(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】中電圧および/または高電圧用途のための電気開閉装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20231219BHJP
H01H 33/64 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01H33/662
H01H33/64 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536128
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2021085728
(87)【国際公開番号】W WO2022129073
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】コレツコ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ラング,シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】リトベルク,イゴール
(57)【要約】
本発明は特に中電圧および/または高電圧用途のための電気開閉装置に関し、この装置は移動装置によって離間および接触可能な少なくとも2つの導体部材と、開閉室を画定しかつ1つまたは複数の絶縁体から構成されるハウジングと、このハウジングを軸方向に閉鎖する2つの金属キャップとを有する。本発明により初めて、真空開閉管のハウジング表面に、合成材料、特に充填合成材料から成り高いまたは周囲の空気に対して高い透磁率を有するコーティングを完全にまたは部分的に塗布し、臨界点特に三重点において界磁線を破断しアークの発生をできるだけ妨げることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置(9)によって離間することができる少なくとも2つの接触可能な導体部材(6)と、開閉室(5)を画定しかつ前記導体部材(6)を少なくとも部分的に囲むハウジング(3)を有する電気開閉装置(1)であって、
前記ハウジング(3)が絶縁体(2)と電気接点領域(4)とを有し、
前記ハウジング(3)の外側に少なくとも部分的に誘電率ε
r≧2の材料からなる誘電絶縁性のマトリクスを含む屈折制御コーティング(13)を有する、
電気開閉装置。
【請求項2】
前記屈折制御コーティング(13)の前記マトリクスが充填剤を含む、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記屈折制御コーティングが少なくとも電気接点(4)のある領域に存在する、請求項1または2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの充填剤区分の前記充填剤粒子の材料が、3以上200以下の誘電率ε
rを有するセラミックである、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの充填剤区分の前記充填剤粒子の材料が、少なくとも1つの金属酸化物、金属混合酸化物および/またはチタン酸塩を有するセラミックを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記マトリクスが、総量が1体積%~70体積%の範囲の充填剤粒子を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記樹脂が、エラストマー、熱硬化性プラスチック、熱可塑性プラスチックおよび/またはガラスの群から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項8】
前記マトリクスがおよび/またはポリマー樹脂混合物である、請求項1から7のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項9】
前記ポリマー樹脂または前記ポリマー樹脂混合物が、エポキシ樹脂、シリコーンエラストマ、シロキサン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステルイミド、並びにこれら化合物の任意の混合物および/またはこれらの組合せの群からの少なくとも1つの化合物を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項10】
前記屈折制御コーティングが、前記ハウジング(13)の外側面上で少なくとも1つの別のコーティングと組み合わされる、請求項1から9のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項11】
前記別のコーティングが抵抗性コーティングである、請求項10に記載の開閉装置。
【請求項12】
前記抵抗性コーティングが完全にまたは部分的に前記ハウジングの外側面を覆う、請求項1から11のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項13】
