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特表2023-554138マイコトキシン症から保護するためのコンジュゲート化フモニシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】マイコトキシン症から保護するためのコンジュゲート化フモニシン
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20231219BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K31/225
A61P39/02
A61K39/00 G
A61K39/39
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537666
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086938
(87)【国際公開番号】W WO2022136339
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216323.4
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クーイマン,シエツケ
(72)【発明者】
【氏名】セガース,ルード・フィリップ・アントゥーン・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウィトヴリエット,マールテン・ヘンドリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB01
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC06
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C085AA03
4C085AA38
4C085CC21
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA02
4C206KA19
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA42
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA10
4C206ZB09
4C206ZB35
4C206ZC37
4C206ZC61
(57)【要約】
本発明は、FUM誘導性マイコトキシン症から動物を保護するための、特に、FUMの摂取の結果としての1日の平均体重増加の減少、腸損傷、肝臓損傷及び腎臓損傷の減少から保護するための方法における、コンジュゲート化フモニシン(FUM)の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FUM誘導性マイコトキシン症から動物を保護する方法で使用するためのコンジュゲート化フモニシン(FUM)。
【請求項2】
体重増加の減少、腸損傷、肝臓損傷及び腎臓損傷からなる群から選択される、前記FUM誘導性マイコトキシン症の臨床徴候の1つ又は複数から動物を保護するための、請求項1に記載の方法における使用のためのコンジュゲート化フモニシン(FUM)。
【請求項3】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、前記動物に全身投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項4】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、筋肉内、経口及び/又は皮内に投与されることを特徴とする、請求項3に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項5】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、6週齢以下で前記動物に投与されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項6】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、4週齢以下で前記動物に投与されることを特徴とする、請求項5に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項7】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、1~3週齢で前記動物に投与されることを特徴とする、請求項6に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項8】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、前記動物に少なくとも2回投与されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項9】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、前記コンジュゲート化FUMに加えてアジュバントを含む組成物中で使用されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項10】
前記方法において、前記アジュバントが水及び油のエマルジョンであることを特徴とする、請求項8に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項11】
