(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】身体運動パフォーマンスを改善するため方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/26 20060101AFI20231219BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20231219BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20231219BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20231219BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20231219BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231219BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231219BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K31/26
A61K31/7024
A61K38/47
A61P3/02
A61K36/31
A61P7/00
A61P31/04
A61P1/16
A61P21/00
A61P3/10
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559158
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021085455
(87)【国際公開番号】W WO2022128897
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523225405
【氏名又は名称】フィリップ ラルセン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ラルセン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、身体運動パフォーマンスを改善するための、及び/又は身体運動への適応を改善するための、及び/又はヒト対象の血液中の乳酸塩及び/若しくはグルコースの濃度を調節するための、組成物、使用、及び方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物であって、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応の改善に使用するための、組成物。
【請求項2】
ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善するための方法であって、スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物により前記ヒト対象を治療するステップを含む、方法。
【請求項3】
前記ヒト対象が、スルフォラファンを含む組成物を投与される、請求項1に記載の使用又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト対象が、グルコラファニン、又はグルコラファニン及びミロシナーゼを含む組成物を投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項5】
前記組成物が、ブロッコリーの芽若しくはその抽出物、成熟ブロッコリー若しくはその抽出物、芽キャベツ若しくはその抽出物、ケールの芽若しくはその抽出物、ケール若しくはその抽出物、キャベツ若しくはその抽出物、キャベツの芽若しくはその抽出物、カリフラワー若しくはその抽出物、カリフラワーの芽若しくはその抽出物、ブロッコリーラーブ若しくはその抽出物、ブロッコリーラーブの芽若しくはその抽出物、レッドケール若しくはその抽出物レッドケールの芽若しくはその抽出物、コールラビ若しくはその抽出物コールラビの芽若しくはその抽出物、赤ミズナ若しくはその抽出物赤ミズナの芽若しくはその抽出物を含み、かつ/又は任意選択的に、追加でミロシナーゼを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
前記ミロシナーゼが、ブラウンマスタードの種子若しくはその抽出物、ホワイトマスタードの種子若しくはその抽出物、イエローマスタードの種子若しくはその抽出物、ハナダイコン若しくはその抽出物、ハナダイコンの種子若しくはその抽出物、ハナダイコンの芽若しくはその抽出物、ガーデンクレス若しくはその抽出物、ガーデンクレスの種子若しくはその抽出物、ガーデンクレスの芽若しくはその抽出物、ワサビ若しくはその抽出物、ワサビの種子若しくはその抽出物、ワサビの芽若しくはその抽出物、ダイコン若しくはその抽出物、ダイコンの種子若しくはその抽出物、ダイコンの芽若しくはその抽出物、セイヨウワサビ若しくはその抽出物、セイヨウワサビの種子若しくはその抽出物、セイヨウワサビの芽若しくはその抽出物、ラディッシュ若しくはその抽出物、ラディッシュの種子若しくはその抽出物、ラディッシュの芽若しくはその抽出物から選択されるか、又は精製若しくは単離されたミロシナーゼである、請求項5に記載の使用又は方法。
【請求項7】
前記組成物が、ブラウンマスタードの種子若しくはその抽出物、ホワイトマスタードの種子若しくはその抽出物、イエローマスタードの種子若しくはその抽出物、ハナダイコン若しくはその抽出物、ハナダイコンの種子若しくはその抽出物、ハナダイコンの芽若しくはその抽出物、ガーデンクレス若しくはその抽出物、ガーデンクレスの種子若しくはその抽出物、ガーデンクレスの芽若しくはその抽出物、ワサビ若しくはその抽出物、ワサビの種子若しくはその抽出物、ワサビの芽若しくはその抽出物、ダイコン若しくはその抽出物、ダイコンの種子若しくはその抽出物、ダイコンの芽若しくはその抽出物、セイヨウワサビ若しくはその抽出物、セイヨウワサビの種子若しくはその抽出物、セイヨウワサビの芽若しくはその抽出物、ラディッシュ若しくはその抽出物、ラディッシュの種子若しくはその抽出物、ラディッシュの芽若しくはその抽出物、又は精製若しくは単離されたミロシナーゼを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項8】
前記組成物が、ブロッコリーの芽又はその抽出物、及び任意選択的に、マスタードの種子又はその抽出物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項9】
前記組成物が、経口投与用であり、前記ヒト対象に経口投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項10】
前記組成物がスルフォラファンを含み、腹腔内、経皮、舌下又は直腸への投与用又は注射用であり、腹腔内的、経皮的、舌下的、直腸的に又は注射によって前記ヒト対象に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項11】
前記組成物が、前記ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を調節する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項12】
前記組成物が、前記ヒト対象の血液中のグルコース濃度を調節し、好ましくは、前記組成物が、前記ヒト対象の血液中のグルコース濃度を増加させる、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項13】
前記組成物が、1回かつ単回投与で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項14】
前記ヒト対象が、身体運動パフォーマンスの改善を必要としているか、又は望んでいる、請求項13に記載の使用又は方法。
【請求項15】
前記組成物が、1g~140gのブロッコリーの芽を含み、例えば、前記組成物が、10g、25g、50g、60g、70g、80g、90g、100g、110g、120g、130g又は140gのブロッコリーの芽を含む、請求項13又は14に記載の使用又は方法。
【請求項16】
前記組成物が、0.055mg~500mgのグルコラファニン(任意選択的に、1.75mg~500mgのグルコラファニン)、例えば、0.0055mg、0.01mg、0.025mg、0.05mg、0.075mg、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.75mg、17.5mg、43.75mg、87.5mg、105mg、122.5mg、131.25mg、140mg、157.5mg、175mg、192.5mg、210mg、227.5mg、245mg、300mg、400mg又は500mgを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項17】
前記組成物が、5.9μg~100mgのスルフォラファン(任意選択的に、0.18768mg~100mgのスルフォラファン)、例えば、5.9μg、10μg、25μg、50μg、75μg、0.1mg、0.15mg、0.188mg、1.188mg、4.962mg、9.384mg、11.261mg、13.138mg、15.014mg、16.891mg、18.768mg、20.6448mg、22.5216mg、24.3984mg、26.2752mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項18】
前記組成物が、0.5g~10gの間のマスタードの種子、例えば、0.5g、0.75g、1g、1.5g、2g、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10gのマスタードの種子を含み、任意選択的に、前記マスタードの種子がブラウンマスタードの種子である、請求項13~17のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項19】
前記組成物が、前記ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を低減する、請求項13~18のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項20】
前記組成物が、身体運動の前に、好ましくは、身体運動の6時間未満前、又は5時間未満前、又は3時間未満前、又は2時間未満前、又は1時間未満前に、前記ヒト対象に投与される、請求項13~19のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項21】
前記組成物が、前記ヒト対象における身体運動パフォーマンスを改善する、請求項13~20のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項22】
前記組成物が、運動から生じる酸化ストレスに耐える前記ヒト対象の能力を改善する、請求項13~21のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項23】
前記組成物が、運動中の前記ヒト対象の身体持久力を改善する、請求項13~22のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項24】
前記ヒト対象が、乳酸アシドーシスに罹患している、請求項13~23のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項25】
前記組成物が、乳酸アシドーシス及び/又は疲労の増加に関連する医学的状態、例えば、ミトコンドリアミオパチー(MELAS症候群)、ビオチン欠損症、血流又は体組織内の細菌感染症(敗血症)、糖原病、ライ症候群、短腸症候群、肝不全、低酸素症(例えば、心臓又は血管の不具合によって引き起こされる低酸素症)、細菌性髄膜炎、チアミン欠損症(特にTPNの間)、組織内の細胞への酸素送達障害(例えば、血流障害(低灌流)による)、出血、多発性筋炎、エタノール毒性、ショック、進行性肝疾患、糖尿病性ケトーシス、過度な運動(過度のトレーニング)、局所的低灌流(例えば、腸虚血又は顕著な蜂窩織炎)、例えば、非ホジキンリンパ腫及びバーキットリンパ腫、褐色細胞腫などのがん、及び/又は腫瘍崩壊症候群などの予防又は治療に使用される、請求項19に記載の使用又は方法。
【請求項26】
前記組成物が、メトホルミン又はアセトアミノフェンによって引き起こされる乳酸アシドーシスを低減するために使用される、請求項19に記載の使用又は方法。
【請求項27】
前記組成物が、リネゾリド、イソニアジド、プロポフォール、エピネフリン、プロピレングリコール、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、アバカビル/ドルテグラビル/ラミブジン)、エムトリシタビン/テノホビル、シアン化カリウム(シアン化物中毒)及び/又はフィアルリジンによって引き起こされる増加した血中乳酸塩値を低減するために使用される、請求項19に記載の使用又は方法。
【請求項28】
前記組成物が、少なくとも2日の期間、好ましくは3日間、又は4日間、又は5日間、又は6日間、又は7日間、又は2週間、又は3週間、又は4週間、又は1ヶ月間、又は2ヶ月間、又は3ヶ月間、又は4ヶ月間、又は5ヶ月間、又は6ヶ月間、又は1年間、又はそれ以上の期間、毎日投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項29】
前記ヒト対象が、身体運動への適応の改善及び/又は身体運動パフォーマンスの改善を必要としているか、又は望んでいる、請求項28に記載の使用又は方法。
【請求項30】
前記組成物が、120gを超えるブロッコリーの芽、好ましくは150gを超えるブロッコリーの芽、例えば200gのブロッコリーの芽を含む、請求項28又は29に記載の使用又は方法。
【請求項31】
各日の16時間の期間以内に摂取されるブロッコリーの芽の総量が、120g~200g、好ましくは150g~200gであり、例えば、前記ヒト対象が、各日の16時間の期間以内に75gのブロッコリーの芽を2回用量摂取する、請求項28~30のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項32】
前記組成物が、前記ヒト対象における正常な血中乳酸塩濃度と比較して、任意選択的に、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも24%、前記ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を増加させる、請求項28~31のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項33】
前記組成物が、前記ヒト対象において血中グルコースの増加をもたらす、請求項28~32のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項34】
前記組成物が、前記ヒト対象が低血糖で過ごす時間を短縮する、請求項28~33のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項35】
前記組成物が、前記ヒト対象における激しい身体運動に関連する低血糖を低減する、請求項28~34のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項36】
