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特表2023-554056セラミックターゲットからPVDによって製造された硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】セラミックターゲットからPVDによって製造された硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/32 20060101AFI20231219BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20231219BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C23C14/32 A
C23C14/06 L
C23C14/06 A
B23B27/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536373
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086191
(87)【国際公開番号】W WO2022129330
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,040
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤラマンチリ,シバ・ファニ・クマール
【テーマコード(参考)】
3C046
4K029
【Fターム(参考)】
3C046FF10
3C046FF13
3C046FF16
3C046FF21
3C046FF23
3C046FF24
3C046FF25
4K029BA58
4K029BB02
4K029BB07
4K029BC02
4K029BD05
4K029CA04
4K029CA13
4K029DB02
4K029DD06
4K029EA01
4K029EA08
(57)【要約】
PVDコーティングプロセス、好ましくは、アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜中のアルミニウム及びチタンの総量に基づいて70at-%を超えるアルミニウム含有量、立方晶構造、並びに総微細構造の体積に基づいて1体積%を超える非柱状含有量を有する少なくとも部分的に非柱状微細構造を有する薄膜を製造するためのアーク蒸発PVDコーティングプロセスであって、セラミックターゲットがアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜の材料源として使用される、コーティングプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVDコーティングプロセス、好ましくは、アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜中のアルミニウム及びチタンの総量に基づいて70at-%を超えるアルミニウム含有量、立方晶構造、並びに総微細構造の体積に基づいて1体積%を超える非柱状含有量を有する少なくとも部分的に非柱状微細構造を有する前記薄膜を製造するためのアーク蒸発PVDコーティングプロセスであって、セラミックターゲットが前記アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜の材料源として使用される、コーティングプロセス。
【請求項2】
アーク蒸発PVDコーティングプロセスがPVDコーティングプロセスとして使用される、請求項1に記載のコーティングプロセス。
【請求項3】
前記アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜が、混合柱状及び非柱状微細構造であって、1体積%を超える含有量の前記非柱状微細構造を有する、好ましくは20体積%を超える含有量の前記非柱状微細構造を有する、特に50体積%を超える含有量の前記非柱状微細構造を有する、混合柱状及び非柱状微細構造を有する、
請求項1又は2に記載のコーティングプロセス。
【請求項4】
前記アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜が非柱状微細構造を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項5】
脆い絶縁セラミックターゲットが使用される、
先行する請求項のいずれかに記載のコーティングプロセス。
【請求項6】
80アンペアを超えるアーク電流が使用され、特に80アンペア~200アンペアの間のアーク電流が使用される、
先行する請求項2~5のいずれかに記載のコーティングプロセス。
【請求項7】
少なくとも1つのターゲットが、中央に追加の絶縁体を備え、前記アークステアリングが、アーク放電中に前記セラミックターゲットが亀裂を生じないように操作される、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項8】
