(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】血行力学的状態の図式表現
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20231219BHJP
A61B 5/0205 20060101ALI20231219BHJP
G16H 30/40 20180101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B5/00 D
A61B5/0205
G16H30/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536123
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021085811
(87)【国際公開番号】W WO2022129121
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カツマレク ピョートル
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA14
4C017CC01
4C017CC08
4C117XB02
4C117XC12
4C117XG13
4C117XG34
4C117XL22
5L099AA26
(57)【要約】
本明細書で開示する方法及び装置は、患者の血行力学的状態の図式表現に関する。様々な実施形態では、患者の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータが分析される。分析に基づいて、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)が描かれる。GUIは、患者の循環器系を表す8の字スキマチックを含む。8の字スキマチックは、患者の肺循環を表す第1のループと、患者の体循環を表す第2のループと、第1のループ及び第2のループを接続し、患者の心臓を表す、中央オブジェクトとを含む。様々な実施形態では、第1のループ及び第2のループの各々が複数の円弧断片を含み、各円弧断片は、患者の測定された生理学的パラメータのうちの1つ又は複数を伝えるように成形される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータを分析するステップと、
前記分析するステップに基づいて、グラフィカルユーザインターフェースを描くステップであって、前記グラフィカルユーザインターフェースが、前記患者の循環器系を表す8の字スキマチックを含む、描くステップと
を有し、
前記8の字スキマチックの第1のループが前記患者の肺循環を表し、
前記8の字スキマチックの第2のループが前記患者の体循環を表し、
前記第1のループと前記第2のループとを接続する中央オブジェクトが、前記患者の心臓を表し、前記患者の拡張末期容積(EDV)を伝えるように成形され、
前記第1のループ及び前記第2のループの各々が複数の円弧断片を含み、各円弧断片が、前記患者の測定された前記生理学的パラメータのうちの1つ又は複数を伝えるように成形され、前記患者の心拍出量が、前記中央円形オブジェクトから延びる前記第2のループの円弧断片の長さによって伝えられる、
1つ又は複数のプロセッサを使用して実施される方法。
【請求項2】
前記患者の前記肺循環の平均肺動脈圧(MPAP)を伝えるために選択される第1の厚さをもつ、前記第1のループの第1の円弧断片を描くステップと、
前記患者の前記肺循環の肺動脈閉塞圧(PAOP)を伝えるために選択される第2の厚さをもつ、前記第1のループの第2の円弧断片を描くステップと
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の前記体循環の平均動脈圧(MAP)を伝えるために選択される第3の厚さをもつ、前記第2のループの第1の円弧断片を描くステップと、
前記患者の前記体循環の中心静脈圧(CVP)を伝えるために選択される第4の厚さをもつ、前記第2のループの第2の円弧断片を描くステップと
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の一回拍出量が、前記第2のループの前記円弧断片内から延びる2次円弧状要素の長さによって伝えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
円弧状チャネルをもつ円弧状エンベロープを描くステップを有し、前記円弧状チャネルのボアが、前記第1のループ又は前記第2のループの一部分の厚さを圧縮することによって血管抵抗を伝えるようにサイズ決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の円弧断片のうちの1つ又は複数が、前記患者の測定された前記生理学的パラメータのうちのそれぞれの前記1つ又は複数の、正常範囲又はベースライン範囲の視覚的注釈を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のループの少なくとも一部分が、描かれた一対の肺の上に重ね合わせられた、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の呼吸を示すために、描かれた前記一対の肺をアニメーション化するステップを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者の肺血管外水分量(EVLW)のレベルを表す視覚的注釈とともに、前記一対の肺を描くステップを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
1つ又は複数のプロセッサと、命令を記憶するメモリとを備えるシステムであって、前記命令は、前記1つ又は複数のプロセッサによる前記命令の実行に応答して、前記1つ又は複数のプロセッサに、
患者の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータを分析することと、
前記分析に基づいて、グラフィカルユーザインターフェースを描くことであって、前記グラフィカルユーザインターフェースが、前記患者の循環器系を表す8の字スキマチックを含む、グラフィカルユーザインターフェースを描くことと
を行わせ、
前記8の字スキマチックの第1のループが前記患者の肺循環を表し、
前記8の字スキマチックの第2のループが前記患者の体循環を表し、
前記第1のループと前記第2のループとを接続する中央オブジェクトが、前記患者の心臓を表し、前記患者の拡張末期容積(EDV)を伝えるように成形され、
前記第1のループ及び前記第2のループの各々が複数の円弧断片を含み、各円弧断片が、前記患者の測定された前記生理学的パラメータのうちの1つ又は複数を伝えるように成形され、前記患者の心拍出量が、前記中央円形オブジェクトから延びる、前記第2のループの円弧断片の長さによって伝えられる、システム。
【請求項11】
前記患者の前記肺循環の平均肺動脈圧(MPAP)を伝えるために選択される第1の厚さをもつ、前記第1のループの第1の円弧断片を描くことと、
前記患者の前記肺循環の肺動脈閉塞圧(PAOP)を伝えるために選択される第2の厚さをもつ、前記第1のループの第2の円弧断片を描くことと
