(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】負荷分散性の下側層を備えた圧力容器システム
(51)【国際特許分類】
B60K 15/07 20060101AFI20231219BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60K15/07
F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536799
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021085990
(87)【国際公開番号】W WO2022129227
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020133724.8
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Petuelring 130, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ウルリヒ シュタール
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヴァルコチュ
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ロッホ
【テーマコード(参考)】
3D038
3E172
【Fターム(参考)】
3D038CB01
3D038CC18
3D038CC20
3D038CD01
3D038CD09
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BC04
3E172BD03
3E172CA24
3E172CA29
3E172DA90
3E172KA03
(57)【要約】
本明細書に開示した技術は、本発明によれば、圧力容器システムに関する。圧力容器システムは、燃料を貯えるための複数の圧力容器(100)と、少なくとも1つの負荷分散性の下側層(720)と、を備える。負荷分散性の下側層(720)は、有利には、下側のボトムプレート(700)と複数の圧力容器(100)との間に配置されている。負荷分散性の下側層(720)は、下側のボトムプレート(700)に局所的に作用する力Fであって、実質的に車両鉛直方向軸線Zの方向で下側のボトムプレート(700)に作用する力Fを複数の圧力容器(100)に分散するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の圧力容器システムであって、
燃料を貯えるための複数の圧力容器(100)と、
下側のボトムプレート(700)と前記複数の圧力容器(100)との間に配置された少なくとも1つの負荷分散性の下側層(720)と、
を備え、
前記負荷分散性の下側層(720)は、前記下側のボトムプレート(700)に局所的に作用する力(F)であって、実質的に車両鉛直方向軸線(Z)の方向で前記下側のボトムプレート(700)に作用する力(F)を前記複数の圧力容器(100)に分散するように構成されている、圧力容器システム。
【請求項2】
前記負荷分散性の下側層(720)は、前記複数の圧力容器(100)を覆っている、請求項1記載の圧力容器システム。
【請求項3】
前記負荷分散性の下側層(720)は、それぞれ約0.3m
2~約4m
2の表面積を有する2つの面を有している、請求項1または2記載の圧力容器システム。
【請求項4】
前記負荷分散性の下側層(720)は、前記圧力容器(100)の周面の少なくとも60%または少なくとも80%を覆っている、請求項1または2記載の圧力容器システム。
【請求項5】
前記圧力容器(100)と上側のアンダフロアカバー(600)との間に取付け空隙(ML)が設けられており、前記圧力容器システムは、前記取付け空隙(ML)内への前記車両鉛直方向軸線(Z)の方向における前記複数の圧力容器(100)の移動を可能にするように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項6】
車両ボディに前記複数の圧力容器を機械的に連結するための少なくとも1つのボディ結合要素(300)、および/または
前記複数の圧力容器(100)に流体接続された少なくとも1つの燃料管路システム
をさらに備え、
前記ボディ結合要素(300)および/または前記燃料管路システムは、前記取付け空隙(ML)内への前記複数の圧力容器(100)の移動を可能にするように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項7】
前記局所的に作用する力(F)の領域に直接設けられた圧力容器(100)が、近位の圧力容器であり、該近位の圧力容器(100)に直ぐ隣り合って配置された圧力容器(100)が、遠位の圧力容器であり、前記負荷分散性の下側層(720)は、前記下側のボトムプレート(700)に前記局所的に作用する力(F)を前記複数の圧力容器(100)に分散して、前記局所的に作用する力(F)が、前記近位の圧力容器と前記遠位の圧力容器とに分散され、特に、前記作用する力の少なくとも30%が、前記遠位の圧力容器(100)に伝達されるようになっている、請求項1から6までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項8】
前記圧力容器システムは、前記下側のボトムプレート(700)に作用する衝突エネルギを少なくとも部分的に前記複数の圧力容器(100)を介して前記上側のアンダフロアカバー(600)に伝達するように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項9】
衝突エネルギを上側のアンダフロアカバー(600)に均等に分散するために、前記取付け空隙(ML)に負荷分散性の上側層(620)が設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項10】
前記下側層(720)から突出している横方向ステー(710)が、少なくとも部分的に、互いに直ぐ隣り合った圧力容器(100)によって形成された中間領域内に進入している、請求項1から9までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項11】
前記圧力容器(100)と前記下側のボトムプレート(700)との間にそれぞれ1つの下側間隙(BS)が形成されており、前記負荷分散性の下側層(720)の層厚さ(D)は、少なくとも部分的に各々の前記下側間隙(BS)の間隙幅(d)の少なくとも50%または少なくとも80%である、請求項1から10までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項12】
