(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】幅方向に沿って優れたスポット溶接性が均等に実現される高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20231219BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20231219BHJP
C23C 2/04 20060101ALI20231219BHJP
C23C 2/28 20060101ALI20231219BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20231219BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20231219BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20231219BHJP
C22C 18/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C23C2/06
C23C2/04
C23C2/28
C23C2/40
C22C38/60
C21D9/46 J
C22C18/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537361
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2021018408
(87)【国際公開番号】W WO2022139251
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0180187
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】カン、 キ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】カン、 デ-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 テ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ソ、 スル-ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ミュン-ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジョン-サン
【テーマコード(参考)】
4K027
4K037
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB13
4K027AB28
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4K037JA06
(57)【要約】
本発明の一側面によると、幅方向に沿って優れたスポット溶接性が均等に実現される高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板、及び前記素地鋼板の表面に設けられる亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、
前記素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)が2μm以上であり、
前記めっき鋼板の幅方向のエッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)と前記めっき鋼板の幅方向の中心部の平均内部酸化層の深さ(c)との差(b-c)が0を超過する、亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)は、前記めっき鋼板の幅方向のエッジから前記めっき鋼板の幅方向に沿って前記めっき鋼板の中心部側に0.5cm離隔した地点及び前記めっき鋼板の幅方向のエッジから前記めっき鋼板の幅方向に沿って前記めっき鋼板の中心部側に1.0cm離隔した地点で測定された内部酸化層の深さの平均値であり、
前記中心部の平均内部酸化層の深さ(c)は、前記めっき鋼板の幅方向のエッジから前記めっき鋼板の幅方向に沿って前記めっき鋼板の中心部側に15cm離隔した地点、前記めっき鋼板の幅方向のエッジから前記めっき鋼板の幅方向に沿って前記めっき鋼板の中心部側に30cm離隔した地点及び前記めっき鋼板の幅方向の中心で測定された内部酸化層の深さの平均値であり、
前記素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)は、前記エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)及び前記中心部の平均内部酸化層の深さ(c)の平均値である、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
前記亜鉛系めっき層のめっき付着量は30~70g/m
2である、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板
【請求項4】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.05~1.5%、Si:2.5%以下、Mn:1.5~20.0%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3.0%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1.0%以下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
前記亜鉛めっき鋼板の引張強度は900MPa以上である、請求項4に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
