(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】タンパク質製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231219BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231219BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231219BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231219BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231219BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 V
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/14
A61P43/00 111
A61P37/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P11/06
A61P17/06
A61K47/22
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537098
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 AU2021050736
(87)【国際公開番号】W WO2022126173
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521239819
【氏名又は名称】シーエスエル イノベーション プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】ディアンナ グレース グッドオール
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン アーロン エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェマ ナスタ
(72)【発明者】
【氏名】モーハマド レスラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC29
4C076DD09E
4C076DD09F
4C076DD09Q
4C076DD43
4C076DD43Z
4C076DD51Q
4C076DD60Z
4C076FF11
4C076FF15
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA14
4C085AA33
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、タンパク質製剤及びその使用に関する。特に、本開示は、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質を含む製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、有機酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つのアミノ酸安定剤と、を含む、液体医薬製剤であって、前記製剤が、5.0~6.0のpHを有する、製剤。
【請求項2】
前記タンパク質が、前記製剤中に、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、又は少なくとも100mg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記タンパク質が、前記製剤中に、110mg/mL~130mg/mLの濃度で存在する、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤が、水性製剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記有機酸緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記有機酸緩衝液が、前記製剤中に、10~30mMの濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、及びポロキサマー188からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート80である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤が、前記製剤中に、0.01%(w/v)~0.05(w/v)の濃度で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアミノ酸安定剤が、プロリン及び/又はアルギニンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアミノ酸安定剤が、プロリンを含み、プロリンが、前記製剤中に、50mM~150mMの濃度で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアミノ酸安定剤が、アルギニンを含み、アルギニンが、前記製剤中に、50mM~150mMの濃度で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤が、ヒスチジン緩衝液と、プロリンと、ポリソルベート80と、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤が、アルギニンを更に含む、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む液体医薬製剤であって、前記製剤が、5.0~6.0のpHを有する、製剤。
【請求項16】
前記製剤が、5.5~5.9のpHを有し、12mM~30mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、60mM~125mMのプロリンと、60mM~125mMのアルギニンと、を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が、5.5~5.9のpHを有し、15mM~25mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、90mM~110mMのプロリンと、90mM~110mMのアルギニンと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記製剤が、5.7のpHを有し、20mMのヒスチジン緩衝液と、0.03%(w/v)のポリソルベート80と、100mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記製剤が、20℃で20mPa*s未満、20℃で10mPa*s未満、又は20℃で7mPa*s未満の動的粘度を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記製剤が、250mOsm/kg~400mOsm/kgの範囲の浸透圧を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
a)前記製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、5%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、前記製剤中の前記タンパク質の少なくとも95%が、モノマーであること、
c)前記製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、50%以下の酸性種を含むこと、
d)前記製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)前記製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、5%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される、請求項1~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
HMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量が、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記製剤が、0.5mL~5mLの範囲の体積を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
前記タンパク質が、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)シグナル伝達を阻害する、請求項1~23のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
前記タンパク質が、抗体の抗原結合ドメインを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
前記タンパク質が、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)Fab、
(vii)F(ab’)2、
(viii)Fv、
(ix)(i)~(viii)のうちの1つが、抗体の定常領域、Fc、又は重鎖定常ドメイン(C
H)C
H2及び/若しくはC
H3に連結されている、並びに
(x)抗体、からなる群から選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
前記タンパク質が、抗体可変領域を含み、前記抗体可変領域が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
H)、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
L)を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
前記タンパク質が、抗体可変領域を含み、前記抗体可変領域が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV
Hの3つのCDRを含むV
H、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むV
Lの3つのCDRを含むV
Lを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
前記タンパク質が、IgG
4定常領域を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
前記IgG
4定常領域が、安定化IgG
4定常領域である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記タンパク質が、
(i)配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(ii)配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体である、請求項1~30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む、医薬製剤であって、前記製剤が、5.0~6.0のpHを有し、前記タンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV
H、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むV
Lを含む、製剤。
【請求項33】
G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む医薬製剤であって、前記製剤が、5.0~6.0のpHを有し、前記タンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV
Hの3つのCDRを含むV
H、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むV
Lの3つのCDRを含むV
Lを含む、製剤。
【請求項34】
対象の循環好中球を低減する方法であって、前記対象に、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤を投与することを含む、方法。
【請求項35】
対象の好中球媒介性状態を治療又は防止する方法であって、前記対象に、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記好中球媒介性状態が、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん、又は虚血再灌流傷害である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
対象の好中球媒介性状態の治療又は防止における使用のためのキットであって、
(a)請求項1~33のいずれか一項に記載の少なくとも1つの医薬製剤と、
(b)前記対象の前記好中球媒介性状態の治療又は防止において前記キットを使用するための説明書と、
(c)任意選択で、少なくとも1つの更なる治療活性化合物又は薬物と、を含む、キット。
【請求項38】
前記製剤が、バイアル、プレフィルドシリンジ、又はオートインジェクタデバイス中に存在する、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
請求項1~33のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、プレフィルドシリンジ。
【請求項40】
請求項1~33のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、オートインジェクタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2020年12月16日に出願された「タンパク質製剤及びその使用」と題された豪国特許出願公開第2020/904684号の優先権を主張する。この全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形態の配列表とともに出願される。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、タンパク質製剤及びその使用に関する。特に、本開示は、顆粒球コロニー刺激因子受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質を含む製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、顆粒球産生の主要な調節因子である。G-CSFは、骨髄間質細胞、内皮細胞、マクロファージ、及び線維芽細胞によって産生され、産生は、炎症刺激によって誘導される。G-CSFは、G-CSF受容体(G-CSFR)を介して作用し、G-CSFRは、主に、好中球上で発現されるが、骨髄系前駆細胞、内皮細胞、単球/マクロファージ、並びにT及びBリンパ球上でも発現される。G-CSF又はG-CSFRが欠損したマウスは、顕著な好中球減少を示し、これは、定常状態顆粒形成におけるG-CSFの重要性を実証する。G-CSFは、好中球の産生及び放出を増加させ、造血幹細胞及び前駆細胞を動員し、成熟好中球の分化、寿命、及びエフェクター機能を調節する。G-CSFはまた、単球/マクロファージ数の増大、食作用機能の増強、並びに炎症性サイトカイン及びケモカイン産生の調節を含む、マクロファージへ効果を及ぼし得る。G-CSFはまた、内皮前駆細胞を動員し、血管新生を誘導又は促進することが示されている。
【0005】
G-CSFは、例えば、好中球減少を治療するためにかつ/又は造血幹細胞を動員するために、治療的に使用されるが、G-CSFはまた、いくつかの状態、例えば、炎症性状態及び/又はがんにおいて、負の作用を有する。例えば、G-CSFの投与は、関節リウマチ(RA)、マウスコラーゲン誘導性関節炎(CIA)、及びラットにおけるCIAの受動的転移モデルを悪化させる。G-CSFは、RA患者の血清及び滑液中に見出されている。更に、RAを患っている患者において増加したレベルで見出されるインターロイキン(IL)-1及び腫瘍壊死因子α(TNFα)は、ヒト滑膜線維芽細胞及び軟骨細胞によるG-CSFの産生を誘導する。G-CSFが欠損したマウスは、急性及び慢性炎症性関節炎の誘導に耐性がある。
【0006】
G-CSFはまた、多発性硬化症(MS)において役割を果たすことが示されている。例えば、G-CSFは、細胞外マトリックスへのMSの自己反応性T細胞株モデルの接着を、MS症状を悪化させることが既知のインターフェロンγ及びTNFαと同様に有効に増強する。また、G-CSF欠損マウスは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症に耐性がある。
【0007】
G-CSF及びG-CSFRはまた、がんに関連しており、研究において、このシグナル伝達経路は、様々ながんの化学療法耐性、成長、生存、浸潤性、及び転移に寄与することが示されている。また、G-CSFは、固形腫瘍の発症において重要なプロセスである血管新生を誘導することが示されている。
【0008】
G-CSF及びG-CSFRに対する抗体及び阻害剤が存在するが、薬物製造業者にとっての製剤開発における課題が、ますます増加している。例えば、皮下投与に好適な高濃度抗体製剤(例えば、25mg/mL以上のタンパク質)の製剤化に関連する多くの課題が存在する。皮下投与のための製剤は、典型的には、より少ない注入体積を達成するためにより高い濃度の産生物を必要とするが、タンパク質濃度の増加は、しばしば、タンパク質凝集及び分解、溶解度、安定性、並びに粘度に悪影響を及ぼす。内在性タンパク質特性の変化に加えて、製剤化タンパク質が、より高い温度(例えば、室温)で、長期間(例えば、3ヶ月超)、依然として安定していることを確実にするための処理及び貯蔵の困難性を含む、製造及びサプライチェーン課題もまた、存在する。他の課題は、最終製剤のレオロジー特性及びシリンジアビリティ特性の最適化を含む。例えば、粘性溶液は、典型的には、投与するためにより高い注入力を必要とし、したがって、長期注入時間もまた、必要とされ得、これは、患者の疼痛及び不快感に寄与する。
【0009】
高濃度抗体製剤を製造するための様々な解決策は、再構成のための凍結乾燥製剤、無緩衝液製剤、並びに高濃度の塩の添加、又は製剤の凝集及び/若しくは粘度を低減するための他の添加剤の添加を含む。しかしながら、そのような賦形剤の過剰な量の使用は、高張調製物、又は製剤のイオン強度の変化、及び関連するタンパク質凝集問題をもたらし得る。
【0010】
したがって、G-CSFRに結合するタンパク質治療薬を含む製剤であって、安定しており、好中球媒介性状態を治療するための対象への投与に好適である、製剤の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、G-CSFRに結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質の医薬製剤の同定に基づく。
【0012】
本発明者らは、G-CSFRに結合する抗原結合ドメインを含む高濃度のタンパク質を含む液体製剤であって、依然として安定しており、可溶性であり、注入に好適な粘度を有する、液体製剤を製造することができることを見出した。製剤が、カニクイザルに皮下投与されたときに、タンパク質は、高い生物学的利用能を有し、これは、治療的使用のためのこれらの製剤の適合性を実証した。本開示の製剤は、有機酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つのアミノ酸安定剤と、を含む。特に、本開示の製剤を製造する際に、本発明者らは、追加の塩及び/又は安定剤が必要とされないことを見出した。
【0013】
したがって、本開示は、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、有機酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つのアミノ酸安定剤と、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有する、製剤を提供する。
【0014】
一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも2mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも5mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも10mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも20mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも30mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも40mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも50mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも60mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも70mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも80mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも90mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも100mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも110mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも120mg/mLの濃度で存在する。
【0015】
一例では、タンパク質は、製剤中に、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、又は少なくとも100mg/mLの濃度で存在する。
【0016】
一例では、タンパク質は、製剤中に、20~200mg/mLの範囲の濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、50~150mg/mLの範囲の濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、80~140mg/mLの範囲の濃度で存在する。
【0017】
一例では、タンパク質は、製剤中に、110~130mg/mLの濃度で存在する。一例では、タンパク質は、製剤中に、約120mg/mLの濃度で存在する。
【0018】
一例では、タンパク質は、抗体の抗原結合ドメインを含む。例えば、いくつかの例では、タンパク質は、少なくとも、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VH及びVLは、結合して、抗原結合ドメインを含むFvを形成する。いくつかの例では、タンパク質はFvを含む。いくつかの例では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、又は
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)Fab、
(vii)F(ab’)2、
(viii)Fv、
(ix)抗体、Fc、又は重鎖定常ドメイン(CH)2及び/若しくはCH3の定常領域に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
(x)アルブミン若しくはその機能的断片若しくは変異体、又はアルブミンに結合するタンパク質に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、あるいは
(xi)抗体、を含む。
【0019】
いくつかの例では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、又は
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)Fab、
(vii)F(ab’)2、
(viii)Fv、
(ix)抗体、Fc、又は重鎖定常ドメイン(CH)2及び/若しくはCH3の定常領域に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
(x)アルブミン、その機能的断片若しくは変異体、又はアルブミンに結合するタンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合断片)に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、並びに
(xi)抗体、からなる群から選択される。
【0020】
一例で、タンパク質は、Fc領域を含む。
【0021】
一例では、タンパク質は、タンパク質の半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。一例では、抗体は、胎児性Fc受容体FcRn)に対するFc領域の親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFc領域を含む。
【0022】
一例では、タンパク質は、抗体である。例示的な抗体は、WO2012/171057に記載されている。
【0023】
一例では、タンパク質は、細胞の表面上で発現されるhG-CSFRに、少なくとも約5nMの親和性で結合する。一例では、タンパク質は、細胞の表面上で発現されるhG-CSFRに、少なくとも約4nMの親和性で結合する。一例では、タンパク質は、細胞の表面上で発現されるhG-CSFRに、少なくとも約3nMの親和性で結合する。一例では、タンパク質は、細胞の表面上で発現されるhG-CSFRに、少なくとも約2nMの親和性で結合する。一例では、タンパク質は、細胞の表面上で発現されるhG-CSFRに、少なくとも約1nMの親和性で結合する。
【0024】
いくつかの例では、タンパク質は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)シグナル伝達を阻害する。
【0025】
一例では、タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも約5nMのIC50で阻害する。一例では、タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも約4nMのIC50で阻害する。一例では、タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも約3nMのIC50で阻害する。一例では、タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも約2nMのIC50で阻害する。一例では、タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも約1nMのIC50で阻害する。一例では、タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも約0.5nMのIC50で阻害する。
【0026】
一例では、タンパク質(又は抗体)は、キメラ、非免疫化、ヒト化、ヒト、又は霊長類化である。一例では、タンパク質又は抗体は、ヒトである。
【0027】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、G-CSFRへの、配列番号4に記載の配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5に記載の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体C1.2Gの結合を競合的に阻害する。