前記屈折制御コーティング(13)が少なくとも部分的に前記抵抗性コーティングの上に設けられる、請求項1から12のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項14】
前記屈折制御コーティングが5mm以下の層厚である、請求項1から13のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項15】
前記屈折制御コーティングが2mm以下の層厚である、請求項1から14のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項16】
前記屈折制御コーティングが湿式ワニスとして適用される、請求項1から15のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項17】
前記屈折制御コーティングが粉末ワニスとして適用される、請求項1から16のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項18】
前記開閉装置が真空開閉器またはガス開閉器である、請求項1から17のいずれか1項に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に中電圧および/または高電圧用途のための電気開閉装置に関し、この装置は、移動装置によって離間および接触可能な少なくとも2つの導体部材と、開閉室を画定しかつ1つまたは複数の絶縁体から構成されるハウジングと、を有し、開閉室の一部が接触ギャップの近くで金属からなり、ハウジングを軸方向に閉鎖する2つのキャップを有する。
【背景技術】
【0002】
中電圧および/または高電圧用途では、すなわち一般的に言って1kVより大きい電圧の場合には、高電圧のために発生する電界に耐えることができ、劣化効果に対して可能な限り耐性があり、また本来の開閉室外部での閃絡も回避することを意図された、比較的複雑な開閉装置が必要である。
【0003】
これらの1つの従来例は、特に開閉システムにおいてエネルギー伝送および配電における重要な構成要素である真空回路遮断器(vacuum circuit breakers - VCB)である。これらは、大部分の中電圧開閉用途、すなわち例えば1kVから52kVの範囲の開閉用途、および低電圧システムにおける関連部分をカバーしている。高電圧送電系統におけるそれらの使用、例えば52kVよりも高い電圧の場合におけるそれらの使用も増加している。VCBはほとんどの時間閉じられ、したがって導体部材間の接触が生じているが、その主な役目は定格条件、特に定格電流の開閉または好ましくは故障状態で電流を遮断するために、特に短絡を遮断しシステムを保護するために、交流電流システムにおける電流の遮断である。他の用途は、互いに接触する導体部材を使用する際における負荷電流の純粋な開閉であり、このほとんどは、低電圧および中電圧システムで使用されている。
【0004】
真空インタラプタ(VI、真空遮断管とも言う)はVCBの中核部材である。真空インタラプタは、一般に対応する導体部材によって形成される一対の接点を有し、その少なくとも一方は開閉装置の開状態および閉状態をもたらすために、移動装置を介して移動できるようにされている。この場合通常は、一方の導体部材が他方の固定された導体部材に対して軸方向に移動される。接点は電流および熱の両方の伝導性の金属から作られ、接点を保持および/または移動するための機械的手段を有する。
【0005】
真空インタラプタはさらに真空密のハウジングと前述の移動装置を備え、追加的に一方の側がハウジングに接続され他方の側が移動された導体部材、特に移動されたボルトに接続された金属ベローズを備えてもよい。ハウジングは主として絶縁部品、すなわち絶縁体によって形成され、例えばセラミックチューブが接続部材を介して導体部材に接続され、これには例えば金属キャップ等が用いられており、これらにより絶縁部品を軸方向に終端して開閉室を形成するようになっている。開閉室内では10-4hPaまたは10-4mbar未満の永久的な高真空が支配している。真空は、「メイク-ブレーク動作」を保証し、開状態における開閉装置の絶縁特性を保証するために必要とされる。
【0006】
開閉装置が開状態にあるとき、一方ではシステムの定格電圧を絶縁する必要があるが、他方では例えばシステムへの落雷によって起こり得る高振幅の衝撃電圧も絶縁する必要がある。開閉装置が閉状態から開状態に移行し、それに応じて導体部材の接点が離間しているとき、真空インタラプタを介してシステムの定格交流電圧よりも明らかに高い一時的な電圧ピークの発生につながる定格公称電流または短絡電流を遮断することが必要である。
【0007】