AlTi1-XNがターゲット材料として使用され、Xが75以上であり、Xが好ましくは75~90の間の値を有する、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項9】
少なくとも1つのセラミックターゲットが、加工中でも99%の密度であり、亀裂がない、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項10】
AlTi1-XNが、ターゲット材料として使用され、前記AlN含有量が、前記ターゲット材料の70体積%を超える、好ましくは75モル%を超える、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項11】
窒素が反応性ガスとして導入され、窒素が、好ましくは0.5Pa未満の圧力、特に0.3~0.1Paの間の圧力で導入される、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項12】
コーティングされる前記基板に負バイアス電圧(U)が印加され、前記基板に印加される前記バイアス電圧(U)が、好ましくは-250V~-30Vの間、より好ましくは-200V~-80Vの間、特に-200V~-100Vの間の範囲である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項13】
前記コーティングプロセス中の前記蒸着温度が、360℃未満、好ましくは150°C~320°Cの間である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項14】
複数のアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜を上下に蒸着させて多層膜が製造され、立方構造にもかかわらず非柱状微細構造を示す前記AlTi1-XNの含有量が隣接する層に対して変化する、
先行する請求項のいずれか1項に記載のコーティングプロセス。
【請求項15】
アルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜であって、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセスによって製造可能な、前記薄膜中のアルミニウム及びチタンの総量に基づいて70at-%を超えるアルミニウム含有量、立方晶構造、並びに総微細構造に基づいて1体積%を超える非柱状含有量を有する少なくとも部分的に非柱状微細構造を有する、アルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項16】
前記アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜が、混合柱状及び非柱状微細構造であって、1体積%を超える含有量の前記非柱状微細構造を有する、好ましくは20体積%を超える含有量の前記非柱状微細構造を有する、特に50体積%を超える含有量の前記非柱状微細構造を有する、混合柱状及び非柱状微細構造を有する、
請求項15に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項17】
前記薄膜が、Al、Ti及びNを主成分として含み、式(AlTi(式中、a及びbはそれぞれ、前記層中の化学元素組成の算出のためにAl及びTiのみを考慮した原子比でのアルミニウム及びチタンの濃度であり、ここで、a+b=1、且つ0≠a≧0.7及び0≠b≧0.2、又は0≠a≧0.8及び0≠b≦0.2であり、xはAlの濃度とTiの濃度の和であり、yは、前記層中の前記元素組成の算出のためにAl、Ti及びNのみを考慮した原子比での窒素の濃度であり、ここで、好ましくは、x+y=1、且つ0.45≦x≦0.55である)によるこれらの元素に関する原子百分率での前記元素組成を有する、
請求項15又は16に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項18】
前記薄膜が、ISO14577-1に準拠して計装インデンテーションを使用して測定される、30GPa以上の硬度(H)、好ましくは35GPa以上の硬度(H)を示す、請求項15~17のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項19】
前記薄膜が、ISO14577-1に準拠して計装インデンテーションを使用して測定される、350GPa~480GPaの間の範囲内の減少したヤング率(E)を示し、好ましくは370GPa~410GPaの間の範囲内の減少したヤング率(E)を示す、請求項15~18のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項20】
前記薄膜が、ISO14577-1に準拠して計装インデンテーションを使用して測定される、2.5GPaを超える圧縮応力、好ましくは2.5GPa~6GPaの間の範囲の圧縮応力を示す、請求項15~19のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項21】
