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特表2023-554176環境保護設備の制御装置、生産計画最適化システム、生産計画最適化方法およびコンピュータ読み取り可能な媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】環境保護設備の制御装置、生産計画最適化システム、生産計画最適化方法およびコンピュータ読み取り可能な媒体
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20231219BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20231219BHJP
【FI】
B01D53/38 ZAB
C02F1/00 V
C02F1/00 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558917
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2020137063
(87)【国際公開番号】W WO2022120915
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011457934.X
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523222150
【氏名又は名称】三菱電機(中国)有限公司
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC (CHINA) CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM 1507,BLOCK A,YINGKE CENTER,NO.2,GONGTI NORTH ROAD,CHAOYANG DISTRICT BEIJING 100027,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】薛斌杰
(72)【発明者】
【氏名】任銀姫
(72)【発明者】
【氏名】倪悦勇
(72)【発明者】
【氏名】董蘇▲ルイ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆臣
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA40
4D002BA02
4D002BA04
4D002CA01
4D002DA41
4D002GA02
(57)【要約】
環境品質基準を達成することを前提に、環境保護設備の運転効率を高め、環境保護設備のエネルギー消費を低減し、環境保護設備の運転を生産計画を立てる要素の1つとすることが可能な環境保護設備の制御装置、生産計画最適化システム、生産計画最適化方法およびコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。環境保護設備の制御装置は、環境保護設備の運転中の環境パラメータを取得する環境パラメータ取得手段と、環境保護設備を調整する調整手段と、環境パラメータ取得手段により取得された環境パラメータに基づいて、環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足するとともに、環境保護設備の運転コストを低減するように、調整手段を制御する制御手段と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境保護設備の運転中の環境パラメータを取得する環境パラメータ取得手段と、
前記環境保護設備を調整する調整手段と、
前記環境パラメータ取得手段により取得された前記環境パラメータに基づいて、前記環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足するとともに、前記環境保護設備の運転コストを低減するように、前記調整手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする環境保護設備の制御装置。
【請求項2】
前記環境保護設備は、VOC処理設備であり、VOC収集装置と、VOC処理装置と、パージガス排出装置とを備え、
前記環境パラメータ取得手段は、VOC濃度監視プローブであり、少なくともそれぞれ前記VOC収集装置と前記パージガス排出装置からVOC濃度を取得し、前記VOC濃度を前記環境パラメータとして用い、
前記調整手段は、周波数変換器であり、少なくとも前記VOC処理設備の送風機の運転周波数を調整し、
前記制御手段は、前記VOC濃度に基づいて、前記VOC濃度が最低限の環境保護の要求を満足するとともに、前記VOC処理設備の運転コストを低減するように、前記周波数変換器を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の環境保護設備の制御装置。
【請求項3】
前記環境保護設備は、水回収再利用設備であり、工業用水処理装置と、水使いプロセスセクションと、工業廃水処理装置と、リサイクル水処理装置とを備え、
前記環境パラメータ取得手段は、少なくとも前記水使いプロセスセクションから、使用後の工業廃水の水質パラメータを取得する水質監視プローブと、少なくとも前記工業用水処理装置および前記リサイクル水処理装置から、水流量を取得する流量計とを備え、前記水質パラメータおよび前記水流量を前記環境パラメータとして用い、
前記調整手段は、電磁弁制御器であり、前記水使いプロセスセクションと前記工業廃水処理装置との間に設けられた電磁弁の導通方向を調整し、
前記制御手段は、前記水質パラメータおよび前記水流量に基づいて、前記水質パラメータが最低限の環境保護の要求を満足するとともに、前記水回収再利用設備の運転コストを低減するように、前記電磁弁制御器を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の環境保護設備の制御装置。
【請求項4】
生産計画に応じて、環境パラメータが最低限の環境保護の要求を満足するように環境保護設備を制御し、前記環境保護設備から環境保護設備の運転情報を取得する、請求項1から3のいずれか1項に記載の環境保護設備の制御装置と、
生産計画に応じて、生産設備を制御し、前記生産設備から生産関連情報を取得する生産制御装置と、
生産要求情報を取得し、前記生産制御装置から前記生産関連情報を取得し、前記環境保護設備の制御装置から前記環境保護設備の運転情報を取得するとともに、前記生産要求情報に応じて、複数の生産計画を決定し、前記生産関連情報および前記環境保護設備の運転情報に基づいて、前記複数の生産計画におけるそれぞれの生産計画のコストを取得してから、前記複数の生産計画から、前記生産計画のコストが最も低い生産計画を、最適生産計画として選んで、前記最適生産計画を前記環境保護設備の制御装置および前記生産制御装置に提供する、生産計画最適化装置と、を備えることを特徴とする生産計画最適化システム。
【請求項5】
前記生産計画最適化装置は、
前記生産関連情報、前記環境保護設備の運転情報および前記生産要求情報に基づいて、前記生産要求情報と前記複数の生産計画のコストとの関係を学習する学習手段と、
前記学習手段の学習結果に基づいて、前記生産要求情報に応じて前記最適生産計画を決定する最適生産計画決定手段と、を備えることを特徴とする請求項4に記載の生産計画最適化システム。
【請求項6】
前記学習手段は、
前記生産制御装置から、前記生産設備の生産速度、電力使用量および生産時間帯を少なくとも含んでいる前記生産関連情報を取得して、前記環境保護設備の制御装置から、前記環境パラメータと、前記環境保護設備の運転周波数および作業時間とを少なくとも含んでいる前記環境保護設備の運転情報を取得して、前記生産要求情報を取得するデータ取得部と、
前記環境保護設備の運転周波数と作業時間に応じて、前記環境保護設備の電力使用量を算出し、前記環境保護設備の電力使用量と前記生産設備の電力使用量とを加算し、前記生産時間帯の内の単位電力価格を乗算することにより、前記生産設備および前記環境保護設備の電力使用コストを、前記複数の生産計画におけるそれぞれの生産計画のコストとして算出し、前記それぞれの生産計画のコストに基づいて報酬を算出する報酬算出部と、
