(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】光リレーシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20231219BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20231219BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/16
G02B13/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559154
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021085248
(87)【国際公開番号】W WO2022123035
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523220204
【氏名又は名称】リビング オプティクス リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ワン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン チャッペル
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル マーティン ホーネット
(72)【発明者】
【氏名】ジョン グリフィス
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087LA25
2H087LA27
2H087NA02
2H087NA03
2H087NA15
2H087PA06
2H087PA16
2H087PB10
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA03
2H087RA32
2H087RA41
2H087RA44
2H087UA06
(57)【要約】
スペクトル剪断光リレーシステムであって、前記リレーシステムは、開口絞りSを中心として対称的に配設された2つの半体から構成され、この場合に、それぞれの半体は、対物レンズを形成する複数の回転対称光学要素と、複数の分散プリズムから構成された複合プリズムと、を有する。複合プリズムは、対物レンズと開口絞りの間に配置されている。また、このような光リレーシステムを有する撮像装置も提案されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル剪断光リレーシステムであって、前記光リレーシステムは、開口絞りを中心として対称的に配設された2つの半体から構成されており、2つの半体のそれぞれのものは、対物レンズを形成する複数の回転対称光学要素及び複数の分散プリズムから構成された複合プリズムを有し、
前記複合プリズムは、前記対物レンズと前記開口絞りの間に配置されている、システム。
【請求項2】
前記複合プリズム上に入射した光束は、コリメートされている請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項3】
前記複合プリズムが、中心波長において軸方向主光線の基本的にゼロの逸脱を示している、並びに、
スペクトル範囲の終点における主光線が、画像をスペクトル剪断するように逸脱している、
という条件の少なくとも1つが充足されている請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項4】
前記複合プリズムを形成している前記複数のプリズムは、中心波長における屈折率の小さな差を有しており、具体的には、前記中心波長における前記屈折率の差は、<0.001であり、且つ、
前記複数のプリズムは、スペクトル範囲の終点において屈折率の相対的に大きな差を有する、
という条件の少なくとも1つが充足されている請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項5】
前記スペクトル範囲の終点と前記中心波長の間における前記屈折率の差は、0.003~0.007である請求項4に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項6】
前記複合プリズムの外部面は、光軸に対して垂直である請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項7】
前記複合プリズムの前記外部面は、0.1°以内において実質的に前記光軸に対して垂直である請求項6に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項8】
前記対物レンズは、5つの回転対称レンズ要素(L1、L2、L3、L4、L5)から構成されており、第1レンズ要素及び第2レンズ要素(L1、L2)は、第1ダブレット(D1)を形成し、第3レンズ要素及び第4レンズ要素(L3、L4)は、第2ダブレット(D2)を形成し、前記第1及び第2ダブレット(D1、D2)は、異常部分分散を有する1つのガラスを有し、且つ、第5レンズ要素は、ポジティブシングレットである請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項9】
