(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20231219BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20231219BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/72 040
C09J11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537530
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 KR2021019213
(87)【国際公開番号】W WO2022139333
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0180180
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ, ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】コ, ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ, テヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ギョンリョル
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA14
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB14
4J034RA08
4J040EF131
4J040EF281
4J040GA14
4J040HD30
4J040JA02
4J040JB01
4J040KA14
4J040KA17
4J040KA39
4J040LA08
4J040MA02
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】溶接、クランピング、インターロッキングなど従来の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供する。具体的には、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させた電磁鋼板接着コーティング組成物を提供する。
【解決手段】接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含み、前記ジイソシアネートモノマーはジイソシアネートモノマー合計100重量部に対して脂肪族ジイソシアネートモノマーを50重量部以下で含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、
前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含むことを特徴とする電磁鋼板用ボンディング組成物。
【請求項2】
前記ジイソシアネートモノマーはジイソシアネートモノマー合計100重量部に対して脂肪族ジイソシアネートモノマーを50重量部以下で含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用ボンディング組成物。
【請求項3】
前記芳香族ジイソシアネートモノマーは下記化学式1、化学式2またはその組み合わせであるモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用ボンディング組成物。
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1において、
R
1~R
10は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R
1~R
5のいずれか一つはイソシアネートであり、R
6~R
10のいずれか一つはイソシアネートであり、
Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
nは1~10のいずれか一つの整数であり、
前記化学式2において、
R
11~R
16は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基または置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネート基であり、
R
11~R
16の少なくとも二つはイソシアネートまたは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネートである。
【請求項4】
前記脂肪族ジイソシアネートモノマーは下記化学式3で表されるモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用ボンディング組成物。
[化学式3]
前記化学式3において、
Rは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、または置換若しくは非置換されたC3~C12シクロアルキル基である。
【請求項5】
前記芳香族ジイソシアネートモノマーは2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートからなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用ボンディング組成物。
【請求項6】
前記脂肪族ジイソシアネートモノマーはヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene Diisocyanate,HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび水素化キシレンジイソシアネート(Hydrogenated Xylene Diisocyanate)からなる群より選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用ボンディング組成物。
【請求項7】
前記電磁鋼板用ボンディング組成物はガラス転移温度(Tg)が-70℃超~-10℃未満であり、引張強度が40MPa超~120MPa未満であり、伸び率が100%超~800%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用ボンディング組成物。
【請求項8】
電磁鋼板基材および
前記電磁鋼板基材上に位置するボンディングコーティング層を含み、
前記ボンディングコーティング層は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、
前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含むことを特徴とする電磁鋼板。
【請求項9】
複数の電磁鋼板および
