(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】マイコトキシン症から保護するためのコンジュゲート化ゼアラレノン
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20231219BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231219BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231219BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231219BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20231219BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P31/10
A61P1/16
A61P13/12
A61P15/00
A61P1/14
A61P37/04
A61K39/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537665
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086945
(87)【国際公開番号】W WO2022136343
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クーイマン,シエツケ
(72)【発明者】
【氏名】セガース,ルード・フィリップ・アントゥーン・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウィトヴリエット,マールテン・ヘンドリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC06
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA03
4C085BA49
4C085BB11
4C085BB15
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、ZEA誘導性マイコトキシン症から動物を保護するための、特に体重増加の減少、腎臓損傷、肝臓損傷及び生殖器の損傷から保護するための方法における、コンジュゲート化ゼアラレノン(ZEA)の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZEA誘導性マイコトキシン症から動物を保護する方法で使用するためのコンジュゲート化ゼアラレノン(ZEA)。
【請求項2】
体重増加の減少、腎臓損傷、肝臓損傷及び生殖器の損傷からなる群から選択されるZEA誘導性マイコトキシン症の臨床徴候の1つ又は複数から動物を保護するための、請求項1に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ゼアラレノン(ZEA)。
【請求項3】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、前記動物に全身投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項4】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、筋肉内、経口及び/又は皮内に投与されることを特徴とする、請求項3に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項5】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、6週齢以下で前記動物に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項6】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、4週齢以下で前記動物に投与されることを特徴とする、請求項5に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項7】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、1~3週齢で前記動物に投与されることを特徴とする、請求項6に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項8】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、前記動物に少なくとも2回投与されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項9】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、前記コンジュゲート化ZEAに加えてアジュバントを含む組成物中で使用されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項10】
前記方法において、前記アジュバントが水及び油のエマルジョンであることを特徴とする、請求項9に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項11】
前記方法において、前記アジュバントが油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンであることを特徴とする、請求項10に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項12】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、10.000Daを超える分子質量を有するタンパク質にコンジュゲート化されたZEAを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項13】