前記報酬算出部により算出された前記報酬と、前記生産要求情報と、前記それぞれの生産計画に対応する前記生産設備の生産速度、生産時間帯および前記環境保護設備の運転周波数、作業時間とに応じて、行動価値関数を更新する行動価値関数更新部と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の生産計画最適化システム。
【請求項7】
前記データ取得部は、前記環境保護設備の制御装置から前記環境保護設備のメンテナンスサイクルをさらに取得し、
前記報酬算出部は、前記環境保護設備の作業時間およびメンテナンスサイクルに応じて、前記環境保護設備のメンテナンスコストを算出し、前記環境保護設備のメンテナンスコストと前記生産計画最適化システムの電力使用コストとを加算して、前記複数の生産計画におけるそれぞれの生産計画のコストとする、ことを特徴とする請求項6に記載の生産計画最適化システム。
【請求項8】
前記生産計画最適化装置は、ユーザの入力、または、保存された生産計画履歴に応じて、最初生産計画を決定し、当該最初生産計画を前記最適生産計画決定手段に提供する、最初生産計画提供部をさらに備え、
前記最適生産計画決定手段は、前記最初生産計画を前記生産制御装置および前記環境保護設備の制御装置に提供する、ことを特徴とする請求項5に記載の生産計画最適化システム。
【請求項9】
前記生産計画最適化装置は、前記生産計画最適化システムの外部から、勤務日内の、時間に基づいて変化する外部状況を取得し、前記外部状況に基づいて、前記生産要求情報に対応する前記複数の生産計画の、非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを算出する、外部状況取得手段をさらに備え、
前記学習手段はさらに、前記非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを考慮して、前記生産要求情報と、異なる前記外部状況での前記複数の生産計画のコストと、の関係を学習し、
前記最適生産計画決定手段は、前記学習手段の学習結果に基づいて、前記生産要求情報に応じて、異なる前記外部状況での前記最適生産計画を決定する、ことを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の生産計画最適化システム。
【請求項10】
生産計画に応じて生産設備を制御する生産制御装置から取得された生産関連情報と、生産計画に応じて環境保護設備を制御する環境保護設備の制御装置から取得された環境保護設備の運転情報と、生産要求情報とに基づいて、前記生産要求情報と、前記生産要求情報に対応する複数の生産計画のコストと、の関係を学習する学習ステップと、
前記学習ステップでの学習結果に基づいて、前記生産要求情報に応じて、前記複数の生産計画から、前記生産計画のコストが最も低い生産計画を、最適生産計画として選択する最適生産計画決定ステップと、を備えることを特徴とする生産計画最適化方法。
【請求項11】
前記学習ステップは、
前記生産制御装置から、前記生産設備の生産速度、電力使用量および生産時間帯を少なくとも含んでいる前記生産関連情報を取得して、前記環境保護設備の制御装置から、前記環境保護設備の運転中の環境パラメータと、前記環境保護設備の運転周波数および作業時間とを少なくとも含んでいる前記環境保護設備の運転情報を取得して、前記生産要求情報を取得するデータ取得ステップと、
前記環境保護設備の運転周波数と作業時間に応じて、前記環境保護設備の電力使用量を算出し、前記環境保護設備の電力使用量と前記生産設備の電力使用量とを加算し、前記生産時間帯の内の単位電力価格を乗算することにより、前記生産設備および前記環境保護設備の電力使用コストを、前記複数の生産計画におけるそれぞれの生産計画のコストとして算出し、前記報酬算出部が前記それぞれの生産計画のコストに基づいて報酬を算出する報酬算出ステップと、
前記報酬算出ステップにて算出された前記報酬と、前記生産要求情報と、前記それぞれの生産計画に対応する前記生産設備の生産速度、生産時間帯および前記環境保護設備の運転周波数、作業時間とに応じて、行動価値関数を更新する行動価値関数更新ステップと、を備えることを特徴とする請求項10に記載の生産計画最適化方法。
【請求項12】
前記データ取得ステップにおいて、前記環境保護設備の制御装置から前記環境保護設備のメンテナンスサイクルをさらに取得し、
前記報酬算出ステップにおいて、前記環境保護設備の作業時間およびメンテナンスサイクルに応じて、前記環境保護設備のメンテナンスコストを算出し、前記環境保護設備のメンテナンスコストと前記電力使用コストとを加算して、前記複数の生産計画におけるそれぞれの生産計画のコストとする、ことを特徴とする請求項11に記載の生産計画最適化方法。
【請求項13】
ユーザの入力、または、保存された生産計画履歴に応じて、最初生産計画を決定し提供する最初生産計画提供ステップをさらに備え、
前記最適生産計画決定ステップにおいて、前記最初生産計画を前記生産制御装置および前記環境保護設備の制御装置に提供する、ことを特徴とする請求項10に記載の生産計画最適化方法。
【請求項14】
外部から、勤務日内の、時間に基づいて変化する外部状況を取得し、前記外部状況に基づいて、前記生産要求情報に対応する前記複数の生産計画の、非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを算出する、外部状況取得ステップをさらに備え、
前記学習ステップにおいて、さらに、前記非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを考慮して、前記生産要求情報と、異なる前記外部状況での前記複数の生産計画のコストと、の関係を学習し、
前記最適生産計画決定ステップにおいて、前記学習ステップでの学習結果に基づいて、前記生産要求情報に応じて、異なる前記外部状況での前記最適生産計画を決定する、ことを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の生産計画最適化方法。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか1項の生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録している、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境保護設備の制御装置、当該環境保護設備の制御装置を備える生産計画最適化システム、生産計画最適化方法、および当該生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体に関し、特に、環境保護設備を備える工場における環境保護設備の運転方式および工場全体の生産計画を最適化するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の自動化生産の過程において、環境に対する影響をできるだけ低減するために、通常、生産中に発生する汚染物を処理するための環境保護設備が配置されている。環境保護設備の具体例として、例えば、電子部品製造において樹脂や接着剤などが揮発して発生するVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を処理するためのVOC処理装置と、生産中に発生する工業廃水を水処理して回収再利用するための水回収再利用設備などがある。
【0003】
従来の環境保護設備は、生産過程で汚染物質の発生に応じて自動的にオンオフ制御を行う機能を技術的に実現している。よって、工場の生産過程で環境品質基準や汚染物質排出基準などの要求を満たすことを確保することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、生産環境を安定的に基準に達する目的で、汚染物質の発生が検出されれば、対応する環境保護設備をフル運転状態にしていたため、環境保護設備が長期間フル運転状態に置かれると、大量のエネルギーを消費し、廃水や排ガスなどの汚染物質の処理のコストが増加し、生産コストの上昇につながっている。
【0005】
また、従来の環境保護設備の運転は工場全体の運転から切り離されており、環境保護設備は汚染物質が発生した場合に受動的に対応することしかできず、生産計画に応じて次の汚染物質の排出や処理の状況を予測することができないため、環境基準未達のリスクを回避するために環境保護装置を長期間フル運転させるという問題がさらに深刻になる。
【0006】
