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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】リガンド及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20231219BHJP
   C07D 255/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C07D257/02
C07D255/02 CSP
A61P35/00
A61K49/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536918
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 AU2021051542
(87)【国際公開番号】W WO2022133537
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2020904791
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503293178
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ シドニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッド,レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ジェイムズ リアム
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クリストファー ジョン マコーマック
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH01
4C085KB56
(57)【要約】
本開示は、リンカー基によって89Zr 以外の放射性核種に選択的な第2のキレートリガンドに結合した89Zrに選択的な第1のキレートリガンドを含む化合物に関する。また、この化合物を含む錯体、医薬品及び組成物も開示する。本開示はまた、この化合物、錯体、医薬品及び組成物の使用及び製造方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、
89Zrに選択的な第1のキレートリガンド、及び
89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的な第2のキレートリガンドを含み、
前記第1及び第2のキレートリガンドは、リンカー基によって共有結合される、
化合物。
【請求項2】
前記第2のキレートリガンドは、90Y、153Sm、161Tb、177Lu、213Bi及び225Ac又はこれらの組み合わせに選択的である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記キレートリガンドは、89Zrに選択的であり、90Nbにも選択的である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、式(I)
【化1】

の化合物であり、
Aは、第1のキレートリガンドであり、
Bは、第2のキレートリガンドであり、
Lは、リンカー基である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記第1のキレートリガンドは、ヒドロキサム酸基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記第1のキレートリガンドは、六座キレートリガンドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記第1のキレートリガンドは、八座キレートリガンドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記第1のキレートリガンドは、
【化2】

であり、
は、
【化3】

であり、
Yは、CH、O又はSであり、
Xは、CH、O又はSであり、
各Zは、CH及びOから独立して選択され、
nは、0又は1であり、そして
mは、0又は1である、
請求項1~5、または請求項7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記第1のキレートリガンドは、
【化4】

及び
【化5】

から成る群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記第2のキレートリガンドは、ポリアミノカルボン酸基を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記第2のキレートリガンドは、
【化6】

及び
【化7】

から成る群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
式(II)
【化8】

の化合物であって、
Chは、デスフェリオキサミンBの基であり、
Chは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTAGA)、又は7-[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]ヘキサヒドロ-1H-1,4,7-トリアゾニン-1,4(5H)-ジ酢酸(NETA)から成る群から選択される基であり、そして
Lは、リンカー基である、
化合物。
【請求項13】
前記リンカー基は、共有結合である、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記リンカー基は、最大約30原子までの最短直鎖を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記リンカー基は、ヘテロ原子、アルケン、アルキン、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミド、エステル、ケトン、標的部分又は標的部分と安定な結合体を形成することができる基及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の基により任意選択的に挟み込まれた、任意選択的に置換されたC1-20アルキル基である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記リンカー基は、1つ又は複数のアミノ酸を含む、請求項14又は15に記載の化合物。
【請求項17】
前記リンカー基は、L-リジン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸又はこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記リンカー基は、標的部分又は標的部分に結合することができる置換基で置換されている、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
前記標的部分は、girentuximabである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、及び1つの医薬としての可能性のある核種又は2個の異なる医薬としての可能性のある核種を含む錯体。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、及び1つの医薬としての可能性のある核種を含む、請求項20に記載の錯体。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物又は請求項20若しくは21に記載の錯体、及び
薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物。
【請求項23】
前記第1のキレートリガンドを前記第2のキレートリガンドと結合することを含む、請
求項1~19のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
【請求項24】
腫瘍性疾患の治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項20又は21の錯体を投与して、これにより前記腫瘍性疾患を治療することを含む、前記腫瘍性疾患の治療方法。
【請求項25】
疾患又は状態の診断及び/又は予後診断を必要とする対象に、有効量の請求項20又は21の錯体を投与すること、及び前記対象に画像化法を受けさせることを含む、疾患又は状態の診断及び/又は予後診断方法。
【請求項26】
投与するステップの前に、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物又は請求項22に記載の組成物を治療又は診断上の可能性のある1つ又は2個の核種と接触させて請求項20又は21に記載の錯体を形成させるステップをさらに含む、請求項24又は25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬としての可能性のある一つの核種若しくは複数の核種用のキレートリガンド及びこの核種又は複数の核種とこのリガンドとの錯体に関する。本開示はまた、このリガンド及び錯体を含む医薬品、組成物及びキット、並びに使用及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療及び画像化において、特定の金属は、特に腫瘍性疾患に関して、ますます重要である。関心のある金属は典型的には、体内から放射性崩壊により放射線を放出して画像化法の感度を改善する造影剤として働くか又は治療目的で働くかのいずれかである。
【0003】
いくつかの画像化手法については、特定の非放射性核種も有用であってよい。画像化又は治療に用いられる放射性核種は、同位体によって放出される放射線の種類及び同位体の半減期を含む様々な特性に基づいて選択される。
【0004】
薬学的な使用については、放射性核種は典型的には、普通4箇所以上の結合部位を介したキレート化により、高い親和性で放射性核種と配位又は結合する有機リガンドとの錯体として製剤化される。この高い親和性で結合する援助があると、放射性核種及び放射性核種と多座配位のリガンドとの間の錯体の全体の安定性が高まり、投与時に錯体から放射性核種が浸出すること(錯体の解離による金属の損失)又はキレート交換(金属が異なるリガンド又は分子に移ること)を低減することができる。
【0005】
複数の結合相互作用を形成することができるにもかかわらず、キレート化できるリガンドの全てが錯体としての薬学的な使用のための与えられた放射性核種との結合に適しているわけではない。異なるリガンドは、異なる放射性核種に対して異なる親和性及び選択性を有する。したがって、所望の放射性核種と組み合わせて適切なリガンドを利用しなければならない。
【0006】
例えば、放射性核種ジルコニウム89(89Zr)の薬学的な応用に対する関心が高まっている。89Zr(ベータポジティブのエミッタ(av),0.396MeV)は、ポジトロン放出断層撮影(PET)画像化法の利用可能性を有する。89Zrは、3.3日の長い半減期のため免疫学的PET(イムノ-PET)画像化法に特に関心があり、この半減期は、抗体の循環半減期に匹敵する。イムノ-PET画像化法では、腫瘍は、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原の発現に基づいて、適切な抗体と結合体を形成した放射性核種錯体の使用により画像化される。しかしながら、イムノ-PET画像化法では、標的組織に放射性核種―抗体結合体が蓄積するのが遅い欠点を伴うことが多い。このことは、89Zr以外のPET画像化法で用いることができる放射性核種は、イムノ-PET画像化法に適した半減期を有さないものが多いことを表す。
【0007】
与えられた放射性核種との錯体形成用の1つの化合物又は組成物中に異なるキレートリガンドが存在することでの起こりうる問題は、リガンド-放射性核種相互作用が競合する可能性である。放射性核種及び異なるキレートリガンドの間の競合相互作用は、複数の錯体の形成(例えば、放射性核種及び1つのキレートリガンドの間の1つの錯体並びに放射性核種及び異なるキレートリガンドの間のさらなる錯体)が、特にさらなる錯体が中間の親和性である場合、心配されるおそれがあることを表す。このような中間の親和性がある錯体は、投与時に放射性核種が錯体から浸出しやすい。多くの場合において、このような中間の親和性がある錯体の濃度は、投与前に化学量論及び平衡時間を注意深く調節することにより適切なレベルに低減することができる。しかしながら、薬学的な使用に適した放
射性核種の半減期は、投与前の平衡時間を理想的に最小化すべきということを表す。
【0008】
薬学的、診断上の、及び/又は予後診断の可能性がある核種用のリガンドを開発する継続的な必要性がある。89Zrとキレート化することができる、好ましくは89Zr又は治療的な可能性のある1つ又は複数のさらなる核種と選択的にキレート化することができる薬学的に許容される化合物を開発する必要性もある。
【0009】
本明細書中のいかなる先行技術に対する参照も、この先行技術がいずれの司法権でも共通の一般知識の一部を形成する又はこの先行技術が当業者によって関連するものとみなされる、と理解される、及び/又は先行技術の他の一部と組み合わせられると合理的に予測されることもあるという承認又は示唆ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様において、化合物であって、
89Zrに選択的な第1のキレートリガンド(キレートリガンド1)、及び
89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的な第2のキレートリガンド((キレートリガンド2))を含み、
この第1及び第2のキレートリガンドは、リンカー基によって共有結合される、
化合物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、
式(I)
【化1】

の化合物であり、
Aは、89Zrに選択的なキレートリガンドであり、
Bは、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドであり、
Lは、リンカー基である。
【0012】
別の態様において、式(II)
【化2】

