IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

<>
  • 特表-超音波データにおける境界検出 図1
  • 特表-超音波データにおける境界検出 図2
  • 特表-超音波データにおける境界検出 図3
  • 特表-超音波データにおける境界検出 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】超音波データにおける境界検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536122
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021085589
(87)【国際公開番号】W WO2022128978
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,630
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21160119.0
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ラフター パトリック ガブリエルズ
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】プラター デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ワチター‐ステール イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー フランク ミカエル
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DD15
4C601DE06
4C601DE12
4C601EE11
4C601GB03
4C601HH05
4C601JB45
4C601JC09
4C601JC15
4C601KK03
4C601KK23
(57)【要約】
解剖学的領域の超音波画像データ内の1以上の組織境界を決定するための方法が提供される。該方法は、単一の取得イベント内で取得された同一の入力超音波データから2つの別個の画像を生成することに基づいている。1つの画像はコントラスト強調を用いて生成され、流体含有領域を囲む境界が特によく見えるようにする一方、第2の画像は、この強調を用いずに又は異なる強調を用いて生成され、組織領域を囲む境界が特によく見えるようにする。次いで、両画像の組み合わせを入力として使用する画像セグメンテーション手順が適用され、撮像された領域内の境界を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された解剖学的領域内の組織境界を決定するためのコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法は、
1以上の組織境界を含んだ関心物体を含む解剖学的領域からの超音波データを受信するステップであって、前記1以上の組織境界は流体受入領域と隣接し、前記超音波データが単一の取得イベントに関するデータからなるステップと、
前記超音波データに第1の画像生成手順を適用して第1の画像を生成するステップであって、該第1の画像生成手順が結果として、生成された第1の画像における組織領域の可視性を抑圧し及び/又は前記生成された第1の画像における前記流体受入領域内の流体の可視性を高める、ステップと、
前記超音波データに前記第1の画像生成手順とは異なる第2の画像生成手順を適用して第2の画像を得るステップと、
前記第1及び第2の画像の両方に画像セグメンテーション手順を適用するステップと、
前記セグメンテーション手順に基づいて前記1以上の組織境界を決定するステップと、
前記決定された1以上の組織境界を表すデータ出力を生成するステップと
を有する、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記流体受入領域が造影剤を含んだ流体を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記超音波データは少なくとも3つの連続する超音波パルスの各々から取得された各超音波信号を含み、前記3つのパルスのうちの2つは第1のパワーレベルを有し、前記3つのパルスのうちの第3のパルスが前記第1のパワーレベルとは異なる第2のパワーレベルを有する、請求項2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記第2のパワーレベルは前記第1のパワーレベルの2倍であり、
前記第1の画像生成手順が、前記第1の画像を、前記第2のパワーレベルを有する前記第3のパルスからの信号と前記第1のパワーレベルを有する前記2つのパルスからの信号のうちの少なくとも1つとの組み合わせに基づいて生成するステップを有する、
請求項3に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記第2の画像生成手順が、前記第2の画像を、前記3つのパルスのうちの1つだけからの前記超音波信号に基づいて生成するステップを有する、請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記第2の画像生成手順が、前記第2の画像を、前記第2のパワーレベルを有する前記第3のパルスからの前記超音波信号に基づいて生成するステップを有する、請求項5に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記第1の画像生成手順が、
前記第1のパワーレベルを有する2つのパルスからの前記超音波信号を加算することにより和信号を生成するステップと、
前記和信号と前記第3のパルスからの信号との間の差を決定することに基づいて差信号を決定するステップと、
該差信号に基づいて前記第1の画像を生成するステップと
を有する、請求項4から6の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記関心物体が被験者の心臓の少なくとも一部を含む、請求項1から7の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記1以上の組織境界は心内膜を含み、前記流体受入領域が心室及び/又は心房を含む、請求項8に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
表示装置上に前記第1の画像及び前記第2の画像の両方を表示させると共に、好ましくは、前記決定された1以上の組織境界の表現を更に表示させるための表示出力を生成するステップを更に有する、請求項1から9の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
プロセッサ上で実行された場合に、該プロセッサに請求項1から10の何れか一項に記載のコンピュータ実施方法を実行させるコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【請求項12】
入力/出力部及び少なくとも1つのプロセッサを有する処理装置であって、
前記少なくとも1つのプロセッサが:
1以上の組織境界を含んだ関心物体を含む解剖学的領域を表す超音波データを前記入力/出力部において受信し、ここで、前記1以上の組織境界は流体受入領域と隣接し、前記超音波データは単一の取得イベントに関するデータからなり、
前記超音波データに第1の画像生成手順を適用して第1の画像を生成し、ここで、該第1の画像生成手順は、結果として生成された第1の画像における組織領域の可視性を抑圧し及び/又は前記生成された第1の画像における前記流体受入領域内の流体の可視性を高めるものであり、
前記超音波データに前記第1の画像生成手順とは異なる第2の画像生成手順を適用して第2の画像を取得し、
前記第1及び第2の画像の両方に画像セグメンテーション手順を適用し、
前記セグメンテーション手順に基づいて前記1以上の組織境界を決定し、
前記決定された1以上の組織境界を表すデータ出力を生成する、
処理装置。
【請求項13】
前記流体受入領域が造影剤を含んだ流体を含む、請求項12に記載の処理装置。
【請求項14】
前記超音波データは少なくとも3つの連続する超音波パルスの各々から取得された各超音波信号を含み、前記3つのパルスのうちの2つは第1のパワーレベルを有し、前記3つのパルスのうちの第3のパルスが前記第1のパワーレベルとは異なる第2のパワーレベルを有する、請求項12又は13に記載の処理装置。
【請求項15】
超音波データを取得するためのトランスデューサアレイを有する超音波プローブと、
表示装置と、
請求項12から14の何れか一項に記載の処理装置と
