(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 29/02 20060101AFI20231219BHJP
B32B 23/02 20060101ALI20231219BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20231219BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B29/02
B32B23/02
D21H11/18
D21H15/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537935
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 IB2021061694
(87)【国際公開番号】W WO2022137016
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】カンクネン, ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ニーベリ ゼタールンド, アンナ
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AJ04D
4F100AK12B
4F100AK12C
4F100AK21D
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AL01B
4F100AL01C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00B
4F100CB00C
4F100DD07D
4F100DG10A
4F100EJ19D
4F100JA05B
4F100JA05C
4F100JA13D
4F100JD02D
4F100JK14D
4F100JM01B
4F100JM01C
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG68
4L055AG71
4L055AG89
4L055AG97
4L055AH37
4L055BE02
4L055BE08
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA18
4L055EA20
4L055EA32
(57)【要約】
本発明は、紙または板紙基材およびバリアフィルムを含む積層体の形態の包装材料に関する。バリアフィルムは、ミクロフィブリル化セルロースに基づいている。積層体は紙または板紙基材を含み、その基材は第1の接着剤層と接触しており、第1の接着剤層は第2の接着剤層と接触しており、第2の接着剤層はバリアフィルムと接触している。本発明はまた、そのような積層体を製造する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または板紙基材を含む積層体であって、その基材は第1の接着剤層と接触しており、第1の接着剤層は第2の接着剤層と接触しており、第2の接着剤層はバリアフィルムと接触しており、前記バリアフィルムは少なくとも50重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む、積層体。
【請求項2】
バリアフィルムが、バリアフィルムの全乾燥重量に基づき、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
バリアフィルムがポリビニルアルコール(PVOH)をさらに含む、請求項1から2のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項4】
バリアフィルムの坪量が15~80gsmの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
バリアフィルムの坪量が15~40gsmの範囲である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
バリアフィルムが、接着剤を適用する前に、ISO5636/6に準拠して決定された、少なくとも2000秒/100mlのガーリーヒル気孔率値を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
バリアフィルムが、接着剤を適用する前に、1.5μmより大きいPPS10の粗さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
バリアフィルムが、積層体に使用される前にカレンダーまたはスーパーカレンダに供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
積層体のKIT値が少なくとも11である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
第1の接着剤が、ターポリマー系接着剤またはスチレン/アクリレートエマルジョンであり、任意選択でコバインダーを含み、前記接着剤が-20°と60℃の間の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
第2の接着剤が、ターポリマー系接着剤またはスチレン/アクリレートエマルジョンであり、任意選択でコバインダーを含み、前記接着剤が30℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