の化合物であって、
Chは、デスフェリオキサミンB(DFOB)のラジカルを含み、
Chは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)のラジカルを含み、
Lは、リンカー基である、
化合物を提供する。
【0013】
さらなる態様において、本発明の化合物及び金属を含む錯体を提供する。いくつかの実施形態において、この錯体は、2種類の異なる金属を含む。
【0014】
さらなる態様において、本発明の化合物及び医薬としての可能性のある放射性核種を含む医薬品を提供する。いくつかの実施形態において、医薬品は、化合物及び医薬としての可能性のある2種類の異なる放射性核種を含む。
【0015】
さらなる態様において、本発明の化合物、錯体又は医薬品並びに薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0016】
さらなる態様において、別々の構成要素、
本発明の化合物、錯体、医薬品又は組成物、及び
本発明の方法のいずれかの使用のための説明書
を含む、
構成要素のキットを提供する。
【0017】
本発明はさらに、このような錯体、作用薬、組成物及びキットの疾患の治療、診断及び/又は予後診断における使用に関する。したがって、本発明の化合物、錯体、治療薬又は組成物を、治療薬、診断薬又は予後診断薬など様々に用いてよい。
【0018】
本発明の化合物、錯体、医薬品又は組成物の製造方法も提供する。
【0019】
本明細書の全ての実施形態は、特に具体的に明記しない限り、任意の他の実施形態に準用されるとみなされるべきである。
【0020】
本開示の範囲は、本明細書に記載される特定の実施形態によって制限されるものではなく、特定の実施形態は、例示の目的のみを意図する。機能的に等価な製品、組成物及び方法は、本明細書に記載される場合、明らかに本発明の範囲内にある。
【0021】
本明細書を通して、特に別段の定めがない限り又は文脈上別段の解釈が必要でない限り、問題の単一のステップ、組成物、問題の一群のステップ又は一群の組成物は、問題のこれらのステップ、組成物、問題の一群のステップ又は一群の組成物の1つ及び複数(すなわち1つ又は複数)を包含するとみなすものとする。
【0022】
定義
本明細書において別段の定めがない限り、以下の用語は、用語が従う一般的な意味を有するものと理解される。
【0023】
用語「C1~6アルキル」とは、1~6個の炭素原子を有する任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指す。例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、イソプロピル(i-Pr)、ブチル(Bu)、イソブチル(i-Bu)、sec-ブチル(s-Bu)、tert-ブチル(t-Bu)、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル及び同種のものが挙げられる。文脈上別段の解釈が必要でない限り、用語「C1~6アルキル」はまた、アルキル基が2個の位置により結合したような、すなわち2価の、含有する水素原子が1個少ないアルキル基を包含する。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソーブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルを含む「C1~4アルキル基」及び「C1~3アルキル基」が好ましく、メチルは特に好ましい。
【0024】
用語「C2~6アルケニル」とは、該当する場合E又はZ立体化学のいずれかの少なくとも1つの二重結合及び2~6個の炭素原子を有する任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指す。例としては、ビニル、1-プロペニル、1-及び2-ブテニル並びに2-メチル-2-プロペニルが挙げられる。文脈上別段の解釈が必要でない限り、用語「C2~6アルケニル」はまた、アルケニル基が2個の位置により結合したような、すなわち2価の、含有する水素原子が1個少ないアルケニル基を含有する。エテニル、プロペニル及びブテニルを含む「C2~4アルケニル」及び「C2~3アルケニル」が好ましく、エテニルが特に好ましい。
【0025】
用語「C2~6アルキニル」とは、少なくとも1つの三重結合及び2~6個の炭素原子を有する任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を指す。例としては、エチニル、1-プロピニル、1-及び2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル及び5-ヘキシニル及び同種のものが挙げられる。文脈上特に明記されていない限り、用語「C2~6アルキニル」はまた、アルキニル基が2個の位置により結合したような、すなわち2価の、含有する水素原子が1個少ないアルキニル基を含有する。C2~3アルキニルが好ましい。
【0026】
用語「C3~10シクロアルキル」とは、3~10個の炭素原子を有する非芳香族環状基を指し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルを含む。シクロアルキル基は、シクロヘキシルのように飽和しても、又はシクロヘキセニルのように不飽和でもよいと理解される。シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのC3~6シクロアルキルが好ましい。シクロアルキル基はまた、多環式炭素環も含み、縮合、架橋及びスピロ環系も含む。
【0027】
用語「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」とは、基-OHを指す。
【0028】
用語「オキソ」とは、基=Oを指す。
【0029】
用語「C1~6アルコキシ」とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、isoproxy、ブトキシ、tert-ブトキシ及びペントキシなどの、1~6個の炭素原子を含有し、O結合を介して共有結合した上述のアルキル基を指す。メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシを含む「C1~4アルコキシ」及び「C1~3アルコキシ」が好ましく、メトキシが特に好ましい。
【0030】
用語「ハロC1~6アルキル」及び「C1~6アルキルハロ」とは、1つ又は複数のハロゲンで置換されたC1~6アルキルを指す。例えば、-CHCF、及び-CFなどの、ハロC1~3アルキルが好ましい。
【0031】
用語「ハロC1~6アルコキシ基」及び「C1~6アルコキシハロ」とは、1つ又は複数のハロゲンで置換されたC1~6アルコキシを指す。例えば、-OCFなどの、C1~3アルコキシハロが好ましい。
【0032】
用語「カルボン酸」又は「カルボキシル」とは、基-COO-又は-COOHを指す。
【0033】
用語「エステル」とは、カルボキシル基の水素を、例えば、C1~6アルキル基(「カルボキシルC1~6アルキル」又は「アルキルエステル」)、アリール又はアラルキル基(「アリールエステル」又は「アラルキルエステル」)などで置換したカルボキシル基を指す。例えば、メチルエステル(COMe)、エチルエステル(COEt)及びプロ
ピルエステル(COPr)などのCO1~3アルキル基が好ましく、これらの逆エステル(例えば-OC(O)Me、-OC(O)Et及び-OC(O)Prなど)も含まれる。
【0034】
用語「シアノ」及び「ニトリル」とは、基-CNを指す。
【0035】
用語「ニトロ」とは、基-NOを指す。
【0036】
用語「アミノ」とは、基-NHを指す。
【0037】
用語「置換アミノ」とは、少なくとも1つの水素を、例えばC1~6アルキル基(「C1~6アルキルアミノ」)、アリール又はアラルキル基(「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」)などで置換したアミノ基を指す。置換アミノ基には、「一置換アミノ」(又は「第2級アミノ」)基が含まれ、この基は、ただ一つの水素を、例えばC1~6アルキル基、アリール又はアラルキル基などで置換したアミノ基を指す。好ましい第2級アミノ基としては、例えばメチルアミノ(NHMe)、エチルアミノ(NHEt)及びプロピルアミノ(NHPr)などのC1~3アルキルアミノ基が含まれる。置換アミノ基には、「二置換アミノ」(又は「第3級アミノ」)基も含まれ、この基は、2つの水素を、例えば同一でも異なってもよい、C1~6アルキル基(ジアルキルアミノ)、アリール及びアルキル基(「アリール(アルキル)アミノ」)などで置換したアミノ基を指す。好ましい第3級アミノ基としては、例えばジメチルアミノ(NMe)、ジエチルアミノ(NEt)、ジプロピルアミノ(NPr)及びこれらの変形物(例えばN(Me)(Et)など)などの、ジ(C1~3アルキル)アミノ基が挙げられる。
【0038】
用語「アルデヒド」とは、基-C(=O)Hを指す。
【0039】
用語「アシル」及び「アセチル」とは、基-C(O)CHを指す。
【0040】
用語「ケトン」とは、-C(O)-で表すことができるカルボニル基を指す。
【0041】
用語「置換ケトン」とは、例えばC1~6アルキル基(「C1~6アルキルアシル」又は「アルキルケトン」又は「ケトアルキル」)、アリール基(「アリールケトン」)、アラルキル基(「アラルキルケトン」)などの、少なくとも1つの追加の基に共有結合したケトン基を指す。C1~3アルキルアシル基が好ましい。
【0042】
用語「アミド(amido)」又は「アミド(amide)」とは、基-C(O)NHを指す。
【0043】
用語「置換アミド(substituted amido)」又は「置換アミド(substituted amide)」とは、水素を、例えばC1~6アルキル基(「C1~6アルキルアミド(C1-6alkylamido)」又は「C1~6アルキルアミド(C1-6alkylamide)」)、アリール(「アリールアミド」)、アラルキル基(「アラルキルアミド」)などで置換したアミド基を指す。例えばメチルアミド(-C(O)NHMe)、エチルアミド(-C(O)NHEt)及びプロピルアミド(-C(O)NHPr)などの、C1~3アルキルアミド基が好ましく、これらの逆アミド(例えば-NHMeC(O)-、-NHEtC(O)-及び-NHPrC(O)-)も含まれる。
【0044】
用語「二置換アミド(disubstituted amido)」又は「二置換アミド(disubstituted amide)」とは、アミノ基の2個の水素を、例えばC1~6アルキル基(「ジ(C1~6アルキル)アミド」(di(C1-6alkyl
)amido)又は「ジ(C1~6アルキル)アミド」(di(C1-6alkyl)amide))、アラルキル及びアルキル基(「アルキル(アラルキル)アミド」)などで置換したアミド基を指す。例えばジメチルアミド(-C(O)NMe),ジエチルアミド(-C(O)NEt)及びジプロピルアミド((-C(O)NPr)及びこれらの変形物(例えば-C(O)N(Me)Etなどの)、ジ(C1~3アルキル)アミド基が好ましく、これらの逆アミドも含まれる。
【0045】
用語「チオール」とは、基-SHを指す。
【0046】
用語「C1~6アルキルチオ」とは、チオール基の水素をC1~6アルキル基で置換したチオール基を指す。例えばチオメチル(thiolmethyl)、チオエチル(thiolethyl)及びthiopropylなどの、C1~3アルキルチオ基が好ましい。
【0047】
用語「チオキソ」とは、基=Sを指す。
【0048】
用語「スルフィニル」とは、基-S(=O)Hを指す。
【0049】
用語「置換スルフィニル」又は「スルホキシド」とは、スルフィニル基の水素を、例えばC1~6アルキル基(「C1~6アルキルスルフィニル」又は「C1~6アルキルスルホキシド」)、アリール(「アリールスルフィニル」)、アラルキル(「アラルキルスルフィニル」)などで置換したスルフィニル基を指す。例えば-SOメチル、-SOエチル及び-SOプロピルなどの、C1~3アルキルスルフィニル基が好ましい。
【0050】
用語「スルホニル」とは、基-SOHを指す。
【0051】
用語「置換スルホニル」とは、スルホニル基の水素を、例えばC1~6アルキル基(「スルホニルC1~6アルキル」)、アリール(「アリールスルホニル基」)、アラルキル(「アラルキルスルホニル」)などで置換したスルホニル基を指す。例えば-SOMe、-SOEt及び-SOPrなどのスルホニルC1~3アルキル基が好ましい。
【0052】
用語「スルホニルアミド」又は「スルホンアミド」とは、基-SONHを指す。
【0053】
用語「置換スルホンアミド(substituted sulfonamido)」又は「置換スルホンアミド(substituted sulphonamide)」とは、水素を、例えばC1~6アルキル基(「スルホニルアミドC1~6アルキル基」)、アリール(「アリールスルホンアミド」)、アラルキル(「アラルキルスルホンアミド」)などで置換したスルホンアミド基を指す。例えばSONHMe、-SONHEt及び-SONHPrなどのスルホンアミドC1~3アルキル基が好ましく、これらの逆スルホンアミド(例えば-NHSOMe、-NHSOEt及び-NHSOPr)も含まれる。
【0054】
用語「二置換スルホンアミド(disubstituted sufonamido)」又は「二置換スルホンアミド(disubstituted sulphonamide)」とは、スルホニルアミド基の2個の水素を、例えば同一でも異なってもよい、C1~-6アルキル基(「スルホニルアミドジ(C1~6アルキル)」)、アラルキル及びアルキル基(「スルホンアミド(アラルキル)アルキル」)などで置換したスルホニルアミド基を指す。例えば-SONMe、-SONEt及び-SONPr並びにこれらの変形物(例えば-SON(Me)Etなど)などのスルホニルアミドジ(C1~3アルキル)基が好ましく、これらの逆スルホンアミド(例えば-N(Me)SOMe
など)も含まれる。
【0055】
用語「硫酸」とは、基OS(O)OHを指し、基の水素を、例えばC1~6アルキル基(「アルキル硫酸」(alkylsulfates))、アリール(「アリール硫酸」(arylsulfate))、アラルキル(「アラルキル硫酸」(aralkylsulfate))などで置換した基を含む。例えばOS(O)OMe、OS(O)OEt及びOS(O)OPrなどの、C1~3硫酸が好ましい。
【0056】
用語「スルホン酸」とは、基SOHを指し、基の水素を、例えばC1~6アルキル基(「アルキルスルホン酸」(alkylsulfonate))、アリール(「アリールスルホン酸」(arylsulfonate))、アラルキル(「アラルキルスルホン酸」(aralkylsulfonate))などで置換した基を含む。例えばSOMe、SOEt及びSOPrなどのC1~3スルホン酸が好ましい。
【0057】
用語「アリール」とは、炭素環式(複素環でない)芳香環又は単環式、二環式、若しくは三環式環系を指す。芳香環又は環系は一般的に、6~10個の炭素原子から成る。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル及びテトラヒドロナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。フェニルなどの6員環アリールが好ましい。用語「アラルキル」とは、ベンジルなどのC1~6アルキルアリールを指す。
【0058】
用語「アルコキシアリール」とは、ベンジルオキシなどのC1~6アルキルオキシアリールを指す。
【0059】
用語「ヘテロシクリル」とは、3~10個の環原子を有する(別段の定めがない限り)複素環化合物の1つの環原子から1つの水素原子を取り除くことにより得られる部分を指し、環原子のうち1、2、3又は4個は環のヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、O、S及びNから独立して選択される。ヘテロシクリル基は、環系の複数の環の少なくとも1つが少なくとも1つのヘテロ原子を含むならば、単環式並びに、縮合、架橋及びスピロ環系などの、多環式(二環式など)環系を含む。
【0060】
この文脈において、接頭語3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-及び10-員環とは、炭素原子であろうとヘテロ原子であろうと、環原子の数、又は環原子の範囲を示す。例えば、本明細書において用いる場合、用語「3~10員環ヘテロシクリル」は、3、4、5、6、7、8、9又は10個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。ヘテロシクリル基の例には、5~6員環単環式ヘテロシクリル及び9~10員環縮合二環式ヘテロシクリルが含まれる。
【0061】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、アジリジン(3員環)、アゼチジン(4員環)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)、2H-ピロール若しくは3H-ピロール(イソピロール(isopyrrole)、イソアゾール(isoazole))又はピロリジノン(5員環)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン(6員環)、及びアゼピン(7員環)などの1つの窒素原子を含有するもの、イミダゾリン、ピラゾリジン(ジアゾリジン(diazolidine))、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(5員環)、ピペラジン(6員環)などの2個の窒素原子を含有するもの、オキシラン(3員環)、オキセタン(4員環)、オキソラン(テトラヒドロフラン)、オキソール(ジヒドロフラン)(5員環)、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジヒドロピラン、ピラン(6員環)、オキセピン(7員環)などの1つの酸素原子を含有するもの、ジオキソラン(5員環)、ジオキサン(6員環)、及びジオキセパン(7員環)などの2個の酸素原子を含有するもの、トリオキサン(6員環)などの3個の酸素原子を含有するもの、チイラン(3員
環)、チエタン(4員環)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(5員環)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(6員環)、チエパン(7員環)などの1つの硫黄原子を含有するもの、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール(5員環)、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジン、オキサジン(6員環)などの1つの窒素原子及び1つの酸素原子を含有するもの、チアゾリン、チアゾリジン(5員環)、チオモルホリン(6員環)などの1つの窒素及び1つの硫黄原子を含有するもの、オキサジアジン(6員環)などの2個の窒素及び1つの酸素原子を含有するもの、オキサチオール(5員環)及びオキサチアン(チオキサン)(6員環)などの1つの酸素及び1つの硫黄原子を含有するもの、並びにオキサチアジン(6員環)などの1つの窒素、1つの酸素、及び1つの硫黄原子を含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
ヘテロシクリルは、芳香族ヘテロシクリル及び非芳香族ヘテロシクリルを包含する。このような基は、置換されても非置換でもよい。
【0063】
用語「芳香族ヘテロシクリル」は、用語「複素環式芳香族(heteroaromatic)」又は用語「ヘテロアリール」若しくは「ヘタリール」と互換的に用いられてよい。芳香族ヘテロシクリル基中のヘテロ原子を、N、S及びOから独立して選択してよい。芳香族ヘテロシクリル基は、1、2、3、4又はそれ以上の環ヘテロ原子を含んでよい。縮合芳香族ヘテロシクリル基の場合、複数の環のうち1つのみがヘテロ原子を含んでよく、全ての環が芳香族である必要はない。
【0064】
「ヘテロアリール」は本明細書において用いられる場合、芳香族性を有する複素環基を示し、単環式芳香環系及び1つ又は複数の芳香環を含有する多環式(例えば二環式)環系を包含する。用語芳香族ヘテロシクリルはまた、疑芳香族ヘテロシクリルも包含する。用語「疑芳香族」とは、厳密には芳香族ではないが、電子の非局在化により安定化され、芳香環と同様にふるまう環系を指す。用語「芳香族ヘテロシクリル」はしたがって、縮合環の全てが芳香環である多環式環系及び少なくとも1つの環が芳香族である条件で、1つ又は複数の環が非芳香族である環系も包含する。互いに縮合した芳香環及び非芳香環の両方を含有する多環式の環系においては、この基を芳香環により又は非芳香環により別の部分に結合することができる。
【0065】
ヘテロアリール基の例は、5~10員環を含有する単環式及び二環式基である。ヘテロアリール基は例えば、5員環若しくは6員環の単環又は縮合した5員環及び6員環若しくは縮合した2個の6員環若しくは縮合した2個の5員環から形成される二環式構造であってよい。各環は、典型的には窒素、硫黄及び酸素から選択される最大約4個のヘテロ原子を含有してよい。ヘテロアリール環は、最大4個のヘテロ原子、より一般的には最大3個のヘテロ原子、より一般的には最大2個、例えば、ただ1つのヘテロ原子を含有する。1つの実施形態において、ヘテロアリール環は、少なくとも1つの環窒素原子を含有する。ヘテロアリール環の窒素原子は、イミダゾール若しくはピリジンの場合のように、塩基性であってよく、又はインドール若しくはピロール窒素の場合のように本質的に非塩基性であってよい。概して、環のいずれのアミノ基置換基を含む、ヘテロアリール基に存在する塩基性窒素原子の数は、5未満になる。
【0066】
芳香族ヘテロシクリル基は、5員環又は6員環の単環式芳香環系であってよい。
【0067】
5員環の単環式ヘテロアリール基の例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル(1,2,3及び1,2,4オキサジアゾリル並びにフラザニル、すなわち1,2,5-オキサジアゾリル)、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル(1,2,3、1,2,4及び1
,3,4トリアゾリルを含む)、オキサトリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル(1,2,3及び1,3,4チアジアゾリルを含む)、及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
6員環の単環式ヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピラニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、チアジアジニル及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。窒素を含有する6員環の芳香族ヘテロシクリルの例としては、ピリジル(1個の窒素)、ピラジニル、ピリミジニル及びピリダジニル(2個の窒素)が挙げられる。
【0069】
芳香族ヘテロシクリル基はまた、縮合環系(プリン、プテリジニル、ナフチリジニル、1Hチエノ[2,3-c]ピラゾリル、チエノ[2,3-b]フリル及び同種のもの)又は結合した環系(オリゴチオフェン、ポリピロール及び同種のものなど)などの二環式又は多環式複素環式芳香族環系であってよい。縮合環系はまた、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル及び同種のものなどの、炭素環式芳香環に縮合した5員環又は6員環の芳香族ヘテロシクリルを含んでよく、例えばフェニル環に縮合した窒素を含有する5員環芳香族ヘテロシクリル、フェニル環に縮合した1個又は2個の窒素を含有する5員環芳香族ヘテロシクリルなどである。
【0070】
二環式ヘテロアリール基は、例えばa)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したベンゼン環、b)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したピリジン環、c)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したピリミジン環、d)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したピロール環、e)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したピラゾール環、f)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したイミダゾール環、g)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したオキサゾール環、h)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したイソオキサゾール環、i)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したチアゾール環、j)1又は2個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したイソチアゾール環、k)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したチオフェン環、I)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したフラン環、m)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したシクロヘキシル環、及びn)1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する5-又は6-員環と縮合したシクロペンチル環から選択される基であってよい。
【0071】
別の5員環に縮合した5員環を含有する二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、イミダゾチアゾール(例えばイミダゾ[2,1-b]チアゾール)及びイミダゾイミダゾール(例えばイミダゾ[1,2-a]イミダゾール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
5員環に縮合した6員環を含有する二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、プリン(例えばアデニン、グアニン)、インダゾール、ピラゾロピリミジン(例えばピラゾロ[1,5-a]ピリミジン)、ベンゾジオキソール及びピラゾロピリジン(例えばピラゾロ[1,5-a]ピリジン)基が挙げられるが、これらに限定されない。5員環に縮合した6員環のさらなる例は、ピロロ[2,3-b]ピリジン基などのピロロピリジン基である。
【0073】
縮合した2個の6員環を含有する二環式ヘテロアリール基の特定の例としては、キノリン、イソキノリン、クロマン、チオクロマン、クロメン、イソクロメン、イソクロマン、ベンゾジオキサン、キノリジン、ベンゾオキサジン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン及びプテリジン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
芳香環及び非芳香環を含有するヘテロアリール基の例としては、テトラヒドロナフタレン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロベンゾフラン、2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン、ベンゾ[1,3]ジオキソール、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾフラン、インドリン(indoiine)、イソインドリン及びインダン基が挙げられる。
【0075】
したがって、炭素環式芳香環に縮合した芳香族ヘテロシクリルの例としては、ベンゾチオフェニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、イソベンゾオキサゾリル(isobenzoxazoyl)、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、ベンゾトリアジニル、フタラジニル、カルボリニル及び同種のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
用語「非芳香族ヘテロシクリル」は、N、S及びOから成る群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する任意選択的に置換された飽和及び不飽和の環を包含する。この環は、1、2又は3個のヘテロ原子を含有してよい。この環は、単環又は多環式環系の一部であってよい。多環式環系には、縮合環及びスピロ環が含まれる。少なくとも1つの環が1つ又は複数のヘテロ原子を含有することを条件として、非芳香族ヘテロシクリル多環式環系の全ての環がヘテロ原子を含有する必要があるわけではない。
【0077】
非芳香族ヘテロシクリルは、3~7員環の単環であってよい。
【0078】
5-員環の非芳香族ヘテロシクリル環の例としては、2H-ピロリル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ピロリジニル、1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピラゾリニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、ピラゾリジニル、2-ピラゾリジニル、3-ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、3-ジオキソラニル、チアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、2-イミダゾリニル及び同種のものが挙げられる。
【0079】
6員環の非芳香族ヘテロシクリル環の例としては、ピペリジニル、ピペリジノニル、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、2Hピラニル、4Hピラニル、チアニル、チアニルオキシド(thianyl oxide)、チアニルジオキシド(thianyl dioxide)、ピペラジニル、diozanyl、1,4-ジオキシニル、1,4-ジチアニル、1,3,5-triozalanyl、1,3,5-トリチアニル、1,4-モルホリニル、チオモルホリニル、1,4-オキサチアニル、トリアジニル、1,4-チアジニル及び同種のものが挙げられる。
【0080】
7員環の非芳香族ヘテロシクリル環の例としては、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル及び同種のものが挙げられる。
【0081】
非芳香族ヘテロシクリル環はまた、結合した環系(例えばウリジニル及び同種のもの)又は縮合環系などの、二環式ヘテロシクリル環であってよい。縮合環系には、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル及び同種のものなど
の炭素環式芳香環に縮合した5-員環、6員環又は7員環の非芳香族ヘテロシクリルが含まれる。炭素環式芳香環に縮合した5-員環、6員環又は7員環の非芳香族ヘテロシクリルの例としては、インドリニル、ベンゾジアゼピニル、ベンザゼピニル、ジヒドロベンゾフラニル及び同種のもの.が挙げられる。
【0082】
用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0083】
別段の定めがない限り、本明細書において用いられる用語「任意選択的に置換された」又は「任意の置換基」とは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6アルコキシアリール、ハロ、C1-6アルキルハロ(CFなど),C1-6アルコキシハロ(OCFなど)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、アシル、ケトン、置換ケトン、アミド、アミノアシル、置換アミド、二置換アミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、硫酸、スルホン酸、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルホニルアミド、置換スルホンアミド、二置換スルホンアミド、アリール、アリールC1~6アルキル、ヘテロシクリル及びヘテロアリールから成る群から選択される1個、2個、3個、4個又はそれ以上の基で、好ましくは1個、2個又は3個の、より好ましくは1個又は2個の基でさらに置換されてもされなくてよい基を指し、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリル並びにこれらを含有する基は、任意選択的にさらに置換されてよい。Nを含有する複素環の場合における任意の置換基はまた、C1-6アルキルすなわちN-C1-3アルキル、より好ましくはメチル特にN-メチルを含んでよいが、これらに限定されない。
【0084】
任意選択的に置換された「C1-6アルキル」、「C2-6アルケニル」及び「C2-6アルキニル」について、任意の置換基又は複数の置換基は好ましくは、ハロ、アリール、ヘテロシクリル、C3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシル、オキソ、アリールオキシ、ハロC1-6アルキル、ハロC1-6アルコキシ及びカルボキシルから選択される。これらの任意の置換基の各々は、上述した任意の置換基のいずれかで任意選択的に置換されてよく、ニトロ、アミノ、置換アミノ、シアノ、ヘテロシクリル(非芳香族ヘテロシクリル及びヘテロアリールを含む)、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシル、ハロC1-6アルキル、ハロC1-6アルコキシ、ハロ、ヒドロキシル及びカルボキシルが好ましい。
【0085】
ハロアルキル及びアルキルアリールなど、置換基が混合の命名法の場合、基の順番に方向の意図はないと理解されるべきであり、したがって結合点は、混合基に含まれる部分のいずれに対するものであってよい。例えば、用語「アルキルアリール」及び「アリールアルキル」は、同一の基を指すよう意図され、結合点は、アルキル又はアリール部分(又は二価の化学種の場合は両方)を介してよい。
【0086】
「キレートリガンド」は、金属原子と結合して多座配位錯体を形成するのに適した官能基又は官能基の集団を表す。キレートリガンドは、金属原子と2、3、4又はそれ以上の配位結合を形成してよく、したがって2、3、4又はそれ以上のリガンド部分を含んでよい。キレートリガンド中の官能基の集団は、1つの集団内に異なる官能基を含んでよい(例えば、カルボン酸及びヒドロキシル官能基が1つのキレートリガンド中に存在してよい)。
【0087】
【化3】

