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特表2023-554115耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材、鋼線、スプリング及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材、鋼線、スプリング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231219BHJP
   C22C 38/34 20060101ALI20231219BHJP
   C21D 9/52 20060101ALI20231219BHJP
   C21D 9/02 20060101ALI20231219BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C38/34
C21D9/52 103Z
C21D9/02 A
C21D8/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537356
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 KR2021016990
(87)【国際公開番号】W WO2022131592
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0177749
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンモ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ソク-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ミョンス
【テーマコード(参考)】
4K032
4K042
4K043
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA06
4K032AA11
4K032AA12
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA21
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA32
4K032AA36
4K032BA02
4K032CA03
4K032CC04
4K032CE02
4K032CF03
4K042AA02
4K042BA04
4K042BA14
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA13
4K042DA01
4K042DA02
4K042DA03
4K042DA06
4K042DD02
4K042DE02
4K043AA02
4K043AB01
4K043AB05
4K043AB10
4K043AB11
4K043AB15
4K043AB18
4K043AB20
4K043AB25
4K043AB26
4K043AB28
4K043AB30
4K043BA01
4K043BA03
4K043BA05
4K043FA03
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材、鋼線、スプリング及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であり、微細組織は、C断面で60%以上のパーライト組織を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、
Cr+Mnは、1.8%以下であり、
Mo/Vは、1.5以下であり、
微細組織は、C断面で60%以上のパーライト組織を含むことを特徴とする耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材。
【請求項2】
旧オーステナイト平均結晶粒のサイズが25μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材。
【請求項3】
100mmのL断面分析時の長さにおいて10mm当たり、表面深さ1mmで平均粒径が10μm以上であるVN析出物の個数が0.2個未満であることを特徴とする請求項1に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材。
【請求項4】
炭化物内のMo+V含量が10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下であり、10個以上/10×10μmで分布する(V、Mo)C炭化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材。
【請求項5】