前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含み、
前記融着層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、
前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含むことを特徴とする電磁鋼板積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に係り、より詳しくは、ウレタン樹脂を含む電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は圧延板上のすべての方向に磁気的特性が均一な鋼板であって、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などに広く使用されている。
電磁鋼板は、打ち抜き加工後の磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果よりも熱処理によるコスト損失が大きい場合に応力除去焼鈍を省略する二つの形態に区分することができる。
絶縁被膜はモータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器など積層体の仕上げ製造工程でコートされる被膜であって、通常渦電流の発生を抑制させる電気的特性が求められる。その他にも連続打ち抜き加工性、耐粘着性および表面密着性などが求められる。連続打ち抜き加工性とは、所定の形状に打ち抜き加工した後に多数を積層して鉄心にする際、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後の鉄心鋼板間の密着しない能力を意味する。
このような基本的な特性のほか、コーティング溶液の優れた塗布作業性および配合後の長時間使用が可能な溶液安定性なども求められる。このような絶縁被膜は電磁鋼板積層体として製造するためには溶接、クランピング、インターロッキングなど別途の締結方法を用いなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶接、クランピング、インターロッキングなど従来の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供する。具体的には、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させた電磁鋼板接着コーティング組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含む。
前記ジイソシアネートモノマーはジイソシアネートモノマー合計100重量部に対して脂肪族ジイソシアネートモノマーを50重量部以下で含む。
前記芳香族ジイソシアネートモノマーは下記化学式1、化学式2またはその組み合わせであるモノマーである。
【0005】
【0006】
【0007】
前記化学式1において、
R1~R10は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、
Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
nは1~10のいずれか一つの整数であり、
前記化学式2において、
R11~R16は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基または置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネート基であり、
R11~R16の少なくとも二つはイソシアネートまたは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネートである。
前記脂肪族ジイソシアネートモノマーは下記化学式3で表されるモノマーである。
【0008】
[化学式3]
前記化学式3において、
Rは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、または置換若しくは非置換されたC3~C12シクロアルキル基である。
前記芳香族ジイソシアネートモノマーは2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートからなる群より選ばれた1種以上である。
【0009】
前記脂肪族ジイソシアネートモノマーはヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene Diisocyanate,HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび水素化キシレンジイソシアネート(Hydrogenated Xylene Diisocyanate)からなる群より選ばれた1種以上である。
【0010】
前記電磁鋼板用ボンディング組成物はガラス転移温度(Tg)が-70℃超~-10℃未満であり、引張強度が40MPa超~120MPa未満であり、伸び率が100%超~800%未満である。
【0011】
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板基材および前記電磁鋼板基材上に位置するボンディングコーティング層を含み、前記ボンディングコーティング層は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含む。
【0012】
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板および前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含み、前記融着層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させることができる。
また、溶接、クランピング、インターロッキングなど従来の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着することができる。
さらに塗膜密着性、剥離特性および耐ATF特性にいずれも優れる電磁鋼板接着コーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限られない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと称することができる。
ここで使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0015】
ある部分が他の部分の「上に」または「の上に」あるという場合、これは他の部分のすぐ上にまたは上にあるか、その間に他の部分が介在し得る。逆にある部分が他の部分の「すぐ上に」あるという場合、その間に他の部分が介在しない。
別に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在の開示された内容に合う意味を有すると追加解析され、定義されない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈されない。
【0016】
本明細書における「置換」とは、別段の定義がない限り、化合物のうち少なくとも一つの水素がC1~C30アルキル基;C1~C10アルコキシ基;シラン基;アルキルシラン基;アルコキシシラン基;エチレンオキシル基で置換されたことを意味する。
本明細書における「ヘテロ」とは、別段の定義がない限り、N、O、SおよびPからなる群より選ばれる原子を意味する。
【0017】
前記アルキル基はC1~C20のアルキル基であり得、具体的にはC1~C6の低級アルキル基、C7~C10の中級アルキル基、C11~C20の高級アルキル基であり得る。 例えば、C1~C4アルキル基はアルキル鎖に1~4個の炭素原子が存在するものを意味し、これはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選ばれるものを示す。
典型的なアルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
【0018】
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限られない。
本発明は電磁鋼板用ボンディング組成物を提供する。本発明の記載のうち接着コーティング組成物もボンディング組成物を示すために使用される用語である。また、本発明のボンディング組成物は、2個以上の鋼板の面を接着させる組成物であり、その用途については特に制限しないが、例えば電磁鋼板のセルフボンディングを提供するための電磁鋼板用セルフボンディング組成物であり得る。
【0019】
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーと脂肪族ジイソシアネートモノマーを含み得る。
前記ジイソシアネートモノマーはジイソシアネートモノマー合計100重量部に対して脂肪族ジイソシアネートモノマーを50重量部以下で含み得る。具体的には、ジイソシアネートモノマー合計100重量部に対して脂肪族ジイソシアネートモノマーは0超~50重量部以下、または20~40重量部で含まれ得る。
【0020】
芳香族イソシアネートモノマーと脂肪族イソシアネートモノマーは、いずれもポリウレタン内でハードセグメントを構成できる。しかし、その二つは分子構造的特徴の差異によって、構造の硬度程度において差異がある。芳香族イソシアネートモノマーは脂肪族イソシアネートモノマーに比べて分子構造硬度がより高い方である。そのため、芳香族イソシアネートモノマーが脂肪族イソシアネートモノマーより多く含まれる場合、得られたポリウレタンのハードセグメントの硬い程度がより高まる。すなわち、硬質性が大きなボンディング組成物が得られることができる。
したがって、芳香族イソシアネートモノマーが脂肪族イソシアネートモノマーに比べて多く含まれるほど、ボンディング液の引張強度特性は優れるが、伸び率は劣り、剥離強度特性が劣る。
【0021】
反面、脂肪族イソシアネートモノマーが芳香族イソシアネートモノマーに比べて多く含まれるほど、ボンディング液の伸び率は優れるが、引張強度特性は劣り、耐AFT特性も劣る。
したがって、剥離強度および耐AFT特性にいずれも優れるボンディング組成物を提供するためには、脂肪族イソシアネートと芳香族イソシアネートモノマーの比率を本発明で開示する範囲に制御しなければならない。
前記芳香族ジイソシアネートモノマーは下記化学式1、化学式2またはその組み合わせであるモノマーであり得る。
【0022】
【0023】
【0024】
前記化学式1において、
R1~R10は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、
Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
nは1~10のいずれか一つの整数である。
【0025】
前記化学式2において、
R11~R16は互いに独立して、水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基または置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネート基であり、
R11~R16の少なくとも二つはイソシアネートまたは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキルイソシアネートである。
前記脂肪族ジイソシアネートモノマーは下記化学式3で表されるモノマーであり得る。
【0026】
[化学式3]
前記化学式3において、Rは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、または置換若しくは非置換されたC3~C12シクロアルキル基である。
前記化学式1で表されるモノマーは、R
1~R
5のいずれか一つはイソシアネートであり、R
6~R
10のいずれか一つはイソシアネートであり、R
3およびR
8が同時にイソシアネートである場合は除外され、R
1およびR
10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外され得る。
【0027】
前記化学式1で表されるモノマーは、R1~R5のいずれか一つはイソシアネートであり、R6~R10のいずれか一つはイソシアネートであり、R1~R5のいずれか一つおよびR6~R10のいずれか一つがLを中心に対称的に同時にイソシアネートであることをさらに除くことができる。
具体的には、前記化学式1で表されるモノマーは、下記化学式4で表されるものであり得る。
【0028】
[化学式4]
前記化学式4において、Lは置換若しくは非置換されたC1~C10アルキレン基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニレン基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリーレン基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリーレン基であり得る。
具体的には、前記化学式1または4においてLはメチレン基であり得る。
具体的には、前記化学式2で表されるモノマーは下記化学式5で表されるものであり得る。
【0029】
[化学式5]
前記化学式5において、R
11は水素、重水素、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、または置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり得る。
より具体的には、化学式1、2または4、5で表示される芳香族ジイソシアネートモノマーは2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートからなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0030】
