(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】アキシャル型3次元ダイオードを有する光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20231219BHJP
H01L 33/16 20100101ALI20231219BHJP
H01L 33/10 20100101ALI20231219BHJP
H01L 33/42 20100101ALI20231219BHJP
H01L 33/44 20100101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/16
H01L33/10
H01L33/42
H01L33/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537133
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021083863
(87)【国際公開番号】W WO2022128485
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ヒリュク,オルガ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヌン,メディ
(72)【発明者】
【氏名】ナピエラーラ,ジェローム
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA11
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA33
5F241CA34
5F241CA40
5F241CA41
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA88
5F241CB11
5F241CB15
5F241CB16
5F241CB23
5F241CB29
5F241FF01
(57)【要約】
本開示は、アキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を含む光電子デバイス(10)に関し、各発光ダイオードは、第1の波長で最大値を含む発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)を含み、アレイは、第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長で前述した電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備え、前記発光ダイオードの各々は、第1の波長(λ
C)で最大値を有する発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)を備え、前記アレイは、前記第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長(λ
T1)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する、
光電子デバイス(10)。
【請求項2】
前記発光ダイオード(LED)のアレイ(15)の少なくとも1つの第1の部分を覆う第1の光学フィルタ(F
R)をさらに備え、前記第1の光学フィルタは、前記第1の波長(λ
C)を含む第1の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を遮り、前記第2の波長(λ
T1)を含む第2の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を通すように構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
活性領域(20)の発光スペクトルは、前記第2の波長(λ
T1)でエネルギーを有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フォトニック結晶は、前記第1および第2の波長(λ
C、λ
CT1)とは異なる少なくとも1つの第3の波長(λ
T2)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記活性領域(20)の発光スペクトルは、前記第3の波長(λ
T2)でエネルギーを有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記発光ダイオード(LED)のアレイ(15)の少なくとも第2の部分を覆う第2の光学フィルタ(F
G)をさらに備え、前記第2の光学フィルタは、前記第1および第2の波長(λ
C、λ
CT1)を含む第3の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を遮り、前記第3の波長(λ
T2)を含む第4の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を通すように構成されている、請求項4または5に記載のデバイス。
【請求項7】
フォトニック結晶は、前記第1、第2および第3の波長(λ
C、λ
CT1、λ
CT2)とは異なる少なくとも1つの第4の波長(λ
T3)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されている、請求項4~6のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
前記活性領域(20)の発光スペクトルは、前記第4の波長(λ
T3)でエネルギーを有する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記発光ダイオード(LED)のアレイ(15)の少なくとも第3の部分を覆う第3の光学フィルタ(F
B)をさらに備え、前記第3の光学フィルタは、前記第1、第2、第3の波長(λ
C、λ
CT1、λ
CT2)を含む第5の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を遮り、前記第4の波長(λ
T3)を含む第6の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を通すように構成されている、請求項7または8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記発光ダイオード(LED)が載置された支持体(12)を備え、前記発光ダイオードの各々は、前記支持体上に載置された第1の半導体部分(18)、前記第1の半導体部分に接触した活性領域(20)、および前記活性領域に接触した第2の半導体部分(22)の積層体を備える、請求項1~9のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項11】
前記支持体(12)と前記発光ダイオード(LED)の前記第1の半導体部分(18)との間に反射層(14)を備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記反射層(14)が金属で作られている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記発光ダイオード(LED)の前記第2の半導体部分(22)は、前記発光ダイオード(LED)によって放出される前記放射線に対して少なくとも部分的に透明な導電層(26)によって覆われている、請求項10~12のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項14】