前記素地鋼板の厚さは1.0~2.0mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
鋼スラブを950~1300℃の温度範囲で再加熱する段階;
900~1150℃の仕上げ圧延開始温度及び850~1050℃の仕上げ圧延終了温度で前記再加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を提供する段階;
前記熱延鋼板を590~750℃の温度範囲で巻き取る段階;
前記巻き取られた熱延コイルの両エッジを10℃/s以上の加熱速度で600~800℃の温度範囲まで昇温して5~24時間加熱する段階;
-10~+30℃の露点温度、N
2-5~10%H
2の雰囲気ガス、及び650~900℃の温度範囲の均熱帯で前記熱延鋼板を焼鈍処理する段階;
550~700℃の温度範囲の徐冷帯で前記焼鈍処理された熱延鋼板を徐冷する段階;
270~550℃の温度範囲の急冷帯で前記徐冷された熱延鋼板を急冷する段階;
前記急冷された熱延鋼板を再加熱した後、420~550℃の引き込み温度で亜鉛系めっき浴に浸漬させて亜鉛系めっき層を形成する段階;及び
選択的に前記亜鉛系めっき層が形成された鋼板を480~560℃の温度範囲で加熱して合金化する段階;を含む、亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記焼鈍時の通板速度は40~130mpmである、請求項7に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記鋼スラブは、重量%で、C:0.05~0.30%、Si:2.5%以下、Mn:1.5~10.0%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):1.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:0.2%以下、B:0.005%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む、請求項7に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅方向に沿って優れたスポット溶接性が均等に実現される高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染などの問題により、自動車排出ガスと燃費に対する規制は、日々強化されている。そのため、自動車鋼板の軽量化を介した燃料消耗量の減少に対する要求が強くなっている。そして、単位厚さ当たりの強度が高い様々な種類の高強度鋼板が開発され、発売されている。
【0003】
高強度鋼とは、通常490MPa以上の強度を有する鋼を意味するが、必ずしもこれに限定するものではなく、変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity;TRIP)鋼、双晶誘起塑性(Twin Induced Plasticity;TWIP)鋼、二相組織(Dual Phase;DP)鋼、複合組織(Complex Phase;CP)鋼なども該当することができる。
【0004】
一方、自動車鋼材は、耐食性を確保するために表面にめっきを施しためっき鋼板の形態で供給されるが、その中でも亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)、高耐食めっき鋼板(ZM)または合金化亜鉛めっき鋼板(GA)は、亜鉛の犠牲防食特性を利用して高い耐食性を有するため、自動車用素材として多く使用される。
【0005】
ところが、高強度鋼板の表面を亜鉛でめっきする場合、スポット溶接性が脆弱になるという問題がある。すなわち、高強度鋼の場合には、引張強度とともに降伏強度が高いため、溶接中に発生する引張応力を、塑性変形を介して解消し難いため、表面に微小クラックが発生する可能性が高い。高強度亜鉛めっき鋼板に対して溶接を行うと、融点の低い亜鉛が鋼板の微小クラックに浸透するようになる。その結果、液体金属脆化(Liquid Metal Embrittlement;LME)という現象が発生して、疲労環境で鋼板が破壊に至るようになる問題が発生する可能性があり、この問題は鋼板の高強度化に大きな障害となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面によると、幅方向に沿って優れたスポット溶接性が均等に実現される高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供できる。
【0007】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全体的な内容から本発明のさらなる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面による亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板、及び上記素地鋼板の表面に設けられる亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、上記素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)が2μm以上であり、上記めっき鋼板の幅方向のエッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)と上記めっき鋼板の幅方向の中心部の平均内部酸化層の深さ(c)との差(b-c)は0を超過してよい。
【0009】
