(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】鞍乗型車両用振動アーム式フロントサスペンション
(51)【国際特許分類】
B62K 25/24 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B62K25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536887
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 IB2021059826
(87)【国際公開番号】W WO2022130051
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020000031181
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ヴァレンティノ
(72)【発明者】
【氏名】サントゥッチ,マリオ ドナート
【テーマコード(参考)】
3D014
【Fターム(参考)】
3D014DD03
3D014DD09
3D014DE06
3D014DE13
3D014DE23
3D014DE33
(57)【要約】
鞍乗型車両(1)のための振動アーム式フロントサスペンション(10)は、鞍乗型車両(1)のステアリングハンドルバー(7)に機械的に接続された、又は接続されるように適合されたステアリングバー(11)と、第1端部(101)及び第1端部(101)とは反対側の第2端部(102)とを有する第1振動アーム(100)であって、第1振動アーム(100)の第1端部(101)がステアリングバー(11)に回転可能に接合されており、第1振動アーム(100)が鞍乗型車両(1)の関連付け可能な前輪(2)の回転ピン(103)を直接担持する、第1振動アーム(100)と、取り付けヘッド(31)と取り付けフット(32)との間に延びるショックアブソーバアセンブリ(30)と、ショックアブソーバアセンブリ(30)及び制動部材(16)を支持するように適合及び構成された支持要素(12)であって、取り付けフット(32)は支持要素(12)に回転可能に接合されている、支持要素(12)と、ステアリングバー(11)と支持要素(12)との間に動作可能に介在された第2振動アーム(200)であって、第2振動アーム(200)はステアリングバー(11)及び支持要素(12)に回転可能に接合されている、第2振動アーム(200)とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(1)のための振動アーム式フロントサスペンション(10)であって、
前記鞍乗型車両(1)のステアリングハンドルバー(7)に機械的に接続された、又は接続されるように適合されたステアリングバー(11)と、
第1端部(101)及び前記第1端部(101)とは反対側の第2端部(102)とを有する第1振動アーム(100)であって、前記第1振動アーム(100)の前記第1端部(101)が前記ステアリングバー(11)に回転可能に接合されており、前記第1振動アーム(100)が前記鞍乗型車両(1)の関連付け可能な前輪(2)の回転ピン(103)を直接担持する、第1振動アーム(100)と、
取り付けヘッド(31)と取り付けフット(32)との間に延びるショックアブソーバアセンブリ(30)と、
前記ショックアブソーバアセンブリ(30)及び制動部材(16)を支持するように適合及び構成された支持要素(12)であって、前記取り付けフット(32)は前記支持要素(12)に回転可能に接合されている、支持要素(12)と、
前記ステアリングバー(11)と前記支持要素(12)との間に動作可能に介在された第2振動アーム(200)であって、前記第2振動アーム(200)は前記ステアリングバー(11)及び前記支持要素(12)に回転可能に接合されている、第2振動アーム(200)と、を備えた振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項2】
前記第1振動アーム(100)の前記第1端部(101)は、前記ステアリングバー(11)の端部(11')で前記ステアリングバー(11)に回転可能に接合されている、請求項1に記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項3】
前記第2振動アーム(200)が、ステアリングバー(11)に例えばヒンジ式に回転可能に接合された第1端部(201)と、前記支持要素(12)に例えばヒンジ式に回転可能に接合された第2端部(202)とを有する、請求項1又は2に記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項4】
