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特表2023-554105アミノ酸及び2種の特定の酸を含む二相化粧用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】アミノ酸及び2種の特定の酸を含む二相化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20231219BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20231219BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20231219BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231219BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/44
A61K8/365
A61K8/368
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/92
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537159
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086106
(87)【国際公開番号】W WO2022129286
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2013459
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】セリーヌ・ドゥボーヴ
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ・ポスティック
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB332
4C083AB352
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC01
4C083CC03
4C083CC23
4C083CC24
4C083CC31
4C083DD05
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE05
(57)【要約】
アミノ酸及び2種の特定の酸を含む二相化粧用組成物。本発明は、分離している水性相と油性相とからなる化粧用組成物であって、前記油性相が、少なくとも1種の油を含み、油性相と水性相との間の質量比が、0.75から1.25の間である化粧用組成物において、前記水性相が、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体と、クエン酸及び/又はその塩と、サリチル酸とを含み、クエン酸の質量による含有量及びサリチル酸の質量による含有量の和と、アミノ酸の質量による含有量との間の質量比が、0.90から1.10の間であることを特徴とする、化粧用組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離している水性相及び油性相からなる化粧用組成物であって、前記油性相が、少なくとも1種の油を含み、前記油性相と前記水性相との間の質量比が、0.75から1.25の間であり、前記水性相が、
- 少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体、
- クエン酸及び/又はその塩、並びに
- サリチル酸
を含み、
クエン酸及びサリチル酸の質量による含有量の和と、アミノ酸の質量による含有量との間の質量比が、0.90から1.10の間であることを特徴とする、
化粧用組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸が、アルギニン及び/又はその有機酸若しくは鉱酸塩及び/又はその誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸が、前記水性相の総質量に対して、0.01質量%から5質量%の間、好ましくは0.05質量%から3質量%の間、好ましくは0.1質量%から2質量%の間、有利には0.5質量%から1質量%の間の含有量で存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧用組成物。
【請求項4】