前記方法において、前記アジュバントが油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンであることを特徴とする、請求項9に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項12】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、10,000Daを超える分子質量を有するタンパク質にコンジュゲート化されたFUMを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項13】
前記方法において、前記コンジュゲート化FUMが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はオボアルブミン(OVA)にコンジュゲートしたFUMを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項14】
前記動物がブタ又はニワトリであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法で使用するためのコンジュゲート化FUM。
【請求項15】
コンジュゲート化FUM、アジュバント及び薬学的に許容される担体を含む、ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、マイコトキシンによって誘導されるマイコトキシン症に対する保護に関する。特に、本発明は、フモニシン(FUM)によって誘導されるマイコトキシン症に対する保護に関する。
【背景技術】
【0002】
フモニシンは、トウモロコシ及びトウモロコシ製品の一般的な汚染物質である真菌フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)及び近縁のフザリウム・プラリフェラタム(Fusarium proliferatum)によって産生されるマイコトキシンである。最近、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、がブドウ、ワイン、及び乾燥ブドウ果実中でフモニシンを産生するが、低濃度でしか産生しないことが分かった。「フモニシン」という用語は、実際には4つの群(A、B、C及びP)に含まれる少なくとも15の非常に密接に関連したマイコトキシンの群を表し、そのうちフモニシンB1(FB1)は動物飼料で最も頻繁に見られ、フモニシン含有量の合計の70%~80%を占め、(フモニシンB2及びB3と共に)その毒性特性のために主要なフモニシンであると思われる。それは、ウマ及びブタの両方におけるブタ肺水腫、ウマ白質脳軟化症及び肝臓損傷の原因として獣医学において最も重要である。フモニシンは、細胞スフィンゴ脂質の主要な長鎖塩基骨格であるスフィンゴシンと構造的に類似しており、スフィンガニン(スフィンゴシン)N-アシルトランスフェラーゼ(セラミドシンターゼ(CerS))の競合的阻害剤であることが実証されている。フモニシンによるこの酵素阻害は、スフィンゴ脂質代謝の破壊をもたらし、スフィンガニン量の高度な増加、スフィンゴシン量のあまり強くない増加をもたらし、動物の血清及び組織中の複雑なスフィンゴ脂質の減少と共に、スフィンガニン対スフィンゴシン比の変化をもたらし、これはほとんどの種においてフモニシン毒性の作用機序として一般に受け入れられている。フモニシン毒性に関連する臨床徴候は、一次標的器官に応じて種間で有意に異なり、飼料中のフモニシンの安全レベルは種間でかなり変動する。フモニシン毒性の診断は、飼料中のフモニシンの検出と共に、罹患動物における特徴的な病変の発見に依存する。汚染された穀物源を除去することを除いて、動物におけるフモニシン毒性のための具体的な処置は記載されていない。軽度の場合、臨床徴候はフモニシンの除去によって解消する。しかしながら、動物が既に神経学的徴候を示しているか、又は呼吸窮迫の証拠を示している場合(特にブタ)、予後は不良である。
【0003】
FUM誘導性マイコトキシン症の予防的処置は、現在、作物でのマイコトキシン産生を減少させるための良好な農業慣行並びにマイコトキシンレベルが一定の限界未満のままであることを確実にするための食品及び飼料商品の制御プログラムに制限されている。
【0004】
真菌は、一般に、器官及び組織の寄生並びにアレルゲン性発現を含む、動物における広範囲の疾患を引き起こす。しかしながら、非食用キノコの摂取による中毒以外に、真菌は、マイコトキシン症と呼ばれる様々な毒性作用を担うマイコトキシン及び有機化学物質を産生し得る。この疾患は、マイコトキシン、食品又は動物飼料を汚染する糸状菌によって産生される薬理学的に活性な化合物への曝露によって引き起こされる。マイコトキシンは、真菌の生理学にとって重要ではない二次代謝産物であり、摂取、吸入又は皮膚接触時に脊椎動物に対して最小濃度で極めて毒性である。約400のマイコトキシンが現在認識されており、類似の生物学的及び構造的特性を有する化学的に関連する分子のファミリーに細分されている。このうち、動物の健康に対する脅威として、10数群が定期的に注目されている。公共の関心及び農業経済的意義が最も高いマイコトキシンの例としては、アフラトキシン(AF)、オクラトキシン(OT)、トリコテセン(T;デオキシニバレノール(DONと略す)を含む)、ゼアラレノン(ZEA)、フモニシン(F)、発振せん性毒素及び麦角アルカロイドが挙げられる。マイコトキシンは、急性及び慢性疾患に関連しており、生物学的作用は、主にそれらの化学構造の多様性に応じて変化するが、生物学的、栄養学的及び環境的要因にも関連する。マイコトキシン症の病態生理学は、マイコトキシンと動物細胞における機能性分子及び細胞小器官との相互作用の結果であり、発癌性、遺伝毒性、タンパク質合成の阻害、免疫抑制、皮膚刺激及び他の代謝的撹乱をもたらし得る。感受性動物種では、マイコトキシンは複雑で重複する毒性作用を誘発し得る。マイコトキシン症は伝染性ではなく、免疫系の有意な刺激もない。薬物又は抗生物質による処置は、疾患の経過にほとんど又は全く影響を及ぼさない。今日まで、マイコトキシン症に対抗するためのヒト又は動物ワクチンは利用できない。
