(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】音響バイオセンサアッセイ組立体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/036 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01N29/036
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537151
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021078820
(87)【国際公開番号】W WO2022128208
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513288470
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・フランシュ・コンテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・オセエフ
(72)【発明者】
【氏名】テレーズ・ルブロワ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA04
2G047BC04
2G047BC14
2G047GB17
(57)【要約】
バイオセンサ組立体(10)が、互いに隣に並置された複数のバイオセンサユニットを含む。連続的圧電単結晶層(1)のそれぞれの部分(P)は、バイオセンサユニットに専用であり、そして、ブラッグソリッドバルク構造(2)は、隣接するバイオセンサユニットに関連するそれの部分の間に圧電層上に配置される。それぞれのブラッグ構造は、圧電層に平行なパターン反復方向(D)を有し、弾性振動の制限およびバイオセンサユニットの間のクロストークを抑制するために設計される。バイオセンサ組立体は、低コスト価格で圧電ウエハから製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に平行に互いに隣に並置された複数のバイオセンサユニットを含むバイオセンサ組立体(10)であって、前記バイオセンサユニットが、前記バイオセンサユニットの圧電部分内で電圧によって生成された音響振動に基づいてその他のバイオセンサユニットから独立して測定を実行する能力を有するように、それぞれの前記バイオセンサユニットが、それぞれの前記圧電部分(P)と、その他のバイオセンサユニットとは別に前記圧電部分に前記電圧をかけることに専用の少なくとも1つの電極(4)とを有し、
それぞれのバイオセンサユニットが、少なくとも前記バイオセンサユニットを使用して検査されるべきサンプルから生体化合物を固定するために配置されたバイオインターフェース(5)をさらに備え、
前記バイオセンサ組立体(10)が、前記バイオセンサユニットのうちの少なくともいくつかのバイオセンサユニットの前記圧電部分(P)が、前記基準面と平行に、前記圧電部分の間に連続して伸びる圧電単結晶の1つの共通の層(1)によって形成される、ということを特徴とし、
前記バイオセンサ組立体(10)が、圧電単結晶層(1)によってしっかりと支えられたおよび前記基準面内にあるパターン反復方向(D)を有するブラッグソリッドバルク構造(2)をさらに含み、前記組立体内で互いに隣接するバイオセンサユニットの任意のペアについて、前記ブラッグソリッドバルク構造のうちの少なくとも1つが、前記ペアの両方のバイオセンサユニットの間に位置し、前記ペアの前記バイオセンサユニットのうちの1つのバイオセンサユニットの前記圧電部分から前記ペアのその他のバイオセンサユニットの前記圧電部分に向けて方向付けられた少なくとも1つのパターン反復方向を有するように、前記ブラッグソリッドバルク構造が、前記圧電単結晶層上に分布する、ということを特徴とする、バイオセンサ組立体(10)。
【請求項2】
前記バイオセンサユニットのうちの1つに専用の前記圧電部分(P)のそれぞれが、前記ブラッグソリッドバルク構造のうちの1つまたはいくつかによって囲まれるように、前記ブラッグソリッドバルク構造(2)がさらに、前記圧電単結晶層(1)上に分布する、請求項1に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項3】
前記バイオセンサユニットのうちの1つに専用の前記圧電部分(P)の境界に隣接するそれぞれのブラッグソリッドバルク構造(2)が、前記境界を横断するそれのパターン反復方向(D)を有する、請求項1または2に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項4】
