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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二機能性抗PD1/IL-7分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231219BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/24 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/20
A61K39/395 N
A61K47/68
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537140
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021086471
(87)【国際公開番号】W WO2022129512
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/086600
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21305462.0
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21200350.3
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】オロール・モレロ
(72)【発明者】
【氏名】マルゴー・ザイテ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C076AA95
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084DA12
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、IL-7バリアントを含み、特定の足場構造を有する二機能性分子、及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7バリアントを含む二機能性分子であって、
前記二機能性分子が、任意選択でペプチドリンカーを介して、第1のFc鎖のN末端に、C末端を介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み;
i)前記IL-7バリアントが、前記第1のFc鎖のC末端に、任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されているか;又はii)前記単一の抗原結合性ドメインが、可変重鎖及び可変軽鎖を含み、前記IL-7バリアントが、前記軽鎖のC末端に共有結合で連結されているかのいずれかであり;
前記抗原結合性ドメインが、PD-1に結合し;並びに
前記IL-7バリアントが、配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、前記IL-7バリアントが、i)IL-7受容体(IL-7R)に対するwth-IL-7の親和性と比較してIL-7Rに関するIL-7バリアントの親和性を低減させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較してIL-7バリアントを含む二機能性の薬物動態を向上させる、
二機能性分子。
【請求項2】
前記IL-7バリアントが、(i)W142G、W142A、W142V、W142C、W142L、W142I、W142M、W142H、W142Y及びW142F、好ましくはW142H、W142F、又はW142Y、(ii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、又はC47S-C92S及びC34S-C129S、(iii)D74E、D74Q、又はD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E及び/又はK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りである、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項3】
前記IL-7バリアントが、好ましくはそのN末端によって、第1のFc鎖のC末端で連結されている、請求項1又は2に記載の二機能性分子。
【請求項4】
前記IL-7バリアントが、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択されるアミノ酸置換を含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りである、請求項1から3のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項5】
前記IL-7バリアントがアミノ酸置換W142Hを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項6】
前記IL-7バリアントが、配列番号2~15のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項7】
前記IL-7バリアントが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項8】
任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;N297A+N298A+ M252Y/S254T/T256E+ K444A、K322A、K444A、K444E、K444D、K444G、K444S、P329G、L234A/L235A/P329G、M428L、L309D、Q311H、N434S、M428L+N434S及びL309D+Q311H+N434Sからなる群から選択される、好ましくは任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235A又はL234A/L235A/P329Gからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するヒトIgG1の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項9】
本発明による二機能性分子が、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項10】
任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256+K444A、P329G、K444E、K444D、K444G、K444S、及びL234A/L235A/P329Gからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項11】
本発明による二機能性分子が、任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項12】
前記Fcドメインが、変異LALA(L234A/L352A)又はLALA PG(L234A/L235A/P329G)を含むIgG1又はIgG4である、請求項1から7のいずれか1項に記載の二機能性分子。
【請求項13】
前記第1のFc鎖及び前記第2のFc鎖が、ヘテロ二量体Fcドメイン、特にノブイントゥホールヘテロ二量体Fcドメインを形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項14】
前記第1のFc鎖がホール鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及びN297Aを含み、前記第2のFc鎖がノブ鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354C及びN297Aを含む、請求項13に記載の二機能性分子。
【請求項15】
前記第2のFc鎖が、配列番号75を含むか若しくはからなり及び/又は前記第1のFc鎖が配列番号77を含むか若しくはからなる、請求項13に記載の二機能性分子。
【請求項16】
任意選択でペプチドリンカーを介して、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に、C末端を介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖が、任意選択でペプチドリンカーを介して、IL-7バリアントのN末端に、C末端によって共有結合で連結されている第1の単量体と、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む第2の単量体とを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項17】
前記IL-7バリアントが、GGGGS(配列番号68)、GGGGSGGGS(配列番号67)、GGGGSGGGGS(配列番号69)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号70)からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカーにより抗原結合性ドメイン又はFcドメインに融合されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項18】
前記IL-7バリアントが、配列番号70のペプチドリンカーにより前記抗原結合性ドメイン又は前記Fcドメインに融合されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項19】
前記抗原結合性ドメインが、Fabドメイン、Fab'、単鎖可変断片(scFV)、又は単一ドメイン抗体(sdAb)である、請求項1から18のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項20】
前記抗原結合性ドメインがFabドメイン又はFab'である、請求項1から18のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項21】
前記抗原結合性ドメインが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317、スパルタリズマブ、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゲノリムズマブ、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103、MEDI-0680、MEDI0608、JS001、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210、TSR-042、GLS-010、AM-0001、STI-1110、AGEN2034、MGA012、又はIBI308、5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4からなる群から選択される抗体に由来する、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項22】
前記抗原結合性ドメインが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、スパルタリズマブ及びゲノリムズマブからなる群から選択される抗体に由来する、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項23】
前記抗原結合性ドメインがペムブロリズマブ又はニボルマブに由来する、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項24】
前記抗原結合性ドメインが、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64、65、89のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16又は90のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項25】
前記抗原結合性ドメインが、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項26】
前記抗原結合性ドメインが:
(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号27、配列番号28、配列番号88、又は配列番号99のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はから本質的になる、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項27】
前記抗原結合性ドメインが、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項28】
前記抗原結合性ドメインが、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になり、並びに前記IL-7バリアントが、アミノ酸置換W142Hを含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りであり、好ましくは例えば配列番号5の規定の通りのアミノ酸置換を含む、請求項1から20、又は26、27のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項29】
(i)前記抗原結合性ドメインが、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になり、
(ii)前記IL-7バリアントが、配列番号5に規定の通りの配列を含むか又はから本質的になり、
(iii)前記第2のFc鎖が、配列番号75を含むか若しくはからなり、及び/又は前記第1のFc鎖が配列番号77を含むか若しくはからなる、
請求項1から20、又は26から28のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項30】
配列番号70のペプチドリンカーを更に含む、請求項29に記載の二機能性分子。
【請求項31】
配列番号83の第1の単量体と、配列番号75の第2の単量体と、配列番号37、38、80、100、又は101、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体とを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項32】
配列番号83を含むか又はからなる第1の単量体と、配列番号75を含むか又はからなる第2の単量体と、配列番号80を含むか又はからなる第3の単量体とを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項33】
請求項1から32のいずれか一項に記載の二機能性分子をコードする単離された核酸配列又は単離された核酸分子の群。
【請求項34】
請求項33に記載の単離された核酸を含む宿主細胞。
【請求項35】
請求項1から32のいずれか一項に記載の二機能性分子、請求項33に記載の単離された核酸、又は請求項34に記載の宿主細胞を、任意選択で薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項36】
医薬として使用するための、特にがん又は感染性疾患の処置に使用するための請求項1から32のいずれか一項に記載の二機能性分子、請求項33に記載の単離された核酸、請求項34に記載の宿主細胞、又は請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
エフェクターメモリー幹細胞様T細胞を刺激することによるがん又はウイルス感染症の処置における請求項36に規定の使用のための二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物。
【請求項38】
それを必要とする対象における、がん又はウイルス感染症を処置する方法であって、治療有効量の請求項1から32のいずれか一項に記載の二機能性分子、請求項33に記載の単離された核酸、請求項34に記載の宿主細胞、又は請求項35に記載の医薬組成物を投与し、それによりエフェクターメモリー幹細胞様T細胞を刺激することを含む方法。
【請求項39】
がんが、造血系のがん、固形がん、癌腫、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、胃がん、尿道がん、環境で誘導されたがん及び当該がんの任意の組合せ、転移性又は非転移性、メラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん、子宮頸がん、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、カポジ肉腫;ヒトパピローマウイルスと関連する子宮頸部、肛門、陰茎及び外陰部の扁平上皮細胞がん及び中咽頭がん;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典型ホジキンリンパ腫、並びにエプスタイン・バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連するリンパ増殖性障害;肝炎B及び/又はCウイルスと関連する肝細胞癌;メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連するメルケル細胞癌;並びにヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)感染と関連するがんからなる群から選択される、請求項36若しくは37に記載の使用のための二機能性分子、核酸、宿主細胞、若しくは医薬組成物、又は請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルス感染症が、HIV、肝炎ウイルス、例えば肝炎A、B、又はC、ヘルペスウイルス、例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、CMV、及びエプスタイン・バーウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスからなる群から選択されるウイルスにより生じる、請求項36若しくは37に記載の使用のための二機能性分子、核酸、宿主細胞、若しくは医薬組成物、又は請求項38に記載の方法。
【請求項41】
化学療法、放射線療法、標的化療法、抗血管新生薬、低メチル化剤、がんワクチン、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、骨髄チェックポイント阻害剤、免疫療法剤、及びHDAC阻害剤からなる群から選択される治療剤又は治療と組み合わせて使用するための請求項36、37、39、又は40に記載の使用のための二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物。
【請求項42】
前記治療剤が、抗CTLA4、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、及び抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L及びB細胞受容体アゴニストからなる群から選択される免疫チェックポイント遮断剤又は適応免疫細胞(T及びBリンパ球)の活性化剤である、請求項41に記載の使用のための二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、IL-7バリアントを含む二機能性分子の新しい足場構造を提供する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-7は、IL-2スーパーファミリーの免疫賦活性サイトカインメンバーであり、免疫応答を促進することにより適応免疫系において重要な役割を果たす。このサイトカインは、T細胞及びB細胞の生存及び分化、リンパ球細胞の生存、ナチュラルキラー(NK)細胞活性の刺激により、免疫機能を活性化する。また、IL-7は、リンパ組織インデューサー(LTi)細胞を介してリンパ節の発生を調節し、ナイーブT細胞又はメモリーT細胞の生存及び分裂を促進する。更に、IL-7は、IL-2及びインターフェロン-γの分泌を促進することにより、ヒトの免疫応答を増強する。IL-7の受容体は、ヘテロ二量体であり、IL-7Rα(CD127)及び共通γ鎖(CD132)からなる。γ鎖は全ての造血細胞タイプで発現されるが、IL-7Rαは、主に、B及びTリンパ球前駆細胞、ナイーブT細胞、並びにメモリーT細胞を含むリンパ球により発現される。調節性T細胞でのIL-7Rα発現は、より高いレベルを発現するエフェクター/ナイーブT細胞と比較して低いことが観察されている。そのため、こうした2つの集団を区別するための表面マーカーとしてCD127が使用される。IL-7Rαは、NKとしての自然リンパ球細胞及び腸管関連リンパ組織(GALT)由来T細胞でも発現される。IL-7Rα(CD127)鎖は、TSLP(腫瘍間質リンホポエチン)と共有されており、CD132(γ鎖)は、IL-2、IL-4、IL-9、IL-15、及びインターロイキン-21と共有されている。2つの主要なシグナル伝達経路:(1)ヤヌスキナーゼ/STAT経路(つまり、Jak-Stat-3及び5)並びに(2)ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ経路(つまり、PI3K-Akt)が、CD127/CD132により誘導される。IL-7投与は、患者の耐容性が良好であり、CD8細胞及びCD4細胞の拡大増殖、並びにCD4+ T調節性細胞の相対的減少に結び付く。組換えネイキッドIL-7又は抗体のFcのN末端ドメインに融合されたIL-7が、臨床で試験されている。後者は、Fcドメインとの融合によりIL-7半減期が延長され、治療の長期持続効率が増強されるという理論的根拠に基づく。
【0003】
組換えIL-7サイトカインは、薬物動態プロファイルが不良であり、臨床での使用が制限されている。注射後、組換えIL-7は急速に分布及び排除され、IL-7の半減期は、ヒト(6.8~9.5時間の範囲)(Sportesら、Clin Cancer Res.2010年1月15日;16巻(2号):727~35頁)又はマウス(2.5時間)(Hyo Jung Namら、Eur. J. Immunol.2010年.40巻:351~358頁)では不良となる。IL-7にIgG Fcドメインを融合させると、IL-7の半減期が延長される。これは、IgGが、新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、分子のトランスサイトーシス及びエンドソームリサイクルに関与することができるためである。IL-7 Fc融合分子の場合、マウスでは、循環半減期の延長が観察され(t1/2=13時間)、IL-7 Fc融合分子は投与の8日後まで検出可能なレベル(200pg/mL)で維持される(Hyo Jung Namら、Eur. J. Immunol.2010年.40巻:351~358頁)。Fcドメインに融合されたIL-7サイトカインは半減期が増加するものの、生物学的効果を得るにはこの分子を高頻度でin vivo注射することが必要だった。免疫サイトカイン分子の文脈では、サイトカインは、サイトカインを標的抗原発現細胞に対して優先的に濃縮させる抗体(例えば、がん抗原、免疫チェックポイント遮断、同時刺激分子...を標的とする)に融合されている。しかしながら、CD127/CD132受容体に対するIL-7サイトカインの親和性(ナノモル~ピコモルの範囲)は、標的に対する抗体の親和性よりも高い場合がある。その場合、サイトカインが製品の薬物動態を駆動することになり、標的媒介性薬物体内動態(TMDD)機序により、in vivoにおける利用可能な薬物の急速な枯渇に結び付くことになる。この急速な排除は、IL-2又はIL-15のような免疫サイトカインについて記載されており、融合タンパク質の薬物動態特性が薬物性能に直接的に影響を及ぼし得ることを示している(List et Neri Clin Pharmacol. 2013年;5巻(補遺1):29~45頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/127377号
【特許文献2】国際公開第2019144945A1号
【特許文献3】国際公開第2006061219号
【特許文献4】国際公開第2014/194302号
【特許文献5】国際公開第2017/040790号
【特許文献6】国際公開第2017/19846号
【特許文献7】国際公開第2017/024465号
【特許文献8】国際公開第2017/025016号
【特許文献9】国際公開第2017/132825号
【特許文献10】国際公開第2017/133540号
【特許文献11】国際公開第2006/121168号
【特許文献12】国際公開第2020/127366号
【特許文献13】国際公開第96/34103号
【特許文献14】国際公開第94/04678号
【特許文献15】国際公開第2014/145806号
【特許文献16】米国特許第8,216,805号
【特許文献17】米国特許出願公開第2012/0149876号
【特許文献18】国際公開第01/58957号
【特許文献19】国際公開第2018/053106号、36~43頁
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sportesら、Clin Cancer Res. 2010年1月15日; 16巻(2号): 727~35頁
【非特許文献2】Hyo Jung Namら、Eur. J. Immunol. 2010年.40巻: 351~358頁
【非特許文献3】List et Neri Clin Pharmacol. 2013年; 5巻(補遺1): 29~45頁
【非特許文献4】Jiang, Y.、Li, Y.、及びZhu, B(Cell Death Dis 6巻、e1792(2015年))
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【非特許文献6】Gauttierら、2020年、Clin Invest、130巻、6109~6123頁
【非特許文献7】Andreattaら(Nature comm 2021年、12巻、2965頁)
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【非特許文献40】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins社、第21版(2005年)
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【非特許文献51】Mannら、2019年、Nature immunology、20巻、1092~1094頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野には、分布を向上させ、IL-7製品の、特にIL-7を含む二機能性分子の排除を低減することを可能にする新しい向上されたIL-7バリアントに対する重要な必要性が依然として存在する。本発明者らは、本明細書で開示の発明により著しい進歩を成し遂げた。
【0007】
二機能性分子は、現在、免疫学、特に腫瘍学の分野における開発目標である。実際に、それらは2つの標的に同時に関与することを通して新規薬理学的特性をもたらし、2つの別個の分子の組合せと比較して腫瘍への標的化再配置により安全性プロファイルを増加させることができ、及び単一の製剤と関連する開発及び製造コストを潜在的に低減することができる。しかしながら、これらの分子は、有利であるが、いくつかの不便さも示し得る。二機能性分子の設計は、いくつかの重要な属性、例えば結合親和性及び特異性、フォールディング安定性、溶解度、薬物動態、エフェクター機能、追加のドメインの結合との適合性、並びに臨床開発に見合う生産収量及びコストを含む必要がある。例えば、PD-1を標的とし、IL-7バリアントを有する二機能性分子は、国際公開第2020/127377号に記載されている。
【0008】
しかしながら、二機能性分子の改善された足場構造がなおも依然として強く必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、二機能性分子の分布及び排除を向上させてin vivoでの生物学的効果を増強するために、IL-7変異及び最適化された足場構造を提供する。本発明者らは、IL-7変異が、最適化された足場構造と組み合わせると、二機能性分子のより良好な分布及びより長いin vivo半減期を可能することを観察した。
【0010】
特に、本明細書で提供される二機能性分子は、特にIL-7野生型を含む二機能性分子と比較して、in vivoにおいて良好な薬物動態及び薬力学を示す。加えて、下記及び実施例にて詳述されている通り、こうした新しい分子には、有利で予想外の特性が関連付けられている。
【0011】
本発明は、特定の足場構造を有し、PD-1に結合する結合性部分にコンジュゲートされたインターロイキン7(IL-7)バリアント(IL-7m)を含む二機能性分子であって、この足場構造が本質的に二量体Fcドメイン、Fcドメインの1つの単量体のN末端でPD-1に結合する単一の1価の抗原結合性ドメインで構成され、及びi)単一のIL-7mがFcドメインの同じ単量体のC末端で連結されているか、又はii)単一の1価の抗原結合性ドメインが可変重鎖及び可変軽鎖を含み、及び単一のIL-7mが抗原結合性ドメインの軽鎖のC末端で連結されているかのいずれかである、二機能性分子に関する。
【0012】
この特定の足場構造は、薬物動態プロファイルの向上と関連する。薬物動態プロファイルの向上は、IL-7mの非存在下では、向上がこの足場構造に関して観察されないことから驚くべきことである。
【0013】
この特定の足場構造を有する二機能性分子は、同じ細胞上で2つの標的のシス標的化にとって好都合であり、IL-7mの標的細胞への選択的送達を可能にする。
【0014】
加えて、IL-7を有する二機能性分子の文脈では、これらの分子は、相乗的活性化及び良好なin vivo抗腫瘍有効性を誘導することができる。最後に、驚くべきことに、特定の足場構造を有する二機能性分子は、より良好な生産性を有し、鎖の誤対合による副産物を回避し、このことは工業規模での生産及び安全性にとって主要な利点である。
【0015】
更に、薬物動態プロファイルの向上及びより良好な生産性に加えて、その免疫活性に関して非常に重要である腫瘍反応性腫瘍内T細胞のサブセットであるエフェクターメモリー幹細胞様T細胞の活性を改善する新規かつ有利な生物学的効率が同定されている。
【0016】
本開示の特定の態様では、二機能性分子は、1つのIL7バリアント、特にW142H IL7バリアント、及び特定の足場構造を有するPD-1に対して特異的な1つの抗原結合性ドメインを含み、つまり分子は、抗PD-1*1 IL7 W142H*1と呼ばれる。この二機能性分子は、1つの側でPD-1に対して高い親和性及びアンタゴニスト活性を有する1つの1価の抗原結合性ドメイン、及び他方の側でIL7受容体(IL7R)に対して低い親和性を有する1つのIL7バリアントにより特徴付けられる。
【0017】
驚くべきことに、この二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、野生型IL7を有する同じ分子より良好な腫瘍特異的T細胞の優先的標的化(シス標的化)(58倍と比較して315倍、図11Cを参照されたい)を有する。加えて、この分子は、Tregの抑制性活性を遮断し、野生型IL7を有する同じ分子よりTreg誘導抑制の無効化に関して良好な結果を生じる(図19を参照されたい)。この二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)が、Treg無効化及び同時に強いT細胞増殖の両方に影響を及ぼす二重効果を示すが、この分子において選択されたIL7バリアントが、IL7受容体に対して低い親和性を示すことは予想外であった。
【0018】
当業者に公知であるように、腫瘍細胞は、多数のがんで観察されるT細胞疲弊と呼ばれる現象のため、T細胞により十分に排除されない場合がある。例えば、Jiang, Y.、Li, Y.、及びZhu, B(Cell Death Dis 6巻、e1792(2015年))により説明されているように、腫瘍微小環境における疲弊T細胞は、阻害性受容体の過剰発現、エフェクターサイトカイン産生及び細胞溶解活性の減少に結び付き、がん排除の失敗、及び一般にはがんの免疫回避に結び付く場合がある。したがって、疲弊T細胞の回復は、がん治療のために起想される臨床戦略である。
【0019】
たとえ疲弊T細胞が、低減されたIL7R発現を有し、分子のIL7バリアントがIL7Rに対して低い親和性を有する場合であっても、この二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、慢性的に刺激されたT細胞の増殖を回復し、組換えIL7と同じレベルで疲弊T細胞の生存も維持する。驚くべきことに、この二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、Tリンパ球をアポトーシスから保護することができる。そのような、IL7R発現の低減及びIL7Rに対するより低い親和性の文脈では、これらの効果は顕著であり予測不能である。
【0020】
驚くべきことに、この二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、rIL7(データは示していない)と同じレベルで幹細胞様TCF1+ CD8 T細胞(Ki67+ TCF1+ CD8+ T細胞)(図24)の増殖を誘導することができる。
【0021】
最近、Caushiら(2021年、Nature、596巻、126~132頁)は、抗PD-1処置に対して非応答性である患者の文脈で変異関連ネオ抗原(MANA)特異的CD8 T細胞を調べ、これらの腫瘍特異的TIL(腫瘍浸潤性リンパ球)においてIL7Rが低レベルであることを観察した。都合のよいことに、疲弊T細胞におけるIL7Rに対する低い親和性及びIL7R発現の低減にもかかわらず、二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、増殖を回復するのみならず、慢性的に刺激されたT細胞の生存を維持する。
【0022】
4つの異なる前臨床in vivoモデルが、更なる治療検証のために使用されている:2つの異なる免疫コンピテントモデル(PD1感受性モデル(AK7正所性);及びPD1耐性(Hepa1.6正所性)(図20及び図21);並びに2つの異なるヒト化モデル(TNBC異所性モデル及び異所性肺癌)。これらのin vivo前臨床モデルでは、二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、生存を増加させ、腫瘍成長を減少させるか又は完全に阻害する。驚くべきことに、野生型IL7を有する同じ分子又は抗PD-1抗体と比較して治療有効性の向上が観察されている。
【0023】
特に、PD1耐性Hepa1.6のモデルは、腫瘍からの腫瘍T細胞除去により特に重要である(Gauttierら、2020年、Clin Invest、130巻、6109~6123頁)。このモデルでは抗PD1がいかなる有効性も有しないと予想されたが、二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、60%で完全な腫瘍応答を達成し、野生型IL7を有する同じ分子(47%)より明らかに優れている(図21)。加えて、分子は、幹細胞様メモリーCD8+ TILの選択的拡大増殖を促進することができる(図22)。これは、腫瘍T細胞除去を示すこのモデルの文脈では特に重要である。この耐性モデルにおける腫瘍からのT細胞除去にもかかわらず、CD8 TIL組成物は二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)による処置後に強く増加し、T細胞サブセットは劇的に改変される。非常に低いTreg、高いCD8+ T細胞及び高い増殖性の幹細胞様メモリーT細胞サブセットが観察された(図23及び図24)。逆に、この分子は、抗PD-1処置と比較して有意に低い疲弊T細胞を提供する。特にTILSにおけるこの強い利点は、この二機能性分子による幹細胞様メモリーCD8 T細胞部分集団(TCF1+Tox-細胞)の腫瘍内増殖を示す詳細な実施例に例証されている。この増殖は、幹細胞様メモリーT細胞の活性なプールを得ることを可能にする。これらのT幹細胞は、i)腫瘍抗原特異的ではないか、又は腫瘍細胞に対して抗PD1薬の存在下で数多く存在するナイーブT細胞(前記ナイーブT細胞はPD1陰性である)と、ii)十分に数多く存在しないか、又は過剰に刺激されてもはや抗PD1処置に応答しない成熟疲弊T細胞(特に、既に完全疲弊T細胞)との間の中間の分化段階を表す。これらの疲弊T細胞は、ストレスを受けた細胞であり、その遺伝的プロファイルにより例証されるようにアポトーシスを受けるが、幹細胞様メモリーT細胞(TCF1+)のプールは、増殖して、より高い抗腫瘍応答と共に長期間の残留性を可能にする数多くのT細胞へと分化することができる。
【0024】
同じ腫瘍タイプで治癒したマウスに腫瘍を再チャレンジすることにより示されるように、広いメモリー抗腫瘍応答が二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)により得られた(3つの腫瘍モデル:(PD1感受性モデル(AK7正所性);PD1部分的感受性モデル(MC38異所性)及びPD1耐性(Hepa1.6正所性)を試験した)。これらの前処置した動物は、いかなる新規処置も行わなくともいかなる新規腫瘍も発生させず、二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)が、メモリーT細胞サブセット活性化を通して長期間の保護を付与する能力を確立している(図20B)。
【0025】
TNBCヒト化マウスモデルにおいて、4人の異なるヒトドナーからのヒト末梢血単核球(PBMC)を、ヒト化条件で実行して二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)の活性を評価した。腫瘍の成長に及ぼす二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)の効果は、抗PD-1抗体と比較して明らかに優れており、腫瘍の成長を強く低減した(図25)。同じ優れた効果が別のヒト化マウスモデル(肺がん)、特に血清中のIFNガンマ分泌が増加したモデルにおいて観察されており、誘導された応答の直接効果である(図26)。
【0026】
要約すると、標的細胞上でのIL7Rに対する低い親和性及びIL7Rの発現の低減にも関わらず、二機能性分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)は、TCRシグナル伝達に及ぼす相乗効果により、Tregを阻害しながらTエフェクターの拡大増殖を促進することにより、粘膜T細胞遊走を促進することにより、及び最後に疲弊T細胞に再度活力を与えることによりがん免疫サイクルを復活させることができる。驚くべきことに、効果は、組換えIL7又は野生型IL7を有する同じ分子の効果より優れていたか、又は同等であった。
【0027】
本発明は、単一の抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7バリアントを含む二機能性分子であって、
- 二機能性分子が、C末端が第1のFc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み;
- i)IL-7バリアントが前記第1のFc鎖のC末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されているか;又はii)単一の抗原結合性ドメインが可変重鎖及び可変軽鎖を含み、IL-7バリアントが軽鎖のC末端に共有結合で連結されているかのいずれかであり;
- 抗原結合性ドメインがPD-1に結合し;並びに