【0005】
したがって、成長中の研究体は、特定の真菌疾患の予防において、真菌症、すなわち毒素の代わりに真菌自体による感染症に対抗する際の強力なツールとしての、広範な真菌クラスに対する有効性を有するワクチン及び/又は免疫療法の開発に焦点を当てている。真菌症とは対照的に、マイコトキシン症は、毒素産生真菌の関与を必要とせず、生物起源ではあるが、非生物的危険と見なされる。この意味で、マイコトキシン症は自然手段による中毒の例と考えられており、防御戦略は本質的に曝露防止に焦点を当ててきた。ヒト及び動物への曝露は、主に植物ベースの食品におけるマイコトキシンの摂取から起こる。摂取されたマイコトキシンの代謝は、異なる器官又は組織における蓄積をもたらし得、したがって、マイコトキシンは、動物の肉、乳又は卵を介してヒトの食物連鎖に入ることができる(キャリーオーバ)。有毒性真菌は、ヒト及び動物の消費のためにいくつかの種類の作物を汚染するので、マイコトキシンは、あらゆる種類の原材料、商品及び飲料に存在し得る。国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界の食品作物の25%がマイコトキシンによって著しく汚染されていると推定した。現時点において、マイコトキシン症予防のための最良の戦略には、作物でのマイコトキシン産生を減少させるための良好な農業慣行、並びに、マイコトキシンのレベルが所定の閾値を下回ることを確実にするための食品及び飼料商品の制御プログラムが含まれる。これらの戦略は、高いコスト及び可変の有効性を有するマイコトキシンのいくつかの群による商品の汚染の問題を制限し得る。支持療法(例えば、食事、水分補給)を除いて、マイコトキシン曝露に対する治療法はほとんどなく、マイコトキシンに対する解毒剤は一般に利用できないが、AFに曝露された個体では、クロロフィリン、緑茶ポリフェノール及びジチオールチオン(oltipraz)等の一部の保護剤でいくつかの有望な結果が得られている。
【0006】
当技術分野では、主にヒトにおけるマイコトキシン症の予防を対象とした、マイコトキシンの初期吸収又は生物活性化、免疫遮断による動物製品(乳等)におけるそれらの毒性及び/又は分泌を特異的に遮断し得る抗体の産生に基づく戦略を用いて、動物起源の重要な食品の汚染によるマイコトキシン症を予防するための、いくつかのマイコトキシンに対する特定のワクチン接種戦略が提案されている。
【0007】
しかしながら、マイコトキシン症に対する防御のためのワクチンの製造は非常に困難であり、主にマイコトキシン自体が小さな非免疫原性分子であるという事実、及び健康な対象における抗原としての使用を無リスクにしないマイコトキシンに関連する毒性に関する。マイコトキシンは、低分子量であり、通常は非タンパク質性の分子であり、通常は免疫原性ではないが(ハプテン)、タンパク質等の大きな担体分子に結合すると潜在的に免疫応答を誘発し得る。マイコトキシンをタンパク質又はポリペプチド担体にコンジュゲート化し、動物免疫化のための条件を最適化するための方法は、動物及びヒトの消費に向けた産物中のマイコトキシンをスクリーニングするためのイムノアッセイにおいて使用される異なる特異性を有するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を作製する目的で、広く研究されてきた。これらの研究で使用されたカップリングタンパク質には、とりわけ、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、サイログロブリン(TG)及びポリリジンが含まれた。過去数十年の間に、産生された抗体が天然毒素を認識するように元の構造を十分に保持しながらタンパク質に結合することができるマイコトキシン誘導体を開発するための多くの努力がなされてきた。これらの方法により、多くのマイコトキシンに対する抗体が利用可能になり、タンパク質へのコンジュゲーションが抗体産生のための効果的なツールであり得ることが実証されている。したがって、レシピエントにとって安全でありながら保護に到達するためのヒト及び動物ワクチン接種のためのこの戦略の適用は、インビボで放出され得る分子の毒性特性のためにこれまで成功していない。例えば、T-2等の毒素のタンパク質担体へのコンジュゲーションは、その活性形態の遊離毒素の潜在的な放出を伴う不安定な複合体をもたらすことが示されている(Chanh et al,Monoclonal anti-idiotype induces protection against the cytotoxicity of the trichothecene mycotoxin T-2,in J Immunol.1990,144:4721-4728)。細菌毒素の病理学的影響に対する保護状態を与え得るトキソイドワクチンと同様に、マイコトキシンに対するワクチンの開発に対する合理的なアプローチは、抗原性を維持しながら毒性を欠くマイコトキシンの改変形態として定義されるコンジュゲート化された「マイコトキシン」に基づき得る(Giovati L et al,Anaflatoxin B1 as the paradigm of a new class of vaccines based on “Mycotoxoids”,in Ann Vaccines Immunization 2(1):1010,2015)。マイコトキシンの非タンパク質性を考えると、マイコトキシンへの変換のためのアプローチは、化学的誘導体化に依拠すべきである。