なお、従来の環境保護設備の運転制御は一般的に生産計画のスケジューリングとは独立しているため、環境保護設備の運転から発生するデータは記録されていないか、又は記録されていてもそのデータを生産計画決定の根拠として利用していないことがほどんどであった。そのため、生産計画を立てる時に環境保護設備の運転状況を考慮していないので、低コストで生産効率と環境保護を両立した生産計画最適化案を得ることができない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、環境品質基準や汚染物質排出基準などの基準を達成することを前提に、環境保護設備の運転効率を高め、環境保護設備のエネルギー消費を低減し、環境保護設備の運転を生産計画を立てる要素の1つとすることができ、異なる生産要求に対して環境保護要求を満たすと同時にコストを最小化する最適生産計画を立てることが可能な環境保護設備の制御装置、当該環境保護設備の制御装置を備える生産計画最適化システム、生産計画最適化方法、および当該生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の方面に係る環境保護設備の制御装置は、環境保護設備の運転中の環境パラメータを取得する環境パラメータ取得手段と、前記環境保護設備を調整する調整手段と、前記環境パラメータ取得手段により取得された前記環境パラメータに基づいて、前記環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足するとともに、前記環境保護設備の運転コストを低減するように、前記調整手段を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明の第2の方面に係る生産計画最適化システムは、生産計画に応じて、環境パラメータが最低限の環境保護の要求を満足するように環境保護設備を制御し、前記環境保護設備から環境保護設備の運転情報を取得する、上記本発明の第1の方面に係る環境保護設備の制御装置と、生産計画に応じて、生産設備を制御し、前記生産設備から生産関連情報を取得する生産制御装置と、生産要求情報を取得し、前記生産制御装置から前記生産関連情報を取得し、前記環境保護設備の制御装置から前記環境保護設備の運転情報を取得するとともに、前記生産関連情報および前記環境保護設備の運転情報に基づいて、前記生産要求情報に対応する複数の生産計画を生成し、前記複数の生産計画におけるそれぞれの生産計画のコストを取得してから、前記複数の生産計画から、前記生産計画のコストが最も低い生産計画を、最適生産計画として選んで、前記最適生産計画を前記環境保護設備の制御装置および前記生産制御装置に提供する、生産計画最適化装置と、を備える。
【0010】
また、上述した課題を解決するために、本発明の第3の方面に係る生産計画最適化方法は、生産計画に応じて生産設備を制御する生産制御装置から取得された生産関連情報と、生産計画に応じて環境保護設備を制御する環境保護設備の制御装置から取得された環境保護設備の運転情報と、生産要求情報とに基づいて、前記生産要求情報と、前記生産要求情報に対応する複数の生産計画のコストと、の関係を学習する学習ステップと、前記学習ステップでの学習結果に基づいて、前記生産要求情報に応じて、前記複数の生産計画から、前記生産計画のコストが最も低い生産計画を、最適生産計画として選択する最適生産計画決定ステップと、を備える。
また、上述した課題を解決するために、本発明の第4の方面に係るコンピュータ読み取り可能な媒体は、上記本発明の第3の方面に係る生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録している。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る環境保護設備の制御装置、当該環境保護設備の制御装置を備える生産計画最適化システム、生産計画最適化方法、および当該生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体によれば、環境品質基準や汚染物質排出基準などの基準を達成することを前提に、環境保護設備の運転効率を高め、環境保護設備のエネルギー消費を低減し、環境保護設備の運転を生産計画を立てる要素の1つとすることができ、異なる生産要求に対して環境保護要求を満たすと同時にコストを最小化する最適生産計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る環境保護設備の制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
図2図2は、環境保護設備の制御装置の一つの具体例を示す概要図である。
図3図3は、環境保護設備の制御装置の他の一つの具体例を示す概要図である。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係る生産計画最適化システムの構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、図4における生産計画最適化装置の構成を説明するためのブロック図である。
図6図6は、生産計画最適化方法を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、図6における学習ステップの一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、図6における学習ステップの他の一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施の形態3に係る生産計画最適化システムの構成を説明するためのブロック図である。
図10図10は、図9における生産計画最適化装置の構成を説明するためのブロック図である。
図11図11は、実施の形態3に係る供給設備情報の例を示す図である。
図12図12は、実施の形態3に係る必要資源量情報の例を示す図である。
図13図13は、実施の形態3に係る経費項目情報の例を示す図である。
図14図14は、実施の形態3に係る費用情報の例を示す図である。
図15図15は、実施の形態3に係る生産評価指標情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
【0014】
以下、図1図3を参照しながら、本実施の形態1に係る環境保護設備の制御装置について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態1に係る環境保護設備の制御装置1の構成を説明するためのブロック図である。図1に示すように、環境保護設備の制御装置1は、環境パラメータ取得手段10と、調整手段11と、制御手段12とを備える。
【0016】
環境保護パラメータ取得手段10は、複数の環境保護設備A~Cにそれぞれ接続され、各環境保護設備A~Cにおける1箇所または数箇所から環境パラメータを取得する。環境パラメータとして、例えば、産業排ガス中のVOC、炭素酸化物、硫黄酸化物、重金属等の有害物質の濃度や、産業排水中の重金属、放射性物質、化学物質等の有毒有害物質の含有量等の水質パラメータが挙げられる。環境パラメータ取得手段10は、例えば、環境保護設備のフロントエンド、ミドルエンド、バックエンドに設置された汚染物質感知装置などの従来の各種の検出手段により、各環境保護設備A~Cの運転中の環境パラメータを検出することができる。
【0017】
調整手段11は、複数の環境保護設備A~Cにそれぞれ接続され、複数の環境保護設備A~Cを調整する。調整対象として、例えば、各環境保護設備に設置された可変周波数運転のポンプ、ファン、投薬装置などの運転周波数、あるいは各環境保護設備の作業時間、工業用水の流通経路などが考えられる。調整手段11は、例えば、環境保護設備に設置された周波数変換器、電磁弁制御器などの既存の各種の制御手段により、各環境保護設備A~Cを調整することができる。
【0018】
