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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】硬化性二液型樹脂系
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/48 20060101AFI20231219BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G59/48
C08G59/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537937
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021086916
(87)【国際公開番号】W WO2022136330
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216430.7
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイゼル,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】グネーディンガー,フロリアン
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AJ09
4J036DB18
4J036DD08
4J036FA01
4J036JA07
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのシクロ脂肪族エポキシ樹脂を含む樹脂部と、(i)少なくとも1つの脂環式無水物、ならびに(ii)ポリシロキサンブロック及び有機ブロックを有するブロックコポリマーを含む硬化剤部と、を有すると共に、60wt%超の無機フィラーを含む硬化性二液型樹脂系に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのシクロ脂肪族エポキシ樹脂を含む樹脂部と、
(b)(i)少なくとも1つの脂環式無水物ならびに(ii)ポリシロキサンブロック及び有機ブロックを含むブロックコポリマーを含む硬化剤部と、
を含む硬化性二液型樹脂系であって、
前記樹脂部及び前記硬化剤部のうちの少なくとも1つが、前記硬化性系が60wt%超の無機フィラーを含むようになる量で前記無機フィラーをさらに含み、前記無機フィラーが、非晶質無機材料、具体的には、非晶質シリカと、結晶性無機材料、具体的には珪灰石、とを含む、前記硬化性二液型樹脂系。
【請求項2】
前記硬化性系中の前記樹脂部(a)と前記硬化剤部(b)とが、化学量論比±15mol%である、請求項1に記載の硬化性系。
【請求項3】
前記シクロ脂肪族エポキシ樹脂が、非グリシジルエポキシ樹脂である、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項4】
前記シクロ脂肪族エポキシ樹脂が、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである、請求項3に記載の硬化性系。
【請求項5】
前記脂環式無水物が、不飽和化合物である、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項6】
前記脂環式無水物が、9~10個の炭素を含む、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項7】
前記脂環式無水物が、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヒミン酸無水物、またはメチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(MNA)である、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項8】
前記硬化性系が、アミン硬化剤を含まず、具体的には、第一級アミンもしくは第二級アミン、メルカプタン硬化剤及び/または潜在性硬化剤を含まない、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項9】
前記無機フィラーが、前記硬化性系の総重量に基づいて前記硬化性系が65wt%~73wt%の前記無機フィラーを含むように前記樹脂部及び/または前記硬化剤部中に存在する、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項10】
前記硬化性系中の非晶質無機材料の含量が、前記硬化性系の総重量に基づいて24wt%超、具体的には35wt%超、である、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項11】
前記硬化性系中の結晶性無機材料の含量が、前記硬化性系の総重量に基づいて24wt%超、具体的には29wt%超、である、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項12】
前記非晶質無機材料及び前記結晶性無機材料が、前記非晶質無機材料と前記結晶性無機材料との重量比が3:7~7:3、具体的には5:7~7:7、となるように前記無機フィラー中に存在する、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項13】
コアシェル型強化剤をさらに含み、具体的には前記硬化性系の総重量に基づいて1~5wt%の量、最も好ましくは3~5wt%の量、で前記コアシェル型強化剤をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項14】
前記ブロックコポリマー中の前記有機ブロックが、ポリエステルブロックである、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項15】
前記ブロックコポリマーが、前記硬化性二液型樹脂系の総重量に基づいて1~5wt%の量、具体的には3~5wt%の量、で存在する、先行請求項のいずれかに記載の硬化性系。
【請求項16】
先行請求項のいずれかに記載の硬化性系を硬化させることによって得ることが可能な硬化物。
【請求項17】
電気的用途のための、具体的には、電動機、具体的には永久磁石を伴わない電動機、のインバータ、ステータ及び/またはロータの封止のための、請求項14に記載の硬化物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、硬化性二液型樹脂系、そこから得ることが可能な硬化物、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂系は、さまざまな目的で広く知られている。目的分野の1つは、電動機のステータ及び/またはロータの封止(通常は一体成型によって行われる)のためのそのような系の使用である。先行技術分野では、下記のものを含めて、いくつかの硬化性系が開示されている。
