよく、圧電層上にフォイルを転写することで適用されてもよい。
【0039】
トランスデューサーは、0.1MHz~1000MHz、好ましくは10MHz~100MHzであってもよい、例えば40MHzに等しくてもよい基本周波数を有する、及び/又は、1ナノメートル~500ナノメートルとしうる振幅を有する超音波表面波又はラム波を出射するように、構成されてもよい。波の振幅は、超音波表面波が伝搬する光学面の面の法線変位に対応する。それは、レーザー干渉計を使って測定されることができる。
【0040】
超音波表面波は、光学面が超音波表面波の波長よりも大きな厚みを有する場合、レイリー波であってもよい。レイリー波は、波動エネルギーの最大割合が、それが伝搬する光学面の面に集中し、光学面上にある物体、例えば雨滴、に伝えられることができるため、好ましい。
【0041】
好ましくは、装置は少なくとも2つのトランスデューサーを、例えば5つよりも多いトランスデューサーを、或いは10よりも多いトランスデューサーを、含む。
【0042】
トランスデューサーは、平行な方向又は下線である方向に伝播する音響表面波を発するように構成されてもよい。例えば、本装置は、少なくとも3つのトランスデューサーを含み、当該少なくとも3つのトランスデューサーは、それらが生成できる波の伝搬の方向が共通の位置で交差するように、構成される。
【0043】
トランスデューサーは、それらが配置される光学面の面の輪郭上に、均等に分布されてもよい。
【0044】
好ましくは、トランスデューサーは同じ圧電層を共有する。つまり、各種トランスデューサーの電極は、同じ圧電層に接触していてもよい。したがってそのような装置は、トランスデューサーを形成するための電極の堆積のステップが後に続く圧電層の堆積のステップを連続して実施することで、製造することが容易である。
【0045】
光学面は、それが、それ自体の重さの下で壊れることなく、特に弾性的に、変形することができるという意味で、自らで支持されてもよい。
【0046】
超音波表面波又はラム波が伝播する光学面の面は、平面であってもよい。またそれは、面の曲率半径が超音波表面波の波長より大きいことを条件に、湾曲していてもよい。前記面は、でこぼこしていてもよい。その粗度長は、好ましくは超音波表面波の基本波長より短く、それによってその伝搬にそれらの大きな影響を避ける。
【0047】
光学面は、平面的であるか又は一方向に少なくとも1つの曲率を有するプレートの形態をとってもよい。特に、それはレンズであってもよい。プレートの厚みは、100μm~5mmとしうる。プレートの長さは、1mmよりも大きくてもよいし、1cmよりも大きくてもよいし、或いは1mよりも大きくてもよい。
【0048】
「光学面の厚さ」の用語は、超音波表面波又はラム波が伝播する面に垂直な方向に測定された光学面の最短寸法と考える。
【0049】
光学面は、水平に対して平らに設けられてもよい。変形例として、それは水平に対し、10°より大きい又は20°より大きい又は45°より大きい又は70°より大きい角度αで、傾斜していてもよい。それは鉛直方向に設けられてもよい。
【0050】
光学面は、好ましくは、特に可視光線に対して、又は紫外線若しくは赤外線に対して、光学的に透明である。
【0051】
更に、光学面は、音響的に伝導する部分の一方の面を覆う単層又は多層のコーティングを有してもよい。
【0052】
そのコーティングは、特に、疎水性層、反射防止層、又はこれらの層の積み重ねを含んでもよい。例えば、疎水性層はOTSの自己組織化単分子膜を含み、或いはフッ素系プラズマの堆積によって製造されてもよい。そのコーティングは、意図された用途(可視、IRなど)に応じて、1つ又は複数の反射防止層を含んでもよい。
【0053】
トランスデューサーは音響伝導部に接触していてもよく、疎水性層はトランスデューサーを完全に覆ってもよく、それによって水との接触からそれを保護する。変形例において、そのコーティングは、トランスデューサーと音響伝導部との間に位置する。
【0054】
好ましくは、光学面は音響伝導部を含み、トランスデューサーは音響伝導部に、音響的に連結され、好ましくは音響伝導部に接触している。
【0055】
音響伝導部は、好ましくは透明である。
【0056】
音響伝導部は、好ましくは、光学面の長さよりも大きい減衰長、又は光学面の長さの10倍よりも更に大きい減衰長、又は実際には光学面の長さの100倍よりも更に大きい減衰長を有する。
【0057】
音響伝導部は、超音波表面波又はラム波を伝搬させることができるどのような材料によって作られてもよい。好ましくは、それは、1MPaよりも大きい、例えば10MPaよりも大きい、或いは100MPaよりも更に大きい、或いは実際には1000MPaよりも更に大きい、或いは実際には10000MPaよりも更に大きい弾性率を有する材料で作られる。そのような弾性率を持つ材料は、特に超音波表面波又はラム波の伝搬に適した剛性を持つ。
【0058】