上記エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)は、上記めっき鋼板の幅方向のエッジから上記めっき鋼板の幅方向に沿って上記めっき鋼板の中心部側に0.5cm離隔した地点及び上記めっき鋼板の幅方向のエッジから上記めっき鋼板の幅方向に沿って上記めっき鋼板の中心部側に1.0cm離隔した地点で測定された内部酸化層の深さの平均値とすることができる。上記中心部の平均内部酸化層の深さ(c)は、上記めっき鋼板の幅方向のエッジから上記めっき鋼板の幅方向に沿って上記めっき鋼板の中心部側に15cm離隔した地点、上記めっき鋼板の幅方向のエッジから上記めっき鋼板の幅方向に沿って上記めっき鋼板の中央部側に30cm離隔した地点及び上記めっき鋼板の幅方向の中心で測定された内部酸化層の深さの平均値とすることができる。上記素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)は、上記エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)及び上記中心部の平均内部酸化層の深さ(c)の平均値とすることができる。
【0010】
上記亜鉛系めっき層のめっき付着量は30~70g/m2とすることができる。
【0011】
上記素地鋼板は、重量%で、C:0.05~1.5%、Si:2.5%以下、Mn:1.5~20.0%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3.0%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1.0%以下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含むことができる。
【0012】
上記亜鉛めっき鋼板の引張強度は900MPa以上とすることができる。
【0013】
上記素地鋼板の厚さは1.0~2.0mmとすることができる。
【0014】
本発明の一側面による亜鉛めっき鋼板の製造方法は、鋼スラブを950~1300℃の温度範囲で再加熱する段階;900~1150℃の仕上げ圧延開始温度及び850~1050℃の仕上げ圧延終了温度で上記再加熱されたスラブを熱間圧延して熱延鋼板を提供する段階;上記熱延鋼板を590~750℃の温度範囲で巻き取る段階;上記巻き取られた熱延コイルの両エッジを10℃/s以上の加熱速度で600~800℃の温度範囲まで昇温して5~24時間加熱する段階;-10~+30℃の露点温度、N2-5~10%H2の雰囲気ガス、及び650~900℃の温度範囲の均熱帯で上記熱延鋼板を焼鈍処理する段階;550~700℃の温度範囲の徐冷帯で上記焼鈍処理された熱延鋼板を徐冷する段階;270~550℃の温度範囲の急冷帯で上記徐冷された熱延鋼板を急冷する段階;上記急冷された熱延鋼板を再加熱した後、420~550℃の引き込み温度で亜鉛系めっき浴に浸漬させて亜鉛系めっき層を形成する段階;及び選択的に上記亜鉛系めっき層が形成された鋼板を480~560℃の温度範囲で加熱して合金化する段階;を含むことができる。
【0015】
上記焼鈍時の通板速度は40~130mpmとすることができる。
【0016】
上記鋼スラブは、重量%で、C:0.05~0.30%、Si:2.5%以下、Mn:1.5~10.0%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):1.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:0.2%以下、B:0.005%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含むことができる。
【0017】
上記課題の解決手段は、本発明の特徴を全て列挙したものではなく、本発明の様々な特徴とそれによる利点及び効果は、下記の具体的な実施例を参照してより詳細に理解することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によると、めっき層の直下の素地鉄の表層部に一定厚さの内部酸化層を形成させるだけでなく、内部酸化層が鋼板の幅方向に沿って均一な厚さを有するようにして、スポット溶接時に引張応力が加えられるとしても優れたクラック抵抗性を鋼板の幅方向に沿って均一に提供することができ、それにより溶融亜鉛めっき層がクラックに沿って浸透して発生する液体金属脆化(LME)現象を鋼板の幅方向に対して均等に抑制することができる。
【0019】
本発明の効果は、上述の事項に限定されるものではなく、通常の技術者が下記に記載された事項から推論可能な技術的効果を含むと解釈することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、幅方向に沿って優れたスポット溶接性が均等に実現される高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関するものであり、以下では本発明の好ましい実施形態を説明する。本発明の実施形態は様々な形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明される実施形態に限定されると解釈されてはいけない。本実施形態は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に提供するものである。
【0021】
以下、いくつかの実施形態を介して、本発明の亜鉛めっき鋼板について説明する。
【0022】
本発明において亜鉛めっき鋼板とは、亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)だけでなく、合金化亜鉛めっき鋼板(GA)はもちろんであり、亜鉛が主に含まれた亜鉛系めっき層が形成されためっき鋼板の全てを含む概念であることに留意する必要がある。亜鉛が主に含まれるということは、めっき層に含まれた元素のうち亜鉛の割合が最も高いことを意味する。一例として、高耐食めっき鋼板(ZM)がこれに含まれてよい。但し、合金化亜鉛めっき鋼板では亜鉛よりも鉄の割合を高くすることができ、鉄を除いた残りの成分のうち亜鉛の割合が最も高い鋼板までが本発明の範囲に含まれ得る。
【0023】
本発明の発明者らは、溶接時に発生する液体金属脆化(LME)が、鋼板の表面から発生する微小クラックにその原因があることに着案して、表面の微小クラックを抑制する手段について研究し、抑制のためには鋼板表面の微細組織を特に制御することが必要であることを見出して、本発明に至った。