【0003】
特許文献1では、プリント基板のような電気部品及び電子部品のための絶縁材料として使用し得るシクロ脂肪族エポキシ樹脂に基づく硬化性組成物について開示されている。特許文献1では、結晶性無機フィラー、またはポリシロキサンブロック及び有機ブロックを有するブロックコポリマーの使用については述べられていない。特許文献1では、エポキシ-シクロヘキシル-メチルエポキシ-シクロヘキサン-カルボキシレート及びメチル-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物を含む組成物について開示されているが、これは、無機フィラー、またはポリシロキサンブロック及び有機ブロックを有するブロックコポリマー含まないものである。
【0004】
特許文献2では、珪灰石及び石英ガラスを含む系について開示されている。しかしながら、そこに開示されている系は、シクロ脂肪族エポキシ樹脂ではなく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)に基づくものであり、本明細書に開示の二液型樹脂系と比較して性能が劣るものである。
【0005】
特許文献3は、ブロックコポリマー成分を含む樹脂系に関するものであるが、この樹脂系は、非晶質または結晶性のフィラーを含まないものである。具体的には、そのような樹脂系のガラス転移温度(「Tg」)は、本明細書に開示の二液型樹脂系と比較して低いものである。
【0006】
特許文献4のBADGEベースの樹脂は、ブロックコポリマー成分を含むが、非晶質無機フィラーは含まず、その結果、本明細書に開示の二液型樹脂系と比較して温度ひび割れ指数(SCT)が低く、Tgが低いものとなっている。
【0007】
先行技術の欠点を踏まえて、下記の特性のうちの1つ以上(またはすべて)を達成することが可能な硬化性二液型樹脂系を提供することが本開示の目的の1つである:強度が60MPa超であること、破断伸びが0.8%超であること、ならびに2.6MPAm0.5超のK1c値を有する靱性を有すること、及びG1C値が500J/m超であること。さらに、有利な熱特性を有すること(Tgが190℃超であること、熱膨張係数(CTE)が22ppm/K以下であること、-200℃未満での温度ひび割れ指数(SCT)が非常に低いこと、これらに加えて、60℃での粘度が10Pas未満と適度であることによって示される良好な流動性を有すること、を含む)、毒性ラベル(以下に定義される)が存在しないこと、及びナノ粒子(生産が複雑化する)の含量が最小~皆無であること、をさらに達成することも、樹脂系に対する本開示の目的の1つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016/202608号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/112272号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第3255103号明細書
【特許文献4】国際公開第2019/175342号パンフレット
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示と関連して使用される専門用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別の解釈を要する場合を除き、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0010】
本明細書で言及される特許、公開特許出願、及び非特許刊行物はすべて、本開示が属する技術分野の当業者のレベルを示すものである。本出願のいずれかの箇所で参照される特許、公開特許出願、及び非特許刊行物はすべて、それらが本開示と矛盾しない限り、それぞれの個々の特許または刊行物が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度にその全体が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0011】
本明細書に開示の組成物及び/または方法はすべて、本開示に照らせば、過度の実験を伴うことなく調製及び実行することができる。本開示の組成物及び方法は好ましい実施形態に関して説明されているが、本開示の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物及び/または方法に対して、ならびに本明細書に記載の方法のステップまたは一連のステップにおいて、変形を適用できることを当業者なら理解するであろう。当業者に明らかなそのような同様の置き換え及び改変はすべて、本開示の趣旨、範囲、及び概念に含まれるものと見なされる。
【0012】
本開示に従って利用される下記の用語は、別段の指定がない限り、下記の意味を有すると理解されるものとする。
【0013】
「a」または「an」という言葉の使用は、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、もしくは「含む(containing)」という用語(またはそのような用語の変形形態)と共に使用される場合、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「複数」の意味とも一致する。
【0014】
「または」という用語は、ある特定の選択肢のみを指すこと、及び選択肢が相互に排他的であることが別に明確に示されない限り、「及び/または」を意味するために使用される。
【0015】
本開示を通じて、「約」という用語は、デバイス、機構、もしくは方法の数値化に固有の誤差変動を値が含むこと、または測定すべき対象(複数可)の間に固有の変動が存在することを示すために使用される。例えば、限定されないが、「約」という用語が使用される場合、それが指す指定値は、±10パーセント、もしくは9パーセント、もしくは8パーセント、もしくは7パーセント、もしくは6パーセント、もしくは5パーセント、もしくは4パーセント、もしくは3パーセント、もしくは2パーセント、もしくは1パーセント、またはそれらの間に介在する1つ以上の割合で変動し得る。
【0016】
本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、組成物または混合物中に存在する特定の化合物または部分の量が、当該組成物または混合物に重大な影響を及ぼさない量であることを指す。いくつかの実施形態では、「実質的に含まない」は、組成物もしくは混合物中に存在する特定の化合物もしくは部分の量が、組成物もしくは混合物の総重量に基づいて、2重量%未満、もしくは1重量%未満、もしくは0.5重量%未満、もしくは0.1重量%未満、もしくは0.05重量%未満、もしくはさらには0.01重量%
未満であることを指すか、またはそれぞれの組成物もしくは混合物中に存在するその特定の化合物もしくは部分の量が皆無であることを指し得る。
【0017】