- IL-7バリアントが、配列番号1に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、IL-7バリアントが、i)IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を、IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して低減させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較してIL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる、
二機能性分子に関する。
【0028】
特に、IL-7バリアントは、(i)W142G、W142A、W142V、W142C、W142L、W142I、W142M、W142H、W142Y、及びW142F、好ましくはW142H、W142F、若しくはW142Y、(ii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(iii)D74E、D74Q若しくはD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りである。
【0029】
好ましくは、IL-7バリアントは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択されるアミノ酸置換を含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りである。より好ましくは、IL-7バリアントは、アミノ酸置換W142Hを含む。更により好ましくは、IL-7バリアントは、配列番号2~15に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる。最も好ましくは、IL-7バリアントは、配列番号5に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0030】
特定の態様では、IL-7バリアントは、好ましくはそのN末端が第1のFc鎖のC末端に連結されている。
【0031】
別の態様では、二機能性分子は、任意選択で、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E(YTE);N297A+N298A+ M252Y/S254T/T256E+ K444A、K322A、K444A、K444E、K444D、K444G、K444S、P329GL234A/L235A/P329G、M428L、L309D、Q311H、N434S、M428L+N434S(LS)及びL309D+Q311H+N434S(DHS)からなる群から選択され、好ましくは任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235A又はL234A/L235A/P329Gからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む。好ましくは、置換又は置換の組合せは、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A及びK444Aからなる群から選択され、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される。
【0032】
或いは、二機能性分子は、任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E+ K444A、K444E、K444D、K444G、K444S、P329G及びL234A/L235A/P329Gからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4の重鎖定常ドメイン、好ましくはFcドメインを含む。好ましくは、置換又は置換の組合せは、S228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E、及びK444Aからなる群から選択される。
【0033】
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、変異LALA(L234A/L352A)又はLALA PG(L234A/L235A/P329G)を含むIgG1又はIgG4に由来するFcドメインを含む。
【0034】
一態様では、第1のFc鎖及び第2のFc鎖は、ヘテロ二量体Fcドメイン、特にノブイントゥホール(knob-into-hole)ヘテロ二量体Fcドメインを形成する。詳細には、第1のFc鎖はホール鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及び任意選択でN297Aを含み、第2のFc鎖は、ノブ鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354C及び任意選択でN297Aを含む。好ましくは、第1のFc鎖は、ホール鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及びN297Aを含み、第2のFc鎖は、ノブ鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354C及びN297Aを含む。より具体的には、第2のFc鎖は、配列番号75を含むか又はからなり、及び/又は第1のFc鎖は、配列番号77を含むか又はからなる。
【0035】
非常に特定の態様では、本発明による二機能性分子は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖が、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている第1の単量体と、抗原結合性ドメインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む第2の単量体とを含む。
【0036】
別の態様では、本明細書に開示される二機能性分子において、IL-7バリアントは、GGGGS(配列番号68)、GGGGSGGGS(配列番号67)、GGGGSGGGGS(配列番号69)及びGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号70)からなる群から選択され、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカーにより抗原結合性ドメイン又はFcドメインに融合されている。好ましくは、IL-7バリアントは、配列番号70のペプチドリンカーにより抗原結合性ドメイン又はFcドメインに融合されている。
【0037】
一態様では、本発明による二機能性分子において、抗原結合性ドメインはFabドメイン、Fab'、単鎖可変断片(scFV)、又は単一ドメイン抗体(sdAb)である。好ましくは、抗原結合性ドメインは、Fabドメイン又はFab'である。
【0038】
特に、抗原結合性ドメインは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317、スパルタリズマブ、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゲノリムズマブ、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103、MEDI-0680、MEDI0608、JS001、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210、TSR-042、GLS-010、AM-0001、STI-1110、AGEN2034、MGA012、又はIBI308、5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4からなる群から選択される抗体に由来する。好ましくは、抗原結合性ドメインは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、スパルタリズマブ、及びゲノリムズマブからなる群から選択される抗体に由来する。更により好ましくは、抗原結合性ドメインは、ペムブロリズマブ又はニボルマブに由来する。
【0039】
非常に特定の態様では、本発明による二機能性分子の抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64、65、89のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16又は90のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。好ましくは、抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。
【0040】
より好ましくは、抗原結合性ドメインは、(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);(b)配列番号27、配列番号28、配列番号88、又は配列番号99のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。更により好ましくは、抗原結合性ドメインは、配列番号24の重鎖可変領域(VH)、及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。
【0041】
非常に特定の態様では、本発明による二機能性分子は、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる抗原結合性ドメイン、並びにアミノ酸置換W142Hを含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りであり、好ましくは配列番号5を含むか又はから本質的になるIL-7バリアントを含む。
【0042】
好ましくは、本発明による二機能性分子において:
(i)抗原結合性ドメインは、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になり、
(ii)IL-7バリアントは、配列番号5に規定の通りの配列を含むか又はから本質的になり、
(iii)第2のFc鎖は、配列番号75を含むか若しくはから本質的になり、及び/又は第1のFc鎖は、配列番号77を含むか若しくはからなる。
【0043】
好ましくは、そのような二機能性分子は、配列番号70のペプチドリンカーを更に含む。
【0044】
非常に特定の態様では、本発明による二機能性分子は、配列番号83の第1の単量体と、配列番号75の第2の単量体と、配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体とを含む。好ましくは、二機能性分子は、配列番号83を含むか又はからなる第1の単量体と、配列番号75を含むか又はからなる第2の単量体と、配列番号80を含むか又はからなる第3の単量体とを含む。
【0045】
本発明はまた、本開示による二機能性分子をコードする単離された核酸配列又は単離された核酸分子の群にも関する。
【0046】
本発明はまた、本開示による二機能性分子をコードする単離された核酸配列又は単離された核酸分子の群を含む宿主細胞にも関する。
【0047】
本発明は、更に、本開示による二機能性分子、核酸又は宿主細胞を、任意選択で薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物に関する。
【0048】
最後に、本発明は、医薬として使用するための、特にがん又は感染性疾患の処置に使用するための、本開示による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物; 医薬の製造のための、特にがん又は感染性疾患の処置に使用するための、本開示による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物の使用;及び対象における疾患、特にがん又は感染性疾患を処置する方法であって、治療有効量の本開示による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0049】
任意選択で、本発明は、エフェクターメモリー幹細胞様T細胞を刺激することによる、がん又はウイルス感染症の処置に使用するための本開示による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物;エフェクターメモリー幹細胞様T細胞を刺激することによる、医薬の製造のための、特にがん又はウイルス感染症の処置に使用するための、本開示による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物の使用;対象におけるがん又はウイルス感染症を処置する方法であって、治療有効量の本開示による二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物を投与し、それによりエフェクターメモリー幹細胞様T細胞を刺激することを含む方法に関する。
【0050】
詳細には、がんは、造血系のがん、固形がん、癌腫、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、胃がん、尿道がん、環境で誘導されたがん及び当該がんの任意の組合せ、転移性又は非転移性、メラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん、子宮頸がん、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、カポジ肉腫;子宮頸部、肛門、陰茎及び外陰部の扁平上皮細胞がん及びヒトパピローマウイルスと関連する中咽頭がん;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典型ホジキンリンパ腫、及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連するリンパ増殖性障害;肝炎B及び/又はCウイルスと関連する肝細胞癌;メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連するメルケル細胞癌;並びにヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)感染と関連するがんからなる群から選択される。
【0051】
詳細には、ウイルス感染症は、HIV、肝炎ウイルス、例えば、肝炎A、B、又はC、ヘルペスウイルス、例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、CMV、及びエプスタイン・バーウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスからなる群から選択されるウイルスにより引き起こされる。
【0052】
最後に、本発明は、化学療法、放射線療法、標的化療法、抗血管新生薬、低メチル化剤、がんワクチン、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、骨髄チェックポイント阻害剤、免疫療法、及びHDAC阻害剤からなる群において選択される治療剤又は治療と組み合わせて使用するための二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物に関する。詳細には、治療剤は、抗CTLA4、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、及び抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L及びB細胞受容体アゴニストからなる群から選択される免疫チェックポイント遮断剤又は適応免疫細胞(T及びBリンパ球)の活性化剤である。そのような組合せは、特に本明細書に開示されるようながん又はウイルス感染症の処置のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】実施例1及び2で使用した様々な分子の概略図である。
図2】抗PD-1 IL7 W142H変異は、PD-1に対する高い結合効率を示し、PDL1結合と拮抗する。A. PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を、異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。1つの(抗PD-1*1 灰色三角、灰色)又は2つの抗PD-1アーム(抗PD-1*2、黒菱形)を有する抗PD-1を対照として試験した。IL7バリアント(抗PD-1*2 IL7 W142H*2、黒丸、黒色)、(抗PD-1*2 IL7 W142H*1、黒四角、黒色)、(抗PD-1*1 IL7 W142H*2、灰色丸、灰色)、(抗PD-1*1 IL7 W142H*1、灰色逆三角、灰色)を含む二機能性分子も試験した。B. ELISAにより測定したPD-1/PD-L1を遮断する拮抗能力。PD-L1を固定化し、複合体抗体+ビオチン化組換えヒトPD-1を添加した。この複合体は、一定濃度のPD1(0.6μg/mL)及び異なる濃度の抗PD1*2 IL7 W142H*1(黒四角、実線)、抗PD1*2 IL7 W142H*2(白丸、破線)、抗PD-1*1(灰色、灰色三角、灰色の破線)、抗PD1*1 IL7 W142H*2(灰色、灰色丸、灰色の実線)、又は抗PD1*1 IL7 W142H*1(灰色、灰色逆三角、灰色の実線)。試験した構築物は全て、FcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
図3A】1価又は2価の抗PD-1及び1つのIL-7 W142Hサイトカインで構築した抗PD-1 IL7分子は、pSTAT5を高い有効性で活性化する。A.抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子のPD-1/CD127結合。PD-1組換えタンパク質を固定化し、次に異なる濃度の二機能性分子及び一定量のCD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ付き、Sino社 参照番号10975-H08H)を添加した。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体とペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。抗PD1*2 IL7 W142H1*1(黒四角)又は抗PD1*2 IL7 W142H*2(黒丸、灰色)を試験した。
図3B】1価又は2価の抗PD-1及び1つのIL-7 W142Hサイトカインで構築した抗PD-1 IL7分子は、pSTAT5を高い有効性で活性化する。B. IL-7 W142*1サイトカインに融合した抗PD-1*2骨格を用いたpSTAT5シグナル伝達アッセイ。健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMCを、抗PD1*2 IL7 WT*2(黒逆三角)又は抗PD1*2 IL7 W142H*1(黒四角、破線)と共に15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、抗CD3-BV421及び抗pSTAT5 AF647(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、CD3+集団に対するMFI pSTAT5+細胞%を計算することにより、得た。
図3C】1価又は2価の抗PD-1及び1つのIL-7 W142Hサイトカインで構築した抗PD-1 IL7分子は、pSTAT5を高い有効性で活性化する。C.抗PD-1*1 IL7 W142H*1(黒丸)抗PD-1*2 IL7WT*2(黒四角)又は抗PD1*2 IL7 W142H*1(黒三角)による処置後のpSTAT5シグナル伝達アッセイ。試験したW142H構築物は全て、IgG1m及びFcドメインとIL-7ドメインとの間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
図4】1又は2価で構築した抗PD-1 IL7分子は、in vivoでのT細胞増殖を有意に促進する。マウスに、1回用量(34nM/kg)の抗PD-1 IL-7 W142H分子(抗PD-1*2 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*2)又はアイソタイプ対照を腹腔内注射した。4日目に採血し、T細胞を、抗CD3、抗CD8、抗CD4、及びki67増殖マーカーで染色した。CD3 CD4+及びCD3 CD8+集団におけるKI67のパーセンテージを定量化した。統計的有意性(*p<0.05)は、対照マウス、2つの独立した実験の1群あたりn=2~8匹のマウスとの多重比較のために一元配置NOVAを使用して計算した。
図5】抗PD-1*2 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*2は、TCRシグナル伝達を相乗的に活性化する。Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイ:(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を同時培養した。BioGlo(商標)ルシフェリンを加えた後、発光が定量され、T細胞活性化を表す。A.抗PD1*2(黒丸、黒色)、抗PD-1*2 IL7 W142H*1(白丸、白色)を系列濃度で添加した。アイソタイプ抗体を、活性化の陰性対照(黒四角)として使用した。B.抗PD1*1+アイソタイプIL7 W142H*2対照の組合せ(白丸、白色破線)、抗PD-1*1 IL7 W142H*2(黒丸、灰色)、抗PD-1*1 IL7 W142H*1(白丸、灰色)を系列濃度で添加した。試験したW142H構築物は全て、IgG1m及びFcドメインとIL-7ドメインとの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
図6】抗PD-1*2 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*2 W142H変異は、PD-1- CD127+細胞よりもPD-1+ CD127+細胞に優先的に結合してpSTAT5シグナル伝達を活性化する。CD127+を発現するU937細胞又はCD127+及びPD-1+を同時発現する細胞を、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)で染色し、1:1比で同時培養した後、異なる濃度の抗PD-1 IL-7二機能性分子と共にインキュベートした。インキュベーションした後で、抗ヒトIgG PEで染色し、pSTAT5活性化をフローサイトメトリーにより定量化した。A. 結合EC50(nM)を、各細胞タイプ及び各構築物について計算した。B. pSTAT5 EC50(nM)を、各細胞タイプ及び各構築物について計算した。二機能性分子で処置した後、次に細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694)で染色した。pSTAT5活性化。EC50(nM)を、各構築物及び各細胞タイプU937 PD-1+ CD127+(白色ヒストグラム)及びU937 PD-1- CD127+(黒色ヒストグラム)について計算した。n=2の独立した実験。このアッセイでは、抗PD-1*2 IL7 W142*1、抗PD-1*1 IL7 W142*1、及び抗PD-1*1 IL7 W142*2を試験した。これらは、IgG1mアイソタイプ、及びFcドメインとIL-7ドメインと間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーを含む。
図7】腹腔内注射後の抗PD-1*2 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*1、抗PD-1*1 IL7*2 W142H変異分子の薬物動態。ヒト化PD1マウスに、1回用量(34nM/kg)の抗PD-1*2 IL7 IL7*2 IgG4m(白三角)、抗PD-1*2 IL7 W142H*1 IgG1m(黒逆三角)、抗PD-1*1 IL7 W142H*1 IgG1m(黒丸、灰色)、又は抗PD-1*1 IL7 W142H*2 IgG1m(白丸、灰色)を腹腔内注射した。血清中の薬物濃度を、注射72時間後まで、ELISAにより評価した。
図8】哺乳動物細胞における抗PD-1/IL7二機能性抗体の生産性。CHO-S細胞に、抗PD-1*2/IL7*1又は抗PD-1*1/IL7*1分子をコードするDNAを比(1:3:3;鎖A:鎖B: VL)で一過性にトランスフェクトした。抗体を含有する上清を、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製した。精製後に得られた二機能性抗体の量を、UV分光法(DO 280nm)を使用して定量し、産生体積に対して正規化した。構築の生データ生産性。
図9A】抗PD-1*1/IL-7wt*1のサイズ排除クロマトグラフィー。精製抗体を、SuperDex 200(10/300GL)を使用するゲル濾過クロマトグラフィーを使用してそのサイズにより分離した。凝集物、ヘテロ二量体抗体、及びFcホモ二量体に対応するピークを、計算した化合物の%と共にグラフィック上に表す。
図9B】抗PD-1*1/IL-7v*1のサイズ排除クロマトグラフィー。精製抗体を、SuperDex 200(10/300GL)を使用するゲル濾過クロマトグラフィーを使用してそのサイズにより分離した。凝集物、ヘテロ二量体抗体、及びFcホモ二量体に対応するピークを、計算した化合物の%と共にグラフィック上に表す。
図10】抗PD-1*/IL7*1分子は、高い効率でpSTAT5を活性化する。図10A。抗PD-1*1 /IL-21*1、抗PD-1*1 /IL-15*1、抗PD-1*1 /IL-7wt*1、抗PD-1*1 /IL-7v*1により処置したヒト初代T細胞のpSTAT5シグナル伝達アッセイ。健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMCを、分子と共に15分間インキュベートした。次に細胞を固定し、透過処理し、抗CD3-BV421及び抗pSTAT5 AF647(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データは、CD3+集団に対する%pSTAT5+細胞に対応する。図10B。抗PD-1*2 IL7v*2(黒逆三角)又は抗PD-1*1 IL7v1*1(白三角)分子による処置後のヒトCD127+ CD132+ U937細胞株へのpSTAT5シグナル伝達。左のグラフは、pSTAT5 +細胞の%に対応し、右のグラフは、pSTAT5活性化の50%に到達するために必要な濃度を参照して計算したEC50(nM)に対応する。データは3回の独立した実験の平均値+/-SDを表す。
図11A】抗PD-1*1/IL7*1分子は、PD-1-細胞よりPD-1+細胞に高い効率で優先的に結合する。図11A。PD-1+ CD127+ U937細胞(実線)対PD-1- CD127+ U937細胞株(破線)における抗PD-1*1/IL-7wt*1分子の結合。
図11B】抗PD-1*1/IL7*1分子は、PD-1-細胞よりPD-1+細胞に高い効率で優先的に結合する。図11B。PD-1+ CD127+ U937細胞(実線)対PD-1- CD127+ U937細胞株(破線)における抗PD-1*1/IL-7v*1分子の結合。
図11C】抗PD-1*1/IL7*1分子は、PD-1-細胞よりPD-1+細胞に高い効率で優先的に結合する。図11C。PD-1+ CD127+細胞対PD-1-細胞 CD127+細胞におけるpSTAT5活性化の比較。PD-1+ CD127+(白色のヒストグラム)対PD-1- CD127+細胞(黒色のヒストグラム)におけるpSTAT5活性化のEC50nM比を計算し、グラフィックで報告した。N=3の独立した実験。
図12】抗PD-1*1 IL7*1は、TCRシグナル伝達を相乗的に活性化する。Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイ:(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPD-L1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を同時培養した。BioGlo(商標)ルシフェリンを加えた後、発光が定量され、T細胞活性化を表す。図12A。抗PD1*1(黒四角、黒色)、別々の化合物としての抗PD-1*1 +アイソタイプ*1 IL-7wt*1 (白逆三角)、抗PD-1*1 IL7wt*1(黒三角、黒色)を、系列濃度で加えた。右のグラフ、各構築物について計算したEC50(nM)。図12B。抗PD1*1(黒四角、黒色)、別々の化合物としての抗PD-1*1 +アイソタイプ*1 IL-7v*1(白逆三角)、抗PD-1*1 IL7v*1(黒三角、黒色)を、系列濃度で加えた。右のグラフ、各構築物について計算したEC50(nM)。データは少なくとも3回の独立した実験を表す。
図13】抗PD-1*1/IL7v*1は、抗PD1*2/IL7v*1又は抗PD-1*2/IL7v*2分子よりin vivoで高い薬物動態を実証した。C57BL/6マウスに、1用量(34nmol/kg)の二機能性抗PD-1/IL-7v分子を静脈内(図13A)又は腹腔内(図13B)に注射した。血清中の抗体濃度を、抗ヒトFc特異的ELISAを使用して複数の時点で定量した。左のグラフ、データをナノモル濃度で表す。右のグラフ、曲線下面積を、各構築物について計算し、in vivo薬物曝露を規定した。データは、2~4匹のマウス/群の平均値+/-SEMである。
図14】個々の抗PD1*2/IL7*1分子の薬物動態研究。データは、抗PD-1*1又は抗PD-1*2骨格及び1つ又は2つの融合されたIL7により構築された抗PD-1/IL-7分子の個々の構築物の薬物動態及びAUCを表す。データは独立した実験の1~4匹のマウス/群を含む平均値+/-SEMである。
図15】抗PD-1単独(抗PD-1*1及び抗PD-1*2)を単回注射後のマウスにおける薬物動態研究。C57 BL6マウスに、1の抗PD-1価(抗PD-1*1黒四角、破線)又は2の抗PD-1価(抗PD-1*2、黒丸、実線)(図15A)で構築した抗PD-1抗体の1用量(34nmol/kg)を注射した。(図15A)静脈内注射及び(図15B)腹腔内注射。血清中の抗体濃度を、抗ヒトFc特異的ELISAを使用して複数の時点で定量した。データを、nM濃度で表す。
図16A】抗PD-1*1 IL7v*1分子は、in vivoでのT細胞増殖を有意に促進する。マウスに、抗PD-1 IL-7v分子(抗PD-1*2 IL7v*1、抗PD-1*1 IL7v*1、抗PD-1*1 IL7v*2、抗PD-1*2 IL7wt*1、抗PD-1*1、又は抗PD-*2)の1用量(34nM/kg)を腹腔内注射した。4日目に、腫瘍及び血液を収集し、異なるT細胞部分集団中のT細胞をki67増殖マーカーで染色した。血液中のCD3 CD4+及びCD3 CD8+集団におけるKI67のパーセンテージを定量した。統計的有意性(*p<0.05)は、1群あたりn=3~8匹のマウスで対照マウスとの多重比較のために一元配置ANOVAを使用して計算した。
図16B】抗PD-1*1 IL7v*1分子は、in vivoでのT細胞増殖を有意に促進する。マウスに、抗PD-1 IL-7v分子(抗PD-1*2 IL7v*1、抗PD-1*1 IL7v*1、抗PD-1*1 IL7v*2、抗PD-1*2 IL7wt*1、抗PD-1*1、又は抗PD-*2)の1用量(34nM/kg)を腹腔内注射した。4日目に、腫瘍及び血液を収集し、異なるT細胞部分集団中のT細胞をki67増殖マーカーで染色した。腫瘍内TCF1+幹細胞様CD8 T細胞(CD45/CD3/CD8/CD44/TCF1+/TOX-)中のCD3 CD4+及びCD3 CD8+集団におけるKI67のパーセンテージを定量した。統計的有意性(*p<0.05)は、1群あたりn=3~8匹のマウスで対照マウスとの多重比較のために一元配置ANOVAを使用して計算した。
図17】抗PD-1*1 IL7*1分子は、抗PD-1耐性肝癌正所性モデルにおいて有意な有効性を実証した。ヒト化PD-1 KI免疫コンピテントマウスを実験のために使用した。Hepa1.6肝癌細胞を、門脈を介して正所性に注射した。4日目に、マウスを、PBS(陰性対照)、抗PD-1*2、及び抗PD-1*1 IL7*1の3用量により処置した。2つの独立した実験を実施した。図17A。抗PD-1*1IL7v*1対抗PD-1*2及びPBS処置により処置したマウスの生存。図17B。抗PD-1*1IL7wt*1対抗PD-1*2及びPBS処置により処置したマウスの生存。
図18】抗PD-1*1 IL7v*1分子は、中皮腫正所性モデルにおいて高い有効性を実証する。ヒト化PD-1 KI免疫コンピテントマウスを実験のために使用した。AK7中皮腫細胞を、腹腔内注射した。4日目に、マウスを、PBS(陰性対照)、抗PD-1*2、抗PD-1*1 IL7v*1の3用量により処置した。図18A。生物発光により測定した腫瘍量。AK7細胞は、ルシフェラーゼを安定的に発現して、生物発光のin vivo定量化を可能にする。図18B。処置後のマウスの生存。
図19】抗PD-1*1 IL7v*1分子は、Tregの抑制性機能をIL-7サイトカイン単独及び抗PD-1*1 IL7wt*1より高い程度に無効にする。CD8+エフェクターT細胞及び自己CD4+ CD25high CD127low Tregを、健常ドナーの末梢血から単離し、細胞増殖ダイ(CD8+ T細胞に関してCPDe670)で染色した。次に、Treg/CD8+Teffを、OKT3コーティングプレート(2μg/mL)においてrIL-7、抗PD-1*2、組換えIL-7サイトカイン、抗PD-1*1 IL7WT*1、又は抗PD-1*1 IL7v*1(抗PD-1*1 IL7W142H*)(0.12nM)の存在下又は非存在下で5日間1:1の比で同時培養した。エフェクターT細胞の増殖を、CPDマーカーの喪失に基づくサイトフルオロメトリーにより解析した。データは、式100-((Tregと同時培養したTeffの%/Teff増殖単独の%)*100)を使用して解析したTregの%抑制性活性を表す。独立した実験のn=4のドナーのデータ+/-SEM。統計的有意性は、多重比較のためにダネット検定を使用する一元配置ANOVAであった。
図20】抗PD-1感受性正所性モデルであるAK7正所性モデルにおける抗PD-1*1 IL7v*1分子の有意な長期間の単剤療法有効性。hPD-1KIマウスに、AK7中皮腫細胞を腹腔内注射して、PBS(n=8匹のマウス)、抗PD-1*2(n=8匹のマウス)、抗PD-1*1 IL7v*1(W142H*1)(n=14)、抗PD-1*1 IL7WT *1により処置した。(A)処置後の全生存期間。統計学的有意性をログランク検定により計算した(*p<0.05)。(B)抗PD-1*1 IL7v*1は、腫瘍再チャレンジ後に長期間のメモリー応答を誘導する。抗PD-1*1 IL7v*1処置により治癒したマウス(n=7)に、AK7中皮腫細胞を、腹腔内注射(3e6細胞)を介して再チャレンジした。対照として、ナイーブマウスの群(n=3)にも注射して、腫瘍量及び成長を確認した。グラフは、D-ルシフェリン(150mg/kg及びbioimagerを使用する分析)の腹腔内注射後の生物発光により定量化したルシフェラーゼ形質導入AK7腫瘍成長を表す(平均値+/-SEM)。
図21】肝癌正所性モデルにおける抗PD-1*1 IL7v*1分子の前臨床有効性。Hepa 1.6腫瘍接種後、マウスを、4日目/6日目及び8日目にPBS、抗PD-1、抗PD-1*1 IL7v*1(抗PD-1*1 IL7W142H*1)、又は抗PD-1*1 IL7wt*1により処置した。全生存を3つの独立した実験に関して得て、例証のために組み合わせた。PBS(n=23);抗PD-1*2(n=26)、アイソタイプ-IL-7(n=14)、抗PD-1*1 IL7v*1(n=20)及び抗PD-1*1IL7wt*1(n=19)。統計的有意性p<0.05を、ログランク検定により計算した。
図22A】抗PD-1*1 IL7v*1分子によるin vivoでの処置後の遺伝子シグネチャーは、腫瘍微小環境における幹細胞様メモリーCD8 T細胞サブセットの増加を示す。Hepa 1.6腫瘍の接種後、マウスを4日目/6日目及び8日目にPBS、抗PD-1(34.3nmol/kg)、又は抗PD-1*1 IL7v*1、又は抗PD-1*1 IL7wt *1(34.3nmol/kg)(1群あたりn=4)により処置した。10日目に、腫瘍を収集し、遺伝子発現をNanostring Pancancer免疫パネルにより解析した。(A)抗PD-1及びBICKI IL7v処置の間で共通に上方調節された遺伝子のSTRINGタンパク質-タンパク質ネットワーク解析による、PBS、抗PD-1、及び抗PD-1*1IL7v*1群の間で示差的に発現された遺伝子(DEG)のヒートマップ表示。
図22B】抗PD-1*1 IL7v*1分子によるin vivoでの処置後の遺伝子シグネチャーは、腫瘍微小環境における幹細胞様メモリーCD8 T細胞サブセットの増加を示す。Hepa 1.6腫瘍の接種後、マウスを4日目/6日目及び8日目にPBS、抗PD-1(34.3nmol/kg)、又は抗PD-1*1 IL7v*1、又は抗PD-1*1 IL7wt *1(34.3nmol/kg)(1群あたりn=4)により処置した。10日目に、腫瘍を収集し、遺伝子発現をNanostring Pancancer免疫パネルにより解析した。早期に活性化されたT細胞対疲弊T細胞の遺伝子シグネチャー濃縮。疲弊T細胞の遺伝子シグネチャー及びナイーブ様/幹細胞様メモリーT細胞シグネチャーを、Andreattaら(Nature comm 2021、12巻、2965頁)のナイーブ様/幹細胞様メモリーT細胞(TCF7、CCR7、SELL、IL7R)及び疲弊CD8 T細胞スコア(LAG3、PRF1、CD8A、HAVRC2、GZMB、CD8B1、KLRD1、TNFRSF9、TIGIT、CTSW、CCL4、CD63、IFNG、CXCR6、FASL、CSF1)から適合させた。
図22C】抗PD-1*1 IL7v*1分子によるin vivoでの処置後の遺伝子シグネチャーは、腫瘍微小環境における幹細胞様メモリーCD8 T細胞サブセットの増加を示す。Hepa 1.6腫瘍の接種後、マウスを4日目/6日目及び8日目にPBS、抗PD-1(34.3nmol/kg)、又は抗PD-1*1 IL7v*1、又は抗PD-1*1 IL7wt *1(34.3nmol/kg)(1群あたりn=4)により処置した。10日目に、腫瘍を収集し、遺伝子発現をNanostring Pancancer免疫パネルにより解析した。早期に活性化されたT細胞対疲弊T細胞の遺伝子シグネチャー濃縮。疲弊T細胞の遺伝子シグネチャー及びナイーブ様/幹細胞様メモリーT細胞シグネチャーを、Andreattaら(Nature comm 2021、12巻、2965頁)のナイーブ様/幹細胞様メモリーT細胞(TCF7、CCR7、SELL、IL7R)及び疲弊CD8 T細胞スコア(LAG3、PRF1、CD8A、HAVRC2、GZMB、CD8B1、KLRD1、TNFRSF9、TIGIT、CTSW、CCL4、CD63、IFNG、CXCR6、FASL、CSF1)から適合させた。
図23】腫瘍微小環境における幹細胞様メモリーCD8 T細胞(TCF1+)サブセットの抗PD-1*1 IL7v*1分子が誘導する増殖。(A、B及びC)Hepa 1.6腫瘍接種後、マウスを4日目/6日目及び8日目にPBS、抗PD-1(34.3nmol/kg)又は抗PD-1*1 IL7v*1又は抗PD-1*1 IL7wt *1(34.3nmol/kg)(1群あたりn=4)により処置した。10日目に、腫瘍を収集し、T細胞を、CD3/CD8/CD44マーカー及びTCF1/TOX因子の発現に関するフローサイトメトリー解析のために染色した。(A)腫瘍微小環境におけるCD4、CD8、及びTreg部分集団のパーセンテージ。(B)TCF1+/-TOXマーカーを発現するCD44+ CD8+活性化T細胞のパーセンテージ。(C)Hepa1.6モデル(D)及びMC38皮下モデルにおいてKI67マーカーの%により測定した、TCF1+/-TOXマーカーを発現するCD44+ CD8+活性化T細胞の増殖。TCF1+/-TOXマーカーを発現するCD44+ CD8+活性化T細胞の増殖を、処置(抗PD-1*2 抗PD-1*1 IL7v*1(W142H*1))後のKI67マーカーの%により測定した。