前記発光ダイオード(LED)は、電気絶縁材料(24)によって分離されている、請求項1~13のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項15】
アキシャル発光ダイオードのアレイ(15)を備える光電子デバイス(10)を製造する方法であって、前記発光ダイオードの各々は、第1の波長(λ
C)で最大値を有する発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性層(20)を備え、前記アレイは、前記第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長(λ
T1)で前記発光ダイオードによる前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する、方法。
【請求項16】
前記アレイ(15)の前記発光ダイオード(LED)を形成することは、
前記アレイのピッチで互いに分離されている第2の半導体部分(22)を基板(40)上に形成するステップと、
活性領域(20)を各第1の半導体部分上に形成するステップと、
第1の半導体部分(18)を各活性領域上に形成するステップと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基板(40)を除去するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電子デバイス、特に、半導体材料で作られた発光ダイオードを備える表示スクリーンまたは画像投影デバイス、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料をベースとした発光ダイオードは、一般に、発光ダイオードによって提供される電磁放射線の大部分が放出される発光ダイオードの領域である活性領域を備える。活性領域の構造および組成は、所望の特性を有する電磁放射線を得るように適合される。特に、理想的に実質的にモノクロである狭スペクトルの電磁放射線を得ることが一般的に望まれている。
【0003】
ここでは、アキシャル型3次元発光ダイオードを備える光電子デバイスが考慮されている。アキシャル型3次元発光ダイオードは、それぞれが好ましい方向に沿って延びる3次元半導体素子を備え、3次元半導体素子の軸方向端部に活性領域を備える発光ダイオードである。
【0004】
3次元半導体素子の例としては、以下III-V化合物と呼ばれる、主に少なくとも1つのIII族元素および1つのV族元素を含む化合物(例えば窒化ガリウムGaN)、または、以下II-VI化合物と呼ばれる、主に少なくとも1つのII族元素および1つのVI族元素を含む化合物(例えば酸化亜鉛ZnO)をベースとした半導体材料を備えるマイクロワイヤまたはナノワイヤがある。このようなデバイスは、例えば、仏国特許出願公開第2995729号明細書および仏国特許出願公開第2997558号明細書に記載されている。
【0005】
単一量子井戸または多重量子井戸を備える活性領域の形成が知られている。単一量子井戸は、P型およびN型がそれぞれドープされた第1の半導体材料(例えば、III-V化合物、特にGaN)の2つの層の間に、第1の半導体材料とは異なるバンドギャップを有する第2の半導体材料(例えば、III-V化合物および第3元素の合金、特にInGaN)の層を挟むことにより、形成される。多重量子井戸構造は、量子井戸と障壁層とを交互に形成する半導体層の積層体を備える。
【0006】
光電子デバイスの活性領域によって放出される電磁放射線の波長は、特に量子井戸を形成する第2の材料のバンドギャップに依存する。第2の材料がIII-V化合物および第3の元素の合金(例えば、InGaN)である場合、放出される放射線の波長は、特に第3の元素(例えば、インジウム)の原子百分率に依存する。特に、インジウムの原子百分率が高ければ高いほど、波長は長い。
【0007】
欠点は、インジウムの原子百分率が閾値を超えると、量子井戸のGaNとInGaNとの間の格子パラメータの差異が観察され、転位および/または合金分離効果などの活性層における非放射欠陥の形成を引き起こし、光電子デバイスの活性領域の量子効率の著しい低下を引き起こす可能性があるということである。したがって、III-VまたはII-VI化合物をベースとした単一量子井戸または多重量子井戸を備える活性領域を有する光電子デバイスによって放出される放射線の最大波長が存在する。従って、特に赤色で発光するIII-VまたはII-VI化合物で作られた発光ダイオードの形成は、困難である可能性がある。
【0008】
しかし、III-VまたはII-VI化合物から作られた材料の使用は、大きな寸法の基板上にエピタキシーによってそのような材料を低コストで成長させる方法が存在するため、望ましい。
【0009】
活性領域によって放出される電磁放射線を異なる波長の電磁放射線に変換できるフォトルミネセンス材料で発光ダイオードを覆うことが知られている。しかし、このようなフォトルミネセンス材料は、コストが高く、変換効率が低く、時間の経過とともに性能が低下する可能性がある。
【0010】
また、所望の特性を有し、特にターゲット発光周波数付近の狭い帯域を含む発光スペクトルを有する活性領域を有する、III-VまたはII-VI化合物をベースとしたアキシャル型3次元発光ダイオードを形成することは、困難である可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
一実施形態の目的は、発光ダイオードを含む前述した光電子デバイスの欠点の全部または一部を克服することである。
【0012】
一実施形態の他の目的は、各発光ダイオードの活性領域がIII-VまたはII-VI化合物をベースとした半導体材料の積層体を備えることである。
【0013】
一実施形態の他の目的は、光電子デバイスが、フォトルミネセンス材料を使用せずに、赤色の光放射を放出するように構成された発光ダイオードを備えることである。
【0014】
一実施形態の他の目的は、所望の特性を有し、特にターゲット発光周波数付近の狭い帯域を含む発光スペクトルを有する活性領域を有する、III-VまたはII-VI化合物をベースとしたアキシャル型3次元発光ダイオードである。
【0015】
一実施形態は、アキシャル発光ダイオードのアレイを備える光電子デバイスを提供し、各発光ダイオードは、第1の波長で最大値を有する発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性領域を備え、アレイは、第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長で前述した電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する。
【0016】
一実施形態によれば、デバイスは、前述した発光ダイオードのアレイの少なくとも1つの第1の部分を覆う第1の光学フィルタをさらに備え、第1の光学フィルタは、第1の波長を含む第1の波長範囲にわたって前述した増幅された放射線を遮り、第2の波長を含む第2の波長範囲にわたって前述した増幅された放射線を通すように構成されている。