前記クエン酸が、前記水性相の総質量に対して、0.01質量%から1質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.8質量%の間、好ましくは0.1質量%から0.7質量%の間、有利には0.3質量%から0.6質量%の間の含有量で存在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記サリチル酸が、前記水性相の総質量に対して、0.01質量%から1質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.5質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.4質量%の間、有利には0.1質量%から0.3質量%の間の含有量で存在することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、以下の式(I):
【化1】
(式中、R1=H又は-CH3; R2=H又は-CH3; R3=-CH3であり、R1とR2とが同時にHであることはない)
による少なくとも1種の化合物、又は式(I)による化合物若しくは化合物の混合物を含むセンテラ・アジアティカの抽出物を更に含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の前記化合物が、マデカソサイド、ターミノロサイド、及びこれらの混合物から選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)による前記化合物が、前記水性相の総質量に対して、0.001質量%から0.5質量%の間、好ましくは0.005質量%から0.1質量%の間、好ましくは0.01質量%から0.05質量%の間、有利には0.02質量%から0.04質量%の間の含有量で存在することを特徴とする、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記水性相が、3.8から4.4の間、好ましくは3.9から4.3の間、有利には4.0から4.2の間のpHを有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記水性相が、一価の無機塩及び/又は二価の無機塩を実質的に含まない、好ましくは一価の無機塩及び二価の無機塩を完全に含まないことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ケラチン物質のメイクアップ除去及び/又は洗浄及び/又はケアの方法であって、前記ケラチン物質、特に目のケラチン物質、好ましくは睫毛上への、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の適用を含む、方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物のうちの1種の、ケラチン物質、特に目のケラチン物質、好ましくは睫毛のメイクアップ除去及び/又は洗浄及び/又はケアのための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離している水性相と油性相とからなる二相組成物であって、該水性相がアミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体、クエン酸及び/又はその塩、並びにサリチル酸を含む、二相組成物に関する。本発明はまた、このような組成物の使用、並びにこのような組成物を使用したメイクアップ除去方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
2つの分離している相からなる組成物、特に静止状態において分離していて互いに乳化されていない水性相と油性相とからなる組成物は、一般に、用語「二相組成物」と称される。それらは、静止状態において、2つの相が、互いに乳化されている代わりに分離しているという事実によって、エマルションとは異なる。これらの二相組成物の使用は、エマルションを形成するために事前の撹拌を必要とし、該エマルションは、それが適用される皮膚上又はケラチン物質上への、両方の相の均質な適用を可能にするのに十分な品質及び安定性のものであることを必要とする。静止状態において、前記相は、互いから迅速に分離して、それらの初期の状態に戻らなければならず、この現象は、より一般に、用語「相分離」又は「脱混合」により知られている。
【0003】
それらの使用後の、2つの相の比較的速い脱混合が、二相組成物の所望の品質のうちの1つである。事実、急速な相分離の達成は、多様な理由のために望ましく、特に、その理由は、2つの相の不良な分離が、ユーザによって見苦しいと受け止められ、且つ製品が経時的に使用されるにつれてそれが「三相」となることを引き起こすおそれがあるためである。
【0004】
二相組成物は、顔から、特に目から、メイクアップを除去するのに特に使用される。したがって、それらは、目の良好な耐性を有していなければならない。
【0005】
しかしながら、化粧料市場は、ますます、天然であり、より環境に優しい化合物を含み且つ/又はバイオマスを起源とする組成物に焦点が当てられる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP1060739
【特許文献2】WO3003/072039
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ISO規格11930:2019