図24】抗PD-1*1 IL7v*1は、慢性的に刺激されたT細胞の生存を維持し(A)、及び幹細胞様T細胞のin vitroでの増殖を誘導した(B)。2人の健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMCを、抗CD3及び抗CD28アゴニスト抗体により3日毎に慢性的に刺激した。T細胞を、各刺激の間、抗PD-1、ヒトIL-7及び抗PD-1*1 IL7v*1により処置した。5回刺激した1日後、T細胞を、生存率ダイ、抗CD3、抗CD8、抗TCF1及び抗ki67増殖マーカーで染色した。(A)全細胞において生存率を定量化した。(B)KI67パーセンテージをCD3+ CD8+ TCF1-/+集団において定量化した。データは、1群あたりN=2のドナーの平均値+/-SDである。
図25】乳がん細胞ヒト化マウスモデルにおける抗PD-1*1 IL7v*1分子の単剤療法の有効性。NXG免疫欠損マウスに、MDA-MB231乳がん細胞癌腫細胞(3e6個の細胞)を皮下注射し、8日目にヒトPBMC(3e6個の細胞)の腹腔内によりヒト化した後、腫瘍接種後12、15、及び18日目に、PBS、抗PD-1*2又は抗PD-1*1 IL7v*1によりi.p.処置した。データは、1群あたり及びドナーあたりN=3~4匹のマウスの平均値+/-SEMである。
図26】肺がんA549ヒト化マウスモデルにおける抗PD-1*1 IL7v*1分子の単剤療法の有効性。NXG免疫欠損マウスに、A549肺癌細胞を皮下注射し、21日目にヒトPBMC(10e6個の細胞)の腹腔内によりヒト化した後、腫瘍接種後25、28、31及び34日目にPBS、抗PD-1*2、又は抗PD-1*1 IL7v*1のi.p.により処置した。(A)A549腫瘍成長、1群あたりn=5匹のマウスの平均値+/-SEM。統計的有意性**p<0.05を、抗PD-1*1 IL7v*1対抗PD-1*2群を比較することによりダネットの多重比較検定を使用して計算した。(B)35日目に収集したマウスの血清中のELISAにより定量化したヒトIFNg分泌(1群あたりn=2~5匹のマウス)。
図27】抗PD-1*1 IL7v*1は、抗PD-1*1 IL7wt*1分子と比較して良好な薬物動態プロファイルを実証し、in vivoでCD8 T細胞の増殖を誘導した。動物に、抗PD-1*1 IL-7v*1(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)又は抗PD-1*1 IL7wt*1の1用量を、0.8mg/kg(n=1匹のカニクイザル)、4.01mg/kg(n=1匹のカニクイザル)、25mg/kg(n=1匹のカニクイザル)で静脈内注射した。(A)動物の血清中の薬物濃度を、MSDイムノアッセイにより定量化した。(B)抗PD-1*1 IL7v*1抗体の異なる用量を注射後の末梢血T細胞におけるフローサイトメトリーにより評価したCD8 T細胞増殖の測定(1用量あたりn=1匹のカニクイザル)。
図28】IgG1 N297Aアイソタイプ又はIgG1 N297A LALA PGアイソタイプで構築した抗PD-1*1 IL7v*1は、pSTAT5を活性化するために類似の有効性を実証した。刺激したヒトPBMCを、IgG1 N297Aアイソタイプ又はIgG1 LALA P329G変異で構築した抗PD-1*1 IL7v*1の異なる用量で処置した。IL-7Rシグナル伝達活性化を、CD4及びCD8 T細胞における細胞内pSTAT5染色により測定し、フローサイトメトリーにより解析した。
図29】抗PD-1 IL7 W142H変異体は、PD-1に対して高い結合効率を実証する。PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体により行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。1つの抗PD-1アームを有するIL7 W142H N297Aバリアントを含む二機能性分子(灰色菱形)を対照として試験した。1つの抗PD-1アーム(IL7 W142H N297A DHS 灰色四角)、(IL7 W142H N297A LS 黒三角)、(IL7 W142H N297A YTE X)、(IL7 W142H N297A VL CNDOwt Ж)、(IL7 W142H N297A VL vAv3-11 灰色の丸)を有するIL7バリアントを含む二機能性分子も試験した。
図30】1価の抗PD-1及び1つのIL-7 W142H変異体サイトカインで構築した抗PD-1 IL7分子は、高い効率でpSTAT5を活性化する。IL-7 W142H*1サイトカイン変異体と融合された抗PD-1*1骨格によるpSTAT5シグナル伝達アッセイ。健常ボランディアの末梢血から単離したヒトTリンパ球を、二機能性分子と共に15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、抗CD3-BV421及び抗pSTAT5 AF647(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、CD3+集団におけるMFI %pSTAT5 +細胞を計算することにより得た。1つの抗PD-1アーム(黒色、黒菱形)及び野生型IL7(逆白三角)を有するIL7 W142H N297Aバリアントを含む二機能性分子、並びに1価の抗PD-1で構築した抗PD-1分子(白菱形)を対照として試験した。1つの抗PD-1アームを有するIL7バリアント(IL7 W142H N297A DHS(灰色、灰色四角))、(IL7 W142H N297A LS(黒色、黒三角))、(IL7 W142H N297A YTE(黒色X))、(IL7 W142H N297A VL CNDOwt 黒色*)、(IL7 W142H N297A VL vAv3-11 灰色 灰色丸)を含む二機能性分子も試験した。
【発明を実施するための形態】
【0054】
緒言
本発明は、特定の足場構造を有し、並びに免疫細胞表面上に特異的に発現される標的、特にPD-1に結合する単一の1価の抗原結合性ドメイン、及び単一の免疫刺激性サイトカイン、特にIL-7を含む二機能性分子に関する。この足場構造は、二量体Fcドメイン、Fcドメインの1つの単量体のN末端で連結された単一の1価の抗PD-1抗原結合性ドメイン、並びに抗原結合性ドメインが可変重鎖及び可変軽鎖を含む場合、Fcドメインの単量体又は軽鎖のC末端で連結された単一の免疫刺激性サイトカイン、特にIL-7で本質的に構成される。これらの新規二機能性分子は、他の利点の中でも改善された薬物動態プロファイル及びより良好な生産性を示す。
【0055】
本発明者らは、驚くべきことに、単一のIL-7バリアントを含む構築物が、活性及び薬物動態の両方の観点から、2つのIL7バリアントを含む構築物と比較して特性の向上を有することを示している。
【0056】
定義
本発明をより容易に理解するために、ある特定の用語を本明細書の下記で定義する。追加の定義は、詳細な説明全体にわたって示されている。
【0057】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語は、本発明が関する当業者が一般的に理解する意味を有することが意図されている。一部の場合では、明瞭性のため及び/又は容易な参照のため、一般的に理解されている意味を有する用語も本明細書で定義されている。本明細書にそのような定義が含まれている場合でも、当技術分野で一般に理解されている意味と必ずしも異なることを表すとは解釈されるべきではない。本明細書で記載又は参照されている技法及び手順は、一般によく理解されており、当業者により従来の方法論を使用して広く使用されている。
【0058】
本明細書で使用される場合、「野生型インターロイキン-7」、「wt-IL-7」、及び「wt-IL7」という用語は、哺乳動物内因性分泌性糖タンパク質、特に、野生型機能性哺乳動物IL-7と実質的なアミノ酸配列同一性を有し、例えば、IL-7受容体結合親和性の標準的なバイオアッセイ又はアッセイにおいて実質的に等価な生物学的活性を有するIL-7ポリペプチド、それらの誘導体及びアナログを指す。例えば、wt-IL-7は、i)天然又は天然に存在するIL-7ポリペプチド、ii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性な断片、iii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドアナログ、又はiv)生物学的に活性なIL-7ポリペプチドのアミノ酸配列を有する組換え又は非組換えポリペプチドのアミノ酸配列を指す。IL-7は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく、又はそれを欠いていてもよい。この分子の代替名称は、「プレB細胞増殖因子」及び「リンホポエチン-1」である。好ましくは、「wt-IL-7」という用語は、ヒトIL-7(wth-IL7)を指す。例えば、ヒトwt-IL-7アミノ酸配列は、約152個アミノ酸(シグナルペプチドが存在しない場合)であり、Genbank受入番号はNP_000871.1であり、遺伝子は染色体8q12-13に位置する。ヒトIL-7は、例えばUniProtKB - P13232に記載されている。本明細書で使用される場合、「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「PD1」、「PD-1」、「PDCD1」、「PD-1抗原」、「ヒトPD-1」、「hPD-1」、及び「hPD1」という用語は、互換的に使用され、CD279としても公知であるプログラム死-1受容体を指し、ヒトPD-1のバリアント及びアイソフォーム、並びにPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有するアナログを含む。PD-1は、免疫応答及び末梢免疫寛容の閾値の重要な調節因子である。これは、活性化T細胞、B細胞、単球、及び樹状細胞上で発現され、そのリガンドであるPD-L1及びPD-L2に結合する。ヒトPD-1は、PDCD1遺伝子によりコードされる。一例として、ヒトPD-1のアミノ酸配列は、GenBank受入番号NP_005009で開示されている。PD1は、ヒト末梢血単核球(PBMC)において発現される4つのスプライスバリアントを有する。したがって、PD-1タンパク質は、全長のPD-1、並びにPD-1の選択的スプライスバリアント、例えばPD-1Aex2、PD-1Aex3、PD-1Aex2、3、及びPD-1Aex2、3、4を含む。別様に指定されていない限り、用語は、PBMCにより天然に発現される、又はPD-1遺伝子をトランスフェクトした細胞により発現されるヒトPD-1の任意のバリアント、及びアイソフォームを含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のタイプを記述し、その最も広い意味で使用される。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、つまり抗原結合部位を含有する分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであってもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。別様に具体的に示されていない限り、「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン、並びに「抗体断片」又は「抗原結合性断片」(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv等)、単鎖(scFv)、それらの変異体、抗体部分を含む分子、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体、及び抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアントを含む、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構成を含む。好ましくは、抗体という用語は、ヒト化抗体を指す。
【0060】
「抗体重鎖」は、本明細書で使用される場合、抗体立体構造に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちのより大きい方を指す。抗体重鎖のCDRは、典型的には、「HCDR1」、「HCDR2」、及び「HCDR3」と呼ばれる。抗体重鎖のフレームワーク領域は、典型的には、「HFR1」、「HFR2」、「HFR3」、及び「HFR4」と呼ばれる。
【0061】
「抗体軽鎖」は、本明細書で使用される場合、抗体立体構造に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ軽鎖及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。抗体軽鎖のCDRは、典型的には、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」と呼ばれる。抗体軽鎖のフレームワーク領域は、典型的には、「LFR1」、「LFR2」、「LFR3」、及び「LFR4」と呼ばれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合性断片」又は「抗原結合性ドメイン」は、抗体の一部、つまり、おそらくはその天然形式において、特定の抗原に対して抗原結合能を呈する、本発明の抗体の構造の部分に対応する分子を意味する。特に、そのような断片は、対応する4本鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、その抗原に対して同じ又は実質的に同じ抗原結合特異性を呈する。有利には、抗原結合性断片は、対応する4本鎖抗体と同様の結合親和性を有する。しかしながら、対応する4本鎖抗体と比べて低減された抗原結合親和性を有する抗原結合性断片も、本発明内に包含される。抗原結合能は、抗体と標的断片との間の親和性を測定することにより決定することができる。こうした抗原結合性断片も、抗体の「機能的断片」と称することができる。抗体の抗原結合性断片は、CDR(相補性決定領域)と称される超可変性ドメイン又はそれらの一部を含む断片である。
【0063】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体(例えば、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体)を指すことが意図されている。また、抗体の「ヒト化形式」、例えば非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を指す。ヒト化抗体は、一般に、1つ又は複数のCDRに由来する残基が、元の抗体の所望の特異性、親和性、及び容量を維持しつつ、非ヒト抗体(ドナー抗体)の少なくとも1つのCDRに由来する残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ヒトフレームワーク配列内には、追加のフレームワーク領域修飾がなされていてもよい。好ましくは、ヒト化抗体は、80%、85%、又は90%よりも大きなT20ヒト性スコアを有する。「ヒト性」は、例えば、Gao S H、Huang K、Tu H、Adler A S.、BMC Biotechnology. 2013年:13巻:55頁に記載のような、抗体の可変領域のヒト性を定量化するためのT20スコアアナライザー(T20 score analyzer)又はT20カットオフデータベース(T20 Cutoff Human Databases)を使用して抗体配列のT20スコアを計算するためのウェブベースツール:http://abAnalyzer.lakepharma.comを使用して測定することができる。
【0064】
「キメラ抗体」は、好ましくはマウス等の非ヒト供給源に由来する遺伝物質を、ヒトに由来する遺伝物質と組み合わせることにより製作される抗体を意味する。そのような抗体は、キメラ領域により連結されたヒト抗体及び非ヒト抗体の両方に由来する。キメラ抗体は、一般に、ヒト由来の定常ドメイン及び別の哺乳動物種由来の可変ドメインを含み、療法的治療に使用した場合、非ヒト動物に由来する外来抗体に対する反応のリスクを低減する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「結晶化可能断片領域」、「Fc領域」、又は「Fcドメイン」という用語は、同義的であり、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体と相互作用する抗体の尾部領域を指す。Fc領域又はドメインは、典型的には、抗体の2つの重鎖の第2の及び第3の定常ドメイン(つまり、CH2ドメイン及びCH3ドメイン)に由来する、任意選択で同一の2つのドメインで構成される。Fcドメインの部分は、CH2ドメイン又はCH3ドメインを指す。任意選択で、Fc領域又はドメインは、任意選択で、CH1とCH2との間のヒンジ領域の全て又は部分を含んでいてもよい。したがって、Fcドメインは、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み得る。任意選択で、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に由来するものであり、任意選択で、IgG1ヒンジ-CH2-CH3及びIgG4ヒンジ-CH2-CH3を有する。
【0066】
IgG抗体の文脈では、IgGアイソタイプは、各々3つのCH領域を有する。したがって、IgGの文脈における「CH」ドメインは、以下の通りである:「CH1」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる118~215位を指す。「ヒンジ」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる216~230位を指す。「CH2」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる231~340位を指し、「CH3」は、カバットの場合と同様にEUインデックスによる341~447位を指す。
【0067】
「アミノ酸変化」又は「アミノ酸修飾」とは、本明細書では、ポリペプチドのアミノ酸配列の変化を意味する。「アミノ酸修飾」としては、ポリペプチド配列における置換、挿入、及び/又は欠失が挙げられる。「アミノ酸置換」又は「置換」とは、本明細書では、親ポリペプチド配列の特定の位置にあるアミノ酸を別のアミノ酸と置き換えることを意味する。「アミノ酸挿入」又は「挿入」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置にアミノ酸を付加すること意味する。「アミノ酸欠失」又は「欠失」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置にあるアミノ酸を除去することを意味する。アミノ酸置換は、保存的であってもよい。保存的置換は、所与のアミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷、嵩高さ、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基に置き換えることである。本明細書で使用される場合、「アミノ酸位置」又は「アミノ酸位置番号」は、同義的に使用され、アミノ酸配列中の特定のアミノ酸の位置を指し、一般にアミノ酸の一文字コードで指定される。アミノ酸配列の最初のアミノ酸が(つまり、N末端から開始して)、1位であるとみなされるべきである。
【0068】
保存的置換は、所与のアミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷、嵩高さ、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基に置き換えることである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させないだろう。保存的置換及び対応する規則は、技術水準で十分に記載されている。例えば、保存的置換は、以下の表に反映されているアミノ酸の群内の置換により規定することができる。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の「配列同一性」は、パラメーター「配列同一性」、「配列類似性」、又は「配列相同性」により説明される。本発明の目的では、2つの配列(A)と(B)との間の「同一性パーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって最適な様式でアラインされた2つの配列を比較することにより決定される。配列のアラインメントは、例えば、ニードルマン-ブンシュのグローバルアラインメントのアルゴリズムを使用して、当技術分野で周知の方法により実施することができる。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、種々の置換、欠失、及び他の修飾に割り当てられる類似性の尺度を使用して、類似の配列を照合する。全体のアラインメントが得られたら、アラインされた同一アミノ酸残基の総数を、配列(A)と(B)との間の最長配列に含まれる残基の総数で割ることにより、同一性パーセンテージを得ることができる。配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して決定される。2つのアミノ酸配列を比較するには、例えば、EMBL-EBIにより提供されるか、又はwww.ebi.ac.uk/Tools/services/web/toolform.ebi?tool=emboss_needle&context=proteinで利用可能なタンパク質のペアワイズ配列アラインメント用のツール「Emboss needle」を、例えば、初期設定:(I)マトリックス:BLOSUM62、(ii)ギャップオープン:10、(iii)ギャップ伸長:0.5、(iv)出力形式:ペア、(v)エンドギャップペナルティ:偽、(vi)エンドギャップオープン:10、(vii)エンドギャップ伸長:0.5を用いて、使用することができる。
【0073】
或いは、配列同一性は、典型的には、HHalignアルゴリズム及びその初期設定をそのコアアライメントエンジンとして使用する配列分析ソフトウェアClustal Omegaを使用して決定することもできる。このアルゴリズムは、初期設定と共に、Soding, J.(2005年)「Protein homology detection by HMM-HMM comparison」、Bioinformatics 21巻、951~960頁に記載されている。
【0074】
「から派生する(derive from)」及び「に由来する(derived from)」という用語は、本明細書で使用される場合、親化合物又は親タンパク質の構造に由来する構造を有し、その構造が本明細書に開示のものと十分に類似しており、当業者であれば、その類似性に基づき、特許請求されている化合物と同じ又は同様の特性、活性、及び有用性を呈することが予想されることになる化合物を指す。
【0075】
「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、生理学的に好適な担体及び賦形剤等の任意選択の他の化学成分と共に本発明による二機能性分子を含むもの等、活性作用剤の1つ又は複数の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への活性作用剤の投与を容易にすることである。本発明の組成物は、任意の従来の投与経路又は使用に好適な形態であってもよい。一態様では、「組成物」は、典型的には、活性作用剤、例えば化合物又は組成物と、薬学的に許容される担体を含む、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、保存剤、又はアジュバント等の不活性(例えば、検出可能な作用剤又は標識)又は活性の天然に存在する又は天然に存在しない担体との組合せが意図される。「許容されるビヒクル」又は「許容される担体」は、本明細書で言及される場合、医薬組成物の製剤化に有用であることが当業者に公知である任意の公知の化合物又は化合物の組合せである。
【0076】
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、単独で、又は1つ若しくは複数の他の活性作用剤との組合せのいずれかで、対象に治療効果を付与するのに必要な活性作用剤の量、例えば、標的の疾患若しくは障害を治療するために、又は所望の効果を生み出すために必要とされる活性作用剤の量を指す。「有効量」は、作用剤、疾患及びその重症度、年齢、身体状態、大きさ、性別、及び体重を含む、治療しようとする対象の特徴、治療の期間、併用療法の性質(該当する場合)、特定の投与経路、並びに医療従事者の知識及び専門性の範囲内の類似要因に応じて様々であろう。こうした要因は、当業者に周知であり、単なる日常的実験作業で対処することができる。一般に、個々の成分又はそれらの組合せの最大用量、つまり、健全な医学的判断による最も高い安全な用量を使用することが好ましい。
【0077】
本明細書で使用される場合、「医薬」という用語は、障害又は疾患に対する治癒的又は防止的特性を有する任意の物質又は組成物を指す。
【0078】
「治療」という用語は、疾患又は疾患の症状の療法、防止、予防、及び緩徐等の、患者の健康状態を改善することを目的としたあらゆる行為を指す。この用語は、疾患の治癒的治療及び/又は予防的治療の両方を指す。治癒的治療は、疾患若しくは疾患の症状又はそれが直接若しくは間接に引き起こす苦難を軽減、好転、及び/又は消失、低減、及び/又は安定化する治癒又は治療をもたらす治療であると定義される。予防的治療は、疾患の防止をもたらす治療、並びに疾患の進行及び/若しくは発症又はその発生リスクを低減及び/又は遅延させる治療の両方を含む。ある特定の態様では、そのような用語は、疾患、障害、感染症、又はそれと関連する症状の好転又は根絶を指す。他の態様では、この用語は、がんの広がり又は悪化を最小限に抑えることを指す。本発明による治療は、必ずしも100%又は完全な治療を示唆するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は療法効果を有すると認識する様々な度合いの治療が存在する。好ましくは、「治療」という用語は、1つ又は複数の活性作用剤を含む組成物を、障害/疾患を有する対象に適用又は投与することを指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「障害」又は「疾患」という用語は、遺伝的若しくは発生上の誤謬、感染、毒、栄養不足若しくは偏り、毒性、又は好ましくない環境要因に起因して、身体の臓器、一部分、構造、又は系が正しく機能しないことを指す。好ましくは、こうした用語は、健康障害又は疾患、例えば、正常な身体的又は精神的機能を妨害する疾病を指す。より好ましくは、障害という用語は、がん等の、動物及び/又はヒトに影響を及ぼす免疫疾患及び/又は炎症性疾患を指す。
【0080】
「免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球細胞(白血球)、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)、及び骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)等の、自然免疫及び適応免疫に関与する細胞を指す。特に、免疫細胞は、B細胞、T細胞、特にCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、APC細胞、樹状細胞、並びに単球を含む非網羅的リストにおいて選択することができる。「T細胞」としては、本明細書で使用される場合、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー17型T細胞、及び阻害性T細胞が挙げられる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「Tエフェクター細胞」、「Teff」、又は「エフェクター細胞」という用語は、共刺激等の刺激に活性に応答する幾つかのT細胞型を含む免疫細胞の群を記述する。この用語は、特に、抗原を排除するように機能するT細胞を含む(例えば、他の細胞の活性化をモジュレートするサイトカインの産生により、又は細胞傷害活性により)。この用語は、特に、CD4+細胞、CD8+細胞、細胞傷害性T細胞、及びヘルパーT細胞(Th1及びTh2)を含む。
【0082】
本明細書で使用される場合、「調節性T細胞」、「Treg細胞」、又は「Treg」という用語は、免疫系をモジュレートし、自己抗原に対する耐容性を維持し、自己免疫疾患を防止するT細胞の部分集団を指す。Tregは、免疫抑制性であり、一般にエフェクターT細胞の誘導及び増殖を抑制又は下方制御する。Tregは、バイオマーカーCD4、FOXP3、及びCD25を発現し、ナイーブCD4細胞と同じ系列に由来すると考えられている。
【0083】
「疲弊T細胞」という用語は、機能不全(つまり「疲弊」)の状態にあるT細胞の集団を指す。T細胞疲弊は、機能の進行性喪失、転写プロファイルの変化、及び阻害性受容体の持続的発現により特徴付けられる。疲弊T細胞は、サイトカイン産生能力、高い増殖能力、及び細胞傷害能力を喪失し、それにより最終的には自身の除去がもたらされる。疲弊T細胞は、典型的には、CD62L及びCD127の発現がより低いこと併せて、より高いレベルのCD43、CD69、及び阻害性受容体を提示する。
【0084】
「エフェクターメモリー幹細胞様T細胞」という用語は、チェックポイントタンパク質PD-1及び転写因子Tcf1の発現を含む、疲弊細胞及びセントラルメモリー細胞の特徴を有する腫瘍反応性の腫瘍内T細胞のサブセットを指す。これらの細胞は、Tcf1+PD-1+CD8+ T細胞と呼ばれる。これらの細胞は腫瘍微小環境に常在し、免疫療法により促進されるがんの免疫制御にとって重要である。それらは、慢性ウイルス感染症及びがんの際のT細胞応答の維持にとって重要であり、PD-1免疫療法後に見られる爆発的な増殖を提供する。これらの細胞は、自己再生が遅く、より多くの最終分化した疲弊CD8 T細胞も生じる。これらの細胞及びその特徴は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる、以下の論文において更に定義されている: Siddiquiら、2019年、Immunity、50巻、195~211頁;及びJadhavら、2019年、PNAS、116巻、14113~14118頁)。
【0085】
「免疫応答」という用語は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合は正常なヒト細胞若しくは組織に対する選択的損傷、破壊、又はヒト身体からの排除をもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記の細胞又は肝臓により産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0086】
「アンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、別の物質の活性又は機能性を阻止又は低減する物質を指す。特に、この用語は、参照物質(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)としての細胞受容体(例えば、PD-1)に結合し、それがその通常の生物学的効果(例えば、免疫抑制性微小環境の生成)の全て又は一部を生み出すことを妨げる抗体を指す。本発明によるヒト化抗体のアンタゴニスト活性は、競合ELISAにより評価することができる。
【0087】
「アゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、活性化受容体の機能を活性化する物質を指す。特に、この用語は、参照物質として細胞活性化受容体に結合し、生物学的に天然のリガンドと少なくとも部分的に同じ効果を有する(例えば、受容体の活性化効果を誘導する)抗体を指す。
【0088】
薬物動態(PK)は、身体内での薬物の動きを指し、薬力学(PD)は、薬物に対する身体の生物学的反応を指す。PKは、吸収、分布、生物学的利用能、代謝、及び排泄を時間の関数として特徴付けることにより、薬物曝露を記述する。PDは、生化学的相互作用又は分子的相互作用の観点から薬物応答を記述する。PK分析及びPD分析を使用して、薬物曝露を特徴付け、投薬量の変化を予測及び評価し、排除速度及び吸収速度を推定し、製剤の相対的生物学的利用能/生物学的同等性を評価し、対象内変動性及び対象間変動性を特徴付け、濃度-効果関係性を理解し、安全域及び有効性特徴を確立する。「PKの向上」とは、例えば、分子の半減期の増加、特に対象に注射した際に分子がより長い血清半減期を示す等、上記の特徴の1つが向上されることを意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「薬物動態」及び「PK」という用語は、互換的に使用され、生きている生物に投与される化合物、物質又は薬物の運命を指す。薬物動態は、詳細には、解放(つまり、組成物からの物質の放出)、吸収(つまり、血液循環への物質の進入)、分布(つまり、身体にわたる物質の分散又は拡散)、代謝(つまり、物質の変換又は分解)、及び排泄(つまり、生物からの物質の除去又はクリアランス)を表すADME又はLADMEスキームを含む。代謝及び排泄の2つの段階は、消失という表題下で一緒にグループ化することもできる。当業者であれば、中でも、消失半減期、消失定率(elimination constant rate)、クリアランス(つまり、単位時間当たりに薬物がクリアランスされる血漿の容積)、Cmax(最大血清中濃度)、及び薬物曝露(曲線下面積により決定される、Scheffら、Pharm Res. 2011年5月;28巻(5号):1081~9頁を参照)等、様々な薬物動態パラメーターをモニターすることができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、記載されている物質(例えば、抗体、ポリペプチド、核酸等)が、自然界ではそれらと共に存在する他の物質から実質的に分離されているか、又はそれらと比べて濃縮されていることを示す。特に、「単離された」抗体は、その天然環境の成分から同定、分離、及び/又は回収されているものである。
【0091】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用される場合、他方の有無に関わらず、2つの指定の特徴又は成分の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々があたかも個々に示されているような、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の具体的な開示として解釈されるべきである。
【0092】
「a」又は「an」という用語は、要素の1つ又は要素の1つよりも多くのいずれかが記載されていることが文脈から明らかでない限り、それが修飾する要素の1つ又は複数を指すことができる(例えば、「試薬」は、1つ又は複数の試薬を意味することができる)。
【0093】
「約」という用語は、ありとあらゆる値(数値範囲の下限及び上限を含む)に関連して本明細書で使用される場合、最大で+/-10%(例えば、+/-0.5%、+/-1%、+/-1.5%、+/-2%、+/-2.5%、+/-3%、+/-3.5%、+/-4%、+/-4.5%、+/-5%、+/-5.5%、+/-6%、+/-6.5%、+/-7%、+/-7.5%、+/-8%、+/-8.5%、+/-9%、+/-9.5%)の許容可能な逸脱範囲を有するあらゆる値を意味する。値の文字列の先頭における「約」という用語の使用は、値の各々を修飾する(つまり、「約1、2、及び3」は、約1、約2、及び約3を指す)。更に、値のリストが本明細書に記載されている場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%、又は86%)、リストは、その全ての中間値及び小数値(例えば、54%、85.4%)を含む。
【0094】
「本質的に」という用語は、任意の所与の生物学的配列と関連して本明細書で使用される場合、前記生物学的配列が、配列表に含有される参照配列から生物学的配列長の最大10%変動することを意味する。特に、「から本質的になる」とは、生物学的配列がその配列からなるが、前記生物学的配列が、配列表に含有される参照配列から生物学的配列長の最大10%変動することを条件として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換、付加、欠失、又はその混合物、好ましくは1、2、3、4、又は5個の置換、付加、欠失、又はその混合物を含み得ることが意図される。
【0095】
二機能性分子
本発明は、特性の向上と関連する足場構造を有する二機能性分子に関する。
【0096】
より詳細には、本発明は、特定の足場構造を有し、PD-1に結合する単一の1価の抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7mを含む二機能性分子に関する。この足場構造は、本質的に二量体Fcドメイン、Fcドメインの1つの単量体のN末端で連結されたPD-1に結合する単一の1価抗原結合性ドメインで本質的に構成され、及びi)単一のIL-7mがFcドメインの同じ単量体のC末端及び任意選択のペプチドリンカーに連結しているか、又はii)単一の1価の抗原結合性ドメインが可変重鎖及び可変軽鎖を含み、単一のIL-7mが、前記抗原結合性ドメインの軽鎖のC末端に連結されているかのいずれかである。
【0097】
特定の態様では、二機能性分子は、第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗PD-1抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のFc鎖がIL-7mに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み、前記第1及び第2のFc鎖は二量体Fcドメインを形成する。
【0098】
代替の態様では、二機能性分子は、第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗PD-1抗原結合性ドメインを含む第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7mを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み、前記第1及び第2のFc鎖は二量体Fcドメインを形成し、単一の1価の抗原結合性ドメインが可変重鎖及び可変軽鎖を含み、単一のIL-7mは前記抗原結合性ドメインの軽鎖のC末端に連結されている。
【0099】
したがって、2つの単量体は、二量体Fcドメインを形成することができるFc鎖を各々1つ含む。一態様では、二量体Fc融合タンパク質は、ホモ二量体Fcドメインである。別の態様では、二量体Fc融合タンパク質は、ヘテロ二量体Fcドメインである。
【0100】
より詳細には、二量体Fcドメインがヘテロ二量体Fcドメインである場合、二機能性分子は、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインであって、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖が、そのC末端でIL-7mに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7mを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む第2の単量体とを含む。任意選択で、相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む前記第2の単量体は、任意の他の機能的部分、特に別の抗原結合性ドメイン、又は任意のサイトカインを欠いている。更により詳細には、二機能性分子は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖が、そのC末端がIL-7mのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7mを欠く、好ましくは任意の他の機能的部分、特に別の抗原結合性ドメイン、又は任意のサイトカインを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む第2の単量体とを含む。そのような二機能性分子を、IL-7mの例証としてのIL-7 W142Hと共に、例えば「構築物3」として図1に例証する。