前記組成物が、前記ヒト対象における身体運動への適応を改善する、請求項28~35のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項37】
前記身体運動への適応の改善が、
-前記ヒト対象の細胞におけるミトコンドリアの数及び/又は密度及び/又は活性の増加、並びに/又は
-例えば、ミトコンドリア新生経路の活性化に起因する、前記ヒト対象の体内における毛細血管の数の増加、を含む、請求項36に記載の使用又は方法。
【請求項38】
前記組成物が、身体運動中の前記ヒト対象の身体持久力を改善し、かつ/又は酸化ストレスに対する耐性を改善する、請求項28~36のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項39】
身体運動への改善された適応が、乳酸塩値から生じるストレスに前記ヒト対象の身体が適応することから生じる、請求項36に記載の使用又は方法。
【請求項40】
少なくとも2日の期間の投与後に、身体運動パフォーマンスが前記ヒト対象において改善される、請求項28~39のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項41】
前記組成物が、マッカードル病、LDH欠損症、フルクトース1,6-ビスホスファターゼ欠損症、グルコース-6-ホスファターゼ欠損症、グレイシル症候群、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症及び/又はリー症候群の予防又は治療に使用される、請求項32のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項42】
前記ヒト対象が男性又は女性である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項43】
前記ヒト対象が競技者である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項44】
前記ヒト対象が、競技パフォーマンスの改善を望んでいる、及び/又は必要としている、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項45】
前記ヒト対象における身体運動パフォーマンスの改善が、身体出力の増加、作業負荷の増加、最大酸素摂取量の増加、最大限の努力の増加、疲労困憊の減少、筋肉疲労の減少、低血糖の減少、正常な血糖の維持、乳酸アシドーシスの減少、一定の作業負荷における疲労困憊までの時間の減少、及び/又は特定の作業(例えば、特定の距離を走る、泳ぐ、若しくは自転車をこぐ)を完了するのにかかる時間の減少のうちの1種以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項46】
前記ヒト対象における身体運動への適応の改善が、最大心拍数の維持、ミトコンドリア密度の増加、ミトコンドリア呼吸の増加、筋肉乳酸塩輸送のレベルの増加、及び/又は低血糖の減少のうちの1種以上を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項47】
前記組成物が、ブロッコリーの芽(若しくはその抽出物)及び/又はマスタードの種子(若しくはその抽出物)を含み、前記組成物が、100:0~1:10の間のブロッコリーの芽(若しくはその抽出物)対マスタードの種子(若しくはその抽出物)の割合、例えば、100:1のブロッコリーの芽(若しくはその抽出物)対マスタードの種子(若しくはその抽出物)の割合を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項48】
前記組成物が、50gのブロッコリーの芽(又はその抽出物)及び0.5gのマスタードの種子(又はその抽出物)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項49】
前記組成物が1日当たり2~10回投与される、請求項1~13又は28~48のいずれか一項に記載の使用又は方法。
【請求項50】
ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度の調節及び/又はグルコース濃度の増加における、使用のためのスルフォラファン、又は使用のためのグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ。
【請求項51】
ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を調節する及び/又はグルコース濃度を増加させる方法であって、前記ヒト対象をスルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼで治療するステップを含む、方法。
【請求項52】
ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善するための薬剤の製造における、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼの使用。
【請求項53】
ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を調節する及び/又はグルコース濃度を増加させるための薬剤の製造における、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼの使用。
【請求項54】
添付の特許請求の範囲、明細書、及び/又は図面を参照して、本明細書で実質的に定義される使用、方法、又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体運動パフォーマンスを改善するための、並びに/又は身体運動への適応を改善するための、並びに/又はヒト対象の血液中の乳酸塩及び/若しくはグルコースの濃度を調節するための、組成物、使用、及び方法に関する。
【0002】
多くの個人が、身体運動パフォーマンスを改善し、かつ/又は身体運動への適応を改善することを望んでいる、及び/又は必要としていることは、周知である。そのような個人は、競技者(競争レベル、非競争レベル、プロフェッショナルレベル、又は非プロフェッショナルレベル)、一般的に健康及びフィットネスの改善に関心のある個人、並びに医療上の理由で改善を望む、及び/又は必要とする個人などがある。
【0003】
したがって、身体運動パフォーマンスを改善することができる(例えば、競争などの特定の状況でパフォーマンスを改善させるため)及び/又は身体運動への適応を改善することができる(例えば、現在のトレーニング計画を支援するか、又はそれほど厳しくトレーニングする必要なしにより良い結果を達成するため)サプリメントに対する広範な需要が存在する。
【0004】
そのようなサプリメントは商業的に重要であり、これは、身体運動パフォーマンスを改善し、かつ/又は身体運動への個人の適応を改善することを目的とした、市場で入手可能な幅広い異なるサプリメントが現在存在するという事実に反映されている。これらには、酸化防止剤(ビタミンC又はコエンザイムQ10など)、アミノ酸(特にアルギニン、ロイシン、バリン、グルタミン、ベータアラニン)、カフェイン、無機硝酸塩、ケトンエステル、重炭酸塩、クレアチン、鉄、人参、クルクミンなどを含むハーブ製剤などが含まれる。
【0005】
ケトンエステル補充は、最近、非常に激しい運動の期間中に、いくつかの悪影響、特に最大心拍数の減少及び夜間アドレナリンの増加を減衰させることが示されている(Poffe et al,2019)。しかし、ケトンエステルを補給すると軽度のアシドーシスが誘発され、肯定的な効果の一部が否定される。更に、ケトンのパフォーマンス向上効果に関する科学的コンセンサスは議論されている。
【0006】
この背景に対して、本発明者は、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を著しく改善するために使用できる薬剤及び組成物を同定した。驚くべきことに、本発明者の薬剤及び組成物は、運動パフォーマンスの短期的な向上、及び身体運動への適応の長期的な改善の両方を提供するために使用され得る。更に、前述のサプリメントとは異なり、本発明は、血液中の乳酸塩濃度を調節し、低血糖を減衰させ、及び/又は運動トレーニングへの適応を改善する。これは、本発明者の組成物に新規である。
【0007】
このため、本発明者らの知見は、医療、健康及びスポーツ用途の範囲ために、ヒト個体における身体運動を改善するための有利なアプローチを提供する。
【0008】
第1の態様において、本発明は、スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物であって、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応の改善に使用するための組成物を提供する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善するための方法であって、スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物によりヒト対象を治療するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
以下に記載され、添付の実施例で実証されるように、ヒト対象におけるスルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物(ブロッコリーの芽のジュースなどのブロッコリーの芽を含む組成物など)の投与を使用して、身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善できることを、本発明者らは驚くべきことに示している。
【0011】
加えて、ヒト対象におけるスルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物(例えば、ブロッコリーの芽ジュースなどのブロッコリーの芽を含む組成物)の投与が、ヒト対象における血中乳酸塩値の変化をもたらすことを、本発明者らは驚くべきことに見出した。これは、このような組成物のヒト対象における乳酸塩値を調節する能力が示された初めてのことである。
【0012】
特に、ヒト対象における血中乳酸塩の調節の2つの有用な効果が同定されている。驚くべきことに、このような組成物の急性投与に対する用量反応曲線はU字型であり、血中乳酸塩値における組成物の二相性効果を示唆している。この発見により、発明者らは、運動パフォーマンスを改善するための2つの特に有用なアプローチを開発した。
【0013】
第1の効果は、「急性」効果であり、本発明の組成物の単回投与は、血中乳酸塩濃度の変化をもたらし、これは、血中乳酸塩値を短期的に制御することを可能にし、好ましくは、血中乳酸塩値の短期的な減少をもたらし、これは、身体運動パフォーマンスの改善に特に有利であり得る。
【0014】
血中乳酸塩値を調節する第2の驚くべき有用な効果は、本発明の組成物の慢性投与が、血中乳酸塩濃度の長期的な増加をもたらすことであり、これは、身体運動への適応を改善するための用途において特に有用であり得る。
【0015】
血中乳酸塩濃度と身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応との関連が知られている。したがって、血中乳酸塩濃度を調節するための新しい組成物の発明者の開発は、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応の改善に適用されることが理解されるであろう。
【0016】
更に、スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物(例えば、ブロッコリーの芽ジュースなどのブロッコリーの芽を含む組成物)を使用して、ヒト対象の血液中のグルコース濃度を調節(例えば増加)することができ、したがって、対象が低血糖、特に激しい運動に起因する低血糖に対象が費やす時間を短縮するためにも利用することができることを、本発明者らは驚くことに特定した。
【0017】
加えて、nrf2が、スルフォラファン並びに/又はミロシナーゼ及び/若しくはグルコラファニンを含む組成物(ブロッコリーの芽ジュースなどのブロッコリーの芽を含む組成物など)の摂取後に増加したことを、本発明者らは見出した。ヒト対象の骨格筋における組成物によるnrf2の誘導は、本発明者の特に新規で及び驚くべき発見であり、特許請求されている本発明の有用性に寄与する。
【0018】
「身体運動パフォーマンス」については、対象が身体活動又は運動を実施又は実行する能力を含み、例えば、運動が行われる速度、正確さ、持続時間、強度を含み得る。身体運動パフォーマンスは、例えば、身体出力のレベル、作業負荷、最大酸素摂取量、最大限の努力、筋肉疲労、疲労困憊、正常な血糖を維持する能力、乳酸アシドーシス、一定の作業負荷での疲労困憊までの時間、及び/又は特定の作業(例えば、特定の距離を走る、泳ぐ、又は自転車をこぐ)を完了するためにかかる時間を測定することを含み、当該技術分野において周知の様々な方法で測定され得る。
【0019】
したがって、「身体運動パフォーマンスの改善」によって、身体活動又は運動を実行又は実行するための対象の能力の改善及び/又は増加を含み、例えば、身体出力のレベルの増加、作業負荷の増加、最大酸素摂取の増加、最大限の努力の増加、疲労困憊の減少、筋肉疲労の減少、低血糖の減少、正常な血糖の維持、乳酸アシドーシスの減少、一定の作業負荷での疲労困憊の減少、及び/又は特定の作業(例えば、特定の距離を走る、泳ぐ、又は自転車をこぐ)を完了するのにかかる時間の短縮のうちの一種以上を含む。好ましくは、対象は、改善された速度、正確さ、持続時間及び/又は強度で身体運動を行うことができ、例えば、競技者は、疲労困憊及び/又は筋肉疲労の前に、より長い持続時間又はより高い強度で走ることができる。
【0020】
改善は、対象が組成物を服用しなかった場合の身体運動パフォーマンスのレベルに関連し得る。代わりに、改善は、補充期間の前及び/又は本発明の使用又は方法による組成物を受け取る前の身体運動パフォーマンスに関連し得る。
【0021】
「補充期間」については、組成物が投与される期間又は持続時間が含まれる。補充期間は、投与の形態に依存し得る。例えば、急性投与レジームの場合、補充期間は、単一の日であってもよいが、慢性又は高投与レジームの場合、複数の日にわたって(例えば、2日以上)であってもよい。
【0022】
身体運動パフォーマンスの改善は、1.01倍、1.02倍、1.03倍、1.04倍、1.05倍、1.06倍、1.07倍、1.09倍、1.1倍、1.2倍、1.25倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.25倍、2.5倍、3倍、4倍又はそれを超える改善であり得、例えば、倍率変化は、身体運動パフォーマンスの改善を示す関連パラメータ(本明細書に列挙されるものを含む)の減少及び/又は増加であり得る。
【0023】
改善は、身体運動パフォーマンスにおける1%~100%の改善(5%~100%の改善など)の範囲の増加であってもよく、例えば、任意の関連パラメータによって決定される、身体運動パフォーマンスにおける1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又はそれを超える改善である。
【0024】
運動パフォーマンスの改善は、運動中に疲労困憊に到達するのにかかる時間の増加であり得る。例えば、疲労困憊に到達するためにかかる時間は、約5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、40秒、50秒、70秒、80秒、90秒、100秒、110秒、2分、3分、4分、5分、10分、20分、30分又はそれを超えて増加し得る。