【0017】
一実施形態によれば、活性領域の発光スペクトルは第2の波長でエネルギーを有する。
【0018】
一実施形態によれば、フォトニック結晶は、第1の波長および第2の波長とは異なる少なくとも1つの第3の波長で前述した電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されている。
【0019】
一実施形態によれば、活性領域の発光スペクトルは第3の波長でエネルギーを有する。
【0020】
一実施形態によれば、デバイスは、前述した発光ダイオードのアレイの少なくとも第2の部分を覆う第2の光学フィルタをさらに備える。第2の光学フィルタは、第1の波長および第2の波長を含む第3の波長範囲にわたって前述した増幅された放射線を遮り、第3の波長を含む第4の波長範囲にわたって前述した増幅された放射線を通すように構成されている。
【0021】
一実施形態によれば、フォトニック結晶は、第1、第2および第3の波長とは異なる少なくとも1つの第4の波長で前述した電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されている。
【0022】
一実施形態によれば、活性領域の発光スペクトルは第4の波長でエネルギーを有する。
【0023】
一実施形態によれば、デバイスは、前述した発光ダイオードのアレイの少なくとも第3の部分を覆う第3の光学フィルタをさらに備え、第3の光学フィルタは、第1、第2および第3の波長を含む第5の波長範囲にわたって前述した増幅された放射線を遮り、第4の波長を含む第6の波長範囲にわたって前述した増幅された放射線を通すように構成されている。
【0024】
一実施形態によれば、デバイスは、発光ダイオードが載置された支持体を備え、各発光ダイオードは、支持体上に載置された第1の半導体部分、第1の半導体部分に接触した活性領域、および活性領域に接触した第2の半導体部分の積層体を備える。
【0025】
一実施形態によれば、デバイスは、支持体と発光ダイオードの第1の半導体部分との間に反射層を備える。
【0026】
一実施形態によれば、反射層は金属で作られている。
【0027】
一実施形態によれば、発光ダイオードの第2の半導体部分は、発光ダイオードによって放出される放射線に対して少なくとも部分的に透明な導電層で覆われている。
【0028】
一実施形態によれば、発光ダイオードは電気絶縁材料によって分離されている。
【0029】
また、一実施形態は、アキシャル発光ダイオードのアレイを備える光電子デバイスを製造する方法を提供する。各発光ダイオードは、第1の波長で最大値を含む発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性層を備える。アレイは、第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長で発光ダイオードによる電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する。
【0030】
一実施形態によれば、アレイの発光ダイオードを形成することは、アレイのピッチで互いに分離されている第2の半導体部分を基板上に形成するステップと、活性領域を各第1の半導体部分上に形成するステップと、第1の半導体部分を各活性領域上に形成するステップとを含む。
【0031】
一実施形態によれば、方法は、基板を除去するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
上記および他の特徴および利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0033】
【
図1】発光ダイオードを備える光電子デバイスの一実施形態の部分概略断面図である。
【
図2】
図1に示す光電子デバイスの部分概略透視図である。
【
図3】
図1に示す光電子デバイスの発光ダイオードのレイアウトの一例を概略的に示す図である。
【
図4】
図1に示す光電子デバイスの発光ダイオードのレイアウトの他の一例を概略的に示す図である。
【
図5】
図1の光電子デバイスによって放出される放射線の光強度の変化曲線を概略的に示し、1つの共振を有する構成を示す図である。
【
図6】光強度の変化曲線を概略的に示し、2つの共振を有する構成を示す図である。
【
図7】光強度の変化曲線を概略的に示し、3つの共振を有する構成を示す図である。
【
図8】2つの共振を有する構成での放射線の選択方法を示す図である。
【
図9】3つの共振を有する構成での放射線の選択方法を示す図である。
【
図10A】
図1に示す光電子デバイスの製造方法の一実施形態のステップを示す図である。
【
図10B】製造方法の他のステップを示す図である。
【
図10C】製造方法の他のステップを示す図である。
【
図10D】製造方法の他のステップを示す図である。
【
図10E】製造方法の他のステップを示す図である。
【
図10F】製造方法の他のステップを示す図である。
【
図10G】製造方法の他のステップを示す図である。
【
図11】
図1に示す光電子デバイスの製造方法の他の実施形態のステップを示す図である。
【
図12】光電子デバイスのフォトニック結晶の発光ダイオードによって第1の波長で放出される光強度の、フォトニック結晶のピッチおよび発光ダイオードの直径に応じたグレースケール・マップである。
【
図13】光電子デバイスのフォトニック結晶の発光ダイオードによって第2の波長で放出される光強度の、フォトニック結晶のピッチおよび発光ダイオードの直径に応じたグレースケール・マップである。
【
図14】光電子デバイスのフォトニック結晶の発光ダイオードによって第3の波長で放出される光強度の、フォトニック結晶のピッチおよび発光ダイオードの直径に応じたグレースケール・マップである。
【
図15】第1の試験で測定した波長に応じた発光ダイオードの光強度の変化曲線を示す図である。
【
図16】第2の試験で測定した波長に応じた発光ダイオードの光強度の変化曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
同様の特徴は、様々な図面で同様の参照符号によって指定されている。特に、様々な実施形態の間で共通である構造的および/または機能的特徴は、同じ参照符号を有し得、同一の構造的、寸法的および材料的特性を有し得る。明確にするために、本明細書に記載された実施形態の理解に有用なステップおよび要素のみが図示され、詳細に説明されている。特に、考慮される光電子デバイスは、任意に他の構成要素を備えるが、ここで詳述しない。
【0035】
以下の説明では、用語「前」、「後」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置を修飾する用語、用語「の上」、「の下」、「上側」、「下側」などの相対位置を修飾する用語、または用語「水平」、「垂直」などの方向を修飾する用語に言及する場合、図に示された向き、または通常の使用位置にある光電子デバイスを参照する。
【0036】
「約」、「およそ」、「実質的に」および「程度」という表現は、特に指定されていない場合、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。また、用語「絶縁性」および「伝導性」は、それぞれ「電気絶縁性」および「電気伝導性」を意味すると考えられている。
【0037】