前記回転ピン(103)が第1回転軸(A-A)を定義し、
前記取り付けフット(32)は、第2回転軸(B-B)を中心として回転するように前記支持要素(12)に回転可能に接合され、
前記第2振動アーム(200)は、第3の回転軸(C-C)を中心として回転するように前記支持要素(12)に回転可能に接合され、
前記第1回転軸(A-A)、前記第2回転軸(B-B)及び前記第3回転軸(C-C)が、同一面に沿って整列している、請求項1-3のいずれかに記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項5】
前記ステアリングバー(11)、前記第1振動アーム(100)、前記支持要素(12)、及び前記第2振動アーム(200)は、四節リンクを形成するように互いに作動的に接続されている、請求項1-4のいずれかに記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項6】
前記四節リンクにおいて、前記第1振動アーム(100)及び前記第2振動アーム(200)は、前記四節リンクの互いに対向する要素の第1対を形成し、前記ステアリングバー(11)及び前記支持要素(12)は、前記四節リンクの互いに対向する要素の第2対を形成する、請求項5に記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項7】
前記四節リンクの形状を変化させるように適合及び構成された調整手段を備える、請求項4又は5に記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項8】
前記第2振動アーム(200)は、長さが変化するアームであり、
前記調整手段は、前記第2振動アーム(200)を構成する、請求項7に記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項9】
前記調整手段が、前記ステアリングバー(11)と前記第2振動アーム(200)との間の関節点の位置を変化させるように適合された手段を有する、請求項7又は8に記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項10】
前記第1振動アーム(100)、前記第2振動アーム(200)、及び前記支持要素(12)は、前記関連付け可能な前輪(2)の半径方向の占有率を超えないように配置及び形成されている、請求項1-9のいずれかに記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項11】
前記制動部材(16)は、ディスクブレーキ用のキャリパを有する、請求項1-10のいずれかに記載の振動アーム式フロントサスペンション(10)。
【請求項12】
請求項1-11のいずれかに記載の少なくとも1つの振動アーム式フロントサスペンション(10)を備える、モータサイクル(1)。
【請求項13】
請求項12に記載のモータサイクル(1)であって、前記モータサイクル(1)がスクータであることを特徴とするモータサイクル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送用車両のサスペンションの技術分野に関し、特に、鞍乗型車両用の振動アーム式フロントサスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばモータサイクルのような鞍乗型車両の分野では、車両の前車輪に、フロントサスペンションを表す振動アームサスペンションを設けることが知られている。振動アーム式フロントサスペンションは、シングルアームサスペンションとダブルアームサスペンションの両方であり得るが、一般に、ステアリングバーとも呼ばれる剛性アームから構成されている。ステアリングバーは、鞍乗型車両のステアリングハンドルバーに機械的に接続されている。
【0003】
振動アーム式フロントサスペンションでは、振動アームの第1端部は、一般に、ステアリングバーに回転可能にヒンジ結合されている。振動アームは、第1端部とは反対側の第2端部を有し、前輪の回転ピンを担持する。
【0004】
そのような振動アーム式フロントサスペンションは、典型的にはスプリングとダンパ(例えば油圧式又は空気圧式ダンパ)を含むショックアブソーバアセンブリをさらに含む。ショックアブソーバアセンブリは、取り付けヘッドと取り付けフットとの間に延在している。取り付けヘッドは、ステアリングバーに接続され、取り付けフットは、支持ブラケットによって、前輪の回転ピンに回転可能にヒンジされている。ディスクブレーキのキャリパやドラムブレーキの固定部は、一般的にサポートブラケットに固定されている。上述のタイプの振動アーム式フロントサスペンションは、例えば、欧州特許EP 2996929 B1に開示されている。
【0005】