引張強度は、1,400MPa以下であり、断面減少率は、40%以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材。
【請求項6】
重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であるブルーム(bloom)を1,200℃以上の温度に加熱した後にビレットで圧延する段階、
前記ビレットを1,050℃以上の温度で180分間維持する段階、
前記ビレットを1,000℃以下で圧延して線材を得る段階、
前記圧延された線材を900℃以下の温度で巻き取る段階、及び
巻き取られた線材を2℃/sec以下の冷却速度で冷却する段階を含むことを特徴とする、耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のスプリング用線材を900~1050℃の温度に加熱し、650~750℃に急冷して恒温変態する段階、及び
前記線材を伸線して鋼線を製造する段階を含むことを特徴とする耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線の製造方法。
【請求項8】
前記恒温変態する段階前に前記線材を650~750℃に加熱する段階、及び
前記加熱された線材を酸洗する段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線の製造方法。
【請求項9】
恒温変態時間は、150秒以内であることを特徴とする請求項7に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線の製造方法。
【請求項10】
前記鋼線をQT熱処理する段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線の製造方法。
【請求項11】
重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であり、
微細組織として、焼戻しマルテンサイトを90%以上を含むことを特徴とする耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線。
【請求項12】
旧オーステナイト平均結晶粒のサイズは、25μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線。
【請求項13】
100mmのL断面分析時の長さにおいて10mm当たり、表面深さ1mmで平均粒径が10μm以上であるVN析出物の個数が0.2個未満であることを特徴とする請求項11に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線。
【請求項14】
引張強度は、2,100MPa以上であり、断面減少率は、40%以上であることを特徴とする請求項11に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線。
【請求項15】
炭化物内のMo+V含量が10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下であり、10個以上/10×10μmで分布する(V、Mo)C炭化物を含むことを特徴とする請求項11に記載の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材、スプリング用鋼線及びその製造方法に係り、より詳しくは、2,200MPa級超高強度変速機用スプリング鋼として、高い温度でも窒化処理が容易であり、耐疲労特性と窒化処理特性が向上した線材、鋼線、スプリング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の軽量化による自動車部品に対する持続的な軽量化要求によって自動車変速機に用いられるスプリングも持続的な高強度化が要求されている。しかし、スプリング素材の高強度化によって線径が小さくなれば、介在物に対する敏感度が大きくなり、それによって、疲労限度が低下する。このような問題点を解決するために、スプリング製造社は、窒化処理を通じて強度は維持し、表面硬度を向上させることによって、スプリング素材の疲労限度を増加させている。
【0003】
通常、窒化処理は、500℃以上で行われるが、スプリング鋼の場合、強度の低下を阻むために420~450℃で窒化処理を行い、十分な窒素の浸透深さを確保するために、10時間以上長期間熱処理を行う。一般的に、通常のスプリング鋼のテンパリング熱処理温度は、450℃以下であるので、420~450℃で長期間窒化処理をすれば大部分のスプリング鋼は硬度が大きく落ちるので、強度の低下を抑制するために、Cr、Mo及びVのような炭化物形成元素を適切に添加して窒化処理を行う。
【0004】