以下の説明では、層の内部透過率は、層から出る放射線強度と層に入る放射線強度との比に対応する。層の吸収は、1と内部透過率との差に等しい。以下の説明では、層を通る放射線の吸収が60%よりも小さい場合、層は放射線に対して透明であるという。以下の説明では、層を通る放射線の吸収が60%よりも大きい場合、層は放射線を吸収するという。放射線が、最大値を有するガウス型などの一般的に「ベル」型のスペクトルを有する場合、放射線の表現波長、または放射線の中心波長もしくは主波長は、スペクトルの最大値に達する波長を指す。以下の説明では、材料の屈折率は、光電子デバイスによって放出される放射線の波長範囲に対する材料の屈折率に対応する。特に指定しない限り、屈折率は、有用な放射線の波長範囲にわたって実質的に一定であると考えられ、例えば、光電子デバイスによって放出される放射線の波長範囲にわたる屈折率の平均に等しい。
【0038】
アキシャル発光ダイオードという用語は、例えば筒状の細長い形状を有する3次元構造を指し、該3次元構造は、5nm~2.5μmの範囲、好ましくは50nm~2.5μmの範囲の、マイナーディメンジョンと呼ばれる少なくとも2つの寸法を主方向に沿って有する。メジャーディメンションと呼ばれる第3の寸法は、最大のマイナーディメンションの1倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上である。特定の実施形態では、マイナーディメンションは、およそ1μm以下、好ましくは100nm~1μmの範囲、より好ましくは100nm~800nmの範囲であってよい。特定の実施形態では、各発光ダイオードの高さは、500nm以上、好ましくは1μm~50μmの範囲であってもよい。
【0039】
図1および
図2はそれぞれ、発光ダイオードを備える光電子デバイス10の一実施形態を部分的に概略的に示す側断面図および透視図である。
【0040】
光電子デバイス10は、
図1において下から上へ、以下の要素を備える:
支持体12;
支持体12上に載置され、上面16を有する第1の電極層14;
上面16上に載置されたアキシャル発光ダイオードLEDのアレイ15:各アキシャル発光ダイオードは、
図1において下から上へ、電極層14に接触した下側半導体部分18(
図2に示されない)と、下側半導体部分18に接触した活性領域20(
図2に示されない)と、活性領域20に接触した上側半導体部分22(
図2に示されない)とを備える;
発光ダイオードLEDの高さ全体に沿って発光ダイオードLEDの間に延びる絶縁層24;
発光ダイオードLEDの上側半導体部分22に接触して発光ダイオードLEDを覆う第2の電極層26(
図2に示されない);および
第2の電極層26を覆い、光電子デバイス10の発光面30を規定するコーティング28(
図2に示されない)。
【0041】
各発光ダイオードLEDは、活性領域20が下側半導体部分18と一直線にあり、上側半導体部分22が活性領域20と一直線にあるため、アキシャルと呼ばれる。下側半導体部分18、活性領域20および上側半導体部分22を備える集合体は、アキシャル発光ダイオードの軸と呼ばれる軸Δに沿って延びている。好ましくは、発光ダイオードLEDの軸Δは、平行し、面16に直交する。
【0042】
支持体12は、電子回路に対応してもよい。電極層14は、金属(例えば、銀、銅、または亜鉛)で作られてもよい。電極層14の厚さは、電極層14がミラーを形成するのに十分である。例えば、電極層14は100nmよりも大きい厚さを有する。電極層14は、支持体12を完全に覆ってもよい。変形例として、電極層14は、発光ダイオードのアレイの発光ダイオードのグループの別々の制御を可能にするように、別個の部分に分割されてもよい。一実施形態によれば、面16は、反射性であってもよい。その場合、電極層14は、鏡面反射を有してもよい。他の実施形態によれば、電極層14は、ランバート反射を有してもよい。ランバート反射を有する表面を得るためには、導電性表面上に凹凸を作成することができる。一例として、面16がベース上に載置された導電層の表面に対応する場合、一旦堆積された金属層の面16がレリーフを有するように、金属層の堆積前にベースの表面のテクスチャリングを行ってもよい。
【0043】
第2の電極層26は、導電性で透明である。一実施形態によれば、電極層26は、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウムもしくはガリウムでドープされたかもしくはドープされない酸化亜鉛、またはグラフェンなどの透明導電性酸化物(TCO)層である。一例として、電極層26は、5nm~200nmの範囲、好ましくは20nm~50nmの範囲の厚さを有する。絶縁層24は、無機材料(例えば、酸化ケイ素または窒化ケイ素)で作られてもよい。絶縁層24は、有機材料(例えば、ベンゾシクロブテン(BCB)をベースとした絶縁ポリマー)で作られてもよい。コーティング28は、後でさらに詳述するように、1つの光学フィルタ、または互いに隣り合って配置された複数の光学フィルタを備えてもよい。
【0044】
図1および
図2に示す実施形態では、全ての発光ダイオードLEDが同じ高さを有する。絶縁層24の厚さは、例えば、絶縁層24の上面が発光ダイオードの上面と面一になるように、発光ダイオードLEDの高さに等しくなるように選択される。
【0045】
一実施形態によれば、下側半導体部分18、上側半導体部分22および活性領域20は、少なくとも部分的に半導体材料で作られている。半導体材料は、III-V化合物、II-VI化合物、およびIV族半導体もしくは化合物からなる群から選択される。III族元素の例としては、ガリウム(Ga)、インジウム(In)またはアルミニウム(Al)が挙げられる。V族元素の例としては、窒素(N)、リン(P)または砒素(As)が挙げられる。III-N化合物の例は、GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaNまたはAlInGaNである。II族元素の例としては、IIA族元素(特にベリリウム(Be)およびマグネシウム(Mg))、ならびにIIB族元素(特に亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)および水銀(Hg))が挙げられる。VI族元素の例としては、VIA族元素、特に酸素(O)およびテルル(Te)が挙げられる。II-VI化合物の例は、ZnO、ZnMgO、CdZnO、CdZnMgO、CdHgTe、CdTeまたはHgTeである。一般に、III-VまたはII-VI化合物の元素は、異なるモル分率で組み合わせてもよい。IV族半導体材料の例は、ケイ素(Si)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素合金(SiC)、シリコンゲルマニウム合金(SiGe)、または炭化ゲルマニウム合金(GeC)である。下側半導体部分18および上側半導体部分22は、ドーパントを備えてもよい。一例として、III-V化合物の場合、ドーパントは、P型II族ドーパント(例えば、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)もしくは水銀(Hg))、P型IV族ドーパント(例えば、炭素(C))、またはN型IV族ドーパント(例えば、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S)、テルビウム(Tb)もしくは錫(Sn))からなる群から選択されてもよい。好ましくは、下側半導体部分18はPドープGaNで作られ、上側半導体部分22はNドープGaNで作られている。