前記第5レンズ要素は、弱い非球面表面を有する請求項8に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項10】
前記複合プリズムは、400nm~1000nmにおける使用のために補正されており、且つ、前記複合プリズムは、
- 外部プリズム要素用のSchott N-SK4及び内部プリズム要素用のSchott N-KzFS4又はその他の製造者からの等価なガラス、
- 前記外部プリズム要素用のSchott-N-BAF51及び前記内部プリズム要素用のSchott N-KzFS5又はその他の製造者からの等価なガラス、或いは、
- 前記外部プリズム要素用のSchott N-BK10及び前記内部プリズム要素用のSchott N-PK52A又はその他の製造者からの等価なガラス、
という組合せの1つから製造された前記外部プリズム要素及び前記内部プリズム要素から構成されている請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項11】
屈折率分散の2つの尺度は、
v700=(n700-1)/(n400-n700),
P700=(n400-n700)/(n400-n1000)
として定義され、ここで、n400、n700、及びn1000は、400nm、700nm、及び1000nmにおける屈折率であり、且つ、この場合に、前記対物レンズは、
-1.73<Φ
D1/Φ
objective<-1.57
0.92<Φ
D2/ Φ
objective<1.01
0.89<Φ
L5/Φ
objective<0.98
L1用のn
700>1.85、
D1の場合の|Δ
P700/Δv
700|<0.007
D2の場合の|ΔP
700/Δv
700|<0.0001
L5用のv
700>24
という表現を充足しており、この場合に、Φ
objectiveは、対物レンズの屈折力であり、Φ
D1は、第1ダブレット(D1)の屈折力であり、Φ
D2は、第2ダブレット(D2)の屈折力であり、Φ
L5は、シングレット(L5)の屈折力であり、且つ、ダブレット用のΔP
700/Δv
700は、前記ダブレットを有する前記2つのガラス用の前記v
700の差によって除算された前記P
700の差である請求項4に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項12】
前記スペクトル剪断光リレーシステムは、被写体側及び画像側においてテレセントリックである請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項13】
900~1700nmにおける使用のために補正されている請求項1に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項14】
前記複合プリズムは、外部プリズム要素用のSchott N-SF66及び内部プリズム要素用のSchott N-LASF31A又はその他の製造者からの等価なガラスから製造された前記外部プリズム要素及び前記内部プリズム要素から構成されている請求項13に記載のスペクトル剪断光リレーシステム。
【請求項15】
光リレーシステムを有する撮像装置であって、前記光リレーシステムは、開口絞りを中心として対称的に配設された2つの半体を有し、前記2つの半体のそれぞれのものは、対物レンズを形成する複数の回転対称光学要素及び複数の分散プリズムから構成された複合プリズムを有し、且つ、前記複合プリズムは、前記対物レンズと前記開口絞りの間に配置されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月11日付けで出願された米国特許出願第17/118,900号の優先権を主張するものである。米国特許出願第17/118,900号の開示内容は、引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0002】
本発明は、光リレーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
符号化開口スナップショットスペクトルイメージャ(CASSI)は、1回又は複数回の2次元(2D)計測によって3次元(3D)スペクトルデータキューブを取得する演算撮像システムである。
【0004】
通常の全体的な光学アーキテクチャは、シーンをマスク上に結像する結像レンズ、マスキングされた画像を分散要素を通じて中継する分散要素を有するリレー光学システム、及びマスキング及び剪断された画像を検出するためのセンサを有する。オリジナルのデータキューブは、センサ入力からアルゴリズムによって再構築されている。
【0005】
CASSIインスツルメントにおけるリレーレンズ及び分散プリズムの使用については、周知である。分散要素は、複合プリズムであってよい。マスク上の「ピクセル」は、センサのピクセル(或いは、2×2ビン)にマッチングされている。規則的なプリズムの使用は、画像の鮮鋭度を減少させ、これにより、相対的に困難且つ非線形の再構築をもたらす結像異常歪及び横方向色収差などの望ましくない光学効果を結果的にもたらすことになろう。