前記方法において、前記コンジュゲート化ZEAが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はオボアルブミン(OVA)にコンジュゲートしたZEAを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項14】
前記動物が健康なブタであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【請求項15】
前記動物が未経産ブタ又は雌ブタであることを特徴とする、請求項14に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化ZEA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、マイコトキシンによって誘導されるマイコトキシン症に対する保護に関する。特に、本発明は、最も一般的なエストロゲン性マイコトキシンの1つであるゼアラレノン(ZEA)によって誘発されるマイコトキシン症に対する保護に関する。
【背景技術】
【0002】
ZEAは、主にフザリウム(Fusarium)及びジベレラ(Gibberella)の種によって産生され、動物の生殖能力に影響を及ぼすことが証明されている。ZEAへの家畜の曝露は、その毒性及び動物飼料中の広範な分布のために、世界的な公衆衛生上の懸念である。インビトロ及びインビボ実験は、ZEAがマウス、ブタ、ウマ及びウシにおいてエストロゲン活性を有することを示している。ZEAの生殖毒性の正確な機構はまだ確立されていない。ZEAは、おそらく不適切な貯蔵の結果として、天然動物飼料の試料中に高レベルで典型的に検出されるが、有毒性フザリウム属(Fusarium)種が既に穀類に感染し、収穫時前にZEA蓄積をもたらすことが判明した。今日、フザリウム属(Fusarium)真菌は、世界的な穀物取引の増加に伴って国から国へと広がっている。
【0003】
特に、養ブタ業はZEAの影響を強く受けている。ブタは、食餌ZEAの生殖作用に対して他の家畜よりも感受性が高く、この毒素に対する有効な解毒剤は現在存在しないと思われる。離乳未経産ブタに対するZEAの毒性作用は、外陰肥大及び卵巣萎縮に関連する。ZEAは、卵巣障害を誘発することによって雌ブタに生殖不能状態を引き起こし得る。卵母細胞は卵胞で死滅し、排卵は、発情周期中に徴候が示されるにもかかわらず起こらない。ZEAは、ステロイドホルモンの分泌を阻害し、排卵前段階中のエストロゲン応答を妨害し、哺乳動物の卵胞の成熟を抑制する。ZEAによって引き起こされる発情周期の変化は、その用量及び投与時間に依存する。若齢ブタでは、経口投与されたZEAは迅速に吸収され、代謝される。ZEAは、ブタにおいて主にα-ZEAに触媒される。ブタにおけるα-ZEAの機構は、エストロゲン受容体と競合しながら、標的組織中の細胞に対するその効果によって説明することができる。α-ZEA及びβ-ZEAを含むZEAは、ブタ卵巣の天然卵胞液中で検出されることが多い。ZEA汚染飼料を摂取した未経産ブタは、偽妊娠を発症する可能性がある。更に、ZEAは、分裂期紡錘体の奇形を誘導することによって、分裂期を通してブタ卵母細胞の進行を抑制し得る。また、ZEAで自然に汚染された小麦を未経産ブタに与えることは、インビトロで卵母細胞の初期のクロマチン状態及び成熟能を妨害し得る。
【0004】
家禽はZEAに対してかなり耐性があるように思われるが、反芻動物では、ZENは雌牛の受胎率を低下させる可能性がある。また、飼料摂取量の減少及び乳収量の減少は、乳牛におけるZEAに起因している。
【0005】
ZEA誘導性マイコトキシン症の予防的処置は、現在、作物でのマイコトキシン産生を減少させるための良好な農業慣行並びにマイコトキシンレベルが一定の限界未満のままであることを確実にするための食品及び飼料商品の制御プログラムに制限されている。
【0006】
真菌は、一般に、器官及び組織の寄生並びにアレルゲン性発現を含む、動物における広範囲の疾患を引き起こす。しかしながら、非食用キノコの摂取による中毒以外に、真菌は、マイコトキシン症と呼ばれる様々な毒性作用を担うマイコトキシン及び有機化学物質を産生し得る。この疾患は、マイコトキシン、食品又は動物飼料を汚染する糸状菌によって産生される薬理学的に活性な化合物への曝露によって引き起こされる。マイコトキシンは、真菌の生理学にとって重要ではない二次代謝産物であり、摂取、吸入又は皮膚接触時に脊椎動物に対して最小濃度で極めて毒性である。約400のマイコトキシンが現在認識されており、類似の生物学的及び構造的特性を有する化学的に関連する分子のファミリーに細分されている。このうち、動物の健康に対する脅威として、10数群が定期的に注目されている。公共の関心及び農業経済的意義が最も高いマイコトキシンの例としては、アフラトキシン(AF)、オクラトキシン(OT)、トリコテセン(T;デオキシニバレノール(DONと略す)を含む)、ゼアラレノン(ZEA)、発振せん性毒素及び麦角アルカロイドが挙げられる。マイコトキシンは、急性及び慢性疾患に関連しており、生物学的作用は、主にそれらの化学構造の多様性に応じて変化するが、生物学的、栄養学的及び環境的要因にも関連する。マイコトキシン症の病態生理学は、マイコトキシンと動物細胞における機能性分子及び細胞小器官との相互作用の結果であり、発癌性、遺伝毒性、タンパク質合成の阻害、免疫抑制、皮膚刺激及び他の代謝的撹乱をもたらし得る。感受性動物種では、マイコトキシンは複雑で重複する毒性作用を誘発し得る。マイコトキシン症は伝染性ではなく、免疫系の有意な刺激もない。薬物又は抗生物質による処置は、疾患の経過にほとんど又は全く影響を及ぼさない。今日まで、マイコトキシン症にうまく対抗するヒト又は動物ワクチンは利用できず、記載もされていない。Pestka J.J.et al.は、J Food Prot,Nov 1985,48(11),953-957において、「ブタのゼアラレノンマイコトキシン症を予防する方法としての能動免疫の試験に免疫プロトコルが適用可能であり得る」と仮定していることに留意されたい。しかしながら、医療用途を試験するためのデータは提供されていない。これは数年後に行われ、MacDougald O.A.et al.in J Anim Sci,Nov 1990,68(11),3713-3718によって報告された。彼らは、「ゼアラレノンに対する免疫化は、ブタのゼアラレノンマイコトキシン症を予防するための実行可能な方法ではないようである」と結論づけた。