【0025】
物理的運動パフォーマンスの改善は、出力及び/又は最大出力の増加であり得る。例えば、出力又は最大出力は、約1ワット、2ワット、3ワット、4ワット、5ワット、6ワット、7ワット、8ワット、9ワット、10ワット、15ワット、20ワット、25ワット、30ワット又はそれ以上増加し得る。
【0026】
身体運動パフォーマンスの改善は、乳酸アシドーシスの減少、例えば、ヒト対象における乳酸塩値の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、9.6%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、22%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又はそれを超える低減、任意選択的に、血中乳酸濃度の9.6%、18%又は22%パーセントの低減によって達成され得る。
【0027】
「身体運動への適応」については、ヒトの対象における変化又は調整、特に対象の身体の生理学的変化を含み、これらは、対象の身体運動のストレスに対応する能力及び/又は対象の身体運動のストレスを調整する能力に影響を与える。理解されるように、身体運動への適応は、ポジティブな適応(例えば、身体運動のストレスに対応するヒト対象の能力を改善する変化)又はネガティブな適応(例えば、身体運動のストレスに対応するヒト対象の能力を悪化させる変化)であり得る。
【0028】
したがって、「身体運動への適応を改善する」については、有益である、及び/又は身体運動のストレスを調整するためのヒト対象の能力、及び/又は身体運動のストレスに対応するためのヒト対象の能力を増加させる、任意の変化を含む。
【0029】
改善された適応は、補充期間の前及び/又は本発明の使用若しくは方法による組成物を受け取る前の、身体運動への適応のレベルに関連し得る。代わりに、改善は、対象が組成物を服用しなかった場合に予想される身体運動パフォーマンスへの、予想される適応に関連し得る。
【0030】
対象の身体運動への改善された適応は、以下の生理学的変化の1つ以上と関連し得る、
・最大心拍数の維持、
・ミトコンドリア密度の増加、
・ミトコンドリア呼吸の増加、
・筋肉乳酸塩輸送のレベル増加、
・ヒト対象における激しい身体運動に関連する低血糖を含む、低血糖の低減、
・ミトコンドリア能力の増加(すなわち、有酸素能力の増加)、
・ヒト対象の細胞におけるミトコンドリアの数及び/又は密度及び/又は活性の増加、
・例えば、ミトコンドリア新生経路の活性化に起因する、ヒト対象の体内の毛細血管の数の増加、
・乳酸塩値に起因するストレスへの適応、
・身体運動中のヒト対象の身体持久力の改善、及び/又は酸化ストレスに対する耐性の改善。
【0031】
身体運動への改善された適応は、1.01倍、1.02倍、1.03倍、1.04倍、1.05倍、1.06倍、1.07倍、1.09倍、1.1倍、1.2倍、1.25倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.25倍、2.5倍、3倍、4倍又はそれを超える改善であり得、例えば、倍率変化は、身体運動への改善された適応を示す関連パラメータの低減又は増加であり得る。
【0032】
身体運動への改善された適応は、1%~100%の範囲の改善(5%~100%の改善など)、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又はそれを超える適応の改善であり得、改善された適応を示す任意の関連マーカー又はパラメータ(上に列挙したものを含む)によって決定され得る。
【0033】
例えば、物理的証拠への改善された適応は、ミトコンドリア呼吸の増加であり得、例えば、筋肉の湿重量当たりのO2の呼吸(pmol)は、約1pmol、2pmol、3pmol、4pmol、5pmol、6pmol、7pmol、8pmol、9pmol、10pmol、15pmol、20pmol、25pmol、30pmol、40pmol、50pmol、75pmol、100pmol、200pmol又はそれを超えて、増加し得る。
【0034】
運動への適応の改善は、最大酸素摂取量又はVO2maxの増加であり得る。例えば、最大酸素摂取量の増加は、0.05l/分、0.1l/分、0.15l/分、0.2l/分、0.25l/分、0.3l/分、0.35l/分、0.4l/分、0.45l/分、0.5l/分又はそれを超える増加であり得る。
【0035】
スルフォラファン(スルホラファン及び1-イソチオシアナート-4-(メタンスルフィニル)ブタンとしても知られている)は、有機硫黄化合物のイソチオシアネートグループのメンバーであり、ブロッコリーを含む多くのアブラナ科の野菜に含まれている。
【化1】
スルフォラファン(CAS番号4478-93-7)
【0036】
スルフォラファンは、グルコラファニンの変換から生成され得る。グルコラファニン(グルコラフアニン及び4-メチルスルフィニルブチルグルコシノレートとしても知られている)は、グルコシノレートであり、ブロッコリー及びカリフラワー、特に若い芽に含まれる様々な供給源で見出され得る。
【化2】
グルコラファニン(CAS番号21414-41-5)
【0037】
グルコラファニンはスルフォラファンに変換することができ、この変換は酵素ミロシナーゼによって補助され得る。ミロシナーゼ(チオグルコシドグルコヒドロラーゼ、シニグリナーゼ、及びシニグラーゼとしても知られる)は、グリコシド加水分解酵素ファミリーのメンバーであり、グルコラファニンを含むグルコシノレートの加水分解を触媒することができる。ミロシナーゼの酵素番号は、EC3.2.1.147である。
【0038】
ミロシナーゼによる酵素変換を含む、スルフォラファンにつながるいくつかの変換の概要を
図10に示す。
【0039】
ブロッコリースプラウト及びスルフォラファンは、とりわけ、がんの発症を低減させること(Alumkal et al,2015)、過体重の個体の炎症マーカーを減少させること(Lopez-Chillon et al 2019)、COPD及び気道炎症を改善すること(Wise et al,2016)、及び自閉症スペクトラム障害の症状を低減すること(Singh et al,2014)を意図する臨床試験で試験されている。
【0040】
ブロッコリーの芽又はスルフォラファンを使用して、身体運動パフォーマンス及び/又はヒト対象の身体運動への適応を改善する研究はない。
【0041】
スルフォラファンは以前にマウスに注射されており、おそらく酸化ストレス誘導損傷に対抗することによって、耐久性を改善させることが示されている(Oh et al.2017)。そのようなマウスモデルは、ヒト対象における効果を予測するために使用することができないことは、その分野の人々には非常によく知られている。したがって、本発明者らの発見の前に、スルフォラファン又はヒト対象の効果は知られておらず、予測することができなかった。スルフォラファンが、ヒト対象、特に経口投与によって同じ又は同様の効果をもたらすかどうかは、完全に予測不可能であった。
【0042】
周知のように、マウス及び/又はラットモデルは、所与の化合物への曝露に対するヒトの反応のしばしば貧弱な予測因子であり、その逆もまた同様であることが多い。対象の化合物が、マウスモデルにおいて所与の効果を生じさせるが、ヒト対象で試験した場合には、全く効果をもたらさない、又は非常に少ない効果しかもたらさないことは一般的である。マウスで観察された応答がヒトに単純に外挿されない理由は多数あり、例えば、マウスは、遺伝的に異なる、異なる細胞分子輸送体を有する、化合物の分解に関連する所与の酵素の異なる発現を有する等である。
【0043】
実際、予測不可能性は、本発明者がヒト対象におけるグルコースレベルに有意な影響を見たという事実(添付の実施例、研究IIIを参照のこと)によって証明されているが、マウスモデルでは、スルフォラファンはグルコースレベルに影響を示さなかった(Oh et al.2017)。
【0044】
スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼを含む組成物(例えば、ブロッコリーの芽のジュースなどのブロッコリーの芽を含む組成物)が、身体運動パフォーマンスを改善するため及び/又は身体運動への適応を改善するために、ヒト対象に利用され得ることを実証するのは、本発明者らによる貢献のみである。更に、U字型用量応答を含む、乳酸塩値における特異的な効果は、発明者にとって驚くべきものであり、これまでのマウス研究からは明らかではなかった。
【0045】
更に、Ohらは、25mg/kg体重の用量でマウスにスルフォラファンを腹腔内投与した。平均75kgのヒトに対する同じ用量は、スルフォラファンの1875mg(16mmol)に相当し、(グルコラファニンからスルフォラファンへの変換がせいぜい40%(通常は15%)であることを考慮すると、必要なグルコラファニンの量は40mmolであり、10kgのブロッコリーの芽に相当する)実行可能な投与はできなかった。スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼの有意に低用量が、ヒト対象において、身体運動及び/又は血中乳酸塩濃度及び/又は血中グルコースに有益な効果を誘発し、それらが、ヒト対象に経口的に効果的に投与され得ることを、本発明者らは驚くべきことに見出した。
【0046】
本発明の1つの特に好ましい使用又は方法では、ヒト対象に、スルフォラファンを含む組成物を投与する。本発明の別の特に好ましい使用又は方法では、ヒト対象に、グルコラファニン及び/又はミロシナーゼを含む組成物を投与する。本発明の別の特に好ましい使用又は方法では、ヒト対象に、ブロッコリーの芽(例えば、ブロッコリースの芽のジュース)を含む組成物を投与する。
【0047】
本発明の組成物の投与は、当技術分野で既知の任意の好適な方法により得ることが、当業者には認められるだろう。これには、経口投与、非経口投与(例えば、皮下注射又はデポ錠、皮内、くも膜下腔内、筋肉内、例えば、デポ及び静脈内を含む)、腹腔内投与、経皮投与、舌下投与、又は直腸投与若しくは注射が含まれ得るが、これらに限定されない。更に、組成物としては、経口投与及び非経口投与(例えば、皮下注射、又はデポ錠、皮内、くも膜下腔内、筋肉内、例えばデポ及び静脈内を含む)を含む、かかる任意の投与方法に好適なものが挙げられる。
【0048】
組成物は、即時、遅延放出又は制御放出用途のために、香味剤又は着色剤を含有し得る、錠剤、カプセル、小卵剤(ovules)、エリキシル、トローチ、チューインガム、溶液又は懸濁液の形態で経口、口腔又は舌下投与され得る。
【0049】
経口剤形は、固体、ゲル、液体であり得る。固体剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、及び/又は原末であり得る。経口錠剤の種類には、圧縮された咀嚼可能なトローチ及び腸溶性コーティング、砂糖コーティング又はフィルムコーティングされた錠剤が含まれ得る。カプセルは、硬質又は軟質のゼラチンカプセルであり得、顆粒及び粉末は、当業者に既知の他の成分の組み合わせとともに、非発泡性又は発泡性の形態で提供され得る。
【0050】
直腸投与のための剤形としては、直腸坐剤、カプセル剤及び錠剤が挙げられ得る。「直腸坐剤」については、直腸に挿入するための固体が含まれ、固体は体温で溶融又は軟化し、1種以上の生物学的に活性な成分を放出する。直腸坐剤で利用される薬学的に許容される物質は、融点を上げるための基剤又はビヒクル及び薬剤を含み得る。基剤の例としては、ココアバター(カカオ脂)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、及び脂肪酸のモノ、ジ、及びトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。様々な基剤の組み合わせが使用され得る。坐剤の融点を上げるための薬剤としては、鯨蝋及びワックスが挙げられ得る。直腸坐剤は、圧縮方法又は成形のいずれかによって調製されてもよい。直腸坐剤の重量は、約2~3gmであってもよい。
【0051】
直腸投与のための錠剤及びカプセルは、同じ薬学的に許容される物質を使用し、経口投与のための製剤と同じ方法で製造することができる。
【0052】
経皮投与は、経皮パッチを介した投与を含み得る。
【0053】
上で考察されたように、一実施形態において、ヒト対象に、グルコラファニン、又はグルコラファニン及びミロシナーゼを含む組成物を投与する。
【0054】
グルコラファニンは、酵素ミロシナーゼによって補助されるプロセスにおいて、生理活性物質であるスルフォラファンに加水分解され得る。ミロシナーゼとグルコラファニンの両方が組成物中で投与される場合、スルフォラファンにいくらか変換されるだろう。
【0055】
高レベルのグルコラファニン(例えばブロッコリーとブロッコリーの芽)を含む多くの植物は、ミロシナーゼも含有しており、ミロシナーゼは、通常、植物が機械的な損傷(例えば、食品加工中の損傷、昆虫による損傷、又は微生物感染)を受けると放出される。このプロセスは、初期の発達の間に植物を攻撃する害虫又は他の動物に対する特定の植物品種の自然な防御メカニズムの一部であり得ると考えられている。
【0056】
グルコラファニンからのスルフォラファンの産生に関与することに加えて、ミロシナーゼは、グルコラファニンからスルフォラファンニトリルへの変換も支援し得る。ミロシナーゼは、グルコエルシン(また、ブロッコリーを含むアブラナ科の野菜に存在するグルコシノレート)のエルシン又はエルシンニトリルへの変換も支援できる。更に、スルフォラファンは、インビボでエルシンに相互変換され得、その逆もまた同様であり得る(Clark et al.2011)。
【0057】
スルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼの任意の供給源が、本発明による使用及び方法のための組成物に含めるのに適切であり得ることは、当業者には明らかであろう。
【0058】
例えば、スルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼは、精製スルフォラファン及び/又は精製グルコラファニン及び/又は精製ミロシナーゼであり得る。スルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼは、例えば、植物由来のその化合物の天然資源に由来してもよい。
【0059】
スルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼは、アブラナ科の野菜(「アブラナ属」又は「コール作物」とも呼ばれる)を含む、多数の天然資源で見出される。
【0060】
スルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼの供給源としては、ブロッコリーの芽、成熟ブロッコリー、芽キャベツの芽、ケールの芽、ケール、キャベツの芽、キャベツ、カリフラワーの芽、カリフラワー、ブロッコリーラーブの芽、ブロッコリーラーブ、レッドケールの芽、レッドケール、コールラビの芽、コールラビ、赤ミズナの芽、赤ミズナ及び/又はそれらの抽出物のいずれかを含み得る。
【0061】
ミロシナーゼは、ブラウンマスタードの種子、ホワイトマスタードの種子、イエローマスタードの種子、ハナダイコン(アルーグーラ又はルッコラ)、ハナダイコン(アルーグーラ又はルッコラ)の種子、ハナダイコン(アルーグーラ又はルッコラ)の芽、ガーデンクレス、ガーデンクレスの種子、ガーデンクレスの芽、ワサビ、ワサビの種子、ワサビの芽、大根、大根の種子、大根の芽、セイヨウワサビ、セイヨウワサビの種子、セイヨウワサビの芽、ラディッシュ、ラディッシュの種子、ラディッシュの芽及び/又はそれら抽出物の天然資源に見出すことができる。