「少なくとも1つ」の使用は、1つ及び任意の複数の量(限定されないが、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む)を含むことが理解されよう。「少なくとも1つ」という用語は、それが指す用語に応じて100または1000以上にまで拡張され得る。さらに、100/1000という量は、より低いまたはより高い限界値でも満足のいく結果を与え得ることから、限定とは見なされない。
【0018】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という言葉(ならびに含む(comprising)の任意の形態(「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」など))、「有する(having)」という言葉(ならびに有する(having)の任意の形態(「有する(have)」及び「有する(has)」など))、「含む(including)」という言葉(ならびに含む(including)の任意の形態(「含む(includes)」及び「含む(include)」など))、または「含む(containing)」という言葉(ならびに含む(containing)の任意の形態(「含む(contains)」及び「含む(contain)」など))は包括的または非限定的であり、記載されない追加の要素または方法ステップを除外するものではない。
【0019】
本明細書で使用される「またはそれらの組み合わせ」ならびに「及びそれらの組み合わせ」という語句は、当該用語の前に列挙される項目の順列及び組み合わせのすべてを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうちの少なくとも1つを含むことが意図され、特定の文脈で順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含むことが意図される。この例を用いて続けると、1つ以上の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせ(BB、AAA、CC、AABB、AACC、ABCCCC、CBBAAA、CABBBなど)が明確に含まれる。典型的には、文脈から別に明らかでない限り、いずれの組み合わせにおいても項目または用語の数に制限は存在しないことを当業者なら理解するであろう。同じ観点で、「またはそれらの組み合わせ」ならびに「及びそれらの組み合わせ」という用語は、「から選択される」または「からなる群から選択される」という語句と共に使用される場合、当該語句の前に列挙される項目の順列及び組み合わせのすべてを指す。
【0020】
「一実施形態では(in one embodiment)」という語句、「一実施形態では(in an embodiment)」という語句、「一実施形態によれば(according to one embodiment)」という語句、及び同様のものは、一般に、当該語句に続く特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれると共に、本開示の複数の実施形態にも含まれ得ることを意味する。重要なことに、そのような語句は非限定的であり、必ずしも同じ実施形態を指すわけではないが、当然のことながら、1つ以上の先行及び/または後続実施形態を指し得る。例えば、添付の特許請求の範囲では、請求される実施形態はいずれも、任意の組み合わせで使用され得る。
【0021】
本明細書で使用される「環境温度」という用語は、化学反応によって誘導される任意の温度変化を除く、周囲の作業環境の温度(例えば、硬化性系が使用または生産される領域、建物、または部屋の温度)を指す。環境温度は、典型的には、約10℃~約30℃であり、より具体的には、約25℃である。「環境温度」という用語は、本明細書に記載の「室温」と互換的に使用される。
【0022】
本開示は硬化性二液型樹脂系に関し、当該硬化性二液型樹脂系は、(a)少なくとも1つのシクロ脂肪族エポキシ樹脂を含む樹脂部と、(b)(i)少なくとも1つの脂環式無水物ならびに(ii)ポリシロキサンブロック及び有機ブロックを含むブロックコポリマーを含む硬化剤部と、を含み、樹脂部及び硬化剤部のうちの少なくとも1つは、硬化性二液型樹脂系が60wt%超の無機フィラーを含むようになる量で無機フィラーをさらに含み、無機フィラーは、非晶質無機材料及び結晶性無機材料を含む。
【0023】
一実施形態では、非晶質無機材料は、非晶質シリカであり、結晶性無機材料は、珪灰石である。
【0024】
一実施形態では、硬化性二液型樹脂系は、ゴム粒子を実質的に含まない。
【0025】
有利なことに、本開示の樹脂系は、相反する目的を解決する特徴(以下に定義されるもの)を達成することによって当該技術分野の最新のものの不利な点を克服するものであることが発見された。そのような特徴には、強度が良好であること(すなわち、60Mpa超であること)、破断伸びが適度であること(すなわち、0.8%超であること)、及び靱性が高いこと(すなわち、K1c値が2.6MPAm0.5超であり、G1C値が500J/m超であること)が含まれる。さらに、ガラス転移温度(Tg)が高いこと(すなわち、Tgが190℃超であること)、熱膨張係数(CTE)が小さいこと(すなわち、CTEが22ppm/K以下であること)、温度ひび割れ指数(SCT)が非常に低いこと(すなわち、SCT値が-200℃未満であること)、流動性が良好であること(すなわち、60℃での粘度が10Pas未満と適度であること)を含めて、有利な熱特性を達成することができ、毒性ラベルは存在せず、ナノ粒子(生産が複雑化する)が回避される。
【0026】
「毒性ラベル」は、EU指令1272/2008/EUに従う毒性評価(GHS06)として定義される。
【0027】
DX(例えば、X=10、50、または90(それぞれD10、D50、またはD90に見られるもの))という用語は、それを含めてそこまでにサンプルの総材料体積のX%(例えば、X=90(D90に見られるもの)については90%)が含まれるサイズ分布中の点を表す。例えば、D90が39μmである場合、これは、サンプルの90%が39μm以下のサイズを有することを意味する。
【0028】
ブロックコポリマーが硬化剤部中に存在する場合、ブロックコポリマーが硬化剤部の代わりに樹脂部中に存在する場合と比較して本開示の樹脂系の粘度が適度なレベルに保たれ得る(したがって、加工性が改善される)ことがさらに明らかになっており、これは驚くべきことであった。「適度なレベルの粘度」は4Pas~10Pasであり、別の実施形態では、6Pas~8Pasまたは7Pas以下(それぞれ60℃での場合)であることが理解されよう。
【0029】
したがって、本開示の樹脂系は、有利な相反する特徴((他の特徴/パラメーターを犠牲にしない限り)通常は同時に最大化することが不可能なもの)の組み合わせを提供する。例えば、本明細書に開示の樹脂系は、Tgが高いにもかかわらず靱性が良好であること、Tgが高いにもかかわらず伸びが適度であること、フィラー量が多く、CTEが低いにもかかわらず流動性が良好であること、強度及び靱性が高いにもかかわらずCTEが低いこと、ならびにフィラー量が多いとしても、硬化剤部に対する毒性ラベルが存在しないこと、を達成することができる。
