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特表2023-554044熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング
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  • 特表-熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング 図1
  • 特表-熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング 図2
  • 特表-熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング 図3
  • 特表-熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング 図4
  • 特表-熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】熱的および研磨的に負荷をかけられるタービンブレードのためのコーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/06 20060101AFI20231219BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20231219BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C23C14/06
F02C7/00 D
F01D5/28
F01D25/00 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536142
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021000134
(87)【国際公開番号】W WO2022128144
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020007662.9
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コールハウザー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラム,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】フーノルト,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】バルター,エドガー
【テーマコード(参考)】
3G202
4K029
【Fターム(参考)】
3G202BB04
4K029AA02
4K029BA03
4K029BA07
4K029BA43
4K029BA53
4K029BA55
4K029BA58
4K029BB02
4K029BD03
4K029CA04
4K029DB04
(57)【要約】
本発明は、ガスタービンブレードを取り囲む基材をコーティングする方法であって、第1のステップにおいて、MCrAlY母材がPVD法によって適用され;さらなるステップでは、酸化物層がPVD法によって適用される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンブレードを取り囲む基材をコーティングする方法であって、
-第1のステップにおいて、PVD法によるMCrAlY母材の適用と、
-さらなるステップにおいて、PVD法による層の適用とを含み、前記層は、少なくとも1つの酸化物および/またはホウ化物および/または炭化物および/または窒化物を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のステップおよび/または前記さらなるステップの前記PVD法はカソードスパーク蒸発法であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記さらなるステップの前記PVD法のための材料源はAlCrターゲットであり、前記コーティング方法は酸素が使用される過程における反応性方法であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングは、2つの層を含む層系として実行されるか、または前記コーティングは、多層交互コーティング系を含む層系として実行されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ガスタービンブレード先端用の層系であって、前記コーティングは、MCrAlY母材を有する少なくとも第1の層を含み、前記コーティングは、少なくとも第2の層を含み、前記第2の層は、少なくとも1つの酸化物および/またはホウ化物および/または炭化物および/または窒化物を含む含む、層系。
【請求項6】
前記コーティングは、前記第1の層と前記第2の層とが交互になっている多層コーティング系として設計されていることを特徴とする、請求項5に記載の層系。
【請求項7】
請求項5または6のいずれか1項に記載のコーティング系を有するガスタービンブレード。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ガスタービンは、ガスを一方向に移動させるタスクを有する。ガスタービンは、軸を中心に回転する少なくとも1つのロータを備え、少なくとも1つのロータは、キャリアを有し、キャリアの外周には、径方向外向きに突出する複数のタービンブレードが配置される。可能な限り多くのガスが所望の方向と反対方向に逆流することを防止し、したがってガスタービンの可能な限り高い効率を達成するために、タービンライナが、タービンブレードとタービンライナとの間に最小の間隙間隔を有する状態で、間隙を確保するよう設けられる。
【0002】
これは、タービンライナ側のいわゆるならし運転層によって達成される。これらのならし運転層は、圧力損失を防止するために、タービンブレードと周囲のタービンライナとの間の間隙間隔を可能な限り小さく保つように働く。ならし運転層は、概して多孔質であり、内部で弱くしか接合されない。この結果は、最初は依然として頻繁にならし運転層に接触するタービンブレード先端が、最小の間隙間隔で本質的に接触のない同心性が達成されるまで摩耗する、ということである。
【0003】
しかしながら、タービンブレードは、例えば、タービンの熱膨張またはタービンの中心からの振動誘発偏向中に、多孔質で弱く内部接合されたならし運転層を望ましくない態様で侵食し、したがって、間隙間隔を増加させ、効率を低下させる可能性がある。
【0004】
ブレード先端コーティングは、ブレード先端を摩耗から保護するために使用される。これらのブレード先端コーティングは、典型的には、母材(例えば、MCrAlYなど)に埋め込まれた研磨粒子(立方晶窒化ホウ素など)からなる。「M」は金属を表し、通常はコバルト、ニッケルまたはコバルト-ニッケル合金である。Crはクロム、Alはアルミニウム、Yはイットリウムを表す。