を有する、超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波データ内の組織境界を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像データにおける組織境界の描写は、種々の医療用超音波アプリケーションに対して広範囲の適用性を有する。一般的に、斯かる描写は、超音波データセットに描かれている臓器又は他の解剖学的構造の境界を分割(セグメンテーション)するために使用できる。
【0003】
境界セグメンテーションの1つの特定のアプリケーション例は、心エコー検査におけるものである。
【0004】
特に、心エコー検査における画質の継続的進歩にもかかわらず、心エコー図において心内膜の境界を正確に描写する能力は、最大で20%もの患者において依然として難題のままである。境界描写を支援するために、左心室造影(LVO)として知られる手法を適用できる。これは、適切な造影剤により心エコー図における心内膜境界を強調するための十分に確立された方法である。エコー造影剤は開発されたもので、世界中のほとんどの地域で市場に出回っている。造影剤は、血液プールからの散乱信号を大幅に増強し、後方散乱信号を赤血球よりも桁違いに増加させる。造影剤は、通常、エコー反射を増強するマイクロバブルを含んでいる。
【0005】
しかしながら、組織信号は高調波周波数においても極めて強いままであり、心臓の心内膜境界を視覚化する能力を制限する。超音波造影剤の有効性を改善するために、組織信号を選択的に抑圧することを目標に、コントラストに特化した技術が開発された。これらの技術は、コントラスト強調として知られており、コントラスト強調画像と呼ばれるものが得られる。
【0006】
一例として、これらの技術は、所与の画像においてスキャンライン毎に複数のパルスを生成することを含み得ると共に、パルス毎に振幅、位相又は振幅と位相との組み合わせを変化させることができるパルス方式を組み込んだものであり得る。スキャンライン毎に受信された複数のエコーは、次いで、造影剤マイクロバブルからの信号を維持しながら組織からの信号を最小限に抑えるように結合される。
【0007】
造影剤の補助を伴って又は補助無しで取得された両心臓超音波画像に対し、モデルベースのセグメンテーションを用いて、画像内に見える心臓の解剖学的構造に表面メッシュを自動的に適合させることができる。一連の適応ステップにおいて、当該アルゴリズムは、各メッシュ三角形の近傍における境界を検出し(特別にトレーニングされた境界検出器を使用して)、次いで、当該メッシュを、これらの検出された画像の特徴構造に基づくと共に更に以前の形状知識から導出された内部エネルギに基づいて適応させる。この技術は、心臓解剖学における全ての関連構造において画像境界が明確に画定された場合に最適に機能する。次いで、成功したセグメンテーションを、例えば、更なるユーザの介入を必要とせずに駆出率の測定値を導出するために使用することができる。
【0008】
上述した造影撮像技術は、心内膜境界の視覚化を大幅に向上させ、壁運動異常の検出を支援するために負荷心エコー図においてよく使用されている。該技術は、心機能の評価を補助するために駆出率の測定にも使用される。
【0009】
しかしながら、今日まで、造影剤を用いて取得される画像に関して体積の測定を自動化するための信頼できる技術は不足したままであり、したがって、駆出率は対応する境界の手でのトレーシングで測定される場合が多い。
【0010】
この技術的結果を達成することが困難であった1つの重要な理由は、左心室及び左心房空洞内の造影剤が、何処で心室が終了し、心房が開始するかを決定する能力を曖昧にさせることである。非造影画像において、僧帽弁(左心室と左心房の間の)は明るい構造として見られ得る。しかしながら、造影画像では、強い造影信号のぼやけが、薄い僧帽弁を不明瞭にさせる(該僧帽弁は、そうでなければ、理論的には、明るい造影された領域の薄くて暗い中断として見えるであろう)。左心室と左心房との間の境界を描く明確に画定された画像特徴構造の欠如は、モデルベースのセグメンテーションの成功裏の適用を著しく妨げ得る。
【0011】
もっと一般的には、この強い造影信号のにじみ又はぼやけの問題は、造影剤含有領域の境界に位置する小さな特徴構造の如何なる画像化された解剖学的領域における視認性にも影響を与え得る。
【0012】
回避策は、造影画像(造影剤が投与された)及び非造影画像(造影剤なし)の両方を取得することである。しかしながら、このことは多くの理由により満足のいくものではない。第1に、撮像を用いて測定しようとし得る多くのパラメータは、2つの画像において直接的に比較できないものであり得る(例えば、心状態、呼吸状態、及び画像がトランスデューサの位置及び向きのずれによりうまく位置合わせされていないものであり得る)。したがって、位置合わせ手順が必要になり、これにより誤差又は矛盾が生じ得る。このことは、結果の品質を低下させるであろう。更に、ワークフローは、結果的に最大に重なり合う視野で2つの画像を取得しなければならない臨床医にとり一層複雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解剖学的領域の超音波データにおける境界検出のための改善されたアプローチが、価値あるものとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項により定義される。
【0015】
本発明の一態様による例によれば、撮像された解剖学的領域内の組織境界を決定するためのコンピュータ実施方法が提供される。該方法は、1以上の組織境界を含んだ関心物体を含む解剖学的領域からの超音波データを受信するステップを有し、該1以上の組織境界は流体受入領域と隣接する。当該方法は、上記超音波データに第1の画像生成手順を適用して第1の画像を生成するステップを更に有し、該第1の画像生成手順は、生成された第1の画像における組織領域の可視性を抑圧し、及び/又は該生成された第1の画像における流体受入領域内の流体の可視性を高めるように適合される。当該方法は、前記超音波データに第1の画像生成手順とは異なる第2の画像生成手順を適用して第2の画像を得るステップを更に有する。当該方法は、第1及び第2の画像の両方に画像セグメンテーション手順を適用するステップを更に有する。当該方法は上記セグメンテーション手順に基づいて1以上の組織境界を決定するステップを更に有し、又は該セグメンテーション手順の適用の結果、1以上の組織境界が決定される。当該方法は、決定された1以上の組織境界を表すデータ出力を生成するステップを更に有する。
【0016】
前記受信された超音波データは、単一のデータ取得イベント又はセッション(例えば、単一のスキャン)に関するデータからなる。単一の取得イベントとは、例えば単一の取得シーケンスから取得されたデータを意味し得、単一の取得シーケンスとは、1以上の超音波パルス及び受信エコーの単一の連続した又は中断されないシーケンス、又は一連の取得スキャンラインを意味し、これらスキャンラインは、各々、1以上の超音波パルスを有し得る。
【0017】
当該一般的な概念は、単一の取得イベントにおいて取得された同一の超音波データから生成される2つの画像に基づいて、画像のセグメンテーションを実行するということである。これら画像の一方は、組織が抑圧され及び/又は流体が強調されたコントラスト強調画像として生成され、他方は、この同じ組織抑圧又は流体強調なしで生成される。このように、2つは組織及び流体の異なる相対的コントラスト表現を提供し、これらの間の界面が組織の境界を定める。
【0018】
前述したように、既知のコントラスト強調撮像の問題は、強調された可視性領域の強いコントラスト信号が、これら領域の縁におけるぼやけ又は外側へのにじみにつながることである。このことは、心臓の心房と心室との間の僧帽弁等のように特に薄い小さな解剖学的特徴構造又は境界領域のビューを不明瞭にし得る。したがって、同一の超音波データセットから2つの画像(コントラストが強調された1つ及びコントラストが強調されていない1つ)を生成すると共に、両方に基づいてセグメンテーションを実行することにより、当該セグメンテーションにおいて補完的な情報が利用され、このことは、コントラストが強調された画像の利点(すなわち、組織と流体との界面境界(例えば、心内膜)が正確に識別されるのを可能にすること)を達成するのと同時に、より小さな解剖学的構造又は薄い壁部分(例えば、僧帽弁)が識別されることも可能にする。
【0019】
上記2つの画像は、同一の超音波データを用いて生成される。したがって、これらの間には本来的な空間的位置合わせが存在する。
【0020】
上記画像セグメンテーションは、2つの画像に別々に適用することもでき、より好ましくは、両画像を利用する組み合わされたセグメンテーションを有し得る。言い換えると、好ましくは、該セグメンテーションは第1及び第2の画像の両方に同時に適用される。
【0021】