【0062】
好ましい実施形態において、組成物は、ブロッコリーの芽若しくはその抽出物、成熟ブロッコリー若しくはその抽出物、芽キャベツ若しくはその抽出物、ケールの芽若しくはその抽出物、ケール若しくはその抽出物、キャベツ若しくはその抽出物、キャベツの芽若しくはその抽出物、カリフラワー若しくはその抽出物、カリフラワーの芽若しくはその抽出物、ブロッコリーラーブ若しくはその抽出物、ブロッコリーラーブの芽若しくはその抽出物、レッドケール若しくはその抽出物、レッドケールの芽若しくはその抽出物、コールラビ若しくはその抽出物、コールラビの芽若しくはその抽出物、赤ミズナ若しくはその抽出物、赤ミズナの芽若しくはその抽出物を含み、かつ/又は任意選択的に、追加でミロシナーゼを含む。
【0063】
「芽」については、種子が発芽した後、植物が成熟した植物に発達する前に出現する新芽が含まれる。
【0064】
特に、「ブロッコリーの芽」については、ブロッコリーの種子が発芽した後、植物が成熟ブロッコリー植物になる前に出現する新芽が含まれる。通常、ブロッコリーの芽は2~7日以内に種子から栽培及び収穫することができる。
【0065】
第3の態様において、本発明は、ブロッコリーの芽ジュース(本明細書では「BSJ」と呼ばれ得る)を含む組成物であって、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応の改善に使用するための組成物を提供する。好ましい実施形態において、組成物は、ブラウンマスタードの種子を更に含み得る。
【0066】
第4の態様において、本発明は、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善するための方法であって、ブロッコリーの芽ジュースを含む組成物でヒト対象を治療するステップを含む方法、を提供する。好ましい実施形態において、組成物は、ブラウンマスタードの種子を更に含み得る。
【0067】
更に、ブロッコリーの芽ジュースは、スルフォラファンニトリル及び/又はエルシン及び/又はグルコナピンを含む、イソチオシアネート系及び/又はグルコシノレート系由来の物質を含有し得る。
【0068】
更なる態様において、本発明は、イソチオシアネート及び/又はグルコシノレート(例えば、スルフォラファンニトリル及び/又はエルシン及び/又はグルコナピン)を含む組成物であって、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応の改善に使用するための組成物を提供する。
【0069】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善するための方法であって、イソチオシアネート及び/又はグルコシノレート(例えば、スルフォラファンニトリル及び/又はエルシン及び/又はグルコナピン)を含む組成物でヒト対象を治療するステップを含む方法、を提供する。
【0070】
好ましくは、ミロシナーゼは、ブラウンマスタードの種子若しくはその抽出物、ホワイトマスタードの種子若しくはその抽出物、イエローマスタードの種子若しくはその抽出物、ハナダイコン若しくはその抽出物、ハナダイコンの種子若しくはその抽出物、ハナダイコンの芽若しくはその抽出物、ガーデンクレス若しくはその抽出物、ガーデンクレスの種子若しくはその抽出物、ガーデンクレスの芽若しくはその抽出物、ワサビ若しくはその抽出物、ワサビの種子若しくはその抽出物、ワサビの芽若しくはその抽出物、ダイコン若しくはその抽出物、ダイコンの種子若しくはその抽出物、ダイコンの芽若しくはその抽出物、セイヨウワサビ若しくはその抽出物、セイヨウワサビの種子若しくはその抽出物、セイヨウワサビの芽若しくはその抽出物、ラディッシュ若しくはその抽出物、ラディッシュの種子若しくはその抽出物、ラディッシュの芽若しくはその抽出物から選択されるか、又は精製若しくは単離されたミロシナーゼである。
【0071】
好ましい実施形態において、組成物は、ブラウンマスタードの種子若しくはその抽出物、ホワイトマスタードの種子若しくはその抽出物、イエローマスタードの種子若しくはその抽出物、ハナダイコン若しくはその抽出物、ハナダイコンの種子若しくはその抽出物、ハナダイコンの芽若しくはその抽出物、ガーデンクレス若しくはその抽出物、ガーデンクレスの種子若しくはその抽出物、ガーデンクレスの芽若しくはその抽出物、ワサビ若しくはその抽出物、ワサビの種子若しくはその抽出物、ワサビの芽若しくはその抽出物、ダイコン若しくはその抽出物、ダイコンの種子若しくはその抽出物、ダイコンの芽若しくはその抽出物、セイヨウワサビ若しくはその抽出物、セイヨウワサビの種子若しくはその抽出物、セイヨウワサビの芽若しくはその抽出物、ラディッシュ若しくはその抽出物、ラディッシュの種子若しくはその抽出物、ラディッシュの芽若しくはその抽出物、又は精製若しくは単離されたミロシナーゼを含む。
【0072】
ミロシナーゼは、グルコラファニンからスルフォラファンへの変換を増強し得、任意選択的に、ミロシナーゼの不在下でグルコラファニンと比較して変換を増強し得る。
【0073】
ミロシナーゼは、ミロシナーゼ及び大量の無機硝酸塩の両方を含有する植物又はその抽出物の形態で提供され得る。
【0074】
大量の無機硝酸塩は、25mg以上の量の無機硝酸塩を含み得る。例えば、大量の無機硝酸塩は、25mg~800mg以上の範囲であり得る。好ましくは、無機硝酸塩の量は、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgである。
【0075】
ミロシナーゼと大量の無機硝酸塩の両方を含有する植物又はその抽出物が使用され得ることは、当業者には明らかであろう。これらとしては、ハナダイコン(アルーグーラ又はルッコラ)、ハナダイコン(アルーグーラ又はルッコラ)の種子、ハナダイコン(アルーグーラ又はルッコラ)の芽、ガーデンクレス、ガーデンクレスの種子、ガーデンクレスの芽、ラディッシュ、ラディッシュの種子、ラディッシュの芽及び/又はそれら抽出物及び/又はそれらの抽出物を含む。
【0076】
硝酸塩自体は、運動強化特性を有し、本発明による使用及び方法のための組成物中のスルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼによって得られる運動強化特性への添加剤であり得る。
【0077】
好ましい実施形態において、本発明は、ブロッコリーの芽又はその抽出物、及び任意選択的に、マスタードの種子又はその抽出物を含む使用又は方法、組成物を提供する。
【0078】
好ましくは、組成物は経口投与用であり、ヒト対象に経口投与される。
【0079】
例えば、薬剤又は活性成分は、錠剤、カプセル、小卵剤、エリキシル、溶液又は懸濁液の形態で、経口、口腔又は舌下投与され得、即時、遅延放出又は制御放出用途のために、香味剤又は着色剤を含有し得る。
【0080】
経口剤形は、固体、ゲル、液体であり得る。固体剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、及び/又は原末であり得る。経口錠剤の種類には、圧縮された咀嚼可能なトローチ及び腸溶性コーティング、砂糖コーティング又はフィルムコーティングされた錠剤が含まれ得る。カプセルは、硬質又は軟質のゼラチンカプセルであり得、顆粒及び粉末は、当業者に既知の他の成分の組み合わせとともに、非発泡性又は発泡性の形態で提供され得る。
【0081】
経口投与は、特に、組成物が、食品、飲料(例えば、ジュース)、栄養補助食品、又は当業者によって認められる任意の他の適切な形態内に含まれる場合、摂食又は飲用の形態をとることができる。
【0082】
本組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される又は栄養学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤材料を更に含み得る。組成物は、固体、ゲル、又は液体製剤であり得、したがって、少なくとも1つの担体は、任意に、1種以上の追加の固体、液体、又はゲル成分と組み合わせて、固体、ゲル、又は液体であり得る。
【0083】
適切な液体担体の例としては、水、ミルク、ココナッツウォーター、フルーツドリンク及びジュース、ミルク代替物(大豆ドリンク、オーツ麦ドリンク、ナッツ及び他の植物ベースのドリンク)、スパークリング飲料、ココナッツ、菜の花、オリーブ、ヤシ、トウモロコシ/トウモロコシなどのナッツ油又は植物油のうちの1種以上を含む油製剤、グリセリン、プロピレングリコール、及び水性溶媒が挙げられる。
【0084】
担体は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤、並びに栄養学的に許容される、すなわち、食品グレードの担体、賦形剤、又は希釈剤材料から選択され得る。例えば、担体材料は食品であってもよい。
【0085】
好適な「薬学的に許容される」担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、当業者に周知のもの、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.,vol.1 & 2(ed.Gennaro,1995,Mack Publishing Company)に記載のものが挙げられる。
【0086】
「栄養学的に許容される」又は「食品グレード」については、「一般的に安全として認識されている」(GRAS)基準を満たす担体、成分、賦形剤が含まれる。
【0087】
「食品」については、栄養上の利益又は生物の支援を提供するために摂取される物質が含まれる。好適な食品担体の例としては、飲料(例えば、ジュース)、乳製品(例えば、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、乳児用調製粉乳及びマーガリンなどのスプレッド)、乳製品代替品(例えば、大豆、ナッツ又は他の植物ベースの飲料、ヨーグルト及びスプレッド)、穀物ベースの製品(例えば、パン、ビスケット、朝食用シリアル、パスタ及び健康バーなどのドライフードバー)、並びにベビーフード(例えば、裏ごしした果実及び/又は野菜)が挙げられる。
【0088】
好ましくは、製剤は、組成物の1日用量又は単位、1日のサブ用量又はその適切な分画を含有する単位用量であり、スルフォラファン、並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、及び/又はブロッコリーの芽ジュースを含む。
【0089】
組成物は、濾過滅菌又は英表補助食品であり得る。「栄養補助食品」については、丸薬、カプセル、錠剤、又は液体など、口で摂取したときに食事を補うことを意図した製造された製品の意味を含む。栄養補助食品には、生命に不可欠な物質及び/又は生命に不可欠であると確認されていないが、有益な生物学的効果を有する可能性のある物質が含まれている場合があり得る。本発明による組成物が栄養補助食品の形態である場合、添加される担体は、当業者に周知のもの、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.,vol.1 & 2(ed.Gennaro,1995,Mack Publishing Company)に記載のものが挙げられる。栄養補助食品に通常使用される任意の他の成分は、当業者に既知であり、スルフォラファン並びに/又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ及び/又はブロッコリーの芽ジュースとともに従来どおり加えられてもよい。
【0090】
代替的な実施形態において、組成物はスルフォラファンを含み、腹腔内投与、経皮投与、舌下投与又は直腸投与又は注射用であり、腹腔内に、経皮に、舌下に、直腸に又は注射によってヒト対象に投与される。
【0091】
例えば、直腸投与のための剤形としては、直腸坐剤、カプセル剤及び錠剤が挙げられ得る。「直腸坐剤」については、直腸に挿入するための固体が含まれ、固体は体温で溶融又は軟化し、1種以上の生物学的に活性な成分を放出する。直腸坐剤で利用される薬学的に許容される物質は、融点を上げるための基剤又はビヒクル及び薬剤を含み得る。基剤の例としては、ココアバター(カカオ脂)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、及び脂肪酸のモノ、ジ、及びトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。様々な基剤の組み合わせが使用され得る。坐剤の融点を上げるための薬剤としては、鯨蝋及びワックスが挙げられ得る。直腸坐剤は、圧縮方法又は成形のいずれかによって調製されてもよい。直腸坐剤の重量は、約2~3gmであってもよい。
【0092】
直腸投与のための錠剤及びカプセルは、同じ薬学的に許容される物質を使用し、経口投与のための製剤と同じ方法で製造することができる。
【0093】
経皮投与は、経皮パッチを介した投与を含み得る。
【0094】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を調節する。
【0095】
乳酸塩は、乳酸のイオン性(電気的に荷電された)形態及び共役塩基である。乳酸塩は、筋肉内の嫌気性糖酵素分解中に産生され、次いで、ブドウ糖に変換されることができる肝臓に血液によって輸送される。グルコースは、乳酸サイクル(又はコリ回路)と呼ばれるプロセスによって、筋肉に戻され、周期的に代謝されて乳酸に戻ることができる。
【化3】
【0096】
「調節する」については、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度に修正又は制御の影響を及ぼすことを含む。これは、血液中の乳酸塩濃度の増加であり得る。これは、血液中の乳酸塩濃度の減少であり得る。
【0097】
安静時の正常な血中乳酸塩値は、通常、健康な対象において0.2~2.5mMである。正常な血中乳酸塩値は、運動強度が増加するにつれて上昇し、最大限の徹底的な運動後に最大8~25mMまで上昇する。
【0098】
血中乳酸塩を測定する技術は、当技術分野で周知である。例えば、血中乳酸塩は、穿刺された指先の毛細血管からの血液中及び/又は肘前静脈から採取された血液中で測定され得る。乳酸塩は、例えば、Biosen C-line乳酸塩分析器を介して、酵素的方法を使用して測定されてもよい。乳酸塩はまた、比色法を使用して測定され得る。更に、乳酸塩は、動脈血、尿又は汗でも測定され得る。
【0099】
乳酸は、体内の酸素が低いとき、又は炭水化物酸化の速度が上昇し、グルコース又はグリコーゲンをエネルギーに変換する必要があるときに生成される。激しい運動中、乳酸は対象の筋肉に産生され、蓄積する。乳酸及び/又は乳酸産生の副産物は、痛み、筋肉痛、けいれん、乳酸アシドーシス及び筋肉疲労を引き起こす可能性がある。したがって、血中乳酸塩値の低下は、個体における身体運動パフォーマンスの改善において、特に短期的又は短発では、有益であり得る。
【0100】
最大下の作業又は運動中の血中乳酸塩濃度の低下は、ピルビン酸のミトコンドリア酸化の増加を示す運動トレーニングの期間に対する古典的な陽性適応である。通常、血中乳酸塩値の減少は、数週間の持久力トレーニングの後に個人で観察され(Mayes et al.1987)、身体的パフォーマンスの改善と関連すると予想される。
【0101】
本発明の使用/方法は、急性又は単一投与レジームを含み得る。「急性又は単一投与レジーム」については、組成物が1回かつ単回投与で投与されることを含む。代わりに、本発明の使用及び/又は方法は、長期又は慢性の投与レジームを含み得る。「長期又は慢性投与レジーム」については、組成物が少なくとも2日の期間投与されることを含む。