【0028】
一例では、タンパク質は、配列番号1の111~115、170~176、218~234、及び/又は286~300から選択される1つ又は2つ又は3つ又は4つの領域中の残基を含むエピトープに結合する。
【0029】
一例では、タンパク質は、VH及びVLを含み、
(i)VHは、配列番号6に記載の配列を含むCDR1と、配列番号7に記載の配列を含むCDR2と、配列LGELGX1X2X3X4(配列番号12)を含むCDR3と、を含み、
X1は、トリプトファン、グルタミン、メチオニン、セリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、及びヒスチジンからなる群から選択され、
X2は、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、セリン、グリシン、及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、アスパラギン酸、メチオニン、グルタミン、セリン、ロイシン、バリン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、任意のアミノ酸、若しくはプロリン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グリシン、アルギニン、及びリジンからなる群から選択されるアミノ酸であり、並びに/又は
(ii)VLは、配列番号9に記載の配列を含むCDR1と、配列番号10に記載の配列を含むCDR2と、配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9(配列番号13)を含むCDR3と、を含み、
X1は、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、アラニン、及びセリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X2は、グルタミン、バリン、フェニルアラニン、アスパラギン、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、セリン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X5は、グルタミン酸、メチオニン、グルタミン、トリプトファン、セリン、バリン、アスパラギン、グリシン、アラニン、アルガニン、ヒスチジン、チロシン、リジン、及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X6は、チロシン、メチオニン、イソロイシン、及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、プロリン、アラニン、ヒスチジン、グリシン、及びリジンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X8は、ロイシン、グルタミン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、リジン、ヒスチジン、及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X9は、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、リジン、セリン、ヒスチジン、プロリン、トリプトファン、イソロイシン、グルタミン、グリシン、及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0030】
一例では、タンパク質は、抗体の抗原結合部位を含み、
(i)タンパク質は、ヒト顆粒球コロニー刺激因子受容体(hG-CSFR)に結合し、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)シグナル伝達を中和し、
(ii)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の237位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも20倍低いレベルで、結合し、
(iii)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の198位のメチオニンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも20倍低いレベルで、結合し、
(iv)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の172位のチロシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも20倍低いレベルで、結合し、
(v)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の171位のロイシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも100倍低いレベルで、結合し、
(vi)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の111位のロイシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも20倍低いレベルで、結合し、
(vii)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の168位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも5倍以下低いレベルで、結合し、
(viii)タンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の167位のリジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも5倍以下低いレベルで、結合し、
(ix)抗原結合部位は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の287位のアルギニンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに検出可能に結合せず、
(x)タンパク質は、hG-CSFR中の立体構造エピトープに結合し、
(xi)タンパク質は、hG-CSFRを発現するBaF3細胞のG-CSF誘導性増殖を、少なくとも1nMのIC50で阻害し、IC50は、2×104個のBaF3細胞を、0.5ng/mlのhG-CSFの存在下で、48時間培養することによって、判定され、BaF3細胞の増殖は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元を測定することによって、判定される。
【0031】
一例では、タンパク質は、抗体の抗原結合部位を含み、タンパク質の抗原結合部位は、ヒト顆粒球コロニー刺激因子受容体(hG-CSFR)に結合し、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)シグナル伝達を中和し、タンパク質は、
(i)配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の167位のリジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチド、及び/又は
(ii)配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の168位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドのうちの1つ以上へのモノクローナル抗体C1.2又はモノクローナル抗体C1.2Gの結合を競合的に阻害し、
C1.2は、配列番号2に記載の配列を含むVH、及び配列番号3に記載の配列を含むVLを含み、C1.2Gは、配列番号4に記載の配列を含むVH、及び配列番号5に記載の配列を含むVLを含み、タンパク質の抗原結合部位はまた、(i)及び/又は(ii)におけるポリペプチドに結合し、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、
(a)配列番号1の287位のアルギニン、
(b)配列番号1の237位のヒスチジン、
(c)配列番号1の198位のメチオニン、
(d)配列番号1の172位のチロシン、
(e)配列番号1の171位のロイシン、又は
(f)配列番号1の111位のロイシン
のうちのいずれか1つに対して置換する、配列番号1のポリペプチドへのタンパク質の結合のレベルは、配列番号1のポリペプチドへのタンパク質の結合のレベルよりも低く、タンパク質は、VH及びVLを含み、
(i)VHは、配列番号6に記載の配列を含むCDR1と、配列番号7に記載の配列を含むCDR2と、配列LGELGX1X2X3X4(配列番号12)を含むCDR3と、を含み、
X1は、トリプトファン、グルタミン、メチオニン、セリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、及びヒスチジンからなる群から選択され、
X2は、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、セリン、グリシン、及びイソロイシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、アスパラギン酸、メチオニン、グルタミン、セリン、ロイシン、バリン、アルギニン、及びヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、任意のアミノ酸、若しくはプロリン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グリシン、アルギニン、及びリジンからなる群から選択されるアミノ酸であり、並びに/又は
(ii)VLは、配列番号9に記載の配列を含むCDR1と、配列番号10に記載の配列を含むCDR2と、配列X1X2X3X4X5X6X7X8X9(配列番号13)を含むCDR3と、を含み、
X1は、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、アラニン、及びセリンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X2は、グルタミン、バリン、フェニルアラニン、アスパラギン、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、セリン及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、及びロイシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X5は、グルタミン酸、メチオニン、グルタミン、トリプトファン、セリン、バリン、アスパラギン、グリシン、アラニン、アルがニン、ヒスチジン、チロシン、リジン、及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X6は、チロシン、メチオニン、イソロイシン、及びトレオニンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、プロリン、アラニン、ヒスチジン、グリシン、及びリジンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X8は、ロイシン、グルタミン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、リジン、ヒスチジン、及びグリシンからなる群から選択されるアミノ酸であり、
X9は、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、リジン、セリン、ヒスチジン、プロリン、トリプトファン、イソロイシン、グルタミン、グリシン、及びバリンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0032】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号5と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0033】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0034】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0035】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0036】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLを含む。
【0037】
一例では、タンパク質は、抗体可変領域を含み、抗体可変領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLを含む。
【0038】
一例では、タンパク質は、
(i)配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(ii)配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0039】
一例では、タンパク質は、
(i)配列番号14若しくは18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は
(ii)配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む1つの重鎖、及び配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む1つの重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖を含む。
【0040】
一例では、タンパク質は、モノクローナル抗体である。
【0041】
一例では、抗体は、IgG抗体である。例えば、抗体は、IgG1、又はIgG2、又はIgG3、又はIgG4抗体である。
【0042】
一例では、抗体は、IgG4抗体である。
【0043】
一例では、抗体は、モノクローナルIgG4抗体である。
【0044】
一例で、タンパク質は、Fc領域を含む。例えば、Fc領域は、ヒトIgG1 Fc領域、又はヒトIgG4 Fc領域、又は安定化ヒトIgG4 Fc領域である。例えば、Fc領域は、ヒトIgG4 Fc領域である。一例では、抗体Fc領域は、(例えば、本明細書で考察されるような)二量体化を防止するために修飾されている。
【0045】
一例では、抗体又はその抗原結合断片は、IgG4定常領域を含む。
【0046】
一例では、IgG4定常領域は、安定化IgG4定常領域である。例えば、IgG4定常領域は、安定化ヒンジ領域を含む。例えば、安定化IgG4定常領域は、Kabatのシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,1987及び/又は1991)に従って、ヒンジ領域の241位のプロリンを含む。
【0047】
いくつかの例では、タンパク質は融合タンパク質である。したがって、いくつかの例では、タンパク質は、抗原結合部位を含み、抗原結合部位は、G-CSF又はG-CSFRに結合し、別のアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの例では、融合タンパク質は、
a)血清アルブミン若しくはその変異体、又は
b)可溶性補体受容体若しくはその変異体を含む。
【0049】
血清アルブミン及びその変異体についての例示的なアミノ酸配列は、WO2019/075519に提供されている。可溶性補体受容体及びその変異体についての例示的なアミノ酸配列は、WO2019/075519及びWO2019/218009に提供されている。
【0050】
いくつかの例では、可溶性補体受容体は、可溶性補体受容体タイプ1(sCR1)である。
【0051】
いくつかの例では、融合タンパク質は、補体阻害剤を含む。いくつかの例では、補体阻害剤は、補体成分1(C1)阻害剤である。一例では、C1阻害剤は、(「C1エステラーゼ阻害剤」としても既知の)C1-INH、又はその機能的変異体若しくは断片である。
【0052】
いくつかの例では、タンパク質は、G-CSF又はG-CSFRに結合する抗原結合部位と、異なる抗原に結合する別の抗原結合部位と、を含む。したがって、いくつかの例では、タンパク質は、多重特異性タンパク質(例えば、多重特異性抗体)である。いくつかの例では、タンパク質は、二重特異性タンパク質である。他の例では、タンパク質は、単一特異性である。
【0053】
いくつかの例では、他の抗原結合部位は、インターロイキン又はその受容体に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、補体タンパク質に結合する。
【0054】
いくつかの例では、他の抗原結合部位は、インターロイキン6(IL-6)又はIL-6受容体(IL-6R)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、インターロイキン3(IL-3)又はIL-3受容体(IL-3R)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、インターロイキン5(IL-5)又はIL-5受容体(IL-5R)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、インターロイキン4(IL-4)又はIL-4受容体(IL-4R)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、インターロイキン13(IL-13)又はIL-13受容体(IL-13R)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)又はGM-CSF受容体(GM-CSFR)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ(CSF2RB)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、C1に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、補体成分2(C2)に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、血液凝固因子に結合する。いくつかの例では、他の抗原結合部位は、凝固因子XII(FXII)に結合する。
【0055】
一例では、有機酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、グルタミン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、及びクエン酸緩衝液からなる群から選択される。一例では、有機酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液及びグルタミン酸緩衝液からなる群から選択される。
【0056】
一例では、有機酸緩衝液は、アミノ酸緩衝液である。例えば、アミノ酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液及びグルタミン酸緩衝液からなる群から選択される。
【0057】
有利には、ヒスチジン緩衝液及びグルタミン酸緩衝液は、クエン酸緩衝液及び/又はコハク酸緩衝液と比較して、より高い熱及び凝集安定性(すなわち、凝集への傾向の低減)を有する。
【0058】
一例では、有機酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液である。本開示における使用に好適なヒスチジン緩衝液は、当業者には明らかであり、例えば、ヒスチジンクロリド、ヒスチジン酢酸、ヒスチジンリン酸、及びヒスチジン硫酸を含んだ。一例では、ヒスチジン緩衝液は、L-ヒスチジンである。
【0059】
一例では、有機酸緩衝液は、グルタミン酸緩衝液である。本開示における使用に好適なグルタミン酸緩衝液は、当業者には明らかであり、例えば、グルタミン酸一ナトリウムを含む。
【0060】
一例では、有機酸緩衝液は、コハク酸緩衝液である。本開示における使用に好適なコハク酸緩衝液は、当業者には明らかであり、例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物を含む。
【0061】
一例では、有機酸緩衝液は、クエン酸緩衝液である。本開示における使用に好適なクエン酸緩衝液は、当業者には明らかであり、例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物を含む。
【0062】
本開示における使用に好適な緩衝液は、緩衝液が製品の製剤化及び貯蔵中に曝露される条件の範囲にわたって所望のpHを維持するのに十分な緩衝能を提供することが、当業者には明らかである。一例では、本開示の製剤は、約5.0~約6.0のpHを有する。いくつかの例では、製剤は、約5.2~5.9のpH、又は約5.4~約5.9のpH、又は約5.5~約5.9のpHを有する。一例では、製剤は、約5.5、又は約5.6、又は約5.7、又は約5.8、又は約5.9、又は約6.0のpHを有する。一例では、製剤は、約5.7のpHを有する。別の例では、製剤は、約5.6のpHを有する。
【0063】
一例では、有機酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液であり、製剤は、約5.5~約5.9のpHを有する。
【0064】
一例では、本開示の医薬製剤中の有機酸緩衝液の濃度は、約2mM~120mMである。一例では、有機酸緩衝液は、少なくとも2mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約2mM~約10mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約2mM、又は約3mM、又は約4mM、又は約5mM、又は約6mM、又は約7mM、又は約8mM、又は約9mM、又は約10mMの濃度で存在する。一例では、有機酸緩衝液は、少なくとも約10mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約10mM~約30mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約10mM、又は約12mM、又は約14mM、又は約16mM、又は約18mM、又は約20mM、又は約25mM、又は約30mMの濃度で存在する。一例では、有機酸緩衝液は、約12mM~約25mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約20mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約10mM~約60mMの濃度で存在する。例えば、有機酸緩衝液は、約10mM、又は約15mM、又は約20mM、又は約25mM、又は約30mM、又は約35mM、又は約40mM、又は約45mM、又は約50mM、又は約55mM、又は約60mMの濃度で存在する。一例では、有機酸緩衝液は、約20mMの濃度で存在する。
【0065】
一例では、有機酸緩衝液は、製剤中に、10~30mMの濃度で存在する。
【0066】
一例では、有機酸緩衝液は、ヒスチジンであり、約12mM~約25mMの濃度で存在する。一例では、有機緩衝液は、ヒスチジンであり、約20mMの濃度で存在する。
【0067】
一例では、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80)、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー、Pluronic)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)からなる群から選択される。例えば、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーからなる群から選択される。
【0068】
一例では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、及びポロキサマー188からなる群から選択される。
【0069】
一例では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80である。
【0070】
一例では、本開示の医薬製剤中の非イオン性界面活性剤の濃度は、約0.01%(w/v)~約1.00%(w/v)である。一例では、非イオン性界面活性剤は、少なくとも約0.01%(w/v)又は少なくとも約0.02%(w/v)の濃度で存在する。例えば、非イオン性界面活性剤は、約0.01%(w/v)~約0.10%(w/v)の濃度で存在する。例えば、非イオン性界面活性剤は、約0.01%(w/v)、又は約0.02%(w/v)、又は約0.03%(w/v)、又は約0.04%(w/v)、又は約0.05%(w/v)、又は約0.06%(w/v)、又は約0.07%(w/v)、又は約0.08%(w/v)、又は約0.09%(w/v)、又は約0.10%(w/v)の濃度で存在する。一例では、非イオン性界面活性剤は、約0.02%(w/v)又は約0.05%(w/v)の濃度で存在する。
【0071】
一例では、非イオン性界面活性剤は、製剤中に、0.01%(w/v)~0.05(w/v)の濃度で存在する。例えば、非イオン性界面活性剤は、約0.03%(w/v)の濃度で存在する。
【0072】
一例では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80であり、約0.01%(w/v)~約0.05%(w/v)の濃度で存在する。一例では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80であり、約0.03%(w/v)の濃度で存在する。
【0073】
一例では、医薬製剤は、プロリン、アルギニン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、オルニチン、及びアスパラギンからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸安定剤を含む。例えば、アミノ酸安定剤は、プロリン、アルギニン、それらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一例では、アミノ酸安定剤は、本明細書で考察されるアミノ酸の塩形態である。
【0074】
一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、プロリン及び/又はアルギニンを含む。
【0075】
一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、プロリンを含む。一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、L-プロリンを含む。
【0076】
一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、アルギニンを含む。一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、L-アルギニンを含む。一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、L-アルギニン一塩酸塩を含む。
【0077】
一例では、製剤は、プロリンと、アルギニンと、を含む。例えば、製剤は、L-プロリンと、L-アルギニン又はL-アルギニン一塩酸塩と、を含む。
【0078】