【0101】
任意選択で、単一の抗原結合性ドメインは、Fab、Fab'、scFV及びsdAbからなる群から選択される。
【0102】
したがって、一態様では、本発明による二機能性分子は、
(a)(i)第1のFc鎖を有する1つの重鎖、及び(ii)1つの軽鎖を含む抗PD1抗原結合性ドメイン、
(b)IL-7m、並びに
(c)相補的な第2のFc鎖、
を含むか又はからなり、IL-7mは、好ましくはそのN末端が第1のFc鎖のC末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。第1のFc鎖及び第2のFc鎖は共に二量体Fcドメインを形成する。
【0103】
特定の態様では、二機能性分子は、
- そのC末端でIL-7mに連結されたVH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む1つの抗体重鎖
- 特に免疫細胞表面上に発現されるPD-1に結合する抗原結合性ドメインを共に形成する、VL-CL(定常軽鎖)、VH-CH1部分及びVL-CL部分を含む1つの抗体軽鎖、並びに
- CH2-CH3、任意選択でヒンジ-CH2-CH3を含み、抗体重鎖のCH2-CH3と共に二量体Fcドメインを形成する1つのFc鎖
を含む。
【0104】
代替の態様に従って、二量体Fcドメインがヘテロ二量体Fcドメインである場合、二機能性分子は、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7mを欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む第2の単量体とを含み、前記抗原結合性ドメインは可変重鎖及び可変軽鎖を含み、IL-7mは、前記抗原結合性ドメインの軽鎖のC末端で、任意選択でペプチドリンカーを介して連結されている。任意選択で、前記IL-7mは、そのN末端が前記抗原結合性ドメインの軽鎖のC末端で、任意選択でペプチドリンカーを介して連結されている。
【0105】
したがって、この態様では、本発明による二機能性分子は、
(a)第1のFc鎖を有する1つの重鎖、及び(ii)1つの軽鎖を含む抗PD1抗原結合性ドメイン、
(b)IL-7m、並びに
(c)相補的な第2のFc鎖
を含むか又はからなり、IL-7mは、好ましくはそのN末端が軽鎖のC末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている。第1のFc鎖及び第2のFc鎖は共に、二量体Fcドメインを形成する。
【0106】
特定の態様では、二機能性分子は、
- VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む1つの抗体重鎖、
- 特に免疫細胞表面上に発現されるPD-1に結合する抗PD-1抗原結合性ドメインを共に形成する、そのC末端でIL-7mに連結されているVL-CL(定常軽鎖)、VH-CH1部分、及びVL-CL部分を含む1つの抗体軽鎖、並びに
- CH2-CH3、任意選択でヒンジ-CH2-CH3を含み、抗体重鎖のCH2-CH3と共に二量体Fcドメインを形成する1つのFc鎖
を含む。
【0107】
IL-7m、抗PD1抗原結合性ドメイン、Fcドメイン及び任意選択でリンカーは、いずれの態様においても以下に更に規定の通りである。
【0108】
IL-7及びIL-7バリアント
IL-7mは、免疫細胞を刺激又は活性化することが可能である。免疫細胞は、B細胞、T細胞、特にCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、APC細胞、樹状細胞及び単球を含むその非網羅的リストにおいて選択することができる。好ましい態様では、免疫細胞はT細胞、より具体的にはCD8+ T細胞、エフェクターT細胞、又は疲弊T細胞である。特に好ましい態様では、免疫細胞は、エフェクターメモリー幹細胞様T細胞である。
【0109】
詳細には、IL-7mは、10kDaから50kDaの間に含まれるサイズを有する。好ましくは、IL-7mは、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質である。一態様では、IL-7mは、非抗体実体又は部分である。
【0110】
IL-7mは、生物活性が変更されるように、例えば生物活性が増加する、減少する、又は完全に阻害されるように変異されていてもよく、又は変更されていてもよい。
【0111】
非常に特定の態様では、IL-7mは、IL-7であるか、又は野生型サイトカインと少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する、又は付加、欠失、置換、及びその組合せからなる群から選択される1~10個の修飾を有するそのバリアントである。
【0112】
特定の態様では、IL-7バリアント又はその変異体は、配列番号1、又はそれと少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する配列、又は配列番号1の配列に関して付加、欠失、置換、及びその組合せからなる群から選択される1~10個の修飾を有する配列を含むか又はからなる。
【0113】
「インターロイキン-7変異体」、「変異型IL-7」、「IL-7変異体」、「IL-7バリアント」、「IL-7m」、又は「IL-7v」という用語は、本明細書では同義的に使用される。IL-7タンパク質の「バリアント」又は「変異体」は、1つ又は複数のアミノ酸が変更されているアミノ酸配列であると定義される。バリアントは、「保存的」修飾又は「非保存的」修飾を有していてもよい。そのような修飾としては、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を挙げることができる。好ましくは、修飾は、置換、特に保存的置換である。本発明内に含まれるバリアントIL-7タンパク質は、特に、野生型IL-7と比較して実質的に等価な生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を保持しないIL-7タンパク質に関する。IL-7タンパク変異体又は変異体は、少なくとも1つの変異を含む。特に、少なくとも1つの変異は、IL-7mのIL-7Rに対する親和性を減少させるが、IL-7R認識の喪失には結び付かない。したがって、IL-7変異体又はバリアントは、例えば、Bitarら、Front. Immunol.、2019年、10巻等に開示の通り、例えば、pStat5シグナルにより測定して、IL-7Rを活性化する能力を保持する。IL-7タンパク質の生物学的活性は、in vitro細胞増殖アッセイを使用して、又はELISA若しくはFACSでT細胞のP-Stat5を測定することにより測定することができる。好ましくは、本発明によるIL-7バリアントは、生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を、野生型IL-7、好ましくはwth-IL7と比較して、少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、100分の1、250分の1、500分の1、750分の1、1000分の1、2500分の1、5000分の1、又は8000分の1に低減させる。より好ましくは、IL-7バリアントは、IL-7受容体に対する結合の低減を示すが、IL-7Rを活性化する能力を保持する。例えば、IL-7受容体に対する結合は、野生型IL-7と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%低減されていてもよく、IL-7Rを活性化する能力を、野生型IL-7と比較して少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、又は20%保持する。好ましくは、IL-7mは、例えば、配列番号1に記載のもの等、ヒト野生型IL-7のバリアントである。
【0114】
一態様では、本発明によるIL-7バリアントは、野生型ヒトIL-7と比較して少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%の、好ましくは、野生型IL-7と比較して少なくとも80%、90%、95%、更により好ましくは99%の生物学的活性を維持する。
【0115】
一態様では、IL-7バリアント又は変異体は、i)IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を、IL-7Rに対するwt-IL-7の親和性と比較して低減させ、ii)IL7バリアントの薬物動態をwt-IL7と比較して向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異がwt-IL-7とは異なる。より詳細には、IL-7バリアント又は変異体は、特にpStat5シグナル伝達を介してIL-7Rを活性化する能力を更に保持する。
【0116】
別の態様では、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子は、i)IL-7受容体(IL-7R)に対する二機能性分子の親和性を、wt-IL-7を含む二機能性分子のIL-7Rに対する親和性と比較して低減させ、ii)IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を、wt-IL-7を含む二機能性分子と比較して向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異がwt-IL-7とは異なる。より詳細には、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子は、特にpStat5シグナル伝達を介してIL-7Rを活性化する能力を更に保持する。例えば、IL-7受容体に対する、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の結合は、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%低減されていてもよく、IL-7Rを活性化する能力を、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、又は20%保持する。
【0117】
本発明によると、IL-7mは、IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対する親和性の低減を示す。特に、IL-7mは、それぞれ、CD127及び/又はCD132に対するwth-IL-7の親和性と比較して、CD127及び/又はCD132に対する親和性の低減を示す。好ましくは、IL-7mは、CD127に対するwth-IL-7の親和性と比較して、CD127に対する親和性の低減を示す。
【0118】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対する、特にCD132又はCD127に対するIL-7mの親和性を、IL-7Rに対するwt-IL-7の親和性と比較して、少なくとも10分の1、100分の1、1000分の1、10000分の1、又は100000分の1に減少させる。そのような親和性比較は、ELISA又はBiacore等の、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0119】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対するIL-7mの親和性を減少させるが、特にpStat5シグナルにより測定して、IL-7mの生物学的活性を、IL-7 wtと比較して減少させない。
【0120】
或いは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対するIL-7mの親和性を減少させるが、特にpStat5シグナルにより測定して、IL-7mの生物学的活性をIL-7 wtと比較して著しくは減少させない。
【0121】
それに加えて又はその代わりに、IL-7mは、それぞれ、野生型IL-7又は野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアント若しくは変異体又はIL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる。特に、本発明によるIL-7mは、IL-7バリアントの薬物動態を、wth-IL-7と比較して、少なくとも10倍、100倍、又は1000倍向上させる。特に、本発明によるIL-7mは、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を、wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、少なくとも10倍、100倍、又は1000倍向上させる。薬物動態プロファイル比較は、例えば、実施例2に示されているように、薬物をin vivo注射し、複数時点で血清中薬物の投与量ELISA(dosage ELISA)を行うこと等、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「薬物動態」及び「PK」という用語は、同義的に使用され、生体生物に投与される化合物、物質、又は薬物の運命を指す。薬物動態は、特に、解放(つまり、組成物からの物質の放出)、吸収(つまり、血液循環への物質の進入)、分布(つまり、身体にわたる物質の分散又は拡散) 代謝(つまり、物質の変換又は分解)、及び排泄(つまり、生物からの物質の除去又はクリアランス)を表すADME又はLADMEスキームを含む。代謝及び排泄の2つの段階は、消失という表題下で一緒にグループ化することもできる。当業者であれば、中でも、消失半減期、消失定率(elimination constant rate)、クリアランス(つまり、単位時間当たりに薬物がクリアランスされる血漿の容積)、Cmax(最大血清中濃度)、及び薬物曝露(曲線下面積により決定される。Scheffら、Pharm Res. 2011年5月;28巻(5号):1081~9頁を参照)等、様々な薬物動態パラメーターをモニターすることができる。
【0123】
したがって、特に二機能性分子におけるIL-7mの使用による薬物動態の向上は、上記で言及されているパラメーターの少なくとも1つの向上を指す。好ましくは、向上は、二機能性分子の消失半減期の向上、つまり半減期持続期間又はCmaxの増加を指す。
【0124】
特定の態様では、IL-7mの少なくとも1つの変異は、IL-7 wtを含む二機能性分子と比較して、IL-7mを含む二機能性分子の消失半減期を向上させる。
【0125】
一態様では、IL-7mは、配列番号1に開示されているもの等、152個アミノ酸の野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)タンパク質と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。好ましくは、IL-7mは、配列番号1と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。
【0126】
特に、少なくとも1つの変異は、IL-7のアミノ酸74位及び/又は142位に生じる。それに加えて又はその代わりに、少なくとも1つの変異は、アミノ酸2位及び141位、34位及び129位、並びに/又は47位及び92位で生じる。こうした位置は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。
【0127】
特に、少なくとも1つの変異は、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、K81R、D74E、D74Q、並びにD74N、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換又はアミノ酸置換の群である。こうした変異は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。したがって、例えば、変異W142Hは、アミノ酸142位にヒスチジンを有するIL-7mを得るために、wth-IL7のトリプトファンをヒスチジンに置換することを表す。そのような変異体は、例えば、配列番号5に記載されている。
【0128】
特定の態様では、IL-7バリアントは、配列番号1のアミノ酸142位でPを除く任意のアミノ酸による置換を含む。そのような置換は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019144945A1号において試験されている。例えば、142位のWを、G、A、V、C、L、I、M、H、Y、又はFに置換することができる。任意選択で、置換は、W142G、W142A、W142V、W142C、W142L、W142I、W142M、W142H、W142Y及びW142Fからなる群から選択され得る。好ましい態様では、置換は、W142H、W142Y、及びW142Fからなる群から選択され、より詳細にはW142Hである。
【0129】
一態様では、IL-7mは、C2とC141との間、C47とC92との間、及びC34~C129の間のジスルフィド結合を破壊するために置換のセットを含む。特に、IL-7mは、C2とC141との間及びC47とC92との間;C2とC141との間及びC34~C129の間;又はC47とC92との間及びC34~C129の間のジスルフィド結合を破壊するために2セットの置換を含む。例えば、ジスルフィド結合形成を防止するために、システイン残基をセリンに置換してもよい。したがって、アミノ酸置換は、C2S-C141S及びC47S-C92S(「SS2」と称する)、C2S-C141S及びC34S-C129S(「SS1」と称する)、及びC47S-C92S及びC34S-C129S(「SS3」と称する)からなる群から選択することができる。こうした変異は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7mは、配列番号2~4(それぞれ、SS1、SS2、及びSS3)に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7mは、アミノ酸置換C2S-C141S及びC47S-C92Sを含む。更により好ましくは、IL-7mは、配列番号3に示されている配列を示す。
【0130】
別の態様では、IL-7mは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。そのようなIL-7mは、それぞれ配列番号5~7に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7mは、変異W142Hを含む。更により好ましくは、IL-7mは、配列番号5に示されている配列を示す。
【0131】
別の態様では、IL-7mは、D74E、D74Q、及びD74N、好ましくはD74E及びD74Qからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。そのようなIL-7mは、それぞれ配列番号12~14に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7mは、変異D74Eを含む。更により好ましくは、IL-7mは、配列番号12に示されている配列を示す。
【0132】
別の態様では、IL-7mは、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/又はK81Rからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。こうした変異は、配列番号1に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7mは、それぞれ、配列番号8、9、10、11、及び15に示されている配列に具体的に記載されている。
【0133】
一態様では、IL-7mは、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はiii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異を含む。
【0134】
一態様では、IL-7mは、W142H置換と、i)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含む。
【0135】
一態様では、IL-7mは、D74E置換と、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含む。
【0136】
一態様では、IL-7mは、変異C2S-C141S及びC47S-C92Sと、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、及び/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Qからなる少なくとも1つの置換とを含む。
【0137】
一態様では、IL-7mは、i)D74E及びW142H置換、並びにii)変異C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、又はC47S-C92S及びC34S-C129Sを含む。
【0138】
IL-7mタンパク質は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく又はそれを欠いていてもよい。また、IL-7のバリアントは、IL-7の変更されたポリペプチド配列(例えば、酸化形態、還元形態、脱アミノ形態、又は短縮形態)を含んでいてもよい。
【0139】
一態様では、本発明に使用されるIL-7バリアント又は変異体は、組換えIL-7である。「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドが、組換え発現系から、つまり宿主細胞(例えば、微生物又は昆虫又は植物又は哺乳動物)の培養から、又はIL-7mポリペプチドをコードする核酸分子を含有するように遺伝子操作されたトランスジェニック植物又は動物から得られるか又は由来することを意味する。好ましくは、組換えIL-7は、ヒト組換えIL-7m(例えば、組換え発現系で産生されるヒトIL-7m)である。
【0140】
一態様では、IL-7mは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15に示されている配列を示す。好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号2~15に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。更により好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号2に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。
【0141】
更により好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号3、5、又は12に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。
【0142】
一態様では、本発明は、特に、免疫応答を刺激する可能性のある、IL-7内のT細胞エピトープを除去することにより、野生型IL-7タンパク質と比較して免疫原性の低下を示すIL-7バリアントを含む二機能性分子を提供する。そのようなIL-7の例は、国際公開第2006061219号に記載されている。
【0143】
また、本発明は、本明細書に開示の通りのIL-7バリアント又は変異体を含む任意の融合タンパク質に関する。IL-7バリアント又は変異体は、N末端又はC末端が融合されていてもよい。
【0144】
本発明は、特にIL-7m、抗PD-1結合ドメイン、及びFc断片、及び任意選択でペプチドリンカーを含む二機能性分子を提供する。
【0145】
特に、Fcドメインは、好ましくは、本明細書の上記に開示の通りのペプチドリンカーにより、IL-7に共有結合でコンジュゲートされている(例えば、遺伝子融合又は化学的カップリングにより)。
【0146】
特に、IL-7mとFcドメインとのコンジュゲーションは、直接的若しくは非直接的な(つまり、リンカーを介した)共有結合、及び/又は化学的、酵素的、若しくは遺伝子的である。コンジュゲーションは、当技術分野で公知の任意の許容可能な結合手段により実施することができる。したがって、この点に関して、カップリングは、生理学的媒体中で又は細胞内で切断可能又は切断不能な、1つ又は複数の共有結合、イオン結合、水素結合、疎水性結合、又はファンデルワールス結合により実施することができる。
【0147】
特に、化学的コンジュゲーションは、露出したスルフヒドリル基(Cys)、親和性タグ(例えば、6ヒスチジン、Flagタグ、Strepタグ、SpyCatcher等)とFcドメイン若しくはIL7-mのいずれかとの付着、又はクリックケミストリーコンジュゲーションのための非天然アミノ酸若しくは化合物の組み込みにより実施することができる。
【0148】
好ましい実施形態では、コンジュゲーションは、遺伝子融合により(つまり、結合性部分及びIL-7をコードする遺伝子融合物としての核酸構築物を好適な系で発現させることにより)得られる。一態様では、本発明は、免疫グロブリン(Ig)鎖、特にFcドメインを含む第1の部分、及びインターロイキン-7(IL-7)を含む第2の部分を含む融合タンパク質を特徴とする。
【0149】
IL-7変異体の入手は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2020/12377号に詳細に記載されている。
【0150】
免疫細胞上でPD-1を標的とする抗原結合性ドメイン
本発明によると、抗原結合性ドメインは、特に免疫細胞表面上に発現されるPD-1に特異的に結合する。特に、抗原結合性ドメインは、腫瘍細胞上で発現される標的に対するものでない。
【0151】
本明細書で使用される場合、「抗原結合性ドメイン」という表現は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、及び抗体等の、PD-1を結合する能力を有する任意の部分に関する。特に、そのような用語の例としては、抗体又はその抗原結合性断片並びに抗体模倣物又は抗体ミメティックが挙げられる。
【0152】
一実施形態では、「抗原結合性ドメイン」は、抗体又はその断片並びに抗体模倣物又は抗体ミメティックからなる群から選択される。生化学分野の当業者であれば、Gebauer及びSkerra、2009年、Curr Opin Chem Biol 13巻(3号): 245~255頁で考察されている通りの抗体模倣物又は抗体ミメティックに精通している。抗体模倣物の例としては、以下のものが挙げられる:アフィボディ(トリネクチンとも呼ばれる;Nygren、2008年、FEBS J、275巻、2668~2676頁;CTLD(テトラネクチンとも呼ばれる;Innovations Pharmac. Technol.(2006年)、27~30頁);アドネクチン(adnectin)(モノボディとも呼ばれる;Meth、Mol. Biol.、352巻(2007年)、95~109頁);アンチカリン(Drug Discovery Today (2005年)、10巻、23~33頁);DARPins(アンキリン;Nat. Biotechnol. (2004年)、22巻、575~582頁);アビマー(Nat. Biotechnol.(2005年)、23巻、1556~1561頁);ミクロボディ(FEBS J、(2007年)、274巻、86~95頁);アプタマー(Expert. Opin. Biol. Ther.(2005年)、5巻、783~797頁);クニッツドメイン(J. Pharmacol. Exp. Ther.(2006年)318巻、803~809頁);アフィリン(Trends. Biotechnol.(2005年)、23巻、514~522頁);アフィチン(Krehenbrinkら、2008年、J. Mol. Biol. 383巻(5号):1058~68頁)、アルファボディ(alfabody)(Desmet, J.ら、2014年、Nature Communications.5巻:5237頁)、フィノマー(fynomer)(Grabulovski Dら、2007年、J Biol Chem.282巻(5号):3196~3204頁)、及びアフィマー(Avacta Life Sciences、ウェザビー、英国)。
【0153】
好ましくは、抗原結合性ドメインは、抗体断片である。更により好ましくは、抗原結合性ドメインは、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗原結合性断片である。
【0154】
抗原結合性ドメインの「結合能力」に関して、「結合する」又は「結合」という用語は、別のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は分子、特にPD-1を認識し、それらと接触する抗体断片及び誘導体を含む抗体を指す。特定の標的に関して、「特異的結合」、「特異的に結合する」、「に特異的な」、「選択的に結合する」、及び「に選択的な」という用語は、抗原結合性ドメインが、特異的な標的を認識してそれと結合するが、試料内の他の分子を実質的に認識せず結合もしないことを意味する。例えば、抗原に特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他の分子との結合よりも、この抗原に、例えば、より高い親和性で、結合力で、より容易に、及び/又はより長期間にわたって結合する抗体又は抗原結合性ドメインである。好ましくは、「特異的結合」という用語は、10-7Mと等しいか又はそれよりも低い結合親和性を有する、抗体又は抗原結合性ドメインとの間の接触を意味する。ある特定の態様では、抗体又は抗原結合性ドメインは、10-8M、10-9M、又は10-10Mと等しいか又はそれよりも低い親和性で結合する。
【0155】
任意選択で、抗原結合性ドメインは、Fabドメイン、Fab'、単鎖可変断片(scFV)、又は単一ドメイン抗体(sdAb)であってもよい。抗原結合性ドメインは、好ましくは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0156】
抗原結合性ドメインがFab又はFab'である場合、二機能性分子は、1つの重鎖定常ドメイン及び1つの軽鎖定常ドメイン(つまり、CH及びCL)を含み、重鎖はそのC末端でIL-7mに連結されている。
【0157】
一態様では、PD-1は、健康な対象、又は疾患、特にがん等に罹患している対象の免疫細胞により特異的に発現される。これは、PD-1が、他の細胞よりも免疫細胞でより高い発現レベルを示すこと、又はPD-1を発現する免疫細胞の、全ての免疫細胞に対する比が、PD-1を発現する他の細胞の、全ての他の細胞に対する比よりも高いことを意味する。好ましくは、発現レベル又は比は、2、5、10、20、50、又は100倍高い。発現レベル又は比は、より具体的には、特定のタイプの免疫細胞、例えばT細胞、より具体的にはCD8+ T細胞、エフェクターT細胞、若しくは疲弊T細胞について、又は特定の文脈では、例えば、がん若しくは感染症等の疾患に罹患している対象について決定することができる。
【0158】
「免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球細胞(白血球)、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びナチュラルキラーT細胞(NKT))、及び骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)等の、自然免疫及び適応免疫に関与する細胞を指す。特に、免疫細胞は、B細胞、T細胞、特にCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、APC細胞、マクロファージ、樹状細胞、並びに単球を含む非網羅的リストにおいて選択することができる。
【0159】
好ましくは、抗原結合性ドメインは、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー、樹状細胞、単球、及び自然リンパ球(ILC)からなる群から選択される免疫細胞により発現されるPD-1に特異的に結合する。
【0160】
更により好ましくは、免疫細胞はT細胞である。「T細胞」又は「Tリンパ球」としては、本明細書で使用される場合、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、T制御性細胞(T regulator)、Tヘルパー17型T細胞、及び阻害性T細胞が挙げられる。非常に特定の態様では、免疫細胞は、疲弊T細胞である。
【0161】
特定の態様では、免疫細胞はエフェクターメモリー幹細胞様T細胞である。
【0162】
特定の態様では、免疫細胞は、疲弊T細胞又はエフェクターメモリー幹細胞様T細胞であり、PD-1は、疲弊T細胞又はエフェクターメモリー幹細胞様T細胞の表面上に発現される。T細胞疲弊は、T細胞が、機能、増殖能力、及び細胞傷害能力を進行性に喪失する状態であり、それにより最終的には自身の除去がもたらされる。T細胞疲弊は、持続的な抗原曝露、又はPD-1を含む阻害性受容体等の幾つかの要因により誘発され得る。
【0163】
好ましい態様では、抗原結合性ドメインは、PD-1に対してアンタゴニスト活性を有する。
【0164】
当技術分野では、PD-1に対する抗体が既に数多く記載されている。当業者は、その配列に基づいて公知の抗体から単一の抗原結合性ドメインを作製する方法を承知している。
【0165】
幾つかの抗PD-1は既に臨床的に承認されており、他のものは依然として臨床開発中である。例えば、抗PD1抗体は、以下のものからなる群から選択することができる:ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、ニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)、ピジリズマブ(CT-011)、セミプリマブ(Libtayo)、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317(チスレイズマブ(Tisleizumab))、PDR001(スパルタリズマブ)、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゲノリムズマブ(genolimzumab)(CBT-501)、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103(HX-008)、MEDI-0680(AMP-514としても知られている)、MEDI0608、JS001(Si-Yang Liuら、J. Hematol. Oncol.10巻:136頁(2017年)を参照)、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210(SHR-1210としても知られている)、TSR-042(ANB011としても知られている)、GLS-010(WBP3055としても知られている)、AM-0001(Armo社)、STI-1110(国際公開第2014/194302号を参照)、AGEN2034(国際公開第2017/040790号を参照)、MGA012(国際公開第2017/19846号を参照)、又はIBI308(国際公開第2017/024465号、国際公開第2017/025016号、国際公開第2017/132825号、及び国際公開第2017/133540号を参照)、国際公開第2006/121168号に記載のモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4。PD-1を標的とする二機能性又は二重特異性分子は、RG7769(Roche社)、XmAb20717(Xencor社)、MEDI5752(AstraZeneca社)、FS118(F-star社)、SL-279252(Takeda社)、及びXmAb23104(Xencor社)等も知られている。特に、PD-1を標的とする抗原結合性ドメインは、このリストにおいて選択される抗PD1抗体の6つのCDR又はVH及びVLを含む。そのような抗原結合性ドメインは、特に、この抗体に由来するFab又はsvFcドメインであってもよい。好ましい態様では、PD-1を標的とする抗原結合性ドメインは、ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られる)又はニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)から選択される抗PD1抗体の6つのCDR又はVH及びVLを含み、例えば、Fab又はscFcドメインであってもよい。
【0166】
特定の態様では、抗原結合性ドメインが由来する抗PD1抗体は、ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、又はニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)であり得る。
【0167】
特に、標的はPD-1であり、二機能性分子の抗原結合性ドメインは、PD-1に対して特異的である抗体、その断片若しくは誘導体、又は抗体模倣物である。次に、特定の態様では、本発明による二機能性分子に含まれる抗原結合性ドメインは、抗PD1抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、又はキメラ抗PD1抗体又はその抗原結合性断片に由来する。好ましくは、抗原結合性ドメインはPD-1のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に及ぼすIL-7バリアント又は変異体の効果と、PD-1の阻害効果の遮断とを組合せ、T細胞、特に疲弊T細胞の活性化、より詳細にはTCRシグナル伝達に対して相乗効果を有し得る。好ましくは、抗原結合性ドメインは、PD-1のアンタゴニストである。
【0168】
本開示の非常に特定の態様では、抗原結合性ドメインは、PD-1を標的とし、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2020/127366号に開示される抗体に由来する。
【0169】
したがって、抗原結合性ドメインは、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号51のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号51の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号53のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号53の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号54のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号54の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号63のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号63の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号66のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1、4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0170】