【0102】
本明細書で論じられ、添付の実施例に示されるように、本発明者は、血中乳酸塩値に対する本発明の組成物の2つの重要な効果を特定した。驚くべきことに、用量反応曲線はU字型の曲線であり、特定の用量は血中乳酸塩値の低減をもたらすが、より高い用量は血中乳酸塩値の増加を引き起こす。この明確なU字型の用量応答曲線は、血中乳酸塩値ついてBSJの二相性効果があることを示唆しており、これはヒト対象における血中乳酸塩値を調節するために使用され得る。
【0103】
まず、ヒト対象におけるブロッコリーの芽ジュース(BSJ)の急性投与が、最大下の運動後の血中乳酸塩濃度において急性効果をもたらすことを、本発明者らは見出した。
【0104】
第2番目に、ブロッコリーの芽ジュース(BSJ)の慢性投与が、血中乳酸塩値を調節するために使用され得ることを、本発明者らは見出した。特に、運動トレーニングを実施しなかった対象における組成物の投与は、最大下の運動中の乳酸塩値の増加をもたらす。しかしながら、到達可能な最大作業負荷は変化せず、それによって、これらの対象において、増加した乳酸塩濃度への正の適応が生じたことを示した。
【0105】
更に、補充期間中に運動トレーニングを行っていた対象における組成物の投与は、乳酸塩値を有意に減少させ、作業負荷に適応する対象の能力が改善した。
【0106】
本明細書の開示及び教示に基づいて、投与量(例えば、スルフォラファン、グルコラファニン、ミロシナーゼ、ブロッコリーの芽ジュース、イソチオシアネート及び/又はグルコシノレートの量)及び/又は投与レジーム(例えば、急性単回投与又は複数日間にわたる慢性投与)が、血中乳酸塩値に対する所望の効果を達成し、最終的に身体運動パフォーマンスの改善及び/又は身体運動への適応の改善をもたらすために調整され得ることを、当業者は認めるであろう。
【0107】
身体運動パフォーマンスの改善及び/又は身体運動への適応の改善への応用を有するだけでなく、血中乳酸塩値を調節する能力には他の利点がある。血中乳酸塩値の調節は、乳酸塩値の増加又は減少、乳酸アシドーシス及び/又は疲労に関連する医学的状態の治療及び/又は予防に利用され得ることが、当業者には認められるであろう。
【0108】
「治療」については、対象の状態を改善又は安定化する方法であって、特定の障害、疾患、傷害又は状態の症状、臨床徴候及び/又は根底にある病理を逆転、低減、緩和、改善、阻止又は治癒する効果が含まれる。
【0109】
用語「予防」は、当技術分野で認識されており、状態との関連で使用される場合、薬剤を投与されていないヒト対象と比較して、ヒト対象における特定の障害、疾患、傷害、又は医学的状態の症状、臨床徴候、及び/又は根底にある病態の発症の頻度を低減させること、及び/又は遅延させることを含む。「予防」という用語は、予防的治療を含む。用語「予防的処置」は、当技術分野で認識されており、望ましくない状態の臨床兆候前に組成物を投与して、望ましくない状態の進行からヒト対象を完全に又は部分的に保護することを含み、望ましくない状態の兆候後に投与される場合、治療は治療的である(すなわち、既存の望ましくない状態又はその副作用を軽減、改良、又は安定化することが意図されている)。
【0110】
以下の状態は、乳酸塩値の増加と関連している、
・チアミン欠損症(特にTPNの間)、
・組織内の細胞への酸素送達障害(例えば、血流障害(低灌流)による);
・出血、
・多発性筋炎、
・エタノール毒性、
・ショック、
・進行性肝疾患、
・糖尿病性ケトン症、
・過度な運動(過度のトレーニング)
・局所低灌流(例えば、腸虚血又は顕著な蜂窩織炎)、
・非ホジキンリンパ腫及びバーキットリンパ腫などのがん、
・褐色細胞腫、
・腫瘍崩壊症候群。
【0111】
本発明の使用及び/又は方法の組成物を利用して、血中乳酸塩を減少させる方法で乳酸塩値を調節することが、これらの状態のうちの1種以上を有するヒト対象において、例えば、そのような状態のうちの1種以上の治療及び/又は予防において有益であり得ることは、当業者には明らかであろう。
【0112】
以下の状態は、乳酸塩値の減少に関連している、
・マッカードル病、
・LDH欠損症、
・フルクトース1,6-ビスホスファターゼ欠損症、
・グルコース-6-ホスファターゼ欠損症、
・グレイシル症候群、
・ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、
・ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、
・リー症候群。
【0113】
本発明の使用及び/又は方法の組成物を利用して、血中乳酸塩を増加させる方法で乳酸塩値を調節することが、これらの状態のうちの1種以上を有するヒト対象において、例えば、そのような状態のうちの1種以上の治療及び/又は予防において有益であり得ることは、当業者には明らかであろう。
【0114】
以下の薬物の投与は、乳酸塩濃度の増加と関連している、
・メトホルミン;
・アセトアミノフェン
・リネゾリド
・イソニアジド
・プロポフォール;
・エピネフリン;
・プロピレングリコール
・ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、アバカビル/ドルテグラビル/ラミブジン);
・エムトリシタビン/テノホビル
・シアン化・カリウム(シアン化物中毒);
・フィアルリジン。
【0115】
本発明の使用及び/又は方法の組成物を利用して、血中乳酸塩を減少させる方法で乳酸塩値を調節することが、これらの薬物のうちの1種以上を服用するヒト対象において、例えば、乳酸塩値から生じる副作用の緩和において有益であり得ることは、当業者には明らかであろう。
【0116】
好ましくは、組成物は、ヒト対象の血液中のグルコースの濃度を調節する。更により好ましくは、組成物は、ヒト対象の血液中のグルコースの濃度を増加させる。
【0117】
グルコースは単糖であり、分子式C6H12O6を有する単糖類である。それはエネルギー代謝の重要なエネルギー源である。血液中のグルコースの濃度を決定するための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、フラッシュグルコースモニター又は連続グルコースモニターを使用した指刺試験である。
【0118】
「調節する」については、ヒト対象の血液中のグルコースの濃度に修正又は制御の影響を及ぼすことを含む。これは、血液中のグルコース濃度の増加であり得る。これは、血液中のグルコース濃度の減少であり得る。好ましくは、これは、血液中のグルコース濃度の増加である。
【0119】
血液中のグルコース濃度の増加又は減少は、ヒト対象における正常な血中グルコース濃度と比較し得る。典型的には、4~8mMの血糖値が正常と考えられる。血液中のグルコースの濃度の増加又は減少は、補充期間前及び/又は本発明の使用又は方法による組成物を受ける前のヒト対象の血液中のグルコースの濃度に関連し得る。
【0120】
本発明の使用及び/又は方法は、急性又は単一投与レジームにおいて利用され得る。「急性又は単一投与レジーム」とは、組成物は1回かつ単回投与で投与されることを含む。
【0121】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は1回かつ単回投与で投与される。
【0122】
好ましい実施形態において、ヒト対象は、身体運動パフォーマンスの改善を必要としているか、又は望んでいる。
【0123】
改善された身体運動パフォーマンスを必要とするヒト対象は、例えば、彼ら特定のトレーニング要件に関連して、乏しい又は不十分な身体運動パフォーマンスに苦しんでいる可能性があることは、明らかであろう。改善された身体運動パフォーマンスを必要とするヒト対象は、疲労困憊、筋肉疲労及び/又は乳酸アシドーシスに苦しみ得る。改善された身体運動パフォーマンスを必要とするヒト対象は、特に競技イベント又は競技会において、身体運動を行い得る。
【0124】
改善された身体運動パフォーマンスを望むヒト対象は、身体運動パフォーマンスをよりよくすることを求め得る又は願い得ることは、明らかであろう。改善された身体運動パフォーマンスを望むヒト対象は、乏しい又は不十分な身体運動パフォーマンスに苦しみ得ないが、正常状態と比較して身体運動パフォーマンスを増加又は向上させたいと願い得る。改善された身体運動パフォーマンスを必要とするヒト対象は、特に運動競技又は競技において、身体運動を行うことになり得る。
【0125】
好ましい実施形態において、組成物は、1g~140gのブロッコリーの芽を含み、例えば、組成物は、10g、25g、50g、60g、70g、80g、90g、100g、110g、120g、130g又は140gのブロッコリーの芽を含む。
【0126】
好ましい実施形態において、組成物は、0.0055mg~500mgのグルコラファニン(例えば、1.75mg~500mgのグルコラファニン)、例えば、0.0055mg、0.01mg、0.025mg、0.05mg、0.075mg、0.1mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.75mg、17.5mg、43.75mg、87.5mg、105mg、122.5mg、131.25mg、140mg、157.5mg、175mg、192.5mg、210mg、227.5mg、245mg、300mg、400mg、又は500mgを含む。試料中のグルコラファニンの測定方法は、当技術分野で周知である。例えば、グルコラファニンは、Abukhabta et al.2020に記載されている方法を使用して測定することができる。
【0127】
本発明の使用及び/又は方法のための組成物は、グルコラファニンを、0.13~1150μmol(例えば、4~1150μmolの量)、例えば、0.13μmol、0.25μmol、0.5μmol、0.75μmol、1μmol、2μmol、3μmol、4μmol、40μmol、100μmol、200μmol、240μmol、280μmol、320μmol、360μmol、400μmol、440μmol、480μmol、520μmol、560μmol、600μmol、700μmol、800μmol、900μmol、1000μmol、1100μmol又は1150μmolの量で含み得る。
【0128】
好ましい実施形態において、組成物は、5.9μg~100mgのスルフォラファン(例えば、0.18768mg~100mgのスルフォラファン)、例えば、5.9μg、10μg、25μg、50μg、75μg、0.1mg、0.15mg、0.188mg、1.188mg、4.962mg、9.384mg、11.261mg、13.138mg、15.014mg、16.891mg、18.768mg、20.6448mg、22.5216mg、24.3984mg、26.2752mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、又は100mgを含む。試料中のスルフォラファンの測定方法は、当技術分野で周知である。例えば、スルフォラファンは、Abukhabta et al.2020に記載されている方法を使用して測定することができる。
【0129】
一実施形態において、本発明の使用及び/又は方法のための組成物は、スルフォラファンを、50nmol~850μmol(例えば、1.6~850μmol)の量、例えば、50nmol、100nmol、250nmol、500nmol、750nmol、1μmol、1.25μmol、1.5μmol、1.6μmol、16μmol、40μmol、80μmol、96μmol、112μmol、128μmol、144μmol、160μmol、176μmol、192μmol、208μmol、224μmol、250μmol、350μmol、450μmol、550μmol、650μmol、750μmol又は850μmolの量で含み得る。
【0130】
好ましい実施形態において、組成物は、0.5g~10gのマスタードの種子、例えば、0.5g、0.75g、1g、1.5g、2g、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10gのマスタード種子を含み、任意選択的に、マスタードの種子は、ブラウンマスタードの種子である。
【0131】
一実施形態において、本発明の使用及び/又は方法のための組成物は、0.25~40単位のミロシナーゼ、例えば、0.25~2単位、0.5~4単位、1~8単位、1.5~12単位、2~16単位、2.5~20単位、3~24単位、3.5~28単位、4~32単位、4.5~36単位、又は5~40単位を含み得る。試料中のミロシナーゼの測定方法は、当技術分野で周知である。例えば、ミロシナーゼは、Wilkinson et al.1984に記載されている方法を使用して測定することができる。
【0132】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を低減する。
【0133】
血液中の乳酸塩濃度の低減は、ヒト対象における正常な血中乳酸塩濃度と比較してもよい。血液中の乳酸塩濃度の低減は、補充期間前及び/又は本発明の使用及び/又は方法による組成物を受ける前のヒト対象の血液中の乳酸塩濃度に関連し得る。
【0134】
安静時の正常な血中乳酸塩値は、通常、健康な対象において0.2~2.5mMである。正常な血中乳酸塩値は、運動強度が増加するにつれて上昇し、最大限の徹底的な運動後に最大8~25mMまで上昇する。
【0135】
本発明の使用及び方法は、最大酸素消費量の10~95%の範囲の運動強度において血中乳酸塩値の低減をもたらし得る。
【0136】
本明細書に記載の使用及び方法は、最大下の運動強度で、例えば、最大酸素消費量の65%又は最大酸素消費量の80%の平均運動強度で、血中乳酸塩値の低減をもたらし得る。
【0137】
ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度の低減は、10%~25%の範囲であり得、例えば、10%、18%、22%又は25%であり得る。
【0138】
好ましい実施形態において、本発明の使用及び/又は方法のための組成物は、身体運動前にヒト対象に投与され、好ましくは、6時間未満前、又は5時間未満前、又は3時間未満前、又は2時間未満前、又は1時間未満前に投与される。
【0139】
別の実施形態において、本発明の使用及び/又は方法のための組成物は、身体運動後にヒト対象に投与される。好ましくは、組成物は、運動後3時間未満、運動後2時間未満、又は運動後1時間未満で投与される。本発明の組成物は、激しい運動の後に蓄積された乳酸塩の除去を助けることによって、運動からの回復において使用されてもよい。
【0140】
一実施形態において、組成物は、ヒト対象における身体運動パフォーマンスを改善する。
【0141】
好ましい実施形態において、組成物は、身体運動から生じる酸化ストレスに耐えるヒト対象の能力を改善させる。
【0142】
「酸化ストレス」については、フリーラジカルと、細胞及び/又は体が反応性中間体に対抗又は解毒する能力(例えば、酸化防止剤を介して)との間の不均衡を含む。フリーラジカルは、1個以上の不対電子を含む酸素含有分子であり、酸素含有分子を高度に反応性にする。抗酸化物質は、不安定になることなく、フリーラジカルに電子を与えることができる化合物である。
【0143】
好ましい実施形態において、組成物は、身体運動中のヒト対象の身体持久力を改善する。
【0144】
「身体持久力」については、ヒト対象が長期間にわたって、自分自身を行使したり運動したりする能力を含む。身体的持久力には、運動中の疲労に抵抗し、耐え、又は回復する能力が含まれる。
【0145】
好ましい実施形態において、ヒト対象は、乳酸アシドーシスに苦しむ。
【0146】