制御手段12は、環境パラメータ取得手段10および調整手段11にそれぞれ接続され、環境パラメータ取得手段10から各環境保護設備A~Cの環境パラメータをそれぞれ取得し、各環境保護設備A~Cの環境パラメータに基づいて調整手段11を制御し、調整手段11により、環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足するとともに、各環境保護設備A~Cの運転コストをできるだけ低減するように、該当する環境保護設備A~Cをそれぞれ調整する。最低限の環境保護要求とは、例えば、環境パラメータがVOC濃度の場合には、浄化処理後のガス中のVOC濃度が地域の排出基準、例えば100ppm以下(業界によって環境保護要求が異なるため、ここでは例のみ)を満たしていること、環境パラメータが水質パラメータの場合には、水処理後の水質が地域の排出基準を満たしていること、あるいは事業者が自らの事情に応じて定めた排出基準を満たしていることである。また、各環境保護設備の運転コストとは、例えば、各環境保護設備の電力コストを含むことができ、この電力コストは、環境保護設備の運転周波数、作業時間等から環境保護設備の消費電力量を算出し、その消費電力量に環境保護設備が運転する時のリアルタイム電力料金を乗じることにより得られる。また、各環境保護設備の運転コストには、リサイクル水処理システムの水の循環のための電力コスト、濾過された汚染物質の廃棄コスト、再利用できない廃水の廃水処理コストなど、他の環境保護設備の運転コストを含めることができる。
【0019】
本実施の形態において、3台の環境保護設備A~Cの例を示したが、環境パラメータ取得手段10が検出できる環境保護設備の数は、これに限定されるものではない。例えば、1台の環境保護設備だけから環境パラメータを取得してもよいし、2台以上の複数の環境保護設備から環境パラメータを取得してもよい。なお、複数の環境保護設備から環境パラメータを取得する場合に、当該複数の環境保護設備は同じ種類の環境保護設備であってもよいし、異なる種類の環境保護設備であってもよい。
【0020】
図2は、環境保護設備の制御装置の一つの具体例を示す概要図である。図2の破線枠で示すように、環境保護設備は、例えば、VOC処理設備であり、VOC収集装置と、VOC処理装置と、パージガス排出装置とを備え、VOC処理装置は、例えば、図示されていないシャワー塔、活性炭吸着槽からなる。当該VOC処理設備は、生産環境でのVOC物質を処理する。
【0021】
VOC収集装置監視プローブ101とパージガスVOC濃度監視プローブ102とを含むVOC濃度監視プローブは、本発明の環境パラメータ取得手段に相当し、送風機周波数変換器201を含む周波数変換器は、本発明の調整手段に相当する。これらのVOC濃度監視プローブおよび周波数変換器は、制御手段12とともに、本発明の環境保護設備の制御装置を構成する。また、ここでは1つの送風機周波数変換器201のみが示されているが、実際の生産において異なるVOC処理プロセスによって使用される送風機の数および種類は異なる可能性があるので、これらの送風機の運転周波数をそれぞれ制御するように複数の異なる周波数変換器を配置することもできる。
【0022】
VOC処理設備の制御方法について、以下に説明する。
【0023】
VOC収集装置監視プローブ101は、VOC処理前のVOC濃度、即ち、VOC収集装置の入口のVOC濃度を取得し、このVOC濃度を制御手段12に送信する。制御手段12は、このVOC濃度を環境保護設備の運転情報として記憶し、このVOC濃度と、予め設定された入口のVOC濃度の閾値である最低限の環境保護要求とを比較する。VOC濃度が入口のVOC濃度の閾値より高い場合に、制御手段12は、送風機周波数変換器201によりVOC収集装置の入口に位置する作業場排気ファンの運転周波数を高くするように、送風機周波数変換器201を制御する。一方、VOC濃度が生産環境のVOC濃度の閾値以下である場合に、制御手段12は、送風機周波数変換器201により作業場排気ファンの運転周波数を運転停止まで低下させるように、送風機周波数変換器201を制御する。よって、生産環境中のVOC濃度の完全収集を確保しつつ、送風機の運転エネルギー消費をできるだけ低減することができる。
【0024】
また、パージガスVOC濃度監視プローブ102は、パージガス排出装置におけるパージ処理後の排出ガスのVOC濃度を取得し、このVOC濃度を制御手段12に送信する。制御手段12は、このVOC濃度を環境保護設備の運転情報として記憶し、このVOC濃度と、予め設定されたパージガスVOC濃度の閾値である最低限の環境保護要求とを比較する。VOC濃度がパージガスVOC濃度の閾値より高い場合に、制御手段12は、送風機周波数変換器201によりVOC処理設備における各送風機の運転周波数を高くするように、送風機周波数変換器201を制御する。一方、VOC濃度がパージガスVOC濃度の閾値以下である場合に、制御手段12は、送風機周波数変換器201によりVOC処理設備における各送風機の運転周波数を運転停止まで低下させるように、送風機周波数変換器201を制御する。よって、VOCの排出基準を満たす排出を確保しつつ、VOC処理設備の運転エネルギー消費をできるだけ低減することができる。
【0025】
図3は、環境保護設備の制御装置の他の一つの具体例を示す概要図である。図3の破線枠で示すように、環境保護設備は、例えば、水回収再利用設備であり、図示されていない砂濾過設備、逆浸透設備、EDI(Electrodeionization:電気式脱イオン浄水)設備等からなる工業用水処理装置と、図示されていない脱脂設備、複数の純水洗浄設備、シラン洗浄設備等からなる水使いプロセスセクションと、図示されていない活性炭設備、砂濾過設備等からなるリサイクル水処理装置と、を備えている。この水回収再利用設備は、工業廃水を回収再利用する。
【0026】
流量計104、流量計105を含む流量計と、水質監視プローブ106とは、本発明の環境パラメータ取得手段に相当し、電磁弁制御器203は、本発明の調整手段に相当する。これらの流量計、水質監視プローブおよび電磁弁制御器は、制御手段12とともに、本発明の環境保護設備の制御装置を構成する。
【0027】
水回収再利用設備の制御方法について、以下に説明する。
【0028】
水道水は後述するリサイクル水とともに工業用水処理装置に流入して処理され、流量計104は工業用水処理装置から水道水の使用量である水流量を取得して、制御手段12に送信する。工業用水処理装置で処理された水は、水使いプロセスセクションに入って使用され、水質監視プローブ106は、水使いプロセスセクションの例えば各純水洗浄設備から使用後の水質パラメータをリアルタイムで取得し、制御手段12に送信する。制御手段12は、上記水質パラメータと水流量とを環境保護設備の運転情報として記憶し、水質パラメータと予め設定されたリサイクル水基準とを比較する。水質パラメータがリサイクル水基準に達した場合に、制御部12は、水使いプロセスセクションと工業廃水処理装置との間に設けられた電磁弁の導通方向をリサイクル水処理装置に向かう方向に調整するように電磁弁制御器203を制御する。一方、水質パラメータがリサイクル水基準に未達した場合に、制御部12は、上記電磁弁の導通方向を工業廃水処理装置に向かう方向に調整するように電磁弁制御器203を制御する。これにより、工業廃水の水質パラメータが最低限の環境保護要求を満たしていることを確保しつつ、リサイクル水を十分に利用することができるので、水道水の使用量をできるだけ低減し、例えば工業用水処理装置におけるEDI設備や工業廃水処理装置における関連設備の運転エネルギー消費を低減することができる。
【0029】
また、図示されていないが、リサイクル水処理装置の出口に水質監視プローブを付設し、リサイクル水処理装置で処理されたリサイクル水の水質パラメータを検出して、制御手段12に送信するようにしてもよい。制御手段12は、このリサイクル水の水質パラメータをリサイクル水基準と再度比較し、リサイクル水処理装置の出口に位置する電磁弁の導通方向を制御して、リサイクル水処理装置で処理されたリサイクル水の水質がリサイクル水基準に達している場合には工業用水処理装置へ、リサイクル水基準に達していない場合には工業廃水処理装置へと流れるようにする。
【0030】
本実施の形態1に係る環境保護設備の制御装置によれば、環境パラメータ取得手段により各環境保護設備の運転中の各環境パラメータをリアルタイムで監視し、制御手段は、環境パラメータ取得手段により取得された各環境パラメータに基づいて、環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足するとともに、環境保護設備の運転コストをできるだけ低減するように、調整手段を制御するので、環境保護要求を満たすことを前提として、環境保護設備が長期間フル運転状態に置かれることを回避することができ、リアルタイムの電気料金と合わせて算出される環境保護設備のエネルギー消費コストや、排水、排ガス等の廃棄物の処理コスト等の他の環境保護設備の運転にかかるコストをできるだけ低減することができる。
【0031】
実施の形態2.