有利には、プロリンは、フェニルアラニン、アルギニン、及びソルビトールと比較して、熱及び凝集安定性(すなわち、凝集への傾向の低減)への有意な効果を有する。
【0079】
一例では、本開示の医薬製剤中のアミノ酸安定剤の濃度は、約25mM~約200mMである。一例では、アミノ酸安定剤は、約50mM~約150mMの濃度で存在する。例えば、アミノ酸安定剤は、約50mM、又は約60mM、又は約70mM、又は約80mM、又は約90mM、又は約100mM、又は約110mM、又は約120mM、又は約130mM、又は約140mM、又は約150mMの濃度で存在する。別の例では、アミノ酸安定剤は、約75mM~約125mMの濃度で存在する。別の例では、アミノ酸安定剤は、約90mM~約110mMの濃度で存在する。例えば、アミノ酸安定剤は、約100mMの濃度で存在する。いくつかの例では、製剤は、2つ以上のアミノ酸安定剤を含み、各々が、上記で提供される濃度で存在する。
【0080】
前述の濃度の考察はまた、アミノ酸安定剤の塩形態に関連し、本明細書に列挙される濃度は、アミノ酸自体の濃度ではなく、アミノ酸の塩形態の濃度である。
【0081】
一例では、製剤は、50mM~150mM、又は75mM~125mM、又は90~110mMの濃度、例えば約100mMの濃度のプロリンを含む。いくつかの例では、プロリンの濃度は、140mM未満、又は130mM未満、又は120mM未満である。
【0082】
一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、プロリンを含み、プロリンは、製剤中に、50mM~150mMの濃度で存在する。
【0083】
一例では、製剤は、50mM~150mM、又は75mM~125mM、又は90~110mMの濃度、例えば、約100mMの濃度のアルギニンを含む。いくつかの例では、アルギニンの濃度は、150mM未満、又は140mM未満、又は130mM未満、又は120mM未満である。一例では、アルギニンは、アルギニンの塩形態、例えば、アルギニン一塩酸塩であり、本明細書に列挙される濃度は、アルギニン自体の濃度ではなく、アルギニンの塩形態の濃度である。
【0084】
一例では、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、アルギニンを含み、アルギニンは、製剤中に、50mM~150mMの濃度で存在する。
【0085】
一例では、製剤は、50mM~150mMの濃度のプロリンと、50mM~150mMの濃度のアルギニンと、を含む。例えば、製剤は、約100mMのL-プロリンと、約100mMのL-アルギニンと、を含む。
【0086】
いくつかの例では、製剤は、ヒスチジン緩衝液と、プロリンと、ポリソルベート80と、を含む。いくつかの例では、製剤は、アルギニンを更に含む。いくつかの例では、製剤は、ヒスチジン、プロリン、及びアルギニン以外のいかなるアミノ酸も含まない。
【0087】
一例では、製剤は、塩を含まない。いくつかの例では、製剤は、張性付与量の塩を欠く。いくつかの例では、製剤は、金属塩を含まない。いくつかの例では、製剤は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び/又は塩化カリウムを含まない。前述の塩の考察は、本明細書に開示される製剤中のアミノ酸の塩形態又は他の成分に関連しない。
【0088】
一例では、製剤は、ポリオールを含まない。一例では、製剤は、糖、糖アルコール、又は糖酸を含まない。
【0089】
一例では、製剤は、20℃で約30mPa*s未満の動的(すなわち、絶対)粘度を有する。一例では、製剤は、20℃で約20mPa*s未満の動的(すなわち、絶対)粘度を有する。一例では、製剤は、20℃で約15mPa*s未満の動的粘度を有する。一例では、製剤は、20℃で約10mPa*s未満の動的粘度を有する。一例では、製剤は、20℃で約4.0mPa*s~約7.0mPa*sの動的粘度を有する。例えば、製剤は、20℃で約5.4mPa*sの動的粘度を有する。
【0090】
一例では、製剤は、20℃で20mPa*s未満、20℃で10mPa*s未満、又は20℃で7mPa*s未満の動的粘度を有する。
【0091】
一例では、製剤は、25℃で約30mPa*s未満の動的(すなわち、絶対)粘度を有する。一例では、製剤は、25℃で約20mPa*s未満の動的(すなわち、絶対)粘度を有する。一例では、製剤は、25℃で約15mPa*s未満の動的粘度を有する。一例では、製剤は、25℃で約10mPa*s未満の動的粘度を有する。一例では、製剤は、25℃で約3.0mPa*s~約6.0mPa*sの動的粘度を有する。例えば、製剤は、25℃で約4.6mPa*sの動的粘度を有する。
【0092】
粘度を評価する方法は、当業者には明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。例えば、粘度は、落球式粘度計などのマイクロ粘度計の使用によって、評価され得る。落球式粘度計は、ヘップラーの落球原理に従って、透明及び不透明な液体の中を通るボールの転がり時間を測定する。落球式粘度計の例としては、Anton Par Lovis 2000M Microviscometerがある。
【0093】
一例では、製剤の浸透圧は、約150mOsm/kg~約550mOsm/kgである。例えば、製剤の浸透圧は、約150mOsm/kg、又は約175mOsm/kg、又は約200mOsm/kg、又は約225mOsm/kg、又は約250mOsm/kg、又は約275mOsm/kg、又は約300mOsm/kg、又は約325mOsm/kg、又は約350mOsm/kg、又は約375mOsm/kg、又は約400mOsm/kg、又は約425mOsm/kg、又は約450mOsm/kg、又は約475mOsm/kg、又は約500mOsm/kg、又は約550mOsm/kgである。一例では、製剤の浸透圧は、約250mOsm/kg~約400mOsm/kgである。例えば、製剤の浸透圧は、約250mOsm/kg、又は約260mOsm/kg、又は約270mOsm/kg、又は約280mOsm/kg、又は約290mOsm/kg、又は約300mOsm/kg、又は約310mOsm/kg、又は約320mOsm/kg、又は約330mOsm/kg、又は約340mOsm/kg、又は約350mOsm/kg、又は約360mOsm/kg、又は約370mOsm/kg、又は約380mOsm/kg、又は約390mOsm/kg、又は約400mOsm/kgである。一例では、浸透圧は、約280mOsm/kg~約350mOsm/kgである。例えば、浸透圧は、約315mOsm/kgである。
【0094】
いくつかの例では、製剤は、安定した製剤である。製剤の安定性は、当該技術分野で既知のいずれかの手段によって、評価され得る。例えば、製剤の安定性は、総高分子量種(HMWS)及び/又はモノマー含有量を測定することによって、評価され得る。製剤のHMWSの蓄積及びモノマー含有量を評価するための方法は、当業者には明らかであり、かつ/又は本明細書に記載される。一例では、製剤中のタンパク質のパーセントHMWSは、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、SEC又はSE-HPLC)によって、判定される。
【0095】
別の例では、タンパク質のHMWSの形成は、動的光散乱法(DLS)を使用して、評価される。例えば、デジタル相関器(例えば、Malvern Zetasizerソフトウェア)を使用する光強度の変動が、測定され、(例えば、キュムラント分析を使用する)Z平均流体力学的直径及び多分散性指数が、判定される。
【0096】
いくつかの例では、製剤は、5%以下の高分子量種(HMWS)を含む。いくつかの例では、製剤は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって判定された場合、5%以下のHMWSを含む。いくつかの例では、製剤は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、5%以下のHMWSを含む。
【0097】
いくつかの例では、本開示の製剤は、少なくとも90%のモノマータンパク質、並びに/又は10%未満(すなわち、以下)のHMWS及び/若しくは低分子量種(LMWS、すなわち、分解又は断片化)を含む。一例では、製剤は、少なくとも95%のモノマータンパク質、並びに/又は5%未満(すなわち、以下)のHMWS及び/若しくはLMWSを含む。
【0098】
一例では、製剤は、約10%以下のHMWSを含む。例えば、製剤は、約10%以下、又は約9%以下、又は約8%以下、又は約7%以下、又は約6%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下のHMWSを含む。
【0099】
いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下の高分子量種(HMWS)を含む。いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下の高分子量種(HMWS)を含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下のHMWSを含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、3%以下のHMWSを含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下のHMWSを含む。別の例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、3%以下のHMWSを含む。別の例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、3%以下のHMWSを含む。
【0100】
いくつかの例では、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。いくつかの例では、SECによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。いくつかの例では、SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。
【0101】
いくつかの例では、製剤中のタンパク質の少なくとも96%は、モノマーである。いくつかの例では、製剤中のタンパク質の少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%は、モノマーである。
【0102】
いくつかの例では、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。いくつかの例では、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。一例では、約25℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。一例では、約5℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも97%は、モノマーである。一例では、約25℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも95%は、モノマーである。一例では、約5℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも97%は、モノマーである。一例では、約5℃の温度での少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、製剤中のタンパク質の少なくとも97%は、モノマーである。
【0103】
製剤の安定性を評価するための別の方法は、タンパク質の酸性及び/又は塩基性種の蓄積を測定することを含む。タンパク質の酸性及び/又は塩基性種の量は、例えば、カチオン交換クロマトグラフィー(例えば、CEX-HPLC)を使用して、測定され得る。
【0104】
いくつかの例では、製剤は、35%以下の酸性種を含む。いくつかの例では、製剤は、カチオン交換クロマトグラフィーによって判定された場合、35%以下の酸性種を含む。いくつかの例では、製剤は、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、35%以下の酸性種を含む。
【0105】
いくつかの例では、製剤は、35%以下、30%以下、又は27.5%以下、又は25%以下、又は22.5%以下、又は20%以下、又は17.5%以下の酸性種を含む。
【0106】
いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、35%以下の酸性種を含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、35%以下の酸性種を含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の酸性種を含む。
【0107】
いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、又は少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、50%以下の酸性種を含む。いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、50%以下の酸性種を含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、50%以下の酸性種を含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の酸性種を含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の酸性種を含む。
【0108】
いくつかの例では、製剤は、20%以下の塩基性種を含む。いくつかの例では、製剤は、カチオン交換クロマトグラフィーによって判定された場合、20%以下の塩基性種を含む。いくつかの例では、製剤は、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含む。
【0109】
いくつかの例では、製剤は、20%以下、又は19%以下、又は18%以下、又は17%以下、又は16%以下、又は15%以下の塩基性種を含む。
【0110】
いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、20%以下の塩基性種を含む。
【0111】
いくつかの例では、製剤は、5%以下のLMWSを含む。いくつかの例では、製剤は、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、5%以下のLMWSを含む。
【0112】
いくつかの例では、製剤は、5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下、又は1%以下のLMWSを含む。
【0113】
いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下のLMWSを含む。いくつかの例では、製剤は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下のLMWSを含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下のLMWSを含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、1%以下のLMWSを含む。一例では、製剤は、約25℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、5%以下のLMWSを含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の貯蔵後に、1%以下のLMWSを含む。一例では、製剤は、約5℃の温度での少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、1%以下のLMWSを含む。
【0114】
本開示の製剤のいくつかの例では、
a)製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、5%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも95%が、モノマーであること、
c)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、35%以下の酸性種を含むこと、
d)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、5%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される。
【0115】
いくつかの例では、上記のHMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される。一例では、HMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量は、2℃~8℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される。別の例では、HMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量は、22℃~28℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、又は少なくとも12ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される。
【0116】
本開示の製剤のいくつかの例では、
a)製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、5%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも95%が、モノマーであること、
c)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、50%以下の酸性種を含むこと、
d)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、5%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される。
【0117】
いくつかの例では、上記のHMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量は、2℃~30℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される。一例では、HMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量は、2℃~8℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される。別の例では、HMWS、モノマー、酸性種、塩基性種、又はLMWSの量は、22℃~28℃の範囲の温度での少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月の期間の貯蔵後に、判定される。
【0118】
いくつかの例では、約25℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の製剤の貯蔵後に、
a)製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、5%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも95%が、モノマーであること、
c)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、35%以下の酸性種を含むこと、
d)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、5%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される。
【0119】
いくつかの例では、約5℃の温度での少なくとも12ヶ月の期間の製剤の貯蔵後に、
a)製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、3%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも97%が、モノマーであること、
c)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の酸性種を含むこと、
d)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、1%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される。
【0120】
いくつかの例では、約25℃の温度での少なくとも18ヶ月の期間の製剤の貯蔵後に、
a)製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、5%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも95%が、モノマーであること、
c)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、50%以下の酸性種を含むこと、
d)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、5%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される。
【0121】
いくつかの例では、約5℃の温度での少なくとも24ヶ月の期間の製剤の貯蔵後に、
a)製剤が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって判定された場合、3%以下の高分子量種(HMWS)を含むこと、
b)SE-HPLCによって判定された場合、製剤中のタンパク質の少なくとも97%が、モノマーであること、
c)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の酸性種を含むこと、
d)製剤が、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)によって判定された場合、20%以下の塩基性種を含むこと、及び
e)製剤が、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって判定された場合、1%以下の低分子量種(LMWS)を含むこと、のうちの1つ以上又は全てが適用される。
【0122】
いくつかの例では、製剤は、水性製剤である。一例では、製剤は、皮下投与に好適である。いくつかの例では、製剤は、0.2mL~10mLの範囲の体積を有する。いくつかの例では、製剤は、0.5mL~5mLの範囲の体積を有する。いくつかの例では、製剤は、1mL~3mLの範囲の体積を有する。いくつかの例では、製剤は、約1mL、又は約2mL、又は約3mL、又は約4mL、又は約5mLの体積を有する。
【0123】
一例では、製剤は、予め凍結乾燥していない。一例では、製剤は、再構成された製剤でない。
【0124】
本開示は、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン及びグルタミン酸からなる群から選択される有機酸緩衝液と、ポリソルベート20、ポリソルベート80、及びポロキサマー188からなる群から選択される界面活性剤と、プロリン及び/又はアルギニンを含む少なくとも1つのアミノ酸安定剤と、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有する、製剤を提供する。
【0125】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有する、製剤を提供する。
【0126】
いくつかの例では、製剤は、5.5~5.9のpHを有し、5mM~50mMのヒスチジン緩衝液と、0.01%~0.05%(w/v)のポリソルベート80と、50mM~150mMのプロリンと、50mM~150mMのアルギニンと、を含む。
【0127】
いくつかの例では、製剤は、5.5~5.9のpHを有し、10mM~30mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、80mM~120mMのプロリンと、80mM~120mMのアルギニンと、を含む。
【0128】
いくつかの例では、製剤は、5.5~5.9のpHを有し、12mM~25mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、60mM~125mMのプロリンと、60mM~125mMのアルギニンと、を含む。
【0129】
いくつかの例では、製剤は、5.5~5.9のpHを有し、15mM~25mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、90mM~110mMのプロリンと、90mM~110mMのアルギニンと、を含む。
【0130】
いくつかの例では、本開示は、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、12mM~25mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、60mM~125mMのプロリンと、60mM~125mMのアルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.5~5.9のpHを有する、製剤を提供する。
【0131】
いくつかの例では、製剤は、15mM~25mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%~0.04%(w/v)のポリソルベート80と、90mM~110mMのプロリンと、90mM~110mMのアルギニンと、を含み、製剤は、5.5~5.9のpHを有する。
【0132】
いくつかの例では、製剤は、5.5~5.9のpHを有し、約20mMのヒスチジン緩衝液と、約0.03%(w/v)のポリソルベート80と、約100mMのプロリンと、約100mMのアルギニンと、を含む。
【0133】
いくつかの例では、製剤は、5.7のpHを有し、20mMのヒスチジン緩衝液と、0.03%(w/v)のポリソルベート80と、100mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む。
【0134】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む、製剤を提供する。
【0135】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、10mM~30mMのヒスチジン緩衝液と、0.01%~0.05%のポリソルベート80と、50mM~150mMのプロリンと、50mM~150mMのアルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む、製剤を提供する。
【0136】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLを含む、製剤を提供する。
【0137】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、10mM~30mMのヒスチジン緩衝液と、0.01%~0.05%のポリソルベート80と、50mM~150mMのプロリンと、50mM~150mMのアルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLを含む、製剤を提供する。
【0138】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、
a)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR3と、を含むVH、及び