【0007】
したがって、成長中の研究体は、特定の真菌疾患の予防において、真菌症、すなわち毒素の代わりに真菌自体による感染症に対抗する際の強力なツールとしての、広範な真菌クラスに対する有効性を有するワクチン及び/又は免疫療法の開発に焦点を当てている。真菌症とは対照的に、マイコトキシン症は、毒素産生真菌の関与を必要とせず、生物起源ではあるが、非生物的危険と見なされる。この意味で、マイコトキシン症は自然手段による中毒の例と考えられており、保護戦略は本質的に曝露防止に焦点を当ててきた。ヒト及び動物への曝露は、主に植物ベースの食品におけるマイコトキシンの摂取から起こる。摂取されたマイコトキシンの代謝は、異なる器官又は組織における蓄積をもたらし得、したがって、マイコトキシンは、動物の肉、乳又は卵を介してヒトの食物連鎖に入ることができる(キャリーオーバ)。有毒性真菌は、ヒト及び動物の消費のためにいくつかの種類の作物を汚染するので、マイコトキシンは、あらゆる種類の原材料、商品及び飲料に存在し得る。国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界の食品作物の25%がマイコトキシンによって著しく汚染されていると推定した。現時点において、マイコトキシン症予防のための最良の戦略には、作物でのマイコトキシン産生を減少させるための良好な農業慣行、並びに、マイコトキシンのレベルが所定の閾値を下回ることを確実にするための食品及び飼料商品の制御プログラムが含まれる。これらの戦略は、高いコスト及び可変の有効性を有するマイコトキシンのいくつかの群による商品の汚染の問題を制限し得る。支持療法(例えば、食事、水分補給)を除いて、マイコトキシン曝露に対する治療法はほとんどなく、マイコトキシンに対する解毒剤は一般に利用できないが、AFに曝露された個体では、クロロフィリン、緑茶ポリフェノール及びジチオールチオン(oltipraz)等の一部の保護剤でいくつかの有望な結果が得られている。
【0008】
当技術分野では、主にヒトにおけるマイコトキシン症の予防を対象とした、マイコトキシンの初期吸収又は生物活性化、免疫遮断による動物製品(乳等)におけるそれらの毒性及び/又は分泌を特異的に遮断し得る抗体の産生に基づく戦略を用いて、動物起源の重要な食品の汚染によるマイコトキシン症を予防するための、いくつかのマイコトキシンに対する特定のワクチン接種戦略が提案されている。
【0009】
しかしながら、マイコトキシン症に対する保護のためのワクチンの製造は非常に困難であり、主にマイコトキシン自体が小さな非免疫原性分子であるという事実、及び健康な対象における抗原としての使用を無リスクにしないマイコトキシンに関連する毒性に関する。マイコトキシンは、低分子量であり、通常は非タンパク質性の分子であり、通常は免疫原性ではないが(ハプテン)、タンパク質等の大きな担体分子に結合すると潜在的に免疫応答を誘発し得る。マイコトキシンをタンパク質又はポリペプチド担体にコンジュゲート化し、動物免疫化のための条件を最適化するための方法は、動物及びヒトの消費に向けた産物中のマイコトキシンをスクリーニングするためのイムノアッセイにおいて使用される異なる特異性を有するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を作製する目的で、広く研究されてきた。これらの研究で使用されたカップリングタンパク質には、とりわけ、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、サイログロブリン(TG)及びポリリジンが含まれた。過去数十年の間に、産生された抗体が天然毒素を認識するように元の構造を十分に保持しながらタンパク質に結合することができるマイコトキシン誘導体を開発するための多くの努力がなされてきた。これらの方法により、多くのマイコトキシンに対する抗体が利用可能になり、タンパク質へのコンジュゲーションが抗体産生のための効果的なツールであり得ることが実証されている。したがって、レシピエントにとって安全でありながら保護に到達するためのヒト及び動物ワクチン接種のためのこの戦略の適用は、インビボで放出され得る分子の毒性特性のためにこれまで成功していない。例えば、T-2等の毒素のタンパク質担体へのコンジュゲーションは、その活性形態の遊離毒素の潜在的な放出を伴う不安定な複合体をもたらすことが示されている(Chanh et al,Monoclonal anti-idiotype induces protection against the cytotoxicity of the trichothecene mycotoxin T-2,in J Immunol.1990,144:4721-4728)。細菌毒素の病理学的影響に対する保護状態を与え得るトキソイドワクチンと同様に、マイコトキシンに対するワクチンの開発に対する合理的なアプローチは、抗原性を維持しながら毒性を欠くマイコトキシンの改変形態として定義されるコンジュゲート化された「マイコトキシン」に基づき得る(Giovati L et al,Anaflatoxin B1 as the paradigm of a new class of vaccines based on ”Mycotoxoids”,in Ann Vaccines Immunization 2(1):1010,2015)。