第1の画像生成手順は、第1の画像をもたらすように設計された画像生成ステップであって、これら同じステップ無しで当該超音波データから生成された画像と比較して、特には第2の画像と比較して、組織領域の可視性が抑圧され及び/又は流体受入領域内の流体の可視性が強められるステップを含む。
【0022】
該第1の画像生成手順は、1以上の後処理ステップであって、後処理されたデータから画像を生成する前に前記受信された超音波データに適用される1以上の後処理ステップを含むことができ、これら後処理ステップは、結果として生成される第1の画像において、これら後処理ステップを欠いているがそれ以外では同一である画像生成手順と比較して、組織の可視性を抑圧し及び/又は流体受入領域内の流体の可視性を高める効果を有する。
【0023】
第2の画像生成手順は、好ましくは、生成された第2の画像における組織領域の可視性を抑圧するようにも、又は生成された第2の画像における流体受入領域内の流体の可視性を高めるようにも構成されない。このように、該手順は、第1の画像よりも組織領域の可視性が高く、第1の画像よりも流体の可視性が低い第2の画像が得られるように適合される。
【0024】
オプションとして、第2の画像生成手順は、再構成された画像において組織強調及び/又は流体抑圧効果を達成するための1以上の超音波データ処理ステップを更に有することができる。しかしながら、このことは必須ではない。
【0025】
前記流体受入領域は、好ましくは、造影剤を含んだ流体を含む。
【0026】
このように、第1の画像における流体の視認性の向上は、該画像における造影剤の視認性の向上に対応する。一例として、当該流体受入領域は心臓空洞であり得、当該流体は血液であり得る。
【0027】
造影剤はマイクロバブルを含み得る。これらは、強い超音波反射を生じさせる。
【0028】
少なくとも1群の実施形態において、前記超音波データは少なくとも3つの連続する超音波パルスの各々から取得された各超音波信号を含み、これら3つのパルスのうちの2つは第1のパワーレベルを有し、これら3つのパルスのうちの第3のパルスは、第1のパワーレベルとは異なる第2のパワーレベルを有する。特に、この例における受信された超音波データは、複数の送信又はスキャンラインに対応するデータを含み得る。各送信ラインに関して、該データは、少なくとも3つの連続する超音波パルスの各々から取得された一群の各超音波信号を含み得る。
【0029】
一般的に、流体領域における造影剤は、超音波パルスのパワーの関数として非線形な応答を有し得る。このことは、当該流体がマイクロバブルベースの造影剤を含む場合に特にそうである。パルス間のパワーレベルを変化させることによれば、組織及び造影剤の異なるパワー応答により、このことは、ソース超音波データが該超音波データ内に組織領域と流体領域との間の区別を可能にする情報を含むことを意味する。
【0030】
少なくとも一群の例において、第2のパワーレベルは第1のパワーレベルの2倍とすることができ、第1の画像生成手順は、第1の画像を、第2のパワーレベルを有する第3のパルスからの信号と第1のパワーレベルを有する2つのパルスからの信号のうちの少なくとも1つとの組み合わせに基づいて生成するステップを有する。
【0031】
第1の画像を、2つの異なるパワーレベルで得られたデータの組み合わせに基づいて生成することにより、選択的に流体を強調し、組織を抑圧することができる。
【0032】
同一の取得期間又はイベントからの3つの連続するパルスを使用することにより、当該3つのパルスからの超音波信号の間の本来的な空間的位置合わせが保証される。
【0033】
少なくとも1群の例において、第2の画像生成手順は、第2の画像を当該3つのパルスのうちの1つだけからの超音波信号に基づいて生成するステップを有する。このようにして、第2の画像は、事実上、他の受信されたパルス信号と組み合わせることなしに、複数のパルスのうちの単一のものからの超音波データから生成された線形画像又はベース画像となる。
【0034】
少なくとも1群の例において、第2の画像生成手順は、第2の画像を第2のパワーレベルを有する第3のパルスからの超音波信号に基づいて生成するステップを有する。これにより、第3の信号のパワーが最大になり、第2の画像に示される特徴構造の全体的な可視性が最大になる。
【0035】
少なくとも1群の例において、第1の画像生成手順は:第1のパワーレベルを有する2つのパルスからの超音波信号を加算することにより和信号を生成するステップ;該和信号と第3のパルスからの信号との間の差を決定することに基づいて差信号を決定するステップ;及び該差信号に基づいて第1の画像を生成するステップ;を有する。
【0036】
組織及び造影剤含有流体の異なるパワー依存性応答により、上記和信号は、第3のパルスからの信号とは異なるコントラスト応答を提供する。上記差信号は、この応答の差を表し、したがって組織と流体との間の最大のコントラストを提供する。
【0037】
異なるパルスのパワーレベルは、送信される超音波パルスの振幅を調整することにより構成できる。
【0038】
1以上の実施形態によれば、当該関心物体は被験者の心臓の少なくとも一部を含む。当該1以上の組織境界は特定の例では心内膜を含み得、流体受入領域は心室及び/又は心房を含む。
【0039】
1以上の実施形態によれば、当該方法は、表示装置上に第1の画像及び第2の画像の両方を表示させると共に、好ましくは、決定された1以上の組織境界の表現を更に表示させるための表示出力を生成するステップを更に有する。この構成は、当該システムを使用する臨床医が心臓の構造を評価し、診断上の結論を下すのに役立つ。
【0040】
本発明の他の態様による例は、コード手段を有するコンピュータプログラム製品を提供し、該コード手段は、プロセッサ上で実行された場合に、該プロセッサに上述され又は後述される何れかの例若しくは実施形態による、又は本出願の何れかの請求項による方法を実行させるように構成される。
【0041】
本発明の他の態様による例は:入力/出力部;及び少なくとも1つのプロセッサ;を有する処理装置を提供する。上記少なくとも1つのプロセッサは、入力/出力部において、1以上の組織境界を含んだ関心物体を含む解剖学的領域を表す超音波データを受信するように構成される。当該1以上の組織境界は、流体受入領域と隣接する。上記超音波データは、単一の取得イベントに関するデータからなる。前記少なくとも1つのプロセッサは、超音波データに第1の画像生成手順を適用して第1の画像を生成するように構成され、該第1の画像生成手順は、結果として生成された第1の画像における組織領域の可視性を抑圧し及び/又は該生成された第1の画像における流体受入領域内の流体の可視性を高めるように構成される。当該処理装置は、更に、超音波データに第1の画像生成手順とは異なる第2の画像生成手順を適用して第2の画像を得るように構成される。該処理装置は、更に、第1及び第2の画像の両方に画像セグメンテーション手順を適用するように構成される。該処理装置は、更に、該セグメンテーション手順に基づいて1以上の組織境界を決定するように構成される。該処理装置は、更に、決定された1 以上の組織境界を表すデータ出力を生成するように構成される。
【0042】
上記流体受入領域は、好ましくは、造影剤を含んだ流体を含む。好ましくは、前記方法は造影剤を投与するステップは含まない。
【0043】
少なくとも1群の実施形態において、上記超音波データは少なくとも3つの連続する超音波パルスの各々から取得された各超音波信号を含み、これら3つのパルスのうちの2つは第1のパワーレベルを有し、これら3つのパルスのうちの第3のパルスは第1のパワーレベルとは異なる第2のパワーレベルを有する。
【0044】
少なくとも一群の例において、第2のパワーレベルは第1のパワーレベルの2倍とすることができ、第1の画像生成手順は、第1の画像を、第2のパワーレベルを持つ第3のパルスからの信号と第1のパワーレベルを持つ2つのパルスからの信号のうちの少なくとも1つとの組み合わせに基づいて生成するステップを有する。
【0045】
本発明の他の態様は、超音波データを取得するためのトランスデューサアレイを有する超音波プローブ;表示装置;及び上述され又は後述される何れかの例若しくは実施形態による、又は本出願の何れかの請求項による処理装置;を備えた超音波システムを提供する。
【0046】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、該実施形態を参照して解明されるであろう。
【0047】
本発明をよりよく理解するため、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、例示のみとして添付図面が参照されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、1以上の実施形態による例示的方法のステップを概略的に示す。
図2図2は、例示的実施形態のワークフローをブロック図形式で示す。
図3図3は、1以上の実施形態による例示的システムを示す。