前記薄膜が、5μmのコーティング厚でもHF1の高い接着性を示し、この高い接着性が、特にセラミックターゲットの使用とアーク放電との組み合わせによる前記薄膜の蒸着から生じる、請求項15~20のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項22】
前記アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜が、上下に蒸着された複数のアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜を含む多層膜として形成され、好ましくは、非柱状微細構造を示す前記AlTi1-XNの含有量が隣接する層に対して変動する、請求項15~21のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項23】
前記薄膜が、X≧75のアルミニウム含有量、好ましくは75~90の間のXのアルミニウム含有量を有する、請求項15~22のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項24】
前記層厚が、500nm超、好ましくは1000nm超、特に1500nm超である、請求項15~23のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜。
【請求項25】
コーティングされた工具若しくはコーティングされた構成要素、特にコーティングされた切削工具若しくはコーティングされた成形工具、又は耐摩耗用途に使用されるコーティングされたタービン構成要素若しくはコーティングされた構成要素を製造するための、請求項15~24のいずれか1項に記載のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックターゲットからの物理気相蒸着(PVD)プロセスによって製造された1つ以上の硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層(以下、単に硬質立方晶AlリッチAlTiN層又は硬質立方晶AlリッチAlTiN膜とも呼ばれる)からなる又はそれを含むコーティング、並びにその製造方法に関する。
【0002】
本発明による硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び窒素(N)からなるコーティング層として、又はアルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び窒素(N)を主成分として含み、立方晶構造及び30GPa、好ましくは35GPa以上の硬度を呈するコーティング層として理解され得る。
【0003】
「立方晶構造を呈する」という用語は、立方相のみを呈する、すなわち六方晶相を全く呈さないと理解され得る。しかしながら、これは、コーティング層の総質量に対して好ましくは0.5重量%未満の微量又は少量が異なる相を有し得ることを意味しない。
【0004】
これに関連して、AlリッチAlTiN層における「主成分であるAl、Ti、N」という用語の使用は、AlリッチAlTiN層の全化学元素組成を原子百分率で決定するために、AlリッチAlTiN層に含有される全ての元素を考慮する場合、特に、原子百分率による濃度としてのAlリッチAlTiN層中のAl、Ti及びNの含有量の和が50at%を超えること(すなわち、50at%超~100at%の間の値)、好ましくは75at%超(すなわち、75at%超~100at%の間の値)、より好ましくは80at%以上(すなわち、80at%~100at%の間の値)に相当することを意味する。
【0005】
これに関連して、「Alリッチ」という用語は、原子百分率での化学元素組成の決定のためにAl及びTiのみが考慮される場合(すなわち、Al[at%]/Ti[at%]≧70/30である)、対応するAlリッチAlTiN層中のアルミニウム(Al)の含有量が70at%に等しいか好ましくは70at%を超えることを示すために特に使用され得る。
【背景技術】
【0006】
技術水準
立方晶構造及び柱状微細構造を呈する(Tiに対して)75at.-%を超えるAl含有量を有するAlTiNコーティング層は、LP-CVDプロセスによって合成されることが知られている。これらの種類のコーティングは、PVDベースのAl0.67Ti0.33Nコーティング等のより低いAl含有量を有するコーティングと比較して優れた摩耗保護を示すことが知られている。
【0007】
歴史的に、アーク蒸着及び反応性マグネトロンスパッタリング等のPVD法を使用して、最大70at.-%Alの準安定立方晶(B1結晶構造)相のAlTiN層を製造できることはよく知られている。
【0008】
さらに、Alの準安定溶解限界を70at.%を超えて高めるための可能な方法を提示するいくつかの刊行物もある。しかしながら、これまでに提案されたこれらの方法は全て、いくつかの欠点又は制限を伴う。1つの制限は、例えば、柱状構造を有する立方相のみの蒸着であり、これはコーティングの労力、特にコーティング時間を増加させる。さらに、排他的に柱状構造を有する立方相を蒸着させる場合、蒸着条件が特に穏やかであることを確実にするように注意しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的