基材がSBSボードである、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
積層体を製造する方法であって、
a)紙または板紙基材を提供する工程;
b)第1の接着剤を紙または板紙基材に適用する工程;
c)少なくとも50重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むバリアフィルムを提供する工程;
d)第2の接着剤をバリアフィルムに適用する工程;
e)第1の接着剤層が第2の接着剤層と接触するように、工程b)およびd)の生成物を一緒に積層する工程
を含む、方法。
【請求項14】
印刷機で少なくとも部分的に実施される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙または板紙基材およびバリアフィルムを含む積層体の形態の包装材料に関する。バリアフィルムは、ミクロフィブリル化セルロースに基づいている。積層体は、優れたグリースバリア性、良好なプライ結合強度を有し、再生可能な材料を高い割合で含有している。本発明はまた、そのような積層体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙および板紙をプラスチックでコーティングすることは、板紙の機械的性質を例えばポリマーフィルムのバリア性およびシーリング特性と組み合わせるために、よく使用される。しかしながら、多くの場合、ポリマー被覆した板紙のグリースバリア性は、未だ不十分であるか、または再生不可能なポリマー材料の使用を必要とする。
【0003】
同時に良好な再パルプ化性をもたらすバリアコーティングを有する包装材料を提供することに関する上記の問題を克服するための1つの代替案は、セルロース誘導体またはポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの使用である。これらの欠点は、通常、低い固体含有量および高いコート重量が必要とされることである。このタイプのコーティングの概念は、乾燥によって誘導される応力および寸法安定性の問題に関するリスクも増大させる。より最近になって、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)フィルムが開発され、その中で解繊されたセルロースフィブリルは、例えば水に懸濁され、その後再組織化および共に再結合して、優れたバリア性をもつ密度の高いフィルムを形成する。残念ながら、そのようなMFCフィルムのバリア性は、高湿度および水との接触で低下する傾向がある。
【0004】
紙または板紙基材およびMFCフィルムを含む積層体を調製する場合、特に接着剤の量が少ないと、基材とMFCフィルムの間に十分な接着力を得ることが不可欠であるが、難しい。さらに、積層体は実質的にカールせず、高い相対湿度でも高い寸法安定性を有することが重要である。
【0005】
したがって、再生不可能な材料をできるだけ使用しないで、積層体の形態の包装材料にグリースバリア性を付与するための改善された解決策の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
優れたグリースバリア性をもつ積層体の形態の包装材料は、高温を使用せずに、非常に高い割合で再生可能な材料を使用して生成できることが驚くべきことに見出された。驚くべきことに、積層体の優れた曲げ剛性が得られたことも見出された。したがって、本発明の目的は、優れたグリースバリア性および曲げ剛性をもつ改善された積層体を提供することである。加えて、本質的にカールしない積層体を得られることが見出された(例えばISO11556:2005標準に基づいて測定可能)。本発明の特定の利点は、グリースバリア性を有する面が実質的にプラスチックを含まず、食品と接触する使用に適している積層体を得られることである。
【0007】
本発明はまた、積層体を調製する方法であって、
a)紙または板紙基材を用意する工程;
b)第1の接着剤を紙または板紙基材に適用する工程;
c)少なくとも50重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むバリアフィルムを付与する工程;
d)第2の接着剤をバリアフィルムに適用する工程;
e)第1の接着剤層が第2の接着剤層と接触するように、工程b)およびd)の生成物を一緒に積層する工程
を含む、方法を対象とする。
【0008】
工程c)およびd)は別々に実施することができ、その結果、バリアフィルムは第2の接着剤が個別に付与され、次いで工程e)が実施される。
【0009】
本発明は紙または板紙基材を含む積層体であって、その基材は第1の接着剤層と接触しており、第1の接着剤層は第2の接着剤層と接触しており、第2の接着剤層はバリアフィルムと接触しており、前記バリアフィルムは少なくとも50重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む、積層体を対象とする。
【0010】
本発明はまた、包装材料としての積層体の使用を対象とする。
【0011】
本発明はまた、積層体を含む包装製品を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、紙という用語は、筆記、描画、または印刷に使用されるか、包装材料として使用される、木材のパルプまたはセルロース繊維を含む他の繊維状物質から薄いシートに製造された材料を意味する。
【0013】
