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特表2023-554054研ぎ角度が事前設定された載置部を有する切削器具
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  • 特表-研ぎ角度が事前設定された載置部を有する切削器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】研ぎ角度が事前設定された載置部を有する切削器具
(51)【国際特許分類】
   B26B 3/00 20060101AFI20231219BHJP
   B24B 3/54 20060101ALI20231219BHJP
   B24B 3/36 20060101ALI20231219BHJP
   B24D 15/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B26B3/00 C
B24B3/54
B24B3/36 M
B24D15/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536370
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021084956
(87)【国際公開番号】W WO2022128728
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020133853.8
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522359121
【氏名又は名称】ホール 1993 ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ホール オットマー
(72)【発明者】
【氏名】ホール ティモ
【テーマコード(参考)】
3C061
3C063
3C158
【Fターム(参考)】
3C061AA02
3C061BA03
3C061BB20
3C061DD11
3C061EE13
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA02
3C063BH01
3C063DD03
3C063DD06
3C063DD07
3C063EE04
3C063EE32
3C063FF23
3C063FF30
3C158AA04
3C158AA11
3C158AA14
3C158AA16
3C158AA18
3C158AA19
3C158AB04
3C158CA01
3C158CB05
3C158CB10
3C158DB01
3C158DB08
3C158DB09
(57)【要約】
本発明は、ブレード刃部(2a)及び切れ刃(2b)を有する少なくとも1つのブレード(2)を備えた切削器具(1)、とりわけナイフに関する。研ぎ治具を用いなくても切削器具(1)を高精度で研ぎ/又は研磨できるようにするため、本発明の切削器具(1)は少なくとも1つの載置部(4)を備えており、載置部(4)は、切れ刃(2b)を研ぎ及び/又は研磨するためにブレード刃部(2a)の向きが平坦な下面部(U)に対して65~80°の範囲の作業角(α)となるように下面部(U)に切削器具(1)を安定して載置できる載置平面(AE)を画定する。切削器具(1)の研ぎ及び/又は研磨用のセットと、対応する方法も開示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード刃部(2a)及び切れ刃(2b)を有する少なくとも1つのブレード(2)を備えた切削器具(1)、とりわけナイフであって、
前記切削器具(1)は少なくとも1つの載置部(4)を備えており、
前記載置部(4)は、前記切れ刃(2b)を研ぎ及び/又は研磨するために前記ブレード刃部(2a)の向きが平坦な下面部(U)に対して65~80°の範囲の作業角(α)となるように前記下面部(U)に前記切削器具(1)を安定して載置できる載置平面(AE)を画定する
ことを特徴とする切削器具(1)。
【請求項2】
前記作業角(α)は70~75°の範囲である、
請求項1記載の切削器具(1)。
【請求項3】
把持部(3)を備えており、
前記把持部(3)は好適には少なくとも1つの前記載置部(4)を有し、
前記載置部(4)は好適には、前記把持部(3)における前記切れ刃(2b)とは反対側に配されている、