真空系における高電圧は、電界強度が十分に高い場合、通常は電界放出プロセスによって自由電子を生成する。高電場における電子の加速は、これらの電子の運動エネルギーを例えば数十または数百KeVを超えるエネルギーまで増加させる。これらの高エネルギー電子とハウジング構造との相互作用は、真空インタラプタを離れるおそれがある高エネルギーX線放射の生成をもたらす。通常の条件下では、真空インタラプタ内の故障電流は最小であり、顕著なX線放射成分を生成しないのに対し、例えば高振幅の過渡的な電圧ピークが生じ、発生するX線放射が絶縁体の外面および/またはその近くで自由電子を生成する状況が発生する可能性がある。これらの電子は絶縁体表面およびその近傍の電場によって加速され、敏感な領域の電場分布と干渉しガス放電につながり、真空インタラプタの動作中の故障につながる可能性がある。
【0008】
また特定可能なX線放射が存在しない場合にも、例えば低電圧および中電圧の用途においても、真空インタラプタの臨界領域、例えば絶縁体と金属キャップとの間の溶接(ハード溶接)接続部における高電場が電子の放出を招き、それが顕著な量の電界放出を引き起こす可能性がある。またこれらの電子は局所的に電場を妨害し、さらなる電場増幅および/または電子雪崩による電荷増倍をもたらし、その結果真空インタラプタの絶縁強度および/または電圧抵抗が失われる可能性がある。
【0009】
同様の課題は真空インタラプタの内面にも存在するが、追加の問題は解決しなければならない。電流(定格電流または短絡電流)の遮断により、接点材料の一部が蒸発し、高温金属蒸気の形で開閉室に分布する。この金属蒸気は絶縁体表面に堆積されて、時間が経つにつれて導電性の金属層を形成するおそれがある。この金属層は、たとえ弱い伝導性しかないとしても、同様に真空インタラプタの外側および内側の電場に干渉し、それに応じて真空インタラプタの電圧耐性を経時的に悪化させる可能性がある。勿論このために導体部材の接触領域内に同様に金属から成る遮蔽部材を設け、導体部材の自由な金属粒子を補足することが提案されているが、この遮蔽部材は開閉室内および絶縁体の電界分布にも影響を及ぼす。
【0010】
上記の理由から開閉室のハウジング、特に一般にセラミックで作られた絶縁体は、X線放射および自由電子が存在する場合であっても、絶縁体の外表面に静電的に蓄積するダスト粒子によって絶縁体が汚染された場合であっても、それぞれの表面に亘って高電圧に耐えることができなければならない。絶縁体は真空インタラプタ(または他のスイッチングデバイス)のコストに著しく関与し、真空インタラプタ(または他のスイッチングデバイス)の他の構造要素のコストにも悪影響を及ぼすので、最小の部品サイズを保ちながら、最大絶縁耐力に関してハウジングを最適化することが必要である。
【0011】
従来この問題は、真空インタラプタの内部および外部形状を、予想される電界強度が真空インタラプタの特定の形状に対して経験的に導出された限界を超えないように選択することによって、現在まで解決されていた。これらの限界は特に三重点領域および/または鋭い金属エッジに対しては正確に予測することができないので、真空インタラプタの設計は、生育プロセス中の電場に関する計算に依存するだけでなく、大量の経験的最適化を必要とする。これは絶縁体の内面上の金属層の構造にも関係しており、すでに述べたように現在では通常は開閉室内に遮蔽構造(遮蔽要素)を使用することによって回避するように意図している。それにもかかわらず金属蒸気の堆積と、真空インタラプタVIの絶縁耐力に及ぼすその影響は、現在のところ十分に正確な方法で定量的に予測することはできない。
【0012】
更に上述の設計プロセスは全て、真空インタラプタの外部構造の絶縁特性を真空インタラプタを取り囲む空気または他のガスの絶縁耐力を大幅に下回るまで減少させることにつながり、つまりコストおよび設置スペースに関して(長さおよび/または直径に関して)、最適ではないハウジングのサイズおよび/または絶縁体のサイズが必要であることを意味することに留意されたい。金属蒸気に関連して遮蔽要素を付加すると、絶縁体での動作中に発生する電場の歪みが生じ、これによりある地点で強力な場が発生し、それに応じてそこに電荷が蓄積することによる絶縁体の過負荷が発生するおそれがある。しかしながら他の原因もまた、既に説明したように、真空インタラプタのハウジングの絶縁体におけるそのような局所的な高電界に対してここで述べた問題は、例として引用された真空インタラプタに加えて、例えばガススイッチのような他のスイッチングデバイスにも適用される。
【0013】
一般的に既知の真空インタラプタは、多くの場合、複数の構成要素の数および構造の複雑さを最小化するために、インタラプタの(仮想)中心平面に関して対称であるように構成される。しかしながら、インタラプタの実際の環境は一般的に電界を大きく歪ませるので、インタラプタの領域が(高い平均電界強度の意味で)電気的に強い電界を大きく歪ませる。
【0014】