図4図4は、本発明の理解を更に補助するための例示的な超音波システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明を、図面を参照して説明する。
【0050】
詳細な説明及び特定の例は、当該装置、システム及び方法の例示的実施形態を示すものであるが、説明のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないと理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付請求項及び添付図面からよりよく理解されるであろう。図は単なる概略であり、実寸通りには描かれていないと理解されたい。また、同一の又は同様の部品を示すために、図面全体を通して同一の参照番号が使用されていることも理解されたい。
【0051】
本発明は、解剖学的領域の超音波データ内の1以上の組織境界を決定する方法を提供する。この方法は、単一の取得セッションで取得される同一の入力超音波データから2つの別個の画像を生成することに基づいている。1つの画像はコントラスト強調を伴って生成され、流体含有領域を囲む境界が特によく見えるようにする一方、第2の画像は該強調を伴わずに又は他の強調を伴って生成され、組織領域を囲む境界が特によく見えるようにする。次いで、両画像の組み合わせを入力として使用し、撮像領域内の境界を決定する画像セグメンテーション手順が適用される。
【0052】
言い換えると、本発明の実施形態は、単一のスキャンで取得されたデータから生成された2つの異なる画像にセグメンテーションを同時に適用することにより、関連する解剖学的構造の決定を改善することを提案する。第1の画像は、造影剤含有領域からの信号を最大化する目的で、例えば組織信号を抑圧しながら構築される。第2の画像は、組織信号の一層大きな相対的可視性をもたらす目的で、特に僧帽弁輪の可視性に関するLVO(前記説明参照)の前後関係で、超音波データから導出される。
【0053】
メッシュ適応プロセスの間において両画像における境界特徴構造を探索することにより、該両画像の補完的な情報を、改善されたセグメンテーションのために、したがって、駆出率等の心臓測定値の一層正確な決定のために使用することができる。
【0054】
1以上の実施形態による例示的なコンピュータ実施方法10のステップが図1に示されている。
【0055】
方法10は、流体受入領域に接する1以上の組織境界を含む関心対象を含んだ解剖学的領域からの超音波データを受信するステップ12を有する。
【0056】
方法10は、更に、第1の画像を生成するために上記超音波データに第1の画像生成手順を適用するステップ14を有し、該第1の画像生成手順は、生成された第1の画像における組織領域の可視性を抑圧し、及び/又は生成された第1の画像における流体受入領域内の流体の可視性を高めるように適合される。
【0057】
方法10は、更に、第2の画像を取得するために第1の画像生成手順とは異なる第2の画像生成手順を前記超音波データに適用するステップ16を有する。
【0058】
方法10は、更に、第1及び第2の画像の両方に画像セグメンテーション手順を適用するステップ18を有する。前記1以上の組織境界は該セグメンテーション手順に基づいて決定され、又は該セグメンテーション手順の結果として1以上の組織境界が決定され得る。好ましくは、該画像セグメンテーション手順は、セグメンテーションを達成するために両方の画像を組み合わせて使用する組み合わせセグメンテーションである。後に更に詳細に説明するように、該画像セグメンテーションはメッシュ形状を両画像から導出された情報に基づいて自動的に適合させることができる。
【0059】
方法10は、更に、決定された1以上の組織境界を表すデータ出力を生成するステップ20を有する。
【0060】
受信された超音波データは、単一の取得イベント又はセッション(例えば、単一のスキャン)のデータから構成される。単一の取得イベントは、例えば、1以上の超音波パルス及び受信エコーの単一の連続した若しくは中断されないシーケンス、又は一連の取得スキャンライン(これらスキャンラインは、各々、1以上の超音波パルスを有し得る)を意味する、単一の取得シーケンスから取得されたデータを意味し得る。
【0061】
前記流体受入領域は、好ましくは、造影剤を含んだ流体を含む。当該方法は、造影剤が投与された後に実行され得る。好ましい実施形態において、当該方法は、造影剤を投与するステップを含まない。
【0062】
超音波データは、超音波撮像装置から又は超音波トランスデューサユニットからリアルタイムで受信できる。代わりに、超音波データは以前のデータ取得セッションにおいてデータが記録されているデータストアから受信することもできる。超音波データは、超音波エコーデータ、例えばRFエコーデータであり得る。他の例として、超音波データは、部分的に後処理されたデータ、例えばビーム形成されたRFデータであり得る。該データは、未だ再構成された画像の形態ではない。
【0063】
第1の画像生成手順は、受信された超音波データに適用される一連の後処理ステップ、及び該処理されたデータから次いで画像を作成するための一連の画像再構成ステップを有し得る。上記後処理ステップは、結果として生成される(第1の)画像において、これらの後処理ステップ無しで受信超音波データから生成される画像と比較して、流体受入領域内の流体の可視性が高められ(強調され)及び/又は組織の可視性が抑圧される効果を有する。これらの領域の可視性は、第2の画像生成手順により生成されるであろう第2の画像と比較して強調/抑圧される。
【0064】
第2の画像生成手順は、受信された超音波データから第2の画像を生成するステップを有する。第2の画像生成手順は、当該画像を再構成する前に、受信された超音波データに適用される後処理ステップを含んでもよく又は含まなくてもよい。このようなステップを当該手順が含む場合、これらステップは、結果としての(第2の)画像において、これらのステップなしで受信超音波データに対して実行される画像再構成と比較して及び第1の画像と比較して、組織領域が強調され及び/又は流体受入領域内の流体が抑圧されるという効果を有するように構成され得る。
【0065】
疑義を避けるために、当該画像は第1及び第2の画像と呼ばれるが、このことは、これら画像が生成される順序を制約するものではないことに留意されたい。例えば、第2の画像は第1の画像の前に生成され得る。
【0066】
当該セグメンテーション手順を、以下に詳細に説明する。該手順は、受信された超音波データ内の1以上の境界の位置を表す3Dメッシュを生成するステップを有し得る。
【0067】
ここで、一群の好ましい実施形態によるフィーチャを概説する。
【0068】
この少なくとも一群の実施形態によれば、一般的な目的は、単一の取得プロセスの間に送信及び受信された一群の受信超音波パルスから二重経路処理アプローチにより2つの画像を生成し、これらの両方をモデルベースのセグメンテーションのための入力として使用することである。以下では造影(コントラスト強調)画像と呼ばれ得る第1の画像は、造影剤撮像のために使用される典型的なパルス方式に基づくものであり得る。これは、造影剤(例えば、造影剤マイクロバブル)からの信号は増強するが、組織信号は最小化するように設計される。線形画像と呼ばれ得る第2の画像は、強い組織信号を達成する目的で構築される。両画像を使用すると、補完的情報が生じる。上記線形画像は、そうでなければ強いコントラスト強調信号の境界のぼやけ又は外側へのにじみにより不明瞭になり得る小さな寸法の(例えばより薄い)組織部分の境界を検出するために使用できる。
【0069】
例示として、心エコー検査の特定の前後状況(例えば、前述した左心室造影(LVO))において、コントラストが強調された(第1の)画像は心内膜境界の明確な描写を可能にする一方、線形画像(第2の画像)は、左心室と左心房との間の境界を画定する僧帽弁輪の位置を決定するために使用することができる。
【0070】
セグメンテーション手順において、両画像は境界を検出するために並行して使用され得る。
【0071】
このことが図2に概略的に示され、該図は本発明の一実施形態によるコンピュータ実施方法を実行するように適合された処理装置32を示している。第1及び第2の画像生成手順を受信された超音波データに適用する結果、第1の画像42及び第2の画像44が生成される。図2は、左心室(画像においてLVとして示される)及び左心房(LA)を表す受信データに対するこれら2つの画像の例を示している。第1の画像はコントラスト強調画像であり、心臓空洞(造影剤を帯びる血液を含む)は明るく見える一方、組織領域46は暗いことが分かる。第2の画像44は線形の(第2の)画像であり、組織46はより明るく見える一方、流体領域はより暗く見えることが分かる。灰色の実線は隣接する構造間の強く見える描写を模式的に示す一方、灰色の点線は弱い描写に対応している。左心室(LV)と左心房(LA)との間の境界は、第1の画像42では全く見えないことが分かる。