本発明の目的は、技術水準の欠点又は制限を克服又は緩和する、硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層の製造方法を提供することである。
【0010】
硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティングは、好ましくは100%の立方相、高硬度、適切な圧縮応力、及びコーティング微細構造を呈するべきであり、これは、AlリッチAlTiNコーティングが切削工具に適用される場合、好ましくは高い耐摩耗性及び改善された切削性能を達成することを可能にする。さらに、本発明によるコーティング層は、単純且つ迅速に製造可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の説明
本発明の目的は、以下に記載され、請求項10に記載される少なくとも1つの硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層を含むコーティング、及び以下に記載され、請求項1に記載されるその製造方法を提供することによって達成される。
【0012】
本発明の第1の態様では、PVDコーティングプロセス、好ましくは、アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜中のアルミニウム及びチタンの総量に基づいて70at-%を超えるアルミニウム含有量、立方晶構造、並びに総微細構造の体積に基づいて1体積%を超える非柱状含有量を有する少なくとも部分的に非柱状微細構造を有する薄膜を製造するためのアーク蒸発PVDコーティングプロセスであって、セラミックターゲットがアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜の材料源として使用される、コーティングプロセスが開示される。
【0013】
第1の態様の別の例では、アーク蒸発PVDコーティングプロセスは、PVDコーティングプロセスとして使用される。
【0014】
第1の態様の別の例では、アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜は、混合柱状及び非柱状微細構造であって、1体積%を超える含有量の非柱状微細構造を有する、好ましくは20体積%を超える含有量の非柱状微細構造を有する、特に50体積%を超える含有量の非柱状微細構造を有する、混合柱状及び非柱状微細構造を有し得る。
【0015】
第1の態様の別の例では、非柱状微細構造を有するアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜。
【0016】
さらに、第1の態様の別の例では、脆い絶縁性のセラミックターゲットが使用される。
第1の態様の別の例では、好ましくは80アンペアを超えるアーク電流が使用されてもよく、特に80~200アンペアの間のアーク電流が使用されてもよい。
【0017】
第1の態様の別の例では、少なくとも1つのターゲットは、中央に追加の絶縁体を備え、アークステアリングは、アーク放電中にセラミックターゲットが亀裂を生じないように操作される。
【0018】
第1の態様の別の例では、AlTi1-XNはターゲット材料として使用されてもよく、Xは75以上であり、Xは好ましくは75~90の間の値を有してもよい。
【0019】
さらに、第1の態様の別の例では、少なくとも1つのセラミックターゲットは、加工中でも99%の密度であり、亀裂がない。
【0020】
第1の態様の別の例では、AlTi1-XNをターゲット材料として使用してもよく、AlN含有量はターゲット材料の70体積%を超えてもよく、好ましくは75モル%を超えてもよい。
【0021】
第1の態様の別の例では、窒素は反応性ガスとして導入されてもよく、窒素は、好ましくは0.5Pa未満の圧力、特に0.3~0.1Paの間の圧力で導入されてもよい。
【0022】
第1の態様の別の例では、コーティングされる基板に負バイアス電圧が印加され得て、基板に印加されるバイアス電圧は、好ましくは-250V~-30Vの間、より好ましくは-200V~-80Vの間、特に-200V~-100Vの間の範囲であり得る。
【0023】
第1の態様の別の例では、コーティングプロセス中の蒸着温度は、360℃未満、好ましくは150℃~320℃間であり得る。
【0024】
第1の態様の別の例では、複数のアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜を上下に蒸着させて多層膜が製造され得、立方構造にもかかわらず非柱状微細構造を示すAlTi1-XNの含有量が隣接する層に対して変化する。
【0025】
本発明の第2の態様では、アルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜であって、本発明の第1の態様によるプロセスによって製造可能な、薄膜中のアルミニウム及びチタンの総量に基づいて70at-%を超えるアルミニウム含有量、立方晶構造、並びに総微細構造に基づいて1体積%を超える非柱状含有量を有する少なくとも部分的に非柱状微細構造を有する、アルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜が開示される。
