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特表2023-554134炭化珪素パワーデバイスおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】炭化珪素パワーデバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 658E
H01L29/78 658F
H01L29/78 652B
H01L29/78 658G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537658
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021083908
(87)【国際公開番号】W WO2022135862
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216084.2
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノール,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ビルツ,ステファン
(57)【要約】
オン抵抗Ronの低い炭化珪素パワーデバイス(100)およびその製造方法を提供する。炭化珪素パワーデバイス(100)は、第1導電型基板(20)と、複数の炭化珪素層積層体(30)と、連続した絶縁層(40)と、ゲート電極層(45)とを備える。各炭化珪素層積層体(30)は、基板(20)上に積層された以下の層、すなわち第1導電型ドレイン層(35)、第2導電型チャネル層(37)、および第1導電型ソース層(36)を含む。複数の第1の絶縁層部分(42)は、各炭化珪素層積層体(30)の少なくともドレイン層(35)およびチャネル層(37)を横方向に覆い、取り囲む。各チャネル層(37)の各点は、ゲート電極層(45)の2つの対向する部分の間に横方向に挟まれ、2つの対向する部分は、そのチャネル層(37)のその点を通って延びる直線に沿って2μm未満の距離(d)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面(21)と前記第1の主面(21)の反対側の第2の主面(22)とを有する第1導電型基板(20;25)と、
前記基板(20;25)の前記第1の主面(21)上に配置された複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)であって、各炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)が、前記第1の主面(21)上に前記第1の主面(21)から離れる方向に積層された以下の層、すなわち前記基板(20;25)上の第1導電型ドレイン層(35;235;335;435;735)、前記ドレイン層(35;235;335;435;735)上の第2導電型チャネル層(37;237;337;437;537;637)、および前記チャネル層(37;237;337;437;537;637)上の第1導電型ソース層(36;236;336;436;836)を含み、前記第2導電型が前記第1導電型とは異なる、複数の炭化珪素層積層体と、
複数の第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)が各炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の少なくとも前記ドレイン層(35;235;335;435;735)および前記チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)を横方向に覆い、横方向に取り囲むように、前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の対応する1つの側面上にそれぞれ直接延在する複数の第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)と、前記複数の第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)の間で前記第1の主面(21)上に延在する第2の絶縁層部分(43;243;343;443)とを含む連続した第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)と、
ゲート電極層(45)であって、前記第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)によって前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の各々から電気的に分離されるように、前記第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)上に直接延在するゲート電極層(45)と、
を備え、
前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の各々は、各チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)の各点が前記ゲート電極層(45)の2つの対向する部分の間に横方向に挟まれるように、前記第1の主面(21)から突出するピラーの形状を有し、前記ゲート電極層(45)の前記2つの対向する部分は、前記チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)の前記点を通って延びる直線に沿って2μm未満の距離(d)を有する、炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)。
【請求項2】
前記チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)が3C-SiCを備え、前記ドレイン層(35;235;335;435;735)が4H-SiCまたは6H-SiCを備える、請求項1に記載の炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)。
【請求項3】
前記基板(20;25)が1017cm-3超または5・1017cm-3超のドーピング濃度を有し、各炭化珪素層積層体(730)の前記ドレイン層(735)が前記基板(20;25)と直接接触している、請求項1または2に記載の炭化珪素パワーデバイス(700)。
【請求項4】
前記第1の絶縁層部分(42;242;342;442)が管状であり、前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;730;830)の対応する1つを横方向にそれぞれ取り囲んで、複数の垂直ゲート全周電界効果トランジスタセル(50)を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;700;800)。
【請求項5】
各炭化珪素層積層体(30;230;330;430;730;830)の前記チャネル層(37;237;337;437;737)が、前記第1の主面(21)に平行な任意の水平方向において最大水平幅(w)を有し、最大水平幅(w)が2μm未満、または1μm未満である、請求項4に記載の炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;700;800)。
【請求項6】
前記第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)が、酸化シリコン層または窒化シリコン層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)。
【請求項7】
炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)の製造方法であって、前記方法が、
第1の導電性基板(20;25)を提供するステップと、
前記基板(20;25)の第1の主面(21)上に犠牲層(60)を形成するステップと、
前記犠牲層(60)を構造化して、前記第1の主面(21)から突出し、ピラーまたはフィンの形状を有する複数の犠牲構造(65)を形成するステップであって、各犠牲構造(65)が、前記基板(20;25)に隣接する第1の端部(65A)と、前記第1の端部(65A)の反対側の第2の端部(65B)とを含む、ステップと、