b)配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むCDR3と、を含むVLを含む、製剤を提供する。
【0139】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、10mM~30mMのヒスチジン緩衝液と、0.01%~0.05%のポリソルベート80と、50mM~150mMのプロリンと、50mM~150mMのアルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、
a)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCDR3と、を含むVH、及び
b)配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCDR1と、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むCDR2と、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むCDR3と、を含むVLを含む、製剤を提供する。
【0140】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、ヒスチジン緩衝液と、ポリソルベート80と、プロリンと、アルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、配列番号14又は18に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体である、製剤を提供する。
【0141】
本開示はまた、G-CSF受容体(G-CSFR)に結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質と、10mM~30mMのヒスチジン緩衝液と、0.01%~0.05%のポリソルベート80と、50mM~150mMのプロリンと、50mM~150mMのアルギニンと、を含む、液体医薬製剤であって、製剤が、5.0~6.0のpHを有し、タンパク質が、配列番号14又は18に示されるアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体である、製剤を提供する。
【0142】
本開示はまた、対象の循環好中球を低減する方法であって、本明細書に記載される製剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0143】
本開示はまた、対象の循環好中球の低減における使用のための、本明細書に記載される製剤を提供する。
【0144】
本開示はまた、対象の循環好中球を低減するための医薬品の製造における、本明細書に記載される製剤の使用を提供する。
【0145】
本開示はまた、対象の好中球媒介性状態を治療又は防止する方法であって、対象に、本明細書に記載される製剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0146】
本開示はまた、対象の好中球媒介性状態の治療又は防止における使用のための、本明細書に記載される製剤を提供する。
【0147】
本開示はまた、対象の好中球媒介性状態の治療又は防止における使用のための医薬品の製造における、本明細書に記載される製剤の使用を提供する。
【0148】
いくつかの例では、好中球媒介性状態は、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん、又は虚血再灌流傷害である。
【0149】
例示的な自己免疫状態は、自己免疫腸障害(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、関節炎(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、及び又は特発性関節炎、例えば、若年性特発性関節炎)、又は乾癬を含む。
【0150】
例示的な炎症性状態は、炎症性神経学的状態(例えば、デビック病、脳内のウイルス感染、多発性硬化症、及び視神経脊髄炎)、炎症性肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、急性呼吸窮迫症候群[ARDS]、又は喘息)、又は炎症性眼状態(例えば、ぶどう膜炎)を含む。
【0151】
一例では、好中球媒介性状態は、喘息である。
【0152】
一例では、好中球媒介性状態は、ARDSである。
【0153】
一例では、好中球媒介性状態は、虚血再灌流傷害である。例えば、虚血再灌流傷害は、組織又は臓器移植(例えば、腎臓移植)に起因する又は関連する。例えば、抗体は、組織若しくは臓器移植レシピエントに、例えば、臓器収集前に投与される、かつ/又は組織若しくは臓器に、移植前に投与される、又は採取された組織若しくは臓器に、エクスビボで投与される。
【0154】
いくつかの例では、好中球媒介性状態は、乾癬である。一例では、好中球媒介性状態は、(「尋常性乾癬」又は「一般的な乾癬」としても当該技術分野で既知の)プラーク乾癬である。
【0155】
一例では、好中球媒介性状態は、好中球性皮膚症又は好中球性皮膚病変である。例えば、好中球性皮膚病は、膿疱性乾癬である。
【0156】
一例では、好中球性皮膚症は、襞の非微生物性膿疱症(APF);プラーク乾癬;CARD14媒介性膿疱性乾癬(CAMPS);クリオピリン関連周期性症候群(CAPS);インターロイキン-1受容体欠損症(DIRA);インターロイキン-36受容体アンタゴニスト欠損症(DIRTA);化膿性汗腺炎(HS);掌蹠膿疱症;化膿性関節炎、壊疽性膿皮症、及びざ瘡(PAPA);壊疽性膿皮症、ざ瘡、及び化膿性汗腺炎(PASH);壊疽性膿皮症(PG);ベーチェット病の皮膚病変;スティル病;スウィート症候群;角層下膿疱症(スネッドン-ウィルキンソン);膿疱性乾癬;掌蹠膿疱症;急性汎発性発疹性膿疱症;小児肢端膿疱症;滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨増殖症、及び骨炎(SAPHO)症候群;腸関連皮膚症-関節炎症候群(BADAS);手の背側の好中球性皮膚症;好中球性エクリン汗腺炎;持久性隆起性紅斑;並びに壊疽性膿皮症からなる群から選択される。一例では、好中球性皮膚症は、化膿性汗腺炎(HS)又は掌蹠膿疱症(PPP)である。
【0157】
一例では、本開示の製剤は、それを必要とする対象に、皮下投与される。別の例では、本開示の製剤は、それを必要とする対象に、静脈内投与される。
【0158】
一例では、本開示の製剤は、自己投与される。
【0159】
一例では、本開示の製剤は、自己皮下投与される。
【0160】
一例では、本開示の製剤は、プレフィルドシリンジ中に提供される。
【0161】
一例では、本開示の製剤は、プレフィルドシリンジで、自己皮下投与される。
【0162】
本明細書に記載されるいずれかの方法の一例では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトなどの霊長類である。
【0163】
本明細書に記載される治療方法は、加えて、好中球媒介性状態の効果を低減、治療又は防止するための更なる化合物を投与することを含むことができる。
【0164】
本開示はまた、対象の好中球媒介性状態の治療又は防止における使用のためのキットであって、
(a)本明細書に記載される少なくとも1つの医薬製剤と、
(b)対象の好中球媒介性状態の治療又は防止においてキットを使用するための説明書と、
(c)任意選択で、少なくとも1つの更なる治療活性化合物又は薬物と、を含む、キットを提供する。
【0165】
いくつかの例では、製剤は、バイアル、プレフィルドシリンジ、又はオートインジェクタデバイス中に存在する。
【0166】
本開示はまた、本明細書に記載される医薬製剤を含むプレフィルドシリンジを提供する。
【0167】
本開示はまた、本明細書に記載される医薬製剤を含むオートインジェクタデバイスを提供する。
【0168】
本開示の医薬製剤の例示的な効果は、本明細書に記載され、前段落に記載される本開示の例を準用すると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【
図1】
図1は、150mg/mLのCSL324と、(6.4、6.0又は5.5のpHを有する)20mMのヒスチジン緩衝液と、95mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む、製剤の凝集へのpHの効果を示すサイズ排除クロマトグラムである。
【
図2-1】
図2は、5℃又は25℃での8週の期間にわたるCSL324製剤の貯蔵後に産生された高分子量種(A)及び酸性変異体(B)の量を示すドットプロットである。
【
図2-2】
図2は、5℃又は25℃での8週の期間にわたるCSL324製剤の貯蔵後に産生された高分子量種(A)及び酸性変異体(B)の量を示すドットプロットである。
【
図3】IV又はSC注射投与を介する単回投与後の、組み合わされた雄及び雌サル血清中のCSL324の平均(+SD)濃度(ng/mL)を示すグラフである。
【0170】
配列表の鍵
配列番号1-C末端ポリヒスチジンタグを有するHomo sapiens G-CSFR(hG-CSFR)のアミノ酸25~335
配列番号2-C1.2のVH
配列番号3-C1.2のVL
配列番号4-C1.2GのVH
配列番号5-C1.2GのVL
配列番号6-C1.2のHCDR1
配列番号7-C1.2のHCDR2
配列番号8-C1.2のHCDR3
配列番号9-C1.2のLCDR1
配列番号10-C1.2のLCDR2
配列番号11-C1.2のLCDR3
配列番号12-C1.2のHCDR3のコンセンサス配列
配列番号13-C1.2のLCDR3のコンセンサス配列
配列番号14-安定化IgG4定常領域を有するC1.2Gの重鎖
配列番号15-カッパ定常領域を有するC1.2Gの軽鎖
配列番号16-例示的なh-G-CSFRの配列
配列番号17-C末端ポリヒスチジンタグを有するMacaca fascicularis G-CSFR(cynoG-CSFR)のIg及びCRHドメインを含むポリペプチド
配列番号18-安定化IgG4定常領域を有し、C末端リジンを欠くC1.2Gの重鎖。
【発明を実施するための形態】
【0171】
全般
本明細書全体を通して、特に別段の定めがない限り、又は文脈が別段の定めがない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群への言及は、それらのステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含するように取られなければならない。
【0172】
当業者は、本開示が、具体的に記載されるもの以外の変形及び修正の影響を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、そのような全ての変形及び修正を含むことが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書で個別に又は集合的に言及又は示される全てのステップ、特徴、組成物及び化合物、並びに当該ステップ又は特徴のいずれか及び全ての組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。
【0173】
本開示は、例示のみを目的とする本明細書に記載の特定の実施例によって範囲が限定されるべきではない。機能的に等価な生成物、組成物、及び方法は、本開示の範囲内であることは明らかである。
【0174】
本明細書における本開示の任意の例は、特に明記しない限り、本開示の任意の他の例に準用するものとする。換言すれば、本開示のいずれかの特定の例は、(相互排他的な場合を除いて)本開示のいずれかの他の特定の例と組み合わされてもよい。
【0175】
特定の特徴又は特徴の群又は方法又は方法ステップを開示する本開示のいずれかの例は、特定の特徴又は特徴の群又は方法又は方法ステップを否定するための明示的な支持を提供すると解釈される。
【0176】
具体的に別途に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学において)当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有すると解釈される。
【0177】
別段の指示がない限り、本開示で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。かかる技法は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes1and2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes1-4,IRL Press(1995and1996),and F.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む),Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在までの全ての更新を含む)などのソースにおいて文献全体を通して記載され説明されている。
【0178】
本明細書における可変領域及びその部分、抗体及びその断片の記載及び定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991における考察によって、更に明確にされ得る。
【0179】
「KabatのEU番号付けシステム」という用語とは、抗体重鎖の番号付けが、Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesdaにおいて教示されているEUインデックスに従うことを意味すると理解される。EUインデックスは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けに基づく。
【0180】
「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されなければならず、両方の意味又はいずれかの意味を明示的に支持すると解釈されるべきである。
【0181】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、定められた要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0182】
本明細書で使用される場合、「に由来する」という用語は、特定の整数が、特定のソースから得られ得ることを示すと解釈されるが、必ずしもそのソースから直接得られるとは限らない。
【0183】
選択した定義
「顆粒球コロニー刺激因子」(G-CSF)への本明細書での言及は、G-CSFの天然形態、その変異体形態、例えば、G-CSF又はフィルグラスチムのフィルグラスチム及びペグ化形態を含む。この用語はまた、G-CSFR(例えば、ヒトG-CSFR)に結合しシグナル伝達を誘導するためのG-CSF保持活性の変異体形態を包含する。
【0184】
G-CSFは、顆粒球産生の主要な調節因子である。G-CSFは、骨髄間質細胞、内皮細胞、マクロファージ、及び線維芽細胞によって産生され、産生は、炎症刺激によって誘導される。G-CSFは、G-CSF受容体(G-CSFR)を介して作用し、G-CSFRは、早期骨髄系前駆細胞、成熟好中球、単球/マクロファージ、T及びBリンパ球、並びに内皮細胞上で発現される。
【0185】
命名の目的のみで、非限定的に、ヒトG-CSFRの例示的な配列は、NCBI Reference Sequence:NP_000751.1に記載されている(かつ配列番号16に記載される)。他の種からのG-CSFRの配列は、本明細書及び/若しくは公的に入手可能なデータベースで提供される配列を使用して、判定され得、かつ/又は(例えば、Ausubel et al.,(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)、又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されているような)標準的な技法を使用して、判定され得る。ヒトG-CSFRへの言及は、hG-CSFRと略記され得、カニクイザルG-CSFRへの言及は、cynoG-CSFRと略記され得る。可溶性G-CSFRへの言及は、G-CSFRのリガンド結合領域を含むポリペプチドを指す。G-CSFRのIg及びCRHドメインは、リガンド結合及び受容体二量体化に関与している(Layton et al.,J.Biol Chem.,272:29735-29741,1997、及びFukunaga et al,EMBO J.10:2855-2865,1991)。受容体のこれらの部分を含むG-CSFRの可溶性形態は、受容体の様々な研究において使用されており、受容体の78、163、及び228位の遊離システインの変異は、リガンド結合に影響を及ぼすことなく、可溶性受容体ポリペプチドの発現及び単離を支援する(Mine et al.,Biochem.,43:2458-2464 2004)。
【0186】
「有機酸緩衝液」という用語は、有機酸及び塩の従来の緩衝液を指す。本開示の製剤中の使用に好適な有機酸緩衝液が、本明細書に記載される。
【0187】
本明細書で使用される場合の「非イオン性界面活性剤」という用語は、非荷電極性頭部を有するいずれかの洗剤を指す。本開示の製剤中の使用に好適な界面活性剤が、本明細書に記載される。
【0188】
「安定した」製剤は、製剤中のタンパク質が、貯蔵の際に、タンパク質の物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を本質的に保持する、製剤である。
【0189】
本開示の文脈において、「モノマー」又は「モノマーの」という用語は、正しくフォールディングされたタンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合断片)を指す。例えば、本開示による抗体のモノマーは、標準的な四量体抗体であって、それぞれ、2つの同一のグリコシル化重及び軽鎖を含む、四量体抗体に関連する。「凝集体」は、2つ以上のタンパク質分子(例えば、高分子量種)の非特異的会合である。
【0190】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸安定剤」という用語は、製剤の安定性を改善する又はそうでなければ増強するアミノ酸又はその誘導体を指す。
【0191】
本明細書で使用される場合、「ポリオール」という用語は、複数のヒドロキシル基を有する物質を指す。
【0192】
「動的粘度」又は「絶対粘度」という用語は、特定の温度(例えば、20℃)で流体によって示される流れに対する内部抵抗である、せん断応力対せん断速度の比を指す。1ダイン/平方センチメートルの力によって、1平方センチメートルの面積及び1平方センチメートル間隔の2つの平行な液体表面が、1cm/秒の速度で互いに通り過ぎて移動する場合、液体は、1ポアズの動的粘度を有する。1ポイズは、100センチポイズ(cP)に等しく、1センチポイズは、国際単位系(SI)において、1ミリパスカル秒(mPa*s)に等しい。
【0193】
本明細書で使用される場合、「浸透圧」という用語は、溶媒1kg当たりの溶質のオスモル(Osm)(オスモル/kg又はOsm/kg)の尺度である。
【0194】
本明細書で使用される場合、「結合する」という用語は、別の分子とのタンパク質の相互作用であって、その分子上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存する、相互作用を指す。例えば、抗体又はその抗原結合断片は、一般に、タンパク質に結合するのではなく、特定のタンパク質構造を認識し、そのタンパク質構造に結合する。抗体が、エピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」及びタンパク質を含有する反応において、エピトープ「A」(又は遊離非標識の「A」)を含有する分子の存在は、抗体に結合した標識された「A」の量を低減する。
【0195】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する(specifically binds)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」という用語は、本明細書に記載されるタンパク質が、代替の分子と結合するよりも、特定の分子(例えば、抗原)と、頻繁に、迅速に、大きい持続期間、かつ/又は大きい親和性で、反応又は会合することを意味すると解釈される。例えば、タンパク質は、他のサイトカイン受容体に、又は多反応性天然抗体によって(すなわち、ヒトにおいて天然に見出される様々な抗原に結合することが既知の天然発生の抗体によって)一般的に認識される抗原に結合するよりも、G-CSFR(例えば、hG-CSFR)に、実質的に大きい親和性(例えば、20倍、又は40倍、又は60倍、又は80倍~100倍、又は150倍、又は200倍)で結合し得る。一般に、必ずしもそうではないが、結合への言及は、特異的結合を意味し、各用語は、他の用語に対して明示的な支持を提供するものと理解されなければならない。
【0196】
明確化の目的のために、及び本明細書の例示的な主題に基づいて当業者に明白であろうように、本明細書における「親和性」への言及は、タンパク質又は抗体のKDへの言及である。明確化の目的で、かつ本明細書での記載に基づいて当業者には明らかであるように、「少なくとも約の親和性」への言及は、親和性(又はKD)が、列挙される値以上(すなわち、親和性がより低い場合、列挙される値)であること、すなわち、2nMの親和性が、3nMの親和性よりも大きいことを意味すると理解される。換言すれば、この用語は、「X以下の親和性」であり得、Xは、本明細書に列挙される値である。
【0197】
「組換え」という用語は、人工遺伝子組換えの産物を意味すると理解されなければならない。したがって、本明細書に記載される抗原結合ドメインを含むタンパク質の文脈において、この用語は、対象の身体内の天然発生の抗体であって、B細胞成熟中に発生する天然組換えの産物である、抗体を包含しない。しかしながら、そのような抗体が単離されている場合、その抗体は、抗原結合ドメインを含む単離されたタンパク質であると考えられる。同様に、タンパク質をコードする核酸を単離し、組換え手段を使用して発現する場合、得られるタンパク質は、抗体抗原結合ドメインを含む組換えタンパク質である。組換えタンパク質はまた、例えば、それが発現する細胞、組織又は対象内にあるときに、人工組換え手段によって発現されるタンパク質を包含する。
【0198】
「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続したアミノ酸、又は互いに共有結合又は非共有結合で連結された一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むと解釈されなければならない。例えば、一連のポリペプチド鎖は、好適な化学又はジスルフィド結合を使用して、共有連結され得る。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。
【0199】
「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」という用語は、前項から、ペプチド結合によって連結された一連の連続アミノ酸を意味すると理解される。
【0200】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部位」という用語は、抗原に結合する又は特異的に結合することが可能であるタンパク質によって形成される構造を意味すると解釈される。抗原結合ドメインは、一連の連続アミノ酸、又は更には、単一のポリペプチド鎖中のアミノ酸である必要はない。例えば、2つの異なるポリペプチド鎖から産生されるFvにおいて、抗原結合ドメインは、VL及びVHの一連のアミノ酸から構成されており、そのアミノ酸は、抗原と相互作用するが、概して、必ずしも各可変領域中のCDRのうちの1つ以上中に存在するとは限らない。いくつかの例では、抗原結合ドメインは、VH、若しくはVL、若しくはFvである、又はVH、若しくはVL、若しくはFvを含む。いくつかの例では、抗原結合ドメインは、抗体の1つ以上のCDRを含む。
【0201】
当業者は、「抗体」が、複数のポリペプチド鎖からなる可変領域、例えば、VLを含むポリペプチド及びVHを含むポリペプチドを含むタンパク質であると一般的に考えられることを認識するであろう。抗体はまた、一般に、定常ドメインを含み、そのうちのいくつかは、重鎖の場合、定常断片又は断片結晶性(Fc)を含む定常領域に配置することができる。VH及びVLは相互作用して、1つ又はいくつかの密接に関連する抗原に特異的に結合することができる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳類由来の軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、哺乳類由来の重鎖は、α、δ、ε、γ、又はμである。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであり得る。「抗体」という用語はまた、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体及びキメラ抗体を包含する。
【0202】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」又は「全抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片とは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、全抗体には、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。
【0203】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合することが可能であり、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3、並びにフレームワーク領域(FR)を含む、本明細書で定義される抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を指す。例示的な可変領域は、3つ又は4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、及び任意選択でFR4)を、3つのCDRとともに含む。IgNARに由来するタンパク質の場合、タンパク質はCDR2を欠くことがある。VHは、重鎖の可変領域を指す。VLは、軽鎖の可変領域を指す。
【0204】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」という用語(同義語CDR;すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3)は、抗原結合に必要な抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、典型的には、CDRl、CDR2、及びCDR3として特定された3つのCDR領域を有する。CDR及びFRに割り当てられたアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991、あるいは本開示の実行における他の番号付けシステム、例えば、Chothia and Lesk J.Mol Biol.196:901-917,1987、Chothia et al.Nature 342,877-883,1989、及び/若しくはAl-Lazikani et al.,J Mol Biol273:927-948,1997の正規番号付けシステム、Lefranc et al.,Devel.And Compar.Immunol.,27:55-77,2003のIMGT番号付けシステム、又はHonnegher and Plukthun J.Mol.Biol.,309:657-670,2001のAHO番号付けシステムに従って、定義され得る。例えば、Kabatの番号付けシステムによれば、VHフレームワーク領域(FR)及びCDRは、残基1~30(FRl)、31~35(CDR1)、36~49(FR2)、50~65(CDR2)、66~94(FR3)、95~102(CDR3)、及び103~113(FR4)のように配置される。Kabatの番号付けシステムによれば、VLFR及びCDRは、残基1~23(FRl)、24~34(CDR1)、35~49(FR2)、50~56(CDR2)、57~88(FR3)、89~97(CDR3)、及び98~107(FR4)のように配置される。本開示は、Kabat番号付けシステムによって定義されるFR及びCDRに限定されないが、上記で考察されたものを含む全ての番号付けシステムを含む。一例では、本明細書におけるCDR(又はFR)への言及は、Kabat番号付けシステムによるこれらの領域に関するものである。