しかし、炭化物の形成元素であるCr、Mo、Vのような成分を多量添加するようになれば、窒化処理時に強度低下は抑制することができるが、線材の生産時に低温組織の形成による断線が発生し得、パーライト組織を得るためのパーライト恒温変態(LP熱処理、Lead Patenting、LP)工程時間が非常に長くなって生産がほとんど不可能となる問題が発生する。一方、スプリング製造社は、窒化処理時間を短縮するために、できるだけ高い温度で窒化処理を実施して工程時間を短縮しようとしており、同時に現場の生産性に問題がない高強度線材を必要としている。
【0005】
したがって、疲労限度及び窒化処理特性を確保すると同時に生産性に優れた高強度線材及び鋼線に対する開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、耐疲労特性と窒化処理特性が向上した高強度スプリング用線材、鋼線、スプリング及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であり、微細組織は、C断面で60%以上のパーライト組織を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の線材は、旧オーステナイト平均結晶粒のサイズが25μm以下であってもよい。
【0009】
また、本発明の線材は、100mmのL断面分析時の長さにおいて、10mm当たり、表面深さ1mmで平均粒径が10μm以上であるVN析出物の個数が0.2個未満であってもよい。
【0010】
また、本発明の線材は、炭化物内のMo+V含量が10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下であり、10個以上/10×10μmで分布する(V、Mo)C炭化物を含むことができる。
【0011】
また、本発明の線材の引張強度は、1,400MPa以下であり、断面減少率は、40%以上であってもよい。
【0012】
本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材の製造方法は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であるブルーム(bloom)を1,200℃以上の温度に加熱した後にビレットで圧延する段階、ビレットを1,050℃以上の温度で180分間維持する段階、ビレットを1,000℃以下で圧延して線材を得る段階、圧延された線材を900℃以下の温度で巻き取る段階、及び巻き取られた線材を2℃/sec以下の冷却速度で冷却する段階を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線の製造方法は、スプリング用線材を900~1,050℃の温度に加熱し、650~750℃に急冷して恒温変態する段階、及び線材を伸線して鋼線を製造する段階を含む。
【0014】
また、恒温変態する段階の前に線材を650~750℃に加熱する段階、及び加熱された線材を酸洗する段階を含むことができる。
【0015】
また、本発明の恒温変態時間は、150秒以内であってもよい。
【0016】
また、鋼線をQT熱処理する段階をさらに含むことができる。
【0017】
本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用鋼線は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であり、微細組織として焼戻しマルテンサイトを90%以上を含む。
【0018】
また、本発明の鋼線は、旧オーステナイト平均結晶粒のサイズが25μm以下であってもよい。
【0019】
また、本発明の鋼線は、100mmのL断面分析時の長さにおいて、10mm当たり、表面深さ1mmで平均粒径が10μm以上であるVN析出物の個数が0.2個未満であってもよい。
【0020】
また、本発明の鋼線の引張硬度は、2,100MPa以上であり、断面減少率は、40%以上であってもよい。
【0021】
また、本発明の鋼線は、炭化物内のMo+V含量が10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下であり、10個以上/10×10μmで分布する(V、Mo)C炭化物を含むことができる。
【0022】
本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング製造方法は、スプリング用線材をスプリングの形状で冷間成形する段階、成形されたスプリングを焼きな;を含む。
【0023】
本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリングは、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であり、表面の硬度が800Hv以上であり、C断面で、線径の1/4から3/4まで領域の硬度は、600Hv以上である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、低温組織の発生を最大限抑制して生産性に優れ、結晶粒のサイズ及び窒化物を抑制し、(Mo、V)C炭化物を均一に分布させることによって、耐疲労特性と窒化処理特性が向上した線材、鋼線、スプリング及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施例による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなり、Cr+Mnは、1.8%以下であり、Mo/Vは、1.5以下であり、微細組織は、C断面で60%以上のパーライト組織を含む。