前記複数の犠牲構造(65)上および前記第1の主面(21)上に連続した絶縁材料層(70)を形成するステップと、
その後、各犠牲構造(65)の前記第2の端部(65B)上の絶縁材料層(70)の一部を除去して各犠牲構造(65)の前記第2の端部(65B)を露出させ、残りの絶縁材料層(70’)が各犠牲構造(65)の側面を覆い、前記残りの絶縁材料層(70’)の少なくとも一部が、前記炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)内に第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)を形成する、ステップと、
その後、選択的エッチングによって各犠牲構造(65)を除去して、前記残りの絶縁材料層(70’)内に複数のキャビティ(75)を形成するステップであって、前記第1の主面(21)の露出部分(24)が各キャビティ(75)の底部に露出している、ステップと、
前記ドレイン層(35;235;335;435;735)を形成するために、各キャビティ(75)内の前記第1の主面(21)の前記露出部分(24)上に選択的に前記第1導電型の第1の炭化珪素層を形成するステップと、
チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)を形成するために、各キャビティ(75)内の前記第1の炭化珪素層上に選択的に前記第2導電型の第2の炭化珪素層を形成するステップと、
ソース層(36;236;336;436;836)を形成するために、各キャビティ(75)内の前記第2の炭化珪素層上に選択的に前記第1導電型の第3の炭化珪素層を形成するステップと、
前記炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)において、前記残りの絶縁材料層(70’)の前記第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)を形成する部分の上にゲート電極層(45)を形成するステップと、
を含み、
完成した前記炭化珪素パワーデバイス(100;200;300;400;500;600;700;800)が、
前記第1の主面(21)と前記第1の主面(21)の反対側の第2の主面(22)とを有する前記第1導電型基板(20;25)と、前記基板(20;25)の前記第1の主面(21)上に配置された複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)であって、各炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)が、前記第1の主面(21)上に前記第1の主面(21)から離れる方向に積層された以下の層、すなわち前記基板(20;25)上の前記第1導電型ドレイン層(35;235;335;435;735)、前記ドレイン層(35;235;335;435;735)上の前記第2導電型チャネル層(37;237;337;437;537;637)、および前記第2導電型チャネル層(37;237;337;437;537;637)上の前記第1導電型ソース層(36;236;336;436;836)を含み、前記第2導電型が前記第1導電型とは異なる、複数の炭化珪素層積層体と、
複数の第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)が各炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の少なくとも前記ドレイン層(35;235;335;435;735)および前記チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)を横方向に覆い、横方向に取り囲むように、前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の対応する1つの側面上にそれぞれ直接延在する前記複数の第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)と、前記複数の第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)の間で前記第1の主面(21)上に延在する第2の絶縁層部分(43;243;343;443)とを含む連続した前記第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)と、
前記ゲート電極層(45)であって、前記第1の絶縁層部分(42;242;342;442;542;642)によって前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の各々から電気的に分離されるように、前記第1の絶縁層(40;240;340;440;540;640)上に直接延在するゲート電極層(45)と、
を備え、
前記複数の炭化珪素層積層体(30;230;330;430;530;630;730;830)の各々は、各チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)の各点が前記ゲート電極層(45)の2つの対向する部分の間に横方向に挟まれるように、前記第1の主面(21)から突出する前記ピラーまたは前記フィンの形状を有し、前記ゲート電極層(45)の前記2つの対向する部分は、前記チャネル層(37;237;337;437;537;637;737)の前記点を通って延びる直線に沿って2μm未満の距離(d)を有する、方法。
【請求項8】
前記犠牲層(60)がアモルファスシリコンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記絶縁材料層(70)が、熱酸化により形成される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲート電極層(45)を形成する前に前記残りの絶縁材料層(70’)上に第2の絶縁層(44;744)を形成して、前記ゲート電極層(45)を形成した後に前記第2の絶縁層(44;744)が前記残りの絶縁材料層(70’)と前記ゲート電極層(45)との間で前記第1の主面(21)に直交する垂直方向に挟まれるようにするステップを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の絶縁層(44;744)がスピンオングラス層である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各犠牲構造(65)が、50nm~10μmの範囲、例示的には5μm~10μmの範囲の、前記第1の主面(21)に直交する垂直方向の長さ(L)を有する、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の炭化珪素層を形成するステップ、前記第2の炭化珪素層を形成するステップ、および前記第3の炭化珪素層を形成するステップが、それぞれ1400℃未満の温度で行われる、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
各犠牲構造(65)の前記第2の端部(65B)上の前記絶縁材料層(70)の部分を除去する前記ステップが、前記絶縁材料層(70)上に連続した第1のマスキング材料層(90)を形成する第1のステップと、前記第1のマスキング材料層(90)をエッチバックして、各犠牲構造(65)の前記第2の端部(65B)上に前記絶縁材料層(70)の部分を露出させる第1のマスキング層(90’)を形成する第2のステップと、前記第1のマスキング層(90’)をエッチングマスクとして使用して前記第2の端部(65B)上の前記絶縁材料層(70)の部分をエッチングする第3のステップと、を含む、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第3の炭化珪素層の一部を除去して前記第2の炭化珪素層の一部を露出させるステップと、
その後、前記第3の炭化珪素層および前記第2の炭化珪素層に電気的に接触する第1の主電極を(852)形成するステップであって、前記第1の主電極(852)が前記ゲート電極層(45)から電気的に絶縁されている、ステップと、