前記バイオセンサユニットのうちの1つに専用の前記圧電部分(P)の前記境界に隣接するそれぞれのブラッグソリッドバルク構造(2)の前記パターン反復方向(D)が、前記境界に垂直に方向付けられた、請求項3に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項5】
それぞれのブラッグソリッドバルク構造(2)のパターンが、互いに異なるそれぞれの音響インピーダンス値を有する少なくとも2つの媒体の間の空間交替によって、形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項6】
前記媒体のうちの1つが、ガス、特に空気、である、請求項5に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項7】
それぞれのブラッグソリッドバルク構造(2)が、それぞれに前記基準面に垂直な、分離した柱、分離した壁または分離したウェルの伸長方向を有して、前記柱、壁またはウェルのネットワークで構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項8】
それぞれのソリッドバルクブラッグ構造(2)のピッチが、横寸法が前記基準面と平行に測定されるとき、前記ブラッグソリッドバルク構造に隣接する前記圧電部分(P)の前記横寸法の10分の1から100分の1の間で含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項9】
前記圧電単結晶層(1)が、クオーツ層、特にATカット、STカット、Yカット、Zカットもしくは36°Yカットクオーツ層、またはニオブ酸リチウム層、特に128°Yカットもしくは64°Yカットニオブ酸リチウム層、またはタンタル酸リチウム層、特に112°Yカットもしくは64°Yカットタンタル酸リチウム層、である、請求項1から8のいずれか一項に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項10】
前記ブラッグソリッドバルク構造(2)の少なくとも部分が、シリコンを材料とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のバイオセンサ組立体(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のバイオセンサ組立体(10)を製造するための方法であって、
/1/ 圧電単結晶材料の第1のウエハ(1w)および固体材料の第2のウエハ(2w)を提供するステップと、
/2/ 前記第1のウエハ(1w)を前記第2のウエハ(2w)に付着させるステップであって、前記第1のウエハおよび前記第2のウエハは両方とも、その後、前記基準面に対して平行である、ステップと、
/3/ 前記第1のウエハ(1w)の厚さを決定するステップと、
/4/ 前記第2のウエハ(2w)とは反対の前記第1のウエハの側面において、前記第1のウエハ(1w)上に前記電極(4)を形成するステップと、
/5/ 前記基準面のゾーン内の前記第2のウエハの部分を選択的に取り除くために、前記第1のウエハ(1w)とは反対の前記第2のウエハの側面において前記第2のウエハ(2w)をエッチングし、それにより前記ブラッグソリッドバルク構造(2)を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
ステップ/2/が、前記第1のおよび/または第2のウエハ(1w、2w)上に接着材料の中間層(3)を堆積させるステップと、それらの間に前記中間層を有して前記第1のおよび第2のウエハを互いにつけるステップとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接着材料が、導電性材料、特に金、である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ/3/が、前記第2のウエハ(2w)とは反対の前記第1のウエハの前記側面において前記第1のウエハ(1w)を研磨することによって、実行される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
/6/ それぞれのバイオインターフェースが、他の化合物に関して識別された生体化合物を選択的に固定するのに適している、前記第2のウエハ(2w)とは反対の前記第1のウエハの前記側面において、部分が前記ブラッグソリッドバルク構造(2)によって境界を定められるとき、前記バイオセンサユニットのうちの異なるバイオセンサユニットに専用の前記第1のウエハの前記部分において、前記第1のウエハ(1w)上にバイオインターフェース(5)を接合するステップ
をさらに含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響バイオセンサアッセイ組立体とそれを製造するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