前記圧力容器(100)は、取付け位置で前記下側層(720)に直接固定され、前記下側層(720)に接触している、請求項1から11までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項13】
前記下側のボトムプレート(700)と前記負荷分散性の下側層(720)とは、一体形に形成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項14】
前記負荷分散性の下側層(720)の層厚さ(D)および/または前記負荷分散性の上側層(620)の層厚さ(D)は、少なくとも5mmまたは少なくとも8mmまたは少なくとも10mmまたは少なくとも15mmまたは少なくとも20mmである、請求項1から13までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項15】
前記負荷分散性の下側層(720)および/または前記負荷分散性の上側層(620)は、発泡材料、好ましくは金属フォームを含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項16】
前記負荷分散性の下側層(720)および/または前記負荷分散性の上側層(620)は、オーゼティック材料および/または膨張性材料を含む、請求項1から15までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項17】
前記負荷分散性の下側層(720)および/または前記負荷分散性の上側層(620)は、サンドイッチ構造、トラス構造および/またはハニカム構造を含む、請求項1から16までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【請求項18】
前記負荷分散性の下側層(720)と前記複数の圧力容器(100)とは、一緒になって1つの圧力容器アセンブリを形成しており、前記圧力容器アセンブリ全体が、1回の取付けステップで自動車内に取付け可能である、請求項1から17までのいずれか1項記載の圧力容器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術に基づいて、圧力容器を備えた自動車が公知である。通常、自動車ごとに3つまでの大きな圧力容器が設けられている。このような圧力容器は、その寸法に基づいて、自動車内に組み込むことが比較的困難である。さらに、明らかにより多くの圧力容器が自動車内に組み込まれる車両コンセプトがあり、このような車両コンセプトでは、各々の個々の圧力容器は、実質的に管状に形成されている。
図1には、このようなシステムが示してある。複数の圧力容器10は、ボディのビーム50の間に配置されている。自動車(図示せず)の下側には、アンダーボディ金属薄板70が設けられている。
【0002】
圧力容器システムにおいて発生し得る機械的な負荷は、自動車が路上ボラードに乗り上げることによって発生する可能性がある。ボラードへのアンダーボディ金属薄板70の乗り上げによって、実質的に車両鉛直方向軸線Zの方向で局所的に作用する力Fが生じる。ボラードの、衝突によって発生した衝突エネルギによって、アンダーボディ金属薄板70は、マレットの下のティンパニの皮のようにまたはトランポリンジャンパの下のトランポリンのように変形し、かつ緊張する(破線で示したアンダーボディ金属薄板70’参照)。アンダーボディ金属薄板70の緊張とアンダーボディ金属薄板70の塑性変形および弾性変形とによって、衝突エネルギは変換される。この衝突エネルギが圧力容器10に伝達されないようにするために、アンダーボディ金属薄板70は、圧力容器10から比較的十分に離されている。
【0003】
この解決手段における欠点としては、特に、衝突エネルギを吸収するためにアンダフロア領域に、燃料貯蔵のために利用することができない比較的多くの構造空間が必要になるということがある。これによって、構造空間が等しい場合に、自動車によって達成可能な航続距離が短くなってしまう。
【0004】
本明細書に開示した技術の優先的な課題は、公知の解決手段の少なくとも1つの欠点を減じるかまたは排除すること、または代替的な解決手段を提案することである。特に、本明細書に開示した技術の優先的な課題は、比較的単純、安価、確実、容易なかつ/または構造空間が最適化された圧力容器システムを提案することである。更なる優先的な課題は、本明細書に開示した技術の有利な効果から明らかとなり得る。こういった課題は、請求項1の対象によって解決される。従属請求項には、好適な構成が記載してある。
【0005】
本明細書に開示した技術は、自動車(例えば乗用車、モータサイクル、商用車)用の圧力容器システムに関する。圧力容器システムは、燃料を貯えるための複数の圧力容器を備えている。圧力容器システムは、さらに、少なくとも1つの負荷分散性の下側層を備えている。負荷分散性の下側層は、有利には、下側のボトムプレートと複数の圧力容器との間に配置されている。負荷分散性の下側層は、下側のボトムプレートに局所的に作用する力であって、実質的に車両鉛直方向軸線の方向でボトムプレートに作用する力を複数の圧力容器に分散するように構成されていてよい。
【0006】
車両鉛直方向軸線は、自動車の使用位置で地面に対して垂直に延在する方向である。車両長手方向軸線は走行方向に延び、車両横方向軸線は横方向に延びている。全ての3つの車両軸線は、互いに直交して配置されている。
【0007】
圧力容器システムは、周囲条件下でガス状の燃料を貯える働きをする。圧力容器システムは、例えば、圧縮された天然ガス(圧縮天然ガスまたはCNGとも呼ばれる)または液化された天然ガス(液化天然ガスまたはLNGとも呼ばれる)によって、または水素によって運転される自動車に使用することができる。圧力容器システムは、燃料の化学エネルギを他のエネルギ形態に変換するように構成された少なくとも1つのエネルギ変換器、例えば燃料電池または内燃機関に流体接続されている。
【0008】