請求項1又は2記載の切削器具(1)。
【請求項4】
前記載置部(4)は、前記載置平面(AE)内に位置する少なくとも3つの載置点(4a,4b,4c)であって一直線上にない少なくとも3つの載置点(4a,4b,4c)を有し、
好適には、前記切削器具(1)の全長(L)のうち少なくとも25%、30%又は40%が、前記載置点のうち2つ(4a,4b,4c)の間に位置し、
前記全長(L)は好適には、ブレード先端(2d)と前記把持部(3)における前記ブレード先端(2d)とは反対側の端部との間で測定されるものであり、
好適には、前記載置点のうち少なくとも1つ(4b)と前記ブレード刃部(2a)の延在平面(E)との間の距離(Y)が前記切削器具(1)の全長(L)の1%、2%又は3%より大きい、
請求項1から3までのいずれか1項記載の切削器具(1)。
【請求項5】
前記ブレード刃部(2a)のそれぞれ異なる面に配された2つの前記載置部(4)を備えており、
前記載置部(4)はそれぞれ、前記切れ刃(2b)を研ぐために、平坦な前記下面部(U)に対する前記ブレード刃部(2a)の向きが同じ前記作業角(α)となるように前記下面部(U)に前記切削器具(1)を安定して載置できる載置平面(AE)を画定する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の切削器具(1)。
【請求項6】
前記載置部(4)は前記切削器具(1)において位置調整可能に配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の切削器具(1)。
【請求項7】
前記載置部(4)は前記作業角(α)を変えるために少なくとも2つの異なる位置間で位置調整可能であり、
好適には、前記載置部(4)が第1の位置にある際の前記作業角(α)は70°であり、前記載置部(4)が第2の位置にある際の前記作業角(α)は75°である、
請求項6記載の切削器具(1)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の切削器具(1)と、研ぎ及び/又は研磨器具(5)と、を備えたセットであって、
前記研ぎ及び/又は研磨器具(5)は、平坦な前記下面部(U)上で当該研ぎ及び/又は研磨器具(5)が転がる際に前記下面部(U)に対して垂直な向きの平面(S)内で回転する少なくとも1つの研ぎ及び/又は研磨面(5b)を有する
ことを特徴とするセット。
【請求項9】
前記研ぎ及び/又は研磨器具(5)は円柱状の把持体(5c)を備えており、
前記把持体(5c)の軸方向の各端部に前記研ぎ及び/又は研磨面(5b)が配されている、
請求項8記載のセット。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項記載の切削器具(1)を研ぎ及び/又は研磨するための方法であって、
a.前記ブレード刃部(2a)を平坦な前記下面部(U)に対して65~80°の範囲の作業角(α)に配するように、前記切削器具(1)を前記載置平面(AE)で、前記下面部(U)に配置するステップと、
b.研ぎ及び/又は研磨器具(5)における前記下面部(U)に対して垂直な向きの研ぎ及び/又は研磨面(5b)に前記切れ刃(2b)を当てるステップと、
c.(前記切れ刃(2b)の長手方向に)前記研ぎ及び/又は研磨面(5b)と前記切れ刃(2b)とを相対移動させることにより前記切れ刃(2b)を研ぎ及び/又は研磨するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード刃部及び切れ刃を有する少なくとも1つのブレードを備えた切削器具、とりわけ調理用包丁等のナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
切れ刃を研ぎ又は研磨するため、回転する研ぎないしは研磨面を備えた研ぎないしは研磨器具を使用することができる。かかる研ぎないしは研磨器具は「ロールシュライファー(回転研ぎ器)」とも称され、例えば独国実用新案第202020001180号明細書又は欧州特許出願公開第3278928号明細書から公知となっている。
【0003】
研ぎないしは研磨器具に対してブレードを位置決めするため、いわゆる研ぎ治具を使用することができる。この研ぎ治具により、ブレードが研ぎ面に対して所定の研ぎ角度で位置決めされ、研ぎ治具によって定まった研ぎ角度で切れ刃が研がれる。