を行うための命令を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記患者の前記体循環の平均動脈圧(MAP)を伝えるために選択される第3の厚さをもつ、前記第2のループの第1の円弧断片を描くことと、
前記患者の前記体循環の中心静脈圧(CVP)を伝えるために選択される第4の厚さをもつ、前記第2のループの第2の円弧断片を描くことと
を行うための命令を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、1つ又は複数のプロセッサによる前記命令の実行に応答して、前記1つ又は複数のプロセッサに請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実行させる、少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する様々な実施形態は一般にヘルスケアを対象とする。より詳細には、排他的ではないが、本明細書で開示する様々な方法及び装置は患者の循環器系の状態の図式表現に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、患者が、集中治療室(ICU)の中にいるなど、高度な監視状態にある場合、患者について多数の生理学的パラメータが測定される。これらの測定された生理学的パラメータを、医師及び看護師など、医療従事者に提示することが困難であることがある。提示する測定された生理学的パラメータが多すぎると、対応できなくなることがあり、提示する測定された生理学的パラメータが少なすぎると、患者の循環器系の状態、特に状態の変化についての情報が医療従事者に十分に与えられない。
【0003】
患者監視のコンテキストにおいて、多くの既存の患者モニタは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)の一部として数値表示と波形とを表示することに特化されている。しかしながら、既存の循環器系GUIには様々な問題がある。既存の循環GUIは、ますます多くの信頼できる血行動態測定値を与える新しい非侵襲的な技術の拡散について行くことができない。あるものは、提供される詳細が多すぎ、及び/又は複雑すぎて、臨床医の認識能力が酷使される。他のものは、提供される詳細が少なすぎ、それにより患者の血行力学的状態の変化が気づかれなくなることがある。いくつかの循環器系ディスプレイは患者の器官の無償の自然主義的な表現を採用しており、そのような表現は、経験をもつ臨床医にとって不要であり、いくぶん情報不足な場合に比較的乏しい数値データのための例示的な背景としてしばしば採用される。
【0004】
米国特許出願公開第2019/110760(A1)号は、間隔を空けて測定されたパラメータの変化を動的に表示するための方法を開示している。その方法は、モニタ上のセンサーによって患者の少なくとも1つのタイプの血行動態パラメータを動的に監視するステップと、第1の監視時間において監視されたタイプの血行動態パラメータの第1のモニタリング値を得るステップと、グラフィックディスプレイインターフェース上の各タイプの血行動態パラメータに対応するシミュレートされたグラフ中の第1のモニタリング値に対応する第1の形態を表示するステップと、第2の監視時間において監視されたタイプの血行動態パラメータの第2のモニタリング値を得、対応するシミュレートされたグラフの第2の形態を決定するステップと、グラフィックディスプレイインターフェース上の各タイプの血行動態パラメータに対応するシミュレートされたグラフを第1の形態から第2の形態に調整するステップとを有する。また、対応するシステム及び動的モニタが提供される。
【0005】
米国特許出願公開第US2017/100082(A1)号は患者監視及びディスプレイシステムを開示している。そのシステムは、臨床医が、臨床イベントの発生をトリガし、臨床イベントの後の患者の状態を記録することを可能にする。そのシステムは、臨床イベントにより生じた患者の状態の変化を計算し、表示する。そのシステムは、複数のパラメータを単一のスクリーン上で追跡し、表示することを可能にする。そのシステムはまた、患者の器官の働きに対応する、心臓又は肺など、様々なアニメーション化された器官を表示することができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、患者の循環器系の状態の図式表現のための方法及び装置を対象とする。例えば、様々な実施形態において、ディスプレイ上に描かれるGUIは、患者の血行力学的状態に関連付けられた様々な測定された生理学的パラメータと、それらのパラメータ間の関係とを直観的ですぐにわかりやすい様式で伝える、1つ又は複数のグラフィカル要素を含む。様々な実施形態において、これらのグラフィカル要素は、循環器系の状態に関連付けられた測定された生理学的パラメータを伝えるために選択される様々な空間的な寸法を有する。
【0007】
例えば、本開示の選択された態様を用いて構成されたGUIは、患者の循環器系を表す8の字スキマチック(figure-eight schematic)を含む。8の字スキマチックの第1のループは患者の肺循環を表す。いくつかの実施形態では第1のループの下に提示される、8の字スキマチックの第2のループは患者の体循環を表す。第1のループと第2のループとを接続する中央円形オブジェクトは、患者の心臓を表し、いくつかの実施形態では、患者の拡張末期容積(end diastolic volume)(EDV)を伝えるように成形される。いくつかの実施形態では、第1のループ及び第2のループの一方又は両方が複数の円弧断片を含む。各円弧断片は、患者の測定された生理学的パラメータのうちの1つ又は複数を伝えるように成形される。本明細書で使用する際、「成形する」という動詞は、それの様々な形態において、グラフィカル要素の任意の空間的寸法を、単独で、及び/又はグラフィカル要素の任意の一部のサイズを含むグラフィカル要素の他の態様に対して選択することを指す。したがって、例えば、様々な円弧断片は、様々な医学的状態を伝える相対的な幅又は厚さを有し得、それらの医学的状態に応じて、円弧断片はより厚くなったりより薄くなったりする。
【0008】
本明細書で説明する実施形態は様々な技術的利点を生じさせる。8の字スキマチックにより、医療従事者は、患者の循環状態を容易に確認/理解/直観することが可能になり、電子医療記録(EMR)及び/又は患者データ管理システム(PDMS)を閲覧する必要がない。その上、8の字スキマチックの構成要素に相対的な厚さが与えられる実施形態では、臨床医は、問題がどこから生じているか、及び/又はそれらの問題が他のどのエリアに影響を及ぼすかを迅速に確認することができる。例えば、異なる測定された生理学的パラメータが1つ又は複数の連続的な形状(例えば8の字スキマチック)の様々なポイント中に伝達又は「符号化」されるように、それらの生理学的パラメータを正規化することにより、臨床医は、何が「正常」又は「ベースライン」であるか、及び特定の患者の測定された生理学的パラメータが正常/ベースラインからどのように発散しているかを明確に認識することが可能になる。その上、8の字スキマチックのコンパクトな性質を踏まえると、スマートウォッチのディスプレイ、(一般に小型ディスプレイを有する)患者モニタ、及び/又は(他の患者についての情報をも同時に表示することを可能にするための)ナースステーションのモニタの小さい領域など、小さいエリア中に8の字スキマチックを描くことが可能であり、それでも、大量の情報が依然として伝えられる。いくつかの実装形態では、8の字スキマチックは、患者の循環器系のスナップショットとして、紙文書又はEMRなどの電子文書中にも描かれる。