圧力容器は、例えば高圧ガスタンクであってよい。高圧ガスタンクは、周囲温度において燃料を持続的に、少なくとも350barue(=大気圧に対する過圧)または少なくとも700barueの公称運転圧(公称常用圧力またはNWPとも呼ぶ)で貯えるように形成されている。圧力容器は、真円形または楕円形の横断面を有していてよい。例えば複数の圧力容器が設けられていてよく、これらの圧力容器の長手方向軸線は、取付け位置で互いに平行に延びている。個々の圧力容器は、それぞれ4~200の値、好ましくは5~100の値、特に好ましくは6~50の値の長さ対直径比を有していてよい。長さ対直径比は、個々の圧力容器の全長(例えば流体接続要素を含まない貯蔵管の全長)を分子とし、圧力容器の最大外径を分母としたときに得られる商である。個々の圧力容器は、互いに直ぐ隣り合って配置されていてよく、例えば互いに20cm未満または15cm未満または10cm未満または5cm未満の間隔を置いて配置されていてよい。複数の圧力容器は、それぞれ一端または両端で互いに機械的に連結されていてよい。好ましくは、さらに、両端部にそれぞれ複数の圧力容器のために共通のボディ結合要素が設けられており、これらのボディ結合要素を用いて圧力容器が自動車に固定可能であることが特定されていてよい。このようなシステムは、特に、特に車両内室の下のアンダフロア領域におけるフラットな取付け室に適している。好適な構成では、複数の圧力容器が、本明細書に開示した少なくとも1つの負荷分散性の下側層および/または1つもしくは複数のボディ結合要素と一緒に圧力容器アセンブリを形成している。好ましくは、圧力容器アセンブリはハウジング内に収容されていてよい。このような圧力容器アセンブリ(場合によってはハウジングも含む)は、通常1つの部材として自動車内に取り付けられる。つまり、圧力容器アセンブリ全体は、1回の取付けステップで自動車内に取付け可能であってよい。
【0009】
下側のボトムプレートは、底側金属薄板とも呼ばれ、通常、少なくとも部分的に地面に向かって自動車の外被を形成している。下側のボトムプレートは、例えば飛沫水等の周囲影響に対して自動車を保護する。ボトムプレートは、通常、平らに形成されたプレートではなく、アンダボディアセンブリまたはアンダボディジオメトリに適合した金属薄板である。通常、下側のボトムプレートは、約1mm~約8mmの肉厚、好ましくは約1.5mm~約4mmの肉厚を有している。底側金属薄板は、好ましくは鋼または鋼合金から製造されている。
【0010】
下側のボトムプレートと負荷分散性の下側層とは、一体形にまたは一体化されて形成されていてよい。そのために、例えば、このようにして形成された部材の構成要素は、同一の材料から製造されていてよく、かつ/または互いに材料接続的に結合されていてよい。1つの構成では、圧力容器は、取付け位置で負荷分散性の下側層に直接固定され、下側層に接触していてよい。例えば、圧力容器は下側層に接着されていてよい。
【0011】
別の構成では、負荷分散性の下側層に複数の収容凹部が設けられており、各々の収容凹部内にそれぞれ1つの圧力容器が少なくとも部分的に収容されている。収容凹部は、下側層が等しい剛性を有している場合に所要構造空間を減じ、衝突に起因する変形時に少なくとも部分的にガイド要素として働く。
【0012】
有利には、圧力容器システムは、外側から、つまり、走路地面から下側のボトムプレートに作用する衝突エネルギを(衝突エネルギの大きさに応じて)、少なくとも部分的に複数の圧力容器を介して上側のアンダフロアカバーに伝達するように構成されていてよい。好ましくは、衝突エネルギの少なくとも一部が、下側のボトムプレートによってかつ/または負荷分散性の下側層によって変換され、残りは、実質的に上側のアンダフロアカバーに伝達される。つまり、有利には、衝突エネルギが下側間隙内で完全に消滅させられるわけではないことが特定されている。その代わりに、本明細書に開示した技術によれば、衝突エネルギの、複数の圧力容器に作用する部分は、複数の圧力容器から上側のアンダフロアカバーに伝達されることが特定されている。有利には、圧力容器システム、特に負荷分散性の下側層および圧力容器は、少なくとも部分的な変換のためにかつ/または衝突エネルギの少なくとも部分的な更なる伝達のために、車両鉛直方向軸線の方向で取付け空隙内への複数の圧力容器の移動を可能にするように構成されている。
【0013】
複数の圧力容器のうちの、局所的に作用する力の領域に直接設けられた圧力容器は、局所的なまたは近位の圧力容器と呼ぶことができる。負荷分散性の下側層が設けられていないと、衝突エネルギが下側間隙において全く変換されない場合(
図1参照)、局所的に作用する力が、下側のボトムプレートを介して単に近位の圧力容器にしか伝達されないことになる。この近位の圧力容器の直ぐ隣には、通常、両側に別の圧力容器が配置されており、これらの圧力容器は、直ぐ隣り合ったまたは遠位の圧力容器とも呼ばれる。好ましくは、負荷分散性の下側層は、下側のボトムプレートに局所的に作用する外力を複数の圧力容器に分散して、局所的に作用する力を近位の圧力容器と遠位の圧力容器とに分散することができる。このことは、負荷分散性の下側層の負荷分散作用である。好ましくは、負荷分散性の下側層は、衝突に起因する力の少なくとも20%または少なくとも45%または少なくとも70%、または、衝突に起因する衝突エネルギの少なくとも20%または少なくとも45%または少なくとも70%が、複数の圧力容器のうちの直ぐ隣り合った圧力容器に伝達されるように形成されている。
【0014】
上側のアンダフロアカバーは、例えば圧力容器システムのハウジングの上面によって形成することができる。代替的にまたは補足的に、上側のアンダフロアカバーは自動車ボディの1つの区分、例えば車両内室をアンダフロア領域から画定する壁であってよい。この壁は、例えば、金属薄板と、構造を補強する要素とから形成することができる。アンダフロアカバーは、完全に閉鎖されていてもよいし、部分的に閉鎖されていてもよい。例えば複数のビーム区分もアンダフロアカバーを形成することができる。
【0015】
圧力容器システムは、さらに、外部から下側のボトムプレートに作用する衝突エネルギを均等に分散するために、負荷分散性の上側層を備えていてよい。負荷分散性の上側層は、通常、取付け空隙内に設けられている。負荷分散性の上側層は、特に、少なくとも1つの圧力容器から上側層に伝達される衝突エネルギの成分を上側のアンダフロアカバーに均等に伝達するように構成されていてよい。好ましくは、負荷分散性の上側層と上側のアンダフロアカバーとは、一体形にまたは一体化されて形成されている。そのために、上側層とアンダフロアカバーとは、同じ材料から製造され、かつ/または材料接続的に互いに結合されていてよい。
【0016】
自動車への取付け位置において、好ましくは、取付け空隙は(圧力容器の上で)圧力容器と上側のアンダフロアカバーとの間に少なくとも部分的に設けられており、この取付け空隙によって、圧力容器は車両鉛直方向軸線の方向で上側のアンダフロアカバーから離間している。複数の圧力容器と下側のボトムプレートとの間には、下側間隙が形成されていてよい。この下側間隙に負荷分散性の下側層が設けられている。負荷分散性の下側層または負荷分散性の上側層は、下側間隙または取付け空隙を少なくとも部分的に、好ましくは完全に満たしていてよい。負荷分散性の下側層または負荷分散性の上側層の層厚さは、少なくとも部分的に、最小の下側間隙または最小の取付け空隙の間隙幅の少なくとも50%または少なくとも80%であってよい。