を含む、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、炭化珪素デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炭化珪素(SiC)は、一般的に使用される珪素(Si)と比較して、パワー半導体デバイスにとっていくつかの魅力的な特性を提供する。例示的には、SiCのはるかに高い破壊電界強度および熱伝導率は、対応するSiよりもはるかに優れたパワーデバイスを可能にし、そうでなければ達成不可能な効率レベルに到達することを可能にする。4H-SiCは、4H-SiC成長技術の分野の進歩、ならびに例えば6H-SiCまたは3C-SiCなど他の利用可能なウェハスケールポリタイプよりも大きいバンドギャップなどのその魅力的な電子特性のために、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などのパワーエレクトロニクスに好ましいポリタイプである。これらの4H-SiCパワーMOSFETは既に市販されているが、オン抵抗Ronをさらに低減するために、特に反転チャネル移動度に関して改善の余地が大きい。
【0003】
炭化珪素(SiC)をベースとする市販のパワー電界効果トランジスタのほとんどは平面設計で実装され、縦型二重拡散金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(VDMOS)のようにウェハの表面にチャネルが形成される。しかしながら、nチャネルVDMOSにおけるp型実装は、電流の幅を減少させる傾向がある寄生接合電界効果トランジスタ(JFET)のゲートを形成するため、これらのデバイスにおける電流密度を増加させることは困難である。
【0004】
トレンチ金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)は、寄生JFETがないため、低いオン抵抗Ronの達成を可能にする。さらに、SiCの場合、トレンチMOSFETアーキテクチャは、異なる結晶面に対してチャネルを設計することによってキャリア移動度の最適化を可能にする。SiCトレンチMOSFETは、例えば、米国特許出願公開第2018/0350977号明細書から知られている。この公知のトレンチMOSFETでは、連続するp型ボディ層の一部として複数のチャネル領域が実装されている。トレンチ型ゲート電極は、互いに分離したトレンチ内に配置されている。この構成では、オン抵抗Ronは、チャネル領域に使用することができる比較的低いデバイス面積に起因して比較的高い。チャネル反転は、ボディ層全体では不可能であり、隣接するトレンチ型ゲート電極の間に横方向に挟まれたボディ層の領域でのみ可能である。SiCベースのトレンチMOSFETSを製造するための既知の方法は、トレンチ型ゲート電極を形成するためにSiCにディープトレンチをエッチングすることに依存する。SiCのエッチングは、シリコン(Si)などの他の半導体材料のエッチングと比較して困難であり、コストがかかる。
【0005】
3kVを超えるより高い電圧クラスでは、ドリフト層抵抗Rdriftがオン抵抗Ronを支配するが、後者の低減は、オン状態の電力およびスイッチング損失を大幅に低減するために、電気およびハイブリッド電気自動車(EV/HEV)に使用される商業的により関連するより低い電圧クラス(例えば、電圧クラス≦1.7kV)において不可欠である。ここで、図1に示すように、Ronは依然として理想よりもかなり高い。この点において、低反転チャネル移動度は、デバイスコスト、したがってSiCパワーMOSFETの広範な採用に大きな影響を及ぼし得る主な課題の1つである。改善されたゲート積層体ならびにSiC/酸化物界面を使用して反転チャネル移動度をブーストすることは、限られた成功しか示さなかったが、SiCパワーMOSFETの開発および商業化における最も重要なマイルストーンの1つとして知られている。90年後半に、6H-SiCの酸化後の一酸化窒素(NO)の導入および2001年の4H-SiC MOSFETへのその適用は、NOアニーリングによる界面付近への窒素(N)の導入が界面欠陥密度Ditを減少させるために、反転層電子移動度の膨大な増加を可能にした。しかしながら、特にSiC MOSFETを低電圧クラスの市場に拡大するために、最先端のNOアニールSiC MOSFETを超える高移動度デバイスが強く求められている。
【0006】
さらに、理想的な/低いRonに達することに加えて、より高いチャネル移動度によって回避され得る問題は以下の通りである。
【0007】
a)ゲートをより低い電圧で駆動することができ、その結果、ゲート酸化物層内の電界がより小さくなり、閾値安定性および酸化物長期信頼性が改善される。
【0008】
b)チャネル抵抗を低減するためにトランジスタチャネル長の積極的なスケーリングは必要とされず、したがって、短チャネル効果を回避することができる。
【0009】
NO処理を超えて界面欠陥を低減するための代替戦略は、本質的に高い移動度に起因する微量不純物、表面カウンタードーピング、高温酸化および(従来の極性Si面に代わる)代替の非極性結晶面を有する界面層の導入である。
【0010】
G.Y.Chungらによる刊行物「Improved inversion channel mobility for 4H-SiC MOSFETs following high temperatures anneals in nitric oxide」(IEEE Electron device letters,vol.22,No.4,April 2001,pages 176-178)から、横方向反転モードの4H-SiC MOSFETのチャネル移動度が、一酸化窒素中の高温アニールによる伝導帯端付近のSiC/SiO界面準位の不動態化後に著しく増加する、4H-SiC MOSFETの製造方法が知られている。
【0011】
英国特許出願公開第2 572 442号明細書、米国特許出願公開第2019/0165162号明細書、米国特許出願公開第2017/0365665号明細書、米国特許出願公開第10 056 289号明細書および国際公開第2020/114666号パンフレットは、半導体デバイスに関する。
【0012】
発明の概要
従来技術における上記の欠点を考慮して、本発明の目的は、より低いオン抵抗Ronを有する炭化珪素パワーデバイスおよびその製造方法を提供することである。本発明の目的は、請求項1に記載の炭化珪素パワーデバイスおよび請求項7に記載の方法によって達成される。本発明のさらなる発展は、従属請求項に明記されている。
【0013】
一実施形態による炭化珪素パワーデバイスは、第1の主面および第1の主面の反対側の第2の主面を有する第1導電型基板と、基板の第1の主面上に配置された複数の炭化珪素層積層体と、連続した絶縁層と、ゲート電極層とを備える。各炭化珪素層積層体は、第1の主面上に第1の主面から離れる方向に積層された以下の層、すなわち基板上の第1導電型ドレイン層、ドレイン層上の第2導電型チャネル層、およびチャネル層上の第1導電型ソース層を含み、第2導電型は第1導電型とは異なる。連続した絶縁層は、複数の炭化珪素層積層体の1つの側面にそれぞれ直接延在し、各炭化珪素層積層体の少なくともドレイン層およびチャネル層を横方向に覆い、横方向に取り囲む複数の第1の絶縁層部分と、複数の第1の絶縁層部分の間の第1の主面上に延在する第2の絶縁層部分とを備える。ゲート電極層は、第1の絶縁層部分によって炭化珪素層積層体の各々から電気的に分離されるように、第1の絶縁層上に直接延在する。各炭化珪素層積層体は、各チャネル層の各点がゲート電極層の2つの対向する部分の間に横方向に挟まれるように、第1の主面から突出するピラーまたはフィンの形状を有し、ゲート電極層の2つの対向する部分は、そのチャネル層のその点を通って延びる直線に沿って2μm未満の距離を有する。
【0014】
本明細書を通して、第1の層が第2の層上に直接延在する場合、これは、第1の層と第2の層との間に他の層または要素が挟まれることなく、第1の層が第2の層と直接物理的に接触していることを意味するものとする(少なくとも第1の層が第2の層上に直接延在する場合)。
【0015】