関連する親マイコトキシンの戦略的位置に特定の基を導入することにより、異なる物理化学的特徴を有する分子が形成され得るが、それでもなお、天然毒素に対して十分に交差反応する抗体を誘導することができる。したがって、マイコトキシンのワクチン接種の一般的な理論的根拠は、細胞標的と比較して天然のマイコトキシンに結合する能力が増強されたマイコトキシンに対する抗体を生成し、毒素を中和し、曝露の場合に疾患発症を予防することに基づくであろう。この戦略の適用可能性は、AF群に属するマイコトキシン(Giovati et al,2015)の場合に実証されているが、他のマイコトキシンのいずれについても実証されていない。更に、予防効果は、ワクチン接種動物自体のマイコトキシン症に対しては実証されておらず、牛乳又はそれから作られる製品を消費する人々をマイコトキシン症から保護するために、乳牛におけるそれらの牛乳へのキャリーオーバに対してのみ実証されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chanh et al,Monoclonal anti-idiotype induces protection against the cytotoxicity of the trichothecene mycotoxin T-2,in J Immunol.1990,144:4721-4728
【非特許文献2】Giovati L et al,Anaflatoxin B1 as the paradigm of a new class of vaccines based on“Mycotoxoids”,in Ann Vaccines Immunization 2(1):1010,2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、動物飼料中の重要なマイコトキシンであるフモニシンによって誘導されるマイコトキシン症から動物を保護する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を満たすために、コンジュゲート化フモニシン(FUM)は、FUM誘導性マイコトキシン症から動物を保護する方法における使用に適していることが見出された。FUMをトキソイドに変換する必要はないことが見出され、コンジュゲート化毒素は、処置された宿主動物にとって安全であるように思われた。また、マイコトキシン等の小分子に対して誘導される免疫応答が、処置後のマイコトキシンの摂取後にマイコトキシン症から動物自体を保護するのに十分に強いことが分かることは驚くべきことであった。動物においてマイコトキシン自体に対する免疫応答を誘導することによる動物のそのような実際の保護は、いかなるマイコトキシンについても当該技術分野において示されていない。
【0011】
定義
マイコトキシン症は、マイコトキシンへの曝露に起因する疾患である。臨床徴候、標的器官及び結果は、マイコトキシンの固有の毒性特徴並びに曝露の量及び長さ、並びに曝露された動物の健康状態に依存する。
【0012】
マイコトキシン症から保護することは、動物におけるマイコトキシンの1つ又は複数の負の生理学的影響、例えば、平均1日体重増加の減少、腸損傷、肝臓損傷及び腎臓損傷を予防又は減少させることを意味する。
【0013】
フモニシンという用語は、実際には、フモニシンB1(FB1)が動物飼料で最も頻繁に見られるA、B、C及びPで示される4つの群に含まれる少なくとも15の密接に関連するマイコトキシンの群を表す。フモニシンは、2つの炭素酸でエステル化されたポリヒドロキシルアルキルアミンであり、遊離ヒドロキシル基の存在及び位置によって異なる。A系列のフモニシンはアミノ基上でアセチル化されるが、B系列は遊離アミンを提示する。フモニシンB1(CAS番号116355-83-0)の化学構造は、以下に示す通りである。
【化1】
他のフモニシンは、CAS番号116355-84-1、1422359-85-0、136379-60-7等を使用して得ることができる。主なフモニシン産生種は、フザリウム・バーチリオイデス(Fusarium verticillioides)、フザリウム・プラリフェラタム(Fusarium proliferatum)、フザリウム・フジクロイ(Fusarium fujikuroi)、フザリウム・グロボスム(Fusarium globosum)、フザリウム・ニガマイ(Fusarium nygamai)及びフザリウム・亜グルチンナス(Fusarium subglutinans)であり、全てギベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi)種複合体に含まれる。最近の研究は、A.ニガー(A.niger)及びA.ウェルウィチア(A.welwitschiae)のいくつかの株、並びにフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)及びアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)もフモニシンを産生することができることを示している。
【0014】
コンジュゲート化分子は、共有結合を介して免疫原性化合物が結合している分子である。典型的には、免疫原性化合物は、KLH、BSA又はOVA等の大きなタンパク質である。
【0015】