【0017】
負荷分散性の下側層、負荷分散性の上側層および/または下側のボトムプレートは、複数の圧力容器にわたって延在しているかまたは複数の圧力容器を覆っている。好ましくは、負荷分散性の下側層、負荷分散性の上側層および/または下側のボトムプレートは、複数の圧力容器の周面の少なくとも60%または少なくとも80%にわたって延在しているかまたは覆っている。
【0018】
負荷分散性の下側層、負荷分散性の上側層および/または下側のボトムプレートは、それぞれ約0.3m2~約4m2の表面積または約1m2~約3m2の表面積を有するそれぞれ2つの面を有していてよい。
【0019】
負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層の層厚さ、特に平均の層厚さまたは最小の層厚さは、少なくとも3mmまたは少なくとも8mmまたは少なくとも10mmまたは少なくとも15mmまたは少なくとも20mmであってよい。負荷分散性の下側層の層厚さは、好ましくは、下側のボトムプレートの層厚さよりも少なくとも115倍または少なくとも2倍または少なくとも2.5倍だけ厚い。1つの構成では、負荷分散性の下側層は、下側のボトムプレートと正確に同じ厚さを有している。負荷分散性の下側層は、車両鉛直方向軸線Zの方向における変形に対して剛性を有していてよく、この剛性は、下側のボトムプレートの対応する剛性よりも少なくとも10倍または少なくとも20倍だけ高い。
【0020】
負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層は、発泡材料、特に好ましくは金属フォームを含んでいてよい。このような材料は、その自重が僅かであるにもかかわらず、負荷分散のために有利な剛性を有している。金属フォームは、さらに、有利な熱伝導特性を有している。このことは、局所的な発熱事象の際、局所的に発生した熱エネルギを熱的な放圧装置に輸送するために特に有利であるといえる。そのために、少なくとも1つの熱的な放圧装置が、熱的な放圧を目的として、負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層に熱を伝導するように結合されていることが特定されていてよい。負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層は、オーゼティック材料を含んでいてよい。このような材料は、比較的大きな面積への本明細書に開示した負荷分散のために特に良好に適している。1つの好適な構成では、負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層は、膨張性材料を含んでいてよい。好ましくは、膨張性材料は、好ましくは負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層の、圧力容器に向けられた内面に設けられている材料層であってよい。好ましくは、このように構成されていると、発熱事象による影響を減じることができる。負荷分散性の下側層および/または負荷分散性の上側層は、サンドイッチ構造、トラス構造および/またはハニカム構造を含んでいてよい。このような構造によって、比較的僅かな自重で比較的良好な剛性が実現される。
【0021】
下側のボトムプレートに局所的に作用する力であって、実質的に車両鉛直方向軸線の方向でボトムプレートに作用する力は、特に、衝突によって、例えば路上ボラードとの衝突によって発生する力であり得る。実質的に車両鉛直方向軸線の方向で作用する力は、車両鉛直方向軸線の方向で作用する力、または車両鉛直方向軸線に対して無視できるほどの偏差をもって作用する力である。車両鉛直方向軸線の方向における力のほかに、さらに、他の方向(例えば車両横方向軸線または車両長手方向軸線)における力および全ての方向のモーメントが重畳して発生することがある。有利には、負荷分散性の下側層は同じく、他の方向における力および場合によって発生するモーメントを複数の圧力容器に分散するように構成されている。
【0022】
圧力容器システムは、さらに、複数の横方向ステーを有していてよい。これらの横方向ステーは、複数の圧力容器に対して平行に延在している。好ましくは、横方向ステーは、少なくとも一部の範囲でかつ少なくとも部分的に、互いに直ぐ隣り合った圧力容器によって形成された中間領域内に配置されている。横方向ステーは、耐荷性の下側層に固定されていてよい。代替的に、横方向ステーは、耐荷性の下側層と一体に形成されていてよい。代替的にまたは補足的に横方向ステーは、耐荷性の上側層に設けられていてよい。横方向ステーは、好ましくは耐荷性の下側層をさらに補強することができ、このとき、そのために追加的な構造空間は必要とならない。さらに、この追加的な補強は、同等に僅かな自重のままで得ることができる。横方向ステーは、実質的に三角形の横断面を有していてよい。横方向ステーはまた、衝突エネルギを圧力容器によって均一に分散しかつ圧力容器を変形時に整列させるのに適していてよい。
【0023】
圧力容器システムは、さらに、車両ボディに複数の圧力容器を機械的に連結するための少なくとも1つのボディ結合要素を備えていてよい。ボディ結合装置は、衝突エネルギの変換のために取付け空隙内への複数の圧力容器の移動を可能にするように構成されていてよい。少なくとも1つのボディ結合要素は、自動車のボディに圧力容器を直接的にまたは間接的に固定する働きをし、それぞれ適切な構成を有していてよい。本明細書に開示した接続片またはボディ結合要素は、自動車の運転時に圧力容器自体から発生する(静的なおよび動的な)力およびモーメントをボディに伝達するように形成されている。有利には、こういったボディ結合要素は、圧力容器の各々の端部に係合することができる。1つの構成では、ボディ結合要素は、複数の圧力容器に固定されているビームであってよい。ビームは、それ自体がボディ結合点を介して自動車のボディに結合されていてよい。例えば、ボディ結合要素は、長手方向ビームまたは横方向ビームであってよい。ボディ結合要素は、特に、このボディ結合要素が車両鉛直方向軸線の方向で移動可能であるように、ボディに結合されていてよい。そのために、ボディ結合要素は、浮動軸受を介してボディに結合されているか、または限界値以上で車両鉛直方向軸線の方向における移動を可能にする目標破断箇所を有していてよい。
【0024】