上記の構造を有する炭化珪素パワーデバイスは、横方向に分離された複数の縦型炭化珪素構造におけるソース領域、チャネル領域およびドレイン領域の特定の配置に起因して、比較的低いオン抵抗Ronを有する。チャネル領域が連続したボディ層内の部分のみである従来技術のSiCベースのトレンチMOSFETと比較して、デバイスのより大きな面積を、キャリア反転がオン状態で起こる伝導チャネルに使用することができる。すなわち、従来技術のSiCベースのトレンチMOSFETでは、連続したボディ層の全ての部分がオン状態でキャリア反転が起こるチャネル領域ではないが、上記の構造を有する炭化珪素パワーデバイスでは、デバイスのより大きな面積をキャリア反転領域に使用することができる。上記の構造を有する炭化珪素パワーデバイスでは、絶縁層は、各炭化珪素層積層体のドレイン層およびチャネル層を横方向に覆って横方向に取り囲み、ドレイン層およびチャネル層の横方向の延長部を画定する。各チャネル層を横方向に取り囲む連続したゲート電極層を使用することができるが、従来技術のSiCベースのトレンチMOSFETでは、トレンチゲート電極は横方向に分離され、上部から接触しなければならない。また、上記構造の炭化珪素パワーデバイスは、必ずしもエッジターミネーションを必要としないという利点を有する。
【0016】
例示的な実施形態では、チャネル層は3C-SiCを含み、ドレイン層は4H-SiCまたは6H-SiCを含む。
【0017】
この例示的な実施形態において、考え方は、2つのSiCポリタイプ、すなわち3C-SiCおよび4H-SiC、または代替的に3C-SiCおよび6H-SiCの利点を組み合わせて、高性能SiCパワーMOSFETを可能にすることである。ドレイン層(ドリフト層の少なくとも一部を形成し得る)に使用される4H-SiCまたは代替的に6H-SiCは、そのより高いバンドギャップに起因して良好なブロッキング能力を保証するが、3C-SiCでは160cm/vsを超えるチャネル運動性が測定されているので、3C-SiCがチャネル材料として使用される。SiCの場合、近傍界面トラップ(NIT)は、SiおよびSiC MOS構造の界面に非常に近い酸化物の内部に見出すことができる重要な種類の界面欠陥である。後者については、図2に示すように伝導帯端付近(EC-<0.2eV)の高濃度の中性欠陥状態の要因である。しかしながら、NITの分布および密度は、SiCのポリタイプに強く依存する。NITの密度は、4H-SiCまたは6H-SiCの伝導帯端に向かってほぼ指数関数的に増加するが、3C-SiCでは比較的低いままである。また、バンドギャップの下半分の欠陥状態はドナー状であり(価電子帯近傍、図2参照)、n型キャリア移動度に直接影響しない。しかしながら、伝導帯付近の欠陥状態はアクセプタ状であり、例えばゲート電圧が印加されると負に帯電する可能性がある。結果として、反転チャネル内の電子は捕捉され、ほとんど不動になり、冷却剤散乱中心として作用し、これがnチャネル移動度を著しく制限する。したがって、パワーMOSFETデバイスの3C-SiC/酸化物界面は、それらの4H-SiC/酸化物または6H-SiC/酸化物の対応物と比較して、低い界面欠陥密度Ditおよび結果として高いチャネル移動度を示す。
【0018】
例示的な実施形態では、基板は1017cm-3超または5・1017cm-3超のドーピング濃度を有し、各炭化珪素層積層体のドレイン層は基板と直接接触している。そのような実施形態では、デバイスのドリフト層全体をドレイン層内に実装することができるため、低ドープドリフト層を高ドープ基板上に形成する必要はない。したがって、デバイスはより複雑ではなく、より少ない方法ステップで製造することができる。
【0019】
例示的な実施形態では、各炭化珪素層積層体はピラーの形状を有し、第1の絶縁層部分は管状であり、複数の炭化珪素層積層体の対応する1つを横方向にそれぞれ取り囲んで、複数の垂直ゲート全周電界効果トランジスタセルを形成する。ゲート全周電界効果トランジスタセルは、最も効率的なゲート制御を可能にする。この実施形態では、各炭化珪素層積層体のチャネル層は、第1の主面に平行な任意の水平方向において最大水平幅を有することができ、最大水平幅は2μm未満、例示的には1μm未満である。
【0020】
例示的な実施形態では、絶縁層は酸化シリコン層または窒化シリコン層である。
先行する実施形態のいずれか1つによる炭化珪素パワーデバイスを製造方法は、
・基板を提供するステップと、
・基板の第1の主面上に犠牲層を形成するステップと、
・犠牲層を構造化して、第1の主面から突出し、ピラーまたはフィンの形状を有する複数の犠牲構造を形成するステップであって、各犠牲構造が、基板に隣接する第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部(すなわち、第2の端部は基板から最も遠い犠牲構造の端部である)とを含む、ステップと、
・複数の犠牲構造上および第1の主面上に連続した絶縁材料層を形成するステップと、
・その後、各犠牲構造の第2の端部上の絶縁材料層の一部を除去して各犠牲構造の第2の端部を露出させ、残りの絶縁材料層が各犠牲構造の側面を覆い、残りの絶縁材料層の少なくとも一部が炭化珪素パワーデバイス内の絶縁層を形成する、ステップと、
・その後、選択的エッチングによって各犠牲構造を除去して、残りの絶縁材料層内に複数のキャビティを形成するステップであって、第1の主面の露出部分が各キャビティの底部に露出している、ステップと、
・ドレイン層を形成するために、各キャビティの第1の主面の露出部分に選択的に第1導電型の第1の炭化珪素層を形成するステップと、
・チャネル層を形成するために、各キャビティ内の第1の炭化珪素層上に選択的に第2導電型の第2の炭化珪素層を形成するステップと、
・ソース層を形成するために、各キャビティ内の第2の炭化珪素層上に選択的に第1導電型の第3の炭化珪素層を形成するステップと、
・炭化珪素パワーデバイスにおいて、残りの絶縁材料層の絶縁層を形成する部分の上に、ゲート電極層を形成するステップと、
を含む。
【0021】
既知のSiCベースのトレンチ型パワーMOSFETを製造するための既知の方法と比較して、SiC内にディープトレンチをエッチングするステップは、上記の方法では必要とされない。これは、エッチングによってSiCに深いトレンチを形成することが困難である点から見て製造を容易にする。
【0022】
例示的な実施形態では、犠牲層はアモルファスシリコンを含む。
例示的な実施形態では、絶縁材料層は熱酸化によって形成される。熱酸化は、ゲート絶縁層に良好な特性を提供し、かつ良好な機械的特性を有する、非常に安定した酸化物材料で絶縁材料層を形成することを可能にし、これはゲート誘電体としての絶縁材料層の使用に有利である。
【0023】
例示的な実施形態では、本方法は、ゲート電極層を形成する前に残りの絶縁材料層上に第2の絶縁層を形成して、ゲート電極層を形成した後に第2の絶縁層が残りの絶縁材料層とゲート電極層との間で第1の主面に直交する垂直方向に挟まれるようにするステップを含む。第2の絶縁層は、例示的に、スピンオングラス(SOG)層である。第2の絶縁層は、ゲート電極層の寄生容量を低減する。
【0024】
例示的な実施形態では、各犠牲構造は、50nm~10μmの範囲、例示的には5~10μmの範囲の、第1の主面に直交する垂直方向の長さを有する。
【0025】
例示的な実施形態では、第1の炭化珪素層を形成すること、第2の炭化珪素層を形成すること、および第3の炭化珪素層を形成することは、それぞれ1400℃未満の温度で行われる。1400℃を超える温度は、炭化珪素パワーデバイスのゲート誘電体として使用される残りの絶縁材料層を損傷する可能性がある。例えば、酸化珪素材料は、1400℃を超える温度で損傷を受ける。
【0026】
例示的な実施形態では、各犠牲構造の第2の端部上の絶縁材料層の部分を除去するステップは、絶縁材料層上に連続した第1のマスキング材料層を形成する第1のステップと、第1のマスキング材料層をエッチバックして、各犠牲構造の第2の端部上に絶縁材料層の部分を露出させる第1のマスキング層を形成する第2のステップと、第1のマスキング層をエッチングマスクとして使用して第2の端部上の絶縁材料層の部分をエッチングする第3のステップと、を含む。
【0027】
例示的な実施形態では、方法は、第3の炭化珪素層の一部を除去して第2の炭化珪素層の一部を露出させるステップと、その後、第3の炭化珪素層および第2の炭化珪素層に電気的に接触する第1の主電極を形成するステップであって、第1の主電極がゲート電極層から電気的に絶縁されている、ステップと、を含む。
【0028】
図面の簡単な説明
以下、添付の図面を参照して、本発明の詳細な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】最先端の4H-SiCパワーMOSFETの性能を示す図である。