マイコトキシンの非タンパク質性を考えると、マイコトキシンへの変換のためのアプローチは、化学的誘導体化に依拠すべきである。関連する親マイコトキシンの戦略的位置に特定の基を導入することにより、異なる物理化学的特徴を有する分子が形成され得るが、それでもなお、天然毒素に対して十分に交差反応する抗体を誘導することができる。したがって、マイコトキシンのワクチン接種の一般的な理論的根拠は、細胞標的と比較して天然のマイコトキシンに結合する能力が増強されたマイコトキシンに対する抗体を生成し、毒素を中和し、曝露の場合に疾患発症を予防することに基づくであろう。この戦略の適用可能性は、AF群に属するマイコトキシン(Giovati et al,2015)の場合に実証されているが、他のマイコトキシンのいずれについても実証されていない。更に、予防効果は、ワクチン接種動物自体のマイコトキシン症に対しては実証されておらず、牛乳又はそれから作られる製品を消費する人々をマイコトキシン症から保護するために、乳牛におけるそれらの牛乳へのキャリーオーバに対してのみ実証されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Pestka J.J.et al.J Food Prot,Nov 1985,48(11),953-957
【非特許文献2】MacDougald O.A.et al.in J Anim Sci,Nov 1990,68(11),3713-3718
【非特許文献3】Chanh et al,Monoclonal anti-idiotype induces protection against the cytotoxicity of the trichothecene mycotoxin T-2,in J Immunol.1990,144:4721-4728
【非特許文献4】Giovati L et al,Anaflatoxin B1 as the paradigm of a new class of vaccines based on“Mycotoxoids”,in Ann Vaccines Immunization 2(1):1010,2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、動物飼料中の重要なマイコトキシンであるゼアラレノンによって誘導されるマイコトキシン症から動物を保護する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を満たすために、コンジュゲート化ゼアラレノン(ZEA)は、ZEA誘導性マイコトキシン症から動物を保護する方法における使用に適していることが見出された。
【0013】
驚くべきことに、ゼアラレノンに対する免疫化がゼアラレノンマイコトキシン症を予防するための実行可能な方法ではないようであるという先行技術の教示(MacDougald)に対して、マイコトキシン症に対する能動的免疫化が健康な動物、特に健康なブタ、より具体的には健康な未経産ブタ及び雌ブタにおいて誘導され得ることが見出された。当技術分野における卵巣切除(すなわち、非健康)未経産ブタの使用のため(MacDougald)、コンジュゲート化ZEAの保護効果を見出すことができなかったことがあり得る。また、当技術分野で使用された用量は非常に高く(mg範囲)、これはコンジュゲート化マイコトキシンの潜在的な負の効果を説明し得る。1.0mg範囲未満の用量(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2又は更には0.1mg未満)では、ZEA抗原の悪影響はなく、したがってZEAをトキソイドに変換する必要がないことが分かった。典型的な有効量は、0.01μg~0.05μgのZEA及び0.05mg~0.2mgのコンジュゲートの低さであることが見出された。コンジュゲート化毒素は、処置した宿主動物にとって安全であるようであった。また、マイコトキシン等の小分子に対して誘導される免疫応答が、処置後のマイコトキシンの摂取後にマイコトキシン症から動物自体を保護するのに十分に強いことが分かることは驚くべきことであった。動物においてマイコトキシン自体に対する免疫応答を誘導することによる動物のそのような実際の保護は、いかなるマイコトキシンについても当該技術分野において示されていない。
【0014】
定義
マイコトキシン症は、マイコトキシンへの曝露に起因する疾患である。臨床徴候、標的器官及び結果は、マイコトキシンの固有の毒性特徴並びに曝露の量及び長さ、並びに曝露された動物の健康状態に依存する。
【0015】
マイコトキシン症から保護することは、動物におけるマイコトキシンの1つ又は複数の負の生理学的影響、例えば、平均1日体重増加の減少、腎臓損傷、肝臓損傷及び生殖器に対する損傷を予防又は減少させることを意味する。
【0016】
ゼアラレノン(ZEA)は、世界中に分布するフザリウム属種(F.グラミネアラム(F.graminearum)、F.セレアリス(F.cerealis)、F.クルモラム(F.culmorum)、F.エクセティ(F.equiseti)、F.クロックウェランス(F.crookwellense)、F.セミテクトム(F.semitectum)等)によって産生されるマイコトキシンである。ZEA又は6-(10-ヒドロキシ-6-オキソ-トランス-1-ウンデセン)β-レゾルシル酸ラクトンは、C18H22O5(CAS番号17924-92-4)の分子式を有し、ZEN、RAL又はF-2マイコトキシンとも呼ばれる。
【0017】
コンジュゲート化分子は、共有結合を介して免疫原性化合物が結合している分子である。典型的には、免疫原性化合物は、KLH、BSA又はOVA等の大きなタンパク質である。
【0018】