上述した先行技術の振動アーム式フロントサスペンションは、負荷に対して最適に反応しないという欠点を有し、ブレーキ時のサスペンションのダイビングによって前輪アセンブリの瞬間回転中心を覆う軌跡によって定義される、著しいプロダイブ又はアンチダイブ効果によって特徴付けられるが、それによって前輪のタイヤの地面への接触点も複雑な軌跡を辿る。
【0006】
さらに、ショックアブソーバの本体が車輪軸上で自由に回転するブレーキキャリパの支持体と一体である公知の振動アーム式フロントサスペンションでは、フロントブレーキの作動によって生じる制動トルクがステムに曲げ応力を与え、これがシース内の滑り摩擦を決め、ダンパのシールを損なうこともあり、したがってショックアブソーバの組立体を損傷する。
【0007】
国際特許出願WO 2019207445 A1には、先行技術の振動アーム式フロントサスペンションのプロダイブ又はアンチダイブ効果を低減又は排除することを可能にし、負荷に最適に反応する能力を有する、モータサイクルのフロントサスペンションが記載されている。しかしながら、ダンパの摺動を確実にするために、このような既知のサスペンションは、伸縮ガイドを規定するジャケットでシースを覆う必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本明細書の一般的な目的は、先行技術の振動アーム式サスペンションを参照して、上記の欠点を克服するか、少なくとも低減することができる、鞍乗型車両用の振動アーム式フロントサスペンションを提供することである。
【0009】
そのような目的は、請求項1に一般的に定義されるような、振動アーム式フロントサスペンションによって達成される。前述のサスペンションの好ましい有利な実施形態は、添付の従属請求項に定義されている。
【0010】
本発明は、以下の段落で簡単に説明される添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる、その特定の実施形態の以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、振動アーム式フロントサスペンションを備える鞍乗型車両、特に、モータサイクルの例示的かつ非限定的な実施形態の側面図である。
【0012】
【
図2】
図2は、車両のフロントサスペンションがより詳細に示されている、
図1の車両の一部の側面図である。
【0013】
【
図3】
図3は、前輪及びショックアブソーバアセンブリのような、いくつかの構成要素が取り除かれた、
図2のものと同様の側面図である。
【0014】
【
図4】
図4は、
図2に示す断面平面Z-Zに沿ったフロントサスペンションの断面図である。
【0015】
【
図5】
図5は、サスペンションのプロダイブ及びアンチダイブ挙動に関する分布図である。
【0016】
【
図6】
図6は、サスペンションのダイビングが増加するにつれて、プロダイブ挙動が減少する、振動アームサスペンションの図である。
【
図7】
図7は、サスペンションのダイビングが増加するにつれて、プロダイブ挙動が減少する、振動アームサスペンションの図である。
【
図8】
図8は、サスペンションのダイビングが増加するにつれて、プロダイブ挙動が減少する、振動アームサスペンションの図である。
【0017】
【
図9】
図9は、サスペンションのダイビングが増加するにつれて、サスペンションの約半分の移動まで減少するプロダイブ挙動を有し、その後、増加するアンチダイブ挙動を有する、振動アームサスペンションの図である。
【
図10】
図10は、サスペンションのダイビングが増加するにつれて、サスペンションの約半分の移動まで減少するプロダイブ挙動を有し、その後、増加するアンチダイブ挙動を有する、振動アームサスペンションの図である。
【
図11】
図11は、サスペンションのダイビングが増加するにつれて、サスペンションの約半分の移動まで減少するプロダイブ挙動を有し、その後、増加するアンチダイブ挙動を有する、振動アームサスペンションの図である。
【0018】
【0019】
【0020】
【
図13-】
図13'は、フロントサスペンションの一部を示す断面図である。
【0021】
【
図14】
図14は、フロントサスペンションのさらなる実施形態を示す
図3のものと同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同一又は類似の要素は、添付の図において、同じ参照数字を用いて示されている。
【0023】
鞍乗型車両、特にモータサイクル1の実施形態が、添付の図に示されている。図に示す特定の例では、モータサイクル1は、それによって限定を導入することなく、スクータの形態をとり、前輪2及び後輪3、エンジン4、支持フレーム5、サドル6、支持フレーム5に回転可能に固定されたステアリングハンドルバー7からなる。