【0009】
一般に、一態様において、方法は、1つ又は複数のプロセッサを使用して実施され、患者の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータを分析するステップと、分析するステップに基づいて、グラフィカルユーザインターフェースを描くステップであって、そのグラフィカルユーザインターフェースが、患者の循環器系を表す8の字スキマチックを含む、グラフィカルユーザインターフェースを描くステップとを有し、8の字スキマチックの第1のループは患者の肺循環を表し、8の字スキマチックの第2のループは患者の体循環を表し、第1のループと第2のループとを接続する中央オブジェクトは、患者の心臓を表し、患者の拡張末期容積(EDV)を伝えるように成形され、第1のループ及び第2のループの各々が複数の円弧断片を含み、各円弧断片は、患者の測定された生理学的パラメータのうちの1つ又は複数を伝えるように成形され、患者の心拍出量が、中央円形オブジェクトから延びる、第2のループの円弧断片の長さによって伝えられる。
【0010】
様々な実施形態において、本方法は、患者の肺循環の平均肺動脈圧(mean pulmonary arterial pressure)(MPAP)を伝えるために選択される第1の厚さをもつ、第1のループの第1の円弧断片を描くステップ、患者の肺循環の肺動脈閉塞圧(pulmonary artery occlusion pressure)(PAOP)を伝えるために選択される第2の厚さをもつ、第1のループの第2の円弧断片を描くステップ、患者の体循環の平均動脈圧(mean arterial pressure)(MAP)を伝えるために選択される第3の厚さをもつ、第2のループの第1の円弧断片を描くステップ、及び/又は患者の体循環の中心静脈圧(central venous pressure)(CVP)を伝えるために選択される第4の厚さをもつ、第2のループの第2の円弧断片を描くステップを有する。
【0011】
様々な実施形態において、患者の一回拍出量(stroke volume)が、第2のループの円弧断片内から延びる2次円弧状要素の長さによって伝えられる。
【0012】
様々な実施形態において、本方法は、円弧状チャネルをもつ円弧状エンベロープを描くステップを有し、円弧状チャネルのボアは、第1のループ又は第2のループの一部分の厚さを圧縮することによって血管抵抗を伝えるようにサイズ決定される。様々な実施形態において、複数の円弧断片のうちの1つ又は複数が、患者の測定された生理学的パラメータのうちのそれぞれの1つ又は複数の、正常範囲又はベースライン範囲の視覚的注釈を含む。
【0013】
様々な実施形態において、第1のループの少なくとも一部分が、描かれた一対の肺の上に重ね合わせられる。様々な実施形態において、本方法は、患者の呼吸を示すために、描かれた一対の肺をアニメーション化するステップを有する。様々な実施形態において、本方法は、患者の肺血管外水分量(extravascular lung water)(EVLW)のレベルを表す視覚的注釈とともに、一対の肺を描くステップを有する。
【0014】
さらに、いくつかの実装形態は1つ又は複数の計算デバイスの1つ又は複数のプロセッサを含み、1つ又は複数のプロセッサは、関連付けられたメモリに記憶された命令を実行するように動作可能であり、それらの命令は、上述の方法のいずれかの実行を行わせる。また、いくつかの実装形態は、上述の方法のいずれかを実行するために1つ又は複数のプロセッサによって実行可能なコンピュータ命令を記憶する1つ又は複数の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。
【0015】
上記の概念と、以下でより詳細に説明する追加の概念とのすべての組合せは、(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件として)本明細書で開示する発明的主題の一部であるものとして企図されることを諒解されたい。特に、本開示の最後に現れる特許請求される主題のすべての組合せは、本明細書で開示する発明的主題の一部であるものとして企図される。また、参照によりに組み込まれるいずれかの開示中にも現れることがある、本明細書で明示的に採用されている用語は、本明細書で開示する特定の概念に最も一致する意味を与えられるべきであることを諒解されたい。
【0016】
図面において、異なる図全体にわたって同様の参照符号は一般に同じ部分を指す。また、図面は必ずしも一定の縮尺でなく、代わりに、一般に、本明細書で説明する実施形態の様々な原理を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の選択された態様が実施される例示的な環境を示す図である。
【
図2A】本開示の選択された態様による、符号化された生理学的測定値をもたない8の字スキマチックの例を示す図である。
【
図2B】本開示の選択された態様による、符号化された生理学的測定値をもたない8の字スキマチックの例を示す図である。
【
図3】様々な実施形態による、拡張末期容積、一回拍出量、及び心拍出量がどのように伝えられるかの一例を示す図である。
【
図4】様々な実施形態による、拡張末期容積、一回拍出量、及び心拍出量がどのように伝えられるかの一例を示す図である。
【
図5A】本開示の選択された態様を用いて構成されたさらなる例示的な8の字スキマチックを示す図である。
【
図5B】本開示の選択された態様を用いて構成されたさらなる例示的な8の字スキマチックを示す図である。
【
図6】本開示の選択された態様による、様々な健康状況の下で8の字スキマチックがどのように現れるかの例を示す図である。
【
図7】本開示の選択された態様による、様々な健康状況の下で8の字スキマチックがどのように現れるかの例を示す図である。
【
図8】本開示の選択された態様による、様々な健康状況の下で8の字スキマチックがどのように現れるかの例を示す図である。
【
図9】本開示の選択された態様による、様々な健康状態の下で8の字スキマチックがどのように現れるかの例を示す図である。
【
図10】本開示の選択された態様による、8の字スキマチックの変形形態を示す図である。
【
図11】本開示の選択された態様による、8の字スキマチックの変形形態を示す図である。
【
図12】本開示の選択された態様を用いて構成された代替的な8の字スキマチックを示す図である。
【
図13】本開示の選択された態様を実施するための例示的な方法を示す図である。
【
図14】例示的な計算システムアーキテクチャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に、患者が、集中治療室(ICU)の中にいるなど、高度な監視状態にある場合、患者について多数の生理学的パラメータが測定される。医師及び看護師など、医療従事者によるこれらの測定された生理学的パラメータの知的処理により、医療従事者の認識能力が酷使されることがある。例えば、多数の既存の循環ディスプレイによって提示される循環情報は、患者の循環器系の状態に関連付けられた様々な測定された生理学的パラメータがどのように相互作用するかを実証する際に効果的でないことがある。上記に鑑みて、本開示の様々な実施形態及び実装形態は患者の循環器系の状態の図式表現の改善を対象とする。
