(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】他励同期機のための回転電気整流器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/04 20060101AFI20231219BHJP
H02K 11/042 20160101ALI20231219BHJP
【FI】
H02M7/04 F
H02K11/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536417
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2021087299
(87)【国際公開番号】W WO2022136549
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020216485.1
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コズロウスキー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】オスドバ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【テーマコード(参考)】
5H006
5H611
【Fターム(参考)】
5H006CA07
5H006HA06
5H006HA08
5H006HA10
5H611AA09
5H611BB06
5H611TT03
5H611UA08
(57)【要約】
本発明は、他励同期機のための整流器(100)に関する。整流器(100)は、金属製のハウジング(102)を含み、ハウジング(102)はハウジング内部(101)を区画する。ハウジング(102)は、環状形状を有し経路開口(103)を囲む。ハウジング(102)は、ハウジング上部(104)とハウジング下部(105)とを含む。さらに、整流器は、ハウジング下部(105)上のハウジング内部(101)の中に配置された回路基板(106)を備える。回路基板(106)上には、交流電圧を整流する電気整流回路(107)が配置される。この整流回路(107)は、交流電圧を整流する少なくとも1つの整流素子(108a-108d)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気他励同期機、特にトラクションモータのための電気整流器(100)であって、
前記電気整流器(100)は、環状形状を有し電気同期機のロータシャフトを受け入れるための経路開口(103)を囲む、ハウジング内部(101)を区画する金属製のハウジング(102)を有し、
前記ハウジング(102)は、ハウジング上部(104)とハウジング下部(105)とを含み、
前記電気整流器(100)は、前記ハウジング下部(105)上におけるハウジング内部(101)の中に配置された回路基板(106)を有し、
前記回路基板(106)上には、交流電圧を、好ましくは整流された電圧に、整流する電気整流回路(107)が配置され、
前記電気整流回路(107)は、少なくとも1つの電気整流素子(108a-108d)を含み、前記電気整流素子(108a-108d)は、好ましくは整流ダイオードによって形成されている
電気整流器(100)。
【請求項2】
前記ハウジング(102)は、前記ハウジング内部(101)を完全に囲む、請求項1に記載の整流器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの整流素子(108a-108d)は、ダイオードハウジング(109a-109d)と共に、半径方向に対して前記ハウジング下部(105)の内周壁(110)の内側にそれぞれ配置されている、請求項1又は2に記載の整流器。
【請求項4】
前記ハウジング上部(104)は、前記経路開口(103)を囲む、軸方向に延びる開口カラー(111)を備え、
前記少なくとも1つの整流素子(108a-108d)は、ダイオードハウジング(109a-109d)と共に、半径方向に対して前記開口カラー(111)の外側に配置されている、請求項1-3のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの整流素子(108a-108d)は、前記内周壁(110)と前記開口カラー(111)との間に形成された中間空間に配置されている、請求項3又は4に記載の整流器。
【請求項6】
前記ダイオードハウジング(109a-109d)と前記開口カラー(111)との間には、熱伝導手段(115)、特にギャップパッド(116)が配置されている、請求項4又は5に記載の整流器。
【請求項7】
前記回路基板(106)は、前記ハウジング下部(105)に水平に配置されている、請求項1-6のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項8】
前記回路基板(106)と前記ハウジング下部(105)との間に存在する中間空間(117)は、好ましくは電気絶縁材料でできている熱伝導手段(118)、特にギャップパッド(119)により、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、充填されている、請求項1-7のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項9】