【0006】
分光法において使用されている従来のリレーシステムは、スリット形状の信号の中継のために十分に補正されている。但し、特に中継された画像のコーナーの場合には、方形(画像)形状の信号の品質を中継及び分散させるための情報をほとんど見出すことができない。
【0007】
参照文献「Ashwin A Wagadarikar, Nikos P Pitsianis, Xiaobai Sun, and David J Brady, “Video rate spectral imaging using a coded aperture snapshot spectral imager,” Optics express, 17(8):6368-6388, 2009」においては、Schott N-SK2及びN-SK4ガラスが使用されている。
【0008】
「”Compound prism design principles, I,” Applied Optics, 50, 24, 4998-5011」、「“Compound prism design principles, II: triplet and Janssen prisms,” Applied Optics, 50, 24, 5012-5022」、及び「“Compound prism design principles, III: linear-in-wavenumber and optical coherence tomography prisms,” Applied Optics, 50, 25, 5023-5030」という名称を有するHagen及びTkaczykによる一連の文献には、これらのシステムにおいて有用である分散プリズムの設計について記述されている。
【0009】
現時点のシステムの欠点は、反射システムによって導入される空間収差と、例えば、プリズム-光子-プリズム(PGP)などの透過システムの支出と、である。現時点のシステムの光スループットは、不十分である。
【0010】
ほとんどの符号化開口ハイパースペクトル撮像システムは、ほとんどが軸方向の色収差によって支配されている非対称リレーシステムを有しているか又は分散のために格子に依存しており、これにより、光スループットが大幅に犠牲にされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の1つは、特にプレーンに沿った「スマイル」及び/又は「キーストーン」歪について補正するように適合された画像の中継又は符号化開口に適する光リレーシステムを提案することにある。
【0012】
本発明の目的の1つは、既知の剪断光リレーシステムと関連する欠点を克服する又は少なくとも軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、請求項1に記載のリレーシステムと、このようなリレーシステムを有する撮像装置と、を提案している。
【0014】
本開示の第1の態様によれば、スペクトル剪断光リレーシステムが提供されており、前記リレーシステムは、開口絞りSを中心として対称的に配設された2つの半体から構成されており、この場合に、それぞれの半体は、対物レンズを形成する複数の回転対称光学要素と、複数の分散プリズムから構成された複合プリズムと、を有する。複合プリズムは、対物レンズと開口絞りの間に配置されている。
【0015】
このようなリレーシステムは、明るい開口及び改善された画像鮮鋭度を提供しており、これは、符号化開口スペクトルイメージャなどの撮像装置において使用された際に特に興味深い。開口絞りを中心としてほぼ対称になるように光学システム全体を制約することにより、多くの収差がほぼゼロに低減される。
【0016】
分散プリズムは、同時に、必要とされるスペクトル剪断を提供し且つプリズムによって生成された光学収差が回転対称光学コンポーネントによって補正されることを許容し、これにより、高鮮鋭度を有する適切にスペクトル剪断された画像を提供するように、設計されている。
【0017】
一態様においては、複合プリズム上に入射した光束がコリメートされている。利点は、コリメートされた光束が無視可能な量の球状収差及びコマを設計に導入し、この結果、鮮鋭度を目的とした全体的な設計の相対的に良好な補正が許容されるという点にある。
【0018】
別の態様においては、複合プリズムが中心波長における軸方向主光線の基本的にゼロの逸脱を示している、並びに、スペクトル範囲の終点における主光線が画像をスペクトル剪断するように逸脱している、という条件の少なくとも1つが充足されている。
【0019】
更に別の態様においては、複合プリズムを形成している複数のプリズムが中心波長において屈折率の小さな差を有し、具体的には、中心波長における屈折率の差が<0.001である、並びに、複数のプリズムがスペクトル範囲の終点において屈折率の相対的に大きな差を有し、具体的には、スペクトル範囲の終点と中心波長の間の屈折率の差が0.003~0.007である、という条件の少なくとも1つが充足されている。