好ましくは、音響伝導部は、ガラス又はPlexiglas(登録商標マーク)の商品名でも知られているポリ(メチルメタクリレート)で作られる。
【0059】
光学面は、音響伝導部を含んでもよい。
【0060】
変形例において、光学面は、音響遮断部を、すなわち超音波表面波又はラム波を吸収する部分を、光学面の長さよりも小さい距離又は光学面の長さの0.1倍よりも小さい距離にわたって含んでもよい。音響遮断部は、好ましくは、音響導電部と重ね合わされ、特に一体的である。音響遮断部は、音響伝導部を完全に覆っていてもよい。好ましくは、音響遮断部は、ポリカーボネートで作られている。他のゴム又はプラスチック材料も想定されうる。
【0061】
音響遮断部は、好ましくは透明である。
【0062】
特に、音響遮断部と音響伝導部とは、一方が他方の上に重ね合わされてもよく、好ましくは互いに接触してもよい。特に、音響伝導部は、音響遮断部の厚さよりも少なくとも5倍小さい厚さを有してもよい。したがって、音響伝導部が超音波を伝えることでクリーニングを行う可能性を提供しつつ、音響遮断部は光学面に機械的強度を与えてもよい。
【0063】
音響伝導部は、音響遮断部に取り外し可能に取り付けられてもよい。したがって前記部分のうちの1つを、装置が動いているときに例えば石などの固形物との接触に続いてそれがダメージを受けた場合、交換することが容易に可能である。
【0064】
特に、音響伝導部は、可逆性接着剤を用いて音響遮断部に接着させてもよい。
【0065】
機器アイテムは、放射線を検知及び/又は出射するように構成される。このために、それは放射線センサー及び/又はエミッターを含む。
【0066】
特に、機器アイテムは、光学的リモートセンシング装置、例えばライダー、写真装置、カメラ、レーダー、赤外線センサー及び超音波レンジファインダー(ultrasonic range finder)から選択されてもよい。
【0067】
光学面は、センサー及び/又はエミッターに、特にセンサーを保護する手段として、重ね合わせられてもよい。好ましくは、光学面は、センサー及び/又はエミッターから距離を置いた位置にある。
【0068】
それは、放射線をセンサーの方に向けて又はエミッターから偏向させるように設計されたレンズであってもよい。
【0069】
変形例として、それは、例えばセンサー及び/又はエミッターを保護するための、光学的保護部材であってもよい。「光学的保護部材」は、それが、それを通過する放射線の光路を偏向させないようなものである。
【0070】
特に、機器アイテムは、レンズである光学面を含み、又は光学面は機器アイテムの保護部材である。
【0071】
装置は動力車両であってもよく、装置アイテムは、車両と物体との間の距離、車両の速度、交通車線に対する車両の位置、及び更に車両(トラック、自転車など)の性質又は物体の性質(一般人、動物など)などの任意の補足情報から選ばれる変数を取得するように構成される。
【0072】
変形例として、光学面は、特にマイクロ流体アプリケーションを目的とした、ラボ・オン・ア・チップ(lab-on-a-chip)の基板であってもよい。
【0073】
光学面は、固化しうる液体の結露にさらされる壁、例えば建物の窓ガラス、であってもよい。
【0074】
装置、特に機器アイテム、は、センサー及び/又はエミッターが収容されるハウジングを含んでもよく、光学面は、ハウジングに取り外し可能に取り付けられてもよい。特に、光学面は、センサー及び/又はエミッターを保護するように、ハウジングを気密に封止するような方法でハウジングに取り付けられてもよい。光学面は、特に、ハウジングにねじ止めされうるマウントに固定されてもよい。したがって光学面は、それがダメージを受けた場合に、容易に交換されてもよい。
【0075】
更に、クリーニングユニットは、トランスデューサーに電力を供給するための電気発生器を含んでもよく、それによってトランスデューサーが電気供給信号を超音波表面波に又はラム波に変換する。
【0076】
また、発明は、光学面に接触している物体を光学的関心領域から取り除くための発明による装置の使用に関する。
【0077】
その使用は、物体が固体状態の場合に物体を溶かすために及び/又は光学面の温度が、物体が固まる温度より低い場合に物体を液体状態に保つために、クリーニングユニットに電力を供給することを伴いうる。
【0078】
液体状態の物体は、少なくとも1滴の形態であってもよいし、少なくとも1枚のフィルムの形態であってもよい。超音波表面波のエネルギーは、液体状態の物体を光学面の面上で移動させるのに十分でありうる。物体は水を含んでもよく、とりわけ雨水や結露である。光学面の温度は、0℃よりも低くてもよい。物体は、例えば、霜や雪である。
【0079】
最後に、発明は、ビークル(vehicle)、好ましくは自動化ビークル、又は発明による装置を含むそのようなビークルの構成要素に関する。
【0080】