したがって開閉装置の設計を通じて、例えば非常に過渡的な開閉エッジを有する高い雷インパルス電圧(例えば1.2μmの立ち上がり時間および50μsの時定数を有する指数関数的に下降するリターンエッジ、kHz範囲までの高調波成分を有する50Hzまたは60Hzの基本周波数の定格電圧、および定格電圧振幅の2倍までの所謂定格電力-周波数耐電圧50/60Hzなど)の絶縁耐力に関して、種々の要件を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の課題は、開閉装置の最小の設置サイズおよび生産コストで絶縁耐力の増加を示す(好ましくは円筒状の)絶縁体および軸方向終端キャップを含むハウジングを備え、特に(上述のように)電気的に強く負荷された領域では特に改善された絶縁耐力を示す開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、明細書、図面および請求項の範囲に開示される本発明の構成手段によって解決される。
【0017】
したがって本発明の対象となるものは、移動装置を介して離間することができる少なくとも2つの接触可能な導体部材と、開閉室を画定し導体部材を少なくとも部分的に取り囲むハウジングとを有する電気開閉装置であって、ハウジングは絶縁体と電気接点領域とを有し、ハウジングの外側には少なくとも部分的に誘電率εr≧2の、場合によっては充填物を含む誘電絶縁性のマトリクスを有する屈折制御コーティングを備えた電気開閉装置である。
【0018】
本発明の一般的な知見によれば、絶縁性の屈折電場制御コーティングにより電気開閉装置のハウジングは、このコーティングが絶縁性であり、ハウジングの外面全体にまたは部分的に塗布され、従ってハウジングの周囲(例えば周囲雰囲気または空気)への境界面を形成することにより、改善された絶縁耐力を示すことである。コーティングは、通常の保護ワニスに関連して著しく高められた誘電率を有することが好ましく、この誘電率はマトリクス材料、すなわち結合剤の誘電率ではなく、むしろその中に含まれる充填剤の誘電率に起因することが好ましく、これは特に高い格子分極を有することが好ましい。高分子および好ましくは有機材料マトリクスの高い誘電率は、有機材料が格子分極を示さず、むしろ配向分極として知られるものであるため、懸念される劣化効果のために有利ではない。
【0019】
「格子分極」は、結晶格子の形態で固体として存在する(例えばセラミック)材料の特性を示し、この材料は、イオン特性、すなわち内部双極子を有し、格子内の個々のイオンのわずかな変位を通じて“のみ”電場の存在に反応する。この材料の電界における安定性は、(例えば50Hzの)比較的高い開閉周波数においても、また高い印加電界強度においても、不変で高いままである。
【0020】
例えば9までの誘電率を示すポリマーマトリクス材料、例えばポリビニルアルコールの場合には事情が異なり、これらは「配向分極」として知られるものを示す、このことは全分子または分子群が電場の切替えにより回転し、それ自体を再配向させることを意味する。これらの材料は開閉プロセスによってストレスを受け、不安定化する。例えば開閉プロセスにより望ましくない劣化効果をもたらし、これは、最悪の場合材料の破壊、したがって、コーティングの破壊につながる可能性がある。
【0021】
「誘電率」は、電界による材料の分極能力を示す。誘電率は、電界にさらされたときにだけ現れる電気絶縁性の極性または非極性化合物の材料特性である。
【0022】
マトリクス材料は、エラストマー、熱硬化性プラスチック、熱可塑性プラスチックおよび/またはガラスを含む群から選択することができる。相応してコーティングを生成するための様々なコーティングプロセスを選択することもできる。
【0023】
マトリクス材料は、ワニスとして特に湿式ワニスまたは粉末ワニスの形態で塗布されることが好ましい。スプレー、浸漬浴、鋳造などの他の塗布方法も考えられるが、これらは現在では技術研究の最先端のものではない。
【0024】
粉末ワニスおよび/または湿式ワニスとしての適用の主な利点は、生成される屈折制御コーティングが気孔を含まないことである。このような気孔からの自由度は鋳造によっても得られるが、この場合一般的に特にエッジでのコーティングの均質性が問題となる。
【0025】
湿潤ワニスとしての適用の場合、これは一般に溶媒であるが、これはワニスが乾燥した後はマトリクス材料中にもはや存在しないか、またはまだ少量しか存在しない。
【0026】
1つの有利な実施形態によれば、マトリクスは、ポリマーマトリクス材料、例えばポリマーバインダの形態で存在するポリマー樹脂からなる。
【0027】
「ポリマーマトリクス」は、ポリマーまたはポリマーバインダを示す。ポリマーマトリクスは、特にエポキシ樹脂、シリコーンエラストマ、シロキサン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステルイミドおよび同様のデュロプラスチック、熱可塑性合成材料、ならびに上記樹脂および/または合成材料の任意の組み合わせ、コポリマー、ブレンドおよび混合物などの樹脂または樹脂混合物を含む。ポリマーマトリクスは、誘電率εr≧2を有する被覆として充填または非充填形態で存在することができる。
【0028】
好ましくはマトリクスには、空気に対して高い誘電率を有する充填剤、特に有極性であるおよび/または電場内でわずかに分極可能であるセラミック充填剤のような屈折性の誘電絶縁性の充填剤が含まれる。
【0029】