【0019】
図1は、本開示の選択された態様を実施する様々な構成要素をもつ例示的な環境を示している。患者100は、例えば、様々なタイプのプローブ、電極、臨床試験、スワブなどによって測定された様々な生理学的パラメータを有する。それらの測定された生理学的パラメータのうちの1つ又は複数が、患者モニタ104と動作可能に結合されたローカル計算デバイス102に与えられる。いくつかの実施形態では、患者モニタ104は、プロセッサ及びメモリなどのオンボードロジックをもつスタンドアロン計算デバイスであり、その場合、計算デバイス102は省略されることがある。患者モニタ104は、患者100の循環器系についての情報を伝えるために、本開示の選択された態様を用いて構成されたグラフィカルユーザインターフェース(「GUI」、
図1に示されていない)を表示する。
【0020】
医師、看護師、臨床医など、医療従事者106は、患者モニタ104を直接読み取り、及び/又は本開示の選択された態様を用いて描かれたGUIを閲覧するために様々なタイプのクライアント計算デバイス108を動作させる。計算デバイス108(又は本明細書で言及する他の計算デバイス)は、デスクトップ計算デバイス、ラップトップ計算デバイス、タブレット計算デバイス、モバイルフォン計算デバイス、ユーザの車両の計算デバイス(例えば、車両内通信システム、車両内エンターテインメントシステム、車両内ナビゲーションシステム)、(場合によってはビジョンセンサーを含む)スタンドアロンインタラクティブスピーカー、スマートテレビジョン(又は自動アシスタント機能をもつネットワークドングルを備える標準型テレビジョン)などのスマートアプライアンス、及び/又は計算デバイスを含むユーザのウェアラブル装置(例えば、計算デバイスを有するユーザの腕時計、計算デバイスを有するユーザの眼鏡、仮想又は拡張現実計算デバイス)のうちの1つ又は複数など、様々な形態を取り得る。追加及び/又は代替のクライアント計算デバイスが与えられ得る。
【0021】
計算デバイス102、計算デバイス108、及び/又は患者モニタ104など、
図1に示されている様々な構成要素は、1つ又は複数のコンピュータネットワーク110を介して互いにネットワーク通信している。1つ又は複数のコンピュータネットワーク110はワイヤード及び/又はワイヤレスのローカルエリア及び/又はワイドエリアネットワーク(例えばインターネット)を含む。様々な構成要素間の通信を容易にするために、Wi-Fi、セルラー、イーサネット、光ファイバーなど、様々なコンピュータネットワーキング技術が実装され得る。
【0022】
本開示に関連がある様々なデータポイントを得るためにアクセス可能である様々な情報システムが与えられる。例えば、病院情報システム(HIS)112及び/又はEMR/PDMSシステム114は、例えば、患者のためのEMRの一部として、測定された生理学的パラメータを受信及び/又は維持する。ユーザインターフェース(UI)エンジン116は、患者モニタ104、計算デバイス108、又は(例えば、患者の住居若しくは患者の近親者の住居において)患者100によって制御されるラップトップコンピュータ118及び/若しくは医療従事者106(若しくは患者)が装着しているスマートウォッチ120などの他のデバイスなど、様々なディスプレイデバイスに、本開示の選択された態様を用いて構成されたGUIに描かせるために、本開示の選択された態様を実施するように構成される。
【0023】
いくつかの実装形態では、UIエンジン116は、本開示の選択された態様を用いて構成されたGUIをリモート計算デバイス上に描かせるために、様々な形態でデータを配信する。いくつかの実装形態では、UIエンジン116は、ウェブブラウザ又は他のアプリケーションによってレンダリングされるマークアップ言語文書(例えば、HTML、XML)を配信する。いくつかの実施形態では、UIエンジン116は、本開示の選択された態様を用いて構成された8の字スキマチックを描くためにリモート計算デバイスにおいて使用可能である、グラフィックスデータを配信する。様々な実装形態において、これらのグラフィックスデータは、ベクターグラフィックス、ラスタライズド/ビットマップグラフィックスなどの形態を取る。他の実装形態では、UIエンジン116は、例えば、UIエンジン116からクライアントデバイスにおいて受信されたデータに基づいて、クライアントデバイス上に全体的に又は部分的に実装される。
【0024】
いくつかの実装形態では、UIエンジン116は、他の情報システム(例えば、112、114)からの、実験室からの、及び/又は患者100の生理学的パラメータを監視するために使用されている機器からの測定された生理学的パラメータを得、これらのデータポイントを正規化及び分析し、その分析に基づいて、患者100の循環器系の様々な態様を伝えるグラフィカル要素を描く。
図1ではHIS112及びEMR/PDMS114とは別個に示されているが、他の実施形態では、UIエンジン116はこれらの他の情報システムのいずれかと一体である。いくつかの実施形態では、患者はまた、本開示の態様を用いて構成されたGUIがそれの上に描かれるディスプレイを含むスマートウォッチ及び/又はウェアラブル患者モニタ(図示せず)を装着している。
【0025】
図2A及び
図2Bは、様々な実施形態による、GUIの一部として描かれる例示的な8の字スキマチック222を示している。
図2Aは、患者100についての様々な生理学的情報を伝えるために様々な部分をどのように成形することができるかを示す、矢印の形態のいくつかの視覚的注釈を含む。
図2Bは、8の字スキマチックを、それぞれ患者100の異なる測定された生理学的パラメータに対応する複数の円弧断片にどのように論理的に分割するかをより詳細に示している。
【0026】
図2Aと
図2Bの両方を参照すると、8の字スキマチック222は、患者100の肺循環の態様を表す(例えば、完全な円、楕円形状、又は何らかの他の円形状である)第1のループ224を含む。8の字スキマチック222はまた、患者100の体循環の態様を表す(例えば、完全な円又は楕円形状である)第2のループ226を含む。言い換えれば、上部ループ224は患者100の肺中の循環を表し、下部ループ226は患者100の他の場所における循環を表す。肺と循環器系の残部とが心臓によって接続されているのとちょうど同じように、8の字スキマチックも、患者100の心臓を表す(例えば、完全な円又は楕円形状である)中央オブジェクト228を含む。
【0027】
様々な実施形態において、第1のループ224及び第2のループ226の一方又は両方が複数の円弧断片を含む(例えば、複数の円弧断片に論理的に分割される)。それらの断片は
図2Aにも標示されているが、このことは
図2Bにおいて最も良くわかる。各円弧断片は、患者100の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータ、より詳細には、患者100の体内で測定された様々な圧力及び/又は抵抗を伝えるように成形される。これらの様々な生理学的パラメータがどのように伝えられるかの一例を示すために、
図2A中に様々な矢印が与えられている。異なる値を有する異なる測定された生理学的パラメータを単一の8の字スキマチック上で一緒に閲覧することができるように、様々な実装形態において、1つ又は複数の測定された生理学的値が他の測定された生理学的値に対して正規化される。これにより、円弧断片の相対的な厚さが、直観的で有益な様式で患者の血行力学的状態を効果的に伝えることが可能になる。