【0024】
通常、高強度鋼の場合には、鋼の硬化能やオーステナイトの安定性などを確保するために、炭素(C)、マンガン(Mn)、シリコン(Si)などの元素を多量含むことができるが、これらの元素は鋼のクラックに対する感受性を高める役割を果たす。したがって、これらの元素が多量含まれた鋼は、微小クラックが容易に発生して、結局的には溶接時に液体金属脆化の原因となる。本発明者らの研究結果によると、このような微小クラックの発生挙動は、炭素濃度と密接な関係がある。鋼板表層部の炭素濃度が低いほど表層部に軟質化されたフェライト層が形成されて、スポット溶接時に発生する引張応力によってクラックが発生せず、塑性変形で応力を解消してクラックが発生しなくなり、スポット溶接部のクラックが減少する。このような軟質のフェライト形成分率は表層部の内部酸化深さに影響を受けるため、スポット溶接部のLMEクラックの改善レベルは表層部に形成された内部酸化層の厚さに比例することができる。
【0025】
また、鋼板の幅方向の全体に対して一部領域でも局地的に不均一な内部酸化層が形成される場合、均一なLMEクラック抵抗性を提供できなくなる。したがって、一定レベル以上の深さで形成された内部酸化層が鋼板の全体の幅方向に対して均一に形成されることが主要である。
【0026】
本発明の一実施形態によると、素地鋼板、及び上記素地鋼板の表面に設けられる亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、上記素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)が2μm以上であり、上記めっき鋼板の幅方向のエッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)と上記めっき鋼板の幅方向の中心部の平均内部酸化層の深さ(c)との差(b-c)が0を超過することができる。好ましい内部酸化層の深さの差(b-c)は、0超過1.5以下とすることができる。
【0027】
エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)は、めっき鋼板の幅方向のエッジからめっき鋼板の幅方向に沿ってめっき鋼板の中心部側に0.5cm離隔した地点及びめっき鋼板の幅方向のエッジからめっき鋼板の幅方向に沿ってめっき鋼板の中心部側に1.0cm離隔した地点で測定された内部酸化層の深さの平均値とすることができる。中心部の平均内部酸化層の深さ(c)は、めっき鋼板の幅方向のエッジからめっき鋼板の幅方向に沿ってめっき鋼板の中心部側に15cm離隔した地点、めっき鋼板の幅方向のエッジからめっき鋼板の幅方向に沿ってめっき鋼板の中心部側に30cm離隔した地点及びめっき鋼板の幅方向の中心で測定された内部酸化層の深さの平均値とすることができる。素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)は、エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)及び中央部の平均内部酸化層の深さ(c)の平均値とすることができる。当該技術分野の通常の技術者は、公知の測定方法を活用して、格別の技術的な困難なしに素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)、エッジ部側の平均内部酸化層の深さ(b)及び中心部の平均内部酸化層の深さ(c)を測定することができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、素地鋼板に形成された内部酸化層の平均深さ(a)を2μm以上のレベルに制御するため、軟質の表層部を十分な厚さで形成することができる。したがって、スポット溶接時の軟質の表層部で塑性変形が発生し、スポット溶接中に発生した引張応力が消耗され、それにより鋼板のクラック感受性を効果的に抑制することができる。
【0029】
一方、通常的な工程条件で冷延めっき鋼板を製造する場合、幅方向の中心部に形成された内部酸化層は、幅方向のエッジ部に形成された内部酸化層に比べて、より深い深さで形成される。冷延鋼板の製造時には、熱延鋼板を一定温度範囲で熱延コイルに巻き取る過程を含む必要がある。一定温度範囲以上で巻き取られた熱延コイルの中心部は、熱延コイルのエッジ部に比べて相対的に高温で長時間維持されるため、熱延コイルの中心部側は熱延コイルのエッジ部に比べてより活発に内部酸化が発生するようになる。このような内部酸化の傾向が最終冷延めっき鋼板にそのまま維持され、その結果、最終鋼板で鋼板の幅方向に沿ってLME抵抗性のばらつきを誘発するようになる。
【0030】
一方、本発明が一実施形態による亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板の表層部に平均深さが2μm以上の内部酸化層を備えるだけでなく、めっき鋼板のエッジ部側に形成された内部酸化層に比べてめっき鋼板の中心部側に形成された内部酸化層が、より厚い厚さを有するように制御するため、優れたLME抵抗性が鋼板の幅方向に沿って均等に実現されることができる。
【0031】
本発明は、強度900MPa以上の高強度鋼板であれば、その種類を制限しない。但し、必ずしもこれに制限するものではないが、本発明で対象とする鋼板は、重量割合で、C:0.05~1.5%、Si:2.5%以下、Mn:1.5~20.0%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3.0%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1.0%以下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含むことができる。場合によって上記に列挙されていない鋼中に含まれ得る元素を合計1.0重量%以下の範囲までさらに含むことができる。本発明における各成分元素の含有量は、特に断りのない限り、重量を基準として表す。上述した組成は、鋼板のバルク組成、すなわち鋼板厚さの1/4地点の組成を意味する(以下、同一)。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、高強度素地鋼板はTRIP鋼、DP鋼、CP鋼などを対象とすることができる。これら鋼は細部的に区分する時、以下の組成を有することができる。