アジュバントは、非特異的免疫刺激剤である。原則として、免疫学的事象のカスケードにおける特定のプロセスを支持又は増幅することができ、最終的により良好な免疫学的応答(すなわち、抗原、特にリンパ球によって媒介され、典型的には特異的抗体又は以前に感作されたリンパ球による抗原の認識を含むものに対する統合された身体的応答)をもたらすことができる各物質は、アジュバントとして定義することができる。アジュバントは、一般に、当該特定のプロセスが起こるために必要とされず、単に当該プロセスを支持又は増幅する。アジュバントは、一般に、それらが誘導する免疫学的事象に従って分類することができる。とりわけ、ISCOM(免疫刺激複合体)、サポニン(又はその画分及び誘導体、例えばQuilA)、水酸化アルミニウム、リポソーム、コクリエート、ポリ乳酸/グリコール酸を含む第1のクラスは、APC(抗原提示細胞)による抗原の取込み、輸送及び提示を促進する。とりわけ、油エマルジョン(W/O、O/W、W/O/W又はO/W/Oのいずれか)、ゲル、ポリマーマイクロスフェア(Carbopol)、非イオン性ブロックコポリマー、及びおそらく水酸化アルミニウムも含む第2のクラスは、デポー効果を提供する。とりわけ、CpGリッチモチーフ、モノホスホリルリピドA、マイコバクテリア(ムラミルジペプチド)、酵母抽出物、コレラ毒素を含む第3のクラスは、シグナル0として定義される、保存された微生物構造、いわゆる病原体関連微生物パターン(PAMP)の認識に基づく。とりわけ、油エマルジョン界面活性剤、水酸化アルミニウム、低酸素を含む第4のクラスは、免疫系の危険と無害(自己及び非自己と同じである必要はない)との識別能力を刺激することに基づく。とりわけ、サイトカインを含む第5のクラスは、APC上の共刺激分子、シグナル2の上方制御に基づく。
【0019】
ワクチンは、本発明の意味において、動物への適用に適した構成であり、免疫学的有効量の1つ又は複数の抗原を含み(すなわち、典型的には薬学的に許容される担体(すなわち、生体適合性培地、すなわち、投与後に対象動物において有意な有害反応を誘発せず、ワクチンの投与後に宿主動物の免疫系に抗原を提示することができる培地)、例えば水及び/又は任意の他の生体適合性溶媒を含有する液体、又は凍結乾燥ワクチンを得るために一般的に使用される固体担体と組み合わせられ(糖及び/又はタンパク質に基づく)、疾患誘導薬剤によるチャレンジの負の効果を少なくとも低減するのに十分な標的動物の免疫系を刺激することができる)、免疫刺激剤(アジュバント)が含まれていてもよく、動物への投与時に疾患又は障害を治療するための免疫応答を誘導する、すなわち疾患又は障害の予防、改善又は治癒を助ける。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の更なる実施形態では、コンジュゲート化ZEAは動物に全身投与される。例えば、胃腸管(口腔又は肛門腔)又は眼の粘膜組織を介した局所投与(例えばニワトリを免疫する場合)は、様々な動物において免疫応答を誘導する有効な経路であることが知られているが、全身投与が、ZEA誘導性マイコトキシン症から動物を保護するのに十分な免疫応答をもたらすことが見出された。特に、筋肉内、経口及び/又は皮内投与時に効果的な免疫化が得られ得ることが見出された。
【0021】
投与年齢は重要ではないが、動物が相当量のZEAで汚染された飼料を摂取し得る前に投与を行うことが好ましい。したがって、投与時の好ましい年齢は6週以下である。更に好ましいのは、4週齢以下、例えば1~3週齢である。
【0022】
本発明の更に別の実施形態では、コンジュゲート化ZEAは動物に少なくとも2回投与される。多くの動物(特に、ブタ、ニワトリ、反芻動物)は一般に、免疫原性組成物の1回の注射のみによる免疫化に対して感受性であるが、ZEAに対する経済的に実行可能な保護のためには2回の注射が好ましいと考えられる。これは、実際には、天然に存在するZEAが免疫原性ではないという単純な理由で、動物の免疫系がZEAへの天然の曝露によって抗ZEA抗体を産生するように誘発されないからである。したがって、動物の免疫系は、コンジュゲート化ZEAの投与に完全に依存する。コンジュゲート化ZEAの2回のショット間の時間は、1週間~1~2年の間の任意の時間であり得る。若齢動物の場合、例えば1~3週齢でのプライム免疫化とそれに続く1~4週間後、典型的には1~3週間後、例えば2週間後のブースター投与の計画で十分であると考えられる。より高齢の動物は、動物のための他の商業的に適用される免疫化レジメンから知られているように、数ヶ月毎(例えば、最後の投与の4、5、6ヶ月後)、又は毎年若しくは半年毎のブースター投与を必要とする場合がある。
【0023】
更に別の実施形態では、コンジュゲート化ZEAは、コンジュゲート化ZEAに加えてアジュバントを含む組成物中で使用される。コンジュゲート自体が免疫応答を誘導して所定のレベルの保護を得ることができない場合、アジュバントを使用することができる。KLH又はBSA等の追加のアジュバントなしで免疫系を十分に刺激することができるコンジュゲート分子が知られているが、追加のアジュバントを使用することが有利であり得る。これにより、ブースター投与の必要性がなくなり得るか、又はその投与間隔が長くなり得る。全ては、特定の状況で必要とされる保護のレベルに依存する。コンジュゲート化ZEAを免疫原として使用した場合に、ZEAに対する良好な免疫応答を誘導することが可能であることが示されたアジュバントの種類は、水及び油のエマルジョン、例えば油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンである。前者は一般に家禽に使用され、後者は一般にブタ及び反芻動物等のアジュバント誘発部位反応をより起こしやすい動物に使用される。
【0024】
また別の実施形態では、コンジュゲート化ZEAは、10.000Daを超える分子質量を有するタンパク質にコンジュゲートされたZEAを含む。そのようなタンパク質、特にキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びオボアルブミン(OVA)は、動物、特に健康なブタにおいて適切な免疫応答を誘導することができることが分かっている。タンパク質の実用的な上限は、100MDaであり得る。
【0025】