圧力容器システムは、さらに、複数の圧力容器(100)に結合された少なくとも1つの燃料管路システムを有していてよく、この燃料管路システムは、少なくとも1つの燃料消費器、例えば燃料電池スタックまたは内燃機関に流体接続されている。燃料管路システムは、衝突エネルギの変換のために、取付け空隙内への複数の圧力容器の移動を可能にするように、特に燃料管路システムが移動中に周囲への燃料流出を全くまたは僅かしか生じさせないように構成されていてよい。そのために、例えば、車両鉛直方向軸線の方向における圧力容器の移動が、フレキシブルなまたは弾性変形可能な管路区分によって補償されることが特定されていてよい。代替的にまたは補足的に、場合によって設けられている、余剰流弁とも呼ばれる管破損防止装置が、破壊された燃料管路からの燃料の流出を阻止することが特定されていてよい。
【0025】
好ましくは、燃料管路システムは、複数の圧力容器が接続されている燃料レールを備えている。燃料レールは、高圧燃料レールとも呼ぶことができる。このような燃料レールは、通常、(高圧)減圧器の上流に設けられている。基本的にこのような燃料レールは、内燃機関の高圧噴射レールに似た構成を有していてよい。好ましくは、燃料レールは、別の結合管路を有することなく圧力容器を直接的に並列接続するための複数のレール接続部を備えている。
【0026】
有利には、個々のレール接続部は、レールハウジングに直接設けられており、かつ/または相互間に全て同一の間隔を有している。燃料レールは、好ましくは、燃料レールに接続された圧力容器と実質的に同じ圧力に耐えるように形成されている。複数の圧力容器は、互いにまたは相互に中断部なしに流体接続されている。「中断部なしに」というのは、このような構成との関連では、個々の圧力容器の間に、故障のない運転時にこの流体接続を中断するかもしれない弁が設けられていないということを意味している。結果として異なる圧力容器における燃料圧は、通常、実質的に同一の値を有している。
【0027】
好適な構成では、燃料レールは特殊なハウジングから製造されているのではなく、その代わりに、燃料管路または燃料管、好ましくは金属管、特に好ましくは特殊鋼管から製造されている。レール接続部は、燃料管路の肉厚領域として形成されていてよい。燃料レールは、好ましくはそれぞれ2つのレール接続部の間に、圧力容器の位置変化を補償するための湾曲した部分領域を備えていてよい。そのために、燃料レールの、湾曲した燃料レールによって形成されるこれらの部分領域は、実質的に弾性変形することができる。燃料管路の形状または経過は、湾曲した部分領域において正確にこの目的のために構成されている。少なくとも1つの燃料レールと少なくとも1つのボディ結合要素とは、1つの構成では、それぞれ複数の圧力容器をクランプしていてよい。これによって、有利には、特に単純でスペースを節減するコストパフォーマンスのよい圧力容器システムを得ることができ、このような圧力容器システムは、簡単かつ確実に、しかも、迅速に取付け可能である。本明細書に開示した技術によれば、少なくとも1つの熱によって作動可能な放圧装置が、直接、別の管路区分なしに、本明細書に開示した少なくとも1つの燃料レールに接続されていてよい。代替的にまたは補足的に、少なくとも1つの圧力容器に、好ましくは圧力容器の各々の圧力容器に、少なくとも1つの熱によって作動可能な放圧装置が設けられていてよく、好ましくは、燃料を導く区分に関して遠位端部にまたは近位端部にまたは両端部に設けられていてよい。例えば、熱によって作動可能な放圧装置は、圧力容器の反対側の端部における接続片および/または対応する終端片に設けられていてよい。熱的な圧力逃がし装置(=TPRD)とも呼ばれる、熱によって作動可能な放圧装置は、通常、圧力容器に隣接して設けられている。(例えば火炎による)熱作用時に、この放圧装置によって、圧力容器内に貯えられた燃料が周囲に放出される。
【0028】
少なくとも1つの弁ユニットが、燃料レールに直接かつ別の管路区分なしに接続されていてよく、この弁ユニットは、少なくとも1つの常閉弁、つまり、通電のない状態で閉鎖されている弁を備えている。特に好ましくは、複数の圧力容器は、自動車の規定通りの運転時に中断なしに弁に流体接続されている。弁は、入口圧が複数の圧力容器の圧力に(実質的に)相当する弁である。弁は、特に開ループ制御可能または閉ループ制御可能な弁である。水素運転式の自動車の型式承認に関する欧州議会および理事会の規定(EG)第79/2009号を実施するための、2010年4月26日の委員会の規定(EU)第406/2010号では、このようなタンク遮断弁は第1の弁とも呼ばれる。この弁は、特に、個々の圧力容器と燃料供給設備の下流の構成要素との流体接続部を通常運転時、例えば、自動車が駐車状態にある場合および/または命令機能が故障して流体接続部を安全のために中断することが望ましい場合に中断する働きをする。圧力容器の燃料貯蔵容積とレール接続部との間には、通常、常閉弁が設けられている。
【0029】
本明細書に開示した技術は、さらに、本明細書に開示した圧力容器システムを備えた自動車に関する。自動車のアンダフロア領域は、少なくとも1つのビームによって異なるアンダフロア組込み領域に分割されていてよい。このようなビームは、側面衝突時に自動車内にもたらされる負荷を反対側に位置しているシルに伝達するために設けられていてよい。複数のまたは全てのアンダフロア組込み領域に接してまたは複数のまたは全てのアンダフロア組込み領域内に、各々のアンダフロア組込み領域に配置された圧力容器が接続されている燃料レールが設けられていてよい。1つの構成では、顧客の要望に応じて、個々のアンダフロア組込み領域に高電圧バッテリまたは圧力容器システムを備えることが特定されていてよい。
【0030】
言い換えれば、本明細書に開示した技術は、アンダフロア構成スペース用の圧力容器システムに関する。アンダフロア構成スペースは、高電圧バッテリのためにも圧力容器のためにも同様に使用可能であってよい。(例えば相応に高い縁石から降りる走行時の)車両の局所的な着地が圧力容器システムにおける損傷の原因とならないようにするための苦心がなされている。高電圧電池とは異なり、圧力容器は当然ながら高い内圧に合わせて設計されているので、比較的頑丈な外壁を有している。圧力容器は、(一般的にバッテリよりも)外部からの機械的な負荷に耐えることができ、特に機械的な負荷が面で加えられる場合に、このような負荷に耐えることができる。負荷分散性の(下側)層を(下側の)ボトムプレートと圧力容器との間に設置することによって、ボトムプレートと圧力容器との間の(下側)間隙を好ましくは完全に(または部分的に)満たすことができる。これによって、ボラード衝撃に際して、圧力容器は、ボラードによるボトムプレートの接触時に最初のミリメートル以降一緒に耐えることができ、これによって、同じ運動衝撃エネルギに対して、従来技術(