【0004】
満足いく処理結果を得るためには、切削器具、研ぎ治具及び研ぎ/研磨器具の3つの要素が存在し、これらが協働しなければならない。このことにより、ユーザにとって、切削器具の研ぎないしは研磨処理に係る物流コストやコーディネートコストが増加してしまう。
【発明の概要】
【0005】
上記の問題を解消するため、本発明は請求項1に記載の切削器具と、請求項8に記載のセットと、請求項10に記載の方法と、を提供する。
【0006】
本発明の切削器具はとりわけナイフないしは調理用包丁であり、ブレード刃部及び切れ刃を有する少なくとも1つのブレードを備えており、前記切削器具は少なくとも1つの載置部を備えており、前記載置部は、前記切れ刃を研ぎ及び/又は研磨するために前記ブレード刃部(ないしはブレード刃部の延在平面)の向きが平坦な下面部に対して65~80°の範囲の作業角となるように前記下面部に前記切削器具を安定して載置できる載置平面を画定する。作業角とは、ブレード刃部(ないしはブレード刃部の延在平面)と載置平面との間の角度をいう。載置平面が下面部に載置されたときには、作業角はブレード刃部(ないしはブレード刃部の延在平面)と下面部との間の角度になる。研ぎ角度とは、ブレード刃部の延在平面と研ぎ面との間の角度をいう。冒頭に述べたロールシュライファーの場合、研ぎ面は、下面部に対して垂直な向きの平面内で回転する。よって、研ぎ角度βは作業角αから以下の数式Iを用いて算出される:
数式I:β=90°-α
【0007】
「安定」とは本発明では、研ぎ及び/又は研磨処理中でも上記の作業角を維持した状態で切削器具が載置平面で下面部に載置されていることをいう。その際には好適には、ユーザは把持部で切削器具を持ち、載置平面で下面部に押し付ける。切削器具は自立して、すなわち外力の作用無しで、載置部で下面部に安定して載置可能とすることが望ましいが、このことは必須ではない。好適には、切削器具が載置部で下面部に載置されたとき、切削器具の重心は下面部に投影された場合に載置部の領域内(載置点間)に位置する。しかし、研ぎないしは研磨処理の際に研ぎ/研磨器具によってブレードに及ぼされる力に対する対抗力を加えるためには、研ぎないしは研磨処理中にユーザが切削器具を固定して載置部で下面部に押し付けると有利であることが判明している。研ぎないしは研磨処理中、ブレードの切れ刃は好適には下面部とは反対側に配されると共に、ブレード背部は下面部側に配される(図4参照)。しかし基本的には、研ぎないしは研磨処理中にブレードの切れ刃が下面部を向くと共にブレード背部が下面部とは反対側に位置するように載置部を切削器具に配置することも可能である。切削器具の製造時に、又は研ぎないしは研磨処理の開始前に載置部の位置調整を行う場合にはこれによって、作業角を65~80°の範囲内に設定することができる。研ぎないしは研磨処理中、作業角は好適には一定であり、これにより切れ刃が一様かつ鋭利に研がれるようにする。
【0008】
従属請求項に本発明の有利な改良形態が記載されている。
【0009】
作業角を70~75°の範囲内とすることが有利となり得る。実用上は、15°ないしは20°の研ぎ角度が特に有利であることが判明している。15°の研ぎ角度は、例えば肉を切るために用いられるフィレナイフ(肉切り包丁)等の非常に鋭利なブレードを研ぐために用いられる。研ぎ角度を20°とすると切れ刃の鋭利さが低くなるが、摩耗が小さくなる。70~75°の作業角に相当する15~20°の範囲内での研ぎ角度の選択に応じて、切れ刃の鋭利度や摩耗特性を調整することができる。
【0010】
切削器具が把持体を備え、前記把持体が好適には少なくとも1つの前記載置部を有し、前記載置部は好適には、前記把持部における前記切れ刃とは反対側(例えば把持部背部等)に配される、ことが有用となり得る。とりわけ、研ぎないしは研磨処理中に、処理位置において載置平面で下面部に載置された切削器具を当該下面部に押し付けるために把持体に押付力を加えることができる。こうすることにより、切削器具と下面部との静止摩擦を向上することができる。
【0011】