【0026】
本明細書が実施例のすべての要素を説明するものではなく、本発明が属する技術分野において一般的な内容又は実施例間で重複する内容は省略する。
【0027】
また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0028】
単数の表現は、文脈上明白に例外がない限り、複数の表現を含む。
【0029】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0030】
以下の実施例は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者に本発明の思想を十分に伝達するために提示するものである。本発明は、ここで提示した実施例のみに限定されず、他の形態に具体化されることもできる。
【0031】
本発明の発明者らは、線材の製造工程中に結晶粒のサイズを抑制し、窒化物(nitride)の生成を抑制し、微細な炭化物を最大限均一に分布させ、線材冷却工程中に低温組織を最小化する場合、鋼線製造工程で生産性が向上し、スプリング製造工程で窒化処理特性を確保し得るということを発見し、本発明を提案するに至った。
【0032】
本発明の一実施例による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を含み、残りがFe及び不可避な不純物からなる。
【0033】
以下、本発明の実施例での合金成分の元素含量の数値限定理由について説明する。以下では、特別な言及がない限り、単位は重量%である。
【0034】
Cの含量は、0.6~0.7%である。
Cは、製品の強度を確保するために添加される元素である。C含量が0.6%未満である場合には、本発明で目標とする十分な強度を確保することができず、C含量が0.7%を超過すると、QT熱処理以後に衝撃特性が大きく下落し、線材の生産時に低温組織の発生可能性が大きく増加して線材の品質が劣位し得、また、鋼線製造工程中のLP熱処理時間が大きく増加して生産性が劣位し得る。したがって、本発明では、Cの含量を0.6~0.7%に制限する。
【0035】
Siの含量は、2.0~2.5%である。
Siは、鋼の脱酸のために用いられるだけでなく、固溶強化を通じた強度の確保に有利な元素である。特に、窒化処理時に線材の強度低下を抑制するので、窒化処理用素材に必ず必要な元素である。また、Siは、スプリングの重要な特性である変形抵抗性を大きく向上させるので、本発明では、Siを2.0%以上添加する。しかし、Siの含量が2.5%を超過する場合、表面脱炭を誘発し得、材料の加工性が劣位し得るので、本発明では、目標強度及び材料加工程度によってその含量を2.0~2.5%に制限する。
【0036】
Mnの含量は、0.2~0.5%である。
Mnは、硬化能の向上元素であり、高強度焼戻しマルテンサイト組織を作るために必須的に添加される元素のうち一つである。また、不純物であるSをMnSとして固定して無害化するために必要な元素である。ただし、Mnの含量が0.2%未満である場合、上述した効果を十分に示すことができず、Mn含量が0.5%を超過する場合、偏析により品質が低下し得る。また、本発明の鋼種は、十分な硬化能が確保されるので、Mnを0.5%以上添加する必要がない。したがって、本発明では、Mnの含量を0.2~0.5%に制限する。
【0037】
Crの含量は、0.9~1.6%である。
Crは、Mnと共に硬化能の向上に有効であり、窒化処理時に鋼の軟化抵抗性を大きく向上させるので、窒化処理用鋼では必ず必要な元素である。Crの含量が0.9%未満である場合、上述した効果を十分に示すことができず、Crの含量が1.6%を超過する場合には、鋼線の靭性を大きく低下させるので、本発明では、Crの含量を0.9~1.6%に制限する。
【0038】
Cr+Mnは、1.8%以下である。
Cr+Mnの含量が1.8%を超過する場合、線材の冷却過程でベイナイト又はマルテンサイトのような低温組織が生成され得、LP熱処理時にパーライト変態完了時間が長くなり得る。本発明では、Cr+Mnを1.8%以下に制御することによって、線材の冷却時にベイナイト又はマルテンサイトのような低温組織をC断面相(圧延方向の直角断面)で40%以下にし、LP熱処理時にパーライト変態完了時間を150秒以下に確保することができた。
【0039】
Pの含量は、0.015%以下である。