【非特許文献2】ISO規格29621:2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結果として、効果的なメイクアップ除去を依然として達成しながら、2つの分離した非混和性の相からなり、脱混合の良好な品質と目の良好な耐性との両方を有する、新規の天然の二相組成物への必要性が残る。「天然の組成物」は、天然の成分及び/又は天然起源の成分で主に配合された化粧用組成物を意味する。「天然の成分」は、適当な場合に、1つ又は複数の物理的方法、例えば、粉砕、精製(refining)、蒸留、精製(purification)又はろ過の手段によって、地面若しくは土壌から、又は植物若しくは動物から、直接得られる化合物を意味する。「天然起源の」成分は、化合物の必須の品質に有害でない改変を生じさせる、1つ若しくは複数の化学的処理、若しくは関連する工業的処理を施された天然の化合物、及び/又は上に示されたような変換が施されていても施されていなくてもよい、天然の構成成分を主として含む化合物を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、二相組成物中の水性相中の、アミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体と、クエン酸及び/又はその塩と、サリチル酸及び/又はその誘導体との組み合わせであって、クエン酸の質量による含有量及びサリチル酸の質量による含有量の和と、アミノ酸の質量による含有量との間の質量比(すなわち(クエン酸+サリチル酸):アミノ酸の質量比)が、0.90から1.10の間である、組み合わせが、これらのニーズを満たす二相組成物を得ることを可能にすることを、驚くべきことに発見した。本発明による組成物は、目の良好な耐性、及び脱混合の良好な品質を特に有する。本発明による組成物はまた、メイクアップ除去のためにきわめて効率的である。加えて、本発明による組成物は、明るさを提供し、目の、特に睫毛の、ケラチン物質の品質を改善させる。
【0010】
特に、本発明の主題事項は、分離している水性相と油性相とからなる化粧用組成物であって、該油性相が、少なくとも1種の油を含み、油性相と水性相との間の質量比が、0.75から1.25の間である化粧用組成物において、該水性相が、
- 少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体と、
- クエン酸及び/又はその塩と、
- サリチル酸と
を含み、
クエン酸の質量による含有量及びサリチル酸の質量による含有量の和と、アミノ酸の質量による含有量との間の質量比が、0.90から1.10の間であることを特徴とする、
化粧用組成物である。本発明によるこのような組成物は、このように、二相組成物である。
【0011】
本発明の主題事項はまた、ケラチン物質のメイクアップ除去及び/又は洗浄及び/又はケアの方法であって、ケラチン物質、特に目のケラチン物質、好ましくは睫毛上への、本発明による組成物の適用を含む、方法でもある。
【0012】
本発明の主題事項はまた、本発明による組成物の、ケラチン物質、特に目のケラチン物質、好ましくは睫毛のメイクアップ除去及び/又は洗浄及び/又はケアのための、使用でもある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
油性相
本発明による組成物の油性相は、少なくとも1種の油を含む。
【0014】
好ましくは、本発明による組成物の油性相は、少なくとも1種の植物油を含む。
【0015】
油性相の油は、ホホバ種子油(INCI名:シンモンドシア・キネンシス(Simmondsia chinensis)(ホホバ)種子油/シンモンドシア・キネンシス種子油)、スイートアーモンド油(INCI名:プルヌス・アミグダルス・ヅルキス(Prunus amygdalus dulcis)(スイートアーモンド)油/プルヌス・ヅルキス)、精製され脱臭されたリムナンテス・アルバ(Limnanthes alba)油(INCI名:リムナンテス・アルバ(メドウフォーム)種子油/リムナンテス・アルバ種子油)、アボカドオイル、ヒマシ油、オリーブオイル、ヒマワリ油、コムギ胚芽油、ゴマ油、ピーナツオイル、ブドウ種子油、ダイズ油、ナタネ油、ベニバナ油、ココナツ油、トウモロコシ油、ヘーゼルナッツオイル、パームオイル、アプリコット核油、テリハボク属(calophyllum)油、及びこれらの混合物から好ましくは選ばれる。
【0016】
油性相はまた、8~28個の炭素原子を有する炭化水素油から好ましく選ばれる少なくとも1種の揮発性非極性炭化水素化油、特に分枝状のC15~C19アルカン、例えばSeppic社により名称EMOGREEN L19で市販されているものも含むことができる。
【0017】
加えて、油性相は、脂肪酸エステル、好ましくは天然起源の脂肪酸エステルを含むことができる。
【0018】