【0072】
図2は、更に、第1の画像42及び第2の画像44の両方に一緒に適用されるセグメンテーションにより生成された例示的な境界面メッシュ54も示している。
【0073】
両画像42、44を入力として使用することにより、左心室と心房との間の境界を正確に識別しながら、造影剤マイクロバブルに固有の明確な心内膜画像特徴構造から利益を得るセグメンテーションを達成することができる。これにより、駆出率等の心臓測定値の一層正確な自動導出が容易になる。
【0074】
ここで、第1の画像及び第2の画像を生成するための1つの例示的アプローチを概説する。
【0075】
このアプローチでは、被験者の血液が造影剤、例えばマイクロバブル含有造影剤を含むと仮定される。
【0076】
一般的に、造影撮像技術は、組織が造影剤のマイクロバブルよりも超音波に対して一層線形な応答を示すという特性に基づいている。造影撮像における1つの斯様な技術は、パワー変調と呼ばれ、メカニカルインデックス又は出力音響振幅が変化される際の組織の相対的に線形な応答を利用する。パワー変調は、全てが同一の音響経路に沿う3以上の送信パルス(単一の送信シーケンスの一部としての)から構成される。
【0077】
特に、この例における受信超音波データは、複数の送信又はスキャンラインに対応するデータを含む。各送信ラインに対して、該データは、少なくとも3つの連続する超音波パルスの各々から取得された一群の超音波信号を含む。当該3つのパルスのうちの2つは、第1のパワーレベルを有する。該3つのパルスのうちの第3のものは、第1のパワーレベルとは異なる第2のパワーレベルを有する。該パワーレベルは、当該信号の音響振幅を変えることにより変えられ得る。これらパルスには第1、第2及び第3とラベルが付けされるが、このことは、これらパルスが生成される順序を制約するものではない。各超音波パルスの後、対応するエコー信号が受信されるので、各送信ラインに対する受信超音波データは、3つの連続するエコー信号の組を有する。
【0078】
パルス間のパワーレベルを変化させることにより、並びに組織及び流体の異なるパワー応答によれば、このことは、ソース超音波データが該超音波データ内に組織と流体との間を区別することを可能にする情報を含むことを意味する。
【0079】
少なくとも1群の実施形態において、第2のパワーレベルは、第1のパワーレベルの2倍に設定され得る。これは、約2倍、例えば2倍+/-5%又は+/-10%であり得る。前記第1の画像生成手順は、第1の画像(コントラスト強調画像)を、第2のパワーレベルを有する第3のパルスからの信号と、第1のパワーレベルを有する2つのパルスからの信号のうちの少なくとも1つとの組み合わせに基づいて生成するステップを含み得る。
【0080】
2つの異なるパワーレベルで取得されたデータの組み合わせに基づいて第1の画像を生成することにより、選択的に流体を強調し及び組織を抑圧することが可能となる。更に、同一の取得期間又はイベントからの3つの連続するパルスを使用することにより、該3つのパルスからの超音波信号間の本来的な空間位置合わせが保証される。
【0081】
第1及び第2のパルスは実効的に半分の振幅であり、第3のパルスは完全な振幅である。この一連の実施形態は、この一群のパルスを二重経路アプローチで処理することから2つの別個の画像を構築することを提案する。
【0082】
第1の画像(コントラスト強調画像)に関し、該画像は、各スキャンラインの第1及び第2のパルスを加算し、この結果を第3のパルスから減算することにより構築され得る。
【0083】
言い換えると、第1の画像生成手順は:各スキャンラインに関して第1のパワーレベルを持つ2つのパルスからの超音波信号を加算することにより和信号を生成するステップ;各スキャンラインに関して上記和信号と第3のパルスからの信号との間の差を決定することに基づいて差信号を決定するステップ;及び複数のスキャンラインに関して上記差信号に基づき第1の画像を生成するステップ;を有し得る。
【0084】
組織は造影剤よりも一層線形であるため、組織信号は殆ど抑圧され、はるかに非線形な造影剤信号のみが残る。
【0085】
第2の画像(線形画像)に関して、第2の画像生成手順は、第2の画像を各スキャンラインに関して当該3つのパルスのうちの1つのみからの超音波信号に基づいて、例えば第2のパワーレベルを持つ第3のパルスからの超音波信号に基づいて生成するステップを有し得る。言い換えると、線形画像が各スキャンラインに関して単に単一のパルス(例えば完全な振幅を有する第3のパルス)から導出され、かくして抑圧されていない組織信号を生じる。
【0086】
両画像は各スキャンラインに対して同一の組のパルスから構築されるため、これら画像は空間的に位置合わせされ、したがって追加の位置合わせステップは必要とされない。このアプローチは、例えば、造影剤が投与される前の1つ及び投与後の1つの2つの取得セッションでデータを生成することを要したアプローチとは対照的である。この場合では、第1及び第2の取得セッションの間の遅延期間により、2つの視野の間の位置ずれが予想される。
【0087】
上記実施形態においては第2の画像が単一の超音波パルスのみのデータから生成されるが、これは必須ではない。他の変形例において、第2の画像生成手順は、受信された超音波データに適用されて組織の可視性を選択的に高め及び/又は流体の可視性を選択的に抑圧する処理手順を含み得る。
【0088】
第1及び第2の画像が生成された場合、当該方法は、これら画像の両方に画像セグメンテーション手順を適用するステップを更に有する。該手順は、好ましくは、第1及び第2の画像の両方の組み合わせから単一のセグメンテーションが導出される統合された又は組み合わされたセグメンテーション手順である。
【0089】
例示として、解剖学的モデルに基づくセグメンテーションを使用することができる。当業者であれば、当技術分野において多数の異なるモデルベースのセグメンテーションアルゴリズムに気付くであろう。
【0090】
幾つかの例において、第1及び第2の画像の両方へのセグメンテーションの組み合わせ適用は、既知の複数形式セグメンテーション方法、例えばCT及びMRI画像の組み合わせ分析に使用されるもの等を用いて達成され得る。1つの例は、例えば出版物:Buerger C.,Peters J.他(2014)Multi-modal Vertebra Segmentation from MR Dixon for Hybrid Whole-Body PET/MR.In:Yao J.,Klinder T.,Li S.(eds)Computational Methods and Clinical Applications for Spine Imaging.Lecture Notes in Computational Vision and Biomechanics,vol 17.Springer,Chamに概説されている。
【0091】
例示的な複数形式セグメンテーション方法の詳細は、文献WO2015/189160にも見られる。
【0092】
要約すると、当該セグメンテーション手順は、当該画像データ内で境界メッシュを、境界特徴構造を捜すと共に、該境界特徴構造と一致するようにメッシュ形状を適合させることに基づいて当てはめる(フィッティングする)ステップを有する。所与のメッシュ三角形に関して境界特徴構造を捜す場合、強度プロファイルが、第1の画像及び第2の画像の両方において該三角形の法線に沿ってサンプリングされ得る。該2つの画像の何れかにおいて十分に強い特徴構造が見つかった場合、このことを、当該メッシュを該点に向かって引き寄せるために使用することができる。オプションとして、2つの画像における境界特徴構造の相対的重みを決定でき、これが、例えばセグメンテーション手順内の更なるパラメータ(ハイパーパラメータ)として使用される。
【0093】
1以上の実施形態によれば、撮像領域が心臓、特に左心室及び心房である場合、当該方法は、1以上の血行動態パラメータを決定された組織境界に基づいて決定するステップを更に有し得る。例えば、心拍出量を、単一心周期にわたる左心室容積の変化を追跡することに基づいて決定できる。左心室容積の変化は、セグメンテーションから決定できる左心室の外周の変化を追跡することにより決定できる。受信される超音波データは、少なくとも1心周期にわたる一連の時点のデータを含み得る。本開示に記載の方法は、これらの異なる時点の各々について当該データに反復的に適用することができる。
【0094】
当該方法は、決定された1以上の組織境界を表すデータ出力を生成するステップを更に有する。この出力は、単に、導出された境界を表すデータ、例えばメッシュの三角形の一群の座標を伝達するデータパッケージであり得る。加えて又は代わりに、該出力は、識別された1以上の境界の視覚的表現を供給するための出力であり得る。
【0095】