マイコトキシン症に対する保護に関して、特に、本発明を使用すると、動物は、生殖不全(例えば、受精能の低下及び異常な発情周期)、外陰の腫脹、膣炎、乳産生の低下及び乳腺肥大、したがって、ZEAによって誘発されるマイコトキシン症のこれらの徴候の1つ又は複数から保護されると考えられることが見出された。
【0026】
ここで、以下の実施例を用いて本発明を更に説明する。
【0027】
[実施例]
第1の一連の実験(実施例1~4を参照のこと)において、マイコトキシンに対する活性な免疫応答が、コンジュゲート化マイコトキシンを使用して誘発され得るかどうか、及び、誘発され得るならば、ワクチン接種動物を、その摂取後にこのマイコトキシンによって誘発される障害から保護することができるかどうかを評価した。後者については、DONによるチャレンジのためのブタモデルを使用した。その後(実施例5)、ワクチンにおけるコンジュゲート化ZEAの使用がワクチン接種動物においてゼアラレノンに対する抗体を誘導できるかどうかを評価した。
【0028】
[実施例1]
コンジュゲート化DONを用いた免疫チャレンジ実験
目的
この研究の目的は、DON摂取によるマイコトキシン症から動物を保護するためのコンジュゲート化デオキシニバレノールの有効性を評価することであった。これを調べるために、ブタを毒性DONでチャレンジする前にDON-KLHで2回免疫した。異なる免疫化経路を使用して、投与経路の影響を研究した。
【0029】
研究デザイン
8匹の雌ブタに由来する40匹の1週齢ブタを5つの群に分けて試験に使用した。群1~3の24匹の子ブタを1週齢及び3週齢で2回免疫した。群1は、両年齢で筋肉内(IM)免疫化された。群2は、1週齢でIM注射を受け、3週齢で経口ブーストを受けた。群3は皮内(ID)で2回免疫した。5 1/2週齢の群1~3を、DONを液体中で経口投与して4週間チャレンジした。群4は免疫化しなかったが、群1~群3について記載したようにDONでのみチャレンジした。群5は対照とし、5.5週齢から4週間で対照液のみを投与した。
【0030】
液体製剤中のDON濃度は、5.4mg/kg飼料の量に相当した。これは、1日当たり2.5mgのDONの平均量に相当する。4週間のチャレンジ後、全ての動物を、肝臓、腎臓及び胃に特別な注意を払いつつ死後調査した。更に、血液試料採取は、群5を除いて、研究の0、34、41、49、55、64日目(安楽死後)に行われ、群5の血液試料は、0、34、49日目、及び安楽死直後にのみ採取された。
【0031】
試験項目
3つの異なる免疫原性組成物、すなわちIM免疫化に使用した注射用水中油型エマルジョン(X-solve50、MSD AH、Boxmeer)中に50μg/mlのDON-KLHを含む試験項目1;経口免疫化のために使用された油中水型エマルジョン(GNE、MSDAH、Boxmeer)中に50μg/mlのDON-KLHを含む試験項目2及びID免疫化のための注射用水中油型エマルジョン(X-solve50)中に500μg/mlのDON-KLHを含む試験項目3を製剤化した。
【0032】
チャレンジデオキシニバレノール(Fermentek,Israelから入手)を、100mg/mlの最終濃度で100%メタノールに希釈し、<-15℃で保存した。使用前に、DONを更に希釈し、投与のための処置において供給した。
【0033】
組み入れ基準
健康な動物のみを使用した。不健康な動物を除外するために、研究開始前に、全ての動物を、それらの一般的な身体的外観及び臨床的異常又は疾患の非存在について調べた。群ごとに、異なる雌ブタの子ブタを使用した。毎日の実施において、全ての動物は、DON汚染飼料の摂取によってDONに事前に曝露された場合であっても免疫化される。DON自体は免疫応答を引き起こさないので、DONに事前に曝露された動物とDONに関してナイーブな動物との間に原理的な違いはないと考えられる。
【0034】
結果
いずれの動物も、DON-KLHによる免疫化に関連する悪影響を有していなかった。したがって、組成物は安全であるように見えた。
【0035】
全てのブタは、実験開始時にDONに対する力価について血清学的に陰性であったが、チャレンジ中に、筋肉内免疫群(群1)及び皮内免疫群(群3)は、天然のDON-BSAを被覆抗原として用いたELISAによって測定されるように、DONに対する抗体応答を発現した。表1は、試験中の4つの時点での平均IgG値をそれらのSD値と共に示す。筋肉内免疫化及び皮内免疫化の両方が、DONに対して有意な力価を誘導した。
【0036】
表1 IgG力価
【表1】
表2に示すように、有意な抗DON IgG力価の増加を示さなかった群2の動物を含む全ての免疫化動物は、チャレンジ動物と比較して最初の15日間で有意に高い体重増加を示した。チャレンジ動物に関しては、全ての動物が試験の過程でより多くの体重を増加させた。
【0037】
表2 体重分析
【表2】
小腸の状態(空腸内の絨毛/陰窩比によって決定される)もモニタリングした。表3には、絨毛/陰窩比が示されている。図から分かるように、群3の動物は、健康な対照(群5)に匹敵する平均絨毛陰窩/陰窩比を有し、免疫なしのチャレンジ群(群4)は、はるかに低い(統計学的に有意な)絨毛陰窩比を有した。更に、群1及び群2は、非免疫化チャレンジ対照群と比較して有意に良好な(すなわちより高い)絨毛/陰窩比を有していた。これは、免疫化がDONによって開始される腸の損傷から保護することを示している。
【0038】
表3 絨毛/陰窩比
【表3】
他の器官、より具体的には肝臓、腎臓及び胃の全身状態もモニタリングした。3つの試験群(群1~3)は全て、非免疫チャレンジ対照群(群4)よりも健康状態が良好であることが観察された。表4には、一般的な健康データの概要が示されている。胃潰瘍の程度は、-(潰瘍形成の証拠なし)から++(多発性潰瘍)まで報告されている。胃の炎症の程度は、-(炎症の証拠なし)から++/-(胃の炎症の開始)まで報告される。
【0039】
表4 一般健康データ
【表4】
[実施例2]
DONレベルに対する免疫化の効果
目的