【0030】
一実施形態では、ブロックコポリマー中の有機ブロックはポリエステルブロックであり
、こうしたポリエステルブロックは、例えば、カプロラクトンもしくは他のラクトン、またはポリカーボネートブロックに基づくものである。適切なブロックコポリマーの例としては、限定されないが、ポリカプロラクトン-ポリシロキサンブロックコポリマー、ポリ乳酸-ポリシロキサンブロックコポリマー、及びポリプロピレンカーボネート-ポリシロキサンブロックコポリマーが挙げられる。ポリシロキサンブロックは、例えば、ポリジメチルシロキサンブロックまたはポリメチルエチルシロキサンブロックである。特定の一実施形態では、ブロックコポリマーは、ポリカプロラクトン-ポリシロキサンブロックコポリマー(Genioperl(登録商標)W35(Wacker Chemie AG,Munich,Germany)など)である。
【0031】
一実施形態では、二液型樹脂系の樹脂部(a)及び硬化剤部(b)は、樹脂部と硬化剤部との化学量論比±15mol%で存在する。
【0032】
「化学量論比±15mol%」は、1.15硬化剤当量/樹脂~0.85硬化剤当量/樹脂のモル量として理解されよう。無水物基の各モルが、無水物硬化剤の1当量として理解され、エポキシ基の各モルが、エポキシ樹脂の1当量として理解されよう。この定義の基本は、本明細書で使用される±14mol%、または±12mol%、または±10mol%、または±8mol%、または±6mol%にも適用可能である。例えば、「化学量論比±14mol%」は、1.14硬化剤当量/樹脂~0.86硬化剤当量/樹脂のモル量として理解されよう。
【0033】
別の実施形態では、樹脂(a)と硬化剤(b)との比は、化学量論比±14mol%、または±12mol%、または±10mol%、または±8mol%、または±6mol%である。好ましくは、樹脂(a)及び硬化剤(b)は、1:1の比、または樹脂(a)が6mol%過剰、または樹脂(a)が8mol%過剰、または樹脂(a)が12mol%過剰で使用される。
【0034】
シクロ脂肪族エポキシ樹脂は、例えば、ビス(エポキシシクロヘキシル)-メチルカルボキシレート、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エタン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-エチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジペンテンジオキシド、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,3-ブタジエンジエポキシド、3-エチル-3-オキセタンメタノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0035】
別の実施形態では、シクロ脂肪族エポキシ樹脂は、非グリシジルエポキシ樹脂である。
【0036】
さらに別の実施形態では、シクロ脂肪族エポキシ樹脂は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
【0037】
一実施形態では、脂環式無水物は、不飽和化合物である。
【0038】
好ましい実施形態では、脂環式無水物は、9~10個の炭素を含む。
【0039】
脂環式無水物は、例えば、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヒミン酸無水物(himic anhydride)、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジ
カルボン酸無水物(MNA)、ヘキサヒドロ-メチルフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルフタル酸無水物、ナフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、及びコハク酸無水物の誘導体からなる群から選択され得る。
【0040】
特定の一実施形態では、脂環式無水物は、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヒミン酸無水物、またはメチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(MNA)である。
【0041】
別の実施形態では、硬化性系は、アミン硬化剤を含まず、具体的には、第一級アミンもしくは第二級アミン、メルカプタン硬化剤、及び/または潜在性硬化剤を含まない。
【0042】
さらに別の実施形態では、無機フィラーは、硬化性二液型樹脂系が、二液型硬化性系の総重量に基づいて65wt%~73wt%の無機フィラーを含むように樹脂部及び/または硬化剤部中に存在する。別の実施形態によれば、硬化性二液型系は、66wt%~72wt%、具体的には、67wt%~71wt%の無機フィラーを含む。特定の実施形態では、硬化性二液型系は、61wt%超、または63wt%超、または65wt%超、または67wt%超の無機フィラーを含む。
【0043】
特定の実施形態では、硬化性二液型樹脂系中の非晶質無機材料の含量は、24wt%超、具体的には、35wt%超である。別の実施形態によれば、硬化性系は、25wt%~35wt%、具体的には、28wt%~33wt%の非晶質無機材料を含む。
【0044】
さらに別の実施形態では、結晶性無機材料は、二液型硬化性系が、二液型硬化性系の総重量に基づいて24wt%超、具体的には、29wt%超の結晶性無機材料を含むようになる量で樹脂部及び/または硬化剤部中に存在する。別の実施形態によれば、硬化性二液型系は、30wt%~50wt%、具体的には、33wt%~40wt%の結晶性無機材料を含む。
【0045】
特定の一実施形態では、非晶質無機材料及び結晶性無機材料は、非晶質無機材料と結晶性無機材料との重量比が3:7~7:3、具体的には、5:7~7:7となるように無機フィラー中に存在する。
【0046】
一態様によれば、結晶性無機材料は、ケイ酸塩またはイノケイ酸塩である。別の態様では、結晶性無機材料は、周期性が3のイノケイ酸塩である。さらに別の態様では、結晶性無機材料は、珪灰石(CaSi)である。
【0047】
別の態様では、非晶質無機材料は、天然または合成の非晶質シリカである。別の態様では、非晶質無機材料は、合成非晶質シリカである。さらに別の態様では、非晶質無機材料は、石英ガラスである。
【0048】
一実施形態によれば、非晶質無機材料は、3μm~100μmの平均粒度を有する。別の実施形態では、非晶質無機材料は、7μm~50μmまたは10μm~30μmまたは15μm~25μmの平均粒子を有する。
【0049】
別の実施形態によれば、結晶性無機材料は、1μm~70μmの平均粒度を有する。別の実施形態では、結晶性無機材料は、2μm~50μmまたは3μm~30μmまたは5μm~20μmの平均粒子を有する。
【0050】