のようなヒドロキサム酸部分の描写は、正及び逆(又はレトロ)ヒドロキサム酸を両方含むと理解される。したがって、構造
【化4】

は、R
【化5】

であり、
【化6】

及び
【化7】

を両方含むと理解される。
【0088】
「核種」は、金属の同位体を表し、放射性崩壊や何かを受けてよい。
【0089】
「放射性核種」は、放射性崩壊を受ける金属の同位体を表す。
【0090】
本明細書において用いられる場合、「医薬としての可能性」には、治療的な、診断上の、及び/又は予後診断の可能性が含まれる。本明細書において言及される医薬としての可能性のある核種は、薬学的な使用のために、及び化合物と安定な錯体を形成するための任
意の適した酸化状態であってよい。
【0091】
本明細書において用いられる場合、文脈上別段の解釈が必要でない限り、用語「含む(comprise)」並びに、「含んでいる(comprising)」「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」などのこの用語の変形は、追加の添加物、成分、整数又はステップを除外することを意図するものではない。
【0092】
本明細書において用いられる場合、及び添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「1つの(the)」は、文脈上明確な別段の指示がない限り複数形を含むことに留意する必要がある。したがって、例えば、「1つの塩(a salt)」に対する言及は、複数の塩を含んでよく、「少なくとも1つのヘテロ原子」に対する言及は、1つ又は複数のヘテロ原子を含んでよいなどの例がある。
【0093】
用語「及び/又は」は、「及び」又は「又は」を表すことができる。
【0094】
ある名詞の後の用語「(複数含む)(s)」は、単数形若しくは複数形、又は両方を想定する。
【0095】
本発明の様々な特徴を、特定の値、又は値の範囲を参照して記載する。これらの値は、様々な適切な測定技術の結果を指すよう意図され、したがって全ての特定の測定技術に固有の誤差範囲を含むと解釈すべきである。本明細書において言及される値のいくつかは、この変動性を少なくとも部分的に説明するためにこの用語「約」で示される。値を記載するために用いられる場合、用語「約」は、その値の±25%、±10%、±5%、±1%又は±0.1%以内の量を表すことができる。
【0096】
「金属」は、任意の酸化状態の金属を表す。当業者は、例えば金属が本発明の化合物と錯体形成するのに適する、及び/又は混合物に溶解することができるような、使用に適した酸化状態の金属を指してよいと理解する。
【0097】
本発明のさらなる態様及び先述する段落に記載された態様のさらなる実施形態は、以下の説明を例として考慮し、添付の図面を参照して、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
本発明の実施形態を、以下の非限定的な図面を参照してさらに説明する。
【0099】
図1は、本発明の様々な形態の化合物の一般的な特徴及びそれらの一般的な特徴の特定の実施形態を示す。具体的には、
【0100】
図1a図1aは、本発明の2成分系型の化合物を示し、成分の一方は89Zrに選択的なキレートリガンドであり、他方の化合物は、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドである。図1aはまた、89Zrに選択的なキレートリガンドがDFOBに基づき、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドがDOTAに基づく2成分系の実施形態も示す。この2成分系の実施形態は、実施例1及び実施例2でさらに論じる。
【0101】
図1b図1bは、本発明の3成分系型の化合物を示し、成分の1つは、89Zrに選択的なキレートリガンドであり、成分の1つは、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドである。図1bに示される3成分系の追加の成分は、リンカーである。リンカーは任意選択的に、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基を含んでよい。リンカーが存在する場合、このような特徴により化合物を生物学的に標的化することができる。図1bはまた、3成分系の実施形態を示し、この場合リンカーが存在し、89Zrに選択的なキレートリガンドはDFOBに基づき、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドはDOTAに基づき、リンカーはリジンに基づく。リジンに基づくリンカーは、遊離型のアミノ基を含み、この基は標的部分と結合体を形成することができる、又は標的部分の結合体形成を可能とする目的で化合物の骨格からより遠くに官能基を取り付けるようさらに修飾される置換基である。この3成分系の実施形態は、実施例3及び実施例4でさらに論じる。
【0102】
図1c図1cは、本発明の3成分系型の化合物を示し、成分の1つは、89Zrに選択的なキレートリガンドであり、成分の1つは、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドである。図1cに示される3成分系の追加の成分は、89Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高める部分である。
【0103】
図1d図1dは、本発明の4成分系型の化合物を示し、成分の1つは、89Zrに選択的なキレートリガンドであり、成分の1つは、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドであり、成分の1つは、リンカーであり、他の成分は89Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高める部分である。リンカーは任意選択的に、標的部分、又は標的部分と結合体を形成することができる、若しくは標的部分の結合体形成を可能とする目的で化合物の骨格からより遠くに官能基を取り付けるようさらに修飾される置換基を含んでよい。リンカーが存在する場合、このような特徴により化合物を生物学的に標的化することができる。図1dはまた、4成分系の実施形態を示し、この場合89Zrに選択的なキレートリガンドはDFOBに基づき、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドはDOTAに基づき、リンカーはリジンに基づき、89Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高める部分は、5-((5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ)-5-オキソペンタン酸(PPH)に基づく。リジンに基づくリンカーは、遊離型のアミノ基を含み、この基は標的部分と結合体を形成することができる、又は標的部分の結合体形成を可能とする目的で化合物の骨格からより遠くに官能基を取り付けるようさらに修飾される置換基である。この3成分系の実施形態は、実施例5でさらに論じる。
【0104】
図2a図2aは、半精製した実施例1及び実施例2の2成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、実施例1のDFOB-DOTA(2)を全イオン電流(上)として又はEIC痕跡(下)(黒)として示す。
【0105】
図2b図2bは、半精製した実施例2の2成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、実施例2aのZr(IV)をロードしてZr(IV)-2を形成したDFOB-DOTA(2)を全イオン電流(上)として又はEIC痕跡(下)(黒)として示す。EIC痕跡(黒)は、1:1金属:リガンド化学量論量の錯体としてのZr(IV)-DFOB-DOTA(Zr(IV)-2)に対応する。EIC値がZr(IV)2-DFOB-DOTA([M]2+)(灰色)に対応するシグナルはベースラインであり、このシグナルは1:1化学量論量を支持する。
【0106】
図2c図2cは、半精製した実施例2の2成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、実施例2bのLu(III)をロードしてLu(III)-2を形成したDFOB-DOTA(2)を、全イオン電流(上)として又はEIC痕跡(下)(黒)として示す。EIC痕跡(黒)は、1:1金属:リガンド化学量論量の錯体としてのLu(III)-DFOB-DOTA(Lu(III)-2)に対応する。EIC値がLu(III)2-DFOB-DOTA([M+2H]2+)(灰色)に対応するシグナルはベースラインであり、このシグナルは1:1化学量論量を支持する。
【0107】
図3a図3aは、実施例1のDFOB-DOTA(2)の2成分系の最大ピークの質量分析スペクトルを実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。
【0108】
図3b図3bは、実施例2の2成分系の最大ピークの質量分析スペクトルを実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。具体的にはZr(IV)をロードして実施例2aのZr(IV)-2を形成したDFOB-DOTA(2)を実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。
【0109】
図3c図3cは、実施例2の2成分系の最大ピークの質量分析スペクトルを実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。具体的にはLu(III)をロードして実施例2bのLu(III)-2を形成したDFOB-DOTA(2)を、実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。
【0110】
図4a図4a~cは、HPLCで精製した実施例3及び実施例4の3成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、実施例3(図4a)のDFOB-L-LYS-DOTA(3)又は実施例4a(図4b)のZr(IV)をロードしてZr(IV)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)又は実施例4b(図4c)のLu(III)をロードしてLu(III)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)を、全イオン電流として(上)又はEICトレース(下)として示す。EIC痕跡は、1:1金属:リガンド化学量論量の錯体としてのZr(IV)-DFOB-L-LYS-DOTA(Zr(IV)-3)又はLu(III)-DFOB-L-LYS-DOTA(Lu(III)-3)に対応する。EIC値がZr(IV)2-DFOB-L-LYS-DOTA([M]2+)又はLu(III)2-DFOB-L-LYS-DOTA([M+2H]2+)(それぞれのパネルで灰色)に対応するシグナルはベースラインであり、このシグナルは1:1化学量論量を支持する。
図4b図4a~cは、HPLCで精製した実施例3及び実施例4の3成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、実施例3(図4a)のDFOB-L-LYS-DOTA(3)又は実施例4a(図4b)のZr(IV)をロードしてZr(IV)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)又は実施例4b(図4c)のLu(III)をロードしてLu(III)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)を、全イオン電流として(上)又はEICトレース(下)として示す。EIC痕跡は、1:1金属:リガンド化学量論量の錯体としてのZr(IV)-DFOB-L-LYS-DOTA(Zr(IV)-3)又はLu(III)-DFOB-L-LYS-DOTA(Lu(III)-3)に対応する。EIC値がZr(IV)2-DFOB-L-LYS-DOTA([M]2+)又はLu(III)2-DFOB-L-LYS-DOTA([M+2H]2+)(それぞれのパネルで灰色)に対応するシグナルはベースラインであり、このシグナルは1:1化学量論量を支持する。
図4c図4a~cは、HPLCで精製した実施例3及び実施例4の3成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、実施例3(図4a)のDFOB-L-LYS-DOTA(3)又は実施例4a(図4b)のZr(IV)をロードしてZr(IV)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)又は実施例4b(図4c)のLu(III)をロードしてLu(III)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)を、全イオン電流として(上)又はEICトレース(下)として示す。EIC痕跡は、1:1金属:リガンド化学量論量の錯体としてのZr(IV)-DFOB-L-LYS-DOTA(Zr(IV)-3)又はLu(III)-DFOB-L-LYS-DOTA(Lu(III)-3)に対応する。EIC値がZr(IV)2-DFOB-L-LYS-DOTA([M]2+)又はLu(III)2-DFOB-L-LYS-DOTA([M+2H]2+)(それぞれのパネルで灰色)に対応するシグナルはベースラインであり、このシグナルは1:1化学量論量を支持する。
【0111】
図5a図5a~cは、実施例3及び実施例4の3成分系の最大ピークの質量分析スペクトルを示し、具体的には、実施例3のDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5a)又は実施例4aのZr(IV)をロードしてZr(IV)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5b)又は実施例4bのLu(III)をロードしてLu(III)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5c)を、実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。
図5b図5a~cは、実施例3及び実施例4の3成分系の最大ピークの質量分析スペクトルを示し、具体的には、実施例3のDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5a)又は実施例4aのZr(IV)をロードしてZr(IV)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5b)又は実施例4bのLu(III)をロードしてLu(III)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5c)を、実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。
図5c図5a~cは、実施例3及び実施例4の3成分系の最大ピークの質量分析スペクトルを示し、具体的には、実施例3のDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5a)又は実施例4aのZr(IV)をロードしてZr(IV)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5b)又は実施例4bのLu(III)をロードしてLu(III)-3を形成したDFOB-L-LYS-DOTA(3)(図5c)を、実験データ(上)又は計算(理論)データ(下)として示す。
【0112】
図6図6は、半精製した実施例5の4成分系の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトルを示す。具体的には、DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)を全イオン電流(上)又は[M+3H]3+(黒)若しくは[M+4H]4+(灰色)付加体のEICトレース(下)として示す。この錯体は、2成分系及び3成分系と同様に金属イオンで標識化されると予想される。
【0113】
図7図7は、正のヒドロキサム酸5-((5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ)-5-オキソペンタン酸(PPH)の構造を示し、対応する系DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)を、相当する逆ヒドロキサム酸4-(6-アミノ-N-ヒドロキシヘキサンアミド)ブタン酸(レトロ-PPH)及び関連する4成分系DFOB-(レトロ-PPH-L-LYS-DOTA((レトロ-4)と共に図7に示す。
【0114】
図8図8は、実施例9の半精製生成物の溶液の液体クロマトグラフィー質量分析スペクトル及び実施例9の半精製生成物の最大ピークの質量分析を示す。
【0115】
図9図9は、実施例10のDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAを含有する半精製した反応混合物の液体クロマトグラフィー質量分析(TIC)スペクトルを示す。
【0116】
図10図10は、実施例10のDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAに対応する、7.52分のLCシグナル(図9)由来のMS同位体パターンを示す。
【0117】
図11図11は、実施例10のDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAの[M+2H]2+付加体に対応する選択イオンモニタリング(EIC、m/z=661.885)を示す。
【0118】
図12図12は、実施例10のDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAの[M+3H]3+付加体に対応する選択イオンモニタリング(EIC、m/z=441.59)を示す。
【0119】
図13図13は、実施例11のNCS活性化DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2)を含有する反応混合物の液体クロマトグラフィー質量分析(TIC)スペクトルを示す。
【0120】
図14図14は、実施例11のNCS活性化DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2)に対応する、11.171~12.032分のLCシグナル(図13)のMS同位体パターンを示す。
【0121】
図15図15は、実施例11のNCS活性化DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2)の[M+2H]2+付加体に対応する選択イオンモニタリング(SIM、m/z=757.9)を示す。
【0122】
図16図16は、実施例11のNCS-活性化DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2)の[M+3H]3+付加体に対応する選択イオンモニタリング(SIM、m/z=505.6)を示す。
【0123】
図17図17は、30分、1時間及び2時間でのDOTA-mAb[177Lu]の相対細胞結合画分比率を示す。
【0124】
図18図18は、30分、1時間及び2時間での化合物D2-mAb[177Lu]の相対細胞結合画分比率を示す。
【0125】
図19図19は、30分、1時間及び2時間でのDFOB-mAb[89Zr]の相対細胞結合分画比率を示す。
【0126】
図20図20は、30分、1時間及び2時間での化合物D2-mAb[89Zr]の相対細胞結合分画比率を示す。
【0127】
図21図21は、4時間、24時間又は48時間での化合物D2-mAb[89Zr](上列)又はDFOB-mAb[89Zr](下列)の冠状PET断像を示す。
【0128】
図22図22は、PET断像のROI分析により決定した、注射後48時間でのDFO-mAb[89Zr]及び化合物D2-mAb[89Zr]の生体内体内分布を示す。
【0129】
図23図23は、生体外γ線計数により決定した、注射後48時間での腫瘍内でのDFO-mAb[89Zr]、DFO-mAb[177Lu]、化合物D2-mAb[89Zr]及び化合物D2-mAb[177Lu]の生体外体内分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0130】
本発明は、2個の異なるキレートリガンドを含む化合物に関し、各キレートリガンドは、異なる核種と薬学的な使用に充分な親和性及び/又は選択性を示す錯体を形成するよう選択される。
【0131】
発明者らは、2種類の異なるキレートリガンドを含む化合物を開発し、すぐに医薬としての可能性のある適した放射性核種を曝露すると単一な安定錯体を形成した。驚くべきことに、この錯体は、化合物に複数の可能性のある結合部位があるにも関わらず、異なる金属結合様式を有する配位異性体の混合物として生じない。さらに、医薬としての可能性のある適した異なる放射性核種に曝露すると、異なるキレートリガンドにより異なる単一の安定錯体を形成する。驚くべきことに、この異なる錯体は、化合物に複数の可能な結合部
位があるにも関わらず、複数の結合様式の混合物として生じない。さらに、この化合物は、2種類の異なる金属と錯体を形成することができ、各金属は、異なるキレートリガンドにより結合する。驚くべきことに、この錯体もまた、化合物に複数の可能性のある結合部位の混合があるにも関わらず、複数の結合様式の混合物として生じない。
【0132】
本発明以前は、与えられた核種と錯体形成するための異なるキレートリガンドを備える化合物又は組成物が抱える潜在的な問題は、異なるキレートリガンドが存在する結果として性能が損なわれる可能性があることだと思われていた。与えられた放射性核種はもしかすると、両方のキレートリガンドと様々な程度で結合することもでき、これによりしっかりした放射標識法を確実に行うことに困難をもたらすこともできると考えられた。例えば、特に異なるキレートリガンドが、他のキレートリガンドの局所濃度の方が高いような、同一の化合物に含まれる場合、このような相互作用はキレートリガンドの与えられた核種に対する通常の親和性を妨害することもあると考えられた。有利なことに、少なくとも本発明の好ましい実施形態においては、各キレートリガンドは、同一の化合物中に別の可能性のあるキレーターが存在するにも関わらず、充分な親和性及び選択性で標的核種と結合することができる。
【0133】
いくつかの状況においては、1つ超の医薬としての可能性のある放射性核種を含む、1つ超の医薬としての可能性のある金属を、同時に又はほとんど同時に対象に投与することが有利である。しかしながら、本発明以前は、1つ超の医薬としての可能性のある核種を同時投与すると、複数の適したリガンドの異なる薬物動態から起こる問題が生じ、投与を複雑にするとも考えられていた。有利なことに、本発明の化合物は、医薬としての可能性のある、放射性核種を含む、1つ超の金属と錯体形成することができる。この戦略により、1つ超の医薬としての可能性のある金属を同時に又はほとんど同時に投与する際の薬物動態が単純になる。しかしながら、放射性核種を含む、薬学的な使用に適した、核種のリガンドは、医薬としての可能性のある核種に対する薬物動態及び錯体形成の両方を最適化する必要がある。このような最適化されたリガンド構造にいかなる構造的変化があっても、リガンド錯体の薬物動態及び/又は親和性が妨害されることができ、もしかすると錯体が医薬品としてあまり適さなくなる可能性がある。驚くべきことに、リガンド及び化合物の構造に変化があるにも関わらず、本発明の化合物と医薬としての可能性のある金属との錯体は、医薬品として適している。このことは、化合物に異なるリガンドが存在するにも関わらず成り立ち、化合物が医薬としての可能性のある1つ超の金属(例えば、診断上の可能性のある、放射性核種を含む、金属及び治療的可能性のある、放射性核種を含む、金属など)と錯体を形成する場合も含まれる。
【0134】
本発明の一つの態様において、
89Zrに選択的な第1のキレートリガンド、及び
89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的な第2のキレートリガンドを含み、
この第1及び第2のキレートリガンドは、リンカー基によって共有結合される、
化合物が提供される。
【0135】
この第1及び第2のキレートリガンドは、任意の適した手段により結合してよい。いくつかの実施形態において、このリンカーは、共有結合性のリンカーである。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、式(I)
【化8】

の化合物であって、
Aは、89Zrに選択的な第1のキレートリガンドであり、
Bは、89Zr以外の医薬としての可能性のある放射性核種に選択的な第2のキレートリガンドであり、そして
Lはリンカー基である、
化合物である。
【0137】
いくつかの実施形態において、2種類の異なるキレートリガンドは、適切な平衡時間後に核種が実質的に化合物の単一のキレートリガンドと安定な錯体を形成するのみのような医薬としての可能性のある核種に対する親和性及び/又は選択性が異なる。
【0138】
この文脈において、「実質的に」とは、化合物と錯体を形成する核種の少なくとも90%が89Zrに選択的なキレートリガンドを介して結合するか又は化合物と錯体を形成する核種の少なくとも90%が89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドを介して結合することを表す。
【0139】
「平衡時間」とは、核種が化合物に導入されてからの時間を表す。典型的には、核種及び化合物はともに、核種を化合物に導入する前に溶液に溶解される。当業者は、平衡が、濃度、温度、pH、競合イオンの存在、追加の溶媒の存在などの因子によって影響されることができることを理解する。
【0140】
「安定な錯体」とは、核種及びキレートリガンドの間の錯体が薬学的な使用に適さない解離で害されないことを表す。錯体の安定性は、Kなどの解離定数により定量化してよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、適切な平衡時間の後、化合物と錯体を形成する核種の少なくとも95%が89Zrに選択的なキレートリガンドを介して結合する又は化合物と錯体を形成する核種の少なくとも95%が89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドを介して結合する。いくつかの実施形態において、適切な平衡時間の後、化合物と錯体を形成する核種の少なくとも99%が89Zrに選択的なキレートリガンドを介して結合する又は化合物と錯体を形成する核種の少なくとも99%が89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドを介して結合する。いくつかの実施形態において、適切な平衡時間の後、化合物と錯体を形成する核種の少なくとも99.9%が89Zrに選択的なキレートリガンドを介して結合する又は化合物と錯体を形成する核種の少なくとも99.9%が89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的なキレートリガンドを介して結合する。
【0142】
核種が放射性核種である、いくつかの実施形態において、適切な平衡時間は、キレートリガンドの1つが選択的な放射性核種の10半減期未満、5半減期未満、2.5半減期未満、1半減期未満、0.75半減期未満、0.5半減期未満、0.25半減期未満、0.1半減期未満、0.05半減期未満又は0.01半減期未満である。
【0143】
いくつかの実施形態において、適切な平衡時間は、1秒、5秒、10秒、30秒、1分
、2分、5分、10分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間又は1日である。好ましくは、適切な平衡時間は、2時間未満である。好ましくは、適切な平衡時間は、3時間未満である。
【0144】
いくつかの実施形態において、核種キレートリガンド錯体の安定性は、錯体の安定度定数(logβ)が10以上、15以上、20以上、25以上、25.4以上、30以上、35以上、40以上、41以上、45以上、50以上又は60以上などである。
【0145】
いくつかの実施形態において、キレートリガンドが選択的な核種の間の親和性並びに核種及び放射性核種が選択的でないキレートリガンドの間の親和性は、核種及び2種類の異なるキレートリガンドの間の錯体の安定度定数(logβ)が少なくとも10、15、20、25、25.4、30、35、40、41、45、50又は60の値分異なるように異なる。選択性は好ましくは、25、25.4、40又は41の値分異なる。
【0146】
いくつかの実施形態において、選択性及び/又は親和性は、全ての成分が溶解できるような混合物中で評価される。いくつかの実施形態において、選択性及び/又は親和性は、投与に適した組成物中で評価される。いくつかの実施形態において、選択性及び/又は親和性は、対象から抜き取られた混合物で投与後に評価される。いくつかの実施形態において、選択性及び/又は親和性は、対象から抜き取られた投与後の混合物を模倣するよう設計された組成物で評価される。
【0147】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドには、第2のキレートリガンドが選択的な金属と結合する親和性は、実質的にない。いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドには、第1のキレートリガンドが選択的な金属と結合する親和性は、実質的にない。
【0148】
第1のキレートリガンド
第1のキレートリガンドは、89Zrに選択的である。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドは、89Zr(IV)に選択的である。
【0149】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドはまた、90Nbなどの、医薬としての可能性のあるさらなる核種にも選択的である。
【0150】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドはまた、89Zr以外の1つ又は複数の医薬としての可能性のあるさらなる核種にも選択的である。
【0151】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドは、1つ又は複数のヒドロキサム酸又はヒドロキシピリドン基を含む。ヒドロキサム酸又はヒドロキシピリドン官能基は、89Zrに適したリガンドである。
【0152】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドは、六座である。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドは、八座である。
【0153】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドは、デスフェリオキサミンB(DFOB)の基である。
【0154】
いくつかの実施形態において、この化合物はさらに、89Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高める部分を含む。好ましくは、化合物中に89Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高める部分が存在することは、化合物と錯体を形成する89Zrの実質的に全てが八配位、すなわちキレートリガンドの8個の原子が原子と
の錯体形成に共同して働く(配位数は8である)ことを表す。好ましくは、化合物と錯体を形成する89Zrの実質的に全ては、ヒドロキサム酸官能基に存在するドナー酸素原子を介して八配位である。
【0155】
いくつかの実施形態において、89Zr親和性を高める部分を、5-((5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ)-5-オキソペンタン酸(PPH)、5-((2-(2-アミノエトキシ)エチル)(ヒドロキシ)アミノ)-5-オキソペンタン酸(PPH-O)、2-(2-((5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ)-2-オキソエトキシ)酢酸(PPH-O)、2-(2-((2-(2-アミノエトキシ)エチル)(ヒドロキシ)アミノ)-2-オキソエトキシ)酢酸(PPH-O)、2-((2-((5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ)-2-オキソエチル)チオ)酢酸(PPH-S)及び2-((2-((2-(2-アミノエトキシ)エチル)(ヒドロキシ)アミノ)-2-オキソエチル)チオ)酢酸(PPH-S)から選択してよい。
【0156】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態において、Aは、
【化9】

であり、
は、
【化10】

であり、
Yは、CH、O又はSであり、
Xは、CH、O又はSであり、
各Zは、CH又はOから独立して選択され、
Nは、0又は1であり、そして
Mは、0又は1である。
【0157】
いくつかの実施形態において、全ての例のZは、CHである。
【0158】
いくつかの実施形態において、全ての例のZは、Oである。ZがOである化合物の合成方法は、例えば国際公開第2017/096430号パンフレットなどにおいて、当該技術分野において既知である。
【0159】
いくつかの実施形態において、Yは、CH又はOである。
【0160】
いくつかの実施形態において、Xは、CH又はOである。
【0161】
いくつかの実施形態において、nは、0である。
【0162】
いくつかの実施形態において、nは、1であり、
【0163】
Yは、CH、O又はSであり、
【0164】
Xは、CH、O又はSであり、そして
【0165】
mは、0又は1である。
【0166】
いくつかの実施形態において、nは、1であり、
【0167】
Yは、CH又はOであり、
【0168】
Xは、CH又はOであり、そして
【0169】
Mは、0又は1である。
【0170】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはCHであり、XはCHであり、そしてmは1である。
【0171】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはCHであり、XはCHであり、そしてmは0である。
【0172】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはCHであり、XはOであり、そしてmは0である。
【0173】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはCHであり、XはOであり、そしてmは1である。
【0174】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはOであり、XはCHであり、そしてmは1である。
【0175】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはOであり、XはOであり、そしてmは1である。
【0176】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはSであり、XはCHであり、そしてmは1である。
【0177】
いくつかの実施形態において、nは1であり、YはSであり、XはOであり、そしてmは1である。
【0178】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化11】

及び
【化12】

から成る群から選択される。
【0179】
第2のキレートリガンド
第2のキレートリガンドは、89Zr以外の医薬としての可能性のある核種に選択的である。
【0180】
いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドは、90Y、153Sm、161Tb、177Lu、213Bi及び225Acから成る群の1つ又は複数の核種に選択的である。いくつかの実施形態において、90Yは、90Y(III)であってよい。いくつかの実施形態において、153Smは、153Sm(III)であってよい。いくつかの実施形態において、161Tbは、161Tb(III)であってよい。いくつかの実施形態において、213Biは、213Bi(III)であってよい。いくつかの実施
形態において、225Acは、225Ac(III)であってよい。第2のキレートリガンドは、文献[Mishiro, K.; Hanaoka, H.; Yamaguchi, A.; Ogawa, K. Radiotheranostics with
radiolanthanides: Design, development strategies, and medical applications. Coord. Chem. Rev. 2019, 383, 104-131]に既知のものなどの、様々な3価の金属に選択的であってよい。
【0181】
いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドは、ポリアミノカルボン酸基を含む。ポリアミノカルボン酸基は、90Y(III)、153Sm、161Tb、177Lu(III)、213Bi(III)及び225Ac(III)に適したキレートリガンドである。さらに、ポリアミノカルボン酸基はまた、これらの錯体を形成するのに、高温(99℃)及び長期の反応時間(2時間)を要してほどほどの放射化学的収率(65%)にしかならず、89Zrの比較的劣ったキレーターでもある。これらの高温及び長期の反応時間は、多くの官能基及び、免疫学用途の化合物に存在することができる抗体などの感受性がある生体分子を含む、分子とあまり両立しない。
【0182】
いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)、DOTAGA(α-(2-カルボキシエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)又はNETA(7-[2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]ヘキサヒドロ-1H-1,4,7-トリアゾニン-1,4(5H)-ジ酢酸)の基である。
【0183】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態において、Bは、
【化13】