脂肪酸エステルの例として、脂肪酸の合成エステル、例えば式R1COOR2(式中、R1は、1~40個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の高級脂肪酸の残基を表し、R2は、1~40個の炭素原子を含有する炭化水素鎖、特に分枝状の炭化水素鎖を表し、R1+R2>10である)を有する油、例えばPurcellinオイル(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、C12~C15安息香酸アルコール、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、オクチル-2-ドデシルステアレート、オクチル-2-ドデシルエルケート、イソステアリン酸イソステアリル、トリメリット酸トリデシル;アルコール又は多価アルコールのオクタノエート、デカノエート又はリシノールエート、例えばジオクタン酸プロピレングリコール;ヒドロキシ化エステル、例えば乳酸イソステアリル、オクチルヒドロキシステアレート、オクチルドデシルヒドロキシステアレート、マレイン酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル;脂肪アルコールのヘプタノエート、オクタノエート、デカノエート;ポリオールエステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール及びジイソノナン酸ジエチレングリコール;及びペンタエリスリトールエステル、例えばテトラステアリン酸ペンタエリスリチルを挙げることができる。
【0019】
好ましくは、脂肪酸エステルは、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、C12~C15アルキルベンゾエート、及びこれらの混合物から選ばれ、有利には、脂肪酸エステルは、パルミチン酸イソプロピルである。
【0020】
油性相は、従来の化粧用添加剤、例えば香りを、更に含むことができる。
【0021】
水性相
水性相は、
- 少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体と、
- クエン酸及び/又はその塩と、
- サリチル酸及び/又はその誘導体と
を含み、
クエン酸の質量による含有量及びサリチル酸の質量による含有量の和と、アミノ酸の質量による含有量との間の質量比[すなわち(クエン酸+サリチル酸):アミノ酸の質量比]は、0.90から1.10の間である。
【0022】
好ましくは、クエン酸の質量による含有量及びサリチル酸の質量による含有量の和と、アミノ酸の質量による含有量との間の質量比は、0.92から1.05の間、好ましくは0.95から1.02の間である。
【0023】
このような比は、目の良好な耐性、及び同時に脱混合の良好な品質を有する化粧用組成物を得ることを可能にする。これらの比の値はまた、満足のいく微生物学的防御も、本発明による組成物に授ける。
【0024】
更に、水性相は、水を含有する。
【0025】
水性相は、水溶性又は水混和性である少なくとも1種の有機溶媒を、おそらくは含有する。
【0026】
本発明に好適な水溶性又は水混和性溶媒は、短鎖モノアルコール、例えばC1~C4モノアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール;ジオール又はポリオール、例えばグリセロール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタジオール、ジプロピレングリコール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルビトール、及びこれらの混合物を含む。好ましくは、水溶性又は水混和性有機溶媒は、1,3-プロパンジオールである。
【0027】
好ましくは、水性相は、水性相の総質量に対して、少なくとも60質量%の水、好ましくは少なくとも70質量%、好ましくは80質量%から95質量%の間の含有量の水を含む。
【0028】
アミノ酸
本発明による組成物の水性相は、少なくとも1種のアミノ酸及び/又はその塩及び/又はその誘導体を含む。
【0029】
本発明では、「アミノ酸誘導体」は、前記アミノ酸のカルボキシル基中か、若しくはカルボキシル基のアルファ炭素により担持されているアミノ基中か、のいずれか、又はおそらくはこれらの基の両方の中に置換基を有するアミノ酸を意味する。
【0030】
好ましくは、アミノ酸は、アルギニン又はリジン、好ましくはアルギニンである。
【0031】
リジンは、好ましくはL-リジンである。
【0032】
好ましくは、本発明による化粧用組成物の水性相のアミノ酸は、アルギニン及び/又はその有機酸塩若しくは鉱酸塩及び/又はその誘導体である。
【0033】
アルギニンの多様な形態は、一般に、D-アルギニン、D,L-アルギニン及びL-アルギニンである。アルギニンの有機酸塩又は鉱酸塩から、例えば塩酸塩、グルタミン酸塩、ブチル酸塩及びグリコール酸塩を挙げることができる。
【0034】
L-アルギニンの誘導体から、L-アルギニンのC1~C4アルキルエステルを挙げることができ、該アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルから選ばれる。