例えば、少なくとも一群の実施形態によれば、当該方法は、決定された1以上の境界を表示装置(ディスプレイ)に表示させるための表示出力を生成するステップを有し得る。この出力は、例えば、第1及び第2の画像の一方又は両方上に重畳又はオーバーレイされ得る。第1及び第2の画像の各々は異なる境界特徴構造を一層明確に示す。すなわち、第1のものは心臓空洞の内部境界を一層明確に示す一方、第2のものは僧帽弁を一層明確に示す。生成された境界メッシュが各々の上に重畳された状態で第1及び第2画像の両方をディスプレイ上に提示することにより、ユーザが関連する画像内で異なるタイプの境界特徴構造の両方を識別/位置特定することが可能になる。
【0096】
当該表示装置は、表示ユニット及びオプションとしてユーザ入力手段を有するユーザインターフェースであり得る。
【0097】
該ユーザインターフェースは、ユーザが導出されたセグメンテーションを手動で調整することを可能にする機能を含み得る。例えば、心エコー検査の場合、ユーザが、組織信号が抑圧されていない線形画像で(主に)見え得る僧帽弁面の位置を調整できるようにする機能が存在し得る。
【0098】
前述したように、好ましい用途は、心臓空洞及び構造の境界をセグメント化するためのものである。したがって、この場合、超音波データに表される関心物体は被験者の心臓の少なくとも一部を含む。
【0099】
当該1以上の組織境界は心内膜を含むことができ、当該流体含有領域は心室空洞及び/又は心房空洞を含むことができる。
【0100】
しかしながら、他のアプリケーションも可能である。一般的に、組織境界により取り囲まれた流体受入空洞又は管腔を含む如何なる領域も、本発明の実施形態にとり価値ある適用領域であり得る。例としては、結腸又は小腸、胃、又は何らかの他の流体受入臓器が含まれ得る。
【0101】
本発明の他の態様による例は、プロセッサ上で実行された場合に、該プロセッサに上述され又は後述される何れかの例若しくは実施形態による、又は本出願の何れかの請求項による方法を実行させるように構成されたコード手段を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0102】
本発明の他の態様による例は、入力/出力部及び少なくとも1つのプロセッサを有する処理装置を提供し、該プロセッサは:
- 上記入力/出力部において、1以上の組織境界を含んだ関心物体を含む解剖学的領域を表す超音波データを受信し、ここで、上記組織境界は流体受入領域に隣接し、当該超音波データは単一の取得イベントに関するデータからなり;
- 前記超音波データに第1の画像生成手順を適用して第1の画像を生成し、ここで、該第1の画像生成手順は、結果として生成される第1の画像における組織領域の可視性を抑圧し及び/又は該生成される第1の画像における流体受入領域内の流体の可視性を高めるように適合され;
- 第2の画像生成手順を前記超音波データに適用して第2の画像を取得し、ここで、該第2の画像生成手順は第1の画像生成手順とは異なり;
- 画像セグメンテーション手順を第1及び第2の画像の両方に適用し;
- 該セグメンテーション手順に基づいて1以上の組織境界を決定し;及び
- 該決定された1以上の組織境界を表すデータ出力を生成する;
ように構成される。
【0103】
上記処理装置のフィーチャの各々に関する実施化オプション及び詳細は、本発明の方法の態様に関して前述された説明及び記載に従って理解及び解釈できる。方法に関して前述された例、オプション、実施形態のフィーチャ若しくは細部の何れも、本発明の該処理装置の態様に、必要な変更を加えて、適用、組み合わせ又は組み込むことができる。
【0104】
図3は、本発明の他の態様に従って提供され得る一例示システムの構成要素を概略的に示す。該システムは、上述され又は後述される何れかの例若しくは実施形態による、又は本出願の何れかの請求項による処理装置32を備える。処理装置32は、入力/出力部34及び該入力/出力部に動作可能に結合されたプロセッサ36を備える。当該処理装置は、入力/出力部34と動作可能に結合された超音波トランスデューサユニット62から超音波データを受信するように構成される。該超音波トランスデューサユニットは、例えば超音波プローブを備え得る。該超音波トランスデューサユニットは、超音波データを取得するための1以上の超音波トランスデューサ、例えばトランスデューサアレイを備える。上記入力/出力部に動作可能に結合された表示装置64も更に設けられている。
【0105】
本発明の上記態様及び実施形態の何れかによれば、当該超音波データは、超音波撮像装置からリアルタイムで受信され、又は、例えば取得された超音波データが記録されたデータストアから、取得後に受信され得る。前者の場合、当該方法は、超音波データを取得するステップを有し得る。本発明、例えばデータ取得及び/又は画像再構成の理解を更に助けるために、例示的な超音波システムの一般的動作を、ここで図4を参照して説明する。
【0106】
該システムは、超音波を送信しエコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ106を有するアレイトランスデューサプローブ104を備える。トランスデューサアレイ106は、CMUTトランスデューサ;PZT若しくはPVDF等の材料から形成された圧電トランスデューサ;又は何らかの他の適切なトランスデューサ技術を有し得る。この例において、トランスデューサアレイ106は、関心領域の2D平面又は3次元ボリュームの何れかをスキャンすることができるトランスデューサ108の2次元アレイである。他の例において、該トランスデューサアレイは1Dアレイであり得る。
【0107】
トランスデューサアレイ106は、トランスデューサ素子による信号の受信を制御するマイクロビームフォーマ112に結合される。マイクロビームフォーマは、米国特許第5,997,479号(Savord他)、同第6,013,032号(Savord)、及び同第6,623,432号(Powers他)に記載されているように、トランスデューサのサブアレイ(一般的に「グループ」又は「パッチ」と呼ばれる)により受信された信号の少なくとも部分的なビーム形成が可能である。
【0108】
上記マイクロビームフォーマは一般的に完全にオプションであることに注意されたい。更に、当該システムは、マイクロビームフォーマ112を結合することができると共に送信モードと受信モードとの間で当該アレイを切り替え、マイクロビームフォーマが使用されず、且つ、該トランスデューサアレイが主システムのビームフォーマにより直接動作される場合において主ビームフォーマ120を高エネルギ送信信号から保護する送信/受信(T/R)スイッチ116を含む。トランスデューサアレイ106からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ116及び主送信ビームフォーマ(図示せず)により上記マイクロビームフォーマに結合されたトランスデューサコントローラ118により指示され、該コントローラはユーザインターフェース又は制御パネル138のユーザ操作からの入力を受信できる。コントローラ118は、送信モードの間においてアレイ106のトランスデューサ素子を(直接的に又はマイクロビームフォーマを介して)駆動するように構成された送信回路を含み得る。
【0109】
この例示的なシステムにおける制御パネル138の機能は、本発明の一実施形態による超音波コントローラユニットにより容易にすることができる。
【0110】
典型的なライン毎撮像シーケンスにおいて、前記プローブ内のビーム形成システムは次のように動作する。送信の間において、当該ビームフォーマ(構成に応じてマイクロビームフォーマ又は主システムビームフォーマ)は、トランスデューサアレイ又は該トランスデューサアレイのサブアパーチャを活性化する。サブアパーチャは、一層大きなアレイ内のトランスデューサの一次元ライン又はトランスデューサの二次元パッチであり得る。送信モードにおいて、当該アレイ又は該アレイのサブアパーチャにより生成される超音波ビームの集束及びステアリングは、以下に説明するように制御される。
【0111】
被験者から後方散乱エコー信号を受信すると、受信された信号は該受信信号を整列させるためにビーム形成処理(以下で説明される)を受ける一方、サブアパーチャが使用されている場合、該サブアパーチャは、次いで、例えば1つのトランスデューサ要素だけシフトされる。次いで、該シフトされたサブアパーチャが活性化され、当該プロセスはトランスデューサアレイの全てのトランスデューサ素子が活性化されるまで繰り返される。
【0112】
各ライン(又はサブアパーチャ)について、最終的な超音波画像の関連するラインを形成するために使用される総受信信号は、受信期間の間に所与のサブアパーチャのトランスデューサ素子により測定された電圧信号の和であろう。以下のビーム形成プロセス後の結果としてのライン信号は、通常、ラジオ周波数(RF)データと呼ばれる。種々のサブアパーチャにより生成された各ライン信号(RFデータセット)は、次いで、追加の処理を受けて、最終的な超音波画像のラインを生成する。経時的なライン信号の振幅の変化は、深度に伴う超音波画像の輝度の変化に寄与し、その場合において、高振幅のピークは最終画像における明るいピクセル(又はピクセルの集合)に対応するであろう。ライン信号の開始付近に現れるピークは浅い構造体からのエコーを表す一方、ライン信号における益々後に現れるピークは当該被験者内の益々深い構造体からのエコーを表す。