【0032】
以下、図4図8を参照しながら、本実施の形態2に係る環境保護設備の制御装置を備える生産計画最適化システム、生産計画最適化方法、および当該生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体を説明する。
先ず、添付図面を参照しながら、生産計画最適化システムの構成を説明する。図4は本実施の形態2に係る生産計画最適化システム100の構成を説明するためのブロック図であり、図5図4における生産計画最適化装置3の構成を説明するためのブロック図である。
【0033】
図4に示すように、生産計画最適化システム100は、環境保護設備の制御装置1と、生産制御装置2と、生産計画最適化装置3とを備える。
【0034】
環境保護設備の制御装置1は、例えば、実施の形態1に係る環境保護設備の制御装置であり、当該環境保護設備の制御装置1は、さらに生産計画最適化装置3からの生産計画に応じて、環境保護設備A~Cの運転中の環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足するように、環境保護設備A~Cを制御し、それぞれ環境保護設備A~Cから環境保護設備の運転情報を取得する。環境保護設備の運転情報とは、例えば、少なくとも実施の形態1におけるVOC濃度、水質パラメータおよび水流量などの環境パラメータと、環境保護設備A~Cの運転周波数および作業時間などを含んでいる。なお、環境保護設備の運転情報は、例えば、環境保護設備A~Cのメンテナンスサイクルなどをさらに備えている。
【0035】
生産制御装置2は、生産計画最適化装置3からの生産計画に応じて、生産設備a~cを制御し、生産設備a~cから生産関連情報を取得する。生産関連情報とは、例えば、生産設備の生産速度、電力使用量、生産時間帯などを少なくとも含んでいる。
【0036】
生産計画最適化装置3は生産要求情報を取得し、生産制御装置2から生産関連情報を取得し、環境保護設備の制御装置1から環境保護設備の運転情報を取得する。生産要求情報を取得する方式として、例えば、図示されていない入力装置を通して、生産計画最適化システム100の外部からオペレーターにより入力された生産要求情報を取得してもよいし、生産計画最適化システム100内の図示されていない記憶装置から記憶されている生産要求情報を取得してもよい。また、生産要求情報として、例えば、製品の注文、製品の仕様要求などであってもよい。生産計画最適化装置3は、上記それらの情報を取得した後に、生産要求情報に応じて複数の生産計画を決定し、生産関連情報および環境保護設備の運転情報に基づいて、複数の生産計画における各生産計画のコストを算出する。生産要求情報に応じて複数の生産計画を決定する例として、生産要求(例えば、生産の注文)に応じて100単位の製品を生産する必要がある場合には、午前中に1本の生産ラインで50単位を生産し、午後に1本の生産ラインで50単位を生産するという方式と、午前中に2本の生産ラインで100単位を生産するという方式と、2つの午前に分けてそれぞれ1本の生産ラインで50単位ずつ生産するという方式などを採用することができる。上記の異なる生産計画はそれぞれ、異なる汚染物質の排出および処理の状況に対応している。生産計画最適化装置3は、一定のデータ蓄積および学習を行った上で、実際の生産に先立って、異なる生産状況(異なる生産要求、生産関連情報および環境保護設備の運転情報)に対応する各生産計画のコストをシミュレーションすることができる。
【0037】
また、生産計画のコストとは、例えば、その生産計画を実行する時に各生産設備a~cおよび各環境保護設備A~Cが消費する電力のコストであり、各生産設備および各環境設備の電力使用量に生産時間帯の内の単位電力価格を乗じて得られる。また、生産計画のコストは、消費される水、天然ガスなどの資源のコストと、例えば塗料などの消耗品のコストとを備えていてもよい。なお、生産計画のコストは、例えば、生産設備、環境保護設備のメンテナンスコストなどをさらに備えていてもよいが、この点については後述する。次ぎに、生産計画最適化装置3は、複数の生産計画から生産計画のコストが最も低い生産計画を、最適生産計画として選択し、生産制御装置2および環境保護設備の制御装置1に提供する。
【0038】
生産計画最適化装置3の具体的な構成について、以下に説明する。図5に示すように、生産計画最適化装置3は、学習手段30と最適生産計画決定手段31とを備える。
【0039】
学習手段30は、生産制御装置2および環境保護設備の制御装置1からそれぞれ取得した生産関連情報および環境保護設備の運転情報に基づいて、各生産計画に対応する生産計画のコストを算出し、生産関連情報、環境保護設備の運転情報および生産計画のコストの3種類のデータを大量に蓄積することにより、機械学習等を利用して、生産要求情報と複数の生産計画のコストとを関連付けるアルゴリズムを構築し、生産要求情報と複数の生産計画のコストとの関係を学習する。なお、学習手段30は、学習結果を後述する最適生産計画決定手段31に直接供給して使用するようにしてもよいし、図5に示すように、学習結果を学習結果記憶部32に記憶した後、最適生産計画決定手段31が必要に応じて呼び出すようにしてもよい。
【0040】
最適生産計画決定手段31は、例えば生産計画最適化システム100の外部から生産要求情報を取得し、学習結果記憶部32から学習結果を呼び出し、上記学習結果に基づいて、生産要求情報に応じてコストが最も低い最適生産計画を決定し、生産制御装置2および環境保護設備の制御装置1にそれぞれ供給する。
【0041】
学習手段30の具体的な構成について、以下に説明する。図5に示すように、学習手段30は、データ取得部300と、報酬算出部301と、行動価値関数更新部302とを備える。
【0042】
データ取得部300は、生産制御装置2から、生産設備の生産速度、電力使用量および生産時間帯を少なくとも含んでいる生産関連情報を取得して、環境保護設備の制御装置1から、環境パラメータと、環境保護設備の運転周波数および作業時間とを少なくとも含んでいる環境保護設備の運転情報を取得して、例えば生産計画最適化システム100の外部から、生産要求情報を取得する。
【0043】
報酬算出部301は、データ取得部300から上記各情報を取得し、環境保護設備の運転周波数からその単位時間当たりの消費電力を算出し、単位時間当たりの消費電力に環境保護設備の作業時間を乗じて環境保護設備の電力使用量を求める。そして、報酬算出部301は、各生産設備の電力使用量と環境保護設備の電力使用量とを加算し、総和電力使用量を算出する。最後に、報酬算出部301は、例えば、後述する外部状況取得手段34から生産時間帯の内の単位電力価格を取得し、前に取得した総和電力使用量に単位電力価格を乗じることにより、各生産設備および環境保護設備の総和電力使用コストを算出する。報酬算出部301は、算出された上記総和電力使用コストを各生産計画のコストとして、これに基づいて報酬を算出する。報酬の具体的な算出方法については後述する。
【0044】
また、環境保護設備の制御装置1は、上述した実施の形態1に示した環境保護設備の制御装置であるため、環境パラメータが最低限の環境保護要求を満たすように環境保護設備を制御することも可能である。
【0045】
行動価値関数更新部302は、報酬算出部301から算出された報酬を取得し、データ取得部300から生産要求情報と、各生産計画に対応する生産設備の生産速度、生産時間帯、環境保護設備の運転周波数、作業時間などの情報を取得し、これらの情報に基づいて行動価値関数を更新し、更新された行動価値関数を学習結果の1つとして学習結果記憶部32に記憶し、最適生産計画決定手段31が次の生産計画を決定するために用いる。
行動価値関数更新部302が行動価値関数を更新する方法については、どのような学習アルゴリズムを採用してもよい。一例として、例えば、強化学習(Reinforcement Learning)を適用する場合が挙げられる。強化学習とは、ある環境内のエージェント(行動主体)が現在の状態を観測し、とるべき行動を決定することである。エージェントは行動を選択することで環境から報酬を得て、一連の行動によって最も多くの報酬を得る対策を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-learning)とTD学習(TD-learning、時間差学習)が知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式(行動価値テーブル)は式1で表される。