前記回路基板(106)と前記ハウジング上部(104)との間に存在する中間空間は、充填手段、好ましくは注入成形コンパウンド、特に好ましくは電気絶縁材料の充填手段により、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、充填されている、請求項1-8のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項10】
少なくとも2つ、好ましくは4つの整流素子(108a-108d)を備える、請求項1-9のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項11】
前記少なくとも1つの整流素子(108a-108d)、好ましくは前記少なくとも1つの整流ダイオードは、少なくとも1つの半田付け接続によって前記回路基板(106)に実装されている、請求項1-10のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの整流素子(108a-108d)、好ましくは全ての前記整流素子(108a-108d)は、前記回路基板(106)の半径方向における内側の端部に完全に配置されている、請求項1-11のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項13】
少なくとも1つの前記整流素子(108a-108d)、好ましくは全ての整流素子(108a-108d)は、当該整流素子(108a-108d)の半径方向の長さよりも大きい軸方向の長さを有する、請求項1-12のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項14】
前記電気整流器(100)は、30kWと240kWとの間の、好ましくは100kWと150kWとの間の電力出力を処理するために装備されている、請求項1-13のいずれか1項に記載の整流器。
【請求項15】
電気他励同期機、特に車両のためのトラクションモータであって、
前記電気他励同期機は、固定子磁界を生成する、通電可能な同期機固定子を有し、
前記電気他励同期機は、ロータ磁界を生成する、前記同期機固定子に対して相対的に回転可能な、電気的に励起可能な同期機ロータを有し、
前記同期機ロータは、同期機ロータシャフトを備えており、
前記同期機ロータシャフトは、前記整流器(100)の前記ハウジング(102)によって囲まれた経路開口(103)を通して係合し、
請求項1-14のいずれか1項に記載の整流器(100)を有する、
同期機。
【請求項16】
同期機又はトラクションモータは、少なくとも3kWの、好ましくは少なくとも30kWの、特に好ましくは30kW-500kWの間の、最も好ましくは100kW-300kWの間の出力又は駆動力を有する、請求項15に記載の同期機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導エネルギー伝送を持つ電気的な他励同期機のための回転電気整流器及びそのような整流器を有する同期機に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる他励同期機は、それらのロータ内に、ロータ磁界を生成するための直流電圧を必要とする。この工程は「ロータ励磁」と呼ばれる。従来の他励同期機において、ロータ電圧は、いわゆるカーボンブラシのスリップリングの接点を用いて、直流電圧として回転するロータに伝達される。特に回転速度が高い場合において、カーボンブラシが擦り減ることにより摩耗し、その過程で好ましくない伝導性カーボンダストが発生するという欠点が証明されている。
【0003】
このようなスリップリングを用いた直流電流の伝送の代替として、誘導的な(つまりワイヤレスの)回転ロータへの電圧の伝送を実現することが知られている。他励同期機の一部として、このような構造は「回転変圧器」又は誘導トランスミッタとも呼ばれる。
【0004】
誘導エネルギー伝送の機能原理は回転変圧器に基づき、変圧器の1次コイルは回転変圧器又は同期機の固定子に配置され、2次コイルは回転ロータに配置されている。誘導エネルギー伝送に伴う交流電圧は、必ず最初に2次コイルにて生成されるので、適切な整流回路を用いて生成された交流電圧を電気的に整流する、つまり当該電圧を整流された電圧に変換する必要があり、整流回路は同様にロータ上に配置され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、他励同期機のための整流器の開発に新たな道を示すことにある。特に、このような整流器の改善された実施形態が考案され、技術的に単純な構造を特徴とし、しかしながら、高い回転速度でのロータひいては整流器の回転を可能にする、この特徴が、当業者には「高速安定性」という呼称としても知られている。
【0006】