【0026】
第2の態様の別の例では、アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜は、混合柱状及び非柱状微細構造であって、1体積%を超える含有量の非柱状微細構造を有する、好ましくは20体積%を超える含有量の非柱状微細構造を有する、特に50体積%を超える含有量の非柱状微細構造を有する、混合柱状及び非柱状微細構造を有し得る。
【0027】
第2の態様の別の例では、薄膜は、Al、Ti及びNを主成分として含み得て、式(AlTi(式中、a及びbはそれぞれ、層中の化学元素組成の算出のためにAl及びTiのみを考慮した原子比でのアルミニウム及びチタンの濃度であり、ここで、a+b=1、且つ0≠a≧0.7及び0≠b≧0.2、又は0≠a≧0.8及び0≠b≦0.2であり、xはAlの濃度とTiの濃度の和であり、yは、層中の元素組成の算出のためにAl、Ti及びNのみを考慮した原子比での窒素の濃度であり、ここで、好ましくは、x+y=1、且つ0.45≦x≦0.55である)によるこれらの元素に関する原子百分率での元素組成を有し得る。
【0028】
第2の態様の別の例では、薄膜は、ISO14577-1に準拠して計装インデンテーションを使用して測定される、30GPa以上の硬度、好ましくは35GPa以上の硬度を示し得る。
【0029】
第2の態様の別の例では、薄膜は、ISO14577-1に準拠して計装インデンテーションを使用して測定される、350GPa~480GPaの間の範囲、好ましくは370GPa~410GPaの間の範囲の減少したヤング率を示し得る。
【0030】
第2の態様の別の例では、薄膜は、ISO14577-1に準拠して計装インデンテーションを使用して測定される、2.5GPaを超える圧縮応力、好ましくは2.5GPa~6GPaの間の範囲の圧縮応力を示すことができる。
【0031】
第2の態様の別の例では、薄膜は、5μmのコーティング厚でもHF1の高い接着性を示し、この高い接着性が、特にセラミックターゲットの使用とアーク放電との組み合わせによる薄膜の蒸着から生じる。
【0032】
第2の態様の別の例では、アルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜は、上下に蒸着された複数のアルミニウムリッチAlTi1-XN系薄膜を含む多層膜として形成され得て、好ましくは、非柱状微細構造を示し得るAlTi1-XNの含有量は隣接する層に対して変動し得る。
【0033】
第2の態様の別の例では、薄膜は、X≧75のアルミニウム含有量、好ましくは75~90の間のXのアルミニウム含有量を有し得る。
【0034】
第2の態様の別の例では、層厚は500nm超、好ましくは1000nm超、特に1500nm超であり得る。
【0035】
本発明の第3の態様では、コーティングされた工具若しくはコーティングされた構成要素、特にコーティングされた切削工具若しくはコーティングされた成形工具、又は耐摩耗用途に使用されるコーティングされたタービン構成要素若しくはコーティングされた構成要素を製造するための、本発明の第2の態様のアルミニウムリッチAlTi1-xN系薄膜の使用が開示される。
【0036】
前に少なくとも部分的に述べたように、及び本発明のいくつかの重要な態様を要約するために、本発明は、特に具体的には、Al、Ti及びNを主成分として含み、式(AlTiによるこれらの元素に関する原子百分率の化学元素組成を有するコーティング層に関し、式中、a及びbはそれぞれ、層中の元素組成の算出のためにAl及びTiのみを考慮した原子比でのアルミニウム及びチタンの濃度であり、a+b=1、且つ0≠a≧0.7及び0≠b≧0.2、又は0≠a≧0.8及び0≠b≦0.2であり、xはAlの濃度とTiの濃度の和、yは層中の元素組成の算出のためにAl、Ti、Nのみを考慮した原子比での窒素の濃度であり、x+y=1、且つ0.45≦x≦0.55であり、
・コーティング層は、以下を呈し得る:
o100%fccの立方相、
o硬度H≧35GPa、
o350GPa~480GPaの間の範囲、すなわち350GPa≦Er≦480GPa、より好ましくは370Gpa~410GPaの間の範囲、すなわち370GPa≦Er≦410GPaの減少したヤング率Er
【0037】
【数1】
【0038】
。硬度及び低下した弾性率は、ISO14577-1試験方法に準拠して、計装インデンテーションを使用して測定される。
【0039】
o2.5GPa以上、好ましくは2.5GPa~6Paの間の圧縮応力。
oAlNが0.7モルを超えるAlTiNの組成を有する100%立方相を有しながら、柱状若しくは非柱状構造、又は柱状及び非柱状の変調層の連続的な積層で構成される構造のいずれか。
【0040】
o4~6GPaの間の圧縮応力と、5μmのコーティング厚でもHF1の接着性を同時に示す。
【0041】
さらに、本発明は、特に具体的には、基板の表面上に本発明の第1の態様によるコーティング層を製造するための方法に関し、
・コーティング層は、PVD陰極アーク蒸発技術を使用することによって真空コーティングチャンバの内部に形成されてもよく、特に、