【0033】
鋼組成1:C:0.05~0.30%(好ましくは0.10~0.25%)、Si:0.5~2.5%(好ましくは1.0~1.8%)、Mn:1.5~4.0%(好ましくは2.0~3.0%)、S-Al:1.0%以下(好ましくは0.05%以下)、Cr:2.0%以下(好ましくは1.0%以下)、Mo:0.2%以下(好ましくは0.1%以下)、B:0.005%以下(好ましくは0.004%以下)、Nb:0.1%以下(好ましくは0.05%以下)、Ti:0.1%以下(好ましくは0.001~0.05%)、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む。場合によっては、上記に列挙されていないが、鋼中に含まれ得る元素を合計1.0%以下の範囲までさらに含むことができる。
【0034】
鋼組成2:C:0.05~0.30%(好ましくは0.10~0.2%)、Si:0.5%以下(好ましくは0.3%以下)、Mn:4.0~10.0%(好ましくは5.0~9.0%)、S-Al:0.05%以下(好ましくは0.001~0.04%)、Cr:2.0%以下(好ましくは1.0%以下)、Mo:0.5%以下(好ましくは0.1~0.35%)、B:0.005%以下(好ましくは0.004%以下)、Nb:0.1%以下(好ましくは0.05%以下)、Ti:0.15%以下(好ましくは0.001~0.1%)、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む。場合によっては、上記に列挙されていないが、鋼中に含まれ得る元素を合計1.0%以下の範囲までさらに含むことができる。
【0035】
また、上述した各成分元素のうち、その含有量の下限を限定していない場合には、これらを任意元素とみなしてもよく、その含有量が0%になってもよいことを意味する。
【0036】
必ずしもこれに限定するものではないが、本発明の一実施形態による素地鋼板の厚さは1.0~2.0mmとすることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、上記鋼板の表面には1層以上のめっき層が含まれてよく、上記めっき層はGI(Galvanized)、GA(Galva-annealed)またはZM(Zinc-Magnesium-Aluminum)層を含む亜鉛系めっき層とすることができる。本発明では、上述したように表層部のフェライト分率及び平均結晶粒径を適切な範囲に制御したため、亜鉛系めっき層が鋼板の表面に形成されても、スポット溶接時に発生する液体金属脆化を効果的に防止することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によって上記亜鉛系めっき層がGA層である場合には、合金化度(めっき層内のFe含有量を意味する)を8~13重量%、好ましくは10~12重量%に制御することができる。合金化度が十分でない場合には亜鉛系めっき層中の亜鉛が微小クラックに浸透して液体金属脆化の問題を起こす可能性がある。一方、合金化度が高すぎる場合にはパウダリングなどの問題が発生することがある。
【0039】
また、上記亜鉛系めっき層のめっき付着量は30~70g/m2とすることができる。めっき付着量が小さすぎる場合には、十分な耐食性を得ることが難い。一方、めっき付着量が大きすぎる場合には、製造原価上昇及び液体金属脆化の問題が発生する可能性があるため、上述した範囲内に制御する。より好ましいめっき付着量の範囲は40~60g/m2とすることができる。上記めっき付着量は、最終製品に付着されためっき層の量を意味する。めっき層がGAの場合には、合金化によってめっき付着量が増加するため、合金化前は多少その重量が減少することがあり、合金化度によって異なる。そのため、必ずしもこれに制限するものではないが、合金化前の付着量(すなわち、めっき浴から付着されるめっきの量)は、それより約10%程度減少された値とすることができる。
【0040】
以下、本発明の鋼板を製造するための一実施形態について説明する。但し、本発明の鋼板は、必ずしも下記の実施形態によって製造される必要はなく、下記の実施形態は本発明の鋼板を製造する一つの好ましい方法であることに留意する必要がある。
【0041】
まず、上述した組成の鋼スラブを再加熱して、粗圧延及び仕上げ圧延を経て熱間圧延し、次いでROT(Run Out Table)冷却を経た後、巻き取る過程によって熱延鋼板を製造することができる。この後、製造された鋼板に対して、酸洗を行って冷間圧延することができ、得られた冷延鋼板を焼鈍してめっきすることができる。ROT冷却などの熱延条件については特に制限しないが、本発明の一実施形態では、スラブ加熱温度、仕上げ圧延開始及び終了温度、巻き取り温度、酸洗条件、冷間圧延条件、焼鈍条件及びめっき条件などを次のように制限することができる。
【0042】
スラブ加熱温度:950~1300℃
スラブ加熱は、熱間圧延前に素材を加熱して圧延性を確保するために行う。スラブ再加熱中にスラブ表層部は炉内酸素と結合して酸化物であるスケールを形成する。スケールを形成する際に鋼中の炭素とも反応して一酸化炭素ガスを形成する脱炭反応を起こし、脱炭量はスラブ再加熱温度が高いほど増加する。スラブ再加熱温度が過度に高いと脱炭層が過度に形成されて、最終製品の材質が軟化する問題点があり、過度に低いと熱間圧延性が確保できず、エッジクラックが発生する可能性があり、表層部の硬度を十分に低くすることができないため、LME改善が不十分となる。
【0043】
仕上げ圧延開始温度:900~1150℃
仕上げ圧延開始温度が過度に高いと、表面熱延スケールが過度に発達して最終製品のスケールに起因した表面欠陥発生量が増加する可能性があるため、その上限を1150℃に制限する。また、仕上げ圧延開始温度が900℃未満の場合、温度減少によりバーの剛性が増加して熱間圧延性が大幅に減少することがあるため、上述した範囲で仕上げ圧延開始温度を制限することができる。