本明細書では、板紙という用語は、箱および他のタイプの包装に使用される、セルロース繊維を含む強く厚い紙または厚紙を意味する。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白または無漂白、被覆または非被覆のいずれかでもよく、種々の厚みで生成することができる。
【0014】
本発明に基づいて基材として使用される紙または板紙は、当技術分野で既知の方法を用いて調製される。板紙は、例えばSBSボード、固体漂白ボード(SBB)、固体無漂白ボード(SUB)、折り畳み箱用板紙(FBB)、段ボールのライナーであってもよい。それはまた、耐油紙、グラシン紙、硫酸紙、または袋用紙などの紙であってもよい。
【0015】
本発明による積層体に使用される紙または板紙基材は、多層を含んでもよい。本発明の一実施形態では、紙または板紙基材は、少なくとも10%の再生材料、例えば少なくとも20%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%の再生材料を含み、これは消費者使用前または使用後の不良品であってもよい。本発明による積層体の利点は、本発明に基づいて基材の再生材料から積層体の他の部分へのインク残留物、例えば鉱油またはインク成分または他の夾雑物などの移行が最小限に抑えられることである。
【0016】
MFCは、紙および板紙の包装材料のためのバリアフィルムに使用される興味深い成分として識別されている。MFCフィルムは、中間温度および湿度の条件、例えば相対湿度50%および23℃で酸素移動速度の低下をもたらすことが見出された。残念ながら、そのようなMFCフィルムのバリア性は、より高い温度および湿度、例えば相対湿度85%および38℃で著しく低下する傾向にあり、フィルムが、グリースバリア性が必要とされる多くの包装用途に適さなくなる。
【0017】
本発明者らは今回、MFCを含む先行技術の積層体のこれらの欠陥は、紙または板紙基材とバリアフィルムとの間に第1の接着剤層および第2の接着剤層を形成することによって改善できることを見出した。
【0018】
本発明に基づいて使用される接着剤は、包装製品として使用する積層体の調製に一般的に使用される接着剤である。接着剤は通常、液体形態で、例えば分散液、エマルジョンまたは溶液として提供される。第1の接着剤、第2の接着剤または両方は、発泡体として提供することもできる。発泡体を使用する場合、発泡体の密度は、好ましくは1.0kg/dm3未満、より好ましくは0.9kg/dm3未満、最も好ましくは0.8kg/dm3未満、例えば0.7kg/dm3未満である。発泡体を使用する利点は、移動した液体の量を低減でき、それによって寸法安定性およびカールの問題のリスクが軽減することである。
【0019】
本発明に基づいて使用される第1の接着剤層は、当技術分野で既知の方法を用いて紙または板紙基材の表面に適用されることが好ましい。それは、紙または板紙基材の生成時に、オンライン工程としてまたは個別に、好ましくは印刷機で適用され得る。それが適用されているとき、第1の接着剤は、好ましくは固体含有量が少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%または少なくとも50重量%である。固体含有量がそのように高い接着剤を使用することにより、基材内に移動および移行する液体の量は、最小限に抑えられ、積層体のカールを避けることができる。第1の接着剤層の量は、1~20gsmの範囲内であり、好ましくは1~10gsmの範囲内である。第1の接着剤の一部として適用される液体(水または溶媒など)の量は、好ましくは10gsm未満、より好ましくは8gsm未満、最も好ましくは6gsm未満である。好ましくは、第1の接着剤層は、基材とよく接着するように選択される。第1の接着剤層は、1種または複数の接着剤から調製され、粘着レベルが高いことが好ましい。2種以上の接着剤が第1の接着剤層に使用されている場合、接着剤は、混合物として、または第1の接着剤層内の1つもしくは複数の下層として提供され得る。第1の接着剤のガラス転移温度は、好ましくは-20°と60℃の間、例えば0℃と40℃の間または0℃と20℃の間の範囲内である。適当な接着剤は、ターポリマー系接着剤、スチレン/アクリレートエマルジョンを含み、デンプン、デキストリンなどのコバインダーを含むことができ、さらにポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコール分散液が含まれる。第1の接着剤は、WVTR化学薬品などの添加剤も含んでよい。WVTR化学薬品は、好ましくはフィルム形成ポリマー、例えばスチレン/アクリレートエマルジョン、PVDC、PVOHまたは変性PVOHポリマー、ワックス、および/または油性エマルジョンである。
【0020】
本発明に基づいて使用される第2の接着剤層は、当技術分野で既知の方法を用いてバリアフィルムの表面に適用することが好ましい。それは、バリアフィルムの生成時に、オンライン工程としてまたは個別に適用することができる。それが適用されているとき、第2の接着剤は、固体含有量が少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%である。固体含有量がそのように高い接着剤を使用することにより、バリアフィルム内に移行する液体の量は、最小限に抑えられ、バリアフィルムの劣化を避けることができる。第2の接着剤層の量は、1~20gsmの範囲内であり、好ましくは1~10gsmの範囲内である。好ましくは、第2の接着剤層内の1種または複数の接着剤は、第1の接着剤層と同じではない。好ましくは、第2の接着剤は、バリアフィルムとよく接着するように選択される。