図2】様々なSiCポリタイプのバンドギャップ内の界面準位の分布を示す図である。
図3A図3Dの線C-C’に沿った垂直断面における一実施形態による炭化珪素パワーデバイスを示す図である。
図3B図3Aの炭化珪素パワーデバイスの上面図である。
図3C図3Aの炭化珪素パワーデバイスにおける単一のトランジスタセルを示す図である。
図3D図3Aの線A-A’に沿った炭化珪素パワーデバイスの水平断面図である。
図4A図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4B図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4C図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4D図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4E図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4F図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4G図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4H図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4I図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4J図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4K図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図4L図3Aの炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図5】第1の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの垂直断面図である。
図6】第2の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの垂直断面図である。
図7】第3の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの垂直断面図である。
図8】第4の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの横断面図である。
図9】第5の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの横断面図である。
図10】第6の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの垂直断面図である。
図11】第7の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイスの垂直断面図である。
図12A図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12B図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12C図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12D図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12E図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12F図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12G図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
図12H図11の炭化珪素パワーデバイスの製造方法における方法ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図で使用される参照符号およびそれらの意味は、参照符号のリストに要約されている。一般に、類似の要素は、本明細書全体を通して同じ参照符号を有する。記載された実施形態は、例として意図されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0031】
例示的な実施形態の詳細な説明
以下では、本発明の一実施形態による炭化珪素パワーデバイス100について図3A図3Dを参照して説明する。実施形態の炭化珪素パワーデバイス100は、炭化珪素ベースのパワー金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ(MISFET)である。図3Aは、炭化珪素パワーデバイス100の上面図を示す図3Bの線B-B’に沿った、および図3Aの線A-A’に沿った炭化珪素パワーデバイス100の水平断面図を示す図3Dの線C-C’に沿った、炭化珪素パワーデバイス100の4つのトランジスタセル50の垂直断面図を示す。図3Cは、図3Aの炭化珪素パワーデバイスにおける単一のトランジスタセル50の拡大断面を示す。
【0032】
図3Aおよび図3Cから最もよく分かるように、炭化珪素パワーデバイス100は、第1の主面21と、第1の主面21に対向する第2の主面22とを有するn型基板20を備える。図3A図3Dに示す実施形態では、基板20は、第2の主面22から第1の主面21へと順に、n型の第1の基板層20Aおよびn型の第2の基板層20Bを備える。第1の基板層20Aは、比較的高濃度にドープされ、例示的には1017cm-3を超える、例示的には1018cm-3を超えるドーピング濃度を有する。第2の基板層20Bは、比較的低濃度にドープされ、例示的には1017cm-3未満、例示的には1016cm-3未満のドーピング濃度を有する。実施形態の炭化珪素パワーデバイス100では、第2の基板層20Bは、全てのトランジスタセル50に共通のドリフト層部分として機能する。例示的には、第1の基板層20Aは、4H-SiC層、6H-SiC層、3C-SiC層またはシリコン層を含んでもよい。第2の基板層20Bは、例示的には、4H-SiC層、6H-SiC層、3C-SiC層のいずれであってもよい。3C-SiCからなる第2の基板層20Bと比較して、4H-SiCまたは6H-SiCからなる第2の基板層20Bを用いると、4H-SiCまたは6H-SiCのバンドギャップが比較的大きいため、ブロッキング性能および熱特性が向上するという利点がある。第2の基板層20Bは、第1の基板層20A上にヘテロエピタキシャルまたはホモエピタキシャルに成長させたエピタキシャル層であってもよい。
【0033】
複数の炭化珪素層積層体30が、基板20の第1の主面21上に配置されている。各炭化珪素層積層体30は、第1の主面21から離れる方向に第1の主面21上に積層された以下の層、すなわち基板20上のn型ドレイン層35、チャネル層37上のp型チャネル層37およびn型ソース層36を含む(図3Cを参照)。図3Dの上面図に示すように、複数の炭化珪素層積層体30は、垂直方向から第1の主面21上を見て、マトリックスの形態で第1の主面21上に配置されてもよい。
【0034】
連続した絶縁層40が、炭化珪素層積層体30の間で横方向に基板20上に配置される。本明細書を通して、側方または横方向という用語は、第1の主面21に平行な横方向を指す。同様に、垂直または垂直方向という用語は、第1の主面21に直交する垂直方向を指す。絶縁層40は、複数の炭化珪素層積層体30の1つの側面上にそれぞれ直接延在する複数の管状の第1の絶縁層部分42を含み、複数の第1の絶縁層部分42の間の第1の主面21上に延在する第2の絶縁層部分43を含む。複数の第1の絶縁層部分42は、各炭化珪素層積層体30の少なくともドレイン層35およびチャネル層37を横方向に覆い、横方向に取り囲む。これは、図3Cの垂直断面および図3Dの水平断面において最もよく見ることができる。例示的には、第1の絶縁層部分42は、図3Aおよび図3Cに示すように、ソース層36の一部も横方向に覆い、横方向に取り囲む。第1の層が第2の層を横方向に覆う場合、それは、任意の横方向に見たときに第1の層が第2の層と完全に重なることを意味する。また、第1の層が第2の層を横方向に取り囲む場合、これは、第1の主面21に平行な平面への直交投影において第1の層が第2の層を取り囲むことを意味するものとする。各第1の絶縁層部分42について、その第1の絶縁層部分42と、その第1の絶縁層部分42によって横方向に取り囲まれたチャネル層37およびドレイン層35の側面との間に、直接接触が存在する。第1の絶縁層40は、例示的に、酸化シリコン層または窒化シリコン層である。第1の絶縁層40は、例示的に、熱酸化物層である。