【0044】
仕上げ圧延終了温度:850~1050℃
仕上げ圧延終了温度が1,050℃を超過すると、仕上げ圧延中にデスケーリングで除去したスケールが再び表面に過度に形成され、表面欠陥発生量が増加し、仕上げ圧延終了温度が850℃未満であると、熱間圧延性が低下するため、仕上げ圧延終了温度は上述した範囲に制限することができる。
【0045】
巻取り温度:590~750℃
熱間圧延された鋼板は、この後、コイル状に巻き取られて保管されるが、巻き取られた鋼板は徐冷過程を経るようになる。このような過程によって鋼板表層部に含まれた硬化性元素が除去されるようになるが、熱延鋼板の巻取り温度が低すぎる場合には、これら元素の酸化除去に必要な温度よりも低い温度でコイルが徐冷されるため、十分な効果が得られ難い。
【0046】
熱延コイルのエッジ部加熱:10℃/s以上の加熱速度で600~800℃の温度範囲まで昇温して5~24時間加熱
本発明の一実施形態においては、エッジ部とエッジ部の幅方向の内側領域との間の内部酸化層の深さ偏差及びLME抵抗性の差異を減らすために、熱延コイルのエッジ部を加熱することができる。熱延コイルのエッジ部加熱とは、巻き取られたコイルの幅方向の両端部、すなわちエッジ部を加熱することを意味するものであり、エッジ部加熱によりエッジ部が酸化に適した温度に優先加熱される。すなわち、巻き取られたコイルは、内部は高温に維持されるが、エッジ部は比較的迅速に冷却されるため、これにより内部酸化に適した温度で維持される時間がエッジ部よりも短くなる。したがって、幅方向の中心部に比べてエッジ部での酸化性元素の除去が活発にならない。エッジ部加熱は、エッジ部の酸化性元素を除去するための一つの方案として用いることができる。
【0047】
すなわち、エッジ部加熱を行う場合、巻取り後の冷却の場合とは逆にエッジ部が優先加熱され、これにより幅方向のエッジ部の温度が内部酸化に適合に維持されるが、その結果、エッジ部の内部酸化層の厚さが増加するようになる。このためには、上記エッジ部加熱温度は600℃以上(鋼板エッジ部の温度を基準とする)である必要がある。但し、温度が高すぎる場合には、加熱中にエッジ部にスケールが過度に形成されるか、多孔質の高酸化スケール(hematite)が形成されて酸洗後の表面状態が悪くなることがあるため、上記エッジ部温度は800℃以下とすることができる。より好ましいエッジ部加熱温度は600~750℃である。
【0048】
また、巻き取り時に発生した幅方向のエッジ部と中心部との間の鋼板の内部酸化層の深さのばらつきを解消するためには、上記エッジ部加熱時間は5時間以上とする必要がある。但し、エッジ部加熱時間が長すぎる場合には、スケールが過度に形成されるか、却ってエッジ部の内部酸化層の粒界脆性が高くなることがある。したがって、エッジ部加熱時間は24時間以下とすることができる。
【0049】
また、熱延コイルのエッジ部加熱時の加熱速度は10℃/s以上であることが好ましい。加熱速度が10℃/s未満のレベルの場合、低温領域でSi系酸化物であるFe2SiO4を過度に発生させて最終鋼板での内部酸化物の形成を抑制することができる。低温領域で過度に形成されたFe2SiO4は酸洗後にもSiO2の形態で鋼板に残留するため、焼鈍中の露点温度を上向調節しても鋼板の表層部の内部に酸素が浸透及び拡散することを抑制して内部酸化を抑制し、それによりLME抵抗性が低下する可能性がある。また、鋼板の表面に残留するSi系酸化物は焼鈍中に成長して、溶融亜鉛に対するめっき濡れ性及びめっき物性を低下させることがある。
【0050】
本発明の一実施形態によると、上記エッジ部加熱は、空燃比調節による燃焼加熱方式によって行うことができる。すなわち、空燃比調節によって雰囲気中の酸素分率が変わることはあるが、酸素分圧が高いほど鋼板の表層と接する酸素濃度が増加して、脱炭や内部酸化が増加することがある。必ずしもこれに限定するものではないが、本発明の一実施形態では、空燃比調節によって酸素を1~2%含む窒素雰囲気に制御することができる。本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、格別な困難性を伴わずに、空燃比調節を介して酸素分率を制御することができるため、これについては別途説明しない。
【0051】
酸洗処理:通板速度180~250mpmで実施
上述した過程を経た熱延鋼板に対して熱延スケールを除去するために塩酸浴に投入して酸洗処理を行う。酸洗時、塩酸浴の塩酸濃度は10~30%の範囲で行い、酸洗通板速度は180~250mpmで行う。酸洗速度が250mpmを超過する場合には、熱延鋼板の表面スケール(scale)が完全に除去されないことがある。酸洗速度が180mpmより低い場合には、素地鉄表層部が塩酸によって腐食することがあるため、180mpm以上で行う。
【0052】
冷間圧延:圧下率35~60%
酸洗を行った後、冷間圧延を行う。冷間圧延時の冷間圧下率は35~60%の範囲で行う。冷間圧下率が35%未満であると、格別な問題はないが、焼鈍時の再結晶駆動力が不足して、十分に微細組織を制御し難い点が発生することがある。冷間圧下率が60%を超過すると、熱延時に確保した軟質層の厚さが薄くなって、焼鈍後の鋼板表面20μm以内の領域内の硬度を十分に低くすることが難しい。
【0053】
上述した冷間圧延過程の後には、鋼板を焼鈍する過程を後続させることができる。鋼板の焼鈍過程でも鋼板表面部のフェライト平均結晶粒径及び分率が大きく異なることがある。そのため、本発明の一実施形態では、鋼板の表面から50μm以内の領域のフェライト平均結晶粒径及び分率を適切に制御する条件で焼鈍工程を制御することができる。
【0054】
通板速度:40~130mpm
十分な生産性を確保するために、上記冷延鋼板の通板速度は40mpm以上とする必要がある。但し、通板速度が過度に速い場合には、材質確保の側面で不利となる可能性があるため、本発明の一実施形態では、上記通板速度の上限を130mpmと決めることができる。
【0055】