前記載置部が、前記載置平面内に位置する少なくとも3つの載置点であって一直線上にない少なくとも3つの載置点を有し、好適には、前記切削器具の全長のうち少なくとも25%、30%又は40%が、前記載置点のうち2つの間に位置し、前記全長は好適には、ブレード先端と前記把持体における前記ブレード先端とは反対側の端部との間で測定されるものであり、好適には、前記載置点のうち少なくとも1つと前記ブレード刃部の延在平面との間の距離が前記切削器具の全長の1%、2%又は3%より大きいことが有用となり得る。当該構成の安定性にとって決定的に重要なのは載置部の大きさではなく、むしろ、載置平面内における載置点間の距離、特にブレード刃部の延在平面に対して垂直な距離である。切れ刃と研ぎ/研磨器具とが通常はブレードの延在平面内においてないしは当該延在平面に対して平行に相対移動をする場合であっても、研ぎないしは研磨処理の際には通常は、ブレードの延在平面に対して横方向に作用して当該ブレードと切削器具とを規定の処理位置から押し出す力成分が存在する。切削器具と下面部との接触面積が大きいと下面部に対する切削器具の静止摩擦が増大し、切削器具が処理位置に安定化される。載置部を弾性とすること、とりわけシリコーン製のコーティングとすることが有利となり得る。かかる構成により、切削器具と下面部との静止摩擦をさらに向上することができる。
【0012】
切削器具が、前記ブレード刃部の(延在平面の)それぞれ異なる面に配された2つの前記載置部を備えており、前記載置部はそれぞれ、前記切れ刃を研ぐために、平坦な前記下面部に対する前記ブレード刃部(ないしはその延在平面)の向きが同じ前記作業角となるように前記下面部に前記切削器具を安定して載置できる載置平面を画定することが有用となり得る。かかる構成により、切れ刃の両面を特に一様に研ぎ又は研磨することができる。
【0013】
前記載置部を前記切削器具において位置調整可能に配置することが便利となり得る。かかる構成により、使用事例に応じて個別の研ぎ角度で切れ刃を研ぎ又は研磨することができる。
【0014】
前記載置部は前記作業角を変えるために少なくとも2つの異なる位置間で位置調整可能であり、好適には、前記載置部が第1の位置にある際の前記作業角は70°であり、前記載置部が第2の位置にある際の前記作業角は75°であることが有利となり得る。かかる構成により、第1の位置では研ぎ角度が20°となり、第2の位置では15°となる。
【0015】
本発明の他の一側面は、上記のいずれか1つの実施形態の切削器具と、研ぎ及び/又は研磨器具と、を備えたセットに関するものであり、前記研ぎ及び/又は研磨器具は、当該研ぎ及び/又は研磨器具が転がる際に前記下面部に対して垂直な向きの平面内で回転する少なくとも1つの研ぎ及び/又は研磨面を有する。
【0016】
前記研ぎ及び/又は研磨器具が円柱状の把持体を備え、前記把持体の軸方向の各端部に前記研ぎ及び/又は研磨面が配されていることが有利となり得る。研ぎ/研磨器具の上記の形状は多面的に有用であり、実用上特に優れていることが判明している。
【0017】
本発明の他の一側面は、上記のいずれか1つの実施形態の切削器具を研ぎ及び/又は研磨するための方法に関するものであり、以下のステップを有する:
-ステップA:前記ブレード刃部を平坦な前記下面部に対して65~80°の範囲の作業角に配するように、前記切削器具を前記載置平面で、前記下面部に配置する。好適には本ステップでは、ユーザが、切れ刃が下面部とは反対側を向くように、力を加えて切削器具を載置部で下面部に押し付ける。
-ステップB:研ぎ及び/又は研磨器具における前記下面部に対して垂直な向きの研ぎ及び/又は研磨面に前記切れ刃を当てる。例えば欧州特許出願公開第3278928号明細書等から公知となっているロールシュライファーは、(2つの端面の)研ぎないしは研磨面(を有する円柱体)を備え、この研ぎないしは研磨面は、平坦な下面部上で当該ロールシュライファーが転がる際に当該下面部に対して垂直な向きの平面内で回転するようになっている。
ステップC:前記研ぎ及び/又は研磨面と前記切れ刃とを相対移動させることにより前記切れ刃を研ぎ及び/又は研磨する。好適には、研ぎ/研磨器具が下面部上で転がる際に切れ刃の長手方向に当該切れ刃に沿うように移動する間、切削器具は下面部に対して位置固定された状態に留まる。切削器具と研ぎ/研磨器具との間の僅かな接触圧により、その相対移動中に研ぎないしは研磨面がブレードから材料を削ぎ取って、切れ刃を研ぎないしは研磨する。
【0018】
明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項を組み合わせることにより、本発明の他の有利な改良形態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ブレードと、把持体と、当該把持体に配置された載置部と、備えた調理用包丁の形態の本発明の切削器具の概略的な側面図であり、載置部は、平坦な下面部に切削器具を載置するための載置平面を画定する。