音響バイオセンサは、識別された生体化合物が検査されるべき液体サンプルに含まれているか否かを検出することでよく知られている。それぞれのバイオセンサは、交流電圧が両方の電極の間に印加されるときに圧電層内で音響振動を生成するために設計された2つの電極を支える圧電材料の層を含む。バイオセンサは、そのとき、共振器として振る舞う。特に、バイオセンサは、正確に測定することができる共振周波数を有する。識別された生体化合物を他の化合物に関して選択的に固定する能力を有するバイオインターフェースが、圧電層の露出面に接合されたとき、液体サンプルがいくらかの識別された生体化合物を含む場合に、共振周波数の変化が、この露出面を液体サンプルと接触させたときに生じる。しかしながら、そのような動作は、バイオセンサによって形成される音響共振器の品質係数がサンプル内の生体化合物の低濃度に対する高い感度を得るのに十分に大きいということを必要とする。すなわち、音響バイオセンサを設計するときの問題点は、音響バイオセンサの品質係数の値を増やすことである。
【0003】
別の問題点は、単一のチップにおけるセンサの多重化から成る。
【0004】
さらに別の問題点は、縮小したサイズで、低コストで、そのような音響バイオセンサを製造することである。実際、今日実施されている生物学的検査の数は、非常に重大なものになっており、多くの場合、サンプル毎に数種の生体化合物について調べることが必要とされている。これらの他の問題点のため、いくつかの音響バイオセンサを同時に製造するための、および、1つのサンプルが1つの組立体のすべてのバイオセンサユニットと同時に接触され得るように1つの組立体内のいくつかのバイオセンサユニットを結合するための集合的プロセスの使用に関心が集まっている。このようにして、いくつかの生体化合物の1つのサンプルを検査するときの時間が節減され、少量のそれぞれのサンプルが、複数化合物検査にとっても十分になり得る。集合的製造プロセスは、たとえば、材料堆積プロセス、エッチングプロセス、研磨プロセスなどを含む。これらの理由で、圧電材料を基材上に堆積させることと、次いで圧電材料を結晶化させるためにそれを加熱することとによって、単結晶圧電層が取得される、バイオセンサ組立体が、提案された。しかしながら、このようにして得られた圧電層は、限られた結晶方位のみが得られ得るような、低い結晶品質である。
【0005】
さらに、音響バイオセンサの2つのタイプは、たとえば、文書WO 2019/010275、SAW standing for Surface Acoustic Wave and BAW for Bulk Acoustic Wave、で開示されたような、SAWおよびBAWバイオセンサである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、アッセイを好ましくは含む、同チップ上の複数の高品質係数BAWバイオセンサの組立体を提供することである。
【0007】
もう1つの目的は、ラベルフリーの測定を実行することである。
【0008】
もう1つの目的は、リアルタイムで測定を実行することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、そのようなバイオセンサ組立体に低コスト価格を提供することから成る。
【0010】
本発明のさらにもう1つの目的は、縮小したサイズの、および小さいサンプル量を検査するのに適した、そのようなバイオセンサ組立体を提供することから成る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらのまたは他の目的のうちの少なくとも1つを満たすために、本発明の第1の態様は、基準面に平行に互いに隣に並置された複数のバイオセンサユニットを含むバイオセンサ組立体を提案する。それぞれのバイオセンサユニットが、このバイオセンサユニットの圧電部分内で電圧によって生成された音響振動に基づいて、その他のバイオセンサユニットから独立して測定を実行する能力を有するように、それぞれのバイオセンサユニットは、それぞれの圧電部分と、その他のバイオセンサユニットとは別にこの圧電部分に電圧をかけることに特化した少なくとも1つの電極とを有する。このようにして、バイオセンサユニットの圧電部分のそれぞれに印加された電圧は、バイオセンサユニットがそれぞれの測定を同時に実行するまたはしないことを可能にする。
【0012】
それぞれのバイオセンサユニットはさらに、少なくともこのバイオセンサユニットを使用して検査されるべきサンプルからの生体化合物を固定するために配置されたバイオインターフェースを備える。
【0013】
本発明の第1の特徴によれば、バイオセンサユニットのうちの少なくともいくつかのバイオセンサユニットの圧電部分は、基準面と平行に、これらの圧電部分の間に連続して伸びる圧電単結晶の1つの共通の層によって形成される。この方式では、すべての圧電部分は、バイオセンサ組立体の製造中に単一ステップで取り付けることができる、一体形成として供給され得る。低コスト価格が、このようにして達成され得る。