-絶縁セラミック材料のターゲット、特に、ターゲット材料を蒸発させるためのカソードとして動作する、70%を超えるモル分率を有する絶縁AlNからなるターゲットを含む少なくとも1つのアーク蒸発源を使用してもよく、
-ターゲット材料は、Al、Ti及びNからなってもよく、又はAl、Ti及びNを主成分として含んでもよく、特に、
oターゲット材料中の原子百分率によるAl、Ti及びNの含有量のみを考慮する場合、式(AlTiによるこれらの元素に関する原子百分率による組成(式中、c及びdはそれぞれ、層中の元素組成の算出のためにAl及びTiのみを考慮した原子比でのアルミニウム及びチタンの濃度であり、c+d=1、c/d≧70/30、且つ0≠c≧0.7及び0≠d≧0.10であり、tはAlの濃度とTiの濃度の和であり、zは層中の元素組成の算出のためにAl、Ti、Nのみを考慮した原子比での窒素濃度であり、t+z=1、且つ0.45≦z≦0.55、好ましくはz=0.5である)を含んでもよく、
-方法は、絶縁セラミックターゲットからの窒化アルミニウムチタンの蒸着を更に含んでもよく、コーティングプロセス中にターゲットから提供される窒素の損失を補償するために真空コーティングチャンバ内に窒素ガスが導入され、
-窒化アルミニウムチタンの蒸着は、
o360℃未満、好ましくは150℃~320℃の間の蒸着温度において、
o0.5Pa未満、好ましくは0.1Pa~0.3Paの間の窒素分圧において、
o-250V≦Ub≦-30Vに相当する範囲、好ましくは-200V≦Ub≦-80Vに相当する範囲、より好ましくは-200V≦Ub≦-100Vに相当する範囲のバイアス電圧Ubを用いて行われ、
o絶縁セラミックターゲットは、PCT/EP2020/068828においてKrassnitzerによって提示されているように、絶縁ターゲットの内部に絶縁体を備えてもよい。驚くべきことに、この構成は、ターゲットが70%を超えるモル分率の絶縁材料を有するにもかかわらず、広範囲の電流、すなわち、80A~200Ampにおいて安定したアーク放電を維持することを可能にした。
【0042】
o0.2Pa以下の低い作動圧力における絶縁セラミックターゲットの安定したアーク放電。
【0043】
したがって、セラミックターゲットのアーク放電を可能にし、安定したアーク放電を達成するために、好ましくは、方法は、PCT/EP2020/068828においてKrassnitzerによって記載されているように、1つ以上のアーク蒸発源を使用することによって実行され得る。このようにして、例えば200Aのアーク電流をセラミックターゲットに印加することができ、同時にアーク放電において30Vを超える放電電圧を達成することができるが、基板加熱をもたらす電力の20%未満の寄与を維持するように、反応性PVDコーティングプロセスを実施し、AlリッチAlTiNコーティング層(上記で説明したように75at%を超えるAl含有量を有する)を製造することが可能である。
【0044】
Al>75%を有する好ましいAlTiNは、低温、低ガス圧(イオンからの高エネルギー入力)及び高バイアス電圧で立方構造及び高硬度で成長され得る。
【0045】
本発明者らは、AlリッチAlTiN層における上述の比のAl及びTiの組み合わせが、Al[at%]/Ti[at%]≧70/30、好ましくはAl[at%]/Ti[at%]>70/30、より好ましくは90/10≧Al[at%]/Ti[at%]≧75/25を意味し、工具及び/又は構成要素に対する摩耗保護の改善に大きな寄与を示すことを見出した。
【0046】
さらに、本発明は、特に、1つ以上の本発明の硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層を含むコーティング系に関する。
【0047】
上記の本発明の硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層を製造するための上記の本発明の方法はまた、異なるコーティング系、例えば多層及び/又は勾配コーティング系を製造するために、本発明の硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング層と組み合わされる他の種類のコーティング層を製造するために、例えば更なるターゲット及び/又は反応性ガス流を使用することによって変更することもできる。
【0048】
本発明によるAlリッチAlTiNコーティング層及び/又はコーティング系(すなわち、本発明によるAlリッチAlTiNコーティング層を含む)は、優れた機械的特性を呈し、摩耗及び応力の集合にさらされる工具及び構成要素に優れた性能を提供するための有益な一連の特性を有すると予想される。
【0049】
上述の本発明の(AlTi層は、100%面心立方(fcc)構造を呈し得る。重要なことに、本発明は、物理気相蒸着(PVD)プロセスによって、特にTiに対して70at%を超えるAlを有する、AlTiNを含む絶縁セラミックAlTiNターゲット(単数又は複数)をアーク放電することによって、及び制御されたNガスを真空コーティングチャンバ(PVD装置とも呼ばれる)に同時に導入することによって、本発明のAlリッチAlTiNコーティングを製造する方法を記載する。さらに、本発明は、高いAlN分率にもかかわらず立方相のみを保持しながら、どのようにして柱状及び非柱状の両方の構造でAlリッチAlTiNを合成するかを示す。驚くべきことに、絶縁セラミックターゲットを用いて合成された薄膜は、図9に示すように金属ターゲットを使用した場合と比較して、基板に対する優れた接着性を示すことも分かる。