図2図1の切削器具を他の側面から見た概略的な側面図である。
図3図1の断面平面A-Aの断面図である。
図4】本発明の切削器具をブレード先端側から見た概略的な前面図であり、切削器具は規定通りに載置面のうち1つで平坦な下面部に載置されて、下面部に対するブレード刃部の向きが所定の作業角になっており、ブレードの切れ刃が研ぎ及び/又は研磨器具によって処理されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な一例の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、調理用包丁として構成された本発明の切削器具1の側面図である。この調理用包丁1は、扁平な長片状のブレード2を備えており、ブレード2はブレード刃部2aと、下側の凸状に湾曲した切れ刃2bと、上側の直線状のブレード背部2cと、前方側の先端2dと、を有する。ブレード2は平面内(延在平面E内)に延在し、ブレード2の延長上に延在する把持部3に接続されており、この把持部3は例えば略直方体形、又は任意選択的に円柱状である。この把持部3の下側には、図1及び図2に示されているようにユーザの指を受けるための凹状の受け部を有する。把持部3は単一片の把持体として形成することができる。これに代えて、一続きの把持体3ではなく2つの把持部ハーフシェルをブレード2のそれぞれ異なる面に配置し、ないしは、これら2つの把持部ハーフシェル間にブレード2をサンドイッチ状に挟むことも可能である。
【0022】
把持部3の上側ないしは背部には、載置部4がブレード2の各面に配されており、ブレード2の延在平面Eに対するこの載置部4の向きは角度αとなっており、載置部4は、切れ刃2bを研ぎ又は研磨するために切削器具1を平坦な下面部U(例えば台所用作業台等)に安定して載置できるようにするための載置平面AEを画定する。上述の載置部4は切削器具1の両面にブレード2の延在平面Eを基準に対称的に配置されることにより、切れ刃2bをブレード刃部2aの延在平面Eを基準に対称的に、等しい研ぎ角度αで研ぐことができるようになっている。
【0023】
本例の実施形態では、各載置部4はそれぞれ、把持部3の背部の一続きの面として形成されている。両載置部4は、ブレード刃部2aの延在平面E内において把持部3の背部でぶつかり、360°-2×αの優角を成す。各載置部4自体がそれぞれ、一続きの平坦な面である必要はない。互いに離隔した複数の別々の載置部4ないしは載置点4a,4b,4cが合わさって載置平面AEを画定することも可能である。例えば、把持部3の前方側(先端2d側)の端部と後方側(先端2dとは反対側)の端部とに、載置部4ないしは載置点4a,4b,4cとして2つの互いに離隔した突起を形成して、載置平面AEを画定することができる。この変形形態は、ユーザが規定通りに使用するために、ユーザが把持部3を持ったときに載置部4を触覚的に意識することなく、把持部3の特に把持部背部を解剖学的に成形できるという利点を奏する。規定通りの処理位置において切削器具1を安定化するためには、各1つの載置部4の少なくとも3つの異なる載置点4a,4b,4cが、特に切削器具1の長手方向Lとブレード刃部2aの延在平面Eに対して垂直な方向とに、互いに可能な限り遠距離に離隔して、規定通りの研ぎ/研磨処理の場合に研ぎ/研磨面5aに対してブレード刃部2aを一定の作業角αで係合状態に保持できるようにすることが有用である。本例では、調理用包丁1の全長Lは約30cmである。ここで理想的には、把持部3の前端部及び後端部の載置部4の2つの載置点4a,4bは、長さLの少なくとも30%に相当する距離Xだけ互いに離隔している。載置点4a,4b間の距離Xは、好適には切削器具1の全長に沿って測定されるものであり、この距離Xは図2に示されており、同図によると少なくとも9cmである。かかる構成によって例えば、切れ刃2bの研ぎ/研磨処理が規定通りに行われている場合、ブレード背部2dは下面部Uと接触するのを阻止することができる。理想的には、載置部4によって画定される載置平面AEに垂直に投影した場合、切削器具1の重心はちょうど載置部4の領域内に、ないしは載置点4a,4b,4cによって画定される面内に位置する。
【0024】