別の実施形態では、ポリシロキサンブロック及び有機ブロックを有するブロックコポリマーは、硬化性二液型樹脂系の総重量に基づいて、1~5wt%の量、具体的には、3~
5wt%の量で存在する。
【0051】
特定の一実施形態では、硬化性二液型系はコアシェル型強化剤をさらに含み、具体的には、硬化性二液型系の総重量に基づいて1~5wt%の量、最も好ましくは、3~5wt%の量でコアシェル型強化剤をさらに含む。別の実施形態では、硬化性二液型系の総重量に基づいて70wt%以上、具体的には、95wt%以上のコアシェル型強化剤が樹脂部中に含まれる。コアシェル型強化剤を樹脂部に添加することで硬化剤部の粘度を低減することが有利に可能になり、ひいては樹脂部及び硬化剤部の混合を改善することが可能になる。
【0052】
さらに別の実施形態では、コアシェル型強化剤は、シリコーンコア及び/またはポリ(メチルメタクリレート)シェルを有する。
【0053】
一実施形態では、硬化系は、硬化性二液型系の総重量に基づいて総量が20wt%未満の1つ以上の追加成分を含む。1つ以上の追加成分は、例えば、沈降防止剤、カップリング剤、湿潤剤、着色剤、促進剤、ポリオール、及び/またはMTHPAもしくはMNA以外の他の無水物からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、MTHPAまたはMNA以外の無水物が硬化剤中に含まれる。
【0054】
本開示は、上記の開示による硬化性系を硬化させることによって得ることが可能な硬化物も対象とする。一実施形態では、樹脂部及び硬化剤部は、統合及び硬化によって硬化物を与える前に、それぞれが均質化(例えば、撹拌)される。
【0055】
さらに、本開示は、電気的用途のための、具体的には、電動機、具体的には、永久磁石を伴わない電動機のインバータ、ステータ、及び/またはロータの封止のための、上に開示される硬化物の使用を対象とする。
【実施例
【0056】
成分の説明:
ARALDITE(登録商標)HY918-1:メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、サプライヤー:Huntsman International LLC,The Woodlands,TX。
【0057】
非晶質シリカ1:D10=2μm、D50=11μm、D90=39μmである石英ガラス、サプライヤー:Quarzwerke Group,Frechen,Germany。
【0058】
非晶質シリカ2:D10=2.5μm、D50=20μm、D90=50μmである石英ガラス、サプライヤー:Quarzwerke Group Frechen,Germany。
【0059】
非晶質シリカ3:D10=3μm、D50=17μm、D90=50μmであるエポキシ-シラン表面処理石英ガラス、サプライヤー:Quarzwerke Group Frechen,Germany。
【0060】
Aerosil202:疎水性フュームドシリカ、サプライヤー:Evonik Industries AG,Essen,Germany。
【0061】
Byk W 9010:レオロジー添加剤(湿潤剤)、サプライヤー:Byk Additives and Instruments,Wesel,Germany。
【0062】
Antischaum SH:シリコーンベースの消泡剤、サプライヤー:Wacker Chemie AG,Munich,Germany。
【0063】
珪灰石1:下記の仕様を有するメタケイ酸カルシウム(CaSiO):9~16ミクロンのD50粒度(<45ミクロン 84±5重量%、<4ミクロン 26~36重量%、<2ミクロン <28重量%);かさ密度0.88~0.97g/cm3;輝度、Ry>85%;L/D比:3:1;サプライヤー:Nordkalk Oy Ab,Pargas,Finland。
【0064】
Genioperl(登録商標)W35:シリコーンブロック及び有機ブロック(カプロラクトンに基づく)を有するブロックコポリマー、サプライヤー:Wacker Chemie AG,Munich,Germany。
【0065】
Genioperl(登録商標)P52:シリコーンコア及びPMMAシェルを有するコアシェル粒子、サプライヤー:Wacker Chemie AG,Munich,Germany。
【0066】
ARALDITE(登録商標)CY179-1(Celloxide 2021 Pの名称でも販売されている):3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、サプライヤー:Huntsman Advanced Materials(Switzerland)GmbH,Basel,Switzerland
【0067】
ARALDITE(登録商標)XB5992液体、低粘性ビスフェノール-Aエポキシ樹脂、エポキシド数:4.9~5.1当量/kg、サプライヤー:Huntsman International LLC,The Woodlands,TX。
【0068】
ARALDITE(登録商標)XB5993液体、予め促進された無水物硬化剤、サプライヤー:Huntsman International LLC,The Woodlands,TX。
【0069】
ARADUR(登録商標)HY906無水物硬化剤、1-メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物の混合物、サプライヤー:Huntsman International LLC,The Woodlands,TX。
【0070】
Accelerator DY 070:1-メチルイミダゾール、サプライヤー:Huntsman International LLC,The Woodlands,TX。
【0071】
開始剤1:N-ベンジルキノリニウムヘキサフルオロアンチモネート、サプライヤー:Huntsman International LLC,The Woodlands,TX。
【0072】
共開始剤1:1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオール、サプライヤー:Natland International Corporation,Morrisville,NC。
【0073】
NANOPOX(登録商標)E601:3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチル-
3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが60重量%、表面修飾シリカナノ粒子が40重量%、サプライヤー:Evonik Industries AG,Essen,Germany。
【0074】
AEROSIL(登録商標)R972:DDS(ジメチルジクロロシラン)で後処理したフュームドシリカ、サプライヤー:Evonik Industries AG,Essen,Germany。
【0075】
BYK W940:沈降防止添加剤、サプライヤー:Byk Additives and Instruments,Wesel,Germany。
【0076】