好ましくは1つまたは複数の充填剤の材料は、安定性に関して高い要求を満たしかつ誘電率が低い温度依存性および電界強度依存性を有するクラス1のセラミック材料から選択される。これには例えば選択したチタン酸塩のような化合物を含み、これらは再現性よく低い温度係数と低い誘電損失を示す。それらの誘電率は、大部分電界強度に依存しないので、ここで議論された適用例に対して利点を有する。
【0030】
ここで特に1つ以上の充填材について考察したセラミック材料は、2≦εr≦200、好ましくは10≦εr≦100の範囲の比誘電率εrを有する。
【0031】
キャパシタセラミックの分野から市販され従って比較的安価であり十分な量が得られる材料で作られた充填剤が有利である。特に、キャパシタ容量のほぼ線形の温度特性を示す材料が注目される。例えば1種以上のセラミックの形態で存在し、特に金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物および/または二酸化チタン、アルミニウム、チタン酸塩の選択化合物含有セラミックは、それらの電界強度に依存しない誘電率のために同様に好適である。チタン酸塩および/または種々の金属酸化物の混合物に加えて、上述の材料のすべてとの任意の組合せの金属合金の酸化物もまた、大きく電界強度に依存しない誘電率を示す充填剤用に好適である。
【0032】
例えばこのような充填剤の材料としては、二酸化チタンのような微細に粉砕された常誘電材料と、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)および/またはストロンチウム(Sr)との混合物が好適である。ここでは、例えば以下の化合物:(ZnMg)TiO3、(ZrSn)TiO4および/またはBa2Ti9O20のようなMgNb2O6、ZnNb2O6、MgTa2O6、ZnTa2O6、および例えば(ZnMg)TiO3、(ZrSn)TiO4および/またはBa2Ti9O20、並びにこれらの化合物の任意の組合せおよび混合物が挙げられる。
【0033】
粉末ワニスの形態での塗布の場合には、硬化剤、促進剤および/または添加剤のような従来の添加剤が、できるだけ従来から有利と認識されている量で含まれ得る。熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチックも粉末ワニスの形態で塗布することができる。
【0034】
この場合、添加重合を行う場合には硬化剤が用いられる。樹脂を硬化させるすべての場合において、促進剤、開始剤および/または触媒が使用される。
【0035】
マトリクス材は、一般に、ハウジングが作られる前に、その最中に、好ましくはその後に塗布される。例えばマトリクス材で被覆することによって生成される屈折制御コーティングは、噴霧、かき取り、浸漬、塗装、および/または、特に、可能な限り均質であり、孔がない、薄くかつ均質な被覆の生成を可能にする他の方法によって塗布される。
【0036】
塗布方法は、この場合好ましくは自動化された方法で行われる。
【0037】
屈折制御コーティングは、好ましくは例えばポリマーの形態の有機物、または例えばガラスのような無機物であってもよい1つ以上のマトリクス材からなり、そのなかに充填剤が入れられた充填コーティングである。
【0038】
屈折制御コーティング中の充填剤の量は、大幅に変化させることができる。例えば1体積%の充填剤濃度(すなわちマトリクス材料によって形成された誘電体バリアによってのみもたらされる、屈折の低いほとんど充填されていないマトリクス材料から、被覆中の70体積%の充填レベルまで)があり得る。この場合の充填剤の好ましい量の範囲は、マトリクス材における20~60体積%、特に30体積%~40体積%の充填レベルである。
【0039】
例-
図3参照
無水硬化エポキシのマトリクスに、酸化鉄をベースとする充填剤を導入した。充填されていないマトリクス材料(エポキシ樹脂)は、30℃で測定された誘電率は3.8を示す。
【0040】
30重量%の酸化鉄ベースの充填剤を充填すると、30℃で5.6の誘電率が得られ、20重量%の酸化鉄ベースの充填剤を充填すると、4.7の誘電率が得られる。この場合も30℃で測定される。
【0041】
測定と観察から以下の仮定が示唆された。室温またはそれより僅かに高い温度(30℃)では、セラミック酸化鉄充填粒子を添加することにより誘電率がそれに応じて増加する。これは主に、充填剤によってもたらされる格子分極と、重合バインダ剤のわずかな配向および界面分極とに基づいている。
【0042】
ポリマーのガラス転移温度に相当する120℃の温度から出発して、水素ブリッジ結合の結合エネルギーが熱的に克服され、その結果これらの極性基は次いでこの温度から出発して、電場中を「自由に」移動することができる。それに応じて配向分極は劇的に増加し、これは誘電率の顕著な増加に反映される。
【0043】
充填剤を追加することで、この効果は充填剤に応じパーセンテージ単位で重ねられる。
【0044】