【0024】
以下、本明細書において、それによっていかなる限定も導入することなく、一般的なモータサイクル1について言及するが、これは、以下の説明が、一般に、以下の構成からなるあらゆるタイプの鞍乗り車両に適用され得ることを意味する:
- 支持フレーム5;
- 支持フレーム5と、支持フレーム5に拘束された少なくとも2つの車輪2,3;
- エンジン4、例えば、熱又は電気又はハイブリッド牽引エンジンであって、支持フレーム5に拘束され、2つの車輪2,3のうちの少なくとも1つに直接又は間接的に動作可能に接続されたエンジン。
【0025】
図に示す特定の実施例では、それによって限定を導入することなく、支持フレーム5は、自立型シャーシである。
【0026】
モータサイクル1は、ステアリングハンドルバー7と一体的に回転するように、ステアリングチューブ8(
図2)をステアリングハンドルバー7に固定して構成されている。モータサイクル1は、好ましくは、ステアリングチューブ8に直接又は間接的に固定され、後者と一体的に回転するフロントマッドガード9をさらに備えている。図に示す例では、エンジン4は、後輪3に作動的に連結されたサーマル式牽引エンジンである。
【0027】
図2に良く示されているように、モータサイクル1は、前輪2をステアリングチューブ8に固定するように適合及び構成された振動アーム式フロントサスペンション10をさらに備え、前記フロントサスペンション10がステアリングチューブ8と前輪2との間に作動的に介在するように構成されている。
図1に示す特定の実施例では、それによっていかなる限定も導入することなく、フロントサスペンション10の一部は、その機能が実質的に美的性質の必要性に結びついているカバーシェル20によって覆われている。このようなカバーシェル20は、残りの図では取り除かれている。
【0028】
振動アーム式フロントサスペンション10は、モータサイクル1のステアリングハンドルバー7に機械的に接続されるか、接続されるように適合されたステアリングバー11を含んでいる。
図2及び
図3に示す特定の非限定的な例では、ステアリングバー11は、ステアリングチューブ8と一体的に回転するように、ステアリングチューブ8に機械的に結合された上端部を有する。添付の図に示す特定の非限定的な例では、ステアリングバー11は、円形断面のバー、例えば管状のバーである。
【0029】
それによって限定を導入することなく図に示す実施形態では、ステアリングバー11は、関連付け可能な前輪2の対称平面がステアリング軸に沿って通過するように、ステアリングチューブ8に対して片持ちで配置される。
【0030】
振動アーム式フロントサスペンション10は、第1端部101と、第1端部101とは反対側の第2端部102とを有する第1振動アーム100をさらに備える。
【0031】
第1振動アーム100の第1端部101は、ステアリングバー11に、好ましくはステアリングバー11の端部11'で回転可能に接合される。第1振動アーム100は、モータサイクル1の連想可能な前輪2の回転ピン103を担持する。特に、回転ピン103は、第1振動アーム100に直接支持される。
【0032】
詳細には、回転ピン103は、前輪2のための回転軸A-Aを規定する。好ましくは、回転ピン103は、第1振動アーム100の第2端部102に規定された座部の内部に干渉によって強制的に係合し、クランプされる端部を有する。より好ましくは、回転ピン103は、第1振動アーム100に対する回転ピン103の回転を防止するように、前記座部の内側にクランプされる。
【0033】
振動アーム式フロントサスペンション10は、取り付けヘッド31と取り付けフット32との間に延びるショックアブソーバアセンブリ30をさらに備える。
【0034】
実施形態によれば、ショックアブソーバアセンブリ30は、スプリング33と、ダンパ34,35、例えば油圧式又は空気圧式のダンパとから構成される。例えば、スプリング33は、ショックアブソーバアセンブリ30の取り付けヘッド31と取り付けフット32との間に、取り付けヘッド31と取り付けフット32とを互いから遠ざける傾向のある弾性推力を発揮するために介在されるコイルスプリングである。スプリング33は、好ましくは、ダンパ34,35を取り囲む。ダンパ34,35は、好ましくは、シース34と、シース34の内部をスライドするように適合され構成された少なくとも1つの部分を有するステム35とからなる。
【0035】
ショックアブソーバアセンブリ30の取り付けヘッド31は、軸線A,B,Cに平行な軸線に沿って向けられた円筒形ヒンジで、ステアリングバー11に機械的に接続されている。 このような円筒形ヒンジは、「ユニバル(unibal)」によって作られた球形ヒンジで、又はより有利には弾性ブッシュ36によって、例えばサイレントブロックによって置換することができる。
【0036】