BYK W995:湿潤及び分散剤、ホスフェート含有ポリエステル、サプライヤー:Byk Additives and Instruments,Wesel,Germany。
【0077】
BYK070:シリコーン及びポリマーに基づく消泡剤、サプライヤー:Byk Additives and Instruments,Wesel,Germany。
【0078】
BAYFERROX(登録商標)225:酸化鉄顔料、サプライヤー:Lanxess
AG,Cologne,Germany。
【0079】
TREMIN(登録商標)283-600:エポキシシランで表面処理した珪灰石、平均粒度D50:21μm、サプライヤー:Quarzwerke Group,Frechen,Germany。
【0080】
SILAN A-187:γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、サプライヤー:Momentive Performance Materials,Inc.,Waterford,NY。
【0081】
Bae3579-3:82pbwのARADUR(登録商標)HY918-1及び0.5pbwのAccelerator DY070の事前混合物。
【0082】
方法:
別段の指定がない限り、粘度は、60℃でRheomat装置(115型、MS DIN125D=10/s)を用いて決定する。
【0083】
引張強度及び破断伸びは、ISO R527に従って23℃で決定する。
【0084】
でのKIC(臨界応力拡大係数)及びJ/m2でのGIC(比破壊エネルギー(specific break energy))は、ダブルトーション実験(Huntsman社内法)によって23℃で決定する。
【0085】
CTE(線熱膨張係数)は、DIN53752に従って決定する。
【0086】
Tg(ガラス転移温度)は、ISO6721/94に従って決定する。
【0087】
SCT:ひび割れ指数(模擬ひび割れ温度)は、公開PCT出願WO2000/055
254に記載の説明に従ってTg、GIC、CTE、及び破断伸びに基づいて計算する。
【0088】
比較実施例及び発明実施例
比較実施例1(SoA1)
最初に、開始剤の成分を含む2つのマスターバッチを下記のように調製した:
【0089】
マスターバッチA:90gのARALDITE(登録商標)CY179-1及び10gの共開始剤1を90℃で30分間混合した。得られた透明な溶液を室温に冷却した。
【0090】
マスターバッチB:90gのARALDITE(登録商標)CY179-1及び10gの開始剤1を60℃で30分間混合した。得られた透明な溶液を室温に冷却した。
【0091】
138gのARALDITE(登録商標)CY179-1、450gのNANOPOX(登録商標)E601、34gのマスターバッチA、26gのマスターバッチB、4.2gのSILFOAM(登録商標)SH、10gのBYK-W940、4.2gのBYK070、及び4.0gのAEROSIL(登録商標)R972を十分なサイズのEscoミキサーに入れた。その後、50℃に加熱しながら分散撹拌機を用いて100rpmでミキサーの中身を撹拌した。
【0092】
その後、435gのAMOSIL(登録商標)510及び894.6gのAMOSIL(登録商標)520を、100rpmで撹拌しながら数回に分けて徐々に添加した。5分後、ミキサーを止め、壁に付着している材料を混合物に戻した。その後、減圧下、50℃で混合物をさらに70分間撹拌した。30分間撹拌後、壁に付着している物質を再び混合物に戻した。
【0093】
厚さ4mmの試験プレートを作るために、オーブン内で金型を事前に約80℃に加熱した。その後、脱気した樹脂を型に流し入れた。次に、型を120℃のオーブンに1時間入れた。その後、オーブン温度を180℃に上昇させて90分間保持した。その後、型をオーブンから取り出し、室温に冷却した後に開いた。得られたプレートを使用して試験検体を切り出して、上述の基準に従うK1C/G1C試験用、引張強度試験用、DSCを介するTg測定用、及びCTE決定用とした。結果は表2に示される。
【0094】
比較実施例2(SoA2)
1.エポキシ樹脂配合物:
950gのNANOPOX(登録商標)E601、3.75gのSILFOAM(登録商標)SH、5.0gのBYK W995、6.25gのBYK070、12.5gのSILAN A-187、及び22.5gのAEROSIL(登録商標)R972を十分なサイズのEscoミキサーに入れた。その後、ミキサーの中身を60℃に加熱し、減圧下、60℃で分散撹拌機を用いて300rpmで3分間撹拌した。次に、減圧を解除し、減圧下、60~65℃、300rpmで混合しながら500gのAMOSIL(登録商標)510及び1000gのAMOSIL(登録商標)520を数回に分けて徐々に添加した。10分後、ミキサーを停止し、減圧を解除し、壁に付着している材料を混合物に戻した。その後、減圧下、60~65℃で混合物をさらに5分間撹拌した。減圧を解除し、ミキサー壁を再び奇麗にした。最終的に、減圧下、60~65℃、300rpmで混合物を20分間撹拌した。
【0095】
2.硬化剤配合物:
879.8gのARADUR(登録商標)HY906、7.4gのACCELERATOR1、10gのSILAN A-187、及び10gのBYK-W940を十分なサイズのEscoミキサーに入れた。その後、ミキサーの中身を50℃に加熱し、減圧下、5
0℃で分散撹拌機を用いて300rpmで3分間撹拌した。その後、減圧を解除し、減圧下、50℃、300rpmで混合しながら1092.8gのAMOSIL(登録商標)510を数回に分けて徐々に添加した。10分後、ミキサーを停止し、減圧を解除し、壁に付着している材料を混合物に戻した。その後、減圧下、50~55℃で混合物をさらに5分間撹拌した。減圧を解除し、ミキサー壁の擦り取りを再度行った。最終的に、減圧下、55~60℃、300rpmで混合物を20分間撹拌した。
【0096】
3.樹脂/硬化剤混合物の調製、及び硬化:
500gの樹脂配合物及び325gの硬化剤配合物を一緒にし、減圧下、100rpmで撹拌しながら約60℃に加熱した。
【0097】
厚さ4mmの試験プレートを作るために、オーブン内で金型を事前に約80℃に加熱した。その後、脱気した樹脂/硬化剤混合物を型に流し入れた。次に、型をオーブンに入れ、100℃で1時間、その後に140℃で1.5時間、最後に210℃で1.5時間保持した。その後、型をオーブンから取り出し、室温に冷却した後に開いた。硬化したプレートをさまざまな試験に供した。その結果は表2に示される。
【0098】
比較実施例3(SoA3)
市販の系であるAraldite(登録商標)CW5742/Aradur(登録商標)HW30294のこの比較実施例については、再実施しなかった。表2に示されるデータは、Huntsman International LLCまたはその関連会社から入手可能な技術データシートから取得したものである。
【0099】
比較実施例4(SoA4)