この目的は、独立特許請求項の主題によって解決される。好ましい実施形態は、従属特許請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の基本的なアイデアは、交流電圧を整流された電圧に整流するための整流器の電気整流回路を、環状の回路基板上に配置することにある。この環状回路基板は、金属製の同様に環状である金属ハウジングの中に配置される。よって、回路基板と整流回路とを持つこのハウジングは、他励同期機の回転可能なロータシャフトに容易に設けられ得て、ロータシャフトは、他励同期機の動作中に又は据付けの固定子に対して相対的に、指定された回転軸を中心に回転する。加えて、動作中に整流回路によって生成された排熱の効果的な放熱は、回路基板と金属製ハウジングとの面接触を通して、このハウジングによってここに導入された解決策により達成され得る。最後に、このハウジングは、ロータの回転速度が高い場合でさえ、整流回路の部品、特に整流回路上に配置された整流素子を機械的に安定させるために使用され得る。よって、本発明に係る整流器は、他励同期機に使用されるときに、要求された高速安定性を持つ。
【0008】
電気的な回転変圧器のロータのための、又は他励同期機、特に車両のトラクションモータのための本発明に係る整流器は、金属製のハウジングを含み、金属製のハウジングはハウジング内部を区画する。ハウジングは、環状形状を有し電気同期機のロータシャフトを受け入れるための経路開口を囲む。ハウジングは、ハウジング上部とハウジング下部とを含む。さらに、整流器は、ハウジング下部上におけるハウジング内部の中に配置された回路基板を含む。回路基板上には、交流電圧を、好ましくは整流された電圧に、整流する電気整流回路が配置される。この整流回路は、交流電圧を整流する少なくとも1つの電気整流素子を含む。この整流素子は、整流ダイオード又はトランジスタ、特にMОSFETであり得る。
【0009】
好ましい実施形態によれば、金属製のハウジングは、ハウジング内部を完全に囲む。このようにして、整流回路は、特に整流器の外部環境から良好に電気的に遮蔽され、特に他励同期機において使用されているときには、整流回路は、電磁干渉から電気的に遮蔽される。
【0010】
特に、少なくとも1つの整流素子は、半田付け接続又は圧接によって、回路基板上にそれぞれ実装され得る。これにより、回路基板上の整流素子の容易な実装が可能になる。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの整流素子は、ダイオードハウジングと共に、半径方向に対してハウジング下部の内周壁の内側に配置される。本発明に係る整流器を使用する回転変圧器のロータ又は本発明に係る整流器を使用する他励同期機のロータが、特に高い回転速度で回転するとき、ダイオードハウジングは、内周壁によって機械的に安定化される。
【0011】
有利なさらなる発展形によれば、ハウジング上部は、経路開口を囲む、軸方向に延びる開口カラーを備える。このさらなる発展形において、少なくとも1つの整流素子は、ダイオードハウジングと共に、半径方向に対してハウジングカラーの外側に配置される。この方法は、整流素子とハウジング上部との間の良好な熱結合を実現する。これは、特に整流器の動作中、つまりハウジングが回転し、遠心力のために整流素子が開口カラーに対して半径方向の外側に押されたときに当てはまる。よって、動作中に整流素子によって生成された排熱は、ハウジング下部に加えて、ハウジング上部も介して効果的に放熱され得る。
【0012】
好ましい実施形態によれば、回路基板は、ハウジング下部に水平に配置される。これにより、排熱は、動作中に、回路基板上に設けられた整流回路の素子によって、及び/又は整流回路の上流又は下流に配置された電気/電子素子よって生成され、ハウジングを介して整流器の外部環境に放熱され得る。これにより、整流回路の損傷を招く恐れのある、回路基板及び回路基板上に配置された整流回路の望ましくない加熱や過熱さえも、防がれ得る。
【0013】
少なくとも1つの整流素子と整流器のハウジングとの間の熱結合がさらに改善されるように、有利なさらなる発展形によれば、好ましくは電気絶縁性である熱伝導手段、特にいわゆる「ギャップパッド」が、ダイオードハウジングとハウジング上部の開口カラーとの間に配置され得る。
【0014】
特に、少なくとも1つの整流素子は、内周壁と開口カラーとの間に形成された中間空間内に配置され得る。この方法は、他励同期機のロータの一部として、整流器が高い回転速度で回転したときに、整流素子を機械的に安定させる。
【0015】
上記で説明された有利なさらなる発展形と組合せられ得る、さらに有利なさらなる発展形によれば、回路基板とハウジングとの熱結合が改善されるように、回路基板とハウジング下部との間に存在する中間空間は、好ましくは導電性の熱伝導手段、特にいわゆる「ギャップパッド」により、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、充填され得る。
【0016】
別の有利なさらなる発展形によれば、回路基板とハウジング上部との間に存在する中間空間は、回路基板をハウジング内部内に機械的に固定するため、充填手段により、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、充填され得る。好ましくは、充填手段は、注入成形コンパウンドであるか、注入成形コンパウンドを含み、特に好ましくは電気絶縁材料からなる。この対策により、特に動作中のハウジングが同期機内において高い回転速度で回転するときに、ハウジング内部における回路基板の固定が改良される。