【0113】
トランスデューサコントローラ118により制御される機能の1つは、ビームがステアリング及び集束される方向である。ビームは、トランスデューサアレイから(に直交して)真っ直ぐ前方に、又はより広い視野のために種々の角度にステアリングされ得る。送信ビームのステアリング及び集束は、トランスデューサ素子の駆動時間の関数として制御することができる。
【0114】
一般的な超音波データ取得では、2つの方法、すなわち平面波撮像及び「ビームステアリング」撮像が区別され得る。これら2つの方法は、送信モード(「ビームステアリング」撮像)及び/又は受信モード(平面波撮像及び「ビームステアリング」撮像)におけるビーム形成処理の存在により区別される。
【0115】
最初に集束機能に目を向けると、全てのトランスデューサ素子を同時に活性化することにより、トランスデューサアレイは被験者を通過するにつれて発散する平面波を生成する。この場合、超音波のビームは集束されないままである。トランスデューサの活性化に位置依存性の時間遅延を導入することにより、ビームの波面を所望の点(焦点ゾーンと呼ばれる)に収束させることができる。焦点ゾーンとは、横方向のビーム幅が送信ビーム幅の半分未満になる点として定義される。このようにして、最終的な超音波画像の横方向の解像度が改善される。
【0116】
例えば、当該時間遅延がトランスデューサ素子を当該トランスデューサアレイの最外側の素子から開始して中央の素子で終了するような系列(順序)で活性化させる場合、焦点ゾーンが、該中央の素子に沿って当該プローブから所与の距離に形成されるであろう。該焦点ゾーンのプローブからの距離は、トランスデューサ素子の活性化の後続の各ラウンド間の時間遅延に依存して変化する。ビームが焦点ゾーンを通過した後、該ビームは発散し始め、遠視野撮像領域を形成する。トランスデューサアレイの近くに位置する焦点ゾーンの場合、超音波ビームは遠視野において急速に発散し、最終的画像においてビーム幅アーティファクトが生じることに注意されたい。通常、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間に位置する近視野は、超音波ビームの重なりが大きいため、殆ど詳細を示すことがない。このように、焦点ゾーンの位置を変化させることは、最終的画像の品質に大きな変化を生じさせ得る。
【0117】
送信モードでは、超音波画像が複数の焦点ゾーン(各々が異なる送信焦点を有し得る)に分割されない限り、1つのみの焦点が定義され得ることに注意されたい。
【0118】
更に、被験者内からエコー信号を受信する際、受信集束を実行するために上述されたプロセスの逆を実行することができる。言い換えると、到来する信号をトランスデューサ素子により受信し、信号処理のために当該システムに渡される前に電子的な時間遅延を施すことができる。これの最も単純な例は、遅延和ビーム形成と呼ばれる。トランスデューサアレイの受信集束処理を時間の関数として動的に調整することが可能である。
【0119】
ここでビームステアリングの機能に目を向けると、トランスデューサ素子に対する時間遅延の正しい適用により、超音波ビームにトランスデューサアレイを離れる際に所望の角度を付与することができる。例えば、トランスデューサアレイの第1の側のトランスデューサを、該アレイの反対側で終わる順序で残りのトランスデューサが後続するように活性化することにより、ビームの波面は第2の側に向かって傾斜されるであろう。トランスデューサアレイの法線に対するステアリング角度の大きさは、後続するトランスデューサ素子の活性化の間の時間遅延の大きさに依存する。
【0120】
更に、ステアリングされたビームを集束することも可能であり、その場合、各トランスデューサ素子に適用される総時間遅延は、集束用及びステアリング用時間遅延の両方の和となる。この場合、当該トランスデューサアレイはフェーズドアレイと呼ばれる。
【0121】
活性化のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ118はトランスデューサアレイ用のDCバイアス制御部145を制御するよう結合され得る。DCバイアス制御部145は、CMUTトランスデューサ素子に印加されるDCバイアス電圧を設定する。
【0122】
トランスデューサアレイの各トランスデューサ素子に関して、アナログ超音波信号(通常、チャネルデータと呼ばれる)が受信チャネルを介して当該システムに入力される。受信チャネルにおいては、部分的にビーム形成された信号がマイクロビームフォーマ112によりチャネルデータから生成され、次いで主受信ビームフォーマ120に渡され、該主受信ビームフォーマにおいては、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号が、完全にビーム形成された信号(ラジオ波(RF)データと呼ばれる)に合成される。各段階で実行されるビーム形成処理は、前述したように実行でき、又は追加の機能を含むこともできる。例えば、主ビームフォーマ120は128個のチャネルを有することができ、これらチャンネルの各々は、数十又は数百のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの何千ものトランスデューサにより受信された信号が、単一のビーム形成信号に効率的に寄与することができる。
【0123】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ122に結合される。信号プロセッサ122は、受信エコー信号を、帯域通過フィルタリング;デシメーション;I及びQ成分分離;及び高調波信号分離;等の様々な方法で処理することができ、上記高調波信号分離は線形及び非線形信号を分離して、組織及びマイクロバブルから返送される非線形(基本周波数の高調波)エコー信号の識別を可能にするように作用する。当該信号プロセッサは、スペックル低減、信号合成及びノイズ除去等の追加の信号強化も実行し得る。該信号プロセッサにおける帯域通過フィルタはトラッキングフィルタとすることができ、その通過帯域は、エコー信号が増加する深さから受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域にスライドし、これにより、通常は解剖学的情報が欠けている一層大きな深度からの一層高い周波数のノイズを除去する。
【0124】
送信及び受信のためのビームフォーマは、異なるハードウェアで実施化され、異なる機能を持つことができる。もちろん、受信ビームフォーマは、送信ビームフォーマの特性を考慮に入れて設計される。図4には、簡略化のために、受信ビームフォーマ112、120のみが示されている。完全なシステムには、送信マイクロビームフォーマ及び主送信ビームフォーマを備えた送信チェーンも存在するであろう。
【0125】
マイクロビームフォーマ112の機能は、アナログ信号経路の数を減らすために信号の最初の組み合わせを提供することである。これは、通常、アナログドメインで実行される。
【0126】
最終的ビーム形成は、メインビームフォーマ120で実施され、典型的にはデジタル化の後である。
【0127】
送信及び受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同一のトランスデューサアレイ106を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビーム形成に依存して変化し得る。受信チャネルは、トランスデューサ帯域幅全体をキャプチャできる(これは古典的なアプローチである)か、又は、帯域通過処理を用いることにより、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を含む帯域幅のみを抽出できる。
【0128】
当該RF信号は、次いで、Bモード(すなわち、輝度モード、又は2D撮像モード)プロセッサ126及びドプラプロセッサ128に結合され得る。Bモードプロセッサ126は、臓器組織及び血管等の身体内の構造の撮像のために、受信された超音波信号に対して振幅検波を実行する。ライン毎撮像の場合、各ライン(ビーム)は関連するRF信号により表され、その振幅はBモード画像内のピクセルに割り当てられるべき輝度値を生成するために使用される。画像内のピクセルの正確な位置は、RF信号に沿う関連する振幅測定値の位置及びRF信号のライン(ビーム)番号により決定される。このような構成のBモード画像は、米国特許第6,283,919号(Roundhill他)及び米国特許第6,458,083号(Jago他)に記載されているように、高調波若しくは基本画像モード、又は両方の組み合わせで形成することができる。ドプラプロセッサ128は、画像フィールド内の血液細胞の流れ等の移動する物質の検出のために、組織の動き及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドプラプロセッサ128は、通常、身体内の選択された種類の物質から返されるエコーを通過又は阻止するように設定されたパラメータを有するウォールフィルタを含む。