【0046】
各発光ダイオードLEDについて、活性領域20は、閉じ込め手段を備えてもよい。一例として、活性領域20は、単一量子井戸を備えてもよい。そして、活性領域20は、下側半導体部分18および上側半導体部分22を形成する半導体材料とは異なる半導体材料を含み、下側半導体部分18および上側半導体部分22を形成する材料のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有する。活性領域20は、多重量子井戸を備えてもよい。その場合、量子井戸と障壁層とを交互に形成する半導体層の積層体を備える。
【0047】
図1および
図2において、各発光ダイオードLEDは、円形底面および軸Δを有する筒形状を有する。しかし、各発光ダイオードLEDは、軸Δと、多角形(例えば、正方形、長方形または六角形)の底面とを有する筒形状を有してもよい。好ましくは、各発光ダイオードLEDは、六角形底面を有する筒形状を有する。
【0048】
下側半導体部分18の高さh1、活性領域20の高さh2、上側半導体部分22の高さh3、電極層26の厚さ、およびコーティングの厚さ28の合計は、発光ダイオードLEDの高さHと呼ばれる。
【0049】
一実施形態によれば、発光ダイオードLEDは、フォトニック結晶を形成するように配置されている。
図2には、12個の発光ダイオードLEDが例として示されている。実際には、アレイ15は、7~100,000個の発光ダイオードLEDを備えてもよい。
【0050】
アレイ15の発光ダイオードLEDは、行および列に配置されている(
図2には、3行および4列が例として示されている)。アレイ15のピッチ「a」は、発光ダイオードLEDの軸と、同じ行または隣接する行にある近くの発光ダイオードLEDの軸との間の距離である。ピッチaは実質的に一定である。より詳細には、アレイのピッチaは、アレイ15がフォトニック結晶を形成するように選択される。形成されたフォトニック結晶は、例えば2次元フォトニック結晶である。
【0051】
アレイ15によって形成されるフォトニック結晶の特性は、有利には、発光ダイオードのアレイ15が、軸Δに垂直な面内の共振空洞と軸Δに沿った共振空洞とを形成するように、特に結合を達成し選択効果を高めるために選択される。これにより、フォトニック結晶を形成しない発光ダイオードLEDの集合体と比較して、アレイ15の発光ダイオードLEDの集合体によって発光面30を通って放出される放射線の強度を、特定の波長において増幅することが可能となる。
【0052】
図3および
図4は、アレイ15の発光ダイオードLEDのレイアウトの例を概略的に示す。特に、
図3は、いわゆる正方形格子レイアウトを示し、
図4は、いわゆる六角形格子レイアウトを示す。
【0053】
図3および
図4はそれぞれ、4つの発光ダイオードLEDを有する行を3つ示す。
図3に示すレイアウトでは、発光ダイオードLEDは、行と列との各交差点に位置し、行は列に垂直である。
図4に示すレイアウトでは、一行におけるダイオードは前の行および次の行における発光ダイオードに対してピッチaの半分だけシフトされている。
【0054】
図3および
図4に示す実施形態では、各発光ダイオードLEDは面16に平行な面において直径Dの円形断面を有する。六角形格子レイアウトまたは正方形格子レイアウトの場合、直径Dは0.05μm~2μmの範囲であってもよい。ピッチaは0.1μm~4μmの範囲であってもよい。
【0055】
さらに、一実施形態によれば、発光ダイオードLEDの高さHは、各発光ダイオードLEDが、光電子デバイス10によって放出される放射線の所望の中心波長λで軸Δに沿って共振空洞を形成するように選択される。一実施形態によれば、高さHは、k×(λ/2)×neffに実質的に比例するように選択され、neffは、考慮される光学モードにおける発光ダイオードの有効屈折率であり、kは正の整数である。有効屈折率は、例えば、Joachim Piprek著「Semiconductor Optoelectronic Devices: Introduction to Physics and Simulation」において定義されている。
【0056】
しかし、発光ダイオードが異なる中心波長で発光する発光ダイオードの複数のグループに分けられている場合でも、全ての発光ダイオードの高さHは同じであってもよい。そして、各グループの発光ダイオードの共振空洞を得ることが可能な理論的な高さから決定されてもよく、例えば、これらの理論的な高さの平均に等しい。
【0057】
一実施形態によれば、発光ダイオードLEDのアレイ15によって形成されるフォトニック結晶の特性は、少なくともターゲット波長で発光ダイオードLEDのアレイ15によって放出される光強度を増加させるように選択される。一実施形態によれば、各発光ダイオードLEDの活性領域20は、ターゲット波長とは異なる波長で最大値を有する発光スペクトルを有する。しかし、活性領域20の発光スペクトルは、ターゲット波長と重なり、すなわち、ターゲット波長における活性領域20の発光スペクトルのエネルギーは、ゼロではない。
【0058】
図5は、波長λに応じて、個別に考慮される発光ダイオードLEDの活性領域20によって放出される光強度Iの変化曲線C1(実線)、フォトニック結晶との結合による増幅係数の変化曲線C2(破線)、および発光ダイオードのアレイ15によって放出される光強度の変化曲線C3(点線)を概略的に示している。曲線C1は一般的な「ベル」形状を有し、中心波長λ
Cで頂点を有する。曲線C2はターゲット波長λ
T1を中心とする狭い共振ピークに対応する。曲線C3は中心波長λ
Cにおける頂点Sとターゲット波長λ
T1におけるピークP
1とを含む。特に、頂点Sにおける曲線C3の半値全幅は、ピークP
1における曲線C3の半値全幅よりも、例えば、2倍、特に8倍~15倍、例えば10倍大きくてもよい。
【0059】
一実施形態によれば、ターゲット波長λ
T1で狭スペクトル光放射を放出する光電子デバイス10を得ることは、ターゲット波長λ
T1よりも小さい波長を遮るように、発光ダイオードLEDのアレイ15によって放出される放射線をフィルタリングすることによって達成されてもよい。これは、コーティング28に光学フィルタを提供することによって達成されてもよい。
図5では、発光ダイオードのアレイ15によって放出される放射線のスペクトルの遮られた部分がハッチングされている。その場合、光電子デバイス10の発光面30によって放出される放射線のスペクトルは、主にピークP
1を含む。
【0060】
これにより、有利には、ターゲット波長λT1とは異なる中心波長λCで最大強度を有する放射線を放出する活性領域20を形成することが可能となる。また、有利には、半値における放射帯域がターゲット放射線の放射帯域よりも大きい放射線を放出する活性領域20を使用することが可能となる。さらに、有利には、活性領域20の製造が容易になることが可能となる。実際には、一例として、活性領域20がInGaN層を備える場合、放出される放射線の中心波長はインジウムの割合が増えるにつれて増加する。しかし、赤色に対応する発光波長を得るためには、16%よりも大きいインジウムの割合を得る必要があり、これは活性領域の量子効率の低下と解釈される。ターゲット波長λT1よりも小さい中心波長λCで最大強度を有する放射線を放出する活性領域20を使用するという事実により、量子効率を改善した活性領域20を使用することが可能となる。さらに、フォトルミネセンス材料を使用することなく、製造が容易な、中心波長λCで最大強度を有する放射線を放出する活性領域20を使用することにより、ターゲット波長λT1で放射線を得ることが可能となる。さらに、下側半導体部分18の高さh1および上側半導体部分22の高さh2は、ピークの光強度がターゲット波長λT1で最大になるように、有利に決定される。