「自動化ビークル」という用語は、人間の運転者の介入なしに一般道路上で駆動されうるビークルを意味する。ビークルは、好ましくは、動力車両であり、特に、自動車又はトラックである。
【0081】
そのようなビークルの構成要素は、ヘッドランプモジュール、「ポッド」とも呼ばれる様々なセンサーの集合体を含むシステム、少なくとも1つのサイドウィンドウ、フロントスクリーン又はリアスクリーン、運転支援ユニットから選ばれうる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
発明は、その非限定的な実施例の以下の詳細な説明を読むことで、及び添付の図面を観察することで、より明確に理解されうるものであり、添付の図面において:
図1図1は、発明による装置の例を断面で模式的に示す。
図2図2は、装置の他の例を模式的に示す。
図3図3は、発明による装置の例の一部を正面から見て模式的に示す。
図4図4は、発明による装置の他の例の一部を正面から見て模式的に示す。
図5図5は、発明による装置の例の一部を断面で模式的に示す。
図6図6は、発明による装置の他の例の一部を断面で模式的に示す。
図7図7は、発明による装置の例を断面で模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
明瞭さのために、図面を構成する要素は必ずしも一定の縮尺では描かれていない。
【0084】
図1は、発明による装置5の第1の例を示す。
【0085】
装置は、光学面10と、光学面クリーニングユニット15と、機器アイテム20とを含む。
【0086】
機器アイテム20は、放射線Rを検知するセンサー25と、放射線Rをセンサーに向けて方向付けるためのレンズ30とを含む。変形例として又は追加で、それは放射線を発するエミッターを含んでいてもよい。例えば、その機器は、レーザー光を発して、そのレーザー光のうち物体によって反射された部分をそのお返しで検知するように構成されるライダーを含む。
【0087】
更に、レンズ30は任意的である。示されない実施例において、機器アイテムはそれを持たない。
【0088】
その機器アイテムは、それが放射線を検知することができるスペースの部分に対応する光学フィールドCを定める。この光学フィールドの外側では、放射線がセンサーに届くことができたとしても、後者はそれを検知することができない。
【0089】
光学面10は、センサー25を完全に覆い、したがって機器アイテムの保護部材35である。例えば、装置は、X方向に移動しうる動力車両に搭載され、光学面は、センサーと対向する光学面の面45に接触する塵、泥粒子及び雨滴などの物体40に対してバリアを形成する。
【0090】
更に、光学面は、センサーによって受けられる放射線に対して透明である。光学面は、例えば、ガラスで作られる。しかし、それは、可視領域の放射線に対しては不透明であるが、センサーが検知することが可能な放射線の波長に対しては透明である材料で作られてもよい。
【0091】
示される例において、光学面は、厚さe、例えば0.5mm~5mmである厚さeのディスクの形態である。変形例において、光学面は湾曲していてもよく、例えば、レンズの形状を有していてもよい。
【0092】
装置は、示されているように、センサーを収容するチャンバ55を画定するハウジング50を含んでいてもよい。チャンバ55は、特に、気密且つ水密であるように、ハウジングの固体壁60によって及び光学面10によって、区画されうる。したがってセンサーは天候から保護される。
【0093】
特に、光学面は、ハウジングを閉鎖しうる。例えば、光学面は、ハウジング50にねじ止めされるリング65に取り付けられる。
【0094】
したがって光学面は取り外し可能であり、そのことは、例えばそれが投射物によって破損した場合に、それの簡単な交換を可能にする。
【0095】
光学面クリーニングユニット15は、光学面に接触して配置され且つ音響的に光学面に結合された2つのトランスデューサー70を含む。また、クリーニングユニットは、トランスデューサーに電力を供給する電流発生器75を含む。トランスデューサーの数は制限されない。特に、その装置は、単一のトランスデューサーを含んでいてもよい。
【0096】
更に、トランスデューサーは、各々、圧電層80と、圧電層上に配置された逆極性の電極85とを含む。したがってそのような層状のトランスデューサーは、特にコンパクトな装置の製造を可能にする。また、それらは湾曲した光学面にも容易に配置されうる。
【0097】
トランスデューサーは、各々、光学面において伝播する超音波表面波W又はラム波Wを発生させうる。図1に示す例では、クリーニングされる面45と反対側の光学面10の面90に、トランスデューサーが配置される。それらは、好ましくは、クリーニングされる面45に到達するラム波を発生させるように構成される。
【0098】
更に、トランスデューサーは、トランスデューサーと重ならない光学的関心領域100の範囲を定める。