その目的は、例えば、固体形態特に結晶形態で存在する充填剤を添加することによって、格子分極によって誘電率を増加させることである。その目的は高分子バインダの配向分極によって高誘電率を達成することではない。室温またはそれより低い温度でTgを有する極性合成材料は、したがって30℃で非常に高い誘電率を有することになる。ただしこれは避けるべきである。その理由は、1秒間に50回の分極変化での極性基の化学シグマ結合(これは50Hzに対応ししたがって高い電界強度)が、動作中に劣化し、それに伴い誘電率および他の材料特性が変化することにある。
【0045】
これは、ここで論じられている技術でおよそ40年であり、この時間間隔にわたって層の一定の電界制御特性が多かれ少なかれ保証されるべきである耐用年数に負荷を与える。
【0046】
屈折制御コーティングの充填剤粒子は特に好ましい形態を有しておらず、任意の形態および大きさでマトリクス内に埋め込まれてもよい。例えば充填剤粒子は、相応の適切な粉砕後に不規則な形態で存在する。
【0047】
粒子ができるだけ球形をしている充填ワニスは、他の形態よりも加工処理に適している。なぜならこの場合比表面積は最小であり、したがって同じ充填レベルでも最小の可能な処理粘度が達成されるからである。
【0048】
充填剤のサイズは異なることができる。充填材には異なる割合の充填材が存在し得る。ハウジングには、異なる領域に異なるように充填されたコーティングを設けることができる。
【0049】
より厚いコーティングおよび/または特定の材料の組合せでは、他のものより屈折率が高くなることがある。この場合誘電率のレベルおよび塗布された屈折制御コーティングの厚さは、どの程度電場が均質化されるかを規定する。
【0050】
本発明の枠内において、10μm~5mm、好ましくは100μm~3mmの範囲、特に好ましくは500μm~2mmの範囲の屈折制御コーティングの厚さが好適であることが証明されている。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、コーティングの誘電率は、(充填されているかまたは充填されていない形態であれ)コーティングされていない表面よりも増加する誘電率のために、開閉室のハウジング表面の電界が押しのけられ、局所的な電界上昇が減少されるようにするために利用される。これについては、
図2において再度説明する。
【0052】
屈折制御コーティングが無ければ、通常、窒素、空気または六フッ化硫黄のような絶縁ガスがハウジングの表面に存在することになろう。これらのガスはすべて低誘電率である。例えば、空気は、εr=1.00059である。一方、樹脂などの合成材料でできた塗膜の誘電率は、εr=2(例えばシリコーン樹脂)εr=9(例えばポリビニルアルコール)少なくとも2倍である。これは硬化樹脂に関するものである。低誘電率の合成材料は、開閉現象による劣化作用が生じないので有利である。
【0053】
ここで提案される屈折制御コーティングによって発生する界磁線は、屈折電界制御により破断(破断=屈折)される。なぜなら、より誘電率の高い材料からより低い誘電率の材料へ電場を追いやられることにより、より誘電率の高い材料への電場の侵入は、電界がエッジまたは三重点から押し出されるので困難にされるからである。
【0054】
三重点とは、例えば、金属電極におけるハウジング領域、固体絶縁体、およびガス絶縁体(ここでは周囲のガス)が一緒になっているハウジングの領域に与えられた名前である。
【0055】
1つの有利な実施形態によれば、屈折制御コーティングは、少なくとも部分的にハウジングの接触する側面のうちの1つに塗布される。これは、屈折制御コーティングが同時に誘電体バリアでもあり、金属電極に塗布されて電子が金属ハウジングから駆逐されるのが困難になるからである。あるいは、換言すれば、電極間のアーク放電は、誘電体バリアによってより高い電圧にシフトされる。屈折電場シフトによりさらに高い電圧へのシフトが可能となる。
【0056】
屈折制御コーティングは、好適には円筒状の絶縁体を開閉室の形成のために軸方向に閉鎖するハウジングの両金属キャップ上に絶縁体への塗布に加えて、完全にまたは部分的に設けられると有利である。
【0057】
したがって屈折制御コーティングは、ハウジングを完全にまたは部分的にまたは選択された領域で覆う。屈折制御コーティングは、例えば、ハウジング表面に直接、または例えば欧州特許出願公開第EP3146551B1号明細書に示されているように例えば抵抗層のような下層にも塗布される。
【0058】
屈折制御コーティングが塗布される下側層は、更なる屈折制御層に欧州特許出願公開第EP3146551B1号明細書による抵抗層のような別の層、更にはその両方でもない抵抗容量層のいずれでも良い。
【0059】
この場合下側層は、好ましくは上側層よりも薄い層であり、ハウジング外面上で層厚が内側から外側に向かって厚くなるようにすると有利である。
【0060】
抵抗性下層上のコーティングの場合には特に、それぞれのコーティングのマトリクス材料が互換性があるように設けられる。例えばマトリクス材は、少なくとも互いに不活性であることが好ましいが、有利には任意に相互におよび/または入れあって混合可能にされる。異なる層のマトリクス材料(すなわち、例えば本発明の一実施例による屈折制御コーティングのマトリクス材料および欧州特許出願公開第EP3146551B1号明細書による抵抗性コーティングのマトリクス材料)に関しては、同一または類似の化学組成を有することが特に好ましい。