【0205】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変領域残基である。
【0206】
本明細書で使用される場合、「Fv」という用語は、複数のポリペプチド又は単一のポリペプチドからなるかどうかにかかわらず、VL及びVHが会合し、抗原結合部位を有する複合体を形成し、すなわち、抗原に特異的に結合することができる任意のタンパク質を意味すると解釈される。抗原結合部位を形成するVH及びVLは、単一ポリペプチド鎖内又は異なるポリペプチド鎖内にあり得る。更に、本開示のFv(並びに本開示の任意のタンパク質)は、同じ抗原に結合しても結合しなくてもよい複数の抗原結合部位を有してもよい。この用語は、抗体に直接由来する断片、並びに組換え手段を使用して産生されるそのような断片に対応するタンパク質を包含するものと理解されなければならない。いくつかの例では、VHは、重鎖定常ドメイン(CH)1に連結されておらず、かつ/又はVLは、軽鎖定常ドメイン(CL)には連結されていない。ポリペプチド又はタンパク質を含有する例示的なFvは、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ若しくは高次複合体、又は定常領域若しくはそのドメイン、例えば、CH2若しくはCH3ドメイン、例えば、ミニボディに連結された前述のいずれかを含む。「Fab断片」は、免疫グロブリンの一価の抗原結合断片からなり、抗体全体を酵素パパインで消化することによって産生し、インタクトな軽鎖及び重鎖の一部からなる断片を産生し、又は組換え手段を用いて産生し得る。抗体の「Fab’断片」は、抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖と、VH及び単一の定常ドメインを含む重鎖の一部とからなる分子を得ることによって得ることができる。2つのFab’断片が、この様式で処置された抗体ごとに得られる。Fab’断片は、組換え手段によっても産生することができる。抗体の「F(ab’)2断片」は、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのFab’断片の二量体からなり、後続の還元なしに、抗体分子全体を酵素ペプシンで処理することによって得られる。「Fab2」断片は、例えば、ロイシンジッパー又はCH3ドメインを使用して連結された2つのFab断片を含む組換え断片である。「一本鎖Fv」又は「scFv」は、抗体の可変領域断片(Fv)を含有する組換え分子であり、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域は、好適な可撓性ポリペプチドリンカーによって共有結合されている。
【0207】
(本明細書で互換的に使用され得る)「断片結晶性」、又は「Fc」、又は「Fc領域」、又は「Fc部分」という用語は、少なくとも1つの定常ドメインを含む抗体の領域であって、概して(必ずしもそうではないが)、グリコシル化されており、補体カスケードの1つ以上のFc受容体及び/又は成分に結合することが可能である、領域を指す。重鎖定常領域は、α、δ、ε、γ、又はμの5つのアイソタイプのうちのいずれかから選択され得る。更に、(IgGサブクラスの重鎖などの)様々なサブクラスの重鎖は、異なるエフェクター機能を担い、したがって、所望の重鎖定常領域を選択することによって、所望のエフェクター機能を有するタンパク質が、産生され得る。例示的な重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)、及びガンマ4(IgG4)、又はそれらのハイブリッドである。
【0208】
本明細書で使用される場合の「定常領域」という用語は、可変領域以外の抗体の重鎖又は軽鎖の一部分を指す。重鎖において、定常領域は、概して、複数の定常ドメインと、ヒンジ領域と、を含み、例えば、IgG定常領域は、以下の連結された成分、定常重鎖CHCH1、リンカー、CH2、及びCH3を含む。軽鎖において、定常領域は、概して、1つの定常ドメイン(CL1)を含む。
【0209】
「安定化IgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換、又はFabアーム交換若しくは半抗体の形成をする傾向、又は半抗体を形成する傾向を低減するために修飾されたIgG4定常領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換」とは、ヒトIgG4についてのあるタイプのタンパク質修飾であって、IgG4重鎖及び結合した軽鎖(半分子)が、別のIgG4分子からの重軽鎖対に交換される、タンパク質修飾を指す。したがって、IgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを取得し得る(二重特異性分子をもたらす)。Fabアーム交換は、インビボで天然に生じ、精製された血液細胞又は還元されたグルタチオンなどの還元剤によってインビトロで誘導され得る。
【0210】
本明細書で使用される場合、「単一特異性」という用語は、1つ以上の抗原結合部位を含む結合ドメインであって、抗原結合部位の各々が、同じエピトープ特異性を有する、結合ドメインを指す。したがって、単一特異性結合ドメインは、単一の抗原結合部位(例えば、Fv、scFv、Fabなど)を含むことができる、又は同じエピトープを認識する(例えば、互いに同一である)いくつかの抗原結合部位、例えば、ダイアボディ若しくは抗体を含むことができる。結合領域が「単一特異性」であるという要件は、複数の抗原が、単一の抗原結合部位が結合し得る共通又は非常に同様なエピトープを有することができるため、結合領域が、1つの抗原のみに結合することを意味しない。1つの抗原のみに結合する単一特異性結合ドメインは、その抗原に「排他的に結合する」と称される。
【0211】
「多重特異性」という用語は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合ドメインであって、抗原結合部位の各々が、異なるエピトープに結合し、例えば、抗原結合部位の各々が、異なる抗原に結合する、結合ドメインを指す。例えば、多重特異性結合ドメインは、同じタンパク質(例えば、凝固因子)の2つ以上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位、又は異なるタンパク質(すなわち、異なる凝固因子)の2つ以上の異なるエピトープを認識し得る抗原結合部位を含み得る。一例では、結合ドメインは、「二重特異性」であり得、すなわち、結合ドメインは、2つの異なるエピトープに特異的に結合する2つの抗原結合部位を含む。例えば、二重特異性結合ドメインは、同じタンパク質上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する、又はそのエピトープについての特異性を有する。別の例では、二重特異性結合ドメインは、2つの異なるタンパク質上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する。
【0212】
「競合的に阻害する」という用語は、本開示のタンパク質(又はその抗原結合部位)が、G-CSF又はG-CSFR、例えば、hG-CSFRへの列挙される抗体又はタンパク質の結合を低減又は防止することを意味すると理解されなければならない。これは、タンパク質(又は抗原結合部位)及び同じ又は重複するエピトープへの抗体結合によるものであり得る。上記から、タンパク質が抗体の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろ、統計的に有意な量、例えば、少なくとも約10%又は20%又は30%又は40%又は50%又は60%又は70%又は80%又は90%又は95%だけ結合を減少させる必要があることが明らかになる。好ましくは、タンパク質は、抗体の結合を少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約75%、更により好ましくは少なくとも約80%又は85%、更により好ましくは少なくとも約90%低下させる。結合の競合的阻害を判定するための方法は、当該技術分野で既知であり、かつ/又は本明細書に記載される。例えば、抗体は、タンパク質の存在又は非存在下のいずれかで、G-CSF又はG-CSFRに曝露される。タンパク質の不在下よりもタンパク質の存在下で結合する抗体が少ない場合、タンパク質は、抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。一例では、競合的阻害は、立体障害によるものではない。
【0213】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語(同義語「抗原決定基」)は、抗体の抗原結合部位を含むタンパク質が結合するhG-CSFRの領域を意味すると理解されなければならない。この用語は、必ずしもタンパク質が接触する特定の残基又は構造に限定されない。例えば、この用語は、タンパク質及び/又は5~10個又は2~5個又は1~3個のアミノ酸が接触する領域を含む。いくつかの例では、エピトープは、hG-CSFRがフォールディングされたときに互いに近くに位置する一連の不連続アミノ酸、すなわち、「立体構造エピトープ」を含む。例えば、hG-CSFR中の立体構造エピトープは、配列番号1の111~115、170~176、218~234、及び/又は286~300に対応する領域のうちの1つ以上、又は2つ以上、又は全て中のアミノ酸を含む。当業者はまた、「エピトープ」という用語がペプチド又はポリペプチドに限定されないことを認識するであろう。例えば、「エピトープ」という用語は、糖側鎖、ホスホリル側鎖、又はスルホニル側鎖などの分子の化学的に活性な表面分類を含み、特定の例では、特定の三次元構造特性、及び/又は特異的電荷特性を有し得る。
【0214】
2つのエピトープの文脈における「重複」とは、1つのエピトープに結合するタンパク質(又はその抗原結合部位)が他のエピトープに結合するタンパク質(又は抗原結合部位)の結合を競合的に阻害することを可能にするのに十分な数のアミノ酸残基を2つのエピトープが共有することを意味するものとする。例えば、「重複」エピトープは、少なくとも1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は20個のアミノ酸を共有する。
【0215】
「保存的アミノ酸置換」という語句は、同様の側鎖及び/又はヒドロパシー性及び/又は親水性を有するアミノ酸残基でのアミノ酸残基の置換(replacement)又は置換(substitution)を指す。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含み、当該技術分野において定義されている。ヒドロパシー指標は、例えば、Kyte and Doolittle J.Mol.Biol.,157:105-132,1982に記載されており、親水性指標は、例えば、US4554101に記載されている。
【0216】
本明細書で使用される場合、「疾患」、又は「障害」、又は「状態」という用語は、正常な機能の破壊又は正常な機能への干渉を指し、いかなる特定の状態にも限定されず、疾患又は障害を含む。
【0217】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」、又は「治療」という用語は、本明細書に記載されるタンパク質を投与し、それによって、特定の疾患若しくは状態の少なくとも1つの症状を低減若しくは除去する、又は疾患若しくは状態の進行を遅くすることを含む。
【0218】
本明細書で使用される場合、「防止すること」、「防止する」、又は「防止」という用語は、個体の特定の疾患又は状態の発生又は再発生に対する予防を提供することを含む。個体は、疾患若しくは疾患再発を発症する素因又はそのリスクがあり得るが、依然として、疾患又は再発と診断されていない。
【0219】
本明細書で使用される場合、疾患若しくは状態の発症若しくはその再発、又は再発の「リスクがある」対象は、検出可能な疾患又は疾患の症状を有してもよく、又は有さなくてもよく、本開示による治療前に、検出可能な疾患又は疾患の症状を呈してもよく、又は呈さなくてもよい。「リスクがある」とは、対象が、1つ以上のリスク因子を有し、そのリスク因子が、測定可能なパラメータであり、そのパラメータが、当該技術分野で既知のようにかつ/又は本明細書に記載されるように、疾患又は状態の発症と相関することを指す。
【0220】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト、例えば哺乳類を含む任意の動物を意味すると解釈される。例示的な対象として、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、対象は、ヒトである。
【0221】
医薬製剤のタンパク質
本明細書で考察されるように、本開示は、G-CSFRに結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質を含む液体医薬製剤を提供する。いくつかの例では、タンパク質は、少なくともVH及びVLを含み、VH及びVLは、結合して、抗原結合ドメインを含むFvを形成する。
【0222】
抗原結合ドメインを含むタンパク質
一例では、G-CSFRに結合する又は特異的に結合する抗原結合ドメインを含むタンパク質は、抗体又は抗原結合断片である。例えば、タンパク質は、G-CSFRに結合する抗体又は抗原結合断片である。
【0223】
抗体を生成するための方法は、当該技術分野で既知であり、かつ/又はHarlow and Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)に記載されている。概して、そのような方法において、任意選択で、任意の好適な又は所望の担体、アジュバント、又は薬学的に許容される賦形剤で製剤化された、G-CSFR若しくはその領域(例えば、細胞外ドメイン)、又はその免疫原性断片若しくはエピトープ、又はそれを発現及び呈する細胞(すなわち、免疫原)が、非ヒト動物、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ヤギ、又はブタに投与される。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内投与されてもよく、又は他の既知の経路によって投与してもよい。
【0224】
モノクローナル抗体は、本開示によって企図される抗体の1つの例示的形態である。「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、同じ抗原に、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することができる均一抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源又はそれが作製される方法に関して限定されることを意図するものではない。
【0225】
mAbの産生には、例えば、US4196265又はHarlow及びLane(1988)(上記)に例示される手順など、いくつかの既知の技法のうちのいずれか1つを使用してよい。
【0226】
代替的に、ABL-MYC技術(NeoClone,Madison WI53713,USA)を使用して、MAbを分泌する細胞株を産生する(例えば、Largaespada et al,J.Immunol.Methods.197:85-95,1996に記載されているように)。
【0227】
抗体はまた、例えば、US6300064及び/又はUS5885793に記載されるように、ディスプレイライブラリ、例えば、ファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることによって、産生又は単離され得る。例えば、本発明者らは、ファージディスプレイライブラリから完全ヒト抗体を単離した。
【0228】
本開示の抗体は、合成抗体であり得る。例えば、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、又は脱免疫化抗体である。
【0229】
本開示の抗体又は抗原結合断片は、ヒト化であり得る。
【0230】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト様可変領域を含むタンパク質であって、ヒト様可変領域が、ヒト抗体からのFR上にグラフトされた又はそのFR中に挿入された、非ヒト種(例えば、マウス、又はラット、又は非ヒト霊長類)からの抗体(このタイプの抗体は、「CDRグラフト抗体」とも称される)からのCDRを含む、タンパク質を指すと理解されなければならない。ヒト化抗体はまた、ヒトタンパク質の1つ以上の残基が、1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されている、及び/又はヒト抗体の1つ以上のFR残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている、抗体を含む。ヒト化抗体はまた、ヒト抗体又は非ヒト抗体のいずれにおいても見出されない残基を含み得る。抗体のいずれかの追加の領域(例えば、Fc領域)は、概して、ヒトである。ヒト化は、当該技術分野で既知の方法、例えば、US5225539、US6054297、US7566771、又はUS5585089を使用して、実行され得る。「ヒト化抗体」という用語はまた、例えば、US7732578に記載されているような、超ヒト化抗体を包含する。同様の意味が、「ヒト化抗原結合断片」という用語に適用されると解釈される。
【0231】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片であり得る。本明細書で使用される場合の「ヒト抗体」という用語は、ヒトにおいて、例えば、ヒト生殖細胞若しくは体細胞において見出される、可変抗体領域と、任意選択で、定常抗体領域と、を有する抗体、又はそのような領域を使用して産生されるライブラリからの抗体を指す。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基、例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異によって導入される変異(特に、タンパク質の少数の残基、例えば、タンパク質の残基のうちの1、2、3、4、又は5個における保存的置換又は変異を含む変異)を含むことができる。これらの「ヒト抗体」は、必ずしもヒトの免疫応答の結果として産生されることを必要とするとは限られず、むしろ、ヒト抗体は、組換え手段(例えば、ファージディスプレイライブラリのスクリーニング)を使用して、かつ/又はヒト抗体定常及び/若しくは可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)によって、かつ/又は(例えば、US5565332に記載の又は)ガイド選択を使用して、産生され得る。この用語はまた、そのような抗体の親和性成熟形態を包含する。本開示の目的で、ヒト抗体はまた、ヒト抗体からのFR、又はヒトFRのコンセンサス配列からの配列を含むFRを含むタンパク質であって、CDRのうちの1つ以上が、例えば、US6300064及び/又はUS6248516に記載されているように、ランダム又は半ランダムである、タンパク質を含むと考えられる。同様の意味が、「ヒト抗原結合断片」という用語に適用されると解釈される。
【0232】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、合成ヒト化抗体又はその抗原結合断片であり得る。「合成ヒト化抗体」という用語は、WO2007/019620に記載されている方法によって調製される抗体を指す。合成ヒト化抗体は、抗体の可変領域を含み、可変領域は、新世界霊長類抗体可変領域からのFRと、非新世界霊長類抗体可変領域からのCDRと、を含む。
【0233】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、霊長類化であり得る。「霊長類化抗体」は、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)の免疫化後に産生される抗体からの可変領域を含む。任意選択で、非ヒト霊長類抗体の可変領域は、ヒト定常領域に連結されて、霊長類化抗体を産生する。霊長類化抗体を産生するための例示的な方法は、US6113898に記載されている。
【0234】
一例では、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、キメラ抗体又は断片である。「キメラ抗体」又は「キメラ抗原結合断片」という用語は、抗体又は断片であって、可変ドメインのうちの1つ以上が、特定の種(例えば、マウス又はラットなどのマウス)からのものである、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属し、抗体又は断片の残りが、別の種(例えば、ヒト又は非ヒト霊長類)からのものである、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する、抗体又は断片を指す。一例では、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)からのVH及び/又はVLを含むキメラ抗体、並びに抗体の残りの領域は、ヒト抗体からのものである。そのようなキメラ抗体及びその抗原結合断片の産生は、当該技術分野で既知であり、(例えば、US6331415、US5807715、US4816567、及びUS4816397に記載の)標準的な手段によって、達成され得る。
【0235】
本開示はまた、例えば、WO2000/034317及びWO2004/108158に記載されているような、脱免疫化抗体又はその抗原結合断片を企図する。脱免疫化抗体及び断片は、1つ以上のエピトープ、例えば、B細胞エピトープ又はT細胞エピトープが、除去されており(すなわち、変異しており)、それによって、対象が抗体又はタンパク質に対する免疫応答を高める可能性を低減する。例えば、本開示の抗体は、1つ以上のB又はT細胞エピトープを同定するために、分析され、エピトープ中の1つ以上のアミノ酸残基が、変異しており、それによって、抗体の免疫原性を低減する。
【0236】
例示的なヒト抗体は、本明細書に記載され、C1.2及びC1.2G、並びに/又はそれらの可変領域を含む。これらのヒト抗体は、非ヒト抗体と比較して、ヒトにおける免疫原性の低下という利点を提供する。例示的な抗体は、WO2012/171057に記載されている。
【0237】
二重特異性抗体
一例では、本開示のタンパク質は、二重特異性抗体又はその断片であり得る。例えば、抗体又は断片は、G-CSFR及び別の標的に結合し得る。二重特異性抗体は、異なる抗原又はエピトープについての特異性を有する2つのタイプの抗体又は抗体断片(例えば、2つの半抗体)を含む分子である。例示的な二重特異性抗体は、同じタンパク質の2つの異なるエピトープに結合する。代替的に、二重特異性抗体は、2つの異なるタンパク質上の2つの異なるエピトープに結合する。
【0238】
US5731168に記載されているような、例示的な「キー及びホール」又は「ノブ及びホール」二重特異性タンパク質。一例では、定常領域(例えば、IgG4定常領域)は、T366W変異(又はノブ)を含み、定常領域(例えば、IgG4定常領域)は、T366S、L368A、及びY407V変異(又はホール)を含む。別の例では、第1の定常領域は、T350V、T366L、K392L、及びT394W変異(ノブ)を含み、第2の定常領域は、T350V、L351Y、F405A、及びY407V変異(ホール)を含む。
【0239】
二重特異性抗体を産生するための方法は、当該技術分野で既知であり、例示的な方法は、本明細書に記載される。
【0240】
一例では、IgGタイプ二重特異性抗体は、IgG抗体を産生する2つのタイプのハイブリドーマを融合することによって形成されるハイブリドーマ(クアドローマ)によって、分泌される(Milstein C et al.,Nature1983,305:537-540)。別の例では、抗体は、共発現のための目的の2つのIgGを構成するL鎖及びH鎖の遺伝子を細胞中に導入することによって、分泌され得る(Ridgway,JB et al.Protein Engineering1996,9:617-621、Merchant,AM et al.Nature Biotechnology1998,16:677-681)。
【0241】
一例では、二重特異性抗体断片は、異なる抗体に由来するFab’を化学的に架橋することによって、調製される(Keler T et al.Cancer Research1997,57:4008-4014)。
【0242】
一例では、Fos及びJunなどに由来するロイシンジッパーが、二重特異性抗体断片を形成するために使用される(Kostelny SA et al.J.of Immunology,1992,148:1547-53)。
【0243】
一例では、二重特異性抗体断片は、2つのクロスオーバーscFv断片を含むダイアボディの形態で調製される(Holliger P et al.Proc.of the National Academy of Sciences of the USA 1993,90:6444-6448)。
【0244】
抗体フラグメント
本明細書に記載されるように、本開示のタンパク質は、抗体の抗原結合断片を含む。本開示における使用のための例示的な抗原結合断片は、以下に記載される。
【0245】
単一ドメイン抗体
いくつかの例では、本開示の抗体の抗原結合断片は、(「ドメイン抗体」又は「dAb」という用語と互換的に使用される)単一ドメイン抗体である、又は単一ドメイン抗体を含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部又は一部分を含む単一ポリペプチド鎖である。
【0246】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
いくつかの例では、本開示の抗原結合断片は、WO98/044001及び/又はWO94/007921に記載されているものなどの、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又はより高次元のタンパク質複合体である、又はタンパク質複合体を含む。
【0247】
例えば、ダイアボディは、2つの会合ポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、各々のポリペプチド鎖は、構造VL-X-VH又はVH-X-VLを含み、Xは、単一ポリペプチド鎖中のVH及びVLが会合する(又はFvを形成する)ことを可能にするのに不十分な残基を含む、又はその残基が非存在であるリンカーであり、一方のポリペプチド鎖のVHは、他方のポリペプチド鎖のVLに結合して、抗原結合部位を形成する、すなわち、1つ以上の抗原に特異的に結合することが可能なFv分子を形成する。VL及びVHは、各々のポリペプチド鎖中で同一であることができ、又はVL及びVHは、各々のポリペプチド鎖中で異なることができ、これにより、二重特異性ダイアボディ(すなわち、異なる特異性を有する2つのFvを含む)を形成する。
【0248】
一本鎖Fv(scFv)断片