【0046】
[式1]
【数1】
【0047】
式1において、sは時刻tの状態を表し、aは時刻tの行動を表す。行動aにより、状態はst+1となる。rt+1はこの状態の変化によって得られる報酬、γは割引率、αは学習係数を表す。ここで、Q学習が適用された場合には、最適生産計画決定部31で決定された次の生産計画を行動aの実行の指示とする。
【0048】
式1に示す更新式に対して、時刻t+1の最適行動aの行動価値が時刻tに実行された行動aの行動価値Qよりも大きければ、時刻tの行動価値Qを増加させ、逆の場合、時刻tの行動価値Qを減少させる。言い換えると、行動価値関数Q(s,a)は、時刻tにおける行動aの行動価値Qが時刻t+1における最適行動価値に近づくように更新される。これにより、ある環境における最適行動価値は、その前の環境における行動価値へと順次伝播する。
【0049】
本実施形態2に係る生産計画最適化システムによれば、生産制御装置及び環境保護設備の制御装置から生産関連情報及び環境保護設備の運転情報を含む生産要求に対応した各生産計画の実行過程のデータを大量に収集し、各生産計画の環境保護要求を達成するために支払う環境保護設備の運転コストを含むコストを算出し、機械学習により生産計画とコストとの相関モデルを作成することで、生産要求を把握した上で、その生産要求に対応した各生産計画のコストをシミュレーションにより迅速に求め、その中から最もコストの低い最適生産計画を決定者が選択することを支援することができる。これにより、環境保護設備の運転を生産計画の立案の要素の1つとすることができ、異なる生産要求に対して環境保護要求を満たすと同時にコストを最小化する最適生産計画を立案することができる。
【0050】
以上、本実施の形態に係る生産計画最適化システム100の主な構成について説明した。しかし、報酬算出部で報酬を算出する際には、環境保護設備のメンテナンスコストも考慮に入れることができる。具体的には、データ取得部300は、環境保護設備の制御装置1から環境保護設備のメンテナンスサイクルをさらに取得し、報酬算出部301は、環境保護設備の作業時間とメンテナンスサイクルとの関係に応じて、一定の作業時間内に環境保護設備のメンテナンスを行う必要がある回数を算出し、メンテナンスを行う毎のコストと合わせて、各生産計画に対応する環境保護設備のメンテナンスコストを算出するようにしてもよい。そして、報酬算出部301は、算出された環境保護設備のメンテナンスコストと、先に算出された電力使用コストとを加算して、各生産計画の総和コストとする。
【0051】
また、環境保護設備のメンテナンスコストの例としては、例えば、交換を行う部品、材料等の費用、作業員の労務費、メンテナンス作業のためのエネルギー消費、資源消費等の費用(例えば、洗浄機器を採用する場合には洗浄水の交換が必要)などが挙げられる。
環境保護設備のメンテナンスコストも考慮することで、環境パラメータが最低限の環境保護要求を満たすことを確保した上で、ある生産計画のコストがどの程度になるかをより正確に算出することができ、最適生産計画をより正確に得ることができる。
【0052】
また、図5に示すように、生産計画最適化装置3は、学習の初期段階において実行すべき行動リストである最初生産計画を保存し、学習開始後の初期段階において最適生産計画決定手段31に供給する最初生産計画提供部33をさらに備えていてもよい。最初生産計画を決定する方法の一例として、例えば、ユーザである生産技術者が図示されていない入力装置を介して入力してもよいし、この最初生産計画提供部33に予め保存されているこれまでの生産計画履歴を参照して最初生産計画を決定してもよい。
【0053】
また、学習開始後の初期段階において、最適生産計画決定手段31は、生産制御装置2及び環境保護設備の制御装置1に当該最初生産計画を実行させ、データ取得部300は、当該最初生産計画が実行された後の生産関連情報及び環境保護設備の運転情報を取得し、行動価値関数更新部302も、報酬算出部により算出された報酬と、当該最初生産計画が実行された後の生産関連情報及び環境保護設備の運転情報とに基づいて、行動価値関数を更新し、更新後の行動価値関数を最適生産計画決定手段31に再提供する。
【0054】
また、図5に示すように、生産計画最適化装置3は、生産計画最適化システム100の外部から、勤務日内の、時間に基づいて変化する外部状況を取得し、外部状況に基づいて、生産要求情報に対応する複数の生産計画の、非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを算出し、当該非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを学習手段30に提供する、外部状況取得手段34をさらに備えてもよい。
【0055】
外部状況の一例として、例えば、勤務日内の時間的に変化する照度や風力等の気象状況であり、外部状況取得手段34は、例えば、図示されていない通信部を介して、外部から実時間で勤務日内の気象状況を取得し、その照度情報に基づいて太陽エネルギーの採用により削減できるコストを算出し、その風力情報に基づいて風力エネルギーの採用により削減できるコストを算出し、これらの太陽エネルギー、風力エネルギーなどの非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを、学習手段30の報酬算出部301に供給する。報酬算出部301は、これらの太陽エネルギーや風力エネルギーなどの非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを考慮して報酬を算出する。よって、学習手段30は、非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを考慮して、生産要求情報と、異なる外部状況での生産計画のコストと、の関係を学習する。そして、最適生産計画決定手段31は、学習手段30の学習結果に基づいて、生産要求情報に応じて、異なる外部状況での最適生産計画を決定する。
【0056】
また、上述したように、外部状況取得手段34は、図示されていない通信部を介して、外部から生産時間帯におけるリアルタイムの電力料金を取得し、学習手段30内の報酬算出部301に提供して、生産設備や環境保護設備の電力使用コストを算出するようにしてもよい。
【0057】
以上の構成によれば、外部状況取得手段を備え、リアルタイムの気象状況等の外部状況を考慮して報酬を算出するとともに、リアルタイムの電力料金を採用しているので、各生産計画のコストをより正確に算出することができ、環境パラメータが最低限の環境保護要求を満足することを確保した上で、より良い生産計画を得ることができる。
【0058】
次ぎに、添付図面を参照しながら、生産計画最適化方法を説明する。図6は生産計画最適化方法を説明するためのフローチャートであり、図7図6における学習ステップの一つの実施例を説明するためのフローチャートであり、図8図6における学習ステップの他の一つの実施例を説明するためのフローチャートである。
【0059】
図6に示すように、先ず、ステップS1において、生産計画最適化装置3における学習手段30は、生産制御装置2から取得された生産関連情報と、環境保護設備の制御装置1から取得された環境保護設備の運転情報と、取得された生産要求情報とに基づいて、生産要求情報と、生産要求情報に対応する複数の生産計画のコストと、の関係を学習し、学習結果を学習結果記憶部32に記憶して、ステップS2へ移行する。学習の具体的な方法については後述する。
【0060】
次ぎに、ステップS2において、最適生産計画決定手段31は、学習結果記憶部32から学習結果を呼び出し、当該学習結果に基づいて、生産要求情報に応じて、生産要求情報に対応する複数の生産計画から、生産計画のコストが最も低い生産計画を、最適生産計画として選択する。
【0061】
以下、学習の一つの実施例を説明する。
【0062】
図7に示すように、学習が開始した後に、先ず、ステップS101において、最適生産計画決定手段31は、最初生産計画提供部33から最初生産計画を取得し、当該最初生産計画を暫定的にこれまでの最適生産計画として環境保護設備の制御装置1および生産制御装置2に提供し、各環境保護機器A~Cおよび各生産機器a~cに実行させて、ステップS102に移行する。
【0063】