【0061】
これらのコーティングは層スタックの形態で組み合わせて設けることもできるが、欧州特許出願公開第EP3146551B1号明細書による屈折制御コーティングが好ましくは開閉装置のハウジングの絶縁領域、例えばセラミックシリンダー上に設けられるのに対し、屈折制御コーティングは任意に上下に、特にウジングのキャップ上に、すなわち接触領域に設けられる。しかしながら両方のコーティングは、任意に上下に、特にハウジングの全ての領域を越えて外部に延在してもよい。抵抗性被覆は設定可能な抵抗を有するいわゆる「オーム被覆」と呼ばれるものであり、残留コンダクタンスが常に存在する。それとは対照的に屈折電界制御コーティングは絶縁誘電体コーティングである。
【0062】
ハウジングの全体被覆のすべての層は、ハウジングのそれぞれの部分を完全にまたは部分的に、ただし外部で覆う。
【0063】
ここで特に好適であると呼ぶべきものは、たとえば屈折制御コーティングがハウジングの全面に塗布されずに、むしろハウジングを部分的にのみ覆うものである。この場合、屈折制御コーティングがキャップ上に、特に金属キャップおよび/または絶縁体本体を有するキャップにより形成される縁部に塗布されることが特に好ましい。
【0064】
ここでも特に有利なのは、屈折制御コーティングがなお(周囲を形成するように)エッジを越えて例えば絶縁体の表面にまで延在するようにすることである。
【0065】
この場合、絶縁体自体が未だ被覆されているか否か、例えば抵抗被覆が設けられているかどうかは問題ではない。
【0066】
ハウジング上のコーティング、特に一方では欧州特許出願公開第EP3146551B1号明細書に従ってここで議論された抵抗性コーティング、および他方では本発明の実施形態による屈折制御コーティングの全ての可能な層の組合せが考えられ、例えば
・下側の抵抗層はハウジング全体を完全に覆い、上側の屈折制御層は下側を部分的にのみ覆う、
・下側層がハウジング外面を部分的にのみ覆い、特に、下側層が抵抗容量層の形で塗布され、上側層の屈折制御層が下側層とハウジング外面全体を完全にまたは部分的に覆う、
・下側層は部分的に上側層によって覆われない、
・下側層の抵抗容量領域が上側の屈折制御層で覆われている、
・1つの種類の2つ以上の層が複数のハウジング領域を覆い、その際重複するかまたは重複しない、
・等々。
【0067】
欧州特許出願公開第EP3146551B1号明細書によれば、抵抗層は、ハウジング外面の全域に渡って塗布されているのに対し、本発明によればこれとは異なりハウジングを部分的にのみ外的に覆うこともでき、特に非ガルバニック的に(つまり接点を介してではなく)導電的に接続される領域を有する抵抗容量層の形態で塗布することもできる。
【0068】
下側層が上側層より薄い方が基本的に有利である。
【0069】
屈折制御層が抵抗層上にあることは基本的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【0071】
【
図1】真空管の形態の本発明の一実施例による開閉装置を示す。
【
図2】本発明の一実施例による、開閉装置のハウジング表面上の屈折制御コーティングの効果を示す概略図である。
【
図3】本発明により酸化鉄を充填したマトリクス材料と参考用の未充填のマトリクス材料の誘電率の比較図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、原理的概略図の形で、本発明による開閉装置1、ここでは真空開閉管の一実施形態を示す。ここで2つの管状セラミック部材、すなわち絶縁体2で形成されたハウジング3は、電気接点を有する領域を形成する金属キャップ4によって密閉され、例えばボルトとして設計された2つの導体部材6が接点7と共に案内される開閉室5を画定する。
【0073】
図1の下側の導体部材6は、矢印8および略示された移動装置9によって移動可能に形成され、接点7を接触させるかまたはそれらを離間させるために、開閉装置1の対称軸をも形成する導体部材6の延在方向10に移動させることができ、この図では開閉装置1の開路状態、すなわち離間状態が示されている。下側の導体部材6の可動性により、この導体部材は、金属ベローズ11を介して金属キャップ4に結合されている。すなわち金属キャップ4は両側で導体部材6に導電接続される。
【0074】
開閉室5内は真空になっており、この例では圧力が10-4hPa未満である。
【0075】
しかし本発明は、ガスが開閉器内部に存在するガス開閉器にも関連する。ここで云うガス開閉器とは、ガスが一方では開閉媒体として機能し、他方では(遮断に成功した後に)絶縁媒体として機能するものを意味する。この場合現在はSF6が通常使用されている。SF6は有害な温室効果ガスとして代替されることが望まれているので、将来はCO2、フルオロニトリルまたは他の代替ガスを含む開閉器も考えられている。
【0076】