当業者は、scFvが、単一のポリペプチド鎖内のVH及びVL領域、並びにVH及びVLの間のポリペプチドリンカーを含み、これにより、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にすること(すなわち、単一のポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに会合してFvを形成すること)を認識するであろう。例えば、リンカーは、12個超のアミノ酸残基を含み、(Gly4Ser)3は、scFvについてのより好ましいリンカーのうちの1つである。
【0249】
一例では、リンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGSを含む。
【0250】
本開示はまた、ジスルフィド安定化Fv(又はdiFv、又はdsFv)であって、単一のシステイン残基が、VHのFR、及びVLのFR、及びジスルフィド結合によって連結されたシステイン残基中に導入されて、安定したFvをもたらす、ジスルフィド安定化Fvを企図する。
【0251】
代替的に、又は加えて、本開示は、二量体scFv、すなわち、非共有又は共有連結によって、例えば、(例えば、Fos又はJunに由来する)ロイシンジッパードメインによって連結された2つのscFv分子を含むタンパク質を包含する。代替的に、2つのscFvは、例えば、US2006/0263367に記載されているように、scFvの両方が、抗原を形成し、抗原に結合することを可能にするのに十分な長さのペプチドリンカーによって連結されている。
【0252】
重鎖抗体
いくつかの例では、本開示の抗原結合断片は、重鎖抗体である、又は重鎖抗体を含む。重鎖抗体は、重鎖を含むが、軽鎖を含まない限り、他の多くの形態の抗体と構造的に異なる。したがって、これらの抗体は、「重鎖のみ抗体」とも称される。重鎖抗体は、例えば、ラクダ科及び軟骨魚類(IgNARとも呼ばれる)に見出される。ラクダ類及びその可変領域からの重鎖抗体、並びにその重鎖抗体の産生及び/又は単離及び/又は使用方法の概括的記載は、とりわけ、以下の参考文献、WO94/04678、WO97/49805、及びWO97/49805において見出される。軟骨魚類及びその可変領域からの重鎖抗体、並びにその重鎖抗体の産生及び/又は単離及び/又は使用方法の概括的記載は、とりわけ、WO2005/118629に見出される。
【0253】
半抗体
いくつかの例では、本開示の抗原結合断片は、半抗体又は半分子である。半抗体とは、単一の重鎖及び単一の軽鎖を含むタンパク質を指すことが、当業者には認識されよう。「半抗体」という用語はまた、抗体軽鎖及び抗体重鎖を含むタンパク質であって、抗体重鎖が、別の抗体重鎖との会合を防止するために変異している、タンパク質を包含する。一例では、抗体が、解離して、2つの分子であって、各々が、単一の重鎖及び単一の軽鎖を含有する、分子を形成するときに、半抗体が、形成される。
【0254】
半抗体を産生するための方法は、当該技術分野で既知であり、例示的な方法は、本明細書に記載される。
【0255】
一例では、半抗体は、発現のための目的のIgGを構成する単一の重鎖及び単一の軽鎖の遺伝子を細胞中に導入することによって、分泌され得る。一例では、定常領域(例えば、IgG4定常領域)は、ヘテロ二量体形成を防止するための「キー又はホール」(又は「ノブ又はホール」)変異を含む。一例では、定常領域(例えば、IgG4定常領域)は、T366W変異(又はノブ)を含む。別の例では、定常領域(例えば、IgG4定常領域)は、T366S、L368A、及びY407V変異(又はホール)を含む。別の例では、定常領域は、T350V、T366L、K392L、及びT394W変異(ノブ)を含む。別の例では、定常領域は、T350V、L351Y、F405A、及びY407V変異(ホール)を含む。例示的な定常領域アミノ酸置換は、EU番号付けシステムに従って、番号付けされる。
【0256】
他の抗体及び抗体断片
本開示はまた、他の抗体及び抗体断片、例えば、
(i)例えば、US5837821に記載のミニボディ、
(ii)例えば、US4676980に記載のヘテロコンジュゲートタンパク質、
(iii)例えば、US4676980に記載の化学架橋剤を使用して産生されるヘテロコンジュゲートタンパク質、及び
(iv)Fab3(例えば、EP1993/0302894に記載の)を企図する。
【0257】
安定化タンパク質
本開示のタンパク質は、IgG4定常領域又は安定化IgG4定常領域を含むことができる。「安定化IgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換、又はFabアーム交換若しくは半抗体の形成をする傾向、又は半抗体を形成する傾向を低減するために修飾されたIgG4定常領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換」とは、ヒトIgG4についてのあるタイプのタンパク質修飾であって、IgG4重鎖及び結合した軽鎖(半分子)が、別のIgG4分子からの重軽鎖対に交換される、タンパク質修飾を指す。したがって、IgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを取得し得る(二重特異性分子をもたらす)。Fabアーム交換は、インビボで天然に生じ、精製された血液細胞又は還元されたグルタチオンなどの還元剤によってインビトロで誘導され得る。
【0258】
一例では、安定化IgG4定常領域は、Kabatのシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,1987及び/又は1991)に従って、ヒンジ領域の241位のプロリンを含む。この位置は、EU番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,2001及びEdelman et al.,Proc.Natl.Acad.USA,63,78-85,1969)に従うヒンジ領域の228位に対応する。ヒトIgG4において、この残基は、概して、セリンである。プロリンに対するセリンの置換後に、IgG4ヒンジ領域は、配列CPPCを含む。この点において、当業者は、「ヒンジ領域」が、抗体の2つのFabアームに可動性を付与するFc及びFab領域を連結する抗体重鎖定常領域のプロリンが豊富な部分であることを認識するであろう。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。ヒンジ領域は、概して、Kabatの番号付けシステムに従って、ヒトIgG1のGlu226からPro243までにわたるとして定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する第1及び最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによって、IgG1配列とアライメントされ得る(例えば、WO2010/080538を参照されたい)。
【0259】
医薬製剤の調製
本明細書に記載されるように、本開示の製剤は、有機酸緩衝液と、非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つのアミノ酸安定剤と、を含む。いくつかの例では、製剤は、5.0~6.0のpHを有する。医薬製剤の調製は、当該技術分野で既知の標準的な方法に従って、かつ/又は本明細書に記載される方法に従って、実行される。
【0260】
有機酸緩衝液
本開示における使用に好適な有機酸緩衝液は、1つ以上のカルボン酸又は酸フェノール基を含み、塩基性アミノ基を有さないことが、当業者には理解されよう。酸性基によって提供される緩衝能に加えて、本明細書で使用されるそのような有機緩衝液は、例えば、アミノ基によって提供される追加のイオン化可能な官能基を含有することができる。
【0261】
本開示における使用に好適な緩衝液が、所望のpHで安定しており有効であり、緩衝液が製品の製剤化及び貯蔵中に曝露される条件の範囲にわたって所望のpHを維持するのに十分な緩衝能を提供することが、当業者には明らかである。例えば、安定した緩衝液は、(例えば、凍結/解凍又は高温中に)熱凝集安定性を提供し、物理的分解の酸化(例えば、不溶性微粒子形成)によって影響を及ぼされず、所望の多分散性(すなわち、粒子分布)を提供する。好適な緩衝液は、金属イオンとの有害な複合体を形成せず、毒性がなく、又は膜若しくは他の表面上で、過度に浸透、可溶化、若しくは吸収されない。更に、そのような緩衝液は、緩衝液の利用能又は有効性を減少させるいかなる様式でも、組成物の他の成分と相互作用すべきでないことが、当業者には認識されよう。加えて、医薬製剤の緩衝剤は、投与に安全でなければならず、製品の貯蔵寿命にわたって組成物の他の成分と適合性でなければならず、対象への投与に許容されなければならない。
【0262】
本開示における使用に好適な有機酸緩衝液は、当業者には明らかであり、ヒスチジン緩衝液(例えば、ヒスチジンクロリド、ヒスチジン酢酸、ヒスチジンリン酸、ヒスチジン硫酸など)、グルタミン酸緩衝液(例えば、グルタミン酸一ナトリウムなど)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、及び酢酸緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)を含む。
【0263】
本開示の一例では、有機酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、グルタミン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、及びクエン酸緩衝液からなる群から選択される。例えば、有機酸緩衝液は、ヒスチジン緩衝液である。例えば、有機酸緩衝液は、L-ヒスチジンである。
【0264】
緩衝液の適合性を評価する方法は、当業者には明らかであり、かつ/又は本明細書に記載され、例えば、示差走査蛍光定量法及び動的光散乱法を含む。
【0265】
非イオン界面活性剤
医薬製剤に添加される非イオン性界面活性剤の量は、当業者には明らかであり、非イオン性界面活性剤が、凝集を(例えば、表面変性を防止することによって)抑制し、(例えば、熱及び/又は物理的ストレス中に)安定化を増加させ、製剤中の微粒子の形成(例えば、サブ可視及び/又は可視粒子形成)を最小化し、表面吸着を低減し、かつ/又はタンパク質リフォールディングを支援するような、量である。
【0266】
本開示における使用に好適な非イオン性界面活性剤は、当業者には明らかであり、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80)、ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。
【0267】
本開示の一例では、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーからなる群から選択される。例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(すなわち、ポリソルベート80)又はポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)である。
【0268】
アミノ酸安定剤
医薬製剤に添加されるアミノ酸安定剤の量は、当業者には明らかであり、アミノ酸安定剤が、熱及び/若しくは物理的ストレス(例えば、凍結/解凍又は撹拌)を低減し、並びに/又はタンパク質の安定性を付与若しくは増強するような、量である。
【0269】
本開示における使用に好適なアミノ酸は、当業者には明らかであり、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、システイン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、オルニチン、及びアスパラギン、並びにそれらの塩を含む。
【0270】
本開示の一例では、少なくとも1つのアミノ酸は、プロリン、アルギニン、及びメチオニンからなる群から選択される。例えば、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、プロリン又はその塩形態を含む。例えば、少なくとも1つのアミノ酸安定剤は、アルギニン又はその塩形態を含む。例えば、アミノ酸安定剤は、プロリン及びアルギニン、又はそれらの塩形態である。
【0271】
タンパク質産生
本明細書に記載される製剤中の使用のためのタンパク質を産生して得る方法は、当業者に既知である。例えば、組換えタンパク質の場合、組換えタンパク質をコードする核酸が、発現構築物又はベクターにクローニングされ得、次いで、発現構築物又はベクターは、宿主細胞、例えば、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、又はそうでなければタンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされる。タンパク質を発現するために使用される例示的な細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞、又はHEK細胞である。これらの目的を達成するための分子クローニング技術が当該技術分野において既知であり、例えば、Ausubel et al.,(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までに更新されたものを含む)又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている。多種多様なクローニング及びインビトロ増幅方法は、組換え核酸の構築に好適である。組換え抗体を産生する方法もまた、当該技術分野で既知であり、例えば、US4816567又はUS5530101を参照されたい。
【0272】
単離後、核酸は、更なるクローニング(DNAの増幅)のために、又は無細胞系若しくは細胞内での発現のために、発現構築物若しくは発現ベクター中のプロモーターに作動可能に連結された挿入される。
【0273】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、その最も広い文脈でとられるべきであり、核酸の発現を、例えば、発達及び/又は外部刺激に応答して、又は組織特異的な様式で変化させる追加の調節エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)を伴うか伴わない、正確な転写開始に必要なTATAボックス又は開始剤エレメントを含む、ゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。本文脈において、「プロモーター」という用語は、それが作動可能に連結した核酸の発現を付与、活性化又は増強する組換え、合成若しくは融合核酸、又は誘導体を説明するためにも使用される。例示的なプロモーターは、1つ以上の特定の調節エレメントの追加のコピーを含有して、発現を更に増強し、かつ/又は当該核酸の空間的発現及び/若しくは時間的発現を変化させることができる。
【0274】
本明細書で使用される場合、「に作動可能に連結される」という用語は、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように、核酸に対してプロモーターを配置することを意味する。
【0275】
細胞内で発現するための多くのベクターが利用可能である。ベクター成分は、概して、シグナル配列、タンパク質をコードする配列(例えば、本明細書に提供される情報に由来するもの)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。タンパク質の発現に好適な配列が、当業者には認識されよう。例示的なシグナル配列としては、原核分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII )、酵母分泌シグナル(例えば、インバーターゼリーダー、α因子リーダー、又は酸ホスファターゼリーダー)、又は哺乳動物分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)が挙げられる。
【0276】
哺乳類細胞において活性な例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、小核RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター、CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター若しくはその活性断片を含むハイブリッド調節エレメントが挙げられる。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40(COS-7、ATCC CRL1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚性腎臓株(浮遊培養中での成長のためにサブクローニングされた293又は293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0277】
例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びシゾサッカロミセス・ポンベ(S.pombe)を含む群から選択される酵母細胞などの酵母細胞における発現に好適な典型的なプロモーターとしては、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、又はTEF1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0278】
発現のために単離された核酸又はそれを含む発現構築物を細胞に導入するための手段は、当業者に既知である。所与の細胞に使用される技術は、既知の成功した技術に依存する。組換えDNAを細胞内に導入するための手段としては、とりわけ、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポソームによって媒介されるトランスフェクション(例えば、リポフェクタミン(Gibco、MD,USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco、MD,USA)を使用することによって)、PEG媒介性DNA取り込み、エレクトロポレーション、並びにDNAコーティングされたタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.、WI,USA)を使用することによってなどの微粒子衝突が挙げられる。
【0279】
タンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、使用される細胞型に応じて、様々な培地中で培養され得る。Ham’s Fl0(Sigma)、Minimal Essential Medium((MEM)、(Sigma)、RPMl-1640(Sigma)、及びDulbecco’s Modified Eagle’s Medium((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、哺乳類細胞の培養に好適である。本明細書で考察される他の細胞型を培養するための培地は、当該技術分野で既知である。
【0280】
タンパク質の単離
タンパク質(例えば、抗体)が、培地中に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、最初に、市販のタンパク質濃度フィルタ、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、濃縮され得る。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が、タンパク質分解を阻害するための前述のステップのうちのいずれかに含まれ得、抗生物質が、外来性混入物の増殖を防止するために含まれ得る。代替的に、又は追加的に、上清は、例えば、連続遠心分離を使用して、タンパク質を発現する細胞から濾過及び/又は分離され得る。
【0281】
細胞から調製されたタンパク質は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィー又はプロテインGクロマトグラフィー)、又は前述のもののいずれかの組み合わせを使用して、精製され得る。これらの方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、WO99/57134又はEd Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)に記載されている。
【0282】
本開示の医薬製剤及びタンパク質のアッセイ
本開示の高濃度医薬製剤は、当該技術分野で既知の方法及び/又は以下に記載されるような方法を使用して、物理的及び生物学的活性、並びに/又は安定性について容易にスクリーニングされる。
【0283】
G-CSFR及びその変異体への結合
本明細書に記載されるいくつかのタンパク質は、hG-CSFRのリガンド結合ドメイン、及びhG-CSFRのリガンド結合ドメインの特定の変異体形態(例えば、ある点変異を有さない又は有する配列番号1)に結合する、並びに/又はヒト及びカニクイザルG-CSFRの両方に結合することが、本明細書の開示から当業者には明らかである。標的への結合を評価するための方法は、例えば、Scopes(Protein purification:principles and practice,Third Edition,Springer Verlag,1994)に記載されているように、当該技術分野で既知である。そのような方法は、概して、標的を標識することと、標的を固定化タンパク質と接触させることと、を含む。非特異性結合標的を除去するために洗浄した後に、標識の量、結果として、結合標的が、検出される。もちろん、標的が、固定化されてもよく、タンパク質が、標識されてもよい。パンニングタイプアッセイもまた、使用され得る。代替的に、又は追加的に、表面プラズモン共鳴アッセイが、使用され得る。
【0284】
上記のアッセイはまた、hG-CSFR又はそのリガンド結合ドメイン(例えば、配列番号1)又はその変異体形態へのタンパク質の結合のレベルを検出するために使用され得る。
【0285】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の167位のヒスチジンに対して置換し、かつ/又はアラニンが、配列番号1の168位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するのと実質的に同じレベル(例えば、10%、又は5%、又は1%内)で、結合する。
【0286】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の287位のアルギニンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約100倍、又は150倍、又は160倍、又は200倍低いレベルで、結合する。一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の287位のアルギニンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約160倍低いレベルで、結合する。
【0287】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の237位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍、又は40倍、又は50倍、又は60倍低いレベルで、結合する。一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の237位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約50倍低いレベルで、結合する。
【0288】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の198位のメチオニンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍、又は40倍、又は60倍、又は70倍低いレベルで、結合する。一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の198位のメチオニンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約40倍低いレベルで、結合する。
【0289】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の172位のチロシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍、又は30倍、又は40倍低いレベルで、結合する。一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の172位のチロシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約40倍低いレベルで、結合する。
【0290】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の171位のロイシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約100倍、又は120倍、又は130倍、又は140倍低いレベルで、結合する。一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の171位のロイシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約140倍低いレベルで、結合する。
【0291】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の111位のロイシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約20倍、又は40倍、又は60倍、又は70倍低いレベルで、結合する。一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の111位のロイシンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも少なくとも約60倍低いレベルで、結合する。
【0292】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の168位のヒスチジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも5倍、又は4倍、又は3倍、又は2倍、又は1倍以下低いレベルで、結合する。
【0293】
一例では、本開示のタンパク質は、配列番号1のポリペプチドであって、アラニンが、配列番号1の167位のリジンに対して置換する、配列番号1のポリペプチドに、タンパク質が配列番号1のポリペプチドに結合するよりも5倍、又は4倍、又は3倍、又は2倍、又は1倍以下低いレベルで、結合する。
【0294】
いくつかの例では、結合のレベルは、バイオセンサを使用して、好都合に判定される。
【0295】
本開示は、前述の特徴のいずれかの組み合わせを企図する。一例では、本明細書に記載されるタンパク質は、7つの前段落に記載される結合特徴の全てを有する。
【0296】
エピトープマッピング
別の例では、本明細書に記載されるタンパク質が結合したエピトープが、判定される(すなわち、マッピングされる)。エピトープマッピング方法は、当業者には明らかである。例えば、目的のエピトープを含む、hG-CSFR配列又はその領域にわたる一連の重複ペプチド、例えば、10~15個のアミノ酸を含むペプチドが産生される。次いで、タンパク質は、各々のペプチドに接触し、タンパク質が結合するペプチドが、判定される。これは、タンパク質が結合するエピトープを含むペプチドの判定を可能にする。タンパク質が、複数の非連続ペプチドに結合している場合、タンパク質は、立体構造エピトープに結合し得る。
【0297】
代替的に、又は加えて、hG-CSFR中のアミノ酸残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発によって変異し、タンパク質結合を低減又は防止する変異が、判定される。タンパク質の結合を低減又は防止するいずれかの変異が、タンパク質が結合したエピトープ中にある可能性がある。