アジュバントは、非特異的免疫刺激剤である。原則として、免疫学的事象のカスケードにおける特定のプロセスを支持又は増幅することができ、最終的により良好な免疫学的応答(すなわち、抗原、特にリンパ球によって媒介され、典型的には特異的抗体又は以前に感作されたリンパ球による抗原の認識を含むものに対する統合された身体的応答)をもたらすことができる各物質は、アジュバントとして定義することができる。アジュバントは、一般に、当該特定のプロセスが起こるために必要とされず、単に当該プロセスを支持又は増幅する。アジュバントは、一般に、それらが誘導する免疫学的事象に従って分類することができる。とりわけ、ISCOM(免疫刺激複合体)、サポニン(又はその画分及び誘導体、例えばQuilA)、水酸化アルミニウム、リポソーム、コクリエート、ポリ乳酸/グリコール酸を含む第1のクラスは、APC(抗原提示細胞)による抗原の取込み、輸送及び提示を促進する。とりわけ、油エマルジョン(W/O、O/W、W/O/W又はO/W/Oのいずれか)、ゲル、ポリマーマイクロスフェア(Carbopol)、非イオン性ブロックコポリマー、及びおそらく水酸化アルミニウムも含む第2のクラスは、デポー効果を提供する。とりわけ、CpGリッチモチーフ、モノホスホリルリピドA、マイコバクテリア(ムラミルジペプチド)、酵母抽出物、コレラ毒素を含む第3のクラスは、シグナル0として定義される、保存された微生物構造、いわゆる病原体関連微生物パターン(PAMP)の認識に基づく。とりわけ、油エマルジョン界面活性剤、水酸化アルミニウム、低酸素を含む第4のクラスは、免疫系の危険と無害(自己及び非自己と同じである必要はない)との識別能力を刺激することに基づく。とりわけ、サイトカインを含む第5のクラスは、APC上の共刺激分子、シグナル2の上方制御に基づく。
【0016】
ワクチンは、本発明の意味において、動物への適用に適した構成であり、免疫学的有効量の1つ又は複数の抗原を含み(すなわち、典型的には薬学的に許容される担体(すなわち、生体適合性培地、すなわち、投与後に対象動物において有意な有害反応を誘発せず、ワクチンの投与後に宿主動物の免疫系に抗原を提示することができる培地)、例えば水及び/又は任意の他の生体適合性溶媒を含有する液体、又は凍結乾燥ワクチンを得るために一般的に使用される固体担体と組み合わせられ(糖及び/又はタンパク質に基づく)、疾患誘導薬剤によるチャレンジの負の効果を少なくとも低減するのに十分な標的動物の免疫系を刺激することができる)、免疫刺激剤(アジュバント)が含まれていてもよく、動物への投与時に疾患又は障害を治療するための免疫応答を誘導する、すなわち疾患又は障害の予防、改善又は治癒を助ける。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の更なる実施形態では、コンジュゲート化FUMは動物に全身投与される。例えば、胃腸管(口腔又は肛門腔)又は眼の粘膜組織を介した局所投与(例えばニワトリを免疫する場合)は、様々な動物において免疫応答を誘導する有効な経路であることが知られているが、全身投与が、FUM誘導性マイコトキシン症から動物を保護するのに十分な免疫応答をもたらすことが見出された。特に、筋肉内、経口及び/又は皮内投与時に効果的な免疫化が得られ得ることが見出された。
【0018】
投与年齢は重要ではないが、動物が相当量のFUMで汚染された飼料を摂取し得る前に投与を行うことが好ましい。したがって、投与時の好ましい年齢は6週以下である。更に好ましいのは、4週齢以下、例えば1~3週齢である。
【0019】
本発明の更に別の実施形態では、コンジュゲート化FUMは動物に少なくとも2回投与される。多くの動物(特に、ブタ、ニワトリ、反芻動物)は一般に、免疫原性組成物の1回の注射のみによる免疫化に対して感受性であるが、FUMに対する経済的に実行可能な保護のためには2回の注射が好ましいと考えられる。これは、実際には、天然に存在するFUMが免疫原性ではないという単純な理由で、動物の免疫系がFUMへの天然の曝露によって抗FUM抗体を産生するように誘発されないからである。したがって、動物の免疫系は、コンジュゲート化FUMの投与に完全に依存する。コンジュゲート化FUMの2回のショット間の時間は、1週間~1~2年の間の任意の時間であり得る。若齢動物の場合、例えば1~3週齢でのプライム免疫化とそれに続く1~4週間後、典型的には1~3週間後、例えば2週間後のブースター投与の計画で十分であると考えられる。より高齢の動物は、動物のための他の商業的に適用される免疫化レジメンから知られているように、数ヶ月毎(例えば、最後の投与の4、5、6ヶ月後)、又は毎年若しくは半年毎のブースター投与を必要とする場合がある。
【0020】
更に別の実施形態では、コンジュゲート化FUMは、コンジュゲート化FUMに加えてアジュバントを含む組成物中で使用される。コンジュゲート自体が免疫応答を誘導して所定のレベルの保護を得ることができない場合、アジュバントを使用することができる。KLH又はBSA等の追加のアジュバントなしで免疫系を十分に刺激することができるコンジュゲート分子が知られているが、追加のアジュバントを使用することが有利であり得る。これにより、ブースター投与の必要性がなくなり得るか、又はその投与間隔が長くなり得る。全ては、特定の状況で必要とされる保護のレベルに依存する。コンジュゲート化FUMを免疫原として使用した場合に、FUMに対する良好な免疫応答を誘導することが可能であることが示されたアジュバントの種類は、水及び油のエマルジョン、例えば油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョンである。前者は一般に家禽に使用され、後者は一般にブタ及び反芻動物等のアジュバント誘発部位反応をより起こしやすい動物に使用される。
【0021】
また別の実施形態では、コンジュゲート化FUMは、10,000Daを超える分子質量を有するタンパク質にコンジュゲートされたFUMを含む。そのようなタンパク質、特にキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びオボアルブミン(OVA)は、動物、特にブタ及びニワトリにおいて適切な免疫応答を誘導することができることが分かっている。タンパク質の実用的な上限は、100MDaであり得る。
【0022】