及び
【化14】

から成る群から選択される。
【0184】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態において、Bは、
【化15】

である。
【0185】
リンカー基
第1及び第2のキレートリガンドは、リンカー基を介して結合される。
【0186】
リンカー基は、2個のキレートリガンド間に任意の適した結合を規定してよい。
【0187】
いくつかの実施形態において、リンカー基は、共有結合である。
【0188】
いくつかの実施形態において、リンカー基は、第1のキレートリガンドとの共有結合及び第2のキレートリガンドへの共有結合を形成するよう機能をもたせた任意の適した二価の化学種であってよい。
【0189】
任意のリンカー基において、第1のキレート基から第2のキレート基への経路は、最小数の原子を通る最短経路によって規定してよい。リンカー基はしたがって、2個のキレートリガンド間の最短直鎖の共有結合原子によって規定してよい。例えば、図1aに示す構造において、リンカー基は、第1及び第2のキレートリガンド間に0個の原子がある共有結合である一方、図1bに示す構造においては、リンカー基は、最短経路の7個の原子を有する(DFOB部分のN原子に共有結合したアミドカルボニル及びDOTA部分カルボニルに共有結合したアミド窒素原子を含む。)。
【0190】
リンカー基の最短の鎖は、最大30個、25個、20個、15個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個又は0個の原子であってよい。いくつかの実施形態において、最短の鎖は、1~30個の原子又は4~10個の原子などの、これらの値にいずれかからいずれかの他の値までであってよい。
【0191】
リンカーは、第1のキレートリガンドに及び第2のキレートリガンドに共有結合した直鎖の原子であってよく、任意の程度の分岐又は置換を含んでよい。いくつかの実施形態において、リンカー基は、1つ又は複数の環状構造を含んでよく、この環状構造は、任意選択的に置換されたシクロアルキル、任意選択的に置換されたアリール又は任意選択的に置換されたヘテロシクリル基から選択されてよく、これらの構造は、任意選択的に縮合、架橋又はスピロ環系に含まれてよい。
【0192】
適したリンカー基原子としては、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)及びS(硫黄)が挙げられる。リンカー基原子は、原子価の通常の法則を満たすようH(水素)などの他の原子に結合する。リンカー基は、飽和でも不飽和でもよい。
【0193】
いくつかの実施形態において、リンカー基は、ヘテロ原子、アルケン、アルキン、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アミド、エステル、ケトン及び標的部分から選択される1つ又は複数の官能基により中断される任意選択的に置換されたC1~20アルキル鎖である。いくつかの実施形態において、リンカーのアルキル鎖は、10個以下の基、8個以下の基、6個以下の基、4個以下の基、3個以下の基、2個以下の基、又は1個の基により中断される。
【0194】
いくつかの実施形態において、リンカー基は、10個以下のアミノ酸残基、8個以下のアミノ酸残基、6個以下のアミノ酸残基、4個以下のアミノ酸残基、3個以下のアミノ酸残基、又は2個以下のアミノ酸残基を含むオリゴペプチドである。いくつかの実施形態において、リンカー基は、1つのアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸残基は、通常3文字の記号により示される20個の天然起源のアミノ酸から選択され、また4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、βアラニン、γアミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン及びオルニチンも含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸残基は、通常3文字の記号により示される20個の天然起源のアミノ酸から選択される。好ましくは、リンカー基は、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸又はこれらの組み合わせ.を含む。好ましくは、リンカーは、リジンを含む。好ましくは、リンカーは、グルタミン酸を含む。好ましくは、リンカーは、アスパラギン酸を含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、リンカーは、L-グルタミン酸の結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、D-グルタミン酸の結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、グルタミン酸のαカルボン酸を介してキレートリガンドの1つに結合する結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、グルタミン酸のγカルボン酸を介してキレートリガンドの1つに結合する結合体である。
【0196】
いくつかの実施形態において、リンカーは、L-アスパラギン酸の結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、D-アスパラギン酸の結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、アスパラギン酸のαカルボン酸を介してキレートリガンドの1つに結合する結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、アスパラギン酸のβカルボン酸を介してキレートリガンドの1つに結合する結合体である。
【0197】
いくつかの実施形態において、リンカーは、L-リジンの結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、D-リジンの結合体である。いくつかの実施形態において
、リンカーは、リジンのαアミンを介してキレートリガンドの1つに結合する結合体である。いくつかの実施形態において、リンカーは、リジンのεアミンを介してキレートリガンドの1つに結合する結合体である。いくつかの実施形態において、リンカー基は、1つ又は複数のエチレングリコール繰り返し単位を含む。
【0198】
リンカーは、1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換される。任意選択的な置換基としては、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1~6アルコキシ、アリールオキシ、C1~6アルコキシアリール、ハロ、C1~6アルキルハロ(CFなど)、C1~6アルコキシハロ(OCFなど)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、アシル、ケトン、置換ケトン、アミド、アミノアシル、置換アミド、二置換アミド、チオール、C1-6アルキルチオ、チオキソ、硫酸、スルホン酸、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルホニルアミド、置換スルホンアミド、二置換スルホンアミド、アリール、アリールC1~6アルキル、ヘテロシクリル及びヘテロアリールが挙げられ、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリル並びにこれらを含む基はさらに任意選択的に置換されてよい。任意選択的な置換基はさらに、上で規定された基から選択される1個、2個、3個、4個又はそれ以上の基、好ましくは1個、2個又は3個、それ以上の、より好ましくは1個又は2個の基で置換されてよい。
【0199】
別の態様において、本発明は、式(II)
【化16】

の化合物であって、
Chは、DFOBの基を含み、
Chは、DOTAの基を含み、そして
Lは、リンカー基である、
化合物を提供する。
【0200】
Chは、リンカー基と共有結合を形成するのに適したDFOBの任意の基であってよい。Chは、第1のキレートリガンド用の本明細書に記載のDFOBの任意の基であってよい。いくつかの実施形態において、Chは、DFOBの89Zrに対する親和性を高める部分を含む。いくつかの実施形態において、Chは、以下の部分構造
【化17】

を有し、
は、
【化18】

であり、
Yは、CH、O又はSであり、
Xは、CH、O又はSであり、
Nは、0又は1であり、そして
Mは、0又は1である。
【0201】
いくつかの実施形態において、mは0であり、YはCHである。いくつかの実施形態において、mは1であり、YはCH、O又はSである。
【0202】
Chは、リンカー基と共有結合を形成するのに適したDOTAの任意の基の構造を有してよい。Chは、第2のキレートリガンド用の本明細書に記載のDOTAの任意の基であってよい。例えば、Chは、部分構造、
【化19】

を有してよい。
【0203】
Chは、リンカー基と共有結合を形成するのに適したDOTAGAの任意の基の構造を有してよい。Chは、第2のキレートリガンド用の本明細書に記載のDOTAGAの任意の基であってよい。例えば、Chは、部分構造
【化20】
を有してよい。
【0204】
Chは、リンカー基と共有結合を形成するのに適したNETAの任意の基の構造を有してよい。Chは、第2のキレートリガンド用の本明細書に記載のNETAの任意の基であってよい。例えば、Chは、部分構造
【化21】