WO2010/112272の実施例2に記載のように、100gのARALDITE(登録商標)XB5992を90gのARALDITE(登録商標)XB5993と混合し、この混合物をプロペラ撹拌機でわずかに撹拌しながら約5分間約60℃に加熱した。その後、ミキサーを止め、2gのBAYFERROX(登録商標)225を添加し、再びミキサーを約1分間動かした。その後、撹拌しながら51.3gのTREMIN(登録商標)283-600EST及び290.7gのAMOSIL(登録商標)520を分割して添加し、この混合物を撹拌しながら約10分間60℃に加熱した。次に、ミキサーを止め、約1分間減圧することによって容器を慎重に脱気した。
【0100】
140℃に加熱したスチール製の型に混合物を流し入れて、特性を決定するためのプレート(厚さ4mm)を調製した。その後、この型を140℃のオーブンに30分間入れた。型の熱硬化後、型をオーブンから取り出し、プレートを環境温度に冷却した。表2に試験結果のまとめが示される。
【0101】
比較実施例5(SoA5)
この比較実施例については、再実施しなかった。表2のデータは、EP3255103B1に記載の発明実施例(そこの「表1/発明(2)」に示されているもの)から取得した。
【0102】
比較実施例6(SoA6)
ブレードミキサーを用いて93gのAraldite(登録商標)MY740樹脂を6gのGenioperl(登録商標)W35と90℃で15分間混合した。その後、混合物を60℃に冷却し、1gのSilquest(登録商標)A-187シランを添加し、ブレードミキサーを用いて5分間混合した。次に、85gのBae3579-3を添加し、ブレード撹拌機を用いて60℃で5分間混合した。その後、10分以内に、混合物を約60℃に加熱しながら278gのSilbond W12シリカを分割して添加した。最
終的に、混合物を減圧下で脱気した。混合物の粘度を60℃及び80℃で測定した。脱気後、反応物を型(事前に100℃に加熱したもの)に流し入れて、機械的試験用のプレートを調製した。型をオーブンに入れ、100℃で2時間、140℃で16時間保持した。
【0103】
冷却し、型から取り出した後、プレートを機械加工して試験検体とし、その機械的パラメーターを決定した。
【0104】
発明実施例1
発明成分A(すなわち、樹脂部)を下記のように調製した:
外部加熱部及び撹拌用スピードディスクを備えた2lのESCOミキサー中の容器に下記の成分を室温で添加した:503.4gのCelloxide 2021 P、4gのRPS 1312-1、2.2gのAntischaum SH、20gのSilan A-187。10mbarの減圧下、700rpmで20分間撹拌しながら、すべての成分を50℃に加熱した。その後、100gのGenioperl(登録商標)P52、200gの非晶質シリカ2、460gの非晶質シリカ3、670gの珪灰石1、及び9gのBentoneSD-2を、撹拌しながら分割して混合容器に添加した(温度は35~40℃に低下した)。10mbar、50℃で混合物を40分間撹拌した(700rpm)。その後、4gのBYK W-9010を混合物に添加した。10mbar、700rpmで混合物を再び30分間撹拌した。最終的に、混合物(成分A)を40℃に冷却し、取り出して容器に移した。
【0105】
発明成分B(すなわち、硬化剤部)を下記のように調製した:
外部加熱部及び撹拌用スピードディスクを備えた2リットルのESCOミキサーに522.4gのARADUR(登録商標)HY906を添加した。その後、容器を75~80℃に加熱した。次に、100gのGenioperl(登録商標)W35を添加した。Genioperl(登録商標)W35がARADUR(登録商標)HY906(ごくわずかに不透明な液体)に完全に溶解するまで、減圧下(10~15mbar)、75~80℃で混合物を撹拌した。その後、混合物を50~55℃に冷却し、0.6gのOracet blue 690を添加した。次に、均一な青色の液体が視認可能になるまで混合物を撹拌した。その後、2.4gのDY070、10gのBYK W980、6.6gのBYK W9010、及び1gのPEG200を50~55℃で容器に添加した。次に、減圧下(10mbar)、300rpm、55℃で混合物を20分間撹拌した。その後、この液体に対して、減圧下(10mbar)で撹拌しながら撹拌機の速度を700rpmに速めつつ、520gの非晶質シリカ2、820gの珪灰石1、及び10gのBentone SD-2を分割して添加した。撹拌に起因して温度が20分以内に55~60℃に上昇することになる。減圧下(10mbar)、700rpm、加熱なし(容器中の温度は55~60℃であった)で混合物を20分間撹拌し続けた。その後、7gのAerosil R-202を混合物に添加し、700rpm、55~60℃で10分間撹拌した。その後、次の10分間は速度を800rpmに速めた。最終的に、混合物を40~45℃に冷却し、取り出して容器に移した。
【0106】
成分A及び成分Bの最終混合物の調製:
300gの樹脂配合物(成分A)及び405gの硬化剤配合物(成分B)を一緒にし、減圧下、100rpmで撹拌しながら約60℃に加熱した。
【0107】
厚さ4mmの試験プレートを作るために、金型をオーブン中で約120℃に事前に加熱した。その後、脱気した樹脂/硬化剤混合物を型に流し入れた。次に、型を120℃のオーブンに20分間入れた後、190℃に加熱し、190℃で3時間保持した。次に、型をオーブンから取り出し、室温に冷却した後に開いた。硬化したプレートをさまざまな試験に供した。その結果は表2に示される。
【0108】
発明実施例2
発明成分Aは、発明実施例1に使用したものと同じものとした。発明成分Bは下記のように調製した:
外部加熱部及び撹拌用スピードディスクを備えた2リットルのESCOミキサーに518.4gのARADURE(登録商標)HY918-1を添加した。その後、これを75~80℃に加熱した。その後、60gのGenioperl(登録商標)W35を添加した。Genioperl(登録商標)W35がARADURE(登録商標)HY918に完全に溶解するまで、減圧下(10~15mbar)、75~80℃で混合物を撹拌した。その後、これを50~55℃に冷却し、0.6gのOracet blue 690、3gのDY070、10gのBYK W980、7gのBYK W9010を50~55℃で容器に添加した。次に、減圧下(10mbar)、300rpm、55℃で混合物を20分間撹拌した。その後、この液体に対して、減圧下(10mbar)で撹拌しながら撹拌機の速度を700rpmに速めつつ、564gの非晶質シリカ2、820gの珪灰石1、及び10gのBentone SD-2を分割して添加した。撹拌に起因して温度が20分以内に55~60℃に上昇することになる。減圧下(10mbar)、700rpm、加熱なし(容器中の温度55~60℃)で混合物を20分間撹拌し続けた。その後、7gのAerosil R-202を混合物に添加し、700rpm、55~60℃で10分間撹拌した。その後、次の10分間は速度を800rpmに速めた。最終的に、混合物を40~45℃に冷却し、取り出して容器に移した。
【0109】
A及びBの最終混合物の調製:
300gの樹脂配合物(成分A)及び375gの硬化剤配合物(成分B)を一緒にし、減圧下、100rpmで撹拌しながら約60℃に加熱した。