【0014】
本発明の第2の特徴によれば、バイオセンサ組立体はさらに、圧電単結晶層によってしっかりと支えられたブラッグソリッドバルク構造を含み、基準面内にあるパターン反復方向を有する。組立体内で互いに隣接するバイオセンサユニットの任意のペアについて、ブラッグソリッドバルク構造のうちの少なくとも1つは、ペアの両方のバイオセンサユニットの間に位置し、ペアのバイオセンサユニットのうちの1つのバイオセンサユニットの圧電部分から同ペアの他方のバイオセンサユニットの圧電部分に向かって方向付けられた少なくとも1つのパターン反復方向を有するように、これらのブラッグソリッドバルク構造は、圧電単結晶層上に分布する。
【0015】
圧電部分が圧電単結晶の層によって形成されることと、これらの部分がブラッグソリッドバルク構造によって互いに分離されることとのおかげで、共振器の品質係数の高い値が、達成され得、隣接するバイオセンサユニットの間に、非常に低いクロストークが生じる、あるいは生じない。さらに、ブラッグソリッドバルク構造は、バイオセンサユニットの圧電部分から圧電層を支えるために使用されるアンカ部分に沈み得る振動エネルギの部分を最小限にするまたは抑制する。
【0016】
好ましくは、ブラッグソリッドバルク構造はさらに、バイオセンサユニットのうちの1つに専用の圧電部分のそれぞれが、ブラッグソリッドバルク構造のうちの1つまたはいくつかによって囲まれるように、圧電単結晶層上に分布し得る。あるいは、本発明で実装され得るブラッグソリッドバルク構造は、それが圧電部分のうちの1つの周りに配置され得るように、環状の設計をそれぞれ有し得る。
【0017】
特に、ブラッグソリッドバルク構造は、圧電単結晶とは異なる材料から成り得る。
【0018】
本明細書で、ブラッグソリッドバルク構造は、周期的に繰り返される、ならびに、それぞれ固体の、圧電単結晶層によって支えられることから独立して自立した、材料部分から形成された固体パターンを意味するものである。そのようなブラッグソリッドバルク構造は、よく知られているブラッグ表面構造に相対する。
【0019】
任意選択で、本発明の最も好ましい実装形態において、以下の付加的特徴のうちの1つまたはいくつかが、再製作され得る:
- バイオセンサ組立体は、圧電単結晶の層の2つの反対面の間にそれぞれのバイオセンサユニットの圧電部分に印加される電圧が印加されるように、設計され得る。このようにして、それぞれのバイオセンサユニットは、BAWタイプになり得る、
- バイオセンサユニットのうちの1つに専用の圧電部分の境界に隣接するそれぞれのブラッグソリッドバルク構造は、この境界を横断するそれのパターン反復方向を有し得る。さらに好ましくは、パターン反復方向は、圧電部分の境界と垂直に方向付けられ得る、
- それぞれのブラッグソリッドバルク構造は、互いに異なるそれぞれの音響インピーダンス値を有する少なくとも2つの媒体の間の空間交替によって、形成され得る。あるいは、これらの媒体のうちの1つは、ガス、特に空気、でもよい、
- それぞれのブラッグソリッドバルク構造は、パターンの1次元、2次元または3次元反復によって形成され得る、
- それぞれのブラッグソリッドバルク構造は、それぞれ基準面に垂直な、これらの柱、壁またはウェルの伸長方向を有する、分離した柱、分離した壁または分離したウェルのネットワークで構成され得る、
- それぞれのブラッグソリッドバルク構造のピッチは、このブラッグソリッドバルク構造に隣接する圧電部分の横寸法が基準面と平行に測定されるとき、この横寸法の10分の1から100分の1の間で含まれ得る、
- それぞれのブラッグソリッドバルク構造のピッチは、この厚さが基準面に垂直に測定されるとき、圧電材料層の厚さの3分の1から2倍の間で含まれ得る、
- ブラッグソリッドバルク構造によって境界を定められるものとしての、組立体のバイオセンサユニットのうちの1つに専用のそれぞれの圧電部分は、正方形の形状、ディスク形状、または任意の他の規則的なもしくは不規則な形状を有し得る、
- 圧電単結晶層は、クオーツ層、特にATカット、STカット、Yカット、Zカットもしくは36°Yカットクオーツ層、またはニオブ酸リチウム層、特に128°Yカットもしくは64°Yカットニオブ酸リチウム層、またはタンタル酸リチウム層、特に112°Yカットもしくは64°Yカットタンタル酸リチウム層、または任意の他の圧電単結晶材料およびカットでもよい、そして、
- ブラッグソリッドバルク構造の少なくとも一部は、シリコン、または任意の他の固体材料を材料とする。
【0020】
本発明の第2の態様は、第1の態様によるバイオセンサ組立体を製造するための方法を提案し、本方法は、以下のステップを含む:
/1/ 圧電単結晶材料の第1のウエハおよび固体材料の第2のウエハを提供するステップと、
/2/ 第1のウエハを第2のウエハに付着させるステップ、第1のおよび第2のウエハは両方とも、その後、基準面に対して平行である、と、
/3/ たとえば、第1のウエハを第2のウエハとは反対のそれの側面において研磨することによって、この第1のウエハの厚さを決定するステップと、
/4/ 第2のウエハとは反対のそれの側面において第1のウエハ上に電極を形成するステップと、
/5/ 基準面のゾーン内の第2のウエハの部分を選択的に取り除くために、第2のウエハを第1のウエハとは反対のそれの側面においてエッチングし、それによりブラッグソリッドバルク構造を形成するステップと、
/6/ バイオセンサユニットのうちの異なるバイオセンサユニットに専用のそれの部分において、これらの部分が、第2のウエハとは反対の第1のウエハの側面において、ブラッグソリッドバルク構造によって境界を定められるとき、任意選択的に、第1のウエハ上にバイオインターフェースを接合するステップ、それぞれのバイオインターフェースは、他の化合物に関して、識別された生体化合物を選択的に固定するのに適している。
【0021】
場合により、ステップ/2/は、第1のおよび/または第2のウエハにおいて接着材料の中間層を堆積させることと、それらの間に中間層を有して互いに対して第1のおよび第2のウエハを適用することとを含み得る。そのような実装形態において、接着材料は、有利には、すべてのバイオセンサユニットに共通の基準電極を場合により形成するために、導電性でもよい。特に、接着材料は、金でもよい。
【0022】
やはり場合により、第1のウエハは、基準面に垂直に測定されるとき、1μm(マイクロメートル)と2mm(ミリメートル)との間に含まれる厚さ値までステップ/3/において薄くされ得る。
【0023】
ステップ/5/で、ブラッグソリッドバルク構造によって境界を定められた第1のウエハのエリアは、それぞれにバイオセンサユニットに専用の圧電部分を構成する。場合により、第2のウエハは、ブラッグソリッドバルク構造の形成に同時に、バイオセンサユニットに専用の圧電部分に対応するエリア内のそれの固体材料を取り除くために第1のウエハの反対側のそれの側面においてエッチングされ得る。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の特徴について、本発明の好ましいが非制限的な実施形態に関連する、添付の図面を参照して、ここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるバイオセンサ組立体の透視図を示す。
【
図2a】本発明によるバイオセンサ組立体を製造するための方法のステップを図解する断面図である。
【
図2b】本発明によるバイオセンサ組立体を製造するための方法のステップを図解する断面図である。
【
図2c】本発明によるバイオセンサ組立体を製造するための方法のステップを図解する断面図である。
【
図2d】本発明によるバイオセンサ組立体を製造するための方法のステップを図解する断面図である。
【
図2e】本発明によるバイオセンサ組立体を製造するための方法のステップを図解する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
簡潔にするために、これらの図面に示す要素のサイズは、実際の寸法または寸法比に対応していない。また、これらの図のうちの異なる図に示された同じ参照番号は、同一機能を有する要素の同一要素を示す。
【0027】
図1では、参照番号10は、概して、バイオセンサ組立体を示す。バイオセンサ組立体は、圧電単結晶の層1、たとえばATカットクオーツ層、を含む。層1は、1ミリメートルまでのまたはそれ以上の厚さを有し得る。層1の面内の寸法は、1ミリメートル未満から数センチメートルでもよい。層1は、S
1で示された上表面と下表面S
2とを有し、それらは互いに相対し、平行である。測定を実行するためにバイオセンサ組立体10を使用するとき、上表面S
1は、検査されるべきサンプルと接していることが意図されている。たとえば、サンプルが液体であるとき、サンプルは、適切な配信回路(図示せず)を介して表面S
1と接触させられ得る。別法として、いくらかの液体サンプルが、表面S
1上にオペレータによって堆積させられ得る。表面S
1は、本明細書の一般部分において述べられる基準面を構成し得る。
【0028】
圧電単結晶層1の下表面S2は、導電性材料の連続的層3、たとえば金、で覆われ得る。層3の厚さは、10nm(ナノメートル)から500nm以上の範囲内でもよい。
【0029】
1セットのブラッグソリッドバルク構造2は、圧電単結晶層1とは反対のその側面において層3に貼り付けられる。これらのブラッグ構造2は、ブラッグ構造はないがブラッグ構造のうちのいくつかによってそれぞれ囲まれたエリアを定義するために、表面S