を有してよい。
【0205】
式(II)の化合物のリンカー基は、本明細書に記載の任意の共有結合リンカー基と同一であってよい。
【0206】
標的部分
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる基を含む。典型的には標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる基をリンカー基に組み入れてよい。いくつかの実施形態において、リンカー基は、リンカーから標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる基まで延びるスペーサー部分を含む。スペーサーは、典型的には通常C、O及びNから選択される1~20個の原子(最長の直鎖)分リンカーから延びてよい。いくつかの実施形態において、スペーサー部分は、エーテル、ヒドロキシル基、アミン及びカルボン酸、並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される1~10個の官能基によって任意選択的に中断される任意選択的に置換されたC1~20アルキル基である。有利なことに、スペーサー部分は、化合物の水性環境中の溶解度を高めるのに役立つ1つ又は複数のこれらの親水性部分を含んでよい。いくつかの実施形態において、スペーサー部分は、スペーサー内部にポリエチレングリコール部分を形成するよう1つ又は複数のエーテルを含む。ポリエチレングリコールは、スペーサー部分の一部を規定してよく、又はスペーサー部分は、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる官能基で終わるポリエチレングリコール基から成ってよい。ポリエチレングリコール基は、2~20個の-(CHO-繰り返し単位、好ましくは2~10個の単位を含んでよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2のキレートリガンドを標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる基を含むよう官能基をもたせてよい。標的部分と結合体を形成することができる基は、代わりに固体担体と結合体を形成することもある。
【0207】
標的部分は、この化合物を標的の組織、器官、受容体又は他の生物学的に発現された組成物に向ける。いくつかの実施形態において、標的部分は、標的の器官又は組織に選択的又は特異的である。本発明の化合物に含めてよい適した標的部分及び標的部分と結合体を形成することができる基は、国際公開第2017161356号パンフレット(Waddas)及び国際公開第2015140212号パンフレット(Gasser)に記載され
る。
【0208】
いくつかの実施形態において、標的部分は、イムノPET画像化法に適している。いくつかの実施形態において、標的部分は、腫瘍性疾患の治療に適している。
【0209】
概して、標的部分は、抗体、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アプタマー、タンパク質、抗原、ペプチド、核酸、酵素、脂質、アルブミン、細胞、糖、ビタミン、ホルモン、ナノ粒子、無機担体、ポリマー、単一分子又は薬物であってよい。標的部分の特定の例としては、乳房及び前立腺病変の治療用のステロイドホルモン、ソマトスタチン、ボンベシン、CCK、及び神経内分泌腫瘍の治療用のニューロテンシン受容体結合分子、肺癌の治療用のCCK受容体結合分子、結腸直腸癌の治療用のST受容体及び癌胎児抗原(CEA)結合分子、黒色腫の治療用のジヒドロキシインドールカルボン酸及び他のメラニン産生生合成中間体、インテグリン受容体、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP)及び血管性疾患の治療用の動脈硬化プラーク結合分子、及び脳病変の治療用のアミロイドプラーク結合分子が挙げられる。標的部分の例にはまた、ポリアミノ酸、ポリオール、ポリアミン、ポリ酸、オリゴヌクレオチド、aborols、デンドリマー及びアプタマーなどの合成ポリマーも含まれる。
【0210】
いくつかの実施形態において、本発明は、ナノ粒子、抗体(例えばテクネチウム(99mTc)、ファノレソマブ(NeutroSpect(登録商標))、girentuximab(Rencarex(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン(登録商標))及びアダリムマブ(ハーセプチン(登録商標))、タンパク質(例えばTCII、HSA、アネキシン及びHb)、ペプチド(例えばオクトレオチド、ボンベシン、ニューロテンシン及びアンジオテンシン)、窒素含有単純又は複合糖質(例えばグルコサミン及びグルコース)、窒素含有ビタミン(例えばビタミンA、B、B、B12、C、D、D、E、H及びK)、窒素含有ホルモン(例えばエストラジオール、プロゲステロン及びテストステロン)、窒素含有有効活性成分(例えばセレコキシブ又は他の窒素含有NSAID、AMD3100、CXCR4及びCCR5拮抗薬)並びに窒素含有ステロイドの中から選択されてよい標的部分の組み入れに関する。いくつかの実施形態において、本発明は、標的部分girentuximabの組み入れに関する。
【0211】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物を標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基で置換してよい。
【0212】
いくつかの実施形態において、本発明は、複数の標的部分を有する本発明の化合物、錯体、医薬品又は組成物の結合体を含んでよい。例えば、特定の標的組織、器官、受容体又は他の生物学的に発現された組成物に対する特異性を高めるために、複数の生理活性物質又は化学的活性物質を利用してよい。このような例において、標的部分は、同一であっても異なってもよい。例えば、単一の結合体は、複数の抗体又は抗体断片を持ってよく、これらの抗体又は抗体断片は、所望の抗原又はハプテンに向けられる。典型的には、結合体に用いられる抗体は、所望の抗体又はハプテンに向けられるモノクローナル抗体又は抗体断片である。したがって、例えば、結合体は、所望のエピトープに対する特異性を有する2個以上のモノクローナル抗体を含んでよく、これにより所望の部位での結合体の濃度を高める。同様に、そして独立に、結合体は、各々が同一の標的組織又は器官の異なる部位に向けられる2個以上の異なる生理活性物質又は化学的活性物質を含んでよい。このように複数の標的部分を利用することにより、結合体は標的組織又は器官の複数の領域に有利に濃縮され、もしかすると治療処置又は診断の有効性を高める。ある実施形態において、標的部分は、ペプチド、タンパク質、ペプチド又はタンパク質の二量体、三量体及び多量体を含んでよい。さらに、結合体は、結合体を標的組織又は器官に濃縮し、最も有利には所望の治療的及び/又は診断的結果を実現しながら非標的堆積を最小限にするよう設計さ
れた、生理活性物質又は化学的活性物質の比率を有してよい。あるいは、及び/又はその上、本発明は、2段階のプレターゲティング法に関する。
【0213】
本発明の化合物、錯体、医薬品及び組成物を、特異的な受容体又はがん細胞を標的するよう修飾することができる又は様々な生体内環境で存続することができるよう修飾することができると想定され、したがって、本発明の範囲内である。変形物において、本発明の結合体、組成物及び方法は、ヌクレオチド除去修復の増加及び他の抵抗メカニズムの増加を示す固形腫瘍、細胞株及び細胞株の組織に対して用いることができる。
【0214】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物、錯体、医薬品又は組成物は、がん型特異受容体及び/又は特定のがん型に過剰発現した受容体を標的とする抗体、オリゴペプチド、ポリペプチド又は1つ若しくは複数の小分子化合物を含む1つ若しくは複数の受容体特異的分子と結合体を形成する。
【0215】
いくつかの実施形態において、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基は、1つ又は複数のa)、b)、c)、d)及びe)群の1つ又は複数の構成物から選択され、
a)群は、OH、NH、SH、COOH、CHO、N、SCN、CHX(X=Cl、Br、I)、活性化エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド、テトラ又はペンタフルオロフェノール誘導体など)、エンーオン系(α―β不飽和カルボニル、又はマレイミドなどのマイケルアクセプター系など)、ディールス・アルダー反応に適したジエン又はジエノフィル、アルケン、及びアルキンから成り、
b)群は、天然起源のポリペプチド、特にタンパク質と第1又は第2のクリック部分が共有結合反応を行わない反応条件下で第2のクリック部分と選択的に共有結合を形成することができる第1のクリック部分から成り、
c)群は、抗体、オリゴペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、リポソーム、ポリマーソーム、リン脂質、ビタミン、単糖、オリゴ糖、ナノ粒子若しくは又は細胞及び/又は組織の標的部位と10-6mol/L未満(<)、10-7mol/L、<10-8mol/L又は<10-9mol/Lの結合定数で特異的に結合する部分から成り、
d)群は、抗体、オリゴペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質、ポリヌクレオチド、リポソーム、ポリマーソーム、リン脂質、ビタミン、単糖、オリゴ糖、ナノ粒子、又は分子量が3000U未満(<)の薬らしい分子から成り、これらのいずれも疾患特異的リガンド、細胞特異的リガンド、又は組織特異的リガンドに選択的であり、そして
e)群は、固体担体から成る。
【0216】
いくつかの実施形態において、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基は、OH、NH、SH、COOH、N、SCN、活性化エステル、マレイミド及びアルキンから成る群から選択される。好ましくは、OH、NH、SH、N、マレイミド及びアルキン。より好ましくは、OH、NH、N、及びアルキン。より好ましくは、OH及びNH。最も好ましくは、NH
【0217】
いくつかの実施形態において、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基は、いわゆるクリック反応対を形成する2個のパートナーの一方のパートナーを含む又はである。このような実施形態において、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基は、天然起源のポリペプチド、特にタンパク質と第1又は第2の部分が共有結合反応を行わない反応条件下で第2のクリック部分と選択的に共有結合を形成することができる第1のクリック部分である。クリック反応基とは、キレートリガンドを関心のある分子と結合体を形成することを表し、同時に新規なプレターゲティング法の可能性を提供する。いくつかの実施形態において、標的部分又は標的部分と結合体を形成することができる置換基は、アジド、アルキン、テトラジン、シクロオクチン及びtrans
-シクロオクテンから成る群から選択される。適したクリック反応パートナーは、当該技術分野において周知である。
【0218】
本発明の化合物を、薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、立体異性体、多形体及び/又はプロドラッグの形態で提供してよい。
【0219】
用語「薬学的に許容される」は、化合物の任意の塩、溶媒和物、互変異性体、立体異性体、多形体及び/若しくは、プロドラッグ、又は対象への投与時に、本発明の化合物又はその活性代謝物若しくは残基を(直接的に又は間接的に)提供でき、典型的には対象に容認しがたく有害ではない任意の他の化合物を記載するために用いられてよい。
【0220】
本発明の化合物の塩は、好ましくは薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない塩も、例えば薬学的に許容される塩の調製における中間体として又は対象に対する投与を必要としない方法において有用であってよいので、本開示の範囲に含まれると理解される。
【0221】
適した薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸及び吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
塩基の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの薬学的に許容されるカチオンと形成されるもの、アンモニウム、トリエチルアミンから形成される塩などのアルキルアンモニウム、エタノールアミンと形成されるものなどのアルコキシアンモニウム、及びエチレンジアミン、コリン又は、アルギニン、リシン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸から形成される塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩の種類及び塩の形成に関する一般的な情報は、当業者に既知であり、“Handbook of Pharmaceutical salts” P.H.Stahl, C.G.Wermuth, 1st edition, 2002, Wiley-VCHなどの一般的なテキストに記載されるとおりである。
【0223】
固体の化合物の場合、当業者は、本発明の化合物、作用薬及び塩は、様々な結晶又は多型形態で存在してよく、これらの全ては本発明及び特定の式の範囲にあるよう意図されることを理解する。
【0224】
本発明には、無水結晶形態、水和物、溶媒和物及び溶媒和物の混合物を含む、本発明の化合物の全ての結晶形態が含まれる。これらの結晶形態のいずれかが多形を示す場合、全ての多形は本発明の範囲内にある。
【0225】
本発明の化合物は、該当する場合、化合物の溶媒和形態及び非溶媒和形態を包含するよう意図される。したがって、本発明の化合物には、水和形態又は溶媒和形態、並びに非水和形態及び非溶媒和形態を含む、示される構造を有する化合物が含まれる。
【0226】
本発明の化合物又はその塩、互変異性体、多形体又はプロドラッグを、溶媒和物の形態で提供してよい。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量の溶媒を含有し、水、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールなどのアルコール、DMSO、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸、及び同種のものなどの非共有結合又は結
晶格子の空孔を占めることのいずれかにより結晶格子の一部を形成する薬学的に許容される溶媒を用いて結晶化プロセス中に形成されてよい。水和物は、溶媒が水の場合に形成され、アルコラートは、溶媒がアルコールの場合に形成される。本発明の化合物の溶媒和物を、本明細書に記載のプロセス中に都合よく調製される又は形成されることができる。概して、溶媒和形態は、本発明の目的では非溶媒和形態に等しいとみなされる。
【0227】
塩基性の窒素含有基を、メチル、エチル、プロピル及びブチルクロライド、ブロミド及びヨウ化物などのC1~6アルキルハライド、ジメチル及びジエチル硫酸などのジアルキル硫酸並びに他のものなどの薬品で四級化してよい。
【0228】
結晶性固体を形成する本発明の化合物、又はその塩、互変異性体、溶媒和物及び/若しくはプロドラッグは、多形を示してよい。化合物、塩、互変異性体、溶媒和物及び/又はプロドラッグの全ての多形形態は、本発明の範囲内にある。
【0229】
本発明の化合物は、互変異性を示してよい。互変異性体とは、典型的には平衡状態で存在する分子の2個の互換的な形態である。本発明の化合物の任意の互変異性は、本発明の範囲内にあると理解されるべきである。
【0230】
「プロドラッグ」は、本明細書において提供される化合物の構造要件を完全には満たさなくてよいが、対象又は患者への投与後に、本明細書において提供される本発明の化合物を生成するよう生体内で修飾される、化合物である。例えば、プロドラッグは、本明細書において提供される化合物のアシル化誘導体であってよい。プロドラッグには、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン又はスルフヒドリル基が、哺乳類の対象に投与した場合、開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、又はスルフヒドリル基を形成する任意の基と結合する化合物が含まれる。プロドラッグの例としては、本明細書において提供される化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸エステル、ギ酸エステル、リン酸エステル及び安息香酸エステル誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される化合物のプロドラッグを、修飾を生体内で開裂させて親化合物を生成するように、化合物に存在する官能基を修飾することにより調製してよい。
【0231】
プロドラッグには、1つのアミノ酸残基、又は2個以上の(例えば、2個、3個又は4個)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が本発明の化合物の遊離アミノ、及びアミド基と共有結合する化合物が含まれる。このアミノ酸残基は、通常3文字の記号により示される20個の天然起源のアミノ酸を含み、また4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、βアラニン、γアミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン及び、オルニチン及びメチオニンスルホンも含む。
【0232】
本発明の化合物は、1つ又は複数の立体中心を含有してよい。本発明の化合物の全ての立体異性体は、本発明の範囲内にある。立体異性体としては、鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体(E及びZオレフィン形並びにcis及びtrans置換パターン)及びアトロプ異性体が挙げられる。いくつかの実施形態において、化合物は、任意の立体中心で立体異性体が多い本発明の化合物の形態である。化合物は、一方の立体異性体が別のものより少なくとも約60、70、80、90、95、98又は99%多くてよい。
【0233】
本発明の化合物は、化合物に存在する原子の1つ又は複数の同位体が同位体的に濃縮されてよい。例えば、化合物は、以下の微量の同位体、H、H、13C、14C、15N及び/又は17Oの1つ又は複数が濃縮されてよい。同位体の存在量が、自然の存在量より多い場合、同位体が濃縮されているとみなすことができる。
【0234】
錯体
さらなる態様において、本発明の化合物及び金属を含む錯体が提供される。
【0235】
いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、医薬としての可能性のある放射性核種(複数含む)である。いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、天然起源の、無毒の、金属の同位体である。
【0236】
いくつかの実施形態において、錯体は、1つの金属を含む。いくつかの実施形態において、錯体は、2種類の異なる金属を含み、好ましくは一つの金属は医薬としての可能性があり、第2の金属は、診断上の可能性がある。
【0237】
本発明の1つ又は複数の態様及び実施形態において、本発明はまた、1つの金属又は2種類の異なる金属との錯体にある本発明の化合物に関する。いくつかの実施形態において、1つの金属は、化合物中の第1のキレートリガンドの結合部分と配位結合する。いくつかの実施形態において、1つの金属は、化合物中の第2のキレートリガンドの結合部分と配位結合する。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドと結合した金属と異なる1つの金属が、第2のキレートリガンドの結合部分と配位結合する。いくつかの実施形態において、錯体は、2種類の異なる金属を含む。いくつかの実施形態において、複数の金属の一方又は両方は、イオンである。いくつかの実施形態において、2種類の異なる金属の一方又は両方は、八配位、例えば第1のキレートリガンドの8個の原子が金属との錯体形成に共同して働き(配位数は8である)、具体的には金属はZrであるか又はより具体的には金属は89Zrである。
【0238】
いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドの金属イオンは、六配位であり、すなわち第1のキレートリガンドの6個の原子が金属イオンとの錯体形成に共同して働き、具体的には金属はZrであり、より具体的には金属は89Zrである。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドの金属原子は、四配位である。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドの金属原子は、五配位である。
【0239】
いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドの金属イオンは、八配位であり、すなわち第2のキレートリガンドの8個の原子が金属イオン、特に89Zr以外の医薬としての可能性のある放射性核種との錯体形成に共同して働く(配位数は8である)。いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドの金属イオンは、七配位であり、すなわち第2のキレートリガンドの7個の原子が金蔵イオン、特に89Zr以外の医薬としての可能性のある放射性核種との錯体形成に共同して働く(配位数は7である)。いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドの金属イオンは、六配位である。いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドの金属イオンは、五配位である。いくつかの実施形態において、第2のキレートリガンドの金属イオンは、四配位である。
【0240】
金属がキレートリガンド系により提供される全ての配位部位を必要としない場合でも、キレートリガンドは金属近傍に高「濃度」の配位基を提供するだけのことにより錯体の安定性を高め、これにより錯体をキレート交換から保護する。
【0241】
いくつかの実施形態において、錯体の金属(複数含む)は、酸化数+1、+2、+3、+4、+5、+6、又は+7を有する。いくつかの実施形態において、錯体の金属(複数含む)は、酸化数+3、+4、+5又は+6を有する。いくつかの実施形態において、錯体の金属(複数含む)は、4~8の配位数を有する。
【0242】
いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、元素の周期表の3族、4族、6族、7族、9族、10族、11族、13族、15族、ランタノイド元素、又はアクチノイド元素のいずれか1つである。族は、現在のIUPAC慣例に従って割り当てられ、古い名
称では3族は「スカンジウム族」(lllA)、4族は「チタン族」(IVA)、6族は「アクチノイド族」、7族は「マンガン族」、9族、10族及び11族を含む「ランタノイド族」、13族は「ホウ素族」、及び15族は「窒素族」を指す。
【0243】
いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、金属性放射性核種である。放射性核種、すなわち放射性のある核種は、不安定な原子核を有する原子であり、放射性崩壊を経て、γ線又は陽電子、α若しくはβ粒子、又はオージェ電子などの亜原子粒子を放出する。これらの放出物は、電離放射線を構成する。放射性核種は、天然に生じるか、又は人工的に作ることもできる。放射性核種は、放射性の同位体又は放射性同位体と呼ばれることが多い。
【0244】
いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、89Zr(診断)、90Nb(診断)、90Y(治療)、153Sm(治療)、161Tb(治療)、177Lu(治療)、213Bi(治療)及び225Ac(治療)から選択される。いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、89Zr及び90Nbから選択される。いくつかの実施形態において、金属(複数含む)は、90Y、153Sm、161Tb、177Lu、213Bi及び225Acから選択される。
【0245】
錯体が2種類の異なる金属を含むいくつかの実施形態において、複数の金属の1つは、89Zrであり、第2の金属は、225Ac又は177Lu、好ましくは177Luであることが好ましい。
【0246】
典型的には、第1のキレートリガンドと配位する金属は、DOTA、DOTAGA又はNETAなどの、ポリアミノカルボン酸型のリガンドと結合する親和性が実質的にない金属である。いくつかの実施形態において、錯体は、第1のキレートリガンドと配位する、Zr(例えば89Zr)及びNb(例えば90Nb)から選択される金属、好ましくはZrを含む。
【0247】
典型的には、第2のキレートリガンドと配位する金属は、DFOBなどの、ポリヒドロキサム酸型のリガンドと結合する親和性が実質的にない金属である。いくつかの実施形態において、錯体は、第2のキレートリガンドと配位する、Y(例えば90Y)、Sm(例えば153Sm)、Tb(例えば161Tb)、Lu(例えば177Lu)、Bi(例えば213Bi)及びAc(例えば225Ac)から選択される金属、好ましくはLuを含む。
【0248】
錯体が2種類の異なる金属を含むいくつかの実施形態において、金属の一方は放射性核種であり、他方は天然起源の、無毒の、金属の同位体であることが好ましい。いくつかの実施形態において、ある放射性核種は、化合物中の第1のキレートリガンドの結合部分と配位結合し、ある天然起源の、無毒の、金属の同位体は、化合物中の第2のキレートリガンドの結合部分と配位結合する。いくつかの実施形態において、ある天然起源の、無毒の、金属の同位体は、化合物中の第1のキレートリガンドの結合部分と配位結合し、ある放射性核種は、化合物中の第2のキレートリガンドの結合部分と配位結合する。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドと配位結合する金属は、89Zrであり、第2のキレートリガンドと配位結合する金属は、無毒の、天然のLu(III)、すなわちnatLuである。いくつかの実施形態において、第1のキレートリガンドと配位結合する金属は、無毒の、天然のZr(IV)、すなわちnatZrであり、第2のキレートリガンドと配位結合する金属は、177Luである。両方が1つの化合物に結合する天然又は放射性核種形態(natZr(IV)及びnatLu(III)、又は89Zr及び177Lu、又は89Zr及びnatLu(III)、又はnatZr(IV)及び177Lu)の任意の組み合わせの一対の異なる金属は、natZr(IV)又は89Zrが第
1のキレートリガンドと結合し、natLu(III)又は177Luが第2のキレートリガンドと結合し、同一の薬物動態及び体内分布特性を有し、このことは、捜索法に有用である。natZr(IV)及びnatLu(III)はヒトに無毒なので、この例は有用だろう。
【0249】
錯体形成方法
本発明の別の態様において、本発明の錯体の作成方法を提供する。
【0250】
いくつかの実施形態において、化合物又は化合物を含む組成物を金属と錯体形成させる。好ましくは、金属は放射性核種である。いくつかの実施形態において、化合物又は化合物を含む組成物を2種類の異なる金属と錯体形成させる。好ましくは、異なる金属の一方又は両方は、放射性核種である。本発明の化合物又は組成物のいずれかを錯体形成するために、当業者に既知の任意の錯体形成方法を用いることができる。
【0251】
いくつかの実施形態において、化合物又は化合物を含有する組成物を単一の金属と錯体形成させる。いくつかの実施形態において、化合物又は化合物を含有する組成物を、2種類の異なる金属と錯体形成させる。
【0252】
いくつかの実施形態において、化合物又は組成物を水に溶解し、89Zr(IV)及び/又は177Lu(III)などの放射性核種(複数含む)の溶液を加える。いくつかの実施形態において、加える放射性核種(複数含む)は、89Zr(IV)(acac)及び/又は177Lu(III)Clなどの放射性核種の塩である。
【0253】
いくつかの実施形態において、化合物又は組成物及び放射性核種(複数含む)を含む混合物を、化合物及び放射性核種の混合時に加熱する。いくつかの実施形態において、混合物を約25℃超、約30℃超、約35℃超、約37℃超、約40℃超、約50℃超、約60℃超、約70℃超、又は約80℃超に加熱する。いくつかの実施形態において、混合物を約37℃に加熱する。いくつかの実施形態において、混合物を約80℃未満、約70℃未満、約60℃未満、約50℃未満、約40℃未満、約37℃未満、約35℃未満、又は約30℃未満に加熱する。
【0254】
いくつかの実施形態において、化合物及び放射性核種(複数含む)を含む混合物を、化合物及び放射性核種(複数含む)の混合時に環境温度(約25℃)のままにする。
【0255】
いくつかの実施形態において、化合物及び放射性核種(複数含む)を含む混合物は、抗体、affibody、タンパク質、ペプチド又は等価物中などで、熱に敏感な官能性を備える。これらの実施形態において、混合物を好ましくは、化合物及び放射性核種(複数含む)の混合時に、約37℃、少なくとも37℃未満又は環境温度(約25℃)のままにする。
【0256】
いくつかの実施形態において、化合物及び放射性核種(複数含む)を含む混合物を、化合物及び放射性核種(複数含む)の混合時に冷却する。いくつかの実施形態において、混合物を約25℃未満、約20℃未満、約15℃未満、又は約10℃未満に冷却する。
【0257】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の、化合物を含む溶液及び放射性核種(複数含む)を含む溶液を緩衝する。
【0258】
放射化学的純度を測定するために、当業者に既知の任意の方法を用いることができる。例えば、適した溶媒系での放射性薄層クロマトグラフィー(r-TLC)を用いて放射化学的純度を測定してよい。溶媒系は、調べる特定の化合物に依存する。例えば、オースト
ラリア特許出願第2011200132号に記載のr-TLCの条件を本発明の化合物に適用してよい。
【0259】
溶液から放射標識した化合物を分離するために、当業者に既知の任意の方法を用いることができる。例えば、樹脂を用いて不必要な成分を除去し、精製済の放射標識した化合物を含有する溶液を用いて、蒸発させて乾燥させ、その後使用用の水又は緩衝水で元に戻す。いくつかの実施形態において、放射標識した化合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離する。いくつかの実施形態において、放射標識した化合物を溶媒抽出又はトリチュレーション(trituration)により分離する。
【0260】
医薬品
さらなる態様において、本発明の化合物及び医薬としての可能性のある1つの核種の錯体を含む医薬品が提供される。
【0261】
いくつかの実施形態において、医薬品は、医薬としての可能性のある2種類の核種を含む。
【0262】
いくつかの実施形態において、医薬品は、本発明の化合物及び医薬としての可能性の1つの核種の錯体を含む。いくつかの実施形態において、医薬品は、本発明の化合物及び医薬としての可能性のある2種類の異なる核種の錯体を含み、好ましくは一つの核種は医薬としての可能性があり、第2の核種は診断上の可能性がある。
【0263】