【0028】
いくつかの実装形態では、中央オブジェクト228は、患者100の拡張末期容積(EDV)を伝えるように成形される(例えば、サイズ決定される)。患者の心拍出量は、いくつかの実施形態では、中央オブジェクト228から延びる第2のループ226の(本明細書では「CO円弧断片」と呼ぶ)円弧断片230の円弧長さ232によって伝えられる。
図2A~
図2Bには図示されていないが、いくつかの実施形態では、患者100の一回拍出量は、CO円弧断片230内から延びる2次円弧状要素の長さによって伝えられる(
図4中の352参照)。
【0029】
CO円弧断片230のすぐ下流には平均動脈圧(MAP)円弧断片234がある。MAP円弧断片234は、患者100のMAP測度に基づいて選択される(両矢印235によって示されている)厚さを有する。一例として、血圧が高い患者の場合、MAP円弧断片234は比較的厚くなる。血圧が低い患者の場合、MAP円弧断片234は比較的薄くなる。CO円弧断片230の厚さはMAP符号化円弧234に従う(例えば、MAP符号化円弧234と同じである)。
【0030】
MAP円弧断片234のすぐ下流には、円弧状チャネル238をもつ円弧状エンベロープ236が描かれている。円弧状チャネル238は、ボアが空けられるか、又は、
図2Aの右下における内向き矢印239によって示されているように、第2のループ226の一部分の厚さを圧縮することによって体血管抵抗(systematic vascular resistance)(SVR)を伝えるようにサイズ決定されたボアを有する。一例として、SVRが高い患者の場合、円弧断片238は比較的薄くなる。SVRが低い患者の場合、円弧断片238は比較的厚くなる。
【0031】
円弧状エンベロープ236の下流には、中心静脈圧(CVP)円弧断片240が、また右心房圧(right atrial pressure)(RAP)の妥当な近似値、及び/又はプレロード(preload)のためのサロゲート(surrogate)として、患者100のCVP測定値を伝えるように成形されている。CVP円弧断片240の後に、血流は、上記のように患者100の心臓に対応する中央オブジェクト228に戻る。したがって、例えば、CVP円弧断片240の厚さは、患者100の心臓に戻る静脈血の圧力を表す。
【0032】
次に、患者100の肺循環を表す第1のループ224に注目する。平均肺動脈圧(MPAP)円弧断片241は、患者100のMPAPを伝える(両矢印243によって伝えられる)幅を有するように成形される。同様に、肺動脈楔入圧(pulmonary artery wedge pressure)(PAWP)又は肺動脈閉塞圧PAOP)円弧断片242は、患者100のPAWP/PAOP測定値を伝える(両矢印245によって伝えられる)幅を有するように成形される。
【0033】
患者100の第2のループ226(体循環)中の円弧状エンベロープ236と同様に、円弧状チャネル246をもつ別の円弧状エンベロープ244がMPAP円弧断片241とPAWP円弧断片242との間に与えられる。円弧状チャネル246は、ボアが空けられるか、又は、
図2Aの左上における内向き矢印247によって示されるように、それの厚さを圧縮することによって肺血管抵抗(pulmonary vascular resistance)(PVR)を伝えるために、第1のループ224の一部分の上にサイズ決定されるボアを有する。一例として、PVRが高い患者の場合、円弧断片246は比較的薄くなる。
【0034】
図2A~
図2Bでは、8の字スキマチック222は、基礎となる生理学的測定値なしに示されていた。次に説明する様々な追加の図は、8の字スキマチック222が様々な状況の下でどのように現れるかを示している。
図3から始めると、8の字スキマチック222は、患者100の心拍出量(cardiac output)(CO)を伝える円弧長さ232だけ中央オブジェクト228から延びる第2のループ226のCO円弧断片230とともに描かれている。いくつかの実施形態では、
図4に示されているように、患者100の一回拍出量(SV)は、CO円弧断片230内から延びる2次円弧状要素352の長さによって伝えられる。
【0035】
図3中の円弧断片の厚さは比較的均一であり、患者の生理学的測定値が正常範囲内にあることを示唆している。
図3は、したがって、測定された生理学的パラメータが正常範囲内である患者の場合、様々な円弧断片の厚さは大体均一であることを保証するための、前述の正規化の可能な目標を示している。図には示されていないが、いくつかの実装形態では、様々な円弧断片は、さらに、それらが何を表すかを伝えるために視覚的に注釈を付けられる。例えば、MPAP円弧断片241は、「MPAP」と標示されることがあり、また、数値を用いて標示されることも標示されないこともある。他の円弧断片は同様に注釈を付けられることも付けられないこともある。
【0036】
図5A及び
図5Bは、正常値又はベースライン値を示す視覚的注釈をもたない8の字スキマチック222の変形形態と、そのような視覚的注釈をもつ8の字スキマチック222の変形形態とを示している。
図5Aと
図5Bの両方において、患者100の肺循環は、低い圧力と低い抵抗とを有するものとして第1のループ224によって示されている。例えば、円弧状チャネル246は拡大又は拡張されている。対照的に、患者100の体循環は、高い圧力と高い抵抗とを有する第2のループ226によって示されているが、プレロード(EDV)は正常に近い。例えば、円弧状チャネル238は圧縮されている。
図5Bでは、様々な測定された生理学的パラメータが正常測度又はベースライン測度と比較してどのくらいであるかを臨床医に示すために、基礎となる円弧断片の上にライン550、552の形態の視覚的注釈が示されている。これらの視覚的注釈は
図5A中にはない。
【0037】
図6~
図9は、本開示の選択された態様による、様々な健康状況の下で8の字スキマチック222がどのように現れるかの例を示している。
図6では、患者100は、患者100が彼又は彼女の血液供給のある割合(例えば20%)以上を失ったときに生じる生命にかかわる状態である、循環血液量減少性(hypovolemic)ショックを起こしている。したがって、PAOP円弧断片242、MAP円弧断片234、CVP円弧断片240、及びMPAP円弧断片241は、それぞれ、それらのそれぞれの低い圧力を伝えるために狭く描かれている。円弧状エンベロープ244の円弧状チャネル246及び円弧状エンベロープ236の円弧状チャネル238は、それぞれ高いPVR及び高いSVRを示すために、圧縮された構成で描かれている。
【0038】
図7では、患者100は、患者の心臓が脳及び腎臓などの器官に十分な酸素を拍出することができないときに生じる生命にかかわる状態である、心原性(cardiogenic)ショックを起こしている。心原性ショックの1つの一般的な原因は心臓発作である。
図7では、PAOP円弧断片242、CVP円弧断片240、及びMPAP円弧断片241は、それぞれ、それらのそれぞれの高い圧力を伝えるために比較的広い厚さで描かれている。対照的に、MAP円弧断片234は、比較的低い圧力を示すために比較的狭く描かれている。円弧状エンベロープ244の円弧状チャネル246及び円弧状エンベロープ236の円弧状チャネル238は、この場合も、それぞれ高いPVR及び高いSVRを示すために、圧縮された構成で描かれている。好適にトレーニングされた臨床医は、