前記化学式3で表される脂肪族ジイソシアネートモノマーは、ヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene Diisocyanate,HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび水素化キシレンジイソシアネート(Hydrogenated Xylene Diisocyanate)からなる群より選ばれた1種以上であり得る。
前記ポリオールは化学式6のポリオールであり得る。
【0031】
[化学式6]
前記化学式6において、R’は置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC6~C20アリール基、置換若しくは非置換されたC5~C20ヘテロアリール基であり得る。
前記ポリオールは数平均分子量が400~1000g/molであり得る。また、前記ポリオールはポリ(プロピレングリコール)であり得る。
【0032】
前記電磁鋼板用ボンディング組成物は、ガラス転移温度(Tg)が-70℃超~-10℃未満であり、引張強度が40MPa超~120MPa未満であり、伸び率が100%超~800%未満であり得る。具体的には、ガラス転移温度は-60℃~-20℃または-50℃~-30℃であり、引張強度は50MPa~100MPaまたは60MPa~70MPaであり、伸び率は300~600%または400~500%であり得る。
前記ジイソシアネートモノマーと反応してポリウレタンを形成するポリオールは数平均分子量が400~1000g/molであり得る。また、前記ポリオールはポリ(プロピレングリコール)であり得る。
【0033】
前記電磁鋼板用ボンディング組成物でポリウレタン樹脂の含有量が電磁鋼板用ボンディング組成物の全体重量に対して98重量%以上であり得る。本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、組成物に含まれる樹脂成分以外のその他の他の成分の含有量を最小化し、樹脂成分の含有量を最大化することによって、優れた鋼板接着力を示すことができる。
前記その他の他の成分は、一般的なボンディング組成物に使用されるものであれば制限はないが、例えば、カップリング剤、湿潤剤、硬化剤、硬化触媒などが含まれ得る。
【0034】
具体的には、カップリング剤としてはシランカップリング剤が含まれ得、より具体的には、ビニル系シランカップリング剤およびメタクリルオキシ系シランカップリング剤のうち1種以上が含まれ得る。ビニル系シランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン(Vinyl trimethoxy silane)、ビニルトリエトキシシラン(Vinyl triethoxy silane)などが挙げられる。メタクリルオキシ系シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(3-Methacryloxypropyl methyldimethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-Methacryloxpropyl trimethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(3-Methacyloxypropyl methyldiethoxysilane)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(3-Methacryloxpropyl triethoxysilane)が挙げられる。
【0035】
具体的には、湿潤剤としてはシリコン系湿潤剤が含まれ得る。シリコン系湿潤(Wetting)添加剤の例としてはポリエーテル改質されたポリジメチルシロキサン(Polyether-modified polydimethylsiloxane)が挙げられる。湿潤剤は電磁鋼板と融着層の界面接着力を強化させるために電磁鋼板用ボンディング組成物に添加され得る。
具体的には、硬化剤としては脂肪族アミン系、芳香族アミン系、アミノアミン系、またはイミダゾール系を含み得る。より具体的には、ジシアンジアミド系硬化剤が含まれ得る。
具体的には、硬化触媒としてはイミダゾール系硬化触媒が含まれ得る。
【0036】
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対してカップリング剤を0.10~1.00重量部さらに含み得る。具体的には、カップリング剤を0.40~0.60重量部さらに含み得る。架橋剤を過度に少なく含む場合は、電磁鋼板と融着層の界面接着力の強化効果が十分に得られない。架橋剤を過度に多く含む場合は架橋剤間の反応によって接着コーティング組成物内に沈殿物が発生し得る。
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対して硬化剤を0.50~2.50重量部さらに含み得る。具体的には硬化剤を0.90~1.10重量部さらに含み得る。硬化剤は接着コーティング層表面の反応性を調節する役割をする。硬化剤が過度に少なく含まれる場合は、融着層の硬化反応が低下し、融着層表面の粘着性(sticky)が劣る問題が発生し得る。逆に硬化剤が過度に多く添加される場合には低温融着後の締結力が劣る。
【0037】
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対して湿潤剤を0.05~0.50重量部さらに含み得る。具体的には湿潤剤を0.09~0.11重量部さらに含み得る。
本発明の電磁鋼板用ボンディング組成物は、ポリウレタン樹脂100重量部に対して硬化触媒を0.10~1.00重量部さらに含み得る。具体的には硬化触媒を0.40~0.60重量部さらに含み得る。
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板基材;および前記電磁鋼板基材上に位置するボンディングコーティング層を含み、前記ボンディングコーティング層は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含み得る。
ジイソシアネートモノマーの混合比率などの具体的な説明は前述した電磁鋼板用ボンディング組成物と重なるので省略する。
【0038】
本発明の積層体は、複数の電磁鋼板;および前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層;を含み、前記融着層は接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、前記接着樹脂はジイソシアネートモノマーおよびポリオールと反応して形成されるポリウレタンであり、前記ジイソシアネートモノマーは芳香族ジイソシアネートモノマーおよび脂肪族ジイソシアネートモノマーを含み得る。
ジイソシアネートモノマーの混合比率などの具体的な説明は前述した電磁鋼板用ボンディング組成物と重なるので省略する。