いくつかの実施形態において、医薬品は、治療薬であり、複数の核種の少なくとも1つは、医薬としての可能性がある。いくつかの実施形態において、複数の核種の少なくとも1つは、医薬としての可能性のある放射性核種である。好ましくは、医薬としての可能性のある複数の放射性核種の少なくとも1つは、90Y、153Sm、161Tb、177Lu、213Bi及び225Acから成る群から選択される。より好ましくは、医薬としての可能性のある複数の放射性核種の少なくとも1つは、177Lu及び225Acから成る群から選択される。さらにずっと好ましくは、医薬としての可能性のある複数の放射性核種の少なくとも1つは、177Luである。
【0264】
いくつかの実施形態において、治療薬は、診断薬であり、複数の核種の少なくとも1つは、診断上の可能性がある。いくつかの実施形態において、複数の核種の少なくとも1つは、診断上の可能性がある放射性核種である。好ましくは、診断上の可能性がある複数の核種の少なくとも1つは、89Zr及び90Nbから成る群から選択される。より好ましくは、診断上の可能性がある複数の核種の少なくとも1つは、89Zrから成る群から選択される。
【0265】
いくつかの実施形態において、医薬品は、セラノスティック薬であり、セラノスティック薬は、本発明の化合物及び医薬としての可能性のある核種及び診断上の可能性がある異なる核種の錯体を含む。
【0266】
いくつかの実施形態において、医薬品は、予後診断の可能性がある核種である。
【0267】
本明細書において用いられる場合、本発明の化合物、錯体、治療薬又は組成物は、治療薬、診断薬、セラノスティック薬又は予後診断薬など多様に用いてよい。
【0268】
組成物
さらなる態様において、本発明の化合物、錯体又は医薬品及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が提供される。
【0269】
薬学的に許容される賦形剤は典型的には、薬剤的に不活性で、組成物に適した一過性又は形態を与え、化合物、錯体又は医薬品の治療又は診断の有効性を減少させない物質である。添加物は、対象に投与した時、容認できない有害な(adverse)、アレルギー性の又は他の有害な(untoward)反応を引き起こさない場合、概して「薬学的に許容される」とみなされる。用語「添加物」には、担体又は希釈剤が含まれる。
【0270】
薬学的に許容される賦形剤の選択は、少なくとも部分的に、望ましい投与経路に依存する傾向がある。概して、本開示の組成物は、標的組織がその投与経路を介して利用できる限り、いかなる投与経路用に処方することもできる。組成物を、例えば非経口(皮下、腹腔内(intraperitoneal)、皮内、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、くも膜下腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑膜内及び腹腔内投与(intraperitonealinjection)、大槽内投与及び任意の他の類似する投与又は注入手法を含む)、点滴又は留置技術(例えば無菌で注射可能な水溶液又は非水溶液又は懸濁液)を含むが、これらに限定されない任意の適した投与経路用に本発明による化合物、錯体又は医薬品から処方してよい。
【0271】
成分の例は、マーチンデール(Martindale)すなわちThe Extra Pharmacopoeia (Pharmaceutical Press, London 1993)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2005, Lippincott Williams & Wilkinsに記載される。全ての方法は、活性成分、例えば本発明の化合物、医薬品又は錯体を1つ又は複数の副成分を構成する薬学的に許容される賦形剤と関連させるステップを含む。概して、組成物は、活性成分、例えば本発明の化合物、医薬品又は錯体を溶解した添加物若しくは液体添加物又は両方と均一に及び親密に関連させることにより調製される。組成物には、活性対象化合物、医薬品又は錯体が所望の効果を生み出すのに充分な量で含まれる。いくつかの実施形態において、組成物を静脈内用に処方する。
【0272】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物を注射剤として用いてよい。注射を意図する組成物は、任意の公知の方法により調製してよく、このような組成物は、溶媒、共溶媒、可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、増粘剤、キレート化剤、酸化防止剤、還元剤、抗菌防腐剤、緩衝剤、pH調整剤、増量剤、保護剤、浸透圧調整剤、及び特殊添加剤から成る群から選択される1つ又は複数の薬剤を含んでよい。さらに、注射剤の製造に適した他の無毒の薬学的に許容される賦形剤を用いてよい。
【0273】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した添加物との混合物中に、活性化合物を含んでよい。このような添加物は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム及びアカシアゴムなどの懸濁剤であり、そして分散剤又は湿潤剤は、レシチンなどの天然起源のホスファチド、又は例えばステアリン酸ポリオキシエチレンなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、又は例えばヘプタデカエチレンオキシエタノールなどの、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、又はポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどの、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、又は例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートなどのエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物であってよい。水性懸濁剤はまた、1つ又は複数の着色料を含んでよい。
【0274】
医薬組成物は、無菌の注射用の水性又は油性の懸濁剤の形態であってよい。この懸濁剤
は、適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知の方法により処方してよい。無菌の注射製剤はまた、例えば1、3-ブタンジオールの溶液などの、無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒の無菌の注射溶液又は懸濁液であってよい。利用することができる許容される希釈剤又は溶媒の中には、水、注射用水(SWFI)、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油を溶媒又は懸濁媒として好都合に利用する。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを用いて任意のマイルドな固定油を利用してよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に使用する。
【0275】
本明細書の文脈において、用語「投与すること」、及び「投与する」及び「投与」を含むこの用語の変形物は、本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を生物又は面に任意の適切な手段により接触、適用、送達又は提供することを含む。
【0276】
腫瘍性疾患などの、疾患又は障害の治療又は診断用に、本発明による生物活性化合物、医薬品又は錯体の投与量を広範囲に変えてよく、個人の必要量に調整してよい。本発明による活性化合物、医薬品又は錯体は概して、治療又は診断有効量で投与される。常用量を、単一用量又は複数の用量で投与してよい。添加物材料と組み合わせて単一剤形を作製することができる活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与方法に応じて変わる。
【0277】
しかしながら、任意の特定の対象用の特定の投与量は、利用する特定の化合物、医薬品又は錯体の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事、投与時刻、投与経路、及び排せつ率、合剤(すなわち対象を治療又は診断するために他の薬剤を用いること)、及び治療を受ける特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存すると理解される。この様な治療は、必要なだけ多く、治療する医師が必要と判断した期間投与してよい。当業者は、本発明の投与すべき化合物、医薬品又は錯体の投与計画又は治療若しくは診断有効量が、各個人に対して最適化される必要があってよいことを理解する。異なる疾患を治療又は診断するためには異なる投与量が必要とされてよいことも理解する。
【0278】
用語「治療すること」、「治療(treatment)」及び「治療(therapy)」は本明細書で、根治療法及び予防療法を指すために用いられる。したがって、本開示の文脈において、用語「治療すること」は、腫瘍性疾患及び/又は関連する疾患又は疾患の症状などの疾患又は障害の重症度を治療する、寛解させる又は和らげることを包含する。
【0279】
「予防すること」又は「予防」とは、腫瘍性疾患などの疾患又は障害の発症を予防すること又は本発明の化合物又は医薬組成物の投与後に腫瘍性疾患が発生した場合、腫瘍性疾患の重症度を和らげることを表す。
【0280】
「対象」は、全てのヒト又は非ヒト動物を含む。したがって、ヒトの治療に有用であるのに加え、本発明の化合物はまた、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ヒツジ及びブタなどの、これらに限定されないコンパニオンアニマル及び家畜を含む、哺乳類の獣医学的治療にも有用であってよい。
【0281】
本発明の化合物、医薬品又は錯体を、上述した添加物と共に投与してよい。
【0282】
本発明の医薬品は、1つ又は複数の放射標識したシンチグラフィー又はPET造影剤であってよい。適した量の放射能を有する放射標識したシンチグラフィー又はPET造影剤も、本開示によって提供する。診断用の放射活性錯体を形成する際、濃度約0.01ミリキュリー(mCi)/mL~100mCi/mLの放射能を含む溶液中の放射活性錯体を形成するのが一般的に好ましい。概して、投与される単位用量は、約0.01mCi~約100mCi、具体的には約1mCi~約30mCiの放射活性を有する。注射される単
位用量の溶液の体積は、約0.01mL~約10mLである。投与に適切な放射標識された結合体の量は、迅速に排出される結合体は、迅速に排出されないものより高用量で投与される必要があってよいという意味で、選択した結合体の分布プロファイルに依存する。生体内分布及び局在化は、投与後の適切な時点、典型的には30分(min)~180分、非標的組織でのクリアランス率に対する標的部位での蓄積率に応じて3~4日などの長期間で標準的なシンチグラフィー/PET造影法により、追跡することができる。生体内分布及び局在化は、投与後4日未満、3日未満、2日未満、1日未満、18時間未満、12時間未満、10時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、3.5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、又は45分未満の時点で標準的な手法により追跡することができる。生体内分布及び局在化は、投与後30分超、45分超、1時間超、1.5時間超、2時間超、2.5時間超、3時間超、3.5時間超、4時間超、6時間超、8時間超、10時間超、12時間超、18時間超、1日超、2日超又は3日超の時点で標準的な手法により追跡することができる。生体内分布及び局在化は、投与後30分~4日、30分~3日、30分~2日、30分~1日、30分~18時間、30分~12時間、30分~10時間、30分~8時間、30分~6時間、30分~4時間、又は30分~3時間の時点で標準的な手法により追跡することができる。
【0283】
変形において、本発明は、医薬組成物に関する。医薬組成物は、薬学的に許容される塩、溶媒和物及びそれらのプロドラッグを含んでよく、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを高める又は寿命を延ばすのに必要な添加物又は他の物質を含んでよい。
【0284】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、医薬組成物自身によりあるいは、リポソーム(mCi)ミセル、及び/又はナノ粒子を用いることのいずれかによる注射に適した形態であってよい。
【0285】
本発明の溶液を、密封容器、特にガラス製のものの中に、単位剤形又は複数剤形のいずれかで提供してよい。
【0286】
本明細書に記載の化合物、錯体又は医薬品のいずれの薬学的に許容される塩も、本発明の溶液を調製するために用いてよい。適した塩の例は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸及び同種の物などのミネラル入りの無機酸との塩、並びに酢酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及び同種のものなどの特定の有機酸との塩であってよい。
【0287】
薬学的に許容され、本明細書に記載の化合物、錯体若しくは医薬品又はその薬学的に許容される塩を溶解することができる任意の溶媒を用いてよい。本発明の溶液はまた、共可溶化剤(co-solubilizing agent)(溶媒と同一であってもよい)、浸透圧調整剤、安定化剤、保存剤又はこれらの混合物などの、1つ又は複数の追加成分も含んでよい。溶液製剤に適してよい溶媒、共可溶化剤(co-solubilizing agent)、浸透圧調整剤、安定化剤及び保存剤の例を以下に記載する。
【0288】
適した溶媒及び共可溶化剤(co-solubilizing agent)としては、水、注射用水(SWFI)、生理食塩水、例えばエタノール、ベンジルアルコール及び同種のものなどのアルコール、例えばプロピレングリコール、グリセリン及び同種のものなどのグリコール及びポリアルコール、例えばジアセチン、トリアセチン及び同種のものなどのポリアルコールのエステル、例えばポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコールメチルエーテル及び同種のものなどのポリグリコール及びポリエーテル、例えばイソプロピリデングリセリン及び同種のものなどのジオキソラン、ジメチルイソソルビド、例えば2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ポリビニルピロリドン(共可
溶化剤のみ)及び同種のものなどのピロリドン誘導体;ポリオキシエチレン化脂肪アルコール、ポリオキシエチレン化脂肪酸のエステル、ツイーン(商標)などのポリソルベート例えばプルロニック(商標)などのポリプロピレングリコールのポリオキシエチレン誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0289】
適した浸透圧調整剤としては、例えば塩化ナトリウム、などの薬学的に許容される無機塩化物、ブドウ糖、ラクトース、マンニトール、ソルビトール及び同種のものなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0290】
生理的投与に適した保存剤は、例えばp-ヒドロキシ安息香酸のエステル(例えばメチル、エチル、プロピル及びブチルエステル、又はこれらの混合物)、クロロクレゾール及び同種のものであってよい。
【0291】
ある実施形態において、製剤中には放射線防護剤も含めることができる。これらの添加物としては、ゲンチシン酸及びL-アスコルビン酸又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0292】
適した安定化剤としては、単糖類(例えばガラクトース、フルクトース及びフコース)、二糖類(例えばラクトース)、多糖類(例えばデキストラン)、環状オリゴ糖(例えばα-、β-、γ-シクロデキストリン)、脂肪族ポリオール(例えばマンニトール、ソルビトール及びチオグリセロール)、環状ポリオール(例えばイノシトール)及び有機溶媒(例えばエチルアルコール及びグリセロール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0293】
上述した溶媒及び共可溶化剤、浸透圧調整剤、安定化剤及び保存剤を、溶液製剤中で単独で又はこれらの2個以上の混合物として用いてよい。
【0294】
ある実施形態において、薬学的な溶媒製剤は、本明細書に記載の化合物、錯体若しくは医薬品又はこれの薬学的に許容される塩、及び塩化ナトリウム溶液(すなわち生理食塩水)、ブドウ糖、マンニトール、又はソルビトールから成る群から選択される薬剤を含んでよく、この薬剤の量は、5%以下である。このような製剤のpHをまた、薬学的に許容される塩又は塩基を用いて貯蔵安定性を改善するよう調整してよい。
【0295】
本発明の溶液において、本明細書に記載の化合物、錯体若しくは医薬品又はこの薬学的に許容される塩の濃度は、100mg/mL未満、又は50mg/mL未満、又は10mg/mL未満、又は5mg/mL未満で0.01mg/mL超、又は0.5mg/mL~5mg/mL、又は1mg/mL~3mg/mLであってよい。ある実施形態において、用いられる濃度は、がん細胞に対しては充分細胞傷害性だが、他の細胞に対する毒性は制限されている理想濃度である。
【0296】
薬学的な溶液製剤の適した包装は、プラスチック及びガラス製の容器、すぐに使えるシリンジ及び同種のものなどの、非経口的使用を意図する全ての認可された容器であってよい。ある実施形態において、容器は、例えばバイアル又はアンプルなどの密封(sealed)ガラス容器である。密封(hermetically sealed)されたガラスバイアルが特に好ましい。
【0297】
ある実施形態において、包装は、packagingとしてcGMP/cGLP/cGCP/cGPvPを含んでよい。
【0298】
本発明の実施形態によると、密封したガラス容器に、生理学的に許容される溶媒中に本明細書に記載の錯体、医薬品及び組成物又はこの薬学的に許容される塩を含む無菌で注射
可能な溶液であって、この溶液は、2.5~3.5のpHを有する、溶液が提供される。いくつかの実施形態において、本発明の錯体、医薬品又は組成物は、2種類の異なる放射性核種を含み、好ましくは一方の放射性核種は医薬としての可能性があり、他方の放射性核種は、診断上の可能性がある。1つの放射性核種を含む錯体、医薬品及び組成物は、第1のキレートリガンド又は第2のキレートリガンドのいずれかと結合すると好ましい。89Zrを含む錯体、医薬品及び組成物は、第1のキレートリガンドと結合すると好ましい。89Zr以外の放射性核種を含む錯体、医薬品及び組成物は、第2のキレートリガンドと結合すると好ましい。2種類の異なる放射性核種を含む錯体、医薬品及び組成物は、89Zrが第1のキレートリガンドと結合し、89Zr以外の放射性核種が第2のキレートリガンドと結合すると好ましくてよい。1つの放射性核種又は2種類の異なる放射性核種及び1つ又は複数のタンパク質、ペプチド、抗体及びナノ粒子を含む錯体、医薬品及び組成物が好ましい。第1のキレートリガンドと結合した89Zrなどの1つの放射性核種又は89Zr以外の第2のキレートリガンドと結合した放射性核種及び1つ又は複数のタンパク質、ペプチド、抗体及びナノ粒子を含む錯体、医薬品及び組成物が好ましい。第1のキレートリガンドと結合した89Zr及び第2のキレートリガンドと結合した89Zr以外の放射性核種などの2種類の異なる放射性核種及び1つ又は複数のタンパク質、ペプチド、抗体及びナノ粒子を含む錯体、医薬品及び組成物が好ましい。溶液製剤については、本発明の核種化合物は、pH6未満の溶液中でより溶解性があり、長期間安定であってよい。1つの実施形態において、放射性核種と結合体を形成した生体分子(タンパク質、ペプチド又は抗体)のpHは、個人(例えばヒト)に生体分子を注射するのに適するように、6.5~7の範囲であるべきである。さらに、本発明の化合物の酸塩は、遊離塩基の対応物より水溶液に溶けやすくてよいが、酸塩を水溶液に加える場合、溶液のpHが低すぎて投与に適さないことができる。したがって、pH4.5を超えるpHを有する溶液製剤は、投与される組み合わせた製剤のpHがpH4.5以上になるようなpH7超の希釈溶液と投与前に組み合わせることができる。1つの実施形態において、この希釈溶液は、水酸化ナトリウムなどの薬学的に許容される塩基を含む。別の実施形態において、この希釈溶液は、pH10~12である。別の実施形態において、投与される組み合わせた製剤のpHは、5.0より大きい。別の実施形態において、投与される組み合わせた製剤のpHは、pH5.0~7.0である。
【0299】
本発明はまた、pH2.5~3.5の無菌溶液を作製するプロセスも提供し、このプロセスは、本明細書に記載の化合物、錯体、医薬品若しくは組成物又はこの薬学的に許容される塩を薬学的に許容される溶媒に溶解することを含む。本明細書に記載の化合物、錯体、医薬品又は組成物の薬学的に許容される酸塩を用いる場合、生理学的に許容される酸又はpHを所望の範囲に調整する緩衝液を加えた薬学的に許容される塩基又は塩基性溶液を用いて、溶液のpHを調整してよい。この方法はさらに、生じた溶液を滅菌フィルターに通過させることを含んでよい。
【0300】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を、追加の有効活性成分(API)と併せて投与してよい。APIは、医薬としての可能性のある放射性核種が治療又は診断するのに適した、腫瘍性疾患などの、疾患、状態及び/又は障害のいずれかを治療又は診断するのに適したいずれのものでもよい。本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を、追加のAPIと本明細書に記載の医薬組成物のいずれかに同時に製剤化してよく、又は本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を、同時に、連続的に又は個別に投与してよい。同時投与には、同時に製剤化した又は別々の剤形を同一の又は異なる経路で投与しても、本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を他のAPIと同時に投与することが含まれる。連続投与には、同一又は異なる経路により、本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物及び他のAPIを、他のものの約0.5時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、又は約6時間以内などの、分離した投与計画にしたがって投与することが含まれる。連続的に投与する場合、本発明の化合物、医薬品、錯体又
は組成物を、他のAPIの投与の前又は後に投与してよい。個別投与には、本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物及び他のAPIを互いに別個の投与計画にしたがって、同一又は異なってもよい、いずれの活性成分にも適した任意の経路により投与することが含まれる。
【0301】
この方法は、本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を任意の薬学的に許容される形態で投与することを含んでよい。医薬組成物は、任意の薬学的に許容される本明細書に記載の賦形剤を含んでよい。
【0302】
本発明の化合物、医薬品、錯体又は組成物を、任意の適した方法により、例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内又は大槽内投与、注入又は留置技術(例えば無菌で注射可能な水溶液又は非水溶液又は懸濁液など).など、非経口的に、投与してよい。
【0303】
本発明の化合物、医薬品又は錯体を、本明細書に記載の医薬組成物のいずれかとして提供してよい。
【0304】
治療方法
本明細書に記載の化合物、錯体、組成物及び薬剤のいずれかを、投与前にこの化合物と錯体形成した医薬としての可能性のある核種で治療可能任意の疾患又は状態を治療するために用いてよい。
【0305】
放射性核種は典型的には、がんを含む腫瘍性疾患の治療に用いられ、放射性核種での治療を内部放射線療法とみなしてよい。
【0306】
したがって、腫瘍性疾患の治療を必要とする対象に治療有効量の本発明の錯体を投与することを含む、腫瘍性疾患の治療方法が提供される。錯体を、医薬品又は医薬組成物の形態で投与してよい。本明細書に記載の任意の適した薬剤又は組成物を用いてよい。
【0307】
本発明の錯体は、本明細書に記載の錯体のいずれであってもよく、この核種は、医薬としての可能性がある。錯体は、本発明の医薬品又は医薬組成物の形態であってよい。錯体はさらに、治療方法が診断方法でもあるような、診断上の可能性がある核種を含んでよい。
【0308】
この方法はさらに、本発明の化合物又は組成物を治療的な可能性のある金属と接触させて本発明の錯体を形成するステップを含んでよい。
【0309】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の治療用の薬物の製造における本発明の錯体の使用が提供される。
【0310】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の治療用の薬物の製造における本発明の化合物の使用が提供され、この薬物は、医薬としての可能性のある核種と錯体形成した化合物を含む。
【0311】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の治療用の薬物の製造における医薬としての可能性のある核種の使用が提供され、薬物は、医薬としての可能性のある核種と錯体形成した化合物を含む。
【0312】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の治療における本発明の錯体の使用が提供される。
【0313】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の治療において使用するための本発明の錯体が提供
される。
【0314】
本発明のいくつかの実施形態において、この錯体は、核種のがんへの標的送達を可能とするようこの化合物を標的組織、器官、受容体又は他の生物学的に発現された組成物に向ける標的部分を組み入れる。本発明のいくつかの実施形態において、この錯体は、標的部分girentuximabを組み入れる。
【0315】
いくつかの実施形態において、医薬としての可能性のある核種は、90Y、153Sm、161Tb、177Lu、213Bi及び225Ac、好ましくは177Lu及び225Ac、より好ましくは177Luから選択される。
【0316】
錯体がさらに診断上の可能性のある核種を含むいくつかの実施形態において、診断上の可能性のある核種は、89Zrであり、治療的可能性のある核種は、225Ac又は177Lu、好ましくは177Luである。
【0317】
腫瘍性疾患には、悪性及び良性のがん性増殖が含まれる。いくつかの実施形態において、治療は、がん用である。いくつかの実施形態において、治療は、同種抗原を有するがん用である。いくつかの実施形態において、治療は、去勢抵抗性転移性前立腺癌を含む前立腺癌、乳癌、転移性淡明細胞型腎細胞癌を含む腎癌、膵癌、肺癌、胃癌又は転移性骨疾患から成る群から選択されるがん用である。いくつかの実施形態において、治療は、去勢抵抗性転移性前立腺癌などの前立腺癌用である。いくつかの実施形態において、治療は、乳癌用である。いくつかの実施形態において、治療は、膵癌用である。いくつかの実施形態において、同種抗原を有するがんは、PSMAであり、がんは、前立腺腫瘍又は細胞、転移した前立腺腫瘍又は細胞、肺腫瘍又は細胞、腎腫瘍又は細胞、神経膠芽腫、膵腫瘍又は細胞、膀胱腫瘍又は細胞、肉腫、黒色腫、乳腺腫瘍又は細胞、結腸腫瘍又は細胞、生殖細胞、褐色細胞腫、食道腫瘍又は細胞、胃腫瘍又は細胞、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、同種抗原を有するがんは、炭酸脱水酵素IXであり、がんは、転移性淡明細胞型腎細胞癌である。
【0318】
いくつかの実施形態において、がんは、試験管内(in vitro)、生体内(in
vivo)又は生体外(ex vivo)である。特定の実施形態において、がんは、対象に存在する。
【0319】
動物の「がん」とは、例えば制御されない増殖、特殊機能の減少、不死性、著しい転移能、抗アポトーシス活性の著しい増加、速い成長及び増殖速度、及び特定の特徴的な形態及び細胞マーカーなどの、がん発症性細胞を代表する特徴を持つ細胞が存在することである。いくつかの状況において、がん細胞は、腫瘍の形態となり、このような細胞は、動物体内に局所的に存在してよく、又は独立細胞のように血流を循環してよい。
【0320】
本明細書において用いられる場合、用語「有効量」とは、例えば研究者又は臨床医が探している、組織、系、動物又はヒトの生物学的、物理的又は医学的応答を誘発する薬剤又は医薬品の量を表す。さらに、用語「治療有効量」とは、そのような量を受けたことがない対応する対象と比較して、疾患の治療、治癒、予防若しくは寛解又は副作用の改善、又は疾患若しくは障害の進行速度の低下を引き起こす任意の量を表す。この用語にはまた、用語の範囲に正常な生理学的機能を高めるのに効果的な量も含まれる。さらに、用語「診断上の有効量」とは、そのような量を受けたことがない対応する対象と比較して、健康状態の診断、画像化法又は評価の改善又は対象、器官又は組織の起こりそうな性能を引き起こす任意の量を表す。
【0321】
診断法
さらなる態様において、診断を必要とする対象における診断方法であって、この方法は、この対象に本発明の化合物及び診断上の可能性のある核種を含む診断有効量の錯体を投与することを含む、診断方法を提供する。
【0322】
この錯体は、本発明の化合物及び本明細書に記載の診断上の可能性のある核種のいずれかの錯体であってよい。この錯体はさらに、この診断方法が治療方法でもあるような、治療的な可能性のある核種を含んでよい。
【0323】
この方法はさらに、本発明の化合物及び組成物を診断上の可能性のある金属と接触させて本発明の錯体を形成するステップを含んでよい。
【0324】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の診断用の薬物の製造における本発明の錯体の使用を提供する。
【0325】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の診断用の薬物の製造における本発明の化合物の使用であって、この薬物は、この化合物及び診断上の可能性のある核種の錯体を含む、使用を提供する。
【0326】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の診断用の薬物の製造における診断上の可能性のある核種の使用であって、この薬物は、この化合物及び診断上の可能性のある核種の錯体を含む、使用を提供する。
【0327】
さらなる態様において、腫瘍性疾患の診断に使用する本発明の錯体を提供する。
【0328】
本発明のいくつかの実施形態において、この錯体は、この核種をがんに標的送達することを可能とするようこの化合物を標的組織、器官、受容体又は他の生物学的に発現された組成物に向ける標的部分を組み入れる。本発明のいくつかの実施形態において、この錯体は、標的部分girentuximabを組み入れる。
【0329】
いくつかの実施形態において、診断上の可能性のある核種は、PET造影法に適した核種であり、好ましくは89Zr及び90Nbから選択され、最も好ましくは89Zrである。いくつかの実施形態において、診断上の可能性のある核種は、MRIに適した核種であり、好ましくはGdである。