振動アーム式フロントサスペンション10は、さらに
- 取り付けフット32が回転可能に接合される、例えば取り付けフット32が回転可能にヒンジ結合されるショックアブソーバアセンブリ30の支持要素12と、
- ステアリングバー11と支持要素12との間に動作可能に介在し、ステアリングバー11及び支持要素12に回転可能に接合される第2振動アーム200と、を備える。
【0037】
特に有利な実施形態によれば、回転ピン103は第1回転軸A-Aを規定し、取り付けフット32は第2回転軸B-Bを中心として回転するように支持要素12に回転可能に結合され、第2振動アーム200は第3の回転軸C-Cを中心として回転するように支持要素12に回転可能に結合される(
図4)。前記第1回転軸、前記第2回転軸及び前記第3回転軸は、同一平面に沿って相互に整列している。しかしながら、前記第1回転軸、前記第2回転軸及び前記第3回転軸は、相互に整列していないこともある。
【0038】
前記第1振動アーム100と前記第2振動アーム200は、相互に平行であってもよいし、傾いていてもよい。さらに、以下でよりよく説明されるように、第1振動アーム100及び第2振動アーム200は、互いに同じ長さ又は異なる長さを有することができる。
【0039】
有利な実施形態によれば、第2振動アーム200は、ステアリングバー11に回転可能に、たとえばヒンジ結合された第1端部201と、支持要素12に回転可能に、たとえばヒンジ結合された第2端部202とを有する。支持要素12は、例えば、支持ブラケットであり、又は、支持ブラケットからなる。
【0040】
端部201及び202は、円筒形ヒンジによってサスペンションのそれぞれの部分に接続することができる。あるいは、
図13及び
図13'に示すように、端部201及び202は、それぞれのボールジョイント2003を構成する。この最後の実施形態は、円筒形ヒンジに必要かつ十分な自由度に関してより多くの自由度を導入するとしても、同様に機能する。
【0041】
好ましくは、球状ヒンジ2003に関連して、アバットメント要素2004が、例えばプラスチック又は同様の材料で作られたワッシャで構成される。このようなアバットメント要素2004は、第2振動アーム200のその軸を中心とする回転を実質的に制限する。
【0042】
構造的に、球状ヒンジ2003は、端部201、202の少なくとも一方、又は両方に取り付けられ、それらは、例えばクランプナットのようなクランプ要素2202によってクランプされたピン2001から成るアーム200の接続部に挿入される。アバットメント要素2004は、第2振動アーム200と接触し、その回転軸を中心としたその移動を制限する。
【0043】
特に有利な実施形態によれば、ステアリングバー11、第1振動アーム100、支持要素12、及び第2振動アーム200は、四節リンクを形成するように互いに動作可能に接続されている。このような四節リンクにおいて、第1振動アーム100と第2振動アーム200は、四節リンクの互いに反対側の要素の第1組を形成し、ステアリングバー11と支持要素12は、四節リンクの互いに反対側の要素の第2組を形成する。
【0044】
特に有利な実施形態によれば、ステアリングバー11、第1振動アーム100、支持要素12及び第2振動アーム200は、4棒運動系を形成する互いに動作可能に接続されており、運動学的な図において、ステアリングバー11は固定要素を形成し、支持要素12は連結棒を形成し、第1振動アーム100及び第2振動アーム200は2つのクランクを形成している。
【0045】
実施形態によれば、第1振動アーム100、第2振動アーム200及び支持要素12は、連想可能な前輪2の半径方向の占有率を超えないように配置及び形成される。この解決策は、高度に低減された審美的な影響を有するという利点を有する。
【0046】
好ましい実施形態によれば、支持要素12は、前輪2の回転ピン103に回転可能に接合されており、例えば、回転ピン103に回転可能にヒンジ結合されている。好ましくは、回転ピン103は、支持要素12に画定された座部13内に係合する第1振動アーム100から突出し、入口側に関して反対側に出るように完全に交差し、回転ピン103の突出部上に前輪2のハブ15を係合できるように、その座部13から突出する。
【0047】
有利な実施形態によれば、回転ピン103と座部13との間には、少なくとも1つの軸受14、例えば玉軸受又は針軸受が作動的に介在しており、この軸受も好ましくは座部13の内部に収容される。
【0048】
支持要素12は、特に前輪2に作用する制動部材16、例えばディスクブレーキ用のキャリパ16、又はドラムブレーキのドラム、すなわちドラムブレーキの静止部分、言い換えればブレーキジョーを担持するドラムブレーキの部分を支持するように適合及び構成される。図に示す特定の例では、支持要素12は、ディスクブレーキのキャリパ16を支持し、このディスクは参照数字160で示される。