【0061】
図6は
図5と類似した図であり、フォトニック結晶による増幅係数の変化曲線C2が、それぞれターゲット波長λ
T1およびλ
T2を中心とする2つの狭い共振ピークを含む点で異なる。その場合、曲線C3は、中心波長λ
Cにおける頂点S、ターゲット波長λ
T1におけるピークP
1、およびターゲット波長λ
T2におけるピークP
2を含む。
【0062】
図7は
図5と類似した図であり、フォトニック結晶による増幅係数の変化曲線C2は、それぞれターゲット波長λ
T1、λ
T2およびλ
T3を中心とする3つの狭い共振ピークを含む点で異なる。曲線C3は、中心波長λ
Cにおける頂点S、ターゲット波長λ
T1におけるピークP
1、ターゲット波長λ
T2におけるピークP
2、および
図7に示した中心波長λ
Cに実質的に等しいターゲット波長λ
T3におけるピークP
3を含む。
【0063】
図8および
図9は、それぞれ2つの共振ピークおよび3つの共振ピークを有する構成の発光ダイオードのアレイ15によって放出される放射線のフィルタリングの原理を示している。
図5に関連して前述したように、ターゲット波長λ
T1を中心とする狭スペクトルの光放射を放出する光電子デバイスを得ることは、発光ダイオードの発光スペクトルの不要な部分を遮ることにより達成されてもよい。一例として、
図8および
図9では、発光ダイオードのアレイ15によって放出される放射線のスペクトルの遮られた部分がハッチングされており、共振ピークの1つだけが保持されている。
【0064】
発光ダイオードのアレイによって放出される放射線のフィルタリングは、任意の手段によって実行されてもよい。一実施形態によれば、フィルタリングは、発光ダイオードを着色材料の層で覆うことにより達成されてもよい。他の実施形態によれば、フィルタリングは、発光ダイオードを干渉フィルタで覆うことにより達成されてもよい。
【0065】
一実施形態によれば、少なくとも2つの共振ピークを含む発光構成において、発光ダイオードのアレイの発光ダイオードは、発光ダイオードの第1および第2のグループに分けられてもよい。第1のフィルタリングは、第1の共振ピークのみを保持するように、第1のグループの発光ダイオードに実施され、第2のフィルタリングは、第2の共振ピークのみを保持するように、第2のグループの発光ダイオードに実施される。したがって、第1のターゲット波長で第1の放射線、第2のターゲット波長で第2の放射線を放出するように構成された光電子デバイスを得ることができ、また、第1および第2のグループの発光ダイオードの活性領域および発光ダイオードのアレイは同じ構造を有する。
【0066】
一実施形態によれば、少なくとも3つの共振ピークを含む発光構成において、発光ダイオードは、発光ダイオードの第1、第2および第3のグループに分けられてもよい。第1のフィルタリングは、第1の共振ピークのみを保持するように、第1のグループの発光ダイオードに実施される。第2のフィルタリングは、第2の共振ピークのみを保持するように、第2のグループの発光ダイオードに実施される。第3のフィルタリングは、第3の共振ピークのみを保持するように、第3のグループの発光ダイオードに実施される。光電子デバイスは、第1のターゲット波長で第1の放射線、第2のターゲット波長で第2の放射線、第3のターゲット波長で第3の放射線を放出するように構成されており、したがって、第1、第2、第3のグループの発光ダイオードの活性領域および発光ダイオードのアレイが同じ構造を有することは達成できる。これにより、特にカラー画像表示スクリーンの表示画素の表示副画素を形成することが可能となる。
【0067】
一実施形態によれば、第1のグループの発光ダイオードのフィルタリング後の放射線は、青色光、すなわち430nm~480nmの範囲の波長を有する放射線に対応する。一実施形態によれば、第2のグループの発光ダイオードのフィルタリング後の放射線は、緑色光、すなわち510nm~570nmの範囲の波長を有する放射線に対応する。一実施形態によれば、第3のグループの発光ダイオードのフィルタリング後の放射線は、赤色光、すなわち600nm~720nmの範囲の波長を有する放射線に対応する。
【0068】
有利には、同じ構造および同じ組成を有する活性領域20は、異なるターゲット波長で狭スペクトル放射線を放出することができる光電子デバイスの製造に使用されてもよい。これにより、新たな光電子デバイスの設計の際に、活性領域の新しい構造を設計する必要がなくなり、それに伴う全ての工業的開発の問題を解決することができ、したがって、新たな光電子デバイスの設計方法を簡素化させることができる。実際には、全ての発光ダイオードを同じ構造で形成することができるので、少なくとも発光ダイオードが製造されるまでの製造方法の初期ステップは、異なる光電子デバイスの製造に共通であってもよい。
【0069】
図10A~
図10Gは、
図1に示す光電子デバイス10の製造方法の他の実施形態の連続するステップで得られる構造体の部分概略断面図である。
【0070】
図10Aは、下記の形成ステップの後に得られる構造体を示す。
【0071】
基板40上にシード層42を形成する。そして、シード層42から発光ダイオードLEDを形成する。より詳細には、上側半導体部分22がシード層42に接触するように、発光ダイオードLEDを形成する。シード層42は、上側半導体部分22の成長に有利な材料で作られる。各発光ダイオードLEDについて、上側半導体部分22上に活性領域20を形成し、活性領域20上に下側半導体部分18を形成する。
【0072】
さらに、発光ダイオードLEDを、アレイ15を形成するように、すなわち、アレイ15の所望のピッチで行および列を形成するように設置する。
図10A~
図10Gには、1つの行のみが部分的に示されている。
【0073】
発光ダイオードが設置される位置でシード層42の一部のみを露出させるために、シード層42上に発光ダイオードを形成する前に、図示しないマスクを形成してもよい。変形例として、発光ダイオードが形成される位置に設置されるパッドを形成するように、発光ダイオードの形成前にシード層42をエッチングしてもよい。
【0074】
発光ダイオードLEDの成長方法は、化学気相成長法(CVD)または有機金属化学気相成長法(MOCVD)(有機金属気相エピタキシー(MOVPE)としても知られている)などの方法または複数の方法の組み合わせであってもよい。しかし、分子線エピタキシー(MBE)、ガスソースMBE(GSMBE)、有機金属MBE(MOMBE)、プラズマアシストMBE(PAMBE)、原子層エピタキシー(ALE)またはハイドライド気相成長(HVPE)などの方法を使用してもよい。しかし、電気化学的なプロセス、例えば、化学浴堆積法(CBD)、水熱プロセス、液体エアロゾル熱分解、または電着を使用してもよい。
【0075】
発光ダイオードLEDの成長条件は、アレイ15の全ての発光ダイオードが実質的に同じ速度で形成されるようにする。したがって、下側半導体部分18および上側半導体部分22の高さ、ならびに活性領域20の高さは、アレイ15における全ての発光ダイオードについて実質的に同一である。