「乳酸アシドーシス」については、体内での乳酸塩(特にL-乳酸塩)の蓄積を含み、血流中のpHの低下をもたらす。過剰な酸は、乳酸の過剰生産又は乳酸の利用不足のために、血液中に蓄積する可能性がある。
【0147】
好ましい実施形態において、組成物は、乳酸アシドーシス及び/又は疲労の増加に関連する医学的状態、例えば、ミトコンドリアミオパチー(MELAS症候群)、ビオチン欠損症、血流又は体組織内の細菌感染症(敗血症)、糖原病、ライ症候群、短腸症候群、肝不全、低酸素症(例えば、心臓又は血管の不具合によって引き起こされる低酸素症)、細菌性髄膜炎、チアミン欠損症(特にTPNの間)、組織内の細胞への酸素送達障害(例えば、血流障害(低灌流)による)、出血、多発性筋炎、エタノール毒性、ショック、進行性肝疾患、糖尿病性ケトーシス、過度な運動(過度のトレーニング)、局所的低灌流(例えば、腸虚血又は顕著な蜂窩織炎)、例えば、非ホジキンリンパ腫及びバーキットリンパ腫、褐色細胞腫などのがん、及び/又は腫瘍崩壊症候群などのうちの1種以上の予防又は治療に使用される。
【0148】
好ましい実施形態において、組成物は、メトホルミン又はアセトアミノフェンによって引き起こされる乳酸アシドーシスを低減するために使用される。
【0149】
好ましい実施形態において、組成物は、リネゾリド、イソニアジド、プロポフォール、エピネフリン、プロピレングリコール、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、アバカビル/ドルテグラビル/ラミブジン)、エムトリシタビン/テノホビル、シアン化カリウム(シアン化物中毒)及び/又はフィアルリジンによって引き起こされる増加した血中乳酸塩値を低減するために使用される。
【0150】
本発明の使用及び方法は、乳酸塩値を調節するために使用されてもよく、したがって、乳酸塩値の変化に関連する状態、例えば、乳酸塩値の増加に関連する状態、及び/又は乳酸塩値の減少に関連する状態の治療及び/又は予防に使用され得る。
【0151】
本発明の使用及び/又は方法は、長期又は慢性投与レジームにおいて利用され得る。「長期又は慢性投与レジーム」とは、組成物が少なくとも2日の期間投与されることを含む。
【0152】
好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも2日の期間、好ましくは3日間、又は4日間、又は5日間、又は6日間、又は7日間、又は2週間、又は3週間、又は4週間、又は1ヶ月間、又は2ヶ月間、又は3ヶ月間、又は4ヶ月間、又は5ヶ月間、又は6ヶ月間、又は1年間、又はそれ以上の期間、毎日投与される。
【0153】
「毎日」については、少なくとも毎日1回を含む。例えば、組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、又は少なくとも1回、1日以内の所与の時間枠内で投与されてもよい(例えば、1日16時間の時間枠内で2回)。
【0154】
好ましい実施形態において、ヒト対象は、身体運動への適応の改善及び/又は身体運動パフォーマンスの改善を必要としているか、又は望んでいる。
【0155】
身体運動への改善された適応を必要とするヒト対象は、例えば、それらの特定のトレーニング要件に関連して、身体運動への乏しい又は不十分な適応に苦しみ得ることは、明らかであろう。身体運動への適応を必要とするヒト対象は、不十分な筋肉乳酸塩輸送、不十分なミトコンドリア数、呼吸、密度及び/又は活動、運動中の酸化ストレスに対する不十分な耐性及び/又は不十分な身体持久力に苦しみ得る。身体運動への改善された適応を必要とするヒト対象は、身体運動に参加することを計画し得、例えば、競技イベント又は競技会に参加することを計画し得る。
【0156】
身体運動への改善された適応を望むヒト対象は、身体運動への適応をよりよくすることを求め得る又は願い得ることは、明らかであろう。身体運動への改善された適応を望むヒト対象は、身体運動への乏しい又は不十分な適応に苦しみ得るが、正常状態と比較して身体運動への適応を増加又は向上することを願い得る。身体運動への改善された適応を必要とするヒト対象は、特に競技イベント又は競技会など、身体運動を行うことを計画し得る。
【0157】
一実施形態において、組成物は、120gを超えるブロッコリーの芽、好ましくは150gを超えるブロッコリーの芽、例えば、200gのブロッコリーの芽を含む。
【0158】
好ましい実施形態において、各日の16時間の期間内に摂取されるブロッコリーの芽の総量は、120g~200g、好ましくは150g~200gであり、例えば、ヒト対象は、各日の16時間の期間内に75gのブロッコリーの芽を2回用量摂取する。
【0159】
好ましい実施形態では、組成物は、ヒト対象における正常な血中乳酸塩濃度と比較して、任意選択で少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも24%、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を増加させる。
【0160】
血液中の乳酸塩濃度の増加は、ヒト対象における正常な血中乳酸塩濃度と関連し得る。血液中の乳酸塩濃度の増加は、補充期間の前及び/又は本発明の使用及び/又は方法による組成物を受ける前のヒト対象の血液中の乳酸塩濃度に関連し得る。
【0161】
安静時の正常な血中乳酸塩値は、通常、健康な対象において0.2~2.5mMである。正常な血中乳酸塩値は、運動強度が増加するにつれて上昇し、最大限の徹底的な運動後に最大8~25mMまで上昇する。
【0162】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒト対象における血糖値の増加をもたらす。
【0163】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒト対象が低血糖に費やす時間を低減させる。
【0164】
「低血糖」については、血糖値がヒト対象の正常レベルを下回った状況を含む。低血糖は、ヒト対象の激しい身体運動としばしば関連する。正常血糖(正常血糖値)は、4~8mMグルコースと考えられる。低血糖は、4mM未満の血糖値であると考えられている。
【0165】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒト対象における激しい身体運動に関連する低血糖を低減する。
【0166】
「激しい身体運動」については、ヒト対象の最大心拍数の少なくとも70%の心拍数、深くて急速な呼吸、息を止めずに数語以上を話すことができないこと、適度又は激しい発汗、及び/又は疲労困憊のうちのいずれかをヒト対象が経験することにつながる、高強度の運動及び/又は運動を含む。
【0167】
「低血糖」については、ヒトの対象が低血糖に費やす時間の短縮を含む。
【0168】
好ましい実施形態において、組成物は、ヒト対象における身体運動への適応を改善する。
【0169】
好ましくは、身体運動への改善された適応は、
-ヒト対象の細胞におけるミトコンドリアの数及び/又は密度及び/又は活性の増加、並びに/又は
-例えば、ミトコンドリア新生経路の活性化に起因する、ヒト対象の体内における毛細血管の数の増加、を含む。
【0170】
「ミトコンドリアの密度」(ミトコンドリア体積密度とも呼ばれる)については、ヒト対象におけるミトコンドリアが占める筋線維体積の割合、及び/又は筋肉の単位重量当たりのミトコンドリアの数を含む。ミトコンドリアの大きさ及び/又は数は、ミトコンドリア密度に影響を及ぼす。ミトコンドリア密度の増加は、筋肉のエネルギー供給の増加につながり、個人がより速く又はより長くトレーニング又は競争できるようになる可能性がある。
【0171】
「ミトコンドリア生物発生」については、細胞がそのミトコンドリアの質量を増加させるプロセス、及び/又は既存のミトコンドリアの成長及び分裂を含む。
【0172】
「ミトコンドリア能力」については、ミトコンドリアの代謝能力と呼吸能力を含む。
【0173】
ミトコンドリア密度、生物発生、及び/又は能力を測定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、ミトコンドリア密度は、クエン酸シンターゼ(ミトコンドリア酵素)の活性を決定し、それを筋肉の重量に関連付けることによって測定され得る(Larsen et al.2012)。
【0174】
ミトコンドリア生物発生は、ミトコンドリア生物発生の主要制御因子であるPGC-1αのmRNAの量を測定することによって、PCR法で評価され得る(Sunderland et al.2009)。ミトコンドリア能力は、サポニン透過性筋線維中のミトコンドリア呼吸能力を評価することによって測定され得る(Cardinale et al.2018)。
【0175】
好ましい実施形態において、組成物は、身体運動中のヒト対象の身体持久力を改善し、かつ/又は酸化ストレスに対する耐性を改善する。
【0176】
好ましい実施形態において、改善された身体運動への適応は、乳酸塩値から生じるストレスに適応するヒト対象の体に起因する。
【0177】
好ましい実施形態において、少なくとも2日の期間の投与後、ヒト対象における身体運動パフォーマンスが改善される。
【0178】
好ましい実施形態において、組成物は、投与期間中に運動トレーニングを行う対象、任意選択的に、補充期間の一部又は全部で、例えば最大酸素消費量の90%超で高強度トレーニングを行う対象、に投与される。好ましくは、組成物は、対象における血中乳酸塩の増加をもたらす。
【0179】
代わりの好ましい実施形態において、組成物は、投与期間中に運動トレーニングに参加していない、及び/又は正常なライフスタイルを維持している対象に投与される。好ましくは、組成物は、対象における血中乳酸塩の減少をもたらす。
【0180】
好ましい実施形態において、組成物は、マッカードル病、LDH欠損症、フルクトース1,6-ビスホスファターゼ欠損症、グルコース-6-ホスファターゼ欠損症、グレイシル症候群、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症及び/又はリー症候群の予防又は治療に使用される。
【0181】
一実施形態において、ヒト対象は男性又は女性である。
【0182】
好ましい実施形態において、ヒト対象は競技者である。「競技者」については、平均して、週に少なくとも5時間の激しい運動をする人、及び/又は1つ以上のスポーツイベントで(例えば、随時又は定期的に)他の人間と競う人間であるという意味を含む。
【0183】
好ましい実施形態において、ヒト対象は、競技パフォーマンスの改善を望んでいる、及び/又は必要としている。
【0184】
改善された競技パフォーマンスを必要とするヒト対象が、乏しい又は不十分な競技パフォーマンスに苦しみ得ることは、明白であろう。例えば、彼らがプロ競技者である場合、彼らは期待を下回って行動し得る。改善された運動パフォーマンスを必要とするヒト対象は、疲労困憊、筋肉疲労及び/又は乳酸アシドーシスに苦しみ得る。改善された運動パフォーマンスを必要とするヒト対象は、特に競技イベント又は競技会において、運動を行うことになるかもしれない。
【0185】
競技パフォーマンスの改善を望むヒト対象は、競技パフォーマンスをよくすることを求め得る又は願い得ることは、理解されるであろう。競技パフォーマンスの改善を望むヒト対象は、競技パフォーマンスの乏しさ又は不十分に苦しんでいないかもしれないが、正常状態と比較して運動パフォーマンスを増加又は向上させたいと願い得る。改善された競技パフォーマンスを必要とするヒト対象は、特に競技イベント又は競技会において、身体的な運動を行うことになるかもしれない。
【0186】
好ましくは、ヒト対象における改善された身体運動パフォーマンスは、身体出力の増加、作業負荷の増加、最大酸素摂取量の増加、最大限の努力の増加、疲労困憊の減少、筋肉疲労の減少、低血糖の減少、正常な血糖の維持、乳酸アシドーシスの減少、一定の作業負荷における疲労困憊までの時間の減少、及び/又は特定の作業(例えば、特定の距離を走る、泳ぐ、若しくは自転車をこぐ)を完了するのにかかる時間の減少のうちの1種以上を含む。
【0187】
「物理的出力」については、運動中の出力(ワット)を含む。最大出力は、ヒト対象が増分運動プロトコルを実行して疲労困憊に至ることによって、決定され得る。
【0188】
「作業負荷」については、人間の対象が実行する作業の量を含む。作業負荷は、運動の量と強度の組み合わせであり得る。最大作業負荷は、ヒト対象が引き受けることができる最大作業能力(ワット)に相当し得る。
【0189】
運動の文脈において努力は、運動の強度と持続時間とからなる。「最大限の努力」については、ヒト対象が耐えることができる最大の運動強度及び運動持続時間を含む。
【0190】
「疲労困憊」については、極端な肉体的若しくは精神的な疲労、及び/又は所定の強度で運動を続けることができない状態を含む。疲労困憊は、ヒト対象の筋肉がエネルギー貯蔵を使い果たし、働きを止めたり疲労したりするときに発生し得る。疲労困憊は、所与の運動プロトコル、特に増分運動プロトコル中に疲労困憊に達するまでの時間を評価することによって、測定することができる。
【0191】
本発明の使用又は方法による組成物を受け取る前の、身体運動プロトコル(例えば、増分身体運動プロトコル)の間に疲労困憊に達するのに要する時間と比較して、同じ運動プロトコルの間に疲労困憊に達するのに要する時間の増加によって、低減した疲労困憊は示され得る。
【0192】
「筋肉疲労」については、筋肉が力を発生及び/又は経時的に実行する能力の低下が含まれる。筋肉疲労は、収縮活動に応答して生成される最大の力又は出力の減少をもたらす。それは、神経疲労及び/又は代謝疲労によって起こり得、代謝疲労は、通常、筋線維内の燃料(アデノシン三リン酸(ATP)又はグリコーゲンなどの基質)の不足、又はCa2+シグナル伝達を妨げる筋線維内の物質(代謝物)の蓄積から生じる。そのような代謝物は、塩素イオン、カリウムイオン、及び/又は乳酸を含み得る。
【0193】
好ましくは、ヒト対象における身体運動への適応の改善が、最大心拍数の維持、ミトコンドリア密度の増加、ミトコンドリア呼吸の増加、筋肉乳酸塩輸送のレベルの増加、及び/又は低血糖の減少のうちの1種以上を含む。
【0194】
「最大心拍数」(HRmaxとしても知られる)については、運動ストレスを介してヒトの対象が重度の問題なく達成できる最高の心拍数、及び/又はヒト対象の心臓が1分で鼓動する最大速度を含む。最大心拍数は、例えば心臓ストレステストを介して、当技術分野における標準的な方法によって決定され得る。最大心拍数は1分当たりの拍数(bpm)で測定され、年齢、体力、ストレスなど、様々な要因によって影響を受ける可能性があり得る。
【0195】
「ミトコンドリア呼吸」については、ミトコンドリアで起こる代謝プロセスを含み、砂糖などの主要栄養素に蓄積されたエネルギーを、細胞内の普遍的なエネルギードナーであるアデノシン三リン酸(ATP)に変換する。
【0196】
「筋肉乳酸塩輸送」については、解糖によって産生される乳酸塩を筋肉から血液及び/又は肝臓に輸送することを含む。
【0197】
好ましい実施形態において、組成物は、ブロッコリーの芽(若しくはその抽出物)及び/又はマスタードの種子(若しくはその抽出物)を含み、組成物が、100:0~1:10の間のブロッコリーの芽(若しくはその抽出物)対マスタードの種子(若しくはその抽出物)の割合、例えば、100:1のブロッコリーの芽(若しくはその抽出物)対マスタードの種子(若しくはその抽出物)の割合を有する。
【0198】
この割合は、重量の観点から表され得、例えば、100:1のブロッコリーの芽とマスタードの種子の割合には、100グラムのブロッコリーの芽と1グラムのマスタードの種子、50グラムのブロッコリーと0.5グラムのマスタードの種子などが含まれ得る。