加熱帯の加熱速度:1.3~4.3℃/s
適切な範囲の表層部フェライト分率及び平均結晶粒径を確保するためには、加熱帯での加熱速度を制御することが有利である。加熱帯加熱速度が低い場合、650℃以上の領域でSi酸化量が多くなり、表面に連続的なフィルム(film)状の酸化膜が形成され、水蒸気が鋼板の表面と接触して酸素に解離する量が著しく少なくなり、酸化膜が表面の炭素と酸素との間の反応を抑制して、脱炭が十分に行われないため、LME抵抗性が低下する可能性がある。また、表面に酸化膜が形成されてめっき濡れ性が低下して、めっき表面品質が低下することがある。したがって、本発明の一実施形態において、上記加熱帯加熱速度の下限を1.3℃/sと決めることができる。
【0056】
一方、加熱帯加熱速度が高い場合、加熱過程中の再結晶及び二相域以上の温度区間でオーステナイト相変態が円滑でない場合がある。TRIP鋼は、二相域温度区間でフェライトとオーステナイトを同時に形成する過程で、セメンタイトで構成された炭素が解離し、炭素固溶度の高いオーステナイトでパーティショニング(partitioning)が進行されながら炭素固溶量が増加して、マルテンサイトなどの硬質の低温相が安定する。一方、加熱速度が高い場合、オーステナイト分率が低くなり、炭素パーティショニング低下によって低温相が十分に形成されず、強度低下が発生する可能性がある。したがって、本発明の一実施形態において、上記加熱帯加熱速度の上限は4.3℃/sと決めることができる。
【0057】
焼鈍炉内の露点制御:650~900℃から-10~+30℃の範囲に制御
適切な範囲の表層部フェライト分率及び平均結晶粒径を得るために、焼鈍炉内の露点を制御することが有利である。露点が低すぎる場合には、内部酸化ではなく表面酸化が発生して表面にSiやMnなどの酸化物が生成するおそれがある。これら酸化物はめっきに悪影響を及ぼす。したがって、露点は-10℃以上に制御する必要がある。一方、露点が高すぎる場合には、Feの酸化が発生するおそれがあるため、露点は30℃以下に制御する必要がある。このように露点制御のための温度は、十分な内部酸化効果が現れる温度である650℃以上とすることができる。但し、温度が高すぎる場合には、Siなどの表面酸化物が形成されて酸素が内部に拡散することを妨害するだけでなく、均熱帯加熱中にオーステナイトが過度に発生して炭素拡散速度が低下し、それにより内部酸化レベルが減少することがあり、均熱帯のオーステナイトの大きさが過度に成長して材質軟化を発生させる。また、焼鈍炉の負荷を発生させて設備寿命を短縮させ、工程費用を増加させる問題を引き起こす可能性があるため、上記露点を制御する温度は900℃以下とすることができる。
【0058】
このとき、露点は、水蒸気を含む含湿窒素(N2+H2O)を焼鈍炉内に投入することで調節することができる。
【0059】
焼鈍炉内の水素濃度:5~10Vol%
焼鈍炉内の雰囲気は、窒素ガスに5~10Vol%の水素を投入して還元雰囲気を維持する。焼鈍炉内の水素濃度が5Vol%未満の場合、還元能力の低下により表面酸化物が過度に形成されて、表面品質及びめっき密着性が低下し、表面酸化物が酸素と鋼中の炭素との反応を抑制させて脱炭量が低下して、LME改善レベルが低くなる問題が生じる。水素濃度が高い場合、格別の問題点は発生しないが、水素ガス使用量の増加に伴う原価上昇及び水素濃度の増加による炉内の爆発危険性によって水素濃度を制限する。
【0060】
上述した過程によって焼鈍処理された鋼板は、徐冷及び急冷段階を経て冷却されてよい。
【0061】
徐冷時の徐冷帯温度:550~700℃
徐冷帯とは、冷却速度が3~5℃/sの区間をいうものであり、徐冷帯温度が700℃を超過すると徐冷中の軟質のフェライトが過度に形成されて、引張強度が低下することがある。一方、徐冷帯温度が550℃未満であると、ベイナイトが過度に形成されるか、マルテンサイトが形成されて引張強度が過度に増加し、伸び率が減少することがある。したがって、徐冷帯温度は上述した範囲に制限することができる。
【0062】
急冷時の急冷帯温度:270~550℃
急冷帯とは、冷却速度が12~20℃/sの区間をいうものであり、急冷帯温度が550℃を超過すると急冷中の適正レベル以下のマルテンサイトが形成されて、引張強度が不十分となることがある。一方、急冷帯温度が270℃未満であると、マルテンサイトの形成が過度であって伸び率が不十分となることがある。
【0063】
このような過程によって焼鈍された鋼板は、直ちにめっき浴に浸漬させて溶融亜鉛めっきを行う。鋼板が冷却される場合には、鋼板を加熱する段階がさらに含まれ得る。上記加熱温度は、後述する鋼板の引き込み温度よりも高い必要があり、場合によっては、めっき浴の温度よりも高くすることができる。
【0064】
めっき浴の鋼板引き込み温度:420~500℃
めっき浴内の鋼板の引き込み温度が低いと、鋼板と液状亜鉛との接触界面内の濡れ性が十分に確保されないため、420℃以上を維持する必要がある。過度に高い場合、鋼板と液状亜鉛との反応が起こり過ぎて界面にFe-Zn合金相であるゼタ(Zetta)相が発生し、めっき層の密着性が低下し、めっき浴内の鋼板Fe元素の溶出量が過度になってめっき浴内のドロスが発生する問題点がある。したがって、上記鋼板の引き込み温度は500℃以下に制限することもできる。
【0065】
めっき浴内のAl濃度:0.10~13.0%
めっき浴内のAl濃度は、めっき層の濡れ性とめっき浴の流動性を確保するために、適正濃度で維持される必要がある。GAの場合には0.10~0.15%、GIの場合には0.2~0.25%、ZMの場合には0.7~13.0%に制御することで、めっき浴内のドロス(dross)形成を適正レベルに維持し、めっき表面品質と性能を確保することができる。
【0066】
上述した過程によってめっきされた溶融亜鉛めっき鋼板は、この後、必要に応じて合金化熱処理過程を経ることができる。合金化熱処理の好ましい条件は以下のとおりである。
【0067】
合金化(GA)温度:480~560℃