次ぎに、ステップS102において、学習手段30のデータ取得部300は、生産制御装置2から、各生産設備a~cの生産速度、電力使用量、生産時間帯を少なくとも含む生産関連情報を取得して、環境保護設備の制御装置1から、各環境保護設備A~Cの運転中の環境パラメータと、各環境保護設備A~Cの運転周波数、作業時間とを少なくとも含む環境保護設備の運転情報を取得して、生産要求情報を取得して、ステップS103に移行する。
【0064】
ステップS103において、学習手段30における報酬算出部301は、各環境保護設備A~Cの運転周波数と作業時間に応じて、各環境保護設備A~Cの電力使用量をそれぞれ算出し、環境保護設備A~Cの電力使用量と生産設備a~cの電力使用量とを加算し、外部状況取得手段34から取得された、生産時間帯の内の単位電力価格を乗算することにより、生産設備a~cおよび環境保護設備A~Cの電力使用コストを、生産計画のコストとして算出して、ステップS104に移行する。
【0065】
ステップS104において、報酬算出部301は、コストの変化状況を判断する。例えば、初期コストを予め設定しておいて、算出された最初生産計画のコストと当該初期コストとを比較してもよい。ステップS104において、初期コストと比較してコストが減ったと判断された場合(ステップS104:コストが減った)、ステップS105に移行し、報酬を例えば+1だけ増加させた後、報酬算出部301は報酬算出処理を終了し、算出結果を行動価値関数更新部302に送信する。ステップS104において、初期コストと比較してコストが変わらないと判断された場合(ステップS104:コストが変わらない)、ステップS106に移行し、報酬を変更しなくて、報酬算出部301は報酬算出処理を終了し、算出結果を行動価値関数更新部302に送信する。ステップS104において、初期コストと比較してコストが増えたと判断された場合(ステップS104:コストが増えた)、ステップS107に移行し、報酬を例えば-1だけ減少させた後、報酬算出部301は報酬算出処理を終了し、算出結果を行動価値関数更新部302に送信する。
【0066】
次に、ステップS108において、行動価値関数更新部302は、報酬算出部301が算出した報酬と、生産要求情報と、最初生産計画に対応する各生産設備a~cの生産速度、生産時間帯および各環境設備A~Cの運転周波数、作業時間とに応じて、行動価値関数を更新する。具体的な行動価値関数の更新方法は上記のとおりである。
【0067】
そして、ステップS109において、学習手段30は、学習終了条件を満足するか否かを判断する。ここで、学習終了条件とは、学習手段30が機械学習を終了する条件である。学習終了条件の例としては、例えば、学習回数が所定の上限値を超えていてもよいし、ある生産要求に対して、過去に蓄積された生産関連情報、環境保護設備の運転情報及び当該生産要求情報等のデータの履歴を行動価値関数に代入して算出された報酬が、報酬算出部301により実測値に基づいて算出された報酬と同一であってもよいし、両者の偏差が所定範囲内であってもよい。学習手段30は、上記学習終了条件を満たしていないと判断した場合には(ステップS109:NO)、ステップS110に移行し、次の生産計画を実行した後、ステップS102に戻り、次の生産計画の学習を再開する。この場合には、上記ステップS102~S109を繰り返して実行する。一方、学習手段30は、上記学習終了条件を満たしたと判断した場合には(ステップS109:YES)、学習の全過程を終了する。
【0068】
以下、学習の他の一つの実施例を説明する。
【0069】
当該学習の実施例は、ステップS101において最初生産計画を実行した後に、ステップS111に移行する点が前の実施例と異なる。ステップS111において、データ取得部300は生産関連情報、環境保護設備の運転情報および生産要求情報を取得するだけではなく、さらに環境保護設備の制御装置1から各環境保護設備A~Cのメンテナンスサイクルを取得する。
【0070】
また、報酬算出部301は、ステップS103で環境保護設備A~Cおよび生産設備a~cの電力使用コストを算出した後に、ステップS112において、環境保護設備の作業時間およびメンテナンスサイクルに応じて環境保護設備のメンテナンスコストを算出し、しかも、ステップS113において、ステップS103で算出された電力使用コストとステップS112で算出された環境保護設備のメンテナンスコストとを、生産計画のコストとして加算する。
【0071】
本実施例のほかのステップは前の実施例と同じであるため、説明は省略する。
【0072】
以上、本実施の形態の生産計画最適化方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、データ取得部300はステップS102またはステップS111の完了後に、外部状況取得手段34から勤務日内の時間的に変化する外部状況を取得してもよい。報酬算出部301は、ステップS103またはステップS113において、さらに外部状況に基づいて、非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを算出し、当該非従来型エネルギーの採用により削減できるコストを考慮して生産計画のコストを算出する。
【0073】
なお、以上、本発明の生産計画最適化装置をハードウェアで実現する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の生産計画最適化方法は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。また、本発明の生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを、各種のコンピュータ読み取り可能な媒体に格納し、必要に応じて、例えばCPU等にロードして実行するようにしてもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体としては特に限定されるものではなく、例えば、HDD、CD-ROM、CD-R、MO、MD、DVD等の光ディスク、ICカード、フロッピー(登録商標)ディスク、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROM等の半導体メモリ等を用いることができる。
【0074】
実施の形態3.
【0075】
以下、図9図14を参照しながら、本実施の形態3に係る環境保護設備の制御装置を備える生産計画最適化システムを説明する。
【0076】
図9は、本実施の形態3に係る生産計画最適化システムの構成を説明するためのブロック図である。図9に示すように、本実施の形態3に係る生産計画最適化システム100’は、生産設備a~cに資源を提供する供給設備4をさらに備える点が実施の形態2の生産計画最適化システム100と異なる。
【0077】
供給設備4が生産設備a~cに提供する資源は、例えば、冷水、温水、圧縮空気または電力などである。供給設備4は、供給設備4に関連する供給設備情報を生成し、生成した供給設備情報を生産計画最適化装置3’に出力する。なお、供給設備4は、生産計画最適化装置3’からの指示に応じて、資源の供給状況を制御する。また、図示されていないが、生産設備a~cと供給設備4との間は、例えば、給水管、空気管または電気線路などの資源供給用の供給線路により、接続されている。
【0078】
生産計画最適化装置3’の具体的な構成について、以下に説明する。図5に示すように、本実施の形態に係る生産計画最適化装置3’は、必要資源量算出部401、費用算出部402および生産評価指標算出部403をさらに備える点が実施の形態2の生産計画最適化装置3と異なる。
【0079】
必要資源量算出部401は、生産制御装置2から生産計画実施後に生成された生産関連情報を取得し、供給設備4から生産計画実施後に生成された供給設備情報を取得する。かつ、必要資源量算出部401は、取得された上記生産関連情報および供給設備情報に応じて、生産計画に基づいて、生産計画を実現するための複数種類の資源を決定する。そして、必要資源量算出部401は、生産計画を実現するために必要な各種の資源の量を必要資源量として算出する。生産計画には複数の生産工程が含まれているため、必要資源量算出部401は工程ごとに、各生産工程を実現するために必要な資源を決定し、決定した資源の必要資源量を算出する。
【0080】
図11は、本実施の形態3に係る供給設備情報の一例、即ち、圧縮空気供給設備の供給設備情報の例を示している。図11に示すように、圧縮空気供給設備の供給設備情報は、供給設備と、動作の時刻と、供給量と、設備の動作と、供給設備用の資源などから構成されている。