【0076】
一実施形態によれば、上側半導体部分22の高さは、所望の高さh3よりも大きい。実際には、特にシード層42からの上側半導体部分22の成長開始により、上側半導体部分22の高さを正確に制御することが困難である可能性がある。さらに、半導体を直接にシード層42上に形成すると、シード層42の直上の半導体材料に結晶欠陥が発生する可能性がある。したがって、活性領域20を形成する前に一定の高さを得るように上側半導体部分22の一部を除去することが望まれる場合がある。
【0077】
図10Bは、充填材料、例えば電気絶縁材料(例えば、酸化ケイ素)の層24を形成した後に得られる構造体を示している。層24は、例えば、
図10Aに示す構造上に充填材料の層を堆積させることによって形成され、該層は発光ダイオードLEDの高さよりも大きい厚さを有する。その後、充填材料の層を部分的に除去して平坦化し、下側半導体部分18の上面を露出させる。次いで、層24の上面を、各下側半導体部分18の上面と実質的に面一にする。変形例として、方法は、下側半導体部分18を部分的にエッチングするエッチングステップを含んでもよい。
【0078】
充填材料は、アレイ15によって形成されたフォトニック結晶が所望の特性を有するように、すなわち、発光ダイオードLEDによって放出される放射線の強度を波長に関して選択的に改善するように選択される。
【0079】
図10Cは、前のステップで得られた構造体上に電極層14を堆積させた後に得られる構造体を示す。
【0080】
図10Dは、例えば金属間ボンディング、熱圧着、または支持体12側で共晶を使用したはんだ付けによって層14を支持体12にボンディングした後に得られる構造体を示す。
【0081】
図10Eは、基板40およびシード層42を除去した後に得られる構造体を示す。さらに、層24および上側半導体部分22は、各上側半導体部分22の高さが所望の値h3を有するようにエッチングされる。このステップにより、有利には、発光ダイオードの高さを正確に制御し、上側半導体部分22の結晶欠陥を有する可能性のある部分を除去することが可能となる。
【0082】
図10Fは、電極層26の堆積後に得られる構造体を示す。
【0083】
図10Gは、
図10Eに示す構造体の全体または一部上に少なくとも1つの光学フィルタを形成した後に得られる構造体を示す。例として、前述したように3つの共振ピークを有する構成では、それぞれが発光ダイオードLEDの第1、第2、第3のグループに配置されている第1、第2、第3の光学フィルタF
R、F
G、F
Bが示されている。
【0084】
図11は、
図1に示す光電子デバイスの製造方法の変形例を示す。この方法では、電極層26が形成される前に、発光ダイオードLEDの各上側半導体部分22の自由端を部分的にエッチングするステップを実施する。部分的にエッチングするステップは、上側半導体部分22の自由端に傾斜側部44を形成することを含んでもよい。これにより、フォトニック結晶の特性を若干変更することが可能となる。したがって、フォトニック結晶による増幅の共振ピークの位置をより細かく変更することが可能となる。
【0085】
シミュレーションおよび試験が実行された。これらのシミュレーションおよび試験では、各発光ダイオードLEDについて、下側半導体部分18はP型ドープGaNで作られている。上側半導体部分22は、N型ドープGaNで作られている。下側半導体部分18および上側半導体部分22の屈折率は2.4~2.5の範囲である。活性領域20はInGaN層に対応する。活性領域20の高さh2は40nmに等しい。電極層14はアルミニウムで作られている。絶縁層24はBCBポリマーで作られている。絶縁層24の屈折率は1.45~1.56の範囲である。シミュレーションでは、面16での鏡面反射が考慮されている。共振ピークの強度に影響を及ぼしても共振ピークの位置を実質的に変更しないため、下側半導体部分18および上側半導体部分22の高さは、決定的なパラメータではない。
【0086】
図12、13および14は、発光ダイオードLEDのアレイ15の第1、第2、および第3の波長でそれぞれ発光面30に直交する方向に対して5度傾斜した第1の方向において放出される放射線の光強度の、フォトニック結晶のピッチ「a」および各発光ダイオードの直径「D」に応じたグレースケール・マップである。シミュレーションでは、第1の波長は450nm(青)、第2の波長は530nm(緑)、第3の波長は630nm(赤)である。
【0087】
各グレースケール・マップには、共振ピークに対応する明るい領域が含まれている。このような共振ピークを有する領域は、
図12において実線の輪郭B、
図13において破線の輪郭G、
図14において一点鎖線の輪郭Rで概略的に示されている。
【0088】
これは、例として、フォトニック結晶のピッチ「a」および発光ダイオードの直径「D」を選択することにより、
図12の輪郭Bで囲まれた領域の1つに位置し、フィルタリングなしで得られた発光ダイオードLEDのアレイ15の発光スペクトルが、450nm波長における少なくとも1つの共振ピークを有することを意味する。
【0089】
図13では、
図12の輪郭Bは輪郭Gに重ねられている。これは、例として、フォトニック結晶のピッチ「a」および発光ダイオードの直径「D」を選択することにより、
図13の輪郭BおよびGでともに囲まれた領域の1つに位置し、フィルタリングなしで得られた発光ダイオードLEDのアレイ15の発光スペクトルが、450nm波長における少なくとも1つの共振ピークおよび530nm波長における1つの共振ピークを有することを意味する。
【0090】
図14では、
図12の輪郭Bおよび
図13の輪郭Gが輪郭Rに重ねられている。これは、例として、
図14の輪郭B、GおよびRでともに囲まれた領域の1つに位置するように、フォトニック結晶のピッチ「a」および発光ダイオードの直径「D」を選択することにより、フィルタリングなしで得られた発光ダイオードLEDのアレイ15の発光スペクトルが、450nm波長における少なくとも1つの共振ピーク、530nm波長における共振ピーク、および630nm波長における共振ピークを有することを意味する。
【0091】
なお、高さh1およびh3を変えることで、最適化を図ることができることに留意されたい。
【0092】
試験において、発光ダイオードは六角形底面を有する。およそ、所定半径の円形底面を有する発光ダイオードについて実行されたシミュレーションは、断面の外接円の半径が所定半径の1.1倍に等しい六角形底面を有する発光ダイオードについて実行されたシミュレーションと同等であると考えられている。下側半導体部分18、上側半導体部分22および活性層20は、全てのフォトダイオードでMOCVDによって同時に形成されている。
【0093】
第1の試験は、およそ1μmに等しい高さH、400nmに等しいフォトニック結晶のピッチ「a」、および約270nm±25nmの発光ダイオードの六角形底面の外接円の直径というパラメータで実行された。
図14のシミュレーションで補正された約297nmの直径を考慮すると、630nm波長における共振が予想される。
【0094】
図15は、第1の試験における発光ダイオードのアレイ15の光強度I(任意単位)の波長λに応じた変化曲線CRを示す。およそ644nmに等しい波長において強度ピークが効果的に得られている。
【0095】