一態様では、抗原結合性ドメインは、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号51のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号51の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号53のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号53の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号54のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択されるか、又はX1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択されるかのいずれかであり、任意選択で、配列番号54の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号63のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号63の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号66のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1、4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0171】
別の実施形態では、抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64、配列番号65又は配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16又は配列番号90のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。
【0172】
別の実施形態では、抗原結合性ドメインは、配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;及び(ii)配列番号64又は配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。
【0173】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号56のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号57のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号58のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号59のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号60のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号62のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号64のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号56のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号57のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号58のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号59のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号60のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号62のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖
を含むか又はから本質的になる。
【0174】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2及び配列番号55のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2及び配列番号56のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2及び配列番号57のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2及び配列番号58のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2及び配列番号59のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2及び配列番号60のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2及び配列番号90のCDR3を含む軽鎖
を含むか又はから本質的になる。
【0175】
一態様では、本発明による抗PD1抗原結合性断片は、フレームワーク領域、特に重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4、並びに軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4を含む。
【0176】
好ましくは、本発明による抗PD1抗原結合性断片は、ヒトフレームワーク領域又はヒト化フレームワーク領域を含む。「ヒトアクセプターフレームワーク」は、本明細書の目的では、下記で規定されている通りの、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来するヒトアクセプターフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列変化を含有してもよい。一部の実施形態では、アミノ酸変化の数は、10個若しくはそれよりも少ないか、9個若しくはそれよりも少ないか、8個若しくはそれよりも少ないか、7個若しくはそれよりも少ないか、6個若しくはそれよりも少ないか、5個若しくはそれよりも少ないか、4個若しくはそれよりも少ないか、3個若しくはそれよりも少ないか、又は2個若しくはそれよりも少ない。一部の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。
【0177】
特に、抗PD1抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号41、42、43、及び44のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4を含み、任意選択で、HFR3の、つまり配列番号43の27、29、及び32位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。好ましくは、抗PD1抗原結合性断片は、配列番号41のHFR1、配列番号42のHFR2、配列番号43のHFR3、及び配列番号44のHFR4を含む。
【0178】
特定の実施形態では、抗PD1抗原結合性断片は、配列番号:i)45、46、47及び48、ii)91、92、93、及び94、又はiii)95、96、97、及び98のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4を含む。好ましくは、ヒト化抗PD1抗原結合性断片は、配列番号45、91、又は95のLFR1、配列番号46、92、又は96のLFR2、配列番号47、93、又は97のLFR3、及び配列番号48、94又は98のLFR4を含む。
【0179】
或いは又はそれに加えて、抗PD1抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号45、46、47、及び48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4を含み、任意選択で、置換、追加、削除、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。好ましくは、ヒト化抗PD1抗原結合性断片は、配列番号45のLFR1、配列番号46のLFR2、配列番号47のLFR3、及び配列番号48のLFR4を含む。
【0180】
或いは又はそれに加えて、抗PD1抗原結合性断片は、配列番号:91、92、93及び94のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4を含む。好ましくは、ヒト化抗PD1抗原結合性断片は、配列番号91のLF1、配列番号92のLFR2、配列番号93のLFR3、及び配列番号94のLFR4を含む。好ましくは、そのようなフレームワークは、配列番号89のCDR1、配列番号66のCDR2、配列番号90のCDR3と関連し、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0181】
或いは又はそれに加えて、抗PD1抗原結合性断片は、配列番号95、96、97及び98のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4を含む。好ましくは、ヒト化抗原結合性断片は、配列番号95のLFR1、配列番号96のLFR2、配列番号97のLFR3、及び配列番号98のLFR4を含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0182】
本発明による二機能性分子に含まれる抗原結合性ドメインのVLドメイン及びVHドメインは、好ましくは、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(アミノ末端からカルボキシ末端に)で作動可能に連結している、3つの相補性決定領域により隔てられている4つのフレームワーク領域を含んでいてもよい。
【0183】
一態様では、抗原結合性ドメインは、以下のものを含むか又はから本質的になる:
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0184】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、
(a)任意選択で、配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のそれぞれ、7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する、配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);
(b)任意選択で、配列番号27又は配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する、配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はから本質的になる。
【0185】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、
(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH)、
(b)配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はから本質的になる。
【0186】
一態様では、二機能性分子は、フレームワーク領域、特に重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3及びHFR4並びに軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4、特に配列番号41、42、43及び44のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択でHER3、つまり配列番号43の27、29、及び32位を除く任意の位置で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有するHFR1、HFR2、HFR3及びHFR4を含む。好ましくは、二機能性分子は、配列番号41のHFR1、配列番号42のHFR2、配列番号43のHFR3、及び配列番号44のHFR4を含む。それに加えて、二機能性分子は、配列番号45、46、47及び48のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4を含み得る。好ましくは、二機能性分子は、配列番号45のLFR1、配列番号46のLFR2、配列番号47のLFR3、及び配列番号48のLFR4を含む。或いは、二機能性分子は、配列番号91、92、93及び94のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4を含み得る。好ましくは、二機能性分子は、配列番号91のLFR1、配列番号92のLFR2、配列番号93のLFR3、及び配列番号94のLFR4を含む。或いは、二機能性分子は、配列番号95、96、97及び98のアミノ酸配列をそれぞれ含み、任意選択で置換、付加、欠失、及びその任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4を含み得る。好ましくは、二機能性分子は、配列番号95のLFR1、配列番号96のLFR2、配列番号97のLFR3、及び配列番号98のLFR4を含む。
【0187】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、Table D(表4)及びE(表5)に記載されるVH及びVLの任意の組合せを含むか又はから本質的になる。
【0188】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の以下の組合せのいずれかを含むか又はから本質的になる。
【0189】
【表4】
【0190】
非常に特定の態様では、抗原結合性ドメインは、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。
【0191】
別の態様では、抗原結合性ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の以下の組合せのいずれかを含むか又はから本質的になる:
【0192】
【表5】
【0193】
ペプチドリンカー
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、抗原結合性ドメイン及びIL-7mをFc鎖に接続するためのペプチドリンカーを更に含む。ペプチドリンカーは、通常、IL-7m及びその間がリンカーで接続されている抗原結合性ドメインが、それらの機能を発揮するのに十分な空間的自由度を有することを保証するのに十分な長さ及び可撓性を有する。
【0194】
本開示の一態様では、IL-7mは、好ましくはペプチドリンカーを通してFc鎖に連結されている。本開示の一態様では、抗原結合性ドメインを、VHドメイン、特にCH1ドメインをFc鎖のCH2ドメインに接続するために重鎖において天然に見られるヒンジによりFc鎖に連結することができる。
【0195】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸の配列を指す。そのようなリンカーは、立体障害の防止に有用であり得る。リンカーは、通常、長さが3~44個のアミノ酸残基である。好ましくは、リンカーは、3~30個のアミノ酸残基を有する。一部の態様では、リンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸残基を有する。
【0196】
リンカー配列は、天然に存在する配列であってもよく又は天然に存在しない配列であってもよい。療法目的で使用される場合、リンカーは、好ましくは、二機能性分子が投与される対象において非免疫原性である。リンカー配列の1つの有用な群は、国際公開第96/34103号及び国際公開第94/04678号に記載の通りの、重鎖抗体のヒンジ領域に由来するリンカーである。他の例は、ポリアラニンリンカー配列である。リンカー配列の更に好ましい例は、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)2、Gly4Ser、Gly3Ser、Gly3、Gly2ser、及び(Gly3Ser2)3、特に(Gly4Ser)3を含む、様々な長さのGly/Serリンカーである。好ましくは、リンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択される。更により好ましくは、リンカーは(GGGGS)3である。
【0197】
一態様では、二機能性分子に含まれるリンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)2、Gly4Ser、Gly3Ser、Gly3、Gly2ser、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択され、好ましくは(Gly4Ser)3である。好ましくは、リンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択される。
【0198】
Fcドメイン
二機能性分子のFcドメインは、抗原結合性ドメインの一部であり、特にIgG免疫グロブリンの重鎖である。実際に、抗原結合性ドメインがFabである場合、二機能性分子は、可変重鎖(VH)、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含む1つの重鎖を含み得る。しかしながら、二機能性分子はまた、他の構造、例えばscFv、又はダイアボディも有し得る。例えば、これは、抗原結合性ドメインに連結されたFcドメインを含み得る。
【0199】
Fcドメインは、ヒト免疫グロブリン重鎖、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他のクラスの重鎖定常ドメインに由来し得る。好ましくは、二機能性分子は、IgG1又はIgG4重鎖定常ドメインを含む。
【0200】
好ましくは、Fcドメインは、CH2及びCH3ドメインを含む。任意選択で、これは、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及び/又はCH3ドメインの全て又は一部を含み得る。一部の態様では、CH2及び/又はCH3ドメインは、ヒトIgG4又はIgG1重鎖に由来する。好ましくは、Fcドメインは、ヒンジ領域の全て又は一部を含む。ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他のクラスに由来し得る。好ましくは、ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に由来する。より好ましくは、ヒンジ領域は、ヒト又はヒト化IgG1又はIgG4重鎖に由来する。
【0201】
IgG1ヒンジ領域は3つのシステインを有し、そのうちの2つは、免疫グロブリンの2つの重鎖間のジスルフィド結合に関与している。こうした同じシステインは、Fc部分間の効率的で一貫したジスルフィド結合形成を可能にする。したがって、本発明の好ましいヒンジ領域は、IgG1、より好ましくはヒトIgG1に由来する。一部の態様では、ヒトIgG1ヒンジ領域内の第1のシステインは、別のアミノ酸、好ましくはセリンに変異されている。
【0202】
IgG4のヒンジ領域は、鎖間ジスルフィド結合の形成が非効率的であることが知られている。しかしながら、本発明の好適なヒンジ領域は、IgG4ヒンジ領域に由来してもよく、好ましくは、重鎖由来部分間のジスルフィド結合の正しい形成を増強する変異を含有する(Angal Sら(1993年)Mol. Immunol.、30巻:105~8頁)。より好ましくは、ヒンジ領域はヒトIgG4重鎖に由来する。
【0203】
二機能性分子は、二量体Fcドメインを含む。したがって、2つの単量体は各々1つのFc鎖を含み、Fc鎖は二量体Fcドメインを形成することができる。二量体Fcドメインは、ホモ二量体であり得て、各々のFc単量体は同一又は本質的に同一である。或いは、二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体であり得て、各々のFc単量体は、ヘテロ二量体Fcドメインの形成を促進するために、異なるが相補的である。
【0204】
より具体的には、Fcドメインはヘテロ二量体Fcドメインである。ヘテロ二量体Fcドメインは、各単量体のアミノ酸配列を変更することにより製作される。ヘテロ二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体の形成が促進され、及び/又はホモ二量体よりもヘテロ二量体の精製が容易になるように、定常領域におけるアミノ酸バリアントが各鎖で異なることに依存する。本発明のヘテロ二量体を生成するために使用することができる少なからぬ機序が存在する。加えて、当業者であれば理解することになるように、そうした機序を組み合わせて、高度なヘテロ二量体化を保証することができる。したがって、ヘテロ二量体の産生に結び付くアミノ酸バリアントは、「ヘテロ二量体化バリアント」と呼ばれる。ヘテロ二量体化バリアントとしては、立体的バリアント(例えば、下記に記載の「ノブアンドホール(knobs and holes)」バリアント又は「スキュー(skew)」バリアント、及び下記に記載の「電荷対」バリアント)、並びにホモ二量体をヘテロ二量体から分離して精製することを可能にする「パイバリアント(pi variant)」を挙げることができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/145806号には、「ノブアンドホール」バリアント、「静電ステアリング(electrostatic steering)」バリアント、又は「電荷対」バリアント、パイバリアント、及び一般的な追加のFcバリアントを含む、ヘテロ二量体化のための有用な機序が開示されている。Ridgwayら、Protein Engineering 9巻(7号):617頁(1996年);Atwellら、J. Mol. Biol.1997年、270巻:26頁;米国特許第8,216,805号、Merchantら、Nature Biotech.16巻:677頁(1998年)も参照されたい。これら文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。「静電ステアリング」については、Gunasekaranら、J. Biol. Chem.285巻(25号):19637頁(2010年)を参照されたい。この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。パイバリアントについては、米国特許出願公開第2012/0149876号を参照されたい。この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0205】
したがって、好ましい態様では、ヘテロ二量体Fcドメインは、「ノブアンドホール」技術に基づく、第1のFc鎖及び相補的な第2のFc鎖を含む。例えば、第1のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖であり、これは第1のFc鎖がノブ鎖を特徴付ける置換を含むことを意味し、第2のFc鎖は「ホール鎖」又はH鎖であり、これは第2のFc鎖がホール鎖を特徴付ける置換を含むことを意味する。その逆も同様であり、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、これは第1のFc鎖がホール鎖を特徴付ける置換を含むことを意味し、第2のFc鎖は「ノブ鎖」又はK鎖であり、これは第2のFc鎖がノブ鎖を特徴付ける置換を含むことを意味する。好ましい態様では、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、第2のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖である。
【0206】
任意選択で、ヘテロ二量体Fcドメインは、以下のTable F(表6)に示される置換を含む1つのヘテロ二量体Fc鎖、及び以下のTable F(表6)に示される置換を含む他方のヘテロ二量体Fc鎖を含み得る。
【0207】
【表6】
【0208】
好ましい態様では、第1のFc鎖は「ホール」鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349Cを含み、第2のFc鎖は「ノブ」鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354Cを含む。
【0209】
任意選択で、Fc鎖は、追加の置換を更に含んでいてもよい。
【0210】
特に、細胞表面分子、特に免疫細胞上の細胞表面分子を標的とする二機能性分子に関して、エフェクター機能を無効にすることが必要であり得る。Fc領域を操作することもまた、二機能性分子のエフェクター機能を低減させる又は増加させるために望ましい可能性がある。
【0211】
ある特定の態様では、アミノ酸改変を、Fc領域に導入してFc領域バリアントを作製してもよい。ある特定の態様では、Fc領域バリアントは、エフェクター機能の全てではないが一部を保有する。そのような二機能性分子は、例えば抗体のin vivo半減期が重要であるが、なおある特定のエフェクター機能は不要であるか又は有害である応用では有用であり得る。数多くの置換、又はエフェクター機能を変更する置換若しくは欠失が、当技術分野で公知である。
【0212】
一態様では、Fcドメインの定常領域は、Fc受容体に対する親和性を低減させるか、又はFcエフェクター機能を低減させる変異を含有する。例えば、定常領域は、IgG重鎖の定常領域内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有してもよい。好ましくは、CH2ドメインは、CH2ドメイン内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有する。
【0213】
特定の態様では、Fcドメインは、FcRnへの結合を増加させ、それにより二機能性分子の半減期を増加させるように修飾されている。別の態様では又は追加の態様では、Fcドメインは、FcγRに対する結合を減少させ、それによりADCC又はCDCを低減させるか、又はFcγRに対する結合を増加させ、それによりADCC又はCDCを増加させるように修飾されている。
【0214】
Fc部分及び非Fc部分の接合部付近のアミノ酸の変更は、国際公開第01/58957号に示されているように、Fc融合タンパク質の血清半減期を劇的に増加させることができる。したがって、本発明のタンパク質又はポリペプチドの接合領域は、免疫グロブリン重鎖及びエリスロポエチンの天然に存在する配列と比べて、好ましくは、接合点の約10個アミノ酸以内に入る変更を含有してもよい。こうしたアミノ酸変化は、疎水性の増加を引き起こす場合がある。一実施形態では、定常領域は、C末端リジン残基が置き換えられているIgG配列に由来する。好ましくは、IgG配列のC末端リジンは、血清半減期を更に増加させるために、アラニン又はロイシン等の非リジンアミノ酸に置き換えられている。
【0215】
一実施形態では、Fcドメインの定常領域は、以下のTable G(表7)に記載される変異の1つ、又はその任意の組合せを有する。
【0216】
【表7A】
【0217】
【表7B】
【0218】
特定の態様では、二機能性分子は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;P329G;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せ、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及び任意選択でP329Gと組み合わせたL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン又はIgG1 Fcドメインを含む。
【0219】
特定の態様では、二機能性分子は、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;P329G;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A、K444A、K444E、K444D、K444G、K444S、M428L、L309D、Q311H、N434S、M428L+N434S及びL309D+Q311H+N434Sからなる群から選択される、好ましくはM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A及び任意選択でP329Gと組み合わせたL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン又はIgG1 Fcドメインを含む。
【0220】
置換L234A/L235A/P329Gの組合せを有するヒトIgG1重鎖定常ドメイン又はIgG1 Fcドメインを含む二機能性分子は、前記二機能性分子により引き起こされるADCC、ADCP及び/又はCDCを大きく低減させるか、又は完全に抑制し、このように非特異的細胞傷害性を低減させる。
【0221】
別の態様では、二機能性分子は、S228P;L234A/L235A;P329G、S228P+M252Y/S254T/T256E及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するヒトIgG4重鎖定常ドメイン又はヒトIgG4 Fcドメインを含む。更により好ましくは、二機能性分子、好ましくは本発明による二機能性分子は、IgG4を安定化させるS228Pを有するIgG4 Fc領域を含む。
【0222】
別の態様では、二機能性分子は、S228P;L234A/L235A;L234A/L235A/P329G、P329G、S228P+M252Y/S254T/T256E、K444A K444E、K444D、K444G及びK444Sからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するヒトIgG4重鎖定常ドメイン又はヒトIgG4 Fcドメインを含む。更により好ましくは、二機能性分子、好ましくは本発明による二機能性分子は、IgG4を安定化させるS228Pを有するIgG4 Fc領域を含む。
【0223】
本明細書で言及するように、「/」及び「+」は、累積的である変異を指す。このように、変異S228P+M252Y/S254T/T256Eとは、以下の変異: S228P、M252Y、S254T及びT256Eを意味する。
【0224】
置換P329Gを有するヒトIgG4重鎖定常ドメイン又はIgG4 Fcドメインを含む二機能性分子は、前記二機能性分子により引き起こされるADCC及び/又はCDCを低減し、このように非特異的細胞傷害性を低減する。
【0225】
ヒトIgGのサブクラスは全て、循環中で切断され易い、抗体重鎖のC末端リジン残基(K444)を有する。血液中のこの切断は、連結されたIL-7mを二機能性分子に放出することにより、二機能性分子の生物活性を損ない得るか、又は減少させ得る。
【0226】
この問題を回避するために、IgGドメインにおけるK444アミノ酸を、一般的に抗体で使用される変異である別のアミノ酸に置換してタンパク質分解切断を低減することができる。次に、一態様では、二機能性分子は、K444A、K444E、K444D、K444G、又はK444Sからなる少なくとも1つの更なるアミノ酸置換、優先的にK444Aを含む。
【0227】
詳細には、IgGドメインにおけるK444アミノ酸を、一般的に抗体で使用される変異であるアラニンに置換してタンパク質分解切断を低減させることができる。次に、一態様では、二機能性分子は、K444Aからなる少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を含む。
【0228】
任意選択で、二機能性分子は、FcドメインのC末端ドメインで追加のシステイン残基を含み、追加のジスルフィド結合を作製し、おそらく二機能性分子の可撓性を制限する。
【0229】
一態様では、二機能性分子は、特に以下のTable H(表8)に開示されるように、配列番号39若しくは52の1つの重鎖定常ドメイン、及び/又は配列番号40の1つの軽鎖定常ドメイン、特に配列番号39若しくは52の1つの重鎖定常ドメイン又はFcドメイン、及び配列番号40の1つの軽鎖定常ドメインを含む。
【0230】
【表8】
【0231】
1つの特定の態様では、本発明による二機能性分子は、本明細書に記載されるような「ノブイントゥホール」修飾を含むFcドメインのヘテロ二量体を含む。好ましくはそのようなFcドメインは、本明細書に記載されるようなIgG1又はIgG4 Fcドメインであり、更により好ましくは上記で開示されたような変異N297Aを含むIgG1 Fcドメインである。
【0232】
例えば、第1のFc鎖は、「ホール」鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及び任意選択でN297Aを含み、第2のFc鎖は、「ノブ鎖」又はK鎖であり、置換T366W/S354C及び任意選択でN297Aを含む。好ましくは、第1のFc鎖は、「ホール鎖」又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及びN297Aを含み、第2のFc鎖は、「ノブ鎖」又はK鎖であり、置換T366W/S354C及びN297Aを含む。より詳細には、第2のFc鎖は、配列番号75を含み得るか若しくはからなり得て、及び/又は第1のFc鎖は、配列番号77を含み得るか若しくはからなり得る。
【0233】
より具体的には、本発明によるIL-7mは、ヘテロ二量体Fcドメインのノブ鎖及び/又はホール鎖に連結される。このように、本発明による二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖又はノブ鎖のいずれかに連結された単一のIL-7mを含み得る。好ましくは、本発明による二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖に連結された単一のIL-7mを含む。
【0234】
第1の態様では、二機能性分子は、Fcドメインのノブ鎖のC末端に連結されたIL-7mを含み、そのようなFcドメインのノブ鎖は、抗原結合性ドメインに連結されている。
【0235】
第2の態様では、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のC末端に連結されたIL-7mを含み、そのようなFcドメインのホール鎖は、そのN末端で抗原結合性ドメインに連結されている。
【0236】
任意選択で、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のC末端に連結された単一のIL-7mを含み、二機能性分子は、Fcドメインのホール鎖のN末端に連結された単一の抗原結合性ドメインのみを含む。そのような態様では、ノブ鎖ドメインは、抗原結合性ドメインのIL-7mを欠いている。
【0237】
任意選択で、二機能性分子は、Fcドメインのノブ鎖のC末端に連結された単一のIL-7mを含み、二機能性分子は、Fcドメインのノブ鎖のN末端に連結された単一の抗原結合性ドメインのみを含む。そのような態様では、ホール鎖ドメインは、IL-7m及び抗原結合性ドメインを欠いている。
【0238】
したがって、本発明の目的は、N末端からC末端へと、抗原結合性ドメイン(又は重鎖に対応する少なくともその一部)、Fc鎖(ノブFc鎖又はホールFc鎖)、好ましくはFcドメインのホール鎖、及びIL7mを含むポリペプチドに関する。相補的鎖は、IL-7m及び抗原結合性ドメインを欠く相補的なFc鎖、好ましくはFcドメインのノブ鎖を含む。
【0239】
非常に特定の態様では、二機能性分子はPD-1を標的とし、以下を含む:
(a)配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、それぞれ、配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖であって、置換は、ホール鎖又はノブ鎖、好ましくはホール鎖に対応し、より具体的には、Table F(表6)に開示の通りであり、特に配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36における、T363S/L365A/Y4047V/Y346C又はT363W/S351Cのいずれか、好ましくはT363S/L365A/Y4047V/Y346Cであり、任意選択で配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36のいずれかにおけるN294Aである、重鎖;
(b)配列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号37又は配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖
を含む。
【0240】
別の態様では、二機能性分子は、重鎖(CH)及び軽鎖(CL)の以下の組合せのいずれかを含むか又はからなり、
【0241】
【表9】
【0242】
重鎖は、ホール鎖又はノブ鎖、好ましくはホール鎖に対応し、より具体的には、Table F(表6)に開示の通りであり、特に配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36における、特にT366S/L368A/Y407V/Y349C又はT366W/S354Cのいずれか、好ましくはT366S/L368A/Y407V/Y349Cであり、任意選択で配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36のいずれかにおけるN297Aである置換を含み、置換の位置は、EU付番に従って規定されている。
【0243】
非常に特定の態様では、二機能性分子はPD-1を標的とし、配列番号37又は38を含むか又はからなる。
【0244】
したがって、二機能性分子は、配列番号29、30、31、32、33、34、35、及び36のいずれかを含む1つの重鎖を含んでいてもよく、Fc鎖は、任意選択で、Fc鎖のヘテロ二量体化を促進してヘテロ二量体Fcドメインを形成するように修飾されている。より具体的には、重鎖は、ホール鎖又はノブ鎖、好ましくはホール鎖に対応し、より具体的には、Table F(表6)に開示の通りであり、特に、配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36のいずれかにおける、T366S/L368A/Y407V/Y349C又はT366W/S354Cのいずれか、好ましくはT366S/L368A/Y407V/Y349Cであり、任意選択でN297Aである置換を含み、置換の位置は、EU付番に従って規定されている。重鎖は、そのC末端でIL-7mに任意選択でリンカーを介して連結されている。
【0245】
好ましい構築物
特定の態様では、分子は、第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のFc鎖がIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている第1の単量体と、好ましくは抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み、前記第1及び第2のFc鎖は二量体Fcドメインを形成する。任意選択で、二量体Fcドメインは、ヘテロ二量体Fcドメインである。より詳細には、分子は、第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結された抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のヘテロ二量体Fc鎖が、そのC末端がIL-7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている、第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠いている、好ましくは任意の他の分子を欠く相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む第2の単量体とを含む。更により詳細には、この分子は、第1の単量体及び第2の単量体を含み、第1の単量体は、C末端が第1のヘテロ二量体Fc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている抗原結合性ドメインを含み、第1のヘテロ二量体Fc鎖は、C末端がIL-7バリアントのN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されており、第2の単量体は、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く、好ましくはあらゆる他の分子を欠く、相補的な第2のヘテロ二量体Fc鎖を含む。このような分子は、例えば、図1に「構築物3」として示されている。