【0298】
更なる方法は、本明細書に例示され、hG-CSFR又はその領域を本開示の固定化タンパク質に結合することと、得られた複合体をプロテアーゼで消化することと、を含む。次いで、固定化タンパク質に依然として結合したペプチドは、単離され、例えば、質量分析を使用して、分析されて、ペプチドの配列が、判定される。
【0299】
更なる方法は、hG-CSFR又はその領域中の水素を、重陽子に変換することと、得られたタンパク質を、本開示の固定化タンパク質に結合することと、を含む。次いで、重陽子は、水素に変換し戻され、hG-CSFR又はその領域が、単離され、酵素で消化され、例えば、質量分析を使用して、分析されて、重陽子を含む領域であって、本明細書に記載されるタンパク質の結合によって、水素への変換から保護されている、領域が、同定される。
【0300】
任意選択で、hG-CSFR又はそのエピトープについてのタンパク質の解離定数(Kd)が、判定される。一例では、hG-CSFR結合タンパク質についての「Kd」又は「Kd値」は、放射標識又は蛍光標識hG-CSFR結合アッセイによって、測定される。このアッセイは、非標識hG-CSFRの滴定シリーズの存在下で、最小濃度の標識されたG-CSFRで、タンパク質を平衡化する。結合していないhG-CSFRを除去するための洗浄後に、標識の量が、判定され、標識の量は、タンパク質のKdを示す。
【0301】
別の例によれば、Kd又はKd値は、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって、例えば、BIAcore表面プラズモン共鳴(BIAcore,Inc.、Piscataway,NJ)を使用して、固定化hG-CSFR又はその領域で、測定される。
【0302】
いくつかの例では、C1.2若しくはC1.2Gと同様のKd、又はC1.2若しくはC1.2Gよりも高いKdを有するタンパク質は、hG-CSFRへの結合を競合する可能性があるため、そのタンパク質が、選択される。
【0303】
競合的結合の判定
モノクローナル抗体C1.2又はC1.2Gの結合を競合的に阻害するタンパク質を判定するためのアッセイは、当業者には明らかである。例えば、C1.2又はC1.2Gは、検出可能な標識、例えば、蛍光標識又は放射標識にコンジュゲートする。次いで、標識された抗体及び試験タンパク質は、混合され、hG-CSFR又はその領域(例えば、配列番号1を含むポリペプチド)又はそれを発現する細胞と接触する。次いで、標識されたC1.2又はC1.2Gのレベルが、判定され、標識された抗体が、タンパク質の非存在下で、hG-CSFR、領域、又は細胞と接触するときに判定されたレベルと比較される。標識されたC1.2又はC1.2Gのレベルが、試験タンパク質の非存在と比較して、タンパク質の存在下で低減される場合、タンパク質は、hG-CSFRへのC1.2又はC1.2Gの結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0304】
任意選択で、試験タンパク質は、C1.2又はC1.2Gとは異なる標識にコンジュゲートする。この代替標識は、hG-CSFR又はその領域又は細胞への試験タンパク質の結合のレベルの検出を可能にする。
【0305】
別の例では、タンパク質は、hG-CSFR又はその領域(例えば、配列番号1を含むポリペプチド)又はそれを発現する細胞をC1.2又はC1.2Gと接触させる前に、hG-CSFR、領域、又は細胞に結合することが可能にされる。タンパク質の非存在下と比較して、タンパク質の存在下で、結合したC1.2又はC1.2Gの量が低減することは、タンパク質が、hG-CSFRへのC1.2又はC1.2Gの結合を競合的に阻害することを示す。相互アッセイがまた、標識されたタンパク質を使用して、実行され得、最初に、C1.2又はC1.2GがG-CSFRに結合することを可能にする。この場合、C1.2又はC1.2Gの非存在下と比較して、C1.2又はC1.2Gの存在下で、hG-CSFRに結合した標識されたタンパク質の量が低減することは、タンパク質が、hG-CSFRへのC1.2又はC1.2Gの結合を競合的に阻害することを示す。
【0306】
前述のアッセイのうちのいずれかは、例えば、本明細書に記載されるような、hG-CSFR及び/若しくは配列番号1の変異体形態、並びに/又はC1.2若しくはC1.2Gが結合するhG-CSFRのリガンド結合領域で実行され得る。
【0307】
G-CSFシグナル伝達の阻害の判定
本開示のいくつかの例では、本明細書に記載されるタンパク質は、hG-CSFRシグナル伝達を阻害することが可能である。
【0308】
受容体を介するリガンドのシグナル伝達を阻害するためのタンパク質の能力を評価するための様々なアッセイが、当該技術分野で既知である。
【0309】
一例では、タンパク質は、hG-CSFRへのG-CSFの結合を低減又は防止する。これらのアッセイは、標識されたG-CSF及び/又は標識されたタンパク質を使用して、本明細書に記載されるような競合的結合アッセイとして、実行され得る。
【0310】
別の例では、CD34+骨髄細胞が、G-CSFの存在下で培養されたときに、タンパク質は、CFU-Gの形成を低減する。そのようなアッセイにおいて、CD34+骨髄細胞は、G-CSF(例えば、約10ng/mlの細胞培養培地)、及び任意選択で、幹細胞因子(例えば、約10ng/mlの細胞培養培地)の存在下での半固体細胞培養培地中で、試験タンパク質の存在又は非存在下で培養される。顆粒球クローン(CFU-G)が形成されるのに十分な時間後に、クローン又はコロニーの数が、判定される。タンパク質の非存在下と比較して、タンパク質の存在下で、コロニーの数が低減することは、タンパク質が、G-CSFシグナル伝達を阻害することを示す。複数の濃度のタンパク質を試験することによって、IC50、すなわち、CFU-G形成の最大阻害の50%が発生する濃度が、判定される。一例では、IC50は、0.2nM以下、例えば、0.1nM以下、例えば、0.09nM以下、又は0.08nM以下、又は0.07nM以下、又は0.06nM以下、又は0.05nM以下である。一例では、IC50は、0.04nM以下である。別の例では、IC50は、0.02nM以下である。前述のIC50は、本明細書に記載されるいずれかのCFU-Gアッセイに関連する。
【0311】
更なる例では、タンパク質は、G-CSFの存在下で培養される、hG-CSFRを発現する細胞(例えば、BaF3細胞)の増殖を低減する。細胞は、G-CSFの存在下(例えば、0.5ng/ml)で、かつ試験タンパク質の存在又は非存在下で、培養される。細胞増殖を評価するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、MTT還元及びチミジン取り込みを含む。タンパク質の非存在下で観察されるレベルと比較して、増殖のレベルを低減するタンパク質は、G-CSFシグナル伝達を阻害すると考えられる。複数の濃度のタンパク質を試験することによって、IC50、すなわち、細胞増殖の最大阻害の50%が発生する濃度が、判定される。一例では、IC50は、6nM以下、例えば、5.9nM以下である。別の例では、IC50は、2nM以下、又は1nM以下、又は0.7nM若しくは細胞、又は0.6nM以下、又は0.5nM以下である。前述のIC50は、本明細書に記載されるいずれかの細胞増殖アッセイに関連する。
【0312】
更なる例では、タンパク質は、G-CSF投与後に、インビボでの造血幹細胞及び/若しくは内皮前駆細胞の動員を低減し、並びに/又は例えば、G-CSF投与後に(しかしながら、これは必須でない)、インビボでの好中球の数を低減する。例えば、タンパク質は、任意選択で、G-CSF又はその修飾形態(例えば、PEG化G-CSF又はフィルグラスチム)の投与前に、投与時に、又は投与後に、投与される。(例えば、CD34及び/又はThy1を発現する)造血幹細胞、及び/又は(例えば、CD34及びVEGFR2を発現する)内皮前駆細胞、及び/又は(形態学的に同定され、かつ/又は例えば、CD10、CD14、CD31、及び/若しくはCD88を発現する)好中球の数が、評価される。タンパク質の非存在下で観察されるレベルと比較して、細胞のレベルを低減するタンパク質は、G-CSFシグナル伝達を阻害すると考えられる。一例では、タンパク質は、好中球減少を誘導することなく、好中球の数を低減する。
【0313】
G-CSFシグナル伝達の阻害を評価するための他の方法が、本開示によって企図される。
【0314】
視覚的外観
本開示によって包含される医薬製剤は、例えば、色及び透明度を判定するために、又は可視粒子の存在について判定するために、視覚的外観について評価され得る。
【0315】
動的光散乱法
一例では、粒子サイズ分布は、動的光散乱法(DLS)を使用して、評価される。DLSは、ブラウン運動に基づく粒子から散乱した光を測定し、粒子と製剤との間の屈折率の差に依存する。例えば、デジタル相関器を使用する光強度の変動が、測定される。相関関数を、分析プログラム(例えば、Malvern Zetasizerソフトウェア)にフィットさせて、粒子サイズ分布を計算する。Z平均流体力学的直径の判定のために、キュムラント分析及びストークスアインシュタイン方程式が、例えば、25℃での水の粘度(0.8872mPa*s)を使用して、実行される。多分散性指数もまた、同じキュムラント分析から得られ得る。フィットのモダリティは、サイズ分布対強度のプロットに基づいて、評価される。モダリティは、モノモーダル(すなわち、1つのピーク)又はマルチモーダル(すなわち、2つ以上のピーク)として記載され得る。
【0316】
マイクロフローイメージング
一例では、サブ可視粒子が、マイクロフローイメージング(MFI)を使用して、評価される。例えば、流体中に懸濁された粒子のデジタル画像が、撮像され、アスペクト比(AR)及び強度などの粒子パラメータについて、自動的に分析される。(例えば、μmでの)サイズ及びカウント(すなわち、1ml当たりの粒子の数)もまた、得られ得る。この方法によれば、データは、タンパク質性(すなわち、円形)及び非タンパク質性(すなわち、気泡又はシリコーン油滴などの非タンパク質性粒子)として、形態学的に分類され、非タンパク質性粒子対タンパク質性粒子の比(すなわち、円形分率)が、判定され得る。低い円形分率値は、試験物の大部分が、非円形の粒子、おそらく、タンパク質性粒子から構成されていることを示す。
【0317】
サイズ排除クロマトグラフィー
一例では、凝集体/HMWSは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC又はSE-HPLC)を使用して、評価され、SEC又はSE-HPLCは、タンパク質のより低い分子質量変異体及びより高い分子質量変異体、並びにいかなる不純物も分離する。この方法によれば、結果は、凝集ピーク(AP)の合計及び分解ピーク(DP)の合計として記載される。例えば、本開示の医薬製剤の同一性は、主要なピークのクロマトグラフィー保持時間を、参照標準の主要なピークの保持時間と比較することによって、判定され得る。
【0318】
示差走査蛍光定量法(DSF)
一例では、本開示の医薬製剤の熱安定性は、示差走査蛍光定量法(DSF)を使用して、評価される。DSFは、蛍光ベースのアッセイであり、蛍光ベースのアッセイは、リアルタイムPCRを使用して、アンフォールディングされたタンパク質に優先的に結合する染料の蛍光変化を測定することによって、熱誘導性タンパク質変性を監視する。例えば、熱アンフォールディング及び凝集は、それぞれ、温度の関数として、内在性タンパク質蛍光及び静的光散乱の変化によって、監視される。この方法によれば、熱転移(Tm)の中点及び融解温度の開始(Tonset)が、内在性蛍光を監視することによって、判定される。凝集温度(Tagg)の開始が、例えば、266nm及び473nmでの静的光散乱を監視することによって、判定される。医薬製剤の試料は、一連の温度(例えば、20℃~95℃)にわたって、例えば、0.5℃/分の速度での温度上昇で、評価され得る。
【0319】
キャピラリーゲル電気泳動
一例では、本開示の医薬製剤は、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)を使用して、安定性及び/又は不純物の総蓄積について評価される。例えば、還元型CGE(R-CGE)及び非還元型CGE(NR-CGE)の両方が、実行され得る。一例では、R-GCE及びNR-CGEは、キャピラリー電気泳動システム(例えば、Beckman P/ACE MDQ又はPA800)を使用して、例えば、それぞれ、20.2cm及び10cmの入口から検出窓までのキャピラリー長さ、例えば、20~40℃(±2℃)の温度制御、及び例えば、488nmの励起での検出器で、実施され得る。
【0320】
カチオン交換クロマトグラフィー
一例では、本開示の医薬製剤は、カチオン交換(CEX)クロマトグラフィーを使用して、総荷電変異体(すなわち、酸性及び塩基性種)について評価される。CEXクロマトグラフィーは、天然条件下でのタンパク質の全電荷に従って、タンパク質を分離する。CEX分析は、酸性及び塩基性変異体を分離することによって産生物の純度を判定するために、使用される。目的のタンパク質は、カラムの樹脂に結合した官能基の電荷と反対の電荷を、結合するために有さなければならない。タンパク質の溶出は、タンパク質と樹脂との間のイオン相互作用を破壊するイオン強度を増加させることによって、達成される。クロマトグラフィー技法は、イオン強度に基づいて、試料の酸性、中性、及び塩基性変異体を分離する。目的のピークは、280nmでのUV検出によって、観察され、酸性変異体が最初に、溶出し、続いて、中性及び塩基性変異体が、溶出する。一例では、CEXクロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(例えば、Dionex UltiMate3000 BioRS(U)HPLC)を使用して、実施される。
【0321】
ギブス自由エネルギー(ΔGtrend;HUNK)
一例では、本開示の医薬製剤の化学的安定性及び凝集挙動は、ギブス自由エネルギー又はΔGtrend(HUNK)分析の変化によって、評価される。ΔGtrend分析は、タンパク質濃度の関数として、タンパク質アンフォールディングのΔGとタンパク質凝集との関係を測定する。凝集の非存在下で、タンパク質アンフォールディングのΔGは、タンパク質濃度とは独立した単分子プロセスである。ΔGの変化が、タンパク質濃度の関数として観察される場合、これは、凝集の存在を意味する。この方法によれば、凝集が発生した場合、タンパク質アンフォールディングのΔGとタンパク質濃度との以下の2つの可能な関係がある。
1.ΔGtrendは、タンパク質濃度とともに増加する。この関係は、天然状態凝集の存在を示す-タンパク質アンフォールディングのΔGは、タンパク質濃度の関数として増加する(より正になる)(すなわち、天然タンパク質凝集体の濃度は、タンパク質濃度の関数として増加する)、又は
2.ΔGtrendは、タンパク質濃度とともに減少する。この関係は、変性状態凝集の存在を示す-タンパク質アンフォールディングのΔGは、タンパク質濃度の関数として減少する(より少なく正になる)(すなわち、変性タンパク質凝集体の濃度は、タンパク質濃度の関数として増加する)。
【0322】
HUNK実験において、タンパク質アンフォールディングのΔGは、タンパク質が、変性剤の量の増加の存在下で、アンフォールディングするときの、タンパク質の内在性蛍光スペクトルの変化(すなわち、トリプトファン残基からの発光)を測定することによって、等温的に判定される。
【0323】
一例では、ΔGtrendは、本開示の医薬製剤の緩衝液中で標的濃度に希釈された様々な濃度(例えば、0.25、0.6、2.5、6.0、25.0mg/ml)でのタンパク質アンフォールディングのΔGを測定することによって、判定される。各々の濃度レベルは、変性剤濃度の増加とともに、滴定され(例えば、尿素濃度2.00~8.74Mにわたる32点曲線)、蛍光スペクトルは、10nmのスリット幅で、300~500nm(励起280nm)で測定される。350nm/330nmの発光スペクトル波長比が、各々の試料濃度レベルについて、尿素濃度に対してプロットされ、タンパク質アンフォールディングのΔGが、2状態(すなわち、1つの転移)モデルフィットを使用して、判定される。判定されたΔG値は、試料濃度に対してプロットされて、ΔGtrendが、判定される。
【0324】
キャピラリー電気泳動
いくつかの例では、製剤は、キャピラリー電気泳動(CE)によって、評価される。例えば、製剤は、存在するLMWSの割合を判定するために、非還元条件下でのドデシル硫酸ナトリウムでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)によって、評価され得る。キャピラリー電気泳動は、サブミリ直径のキャピラリー中でかつマイクロ流体及びナノ流体チャネル中で実行される分離方法である。タンパク質は、電場の影響下の電解質溶液を通って移動する。SDSの存在下で、タンパク質は、変性し、タンパク質の分子量に基づいて、分離される。これは、製剤中に存在するLMWS、例えば、タンパク質の分解(例えば、タンパク質分解)の際に産生されたLMWSの検出を可能にする。
【0325】
550nmでの吸光度によって評価される濁度
一例では、本開示の医薬製剤の濁度が、評価される。例えば、濁度は、分光光度計を使用して550nmでの吸光度を測定することによって、評価される。
【0326】
シリンジアビリティ
一例では、本開示の医薬製剤のシリンジアビリティが、評価される。例えば、製剤は、2mlのシリンジ、10mlのシリンジで排出される、又は排出前制御として、未処理のままにされる。この方法によれば、シリンジプランジャーは、プランジャーが底部に達し30Nの力に達するまで、0.2in/minの線速度で、2mlのシリンジを通って押され、0.6in/minで、10mlのシリンジを通って押される。離脱(BF)力及び滑走(GF)力が、排出中に測定され、用途適合性を評価するために使用される。離脱力は、プランジャーの動きを開始するために必要とされる力(2mlのシリンジについては、初期0.3mm、及び10mlのシリンジについては、0.5mm)を記載する。最大滑走力とは、プランジャーの動きを持続するために必要とされる最大摩擦力を指す。最大力値は、力が30Nに達する点前に)離脱領域の端から滑走力領域の端まで(2mlのシリンジについては、26mm、及び10mlのシリンジについては、24mm)測定される。
【0327】
医薬製剤の使用
本明細書で考察されるように、本開示は、対象の疾患又は状態を治療又は防止する方法であって、対象に、本開示の医薬製剤を投与することを含む、方法を提供する。一例では、本開示は、疾患又は状態を治療又は防止する方法であって、それを必要としている対象の疾患又は状態を治療又は防止する方法を提供する。
【0328】
本開示はまた、対象の疾患又は状態を治療又は防止するための、本開示の医薬製剤の使用であって、対象に、本開示の医薬製剤を投与することを含む、使用を提供する。一例では、本開示は、疾患又は状態を治療又は防止するための、本開示の医薬製剤の使用であって、それを必要とする対象の疾患又は状態を治療又は防止するための、医薬製剤の使用を提供する。
【0329】
いくつかの例では、疾患又は状態は、好中球媒介性状態である。いくつかの例では、好中球媒介性状態は、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん、又は虚血再灌流傷害である。
【0330】
例示的な自己免疫状態は、自己免疫腸障害(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、関節炎(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、及び又は特発性関節炎、例えば、若年性特発性関節炎)、又は乾癬を含む。
【0331】
例示的な炎症性状態は、炎症性神経学的状態(例えば、デビック病、脳内のウイルス感染、多発性硬化症、及び視神経脊髄炎)、炎症性肺疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、急性呼吸窮迫症候群[ARDS]、又は喘息)、又は炎症性眼状態(例えば、ぶどう膜炎)を含む。
【0332】
一例では、好中球媒介性状態は、喘息である。
【0333】
一例では、好中球媒介性状態は、ARDSである。
【0334】
一例では、好中球媒介性状態は、虚血再灌流傷害である。例えば、虚血再灌流傷害は、組織又は臓器移植(例えば、腎臓移植)に起因する又は関連する。例えば、抗体は、組織若しくは臓器移植レシピエントに、例えば、臓器収集前に投与される、かつ/又は組織若しくは臓器に、移植前に投与される、又は採取された組織若しくは臓器に、エクスビボで投与される。
【0335】
いくつかの例では、好中球媒介性状態は、乾癬である。一例では、好中球媒介性状態は、(「尋常性乾癬」又は「一般的な乾癬」としても当該技術分野で既知の)プラーク乾癬である。
【0336】
一例では、好中球媒介性状態は、好中球性皮膚症又は好中球性皮膚病変である。例えば、好中球性皮膚病は、膿疱性乾癬である。
【0337】
一例では、好中球性皮膚症は、襞の非微生物性膿疱症(APF);プラーク乾癬;CARD14媒介性膿疱性乾癬(CAMPS);クリオピリン関連周期性症候群(CAPS);インターロイキン-1受容体欠損症(DIRA);インターロイキン-36受容体アンタゴニスト欠損症(DIRTA);化膿性汗腺炎(HS);掌蹠膿疱症;化膿性関節炎、壊疽性膿皮症、及びざ瘡(PAPA);壊疽性膿皮症、ざ瘡、及び化膿性汗腺炎(PASH);壊疽性膿皮症(PG);ベーチェット病の皮膚病変;スティル病;スウィート症候群;角層下膿疱症(スネッドン-ウィルキンソン);膿疱性乾癬;掌蹠膿疱症;急性汎発性発疹性膿疱症;小児肢端膿疱症;滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨増殖症、及び骨炎(SAPHO)症候群;腸関連皮膚症-関節炎症候群(BADAS);手の背側の好中球性皮膚症;好中球性エクリン汗腺炎;持久性隆起性紅斑;並びに壊疽性膿皮症からなる群から選択される。一例では、好中球性皮膚症は、化膿性汗腺炎(HS)又は掌蹠膿疱症(PPP)である。
【0338】
本開示はまた、対象の循環好中球を低減する方法であって、本開示の製剤を投与することを含む、方法を提供する。そのような方法は、対象が、好中球に関連する疾患又は状態(例えば、好中球媒介性状態)を患っている状況において、有用である。
【0339】
いくつかの例では、対象には、本開示の製剤中の有効量のタンパク質が、投与される。「有効量」とは、所望の結果を達成するために必要な投与量及び期間で、少なくとも有効な量を指す。例えば、所望の結果は、治療的又は予防的結果であり得る。有効量は、単回以上の投与において提供され得る。本開示のいくつかの例では、「有効量」という用語は、本明細書の上記のような疾患又は状態の治療をもたらすために必要な量を意味する。本開示のいくつかの例では、「有効量」という用語は、本明細書の上記のような疾患又は状態に関連する因子の変化をもたらすために必要な量を意味する。有効量は、治療される疾患若しくは状態、又は変更される因子に従って、また、体重、年齢、人種背景、性別、健康及び/又は身体的状態、並びに治療される哺乳動物に関連する他の因子に従って、変動し得る。典型的には、有効量は、医療従事者による通例の治験及び実験によって判定され得る比較的広い範囲(例えば、「投与量」範囲)内にある。したがって、この用語は、本開示を、特定の量、例えば、重量又は数に限定するように解釈されるべきでない。有効量は、単一用量で、又は治療期間にわたって1回又は数回繰り返される用量で、投与され得る。
【0340】
いくつかの例では、対象には、本開示の製剤中の治療有効量のタンパク質が、投与される。「治療有効量」は、特定の疾患又は状態の測定可能な改善をもたらすために必要とされる少なくとも最小濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発するための抗体又はその抗原結合断片の能力などの因子に従って、変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が、タンパク質のいかなる毒性又は有害な効果よりもまさるものである。
【0341】
一例では、本開示の医薬製剤は、対象に、対象の疾患又は状態の重症度を低減するためのある量で投与される。
【0342】
一例では、対象は、好中球媒介性状態を発症するリスクがある。対象が、対照集団よりも、好中球媒介性状態を発症するリスクが高い場合、対象は、リスクがある。対照集団は、一般集団からランダムに選択される(例えば、年齢、性別、人種、及び/又は民族がマッチする)1人以上の対象であって、好中球媒介性状態を患っていない、又は好中球媒介性状態の家族歴を有する、対象を含み得る。好中球媒介性状態に関連する「リスク因子」が、対象に関連することが見出される場合、その対象は、疾患又は状態のリスクがあると考えられ得る。リスク因子は、例えば、対象の集団に関する統計的又は疫学的研究による、所与の障害に関連するいずれかの活動、形質、事象、又は特性を含むことができる。したがって、基礎リスク因子を同定する研究が、対象を具体的に含めなかった場合でも、その対象は、好中球媒介性状態のリスクがあると分類され得る。
【0343】
一例では、対象は、好中球媒介性状態を発症するリスクがあり、本開示の医薬製剤は、好中球媒介性状態の症状の発症前又は後に、投与される。一例では、医薬製剤は、好中球媒介性状態の症状の発症前に、投与される。一例では、医薬製剤は、好中球媒介性状態の症状の発生後に、投与される。一例では、本開示の医薬製剤は、リスクがある対象の好中球媒介性状態の症状のうちの1つ以上を軽減又は低減する用量で、投与される。
【0344】
本開示の方法は、対象の好中球媒介性状態のいずれかの形態に、容易に適用され得る。一例では、本開示の方法は、当該技術分野で既知のかつ/又は本明細書に記載される好中球媒介性状態のいずれかの症状を低減する。当業者には明らかなように、対象の障害の症状の「低減」は、同様に障害を患っているが、本明細書に記載される方法での治療を受け取っていない別の対象との比較によるものである。これは、必ずしも2人の対象のサイドバイサイドの比較を必要とするとは限らない。むしろ、集団データに依存し得る。例えば、好中球媒介性状態を患っているが、本明細書に記載される方法での治療を受け取っていない対象の集団(任意選択で、治療されている対象と、例えば、年齢、体重、人種が同様の対象の集団)が、評価され、平均値が、本明細書に記載される方法で治療されている対象又は対象の集団の結果と比較される。
【0345】
本開示の方法はまた、好中球媒介性状態の防止又は治療のための別の治療的に有効な薬剤の投与と一緒の、本開示による医薬製剤の同時投与を含み得る。
【0346】
一例では、本開示の医薬製剤は、好中球媒介性状態の防止若しくは治療、又は循環好中球の低減のために現在使用されている又は開発中である少なくとも1つの追加の既知の化合物又は療法と組み合わせて、使用される。例えば、他の化合物は、抗炎症化合物、例えば、メトトレキサート又は非ステロイド性抗炎症化合物である。代替的に、又は追加的に、他の化合物は、免疫抑制剤である。代替的に、又は追加的に、他の化合物は、コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン及び/又はプレドニゾロンである。一例では、他の化合物は、メトトレキサートである。代替的に、又は追加的に、他の化合物は、シクロホスファミドである。
【0347】
いくつかの例では、製剤は、細胞と組み合わせて、投与される。いくつかの例では、細胞は、幹細胞、例えば、間葉系幹細胞である。
【0348】
いくつかの例では、製剤は、遺伝子療法と組み合わせて、投与される。
【0349】
いくつかの例では、製剤は、非医薬的介入、例えば、アフェレーシス、例えば、血漿アフェレーシス、サイタフェレーシス、白血球アフェレーシス、顆粒球及び/又は単球アフェレーシスと組み合わせて、投与される。この文脈において、製剤は、非医薬的介入が実行されている期間中に、投与され得、非医薬的介入と「組み合わせて」と考えられる。例えば、非医薬的介入は、顆粒球及び/又は単球アフェレーシスであり得、顆粒球及び/又は単球アフェレーシスは、5週間、1週1回実行され、製剤は、この期間にわたって投与され得る。一例では、製剤は、非医薬的介入前に、投与される。一例では、製剤は、非医薬的介入後に、投与される。