【0330】
錯体がさらに治療的な可能性のある核種を含むいくつかの実施形態において、診断上の可能性のある核種は、89Zrであり、治療的な可能性のある核種は、225Ac又は177Lu、好ましくは177Luであることが好ましい。
【0331】
いくつかの実施形態において、この診断方法は、この対象をポジトロン放出断層撮影(PET)造影法、好ましくはイムノPETイメージング法にかけることを含む。PETイメージング法は、核医学において適用される機能イメージング技術であり、これにより生体の三次元画像(例えば機能プロセスの)を作成する。このシステムは、ポジトロン放出放射性核種によって間接的に放出されるγ線の対を検出し、ポジトロン放出放射性核種は、薬学的な化合物の形態で体内に導入される。
【0332】
いくつかの実施形態において、この診断方法は、この対象を磁気共鳴画像法(MRI)にかけることを含み、診断上の可能性のある核種は、Gdである。
【0333】
いくつかの実施形態において、この診断は、腫瘍性疾患用である。いくつかの実施形態において、この診断は、がん用である。診断方法を、本明細書に記載のがんのいずれかに
治療用に適用してよい。本発明の化合物及び組成物を、錯体形成する選択された金属の選択により治療又は診断用に適用してよい。
【0334】
いくつかの実施形態において、本発明の診断方法を、磁気共鳴画像法(MRI)、X線撮影、超音波イメージング、エラストグラフィー、光音響イメージング、断層撮影(コンピュータ断層撮影を含む)及び心エコー好ましくは磁気共鳴画像法(MRI)及び断層撮影(コンピュータ断層撮影を含む)などの別の診断方法と組み合わせて用いてよい。
【0335】
製造方法
さらなる態様において、本発明の化合物又は組成物の製造方法を提供する。
【0336】
典型的には、本発明の化合物又は組成物を当該技術分野において既知の技術により調製してよい。これらのステップの各々を引き起こすための特定の試薬及び条件は、各反応相手について選択される特定の置換基に依存する。当業者なら、これらの試薬及び条件を決定及び/又は最適化する方法を容易に理解するだろう。同様に、出発物質が市販されていない場合、当業者なら、前述した技術及び反応に基づいて出発物質の調製法を設計及び実行することができるだろう。これらのステップの実施形態を、本明細書に記載の特定の化合物を参照して実施例で提供する。
【0337】
本発明の化合物を調製するための試薬は、任意の供給源から入手することができる。様々な供給源が当業者に知られている。試薬は、合成品であっても、天然供給源から得てもよい。試薬は、いかなる純度であってもよく、例えば当業者に既知の任意の技術を用いて試薬を分離し、精製してもよい。
【0338】
キレートリガンド部分、リンカー部分、標的部分、標的部分と結合体を形成することができる置換基、又は置換基部分を化合物の適切な部分と結合体を形成するために、当業者に既知の任意の方法を用いることができる。反応は、水媒体又は非水媒体中で実行してよい。反応混合物には、任意の比率の試薬を用いることができる。反応の生成物をすぐに用いる、保管する又は保管前に凍結乾燥法などのプロセスにより安定性を高めるようさらに処理することができる。
【0339】
いくつかの実施形態において、キレートリガンドの1つ若しくは複数及びリンカー基の間の、又はリンカーが結合である場合、2種類の異なるキレートリガンドの間の結合は、アミド結合である。アミド結合を形成するために、当該技術分野において既知の任意の方法を用いることができる。好ましいアミド結合形成試薬としては、カルボン酸及び炭酸の無水物の混合物により進行するもの(PivCl、BocO及びEEDQなど)、スルホン酸系無水物により進行するもの(TsClなど)、リン酸系無水物により進行するもの(T3Pなど)、活性化エステル(NHSなど)、カルボジイミド(DCC及びEDCなど)、グアニジン及びウラン塩(HBTU及びTPTUなど)により進行するもの、トリアジン系試薬(塩化シアヌルなど)並びにホウ素化学種(ホウ酸など)が挙げられる。活性化エステル(NHSなど)、カルボジイミド(DCC及びEDCなど)及びグアニジン及びウラン塩(HBTU及びTPTUなど)により進行するアミド結合形成試薬が特に好ましい。NHS、EDC及びHBTUは、特に好ましいアミド結合形成試薬である。
【0340】
ある実施形態において、アミド結合形成条件下A-COOH及びHNL-COOHの間の反応、その後アミド結合形成反応条件下生じた生成物とHN-Bとの反応により本発明の化合物を形成し、
は、Lに示されたアミン及びカルボン酸基を含まないリンカーLの部分である。
【0341】
ある実施形態において、アミド結合形成条件下HN-B及びHNL-COOHの
間の反応、その後アミド結合形成反応条件下生じた生成物とA-COOHとの反応により本発明の化合物を形成し、
は、Lに示されたアミン及びカルボン酸基を含まないリンカーLの部分である。
【0342】
ある実施形態において、アミド結合形成条件下HOOC-B及びHNL-COOHの間の反応、その後アミド結合形成反応条件下生じた生成物とA-NHとの反応により本発明の化合物を形成し、
は、Lに示されたアミン及びカルボン酸基を含まないリンカーLの部分である。
【0343】
ある実施形態において、アミド結合形成条件下A-NH及びHNL-COOHの間の反応、その後アミド結合形成反応条件下生じた生成物とHOOC-Bとの反応により本発明の化合物を形成し、
は、Lに示されたアミン及びカルボン酸基を含まないリンカーLの部分である。
【0344】
ある実施形態において、本発明の化合物をA-NH及びHOOC-Bの間の反応により形成する。
【0345】
ある実施形態において、本発明の化合物をA-COOH及びHN-Bの間の反応により形成する。
【0346】
本発明の化合物又は組成物を精製するために当業者に既知の任意の方法を用いることができる。いくつかの実施形態において、この化合物又は組成物を、溶媒抽出又はトリチュレーションにより精製する。いくつかの実施形態において、この化合物又は組成物を、液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)、アフィニティークロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーにより精製する。いくつかの実施形態において、この化合物又は組成物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製する。いくつかの実施形態において、この化合物又は組成物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離する。
【0347】
本明細書に記載の化合物、組成物、キット及び方法を、以下の例示的な及び非限定的な例により説明する。
【0348】
本明細書に開示され、定義された発明は、本文又は図面から言及された又は明らかな2個以上の個々の特徴の全ての代わりの組み合わせに及ぶと理解される。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代わりの態様を構成する。
【0349】
本明細書に記載の方法及び化合物を、以下の例示的な及び非限定的な例により説明する。
【実施例
【0350】
合成に関する一般的なコメント
2成分系(DFOB-DOTA(2))、3成分系(DFOB-L-LYS-DOTA(3))、及び4成分系(DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4))の合成には、それぞれ1個、2個又は3個のアミド結合の形成が必要とされる。アミド結合形成化学は、種々の手法を用いて行うことができる。1つの手法においては、カルボン酸含有モチーフは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化し、塩基の存在下アミン含有フラグメントと反応させることができる。この化学では、次の反応の前にNHSで活性化した成分をまず分離する必要がある。別の経路においては、N,N,N′,N′-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロ
ホスファート(HBTU)を用いてカルボン酸基をその場で(in situ)活性化し、続けて塩基存在下アミン含有フラグメントをこの混合物に直接導入することができる。このことは、この反応を1ステップで行うことができるので(すなわち、「ワンポット」反応)、有利である。NHS経路は、2成分系(DFOB-DOTA(2))を調製するために用いた。HBTU経路は、3成分系(DFOB-L-LYS-DOTA(3))、及び4成分系(DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4))を調製するために用いた。
【0351】
器具使用
質量スペクトルは、自動注入装置(100μLループ)、アジレント1260 Infinityデガッサ、クォータナリポンプ及びアジレント6120シリーズ四重極エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析計を備えた逆相液体クロマトグラフィー質量分析計を用いて取得した。全ての実験でアジレントC18カラム逆相充填カラム(内径4.6×150mm、0.5mL min‐1,粒子径5μm)を用いた。以下の器具条件を用いた。5μL注入量、4kVスプレー電圧、3kVキャピラリー電圧、250℃キャピラリー温度、及び10Vチューブレンズオフセット。移動相は、アセトニトリル:ギ酸(99.9:0.1)(ACN:FA)及びHO:ギ酸(99.9:0.1)を混合することにより調製した。この方法では、要求に応じて、40分にわたり流速0.5mL min‐1又は25分にわたり流速0.8mL min‐1の5~95%ACN:HO勾配を用いた。スペクトルデータは、Agilent OpenLAB Chromatography Data System ChemStation Editionを用いて取得及び加工した。分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、2個のLC-20APポンプ、SIL-10APオートサンプラー、SPD-20AUV/VIS検出器、及びFRC-10Aフラクションコレクターを備えた島津LC-20シリーズLCシステムで行った。セミ分取精製については、流速20mL min‐1の島津Shimpack GISカラムcolumn(内径150×20mm、粒子径5μm)を用いた。有機相(B)は、ACN:TFA(99.95:0.05)から構成された。水相(A)は、HO:TFA(99.95:0.05)から構成された。スペクトルデータを、Shimadzu LabSolutions Software (version 5.73)を用いて取得し、加工した。
【0352】
材料
DOTAトリ(tert-ブチル)エステル(1b)(97%)は、Arctom Chemicalsから入手した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩(99%)は、Chem-Impexから入手した。アセトニトリル-190,トルエン(≧99.5%)、アンモニア水(28%)及びジエチルエーテルは、Ajax Finechemから入手した。N-ヒドロキシスクシンイミド(98%)、デスフェリオキサミンBメシル酸塩(≧92.5%)(1a)、トリエチルアミン(≧99%)、トリフルオロ酢酸(99%)、トリイソプロピルシラン(98%)、N,N,N′,N′-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート(≧98%)(HBTU)、1,4-フェニレンジイソチオシアナート(98%)、炭酸水素ナトリウム(≧99.7%)、硫酸ナトリウム(無水物、≧99%)、N,N-ジメチルホルムアミド(99.8%)、ピペリジン(99%)、水酸化ナトリウム(無水物、≧98%)、塩酸(37%)、塩化ルテチウム(99.9%)、塩化ジルコニウム(≧99.9%)、及びジルコニウムアセチルアセトネート(98%)は、Sigma-Aldrichから入手した。Milli-Q水は、Millipore Q-podシステムを用いて調製した。Fmoc-L-LYS-DOTA(OBu)(1c)は、Macrocyclicsから入手した。N,N-ジイソプロピルエチルアミンは、Sigma-Aldrich(99.5%)及びMerck(98%)から入手した。ジクロロメタンは、Ajax Finechem及びMerckから入手し
た。メタノールは、Ajax Finechem及びChem-supply (≧99.9%)から入手した。酢酸アンモニウム(≧97%)は、APS Finechemから入手した。Girentuximabは、Telix Pharmaceuticals Pty Ltdから入手した。
【0353】
実施例1
DFOB-DOTA(2)の合成
DFOB-DOTA(2)の合成を以下に詳述する。
【化22】
【0354】
DOTAトリ(tert-ブチル)エステル(2-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)(359.6mg,0.63mmol)(1b)をDCM(35.8mL)に溶解し、そこにN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(108.3mg,
0.94mmol)を加え、直後にN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(488.7mg,3.15mmol)を加えた。混合物を周囲温度で16時間攪拌したままにした。反応溶液に水(35mL)を加え、攪拌後、有機層を集めた。水層をさらにDCM(3×35mL)で抽出し、有機層を合わせた。溶媒を真空下で除去して(外部浴(external bath)45℃)、NHS-活性化DOTAトリ(tert-ブチル)エステル(トリ-tert-ブチル2,2’,2’’-(10-(2-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-triyl)トリアセテート)を黄色い油状物質として得た。ESI-MSC325510について計算した陽イオン:[M+H]670.39。
【0355】
デスフェリオキサミンBメシル酸塩(134.4mg,0.20mmol)(1a)のメタノール溶液(5mL)をNHS-活性化DOTAトリ(tert-ブチル)エステル(212.8mg,0.32mmol)及びトリエチルアミン(67μL,0.48mmol)のMeOH溶液(5mL)に加えた。生じた溶液を70℃で3時間還流下攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物を冷ジエチルエーテルで洗浄し(3×10mL)、水(20mL)を加え、スラリーを50-mLファルコンチューブに移した。この固体を遠心分離により分離し、丸底フラスコに移した後で全ての残存溶媒を真空下で除去(外部浴(external bath)45℃)し、これによりDFOB-DOTAトリ(tert-ブチル)エステルを白色固体として得た。ESI-MS C53981015について計算したポジティブイオン:[M+H]1115.72。
【0356】
DFOB-DOTAトリ(tert-ブチル)エステル(179.7mg,0.16mmol)をDCM:TFA:TIPS、1.47mL:5.13mL:87μLの混合物に溶解し、この溶液を室温で16時間攪拌した。溶媒を真空下で除去した(外浴45℃)。冷ジエチルエーテル(10mL)を残留物に加え、これにより生成物を溶媒相に抽出した。スラリーを丸底フラスコに移した後で残存溶媒を真空下で除去して(外浴45℃)粗生成物を白色固体として得た。この生成物を以下のように、流速20mLmin‐1で、0~7.5分は0~12%、7.5~17.5分は12~22%B及び17.5~20分は22~40%Bで、移動相A中での移動相Bの段階的勾配を用いたHPLCにより精製した。生成物を14.43分で集め、これらの画分をプールし、溶媒を凍結乾燥により除去してDOTA-DFOBを白色固体として得た(4.08mg,2.16%)。注記:正確な収率は計算することができなかった。凍結乾燥中に、凍結乾燥装置が正常に作動しなくなり、これによりかなりの量の物質がなくなった。分析装置に充分な物質は得た。ESI-MS C41741015について計算したポジティブイオン:[M+H]947.53。図2a及び図3aを参照する。
【0357】
実施例2
DFOB-DOTA(2)を色々な金属イオンに曝露した際の選択的錯体形成
DFOB-DOTA(2)の実施形態の単独キレートリガンドの選択的金属錯体形成を以下に詳述する。
【化23】
【0358】
DFOB-DOTA(2)を、Zr(IV)及びLu(III)を含む溶液と別々に混合した。両方の場合において、ESI-MS分析は、DFOB-DOTA(2)の2種類のキレートリガンドの1つのみが金属イオンと錯体を形成したことと一致した。Zr(IV)及びLu(III)に対する既知のキレートリガンド親和性は、2種類の金属がDFOB-DOTA(2)の異なるキレートリガンドと錯体を形成したことと一致する。発明者らは、13C核磁気共鳴(NMR)分光法実験を行えば金属―化合物錯体のキレートリガンド選択性をさらに確認できると予測した。図2及び図3は、実施例2a及び実施例2bのLCMS及び質量分析の結果を提供する。
【0359】
実施例2a:Zr(IV)-DFOB-DOTA(Zr-2)の形成
DFOB-DOTAのメタノール:水(1:1)溶液にZr(acac)のメタノール水(1:1)溶液を加えた(8.65等量)。混合物を周囲温度で22時間攪拌したま
まにし、LCMSを用いて溶液を分析した。ESI-MSC41711015Zrについて計算したポジティブイオン:[M]1033.4。図2b及び図3bを参照する。
【0360】
実施例2b:Lu(III)-DFOB-DOTA(Lu-2)の形成
DOTA-DFOB(2.5mM)の酢酸アンモニウム溶液249μLにLuCl(50mM)の水溶液62μLを加えた。生じたLu(III):DFOB-DOTA(2)の5:1溶液を37℃で2時間、周囲温度で20時間攪拌した。LCMSを用いて溶液を分析した。ESI-MSC41711015Luについて計算したポジティブイオン:[M+H]1119.5。図2c及び図3cを参照する。
【0361】
実施例3
DFOB-L-LYS-DOTA(3)の合成
【化24】
DFOB-Fmoc-L-LYS-DOTA(OBu)(3a)
Fmoc-L-Lys-モノ-アミド-DOTA-トリス(t-Buエステル)(92.1mg,86.1μmol)のサンプルをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(10mL)に溶解し、その後N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(35μL,200.9μmol)を加えた。この溶液を室温(r.t.)で10分間攪拌した。この溶液にN,N,N′,N′-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)(45.3mg,119.4μmol)を加え、これを室温で30分間攪拌した。この溶液にデスフェリオキサミンメシル酸塩(78.3mg,119.2μmol)を加え、これを50℃まで加熱し、1時間攪拌した。ある体積のジクロロメタン(DCM)(100mL)を反応混合物に加え、混合物を50mLアリコートの飽和炭酸水素ナトリウムで3回及び50mLアリコートのブラインで1回抽出した。生成物を含有する有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空ろ過後、溶媒を真空下で除去して半精製した生成物トリス(tBu)DOTA-(Fmoc)Lys-DFOBを黄色い油状物質として得た。粗収率=102.7%。コメント:Fmoc-L-LYS-DOTA(OBu))-OH(1c)骨格は、当該技術分野において既知の方法に基づいて研究室内で調製した(例えばDe Leon-Rodriguez et al (2004) Solid-phase synthesis of DOTA-peptides, Chem. - Eur. J. 10, 1149-115を参照する)。
【0362】
DFOB-L-LYS-DOTA(3)
DFOB-Fmoc-L-Lys-モノ-アミド-DOTA-トリス(t-Buエステル)(134.6mg,91.9μmol)のサンプルをピペリジン:DMF(1:4,0.4mL:1.6mL)溶液に懸濁し、これを室温で1時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、室温で16.5時間攪拌しながら残留物をTFA:DCM(9:1,900μL:100μL)に溶解した。溶媒を真空下で除去し、残りのTFAをメタノール及びその後のトルエンでの連続的処理(溶解/真空下除去)により除去した。油状残留物を最小アリコートの水に懸濁し、溶液のpHをアリコートの1M NaOH又はHClで7に調整した。溶媒を真空下で除去して油状残留物を与え、これをHPLC精製用にHO:アセトニトリル(ACN)7:3に溶解した。DOTA-Lys-DFOBを含有する画分を集め、溶媒を高真空凍結乾燥装置を用いて除去して白色粉末を与えた。最終収率(HPLC精製後):40.5%。
【0363】
47861216[M]について計算したm/z:[M+H]1075.6、[M+2H]2+538.3、[M+3H]3+359.2;測定値1075.5,538.4,359.3。図4a及び図5aを参照する。
【0364】
実施例4
3成分系DFOB-L-LYS-DOTA(3)色々な金属イオンに曝露した時の選択的錯体形成
単独のキレートリガンドDFOB-L-LYS-DOTA(3)の選択的金属錯体形成を以下に詳述する。
【化25】
【0365】
上述したように、DFOB-L-LYS-DOTA(3)を、別々の実験でZr(IV)及びLu(III)を含む溶液と混合した。両方の場合において、ESI-MS分析は、DFOB-L-LYS-DOTA(3)の2種類のキレートリガンドの1つのみが金属イオンと錯体を形成したことと一致した。Zr(IV)及びLu(III)に対する既知のキレートリガンド親和性は、2種類の金属がDFOB-L-LYS-DOTA(3)の異なるキレートリガンドと錯体を形成したことと一致した。図4及び図5は、実施例4a及び実施例4bのLCMS及び質量分析の結果を提供する。
【0366】
実施例4a:Zr(IV)-DFOB-L-LYS-DOTA(Zr-3)の形成
DFOB-L-LYS-DOTA(3)の2.5mM酢酸アンモニウム溶液(0.2M,pH8)249μLに、ZrClの50mM水溶液62μLを加えた。生じたZr(IV):DFOB-L-LYS-DOTA(3)の5:1溶液を37℃で2時間、ついで
室温で20時間攪拌させたままにした。生成物をLC-MSにより分析した。ESI-MS C47831216Zr[M]について計算したポジティブイオン:m/z=1161.51。図4b及び図5bを参照する。
【0367】
実施例4b:Lu(III)-DFOB-L-LYS-DOTA(Lu-3)の形成
DFOB-L-LYS-DOTA(3)の2.5mM酢酸アンモニウム溶液(0.2M,pH8)249μLにLuClの50mM水溶液62μLを加えた。生じたLu(III):DFOB-L-LYS-DOTA(3)の5:1溶液を37℃で2時間、その後室温で20時間攪拌したままにした。生成物をLC-MSにより分析した。ESI-MSC47831216Lu[M]について計算したポジティブイオン:[M+H]1247.55。図4c及び図5cを参照する。
【0368】
実施例5
4成分系DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)の合成
DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)の実施形態の合成を以下に詳述する。
【化26】
【0369】
PPH(N-OBu)-Fmoc-L-LYS-(DOTA(OBu))-OH
(4a)
Fmoc-L-Lys(DOTA(OBu))-OH(1c)(L-LYS-DOTA,CAS:479081-06-6)(102.3mg,110.9μmol)のサンプルをジメチルホルムアミド(DMF)(2mL)に溶解し、その後N,N,N′,N′-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)(49.3mg,130μmol)を加えた。この溶液を室温で10分間攪拌し、その後ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(38.6μL,221.6μmol)を加えた。この溶液を室温で30分間攪拌した。5-(tert-ブトキシ(5-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル)アミノ)-5-オキソペンタン酸(CAS:2334242-42-9)をTFAで処理することにより(1:9)調製した5-((5-アミノペンチル)(tert-ブトキシ)アミノ)-5-オキソペンタン酸PPH(N-OBu)(39.3mg,136.4μmol)のサンプルをこの溶液に加え、この溶液を室温で20時間攪拌した。ある体積のDCM(20mL)を反応混合物に加え、混合物を10mLアリコートの飽和炭酸水素ナトリウムで3回抽出した。生成物を含有する有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空ろ過後、溶媒を真空下で除去して残留物を得て、これをDCMに溶解し、自動フラッシュクロマトグラフィーを用いて半精製した(Grace Reverleris X2,30mL/分、12gカートリッジ、0~0.4分は5:95DCM:MeOH、0.4~7.7分は、5~28%DCM、7.3~12.68分は28%DCM、12.68~13.41分は28~100%DCM、13.41~15.60分は100%DCM)。集めた画分から溶媒を真空下で除去して半精製PPH(N-OBu)-Fmoc-L-LYS-(DOTA(OBu))-OH(4a)を得た。
【0370】
DFOB-PPH(N-OBu)-Fmoc-L-LYS-(DOTA(OBu))-OH(4b)
PPH(N-OBu)-Fmoc-L-LYS-(DOTA(OBu))-OH(4a)(167.4mg,140.3μmol)のサンプルをジメチルホルムアミド(DMF)(2mL)に溶解し、その後N,N,N′,N′-テトラメチル-O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)(69.5mg,183.3μmol)を加えた。この溶液を室温で10分間攪拌し、その後ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(49μL,281.3μmol)を加えた。この溶液を室温で30分間攪拌し、その後デスフェリオキサミンBメシル酸塩(1a)(117.8mg,179.4μmol)を加え、溶液を室温で24時間攪拌した。ある体積のDCM(20mL)を反応混合物に加え、混合物を10mLアリコートの飽和炭酸水素ナトリウムで3回抽出した。生成物を含有する有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空ろ過後、溶媒を真空下で除去して、反応条件のためDFOB-PPH(N-OBu)-Fmoc-L-LYS-(DOTA(OBu))-OH(4b)のFmocが脱保護された類縁体であることが分かった生成物を得た。
【0371】
DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)
DFOB-PPH(N-OBu)-Fmoc-L-LYS-(DOTA(OBu))-OH(4b)のFmocが脱保護された類縁体(34.9mg,23.1mg)のサンプルを室温で24時間攪拌しながらTFA:DCM(9:1,450μL:50μL)に溶解した。溶媒を真空下で除去し、残りのTFAをメタノール及びその後のトルエンでの連続的処理(溶解/真空下除去)により除去した。油状残留物を水200μLに懸濁し、溶液のpHをアリコートの1MNaOH又はHClで7に調整した。溶媒を真空下で除去してDFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)を淡黄色固体として与えた。図6を参照する。
【0372】
DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)の金属錯体形成
発明者らは、DFOB-L-LYS-DOTA(3)及びDFOB-DOTA(2)で観測された結果に基づいて、DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)がZr(IV)及びLu(III)などの金属イオンを選択的にロードすると予想した(実施例2及び実施例4を参照する)。
【0373】
実施例6
89Zr結合を高める各種部分を含む化合物の合成
発明者らは、PPH-O、PPH-S及びPPH-Sなどのモノマーは、4成分系のPPHを実施例5に記載された合成経路を用いて置き換えるために用いることもあると予想する。PPH-O、PPH-Oなどのモノマーは、実施例5に記載された合成経路から修正され、ステップ(iii)及び(iv)に加えて還元的脱保護ステップをさらに含む合成経路でPPHを置き換えるのに用いることもある。これは、PPH-O、PPH-Oでは、N-O-Bn付加物のような保護が必要となるからである。保護基の据え付け及び除去方法は、当該技術分野において周知である。
【0374】
発明者らはさらに、DFOB-L-LYS-DOTA(3)及びDFOB-DOTA(2)で観測された結果に基づいて、以下に示す化合物4a~cなどの代わりの4成分系が、Zr(IV)及びLu(III)などの金属イオンを選択的にロードすると予想する(実施例2及び実施例4を参照する)
【化27】
【0375】
実施例7
逆ヒドロキサム酸を含む系の合成
実施例6に詳述した系では、89Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高めるための部分として「正の」ヒドロキサム酸モノマーに注目した。代わりの系は、
Zrに選択的なキレートリガンドの89Zr親和性を高めるための部分として逆ヒドロキサム酸を利用することもある。逆ヒドロキサム酸はまた、当該技術分野においてレトロヒドロキサム酸としても知られている。逆ヒドロキサム酸の調製方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Lifaら(2015) Inorg. Chem. 54, 3573-3583, Tieuら(2017) Inorg. Chem. 56, 3719-3728及びSresutharsanら(2017) J. Inorg. Biochem. 177, 344-351を参照する)。逆ヒドロキサム酸を、実施例5及び実施例6に記載されるものと同一又は類似する条件により本発明の化合物に組み入れることもある。正のヒドロキサム酸5-((5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ)-5-オキソペンタン酸(PPH)及び対応する系DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)の構造を、相当する逆ヒドロキサム酸4-(6-アミノ-N-ヒドロキシヘキサンアミド)ブタン酸(レトロ-PPH)及び関連する4成分系DFOB-レトロ-PPH-L-LYS-DOTA(レトロ-4)と共に図7に示す。
【0376】
実施例8
DFOB-PPH-DOTAの合成
DFOB-PPH-DOTAを、当該技術分野において既知の方法を用いて、例えば、DFOB-PPH-L-LYS-DOTA(4)について実施例5で上述したものの類似経路にしたがって、調製してよい。したがって、DFOB-PHB-DOTAを以下の図式にしたがって調製してよい。
【化28】
【0377】
実施例9
DFOB-L-LYS(NCS)-DOTAの合成
【化29】