【0199】
本明細書で言及される任意の抽出物は、当技術分野の任意の従来方法によって調製され得ることは、明らかであろう。抽出物は凍結乾燥され得る。凍結乾燥は、抽出物中に存在するスルフォラファン及び/又はグルコラファニンを安定させ得る。
【0200】
好ましい実施形態において、組成物は、50gのブロッコリーの芽(又はその抽出物)及び0.5gのマスタードの種子(又はその抽出物)を含む。別の好ましい実施形態において、組成物は、50gのブロッコリーの芽(又はその抽出物)を含む。
【0201】
一実施形態において、組成物は、1日に2~10回投与される。
【0202】
一実施形態において、組成物は、任意選択的に水で、ブロッコリーの芽を均質化、混合、裏ごし、細断、切断、及び/又は切り刻むことによって作られ、ジュースを形成する。組成物は、その後、直ちに、例えば、-80℃まで凍結し得る。組成物は、摂取前及び/又は投与前に解凍し得る。解凍後、粉末状のブラウンマスタードの種子を含有するミロシナーゼの重量に基づいて1%(ブロッコリーの芽75gにマスタードの種子0.75グラム)をジュースに加え得る。
【0203】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度及び/又はグルコース濃度の調節における、使用のためのスルフォラファン、又は使用のためのグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又は使用のためのブロッコリーの芽を提供する。好ましい態様において、本発明は、乳酸塩濃度を調節すること及び/又はヒト対象の血液中のグルコース濃度を増加させることにおいて、使用のためのスルフォラファン、又は使用のためのグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又は使用のためのブロッコリーの芽を提供する。
【0204】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度塩及び/又はグルコース濃度を調節するための方法であって、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又はブロッコリーの芽で、ヒト対象を治療するステップを含む、方法を提供する。好ましい態様において、本発明は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を調節する、及び/又はグルコース濃度を増加させる方法であって、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又はブロッコリーの芽で、ヒト対象を治療するステップを含む、方法を提供する。
【0205】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象における身体運動パフォーマンス及び/又は身体運動への適応を改善するための薬剤の製造における、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又はブロッコリーの芽の使用を提供する。
【0206】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度及び/又はグルコース濃度を調節するための薬剤の製造における、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又はブロッコリーの芽の使用を提供する。好ましい態様において、本発明は、ヒト対象の血液中の乳酸塩濃度を調節する、及び/又はグルコース濃度を増加させるための薬剤の製造における、スルフォラファン、又はグルコラファニン及び/若しくはミロシナーゼ、又はブロッコリーの芽の使用を提供する。
【0207】
ここで、以下の図面及び実施例を参照して、本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【
図1】最大下の運動後における血中乳酸塩濃度に対するBSJの急性投与の効果。
【
図2】最大下の運動における血中乳酸塩値に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図3】増分運動中に達成可能な最大作業負荷に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図4】運動トレーニングを行っている対象における血中乳酸塩値に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図5】(A)最大出力、(B)疲労困憊までの全時間、及び(C)最大酸素摂取量に関する運動トレーニングを行っている対象におけるBSJの慢性投与の効果。
【
図6】運動トレーニングを行っている対象におけるミトコンドリア呼吸に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図7】運動トレーニングを行っている対象における骨格筋に存在するNRF2タンパク質値に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図8】運動トレーニングを行っている対象における低血糖で過ごす時間に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図9】運動トレーニングを行っている対象における最大作業中の最大心拍数に対するBSJの慢性投与の効果。
【
図10】グルコラファニンからスルフォラファンへの変換を含む、ミロシナーゼによるグルコシノレートの変換の概要。グルコシノレート、グルコラファニン及びグルコエルシンは、ミロシナーゼ酵素によって加水分解され、グルコース(Glc)及び不安定なアグリコーンを得ることができる。これらの不安定なアグリコーンは、正確な反応条件に応じて、イソチオシアネート(例えば、スルフォラファン及びエルシン)及びそれらに対応するニトリルを形成し得る。更に、エルシン及びスルフォラファンは、相互変換できる(Dinkova-Kostova et al.2017)。
【
図11】外的に加えられたマスタードの種子の非在下におけるグルコラファニンのスルフォラファンへの変換。芽全体を水溶液中で均質化し、室温で14日間保管した。均質化した試料を、インキュベーション期間の前後に収集し、スルフォラファン及びグルコラファニンの後の分析のために、液体窒素中で凍結した。
【実施例】
【0209】
研究I:ブロッコリーの芽ジュースの急性投与
研究Iの目的は、単回投与、すなわち急性投与後の乳酸塩の血中濃度を評価することであった。
【0210】
この研究には、3人の健康な男性ヒト対象が登録された。マスタードの種子と水(ブロッコリーの芽1g当たり2ml)とを混合したブロッコリーの芽を含有するブロッコリースの芽ジュース(BSJ)の組成物を、以下の表に概説される量で対象に提供した。対象内で異なる用量を投与する間に、最低48時間のウォッシュアウト期間を使用した。5つの異なる用量のブロッコリーの芽、0、10g、50g、75g、150gを投与した。
【0211】
ブロッコリーの芽中のグルコシノレートの総量は、Meitinger&Kreis、2018に記載されている方法に従って評価され、新鮮なグラム重量当たり46μmolであることが分かった。グルコラファニン及びグルコイベリンの量を、UPLC-質量分光光度法を使用して分析し、それぞれ2.3及び0.15μg/グラム組織重量であることが分かった。ピーク検出では、ブロッコリーの芽には特に大量のグルコナピンが含まれていたことが示され、グルコナピンが芽の中で最も豊富なグルコシノレートであることが示唆された。同じタイプのブロッコリーは、研究I、II、及びIIで使用された。
【表1】
【0212】
BSJの摂取前に、事前試験が実施され、事前試験では、対象が、最大酸素消費量の65%及び80%に相当する強度で、1作業量当たり5分間、2作業量で、固定式サイクルエルゴメーター上でサイクルを行った。穿刺された指先から毛細血管血液サンプルを採取し、乳酸塩について評価した。事前試験の直後に、対象はBSJを摂取し、3~3.5時間後に同一の運動試験を実施した。
【0213】
血中乳酸塩を、穿刺された指先の毛細血管からの血液中において、両方で測定した。Biosen C-line乳酸分析器を使用する酵素法を使用して、乳酸塩を測定した。
【0214】
図1に示すように、BSJは、最大下の運動後の血中乳酸塩濃度において急性効果を有した。驚くべきことに、用量反応曲線はU字型で、10、50、及び75グラムのBSJは血中乳酸塩濃度を有意に低減させ、150グラムのBSJは血中乳酸塩濃度を有意に増加させた(一元配置分散分析)。10グラム用量での血中乳酸塩の低減は9.6%、50グラム用量では22%、75グラム用量では18%低下し、それに対して、150グラム用量では28%高かった。血中乳酸塩値の変化は、事前試験段階で測定された血中乳酸塩値との相対的なものである。
【0215】
明確なU字型用量応答曲線は、運動トレーニングにおけるBSJの二峰性使用を示唆している。最大下の作業中における血中乳酸塩濃度の低下は、ピルビン酸のミトコンドリア酸化の増加を示す運動トレーニングの期間に対する典型的な陽性適応である。50及び75グラムの用量での血中乳酸塩の減少の大きさは、数週間の持久力トレーニングの後に予想されるものと同様であり(Mayes et al.1987)、身体的パフォーマンスの改善に関連すると予想される。薬剤ジクロロ酢酸により乳酸塩の蓄積を減少させると、パフォーマンスが急激に改善する(Ludvik et al,1993)。
【0216】
BSJの150グラムの用量は、最大下の運動中の血中乳酸塩値を有意に増加させた。これは、ピルビン酸のミトコンドリア酸化が低下していることを示しており、運動能力については急激に陰性にならなければならない。しかしながら、乳酸塩は、運動中にシグナル伝達特性を有することも示されており、乳酸塩レベルの上昇は、運動トレーニングへの長期的な適応と関連している(Hashimoto et al 2007)。
【0217】
研究II-ブロッコリーの芽ジュース又は偽薬の7日間の慢性投与
6人の健康なヒト対象(女性4人、男性2人)が登録して、ブロッコリーの芽ジュースの慢性投与の効果に関する二重盲検研究に参加した。対象のうち4人には、ブロッコリーの芽ジュース(BSJ)が与えられ、他の2人には、グルコラファニン又はスルフォラファンを含まないアルファルファの芽を含む同量のジュースが与えられた。アルファルファジュースを服用している対象は、陰性対照として使用できる。
【0218】
ジュースを1日2回(芽の総用量は毎日150g)7日間投与し、各投与量はブロッコリー又はアルファルファの芽を75g及び水150mlを含有した。各ジュースに、0.75gの粉末にしたブラウンマスタードの種子を摂取の前に加え、ミロシナーゼ活性を増強し、それによってスルフォラファン含有量を増強した。最後の投与は、運動試験の90分前に行われた。
【0219】
補充期間の前後に、増分最大下及び最大運動中の、酸素摂取、基質酸化の代謝測定、及び血液乳酸塩形成の評価を用いて、包括的な生理学的試験(以下に概説する)を実施した。対象は、彼らの通常のライフスタイルを維持するように指示され、定期的な運動トレーニングには参加しなかった。補充期間が始まる前に事前試験を行って、ジュースの最後の用量(75グラム)の服用の90分後に事後試験を実施した。
【0220】
生理学的試験
以下の生理学的試験をヒト対象に対して実施した。サイクリング中のベースラインとなる生理学的特徴を包含及び評価するために、SRMエルゴメーター(Schoberer Rad Messtechnik,SRM、Julich,Germany)で事前試験を実施した。最大下の作業量に対する生理学的反応の評価のために、標準的なプロトコルを使用し、このプロトコルは、1分間の休息で分離された5分間の一連の長い間隔で構成され、毛細血管の血中乳酸塩及びグルコースを採取し、Biosen C-Line Clinic(EKF-diagnostics、Barleben,Germany)を使用して分析した。作業量は、第1段階では80~100Wとなるように個別に設定し、その後、かなりの血中乳酸塩蓄積が明らかになるまで、段階ごとに15~30Wずつ増加した。短い休息の後、VO2maxを決定するために、増分最大運動試験を開始した。試験は前段階の作業量で開始し、疲労するまで20~30W・min-1で増加した。VO2maxは、4つの連続した最も高い10秒の長い期間の平均として表した。ガス交換の呼吸採取は、Oxycon Proデバイス(Erich Jaeger GmbH、Hoechberg,Germany)を使用して、セッション全体を通して実施した。心拍数を連続的に測定し(Polar Electro OY、Kempele,Finland)、対象は、各段階及び疲労困憊時にBORGスケール(Borg,1982)を使用して、知覚された運動を評価した。装置は、製造者の指示に従って較正した。
【0221】
図2に示されるように、血中乳酸塩濃度は、BSJ群の最大下の作業においてより高かったが、偽薬(アルファルファ)群では高くなかった。最大下の運動中の血中乳酸塩濃度が高かったにもかかわらず、増分運動から疲労困憊までの最大到達可能な作業負荷は、試験前と試験後の間で変化せず(
図3を参照)、乳酸濃度の上昇に対する陽性適応が生じたことを示した。
【0222】
乳酸塩は運動中に重要なシグナル伝達特性を有することが示されており、乳酸塩値の上昇は、運動トレーニングへの長期的な適応と関連している(Hashimoto et al.2007)。
【0223】
研究III:運動トレーニングと組み合わせたブロッコリーの芽ジュース又は偽薬の慢性投与
この研究では、9人の健康なレクリエーション活動的な対象(女性6人、男性3人、25歳+/-4歳)を登録した。この研究は、医療介入の間に4週間のウォッシュアウトを有する、二重盲検、無作為化、偽薬対照、交差研究であった。補充期間の前に、研究IIで使用されたものと同様の生理学的試験のバッテリー(以下に概説する)を実施した。
【0224】
研究IIと同様に、対象は、BSJ(活性)又はアルファルファの芽(偽薬)を1日2×75g、すなわち、1日の総用量150gの芽を10日受けた。対象が筋肉生検を提供する90分前に用量を投与し、最後の用量は10日目の運動試験の90分前に投与した。補充と並行して、対象は、7日間にわたり、最大酸素消費量の90%超で、監督下において高強度インターバルトレーニングを毎日実施した(以下に概説する)。8日目、9日目、10日目に、対象は、補充を継続したが、トレーニングは休止した。
【0225】
生理学的試験
サイクリング中のベースラインとなる生理学的特徴を包含及び評価するために、SRMエルゴメーター(Schoberer Rad Messtechnik,SRM、Julich,Germany)で事前試験を実施した。最大下の作業量に対する生理学的反応の評価のために、標準的なプロトコルを使用し、このプロトコルは、1分間の休息で分離された5分間の一連の長い間隔で構成され、毛細血管の血中乳酸塩及びグルコースを採取し、Biosen C-Line Clinic(EKF-diagnostics、Barleben,Germany)を使用して分析した。作業量は、第1段階では80~100Wとなるように個別に設定し、その後、かなりの血中乳酸塩蓄積が明らかになるまで、段階ごとに15~30Wずつ増加した。短い休息の後、VO2maxを決定するために、増分最大運動試験を開始した。試験は前段階の作業量で開始し、疲労するまで20~30W・min-1で増加した。VO2maxは、4つの連続した最も高い10秒の長い期間の平均として表した。ガス交換の呼吸採取は、Oxycon Proデバイス(Erich Jaeger GmbH、Hoechberg,Germany)を使用して、セッション全体を通して実施した。心拍数を連続的に測定し(Polar Electro OY、Kempele,Finland)、対象は、各段階及び疲労困憊時にBORGスケール(Borg、1982)を使用して、知覚された運動を評価した。装置は、製造者の指示に従って較正した。