第2の試験は、第1の試験と同じ底面寸法で、
図14のシミュレーションにおける輪郭R、GおよびBに入るように各発光ダイオードの全体の平均直径をわずかに減少させるように変更された、活性領域(20)を形成するためのエピタキシャル成長条件で実行された。第1の試験と比較して、変更されたパラメータは、増加された活性領域の量子障壁の厚さ、増加されたIn/III入力流量、および増加された温度である。
【0096】
図16は、第2の試験における発光ダイオードのアレイ15の光強度I(任意単位)の波長に応じた変化曲線CRGBを示す。450nm、590nmおよび700nm波長における3つの共振ピークが効果的に得られている。
【0097】
様々な実施形態および変形例が説明された。当業者は、これらの実施形態および変形例の特定の特徴を組み合わせてもよく、他の変形例も当業者により容易に想起されることを理解するであろう。特に、前述したコーティング28は、一または複数の光学フィルタ以外の追加の層を含んでもよい。特に、コーティング28は、反射防止層、保護層などを含んでもよい。最後に、本明細書で説明した実施形態および変形例の実用化は、本明細書で提供した機能的な説明に基づいて、当業者の能力の範囲内である。
【0098】
本特許出願は、本明細書の一部を構成するものとみなされる仏国特許出願第20/13514号明細書の優先権を主張している。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャル発光ダイオード(LED)のアレイ(15)を備え、前記発光ダイオードの各々は、第1の波長(λ
C)で最大値を有する発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性領域(20)を備え、前記アレイは、前記第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長(λ
T1)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する、
光電子デバイス(10)。
【請求項2】
前記発光ダイオード(LED)のアレイ(15)の少なくとも1つの第1の部分を覆う第1の光学フィルタ(F
R)をさらに備え、前記第1の光学フィルタは、前記第1の波長(λ
C)を含む第1の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を遮り、前記第2の波長(λ
T1)を含む第2の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を通すように構成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
活性領域(20)の発光スペクトルは、前記第2の波長(λ
T1)でエネルギーを有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フォトニック結晶は、前記第1および第2の波長(λ
C、λ
CT1)とは異なる少なくとも1つの第3の波長(λ
T2)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記活性領域(20)の発光スペクトルは、前記第3の波長(λ
T2)でエネルギーを有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記発光ダイオード(LED)のアレイ(15)の少なくとも第2の部分を覆う第2の光学フィルタ(F
G)をさらに備え、前記第2の光学フィルタは、前記第1および第2の波長(λ
C、λ
CT1)を含む第3の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を遮り、前記第3の波長(λ
T2)を含む第4の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を通すように構成されている、請求項
4に記載のデバイス。
【請求項7】
フォトニック結晶は、前記第1、第2および第3の波長(λ
C、λ
CT1、λ
CT2)とは異なる少なくとも1つの第4の波長(λ
T3)で前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されている、請求項
4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記活性領域(20)の発光スペクトルは、前記第4の波長(λ
T3)でエネルギーを有する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記発光ダイオード(LED)のアレイ(15)の少なくとも第3の部分を覆う第3の光学フィルタ(F
B)をさらに備え、前記第3の光学フィルタは、前記第1、第2、第3の波長(λ
C、λ
CT1、λ
CT2)を含む第5の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を遮り、前記第4の波長(λ
T3)を含む第6の波長範囲にわたって前記増幅された放射線を通すように構成されている、請求項
7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記発光ダイオード(LED)が載置された支持体(12)を備え、前記発光ダイオードの各々は、前記支持体上に載置された第1の半導体部分(18)、前記第1の半導体部分に接触した活性領域(20)、および前記活性領域に接触した第2の半導体部分(22)の積層体を備える、請求項
1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記支持体(12)と前記発光ダイオード(LED)の前記第1の半導体部分(18)との間に
例えば金属で作られた反射層(14)を備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記発光ダイオード(LED)の前記第2の半導体部分(22)は、前記発光ダイオード(LED)によって放出される前記放射線に対して少なくとも部分的に透明な導電層(26)によって覆われている、請求項1
0に記載のデバイス。
【請求項13】
前記発光ダイオード(LED)は、電気絶縁材料(24)によって分離されている、請求項
1に記載のデバイス。
【請求項14】
アキシャル発光ダイオードのアレイ(15)を備える光電子デバイス(10)を製造する方法であって、前記発光ダイオードの各々は、第1の波長(λ
C)で最大値を有する発光スペクトルを有する電磁放射線を放出するように構成された活性層(20)を備え、前記アレイは、前記第1の波長とは異なる少なくとも1つの第2の波長(λ
T1)で前記発光ダイオードによる前記電磁放射線の強度を増幅する共振ピークを形成するように構成されたフォトニック結晶を形成する、方法。
【請求項15】
前記アレイ(15)の前記発光ダイオード(LED)を形成することは、
前記アレイのピッチで互いに分離されている第2の半導体部分(22)を基板(40)上に形成するステップと、
活性領域(20)を各第
2の半導体部分上に形成するステップと、
第1の半導体部分(18)を各活性領域上に形成するステップと
を含む、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
前記基板(40)を除去するステップを含む、請求項1
5に記載の方法。
【国際調査報告】