【0035】
L-アルギニンの誘導体のうち、L-アルギニンのオリゴマー(ポリアルギニンと呼ばれる)、例えば出願EP1060739及び出願WO3003/072039に記載されているものもまた挙げることができる。本発明により好ましいアルギニンオリゴマーは、7~15のL-アルギニンパターン、例えば7、9、11、13又は15のL-アルギニンパターンを含む。特に、L-アルギニンが使用されることになる。
【0036】
好ましくは、アミノ酸は、水性相の総質量に対して、0.01質量%から5質量%の間、好ましくは0.05質量%から3質量%の間、好ましくは0.1質量%から2質量%の間、有利には0.5質量%から1質量%の間の含有量で存在する。
【0037】
アミノ酸の含有量はまた、組成物の総質量に対しても表すことができる。好ましくは、アミノ酸は、組成物の総質量に対して、0.005質量%から3質量%の間、好ましくは0.02質量%から1.5質量%の間、好ましくは0.1質量%から1質量%の間、有利には0.3質量%から0.6質量%の間の含有量で存在する。
【0038】
クエン酸
本発明による化粧用組成物の水性相は、クエン酸及び/又はその塩を含む。
【0039】
クエン酸塩から、クエン酸の塩、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を挙げることができる。このような塩は、特に、クエン酸カリウム又はクエン酸ナトリウムである。
【0040】
好ましくは、本発明による化粧用組成物は、クエン酸を含む。
【0041】
好ましくは、クエン酸は、水性相の総質量に対して、0.01質量%から1質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.8質量%の間、好ましくは0.1質量%から0.7質量%の間、有利には0.3質量%から0.6質量%の間の含有量で存在する。
【0042】
クエン酸の含有量はまた、組成物の総質量に対しても表すことができる。好ましくは、クエン酸は、組成物の総質量に対して、0.005質量%から0.5質量%の間、好ましくは0.02質量%から0.4質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.35質量%の間、有利には0.15質量%から0.3質量%の間の含有量で存在する。
【0043】
サリチル酸
本発明による組成物の水性相は、サリチル酸を含む。
【0044】
好ましくは、サリチル酸は、水性相の総質量に対して、0.01質量%から1質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.5質量%の間、好ましくは0.05質量%から0.4質量%の間、有利には0.1質量%から0.3質量%の間の含有量で存在する。
【0045】
サリチル酸の含有量はまた、組成物の総質量に対しても表すことができる。好ましくは、サリチル酸は、組成物の総質量に対して、0.005質量%から0.5質量%の間、好ましくは0.02質量%から0.25質量%の間、好ましくは0.02質量%から0.2質量%の間、有利には0.05質量%から0.15質量%の間の含有量で存在する。
【0046】
式(I)による化合物
本発明による化粧用組成物は、式(I):
【化1】
(式中、R1=H又は-CH3; R2=H又は-CH3; R3=-CH3であり、R1とR2とが同時にHであることはない)
による少なくとも1種の化合物、又は式(I)による化合物若しくは化合物の混合物を含むセンテラ・アジアティカ(Centella Asiatica)の抽出物を、更に含んでもよい。
【0047】
好ましくは、式(I)の化合物は、マデカソサイド(madecassoside)、ターミノロサイド(terminoloside)、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0048】
好ましくは、式(I)の化合物は、混合物の総質量に対して、30質量%~70質量%の範囲、特に45質量%~55質量%の範囲のマデカソサイド含有量を含む、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物である。
【0049】
好ましくは、センテラ・アジアティカ抽出物は、抽出物の質量に対して、95質量%超の、マデカソサイドとターミノロサイドとの混合物を含む。
【0050】
好ましくは、式(I)による化合物は、水性相の総質量に対して、0.001質量%から0.5質量%の間、好ましくは0.005質量%から0.1質量%の間、好ましくは0.01質量%から0.05質量%の間、有利には0.02質量%から0.04質量%の間の含有量で存在する。
【0051】
式(I)による化合物の含有量はまた、組成物の総質量に対しても表すことができる。好ましくは、式(I)による化合物は、組成物の総質量に対して、0.0005質量%から0.25質量%の間、好ましくは0.002質量%から0.05質量%の間、好ましくは0.005質量%から0.02質量%の間、有利には0.01質量%から0.02質量%の間の含有量で存在する。