【0035】
ゲート電極層45は、ゲート電極層45と複数の炭化珪素層積層体30の各々とが複数の第1の絶縁層部分42の対応するものによって互いに分離されるように、第1の絶縁層40上に直接配置されて延在している。2つの要素が第3の要素によって互いに分離されている場合、これは、2つの要素が互いに直接接続されておらず、両方の要素が、2つの要素を分離する第3の要素に直接接続されていることを意味する。ゲート電極層45は、例示的に、各炭化珪素層積層体30を横方向に取り囲む連続層である。例示的には、ゲート電極層45の各点は、後述する第1の主電極52の各点よりも第1の主面21に近い、すなわち、ゲート電極層全体が第1の主電極52の下のレベルで延在する。
【0036】
第2の絶縁層44は、第2の絶縁層部分43とゲート電極層45との間に、第1の主面21に直交する垂直方向に挟まれている。第2の絶縁層44は、ゲート電極層45の寄生容量を最小化するために、ゲート電極層45を基板20から遠ざける。第2の絶縁層44は、電気的に絶縁性の材料であればよい。例えば、スピンオンガラス(SOG)層であってもよい。
【0037】
実施形態では、各トランジスタセル50は、垂直ゲート全周電界効果トランジスタセルを形成するために、上述したように、複数の炭化珪素層積層体30の1つ、複数の第1の絶縁層部分42の1つ、およびゲート電極層45の一部を含む。
【0038】
各炭化珪素層積層体30は、各チャネル層37の各点がゲート電極層45の2つの対向する部分の間に横方向に挟まれるように、第1の主面21から突出するピラーの形状を有し、ゲート電極層45の2つの対向する部分は、そのチャネル層37のその点を通って延びる直線に沿って2μm未満の距離dを有する。図3A図3Dの実施形態では、距離dは、管状の第1の絶縁層部分42の直径と同じである。図3Dでは、C-C’は、その直線C-C’がチャネル層37と交差するチャネル層37の全ての点を通るそのような直線の例である。各炭化珪素層積層体30のチャネル層37は、第1の主面21に平行な任意の水平方向において最大水平幅wを有することができ、これは2μm未満、例示的には1μm未満である。第1の絶縁層部分42の層厚(d-w)/2(wは最大水平幅、dは管状の第1の絶縁層部分42の直径)は、例示的に、5nm以上500nm以下の範囲内である。ピラーの形状は、例示的に、第1の主面21に直交する垂直方向の高さhが最大水平幅wよりも大きくてもよい。例えば、高さhは、最大水平幅wの少なくとも2倍または3倍であってもよい。
【0039】
ソース層36、チャネル層37およびドレイン層35は、任意のSiCポリタイプであってもよい。これらの層は、異なるSiCポリタイプまたは同じSiCポリタイプであってもよい。例示的な実施形態では、少なくともチャネル層37は3C-SiCを含むことができ、ドレイン層35は4H-SiCまたは6H-SiCを含むことができる。第2の基板層20Bおよびドレイン層35は、同じSiCポリタイプであってもよい。例えば、チャネル層37は、3C-SiCであってもよいが、第2の基板層20Bおよびドレイン層35は、双方4H-SiCであってもよいし、双方6H-SiCであってもよい。
【0040】
図3Aおよび図3Cに示すように、炭化珪素パワーデバイス100は、ゲート電極層45上に配置された中間絶縁層80と、中間絶縁層80上に配置された第1の主電極52とを備える。第1の主電極52は、中間絶縁層80によってゲート電極層45と電気的に絶縁されている。第1の主電極52は、中間層80の開口部80Aを介して、複数の炭化珪素層積層体30各々のソース層36と電気的に接触している。第2の主面22には、第2の主電極54が配置されている。
【0041】
図3Bの上面図を参照すると、第1の主電極52の上部は、炭化珪素パワーデバイス100のソース端子となるソースコンタクトパッド56である。あるいは、ソースコンタクトパッド56は、第1の主電極52に電気的に接続された別個の要素として実装されてもよい。本明細書を通して、要素の下部は、第1の主面21に隣接する部分として理解されるべきであり、要素の上部は、垂直方向において下部に対向する部分として理解されるべきであり、すなわち、下部の各点は、上部の各点よりも第1の主面21に近い。第1の主電極52の下方に延在するゲート電極層45は、炭化珪素パワーデバイス100のゲート端子となる制御コンタクトパッド48に電気的に接続されている。図3Dに示す例示的な実施形態では、制御コンタクトパッド48は、ソースコンタクトパッド56の側方に配置される。すなわち、ソース層は上からソースコンタクトパッド56に接続されているが、ゲート電極層は炭化珪素パワーデバイス100の側方から、すなわち、第1の主面21に平行な平面への直交投影においてゲート電極層45に接続されており、ソースコンタクトパッド56は、複数の炭化珪素層積層体30を含む複数のトランジスタセル50に重なっており、制御コンタクトパッド48は、複数のトランジスタセル50の側方に配置されている。
【0042】
以下、上記のような炭化珪素パワーデバイス100の製造方法について、図4A図4Lを用いて説明し、これらは、図3Aに示す最終的な炭化珪素パワーデバイス100の垂直断面に対応する中間構造の垂直断面を示す図である。
【0043】
第1の方法ステップでは、第1の主面21と第2の主面22とを有する基板20が提供される。第2の基板層20Bは、例えば、化学気相成長(CVD)プロセスによって第1の基板層20A上に堆積されてもよい。あるいは、基板20の2層構造は、n型ドーパントをn型予備基板に注入して、上述のように異なるドーピング濃度を有する第1の基板層20Aおよび第2の基板層20Bを形成することによって形成されてもよい。
【0044】
別の方法ステップでは、垂直断面において図4Aに示すような構造を得るために、第1の主面21上に犠牲層60が形成される。
【0045】
別の方法ステップでは、犠牲層60は、図4Bに示すように、第1の主面21から突出する複数の犠牲構造65を形成するように構造化される。各犠牲構造65は、ピラーの形状を有し、基板20に隣接する第1の端部65Aと、第1の主面21に直交する垂直方向において第1の端部65Aとは反対側の第2の端部65Bとを備える。第2の端部65Bは、基板20から最も遠い犠牲構造65の端部である。例示的には、各犠牲構造65は、50nm~10μmの範囲、例示的には5μm~10μmの範囲の、第1の主面21に直交する垂直方向の長さLを有する。
【0046】
別の方法ステップでは、図4Cに示すような構造を得るために、複数の犠牲構造65上、および犠牲構造65によって露出した第1の主面21上に、連続した絶縁材料層70が形成される。犠牲層60は、例えば、カーボン層またはシリコン層であってもよい。例示的な実施形態では、犠牲層60はポリシリコン(poly-Si)層またはアモルファスシリコン層であり、第2の基板層20BはSiC層である。この例示的な実施形態では、絶縁材料層70は、犠牲構造65および第2の基板層20Bの露出部分の熱酸化によって形成された熱酸化物層であってもよい。あるいはまた、絶縁材料層70は、プラズマCVD(PE-CVD)法やその他の適宜の堆積法などの堆積法によって形成することができる。絶縁材料層70は、例示的に、酸化シリコンまたは窒化シリコン層である。
【0047】
別の方法ステップでは、各犠牲構造65の第2の端部65B上の絶縁材料層70の一部を除去して各犠牲構造65の第2の端部65Bを露出させる一方で、残りの絶縁材料層70’は各犠牲構造65の側面を覆う(図4Fに示すように)。ここで、残りの絶縁材料層70’の少なくとも一部は、炭化珪素パワーデバイス100内の絶縁層40を形成する。例示的には、各犠牲構造65の第2の端部65B上の絶縁材料層70の一部を除去するこの方法ステップは、図4D図4Fに示す以下のサブステップを含むことができる。
【0048】
図4Dに示すように、絶縁材料層70上に連続した第1のマスキング材料層90を形成する第1のサブステップと、