Pは、結晶粒界に偏析して靭性を低下させて水素遅延破壊抵抗性を低下させる元素であって、最大限鉄鋼材料から排除することが好ましいので、0.015%の上限を置く。
【0040】
Sの含量は、0.01%以下である。
Sは、Pと同様に結晶粒界に偏析して靭性を低下させるだけでなく、MnSを形成させて水素遅延破壊抵抗性を低下させ得るので、その添加量を0.01%以下に制限する。
【0041】
Alの含量は、0.01%以下である。
Alは、強力な脱酸元素であって、鋼中の酸素を除去して清浄度を高める元素である。ただし、Alは、Al介在物を形成して疲労抗性を低下させ得るので、本発明では、Alの含量を0.01%以下に制限する。
【0042】
Nの含量は、0.007%以下である。
Nは、不純物やAl又はV結合して熱処理時に溶解されない粗大なAlN又はVN析出物を形成する。したがって、本発明では、Nの含量を0.007%以下に制限する。
【0043】
Moの含量は、0.1~0.25%である。
Moは、窒化処理用素材において軟化抵抗性を向上させるために添加される必須的な成分である。Moは、Vと共に炭化物を形成して焼き戻し時に鋼の強度を高め、長期間の熱処理においても強度を維持する元素であるので、0.1%以上添加する。しかし、Moを0.25%を超過して添加する場合、パーライト(pearlite)形成を抑制して線材圧延以後に低温組織の形成によって線材の品質が劣位し得、伸線加工前のLP熱処理時にもパーライト(pearlite)変態を抑制させて生産性を大きく低下させる。したがって、本発明では、Moの含量を0.25%以下に制限する。
【0044】
Vの含量は、0.1~0.25%である。
Vは、Moと共に窒化処理用素材において軟化抵抗性の向上のために添加される必須的な成分である。また、Vは、炭化物を形成して焼き戻し時に鋼の強度を高め、長期間の窒化処理でも強度を維持させる。また、Vは、パーライト(pearlite)変態を加速化させるので、線材の生産時に低温組織を抑制することができ、LP熱処理中に恒温変態時間も短縮させるので、鋼線の製造工程時に生産性を向上させ得る。ただし、Vは、線材の生産過程で粗大した窒化物(nitride)を形成させ得、添加量を増やすほど線材の圧延時に加熱炉の温度を高めなければならないので、Vの含量の上限を0.25%に制限する。
【0045】
Mo/Vの比は、1.5以下である。
上述したように、Moは、窒化処理用素材において軟化抵抗性の向上のために必須的な成分である。しかし、Moは、本発明で目標とするパーライト(pearlite)組織の生成を抑制させるので、パーライト(pearlite)変態時間を短縮させるVと共に添加し、そのMo/Vの比を1.5以下に制限する。Mo/Vの比を1.5以下に制限することによって、線材の冷却時に低温組織の形成が抑制され、LP熱処理時にパーライト変態完了時間を短縮することができる。
【0046】
合金組成外の残部は、Feである。本発明の耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、通常、鋼の工業的生産過程で含まれ得るその他の不純物を含むことができる。このような不純物は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者であれば、誰でも分かる内容であるので、本発明で特別にその種類と含量を制限しない。
【0047】
また、本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、微細組織として鋼材の旧オーステナイト結晶粒サイズは平均25μm以下であってもよい。
【0048】
また、本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、C断面(圧延方向の直角断面)から見たとき、組織の60%以上がパーライト組織及び残りのベイナイト又はマルテンサイト組織を含むことができる。好ましくは、80%以上のパーライト組織を含むことができる。
【0049】
また、本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、100mmのL断面(圧延方向の平行断面)分析時に長さにおいて、10mm当たり、表面深さ1mmで平均粒径が10μm以上であり、Vを10at%以上含んでいるVN析出物の個数が0.2個未満である。
【0050】
また、本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、10×10μm面積で10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下である(V、Mo)C析出物が10個以上である。
【0051】
また、本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、引張強度が1,400MPa以下であってもよい。
【0052】
次に、本発明の一実施例による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材の製造方法に対して説明する。