図7に示されている構成を閲覧して、患者100が心原性ショックを起こしているという結論を迅速に下すことができる。
【0039】
図8では、患者100は、それだけに限らないが、たいてい細菌によって引き起こされる感染の後に、患者の血圧が危険なほど低いレベルまで低下したときに生じる生命にかかわる状態である、敗血性(septic)ショックを起こしている。したがって、PAOP円弧断片242、MAP円弧断片234、CVP円弧断片240、及びMPAP円弧断片241は、それぞれ、それらのそれぞれの低い圧力を伝えるために狭く描かれている。円弧状エンベロープ244の円弧状チャネル246及び円弧状エンベロープ236の円弧状チャネル238は、それぞれ低いPVR及び低いSVRを示すために、圧縮されていない又は拡張された構成で描かれている。好適にトレーニングされた臨床医は、
図8に示されている構成を閲覧して、患者100が敗血性ショックを起こしているという結論を迅速に下すことができる。
【0040】
図9では、患者100は、肺塞栓症、又は、患者100の肺中の肺動脈のうちの1つにおける閉塞を起こしている。したがって、PAOP円弧断片242及びMAP円弧断片234は、それぞれ、それらのそれぞれの低い圧力を伝えるために狭く描かれている。対照的に、CVP円弧断片240及びMPAP円弧断片241は、それらのそれぞれの高い圧力を伝えるために比較的厚く描かれている。円弧状エンベロープ244の円弧状チャネル246は、高いPVRを示すために、圧縮された構成で描かれている。対照的に、円弧状エンベロープ236の円弧状チャネル238は、正常なSVRを示すために、圧縮されずに又は拡張されて描かれている。好適にトレーニングされた臨床医は、
図9に示されている構成を閲覧して、患者100が肺塞栓症を起こしたという結論を迅速に下すことができる。
【0041】
図10及び
図11は、本開示の選択された態様による、8の字スキマチックの変形形態を示している。各図において、第1のループ224の一部分は、描かれた一対の肺260の上に重ね合わせられている。一対の肺260は、様々な情報を伝えるために様々なやり方で視覚的に注釈を付けられ、及び/又は描かれる。
図10では、例えば、一対の肺260は、肺血管外水分量(EVLW)又は肺血管外水分量係数(extravascular lung water index)(ELWI)を伝えるための、一対の肺260内で上昇する流体262の概略描写を含む。
【0042】
図11では、一対の肺260は、患者の呼吸を示すためにアニメーション化されている。例えば、一対の肺260は、患者が息を吸うと膨張し、患者が息を吐くと収縮するようにアニメーション化される。また、別のアニメーションは、例えば、CO円弧断片230が心拍数に同期して延びたり縮んだりすることを示すことによって、大動脈血の動きをユーザに通知し、動脈血の動きは異常の認識を助ける。
【0043】
いくつかの実施形態では、8の字スキマチック222は、経時的な患者の血行力学的状態の変化を示すためにアニメーション化される。例えば、様々な円弧断片の厚さは、患者の進行中の血行力学的状態を示すために時間とともに変更される。患者が、
図6~
図9に示されている状態のいずれかなどの状態に陥った場合、この変化は、これらのアニメーションにおいて明らかになり、臨床意思決定支援(clinical decision support)(CDS)分析の一部として使用され得る。いくつかのそのような実施形態では、臨床医は、例えば、特定の状態がどのように発症したのかを決定するために、及び/又は様々な時点における患者の血行力学的状態の全体論的な概観を得るために、これらのアニメーションを「早送りする」及び/又は「巻き戻す」ためにタイムラインをスクロールすることが可能である。
【0044】
8の字スキマチックは、前の図に示されているたいていは円形のループに限定されない。様々な実施形態において、8の字スキマチックは、異なる形状を有するループを含む。
図12は、参照番号が「2」ではなく「12」で始まることを除いて、他の図中の構成要素と同様に標示されている構成要素をもつ例示的な8の字スキマチック1222を示している。第1のループ1224は、たいていは円形の形状を有するが、中央オブジェクト1228と第1のループ1224との境界は前の図に示されているものとは異なる。
【0045】
さらに、
図12では、中央オブジェクト1228は、前の図中の中央オブジェクト228とは異なって成形されており、中央オブジェクト1228はかすかにハート形である。さらに、
図12では、第2のループ1226はいくぶん円形である形状を有するが、第1のループ1224と同様に、第2のループ1226と中央オブジェクト1228との間の境界は前の図中の第2のループ226と中央オブジェクト228との間の境界とは異なる。
【0046】
次に
図13を参照しながら、本開示の選択された態様を実施する例示的な方法1300について説明する。便宜のために、フローチャートの動作を実行するシステムを参照しながら、それらの動作について説明する。このシステムは様々なコンピュータシステムの様々な構成要素を含み得る。例えば、様々な動作がUIエンジン116の1つ又は複数の構成要素或いは
図1の他の構成要素によって実行される。その上、方法1300の動作は特定の順序で示されているが、これは限定的なものではない。1つ又は複数の動作が並べ替えられ、省略され、又は追加され得る。
【0047】
ブロック1302において、本システムは、患者の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータ、特に、PVR、MPAP、EDV、CVP、PAOP、CO、SV、MAP、及び/又はSVRなど、患者の循環器系に関係するパラメータを分析する。その分析に基づいて、ブロック1304において、本システムはGUIに描かせる。様々な実装形態において、GUIは、患者の循環器系を表す8の字スキマチック(例えば222)を含む。例えば、前の図に示されているように、8の字スキマチック222は、患者の肺循環を表す第1のループ224と、患者の体循環を表す第2のループ226と、第1のループ及び第2のループを接続し、患者の心臓を表す、中央円形オブジェクト228とを含む。いくつかの実施形態では、中央円形オブジェクト228は、患者のEDVを伝えるように成形される(例えば、そのように選択される直径を有する)。
【0048】
様々な実施形態において、第1のループ及び第2のループの一方又は両方が複数の円弧断片を含む。各円弧断片は、患者のそれぞれの測定された生理学的パラメータを伝えるように成形される。例えば、ブロック1306において、本システムは、患者100のMPAPなど、患者100の第1の測定された生理学的パラメータを伝えるために選択される第1の厚さをもつ、第1のループ224の第1の円弧断片241を描く。ブロック1308において、本システムは、患者のPAOPなど、患者100の第2の測定された生理学的パラメータを伝えるために選択される第2の厚さをもつ、第1のループ224の第2の円弧断片242を描く。
【0049】
追加の例として、ブロック1310において、本システムは、患者100のMAPなど、患者100の第3の測定された生理学的パラメータを伝えるために選択される第3の厚さをもつ、第2のループ226の第1の円弧断片234を描く。ブロック1312において、本システムは、患者のCVPなど、患者100の第4の測定された生理学的パラメータを伝えるために選択される第4の厚さをもつ、第2のループ226の第2の円弧断片240を描く。