この研究の目的は、DON摂取の毒物動態学に対するDONコンジュゲートによる免疫化の効果を評価することであった。これを調べるために、ブタに毒性DONを与える前にDON-KLHで2回免疫した。
【0040】
研究デザイン
10匹の3週齢ブタを試験に使用し、それぞれ5匹のブタからなる2つの群に分けた。群1のブタをDON-KLH(試験項目1;実施例1)で3週齢及び6週齢で2回IM免疫化した。群2は対照としての役割を果たし、対照流体のみを受けた。11週齢で、動物にそれぞれ、(毎日の飼料摂取量に基づいて)1mg/kg飼料の汚染レベルに類似する0.05mg/kgの用量でボーラスによってDON(Fermentek,Israel)を投与した。DON投与前並びにDON投与の0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、6、8及び12時間後にブタの血液試料をジャッキに採取した。
【0041】
組み入れ基準
健康な動物のみを使用した。
【0042】
血漿中のDONの分析
未結合DONの血漿分析は、Xevo(登録商標)TQ-SMS装置(Waters,Zellik,Belgium)に連結されたAcquity(登録商標)UPLCシステムで、検証済みLC-MS/MS法を使用して行った。この方法を用いたブタ血漿中のDONの定量下限は0.1ng/mlである。
【0043】
毒物動態学的分析
DONの血漿濃度-時間プロファイルの毒物動態学的モデリングを非コンパートメント分析(Phoenix,Pharsight Corporation,USA)によって行った。以下のパラメータを計算した:時間0から無限までの曲線下面積(AUC0→∞)、最大血漿濃度(Cmax)、及び最大血漿濃度の時間(tmax)。
【0044】
結果
毒物動態学の結果を下の表5に示す。分かるように、DON-KLHによる免疫化は、全ての毒物動態学パラメータを減少させる。毒性作用の活動を担うのが未結合DONであるため、DON-KLHによる免疫化は、動物の血液中の未結合DONの量を減少させることによってDONによって引き起こされる毒性作用を減少させると結論づけることができる。
【0045】
表5 未結合DONの毒物動態学パラメータ
【表5】
[実施例3]
様々なDONコンジュゲートに対する血清学的応答
目的
この研究の目的は、異なるコンジュゲート化デオキシニバレノール生成物の有効性を評価することであった。
【0046】
研究デザイン
18匹の3週齢のブタを試験に使用し、それぞれ6匹のブタからなる3つの群に分けた。群1のブタを、(実施例1の試験項目1を使用して)DON-KLHで3週齢及び5週齢で2回筋肉内免疫化した。群2は、DON-OVAに対応して免疫した。群3を陰性対照とした。全ての動物を、3週齢、5週齢及び8週齢で抗DON IgG応答についてチェックした。
【0047】
結果
血清学的結果を、log2抗体価の表において以下に示す。
【0048】
表6 抗DON IgG応答
【表6】
両方のコンジュゲートが抗DON IgG応答を上昇させるのに適していると思われる。また、1回のショットのみで応答が誘導されるように思われる。
【0049】
[実施例4]
ニワトリにおける血清学的応答
目的
この研究の目的は、ニワトリにおけるDON-KLHの血清学的応答を評価することであった。
【0050】
研究デザイン
この研究のために、30羽の4週齢のニワトリを使用し、それぞれ10羽のニワトリの3つの群に分けた。ニワトリをDON-KLHで筋肉内免疫した。群1を対照として使用し、PBSのみを投与した。群2はアジュバントなしでDON-KLHを受け、群3はGNEアジュバントに製剤化されたDON-KLHを受けた(MSD Animal Health,Boxmeerから入手可能)。0日目に、0.5mlワクチンを用いて右脚にプライム免疫処置を行った。14日目に、ニワトリを左脚に同等のブースター免疫化した。
【0051】
採血は、0日目及び14日目、並びに35、56、70及び84日目に行った。DONに対するIgYの測定のために血清を単離した。0日目及び14日目に、免疫化の直前に血液試料を単離した。
【0052】
結果
血清学的結果をlog2抗体力価で表7に示す。PBSバックグラウンドはデータから差し引かれている。
【0053】
表7 抗DON IgY応答
【表7】
分かるように、コンジュゲート化DONはニワトリにおいて抗DON力価も誘導する。GNEアジュバントは、応答を実質的に増加させるが、正味の応答自体を得るためには本質的ではないようである。
【0054】
[実施例5]
ZEAコンジュゲートに対する血清学的応答
目的
この実験の目的は、ワクチン中のコンジュゲート化ZEAの使用がワクチン接種動物においてゼアラレノンに対する抗体を誘導できるかどうかを評価することであった。
【0055】
研究デザイン
このために、キーホールリンペットヘモシアニン(ZEA-KLH)にコンジュゲートしたゼアラレノンを含むワクチンを使用した。コンジュゲートを、筋肉内(IM)投与のために50μg/ml、又は皮内(ID)投与のために500μg/mlの最終濃度で水中油型エマルジョンアジュバント(XSolve50、MSD Animal Health,The Netherlands)と混合した。
【0056】
この実験では、上記のDONワクチンも陽性対照として使用した。これの次に、他のコンジュゲート化マイコトキシンを含むワクチンを製剤化し、使用した。特に、キーホールリンペットヘモシアニン(FUM-KLH)にコンジュゲートされたフモニシン(FUM)及びKLH(T2-KLH)にコンジュゲートされたT-2マイコトキシン(T2-毒素)をワクチンに製剤化した。コンジュゲートを、それぞれFUM-KLH及びDON-KLHについては筋肉内(IM)投与のための50μg/ml又は皮内(ID)投与のための500μg/ml、及びT2-KLHについては115(IM)又は1150μg/ml(ID)の最終濃度で、本明細書中上で言及されるような水中油型エマルジョンアジュバント(XSolve)と混合した。
【0057】