【0053】
本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、多様な方法で製造され得、その製造方法は、特に制限されない。ただし、一実施例として次のような方法によって製造され得る。
【0054】
本発明による耐疲労特性と窒化処理特性が向上したスプリング用線材は、重量%で、C:0.6~0.7%、Si:2.0~2.5、Mn:0.2~0.5%、Cr:0.9~1.6%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.01%以下、N:0.007%以下、Mo:0.1~0.25、V:0.1~0.25%を、残りがFe及び不可避な不純物からなるブルーム(bloom)を1,200℃以上の温度に加熱した後にビレットで圧延する段階、前記ビレットを1,050℃以上の温度で180分間維持する段階、前記ビレットを1,030~1,060℃で抽出した後に1,000℃度以下で圧延して線材を得る段階;圧延された線材を900℃以下の温度で巻き取る段階、及び巻き取られた線材を2℃/sec以下の冷却速度で冷却する段階を含む。
【0055】
以下、各製造段階についてより詳しく説明する。
【0056】
まず、上述した成分系を満足するブルーム(Bloom)を1,200℃以上の温度に加熱した後、鋼片を圧延してビレット(billet)を得る。
【0057】
加熱工程は、鋼内部の窒化物(nitride)を全て除去するための工程であって、温度が1,200℃未満である場合、窒化物が十分に除去されないので、加熱温度の下限を1,200℃に制限する。
【0058】
その後、圧延されたビレットを1,050℃以上の温度で180分間維持する。加熱温度が1,050℃未満であるか180分未満である場合、素材内にVが十分に溶解されないので、本発明で目標とする炭化物を確保することができず、炭化物を十分に確保できない場合、最終製品の軟化抵抗性が劣位し得る。したがって、本発明では、ビレットの加熱温度を1,050℃以上に制限し、維持時間を180分に制限する。
【0059】
加熱されたビレットを1,030~1,060℃の温度で抽出した後、1,000℃以下の温度で線材圧延を行う。線材圧延温度が1,000℃以上である場合、旧オーステナイト粒径が大きくなり得、線材を冷却する過程中にSiによる表面脱炭が誘発され得る。また、後続工程である巻取工程で巻取温度を900℃以下に制限するので、できるだけ線材圧延温度を1,000℃以下に制限する。
【0060】
圧延された線材を900℃以下の温度で巻き取り、0.5~2℃/secの冷却速度で徐冷して本発明による線材を得る。このとき、冷却速度が0.5℃/sec未満である場合、脱炭が発生し得、冷却速度が2℃/secを超過する場合、低温組織の生成によって素材に破断が発生し得る。したがって、本発明では、巻取後の冷却速度を0.5~2℃/secに制限する。
【0061】
本発明によって製造されたスプリング用線材は、C断面(圧延方向の直角断面)から見たとき、60%以上のパーライト組織及び残りベイナイト又はマルテンサイト組織を含むことができる。好ましくは、80%以上のパーライト組織を含むことができる。
【0062】
また、本発明によるスプリング用線材は、鋼材の旧オーステナイト平均結晶粒のサイズは25μm以下である。また、100mmのL断面(圧延方向の平行断面)分析時の長さにおいて、10mm当たり、表面深さ1mmで平均粒径が10μm以上であり、Vを10at%以上含んでいるVN析出物の個数が0.2個未満であり、10×10μm面積で炭化物内のMo+V含量が10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下である(V、Mo)C析出物が10個以上である。
【0063】
すなわち、本発明によるスプリング用線材は、旧オーステナイト結晶粒のサイズが制御され、VN窒化物が抑制され、(V、Mo)C炭化物が均一に分布されることによって、スプリングを製造する過程で優れた窒化特性を確保することができる。
【0064】
また、本発明によるスプリング用線材は、引張強度が1,400MPa以下であり、断面減少率は、40%以上であってもよい。
【0065】
次に、本発明によるスプリング用線材を利用してスプリング用鋼線を製造する方法に対して説明する。本発明によるスプリング用鋼線は、前記製造された線材を伸線加工して製造される。
【0066】
本発明の一実施例による高強度スプリング用鋼線の製造方法は、本発明による線材をLA熱処理する段階、LP熱処理する段階、及び前記線材を伸線して鋼線を製造する段階を含む。
【0067】
まず、本発明によって製造された線材を650~750℃で低温焼鈍熱処理(LowTemperature Annealing、LA)を行う。LA熱処理を通じて線材の強度は、1,200MPa以下に低くなる。本発明では、必要に応じてLA熱処理が省略され得る。