【0017】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの整流素子、好ましくは少なくとも1つの整流ダイオードは、少なくとも1つの半田付け接続によって回路基板上に実装される。ここでは、古典的な半田付け接続が使用され得るが、SMD設計の半田付け接続も代替的に又は追加的に考えられ得る。
【0018】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの整流素子は、回路基板の半径方向における内側の端部に完全に配置される。当該半径方向における内側の端部は、回路基板の半径方向における内側の端部から広がり、回路基板の半径方向の最大30%、好ましくは最大25%、特に好ましくは最大20%にわたって延び得る。好ましくは、これは全ての整流素子に適用し得る。このようにして、それぞれの整流素子に作用する遠心力を小さく抑え得る。
【0019】
有利なさらなる発展形によれば、少なくとも1つの整流素子は、当該整流素子の半径方向の長さよりも大きい軸方向の長さを有する。好ましくは、これは全ての整流素子に適用し得る。このようにしても、それぞれの整流素子に作用する遠心力を小さく抑え得る。好ましくは、軸方向の長さは、半径方向の長さの少なくとも2倍、好ましくは4倍である。
【0020】
好ましくは、電気整流器100は、少なくとも3kW、好ましくは少なくとも30kWの電力の出力を処理するように設計され得る。特に好ましくは、電気整流器100は、30kW-500kW間の、最も好ましくは100kW-300kWの間の電力の出力を処理するように設計され得る。
【0021】
よって、整流器は、ロータ電流をトラクションモータのロータにワイヤレス伝送するために、トラクションモータにも使用され得る。
【0022】
よって、本発明は、上記で説明された本発明に係る整流器を、車両のトラクションモータに使用することにも関する。
【0023】
さらに、本発明は、固定子磁界を生成する、通電可能な同期機固定子を有する他励同期機に関する。さらに、同期機は、ロータ磁界を生成する、同期機固定子に対して相対的に回転可能であり通電可能な同期機ロータを含む。同期機ロータは、同期機ロータシャフトと上記で説明された本発明に係る電気整流器とを備え、同期機ロータシャフトは、整流器のハウジングによって囲まれた経路開口を通して係合し、ハウジングは同期機ロータシャフト上に、強固に、特に確実に取り付けられる。
【0024】
本発明に係る同期機は、特に自動車両に用いられ得て、自動車両はエネルギー源としてバッテリーを備え得る。同期機は、特に自動車両を駆動するために使用され、つまり、特にトラクションモータとして形成される。好ましくは、この本発明に係るトラクションモータは、少なくとも3kWの、好ましくは少なくとも30kWの、出力又は駆動力を有する。特に好ましくは、本発明に係るトラクションモータは、30kW-500kWの間の、最も好ましくは100kW-300kWの間の出力又は駆動力を有する。本発明に係るトラクションモータにおいて、低出力の電気モータよりもはるかに大きく生成された本発明に係るトラクションモータの排熱が、回転変圧器の固定子の中に存在する変圧器コアを介して、特に効果的に排熱され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
それぞれのケースを模式的に示す。
【
図1】
図1は、ハウジング上部を省略した本発明に係る整流器の例の透視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ハウジング上部104及びハウジング下部105によって区画されたハウジング内部101(組立てられた状態において、両ハウジング部104,105は、整流器100の金属製のハウジング102を形成する)が見えるように、ハウジング上部104を省略した本発明に係る整流器100の例を示す。
図2は、
図1に不図示のハウジング上部104を別個の図として示す。
【0027】
図1及び
図2は、ハウジング102が、環状形状を有しており、経路開口103を囲むことを図示する。軸方向Aは、環状ハウジング102の長手方向中心軸Mに沿って延びる。半径方向Rは、長手方向中心軸Mから離れて軸方向Aに垂直に延びる。円周方向Uは、軸方向Aに垂直に延び、半径方向Rにも垂直に延びており、長手方向中心軸Mの周りを回転する。整流器100が他励同期機の同期機ロータに取り付けられたとき、長手方向中心軸Mは、回転するハウジング102についての回転軸Dと同一になる。この場合、整流器ロータの回転軸Dを中心に回転可能な同期機ロータシャフト(不図示)は経路開口103を通して係合し、ハウジング102は、この同期機ロータシャフト(不図示)に回転不能に設けられる。
【0028】
ハウジング上部104及びハウジング下部105も、ハウジング102全体と同様に、このような環状形状を有しており、それぞれが経路開口103を囲む。加えて、ハウジング上部104は、経路開口103を囲む、軸方向に延びる開口カラー111を備える。