【0020】
異常部分分散を有するガラスの使用は、高度な色収差補正を許容している。
【0021】
複合プリズムの外部面は、光学軸に対して垂直であることが可能であり、好ましくは、この場合に、複合プリズムの外部面は、0.1°以内において光学軸に対して垂直である。中心波長において一定の屈折率を有するほぼプレーンな平行プレートとして出現するようにシステム内のそれぞれのプリズムの形状及び材料を制約することにより、回転対称光学コンポーネントによる高度な単色収差の補正が許容されている。
【0022】
一態様において、対物レンズは、5つの回転対称レンズ要素から構成されており、この場合に、第1及び第2レンズ要素は、第1ダブレットを形成し、且つ、第3及び第4レンズ要素は、第2ダブレットを形成しており、この場合に、第1及び第2ダブレットは、異常部分分散を有する1つのガラスを収容しており、且つ、第5のレンズは、ポジティブシングレットである。
【0023】
第5レンズは、弱い非球面表面を有し得る。非球面表面は、相対的に明るい画像を許容している。
【0024】
回転対称光学コンポーネントの使用は、製造費用を低減している。
【0025】
一実施形態において、リレーオプティクスシステムは、400~1000nmの範囲にわたって回折制限された中継を提供している。複合プリズムは、400nm~1000nmにおける使用のために補正されており、且つ、この場合に、複合プリズムは、
- 外部プリズム要素用のSchott N-SK4及び内部プリズム要素用のSchott N-KzFS4又はその他の製造者からの等価なガラス、
- 外部プリズム要素用のSchott N-BAF51及び内部プリズム要素用のSchott N-KzFS5又はその他の製造者からの透過なガラス、或いは、
- 外部プリズム要素用のSchott N-BK10及び内部プリズム要素用のSchott N-PK52A又はその他の製造者からの等価なガラス、
という組合せの1つから製造された外部プリズム要素及び内部プリズム要素から構成されている。
【0026】
システムが、400nm~1000nmにおける使用のために設計されている更なる態様においては、屈折率分散の2つの尺度は、
v700=(n700-1)/(n400-n700),
P700=(n400-n700)/(n400-n1000)
として定義することが可能であり、この場合に、n400、n700、及びn1000は、400nm、700nm、及び1000nmにおける屈折率であり、且つ、対物レンズは、
-1.73<ΦD1/Φobjective<-1.57
0.92<ΦD2/Φobjective<1.01
0.89<ΦL5/Φobjective<0.98
L1用のn700>1.85
D1の場合の|ΔP700/Δν700|<0.007
D2の場合の|ΔP700/Δν700|<0.0001
L5用のv700>24
という表現を充足することが可能であり、この場合に、Φobjectiveは、対物レンズの屈折力であり、ΦD1は、第1ダブレット(D1)の屈折力であり、ΦD2は、第2ダブレット(D2)の屈折力であり、ΦL5は、シングレット(L5)の屈折力であり、且つ、ダブレットのΔP700/Δν700は、ダブレットを有する2つのガラスのv700の差によって除算されたP700の差である。
【0027】
スペクトル剪断リレーシステムは、被写体と画像の両側においてテレセントリックであり得る。
【0028】
別の実施形態において、リレーオプティクスシステムは、900~1700nmにおいて使用されるように補正された短波赤外範囲にわたる回折制限された中継を提供している。この範囲においては、複合プリズムは、外部プリズム要素用のSchott N-SF66及び内部プリズム要素用のSchott N-LASF31A又はその他の製造者からの等価なガラスから製造された外部プリズム要素及び内部プリズム要素から構成することができる。
【0029】
リレーオプティクスシステムは、相対的に低費用において製造され得る高鮮鋭度の、高輝度の、スペクトル剪断リレーシステムを許容している。リレーオプティクスシステムは、カスタム設計されたレンズ及びプリズムから構成され、且つ、2つの(同一の)非球面表面を含み、この結果、形状歪及び横方向色収差が回避されている。
【0030】
また、本発明は、このような上述の光リレーシステムを有する撮像装置を提案している。このような撮像装置は、断層撮影イメージャ又は符号化開口撮像装置であってよい。
【0031】
任意の態様の特徴(任意選択的特徴を含む)は、適宜、任意のその他の態様のものと組み合わせることができる。
【0032】
例としてのみ以下の図面を参照し、例示用の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、一実施形態による撮像装置の概略図である。
【0034】
【
図2】
図2は、スペクトル剪断のプレーンにおける一実施形態によるリレー装置の概略図である。
【0035】
【
図3】
図3は、非スペクトル剪断のプレーンにおける一実施形態による
図2の装置の概略図である。
【0036】
【
図4】
図4は、一実施形態による
図2及び