【0005】
先行技術によれば、そのようなコーティングは、電解または電気泳動堆積(US5935407A)などの複雑で費用集約的なプロセスによって適用される。
【0006】
先行技術に従ってこのようにして製造されたコーティングの欠点は、コーティングの接着不良である。対応するコーティングプロセスでは、エネルギー入力は比較的低く、通常は許容可能な層接着を保証する、基材表面に対する界面での拡散プロセスはほとんどない。その結果、回転中に生じる力により、コーティング全体または研磨粒子の破損および層間剥離がすでに生じる可能性がある。
【0007】
加えて、先行技術で使用される研磨粒子および母材の両方は、高温での酸化に耐性がなく、酸化により機能しなくなる。典型的に使用される研磨粒子は、層厚みの大きさ程度の粒径を有し、したがって、表面からコーティングと基材との間の界面まで到達し得る。粒子が酸化されると、ブレード材料または対応する界面が直接攻撃され、これは、粒子が酸化されると、ブレード材料またはブレード材料とコーティングとの間の界面の直接攻撃に至り得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、先行技術から公知のコーティングをより接着性にし、酸化に対してより耐性にする必要がある。本発明の目的は、この必要性に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、PVDプロセスによる気相からの堆積がコーティングのために使用されるという点で、本発明に従って請求項1に従って達成される。反応性スパーク蒸発の使用が特に好ましい。
【0010】
ブレード先端コーティングの接着性は、反応性スパーク蒸発の使用によって著しく改善することができ、なぜならば、ガスイオンからのより高いエネルギー入力がコーティング接着性の改善に寄与するからである。また、製造パラメータは、より自由に選択することができ、これは、より高い温度での堆積が可能であることを意味する。
【0011】
異なるターゲット材料および反応性ガスを使用することによって、接合層および/または母材ならびに酸化物、ホウ化物、炭化物もしくは窒化物などの研磨相を単一のプロセスで堆積させることができる。これらの相は、多層構造中の層として、または母材中のマクロ粒子として、導入することができる。電解堆積または電気泳動堆積に基づくブレード先端コーティングのための従来の製造プロセスとは対照的に、非常に小さい粒子または薄い層を、母材(例えば、MCrAlY材料を含み、好ましくはMCrAlY材料からなる)に完全に埋め込むことができ、それによって、より深くに位置する研磨相は、たとえそれらが酸化に対して耐性ではない(これは、一部にのみ当てはまる)場合でも、その上にある母材(例えば、MCrALY)から保護される。したがって、従来のブレード先端コーティングよりも長い耐用年数の後の接触または摩耗状況の場合でも、ライナー上のならし運転層に対するブレード先端の保護効果を達成することが可能である。
【0012】
コーティングは、いくつかの層からなることができ、それによって、最適な接着を可能にするために、接着層を基材材料に適合させることができる。
【0013】
ブレード先端コーティングの研磨相は、タービンライナ上のならし運転層に適合させることができる。これらの研磨相は、層として、または粒子として、コーティングに組み込むことができる。
【0014】
コーティングを熱および研磨応力プロファイルに適合させ、したがって耐用年数を増加させるために、層厚を変動させることができる。
【0015】
例えば、初期ならし運転プロセスにおけるブレード先端コーティング全体の耐摩耗性を高めるために、熱的により応力の少ない層をブレード先端コーティング上に堆積させることができる。以下、本発明を実施例を用いて図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】MCrAlY層とその上の酸化物層とからなる本発明による層系を概略的に示す。
図2】本発明による多層コーティング系を概略的に示す。
図3】タービンの概略図を示す。
図4】1200℃の温度に10時間曝露した後の本発明による多層コーティング系の断面のSEMを示す。
図5】酸化アルミニウム-酸化クロムの研磨相のX線ディフラクトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3に示されるタービンは、回転ディスク3上に、ブレード基部7およびブレード先端9を有する少なくとも1つのタービンブレード5を有する。図3はまた、ブレード先端9に対向し、このブレード先端9から間隙Gによって分離されている、タービンライナ1上のならし運転層11を示す。
【0018】
超合金(例えば単結晶であってもよい)で作製されたブレード先端上に、組成物MCrAlY-アルミニウムクロム酸化物のコーティング、またはMCrAlY-アルミニウムクロム酸化物の交互層の多層コーティングが堆積される。
【0019】
MCrAlYは、プラズマ強化カソードスパーク蒸発によってMCrAlY材料源(=ターゲット)から堆積される。MCrAlY層は、要求される耐酸化性に応じて0.1~100マイクロメートルの厚みを有し得る。
【0020】
ここで、酸化物層は、MCrAlY接着および抗酸化層上に堆積される。アルミニウムクロム酸化物層は、酸素雰囲気中での反応性カソードスパーク蒸発によって金属AlCrターゲットから堆積される。酸化物層は、0.5~50ミクロンの厚みを有し得る。
【0021】
有害な拡散プロセスを抑制し、したがって寿命を延ばすために、酸化物層はまた、MCrAlY層が0.1~20マイクロメートルの規則的または他の間隔でアルミニウム-クロム酸化物層と交互になる多層コーティングとして堆積され得る。
【0022】
この概念では、酸化物コーティングは拡散バリアを提供し、それは、同時に酸化に敏感でない研磨相としても機能する。基材に直接接着するMCrAlY層はまた、ブレード先端への優れた接着を提供し、ブレード先端コーティング全体におけるすべてのMCrAlY層の合計は、内向きに配向された拡散プロセスを防止し、基材を酸化から効率的に保護する。
【0023】
概して言えば、本発明による層系全体の硬度は、ならし運転層の最適な除去を可能にするために、研磨相対MCrAlYの比によって調整することができると言うことができる。例えば、7~25GPaの範囲の酸化物相を有する層を調整することができる。しかしながら、窒化物、ホウ化物または炭化物などのより硬い研磨相が使用される場合、硬度は45GPaまで増加され得る。例えば、図4の層は、約13GPaの硬度を有する。
【0024】
酸化アルミニウム-酸化クロムが研磨相として使用される場合、それは、図5に見られるように、カソードスパーク蒸発において、強い好ましい配向を有するコランダム構造の混晶を形成する。コランダム構造では、混合酸化物は、その熱的に安定な高温変態状態にあり、したがって、相転移することなく高い適用温度に達することができる。したがって、層の破損につながり得る、相転移に関連付けられる体積変化を防止することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】