図1参照;ボトムプレートおよび空隙)に比べて侵入深さを減じる。
【0031】
圧力容器とアンダフロア構成スペースの上側の画定部(=上側のアンダフロアカバー)との間の間隙は、典型的には、いわゆる「取付け空気」(=取付け空隙)として提供することができる。しかしながら、また、この空隙は、圧力容器の懸架装置が可能にするように構成されている場合には、ボラード衝撃の場合にエネルギ消滅のために使用することもできる。間隙または上側の「取付け空気」は、同様に負荷分散性の(上側)層によって満たされてもよい。これによって、より多くのエネルギを消滅させることができ、アンダフロア構成スペースの上側の画定部への圧力容器の当接を和らげるかまたは面状に分散させることができる。さらに、圧力容器の移動は、より大きなエネルギ消滅区間を実現にすることができる。
【0032】
少数の方形の横方向ステーの代わりに、全ての圧力容器の間に、形状が合わせられた(例えば三角形の)横方向ステーを少なくとも下側に使用することができる。三角形の横方向ステーは、一方では、従来技術に比べて(例えば3~4倍だけ)必要な延在幅を減じる働きをし、同時に本明細書でも上述したのと同様に、圧力容器に対する支持を行うことができるので、反力は、侵入深さと共により強く高まり、これによって、最大侵入深さが減じられる。ボトムプレートと負荷分散性の中間層とは、1つの部分から形成されていてよい。
【0033】
負荷分散性の中間層は、例えば自転車用ヘルメットにおいて使用されるような技術的なフォームを含んでいてよい。好ましくは、衝撃に対して特に大きな抵抗を提供しかつ衝撃をより大きな面積に分散するために、フォームはオーゼティック特性を有している。代替的にまたは補足的に、金属上側層とフォームコアとを備えたサンドイッチパネルを使用することができる。特にこのようなサンドイッチパネルは、既に三角形の構造を有していてよい。
【0034】
局所的な圧力ピークを分散するために、圧力容器の下に一種の「アルミニウム製の段ボール」を使用することができる。補足的にまたは代替的に、圧力容器を中間層としての弾性接着剤によってボトムプレートに接着することができる。好ましくは三角形の横方向ビームの間で。
【0035】
以下に、本明細書に開示した技術を図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来技術による1つの構成を概略的に示す横断面図である。
【
図2】ここに開示した技術の1つの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図2に示した構成を概略的に示す別の図である。
【
図7】別の実施形態による自動車のアンダフロア領域を概略的に示す図である。
【
図8】さらに別の実施形態による自動車のアンダフロア領域を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2には、本明細書に開示した技術の第1の構成が概略的に横断面図で示してある。
図2に示した3つの圧力容器100は、それぞれライナ110と繊維強化層120と備えている。3つの圧力容器100は、等しい大きさでかつ互いに平行に自動車(図示せず)のアンダフロア領域に設けられている。圧力容器100は、その取付け位置で示してある。3つの圧力容器100の代わりに、選択的により多くの数の圧力容器100がアンダフロア領域に設けられていてよい。圧力容器100は、2つのビーム500の間に設けられている。これらのビーム500は、一緒に車両ボディの構造を形成している。これらのビーム500は、例えば自動車のボディの構成部分であってよい。このような構成では、例えば、少なくとも圧力容器100を備えており、好ましくは負荷分散性の下側層720をも備えている圧力容器アセンブリが、両ビーム500の間に形成された室内に取り付けられることが特定されていてよい。他の構成では、ビーム500も圧力容器アセンブリの構成部分であり、このような構成では、圧力容器アセンブリは、全体として車両のボディ内に取付け可能である。車両内室(図示せず)は、この構成では上側のアンダフロアカバー600によってアンダフロア領域に対して画定される。上側のアンダフロアカバー600は、例えば圧力容器アセンブリのハウジングの壁によって形成することができる。代替的に、上側のアンダフロアカバーは、自動車のボディの構成部分であってよい。上側のアンダフロアカバー600と下側のボトムプレート700とは、この構成では面状に形成されていて、圧力容器100とビーム500とを覆っている。これによって、通常、ビーム500の間に配置されていてよい、圧力容器100と、圧力容器システムの、場合によって設けられている燃料を導く構成要素とが、環境影響に対して保護されている。圧力容器100は、この構成では実質的に車両長手方向軸線Xに対して平行に向いている。また、圧力容器100とビーム50とは、車両横方向軸線の方向で取り付けられていてよい。圧力容器100は、この構成では下側のボトムプレート700と上側のアンダフロアカバー600とから等しい間隔を置いて設けられている。下側のボトムプレート700と上側のアンダフロアカバー600とは、この構成では車両ベースに対して平行に形成されている。しかしながら、このことは必ずしも必要ではない。つまり、下側のボトムプレート700と上側のアンダフロアカバー600とは、取付け状況に適合した他の形態で延びていてよい。下側のボトムプレート700には、負荷分散性の下側層720が形成されている。下側層720は、下側のボトムプレート700よりも少なくとも5倍または少なくとも10倍だけ厚い層厚さDを有している。負荷分散性の下側層720は、下側のボトムプレート700よりも、車両鉛直方向軸線Zの方向における変形に対して少なくとも10倍または少なくとも20倍だけ高い剛性を有している。
【0038】
図2には、さらに、下側間隙BSと取付け空隙MLとが示してある。下側間隙BSは、圧力容器100と下側のボトムプレート700の内側との最小間隔を示している。圧力容器100が負荷分散性の下側層720から異なる間隔を置いて離れている限り、それぞれ異なる下側間隔BSが生じる。取付け空隙MLは、圧力容器100を取り付けるために必要であるので、いずれにせよ設けられている。
【0039】
図3には、