第2の接着剤層は、1種または複数の接着剤から調製される。適切な接着剤は、ターポリマーベースの接着剤、スチレン/アクリレートエマルジョンなどを含み、デンプン、デキストリンなどの共結合剤を含むことができ、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールの分散液も含む。第2の接着剤のガラス転移温度は、好ましくは30℃より高く、好ましくは40℃より高い。第2の接着剤層は、積層の前に任意選択で乾燥、例えばIR乾燥にかけてもよい。2種以上の接着剤が第2の接着剤層に使用されている場合、接着剤は、混合物として、または第1の接着剤層内の1つもしくは複数の下層として提供され得る。第2の接着剤層が2種以上の接着剤を含む場合、バリアフィルムに面している接着剤、または接着剤の下層は、水への耐性が高く、バリアフィルムへの水の取り込みを最小限に抑えることが好ましい。
【0021】
積層は、当技術分野で既知の方法を用いて実施され得る。積層は、例えば印刷機で実施され得、その中で第1の接着剤は、紙または板紙基材に適用されると好ましい。第2の接着剤は、バリアフィルムに適用されると好ましい。続いて、第1および第2の接着剤層の表面が互いに接触し、互いに接着するように、バリアフィルムを紙または板紙基材上に積層して、本発明による積層体を得る。
【0022】
本発明によれば、積層は、30℃と200℃の間の温度、好ましくは30℃と90℃の間の温度(バリア表面上で測定された温度)で実施される。
【0023】
本発明による積層体は、優れたグリースバリア性をもたらす。グリースバリア性は、積層体のバリアフィルム側のKIT値(TAPPI T559)を測定ことによって定量することができる。本発明による積層体は、少なくとも10、例えば11または12のKIT値を有することが好ましい。本発明による積層体は、バリアフィルム側(すなわち基材および第1の接着剤層および第2の接着剤層と反対側を向く側)では、通常光沢が少なく、好ましくは60未満、より好ましくは50未満、さらにより好ましくは40未満、最も好ましくは30未満である。光沢は、ISO8254-1に基づいて75℃で決定される。
【0024】
バリアフィルムは、バリアフィルムの重量により、少なくとも50重量%のMFCを含む。バリアフィルムはまた、MFCフィルムと表現し得る。バリアフィルムは、水の取り込みが少ないことが好ましい。バリアフィルムの密度は、好ましくは800kg/m3超、より好ましくは850kg/m3超、最も好ましくは900kg/m3超または950kg/m3超である。バリアフィルムは、好ましくは15重量%未満の無機材料、より好ましくは10重量%未満の無機材料を含む。
【0025】
本発明に基づいて使用されるバリアフィルムは、接着剤を適用する前に、好ましくはISO5636/6に準拠して決定された、少なくとも2000s/100ml、より好ましくは少なくとも10000s/100mlのガーリーヒル気孔率値を有する。バリアフィルムは、接着剤を適用する前に、好ましくは1.5μmより大きい、より好ましくは2μmより大きい、PPS10の粗さ(ISO8791-4:2007に基づいて決定)を有する。
【0026】
本発明に基づいて使用されるバリアフィルムは、吸油度が低い。好ましくは、バリアフィルムは、オムニフォビックであり、すなわち水と油の両方に対して一時的な耐性をもたらす。
【0027】
本発明に基づいて使用されるバリアフィルムは、接着剤を適用する前に、好ましくはコッブ(Cobb)値(Cobb 30s(H2O)、ISO535:2014に基づいて30秒後に決定)が、35g/m2未満、好ましくは30g/m2未満であり、より好ましくは5~25g/m2の範囲、例えば15~25g/m2の範囲である。
【0028】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、特許出願の文脈において、少なくとも1つの寸法が100nm未満のナノスケールのセルロース粒子繊維またはフィブリルを表すことが理解されよう。MFCは、部分的または完全にフィブリル化されたセルロースまたはリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルの直径は100nm未満であるが、実際のフィブリルの直径または粒径分布および/またはアスペクト比(長さ/幅)は、供給源および製造方法によって決まる。最小のフィブリルは基本フィブリルと呼ばれ、直径が約2~4nmであるが(例えばChinga-Carrasco、G.、Cellulose fibres、nanofibrils and microfibrils、:The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view、Nanoscale research letters2011、6:417参照)、ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形態(Fengel、D.、Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides、Tappi J.、1970年3月、第53巻、第3号.)が、例えば拡張精製プロセスまたは圧力降下分解プロセスを使用することによって、MFCを作成するときに得られる主要な生成物であることが一般的である。供給源および製造プロセスに応じて、フィブリルの長さは、約1~10マイクロメートル超まで変化し得る。粗いMFCグレードは、フィブリル化繊維、すなわち仮導管(セルロース繊維)から突出したフィブリルの実質的な画分、および仮導管(セルロース繊維)から遊離した一定量のフィブリルを含むことがあり得る。