【0049】
次に、制動時のサスペンション10のダイビング効果を調整するように、同じものの構造を変えることによって、振動アームサスペンション10の挙動を変えることがどのように可能であるかを説明する。
【0050】
図5は、車輪2のタイヤの地面への接触点の瞬間回転中心(CIR)の位置の関数としてのサスペンション10の挙動を説明する図である。示されたCIRは、支持要素12のものであり、ダイビングによって変化し、移動曲線と呼ばれる曲線を記述している。
【0051】
特に、本発明によれば、四辺形サスペンションは、一対のクランク、すなわち第1及び第2振動アームとして運動学的に概略化され得る。一対のクランクは、固定フレームを表すステアリングバーに対して移動する。前記一対のクランクは、ステアリングバーに関して反対側で、連結ロッド要素によって互いに連結されている。前記連結ロッド要素は、支持要素12によって表される。
【0052】
制動時に、車輪、ブレーキキャリパ及び支持要素12を一つのグループと同化させることができるので、CIRは支持要素12のものである。したがって、CIRは、一対のクランクに対向する端部で相互に接続されている支持要素12によって規定されるものである。
【0053】
サスペンションは、タイヤの地面上の接点とCIRとの間の接続に直交する、地面上の制動力の成分が、サスペンションを圧縮する場合、プロダイブ効果又は挙動を有する。この場合、そのような制動力の成分は、
図5のボックスQ1又はQ3に収まる。一方,タイヤの接地点とCIRとの接続点に直交する地上の制動力の成分がサスペンションを伸長させる場合,サスペンションはアンチダイブの効果又は挙動を有する。この場合、制動力のそのような成分は、
図5のボックスQ2又はQ4に入る。
【0054】
図6~
図8は、第2振動アーム200が第1振動アーム100よりも短い場合のフロントサスペンション10のダイビング度の関数としてのCIRの変動を示す斜視図である。
図6は、サスペンションが伸長した構成、
図7は、半走行構成、
図8は、最大圧縮又は最大ダイビングした構成である。このような
図6~8に示されるCIRの変動に基づいて、フロントサスペンション10は、サスペンションのダイビングに伴って減少するプロダイブ挙動を有することが推論される。
【0055】
図9~11は、第2振動アーム200が第1振動アーム100よりも長い場合のフロントサスペンション10のダイビングの関数としてのCIRの変動を示す斜視図である。
図9は、サスペンションが伸長した構成、
図10は、半移動した構成、
図11は、最大圧縮又は最大ダイビングした構成である。このような
図9~11に示されたCIRの変動に基づいて、フロントサスペンション10は、サスペンションの約半トラベルまでは、ダイビングに伴って減少するプロダイブ挙動を有する一方、これを超えると、増加するアンチダイブ挙動を有することが推論され得る。
【0056】
特に有利な実施形態によれば、第2振動アーム200は、調整可能な長さを有するアームである。例えば、第2振動アーム200は、雄ねじを有する部分(すなわち、ねじ部分)と、雄ねじを有する部分を受けるように適合された、雌ねじを有する部分(すなわち、ナット部分)とをそれぞれ有する少なくとも2つの部分からなる。2つの部分を相互に回転させて、それらを螺合させ、又は螺合を解除することによって、第2振動アーム200の長さをそれぞれ減少又は増加させることが可能である。
【0057】
例えば、
図12,13は、第2振動アーム200の有利かつ非限定的な実施形態を示し、第2振動アーム200は、第1端部201及び第2端部202の他に、両端部201,202の間に介在する中央部203からなる。前記第1端部201は、外ねじ式の第1ピン211からなり、前記第2端部202は、外ねじ式の第2ピン212からなる。したがって、前記ピン211,212は、対向するねじ方向、すなわち、右ねじと他方の左ねじ、又はその逆を有するそれぞれのねじ山を備えている。中央部203は、ピン211,212をねじ込むことによってそこに受け入れるように適合された、2つの対向する内ねじ座部221,222を備えている。したがって、前記対向する座部221,222は、それぞれの雌ねじを備えている。このようにして、端部201、202と中央部203との間の螺合の程度を変えることによって、第2振動アーム200の長さを変えることが可能であり、言い換えれば、端部201、202をそれぞれの締結具から切り離すことなく第2振動アーム200を長くしたり短くしたりすることが可能である。図示の具体例では、中央部分230は、端部201,202に対する中央部203の回転を例えば工具を使用して容易にするための、少なくとも1つの係合及び/又は把持要素、特に、係合孔230からなる。再び示された特定の実施例において、第2振動アーム200は、第2振動アーム200の長さの望ましくない変動を防止するように適合され構成された、少なくとも1つのロック要素233、実施例では2つのねじ込み防止ロックナット233からなる。