2に平行に分散される。このようにして、圧電単結晶層1は、それの表面S
1およびS
2と平行な複数の圧電部分Pに分割され、それぞれの部分Pは、1つのバイオセンサユニットに専用である。それぞれの部分Pはさらに、層1の上表面S
1上にそれぞれの電極4を備える。バイオセンサユニットのうちの1つを使用するとき、交流励起電圧が、このバイオセンサユニットの電極4とすべてのバイオセンサユニットに共通の層3との間に印加される。電極4をそれぞれの電圧源に接続するのに適した表面S
1上のトラックは、
図1には表されていないが、
図2c~
図2eには参照4Tで示されている。電極3に関する電極4のうちの1つに印加される交流電圧は、対応する部分Pにおける音響振動を生成し、電極4を通して収集され得る応答信号、たとえば電界強度値、は、部分P内の層1の振動振幅を表す。次いで、バイオセンサユニットは、対応する部分P内の層1の上表面S
1において固定された生体化合物の量の関数として変化する共振の大きさおよび/または周波数で、共振を示す。1つの識別された生体化合物に選択的に敏感なバイオセンサユニットを得るために、バイオインターフェース5(
図2eを参照)が、このバイオセンサに対応する部分P内の上表面S
1に接合されてある。このバイオインターフェース5は、サンプルにおいて検出されるべき生体化合物の分子を選択的に固定する。音響バイオセンサのそのような動作は、よく知られているので、さらなる説明はここでは必要ない。このトピックに関連して、任意の公開文書に報告し得る。
【0030】
互いに離れた層1の部分Pは、それらのそれぞれの電極4およびバイオインターフェース5を有する異なるバイオセンサユニットを形成することを意図されている。これらのバイオセンサユニットは、互いに独立して測定を実行するために、しかし好ましくは同時に測定時間を節減するために、使用され得る。次いで、クロストークまたは有意なクロストークが、隣接する部分Pを有するバイオセンサユニットの間で生じない、という問題である。したがって、ブラッグソリッドバルク構造2の機能は、別個の隔離された振動空洞を圧電層1のそれぞれの部分Pが形成するように、そのようなクロストークを減らすまたは抑制することである。この目的で、それぞれのブラッグ構造2は、表面S
2に平行に繰り返される少なくとも1つの固体パターンによって、形成される。場合により、ブラッグ構造2のそれぞれのパターンの幅は、層1の厚さ程でもよい。パターンの2つから10以上の反復が、それぞれのブラッグ構造2内で使用され得、これらの反復は、表面S
2と平行な少なくとも1つの方向に沿って実装される。
図1において、Dは、ブラッグ構造2のそのようなパターン反復方向を示す。
図1に示す実施形態において、パターンは、表面S
2に垂直に伸びる壁20と、分離する間隔21とで構成される。それぞれのブラッグ構造2は、表面S
2に投影されたときに互いに平行な、いくつかの壁20、たとえば4つの壁20、を含む。そのように形成されたブラッグ構造2は、好ましくは隣接する部分Pの周辺境界に平行な壁20のそれぞれの縦方向を有して、それぞれの部分Pを取り囲む。当業者は、壁20と層1のそれぞれの部分P内を伝搬する音響波に関してそれぞれのブラッグ構造2の高い反射値を得るための分離する間隔21とにどの厚さ値が提供されるべきかを知っている。
【0031】
ブラッグ構造2の代替実施形態において、表面S2に垂直に伸びるおよびこの表面S2に平行な2つの方向に沿って繰り返される柱またはウェルを含む、他のパターンが、実装され得る。そのような柱またはウェルは、互いに間隔を空けた隣接する部分Pの間に位置し、面内の2次元ネットワークを形成する。
【0032】
あるいは、ブラッグ構造を構成する固体部分は、表面S2に垂直な方向に沿った材料合成において変更され得る。このようにして、3次元ネットワークが、ブラッグ構造2を形成するために設計され得る。
【0033】
したがって、ブラッグ構造2は、互いに異なるそれぞれの音響インピーダンス値を有する、それらのうちの少なくとも1つが固体である、少なくとも2つの媒体の1次元、2次元または3次元の交替でそれぞれ構成される。たとえば、壁20は、シリコンを材料としてもよく、エアギャップで分離され得る。場合により、壁分離間隔21は、シリコンのとは異なる音響インピーダンス値を有する別の材料で埋められ得る。任意の固体材料もまた、シリコンの代わりに使用され得る。
【0034】
表面S2においてブラッグ構造2によって境界を定められるものとしての部分Pの形状は、正方形、ディスク、六角形、任意の側面数を有する不規則な形状、たとえば不規則な五角形、などを含む、いずれでもよい。
【0035】
ここで、
図1のそれと類似するバイオセンサ組立体を製造するための方法について、
図2a~
図2eを参照して説明する。
【0036】