【0050】
詳細な説明
本発明のより良い理解を提供するために、いくつかの実施例、表及び図を、本発明をより詳細に説明するために以下で使用する。しかしながら、これらの実施例、表及び図は、本発明の限定として理解されるべきではなく、本発明の具体例及び/又は好ましい実施形態としてのみ理解されるべきである。
【0051】
以下に記載されるように、本発明に従って蒸着された硬質立方晶AlリッチAlTiN層の発明実施例は、300℃のプロセス温度(これに関連して、「プロセス温度」という用語は、特にコーティング蒸着プロセス中の設定温度を指すために使用される)、及び0.2Pa~0.15Paの間の低窒素分圧で陰極アーク蒸発プロセスを使用することによって実施された。(Al0.77Ti0.230.50.5の化学元素組成を有するターゲットを使用し、ターゲットを、80A~200Aのアーク電流及び-120Vの基板バイアス電圧、並びに0.15Pa~0.20Paの間の窒素分圧を印加することによってカソードとして動作させた。
【0052】
詳細なプロセスパラメータ並びにこれらの発明実施例において蒸着された測定されたコーティング層特性を有するこのような本発明の蒸着プロセスの2つの発明実施例を表1.1及び表1.2に示す。
【0053】
詳細なプロセスパラメータ並びにこれらの比較例において蒸着された測定されたコーティング層特性を有する本発明ではない蒸着プロセスの3つの比較例を表2.1及び表2.2に示す。
【0054】
発明実施例1~2に示すコーティングプロセスによって得られた本発明の硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティングのSEM及びX線検査を図1~4に示す。
【0055】
比較例3~5に示すコーティングプロセスによって得られた本発明によらないAlリッチAlTiNコーティングのSEM及びX線検査を図5~10に示す。
【0056】
図面:
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】発明実施例1に従って蒸着された硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
図2】発明実施例1に従って蒸着された硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
図3】発明実施例1及び実施例2に従って蒸着された蒸着したままの硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング膜のX線パターン。
図4】比較例3に従って蒸着されたAlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
図5】比較例4に従って蒸着されたAlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
図6】比較例5に従って蒸着されたAlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
図7】比較例3、4、及び5に従って蒸着された蒸着されたままのAlリッチAlTiNコーティング膜のX線パターン。
図8】カソードアーク蒸着源におけるカソードとしての信頼性の高い動作に適合されたセラミックターゲット。
図9】X-SEM(a)、並びに本発明のコーティングのコーティング(#2620、#3007)及び比較例(#2301)コーティングのHRCインデンテーション下での剥離に対するコーティング耐性(b)。
【発明を実施するための形態】
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
膜構造分析を、CuKa放射線源を備えたPANalytical X’Pert Pro MPD回折計を使用してX線回折(XRD)によって実施した。回折パターンをBragg-Brentano幾何学で収集した。FEGSEM Quanta F 200 Scanning Electron Microscope(SEM)を用いて、膜破断断面の顕微鏡写真を得た。
【0063】
蒸着したままの試料の硬度及びインデンテーション弾性率は、Berkovichダイヤモンドチップを備えたUltra-Micro-Indentation Systemを使用して決定した。試験手順は10mNの垂直荷重を含んでいた。硬度値は、Oliver and Pharr法に従って評価した。それにより、本発明者らは、基板干渉を最小限に抑えるために、コーティング厚さの10%未満のインデンテーション深さを確保した。
【0064】
表1.2に示すように、主に柱状微細構造を示すが、少なくとも1重量%の非柱状微細構造を有し、既に容易なコーティングを可能にしている。
【0065】
図面:
図1:発明実施例1に従って蒸着された硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
【0066】
図2:発明実施例1に従って蒸着された硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
【0067】
図3:発明実施例1及び実施例2に従って蒸着された蒸着したままの硬質立方晶AlリッチAlTiNコーティング膜のX線パターン。
【0068】
図4:比較例3に従って蒸着されたAlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
【0069】
図5:比較例4に従って蒸着されたAlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
【0070】
図6:比較例5に従って蒸着されたAlリッチAlTiNコーティング膜のSEM破断断面画像。
【0071】
図7:比較例3、4、及び5に従って蒸着された蒸着されたままのAlリッチAlTiNコーティング膜のX線パターン。
【0072】
図8:カソードアーク蒸着源におけるカソードとしての信頼性の高い動作に適合されたセラミックターゲット。
【0073】
図9:X-SEM(a)、並びに本発明のコーティングのコーティング(#2620、#3007)及び比較例(#2301)コーティングのHRCインデンテーション下での剥離に対するコーティング耐性(b)。
【0074】
本発明のAlリッチAlTiN系膜及び調整可能な微細構造を製造するために、本発明者らは、Ti含有量に対して最小70at%のAlを有する絶縁セラミックターゲットに対してアーク蒸着プロセスを使用し、ここで、蒸着パラメータの本発明の組み合わせは、以下の理解に基づいて選択された:
a)ターゲットにおいて:アーク放電電流、磁場の分布及び強度は、Al、Ti、及びNの単一及び複数の電荷イオンからなる膜形成種の所望のプラズマ状態を形成するように選択され、アーク電流は、微細構造を柱状構造と非柱状構造との間で切り替えるため、80A~200Aとの間で変化される。
【0075】
b)基板において:バイアス電圧は、運動エネルギーを増加させるのに十分に高く、それによって薄膜成長面における入射イオンのクエンチ速度を増加させる。同時に、基板温度は、成長面上の吸着原子移動度を凍結するのに十分低い。
【0076】
c)一般:窒素ガス圧は、窒素イオンの集合を減少させるのに十分低い所望のウインドウ内で操作され、それにより、成長表面に対するガスイオン誘起リミキシング効果によって可能になる六方晶相の核生成を抑制し、窒素ガス圧は、化学量論的なAlTiN薄膜を形成するのに十分高い。
【0077】
アーク蒸着の上記のプロセスレベルを最適化することによって、熱力学的に有利な六方晶相の核生成が成長表面で抑制され、それによってc-AlTiN中のAlの準安定溶解度が75at.%を超えて(例えば、80at.%)より高い濃度に上昇した。さらに、驚くべきことに、単相立方晶固溶体を保持しながら、微細構造を柱状と非柱状との間で調整することができた。
【0078】
本発明の特定の利点
本発明は、以下を可能にする方法を提供する:
・Al77Ti23Nの組成を有するか、又は例えばAl90Ti10Nの組成までTiに対してより高い含有量のAlを更に含むセラミックターゲットのアーク蒸発による化学量論的及び立方晶のAlリッチAlTiN薄膜の合成。
【0079】
・0.2Pa未満の窒素ガス圧力を使用することによる半導体AlNの70%体積分率を超えるセラミックターゲットの安定したアーク放電のためのパラメータの選択-一般に、そのような低ガス圧力下では、滑らかなアーク運動を維持することは困難であるが、本発明に従って使用されるセラミックターゲットは、低圧動作を容易にする。
【0080】
・Al77Ti23Nの組成を有するか、又は例えばAl90Ti10Nの組成までTiに対してより高い含有量のAlを更に含む柱状及び非柱状の両方の立方相固溶体の合成。
【0081】
・金属ターゲットを介して処理された薄膜と比較して、HRCインデンテーション誘起剥離に対する優れた耐性を示す、セラミックターゲットを介して処理されたAlリッチAlTiN膜の合成。
【0082】
・75mol%を超えるAlNの含有量を含むAlTiNの組成を有するコーティングを製造するための絶縁セラミックターゲットのアーク放電であって、80A~200Aの間の広範囲のアーク電流を使用することによって蒸着が可能であり、0.2Pa未満の低ガス圧で安定したアーク放電を維持する、アーク放電。
【0083】
・柱状及び非柱状微細構造の両方において、並びに柱状及び非柱状構造の変調層としてさえ、立方構造及び75mol%を超えるAlNの含有量を有するAlTiNの合成。
【0084】
・絶縁セラミックターゲットからのArc蒸発によって蒸着された、立方構造を有し、柱状及び非柱状微細構造の両方において75mol%を超えるAlNの含有量を有するAlTiNの合成であって、蒸着されたコーティングは、5GPaもの高い圧縮応力、及び5μmもの高い厚さにもかかわらず、基板(HF1)に対して非常に良好な接着性を呈する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】