マイコトキシン症に対する保護に関して、特に、本発明を使用すると、動物は、平均1日体重増加の減少、肺水腫、肝臓、心臓及び腎臓の損傷、したがって、FUMによって誘発されるマイコトキシン症のこれらの徴候の1つ又は複数から保護されると考えられることが見出された。
【0023】
ここで、以下の実施例を用いて本発明を更に説明する。
【0024】
[実施例]
第1の一連の実験(実施例1~4を参照のこと)において、マイコトキシンに対する活性な免疫応答が、コンジュゲート化マイコトキシンを使用して誘発され得るかどうか、及び、誘発され得るならば、ワクチン接種動物を、その摂取後にこのマイコトキシンによって誘発される障害から保護することができるかどうかを評価した。後者については、DONによるチャレンジのためのブタモデルを使用した。その後(実施例5)、ワクチンにおけるコンジュゲート化FUMの使用が、ワクチン接種動物においてフモニシンに対する抗体を誘導し得るかどうかを評価した。
【0025】
[実施例1]
コンジュゲート化DONを用いた免疫チャレンジ実験
目的
この研究の目的は、DON摂取によるマイコトキシン症から動物を保護するためのコンジュゲート化デオキシニバレノールの有効性を評価することであった。これを調べるために、ブタを毒性DONでチャレンジする前にDON-KLHで2回免疫した。異なる免疫化経路を使用して、投与経路の影響を研究した。
【0026】
研究デザイン
8匹の雌ブタに由来する40匹の1週齢ブタを5つの群に分けて試験に使用した。群1~3の24匹の子ブタを1週齢及び3週齢で2回免疫した。群1は、両年齢で筋肉内(IM)免疫化された。群2は、1週齢でIM注射を受け、3週齢で経口ブーストを受けた。群3は皮内(ID)で2回免疫した。5 1/2週齢の群1~3を、DONを液体中で経口投与して4週間チャレンジした。群4は免疫化しなかったが、群1~群3について記載したようにDONでのみチャレンジした。群5は対照とし、5.5週齢から4週間で対照液のみを投与した。
【0027】
液体製剤中のDON濃度は、5.4mg/kg飼料の量に相当した。これは、1日当たり2.5mgのDONの平均量に相当する。4週間のチャレンジ後、全ての動物を、肝臓、腎臓及び胃に特別な注意を払いつつ死後調査した。更に、血液試料採取は、群5を除いて、研究の0、34、41、49、55、64日目(安楽死後)に行われ、群5の血液試料は、0、34、49日目、及び安楽死直後にのみ採取された。
【0028】
試験項目
3つの異なる免疫原性組成物、すなわちIM免疫化に使用した注射用水中油型エマルジョン(X-solve50、MSD AH、Boxmeer)中に50μg/mlのDON-KLHを含む試験項目1;経口免疫化のために使用された油中水型エマルジョン(GNE、MSDAH、Boxmeer)中に50μg/mlのDON-KLHを含む試験項目2及びID免疫化のための注射用水中油型エマルジョン(X-solve50)中に500μg/mlのDON-KLHを含む試験項目3を製剤化した。
【0029】
チャレンジデオキシニバレノール(Fermentek,Israelから入手)を、100mg/mlの最終濃度で100%メタノールに希釈し、<-15℃で保存した。使用前に、DONを更に希釈し、投与のための処置において供給した。
【0030】
組み入れ基準
健康な動物のみを使用した。不健康な動物を除外するために、研究開始前に、全ての動物を、それらの一般的な身体的外観及び臨床的異常又は疾患の非存在について調べた。群ごとに、異なる雌ブタの子ブタを使用した。毎日の実施において、全ての動物は、DON汚染飼料の摂取によってDONに事前に曝露された場合であっても免疫化される。DON自体は免疫応答を引き起こさないので、DONに事前に曝露された動物とDONに関してナイーブな動物との間に原理的な違いはないと考えられる。
【0031】
結果
いずれの動物も、DON-KLHによる免疫化に関連する悪影響を有していなかった。したがって、組成物は安全であるように見えた。
【0032】
全てのブタは、実験開始時にDONに対する力価について血清学的に陰性であったが、チャレンジ中に、筋肉内免疫群(群1)及び皮内免疫群(群3)は、天然のDON-BSAを被覆抗原として用いたELISAによって測定されるように、DONに対する抗体応答を発現した。表1は、試験中の4つの時点での平均IgG値をそれらのSD値と共に示す。筋肉内免疫化及び皮内免疫化の両方が、DONに対して有意な力価を誘導した。
【0033】
表1 IgG力価
【表1】
表2に示すように、有意な抗DON IgG力価の増加を示さなかった群2の動物を含む全ての免疫化動物は、チャレンジ動物と比較して最初の15日間で有意に高い体重増加を示した。チャレンジ動物に関しては、全ての動物が試験の過程でより多くの体重を増加させた。
【0034】
表2 体重分析
【表2】
小腸の状態(空腸内の絨毛/陰窩比によって決定される)もモニタリングした。表3には、絨毛/陰窩比が示されている。図から分かるように、群3の動物は、健康な対照(群5)に匹敵する平均絨毛陰窩/陰窩比を有し、免疫なしのチャレンジ群(群4)は、はるかに低い(統計学的に有意な)絨毛陰窩比を有した。更に、群1及び群2は、非免疫化チャレンジ対照群と比較して有意に良好な(すなわちより高い)絨毛/陰窩比を有していた。これは、免疫化がDONによって開始される腸の損傷から保護することを示している。
【0035】
表3 絨毛/陰窩比
【表3】
他の器官、より具体的には肝臓、腎臓及び胃の全身状態もモニタリングした。3つの試験群(群1~3)は全て、非免疫チャレンジ対照群(群4)よりも健康状態が良好であることが観察された。表4には、一般的な健康データの概要が示されている。胃潰瘍の程度は、-(潰瘍形成の証拠なし)から++(多発性潰瘍)まで報告されている。胃の炎症の程度は、-(炎症の証拠なし)から++/-(胃の炎症の開始)まで報告される。
【0036】
表4 一般健康データ
【表4】
[実施例2]
DONレベルに対する免疫化の効果
目的