【0050】
図14は、本明細書で説明する技法の1つ又は複数の態様を実行するために随意に利用される例示的な計算デバイス1410のブロック図である。計算デバイス1410は、一般に、バスサブシステム1412を介していくつかの周辺デバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサ1414を含む。これらの周辺デバイスは、例えばメモリサブシステム1425及びファイルストレージサブシステム1426を含むストレージサブシステム1424と、ユーザインターフェース出力デバイス1420と、ユーザインターフェース入力デバイス1422と、ネットワークインターフェースサブシステム1416とを含む。入力及び出力デバイスは計算デバイス1410とのユーザ対話を可能にする。ネットワークインターフェースサブシステム1416は、外部ネットワークへのインターフェースを与え、他の計算デバイス中の対応するインターフェースデバイスに結合される。
【0051】
ユーザインターフェース入力デバイス1422は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、若しくはグラフィックスタブレットなどのポインティングデバイス、スキャナ、ディスプレイ中に組み込まれたタッチスクリーン、音声認識システムなどのオーディオ入力デバイス、マイクロフォン、及び/又は他のタイプの入力デバイスを含む。一般に、「入力デバイス」という用語の使用は、計算デバイス1410中に、又は通信ネットワーク上に情報を入力するためのすべての可能なタイプのデバイス及び手段を含むものである。
【0052】
ユーザインターフェース出力デバイス1420は、ディスプレイサブシステム、プリンタ、ファックス機械、又はオーディオ出力デバイスなどの非視覚的表示を含む。ディスプレイサブシステムは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルデバイス、投影デバイス、又は可視画像を作成するための何らかの他の機構を含む。ディスプレイサブシステムはまた、オーディオ出力デバイスを介してなど、非視覚的表示を与え得る。一般に、「出力デバイス」という用語の使用は、計算デバイス1410からユーザに、又は別の機械若しくは計算デバイスに情報を出力するためのすべての可能なタイプのデバイス及び手段を含むものである。
【0053】
ストレージサブシステム1424は、本明細書で説明するモジュールのいくつかの又はすべての機能を与えるプログラミング及びデータ構造を記憶する。例えば、ストレージサブシステム1424は、
図13の方法の選択された態様を実行するための、並びに
図1に示されている様々な構成要素を実装するための論理を含み得る。
【0054】
これらのソフトウェアモジュールは、一般に、プロセッサ1414のみによって、又は他のプロセッサと組み合わせて実行される。ストレージサブシステム1424中で使用されるメモリ1425は、プログラム実行中の命令及びデータの記憶のためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)1430、及び固定命令がそれに記憶される読取り専用メモリ(ROM)1432を含む、いくつかのメモリを含み得る。ファイルストレージサブシステム1426は、プログラム及びデータファイルのための永続ストレージを与えることができ、ハードディスクドライブ、関連するリムーバブル媒体を伴うフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ、光ドライブ、又はリムーバブル媒体カートリッジを含む。いくつかの実装形態の機能を実施するモジュールは、ストレージサブシステム1424中のファイルストレージサブシステム1426によって、又はプロセッサ1414によってアクセス可能な他の機械中に記憶され得る。
【0055】
バスサブシステム1412は、意図されているように、計算デバイス1410の様々な構成要素とサブシステムとを互いに通信させるための機構を与える。バスサブシステム1412は単一のバスとして概略的に示されているが、バスサブシステムの代替実装形態は複数のバスを使用する。
【0056】
計算デバイス1410は、ワークステーション、サーバ、計算クラスタ、ブレードサーバ、サーバファーム、又は任意の他のデータ処理システム又は計算デバイスを含む、様々なタイプのものであり得る。コンピュータ及びネットワークの絶え間なく変化する性質により、
図14に示されている計算デバイス1410の説明は、いくつかの実装形態を示す目的のための具体例にすぎないものである。
図14に示されている計算デバイスよりも多いまたは少ない構成要素を有する、計算デバイス1410の多くの他の構成が可能である。
【0057】
本開示によれば、等価な心象を作り出すためにいくつかの数値をまとめる面倒なプロセスよりも迅速で信頼できる診断を可能にする、容易に認識可能な視覚的パターンが生成され、描かれる。本開示は、複数のファクタをまとめ、利用可能ないかなる事実も看過されないことを保証する。そのことは、したがって、ユーザにとって物事をより容易にし、精神的な負荷を下げ、有用な診断ツールを作り出す。
【0058】
ユーザ(例えば介護者又は臨床医)が肺循環の疑わしい変化がある場合に即座に対応することができるように、ある治療に反応した肺循環の測度のいかなる変化も反映されるので、患者の治療の効果は、直接的に即座に可視になり、容易に理解可能になる。
【0059】
例えば、治療のために使用される機械の(例えば人工呼吸器の)ある動作、又は(例えば点滴を介して与えられる)ある薬剤が、患者のEDV及び/又は心拍出量の重大な変化につながることを、ユーザが認識した場合、このことは、8の字スキマチック中に即座に反映され、したがって、例えば、機械の動作のパラメータを変更することによって、又は薬剤を変更することによって、ユーザによって迅速に認識され、対処され得る。したがって、本開示を用いると、迅速な診断と即時の治療の両方、すなわち、診断と治療との間の直接的で迅速な相互作用が可能になる。
【0060】
いくつかの発明的実施形態について本明細書で説明し、示したが、当業者は、本明細書で説明した機能を実行するための、並びに/或いは本明細書で説明した結果及び/又は本明細書で説明した利点のうちの1つ又は複数を得るための、様々な他の手段及び/又は構造を容易に想像しようし、そのような変形形態及び/又は改変の各々は、本明細書で説明した発明的実施形態の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書で説明したすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示的なものであること、並びに、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、発明的教示がそれのために使用される特定の1つ又は複数の適用例に依存することを容易に諒解しよう。当業者は、本明細書で説明した特定の発明的実施形態の多数の等価物を認識するか、又は単なる日常的な実験を使用してそのような等価物を確認することが可能であろう。したがって、上記の実施形態は単に例として提示されていること、並びに、添付の特許請求の範囲及びそれの等価物の範囲内で、発明的実施形態が、具体的に説明され、特許請求された以外の形で実施され得ることを理解されたい。本開示の発明的実施形態は、本明細書で説明した各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法のいかなる組合せも、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明的範囲内に含まれる。