図4Eに示すように、各犠牲構造65の第2の端部65B上に絶縁材料層70の一部を露出させる第1のマスキング層90’を形成するために、第1のマスキング材料層90をエッチバックする第2のサブステップと、
・第1のマスキング層90’をエッチングマスクとして用いて、第2の端部65B上の絶縁材料層70の部分をエッチングして、図4Fに示すような構造を得た後、第1のマスキング層90’を除去する第3のサブステップ。
【0049】
別の方法ステップでは、複数の犠牲構造65を選択的エッチングによって除去して、残りの絶縁材料層70’に複数のキャビティ75を形成し、第1の主面21の露出部分24を各キャビティ75の底部に露出させる。これにより得られた構造を図4Gに示す。
【0050】
別の方法ステップでは、各キャビティ75内の第1の主面21の露出部分24上にn型の第1の炭化珪素層を選択的に形成してドレイン層35を形成し、各キャビティ75内の第1の炭化珪素層上にp型の第2の炭化珪素層を選択的に形成してチャネル層37を形成し、各キャビティ75内の第2の炭化珪素層上にn型の第3の炭化珪素層を選択的に形成してソース層36を形成する。これにより得られた構造を図4Hに示す。例示的には、残りの絶縁材料層70’の最上端面70Bは、第3の炭化珪素層(ソース層36)の上面36Bよりも第1の主面21から遠くに位置してもよく、すなわち、第3の炭化珪素層は、キャビティ75の外側の領域まで延在してもよい。あるいは、最上端面70Bは、第3の炭化珪素層(ソース層36)の上面36Bよりも第1の主面21の近くに位置してもよく、すなわち、第3の炭化珪素層の全ての部分がキャビティ75内に配置されてもよい。例示的には、第1の炭化珪素層を形成すること、第2の炭化珪素層を形成すること、および第3の炭化珪素層を形成することは、それぞれ1400℃未満の温度で行われる。基板20の露出部分および/または別の炭化珪素層上にのみ炭化珪素層を選択的に形成するプロセス(残りの絶縁材料層70’上に炭化珪素層は形成されない)は、当業者に周知である。そのようなプロセスは、例えば、選択的化学気相成長(CVD)であってもよく、炭化珪素の結晶成長の選択性は、異なる表面(ここでは、一方の側の第1の主面21または第1の炭化珪素層または第2の炭化珪素層の露出部分24、および他方の側の残りの絶縁材料層70’の表面)を有する反応物の異なる化学的挙動によって得られる。上述の方法ステップ中に第1の炭化珪素層、第2の炭化珪素層および第3の炭化珪素層のSiCのポリタイプを制御する方法は、当業者に周知である。例えば、第1の炭化珪素層、第2の炭化珪素層、および第3の炭化珪素層を形成するためにCVDプロセスを使用する場合、温度などの異なるCVDプロセスパラメータは、CVDプロセス中にどのポリタイプのSiCが成長するかに周知の影響を及ぼす。
【0051】
別の方法ステップでは、炭化珪素パワーデバイス100内の第2の絶縁層部分43を形成する残りの絶縁材料層70’の部分上に第2の絶縁層44が形成される。これにより得られた構造を図4Iに示す。第2の絶縁層44は、例示的に、スピンオングラス(SOG)層である。あるいは、最初に別の絶縁材料の均質で連続的な層を堆積させ、次いで(例示的にはエッチングによって)構造化して、第2の絶縁層44を得ることができる。第2の絶縁層44の上面44A(すなわち、基板20から外方に面する表面)は、第1の炭化珪素層(炭化珪素パワーデバイス100においてドレイン層35を形成する)と第2の炭化珪素層(炭化珪素パワーデバイス100においてチャネル層37を形成する)との界面35Aよりも下方にある。
【0052】
別の方法ステップでは、炭化珪素パワーデバイス100内の絶縁層40を形成する残りの絶縁材料層70’の部分上にゲート電極層45を形成して、図4Jに示すような構造を得る。ここで、ゲート電極層45は、炭化珪素パワーデバイス100の第1の絶縁層部分42を形成する残りの絶縁材料層70’の部分の側面に直接形成され、第2の絶縁層44の上面44Aに直接形成される。ゲート電極層45を形成した後、第2の絶縁層44は、残りの絶縁材料層70’とゲート電極層45との間に、第1の主面21に直交する垂直方向に挟まれる。
【0053】
別の方法ステップでは、均質で連続的な第2の絶縁材料層95を図4Jに示す構造上に堆積させて、図4Kに示す構造を得る。その後、図4Lに示すように、第2の絶縁材料層95を構成し、ソース層36を開口部80Aから露出させる中間絶縁層80を形成する。
【0054】
最後に、図4Lに示す構造上に、ソース層36に電気的に接触するように第1の主電極52を形成し、第2の主面22上に第2の主電極54を形成して、図3A図3Dで上述した炭化珪素パワーデバイス100を得る。本方法は、追加の方法ステップを含むことができる。例えば、制御コンタクトパッド48およびソースコンタクトパッド56をそれぞれ形成するために追加の方法ステップが含まれてもよい。
【0055】
【数1】
【0056】
炭化珪素パワーデバイス300の製造方法は、犠牲構造65が、垂直断面において、炭化珪素層積層体330の円錐形状に対応する円錐形状をそれぞれ有するという点のみが、図4A図4Hに示す方法と異なる。
【0057】
【数2】
【0058】
炭化珪素パワーデバイス400の製造方法は、犠牲構造65が、垂直断面において、炭化珪素層積層体430の円錐形状に対応する円錐形状をそれぞれ有するという点のみが、図4A図4Hに示す方法と異なる。
【0059】
【数3】
【0060】
炭化珪素パワーデバイス600の製造方法は、犠牲構造65の形状、すなわち炭化珪素層積層体630の湾曲したフィン形状に対応した湾曲したフィン形状が異なるという点のみが、上述した炭化珪素パワーデバイス100の製造方法について説明した方法と異なる。
【0061】
以下では、第6の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイス700について、図10を参照して、図3Aの断面に対応する垂直断面において説明する。炭化珪素パワーデバイス700は、基板25が1017cm-3より上、例示的には5・1017cm-3より上の比較的高いドーピング濃度を有し、各炭化珪素層積層体730のドレイン層(735)が基板25と直接接触しているという点のみが、上述の炭化珪素パワーデバイス100と異なる。したがって、上述の炭化珪素パワーデバイス100とは対照的に、基板25は、比較的高濃度にドープされた第1の基板層20A上に比較的低濃度にドープされた第2の基板層20Bを有する2層構造を含まない。上述の炭化珪素パワーデバイス100では、第2の基板層20Bが全てのトランジスタセル50に共通のドリフト層部分として機能するが、デバイスのドリフト層全体がドレイン層に実装されている。例示的には、ドレイン層735全体は、1017cm-3未満のドーピング濃度を有する。炭化珪素パワーデバイス100ではドレイン層35内にドリフト層の全体ではなく一部のみが実装されるため、特定の電圧クラスでは、炭化珪素パワーデバイス700のドレイン層735は、同じ電圧クラスの炭化珪素パワーデバイス100のドレイン層35よりも、第1の主面21に直交する垂直方向に大きな層厚を必要とする。炭化珪素パワーデバイス700の製造方法は、第1の方法ステップで2層の基板20の代わりに基板25を設ける点、および特定の電圧クラスに対して、第1の主面21に直交する垂直方向において、ドレイン層35よりもドレイン層735の層厚が厚いため、第2の絶縁層744の層厚を第2の絶縁層744よりも厚くしなければならない場合がある点のみが異なる。
【0062】
以下では、第6の変形実施形態による炭化珪素パワーデバイス800について、図11を参照して、図3Aの断面に対応する垂直断面において説明する。炭化珪素パワーデバイス800は、第1の主電極852がソース層836の開口部36Hを介してチャネル層37に接するという点のみが、上述した炭化珪素パワーデバイス100と異なる。炭化珪素層積層体830は、上述の炭化珪素層積層体30と同様である。これは、チャネル層37に接触するように第1の主電極852が延在する開口部36Hが形成されているという点のみがソース層36と異なる、ソース層836を含む。炭化珪素パワーデバイス800の他の特徴は、炭化珪素パワーデバイス100と同じであってもよい。あるいは、炭化珪素パワーデバイス800の残りの特徴は、上述した炭化珪素パワーデバイス200,300,400,500,600または700のいずれかと同じであってもよい。
【0063】