【0029】
ハウジング102のハウジング下部105は、ハウジング底部112と、このハウジング底部112から軸方向に突出する内周壁110とを備え、内周壁110は経路開口103を囲む。有利には、内周壁110とハウジング底部112とは、互いに一体に形成されている。同期機のロータに設けられたハウジング102の状態では、ロータシャフト(不図示)は、経路開口103を通して係合し、よって内周壁110に対して水平に配置され得る。組立てられた状態では、ハウジング102は、環状のハウジング内部101を完全に囲んでいる。
【0030】
図1は、ハウジング下部105のハウジング内部101に、回路基板106が配置されていることを示す。ハウジング下部105に配置された回路基板106には、交流電圧を、好ましくは整流電圧に、整流する電気整流回路107が、順番に配置される。回路基板106は、ハウジング下部105に水平に配置される。このようにして、排熱は、整流回路107の素子(特に作動中に回路基板106上に設けられた前記整流素子108a-108d)によって生成されるが、ハウジング102を介して整流器100の外部環境へ放熱され、経路開口103を通して係合する同期機の同期機ロータシャフトにも放熱される。
【0031】
図1によれば、電気整流回路107は4つの整流素子108a-108dを含み、この例では、整流素子108a-108dは、対応するダイオードハウジング109a-109dを持つ整流ダイオードとしてそれぞれ形成されている。整流ダイオードの代替として、トランジスタ、特にMОSFETも使用され得る。整流素子108a-108d又は整流ダイオードは、それぞれ半田付け接続によって回路基板106に実装され得る。ここで、典型的な半田付け接続が使用され得るが、一方でSMD設計における代替的又は追加的な半田付け接続もあり得る。適切なダイオードハウジング109a-109dを用いているとき、整流素子108a-108dは、スルーホール取り付けによって回路基板106に実装され得て、いずれの場合でも半田付け接続によって回路基板106に固定される。整流回路107は、回路基板106上に配置された電気素子をさらに備え得る。これらの素子は、特にSMD素子であり得て、よって、動作中に発生した排熱を回路基板106へ、そして回路基板106を介してハウジング102へ通し得る。特に、整流素子108a-108dを持つ整流回路107の下流に配置された電気/電子要素108a-108d(具体的には特にSMD素子)は、回路基板106上に配置され得る。
【0032】
電気整流器100は、少なくとも3kW、好ましくは少なくとも30kWの電力の出力を処理するように設計され得る。特に好ましくは、電気整流器100は、30kW-500kWの間の、最も好ましくは100kW-300kWの間の電力の出力を処理するように設計され得る。
【0033】
図3は、組立てられた状態の整流器100の断面図を示す。整流素子108a-108dは、回路基板106の半径方向における内側の端部に完全に配置され得る。この半径方向における内側の端部は、回路基板106の半径方向における内側の端部から広がり、回路基板の半径方向全体の最大30%、好ましくは最大25%、特に好ましくは最大20%にわたって延び得る。このようにして、それぞれの整流素子108a-108dに作用する遠心力を小さく抑え得る。
【0034】
追加として、4つの整流素子108a-108dは、内周壁110と開口カラー111との間に形成された中間空間114内に配置される。4つの整流素子108a-108dそれぞれは、ダイオードハウジング109a-109dを備える。4つの整流素子108a-108dは、それぞれのダイオードハウジング109a-109dと共に、半径方向に対して経路開口103を囲むハウジング下部105の内周壁110の内側に配置されている。加えて、4つの整流素子108a-108dは、それぞれのダイオードハウジング109a-109dと共に、半径方向に対して開口カラー111の外側に配置されている。
【0035】
この例では、整流素子108a-108dは、半径方向Rに沿って測定されるそれぞれの半径方向の長さよりも大きい、軸方向に沿って測定される軸方向の長さをそれぞれが有する。このようにして、整流素子108a-108dに作用する遠心力も小さく抑え得る。
【0036】
整流素子108a-108dと整流器100のハウジング102との熱結合が改善されるように、高い熱伝導率を持つ材料の熱伝導手段115(例えば「ギャップパッド」116と呼ばれる)がそれぞれのダイオードハウジング109a-109dと開口カラー111との間に配置され得る。同様に、回路基板106とハウジング102との熱結合のために、回路基板106とハウジング下部105との間に存在する中間空間117は、好ましくは電気絶縁材料でできている熱伝導手段118、特に既述のギャップパッド119により、少なくとも部分的に、好ましくは完全に充填され得る。ハウジング内部101内に回路基板106を機械的に固定するために、回路基板106とハウジング上部104との間に存在する中間空間は、充填手段、好ましくは注入成形コンパウンド、特に好ましくは電気絶縁材料の充填手段により、少なくとも部分的に、好ましくは完全に充填され得る。
【国際調査報告】