【0061】
本明細書で定義し、使用するすべての定義は、辞書的定義、参照により組み込まれる文書における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を統制することが理解されるべきである。
【0062】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する際、単数形は、そうでないことが明示されていない限り、「少なくとも1つの」を意味することが理解されるべきである。
【0063】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する際、「及び/又は」というフレーズは、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味することが理解されるべきである。「及び/又は」を用いて列挙された複数の要素は、同じ様式で、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ又は複数」と解釈されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素は、具体的に特定されたそれらの要素に関係するか関係しないかにかかわらず、随意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「備える」など、オープンエンドの文言とともに使用されるとき、1つの実施形態では、(随意にB以外の要素を含む)Aのみを指し、別の実施形態では、(随意にA以外の要素を含む)Bのみを指し、また別の実施形態では、(随意に他の要素を含む)AとBの両方を指すなどであり得る。
【0064】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する際、「又は」は、上記で定義した「及び/又は」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離するときに、「又は」或いは「及び/又は」は、包括的である、すなわち、いくつかの要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むだけでなく、それらのうちの2つ以上を含み、及び随意に、追加の記載されていない項目をも含むものと解釈されたい。「のうちのただ1つ」又は「のうちの厳密に1つ」、或いは、特許請求の範囲において使用されるときの「からなる」など、反対のことが明示されている用語のみは、いくつかの要素又は要素のリストのうちの厳密に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用する際、「又は」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちのただ1つ」、又は「のうちの厳密に1つ」など、排他性の用語が前にあるときに、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとのみ解釈されたい。特許請求の範囲で使用されるときの「本質的に~からなる」は、特許法の分野において使用される際のそれの通常の意味を有するものとする。
【0065】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する際、1つ又は複数の要素のリストに関する「少なくとも1つの」というフレーズは、要素のリスト中の要素のいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素であるが、必ずしも、要素のリスト内で具体的に記載された1つ1つの要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト中の要素の任意の組合せを除外しないことを意味することが理解されるべきである。この定義はまた、具体的に特定された要素に関係するか関係しないかにかかわらず、「少なくとも1つの」というフレーズが指す要素のリスト内で具体的に特定されたそれらの要素以外の要素が随意に存在することを許す。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、等価として、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は、等価として、「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、随意に2つ以上のAを含む、少なくとも1つのAを指すが、Bは存在せず(随意にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、随意に2つ以上のBを含む、少なくとも1つのBを指すが、Aは存在せず(随意にA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、随意に2つ以上のAを含む、少なくとも1つのAと、随意に2つ以上のBを含む、少なくとも1つのBとを指す(随意に他の要素を含む)などであり得る。
【0066】
また、反対のことが明示されていない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む、本明細書で特許請求されるいずれかの方法において、その方法のステップ又は行為の順序は、必ずしもその方法のステップ又は行為が具陳されている順序に限定されるとは限らないことが理解されるべきである。
【0067】
特許請求の範囲、並びに上記の本明細書では、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含んでいる」、「伴う」、「保持する」、「から構成される」など、すべての移行句は、オープンエンドであること、すなわち、「限定はしないが~を含む」ことを意味することが理解されるべきである。「からなる」及び「本質的に~からなる」という移行句のみは、米国特許庁特許審査便覧第2111.03条に規定されているように、それぞれ、クローズド又は半クローズド移行句であるものとする。特許協力条約(「PCT」)の規則6.2(b)に従って特許請求の範囲において使用されるいくつかの表現及び参照符号はその範囲を限定しないことを理解されたい。
【0068】
別の態様によれば、方法及び対応するシステムであって、本方法は、患者の1つ又は複数の測定された生理学的パラメータを分析するステップと、その分析するステップに基づいて、グラフィカルユーザインターフェースを描くステップとを有し、グラフィカルユーザインターフェースが、患者の循環器系を表す8の字スキマチックを含み、8の字スキマチックの第1のループが患者の肺循環を表し、8の字スキマチックの第2のループが患者の体循環を表し、第1のループと第2のループとを接続する中央オブジェクトが患者の心臓を表し、第1のループ及び第2のループの各々が複数の円弧断片を含み、各円弧断片が、患者の測定された生理学的パラメータのうちの1つ又は複数を伝えるように成形される、方法が提示される。
【国際調査報告】