【0099】
好ましくは、光学的関心領域の部分が機器アイテムの光学フィールド内に含まれ、言い換えれば、トランスデューサーは、機器の光学フィールドの外側に配置され、そのことによってそれらは、光学的関心領域を通過し且つセンサーによって検知される放射線とほとんど干渉を生じさせない。
【0100】
図1に示すように、嵩を減らすために、トランスデューサーは、好ましくは光学面の周辺部に配置される。したがってトランスデューサーを周辺にオフセットすることで、光学的関心領域の面積を最大化することが可能である。各ウエーブトランスデューサーは、特に、光学面のエッジから、光学面の長さの10%未満或いは5%未満の距離にわたって延びていてもよい。
【0101】
示される例において、トランスデューサーは、エッジ105から直接的に面90上に延びている。
【0102】
図2の装置は、トランスデューサー70が、センサー25に面する面90と反対側にある光学面10のクリーニングされる面45に配置されている点で、図1に示すものと異なる。
【0103】
トランスデューサーは、好ましくは、クリーニングされることになる面45に沿って伝播する超音波表面波Wを発生するように構成され、前記面に接触する物体を動かすようになっている。
【0104】
示されているように、任意に、ハウジング50は、カバーを形成し且つトランスデューサー70を覆うショルダー部115を有し、天候からそれらを保護するようになっている。
【0105】
図3は、光学面の面45,90のうちの1つに垂直な図による発明による装置5の部分を示す。
【0106】
2つのトランスデューサーは、光学面のそれらの面のうちの一方に接触して配置される。それらは各々、圧電層80を含み、当該圧電層80は、光学面と接触し、2つの対向するエッジ120間で且つこれら2つの対向するエッジを接続する第3のエッジ125と平行に帯部Bにおいて延びる。逆極性の且つ互いにかみ合わされる櫛部を含む電極85が、圧電層上に配置され、それによって光学的関心領域を伝播するラム波W又は表面W超音波を発生させ、その上に堆積した物体40を取り除くように配置される。
【0107】
図4に描かれた装置の部分は、トランスデューサー70が、光学的関心領域100を縁取る周囲部130を区切る同じ圧電層80を共有している点で、図3に示されたものと異なっている。周囲部は、例えば長方形である。その周囲部は、圧電層が適用される光学面の面の輪郭と一致する外形輪郭135を有する。更に、装置は、例えば周囲部の周りに均等に配置された、より多数のトランスデューサーを含みうる。そのような装置の製造を容易にするために、電極85を圧電層上に印刷してもよい。図3及び図4で説明したようなトランスデューサーの配置は、もちろん、図1図2及び図7に示した例で実施されてもよい。
【0108】
図5は、図3の装置の一部の断面図である。光学面10は、例えばガラスで作られる、音響伝導部150と、音響伝導部の一面160を完全に覆うコーティング155であって、例えば雨滴が光学面上に広がるのを防止してそれらを除去することをより容易にするように、反射防止層165及び疎水性層170の積み重ねによって構成されるコーティング155と、を含む。トランスデューサー70は、音響伝導部と反対側のコーティングに接触して配置される。コーティングは、好ましくは、トランスデューサーによって生成される表面波の波長に対して十分に小さい厚さを有する。このように、音響伝導部とトランスデューサーは音響的に結合している。
【0109】
図6に示した装置は、トランスデューサー70が疎水性層170と音響伝導部150との間に挟まれている点で、図5に示した装置と異なっている。このように、疎水性層がトランスデューサーを保護する。
【0110】
最後に、図7は、発明による装置5の更に別の例示的な実施形態を示す。それは、光学面が、互いに重なり合う音響伝導部150及び音響遮断部180を含むレンズ178である点で、図2の例と異なる。
【0111】
またレンズ178は、それを通過する放射線の経路を変更するその能力に加え、センサー25を保護する。
【0112】
更に、音響遮断部は、例えば、音響遮断部よりも厚く、音響導電部を機械的に支持することができる。トランスデューサーは、音響伝導部に音響的に結合されている。
【0113】
音響伝導部は、例えば音響遮断部及び音響伝導部の対向面間に配置される可逆性接着剤層によって、取り外し可能に装着されうる。そのため、音響遮断部を容易に交換することができる。
【0114】
音響伝導部150は、音響遮断部180に対して、センサー25と反対側に配置されている。したがって、クリーニングユニットは、例えば雨滴などの物体40が集まりうる音響伝導部の面45をクリーンにすることができる。
【0115】
当然ながら、発明は、非限定的な説明として提示された発明の実施例に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】