図3の装置における軸方向被写体ポイント用の剪断方向における分散の図である。
【0037】
【
図5】
図5は、一実施形態による
図2及び
図3の装置によるスペクトル剪断に対する残留横方向色の効果を示す複数波長におけるスポット図である。
【0038】
【
図6】
図6は、一実施形態による
図2及び
図3の装置に伴う複数波長における歪性能を示す。
【0039】
【
図7A】
図7Aは、
図2及び
図3の装置におけるMTF(Modulation Transfer Function)としての複数波長における鮮鋭度性能を示す。
【
図7B】
図7Bは、
図2及び
図3の装置におけるMTF(Modulation Transfer Function)としての複数波長における鮮鋭度性能を示す。
【
図7C】
図7Cは、
図2及び
図3の装置におけるMTF(Modulation Transfer Function)としての複数波長における鮮鋭度性能を示す。
【
図7D】
図7Dは、
図2及び
図3の装置におけるMTF(Modulation Transfer Function)としての複数波長における鮮鋭度性能を示す。
【0040】
【
図8】
図8は、
図2及び
図3のリレーにおいて使用可能であるプリズム材料の屈折率プロパティを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図は、概略的なものであり、且つ、縮尺が正確的はないことに留意されたい。一般に、変更された且つ異なる実施形態において対応する又は類似の特徴を意味するように、同一の参照符号が使用されている。
【0042】
【0043】
撮像装置1は、ハイパースペクトル撮像装置であってもよく、この場合に、符号化開口プレート2は、検出器4における画像に対して光リレー10によって中継される対象の被写体を形成している。
【0044】
光リレー10は、検出器に跨って1つの向きにおいて画像をスペクトル剪断するように適合されており、この場合に、検出器は、すべての剪断された波長に対する適切に幅広のスペクトル応答を有する。
【0045】
光リレーは、光学スペクトル剪断システムであり、且つ、
図2及び
図3に示されている。
【0046】
それぞれ、本発明の一実施形態に従って、
図2は、スペクトル剪断のプレーン内において光学スペクトル剪断リレーシステム10を示しており、且つ、
図3は、非スペクトル剪断のプレーン内において光学スペクトル剪断リレーシステム10を示している。
【0047】
図2及び
図3の光学スペクトル剪断リレーシステム10は、複数の複合プリズム31と、複数の回転対称レンズ要素L1、L2、L3、L4、及びL5と、を有し、この場合に、それぞれは、2回にわたって使用され、且つ、開口絞りSを中心として対称的に配設されている。
【0048】
換言すれば、光学スペクトル剪断システム10は、開口絞りSを中心として対称的に配設された2つの半体を有する。
【0049】
それぞれの半体は、対物レンズ21及び複合プリズム31から構成されており、以下、その設計について詳述する。
【0050】
複合プリズム31は、対物レンズ側における外部プリズム要素P1及び開口絞り側における内部プリズム要素P2によって形成された、接合された複合プリズムである。
【0051】
複合プリズム31の外部表面22は、ほぼ光学軸に対して垂直である。従って、スペクトル帯域の中心波長において、複合プリズムは、絞りを中心として対称的に配設された同一材料から形成されたプレーン平行プレートとほぼ同様の外観を有する。
【0052】
具体的には、外部プリズム要素P1上の外部プリズム表面は、0.1°未満だけ、好ましくは0.05°未満だけ、光学軸に対する垂直から傾斜しており、この結果、システム内のどこか別の場所における回転対称光学要素による残留収差の良好な補正が許容されている。
【0053】
相対的に多くの外部プリズム表面傾斜を有することは、収差補正に対して影響を及ぼす。例えば、N-BAF51及びN-KzFS5の組合せは、約2倍の外部プリズム表面の傾斜を必要とし、且つ、この組合せは、相対的に乏しい分散をももたらした。N-BK10とN-PK52Aの組合せは、相対的に乏しい外部プリズム表面の傾斜を有するが、最小の合計分散をもたらしている。
【0054】
また、内部プリズム要素P2の外部プリズム表面は、光学軸に対して垂直から、0.1未満だけ、好ましくは0.05°未満だけ、傾斜している。好ましくは、内部プリズム要素P2の外部プリズム表面は、光学軸に対して垂直である。
【0055】
絞りを中心としたプレーン平行プレートを含むレンズ要素の対称的な配設は、光学システムにおけるコマ、歪、及び横方向色を自動的に補正している。従って、中心波長において、光学システムは、無視可能な量のコマ及び歪を有する。
【0056】
1つの次元における望ましいスペクトル剪断は、プリズムの分散動作によって生成され、且つ、1つの次元のみにおける横方向色と等価である。設計のその他のコンポーネントによって寄与される回転対称横方向色は、プリズムによるスペクトル剪断との関係において、小さく、且つ、重要ではない。
【0057】
残りの収差は、光学設計の技術分野において周知の技法を使用する且つ従来の光学製造方法によって製造された回転対称レンズ要素により、補正することができる。