前記電磁鋼板積層体の融着層の厚さは0.1~10μmであり得る。融着層の厚さが薄すぎると、接着力が急激に低下し得、厚すぎるとコーティング巻き取り後に粘着性による問題が発生し得る。具体的には融着層の厚さは2~7μmであり得る。より具体的には5~7μmであり得る。
カップリング剤、湿潤剤、硬化触媒、硬化剤などは前記電磁鋼板積層体の融着層内に残存し得る。
【0039】
本発明の電磁鋼板積層体の製造方法は、電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階;および接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し熱融着して融着層を形成する段階を含み得る。
以下、各段階別に詳細に説明する。
先に、接着コーティング組成物を準備する。接着コーティング組成物については前述したので、重複する説明は省略する。
次に、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面にコートした後、硬化させて接着コーティング層を形成する。この段階は接着コーティング組成物の硬化のために板温を基準として150~250℃の温度範囲で行われる。
接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層20を形成する。熱融着段階により接着コーティング層内の高分子成分が熱融着して、融着層を形成する。熱融着段階は150~250℃の温度、0.05~5.0MPaの圧力および0.1~120分の加圧条件で熱融着する。前記条件はそれぞれ独立して満たしてもよく、2以上の条件を同時に満たしてもよい。このように熱融着段階での温度、圧力、時間条件を調節することによって、電磁鋼板の間に、ギャップや、有機物相なしに、密に熱融着することができる。
【0040】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例
無方向性電磁鋼板(50×50mm、0.35mmt)を供試片として準備した。接着コーティング溶液をバーコータ(Bar Coater)およびロールコータ(Roll Coater)を用いてそれぞれ準備された供試片の上部と下部に一定の厚さで塗布し、板温を基準として150~200℃で20秒間硬化した後、空気中でゆっくり冷却させて、接着コーティング層を形成した。
接着コーティング溶液としてはイソシアネートを含むモノマーは脂肪族イソシアネートモノマー1種、芳香族イソシアネートモノマー1種で合計2種で構成してその比率を異にしてポリオールと反応させて得たポリウレタンを含むものであった。ポリオールとしてはPPG(Poly(Propylene Glycol))で水分子量が425g/molであるものを使用した。
前記得られたポリウレタン樹脂以外の接着コーティング溶液の組成は、ポリウレタン樹脂100重量部を基準として添加剤としてシランカップリング剤0.5重量部、シリコン系湿潤剤(wetting agent) 0.1重量部、ジシアンジアミド系硬化剤1重量部およびイミダゾール系硬化触媒0.5重量部を含むものであった。
使用したイソシアネートモノマーの種類別の配合とポリオールの含有量比は下記表1のとおりであり、製造されたポリウレタンを含む接着コーティング溶液の物性であるガラス転移温度、引張強度、および伸び率を測定して表1に示した。
表1のイソシアネートモノマーの含有量とポリオールの含有量はポリウレタン重量100重量%を基準として作成した。
【0041】
接着コーティング層がコートされた電磁鋼板を高さ20mmで積層した後、0.5MPaの力で加圧して160℃、10分間熱融着した。熱融着後の融着層の厚さは約3μmであった。熱融着した融着体を溶液の種類別に評価した。評価項目としては剥離接着力(T-peel,N/mm)および耐ATF特性を評価して下記表1に示した。
それぞれの測定方法は次のとおりである。
【0042】
最大引張強度および伸び率:合成したポリウレタン重合物の機械的な物性を測定するために剥離紙の上に注いで、アプリケーターを用いて均一な厚さで塗布して製作した後、100℃真空オーブンで24時間の間乾燥して乾燥フィルムを製作した。前記フィルムをASTM D-1708規格に従って万能試験機を用いて50mm/minの速度で最大引張強度および伸び率を測定した。
剥離接着力(T-peel,N/mm):剥離法(T-Peeloff)測定のための試験片の規格はISO11339に準じて製作した。25×200mm試験片二枚を25×150mm2の面積で接着した後、未接着部位を90度に曲げてT状の引張試験片を製作した。剥離法(T-Peeloff)で製作された試片を上部/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。この時、剪断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面のうち最小接合力を有する界面が脱落する地点を測定した。加熱装置により試験片の温度を60℃に維持した後に接着力を測定した。
耐ATF特性の評価法:駆動モータを自動車に使用する場合、高速で長時間回転して多くの熱が発生し、これを冷却するためにATF(Automotive Transmission Fluid、自動車ミッションオイル)を使用する。そのため、長期間使用時の接着信頼度を確保するためにはATFに含浸された状態で積層コイルの接着力が維持されることが重要である。したがって、耐ATF特性を評価した。前記製造された積層コイルを150℃温度のATFに500時間含浸した後に剪断接着力をテストした。
【0043】
前記耐ATF特性を測定するための剪断接着力は剪断法(Shear Strength)で測定した。剪断法測定のための試験片の規格はISO4587に準じて製作した。25×100mm試験片二枚を12.5×25mm2の面積で接着し、前記条件で熱融着して剪断法試験片を製作した。
剪断法で製作された試片を上部/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。この時、剪断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面のうち最小接合力を有する界面が脱落する地点を測定した。
【0044】
【0045】
前記表1の結果から、芳香族イソシアネートモノマーであるMDIと脂肪族イソシアネートモノマーであるHDIの配合重量比を適切に制御した実施例1、2の場合、引張強度および伸び率がいずれも適切な範囲に制御されて剥離強度(T-peel)がすべて1.5N/mm以上で優れ、耐ATF特性にも優れることが確認できた。これに対して、HDIが多く含まれた比較例1の場合は、伸び率は優れるが、引張強度が低く、耐ATF特性も劣ることが確認できた。また、2.4’-MDIのみ使用された比較例2の場合には引張強度は優れるが伸び率が劣り、剥離強度も劣るものであった。
【0046】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【国際調査報告】