以下では、上述した炭化珪素パワーデバイス800の製造方法の例示的な実施形態について、図12A図12Hを参照して説明し、これらは図11の垂直断面に対応する垂直断面を示す図である。最初に、図4A図4Gを参照して上述した方法ステップを行う。その後の別の方法ステップでは、キャビティ75内に、第1の炭化珪素層、第2の炭化珪素層および第3の炭化珪素層を選択的に形成して、図12Aに示すような構造を得る。炭化珪素層積層体30の第1の主面21と反対側の上面30Bは、第1の主面21からの距離d1が、残りの絶縁材料層70’の最上端面70Bの第1の主面21からの距離d2よりも小さい。すなわち、炭化珪素層積層体30の上面30Bは、残りの絶縁材料層70’の最上端面70Bよりも低く、その結果、炭化珪素層積層体30の上面30Bおよび残りの絶縁材料層70’は凹部を画定し、炭化珪素層積層体30の上面30Bが凹部の底部を形成し、残りの絶縁材料層70’が凹部の側壁を形成する。その後、残りの絶縁材料層70’および炭化珪素層積層体30上に、連続した第2のマスキング材料層92を形成し、図12Bに示すような構造を得る。次に、第2のマスキング材料層92は、例えば第2のマスキング材料層92をエッチバックすることによって構造化されて、各炭化珪素層積層体30の上面30Bの第1の部分を露出させる第2のマスク層92’を形成し、炭化珪素層積層体30の上面30Bの第2の部分は、図12Cに示すように第2のマスキング層92’によって覆われる。その後、図12Dに示すように、第2のマスキング層92’を使用して、各炭化珪素層積層体のソース層36を貫通して延在し、かつ開口部36Hの底部でチャネル層37の上面部分を露出させる開口(垂直孔)36Hをエッチングする。次に、図12Eに示すように、図12Dの構造上に連続した第3のマスキング材料層94を形成する。次に、図12Fに示すように、第3のマスキング材料層94の上部を、例えばエッチングによって除去して、少なくとも第2のマスキング層92’を露出させる第3のマスキング層94’と、第2のマスキング層92’の側方に配置された残りの絶縁材料層70’の上端部とを形成する。第3のマスキング層94’の上面94Bは、例示的には、ソース層36とチャネル層37との間の界面37Aと同じかまたはその下にあり、すなわち、第3のマスキング層94’の上面94Bと第1の主面21との間の距離d3は、垂直方向における界面37A(ソース層36とチャネル層37との間)と第1の主面21との間の距離d4と同じかまたはそれよりも小さい。第3のマスキング層94’をエッチングマスクとして使用して、第2のマスキング層92’と、第3のマスキング層94’によって露出された残りの絶縁材料層70’の上端部とを選択的エッチング(SiCに対して選択的)によって除去することで、図12Gに示すような構造が得られ、第3のマスキング層94’を除去することで図12Hに示すような構造が得られる。その後、第2の絶縁層44、ゲート電極層45、中間絶縁層80、ゲート電極45、第1の主電極852および第2の主電極54を形成する方法ステップを、炭化珪素パワーデバイス100の製造方法の実施形態で上述したものと同様に行い、図11に示す炭化珪素パワーデバイス800を得る。
【0064】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態の変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0065】
上述の炭化珪素パワーデバイス100~800は、いずれも炭化珪素ベースのパワー金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ(MISFET)である。しかしながら、本発明の炭化珪素パワーデバイスは、添付の特許請求の範囲に定義される特徴を有する別のデバイスであってもよい。例えば、炭化珪素パワーデバイスは、基板20、25と第2の主電極54との間に追加のp型半導体層を有する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であってもよい。
【0066】
上記の実施形態は、特定の導電型で説明された。上述の各実施形態における半導体層の導電型は、p型層として記載された全ての層がn型層であり、n型層として記載された全ての層がp型層であるように切り替えられてもよい。例えば、基板上に記載された各炭化珪素パワーデバイスにおいて、ドレイン層およびソース層はそれぞれp型層であり得、ソース層はn型層であり得る。同じことが、炭化珪素パワーデバイスの製造方法の全ての例示的な実施形態に当てはまる。
【0067】
上述の全ての実施形態では、ソース層はキャビティ75の外側の領域に延在し、すなわち、ソース層の側面全体が第1の絶縁層部分で覆われていない。しかしながら、代替的な実施形態では、ソース層の側面全体が第1の絶縁層部分によって覆われてもよい。
【0068】
異なる実施形態の特徴は、互いに組み合わされてもよい。例えば、図5図6図7または図11に示すような垂直断面における炭化珪素層積層体の形状は、ピラー形状を有する炭化珪素層積層体に適用されるだけでなく、図8および図9を参照して説明したようなフィン形状の炭化珪素層積層体にも適用され得る。第7の変形実施形態の異なる基板構造は、上述の任意の他の実施形態で使用されてもよい。
【0069】
第1の主電極852とチャネル層37との間に電気的接触を設けることについて、図12A図12Hを参照して具体的な方法を説明した。しかしながら、このような電気的接触を第1の主電極852とチャネル層37との間に設けるために、他の方法を適用してもよい。上記実施形態のいずれにおいても、第1の主電極とチャネル層との間に電気的接触が設けられ得る。第1の主電極とチャネル層との間にこのような電気的接触を伴う炭化珪素パワーデバイスの製造方法は、第3の炭化珪素層の一部を除去して第2の炭化珪素層の一部を露出させる第1のステップと、その後、第3の炭化珪素層および第2の炭化珪素層に電気的に接触する第1の主電極を形成するステップであって、第1の主電極がゲート電極層から電気的に絶縁されている、ステップと、を含むいずれの方法であってもよい。
【0070】
「備える(comprising)」という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除するものではないことに留意されたい。また、異なる実施形態に関連して説明した要素を組み合わせてもよい。
【0071】
本特許出願は、欧州特許出願第2021 6084.2-1212号の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
参照符号のリスト
100、200、300、400、500、600、700、800 炭化珪素パワーデバイス
20、25 (n型)基板
20A 第1の基板層
20B 第2の基板層
21 第1の主面
22 第2の主面
24 露出部分
30、230、330、430、530、630、730、830 炭化珪素層積層体
30B (炭化珪素層積層体30の)上面
35、235、335、435、735 (n型)ドレイン層
35A インターフェース
36、236、336、436、836 (n型)ソース層
36B (ソース層36の)上面
36H (ソース層836内の)開口部
37、237、337、437、537、637 (p型)チャネル層
37A インターフェース
40、240、340、440、540、640 第1の絶縁層
42、242、342、442、542、642 第1の絶縁層部分
43、243、343、443 第2の絶縁層部分
44、744 第2の絶縁層
44A (第2の絶縁層44の)上面
45 ゲート電極層
48 制御コンタクトパッド
50 トランジスタセル
52、852 第1の主電極
54 第2の主電極
56 ソースコンタクトパッド
60 犠牲層
65 犠牲構造
65A 第1の端部
65B 第2の端部
70 絶縁材料層
70’ 残りの絶縁材料層
70B (残りの絶縁材料層70’の)最上端面
75 キャビティ
80 中間絶縁層
80A (中間絶縁層80内の)開口部
90 第1のマスキング材料層
90’ 第1のマスキング層
92 第2のマスキング材料層
92’ 第2のマスキング層
94 第3のマスキング材料層
94’ 第3のマスキング層
94B (第3のマスキング層94’の)上面
95 第2の絶縁材料層
d、d1、d2、d3、d4 距離
L 長さ
w 最大水平幅
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
【国際調査報告】