【0058】
第2振動アーム200の長さを変化させるために、例えば、振動アーム200が、先に説明した実施例のように3つの部品の代わりに、相互にねじ込み可能又はねじ込み不能な2つの部品のみを有することからなる、他の類似又は同等の解決策が明らかに可能である。
【0059】
さらなる例として、第2振動アーム200が、相互に伸縮可能にスライドする少なくとも2つの部品を有し、スライドをロックするためのロック手段が、第2振動アーム200の長さを調整するために選択的に作動可能であることを備えることが可能である。
図6~11を参照して先に説明したように、第2振動アーム200の長さが調整可能であれば、有利には、2つの振動アーム100,200によって、ステアリングバー11によって、及び支持要素12によって形成される運動系の形状を変化させ、したがってサスペンション10のダイビングを調整して、そのプロダイブ効果又はアンチダイブ効果を調整することができるようにすることができる。言い換えれば、第2振動アーム200の長さを変えることによって、2つの振動アーム100,200によって、ステアリングバー11によって、及び支持要素12によって形成される四節リンクの形状を変更することが可能である。したがって、前述の好都合な手段は、四節リンクの形状を変化させるための調整手段の可能な一例を表している。加えて又は代替的に、前述の形状変化は、第1振動アーム100の長さを調整する可能性を構成することによって得られると構成することも可能である。
【0060】
加えて又は代替的に、四節リンクの形状を変化させるように適合及び構成された調整手段のさらなる例として、ステアリングバー11に沿って第2振動アーム200とステアリングバー11との間の関節点250、例えばヒンジ点の位置を調整することができる手段を提供することが可能である。
図14を参照すると、これを得るために、例えば、前述の関節点250がステアリングバー11に対して可動要素251に、例えばその内部を摺動するように配置され、可動要素250の摺動を選択的にロックするための手段が構成されていることを規定することが可能である。例えば、可動要素は、ピストンやスライダとすることができる。可動要素251は、例えば、ステアリングバー11に組み込まれた機械的又は電気機械的なアクチュエータ252によって動かすことができる。再び
図14を参照すると、示された特定の例では、ステアリングバーは、ステアリングバー11に沿った関節点250の可能な移動を規定するスロット穴を構成し、例えば、関節点250と同軸のピンを受容する。再び
図14を参照すると、そこにサスペンションが示されており、このサスペンションは、
図12及び13を参照して上述した第2振動アーム200を有し、ステアリングバー11上の前記第2振動アームの長さと前記第2振動アームの関節点250の両方を調整することができることに留意されたい。しかしながら、このことは、2つの調整が必ずしも同時に構成されなければならないことを意味するものではない。
【0061】
関節点を変化させるために、関節点250が、ステアリングバー11上に離散的に定義された複数の関節点250、260、270の間で選択可能であることを構成することがさらに可能である。この目的のために、ステアリングバー11上に、それぞれのヒンジ又は関節軸を規定する2つ以上の円形孔を構成することが可能である。
図3の例を参照すると、例えば、3つの関節点250、260、270が構成されており、これらは、ステアリングバー11上の第2振動アーム200の第1端部201のヒンジ点を調整するために、相互に排他的に選択することができる。
【0062】
以上の説明に基づいて、したがって、上述のタイプの振動アーム式フロントサスペンション10が、先行技術を参照して上に示した目的を達成することを可能にすることを理解することが可能である。
【0063】
実際、前述の振動アーム式フロントサスペンション10は、負荷に最適に反応する改善された能力を有し、先行技術の振動アーム式フロントサスペンションのプロダイブ効果又はアンチダイブ効果を低減又は排除することができる。前述の振動アーム式サスペンションは、さらに、ショックアブソーバアセンブリ30の屈曲荷重を排除することも可能にし、したがって、サスペンション10の滑らかさを増大させる。
【0064】
本発明の原理を損なうことなく、実施形態及び構造の詳細は、非限定的な例として開示された上記の説明に対して、それによって添付の請求項に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、広く変化することができる。
【国際調査報告】