【0058】
図2及び
図3の実施形態においては、複合プリズムは、中心波長において軸方向束の主光線の逸脱が基本的に存在しないように、且つ、短い波長と長い波長の間において軸方向束の主光線の約0.7°の逸脱が存在するように、設計されている。
【0059】
屈折率の範囲及びプロファイルが、プリズムが光学システムに対して提供する分散及び分散の線形性を決定している。
【0060】
複合プリズム31は、複数の材料から構成されている。スペクトル帯域の中心波長における外部プリズム要素P1及び内部プリズム要素P2の材料の間の屈折率の差は、材料の間において小さい。屈折率の差は、スペクトル帯域の中心波長からの逸脱に伴って増大している。例えば、2つのプリズム材料の間の屈折率の小さな差は、中心波長においては0.001未満の、且つ、400nm~1000nmの全体スペクトル範囲の終点においては0.003~0.007の、差である。
【0061】
図2及び
図3の実施形態においては、中心波長における外部プリズム要素P1と内部プリズム要素P2の間の屈折率の小さな差は、P1用のSchott N-SK4及びP2用のSchott N-KzFS4を使用することにより、取得されている。P1用のSchott N-KZFS4及びP2用のSchott N-SK4を使用することにより、等しく良好な結果が得られている。類似の複合プリズム用のその他の良好なSchottガラス選択肢は、N-BAF51+N-KzFS5及びN-BK10+N-PK52Aを含む。また、光学設計の技術分野における当業者には周知のように、400~1000nmの類似の屈折率プロファイルを有するその他のガラス製造者からのガラスを良好な結果と共に使用することもできる。
図8は、これらの材料のいくつかの屈折率プロパティを要約している。これらの組合せは、いずれも、好ましくは0.001未満である700nmの中心波長における屈折率の小さな差を示している。
【0062】
N-Sk4とN-KzFS4の組合せは、400nm~1000nmの複合プリズムスペクトル範囲の設計基準を充足するための良好な選択肢であることが見出されている。
【0063】
また、このN-Sk4及びN-KzFS4のプリズムガラスの組合せは、ほとんどの分散を付与し、且つ、従って、固定された光学システム長において最大数のスペクトルチャネルを付与している。また、2つのガラスの間における(400nm~1000nmの全体スペクトル範囲の端部における0.003~0.007の)スペクトル範囲にわたる屈折率の差も、システム内のどこか別の場所の回転対称光学要素による良好な収差補正を許容するように、プレーン平行プレートに十分に類似した外観を有する状態にプリズムを維持するために十分に小さかった。
【0064】
外部プリズム要素P1と内部プリズム要素P2の間の内部プリズム角度は、全体的なプリズムサイズを妥当にコンパクトな状態に維持するために十分に小さくすることができる。小さな角度は、垂直であるP1/P2表面から60度以内となるように定義することができる。プリズムは、大きくなるほど、その高さよりも長くなり、これにより、光学経路長の更なる増大をもたらす。
【0065】
図2及び
図3の実施形態は、400nm~1000nmにおいて動作している。剪断方向における分散は、240μmであり、この結果、検出において検出要素4.8μm×4.8μmを使用することにより、50個のスペクトルチャネルが許容されている。これは、4.92×4.92mmの被写体側視野にわたってf/4.2の有効F値によって動作している。
図4は、軸方向被写体ポイント用の剪断方向における画像における分散を示している。
図5は、スペクトル剪断に対する残留横方向色の効果を示す複数波長におけるスポット図である。
図6は、複数波長における歪性能を示している。
【0066】
図7A~
図7Dは、MTF(Modulation Transfer Function)としての複数波長における鮮鋭度性能を示しており、且つ、比較のために回折制限された性能を含む。鮮鋭度に加えて、高MTFは、検出器要素の間におけるスペクトルクロストークを極小化している。スペクトル剪断性能、低歪、及び高MTFの組合せは、後続の信号処理が高品質ハイパースペクトル画像を抽出することを許容している。
【0067】
また、一実施形態においては、900~1700nmの短波長赤外範囲において動作するリレーシステムも提案されている。この動作範囲においては、プリズム複合体は、好ましくは、外部プリズム要素用のSchott N-SF66及び内部プリズム要素用のSchott N-LASF31A又はその他の製造者からの等価なガラスから製造されている。この動作SWIR範囲においては、必要とされる分散が複合プリズムの2つのガラスの間の非常に大きな角度を必要としており、この結果、外部及び内部プリズムが相対的に長くなることに留意する必要がある。これらの長さにおけるプリズムの内部透過率は、低い全体システム透過率を駆動している。透過率は、被覆によって改善することができない。
【0068】