DFOB-L-LYS-DOTA(5mg,4.65μmol)のサンプルをイソプロパノール:水(3.8:1,316μL:104μL)の溶液に溶解し、その後クロロホルム(500μL)及びトリエチルアミン(8.28μL,46.5μmol)中のp-フェニレン-ジイソチオシアナート(9.2mg,47.9μmol)を加えた。この溶液を室温で21.5時間攪拌した。クロロホルムを真空下で除去した後に上清を分離するために残りの溶液を遠心分離した。上清を真空下で除去して半精製の生成物を白色粉末として得た。図8を参照する。
【0378】
発明者らは、この化合物は、抗体などの標的部分に対する結合体形成に適すると予想した。発明者らはさらに、DFOB-L-LYS-DOTA(3)及びDFOB-DOTA(2)で観測された結果に基づいて、この化合物は、標的部分に結合体を形成してもしなくても、Zr(IV)及びLu(III)などの金属イオンを選択的にロードすると予想
した(実施例2及び実施例4を参照する)。
【0379】
実施例10
化合物(DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA)を、以下に詳述するように調製した。発明者らはさらに、本発明のPEG基の遊離アミン基は、標的部分に対する結合体形成を可能にするさらなる化学に適すると予想する。
【0380】
N-Boc-Amino-Acid-PEG4の合成
Amino-Acid-PEG4(121.5mg,0.46mmol)及び水酸化ナトリウム(23.4mg,0.59mmol)をジオキサン:水(2:1,866:434μL).の混合物中に溶解した。この溶液を0℃に冷却した後、ジオキサン:水(2:1,176.9:88.6μL)の混合物中にBocO(166.1mg,0.76mmol)を滴加した。この溶液を室温で21時間攪拌した。完了時、溶媒を真空下で除去した後残留物を水に溶解した(20mL)。残留物を酢酸エチル(3x12mL)で洗浄してから水相を1MHClでpH1~2に調整し、酢酸エチル(3x20mL)でさらに抽出した。有機画分を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後溶媒を真空下で除去してN-Boc-Amino-Acid-PEG4を無色油状物質として得た。
【0381】
DFOB-L-LYS-EPS-N-Boc-PEG4-DOTA(OtBu)の合成
N-Boc-Amino-Acid-PEG4(約14.9mg、0.041mmol)をDMF(1mL)中に溶解した後、DIPEA(10.4μL,0.060mmol)を加え、反応を室温で10分間攪拌した。この溶液にHBTU(15.4mg,0.041mmol)を加え、溶液を室温で30分間攪拌した。DMF(5mL)中のDFOB-L-LYS-EPS-DOTA(OtBu)(約44.5mg、0.036mmol)を加え、溶液を室温で2時間攪拌した。完了時、反応溶液をDCM(50mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(3x25mL)及びブライン(1x25mL)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を真空下で除去してDFOB-L-LYS-EPS-N-Boc-PEG4-DOTA(OtBu)を黄色の油状物質として与えた(28.5mg,46.9%)。
【0382】
DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAの合成
DFOB-L-LYS-EPS-N-Boc-PEG4-DOTA(OtBu)(28.5mg,0.019mmol)をTFA:DCM(9:1,2mL)の溶液に溶解し、室温で18時間攪拌した。完了時、溶媒を真空下で除去した。残留物をメタノール(5mL)に溶解し、溶媒を真空下で除去した後、トルエン(5mL)で繰り返した。1MNaOH及び1MHClを用いて残留物をpH7に中和してDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAを淡黄色固体として与えた。
【化30】
【0383】
実施例11
化合物(NCS-活性化-DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA-化合物D2)を、以下に詳述するとおり調製した。
【化31】
【0384】
L-Fmoc-LYS-EPS-DOTA(OtBu)の合成
DOTA(OtBu)(1.7677g,3.09mmol)のDMF溶液(50mL)にDIPEA(3.6mL,20.67mmol)を加えた。混合物を室温で10分間攪拌した。ついでHBTU(1.1728g,3.09mmol)を加え、混合物を室温でさらに30分間攪拌した。次にFmoc-Lys-OH HCl(1.2643g,3.43mmol)を加え、生じた混合物を室温でさらに2時間攪拌した。完了時、溶媒を真空下で除去した。残留物を固相抽出により精製した(方法A)。集めた画分を合わせて、凍結乾燥してL-Fmoc-Lys-DOTA(OtBu)(1)を黄色/白色固体(1.7402g,1.63mmol,52.8%)として得た。
【0385】
DFOB-L-Fmoc-LYS-EPS-DOTA(OtBu)の合成
L-Fmoc-LYS-EPS-DOTA(OtBu)(595.3mg,0.65mmol)のDMF溶液(50mL)にDIPEA(194μL,1.11mmol)を加えた。混合物を室温で10分間攪拌した。HBTU(258.2mg,1.10mmol)をついで加え、生じた混合物を室温でさらに30分間攪拌した。次にデスフェリオキサミンBメシル酸塩(444.1mg,0.67mmol)を加え、生じた混合物を50℃でさらに1時間攪拌した。完了時、反応溶液を真空下で除去した。生じた残留物をDCM(500mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(3x250mL)及び飽和ブライン(1x250mL)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を真空下で除去してDFOB-L-Fmoc-Lys-EPS-DOTA(OtBu)を黄色/緑色の油状物質として与えた(698mg,0.48mmol,70.6%)。
【0386】
DFOB-L-LYS-EPS-DOTA(OtBu)の合成
DFOB-L-Fmoc-Lys-EPS-DOTA(OtBu)(698mg,0.48mmol)をピペリジンpiperidine:DMF(1:4)(1mL:4mL)溶液に溶解し、室温で1時間攪拌したままにした。完了時、溶媒を真空下で除去した。ついで生じた残留物にジエチルエーテルを加え、10分間攪拌した後、エーテルをデカントした。溶媒を真空下で除去してDFOB-L-Lys-DOTA(OtBu)を黄色/白色結晶生成物として得た(539.4mg,0.43mmol,90%)。
【0387】
N-Boc-Amino-Acid-PEG4の合成
Amino-Acid-PEG4(395.3mg,1.49mmol)及び水酸化ナトリウム(84.7mg,2.12mmol)をジオキサン:水(2:1,4mL)の混合物に溶解した。溶液を0℃まで冷却した後、ジオキサン:水(2:1,1mL)の混合物中のBocO(613.9mg,2.81mmol)を滴加した。溶液を室温で18時間攪拌した。完了時、溶媒を真空下で除去した後、残留物を(20mL)に溶解した。残留物を酢酸エチル(3x12mL)で洗浄した後、水相を1MHClでpH1~2に調整し、酢酸エチルでさらに抽出した(3x20mL)。有機画分を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過した後、溶媒を真空下で除去してN-Boc-Amino-Acid-PEG4を淡黄色の油状物質として得た(387.5mg,1.06mmol,71.1%)。
【0388】
DFOB-L-LYS-EPS-N-Boc-PEG4-DOTA(OtBu)の合成
N-Boc-Amino-Acid-PEG4(118.8mg,0.33mmol)をDMF(50mL)に溶解した後、DIPEA(113.4μL,0.65mmol)を加え、反応を室温で10分間攪拌した。この溶液にHBTU(149.5mg,0.64mmol)を加え、これを室温で30分間攪拌した。DFOB-L-LYS-EPS-DOTA(OtBu)(539.4mg,0.43mmol)を加え、溶液を室温で約18.5時間攪拌した。完了時、反応溶液を真空下で除去した。生じた残留物をDCM(100mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(3x50mL)及び飽和ブライン(1x50mL)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を真空下で除去してDFOB-L-LYS-EPS-N-Boc-PEG4-DOTA(OtBu)を黄色い油状物質として与えた(465mg,0.29mmol,87.9%)。
【0389】
DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAの合成
DFOB-L-LYS-EPS-N-Boc-PEG4-DOTA(OtBu)(465mg,0.29mmol)をTFA:DCM(9:1,5mL)の溶液に溶解し、室温で約19時間攪拌した。完了時、溶媒を真空下で除去した。残留物をトルエン(10mL)に溶解し、最小量のメタノールですすいでバイアルから移し、その後溶媒を真空下で
除去した。生じた残留物をSPE(方法B)により精製してDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAを黄色い油状物質として得た(115.7mg,0.09mmol,31.0%)。
【0390】
NCS-活性化-L-LYS-EPS-PEG4-DOTAの合成
この合成ステップでは、2個の反応を並行して行った。エッペンドルフチューブの中で、DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(13.2mg,10.2mg,合計0.018mmol)をDMF(1mL,1mL)に溶解し、この溶液にトリエチルアミン(28μL,22μL,合計0.29mmol)を加えた。別のエッペンドルフチューブの中で、1,4-フェニレンジイソチオシアナート(22.3mg,17.7mg,合計0.250mmol)のDMF溶液(920μL,484μL)を調製した。1,4-フェニレンジイソチオシアナート溶液にDFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA溶液を5アリコート(5x206μL,5x204μL)で加え、添加の間にパルスにして合わせた。各反応を追加のエッペンドルフチューブに分けた(合計4本)。生じた混合物を800rpmで1.5時間遠心分離した。完了時、生じた溶液をさらなる5個のエッペンドルフチューブに分け(チューブ当たり162μL,126μL,合計24チューブ)、ジエチルエーテル(各々約508μL,392μL)を加え、生じた溶液を冷蔵庫で2時間保管した。生じた溶液をついで12000rpmで3分間遠心分離した後、エーテルをデカントした。ペレットを冷ジエチルエーテルで洗浄し(各々約564μL,436μL)、風乾した。ペレットをDMF(各々約22.5μL,17.4μL)及びMeOH(各々約169μL,131μL)に溶解した後、ジエチルエーテル(各々約508μL,392μL)を加え、さらに約23時間冷蔵した。完了時、生じた溶液を12000rpmで3分間遠心分離した後、エーテルをデカントした。ペレットをさらに冷ジエチルエーテルで洗浄し(各々約564μL,436μL)、風乾した。ついでペレットをメタノール入りのバイアルに移し、真空下で乾燥させて粗NCS-活性化-DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2)を黄色/白色油状物質として得た。粗物質に対してHPLC精製を実行し、集めた画分を凍結乾燥して純粋な化合物D2を白色固体(2.9mg,0.002mmol,11.1%)として得た。この化合物を、LC-MSを用いて特徴づけ(図13~16)、この方法に基づいて>95%純度だった(図13)。
【0391】
高速液体クロマトグラフィー
分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、2個のLC-20APポンプ、SIL-10APオートサンプラー、SPD-20AUV/VIS検出器、及びFRC-10Aフラクションコレクターを備えた島津LC-20シリーズLCシステムで行った。セミ分取精製については、流速20mL min-1の島津Shimpack GISカラム(内径150x10mm、5mLmin-1,粒子径5μm)を用いた。有機相(B)は、ACN:TFA(99.95:0.05)から成った。水相(A)は、HO:TFA(99.95:0.05)から成った。スペクトルデータは、Shimadzu LabSolutions Software (version 5.98)を用いて取得し、加工した。この方法では、流速5mL min-1で20~25%溶媒Bで5分間、25~45%溶媒Bで35分間、20%溶媒Bで5分間の勾配を用いた。
【0392】
固相抽出
固相抽出法(SPE)を、手動真空マニホールド上でWaters SEP-PAK C18 5g及び2gの真空カートリッジを用いて行った。
【0393】
方法A
カートリッジを、1カラム容積のCAN、その後1カラム容積のMilli-Q水で条件付けした。サンプルを100%Milli-Q水にロードし、反応容器から全ての残り
の残留物を最小量のCANですすいだ。ついでカートリッジを1カラム容積のMilli-Q水で洗浄した。カートリッジを2カラム容積のMilli-Q水の20~55%CANにかけて、45~55%画分を集めた。
【0394】
方法B
カートリッジを1カラム容積のCAN、その後1カラム容積のMilli-Q水で条件付けした。サンプルを100%Milli-Q水にロードした。ついでカートリッジを1カラム容積のMilli-Q水で洗浄した。カートリッジを4カラム容積のMilli-Q水中80%CANにかけて、これらの画分を集めた。
【0395】
実施例12
NCS-活性化DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2又はD2)のGirentuximabへの結合体形成
ジメチルスルホキシド(DMSO,2.5mg/mL)に溶解した1mgのNCS-活性化DFOB-L-LYS-EPS-PEG4-DOTA(化合物D2又はD2)(~20-倍モル過剰)を1xリン酸緩衝食塩水(PBS,10mg/mL)中6mgのGirentuximabに加えた。この混合物に6%v/vの1MNaCOを最終反応pH8.5~9.0で加えた。反応混合物を37℃で1時間反応させながら、550rpmで穏やかに攪拌した。生じた混合物をAmiconSpin Membranes(10kDa MWCO,0.5mL)を用いて、8~10回精製した。結合体形成した化合物の純度をHPLC(UV検出280nm)を用いて分析し、キレーター対抗体の比率を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法飛行時間型質量分析(MALDI TOF-MS)により本研究の各抗体について1~2であると決定した。
【0396】
実施例13
化合物D2-mAbの放射標識
化合物D2-mAb(この場合mAb=Girentuximab)を緩衝液中過剰な抗体濃度で89Zrと、550rpmで攪拌しながら37℃で60分間インキュベーションした。放射性radioTLCにより、未結合の89Zrはないと確認した。化合物をZebaSpin脱塩カラム(40kDaMWCO,2mL)を用いて回転させ、物質の放射化学収率が>95%であると決定され、物質をポジトロン放出断層撮影(PET)造影法用にマウスHT-29異種移植モデルに注射した。DFOB-mAb[89Zr]対照は、定量的放射化学収率を与える。化合物D2-mAbを過剰な抗体濃度で177Luと、400rpmで攪拌しながら37℃で60分間インキュベーションしたDOTA-mAb[177Lu]対照は、定量的放射化学収率を与える。
【0397】
実施例14
それぞれの対照化合物DFOB-mAb[89Zr]及びDOTA-mAb[177Lu]と比較した、化合物D2-mAb[89Zr]及び化合物D2-mAb[177Lu]のインビトロ試験
細胞結合アッセイ
播種及びインキュベーション
HT-29細胞を24ウェルプレートに濃度7.5x10細胞/ウェルで播種し、最終数をウェル当たり約2.5x10細胞にした。放射標識したmAbs(化合物D2-mAb[89Zr]、化合物D2-mAb[177Lu]、DFOB-mAb[89Zr]、DOTA-mAb[177Lu])を無血清(SF)細胞増殖培地(0.02μg,15mCi)に希釈し、各溶液の100μLを各ウェルに加えた。細胞を加湿インキュベーター中5%CO雰囲気下37℃で0.5、1、及び2時間の三通りでインキュベーションした。
【0398】
膜結合画分の決定
各時点で、増殖培地を除去し、細胞を氷冷PBS(1x,pH7.4,200μL)で2回洗浄することにより内部移行を停止した。受容体結合放射標識mAbをついで4M尿素(0.2M,pH2.0,200μL)を含有する氷冷グリシン緩衝液を5分間用いて除去した。各ウェルから緩衝液を集めて放射能をガンマカウンターで測定して膜結合画分を決定した。細胞をついで同一のグリシン緩衝液で1回洗浄した。
【0399】
内部移行した画分の決定
細胞を水酸化ナトリウム(1N,200μL)で30分間処理して細胞をすすぎ、内部移行した画分を集め、集めた後の画分の放射能をガンマカウンターで測定した。
【0400】
非特異的結合
アッセイ後に4個の非実験ウェルの細胞を計数し、細胞数を平均してウェル当たりの細胞数の推定値を取得した。各ウェルで細胞を非放射標識(2μg,50μL)及び放射標識(0.02μg,50μL)とともに共インキュベーションし、上の手順を膜結合及び内部移行画分について繰り返すことにより非特異的結合及び内部移行を決定した。
【0401】
これらのデータから、化合物D2-mAb[177Lu]及びDOTA-mAb[177Lu]の膜結合した又は内部移行した放射標識mAbの画分は、1時間及び2時間で同様であり(図17及び18)、化合物D2-mAb[89Zr]及びDFOB-mAb[89Zr]の膜結合した又は内部移行した放射標識mAbの画分は、1時間及び2時間で同様だった(図19及び20)。
【0402】
実施例15
それぞれの対照化合物DFOB-mAb[89Zr]及びDOTA-mAb[177Lu]と比較した、化合物D2-mAb[89Zr]及び化合物D2-mAb[177Lu]のインビボ及びエクスビボ試験
8週齢のオスのBalb/cヌードマウスに50:50マトリゲル50μL中のHT-29(10x10)細胞及びリン酸緩衝食塩水中の細胞を各マウスの右側腹部に皮下注射した。標識したmAbs(化合物D2-mAb[89Zr]又はDFOB-mAb[89Zr])を尾静脈から注射し(29Gneedle;~1-4MBq)、その後マウスの89ZrをSiemensInveonPET-CT装置を用いて各種時点で画像化し、48時間で屠殺し、回収した器官をガンマ計数により計数した。
【0403】
インビボ及びエクスビボ体内分布
89Zr標識したmAbsを注射したマウスを、注射後4時間、24時間及び48時間で画像化し(図21)、体内分布を48時間で測定した(図22)。注射後48時間で、ガンマ計数し、89Zr及び177Luを注射したマウスの器官分布を定量化するために器官を回収した(図23)。
【0404】
実施例16
化合物D2-mAb[natLu][89Zr]及び化合物D2-mAb[177Lu][natZr]の調製
以下の図式に示す通り、化合物D2を、化合物D2[natLu]を作成するために無毒の天然のLu(III)にロードすることができ、化合物D2[natLu]は続けてmAbと結合体を形成して、89Zrで放射標識して免疫学的PET造影法用の化合物D2-mAb[natLu][89Zr]を作成するための化合物D2-mAb[natLu]を作成する。
【化32】
【0405】
化合物D2-mAb[natLu][89Zr]であれば、化合物D2のDOTA領域と結合する天然のLu(III)と化合物D2をインキュベーションすることにより調製する。化合物D2[natLu]であれば、mAbと結合体を形成して化合物D2-mAb[natLu]を作成し、この化合物であれば、免疫学的PET造影法に有用な化合物D2-mAb[natLu][89Zr]を作成するよう89Zrで放射標識する。
【0406】
同様に、以下の図式に示す通り、化合物D2を、化合物D2[natZr]を作成するために無毒の天然のZr(IV)にロードすることができ、化合物D2[natZr]は続けてmAbと結合体を形成して、177Luで放射標識して治療用の化合物D2-mAb[177Lu][natZr]を作成するためのD2-mAb[natZr]を作成する。
【化33】
【0407】
化合物D2-mAb[177Lu][natZr]であれば、化合物D2のDFOB領域と結合する天然のZr(IV)と化合物D2をインキュベーションすることにより調製する。化合物D2[natZr]であれば、mAbと結合体を形成して化合物D2-mAb[natZr]を作成し、この化合物であれば治療に有用な化合物D2-mAb[177Lu][natZr]を作成するよう177Luで放射標識する。
【0408】
化合物D2-mAb[natLu][89Zr]及び化合物D2-mAb[177Lu][natZr]は、同一の薬物動態及び体内分布特性を有することになり、これは捜索法に有用である。この手法は、天然のLu(III)及び天然のZr(IV)を使用し、両者とも無毒の金属イオンである。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】