図2の圧力容器システムが、下側のボトムプレート700が対象物、例えば路上ボラードに乗り上げた後の状態で示してある。衝突によって下側のボトムプレート700は、衝突に起因する、実質的に車両鉛直方向軸線Zの方向で局所的に作用する力に基づいて、その当初位置(破線で図示)から変形している。ここで、ボトムプレート700は、負荷分散性の下側層720と一緒に、上方に向かって車両鉛直方向軸線Zの方向で複数の圧力容器100へと運動し、これらの圧力容器100に接触する。力は、単に局所的にかつ真ん中の圧力容器100(=近位の圧力容器)に直ぐ隣り合って作用する。負荷分散性の下側層720の剛性に基づいて、下側層720は、局所的に作用する力を全ての圧力容器100、つまり、近位の真ん中の圧力容器と、近位の圧力容器の両側に配置された2つの遠位の圧力容器とに分散することができる。その結果、圧力容器の各々の圧力容器には、外部から下側のボトムプレート700に作用する局所的な力よりも僅かな力が作用する。この力の分散、好ましくは力の均等分散、ひいてはこれに伴う衝突エネルギの均等分散によって、全体としてより好適であり、より穏やかなエネルギ受止めまたはエネルギ変換を達成することができる。圧力容器100は、これらの圧力容器100が負荷分散性のボトムプレート720から伝達された力または伝達された衝突エネルギを大きな損傷なしに受け止めかつ伝達することができるように頑丈に形成されている。
図3に良好に見ることができるように、衝突によって、負荷分散性のボトムプレート720は、圧力容器100を実質的に車両鉛直方向軸線Zの方向で取付け空隙ML内へと移動させる。この移動によって、衝突に起因する力と衝突エネルギとがさらに変換される。場合により、圧力容器は、力と衝突エネルギとを大きな面で上側のアンダフロアカバー600に伝達することができる。これによって、全体として、局所的に下側のボトムプレート700に作用する力は、負荷分散性の下側層720と複数の圧力容器100とを介して、比較的大きな面に分散され、その結果、このように分散された衝突エネルギを比較的僅かな弾性変形または塑性変形によって変換することができる。好ましくは、そのために特に上側の負荷分散性の上側層620が設けられていてよい(図示せず、
図4参照)。1つの構成では、この負荷分散性の上側層620は、可能な限り良好にこの層に作用する衝突エネルギを変換するように構成されていてよい。そのために、この層は、例えば弾性を有する中間層を有していてよい。代替的にまたは補足的に、負荷分散性の上側層620は、圧力容器100から伝達された衝突エネルギをさらにより均等に分散するように構成されていてよく、これによって、衝突エネルギに起因する、上側の上側層620を上側のアンダフロアカバー600に押圧する単位面積当たりの圧力が、さらにより均等になる。
【0040】
図4には、本明細書に開示した技術の別の構成が示してある。以下では単に先行する実施形態との相違についてだけ述べ、その他の点については先行する記載を参照するものとする。
図4に示した構成では、負荷分散性の下側層720は収容凹部を有している。各々の収容凹部内には、それぞれ1つの圧力容器100が少なくとも部分的に収容されている。有利には、これによって、負荷分散性の下側層720の剛性は等しいまま、所要構造空間を減じることができる。さらに、収容凹部は、車両鉛直方向軸線Zの方向における移動時に圧力容器100を少なくとも僅かに導く。
【0041】
図5には、別の実施例が概略的に断面図で示してある。以下では単に先行する実施形態との相違または先行する実施形態に対する補足についてだけを述べる。その他の点については先行する記載を参照するものとする。燃料レール200は、
図5では実質的に直線的に形成されていて、3つのレール接続部210を備えており、これらのレール接続部210を介して3つの圧力容器100は、中断なしに互いに流体接続されている。場合によって設けられている、例えば管破裂防止装置または熱によって作動可能な放圧弁のようなその他の構成要素は図示しない。各々の圧力容器100からは、それぞれ1つの接続片130が延びている。これらの接続片130は、好ましくは合金から製造されており、少なくとも部分的に繊維強化層120(
図1参照)によって取り囲まれている。燃料レール200は、この構成では緊締手段400を用いて、好ましくは支持プレート(図示せず)を介在させて、接続片130の、各々の圧力容器100から延びる領域の側面に押圧される。接続片130の封止面は、レール接続部210によって同時に整列させられる。ボディ結合要素300、特にボディ結合要素300の内側上面は反力をもたらす。これによって、接続片130がさらにその位置に保持される。負荷分散性の下側層720からは横方向ステー710が突出している。これらの横方向ステー710は、負荷分散性の下側層720をさらに補強する働きをする。燃料レール200の側方には、この構成では弁ユニット220が燃料レール200に直接固定されている。弁ユニット220内には常閉弁が設けられており、この弁は、燃料供給システムの下流に配置された構成要素(例えば燃料電池システムの陽極サブシステムの構成要素)への燃料供給を中断する。通常、弁ユニット220に隣り合ってまたは弁ユニット220内には、圧力を平均圧力範囲(通常、5バール~50バールの値)に低減する減圧器が設けられている。ここでは、弁ユニット220から取出し管路接続部202が延びており、この取出し管路接続部202は、例えば取出し管路(図示せず)に接続されていてよい。燃料レールの他方の端部には、燃料供給管路に接続されていてよい燃料供給管路接続部204が設けられている。別の構成要素に通じる管路の代わりに、別の燃料レールまたはその他の要素がそこで直接連結されていてもよい。
【0042】
図6には、別の実施例の概略的な横断面図が示してある。以下では単に先行する実施例に対する最も重要な相違についてだけ詳しく述べる。その他の点については、他の図面に対する記載を参照するものとする。燃料レール200の代替的な延在が点線で示してある。レール接続部が軸線A-Aに位置している直線的な燃料レール200の代わりに、燃料レール200は、少なくとも部分的に軸線A-Aから離間した湾曲した部分領域を有していてよい。例えば、燃料レールは、直線的にではなく、蛇行状、メアンダ状またはジグザグ状に形成されていてよい。有利には、これによって、位置変化を弾性変形によってより良好に補償することができる。燃料レール200は、圧力容器100用のレール接続部210と、弁ユニット220用の接続部または管路接続部202,204に加えて、熱によって作動可能な放圧装置240を接続するための別の放圧接続部を備えている。熱的な事象が発生すると、放圧装置240が作動し、3つの全ての圧力容器100を放圧する。好ましくは、燃料レール200の端部に、特に管路接続部202,204に接してもしくは管路接続部202,204内にかつ/または弁ユニット220内に、自動車からの、燃料供給システムの隣り合った構成要素への流体接続部を中断する管破裂防止装置が設けられていることが特定されていてよく、さもないと、
(i)圧力容器100および/または燃料レール200が損傷し、かつ/または