【0350】
別の非医薬的介入は、光線療法である。光線療法は、いくつかの好中球性皮膚病を治療するために使用される。
【0351】
前述から明らかであるように、本開示は、対象の併用療法治療の方法であって、それを必要としている対象に、有効量の第1の薬剤及び第2の薬剤又は療法を投与することを含む、方法において、第1の薬剤が、本開示の医薬製剤であり、第2の薬剤又は療法もまた、好中球媒介性状態の防止又は治療のためのものである、方法を提供する。
【0352】
本明細書で使用される場合、「併用療法治療」という語句におけるような「併用」という用語は、第1の薬剤を、第2の薬剤又は療法の存在下で投与することを含む。併用療法治療方法は、第1、第2、第3、又は追加の薬剤/療法が、同時投与される、方法を含む。併用療法治療方法はまた、第1又は追加の薬剤が、第2又は追加の薬剤又は療法の存在下で投与される、方法であって、第2又は追加の薬剤又は療法が、例えば、以前に投与されていてもよい、方法を含む。併用療法治療は、異なるアクターによって、段階的に実行され得る。例えば、1人のアクターは、対象に、第1の薬剤を投与し得、第2のアクターは、対象に、第2の薬剤又は療法を投与し得、第1の薬剤(及び/又は追加の薬剤)が、第2の薬剤又は療法(及び/又は追加の薬剤若しくは療法)の存在下での投与後である限り、投与するステップは、同時に、又はほぼ同時に、又は時間的に離れて実行され得る。アクター及び対象は、同じ実体(例えば、ヒト)であり得る。
【0353】
キット及び他の物質組成物
本開示の別の例は、上記のような疾患又は状態の治療又は防止に有用な本開示の医薬製剤を収容するキットを提供する。
【0354】
一例では、キットは、(a)本開示の医薬製剤を含む容器と、(b)対象の疾患又は状態を治療又は防止するための説明書を有する添付文書と、を含む。
【0355】
一例では、キットは、(a)本開示の少なくとも1つの医薬製剤と、(b)対象の疾患又は状態の治療又は防止においてキットを使用するための説明書と、(c)任意選択で、少なくとも1つの更なる治療活性化合物又は薬物と、を含む。
【0356】
本開示のこの例によれば、添付文書は、容器の上にある、又は容器に伴う。好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、好中球媒介性状態を治療するのに有効である組成物を保持又は収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。標識又は添付文書は、組成物が、治療に適する対象、例えば、好中球媒介性状態を発症している又はその素因がある対象を治療するために使用されることを示し、医薬製剤及び任意の他の医薬品の投与量及び間隔に関する特定のガイダンスが、提供される。キットは、フィルタ、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者観点から望ましい他の材料を、更に含み得る。本開示のいくつかの例では、製剤は、インジェクタブルデバイス(例えば、インジェクタブルシリンジ、例えば、プレフィルドインジェクタブルシリンジ)中に存在することができる。シリンジは、例えば、オートインジェクタ(例えば、ペンインジェクタデバイス)を含む単一のバイアルシステムとして、個別の投与に適合され得る。一例では、インジェクタブルデバイスは、任意選択で、使用及び投与のための説明書を有する、プレフィルドペン又は他の好適なオートインジェクタブルデバイスである。
【0357】
キットは、任意選択で、第2の医薬品を含む容器を更に含み、医薬製剤は、第1の医薬品であり、物品は、対象を、有効量の第2の医薬品で治療するための添付文書上の説明書を更に含む。第2の医薬品は、上記の治療的タンパク質であり得る。
【0358】
一例では、本開示は、本開示の製剤を含むプレフィルドシリンジ又はオートインジェクタを提供する。一例では、プレフィルドシリンジは、プランジャーを有するガラスルアーシリンジである。
【0359】
一例では、本開示は、本開示の製剤を含むバイアルを提供する。
【0360】
本開示は、以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例】
【0361】
実施例1:材料及び方法
以下の実施例のために使用された材料、それらの材料のカタログ番号、及び供給業者を、表1に列挙する。
【表1】
【0362】
製剤の調製
バルク抗G-CSFR抗体材料を、最終濃度が標的濃度(150mg/mL超の標的)超になる前に、透析カセット、遠心分離、又はTFFのいずれか(約7回の緩衝液交換サイクル)を介して、必要とされる製剤及びpHに緩衝液交換し、回収した。タンパク質濃度を測定し、界面活性剤を標的濃度に添加し、全ての製剤を、製剤希釈剤で、標的タンパク質濃度に希釈した。最大濃度が、標的未満であった場合、更なる希釈を実行しなかった。製剤を、0.2μmで濾過し、バイオコンテナ(Nalgenes)又はガラスバイアル中に、様々な異なる充填体積で貯蔵した。
【0363】
視覚的外観
視覚的外観を、白黒背景及び蛍光灯を備える検査ステーションにおいて行った。バイアル中の製剤を、気泡を生成することなく穏やかに旋回させ、次いで、色、透明度、及び可視粒子の存在について検査した。検査を、2人の独立した検査人によって行った。
【0364】
pH測定
製剤のpHを、InLab(登録商標)Ultra Micro ISM電極を備えるMettler Toledo SevenExcellence pH meterを使用して、測定した。
【0365】
UV分光法
タンパク質濃度を、製剤におけるA280/UV判定を使用することによって、以下の2つの方法を介して、測定した。
●未希釈で、IMPLEN P360 Nanophotometerにおいて、測定を3回行い、測定の平均値を計算した。
●重量希釈を介して、Shimadzu UV-1700 Spectrophotometerにおいて、測定を2回実行した。
【0366】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)-高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
SEC-HPLCを使用して、製剤のタンパク質凝集プロファイルを判定した。インタクトなタンパク質を、280nmで検出し、モノマー種、高分子量種(HMWS、凝集体)、及び低分子量種(LMWS、断片)を、相対面積%として報告した。内部及び外部参考文献を使用して、実行を検証した。これを、Dionexシステム(Ultimate3000)で、以下の2つの方法を介して、実行した。
(i)第1の方法を、Acquity BEH200カラム(Waters、1.7μm、4.6×150mm)で実行して、試料を分析した。試料を、適切な緩衝液中で5g/Lに希釈し、3μLを注入したか、又は適切な緩衝液中で10g/Lに希釈し、1.5μLを注入した。分離を、イソクラティック条件下で、0.3mL/分の流量で実行した。移動相は、12分の実行時間で、ビス-トリスプロパン緩衝液(pH7.0)からなった。
(ii)第2の方法は、試料を分析するために、TSkgel G3000SWxLカラム(TOSOH、5μm、7.8×300mm 250Å)を備えた。試料を、適切な緩衝液中で5g/Lに希釈し、10.0μLを注入し、分離を、イソクラティック条件下で、1.0mL/分の流量で実行した。移動相は、15分の実行時間で、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)からなった。
【0367】
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)
CEX-HPLCを使用して、タンパク質性酸性種、主種、及び塩基性種の割合を判定した。Waters Acquity ProteinPak(商標)HiRes CM 7μm 4.6×100mmカラムを備えるDionexシステム(Ultimate 3000)を使用して、試料を分析した。試料を、適切な緩衝液中で10g/Lに希釈し、2.5μLの注入体積を使用し、かつ/又は適切な緩衝液中で5g/Lに希釈し、5μLの注入体積を使用し、分離を、0.7ml/分での勾配法で行った。簡潔には、24分の実行期間にわたる塩勾配の増加での、pH6.2の2つの水性MES緩衝液。種は、280nmで検出され、参照標準に対して同定され、統合面積に対する相対面積百分率として報告された。
【0368】
浸透圧測定
製剤の浸透圧を、Vapro5600 vapour pressure osmometerを使用することによって、測定した。試料体積は、10μLであった。測定を、3回行い、測定の平均値を、算出した。
【0369】
pH測定
pHを、InLab(登録商標)Ultra Micro ISM電極を備えるMettler Toledo SevenExcellence pH meterを使用して、測定した。
【0370】
ポリソルベート80(PS80)の分析
RP-HPLCを使用して、異なる製剤中の初期時点(T0)でのPS80の量を定量化した。PS80標準物及び試料を、エタノールで処理し、続いて、40℃で、0.1MのKOHで処理し、続いて、逆相HPLC法によって加水分解から得られたオレイン酸の試料分析を行った。Nova-Pak(登録商標)C18 3.9×150mm、4μm逆相カラム(Waters)を備えるDionex(Ultimate3000)システム(又は等価物)を使用して、試料を分析した。注入体積は、15μLであり、分離を、2.0ml/分でのイソクラティック法を使用して行った。移動相は、pH2.8の80%アセトニトリル及び20%リン酸二水素カリウム緩衝液であった。カラム温度を、40℃に設定した。種を、250nmで検出し、PS80標準溶液によって生成された標準較正曲線を使用して、定量化した。データを、PS80の%(w/v)として報告する。
【0371】
キャピラリーゲル電気泳動(CGE)
タンパク質「バンディングパターン」を、キャピラリーゲル電気泳動によって得た。分析を、マイクロ流体LabChip GXIIシステム(Perkin Elmer Australia Pty Ltd)又はPA800(Beckman Coulter)を使用して、実行した。マイクロ流体チップ上のタンパク質電気泳動を、一次元SDSPAGEの主な特徴の統合によって、達成した。これらは、分離、染色、脱染、及び検出を含む。変性タンパク質を、キャピラリーシッパーを介してマイクロタイタープレートから直接、チップ上にロードした。次いで、試料を、動電学的にロードし、絡み合ったポリマー溶液の低粘度マトリックスを収容する14mmの長さの分離チャネル中に注入した。試料調製手順全体を、製造業者プロトコルに従って、実行した。非還元試料について、タンパク質溶液を、非還元緩衝液及びMilli-Q水で、2g/Lに希釈した。還元試料を、DTTを含有するキット緩衝液で希釈した。変性は、非還元試料について、40℃で20分間発生し、還元試料について、80℃で15分間発生した。PA800法は、タンパク質種を、タンパク質種の分子量に基づいて分離し、検出は、214nmでのUV検出器を使用して、発生する。非還元条件下で、分析前に、試料を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び熱の添加、続いて、N-エチルマレイミド(NEM)を使用する遊離システインのアルキル化によって、変性させる。相対主ピーク(純度)及び低分子量種(LMWS、不純物)を測定する。還元条件下で、分析前に、試料を、SDS及び加熱の添加、続いて、β-メルカプトエタノール(BME)でのジスルフィド結合の還元によって、変性させる。結果を、非還元試料について、LMWSインタクト及びHMWSについての相対面積百分率で報告した。還元試料について、重鎖及び短鎖画分を考慮した。
【0372】
サブ可視粒子カウント試験
サブ可視粒子カウンティングを、光オブスキュレーションによって、4×1mLの低体積法を使用するHIAC9703+を使用して、実行し、最終3回の実行の平均を、計算し、2μm以上、5μm以上、10μm以上、及び25μm以上の粒子として報告した。サブ可視粒子形態学、サイズ分布、及びカウントの分析もまた、FlowCam Biologics機器(動的/フローイメージング粒子分析-DIPA-技法)を使用して、選択された目的の製剤において実行した。0.5mLの最小試料体積を使用した。測定を、製剤ごとに3回行い、測定の平均値を計算し、粒子を、2~5μm、5~10μm、10~25μm、及び25μm超としてカウンティングした。
【0373】
逆相HPLC
RP-HPLC法を使用して、酸化種の総量を、総面積の百分率として判定し、HC FC/2、軽鎖領域、及びHC Fd’ドメインの酸化の相対量を判定した。試料を、初期に、PBSで、10mg/mlに希釈する。試料を、IdeS酵素(Genovis FabRICATOR)で消化し、これは、IgGのヒンジ領域下の部位特異性切断を実行し、続いて、37℃での1時間のインキュベーションステップを行う。これに続いて、試料の変性及び還元を、20mMのDTT、1mMのEDTA、100mMのMES、pH5.5の3Mのグアニジン-HClの添加、及び56℃での30分間のインキュベーションで行う。次いで、試料を、25:75v/vの試料:MPA(0.1%TFA)で希釈して、試料のpHを調整して、試料安定性を増強する。Acquity UPLC BEH300 C4 1.7μm、50mm×2.1mmカラムを備えるThermo Ultimate3000(又は等価物)を使用して、試料を分析した。5μgの標的ロードを、最終試料濃度で使用し、分離を、0.30ml/分での勾配法で行った。カラム温度を、70℃に設定した。簡潔には、2つの緩衝液(水中0.1%トリフルオロ酢酸及びアセトニトリル中0.08%TFA)を、30分間にわたって交互にした。種を、280nmで報告し、参照標準に対して同定し、統合面積に対する相対面積百分率として報告した。試料のクロマトグラムは、軽鎖(LC)、Fd’、及び単量体Fc(Fc/2)の3つの主ピークを含有し、各々のドメインに関連するそれぞれの酸化産生物を、列挙される主ピークの各々よりもわずかに早期に溶出させる。各々のドメインについての酸化種を、そのドメイン中の総ピークの面積に対する百分率面積として、別個に報告する。
【0374】
容器閉鎖完全性
バイアル中の製剤の容器閉鎖完全性を、真空崩壊法を介して、ガラスバイアルVeriPac455を使用して、実行する。
【0375】
内毒素
limulusアメボサイトライセート法を使用して、内毒素を、動的発色法によって測定する。試料を、4つの異なる希釈で、10倍増加して試験する必要があり、エンドポイント結果を達成し100%に最も近いPPC回収率を有する有効な結果から、結果を報告した。
【0376】
効力
効力ELISAは、CSL324の標的G-CSF-RへのCSL324のインビトロタンパク質結合を測定する。96ウェルマイクロタイタープレートを、一定濃度のGCSF-Rでコーティングし、その後、一連の濃度のCSL324抗体を添加する。プレートを洗浄し、残りの結合したCSL324抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートIgGによって検出する。HRP基質の発色を、450nmでのプレートリーダーにおいて測定し、データを、4パラメータロジスティック(4PL)回帰モデルを使用して、フィットさせる。次いで、相対効力を、参照標準に対する平行線分析を使用して計算し、結果を、参照標準に対するパーセントとして報告する。
【0377】
実施例2:安定剤成分
以下の実施例に記載される実験の目的は、GCSF-Rに結合する抗体であるCSL324の製剤であって、長期安定性を有し、皮下投与に好適である、製剤を製造することであった。出発製剤は、10mg/mLのCSL324と、20mMのpH6.4のヒスチジン緩衝液と、140mMのNaClと、0.02%w/wのPS80と、を含有した。
【0378】
初期ステップとして、130~150mg/mLのCSL324の4つの製剤であって、各々が、異なる安定剤成分を含む、製剤の安定性、浸透圧、及び粘度を評価した。安定性を、5℃での4ヶ月間の貯蔵後に存在する高分子量種(HMWS)の百分率を、SE-HPLCによって測定することによって、評価した。4つの製剤の各々は、出発製剤中に存在した、pH6.4又は5.5の20mMのヒスチジンと、0.02%のポリソルベート80と、を含んだ。
【0379】
表2は、NaCl含有製剤が、貯蔵後に、他の製剤と比較して、より高い百分率のHMWS及びより高い粘度を有したことを示す。NaCl含有製剤はまた、より高い乳光及びより低い熱安定性を有した。
【表2】
【0380】
また、予測分析を、上記の製剤において実行して、どの安定剤成分が、最も好ましい溶質-溶媒相互作用をもたらしたかを判定した。最も良好な属性は、NaClを有さない製剤に関連することが見出された。したがって、NaClは、高濃度のCSL324の製剤に好適な安定剤でないと結論づけられた。したがって、安定剤であるプロリン及びアルギニン、並びに抗酸化メチオニンを、更なる最適化のために選択した。
【0381】
プロリン及びアルギニンの効果を、(6.4の標的pHを有する20mMのヒスチジン緩衝液と、0.03%w/wのポリソルベート80と、を含有する)150mg/mLのCSL324の2つの製剤において、pH、粘度、及び安定性に関して評価した。表3は、分析の結果を示す。
【表3】
【0382】
表3は、高濃度のプロリンが、単独の安定剤として存在するときに、製剤のpHと干渉し、より高い粘度を有することが見出されたことを示す。プロリン濃度を95mMに低減し、100mMのアルギニンを添加することは、製剤の粘度を有意に低減し、標的pHと等価の実際のpHをもたらした。5℃での12週間の貯蔵後のHMWS、LMWS、酸性及び塩基性変異体の百分率において、有意差はなかった。
【0383】
製剤中のプロリン及びアルギニンの量を、更に最適化した。(6.4の標的pHを有する20mMのヒスチジン緩衝液と、0.02%w/wのポリソルベート80と、を含有する)150mg/mLのCSL324の2つの製剤を、それらの製剤の浸透圧、粘度、及び安定性に関して比較した。安定性を、35℃での12週間の貯蔵後に存在するHMWS、LMWS、並びに酸性及び塩基性変異体の百分率を測定することによって、評価した。表4は、分析の結果を示す。
【表4】
【0384】
表4は、95mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む製剤が、35℃での12週間の貯蔵後に、140mMのプロリンと、150mMのアルギニンと、を含む製剤に対して、より低い浸透圧を有したことを実証する。HMWS、LMWS、酸性種、及び塩基性種の粘度又は百分率について、大きい差は観察されなかった。これらの結果は、プロリン及びアルギニンレベルが、100mM近くまで低減され得、いかなる安定性の損失もなく、より低い浸透圧をもたらすことを示す。
【0385】
実施例3:抗酸化剤及び界面活性剤
抗酸化剤
CSL324製剤を更に最適化するために、潜在的な抗酸化剤としてのメチオニンの効果を、評価した。(6.4の標的pHを有する20mMのヒスチジン緩衝液と、0.02w/wのポリソルベート80と、を含有する)150mg/mLのCSL324の4つの製剤を、35℃での2週間の貯蔵後のそれらの製剤の安定性に関して比較した。表5は、分析の結果を示す。
【表5】
【0386】
表5は、メチオニンを有さない等価の製剤と比較して、メチオニンを含む製剤の安定性の改善がなかったことを実証する。また、過酸化物(0.1%過酸化水素、25℃、5時間)及びUV光(0.5×ICH、3日間、25℃)ストレス後に観察された安定性における有意差は、メチオニンを有する製剤とメチオニンを有さない製剤との間になかった。
【0387】
また、メチオニンの効果を、50、100、又は150mg/mLのCSL324と、20mMのヒスチジン(pH6.4)と、95mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む製剤において、評価した。メチオニンを有する製剤及びメチオニンを有さない製剤の安定性を、5、25、及び35℃での12週間の貯蔵後に評価した。観察されたHMWS、LMWS、塩基性又は酸性変異体の百分率のうちのいずれにおいても、有意差は、メチオニンを有する製剤とメチオニンを有さない製剤との間になかった。
【0388】
界面活性剤
CSL324製剤を更に最適化するために、ポリソルベート80の効果を、生理食塩水での0.2mg/mLへの希釈後のかき混ぜストレス及び微粒子形成に対する保護に関して評価した。4つの濃度(0.02%、0.05%、0.1%、及び0.3%)のポリソルベート80を、20mMのヒスチジン(pH6.4)及び140mMのNaCl中に150mg/mLのCSL324を含む製剤において評価した。
【0389】
0.02%w/vのポリソルベート80は、130rpmで60分間かき混ぜることによって誘導されたかき混ぜストレスに対する適切な保護を提供するのに十分であった。しかしながら、ポリソルベート80の濃度の増加は、生理食塩水での0.2mg/mLのCSL324への希釈後の反転後の微粒子形成に対するより良好な保護を提供することが観察された(表6)。したがって、ポリソルベートの濃度を、出発製剤中での0.02%から0.03%w/vに増加させることを決定した。
【表6】
【0390】
実施例4:pHの最適化
CSL324製剤の安定性への異なるpHの効果を、評価した。初期に、(6.4又は5.5の標的pHを有する20mMのヒスチジン緩衝液を含有する)150mg/mLのCSL324の4つの製剤を、5℃での4ヶ月間の貯蔵後の凝集へのそれらの製剤の効果に関して評価した。以下の表7は、5.5のpHが、試験された製剤のうちの全ての4つについて、pH6.4に対して、より少ない凝集をもたらしたことを実証する。
【表7】
【0391】
また、150mg/mLのCSL324と、(6.4、6.0、又は5.5のpHを有する)20mMのヒスチジン緩衝液と、95mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む、CSL324製剤の安定性への異なるpHの効果を、評価した。凝集のレベルを、25℃での6.5週間の貯蔵後に、SE-HPLCによって評価した。
図1は、製剤のpHが減少するにつれて、HMWSの量が減少したことを実証する。
【0392】
また、pHの効果を、5℃又は25℃での貯蔵中に産生されたHMWS及び酸性種の量に関して、8週間の時間経過にわたって評価した。120、100、又は70mg/mLのCSL324と、(6.4、6.0、又は5.5のpHを有する)20mMのヒスチジン緩衝液と、95mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、を含む、製剤を、試験した。
図2Aは、試験された全てのタンパク質濃度について、より高い百分率のHMWSが、pH5.5に対して、6.0又は6.4のpHで観察されたことを示す。同様に、
図2Bは、試験された全てのタンパク質濃度について、カチオン交換クロマトグラフィーによって判定された場合、酸性種のより大きい増加(及び主種の対応する減少)が、より高いpHで、経時的にあったことを示す。
【0393】
上記の製剤を、5℃で最大9ヶ月間、又は25℃で最大21週間、貯蔵した。これらの製剤(100mg/mLのCSL324)の安定性へのpHの効果の概要を、表8に以下に示す。
【表8】
【0394】
これらの結果は、CSL324の製剤が、試験された全てのpH(5.5、6.0、6.4)で安定していたことを示す。しかしながら、製剤は、pH5.5で最も安定していた。
【0395】
実施例5:例示的な製剤
上記の結果に基づく例示的な抗体製剤を、表9に示す。
【表9】
【0396】
表9に例示される抗体の濃度は、120mg/mLであるが、製剤はまた、より低い濃度の抗体に好適である。
【0397】
実施例6:長期安定性
表9に提供される製剤の長期安定性を、製剤を5℃(±3℃)で24ヶ月間、又は25℃(±2℃)で18ヶ月間保持することによって、評価した。結果を、表10及び11に示す。
【表10-1】
【表10-2】
【表11-1】
【表11-2】
【0398】
実施例7:カニクイザルへの皮下投与の毒物動態学及び生物学的利用能
以下の実験の目的は、カニクイザルにおける6週間(2回投与)静脈内対皮下研究において、CSL324の毒物動態学的プロファイルを評価することであった。
【0399】
3つの群であって、各々が、2匹の雄カニクイザル及び2匹の雌カニクイザルから構成されていた、群に、9.3mg/kg若しくは93mg/kgのCSL324を、皮下(0.7mL/kg)投与したか、又は10mg/kgのCSL324を、静脈内(1.0mL/kg)投与した。以下の表12は、各々の群に投与されたCSL324製剤を示す。
【表12】
【0400】
一般毒性の評価は、臨床的観察、糞便観察、体重、並びに臨床的(血液学)及び解剖病理学的評価に基づいた。注射部位を、Draize刺激スコアリング(Draize et al.,1944)によって、評価した。完全な剖検を、全ての動物において実行し、全ての組織についての肉眼的異常を記録した。臓器重量及び顕微鏡検査を、示されるように行った。
【0401】
毒物動態学的評価のための血液を、0(投与前)、1、4、及び8、15、22、29、36、及び43で収集した。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)レベルを、薬力学エンドポイントとして評価した。
【0402】
投与された用量溶液は、投与機器中で、室温で最大6時間まで安定しており、全ての用量レベルについての公称濃度の90~110%の判定基準内の試験物濃度を含有した。
【0403】
表13は、各々の群のサル血清中の得られた毒物動態学的パラメータを示す。CSL324平均C
max及びAUC
0-t値における性別差は、2倍未満であった。CSL324平均C
max及びAUC
0-t値によって評価された場合、SC注射を介して投与されたときに、9.3から93mg/kgへの用量レベルの増加とともに、曝露を、概して、増加した。平均C
max及びAUC
0-t値の増加は、概して、用量比例した。9.3mg/kgの皮下投与後に、CSL324は、10mg/kgのIV注射と比較して、高い生物学的利用能を有し、83.7%の生物学的利用能値を有した。
図3は、IV又はSC注射を介する単回投与後の、組み合わされた雄及び雌サル血清中のCSL324の平均(+SD)濃度(ng/mL)を示す。
【表13】
【0404】
1匹の動物を除いて、全ての動物は、CSL324投与後に、血清G-CSFレベルの検出可能な増加を呈した。しかしながら、93mg/kgのCSL324を受け取った動物におけるG-CSFレベルは、概して、9.3又は10mg/kgのCSL324を受け取った動物において観察されたG-CSFレベルよりも、平均して2倍未満高かった。更に、G-CSFのピークレベルの発生は、CSL324投与後に、早くも2日目から遅くとも36日目までと、大きく変動した。
【0405】
CSL324関連効果は、生存、臨床的観察、糞便観察、体重、又は血液学において認められず、肉眼的又は顕微鏡的変化は、注射部位について認められなかった。
【0406】
結論として、カニクイザルに皮下投与された(ヒスチジンと、プロリンと、アルギニンと、ポリソルベートと、を含む、例えば、20mMのヒスチジンと、pH5.7の100mMのプロリンと、100mMのアルギニンと、0.03%のポリソルベート80と、を含む、製剤中の)93mg/kgのCSL324の2回投与(42日間隔)は、良好に許容され、いかなる有害作用も誘発せず、静脈内投与と同様の生物学的利用能を有した。皮下投与後の注射部位における刺激の証拠はなかった。血清G-CSFレベルは、用量レベル及び経路の両方において、CSL324投与後に増加した。しかしながら、G-CSFのピークレベル及びこれらのピークレベルのタイミングは、大きく変動し、血清G-CSFとCSL324レベルとの間の一貫した相関関係はなかった。
【0407】
無毒性量(NOAEL)は、研究の条件下で、SC投与による93mg/kg(組み合わされた性別について、AUC0-t=414,000h*μg/mL、Cmax=1,250μg/mL)であると考えられた。
【配列表】
【国際調査報告】