480℃未満ではFe拡散量が少なくて合金化度が十分でないため、めっき物性が良くないことがあり、560℃を超過するようになる場合には、過度の合金化によるパウダリング(powdering)問題が発生することがあり、残留オーステナイトのフェライト変態で材質が劣化する可能性があるため、合金化温度を上述した範囲と決める。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、後述する実施例は本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を制限するためのものではないことに留意する必要がある。
【0069】
(実施例)
下記表1に記載された組成を有する鋼スラブ(表に記載されていない残りの成分はFe及び不可避不純物である。また、表のBは、ppm単位で示し、残りの成分は重量%単位で示す)を1230℃に加熱し、仕上げ圧延開始温度と終了温度をそれぞれ1015℃及び950℃として熱間圧延した。この後、表2の条件で巻取り及び熱延コイルのエッジ部加熱を行った。エッジ部加熱後に19.2体積%の塩酸溶液で酸洗し、次いで冷間圧延した。得られた冷延鋼板を焼鈍炉で焼鈍し、620℃の徐冷帯において4.2℃/sで徐冷し、315℃の急冷帯において17℃/sで急冷して、焼鈍した鋼板を得た。この後、得られた鋼板を加熱して、GAはAlが0.13%のめっき浴に、GIはAlが0.24重量%の亜鉛系めっき浴に、ZMはAlが1.75%であり、Mgが1.55%の亜鉛系めっき浴に浸漬させて溶融亜鉛めっきを行った。得られた溶融亜鉛めっき鋼板に必要に応じて合金化(GA)熱処理を520℃で行い、最終的に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0070】
全ての実施例において溶融亜鉛めっき浴に引き込む鋼板の引き込み温度を475℃とした。その他の各実施例の条件は表2に記載したとおりであり、上記で特に言及していない工程条件は、上述した本発明の工程条件を満たすように実施した。
【0071】
【0072】
【0073】
上述の過程により製造された溶融亜鉛めっき鋼板の特性を測定し、スポット溶接時の液体金属脆化(LME)が発生したか否かを観察し、その結果を表3に示した。スポット溶接は鋼板を幅方向に切断し、各切断されたエッジ部位に沿って行った。スポット溶接電流を2回加えて通電した後、1cycleのhold timeを維持した。スポット溶接は異種3枚重ねで行った。評価素材-評価素材-GA 980DP 1.4t材(C 0.12重量%、Si 0.1重量%、Mn 2.2重量%の組成を有する)の順に積層してスポット溶接を行った。スポット溶接時に新しい電極を軟質材に15回溶接した後、電極を摩耗させてからスポット溶接の対象素材で飛散(expulsion)が発生する上限電流を測定する。上限電流を測定した後、上限電流よりも0.5及び1.0kA低い電流でスポット溶接を溶接電流別に8回行い、スポット溶接部の断面を放電加工で精密に加工した後、エポキシマウントして研磨し、光学顕微鏡でクラック長さを測定した。クラック長さは、それぞれめっき鋼板のエッジからめっき鋼板の幅方向に沿って中心部側に0.5cm離隔した地点、1.0cm離隔した地点、15cm離隔した地点、30cm離隔した地点及びめっき鋼板の幅方向の中心で測定した。光学顕微鏡の観察時の倍率は100倍と指定し、該当倍率でクラックが発見されない場合は液体金属脆化が発生していないと判断し、クラックが発見されると、イメージ分析ソフトウェアで長さを測定した。各地点で測定されたクラックのうち最大クラック長さについて評価し、スポット溶接部の肩部で発生するB-typeクラックは100μm以下、C-typeクラックは未観察時に良好であると判断した。表3に記載されたB-typeクラック長さ及びC-typeクラック長さは、観察されたクラックのうち最大クラック長さを意味する。
【0074】
内部酸化層の深さを測定するために、SEM(Scanning Electron Microscopy)を用いて鋼板の断面を観察した。具体的には、鋼板の幅方向のエッジから鋼板の幅方向に沿って中心部側に0.5cm離隔した地点、1.0cm離隔した地点、15cm離隔した地点、30cm離隔した地点及びめっき鋼板の幅方向の中心の鋼板断面についてSEM観察を行い、Image分析softwareを用いて内部酸化深さを測定した。
【0075】
引張強度は、JIS-5号規格のC方向のサンプルを製作して、引張試験 剥がしてにより測定した。めっき付着量は、塩酸溶液を用いた湿式溶解法を用いて測定した。シーラー密着性は、自動車用構造用接着剤D-typeをめっき表面に接着した後、鋼板を90度に曲げてめっきが脱落するかを確認した。パウダリング(Powdering)は、めっき材を90度に曲げた後、テープを曲げた部位に接着後に剥がして、テープにめっき層の脱落物が何mm剥がれているかを確認した。テープから剥離しためっき層の長さが10mmを超過する場合、不良と確認した。フレーキング(Flaking)は「コ」字状に加工後、加工部にめっき層が脱落するかを確認した。GI及びZM鋼板は、自動車用構造用接着剤を表面に付着して鋼板を90度に曲げたとき、シーラー脱落面にめっき層が剥離して付着したかを確認するシーラーベンディングテスト(Sealer bending test、SBT)を行った。鋼板の未めっきなどの欠陥があるか否かを目視で確認し、表面品質を確認し、未めっきなどの目視観察時に欠陥が確認された場合は不良と判定した。
【0076】
【0077】
本発明の条件を全て満たす試験片は、めっき品質及びスポット溶接LMEクラック長さも良好であることが確認できる。一方、本発明の条件のいずれか一つを満たさない試験片は、引張強度、めっき品質及びスポット溶接LMEクラックのいずれか一つ以上が低下したことを確認することができる。
【0078】
以上、実施例を通じて本発明を詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。したがって、以下に記載された特許請求の範囲の技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。
【国際調査報告】