【0246】
特に、本発明による二機能性分子は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(この構築物は、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。特に、そのような構築物は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。分子は、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖、配列番号75に規定の通りのFc領域、及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0247】
別の態様では、本発明による二機能性分子は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(この構築物は、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。特に、そのような構築物は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)、及び配列番号24及び配列番号88又は90に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。
【0248】
一態様では、本発明は、単一の抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7バリアントを含む二機能性分子であって、
- 二機能性分子が、C末端が第1のFc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結された抗原結合性ドメインを含む第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み;
- i)IL-7バリアントが、前記第1のFc鎖のC末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されているか;又はii)単一の抗原結合性ドメインが、可変重鎖及び可変軽鎖を含み、IL-7バリアントが軽鎖のC末端に共有結合で連結されているかのいずれかであり;
- 抗原結合性ドメインがPD-1に結合し;並びに
- IL-7バリアントが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、IL-7バリアントが、i)IL-7受容体(IL-7R)に関するwth-IL-7の親和性と比較してIL-7Rに関するIL-7バリアントの親和性を低減させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較してIL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる
二機能性分子に関する。
【0249】
特に、IL-7バリアントは、(i)W142G、W142A、W142V、W142C、W142L、W142I、W142M、W142H、W142Y及びW142F、好ましくはW142H、W142F、又はW142Y、(ii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、又はC47S-C92S及びC34S-C129S、(iii)D74E、D74Q、又はD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E及び/又はK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異を含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りであり、好ましくはアミノ酸置換W142H、更により好ましくは例えば配列番号5に規定の通りのアミノ酸置換を含む。
【0250】
別の態様では、本発明は、単一の抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7バリアントを含む二機能性分子であって、
- 二機能性分子が、C末端が第1のFc鎖のN末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結された抗原結合性ドメインを含む第1の単量体と、抗原結合性ドメイン及びIL-7バリアントを欠く相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体とを含み;
- i)IL-7バリアントが、前記第1のFc鎖のC末端に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されているか;又はii)単一の抗原結合性ドメインが可変重鎖及び可変軽鎖を含み、IL-7バリアントが軽鎖のC末端に共有結合で連結されているかのいずれかであり;
- 抗原結合性ドメインが、上記の「免疫細胞上のPD-1を標的とする抗原結合性ドメイン」という段落で記載されている通りであり;
- IL7が、上記の「IL7及びIL-7バリアント」という段落で記載されている通りであり;
- Fcドメインが、上記の「Fcドメイン」という段落で記載されている通りであり;
- ペプチドリンカーが、上記の「ペプチドリンカー」という段落で記載されている通りである、
二機能性分子に関する。
【0251】
好ましくは、ペプチドリンカーは、(GGGGS)3、又はGGGGSGGGGSGGGGS、又は配列番号70に規定の通りである。
【0252】
好ましくは、Fcドメインは、ヒトIgG1又はIgG4に由来する。第1のFc鎖は、ホール鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及び任意選択でN297Aを含み、第2のFc鎖は、ノブ鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354C及び任意選択でN297Aを含む。好ましくは、Fc鎖はホール鎖又はH鎖であり、置換T366S/L368A/Y407V/Y349C及びN297Aを含み、第2のFc鎖はノブ鎖又はK鎖であり、置換T366W/S354C及びN297Aを含む。より好ましくは、第2のFc鎖は、配列番号75を含むか若しくはからなり、並びに/又は第1のFc鎖は、配列番号77を含むか若しくはからなる。
【0253】
好ましくは、IL-7は、アミノ酸置換W142Hを含み、アミノ酸付番は配列番号1に示されている通りであり、特に例えば配列番号5に規定の通りの置換を含む。
【0254】
好ましくは、抗原結合性ドメインは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317、スパルタリズマブ、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゲノリムズマブ、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103、MEDI-0680、MEDI0608、JS001、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210、TSR-042、GLS-010、AM-0001、STI-1110、AGEN2034、MGA012、又はIBI308、5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4からなる群から選択される抗体に由来する。より好ましくは、抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号55、56、57、58、59、60、61、又は62のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号64又は65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。更により好ましくは、抗原結合性ドメインは、(i)配列番号51のCDR1、配列番号53のCDR2、及び配列番号61のCDR3を含む重鎖;並びに(ii)配列番号65のCDR1、配列番号66のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。優先的に、抗原結合性ドメインは、(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25、好ましくは配列番号24のアミノ酸配列を含むか又はから本質的になる重鎖可変領域(VH);並びに(b)配列番号27、配列番号28、配列番号88、又は配列番号90、好ましくは配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。優先的に、抗原結合性ドメインは、(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25、好ましくは配列番号24のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);並びに(b)配列番号27又は配列番号28、好ましくは配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる。
【0255】
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になる抗PD-1抗原結合性ドメイン、及びアミノ酸付番が配列番号1に示されている通りである、アミノ酸置換W142H、好ましくは例えば配列番号5に規定の通りのアミノ酸置換を含むIL-7バリアントを含む。
【0256】
詳細には、本発明による二機能性分子は、(i)抗PD-1抗原結合性ドメインが、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28、88、又は99の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になること、
(ii)IL-7バリアントが、配列番号5に規定の通りの配列を含むか又はから本質的になること、
(iii)第2のFc鎖が、配列番号75を含むか若しくはからなり、及び/又は第1のFc鎖が、配列番号77を含むか若しくはからなること、並びに
(iv)任意選択でペプチドリンカーが、配列番号70を含むか又はからなること
を含む。
【0257】
詳細には、本発明による二機能性分子は、(i)抗PD-1抗原結合性ドメインが、配列番号24の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)を含むか又はから本質的になること、
(ii)IL-7バリアントが、配列番号5に規定の通りの配列を含むか又はから本質的になること、
(iii)第2のFc鎖が、配列番号75を含むか若しくはからなり、及び/又は第1のFc鎖が、配列番号77を含むか若しくはからなること、並びに
(iv)任意選択でペプチドリンカーが、配列番号70を含むか又はから本質的になること
を含む。
【0258】
非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号38を含むか又はからなる軽鎖、及び配列番号35を含む1つの重鎖を含み、Fc鎖は、任意選択で、Fc鎖のヘテロ二量体化を促進して、ヘテロ二量体Fcドメインを形成するように修飾されている。一態様では、重鎖は、そのC末端でIL-7mに任意選択でリンカーを介して連結されている。代替の態様では、軽鎖は、そのC末端でIL-7mに任意選択でリンカーを介して連結されている。
【0259】
非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号75の第2の単量体と、N末端で抗原結合性ドメイン(例えば、配列番号79)に任意選択でリンカーを介して連結されている配列番号77のFc鎖を含む第1の単量体とを含み得る。より好ましくは、二機能性分子は、配列番号75の第2の単量体と、N末端で抗原結合性ドメイン(例えば、配列番号79)に任意選択でリンカーを介して連結され、C末端で本明細書に開示される任意のIL-7mに任意選択でリンカーを介して連結されている配列番号77のFc鎖を含む第1の単量体とを含み得る。
【0260】
任意選択で、IL-7mがIL-7バリアントである場合、二機能性分子は、配列番号75の第2の単量体と、配列番号83の第1の単量体と、配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体とを含み得る。
【0261】
任意選択で、IL-7mがIL-7バリアントである場合、二機能性分子は、配列番号75の第2の単量体と、配列番号84の第1の単量体と、その末端でIL-7バリアント、特に配列番号2~15のいずれか1つ、特に配列番号5のバリアントに任意選択でリンカーにより連結されている配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体とを含み得る。
【0262】
別の非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号77の第2の単量体と、N末端で抗原結合性ドメイン(例えば、配列番号79)に任意選択でリンカーを介して連結され、C末端で本明細書に開示される任意のIL-7mに任意選択でリンカーを介して連結されている、配列番号75のFc鎖を含む第1の単量体とを含み得る。
【0263】
別の非常に特定の態様では、二機能性分子は、配列番号77の第2の単量体と、N末端で抗原結合性ドメイン(例えば、配列番号79)に任意選択でリンカーを介して連結されている配列番号75のFc鎖を含む第1の単量体と、その末端で本明細書に開示される任意のIL-7mに任意選択でリンカーを介して連結されている配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体とを含み得る。
【0264】
特に、IL-7mは、配列番号1、又はそれと少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する、又は野生型タンパク質に関して付加、欠失、置換、及びその組合せからなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個の修飾を有するそのバリアントを含むか又はから本質的になる。
【0265】
任意選択で、二機能性分子は、配列番号77の第2の単量体と、配列番号82の第1の単量体と、配列番号37、38、又は80、好ましくは配列番号38又は80の第3の単量体とを含み得る。
【0266】
非常に特定の態様では、本発明による二機能性分子は、配列番号75の第1の単量体と、配列番号83の第2の単量体と、及び配列番号80、100、又は101の第3の単量体とを含む。好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号75の第1の単量体と、配列番号83の第2の単量体と、配列番号80の第3の単量体とを含む。
【0267】
二機能性分子の調製 - 本発明の二機能性分子をコードする核酸分子、それら核酸分子を含む組換え発現ベクター及び宿主細胞
本発明による二機能性分子を特に哺乳動物細胞で産生するために、二機能性分子をコードする核酸配列又は核酸配列の群を、1つ又は複数の発現ベクターにサブクローニングする。そのようなベクターは、哺乳動物細胞にトランスフェクトするために一般に使用される。抗体配列を含む分子を産生するための基本技法は、Coliganら(編)、Current protocols in immunology、10.19.1~10.19.11頁(Wiley Interscience社、1992年)(この文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に、及び分子の産生に関連する論評が、対応する本文に散在している、W. H. Freeman and Company社の「Antibody engineering: a practical guide」(1992年)に記載されている。
【0268】
一般に、そのような方法は、
(1)適切な宿主細胞に、本発明の組換え二機能性分子をコードするポリヌクレオチド、又は上記ポリヌクレオチドを含有するベクターをトランスフェクト又は形質転換する工程、
(2)宿主細胞を適切な培地で培養する工程、及び
(3)任意選択で、二機能性分子を、培地又は宿主細胞から単離又は精製する工程
を含む。
【0269】
本発明は、上記に開示の通りの二機能性分子をコードする核酸、本発明の核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクター、本発明のベクターで又は組換え二機能性分子をコードする配列で直接的に形質転換された遺伝子操作宿主細胞、及び組換え技法により本発明の二機能性分子を産生するための方法に更に関する。
【0270】
核酸、ベクター、及び宿主細胞は、本明細書の下記により詳細に記載されている。
【0271】
核酸配列
また、本発明は、上記で規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子、又は上記で規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子の群に関する。本明細書に開示の二機能性分子をコードする核酸は、PCR等の、当技術分野で公知の任意の技法により増幅することができる。そのような核酸は、従来の手順を使用して容易に単離及び配列決定することができる。
【0272】
詳細には、本明細書に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、
- 第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結された抗原結合性ドメインを含む第1の単量体であって、前記第1のFc鎖がIL7mに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている第1の単量体をコードする第1の核酸分子、及び
- 相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体をコードする第2の核酸分子、
- 抗原結合性ドメインの軽鎖をコードする第3の核酸分子
を含む。
【0273】
別の態様では、本明細書に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、
- 第1のFc鎖に任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結された抗原結合性ドメインを含む第1の単量体をコードする第1の核酸分子、
- 相補的な第2のFc鎖を含む第2の単量体をコードする第2の核酸分子、及び
- 抗原結合性ドメインの軽鎖をコードする第3の核酸分子であって、前記軽鎖が本発明によるIL7バリアントに任意選択でペプチドリンカーを介して共有結合で連結されている、第3の核酸分子
を含む。
【0274】
一実施形態では、核酸分子は、単離された、特に非天然の核酸分子である。
【0275】
詳細には、核酸分子は、配列番号2~15に示されるアミノ酸配列を有するIL-7mをコードする。
【0276】
代替の態様では、本明細書に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、配列番号73に示される配列を有する可変重鎖ドメイン、及び/又は配列番号74に示される配列を有する可変軽鎖ドメインを含む。
【0277】
ベクター
別の態様では、本発明は、上記で規定の通りの核酸分子又は核酸分子の群を含むベクターに関する。
【0278】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、遺伝物質を細胞内へと移行させるためのビヒクルとして使用される核酸分子である。「ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルス、コスミド、及び人工染色体を包含する。一般に、遺伝子操作されたベクターは、複製起点、マルチクローニングサイト、及び選択可能なマーカーを含む。ベクターはそれ自体が、概して、インサート(導入遺伝子)、及びベクターの「骨格」としての役目を果たすより大きな配列を含むヌクレオチド配列、一般的にはDNA配列である。現代的なベクターは、導入遺伝子インサート及び骨格の他の追加特徴:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、レポーター遺伝子、標的指向性配列、タンパク質精製タグを包含してもよい。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、特に、標的細胞において導入遺伝子を発現させるためのものであり、一般に、制御配列を有する。
【0279】
二機能性分子、融合タンパク質をコードする核酸分子は、当業者であれば、ベクターにクローニングし、次いで宿主細胞へと形質転換することができる。こうした方法としては、in vitro組換えDNA技法、DNA合成技法、in vivo組換え技法等が挙げられる。当業者に公知である方法を使用して、本明細書に記載の二機能性分子、バリアントの核酸配列及び転写/翻訳のための適切な調節性成分を含有する発現ベクターを構築することができる。
【0280】
したがって、本発明は、本発明による二機能性分子をコードする核酸分子を含む組換えベクターも提供する。1つの好ましい態様では、発現ベクターは、プロモーター、及び分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列、及び任意選択で、スクリーニングのための少なくとも1つの薬物耐性遺伝子を更に含む。発現ベクターは、翻訳を開始するためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーター等を更に含んでいてもよい。
【0281】
好適な発現ベクターは、典型的には、(1)細菌複製起点をコードする原核生物DNAエレメント並びに細菌宿主での発現ベクターの成長及び選択を提供するための抗生物質耐性マーカー;(2)プロモーター等の、転写開始を制御する真核生物DNAエレメント;(3)転写終結/ポリアデニル化配列等の、転写物のプロセシングを制御するDNAエレメントを含有する。
【0282】
発現ベクターは、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、及びエレクトロポレーション等を含む様々な技法を使用して宿主細胞に導入することができる。好ましくは、発現ベクターが、安定形質転換体を産生するように宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれたトランスフェクト細胞を選択し、増殖させる。
【0283】
宿主細胞
別の態様では、本発明は、例えば、二機能性分子を産生する目的のための、上記で規定の通りのベクター又は核酸分子又は核酸分子の群を含む宿主細胞に関する。
【0284】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明による二機能性分子をコードするベクター、外因性核酸分子、及びポリヌクレオチドのレシピエントであり得るか又はレシピエントである任意の個々の細胞又は細胞培養物を含むことが意図される。また、「宿主細胞」という用語は、単一細胞の子孫又は潜在的な子孫を含むことが意図されている。好適な宿主細胞としては、原核細胞又は真核細胞が挙げられ、これらに限定されないが、細菌、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、並びに昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばマウス、ラット、ウサギ、マカク、又はヒト等の動物細胞も挙げられる。
【0285】
好適な宿主細胞は、特に、グリコシル化等の好適な翻訳後修飾を提供する真核生物宿主である。好ましくは、そのような好適な真核生物宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の真菌;ミチムナ・セパラテ(Mythimna separate)等の昆虫細胞;タバコ等の植物細胞;並びにBHK細胞、293細胞、CHO細胞、NSO細胞、及びCOS細胞等の哺乳動物細胞であってもよい。
【0286】
好ましくは、本発明の宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、及びHEK細胞からなる群から選択される。
【0287】
したがって、宿主細胞は、本発明による二機能性分を安定的に又は一過性に発現する。そのような発現方法は、当業者に公知である。
【0288】
また、二機能性分子を産生するための方法が、本明細書で提供される。この方法は、上記で提供されている通りの二機能性分子をコードする核酸を含む宿主細胞を、その発現に好適な条件下で培養する工程、及び任意選択で二機能性分を宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収する工程を含む。特に、二機能性分子の組換え産生の場合、例えば上記に記載の通りの二機能性分子をコードする核酸分子を単離し、宿主細胞での更なるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入する。次いで、二機能性分子を、当技術分野で公知の任意の方法により単離及び/又は精製する。こうした方法としては、これらに限定されないが、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩沈殿等)、遠心分離、浸透による細胞溶解、超音波処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー又はゲルクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、任意の他の液体クロマトグラフィー、及びそれらの組合せが挙げられる。例えばColiganよる記載の通り、二機能性分子単離技法としては、特に、プロテインAセファロースによる親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーを挙げることができる。本発明の二機能性分子の単離には、好ましくは、プロテインAが使用される。
【0289】
医薬組成物及びその投与方法
また、本発明は、本明細書に記載の二機能性分子、本明細書の上記に記載の通りの核酸分子、核酸分子の群、ベクター、及び/又は宿主細胞のいずれかを、好ましくは活性成分又は化合物として含む医薬組成物に関する。製剤は、滅菌することができ、所望の場合は、本発明の二機能性分子、本発明の核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞と有害な相互作用をせず、望ましくない毒物学的効果を一切与えない薬学的に許容される担体、賦形剤、塩、抗酸化剤、及び/又は安定化剤等の助剤と混合することができる。任意選択で、医薬組成物は、追加の療法剤を更に含んでいてもよい。
【0290】
特に、本発明による医薬組成物は、局所投与、経腸投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、又は眼内投与等を含む、任意の従来の投与経路用に製剤化することができる。投与を容易にするために、本明細書に記載の通りの二機能性分子を、in vivo投与用の医薬組成物へと製作することができる。そのような組成物を製作するための手段は、当技術分野に記載されている(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins社、第21版(2005年)を参照)。
【0291】
医薬組成物は、所望の純度を有する二機能性分子を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、抗酸化剤、及び/又は安定剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態に調製することができる。そのような好適な担体、賦形剤、抗酸化剤、及び/又は安定剤は、当技術分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980年)に記載されている。
【0292】
送達を容易にするために、二機能性分子又はそのコード核酸のいずれかを、シャペロン剤とコンジュゲートしてもよい。シャペロン剤は、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、低密度リポタンパク質、又はグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、又はヒアルロン酸)、又は脂質等の天然に存在する物質であってもよい。また、シャペロン剤は、合成ポリマー、例えば合成ポリペプチド等の、組換え又は合成分子であってもよい。
【0293】
本発明による医薬組成物は、投与の実質的直後に、又は投与後の任意の所定の時点若しくは期間に、有効成分(例えば、本発明の二機能性分子)を放出するように製剤化してもよい。一部の態様では、医薬組成物には、組成物の送達が、治療しようとする部位の感作の前に及び感作を引き起こすのに十分な時間で生じるように、時限放出送達系、遅延放出送達系、及び持続放出送達系を使用することができる。当技術分野で公知の手段を使用して、標的組織又は臓器に到達するまで組成物の放出及び吸収を防止又は最小化するか、又は組成物の時限放出を保証することができる。そのような系は、組成物の反復投与を回避することができ、それにより対象及び医師の利便性を高める。
【0294】
当業者であれば、本発明の製剤はヒト血液と等張性であってもよく、つまり、本発明の製剤はヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを理解するだろう。そのような等張性製剤は、一般に、約250mOSm~約350mOSmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧型又は氷点降下型(ice-freezing type)浸透圧計により測定することができる。
【0295】
医薬組成物は、典型的には、製造及び保管の条件下で無菌及び安定でなければならない。微生物存在の防止は、滅菌手順(例えば、精密濾過による)、並びに/又は種々の抗細菌剤及び抗真菌剤の含有の両方により保証することができる。
【0296】
担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、治療される対象、及び特定の投与様式に応じて様々であろう。担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、一般に、療法効果を生み出す組成物の量であろう。
【0297】
対象、レジメン、及び投与
本発明は、医薬として使用するための、又は疾患の治療に使用するための、又は対象に投与するための、又は医薬として使用するための、本明細書で開示の通りの二機能性分子、それをコードする核酸若しくはベクター、宿主細胞、又は医薬組成物に関する。また、本発明は、対象における疾患又は障害を処置するための方法であって、治療有効量の医薬組成物又は二機能性分子を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0298】
治療する対象は、ヒト、特に出生前段階のヒト、新生児、子供、乳児、青年、又は成人、特に、少なくとも30歳、40歳の成人、好ましくは少なくとも50歳の成人、更により好ましくは少なくとも60歳の成人、更にいっそう好ましくは少なくとも70歳の成人であってもよい。
【0299】
特定の態様では、対象は、免疫抑制状態又は免疫無防備状態であってもよい。
【0300】
医学分野の当業者に公知である従来法を使用して、治療しようとする疾患のタイプ又は疾患の部位に応じて、本明細書で開示の通りの二機能性分子又は医薬組成物を対象に投与することができ、例えば、経口的に、非経口的に、経腸的に、吸入スプレーで、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は移植リザバーを介して投与することができる。好ましくは、二機能性分子又は医薬組成物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、腫瘍内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内注射若しくは輸注技法により投与される。
【0301】
医薬組成物の形態、本発明による医薬組成物又は二機能性分子の投与経路及び投与用量は、当業者であれば、感染症のタイプ及び重症度、患者、特に患者の年齢、体重、大きさ、性別、及び/又は全身健康状態に応じて調整することができる。本発明の組成物は、局所的治療が所望であるか又は全身的治療が所望であるかに応じて、幾つかの様式で投与することができる。
【0302】
疾患の処置における使用
本発明の二機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞、組成物及び方法は、多数のin vitro及びin vivoでの有用性並びに適用を有する。特に、本明細書において提供される二機能性分子、核酸分子、核酸分子の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物のいずれかが、治療方法において、及び/又は治療目的のため使用されてもよい。
【0303】
本発明はまた、対象における障害及び/若しくは疾患の処置において使用するための、並びに/又は医薬若しくはワクチンとして使用するための、二機能性分子、それをコードする核酸又はベクター、或いはそれを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、対象における疾患及び/又は障害を処置するための、本明細書において記載される二機能性分子;それをコードする核酸又はベクター、或いはそれを含む医薬組成物の使用に関する。最後に、本発明は、対象における疾患又は障害を処置する方法であって、治療有効量の医薬組成物、又は二機能性分子、或いはそれをコードする核酸又はベクターを、対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0304】
一態様では、本発明は、それを必要とする対象におけるがん、感染性疾患、及び慢性ウイルス感染症からなる群から選択される疾患及び/又は障害の処置の方法であって、当該対象に、有効量の上で定義された二機能性分子又は医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。このような疾患の例は、本明細書において以下でより具体的に記載される。
【0305】
一態様では、処置方法は、(a)処置を必要とする患者を同定する工程;及び(b)患者に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子、核酸、ベクター、又は医薬組成物を投与する工程を含む。
【0306】
処置を必要とする対象は、疾患を有する、有するリスクのある、又は有することが疑われるヒトであってもよい。このような患者は、慣習的な検診により同定することができる。
【0307】
別の態様では、本明細書において開示される二機能性分子は、免疫を増強するために、好ましくは、障害及び/又は疾患を処置するために、対象に、例えば、in vivoで投与することができる。したがって、一態様では、本発明は、対象における免疫応答を修正する方法であって、対象における免疫応答が修正されるように、対象に、本発明の二機能性分子、核酸、ベクター又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。好ましくは、免疫応答は、増強されるか、増大されるか、刺激されるか又は上方調節される。二機能性分子又は医薬組成物を使用して、処置を必要とする対象におけるT細胞活性化のような免疫応答を増強することができる。特定の実施形態では、二機能性分子又は医薬組成物を使用して、T細胞疲弊を低減すること、又は疲弊T細胞を再活性化することができる。
【0308】
本発明は、特に、対象における免疫応答を増強する方法であって、対象における免疫応答が増強されるように、対象に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子、核酸、ベクター又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。特定の実施形態では、二機能性分子又は医薬組成物を使用して、T細胞疲弊を低減すること、又は疲弊T細胞を再活性化することができる。
【0309】
本発明によるIL-7バリアントを含む二機能性分子は、CD127+免疫細胞、特に、CD127+T細胞を標的にする。このような細胞は、以下の具体的な対象範囲:リンパ節中の常在性リンパ球系細胞(主に、傍皮質内、濾胞における時々の細胞を含む)、扁桃腺(濾胞間領域)、脾臓(主に、白色髄の細動脈周囲のリンパ球系鞘(PALS)及び赤色髄における一部の点在する細胞)、胸腺(主に、髄質中;又は皮質中)、骨髄(点在して分布)、消化管(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、直腸)中のGALT(腸管関連リンパ組織、主に、濾胞間領域及び粘膜固有層中)、胆嚢のMALT(粘膜関連リンパ組織)において見られ得る。それ故、本発明の二機能性分子は、これらの範囲、特に、がんに位置するか、又はそれらが関与する疾患を処置するのに特に興味深い。
【0310】
特定の態様では、二機能性分子は、IL-7バリアント、特にW142H、及びPD-1に結合して拮抗する抗原結合性ドメインを含む。
【0311】
そのような二機能性分子及びそれを含む医薬組成物は、患者、特にがんを有する患者において、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)を増加させるために、Tリンパ球をアポトーシスから保護するために、Tメモリー応答を誘導/改善するために、T-reg抑制及び/又はTregの抑制活性を無効にするために、完全疲弊T細胞、特に疲弊腫瘍浸潤性リンパ球の増殖を回復する及び/又は維持するために使用するためのものであり得る。
【0312】
そのような二機能性分子及びそれを含む医薬組成物は、患者、特にがんを有する患者において腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)を増加させるための、Tリンパ球をアポトーシスから保護するための、Tメモリー応答を誘導/改善するための、T-reg抑制及び/又はTregの抑制活性を無効にするための、完全疲弊T細胞、特に疲弊腫瘍浸潤性リンパ球の増殖を回復する及び/又は維持するための医薬を製造するために使用することができる。
【0313】
本発明はまた、患者、特にがんを有する患者において腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)を増加させるための、Tリンパ球を細胞死から保護するための、Tメモリー応答を誘導/改善するための、T-reg抑制及び/又はTregの抑制活性を無効にするための、完全疲弊T細胞、特に疲弊腫瘍浸潤性リンパ球の増殖を回復する及び/又は維持するための方法であって、前記患者に、治療有効量のIL-7バリアント、特にW142H、及びPD-1、特に本明細書に開示されるそのような特定の分子のいずれかに結合して拮抗する抗原結合性ドメインを含む二機能性分子を投与することを含む方法にも関する。
【0314】
がん
別の態様では、本発明は、がんを処置するための、例えば、対象における腫瘍細胞の成長を阻害するための医薬の製造における本明細書において開示される二機能性分子又は医薬組成物の使用を提供する。
【0315】
「がん」という用語は、本明細書で使用される場合、異常細胞の急速で未制御の成長により特徴付けられる疾患であると定義される。がん細胞は、局所的に又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部分へと広がる場合がある。
【0316】