さらに、載置点4bとブレード刃部2aの延在平面Eとの間の距離Yは、図3に示されているように切削器具1の全長(ここでは30cmないしは300mm)の少なくとも1%すなわち3mmである。載置平面AE内における最外側の載置点4bとブレード刃部2aの延在平面Eとの間の距離Yが大きいほど、処理位置にあるときの切削器具1の傾斜が小さくなる。これにより、規定通りの研ぎ/研磨処理が行われている間に作業角αが意図せずに変化することを阻止することができる。基本的には、図4に示されているように規定通りの処理位置にあるときに切削器具1の安定性を向上するためには、距離Yを大きくすることが望ましいが、切るときの切削器具1の取り扱いに悪影響を及ぼすほど距離Aの寸法を大きくすべきではない。
【0025】
図3では、、本発明の切削器具1の断面プロファイルは対称的になっている。
【0026】
本例の実施形態では、載置平面AEとブレード刃部2aの延在平面Eとの間の角度αは70°である。切削器具1が載置平面AEで平坦な下面部Uに載置されたときには、この角度αはブレード刃部2aの延在平面Eと平坦な下面部Uとの間のいわゆる作業角αに相当する。これにより、冒頭に述べた研ぎ/研磨器具5の研ぎ面5aに対してブレード刃部2aが自然に理想的な研ぎ角度βの20°に位置決めされる。公知の通り、かかる研ぎ/研磨器具5を規定通りに下面部U上で転がすと、当該研ぎ/研磨器具5の研ぎ/研磨面5aは、下面部Uに対して垂直な向きの平面内で回転する。
【0027】
規定通りに使用するためには、まず、ブレード刃部2aを下面部Uに対して所定の20°の作業角αに配するように、切削器具1を載置平面AEで平坦な下面部Uに載置しないしは押し付ける(ステップA)。上記の20°の作業角αは、載置部4とブレード刃部2aの延在平面Eとの間の角度に相当する。好適には、ユーザが押圧力を把持部3に加えることにより、当該把持部3に加わった力が、当該把持部3に配置された載置部4を直接介して下面部Uに作用し、切削器具1が処理位置に安定化するようにする。
【0028】
次に、研ぎないしは研磨器具5における下面部Uに対して垂直な向きの研ぎないしは研磨面5bに切れ刃2bを当て(ステップB)、その後、研ぎないしは研磨面5bと切れ刃2bとを当該切れ刃2bの長手方向に相対移動させることにより切れ刃2bを研ぎ又は研磨する(ステップC)。
【0029】
切れ刃2bの両面を研ぐためには、切削器具1を他の載置部4によって画定された載置平面AEで下面部Uに載置する。その後、上記の各ステップ(A~C)を繰り返す。
【0030】
不図示の一例の実施形態は、基本的に上記の実施形態例に基づくが、以下述べる相違点を除いて同じ構成を有し、この実施形態では、作業角αを変えるために載置部4が位置調整可能となっており、場合によっては載置部4は、作業角が例えば70°になる第1の位置と、作業角が例えば75°になる第2の位置と、の間で位置調整可能とすることができる。理想的には、作業角αの不所望の変更を防止するため、載置部4は第1の位置及び第2の位置の両方において係止可能とされる。
【0031】
特許請求の範囲の保護範囲内で、本発明の他の好適な改良形態が可能である。
【0032】
本発明の利点は基本的に、本発明の切削器具1が他の補助手段を用いずに、研ぎ面5に対して適切な研ぎ角度βで位置決め可能であることである。特に、把持部3が本発明の載置部4を有するナイフ1は、他の補助手段を用いることなく非常に簡単かつ確実に、左右に傾けて適切な研ぎ角度βに保持されることができる。把持部3の全部を扁平に成形(anschleifen)することができ、また、把持部3を長手方向にくり抜き(hohl ausschleifen)、2辺にのみ載置部ないしは載置点を設けることも可能である。丸め加工されると共に突出するリベットが設けられ、これらのリベットが4点載置部となることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 切削器具(ナイフ)
2 ブレード
2a ブレード刃部
2b 切れ刃
2c ブレード背部
2d ブレード先端
3 把持部
4 載置部
5 研ぎ及び/又は研磨器具
5a 研ぎ及び/又は研磨面
5b 研ぎ及び/又は研磨盤
5c 把持体
AE 載置平面
E (ブレード刃部の)平面
S 研ぎ平面
U 下面部
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】