【0029】
MFCには、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリル状セルロース、ミクロフィブリル凝集体およびセルロースミクロフィブリル凝集体などの異なる頭字語がある。MFCは、種々の物理的または物理化学的性質、例えば、その大きな表面積や水に分散したときに低固形分(1~5重量%)でゲル状材料を形成する能力などによっても特徴付けることができる。セルロース繊維は、形成されたMFCの最終比表面積が、BET法を用いて凍結乾燥した材料について測定した場合、約1~約200m2/g、またはより好ましくは50~200m2/gである程度までフィブリル化されていることが好ましい。
【0030】
バリアフィルムに使用されるMFCは、好ましくはFS5微細物レベルが100未満、好ましくは90未満である。バリアフィルムに使用されるMFCは、好ましくはFS5フィブリル化指数が1.5よりも高く、より好ましくは1.8よりも高く、または2.0よりも高い。微細物レベルおよびフィブリル化指数は、Valmet FS5 Fiber Image Analyzerを使用して測定することができる。
【0031】
MFCを作成するための種々の方法、例えば1回または複数回の通過精製、予備加水分解とそれに続くフィブリルの精製または高剪断分解または遊離などが存在する。MFC製造にエネルギー効率および持続可能性の両方をもたらすためには、通常1つまたは複数の前処理工程が必要とされる。したがって、利用されるパルプのセルロース繊維は、例えば、繊維を加水分解または膨張させるために、あるいはヘミセルロースまたはリグニンの量を減らすために、酵素的または化学的に前処理されてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学修飾されてもよく、そのため天然のセルロースに見られる以外(またはそれ以上)の官能基を含有する。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒドおよび/またはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)またはホスホリル基が含まれる。上記の方法の1つで修飾または酸化された後、繊維をMFCまたはナノフィブリルに分解するのがより容易である。
【0032】
ナノフィブリル状セルロースは、いくつかのヘミセルロースを含有することがあり、その量は植物源に依存する。前処理された繊維、例えば加水分解された、予備膨潤された、または酸化されたセルロース原料の機械的分解は、リファイナー、粉砕機、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦粉砕機、超音波処理器、流動化装置、例えばマイクロ流動化装置、マクロ流動化装置もしくは流動化型ホモジナイザーなどの適当な装置で実施される。MFC製造方法に応じて、生成物は、微細物、またはナノ結晶セルロース、または木質繊維もしくは製紙プロセス中に存在する他の化学物質も含有し得る。生成物はまた、効率的にフィブリル化されていない種々の量のミクロンサイズの繊維粒子も含有し得る。
【0033】
MFCは、広葉樹または針葉樹の繊維の両方の木材セルロース繊維から生成される。それはまた、微生物源、農業繊維、例えば麦わらパルプ、竹、バガス、または他の非木質繊維源から作ることもできる。それは、未使用の繊維からのパルプを含むパルプ、例えば機械的、化学的および/または熱機械的パルプから作られることが好ましい。それは、破損した紙または再生紙から作ることもできる。
【0034】
バリアフィルムのMFCは、非修飾MFCまたは化学修飾MFC、またはその混合物であってもよい。好ましくは、MFCは非修飾MFCである。非修飾MFCは、非修飾または天然セルロース繊維から作成されたMFCを意味する。好ましい繊維は、例えば広葉樹または針葉樹またはこれらの混合物のいずれかからの漂白クラフト繊維であってよい。非修飾MFCは、単一タイプのMFCであってよく、またはこれは2つ以上のタイプのMFCの混合物を含むことができ、例えばセルロース原料または製造方法の選択において異なっている。化学修飾MFCは、フィブリル化前、フィブリル化中またはフィブリル化後に化学修飾を施されたセルロース繊維から作成されたMFCを意味する。いくつかの実施形態では、MFCは化学修飾MFCである。化学修飾MFCは、単一タイプの化学修飾MFCであってもよく、またはこれは2つ以上のタイプの化学修飾MFCの混合物を含むことができ、例えば化学修飾のタイプ、セルロース原料または製造方法の選択において異なっている。
【0035】
バリアフィルムは、MFCのみからなっていてもよく、またはこれはMFCおよび他の成分もしくは添加剤の混合物を含んでいてよい。バリアフィルムは、バリアフィルムの全乾燥重量に基づき、その主要な成分としてMFCを含む。バリアフィルムは、バリア層の全乾燥重量に基づき、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のMFCを含む。
【0036】