従来技術において示されている符号化開口プレートと検出器の間の従来技術のリレーシステムは、プリズム要素の屈折率がスペクトル帯域の中心波長においてマッチングした状態において、光学軸に対してほぼ垂直の外部プリズム表面を有しておらず、或いは、光学設計の対称的原理を使用している。本システム発明は、従来技術との比較において、開口、視野、及び鮮鋭度の改善を提供している。
【0069】
対物レンズ21は、5つの回転対称レンズ要素L1、L2、L3、L4、及びL5から構成されている。対物レンズ21は、第1及び第2レンズ要素L1及びL2から製造されたネガティブダブレットD1、第3及び第4レンズ要素L3及びL4から製造されたポジティブダブレットD2を有し、且つ、第5レンズ要素L5は、ポジティブシングレットである。
【0070】
ポジティブシングレットは、非球面であり得るプリズムに対向する表面を有する。非球面表面は、球面収差についての補正を支援する相対的に明るい画像を許容している。これに加えて、これは、リレーシステムのサイズを低減している。
【0071】
シングレット要素用の非球面表面は、400~900nmの範囲の場合に好適であり、且つ、900~1700nmの範囲の場合には、任意選択であることに留意する必要がある。
【0072】
ダブレットを形成するために第1及び第2レンズ要素L1及びL2を接合し且つ第3及び第4レンズ要素L3及びL4を接合することにより、厳格な精度要件の回避が許容され、且つ、AR被覆用の空気-ガラスインターフェイスの数が低減される。
【0073】
それぞれのダブレットD1、D2は、異常部分分散を有する1つのガラスを含んでいる。
【0074】
対物レンズ21は、様々なフィールドポイントからプリズム31に対してコリメートされた光束を供給している。利点は、コリメートされた光束が無視可能な量の球面収差及びコマを設計に導入し、この結果、鮮鋭度を目的とした全体設計の相対的に良好な補正が許容されるという点にある。実際に、いくつかの従来技術において示されているように物体又は画像空間内において収束ビーム内にプリズムを配置することにより、球面収差及びコマが画像に導入されている。
図2及び
図3に示されている実施形態に等価な鮮鋭度を実現するためのこれらの収差の補正は、さもなければ、格段に複雑且つ費用を所要する光学設計を必要とすることになろう。これらを補正しなければ、鮮鋭度が劣化する。
【0075】
更には、開口絞りSは、被写体及び画像空間の両方においてほぼテレセントリックなシステムを提供するように、対物レンズ21の基点との関係において配置されている。ダブルテレセントリック性の利点は、ハイパースペクトル撮像装置1などのCASSIシステム内において使用された際に、光学システムスペクトル剪断システム1の倍率が符号化開口プレート2又は検出器3の長手方向シフトに対して感度を有していないという点にある。これは、全体システムの組立及び較正に対する支援である。
【0076】
画像空間内のウィンドウは、空気と等価な厚さによって置換され得ることから、対称性に対して大きな影響を有していないことに留意されたい。
【0077】
絞りを中心としたプレーン平行プレートを含むレンズ要素の対称的配設は、光学システムにおけるコマ、歪、及び横方向色を自動的に補正している。従って、中心波長において、光学システムは、無視可能な量のコマ及び歪を有する。
【0078】
回転対称光学コンポーネントの使用は、製造費用を低減している。
【0079】
400nm~1000nmという幅広の波長範囲にわたる色収差の補正は、対物レンズ21の設計が特定の条件を充足している際に得ることができる。屈折率分散の2つの尺度は、
v700=(n700-1)/(n400-n700),
P700=(n400-n700)/(n400-n1000)
として定義され、この場合に、n400、n700、及びn1000は、400nm、700nm、及び1000nmにおける屈折率である。
【0080】
リレーシステム用の良好な解決策は、以下の条件下において見出されており、ここで、Φobjectiveは、第1ダブレットD1、第2ダブレットD2、及びシングレットL5から構成された対物レンズの屈折力であり、且つ、ΦD1は、第1ダブレットD1の屈折力であり、ΦD2は、第2ダブレットD1の屈折力であり、ΦL5は、シングレットL5の屈折力であり、且つ、ダブレットのΔP700/Δv700は、ダブレットを有する2つのガラス用のv700の差によって除算されたP700の差である。
-1.73<ΦD1/Φobjective<-1.57
0.92<ΦD2/Φobjective<1.01
0.89<ΦL5/Φobjective<0.98
L1用のn700>1.85
D1の場合の|ΔP700/Δv700|<0.007
D2の場合の|ΔP700/Δv700|<0.0001
L5用のv700>24
【0081】
レンズL5は、球面収差の補正を支援するために弱い非球面表面を有する。相対的に低速の開口数又は相対的に低い鮮鋭度要件を有するリレーは、この非球面表面を必要としてはいない。
【0082】