【0081】
必要資源量算出部401は、供給設備4から当該供給設備情報を取得し、生産制御装置2から生産関連情報を取得し、取得した供給設備情報および生産関連情報に基づいて、生産設備a~cおよび供給設備4の、各生産工程で消費した資源の必要量を合計することにより、必要資源量情報を生成する。
【0082】
図12は必要資源量情報の例を示している。図12の必要資源量情報において、必要資源量算出部401が算出した必要資源量が生産工程ごとに示されている。図12の必要資源量情報において、生産計画を実現するための資源として、消費資源、在庫管理資源および供給設備資源が例示されている。消費資源とは、生産中に消費された資源のことである。消費資源には、例えば、生産用の材料が含まれている。在庫管理資源とは、製品の在庫管理のための資源のことである。供給設備資源とは、消費資源を提供するための供給設備が消費資源を提供するために消費する資源のことである。図12において、消費資源の欄に記載される「600本」などは、消費資源の必要資源量である。また、在庫管理資源の欄に記載される「3000保管管理資源」は、在庫管理資源の必要資源量である。よって、図12においては、消費資源の必要資源量、在庫資源の必要資源量、および供給設備資源の必要資源量が、生産工程ごとに示されている。
【0083】
費用算出部402は、必要資源量算出部401によって決定された資源の種類ごとに、必要資源量を得るための費用を算出する。上記のように、必要資源量算出部401は生産工程ごとに必要資源量を算出しているため、費用算出部402も生産工程ごとに、必要資源量を得るための費用を算出する。具体的には、費用算出部402は、必要資源量算出部401から上記必要資源量情報を取得し、保存している経費項目情報と統合して、各生産工程における生産設備および供給設備に必要な資源の費用を算出することにより、費用情報を生成する。
【0084】
図13は経費項目情報を示している。図13に示すように、経費項目情報は、経費項目と、費用と、費用の種類とから構成されている。経費項目は図12に示す消費資源の経費項目に対応している。費用の欄には、各経費項目の費用単価が示されている。費用の種類の欄には、用途区分における費用の区分が示されている。なお、図13に示す備考の欄は参考用のものであり、経費項目情報には含まれていない。
【0085】
図14は費用情報を示している。図14に示すように、費用情報の構成は図12の必要資源量情報の構成と同じである。しかし、図12の必要資源量情報には、生産工程や資源の種類ごとに必要資源量が記載されており、図14の費用情報には、生産工程や資源の書類ごとに費用が記載されている。
【0086】
在庫管理資源以外の資源について、費用算出部402は、図12の必要資源量情報に記載された必要資源量に図13の経費項目情報に記載される費用の値を乗じることにより、各資源の費用を算出する。
【0087】
在庫管理資源について、費用算出部402は以下の式1にしたがって、費用を算出する。
【0088】
[式1]
【0089】
在庫管理費=Σ[(在庫数量)×(材料費)×(在庫利息)/100+(在庫数量)×(滞留時間)×(在庫管理費)×(保管管理資源)]
【0090】
生産評価指標算出部403は、費用算出部402から費用情報を取得し、取得した費用情報に基づいて、生産計画最適化指標になる生産指標を算出する。
【0091】
具体的には、生産評価指標算出部403は生産工程ごとに、資源の用途に応じて、各資源をある用途カテゴリに割り当てる。そして、生産評価指標算出部403は、生産工程や用途カテゴリごとに、資源の費用を合計する。また、生産評価指標算出部403は、複数の生産工程の複数の用途カテゴリの費用の合計結果を指標化する。生産評価指標算出部403により指標化された費用の合計結果を生産評価指標とする。
【0092】
図15は生産評価指標情報を示している。生産評価指標情報は生産工程ごとに、生産評価指標算出部403に算出された種別カテゴリごとの生産評価指標を示している。図15の例において、用途カテゴリとして、材料カテゴリと、エネルギーカテゴリと、在庫管理カテゴリなどが例示されている。
【0093】
材料カテゴリの生産評価指標は、材料費および労務費に負荷時間を乗算して生産数量で除した値の総和である(下記式2を参照)。図15の例において、材料費はネジおよび塗料の値であり、労務費は作業員の値である。なお、負荷時間は以下の式5に示すように、現状の生産計画による作業時間から計画休止時間を差し引いた時間である。
【0094】
エネルギーカテゴリの生産評価指標は、エネルギー費に負荷時間を乗算して生産数量で除した値の総和である(下記式3を参照)。図15の例において、エネルギー費は空気および電気の値である。
【0095】
在庫管理カテゴリの生産評価指標は、在庫管理費に負荷時間を乗算して生産数量で除した値の総和である(下記式4を参照)。図15の例において、在庫管理費は保管管理資源の値である。
【0096】
[式2]
【0097】
(材料)=Σ{(材料費)+(労務費)}×(負荷時間)/(生産数量)
【0098】
[式3]
【0099】
(エネルギー)=Σ(エネルギー費)×(負荷時間)/(生産数量)
【0100】
[式4]
【0101】
(在庫管理)=Σ(在庫管理費)×(負荷時間)/(生産数量)
【0102】
[式5]
【0103】
(負荷時間)=(作業時間)-(計画休止時間)
【0104】
上記により、生産評価指標が用途カテゴリごとに求められると、生産評価指標算出部403は、用途カテゴリごとの生産評価指標と、用途カテゴリごとの重み付け係数とを用いて、生産計画の評価値を算出する。当該評価値は、用途カテゴリごとの生産評価指標を統一した指標値である。
【0105】
具体的には、適切な生産計画であるほど、以下の式6で得られる評価値は小さい。
【0106】
[式6]
【0107】
(評価値)=w1×(材料)+w2×(エネルギー)+w3×(在庫管理)
【0108】
ただし、w1、w2、w3は重み付け係数であり、ユーザが生産現場の環境、評価の優先順位などの状況に応じて適切に設定することができる。
【0109】
最後に、生産評価指標算出部403は、算出された評価値を学習手段30のデータ取得部300に入力し、報酬算出部301により環境保護設備の運転コストとともに報酬として使用する。
【0110】
本実施の形態3に係る生産計画最適化システムによれば、生産設備の電力使用コストのほか、生産過程での材料、エネルギー、在庫管理など多くの必要資源の費用を考慮して、各生産計画の環境保護の要求を達成するための環境保護設備の運転コストを含めたコストを算出し、機械学習により生産計画とコストとの相関モデルを作成することで、生産計画のコストをさらに削減し、より最適な生産計画を得ることができる。
【0111】
なお、以上の開示された実施の形態のすべての方面は、単なる例示であり、限定的なものではないと考えるべきである。本発明の範囲は、上記の実施の形態ではなく、請求の範囲によって表され、本発明の範囲は、請求の範囲と同等の意味および範囲内のすべての補正および変更も含んでいることは言うまでもない。
【産業上の利用の可能性】
【0112】
以上に示したとおり、本発明の環境保護設備の制御装置、当該環境保護設備の制御装置を備える生産計画最適化システム、生産計画最適化方法、および当該生産計画最適化方法を実行するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体によれば、環境保護設備を備える工場における環境保護設備の運転方式や工場全体の生産計画の最適化に有用である。
【符号の説明】
【0113】
1 環境保護設備の制御装置
2 生産制御装置
3、3’ 生産計画最適化装置
4 供給設備
10 環境パラメータ取得手段
11 調整手段
12 制御手段
30 学習手段
31 最適生産計画決定手段
32 学習結果記憶部
33 最初生産計画提供部
34 外部状況取得手段
100、100’ 生産計画最適化システム
101 VOC収集装置監視プローブ
102 パージガスVOC濃度監視プローブ
104、105 流量計
106 水質監視プローブ
201 送風機周波数変換器
203 電磁弁制御器
300 データ取得部
301 報酬算出部
302 行動価値関数更新部
401 必要資源量算出部
402 費用算出部
403 生産評価指標算出部
図1
図2
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【国際調査報告】