【0129】
Bモードプロセッサ及びドプラプロセッサにより生成された構造信号及び運動信号は、スキャンコンバータ132及び多平面再フォーマッタ144に結合される。スキャンコンバータ132は、受信された空間関係のエコー信号を、所望の画像フォーマットで配置する。言い換えると、該スキャンコンバータは、RFデータを、円筒座標系から画像ディスプレイ140上で超音波画像を表示するのに適したデカルト座標系に変換するように作用する。Bモード撮像の場合、所与の座標におけるピクセルの輝度は、当該位置から受信されたRF信号の振幅に比例する。例えば、上記スキャンコンバータは、エコー信号を、2次元(2D)扇形フォーマット、又はピラミッド型3次元(3D)画像に配列することができる。該スキャンコンバータは、Bモード構造画像に画像フィールド内の各点における動きに対応する色を重ねることができ、その場合、ドップラー推定速度が所与の色を生成する。合成されたBモード構造像及びカラードプラ画像は、構造画像フィールド内に組織の動き及び血流を描写する。前記多平面再フォーマッタは、身体のボリューム領域における共通平面内の点から受信されたエコーを、米国特許第6,443,896号(Detmer)に記載されているように、該平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ142は、3Dデータセットのエコー信号を、米国特許第6,530,885号(Entrekin他)に記載されているように、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0130】
2D又は3D画像は、スキャンコンバータ132、多平面再フォーマッタ144及びボリュームレンダラ142から画像プロセッサ130に結合されて、画像ディスプレイ140上でのオプションとしての表示のための更なる強調、バッファリング及び一時的記憶がなされる。該画像プロセッサは、最終的な超音波画像から、例えば強い減衰部又は屈折に起因する音響陰影;例えば弱い減衰部により引き起こされる事後強調;例えば高度に反射性の組織界面が極近傍に位置する場合の反響アーティファクト;等の特定の画像化アーティファクトを除去するように適合され得る。更に、該画像プロセッサは、最終的な超音波画像のコントラストを改善するために、特定のスペックル低減機能を果たすように適合させることができる。
【0131】
画像化に使用されることに加えて、ドップラプロセッサ128により生成される血流値及びBモードプロセッサ126により生成される組織構造情報は、定量化プロセッサ134に結合される。該定量化プロセッサは、臓器の大きさ及び妊娠期間等の構造的測定に加えて、血流の流量等の異なる流量状態の測定値も生成する。該定量化プロセッサは、ユーザ制御パネル138から、測定が行われるべき画像の解剖学的構造内の点等の入力を受信し得る。
【0132】
上記定量化プロセッサからの出力データはグラフィックスプロセッサ136に結合され、ディスプレイ140上の画像と共に測定値グラフ及び値を再生し、ディスプレイ装置140からオーディオ出力を行う。グラフィックスプロセッサ136は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイも生成できる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、撮像パラメータ等の標準的な識別情報を含み得る。これらの目的のために、該グラフィックスプロセッサは、ユーザインターフェース138から患者名等の入力を受信する。該ユーザインターフェースは送信コントローラ118にも結合されて、トランスデューサアレイ106からの超音波信号の生成、したがって該トランスデューサアレイ及び当該超音波システムにより生成される画像を制御する。コントローラ118の送信制御機能は、実行される機能の1つに過ぎない。コントローラ118は、動作モード(ユーザにより与えられる)、及び受信器のアナログ/デジタル変換器における対応する所要の送信機構成及び帯域通過構成も考慮に入れる。コントローラ118は、固定状態を有するステートマシンであり得る。
【0133】
上記ユーザインターフェースは、MPR画像の画像フィールドにおいて定量化された測定を実行するために使用され得る複数の多平面再フォーマット(MPR)画像の平面の選択及び制御のために多平面再フォーマッタ144にも結合される。
【0134】
上述した本発明の実施形態は、処理装置を使用する。該処理装置は、一般的に、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを有し得る。該処理装置、単一の収容装置、構造若しくはユニット内に配置され得、又は複数の異なる装置、構造又はユニットの間に分散され得る。したがって、当該処理装置が特定のステップ又はタスクを実行するように適合又は構成されているという言及は、該ステップ又はタスクが複数の処理部品のうちの何れか1以上により、単独で又は組み合わせで、実行されることに対応し得る。当業者であれば、このような分散処理構成がどのように実施化され得るかを理解するであろう。該処理装置は、データを受信し、他の構成要素にデータを出力するための通信モジュール又は入力/出力部を含む。
【0135】
上記処理装置の1以上のプロセッサは、必要な種々の機能を果たすために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて種々の方法で実装することができる。プロセッサは、通常、必要な機能を果たすためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラムできる1以上のマイクロプロセッサを使用する。プロセッサは、幾つかの機能を果たすための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路との組み合わせとして実施化できる。
【0136】
本開示の種々の実施形態で使用できる回路の例は、これらに限定されるものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0137】
種々の実装形態において、上記プロセッサは、RAM、PROM、EPROM及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリのような1以上の記憶媒体に関連付けられ得る。該記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行された場合に、必要な機能を果たす1以上のプログラムで符号化することができる。種々の記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定されたものでもよく、又は記憶された1以上のプログラムをプロセッサにロードできる等のように可搬型であってもよい。
【0138】
開示された実施形態に対する変形は、当業者により、請求項に記載の発明を実施するに際して、図面、当該開示及び添付請求項を検討することにより、理解され、実行され得るものである。請求項において、「有する(含む)」という文言は他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形は複数を除外するものではない。
【0139】
単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を果たすことができる。
【0140】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0141】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体により格納/配布され得るのみならず、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように、他の形態で配布することもできる。
【0142】
「適合される」という用語が請求項又は説明で使用される場合、該「適合される」という用語は、「構成される」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。
【0143】
請求項における如何なる参照記号も、当該範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】