要すれば、400~1000nmにおいて動作するシステムの場合には、対物レンズは、好ましくは、第1ダブレットのための第1レンズ要素L1用のSchott N-LASF46B及び第2レンズ要素用のSchott N-KZFS4又はその他の製造者からの等価なガラス、第2ダブレットD2のための第3レンズ要素L3用のSchott N-PK51及び第4レンズ要素L4用のSchott N-KZFS11又はその他の製造者からの等価なガラス、第5レンズ要素L5のためのSchott NPK51又はその他の製造者からの等価なガラスというガラスを有する。
【0083】
400~1000nmにおいて動作するシステム用のプリズム組合せは、好ましくは、外部プリズム要素用のSchott N-SK4及び内部プリズム要素用のSchott N-KzFS4又はその他の製造者からの等価なガラス、外部プリズム要素用のSchott N-BAF51及び内部プリズム要素用のSchott N-KzFS5又はその他の製造者からの等価なガラス、並びに、外部プリズム要素用のSchott N-BK10及び内部プリズム要素のSchott N-PK52A又はその他の製造者からの等価なガラスという組合せの1つのうちから選択されている。
【0084】
要すれば、スペクトル剪断リレーシステムは、L1:N-LASF46B、L2:N-KZFS4、L3:N-PK51、L4:N-KZFS11、L5:N-PK51、等価なガラス、及び上述のプリズム組合せの1つという光学処方を有することができる。
【0085】
400~1000nmにおいて動作するリレー設計は、コンパクトであり、この場合に、被写体と画像の間の距離は、99mmである。
【0086】
別の実施形態において、代替リレーシステムは、900~1700nmという短い赤外システムにおいて動作するように設計されており、この場合に、被写体と画像の間の距離は、約277mmである。実際に、この範囲内においては、必要とされる分散は、複合プリズムの2つのガラスの間の非常に大きな角度を必要としており、この結果、外部及び内部プリズムが相対的に長くなる。
【0087】
900~1700nmにおいて動作するリレーシステムの場合には、対物レンズは、好ましくは、第1レンズ要素L1用のSchott N-LASF31A及び第2レンズ要素(L2)用のSchott N-KZFS4(ダブレット1)、第3レンズ要素L3用のSchott N-FK51A及び第4レンズ要素L4用のSchott N-KZFS11(ダブレット2)、及び第5レンズ要素L5用のSchott N-FK51A(シングレット)というガラスを有する。プリズム複合体は、好ましくは、外部プリズム要素用のSchott N-FS66及び内部プリズム要素用のSchott N-LASF31A又はその他の製造者からの等価なガラスから製造されている。
【0088】
要すれば、本発明は、鮮鋭であるのみならず1つの方向においてスペクトル剪断された画像を形成する回転対称レンズ要素及び複合プリズムを有する剪断光学システムを提案している。これは、等倍で動作しており、且つ、ダブルテレセントリック性により、倍率が組立の際の被写体又は画像の長手方向シフトに対して不感状態となっている。全体性能に対するウィンドウの効果は、大きなものではない。これは、全体システムの組立及び較正に対する支援である。
【0089】
更なる参照文献は、以下のものを含む。
・Wagadarikar, John, Willet, and Brady, “Single disperser design for coded aperture snap- shot”, Applied Optics, 47, 10, B44-B51 (2008)
・Kittle, Cho, Wagadarikar, and Brady, “Multiframe image estimation for coded aperture snapshot spectral imagers”, Applied Optics, 49, 36, 6824-6833 (2010)
・Kester, Bedard, Gao, Tkacyzk, “Real-time snapshot hyperspectral imaging endoscope”, Journal of Biomedical Optics, 16, 5, 056005-1-12 (2011)、及び
・Arce, Brady, Carin, Arguello, Kittle, Compressive Coded Aperture Spectral Imaging, IEEE Signal Processing Magazine, 105-115 (2014)
【0090】
本発明の好適な実施形態に関する上述の説明は、例示及び説明を目的として提示されたものである。本発明のすべてを網羅する又はこれを開示された形態そのままに限定することは、意図されておらず、且つ、以上の教示内容に鑑み、変更及び変形が、可能であり、或いは、本発明の実施から取得され得る。実施形態は、当業者が想定された特定の使用に適するように様々な実施形態において本発明を利用することを可能にするために本発明の原理及びその実際的な適用を説明するように選択及び記述されている。本発明の範囲は、添付の請求項及びその均等物によって定義されるように意図されている。上述の文献のそれぞれは、引用により、そのすべてが本明細書に内蔵される。
【国際調査報告】