バリアフィルムは、基材に積層するための独立MFCフィルムとして調製してもよい。独立フィルムは、当技術分野で既知の方法を用いて、例えば製紙機で、または鋳込み成形などの技術を使用して調製される。フィルムは、当技術分野で既知の方法を用いてカレンダーおよび/またはスーパーカレンダなどの処理にかけられてもよい。バリアフィルムは、製品の最終性能またはコーティングの処理を改善するために量を変化させて広範囲の成分を含んでいてもよい。バリアフィルムはさらに、添加剤、例えば多糖類および/またはセルロース誘導体)(デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヘミセルロース)、充填剤、保持化学物質または濾水用化学薬品、フロキュレーション添加剤、デフロキュレーティング添加剤、架橋剤、乾燥強度添加剤、湿潤剤、軟化剤、またはその混合物を含んでもよい。バリアフィルムはさらに、フィルムの延性を増強させるために、混合物および/または生成されたフィルム、例えばラテックスおよび/またはポリビニルアルコール(PVOH)の異なる特性を改善する添加剤を含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、バリアフィルムはさらに高分子結合剤を含む。いくつかの実施形態では、バリアフィルムはさらにPVOHを含む。PVOHは、単一タイプのPVOHであってよく、または2つ以上のタイプのPVOHの混合物を含むことができ、例えば加水分解度または粘度において異なっている。PVOHは、例えば加水分解度が80~99mol%の範囲、好ましくは88~99mol%の範囲であり得る。さらに、PVOHは、4%水溶液中20℃で、好ましくは粘度が5mPa×s超であり得るDIN 53015/JIS K 6726。
【0038】
いくつかの実施形態では、バリアフィルムはさらに顔料を含む。顔料は、例えば、滑石粉、ケイ酸塩、炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩および炭酸アンモニウム、または酸化物、例えば遷移金属酸化物および他の金属酸化物の無機粒子を含んでいてもよい。顔料はまた、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、カオリナイト、ヘクトライトおよびハロイサイト(hallyosite)を含む群から選択された、層状鉱物ケイ酸塩のナノクレイおよびナノ粒子などのナノサイズの顔料を含んでよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、顔料は、層状鉱物ケイ酸塩のナノクレイおよびナノ粒子、より好ましくはベントナイトからなる群から選択される。
【0040】
バリアフィルムの坪量(厚さに相当する)は、好ましくは15~80gsm(グラム毎平方メートル)の範囲、好ましくは15~50gsmの範囲、より好ましくは15~40gsmまたは20~35gsmの範囲である。バリアフィルムの坪量は、例えばその製造モードによって決まり得る。バリアフィルムは、半透明であることが好ましい。バリアフィルムは、本発明による積層体に使用される前にカレンダーおよび/またはスーパーカレンダにかけられることが好ましい。
【0041】
バリアフィルムは、寸法安定性を調節するために、片面(第2の接着剤が付与されている面と反対側)がポリマーでコーティングされていてもよい。使用されるポリマーは、好ましくは多糖類、セルロース誘導体、PVOH、PVOH/Ac、ワックス、ポリエチレングリコールまたはラテックス分散液である。ポリマーの量は、好ましくは1~8gsmの範囲、より好ましくは2~5gsmの範囲である。
【0042】
本発明による積層体に使用される紙または板紙基材は、好ましくは坪量が20~500g/m2の範囲、より好ましくは80~400g/m2の範囲である。紙または板紙は、平滑性および印刷適性を改善するために、任意選択でコーティング、例えば鉱物コーティングされる。そのような鉱物コーティングは、本発明の文脈において、基材の片面または両面、次いで基材の一部に付与してもよい。紙または板紙基材は、板紙の紙の少なくとも片面に表面サイジングを施してもよい。そのような表面サイジングは、ひいては本発明の文脈において基材の一部である。
【0043】
いくつかの非限定的な実施形態では、本発明による積層体は、以下の一般的な構造、
- 紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム
- 紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム/保護ポリマー層
- 保護ポリマー層/紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム
- 保護ポリマー層/紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム/保護ポリマー層
- 板紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム
- 板紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム/保護ポリマー層
- 保護ポリマー層/板紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム
- 保護ポリマー層/板紙/第1の接着剤層/第2の接着剤層/バリアフィルム/保護ポリマー層
を有する。
【0044】
保護ポリマー層は例えば、ポリオレフィンまたはポリエステル、例えばバイオベースポリオレフィンまたはポリエステルまたはワニスを含む。保護ポリマー層は、1種または複数のポリマーを含んでもよい。適当なポリマーの例には、ポリエチレン、PLAなどが含まれる。ワニスは例えば、水系ワニスであってもよい。保護層は例えば、押出コーティングまたはフィルム積層によって加えることができる。ワニスを使用する場合、当技術分野で既知の方法、例えば噴霧、輪転グラビアなどを用いて加えることができる。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、積層体を製造する方法であって、