【0068】
その後、LA熱処理した線材を酸洗し、900~1050℃の温度で10分以内で加熱し、5分以内で維持する。900~1050℃炉の再加熱は、オーステナイト組織を得るためのものであって、熱処理時間は、15分以内とする。熱処理時間が15分を超過する場合、オーステナイト組織が粗大化し得るので、維持時間を15分以内に制限する。引き続き、加熱された線材を650~750℃の鉛パテンティング(Lead Patenting、LP)に3分以内で通過させて急冷して恒温変態させ、パーライト組織を得る。鉛パテンティングで恒温維持温度が650℃未満である場合、低温組織が形成され得、750℃を超過する場合、パーライトの組織の緻密度が低下し得るので、それによって、鉛パテンティング温度を650~750℃に制限する。また、本発明は、Mo/V比を1.5以下、Mn+Crを1.8%以下に制御することによって、パーライト変態時間を150秒以内に短縮し得、LP熱処理工程で生産性を確保することができる。
【0069】
その後、LP熱処理された線材を伸線して鋼線を製造する。このとき、製造された鋼線の線径は、5mmであってもよく、LP熱処理を再び行う場合、線径は、2mm以下であってもよい。
【0070】
また、本発明によって製造された鋼線は、パーライト組織であってもよい。
【0071】
本発明によるパーライト鋼線は、本発明で目標とする2,100MPa以上の超高強度及び靭性を確保するためにQT工程を通じて焼戻しマルテンサイト組織に変態され得る。
【0072】
焼戻しマルテンサイト組織を確保するために、まず、本発明によって製造されたパーライト鋼線を900~1,000℃の温度で5分以内で加熱した後に10分以内で維持し、加熱された鋼線を70度以下のオイルにクエンチングして2分以内で維持してマルテンサイト組織の鋼線を得る。
【0073】
引き続き、クエンチングされたマルテンサイト組織の鋼線を450~500℃の温度で3分以内で再加熱して5分以内で維持し、再加熱された鋼線を70℃以下のオイルで再びクエンチングして最終焼戻しマルテンサイト組織の高強度スプリング用鋼線を得る。
【0074】
このとき、クエンチング温度は、450~550℃である。クエンチング温度が450℃未満である場合、強度が過度に高くなって十分な靭性を確保することができず、550℃を超過する場合、本発明で目標とする強度を確保することができないので、クエンチング温度を450~500℃に制限する。
【0075】
本発明によって製造された高強度スプリング用鋼線は、微細組織として焼戻しマルテンサイトを90%以上含むことができる。
【0076】
本発明による高強度スプリング用鋼線は、鋼材の旧オーステナイト平均結晶粒のサイズは、25μm以下であり、100mmのL断面(圧延方向の平行断面)分析時の長さにおいて、10mm当たり、表面深さ1mm以内で平均粒径が10μm以上であるVN析出物が存在しない。また、本発明による高強度スプリング用鋼線は、10×10μm面積で炭化物内のMo+V含量が10at.%以上であり、平均粒径が50nm以下である(V、Mo)C析出物が10個以上である。
【0077】
すなわち、本発明によるスプリング用鋼線は、旧オーステナイト結晶粒のサイズが制御され、VN窒化物が抑制され、(V、Mo)C炭化物が均一に分布することによって、スプリングを製造する過程で優れた窒化特性を確保することができる。
【0078】
また、本発明による高強度スプリング用鋼線の引張強度は、2,100MPa以上であってもよく、鋼線の断面減少率(RA)は、40%以上であってもよい。
【0079】
次に、本発明による高強度スプリング用鋼線を利用して変速機用スプリングを製造する方法に対して説明する。本発明で他の変速機用スプリングは、通常の方法で製造され得る。ただし、一実施例として次のような方法によって製造され得る。
【0080】
例えば、本発明による高強度スプリング用鋼線をスプリングで冷間成形して焼きなまし熱処理した後に窒化処理し、ショットピーニングして最終変速機用スプリングに製造することができる。
【0081】
このとき、窒化処理は、420~450℃の温度で10時間以上行われ得る。窒化処理温度が420℃未満である場合、窒素が表面にまともに浸透することができず、窒化処理温度が450℃超過である場合、素材の中心部の硬度が下がって本発明で目標とするスプリングの強度を確保することができない。したがって、本発明では、窒化処理温度及び維持時間を420~450℃の温度及び10時間以上に制限する。
【0082】
本発明による変速機用スプリングは、スプリング用鋼線の旧オーステナイト結晶粒のサイズを制御し、VN窒化物を抑制し、(V、Mo)C炭化物を均一に分布させることによって、スプリングを製造する過程で優れた窒化特性を確保することができる。
【0083】
窒化処理後のスプリングは、窒化処理前に比べて疲労限度が10%以上向上し得る。ここで、疲労限度は、スプリングの設計後の疲労テスト時に107回以上の繰り返し荷重を耐えることができる限度を意味する。