本方法は、本明細書の一般部分で第1のウエハと称される、圧電単結晶1wのウエハと、第2のウエハと称される、固体材料の第2のウエハ2wとを提供することで開始する。両方のウエハ1wおよび2wは、直径が2インチから6インチ、または異なるサイズでもよい。ウエハ1wは、ATカットクオーツウエハでもよく、ウエハ2wは、シリコンウエハでもよい。金層3が、ウエハ1wの1つの外面、もしくはウエハ2wの1つの外面上に、または両方のウエハ1wおよび2wのそれぞれの外面上に堆積させられる。スパッタリング、電子ビームまたは熱蒸着を含む、当技術分野で知られている任意の堆積プロセスが、金層3を形成するために実装され得る。両方のウエハ1wおよび2wは、次いで、それらの間の金層3を有して互いにつけられる。0.01kN(キロニュートン)から10kNのまたは異なる範囲の力が、加えられるとき、ハイブリッド大面積土台が、
図2aに示すように得られるように、金層3は、両方のウエハ1wおよび2wを付着させる。
【0037】
このハイブリッド土台は、次いで、
図2bに示すように、クオーツ厚さを最終値まで減らすために、クオーツ側面において磨かれ得る。eで示された、この最終的なクオーツの厚さは、たとえば、数マイクロメートルでもよい。したがって、層1は、ウエハ1wから得られる。ウエハ1wが、最初に、最終厚さ値eを有する場合、クオーツ研磨ステップは、省略することができる。層1の露出した外面は、前述した表面S
1を形成する。
【0038】
図2cに示す次の製造ステップにおいて、電極4が、バイオセンサユニットの分離した共振器を形成することを意図されたその部分Pにおいて、層1の表面S
1上に堆積される。電極4は、任意の適切な材料および堆積プロセスを使用して、形成され得る。たとえば、連続的導電性層が、クオーツ層1の表面S
1上に金またはITO材料をスパッタすることによって、堆積させられ得、次いで、この導電層の部分が、分離した電極4を得るために取り除かれる。電極4を接続するためのトラック4Tが、表面S
1上に同時に形成され得る。ウェットまたはドライエッチングプロセス、リフトオフなどの除去プロセスが、電極4およびトラック4Tを定義するために使用され得る。電極4は、厚さ50nmから1μm以上でもよい。
【0039】
図2dに示すステップは、ブラッグソリッドバルク構造2を形成することにある。この目的で、ウエハ2wは、適切なマスクを介して、ディープリアクティブイオンエッチングプロセス、またはウェットエッチングプロセスを使用して、エッチングされ得る。好ましくは、エッチングは、金層3に達するまで、継続される。ウエハ2wは、ブラッグ構造2を形成するためにおよび層1の部分Pに対応するエリアにおいてウエハ2wの材料を取り除くために同時にエッチングされ得る。ブラッグ構造2内のウエハ2wの残りの材料の最終充填率は、0.01から0.99でもよく、ゼロ値は、壁がないことにおよびエッチングされていない材料に対応する単一性に対応する。このようにして定義されたそれぞれの部分Pの幅wは、0,1mmから数ミリメートル以上でもよく、表面S
1およびS
2と平行に測定されるとき、この部分Pによって支えられる電極4のサイズ以上である。場合により、それぞれのブラッグ構造2内でエッチングされた隙間21は、シリコンのとは異なる音響インピーダンスの値を有する別の材料で埋められ得る。任意選択で、ウエハ2wの部分はまた、基部(表されていない)に取り付けるためのバイオセンサ組立体10および/または支える部分のハンドリング部分を形成するためにエッチングされないようにされ得る。
【0040】
最後に、バイオインターフェース5は、識別された生体化合物を固定するならびに対応するバイオセンサユニットが検査されるべきサンプルに含まれるこの化合物の量を測定することを可能にするために、
図2eに示すように、それぞれの部分P内の表面S
1において接合される。場合により、接合は、対応する電極4において実行される。そのような接合は、検査されるべきサンプルにおいてユーザが捜す生体化合物に応じて、バイオセンサ組立体のユーザによって実行され得る。1つの同じ組立体10内のバイオセンサユニットのうちの異なるものは、有利には、異なる識別された生体化合物に関連して、異なるバイオインターフェース5と接合され得る。
【0041】
本発明は、前述の詳細な説明のいくつかの態様を変更または適合させながら、再製作され得る。特に、すべての数値は、単に例示を目的として与えられており、大幅に変更され得る。圧電層の材料はまた、1つのおよび同じバイオセンサ組立体内で結合されることになるバイオセンサユニットの数に関して十分大きい側面寸法を有する単結晶層としてそれが得られ得る限り、変更され得る。
【符号の説明】
【0042】
1 層
2 ブラッグソリッドバルク構造
3 層
4 電極
5 バイオインターフェース
10 バイオセンサ組立体
20 壁
21 壁分離間隔
S1 上表面
S2 下表面
1w 第1のウエハ
2w 第2のウエハ
【国際調査報告】