したがって、一態様では、本発明は、対象におけるがんを処置する、例えば、腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、対象に、治療有効量の本発明による二機能性分子又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。特に、本発明は、がん性細胞の成長が阻害されるように、二機能性分子を使用した対象の処置に関する。
【0317】
本開示の一態様では、処置されるべきがんは、疲弊T細胞と関連する。
【0318】
本明細書において提供されるもので処置され得る任意の適当な癌がんは、造血系の癌がん又は固形がんであり得る。このようながんは、癌腫、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、胃がん、尿道がん、環境で誘導されたがん及び当該がんの任意の組合せを含む。加えて、本発明は、難治性又は再発性悪性腫瘍を含む。好ましくは、処置される、又は予防されるべきがんは、転移性又は非転移性、メラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0319】
特定の態様では、がんは、血液系腫瘍又は固形腫瘍である。このようながんは、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病からなる群から選択することができる。
【0320】
特定の態様では、がんは、ウイルスにより誘導されるがん、又は免疫不全と関連するがんである。このようながんは、カポジ肉腫(例えば、カポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);子宮頸部、肛門、陰茎及び外陰部の扁平上皮細胞がん及び中咽頭がん(例えば、ヒトパピローマウイルスと関連する);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典型ホジキンリンパ腫、及びリンパ増殖性障害(例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);肝細胞癌(例えば、肝炎B及び/又はCウイルスと関連する);メルケル細胞癌(例えば、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連する);並びにヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)感染と関連するがんからなる群から選択することができる。
【0321】
処置に好ましいがんは、典型的には、免疫療法に応答性のがんを含む。或いは、処置に好ましいがんは、免疫療法に応答性でないがんである。
【0322】
感染性疾患
本発明の二機能性分子、核酸、核酸の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物を使用して、特定の毒素又は病原体に曝露された患者を処置することができる。したがって、本発明の態様は、好ましくは、対象が、感染性疾患について処置されるように、対象に、本発明による二機能性分子、又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む対象における感染性疾患を処置する方法を提供する。
【0323】
任意の適当な感染症は、本明細書において提供される、二機能性分子、核酸、核酸の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物で処置されてもよい。
【0324】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスの一部の例は、HIV、肝炎(A、B、又はC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスを含む。
【0325】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性細菌の幾つかの例は、クラミジア、リケッチア性細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、テタヌス、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ、及びライム疾患の細菌を含む。
【0326】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性真菌の幾つかの例は、カンジダ(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラータ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)等)、ケカビ属(ムコール(mucor)、アブシディア(absidia)、リゾプス(rhizophus))、スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)並びにヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を含む。
【0327】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性寄生虫の幾つかの例は、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Bal抗dium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleriafowleri)、アカントアメーバ(Acanthamoeba)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、プラスモディウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondi)、及びブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0328】
併用療法
本発明による二機能性分子は、臨床開発中又は既に市場にある作用剤を用いた、免疫回避機序を克服するための幾つかの他の可能性のある戦略と組合せることができる(Antoniaら、Immuno-oncology combinations: a review of clinical experience and future prospects. Clin. Cancer Res. Off. J. Am. Assoc. Cancer Res. 20、6258~6268、2014のTable 1(表10)参照)。本発明による二機能性分子とのこのような組合せは、
1-適応免疫の阻害を逆転させること(T細胞チェックポイント経路を遮断すること);
2-適応免疫をスイッチングすること(アゴニスト分子、特に、抗体を使用してT細胞同時刺激受容体シグナル伝達を促進すること)、
3-自然免疫細胞の機能を改善すること;
4-例えば、ワクチンベースの戦略を通じて、免疫系を活性化すること(免疫-細胞エフェクター機能を増強すること)、
に明白に有用であり得る。
【0329】
したがって、本明細書において記載される二機能性分子又はそれを含む医薬組成物のいずれか及び適当な第2の作用剤を用いた、疾患又は障害を治療するための併用療法も、本明細書において提供される。態様では、二機能性分子及び第2の作用剤は、上で記載された固有の医薬組成物に存在することができる。或いは、本明細書において使用される、用語「組合せ療法」又は「併用療法」は、連続する様式でのこれらの2つの作用剤(例えば、本明細書において記載される二機能性分子及び追加又は第2の適当な療法剤)の投与を包含し、すなわち、各療法剤は、異なる時間に投与され、並びにこれらの療法剤、又は作用剤の少なくとも2つの投与が、実質的に同時の様式である。各作用剤の連続する又は実質的に同時の投与は、任意の適当な経路により影響され得る。作用剤は、同じ経路により、又は異なる経路により投与することができる。例えば、第1の作用剤(例えば、二機能性分子)は、経口投与することができ、追加の療法剤(例えば、抗がん剤、抗感染症剤;又は免疫モジュレーター)は、静脈内投与することができる。或いは、選択された組合せの作用剤は、静脈注射により投与されてもよく、一方、組合せの他の作用剤は、経口投与されてもよい。
【0330】
態様では、追加の療法剤は、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二特異的T細胞誘導)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤、チェックポイント阻害剤、ペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした作用剤の1つ又は複数の組合せを含む、非包括的リストにおいて選択することができる。
【0331】
例えば、追加の療法剤は、化学療法、放射線療法、標的化療法、抗血管新生薬、低メチル化剤、がんワクチン、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、骨髄チェックポイント阻害剤、他の免疫療法、及びHDAC阻害剤からなる群において選択することができる。
【0332】
一実施形態では、本発明は、上記で規定の通りの併用治療に関し、第2の治療剤は、詳細には治療ワクチン、特に適応免疫細胞(T及びBリンパ球)の免疫チェックポイント遮断剤又は活性化剤、及び抗体-薬物コンジュゲートからなる群から選択される。好ましくは、二機能性分子のいずれか又は本発明による医薬組成物と同時使用するために好適な作用剤は、共刺激性受容体(例えば、OX40、CD40、ICOS、CD27、HVEM、又はGITR)、免疫学的細胞死を誘導する作用剤(例えば、化学療法剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、又は標的化治療のための作用剤)、チェックポイント分子(例えば、CTLA4、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、BTLA、又はTIGIT)を阻害する作用剤、がんワクチン、免疫抑制性酵素(例えば、IDO1又はiNOS)を修飾する作用剤、Treg細胞を標的とする作用剤、養子細胞療法のための作用剤、又は骨髄系細胞をモジュレートする作用剤を含む。
【0333】
一態様では、本発明は、上記で規定の通りの併用治療に関し、第2の治療剤は、抗CTLA4、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、及び抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L及びB細胞受容体アゴニストからなる群から選択される、適応免疫細胞(T及びBリンパ球)のチェックポイント遮断剤又は活性化剤である。
【0334】
本発明はまた、対象における疾患を処置する方法であって、当該対象に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物及び治療有効量の追加又は第2の療法剤を投与する工程を含む方法に関する。
【0335】
追加又は第2の療法剤の具体例は、国際公開第2018/053106号、36~43頁において提供される。
【0336】
好ましい実施形態では、第2の療法剤は、化学療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤、細胞療法剤(例えば、CAR-T細胞)、抗生物質及びプロバイオティクスからなる群から選択される。
【0337】
組合せ療法はまた、外科手術との二機能性分子の投与の組合せに依拠し得る。
【0338】
詳細には、本発明による二機能性分子は、免疫細胞表面上で特異的に発現される標的及び少なくとも1つの免疫刺激性サイトカインに結合する少なくとも1つの抗原結合性ドメインを含む第2の二機能性分子と組み合わせて使用するためのものである。
【0339】
より詳細には、そのような第2の二機能性分子において、免疫刺激性サイトカインは、IL2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-12A、IL-12B、IL-13;IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、IL-24;IFNα、IFNβ、BAFF、LTα、及びLTβ、又はそのバリアントを含む群から選択される。好ましい実施形態では、免疫刺激性サイトカインは、IL2又はそのバリアントである。
【0340】
より詳細には、そのような第2の二機能性分子において、免疫細胞表面上に特異的に発現される標的は、PD-1、CD28、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CD3、PDL2、及びPDL1からなる群から選択される。
【0341】
好ましくは、PD-1に対する単一の抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7バリアントを含む本発明による二機能性分子は、i)PD-1に対する抗原結合性ドメイン、及びii)IL-2又はIL-2変異体を含む二機能性分子と組み合わせて使用するためのものである。
【0342】
本発明の二機能性分子及び第2の二機能性分子は、同時に又は連続的に投与される。連続的投与の例では、本発明の二機能性分子は、第2の二機能性分子の投与前に投与される。別の例では、本発明の二機能性分子は、第2の二機能性分子の投与後に投与される。
【0343】
好ましい実施形態では、本発明は、本発明の二機能性分子が、第2の二機能性分子の投与後に投与される、免疫細胞表面上に特異的に発現される標的に結合する少なくとも1つの抗原結合性ドメイン、及び少なくとも1つのIL2を含む第2の二機能性分子と組み合わせて使用するための二機能性分子、核酸、宿主細胞、又は医薬組成物に関する。
【0344】
キット
本明細書において記載される二機能性分子又は組成物のいずれかは、本発明により提供されるキットに含まれてもよい。本開示は、特に、免疫応答の増強及び/或いは疾患又は障害(例えば、がん及び/又は感染症)の処置において使用するためのキットを提供する。
【0345】
本発明の文脈において、用語「キット」は、容器、レシピエント又はその逆にパッケージされた2つ以上の成分(そのうち1つが、本発明の二機能性分子、核酸分子、ベクター又は細胞に対応する)を意味する。キットは、1回単位として市販することができる、ある特定の目標を達成するのに十分である製品及び/又は用具のセットとして本明細書において記載することができる。本発明のキットは、適当なパッケージ中にある。
【0346】
具体的には、本発明によるキットは、
- 上で定義された二機能性分子、
- 当該二機能性分子をコードする核酸分子又は核酸分子の群、
- 当該核酸分子又は核酸分子の群を含むベクター、及び/或いは
- 当該ベクター又は核酸分子又は核酸分子の群を含む細胞
を含んでもよい。
【0347】
したがって、キットは、適当な容器手段において、本発明の医薬組成物、融合タンパク質、又は二機能性分子、及び/或いは宿主細胞、及び/或いは本発明の核酸分子をコードするベクター、及び/或いは本発明の核酸分子又は関連する試薬を含んでもよい。一部の実施形態では、試料を個体から採取する手段及び/又は試料をアッセイする手段が、提供されてもよい。本発明によるキットに含まれる組成物は、特に、シリンジと適合可能な組成物に製剤化されてもよい。
【0348】
一部の実施形態では、キットは、がん又は感染性疾患を処置するための追加の作用剤を更に含み、追加の作用剤は、本発明の医薬組成物、融合タンパク質、又は二機能性分子、及び/又は宿主細胞、及び/又は本発明の核酸分子をコードするベクター、及び/又は本発明の核酸分子、又は本発明のキットの他の成分と組み合わせてもよく、又はキットに個別に提供されてもよい。特に、本明細書において記載されるキットは、本明細書において上で記載された「併用療法」において記載されたもののような1つ又は複数の追加の療法剤を含んでもよい。キットは、個体のための特定のがんに合わせられ、本明細書において上で記載された個体のためのそれぞれの第2のがん療法を含んでもよい。
【0349】
本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物の使用に関する指示書は、一般的に、投薬量、投与スケジュール、意図される処置の投与経路、二機能性分子を再構成するための手段及び/又は本発明の二機能性分子を希釈するための手段に関する情報を含む。本発明のキットにおいて提供される指示書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、リーフレット又は指示マニュアルの形態でキットに含まれるペーパーシート)上に書かれた指示書である。
【実施例
【0350】
IL-7変異体の入手は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2020/12377号に詳細に記載されている。
【0351】
(実施例1. 1つのIL-7 W142Hサイトカイン及び1つ又は2つの抗PD-1アームを有する抗PD-1 IL-7分子は、PD-1+ IL-7R+細胞へのシス活性を促進し、IL-7R T細胞増殖をin vivoで刺激する高い有効性、及びTCRシグナル伝達を再活性化する相乗的能力を示した)
本発明者らは、図1に記載の通りの、1つ又は2つの抗PD-1結合ドメイン及び1つ又は2つのIL7 W142H変異を含む二機能性分子の複数の構造の生物学的活性を設計及び比較した。
【0352】
構築物1は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物1は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*2とも呼ばれる)。この分子は、BICKI-IL-7 W142Hとも呼ばれる。実施例では、BICKI-IL-7 WTと呼ばれる対照分子は、構築物1に対応するが、野生型IL-7を有する。
【0353】
構築物2は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物2は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。
【0354】
構築物3は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物3は、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。抗PD-1*1と呼ばれる対照構築物は、構築物3と類似しているが、IL-7バリアントを欠いている。
【0355】
構築物4は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物4は、抗PD-1*1 IL- W142H*2とも呼ばれる)。
【0356】
構築物2、3、及び4は、IgG1 N298Aアイソタイプを有するように遺伝子操作し、重鎖AのCH2及びCH3にノブを、重鎖BのCH2及びCH3にホールを作出するために、Fc部分のアミノ酸配列を変異させた。
【0357】
抗PD-1 IL7構築物は全て、ELISAアッセイで示されているように、PD-1受容体に対して高い親和性を有する(図2A及びTable 1(表10))。2つの抗PD-1アーム(抗PD-1*2)を有する抗PD-1 IL-7分子は、IL-7を有しない抗PD-1*2と比較して同じ結合有効性(等しいEC50)を有する。同様に、1つの抗PD-1アームを有する抗PD-1 IL-7分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*1及び抗PD-1*1 IL7 W142H*2)は、IL-7を有しない抗PD-1*1と比較して同じ結合有効性を示し、抗PD-1 IL7のEC50は0.086及び0.111nMに等しいのに対して、抗PD-1のEC50は0.238nMであった。こうしたデータにより、IL-7の融合は、試験した構築物に関わりなく、PD-1結合を妨害しないことが示される。
【0358】
【表10】
【0359】
更に、PD-L1/PD-1アンタゴニストバイオアッセイ(図2B)は、1つ又は2つの抗PD-1アームを有する抗PD-1 IL7分子が、PD-L1とPD-1受容体との結合を遮断する有効性が高いことを示している。構築物3及び4から抗PD-1の一方のアームを除去したが、抗PD-1*1 IL7構築物は全て、高いアンタゴニスト特性を示す。構築物3及び4のEC50は、抗PD-1*2 IL7構築物と比較して2.5分の1の活性減少が計算されたに過ぎなかった(Table 2(表11))。
【0360】
【表11】
【0361】
次に、本発明者らは、Biacoreアッセイ及びELISAアッセイを使用して、CD127受容体に対する異なる構築物の親和性を評価した。構築物2及び3から1つのIL-7分子を除去したため、IL-7ヘテロ二量体構築物と比較して、こうした分子では、CD127受容体に対する結合能力がより低く、pSTAT5の活性化がより低いことが予想された。しかしながら、本発明者らは、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1分子が、CD127受容体に対して、抗PD-1*2 IL-7 W142H*2(BICKI-IL-7 W142H)と比較して同様の親和性、及び予想された通り、IL-7野生型形態を含む抗PD-1 IL7二機能性分子と比較してより低い親和性を有することを観察した(Table 3(表12))。驚くべきことに、抗PD-1*2 IL7 W142H*1及び抗PD-1*1 IL7 W142H*1分子は、IL-7野生型形態を含むPD-1 IL7二機能性分子と同様の高いpSTAT5活性を示した(図3)。こうした観察に基づくと、W142H IL-7変異と組み合わせた単量体形態のIL-7が、ヒトT細胞へのIL-7シグナル伝達を促進するためのIL-7分子の最適な立体構造を可能にするということが考えられる。IL7が1つしかない場合でも、W142H IL-7変異を有する分子は、2つのサイトカインを有するIL7 wtを有する分子と同様に良好な活性化効果(pSTAT5)を示す。この結果は、野生型IL-7よりも受容体に対する親和性がより低いIL-7バリアントの文脈では驚くべきものである。
【0362】
1つのIL-7 W142H変異に融合された1つの抗PD-1アームで構築された抗PD-1 IL7分子でも同様の結論が導き出された。抗PD-1*2 IL-7 WT*2構築物、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1構築物、及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*1構築物でも、同様の及び同等の高いpSTAT5活性が得られた(図3C)。
【0363】
【表12】
【0364】
異なる抗PD-1 IL-7構築物の有効性を決定するために、in vivo実験を実施した。1回用量の抗PD-1 IL-7分子を、同価モル濃度(34nM/kg)でマウスに注射した。処置後4日目に、CD4T細胞増殖及びCD8 T細胞増殖を、Ki67マーカーを使用してフローサイトメトリーにより定量化した。図4は、単一のW142H変異を有する抗PD-1 IL7分子(抗PD-1*2 IL-7 W142H*1及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*1)又は単一のPD-1価及び2つのIL7 W142Hサイトカインを有する抗PD-1 IL7分子(抗PD-1*1 IL7 W142H*2)は、CD8 T細胞増殖の促進に高い有効性を示し、CD4 T細胞増殖にはより低い程度の有効性を呈することを示す。
【0365】
抗PD1抗体(1価又は2価)及び1つ又は2つのIL7変異サイトカインを含む二機能性分子が、TCR媒介姓シグナル伝達を再活性化する能力を決定するために、NFATバイオアッセイを実施した。図5Aは、2つの抗PD-1アーム及び1つのIL-7サイトカインで構築された二機能性分子が、抗PD-1抗体単独と比較して、NFATの活性化を増強することを示す。これは、TCR媒介姓シグナル伝達を強化する薬物の相乗的活性が、1つのIL-7サイトカインのみで構築された抗PD-1 IL-7二機能性分子で保存されていることを示す。図9Aに見られるように、細胞を抗PD1及びIL7の組合せで処置しても、そのような相乗効果はなかった。
【0366】
加えて、本発明者らは、次に、1の抗PD-1価(抗PD-1*1)のみで設計した抗PD-1 IL-7分子の活性を評価し、抗PD-1*1 IL-7 W142H構築物(抗PD-1*1 IL7 W142H*1及び*2)は相乗的活性を維持するが、PD-1*1+アイソタイプIL-7 W142H*2処置の組合せでは、TCRシグナル伝達(NFAT活性化)刺激の有効性がより低いことを実証した(図5B)。
【0367】
最後に、異なる抗PD-1 IL-7構築物の特異的なシス標的化及びシス活性を、同時培養アッセイで解析した。U937 PD-1+CD127+細胞を、PD-1- CD127+細胞と混合し(1:1比)、次いで漸増用量の異なる構築物と共にインキュベートした。結合及びIL-7Rシグナル伝達(pSTAT5)を、フローサイトメトリーにより定量化した。結合及びpSTAT5活性化のEC50(nM)を、各構築物並びに各PD-1+及びPD-1-細胞集団について決定した(図6A及び図6B)。本発明者らは、多様な抗PD-1 IL-7変異型分子(抗PD-1*2 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*1、抗PD-1*1 IL7 W142H*2)が、IL-7Rと実質的に優先的に結合してPD-1+細胞内にシグナル伝達し、PD-1+細胞内へのIL7Rシグナル伝達pSTAT5を著しく活性化させることを確認した。重要なことに、構築物PD-1*1 IL7 W142H*1は、他の構築物(抗PD-1*2 IL7 W142H*1、及び抗PD-1*1 IL7 W142H*2)と比較して、PD-1+細胞へのpSTAT5シグナル伝達を刺激する最高の活性を実証した。これらのデータは、1つの抗PD-1アーム及び1つのIL-7で構築した二機能性分子が、がんの文脈においてPD-1+活性化T細胞においてIL-7Rの優先的活性化を可能にするために最適な立体構造及び活性を有することを示唆している。
【0368】
(実施例2: 1つ又は2つの抗PD-1アーム及び1つ又は2つのIL7 W142Hサイトカインで構築された抗PD-1 IL-7分子は、in vivoで良好な薬物動態プロファイルを有する)
図1に記載のもの等の抗PD-1 IL-7二機能性分子構築物2、3、及び4の薬物動態研究を評価した。ヒト化PD1 KIマウスに、1回用量の抗PD-1 IL-7分子(34.4nM/kg)を腹腔内注射した。血漿中薬物濃度を、ヒトIgGに特異的なELISAにより解析した(図7)。また、曲線下面積を計算した(Table 4(表13)を参照)。曲線下面積は、各構築物の経時的な総薬物曝露量を表す。抗PD-1*2 IL-7 W142H*1、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1、及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*2構築物は、抗PD-1*2 IL7WT*1と比較して非常に有利に増強されたPK特性を示した。抗PD-1*1 IL7WT*2と比較して、2.8~19倍高いCmaxが観察された。重要なことには、抗PD-1*1 IL7 W142H*1分子、抗PD-1*1 IL7 W142H*2分子は、in vivoでの十分なPK値に相当する高い薬物濃度(11~15nM)が、少なくとも96時間維持されるが、抗PD-1*2 IL7WT*2分子は、血漿中ではわずか2nMしか検出されない。抗PD-1*2 IL-7 W142H*1の残留薬物濃度は、抗PD-1*2 IL7WT*2濃度の2.5倍である。血漿中薬物曝露は、多くの場合、in vivoでの有効性と相関する。ここで、本発明者らは、1つアームの抗PD-1で構築された全ての抗PD-1 IL-7 W142H分子が、単回注射後の長期薬物曝露を可能にすることを実証している。抗PD-1*2IL-7 W142H*1、抗PD-1* 1 IL-7 W142H*1及び抗PD-1*1 IL-7 W142H*2は、in vivoで類似の有利なPKプロファイルを実証したが、図6Bは、構築物抗PD-1*1 IL-7 W142H*1がPD-1+細胞を活性化する高い能力を保有することを実証する。
【0369】
【表13】
【0370】
(実施例3. 1の抗PD-1価及び1つの融合タンパク質Xで構築した二機能性抗体は、2の抗PD-1価及び1つの融合タンパク質Xで構築した二機能性抗体と比較して哺乳動物細胞による高い生産性を実証した)
哺乳動物細胞による二機能性抗体のフォーマットB及びフォーマットCの生産性を評価し、比較した。IL-7に融合されたFcを有する完全な重鎖を、軽鎖と共にCHO浮遊細胞に一過性に同時トランスフェクトした。産生及び精製後に得られた抗体の量を、サンドイッチELISA(検出のための固定化されたロバ抗ヒトFc抗体及びマウス抗ヒトカッパ+ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス抗体による顕色)を使用して定量した。濃度を、ヒトIvIgG標準物質により決定した。生産性を、収集した培養上清1リットルあたりの精製抗体の量として計算した。
【0371】
結果:二機能性抗体、抗PD-1*2/IL-7 *1(フォーマットB)及び抗体PD-1*1 IL-7 *1(フォーマットC)を、CHO哺乳動物細胞において産生し、結果を図8に示す。驚くべきことに、抗PD-1*1/IL-7 *1構築物(フォーマットC)は、抗PD-1*2/IL-7 *1(フォーマットB)より有意に良好な生産収量(mg/L)を有する。有意な1.7倍(+/-0.7;n=5)高い生産性が得られた。これらの結果は、抗PD-1*1/IL-7*1(フォーマットC)が非常に良好な製造性を示したことを示しており、このことは、臨床開発及び治療応用の次のステップにとって非常に重要である。
【0372】
特に、2つの異なるアームを含む二機能性抗体に関して、1つの主要な問題は、鎖の誤対合及び鎖A(ノブ鎖)と鎖B(ホール鎖)の不正確な会合である。実際に、望ましくないホモ二量体形成(鎖A+鎖A、又は鎖B+鎖B)が一般的に生じる。これにより通常、ホモ二量体二機能性抗体(フォーマットA)の産生と比較してヘテロ二量体の二機能性抗体(フォーマットB及びC)の収量及び純度が低くなり、これは有意に不利な点である。重要な問題は依然として、高い品質及び限定的な又は無視できる副産物及び不純物を伴う均一な二機能性抗体を産生する方法である。
【0373】
しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、フォーマットCの最適化された戦略設計を使用することにより、ホモ二量体フォーマットBと比較して二機能性抗体がより高い産生を誘導することを実証した。その上、抗PD-1*1-IL-7 *1の生産収量は、抗PD-1単独(抗PD-1*1又は抗PD-1*2)と類似の範囲内であり、その生産性は、類似の産生条件で45mg/L(n=5)に等しい。
【0374】
ヘテロ二量体抗体の産生に関する他の主要な問題は、その純度である。ノブイントゥホール戦略は、ヘテロ二量体の産生(鎖A+鎖B)にとって都合がよく、ホモ二量体鎖A又はホモに量体鎖B産生を低減させるが、この戦略は100%有効であるわけではなく、ヘテロ二量体構築物を単離するためには追加の精製が必要である(Wangら、2019年、Antibodies、8巻、43頁)。
【0375】
しかしながら、本発明者らは、高い収量のヘテロ二量体が、抗PD-1*1/IL-7 *1フォーマットCの産生後に得られることを観察した。図9は、プロテインA精製後の抗PD-1*1/IL-7wt*1(図9A)及び抗PD-1*1/IL-7v*1(図9B)のサイズ排除クロマトグラフィーを示す。ヘテロ二量体に対応する1つの主要なピークが、鎖A及び鎖Bを形成するが、ホモ二量体型Fc/Fc(鎖A+鎖A)は、検出されず、ホモ二量体型(鎖A+鎖A)は、非常に微量であった(2%未満)。これらのデータは、本発明の抗PD-1*1/IL-7*1が、生産性に関して最適化され、誤対合を防止することを示唆する。先行技術と比較すると、ヘテロ二量体の約70~75%という収量が、同じKIHs-s戦略を使用して他の二特異性抗体骨格で得られた。
【0376】
そのような純度を得るために、本発明者らは、分子の設計を最適化した。実際に、本発明者らは、この高い純度が、鎖AがFcドメインであり、鎖Bが抗PD-1*1 IL-7*1である場合に限って得られたことを観察した。CHO哺乳動物細胞においてVL+ホール変異を含有する唯一の鎖B(抗PD-1*1/IL-7v*1)の同時トランスフェクションは、鎖Bのホモ二量体(0mg/L)の産生を誘導しない。反対に、抗PD-1*1/IL-7v*1がノブ変異を含む鎖Aである場合、VL+唯一の鎖A(抗PD-1*1/IL-7v*1)の同時トランスフェクション後に、ホモ二量体鎖Aの高い産生(88mg/L)が得られる。これらのデータにより、本発明者らは、鎖Aのホモ二量体の産生を回避するために、鎖AとしてFc及び鎖Bとして抗PD-1*1/IL-7*1を有する分子を設計することを選択した。
【0377】
全体として、これらのデータは、本発明によるフォーマットCの、鎖A(ノブ変異を有するFcドメイン)及び鎖B(ホール変異を有する抗PD-1*1/IL-7*)を有する抗PD-1*1/IL-7*1が、産物の高い生産性及び純度にとって最善の構築物であることを示している。このことは、大規模に生産性するための治療剤としての開発を容易にする。
【0378】
(実施例4. 抗PD-1/サイトカイン二機能性抗体は、初代ヒトT細胞内へのpSTAT5シグナル伝達を活性化することができる)
本発明者らは次に、抗PD-1抗体に融合されたタンパク質の生物活性を評価し、全ての抗PD-1/サイトカイン二機能性分子が初代T細胞を活性化する能力を試験した。この目的に関して、ヒト末梢血T細胞を、抗PD-1*1/IL-7wt*1、抗PD-1*1/IL-7v*1、抗PD-1*1/IL-15*1、抗PD-1*1/IL-21*1構築物の異なる濃度と共に37℃で15分間処置した。インキュベーション後、細胞を固定し、透過処理し、及び抗pSTAT5抗体により染色した。
【0379】
結果:図10Aは、抗PD-1*1/IL-7wt*1、抗PD-1*1/IL-7v*1、抗PD-1*1/IL-15*1、及び抗PD-1*1/IL-21*1が、初代T細胞(CD3+ T細胞)へのpSTAT5シグナル伝達を有効に誘導することを示し、フォーマットCの抗PD-1分子のFcドメインに融合されたサイトカインが、ヒトT細胞を刺激するその能力を保存することを示唆している。本発明者らは次に、抗PD-1/IL-7フォーマットA(抗PD-1*2/IL7v*2)対抗PD-1*1/IL-7v*1フォーマットCが、pSTAT5シグナル伝達を活性化する効率を比較した。構築物抗PD-1*1/IL-7v*1は1つのみのIL-7vサイトカインを含むことから、この分子のpSTAT5活性化は、フォーマットAと比較してより低いことが予想された。しかしながら、図10Bに示されるように、驚くべきことに、より高いpSTAT5活性化が、抗PD-1*1/IL-7v*1(フォーマットC)対抗PD-1*2/IL-7v*2構築物(フォーマットA)について観察され、本発明の抗PD-1/IL-7*1構築物(フォーマットC)が、IL-7分子の最適な立体構造が初代T細胞においてIL-7シグナル伝達の活性化を促進することを可能にすることを示唆した。
【0380】
(実施例5. 抗PD-1二機能性分子は、PD-1-細胞よりPD-1+に対して優先的結合を可能にし、抗PD-1/IL7分子はPD-1+ T細胞においてTCRシグナル伝達の相乗的活性化を可能にする)
本発明者らは、抗PD-1二機能性分子がPD-1+ T細胞を標的とする能力及びPD-1 +細胞に融合されたサイトカイン又はタンパク質の優先的送達及びシス結合を可能にする能力を評価した。U937 PD-1-細胞及びU937 PD1+ CD127+細胞を、同時培養(比1:1)し、漸増用量の抗PD1/IL-7分子と共にインキュベートした。結合及びIL-7Rシグナル伝達(pSTAT5)を、フローサイトメトリーにより定量化した。結合のEC50(nM)及びpSTAT5活性化を、各構築物について、並びに各PD-1 +及びPD-1-細胞集団に関して決定した。並行して、二機能性抗体の結合を、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)により検出し、フローサイトメトリーにより解析した。
【0381】
結果:図11A及び11Bは、CD127+のみを発現するか、又はCD127及びPD-1受容体を同時発現する細胞における抗PD-1*1/IL-7wt*1及び抗PD-1*1/IL7v*1分子の結合を示す。データは、両方の分子が、PD-1-CD127+細胞よりもPD-1+CD127 +細胞に優先的に結合し、抗PD-1単独(抗PD-1*2)と同等の有効性を有することを示している。同時に、PD-1+細胞対PD-1-細胞へのPSTAT5シグナル伝達の活性化もまた、図11Cにおいて詳細に評価した。PD-1+CD127+細胞対PD-1-CD127+細胞におけるIL7Rシグナル伝達pSTAT5の強い活性化が、抗PD-1*1/IL-7wt又はIL7v*1抗体による処置後に見られた(58~315倍高い活性化)が、アイソタイプ/IL7抗体は、PD-1+及びPD-1-細胞において類似の有効性を有し、抗PD-1*1/IL-7*1分子の抗PD-1ドメインが、PD-1+細胞上のIL-7の優先的結合を可能にし、つまり同じ細胞における薬物の標的化及び活性化を可能にすることを確認している。抗PD-1 IL-7は、PD-1陰性ナイーブT細胞より、腫瘍微小環境においてPD-1+腫瘍特異的T細胞上で二機能性分子に融合されたIL-7又は他の分子を濃縮することから、この態様は、in vivoで薬物の生物活性に関係している。全体として、このデータは、抗PD-1の1つのみのアームが、PD-1+細胞上で融合されたサイトカインの選択的送達を可能にするために十分であることを示している。
【0382】
次に、本発明者らは、PD-1+ T細胞上の抗PD-1二機能性分子のシス標的化の生物学的影響を評価した。Promega社のPD-1/PD-L1キット(照会J1250)アッセイを使用した。簡単に説明すると、2つの細胞株を使用した(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)、及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)。細胞を同時培養すると、PD-L1 /PD-1相互作用がTCR媒介活性化を阻害し、それによりNFAT活性化及びルシフェラーゼ活性を遮断する。抗PD-1抗体を加える、PD-1媒介阻害性シグナルを遮断し、TCR媒介シグナル伝達を回復し、それによりNFAT活性化及びルシフェラーゼ合成、及び生物発光シグナルの放出をもたらす。
【0383】
バイオアッセイの結果を、図12Aに示し、これは、二機能性抗PD-1*1/IL7wt*1分子が、TCR媒介シグナル伝達(NFAT)を活性化するために抗PD1*1又は抗PD1*1+非標的化アイソタイプ-IL7(別々の化合物として)より良好であることを示し、PD1+ T細胞に及ぼす二機能性分子の相乗効果を実証する。IL-7変異体を含む抗PD-1*1/IL-7v*1分子もまた、T細胞においてNFATシグナル伝達を再活性化するために有意な相乗効果を示した(図12B)。これらのデータは、1つのIL-7サイトカインを1つの抗PD-1*1に融合すると、2つの別々の化合物がそのような有効性を誘導しない組合せ戦略より、TCRシグナル伝達のより高い活性化を有利に誘導することを示している。
【0384】
(実施例6. 1の抗PD-1価を有する二機能性分子は良好なin vivoでの薬物動態を実証した)
製品の薬物動態及び薬理学を、単回注射後のマウスにおいて評価した。C57bl6JRjマウス(メス、6~9週)に、抗PD-1又は二機能性抗体の1回用量(34nmol/kg)を静脈内又は腹腔内注射した。血漿中薬物濃度を、固定化した抗ヒト軽鎖抗体(クローンNaM76-5F3)を使用するELISAにより決定した後、抗体を含有する血清を加えた。検出は、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)を加えて、従来の方法により顕色することにより行った。薬物曝露に対応する曲線下面積を、各構築物について計算した。
【0385】