【0110】
厚さ4mmの試験プレートを作るために、金型をオーブン中で約120℃に事前に加熱した。その後、脱気した樹脂/硬化剤混合物を型に流し入れた。次に、型を120℃のオーブンに20分間入れた後、190℃に加熱し、190℃で3時間保持した。次に、型をオーブンから取り出し、室温に冷却した後に開いた。硬化したプレートをさまざまな試験に供した。その結果は表2に示される。
【0111】
比較実施例7
比較成分A(すなわち、樹脂部)を下記のように調製した:外部加熱部及び撹拌用スピードディスクを備えた2LのESCOミキサーに503.4gのCelloxide 2021Pを添加した。これを80℃に加熱した後、100gのGenioperl W35を添加した。これを、W35が樹脂に完全に溶解するまで1時間撹拌した。物質を60℃に冷却した後、4gのRPS 1312-1、2.2gのAntischaum SH、20gのSilan A-187を容器に添加した。10mbarの減圧下、700rpmですべての成分を20分間撹拌した。その後、200gの非晶質シリカ2、460gの非晶質シリカ3、670gの珪灰石1、9gのBentone SD-2を、撹拌しながら分割して混合容器に添加する(温度は35~40℃に低下する)。10mbar、50℃で混合物を40分間撹拌(700rpm)する。その後、4gのBYK W-9010を混合物に添加する。10mbar、700rpmで混合物を30分間再び撹拌する。最終的に、混合物(成分A)を40℃に冷却し、取り出して容器に移す。
【0112】
比較成分B(すなわち、硬化剤部)を下記のように調製する:
外部加熱部及び撹拌用スピードディスクを備えた2リットルのESCOミキサーに下記の成分を添加する:522.4gのARADURE(登録商標)HY906。その後、これを75~80℃に加熱した。100gのGenioperl(登録商標)W35を添加した。Genioperl W35がARADURE(登録商標)HY906(ごくわず
かに不透明な液体)に完全に溶解するまで、減圧下(10~15mbar)、75~80℃で混合物を撹拌した。その後、混合物を50~55℃に冷却し、0.6gのOracet blue 690を添加した。次に、均一な青色の液体が視認可能になるまで混合物を撹拌した。その後、2.4gのDY070、10gのBYK W980、6.6gのBYK W9010、及び1gのPEG200を50~55℃で容器に添加した。
【0113】
次に、減圧下(10mbar)、300rpm、55℃で混合物を20分間撹拌した。その後、この液体に対して、減圧下(10mbar)で撹拌しながら撹拌機の速度を700rpmに速めつつ、520gの非晶質シリカ2、820gの珪灰石1、及び10gのBentone SD-2を分割して添加した。撹拌に起因して温度が20分以内に55~60℃に上昇することになる。
【0114】
減圧下(10mbar)、700rpm、加熱なし(容器中の温度55~60℃)で混合物を20分間撹拌し続けた。その後、7gのAerosil R-202を混合物に添加し、700rpm、55~60℃で10分間撹拌した。その後、次の10分間は速度を800rpmに速めた。最終的に、混合物を40~45℃に冷却し、取り出して容器に移した。
【0115】
A及びBの最終混合物の調製:
300gの樹脂配合物(成分A)及び405gの硬化剤配合物(成分B)を一緒にし、減圧下、100rpmで撹拌しながら約60℃に加熱した。
【0116】
厚さ4mmの試験プレートを作るために、金型をオーブン中で約120℃に事前に加熱した。その後、脱気した樹脂/硬化剤混合物を型に流し入れた。次に、型を120℃のオーブンに20分間入れた後、190℃に加熱し、190℃で3時間保持した。次に、型をオーブンから取り出し、室温に冷却した後に開いた。硬化したプレートをさまざまな試験に供した。その結果は表2に示される。
【表1-1】
【表1-2】
【0117】
【表2】
【0118】
「適用安定性」は、60℃で1週間混合しても粘度が上昇せず、Tgへの影響がないこ
とを意味する。
【0119】
発明実施例1と、6つの異なるSoA(当該技術分野の最新のもの)実施例と比較は、以下に示される特徴の9つすべてを本発明が満たす一方で、当該技術分野の最新のものがこれらの特徴のすべてを満たすことは不可能であることを示している:
1)生産が複雑な製品が回避されること、具体的には、ナノ粒子の使用が理由で生産が複雑化する製品が回避されること
2)流動性が良好であること(60℃での粘度が10Pas未満であることによって示される)
3)熱膨張係数(CTE)が最大でも22ppm/Kと非常に小さいこと
4)強度が60Mpa超と高いこと
5)破断伸びが0.8%超と大きいこと
6)靱性が大きいこと(K1C>2.6MPam0.5及びG1C>500J/m2)
7)Tgが少なくとも190℃と高いこと
8)得られるSCTが最大でも-200℃と非常に低いこと
9)樹脂硬化剤の安定性が良好であること(適用安定性)
【0120】
SoA1は、エポキシ樹脂の単独重合に基づく、CTEが比較的低く、Tgが高い系の例である。この概念は、相反する特徴のうちの要件1、2、5、6を満たさない。さらに、SoA1の系のTgは、発明実施例1と比較して低い。
【0121】
SoA2はナノSiOを含むが、珪灰石、コアシェル、ブロックコポリマー型成分のいずれも含まない。機械的パラメーターのほとんどは、発明実施例1と比較して著しく悪い。
【0122】
SoA3は、Tgが高いことが知られている別の系の例である。これは珪灰石を含む一方で、石英ガラス、コアシェル、ブロックコポリマー型成分のいずれも含まない。この系は機械的に不十分であり、相反する特徴の基準3、4、5、または7を満たさない。
【0123】
SoA4は、珪灰石及び石英ガラスを組み合わせた例である。しかしながら、この系は、本発明の樹脂成分選択に基づいていないことから性能が不十分であり、石英ガラスと珪灰石との比が誤ったものであり、コアシェルまたはブロックコポリマー型成分を含まない。
【0124】
SoA5は、ブロックコポリマー成分を含むが、珪灰石または石英ガラスは含まない系の公開例である。この系は全体プロファイルを満たすにははるかに及ばないものであり、この具体的理由は、Tgが低いことによるものである。
【0125】
SoA6はSoA5のようにブロックコポリマー成分を含むが、これもまた、珪灰石または石英ガラスは含まない。この系の性能は、多数の側面で本発明の系よりも悪い。
【0126】
比較実施例7は、ポリシリコーン-ポリカプロラクトン-ブロックコポリマー成分を配合物の樹脂部に使用できる可能性は見出せないことを実証するものである。性能はターゲットを満たす一方で、適用プロセスの間の樹脂部の安定性に問題がある。そのような樹脂は、60℃で1週間にわたって混合される間に粘度上昇を起こす傾向あることから、適用不可能である。
【0127】
発明実施例2は、単に本発明の副次的条件を踏まえた別の例であり、他の型の無水物を用いても、本発明の要件が満たされる場合にはターゲット特性プロファイルを満たせることを示すものである。
【国際調査報告】