例えば開閉装置1を開くときなどに生じる金属蒸気が絶縁体2、ここではセラミックスの内表面に到達しないようにするために、開閉室5内に金属遮蔽部材12(蒸気シールド)を接触領域に設けている。しかしこの遮蔽部材12は電界を歪ませることもあるので、遮蔽部材の背後領域では、例えば電荷が集合して開閉装置1の機能を阻害させるようなさらなる電界の歪みをもたらすことになる「遮蔽されていない」領域よりも、作動中の電界が小さくなるおそれがある。
【0077】
これに対処するために、ここで概説する実施例においては、ハウジング3の外面、すなわち絶縁体3の上および電気接点の領域、すなわちキャップ4の両方に、本発明の一実施例による屈折制御コーティング13が施される。
【0078】
この実施例では全面に施される屈折制御コーティング13は、高誘電率充填剤で充填されるポリマーマトリクスを含み、この充填剤は誘電率εrが2から200、好ましくは10から100の範囲のセラミックス材料から作られる。充填剤は30体積%でマトリクスに含有される。これは二酸化チタンと酸化アルミニウム粒子の混合物である。
【0079】
屈折制御コーティング13は、材料の価格の点で比較的安価であり、比較的容易に(自動化によっても)スプレーすることができる。その存在は、走査型電子顕微鏡および元素分析を用いて比較的容易に確かめることができる。
【0080】
図2は、
図1に示すハウジング3のようなハウジング外面上の屈折制御コーティングの作用効果を概略的に示す。
【0081】
図2は、右半分に屈折制御コーティング13を備え、左側に比較のためこのようなコーティングを備えていない従来技術によるもののそれぞれ三重点における界磁および等電位線15、14の経過を概略的に示す。図から分かるように、左側の界磁線15は、金属キャップ4から周囲のガス、例えば空気中へ屈折なしに延びている。これにより、フラッシュアーク放電16が生じることがある。コーティング13が金属キャップ4と周囲空気との間にある右側では、界磁線15は高誘電率のコーティングから低誘電率の周囲空気中への遷移において屈折する(領域17参照)等電位線14および界磁線15が互いに離れているので、アークは発生しない。
【0082】
本願において初めて提案された屈折制御コーティング13は、開閉装置1のハウジング3の長さを減少させることを可能とし、ひいては電気開閉装置1の全長を短くすることを可能とする。これにより材料コストの節約になる。例えば、特定の電圧レベル用のハウジング3を製造することができよう。まさに、このようなハウジング3に本発明の一実施形態による屈折制御コーティング13を被覆することができ、したがってより高い電圧レベルに使用することができる。これによりプロセス技術的に2つの電圧レベルに対して使用可能となり、同じ2つのハウジング3を異なる電圧レベルの2つの開閉装置1に対して使用できることになる。
【0083】
2つのハウジングは、追加の屈折制御コーティング13の点で互いに異なるだけである。
【0084】
図3は、例として挙げた充填された合成材料の誘電率と、純マトリクス材料の未充填の参考試料、すなわち重量比で0%の酸化鉄充填率を有するものの誘電率を測定するためのグラフを示している。測定は、EPRO Gallspach GmbH社(www.epro.at)製の装置「Type:ITTS2000;Mains:90-240V/50-60Hz」を用いて実施した。
【0085】
実線は参考試料の誘電率を示し、破線グラフは重量比30%の酸化鉄を有する試料、一点鎖線で示されるグラフは重量比20%の酸化鉄を充填した試料の誘電率を示す。
【0086】
屈折制御コーティングを初めて提案されたこの出願の特別な利点は、このコーティングに電流がほとんど流れないことから、経年変化に対する耐性が高く、寿命が長く、信頼性が高いことである。
【0087】
本発明により初めて、高誘電率の被覆、または少なくとも周囲空気の誘電率εr=1よりも高い誘電率εr≧2、特にεr≧3を有する合成材料、特に充填された合成材料を真空開閉管のハウジング表面に完全または部分的に塗布することが提案され、これにより特に臨界領域、特に三重点において、磁力線が屈折し、したがって、アークが互いにできるだけ分散し、ひいては閃光が防止される。マトリクス材および充填剤を含むコーティングは、好ましくはそれぞれ室温において4以上の誘電率、特に3から150、好ましくは4から100、特に好ましくは5から50の誘電率を有する。
【0088】
本発明は真空管に限定されるものではなく、他の開閉器、例えばガス絶縁されたもの(例えば、SF6および/またはスイッチングガスとしてのクリーンエアを有するもの)にも適用される。クリーンエアのガス開閉器の場合、このクリーンエアは一般的に絶縁媒体としてのみ使用され、アークが発生して開閉動作を行う遮断器ユニットにはない。
【符号の説明】
【0089】
1 開閉装置
2 絶縁体
3 ハウジング
4 キャップ
5 開閉室
6 導体部材
7 接点
8 矢印
9 移動装置
10 延在方向
11 金属ベローズ
12 遮蔽部材
13 屈折制御コーティング
14 等電位線
15 界磁線
16 閃光
17 界磁線が屈折する領域
【国際調査報告】