実験では、5匹の健康な未経産ブタの6つの群をワクチン接種に使用した。群1には0.2mlのFUM-KLHを皮内に2回投与し、群2には0.2mlのZEA-KLHを2回投与し、群3には2.0mlのX-Solve50のDON-KLH IMを2回ワクチン接種し、群4には2.0mlのFUM-KLH IMを2回投与し、群5には2.0mlのZEA-KLHを2回IM投与し、最後に群6には2.0mlのT2-KLH IMを2回ワクチン接種した。3匹の子ブタからなる対照群があり、この対照群はワクチン接種を受けなかった。全てのプライムは3週齢であり、ブースターは5週齢であった。動物を試験開始後14週間モニタリングした。
【0058】
結果
全てのブタは、実験開始時にFUM、ZEA、T2及びDONに対する力価について血清学的に陰性であり、全てのワクチン接種群は抗体力価を発現した。得られたlog2力価を以下の表8に示す。分かるように、各コンジュゲート化マイコトキシンに対して抗体を高レベルで上昇させることができた。これは、DON誘導性マイコトキシン症について上に示したように、ワクチンが対応するマイコトキシン症に対して有効に使用され得ることを裏付けている。
【0059】
表8 IgG力価
【表8】
[実施例6]
ニワトリにおけるZEAコンジュゲートに対する血清学的応答
目的
この実験の目的は、ワクチン中のコンジュゲート化ZEAの使用がニワトリにおいてゼアラレノンに対する抗体を誘導できるかどうかを評価することであった。
【0060】
研究デザイン
このために、キーホールリンペットヘモシアニン(ZEA-KLH)にコンジュゲートしたゼアラレノンを含むワクチンを実施例5に沿って使用した。実施例5で使用したのと同じ鉱油を使用し、及び代替として非鉱油の同等のエマルジョン中で、両方とも最終濃度50μg/mlでコンジュゲートを油エマルジョンアジュバントと混合した。
【0061】
15羽のニワトリの群を研究に使用した。5匹の動物の3つの群を使用した。群1は陰性対照として使用し、PBS溶液を投与し、群2には鉱油含有アジュバントに混合したZEA-KLHをワクチン接種し、群3には非鉱油含有アジュバントをワクチン接種した。ニワトリに、T=8及びT=22で0.5mlのワクチンを筋肉内ワクチン接種した(馴化のためにトリをT=0で試験に含めた)。
【0062】
結果
全てのニワトリは、実験開始時にZEAに対する力価について血清学的に陰性であり、全てのワクチン接種群は抗体力価を発現した。得られたlog2力価を以下の表9に示す。見て分かるように、両方の群において、コンジュゲート化ゼアラレノンに対して抗体を高レベルで上昇させることができた。これは、アジュバントの種類は、それ自体で十分な免疫応答を上昇させるために必須ではないという共通の理解を支持する。
【0063】
表9 ニワトリにおけるZEAに対する抗体価
【表9】
[実施例7]
ブタにおけるZEAチャレンジに対する保護
目的
この実験の目的は、ワクチン中のコンジュゲート化ZEAの使用がブタのゼアラレノンチャレンジに対する保護を誘導し得るか否かを評価することであった。
【0064】
研究デザイン
このために、実施例6に記載されるように、2つの異なるアジュバント中のキーホールリンペットヘモシアニン(ZEA-KLH)にコンジュゲートされたゼアラレノンを含む同じワクチンを使用し、一方は鉱油をベースとし、他方は非鉱油をベースとした。この試験では、24匹のブタの群を使用した。群1の8匹の子ブタにZEA-KLHをワクチン接種したが、第1の亜群の4匹の動物は鉱油含有アジュバントに基づくワクチンを受け、第2の亜群は代替ワクチンを受けた。両ワクチンを50μg/mlの濃度で2mlの量で筋肉内投与した。動物に7~12日齢でプライムワクチン接種し(T=0)、21~26日齢でブースターワクチン接種した(T=14)。群2はワクチン接種しなかったが、ゼアラレノンでチャレンジし、陽性対照とした。群3はワクチン接種せず、チャレンジもせず、陰性対照とした。(群1及び2)の16匹のチャレンジされた子ブタは、液体製剤中、1.15mg/日に相当する4週間にわたって毎日、ZEA1.15mg/kg飼料をおよそ5.5週齢で受けた。ブタは、最初の週に16mlの流体中0.46mgのZEA/日、第2週に32mlの流体中0.96mg/日、第3週に45mlの流体中1.39mg/日及び第4週に60mlの流体中1.79mgのZEA/日を受けた。抗体力価を経時的にモニタリングした。研究の最後に、肝臓及び腎臓を評価した。
【0065】
同様の研究では、(雄子ブタの)生殖器官の皮膚をモニタリングし、非チャレンジ対照と比較した。チャレンジ用量は、液体製剤中の0.78mg/日に相当する1.625mg/kg/日であった。ブタは、最初の週に16mlの流体中0.28mgのZEA/日、第2週に32mlの流体中0.58mg/日、第3週に45mlの流体中0.84mg/日及び第4週に60mlの流体中1.43mgのZEA/日を受けた。
【0066】
結果
全ての子ブタは、実験開始時にZEAに対して力価について血清学的に陰性であった。チャレンジ中、ZEA-KLHのワクチン接種は、試験中の6つの時点でのIgG値を示す表10に示すように、ZEAに対する抗体応答を発現した。
【0067】
表10 ブタのZEAに対するIgG力価
【表10】
全てのワクチン接種動物は、非ワクチン接種チャレンジ動物と比較した場合、チャレンジ中に改善された成長を示し、健康な対照動物と同等以上の成長をもたらし、これは、チャレンジの開始重量と比較した場合の子ブタ当たりの成長の割合を測定することによって決定した。更に、ワクチン接種動物は、肝臓、腎臓及び生殖器を見ると、より良好な健康状態を示した。
【0068】
表11は、チャレンジの開始体重からのチャレンジ中の体重増加%を有する群当たりの動物の割合を示し、更に、特定の器官に対する損傷を有する動物の割合を示す。これは全て、ZEA誘導性マイコトキシン症から動物を保護する方法において、コンジュゲート化ゼアラレノンを首尾よく使用できることを示している。
【0069】
【国際調査報告】