【0052】
化粧用組成物
本発明による化粧用組成物は、分離している水性相と油性相とからなる。
【0053】
好ましくは、油性相と水性相との間の質量比は、0.75から1.25の間、好ましくは0.78から1.22の間、好ましくは0.80から1.10の間、好ましくは0.81から1の間である。
【0054】
これらの比の値は、メイクアップ除去に優れ且つまた満足のいくビジュアルな外観も有する化粧用組成物を得ることを、可能にする。
【0055】
好ましくは、水性相は、3.8から4.4の間、好ましくは3.9から4.3の間、有利には4.0から4.2の間のpHを有する。
【0056】
好ましくは、水性相は、一価の無機塩及び/又は二価の無機塩を実質的に含まない、好ましくは一価の無機塩及び二価の無機塩を完全に含まない。
【0057】
「実質的に含まない」は、組成物が、組成物の総質量に対して、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、好ましくは0.01質量%未満の一価の無機塩及び/又は二価の無機塩を含むことを意味する。好ましくは、本発明による組成物は、一価の無機塩を完全に含まず、二価の無機塩を完全に含まない。
【0058】
一価の無機塩は、C-H結合を一切含まず、カチオン及びアニオンからなり、それぞれが単一の、それぞれ正又は負の電荷を担持する塩を意味する。例えば、NaClが一価の塩である。
【0059】
二価の無機塩は、C-H結合を一切含まず、カチオン及びアニオンからなり、それぞれが2つの、それぞれ正又は負の電荷を担持する塩を意味する。例えば、MgSO4が二価の塩である。
【0060】
好ましくは、本発明による化粧用組成物は、界面活性剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」は、組成物が、組成物の総質量に対して、0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満、好ましくは0.1質量%未満の界面活性剤を含むことを意味する。好ましくは、本発明による組成物は、界面活性剤を完全に含まない。
【0061】
表現「・・・から・・・の間」、「・・・~・・・の範囲」、及び「・・・~・・・で多様である」は、別段の特定がない限り、限界値を含むと理解されることになる。
【0062】
本発明を例示している、具体的であるが非限定的な実施例が、今や付与されることになる。
【0063】
別段の記載がない限り、実施例における圧力は、大気圧である。
【実施例
【0064】
総ての実施例において、組成物を、以下の表に挙げている成分で、以下のプロトコルに従って調製する:
油性相を、油性相の成分を混合して調製する。
加水分解質(hydrolate)を、水中でアルギニンと混合し、プロパンジオール中で予備分散させたサリチル酸を次いで添加し、マデカソサイドを次いで添加し、最後にpHをクエン酸で調整する。水性相は、このようにして得る。
最後に、油性相を、水性相と接触させて、組成物を得る。
【0065】
実施例では、組成物の目の耐性を評価した。
【0066】
インビボ試験をその目的のために行った。これらは、15日間のメイクアップ除去ルーチンからなる消費者(最少60人の消費者)による使用試験である。消費者自身が、並びに皮膚科医及び眼科医(毒物学専門家)が、試験の開始時及び終了時に観察を行う。
【0067】
本研究では、多種の組成物の目の耐性の評価を、耐性が受け入れられるか受け入れられないかに応じて「OKである」又は「OKではない」の結果で示す。
【0068】
脱混合試験プロトコル:脱混合を、繰り返しの混合後に調べる。二相組成物の脱混合は、混合後T24Hにおいて必須に、
- ボトルにわたり、前後ティッピングの10例後に室温にて、且つ1日にわたり前後ティッピングの10例の連続4日後に、
- ボトルにわたり、前後ティッピングの10例後に45℃にて2か月経た後、且つ1日にわたり前後ティッピングの10例の連続4日後に、
- -20+20℃のサイクルの10日を経た後、且つボトルにわたり前後ティッピングの10例を施した後、且つ1日にわたり前後ティッピングの10例の連続4日後に、
満足がいかなければならない。
【0069】
微生物学的試験プロトコル:これは、ISO規格11930:2019及び29621:2017に詳細に説明されている試験である。
【0070】
(実施例1)
本発明による組成物C1及び比較組成物C2*、C3*及びC4*の調製
本発明による組成物C1、並びに比較組成物C2*、C3*及びC4*を、以下の表に挙げている成分で、上に記載したプロトコルに従って調製する。各成分の量は、それを含有する相(水性相及び油性相)の総質量に対する質量比として表し、組成物の総質量に対するものではない。
【0071】
【表1A】
【表1B】
【0072】
これらの4種の組成物のうち、本発明による組成物C1のみが、満足のいく脱混合と、目の耐性と、微生物学的防御とを同時に提示する組成物を得ることを可能にする。
【国際調査報告】