【0226】
トレーニング介入
全ての生理学的検査及びHIITセッションは、生理学的及びパフォーマンス試験の幅広いバックグラウンドを持つ経験豊富な担当者が、慎重に監督した。対象は、介入中のHIITセッション中に自分のパフォーマンスについて盲検化され、可能な限り高い平均出力を生成するという野心を持って全てのセッションを実行するように指示された。介入期間は、毎日のHIITセッション(95%VO2maxで5×4分又は90%VO2maxで5×8分4回のHIITセッションは、全力で最大4回の30秒のスプリントで終了した)で構成され、7日間にわたって連続して、密接な監視と、出力と心拍数の慎重なモニタリングとを行った。対象は、全てのHIITセッション中に出力、ケイデンス(ペダルの回転数)、及び心拍数について盲検化された。全てのHIITセッションは、100W及び70rpmで10分の最大下でのウォームアップで始まった。対象は、全ての間隔にわたって可能な限り最高の平均出力を達成するために、全てのHIITセッションを実施するように指示された。対象に推奨される(標準化された)ペーシング戦略を提供するために、HIITセッション中に、以前に測定された最高の平均出力に対応する出力で、最初の間隔でペーシングを行った。
【0227】
栄養介入
各HIITセッションの後、1g・kg-1bwの炭水化物と0.25g・kg-1bwのタンパク質を含む回復飲料を、対象は摂取した。最後のHIITセッションの後、対象に74gの炭水化物、38gのタンパク質、及び26gの脂肪からなる夕食を提供し、これは、運動の2時間後に摂取された。その後、彼らは断食を続け、筋肉生検の提供のために早朝に研究室に報告した。
【0228】
8日目、9日目、10日目に、対象は、補充を継続したが、トレーニングを休止した。8日目の朝、骨格筋生検を提供し、10日目には、事前試験と同一の生理学的試験を用いたバッテリーが実施された。
【0229】
筋肉生検
全ての生検は、最後のHIITセッション後、14時間の休息に続いて、早朝に絶食状態で回収した。生検は、vastus lateralisから採取した。まず、局所麻酔(2%カルボカイン、AstraZeneca、Sodertalje,Sweden)を生検部位に注射した。小さな切開を行って、約150mgの湿組織を、ワイルブレークスリーのchonchotome又は手動で吸引した4mmのBergstrom針で除去した。筋肉試料を、染めて、目に見える脂肪、結合組織及び血液からきれいに切断し、呼吸測定のための氷冷ISO培地への約50mg、及び液体窒素への50~100mgの2つの部分、の3つの部分に分割し、その後、後の分析のために、-80℃で貯蔵した。
【0230】
ミトコンドリア分離と呼吸測定
ミトコンドリアを、約50mgの筋肉分離培地(スクロース 100mM、KCl 100mM、Tris-HCl 50mM、KH2PO4 1mM、EGTA 100μM、BSA 0.1%;pH7.4、Gnaiger及びKuznetsov,2002に記載のように)から単離した。筋肉を氷上に保持し、最初にはさみによって均質化し、その後、0.2mg ml-1の細菌プロテアーゼを加えた後、水冷ガラス均質化装置中で更に均質化した。ホモジネートを、4℃、700rcfで10分間、15mlのチューブで遠心分離し、上清を新しい1.5mlのチューブに移し、4℃、10000gで遠心分離した。ペレットを分解して、単一の1.5mlチューブに移し、4℃、7000rcfで5分間遠心分離して、得られたペレットを、保存培地(EGTA 0.5mM、MgCl2 6H2O 3mM、K-ラクトビオネート 60mM、タウリン 20mM、KH2PO4 10mM、HEPES 20mM、スクロース 110mM、BSA 1g L-1、ヒスチジン 20mM、ビタミンEコハク酸塩 20μM、グルタチオン 3mM、ロイペプチン 1μM、グルタミン酸 2mM、リンゴ酸 2mM、Mg-ATP 2mM)中で、筋肉の初期mg湿重量当たり0.6μlで液状化した。
【0231】
ミトコンドリア呼吸を、2チャネル高分解能呼吸計(Oxygraph-2k、Oroboros Instruments Corporation、Innsbruck,Austria)を使用して測定した。呼吸培地MIR05(EGTA 0.5mM、MgCl2.6H2O 3mM、K-ラクトビオネート 60mM、タウリン 20mM、KH2P04 10mM、HEPES 20mM、スクロース 110mM、BSA 1gL-1)を含有する2つの2mlウェルに、単離されたミトコンドリア5ulを加えた。全ての実験は、37℃で実施し、製造業者の指示に従って、O2較正を実施した。全ての測定は、DatLab5.2ソフトウェア(Oroboros、Paar、Graz,Austria)で実施され、分析された。ミトコンドリア呼吸は、ミトコンドリア単離前の最初の筋肉の湿重量に関連していた。
【0232】
免疫ブロット
約2mgの筋肉の凍結乾燥試料を均質化した。均質化のプロトコルは、以前に広範囲にわたって説明されている(Samuelsson et al.,2016)。簡潔に述べると、2mMのHEPES(pH7.4)、1mMのEDTA、5mMのEGTA、10mMのMgCl2、50mMのβ-グリセロホスフェート、1%のTriton X-100、1mMのNa3VO4、2mMのジチオスレイトール、1%のホスファターゼ阻害剤カクテル(Sigma P-2850)、及び1%(vol/vol)のHaltプロテアーゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、Rockford,IL)からなる均質化緩衝液を、100μl/mg乾燥重量で、各試料に加え、均質化するまでブレッドブレンダーで処理した。4℃で30分間回転させ、4℃、10,000gで10分間遠心分離した後、上清のタンパク質含有量について分析し、上清を均質化緩衝液及びLaemmli緩衝液(Bio-Rad、Richmond,CA)で希釈し、1μg/μlのタンパク質濃度を得た。全ての試料を95℃で5分間変性させ、-80℃で保管した。
【0233】
タンパク質が20、16又は14μgの筋肉ホモジネートの試料を、26ウェルCriterion TGX勾配ゲル(4~20%アクリルアミド;Bio-Rad)にロードした。電気泳動(氷上に32分間保持された300V)を、25mMのトリス塩基、192mMのグリシン、及び10%のメタノールを含有する転写緩衝液中で実施し、次いで、タンパク質を、氷上に3時間保持しながら、300mAの一定電流で、ポリフッ化ビニリジン膜(Bio-Rad)に移した。ローディング対照として、MemCode Reversible Protein Stain Kit(Thermo Scientific)で、膜を染色した。次いで、膜を脱染色し、室温で5%の非脂肪乾燥乳を含有するトリス緩衝生理食塩水(TBS;20mMのトリス塩基、137mMのNaCl、pH7.6)で1時間ブロックした。その後、2.5%の非脂肪乾燥乳及び0.1%のTweenを含むTBS緩衝液で希釈した抗体と、一晩インキュベートした。使用した抗体は、Cell Signaling Technology;Nrf2(D1Z9C)由来であった。インキュベーションの後、膜を洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼと結合した二次抗体と室温で1時間インキュベートした。膜を再度洗浄し、Super Signal West Femto Chemiluminescent Substrate(Thermo Scientific)を加え、Quantity Oneソフトウェアを用いるMolecular Imager ChemiDoc XRSシステム(バージョン4.6.3;Bio-Rad)及びQuantity Oneソフトウェアを用いるChemiDoc MP(バージョン6.0.1;Bio-Rad)において、標的タンパク質を視覚化及び定量化した。
【0234】
グルコースモニタリング
更に、対象は、15分ごとに間質性グルコース濃度を測定する補充期間中、連続的なグルコースモニター(皮膚搭載センサ(FreeStyle Libre、Abbot))を着用した。このセンサは、対象の三角筋に横方向に取り付けられ、ポータブルリーダーを使用して、測定値を空にしなければならなくなる前に、測定値を最大8時間自動的に保存するセンサが測定に失敗した場合、又は最後のエクスポートから8時間以内に対象がセンサからリーダーにデータをエクスポートしなかった場合、センサは以前に保存されたデータを上書きし、エクスポートされたテキストファイルには、ギャップが残る。最初の12時間の測定値も、測定値が安定しているように見える前の時間の違いのために、全ての対象から除外された。
【0235】
4週間のウォッシュアウトの後、手順を繰り返したが、最初にBSJを投与された対象は偽薬を投与され、その逆もまた同様であった。
【0236】
図4に示すように、最大下の作業負荷(VO
2max50~75%)での血中乳酸塩濃度は、偽薬群でのトレーニング後に有意に増加し、BSJ状態で有意に減少した。耐久運動トレーニングへの古典的な適応は、ミトコンドリア呼吸の強化とより優れた有酸素能力のために、最大下の作業負荷で乳酸塩濃度が低下することである。偽薬条件における乳酸塩濃度の増加は、激しいトレーニング負荷への不適応と解釈され得るが、BSJ条件では、作業負荷に適応する対象の能力が強化された。
【0237】
対象は、最大出力、疲労困憊までの時間、及びVO
2maxを決定するために、疲労困憊に対する増分運動プロトコルを実施した。
図5Aに示されるように、疲労困憊時の排出時の最大出力は、BSJ条件のみで有意に増強され、全ての対象は、最大出力の増加を経験した。偽薬状態での反応は有意ではなく、3人の対象がトレーニング刺激に対して有害な反応を示した(
図5A)。
【0238】
図5Bに示されるように、同じ増分運動プロトコル中の疲労困憊までの時間は、BSJ状態においてのみ有意に増加し、全ての対象は、疲労困憊までの時間の増加を経験した。偽薬状態での反応は有意ではなく、一部の対象は疲労困憊までの時間の減少を経験した(
図5B)。
【0239】
図5Cに示されるように、最大酸素摂取量は、BSJ条件において有意に増加した。更に、偽薬状態での有害反応者の数が多かった。
【0240】
図5A~5Cの結果は、BSJを摂取し、乳酸塩濃度の低下を経験した対象において、身体運動への積極的な適応が起こったことを示唆する。
【0241】
各補充条件の前後に筋肉生検を行った。トレーニング期間後の予想される反応は、ミトコンドリア呼吸が増加するはずであるということである。偽薬群ではミトコンドリア呼吸への影響は認められなかったが、BSJ状態では改善傾向(p=0.067)が認められた(
図6)。
【0242】
骨格筋生検におけるNrf2タンパク質の存在量を、ウェスタンブロット法を使用して評価した。我々は、nrf2がBSJ状態で有意に増加したが、偽薬状態では有意に増加しなかったことを見出した。骨格筋におけるスルフォラファン又はブロッコリーの芽によるnrf2の誘導は、新しい所見である(
図7)。
【0243】
加えて、本発明者らは、nrf2が、スルフォラファン、並びに/又はミロシナーゼ及び/若しくはグルコラファニン(例えば、ブロッコリーの芽ジュース)を含む組成物の摂取後に実際に増加したが、偽薬条件の後では増加しなかったことを見出した。nrf2は、運動によっても活性化することができ(Done & Traustadottir,2016)、これは、より高い酸化負荷に耐え、より高い代謝要件、すなわち、身体パフォーマンスを改善する筋肉細胞の能力の重要な部分である。スルフォラファンと身体運動からのnrf2の活性化は、異なるメカニズムを通じて起こることが示されており、その結果、スルフォラファン摂取と運動の間に相乗効果が生じ得る。
【0244】
集中的な運動は、筋肉細胞によって効果的に除去される必要がある大量の遊離酸素ラジカル(ROS)を放出する。更に、酸化ストレスは、老化プロセス及びいくつかの病理学的状態に関連することも示されている(Lu et al,2004)。しかし、運動の文脈では、この酸化ストレスは身体の適応プロセスの開始に必要であり、最終的にはより良い身体的パフォーマンスにつながることが示されている(Ristow et al 2009)。逆に、我々は最近、過度の運動が細胞の抗酸化防御が対処できないROS負荷をもたらし、最終的に細胞レベルでミトコンドリア機能の阻害及び酸化的損傷をもたらすことを示した(Larsen et al,2016)。ブロッコリーの芽を補充すると、骨格筋でnrf2を活性化させることによってこの抗酸化防御を刺激し、動物実験で部分的に発見されている、より良いパフォーマンスと集中的な運動に対するより良い抵抗に最終的につながることは、明瞭に考えられる(Malaguti et al,2009)。
【0245】
非常に激しい運動トレーニングの期間は、通常、夜間低血糖エピソードの増加や最大心拍数の低減などの有害反応に関連している。BSJがこれらの逆境を防ぐことができるかどうかを評価するために、補充期間中に連続グルコースモニター(CGM)を使用して血糖濃度をモニターした。低血糖範囲で過ごした時間は、偽薬状態と比較して、BSJ状態で有意に低減された(
図8)。偽薬状態では、対象は22%の時間(1日5時間以上)を低血糖範囲で過ごし、ブロッコリー状態では、これはわずか9%に低減した。
【0246】
BSJは、おそらくnrf2の活性化と運動中の乳酸塩値の調節によって、非常に厳しいトレーニングの期間に対する耐性を増強する。最大下の運動中の血中乳酸塩値に対する明確な用量反応効果は、新規かつ驚くべきものである。本発明者らは、この効果を有する他の栄養補助食品を認識していない。運動中の乳酸塩値の低下は、持久力トレーニングプログラムへの積極的なトレーニング適応の特徴である。競技者においては、乳酸塩値はVO2maxよりもフィットネスレベルの変化に敏感であり、通常、すでに高度にトレーニングされた対象では時間の経過とともにかなり一定のままである。
【0247】
更に、最大作業中の最大心拍数は、偽薬条件では有意に低減したが、BSJ条件では維持された(
図9)。
【0248】
研究IV:グルコラファニンからのスルフォラファン形成におけるマスタードの種子の効果
本発明者らは、マスタードの種子の形態で提供されるミロシナーゼが存在しない場合に、BSJによって生理学的効果が生じ得るかどうかを判定するための研究を行った。
【0249】
凍結した芽を解凍し、均質化し、室温(20℃)に放置して、ミロシナーゼが豊富なマスタードの種子を加えることなく、スルフォラファンの形成を評価した。グルコラファニン及びスルフォラファンを、20℃での14日間のインキュベーションの前後に評価した。インキュベーション中、グルコラファニン濃度は118.1g/lから6.6g/lに低下したが、スルフォラファンは0.09g/lから18.6g/lに増加し、芽のホモジネート中のミロシナーゼ活性が豊富であることを示した。グルコラファニン及びスルフォラファンを、正イオン化及び負イオン化の両方を伴うUPLC質量分析を使用して、分析した。
【0250】
マスタードの種子に由来するミロシナーゼの非在下において、グルコラファニンの変換から生成されたスルフォラファンの値を測定した(
図11)。凍結したBSJ中のミロシナーゼ活性は、全てのグルコラファニンをスルフォラファンに加水分解するのに十分である。
【0251】
参考文献
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