この研究の目的は、DON摂取の毒物動態学に対するDONコンジュゲートによる免疫化の効果を評価することであった。これを調べるために、ブタに毒性DONを与える前にDON-KLHで2回免疫した。
【0037】
研究デザイン
10匹の3週齢ブタを試験に使用し、それぞれ5匹のブタからなる2つの群に分けた。群1のブタをDON-KLH(試験項目1;実施例1)で3週齢及び6週齢で2回IM免疫化した。群2は対照としての役割を果たし、対照流体のみを受けた。11週齢で、動物にそれぞれ、(毎日の飼料摂取量に基づいて)1mg/kg飼料の汚染レベルに類似する0.05mg/kgの用量でボーラスによってDON(Fermentek,Israel)を投与した。DON投与前並びにDON投与の0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、6、8及び12時間後にブタの血液試料をジャッキに採取した。
【0038】
組み入れ基準
健康な動物のみを使用した。
【0039】
血漿中のDONの分析
未結合DONの血漿分析は、Xevo(登録商標)TQ-SMS装置(Waters,Zellik,Belgium)に連結されたAcquity(登録商標)UPLCシステムで、検証済みLC-MS/MS法を使用して行った。この方法を用いたブタ血漿中のDONの定量下限は0.1ng/mlである。
【0040】
毒物動態学的分析
DONの血漿濃度-時間プロファイルの毒物動態学的モデリングを非コンパートメント分析(Phoenix,Pharsight Corporation,USA)によって行った。以下のパラメータを計算した:時間0から無限までの曲線下面積(AUC0→∞)、最大血漿濃度(Cmax)、及び最大血漿濃度の時間(tmax)。
【0041】
結果
毒物動態学の結果を下の表5に示す。分かるように、DON-KLHによる免疫化は、全ての毒物動態学パラメータを減少させる。毒性作用の活動を担うのが未結合DONであるため、DON-KLHによる免疫化は、動物の血液中の未結合DONの量を減少させることによってDONによって引き起こされる毒性作用を減少させると結論付けることができる。
【0042】
表5 未結合DONの毒物動態学パラメータ
【表5】
[実施例3]
様々なDONコンジュゲートに対する血清学的応答
目的
この研究の目的は、異なるコンジュゲート化デオキシニバレノール生成物の有効性を評価することであった。
【0043】
研究デザイン
18匹の3週齢のブタを試験に使用し、それぞれ6匹のブタからなる3つの群に分けた。群1のブタを、(実施例1の試験項目1を使用して)DON-KLHで3週齢及び5週齢で2回筋肉内免疫化した。群2は、DON-OVAに対応して免疫した。群3を陰性対照とした。全ての動物を、3週齢、5週齢及び8週齢で抗DON IgG応答についてチェックした。
【0044】
結果
血清学的結果を、log2抗体価の表において以下に示す。
【0045】
表6 抗DON IgG応答
【表6】
両方のコンジュゲートが抗DON IgG応答を上昇させるのに適していると思われる。また、1回のショットのみで応答が誘導されるように思われる。
【0046】
[実施例4]
ニワトリにおける血清学的応答
目的
この研究の目的は、ニワトリにおけるDON-KLHの血清学的応答を評価することであった。
【0047】
研究デザイン
この研究のために、30羽の4週齢のニワトリを使用し、それぞれ10羽のニワトリの3つの群に分けた。ニワトリをDON-KLHで筋肉内免疫した。群1を対照として使用し、PBSのみを投与した。群2はアジュバントなしでDON-KLHを受け、群3はGNEアジュバントに製剤化されたDON-KLHを受けた(MSD Animal Health,Boxmeerから入手可能)。0日目に、0.5mlワクチンを用いて右脚にプライム免疫処置を行った。14日目に、ニワトリを左脚に同等のブースター免疫化した。
【0048】
採血は、0日目及び14日目、並びに35、56、70及び84日目に行った。DONに対するIgYの測定のために血清を単離した。0日目及び14日目に、免疫化の直前に血液試料を単離した。
【0049】
結果
血清学的結果をlog2抗体力価で表7に示す。PBSバックグラウンドはデータから差し引かれている。
【0050】
表7 抗DON IgY応答
【表7】
分かるように、コンジュゲート化DONはニワトリにおいて抗DON力価も誘導する。GNEアジュバントは、応答を実質的に増加させるが、正味の応答自体を得るためには本質的ではないようである。
【0051】
[実施例5]
ブタにおけるFUMコンジュゲートに対する血清学的応答
目的
この実験の目的は、ワクチンにおけるコンジュゲート化FUMの使用が、ワクチン接種動物においてフモニシンに対する抗体を誘導し得るか否かを評価することであった。
【0052】
研究デザイン
このために、キーホールリンペットヘモシアニン(FUM-KLH)にコンジュゲートしたフモニシンB1を含むワクチンを使用した。コンジュゲートを、筋肉内(IM)投与のために50μg/ml、又は皮内(ID)投与のために500μg/mlの最終濃度で水中油型エマルジョンアジュバント(XSolve50、MSD Animal Health,The Netherlands)と混合した。
【0053】
この実験では、上記のDONワクチンも陽性対照として使用した。これの次に、他のコンジュゲート化マイコトキシンを含むワクチンを製剤化し、使用した。特に、キーホールリンペットヘモシアニン(ZEA-KLH)にコンジュゲートしたゼアラレノン(ZEA)及びKLH(T2-KLH)にコンジュゲートしたT-2マイコトキシン(T2-毒素)をワクチンに製剤化した。コンジュゲートを、それぞれZEA-KLH及びDON-KLHについては筋肉内(IM)投与のための50μg/ml又は皮内(ID)投与のための500μg/ml、及びT2-KLHについては115(IM)又は1150μg/ml(ID)の最終濃度で、本明細書中上で言及されるような水中油型エマルジョンアジュバント(XSolve)と混合した。