【0084】
また、窒化処理後のスプリングは、窒化処理前に比べて強度低下が10%以下に抑制され得る。
【0085】
また、窒化処理後のスプリングは、表面の硬度が800Hv以上であり、C断面(圧延方向の直角断面)で線径1/4から3/4まで硬度が600Hv以上であってもよい。
【0086】
また、本発明による窒化処理は、420~450℃の高い温度で行われ得るので、窒化処理時間を短縮することができ、窒化処理特性に優れる。
【0087】
以下、本発明を実施例を通じてより詳しく説明する。しかし、このような実施例の記載は、本発明の実施を例示するためのものに過ぎず、このような実施例の記載によって本明が制限されるものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載した事項とそれから合理的に類推される事項によって決定されるものであるからである。
実施例
【0088】
下記表1の合金組成を有する材料をインゴット(ingot)に鋳造した後、1,200℃で均質化熱処理し、1,050℃から830℃まで温度を下げて最終線径6.5mmに熱間圧延した後、1℃/secの速度で冷却して発明例及び比較例の線材試験片を得た。その後、発明例及び比較例の線材に対して引張強度、断面減少率(RA)、パーライト分率、平均旧オーステナイトサイズ、透過電子顕微鏡(TEM)分析時の50nm以下の析出物個数、走査型電子顕微鏡(SEM)で100mmのL面分析時の長さにおいて10mm当たり、表面深さ1mm以内で10μm以上であるVN窒化物の個数を測定し、下記表2に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
引き続き、6.5mmの比較例及び発明例の線材の試験片を720℃で2時間の間熱処理(LA熱処理)し、酸洗した後、980℃で3分間加熱した後、680℃で恒温熱処理(LP熱処理)した。このとき、恒温熱処理(LP熱処理)を通じてパーライトに変態する時間を測定し、Mo/V比、Cr+Mn値とともに下記表3に示した。
【0092】
【表3】
【0093】
引き続き、パーライト線材の試験片を伸線して線径3mmの鋼線に製造し、製造された鋼線を950℃で5分間熱処理した後、60℃のオイルでクエンチングし、450~500℃の温度で3分以内でテンパリングしてQT鋼線の試験片を得た。QT鋼線の試験片に対して引張強度及びRAを測定し、下記表4に示した。その後、QT鋼線の試験片を本発明による製造方法によってスプリングに製造した後、R(引張応力/圧縮応力)=-1の条件で疲労試験を行って疲労強度を測定し、引き続き、当該QT鋼線を450℃で窒化処理した後にC断面の深さ1/4から3/4まで硬度を10ポイント以上測定して平均を出し、窒化処理前と同一の条件で疲労試験を行って疲労強度を測定し、下記表4に示した。
【0094】
【表4】
【0095】
表2~表4に示すとおり、本発明の合金組成及び製造条件を全て満たす発明例1及び2は、いずれも線材の引張強度が1,400MPa以下を満足し、パーライト分率が60%以上であり、(Mo、V)C析出物の個数が10×10μm面積で10個以上であり、QT熱処理以後の鋼線の強度が2,100MPa以上あり、RAが40%以上であり、窒化処理後の疲労強度が全て10%以上増加したことが確認できた。一方、比較例1は、Moの含量がVに比べて過多であって、パーライト分率が42%で冷却する時にパーライトが十分に形成されず、パーライト変態時間も150秒を超過し、引張強度が1,400MPa以上であった。比較例2は、Vの含量が0.3%と過多に添加されて表面に粗大したVNが晶出され、OT鋼線のRAが38%と低く、疲労強度が712MPaで他の試験片に比べて非常に劣位したことを確認した。
【0096】
比較例3は、Moが過多に添加されてC断面全体が低温組織が形成されて線材の引張強度が1,400MPaより高く、RAも35%と劣位した。また、パーライトの変態時間が150秒を超過して生産性を確保することができなかった。
【0097】
比較例4は、Mo/V比は満足したが、Mn+Crが1.8%を超過して比較例3のように低温組織が形成されて線材の引張強度が1,400MPaより高く、パーライト変態時間が150秒を超過して生産性を確保することができなかった。
【0098】
比較例5は、Vの含量が低いためOT鋼線の疲労強度が793MPaと劣位し、窒化処理後にも疲労強度が低下し、疲労特性が向上しなかった。
【0099】
本発明はこれに限定されず、当該技術分野において通常の知識を有した者であれば、次に記載する特許請求の範囲の概念と範囲を脱しない範囲内で多様に変更及び変形が可能であることを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の一例によると、耐疲労特性と窒化処理特性が向上した高強度スプリング用線材、鋼線、スプリング及びその製造方法を提供することができる。

【国際調査報告】