(ii)放圧装置240が作動し、かつ/または
(iii)車両鉛直方向軸線Zの方向における複数の圧力容器100の移動に基づいて管路が破損する
ことが発生してしまう。
【0043】
燃料レール200は、追加的に別の弁ユニット230(破線で図示)を備えていてよく、この弁ユニット230は、燃料レール200の他方の端部に設けられていてよい。この弁ユニット230内には、例えば、燃料供給路の上流領域への燃料の逆流を阻止する逆止弁が設けられていてよい。好適な構成では、接続片130とは反対側の端部にも、熱によって作動可能な放圧装置240が、少なくともそれぞれ第3の圧力容器100または少なくともそれぞれ第2の圧力容器100に設けられている。
図6に概略的に示してあるビーム500は、個々のアンダフロア組込み室を分割している。左側のビームは、この構成では、自動車の床600から下方に向かって延在している。克服のために、この構成では、燃料供給管路接続部204が下向きに設けられている。これによって、この構成では、燃料供給管路をビーム500よりも下側に設置することができる。右側の縁部では、燃料管路はビーム500を越えて設置されていてよい。管路の具体的な配置形態は、取付け状況に対応して適合されていてよい。負荷分散性の下側層720は、この構成では、例えば
図4に示した実施形態に関連して述べた収容凹部を有している。
【0044】
図7には、自動車のアンダフロア領域が平面図で示してある。ビーム500は、アンダフロア領域をそれぞれ異なるアンダフロア組込み領域に分割している。これらのアンダフロア組込み領域は、この構成では実質的に等しい大きさである。個々のビーム500は、この構成では、車両横方向で一方のサイドシルから他方のサイドシルに延在しており、ボディ構造の剛性を高めるために大いに貢献している。この構成では、右側のアンダフロア組込み領域に圧力容器システムが設けられている。圧力容器システムは3つの圧力容器100を備えており、これらの圧力容器100は、2つのビーム500の間に設けられている。圧力容器100は、互いに平行にかつビーム500に対して平行に配置されている。圧力容器100の一方の端部は、それぞれ接続片130を介して燃料レール200に接続されている。圧力容器100の、反対側に位置している端部には、それぞれ熱によって作動可能な放圧装置240が設けられている。燃料レール200は、燃料を導く区分を形成している。燃料レール200の一方の端部には燃料管路270が接続されており、この燃料管路270は燃料供給管路として働き、自動車のタンク連結装置(図示せず)に接続されている。燃料レール200の他方の端部には、常閉弁を備えた弁ユニット220が設けられている。常閉弁は、自動車の制御装置によって閉ループ制御または開ループ制御される。弁の操作によって、圧力容器からの燃料取出しが行われる。弁ユニット220は、燃料管路270を介して減圧器290に流体接続されている。減圧器290の下流には別の燃料管路270が設けられており、この燃料管路270は自動車のエネルギ変換器(図示せず)に通じている。自動車の構成に応じて、別のアンダフロア組込み領域に、図示した圧力容器に直列にまたは並列に流体接続されている別の圧力容器および別の燃料レール200が設けられていてよい。同様に、1つまたは複数のアンダフロア組込み領域に高電圧蓄電池が設けられていることも考えられる。また、同一の車両構造を、圧力容器を有しない純粋にバッテリ駆動式の自動車に使用することも考えられる。
【0045】
図8には、自動車のアンダフロア領域が別の平面図で示してある。この構成では、4つの燃料レール200が設けられており、各々の燃料レール200が、それぞれ3つの圧力容器100を備えてアンダフロア領域に配置されている。燃料レール200は、この構成では直列に接続されており、それぞれ燃料管路270を用いて互いに接続されている。燃料管路270は、ビーム500を取り囲んで案内されている。減圧器290と燃料レール200との間には弁ユニット220が設けられており、この弁ユニット220は同様に常閉弁を備えており、アンダフロア領域に設けられた圧力容器100を、残りの燃料供給設備に対して遮断する。4つの燃料レール200のうちの1つの燃料レール200だけが、燃料供給管路として働く燃料管路270に接続されている。真ん中の2つの燃料レール200は、単に隣り合った燃料レール200に接続されている。
【0046】
「実質的に」(例えば「実質的に垂直に」)という表現は、本明細書に開示した技術の文脈では、それぞれ正確な特性または正確な値(例えば「垂直」)と、それぞれ特性/値の機能にとって重要でない偏差(例えば「垂直からの許容可能な偏差」)とを含んでいる。
【0047】
本発明の上記記載は、単に例示を目的としたものであり、本発明の限定を目的とするものではない。本発明および本発明の等価物の範囲を逸脱することなしに、本発明の枠内で様々な変更およびバリエーションが可能である。
【0048】
3つの圧力容器の代わりに、任意の数の圧力容器100が1つの圧力容器アセンブリに設けられていてよい。また、1つの燃料レール200または4つの燃料レール200の代わりに、別の数の燃料レール200が設けられていてよい。1つの構成では、1つの燃料レール200がアンダフロア領域全体にわたって延在している。また、例えば燃料ストリップ200を、ビーム500を取り囲んで案内することによって、別体の燃料管路270を燃料レール200によって形成することも有利である。
図6に関連して述べた燃料レール200は、他の図面に示した構成にも設けられていてよい。また、凹部の有無にかかわらず、負荷分散性の下側層を全ての構成に使用することができることも考えられる。本明細書に述べたボディ結合要素300および本明細書に述べた燃料管路システムのほかに、全く別の燃料管路システムを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
70,70’ アンダーボディ金属薄板
100,10 圧力容器
110 ライナ
120 繊維強化層
130 接続片
200 燃料レール
202 取出し管路接続部
204 燃料供給管路接続部
210 レール接続部
211 湾曲した部分領域
220,230 弁ユニット
240 熱によって作動可能な放圧装置
270 燃料管路
290 減圧器
300 ボディ結合要素
400 緊締手段
500,50 ビーム
600 上側のアンダフロアカバー
620 負荷分散性の上側層
700 下側のボトムプレート
710 横方向ステー
720 負荷分散性の下側層
A-A 軸線
BS 下側間隙
D 層厚さ
F 局所的に作用する力
F1,F2,F3 力
ML 取付け空隙
X 車両長手方向軸線
Y 車両横方向軸線
Z 車両鉛直方向軸線
【国際調査報告】