【0054】
実験では、5匹の動物(ブタ)の6つの群を3週齢でワクチン接種に使用し、群1には0.2mlのFUM-KLHを皮内に2回投与し、群2には0.2mlのZEA-KLHを2回投与し、群3には2.0mlのX-Solve50のDON-KLH IMを2回ワクチン接種し、群4には2.0mlのFUM-KLH IMを2回投与し、群5には2.0mlのZEA-KLHを2回IM投与し、最後に群6には2.0mlのT2-KLH IMを2回ワクチン接種した。3匹の子ブタからなる対照群があり、この対照群はワクチン接種を受けなかった。全てのプライムは3週齢であり、ブースターは5週齢であった。動物を試験開始後14週間モニタリングした。
【0055】
結果
全てのブタは、実験開始時にFUM、ZEA、T2及びDONに対する力価について血清学的に陰性であり、全てのワクチン接種群は抗体力価を発現した。得られたlog2力価を以下の表8に示す。
【0056】
表8 IgG力価
【表8】
分かるように、各コンジュゲート化マイコトキシンに対して抗体を高レベルで上昇させることができた。これは、DON誘導性マイコトキシン症について上に示したように、ワクチンが対応するマイコトキシン症に対して有効に使用され得ることを裏付けている。
【0057】
[実施例6]
ニワトリにおけるFUMコンジュゲートに対する血清学的応答
目的
この実験の目的は、ワクチンにおけるコンジュゲート化FUMの使用が、ニワトリにおいてフモニシンに対する抗体を誘導し得るか否かを評価することであった。
【0058】
研究デザイン
このために、キーホールリンペットヘモシアニン(FUM-KLH)にコンジュゲートしたフモニシンB1を含むワクチンを実施例5に沿って使用した。実施例5で使用したのと同じ鉱油を使用し、及び代替として非鉱油の同等のエマルジョン中で、両方とも最終濃度50μg/mlでコンジュゲートを油エマルジョンアジュバントと混合した。
【0059】
15羽のニワトリの群を研究に使用した。5匹の動物の3つの群を使用した。群1は陰性対照として使用し、PBS溶液を投与し、群2には鉱油含有アジュバントに混合したFUM-KLHをワクチン接種し、群3には非鉱油含有アジュバントをワクチン接種した。ニワトリに、T=8及びT=22で0.5mlのワクチンを筋肉内ワクチン接種した(馴化のためにトリをT=0で試験に含めた)。
【0060】
結果
全てのニワトリは、実験開始時にFUMに対する力価について血清学的に陰性であり、全てのワクチン接種群は抗体力価を発現した。得られたlog2力価を以下の表9に示す。見て分かるように、両方の群において、コンジュゲート化フモニシンに対して抗体を高レベルで上昇させることができた。これは、アジュバントの種類は、それ自体で十分な免疫応答を上昇させるために必須ではないという共通の理解を支持する。
【0061】
表9 ニワトリにおけるFUMに対する抗体価
【表9】
[実施例7]
ブタにおけるFUMチャレンジに対する保護
目的
この実験の目的は、ワクチン中のコンジュゲート化FUMの使用がブタのフモニシンチャレンジに対する保護を誘導し得るか否かを評価することであった。
【0062】
研究デザイン
このために、実施例6に記載されるように、2つの異なるアジュバント中のキーホールリンペットヘモシアニン(FUM-KLH)にコンジュゲートされたフモニシンB1を含む同じワクチンを使用し、一方は鉱油をベースとし、他方は非鉱油をベースとした。この試験では、24匹のブタの群を使用した。群1の8匹の子ブタにFUM-KLHをワクチン接種したが、第1の亜群の4匹の動物は鉱油含有アジュバントに基づくワクチンを受け、第2の亜群は代替ワクチンを受けた。両ワクチンを50μg/mlの濃度で2mlの量で筋肉内投与した。動物に7~12日齢でプライムワクチン接種し(T=0)、21~26日齢でブースターワクチン接種した(T=14)。群2はワクチン接種しなかったが、フモニシンB1でチャレンジし、陽性対照とした。群3はワクチン接種せず、チャレンジもせず、陰性対照とした。(群1及び2)の16匹のチャレンジされた子ブタは、およそ5.5週齢で、5.99mg/日に相当する4週間連続して毎日、13mg/kgのFUMの飼料を受けた。FUMを液体製剤で投与した:子ブタは、最初の週に16mlの流体中2.41mgのFUM/日、第2週に32mlの流体中5.0mg/日、第3週に45mlの流体中7.2mg/日及び第4週に60mlの流体中9.3mgのFUM/日を受けた。抗体力価を経時的にモニタリングした。研究の最後に、肝臓、肺、腎臓及び腸を評価した。
【0063】
結果
全ての子ブタは、実験開始時にFUMに対して力価について血清学的に陰性であった。チャレンジ中、FUM-KLHのワクチン接種は、試験中の6つの時点でのIgG値を示す表10に示すように、FUMに対する抗体応答を発現した。
【0064】
表10 ブタのFUMに対するIgG力価
【表10】
全てのワクチン接種動物は、非ワクチン接種チャレンジ動物と比較した場合、チャレンジ中に改善された成長を示し、健康な対照動物と同等以上の成長をもたらし、これは、チャレンジの開始重量と比較した場合の子ブタ当たりの成長の割合を測定することによって決定した。更に、ワクチン接種動物は、肝臓、腎臓及び腸を見ると、より良好な健康状態を示した。
【0065】
表11は、チャレンジの開始体重からのチャレンジ中の体重増加%を有する群当たりの動物の割合を示し、更に、特定の器官に対する損傷を有する動物の割合を示す。これは全て、FUM誘導性マイコトキシン症から動物を保護する方法において、コンジュゲート化フモニシンを首尾よく使用できることを示している。
【0066】
表11 子ブタの体重及び器官スコア
【表11】
【国際調査報告】