a)紙または板紙基材を用意する工程;
b)第1の接着剤を紙または板紙基材に適用する工程;
c)少なくとも50重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むバリアフィルムを付与する工程;
d)第2の接着剤をバリアフィルムに適用する工程;
e)第1の接着剤層が第2の接着剤層と接触するように、工程b)およびd)の生成物を一緒に積層する工程
を含む、方法を提供する。
【0046】
積層は、当技術分野で既知の方法を用いて実施され得る。
【0047】
上記方法の工程c)およびd)は別々に実施することができ、その結果、バリアフィルムに第2の接着剤が個別に付与され、次いで工程e)が実施される。そのような実施形態では、積層体を製造する方法は:
a)紙または板紙基材を用意する工程;
b)第1の接着剤を紙または板紙基材に適用する工程;
c)少なくとも50重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含み、第2の接着剤が適用された、バリアフィルムを付与する工程;
d)第1の接着剤層が第2の接着剤層と接触するように、工程b)およびc)の生成物を一緒に積層する工程
を含む。
【実施例】
【0048】
比較例1
一緒にプレスおよび乾燥する前に、アニロックスによって基材上に適用した約7g/m2のスチレン/アクリレートターポリマー接着剤(ガラス転移点0℃)を用いて、1つの接着剤層を有する2層積層体構造を調製した。層は、35gsmの茶色いクラフト紙(2×35gsm)から構成される。接着剤の不均等分布によって層間の接着力が得られなかったため、試験は失敗した。
【0049】
比較例2
この場合、上記の茶色い35gsmクラフト紙を、実施例1と同じ設定で接着積層したが、今度はMFCを含むコーティングしていない32gsmのウェブに対して行った。実施例1と同様の理由で試験は失敗した。どちらの場合においても、積層体は再湿潤による寸法の安定問題を示した。
【0050】
実施例3
印刷面に鉱物をコーティングした、坪量が250gsmのSBSボードを基材として提供した。
【0051】
坪量が31gsmのMFCフィルムを製紙機で調製し、カレンダーにかけた。フレキソ印刷機上で、固体含有量が約50%およびpH6と7の間の、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびエチレンのターポリマーの水性分散液の形態の接着剤を適用した。ポリマーの最低造膜温度は約45℃であった。接着剤にはWVTR化学薬品も含まれていた。接着剤成分をMFCフィルムに付与し、IR乾燥を用いて乾燥させた。適用した接着剤の合計量は5±1g/m2であり、比は1:3であり、すなわちターポリマーとWVTR化学薬品の適用量は、ターポリマーの3倍であった。
【0052】
積層を積層単位で実施した。スチレン/アクリレートターポリマー接着剤をSBSボードの表面に付与してから、基材とMFCフィルムを一緒に積層した。基材およびフィルム上の接着剤層がそれぞれ互いに接着するように、基材をフィルムに積層した。
【0053】
得られた積層体には、いずれも目に見えるしわ、気泡または欠陥はなかった。
【0054】
TAPPI T559に基づいて決定した積層体のKIT値は12であった。
【0055】
鶏脂耐性を決定し(ASTM F119-8の変更、40℃および0%RHで実施)、積層体は48時間より長く鶏脂耐性をもたらすことがわかった。
【0056】
積層体のガーリーヒル気孔率をISO5636/6に準拠して決定し、42300s/100mlであることがわかった。これは使用した機器で得られる最大値である。
【0057】
ASTM F1249に基づいて23℃および50%RHで測定した場合の、接着剤を適用した後のMFCフィルムの水蒸気透過率(WVTR)は80g/m2/日であった。
【0058】
標準ASTM D-3985に基づいてMocon Oxtran2/22デバイスで測定した場合、酸素透過率(OTR)は23℃および50%RHで10cc/m2/日未満であった。
【0059】
積層体の品質をさらに確認するために、ブランク(寸法300,5×168mmのブランク(印刷付き)の目視検査)について横方向(上向き、下向き)、機械方向(上向き、下向き)および斜めのカールを分析した。明らかなカールは検出できなかった。
【0060】
積層体は多量の繊維を含み、PTS RH 021/97に基づいて、不良率が30%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満で、再使用可能および崩壊可能でなければならない。
【0061】
積層体を、MFCフィルムの代わりにプラスチックフィルムを使用した対照積層体と比較した。上記の実施例に基づく積層体のカール性は基準試料未満であることが観察された。
【0062】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すれば、他の変更および変形は当業者にとっては明らかである。しかしながら、そのような他の変更および変形が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく可能であることは明らかである。
【国際調査報告】