結果:本発明者らは最初に、全ての異なる二機能性フォーマット(フォーマットA、B及びC)の薬物動態を比較した。図13は、単一の静脈内(図13A)又は腹腔内(図13B)注射後の1つ又は2つのIL-7vサイトカイン及び1価又は2の抗PD-1価で構築した抗PD-1/IL-7vの薬物動態プロファイルを示す。抗PD-1*1/IL-7v*1(フォーマットC)は、抗PD-1*2/IL-7v*2(フォーマットA)及び抗PD-1*2/IL-7v*1(フォーマットB)と比較して最善の薬物動態プロファイルを実証した。静脈内及び腹腔内注射はいずれも、抗PD-1*1/IL-7*1(フォーマットC)が、二機能性分子の薬物動態を増強するために最適な構築物であることを実証した。
【0386】
次に、本発明者らは、1つの抗PD-1アーム(抗PD-1*1)及びIL-7を有する二機能性分子が、2つの抗PD-1アームで構築した同じ二機能性分子と比較して良好なin vivo薬物動態プロファイルを実証するか否かを調べた。図14は、個々の構築物の結果を示す。データは、全ての二機能性分子の抗PD-1*1/IL-7(フォーマットC)が、対応する二機能性分子である抗PD-1*2/IL-7*1(フォーマットB)と比較して有意に良好な薬物動態プロファイルを実証したことを示している。
【0387】
別の実験では、抗PD-1*2又は抗PD-1*1抗体単独の薬物動態もまた、抗PD-1構築物単独が良好な薬物動態プロファイルを可能にするか、又はこの知見が二機能性分子のみに応用可能であるかを理解するために評価した。図15は、抗PD-1*2及び抗PD-1*1がいずれも、静脈内(図15A)又は腹腔内(図15B)注射後に類似のプロファイルを有することを示し、驚くべきことに抗PD-1*1構築物が二機能性分子に関してのみ良好な薬物動態プロファイルを誘導することを示唆している。
【0388】
不良な薬物動態プロファイルは、二機能性抗体に関する周知の問題である。二機能性抗体は、急速に排泄され、in vivoで短い半減期を示すことから、その臨床での使用が制限される。In vivoで満足できるPK値に対応する良好な薬物濃度(20及び100nM)は、抗PD-1*1/IL-7*1構築物により少なくとも48~72時間維持されるが、抗PD-1*2 IL7*2分子では血清中で検出されるのは2nMに過ぎない。本発明のフォーマットC 抗PD-1*1/IL-7*1は、二機能性抗体の他のフォーマット(フォーマットB及びC)と比較して長期間の曝露でin vivoで薬物動態プロファイルを改善することを可能にする。
【0389】
(実施例7. 抗PD-*1/IL-7*1二機能性分子はT細胞のin vivoでの増殖を促進し、抗PD-1*2/IL*7*2又は抗PD-1*2/IL*7*1構築物と比較して有意な抗腫瘍有効性を誘導する)
T細胞のin vivo増殖を、二機能性分子(34nM/kg)の1回用量を、皮下MC38腫瘍を有するマウスに腹腔内注射した後に評価した。処置後4日目に、血液及び腫瘍を収集し、T細胞を抗Ki67抗体により染色し、フローサイトメトリーにより増殖を定量した。
【0390】
In vivo有効性を、2つの異なる正所性同系モデル、つまり、肝癌モデル及び中皮腫正所性モデルにおいて評価した。ヒトPD-1(エクソン2)を発現するように遺伝子改変した免疫コンピテントマウスをこれらの実験のために使用した。中皮腫モデルに関して、AK7中皮腫細胞を、腹腔内注射した(3*106個の細胞/マウス)。Hepa 1.6モデルに関して、2.5*106個の細胞を門脈に注射した。実験1では、マウスを、PBS、抗PD-1対照(抗PD-1*2)、抗PD-1*1/IL*7v*1の類似の薬物曝露濃度で処置した。実験2では、マウスを、PBS、抗PD-1対照(抗PD-1*2)、抗PD-1*1/IL*7wt*1の類似の薬物濃度で処置した。AK7細胞は、ルシフェラーゼを安定的に発現し、D-ルシフェリン注射後にin vivoでの腫瘍量の定量化を可能にする。データを、ステラジアンあたりのcm2あたりの光子/秒で分析し、背側及び腹側シグナルの平均値を表す。
【0391】
結果:図16Aは、抗PD-1*1/IL7wt*1又はIL7v*1二機能性分子(フォーマットC)が、抗PD-1抗体(抗PD-1*1又は抗PD-1*2)より高い程度にCD4及びCD8 T細胞の有意な増殖を促進することを示している。これらの2つの構築物の有意に優れたCD4 T細胞もまた、抗PD-1*2/IL7*2(フォーマットA)及び抗PD-1*2/IL7*1(フォーマットB)構築物と比較して観察された。同様に、抗PD-1*1/IL7wt*1又は抗PD-1*1/IL-7v*1による処置後に、抗PD-1*2/IL7*2(フォーマットA)及び抗PD-1*2/IL7*1(フォーマットB)構築物と比較して高い増殖が観察された。これらのデータは、異なる構築物が、抗PD-1*1/IL7*1構築物が抗PD-1*2/IL7*2構築物と比較して高いpSTAT5シグナル伝達を誘導するT細胞においてpSTAT5シグナル伝達を活性化する効率(図10A)を裏付ける。
【0392】
興味深いことに、本発明者らは、抗PD-1*1/IL7wt*1又はIL7v*1が、抗PD-1*2 IL-7*2及び抗PD-1*2分子より、腫瘍における幹細胞様エフェクターメモリーCD8 T細胞の増殖を有意に誘導することを観察した(図16B)。抗PD-1*1 IL-7*1がTCF1+幹細胞様CD8 T細胞集団を強化する能力は、がんの免疫制御にとって極めて重要であるために特に興味深い。これらの細胞は自己再生して、高いエフェクター機能を有する腫瘍特異的T細胞のプールを生成することが可能である。
【0393】
図17A及び17Bは、肝癌正所性モデルにおける抗PD-1*1 IL-7wt*1及び抗PD-1*1 IL-7v*1のin vivo有効性を示す。2つの異なる実験において、抗PD-1*1/IL*7*1(wt及びバリアントの両方)(フォーマットC)は、抗PD-1*2抗体と比較して有意に優れた有効性を実証した。完全な腫瘍根絶(完全な応答)の85%が、抗PD-1*1/IL7v*による処置後に得られたが、抗PD-1*2により処置したマウスでは完全な腫瘍応答を示したのは16%に過ぎなかった。
【0394】
これと比較して、本発明者らはまた、構築物抗PD-1*2/IL7v*2も試験し、同じ肝癌モデルにおいて抗PD-1*2/IL-7*2構築物について低い抗腫瘍有効性が観察され、抗PD-1*1/IL7*1構築物対抗PD-1*2/IL-7*2の優れたin vivo活性の根底をなす。
【0395】
中皮腫正所性モデル(図18A及びB)では、抗PD-1*1/IL7v*1は、抗PD-1*2抗体処置と類似の>85%の完全な応答という高い抗腫瘍有効性を実証した。これらのデータは、抗PD-1感受性モデルにおいて、抗PD-1*1/IL7v*1が、非常に有効であることを示しており、たとえフォーマットCが1つのみの抗PD-1アーム(抗PD-1*1)を含む場合であっても、薬物が、2価を有する抗PD-1と類似の有効性を示すことを示唆している。
【0396】
全体として、これらのデータは、二機能性抗体の設計が、in vivoでの抗腫瘍有効性を得るために極めて重要であることを強調する。1つのサイトカイン又はタンパク質と抗PD-1*1との融合体(フォーマットC)は、最善の抗腫瘍有効性及びT細胞のin vivo増殖を示すが、2つの抗PD-1アーム及び1つ又は2つのサイトカイン又はタンパク質で構築した二機能性分子は、in vivoでT細胞の効率的な増殖も抗腫瘍効果も誘導しなかった。
【0397】
(実施例8. 抗PD-1*1 IL-7v*1構築物は、IL-7サイトカイン及び抗PD-1*1 IL7WT*1二機能性抗体より高い程度にin vitroでTregの抑制性機能を無効にする)
抗PD1治療は、T細胞エフェクター機能を刺激するが、免疫抑制性分子(TGFB、IDO、IL-10...)及び制御性細胞(Treg、MDSCs、M2マクロファージ)は、治療の完全な潜在性を限定する敵対する微小環境を作製する。Treg細胞は、低レベルのIL-7R(CD127)を発現するが、それらはなおも、IL-7処置後にpSTST5を刺激することができ、IL7は、Treg抑制性機能を解除することが公知である(Allgauer Aら、J. Immunol. 2015年、195巻、3139~3148頁;Liu Wら、J Exp Med. 2006年、203巻、1701~1711頁;Seddiki Nら、J exp Med 2006年、203巻、1693~1700頁;Codarri Lら、J exp Med 2007年、204巻、1533~1541頁;Heninger AKら、J immunol 2012年、189巻、5649~5658頁)。抗PD-1/IL7構築物がIL-7と比較してTreg機能を解除する有効性を評価するために、Treg及びエフェクターT細胞を同時培養することによる抑制性アッセイを行った。本発明者らは、IL-7又は抗PD1-IL7処置がTreg媒介阻害性効果を遮断して、Treg細胞の存在下であってもTeff細胞の増殖を可能にすることを図19で観察した。抗PD1抗体は、エフェクターT細胞においてTreg抑制性活性を阻害することができない。
【0398】
驚くべきことに、抗PD-1*1 IL7 W142H*1は、IL-7サイトカインと比較して、同様に抗PD-1*1 IL7WT*1構築物と比較して、Treg機能を抑制する最高の有効性(**p<0.05)を実証した。これらのデータは、ネイキッドIL-7サイトカイン又は非変異型の抗PD-1*1 IL7*1二機能性抗体より、抗PD-1*IL7W142H*1構築物を使用する利点を強調する。1価のバリアントが、Treg無効化及び同時に強いT細胞増殖の両方に影響を及ぼし、二重の効果を有することは、選択されたIL7バリアントW142HがIL-7サイトカインの野生型と比較してIL7Rに対して低い親和性を示すことから、予想外であった。
【0399】
方法:CD8エフェクターT細胞増殖に及ぼすin vitroでのTregの抑制性活性の評価。CD8+エフェクターT細胞及び自己CD4+ CD25high CD127low Tregを、健常ドナーの末梢血から選別し、細胞増殖ダイ(CD8+ T細胞に関してCPDe450)により染色した。次に、Treg/CD8+Teffを、OKT3コーティングプレート(2μg/mL)において1:1の比で5日間同時培養し、Teff細胞の増殖を、CPDマーカーの喪失によりフローサイトメトリーにより定量した。
【0400】
(実施例9. 抗PD-1*1 IL-7v*1は、2つの異なる腫瘍モデルにおいて抗PD-1*1 IL7WT*1構築物と比較してin vivoで優れた有効性を実証した)
In vivo有効性を、2つの異なる正所性同系モデル、つまり肝癌モデル及び中皮腫正所性モデルにおいて評価した。ヒトPD-1(エクソン2)を発現するように遺伝子改変された免疫コンピテントマウスを、これらの実験のために使用した。中皮腫モデルに関して、AK7中皮腫細胞を腹腔内に注射した(3*106個の細胞/マウス)。Hepa 1.6モデルに関して、2.5*106個の細胞を門脈に注射した。実験1では、マウスを、PBS、抗PD-1対照(抗PD-1*2)、抗PD-1*1/IL7v*1(抗PD-1*1 IL7W142H*1)、又は抗PD-1*1 IL7wt*1の類似の薬物曝露濃度により処置した。AK7細胞及びHepa1.6は、ルシフェラーゼを安定的に発現し、D-ルシフェリン注射後にin vivoでの腫瘍量の定量化を可能にする。データを、ステラジアンあたりのcm2あたりの光子/秒で分析し、背側及び腹側シグナルの平均値を表す。
【0401】
AK7腹腔内モデルは、図18に実証されるように抗PD-1抗体の良好な応答を可能にする、腫瘍微小環境においてPD-1を発現する高いCD4+及びCD8+ T細胞浸潤が観察されることと関連するPD-1抗体処置に対して非常に感受性である。同じ実験において、抗PD-1*1 IL7v*1の有効性を、その野生型IL7ホモログ構築物(抗PD-1*1 IL7wt*1)の有効性と比較した。抗PD-1*1 IL7v*1構築物は、92%の完全な応答(n=1匹の死亡/14匹のマウス)を誘導し、中等度の抗腫瘍有効性(62%の完全な応答)を誘導する抗PD-1*1 IL7wt*1構築物と比較して優れた有効性を誘導した(図20A)。腫瘍の生物発光解析は、抗PD-1*1 IL7v*1が、処置後11~18日以内に腫瘍のクリアランスを誘導したが、抗PD-1*1 IL7wt*1群では、腫瘍は処置後に縮小し、その後最終的に再発し(データは示していない)、IL-7野生型構築物による処置では、低親和性IL-7(IL7W142H)で構築した二機能性抗体と比較して有効性が一過性であり得ることを示している。
【0402】
抗PD-1*1 IL7v*1処置により誘導されたメモリー応答を評価するために、抗PD-1*1 IL7v*1により処置した全ての治癒したマウスに、AK7中皮腫細胞の第2の注射を再チャレンジした。図20Bに示すように、腫瘍の再チャレンジ後には腫瘍生物発光は検出されなかったが、チャレンジしたナイーブマウスでは複数の時点で高い生物発光シグナルが検出された。これらのデータは、抗PD-1*1 IL7v*1が任意の新規処置の非存在下で強く長期間の特異的メモリー抗腫瘍応答を誘導したことを実証した。
【0403】
抗PD-1*1 IL7v*1は、IL-7Rに対して低い親和性を有するが、この構築物は、PD-1感受性腫瘍モデルにおいて、抗PD-1*IL-7wt*1構築物より予想外に高い効率を実証し、そのアンタゴニスト抗PD-1活性様抗PD-1*2抗体を保存する。これらのデータは、抗PD-1*1 IL7v*1が、in vivoでPD-1阻害性受容体の遮断活性を維持するための好ましい構築物であることを強調する。本発明者らは、IL-7の変異が、PD-1- CD127+非腫瘍特異的T細胞(図11Cに記載される)よりPD-1+腫瘍特異的T細胞に対して二機能性抗体の親和性のバランスをとり、in vivoでの薬物のより良好な有効性をもたらすことを仮定する。
【0404】
がん患者における一次耐性を模倣するための抗PD(L)1不応性モデルにおける有効性を評価するために、マウス肝癌Hepa1.6モデルを選択した。これは、免疫コンピテントマウス(ヒトPD-1を発現する)において実行される正所性同系モデルである。このモデルは、記載される腫瘍からの腫瘍T細胞除外のために特に重要である(Gauttier Vら、2020年、Clin Invest、130巻、6109~6123頁)。IL7Rに対して低い親和性を有する抗PD-1*1 IL7v*1対IL7Rに対して高い親和性を有する抗PD-1*1 IL7wt*1の有効性を、同じ実験で並べて比較した。別々の群において、マウスを、PBS(対照)、抗PD-1*2又はアイソタイプ*1 IL7*v*1(抗ウイルスタンパク質エンベロープを標的とする二特異性抗体のホモログ構築物であり、実験のアイソタイプ対照として使用される)の同じ薬物曝露濃度により処置した。抗PD-1*1 IL7v*1は、図21に示されるように、高親和性野生型IL7で構築した抗PD-1*1 IL7wt*1(47%の完全な応答のみ)より明らかに優れた60%の完全な腫瘍応答を達成した。このモデルでは、抗PD1抗体は、予想通り、有効性を有さない。更に、アイソタイプ*1 IL7v*1は、このモデルにおいて有効性を有さず、抗PD-1/IL7構築物を使用して抗PD-1及びIL-7処置を組み合わせることは、PD-1不応性モデルにおけるT細胞活性化及び抗腫瘍応答を増強するための良好な治療戦略である。
【0405】
抗PD-1*1 IL7v*1処置により誘導されるメモリー応答もまた、このモデルにおいて試験し、同じ腫瘍の不在が観察されている。
【0406】
全体として、これらのデータは、そのCD127受容体に対して低い親和性を有する、1の抗PD-1価及び1つのIL-7サイトカイン変異(W142H)を有する抗PD-1/IL-7構築物の優れた有効性を確認する。
【0407】
(実施例10. 抗PD-1不応性モデルにおける抗PD-1*1 IL-7v*1の実証されたin vivo有効性は、抗PD-1受容体の強い転写活性及び幹細胞様メモリーCD8 T細胞部分集団(TCF1+Tox-細胞)の腫瘍内増殖と相関する)
腫瘍微小環境における抗PD-1*1 IL7v*1の効果をより良好に理解するために、腫瘍全体のトランスクリプトーム解析もまた、行った。Nanostring技術(nCounter(登録商標)PanCancer Immuneプロファイリングパネル)を使用して遺伝子発現を検出し、定量した。バックグラウンドを、陰性対照の幾何平均に閾値を設定して、データを、パネルに含まれる複数の参照遺伝子に対して正規化した。遺伝子の示差的発現(DEG)を、Rパッケージを使用して解析した。図22のDESeq2解析からのDEGの教師なし階層型クラスター解析のヒートマップは、転写発現パターンが、抗PD-1及び抗PD-1*1 IL7W14H*1群の間で非常に類似であり、PBS群とは有意に異なることを示し、抗PD-1*1 IL7v*1構築物の抗PD-1ドメインが、その1の抗PD-1価にも関わらず、そのアンタゴニスト生物活性をin vivoで保存したことを示唆している。抗PD-1*2又は抗PD-1*1 IL7W142H*1による処置後に上方調節された遺伝子のSTRINGによるタンパク質-タンパク質相互作用ネットワーク機能エンリッチメント解析は、PBS条件と比較して、走化性免疫受容体活性、Jak-STATサイトカインシグナル伝達、及び抗原提示(MHCタンパク質複合体結合及びTCRシグナル伝達)に関係するいくつかの遺伝子クラスターを同定した。抗PD-1*2及び抗PD-1*1 IL7W142H*1の間で示差的に発現された遺伝子の中で、本発明者らは、RパッケージGSVAからの単一試料GSEA(ssGSEA)シグネチャーアルゴリズムを使用して、抗PD-1群及びPBS群(図22B)と比較して抗PD-1*1 IL7W142H*1群においてTCF7、CCR7、SELL、IL7R遺伝子の発現と関連するCD8又はCD4 T初期活性化/メモリー幹細胞様T細胞シグネチャーが有意に上方調節されることを観察した。これに対し、疲弊CD8 T細胞遺伝子(LAG3、PRF1、CD8A、HAVRC2、GZMB、CD8B1、KLRD1、TNFRSF9、TIGIT、CTSW、CCL4、CD63、IFNG、CXCR6、FASL、CSF1)の上方調節が、予想通り抗PD-1処置群において観察された。疲弊T細胞の遺伝子シグネチャー及びナイーブ様/幹細胞様メモリーT細胞シグネチャーを、単一細胞トランスクリプトーム解析を使用してがんにおける異なるT細胞サブセットを規定する(Andreattaら、Nature comm 2021年)から適合させた。
【0408】
CD8 T細胞浸潤性リンパ球のフローサイトメトリーによる表現型決定解析もまた、抗PD-1*1 IL7v*1処置により誘導される集団を更に特徴付けるためにex vivoで行った。この耐性モデルで最初に記載された腫瘍からのT細胞除外にもかかわらず、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)組成物は、抗PD-1*1 IL7W142H*1処置後に強く増加し、産物はT細胞サブセットを劇的に改変した(図22B及びC、23C)。フローサイトメトリー解析は、抗PD-1*1 IL7 W142H*1が腫瘍微小環境の組成を改変し、Tregに影響を及ぼさずにCD4よりCD8 T細胞の蓄積に都合がよいことを実証した(図23A)。Ki67増殖マーカーも発現する(図23C)幹細胞様メモリーT細胞(CD3+CD8+CD44+TCF1+TOX-)の表現型を有するCD8+ CD44+活性化T細胞のパーセンテージの高い増加が、処置後に観察された(図23B)。抗PD-1処置は、腫瘍においてTOX-TCF1-又はTOX+ TCF1-関連疲弊表現型の蓄積を誘導する(Utzschneiderら、Immunity 2016年、45巻、415~427頁;Mannら、2019年、Nature immunology、20巻、1092~1094頁)。これらのデータは、トランスクリプトーム解析を裏付け、抗PD-1*1 IL7W142H*1分子により活性化されたT細胞がCD44活性化マーカーを発現することを更に決定し、このT細胞サブセットがナイーブT細胞サブセットではなく、初期活性化幹細胞(steam)様メモリーT細胞サブセット(TCF1+TOX-)であることを示唆する。これらのデータはまた、抗PD-1*1 IL7W142H*1が別の腫瘍モデルにおいてin vivoで幹細胞様メモリーT細胞の蓄積及び増殖を促進する有効性を記載する実施例9を確認する。
【0409】
(実施例11. 抗PD-1*1 IL7v*1は、慢性的に刺激したヒトT細胞の生存を維持し、TCF1+ T細胞の増殖を誘導する)
ヒトT細胞に及ぼす抗PD-1*1IL7v*1の効果を確認するために、本発明者らは、in vitroで慢性的な抗原刺激モデルにおける抗PD-1/IL7構築物の効果を試験した。ヒトPBMCを、CD3 CD28コーティングプレート(3μg/mL、OKT3及び3μg/mL、CD28.2抗体)において3日毎に繰り返し刺激した。各刺激後、抗PD-1*1 IL7v*1(抗PD-1*1 IL7W142H*1)構築物、アイソタイプ対照、又は抗PD-1*1抗体を培養物に加えた。5回目の刺激の24時間後、T細胞生存率及び表現型をフローサイトメトリーにより評価した。
【0410】
図24Aは、抗PD-1*1 IL7W142H*1が、抗PD-1処置と比較して慢性的に疲弊T細胞の生存を維持することを示している。T細胞の表現型解析(図24B)は、抗PD-1*1 IL7v*1が、TCF1+ CD8 T細胞サブセットの特異的増殖及び維持を促進することを実証した。TCF1+ T細胞集団は、自己再生及び長期間の有効な応答が可能である幹細胞様T細胞集団として記載される。これらの結果は、免疫腫瘍学処置又は他のがんの処置に対する一次耐性又は二次耐性における疲弊T細胞増殖を防止するがんの初期段階(アジュバント又はネオアジュバント状況)で、及び様々な免疫腫瘍逃避状況で、TILを抗PD-1*1 IL7v*1により再度活力を与えることにより、固形腫瘍において長期間の効果を予測することを可能にする。
【0411】
(実施例12. 抗PD-1*1 IL-7v*1は、PD-1治療に対して耐性の異なるヒトモデルにおいてin vivoで単剤療法有効性を実証した)
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)モデル(乳がん細胞MDA-MB231を皮下に移植した免疫欠損マウス)において、マウスを4人の異なるドナーからのヒト末梢血単核球細胞(PBMC)によりヒト化した後、抗PD-1*2又は抗PD-1*1 IL7W142H*1二機能性抗体により処置した。試験した全てのPBMCドナーにおいて、抗PD-1*1 IL7v*1は、腫瘍成長を低減させたが、抗PD-1*2は、単独で効果を有さない(図25)。
【0412】
別のヒト化マウスモデル、肺がんモデル(A549)において、抗PD-1*1 IL7v*1を、抗PD-1 *1処置マウスの血清中のIFNg分泌の増加と関連する抗PD-1*1と比較して確認した(34日目)(図26)。このモデルはいずれも、抗PD-1*1IL7vが、抗PD-1*2より高い程度にin vivoでヒト免疫媒介抗腫瘍応答をモジュレートすることができることを実証する。
【0413】
(実施例13. 抗PD-1*1 IL7v *1は、カニクイザルにおいて抗PD-1*1 IL7wt*1分子と比較して良好な薬物動態プロファイルを実証した)
カニクイザルに、1用量の抗PD-1*1 IL7wt*1(0.8mg/kg、4.01mg/kg)又は1用量の抗PD-1*1 IL7v*1(抗PD-1*1 IL7 W142H*1)0.8mg/kg、4.01mg/kg、又は25mg/kg)を静脈内注射した。注射後、複数の時点で血清を収集し、抗PD-1 IL7構築物を、MSD技術を使用するELISAイムノアッセイにより定量化した。簡単に説明すると、ヒトPD1タンパク質を固定化し、血清に抗PD-1*1 IL7*1抗体を加えた。ELISAは、スルホタグ抗ヒトカッパ軽鎖モノクローナル抗体により顕色した。
【0414】
薬物動態データは、両方の構築物に関して線形であり、用量と関連した。しかしながら、抗PD-1*1 IL7v*1構築物では、抗PD-1*1 IL7wt*1構築物と比較して良好な薬物動態プロファイルが観察される(図27)(用量4.01mg/kgで、曲線下面積29.6対108、IL7wt対IL7v)。興味深いことに、IL7受容体に対して低い親和性を有する抗PD-1*1 IL7v*1は、10~14日までin vivoでCD8 T細胞の増殖を誘導し、薬物の生物効果が薬物動態曝露を超えて持続することを示した。これらのデータは、非ヒト霊長類のT細胞サブセットに及ぼす長期間の効果を測定する新規薬物動態モデルを可能にし、ヒトの状況、つまり、抗PD-1*1 IL7v*1二機能性抗体の1回のみの注射後のCD8+ T細胞増殖に応用可能である。
【0415】
(実施例14. IgG1 N297Aアイソタイプ又はLALA PG IgG1アイソタイプで構築した抗PD-1*1 IL7v *1は、ヒトT細胞においてpSTAT5シグナル伝達を活性化する同じ能力を有する)
実施例1~13では、フォーマットIgG1 N297Aを抗PD-1*1/サイトカイン構築物のために使用した。本発明者らは、LALA PGの追加の変異を有する別のFcサイレントフォーマットを試験し、これらの変異は、LALA PG変異がFcR受容体に対する結合を損なうことから、ADCC、ADCP及びCDC活性を完全に無効にすると記載された。
【0416】
抗PD-1*1 IL7W142H*1のIL-7R活性をpSTAT5活性により評価した(図28)。CD4及びCD8 ヒトT細胞における活性に関して、2つの構築物の間で差は認められず、本発明を異なるFcサイレントアイソタイプで構築することができることを示している。
【0417】
(実施例15. IgG1 N297Aアイソタイプ又はFcRn結合を改善するためのバリアント、又は低い電荷pHiを有するバリアントで構築した抗PD-1*1 IL7v *1は、ヒトT細胞において同pSTAT5シグナル伝達を活性化する同じ能力を有する)
本発明者らは、図29に記載するように、新規抗PD-1*1 IL7W142H*1変異体:FcRn結合を向上させるためのFcドメインにおける変異(YTE、LS、DHS)、又は軽鎖抗PD-1*1における変異を含む二機能性分子の複数の構造の生物活性を設計及び比較した。全ての抗PD-1/IL7 W142H構築物は、ELISAアッセイにより実証されるように抗PD-1*1 IL7W142H*1 N297A抗体と類似のPD-1受容体に対する高い親和性を保有する(図29)。そのような抗PD-1*1 IL7W142H*1変異体は、配列番号24に規定の通りのVH及び配列番号5に規定の通りのIL-7、及び配列番号28、88、又は99に規定の通りのVLを含む。
【0418】
抗PD-1/IL7 W142H変異体分子は、抗PD-1*1 IL7W142H*1 N297A二機能性分子と類似の高いpSTST5活性を実証し、ナイーブTリンパ球(PD1-細胞)において抗PD-1*1 IL-7wt*1より低い活性であった(図30)。これらの知見に基づき、Fcドメイン又はVLドメインにおける変異は、本発明の文脈において有用な代替骨格を支持した。
【0419】
材料及び方法
PD1結合ELISA
活性ELISAアッセイのため、組換えhPD1(Sino Biologicals社、Beijing、China;照会10377-H08H)を、プラスチック上、0.5μg/mlで炭酸塩バッファー(pH9.2)において固定化し、精製した抗体を加えて、結合を測定した。インキュベート及び洗浄後、ペルオキシダーゼ-標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)を加え、従来方法により明らかにした。
【0420】
ELISAアンタゴニスト:PDL1とヒト化抗PD1との間の競合
競合的ELISAアッセイを、PD-1:PD-L1阻害剤スクリーニングELISAアッセイペア(AcroBiosystems社;USA;照会EP-101)により行った。このアッセイでは、組換えhPDL1を、PBS pH7.4緩衝液中2μg/mlでプラスチック上に固定化した。精製抗体(異なる濃度)を、0.66μg/ml最終(固定濃度)のビオチン化ヒトPD1(AcroBiosystems;USA;照会EP-101)と混合し、競合的結合を37℃で2時間測定した。インキュベーション及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Vector laboratoring社;USA;照会SA-5004)を加えて、ビオチン-PD-1Fc結合を検出し、従来の方法により顕色した。
【0421】
pSTAT5解析
ヒト健常ボランティアの末梢血から単離したPBMCを抗PD-1/IL-7分子と共に37℃で15分間インキュベートした。
【0422】
シス活性を決定するために、CD127及びPD-1を形質導入したU937を、CD127+のみを形質導入したU937と混合した。細胞を、1:1比で混合した細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670、thermofisher社)により染色し、試験分子により37℃で15分間処置した。各細胞サブセットを、細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670)により標識後、同時培養した。次に、細胞を固定し、透過処理し、及びAF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694)、BD Bioscience社)により染色した。ヒトPBMCに関して、pSTAT5活性化を、CD3+ T細胞集団において評価した。U937アッセイに関して、pSTAT5活性化を、U937 PD1+ CD127+細胞及びU937 CD127+細胞において評価した。
【0423】
細胞結合解析
CD127及びPD-1を形質導入したU937を、CD127+のみを形質導入したU937と混合した。細胞を、1:1比で混合した細胞増殖ダイ(CPDe450又はCPDe670、Thermofisher社)により染色した。細胞を、Yellow/live dead fixable染色(Thermofisher社)により染色後、PBS 2% ヒト血清中で希釈したヒトFcブロック(BD Bioscience社)により染色した。次に細胞を、試験分子の系列濃度により染色し、抗体の顕色を、抗ヒトIgG-PE抗体(Biolegend社、クローンHP6017)により行い、フローサイトメトリーにより分析した。
【0424】
抗PD-1/IL7のin vivoでの薬物動態
薬物動態を解析するために1回用量の分子を、C57bl6JrJマウス(メス、6~9週)に眼窩内又は腹腔内又は静脈内(後眼窩)に注射した。血漿中の薬物濃度を、IgG融合Il67を含有する血清により希釈した固定化された抗ヒト軽鎖抗体(クローンNaM76-5F3)を使用してELISAにより決定した。検出を、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)により行い、従来の方法により顕色した。
【0425】
Promega細胞ベースのバイオアッセイを使用したT細胞活性化アッセイ
T細胞活性化を回復させる抗PD-1抗体の能力を、Promega PD-1/PD-L1キット(照会J1250)を使用し、試験した。2つの細胞株、(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATにより誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを刺激するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を使用した。細胞を同時培養するとき、PD-L1/PD-1相互作用は、TCRが仲介する活性化を阻害し、これにより、NFAT活性化及びルシフェラーゼ活性を遮断する。抗PD-1抗体の添加は、PD-1が仲介する阻害性シグナルを遮断し、これが、NFAT活性化及びルシフェラーゼ合成及び生物発光シグナルの放出を導く。実験を、製造元の推奨に従い行った。試験分子の連続希釈液を試験した。PD-L1+標的細胞の同時培養の4時間後、PD-1エフェクター細胞及び試験分子、BioGlo(商標)ルシフェリン基質を、ウェルに加え、プレートを、Tecan(商標)ルミノメーターを使用し、読み取った。
【0426】
in vivo増殖
二機能性分子の1回用量(34nM/kg)を、皮下MC38腫瘍を有するC57bl6JrJマウス(メス6~9週)に腹腔内注射した。マウスを1用量(34nM/kg)により腹腔内注射を介して処置した。処置後4日目に、血液を収集し、T細胞を、抗CD45、CD3、抗CD8、抗CD4抗体及び抗ki67抗体により染色し、フローサイトメトリーにより増殖を定量化した。
【0427】
In vivoヒト化PD1ノックインマウスモデル
抗PD-1/IL-7分子の有効性を、ヒトPD-1(エクソン2)を発現するように遺伝子改変された同系免疫コンピテントマウスにおいてin vivoで評価した。中皮腫正所性モデルに関して、AK7中皮腫細胞を、腹腔内注射(3e6個の細胞/マウス)した後、4/6/8日目に同価薬物曝露用量[抗PD-1*2(1mg/kg)、抗PD-1*1/IL-7*1、4mg/kg]により処置した。注射したAK7細胞は、ルシフェラーゼを安定的に発現し、それによりD-ルシフェリン(3μg/マウス、GoldBio社、Saint Louis MO、USA、照会115144-35-9)の腹腔内注射後にin vivo生物発光シグナルの生成を可能にする。ルシフェリン注射の10分後、生物発光シグナルを、マウスの背側及び腹側でBiospace Imagerにより1分間測定した。データを、ステラジアンあたりのcm2あたりの光子/秒で分析し、背側及び腹側シグナルの平均値を表す。各群は、1群あたり5~7匹のマウスの平均値+/- SEMを表す。肝癌モデルに関して、Hepa1.6肝癌細胞を2.5e6個の細胞で門脈に皮下注射した。次に、マウスを、4/6/8日目に同価薬物曝露用量[抗PD-1*2(1mg/kg)、抗PD-1*1/IL-7*1、4mg/kg]により処置した。
【0428】
抗体及び二機能性分子
以下の抗体及び二機能性分子を、本明細書において開示する異なる実験において使用した:ペムブロリズマブ(Keytrudra、Merck社)、ニボルマブ(Opdivo、Bristol-Myers Squibb社)、及び配列番号24において定義する可変重鎖(VH)及び配列番号28、88又は99において定義する可変軽鎖(VL)を含む抗PD1ヒト化抗体又は配列番号71において定義する重鎖及び配列番号72において定義する軽鎖を含む抗PD1キメラ抗体を含む本明細書において開示する二機能性分子。
【0429】
【表14】
【0430】
構築物1は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物1は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*2とも呼ばれる)。この分子は、実施例1~7で試験した構築物に対応する。この分子は、BICKI-IL-7 W142Hとも呼ばれる。特に、構築物1は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)、又は配列番号71に規定の通りの重鎖及び配列番号72に規定の軽鎖を含む抗PD1キメラ抗体を含む。また、この分子は、配列番号5に記載のもの等のIL7バリアントを含む。
【0431】
実施例では、BICKI-IL-7 WTと呼ばれる対照分子は、構築物1に対応するが、野生型IL-7を有する。これは、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、IgG4 S288Pアイソタイプを有する。
【0432】
別の対照分子は抗PD1*2である(IL7を一切有さない)。この分子は、配列番号79に規定の通りの重鎖及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0433】
構築物2は、2つの抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物2は、抗PD-1*2 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。特に、構築物2は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、特に、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖(ホール)又は配列番号81に規定の通りの重鎖(ノブ)及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0434】
構築物3は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び単一のIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物3は、抗PD-1*1 IL-7 W142H*1とも呼ばれる)。特に、構築物3は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖、配列番号75に規定の通りのFc領域及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0435】
抗PD-1*1と呼ばれる対照構築物は、構造3と類似しているが、IL-7バリアントを欠いている。そのような対照は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、配列番号81に規定の通りの重鎖、配列番号75に規定の通りのFc領域、及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0436】
構築物4は、単一の抗PD-1抗原結合性ドメイン及び2つのIL-7 W142Hバリアントを含む(構築物4は、抗PD-1*1 IL- W142H*2とも呼ばれる)。特に、構築物4は、配列番号24に規定の通りの可変重鎖(VH)及び配列番号28に規定の通りの可変軽鎖(VL)を含む。この分子は、配列番号83に規定の通りのIL-7 W142Hに結合した重鎖、配列番号76に規定の通りのIL-7 W142Hに結合したFc領域、及び配列番号80に規定の通りの軽鎖を含む。
【0437】
構築物2、3、及び4は、IgG1 N298Aアイソタイプを有するように遺伝子操作し、重鎖AのCH2及びCH3にノブを、重鎖BのCH2及びCH3にホールを作出するために、Fc部分のアミノ酸配列を変異させた。抗PD-1 IL-7及び抗PD-1*1構築物は全て、IgG4 S288Pアイソタイプで構築した抗PD-1*2構築物(IL-7を欠如する)及び抗PD-1*2 IL7wt*2(BICKI-IL-7 WT)を除いて、IgG1N298A変異型アイソタイプを含む。
【0438】
実施例3~8で使用した構築物の説明
二機能性抗体の異なる構築物を試験して比較した。以下のフォーマットを試験した:(1)フォーマットA(抗PD-1*2/IL-7*2)、(2)フォーマットB(抗PD-1*2/IL-7*1)、(3)フォーマットC(重鎖に融合された抗PD-1*1/IL-7*1)。フォーマットCに関して、Fcドメインは、CH1 CH2及びヒンジ部分を含有する。全ての構築物は、IgG1 N298Aアイソタイプにより操作され、アミノ酸配列をFc部分で変異させ、重鎖AのCH2及びCH3においてノブを、並びに重鎖BのCH2及びCH3においてホールを作製した。全ての構築物は、Fcドメインと、融合されたIL-7mタンパク質との間にGGGGSGGGGSGGGGSリンカー(配列番号70)を含む。
図1
図2A
図2B
図3-1】
図3-2】
図4
図5
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図9-1】
図9-2】
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図11-1】
図11-2】
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図22-1】
図22-2】
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【配列表】
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【国際調査報告】