(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】癌免疫療法のための細菌を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231219BHJP
A61K 39/085 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/102 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/108 20060101ALI20231219BHJP
A61K 39/104 20060101ALI20231219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231219BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231219BHJP
A61K 35/13 20150101ALI20231219BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20231219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231219BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231219BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231219BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61K39/085
A61K39/09
A61K39/102
A61K39/108
A61K39/104
A61P35/00
A61P37/04
A61K35/13
A61K35/74 A
A61K35/74 Z
A61P43/00 121
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559159
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021085474
(87)【国際公開番号】W WO2022128909
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523218360
【氏名又は名称】トリム バイオテック,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラハス ベレス,ミゲル アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】レサノ リザルドレ,アルフレド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
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4C087NA14
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4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、a)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる群から選択される少なくとも3つの病原性細菌種を含む細菌集団であって、細菌が、細菌細胞壁全体を含む不活化細菌である細菌集団、並びに(b)1つ又は複数の腫瘍抗原決定基を含む、免疫原性組成物を提供する。当該免疫原性組成物を含む医薬組成物、及び予防又は治療を必要とする対象において腫瘍を予防又は治療するための使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる群から選択される少なくとも3つの病原性細菌種を含む細菌集団であって、前記細菌が、前記細菌細胞壁全体を含む不活化細菌である、細菌集団と、
(b)1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と、を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記細菌集団が、(a)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む集団、並びに(b)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる集団から選択される、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記細菌集団が、
5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
15~70%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
1~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
1~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、前記細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、請求項1から2のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記抗原決定基が不活性腫瘍細胞の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記組成物が、グルコース、フルクトース、乳酸塩、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を更に含有し、特に、前記組成物がグルコースを更に含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の請求項1から5のいずれか一項に定義される免疫原性組成物を含む医薬組成物。
【請求項7】
腫瘍の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に定義される免疫原性組成物又は請求項6に定義される医薬組成物。
【請求項8】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む細菌集団であって、前記不活化細菌が細菌細胞壁全体を含む、細菌集団。
【請求項9】
前記集団が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる、請求項8に記載の細菌集団。
【請求項10】
薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の請求項8から9のいずれか一項に定義される細菌集団を含む医薬組成物。
【請求項11】
前記予防及び/又は治療が、前記細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基の治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を含む、腫瘍の予防及び/又は治療に使用するための、請求項8から9のいずれか一項に定義される細菌集団、又は請求項10に定義される医薬組成物。
【請求項12】
前記予防及び/又は治療が、前記細菌集団及び不活性腫瘍細胞の治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を含む、請求項11に記載の使用のための細菌集団又は医薬組成物。
【請求項13】
前記予防及び/又は治療が、グルコース、フルクトース、乳酸塩、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物の治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を更に含み、特に、前記予防及び/又は治療が、グルコースの治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を更に含む、請求項11から12のいずれか一項に記載の使用のための細菌集団又は医薬組成物。
【請求項14】
前記投与が同時である、請求項11から13のいずれか一項に記載の使用のための細菌集団又は医薬組成物。
【請求項15】
前記予防及び/又は治療の方法が以下の工程、
(i)対象から得られた腫瘍細胞を不活性化することと、
(ii)前記不活性な腫瘍細胞を、請求項8から9のいずれか一項に定義される細菌集団と接触させて、免疫原性組成物を提供することと、
(iii)場合により、工程(ii)の免疫原性組成物に、グルコース、フルクトース、乳酸塩、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物、特にグルコースを添加することと、
(iv)工程(ii)又は(iii)の免疫原性組成物を、腫瘍細胞が得られた同じ対象に投与することと、を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の使用のための細菌集団又は医薬組成物。
【請求項16】
前記投与が全身性である、請求項7に記載の使用のための免疫原性組成物若しくは医薬組成物又は請求項11から15のいずれか一項に記載の使用のための細菌集団若しくは医薬組成物。
【請求項17】
前記投与が、非経口、皮内、皮下、経皮、静脈内、舌下及び経口からなる群から選択される経路による、請求項7に記載の使用のための免疫原性組成物若しくは医薬組成物又は請求項11から15のいずれか一項に記載の使用のための細菌集団若しくは医薬組成物。
【請求項18】
前記腫瘍が悪性腫瘍である、請求項7、16若しくは17に記載の使用のための免疫原性組成物若しくは医薬組成物、又は請求項11から17のいずれか一項に記載の使用のための細菌集団若しくは医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌免疫療法の分野に関する。特に、本発明は、癌治療のための細菌種の組み合わせを含む免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、現代医学におけるメイヤーな課題の1つである。手術、化学療法及び放射線などの従来の治療法は、多くの一般的な種類及びステージの癌において有効性が限られていることが広く受け入れられている。
【0003】
免疫療法は、進化している研究分野であり、特定の種類の癌の治療のための追加の選択肢である。癌細胞による抗原の提示及び腫瘍細胞に対して潜在的に反応することができる免疫細胞が存在するのにもかかわらず、多くの場合、免疫系は腫瘍に対して十分に活性化されていないか、又は確実に抑制されていることが見出されている。この現象の鍵は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答を回避するいくつかの免疫調節機構を発達させる能力である。免疫療法アプローチは、免疫系を刺激して腫瘍細胞を同定し、それらを破壊のために標的化することができるという理論的根拠に基づく。
【0004】
この意味で、従来のアプローチの1つは、悪性腫瘍を治療するための治療ワクチンとして不活化細菌を使用することであった。例えば、Coleyのワクチン(化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)とセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)の組み合わせ)は、肉腫及びリンパ腫の治療に有用であることが長い間知られており、BCG(ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis))ワクチン治療は、いくつかの種類の癌の治療に有効であることが報告されている。
【0005】
最近、他の種類の免疫療法が検討されている。例えば、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)及び細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)などの免疫チェックポイント分子を遮断するモノクローナル抗体(mAb)の使用は、いくらかの成功を達成しており、腫瘍学分野における免疫療法の可能性を強調している。さらに、活性化ナチュラルキラー細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、腫瘍浸潤リンパ球及び腫瘍抗原負荷樹状細胞などの免疫細胞エフェクターを直接使用する戦略が、抗腫瘍免疫を増強するために使用されている。しかしながら、高い期待及び時には有望な結果にもかかわらず、実際には、臨床結果は一貫していないことが多く、腫瘍は長期的に転移さえし得る脱出経路を見出すことができる。
【0006】
上記から、宿主抗腫瘍免疫を増強し、腫瘍細胞を破壊のために標的化するために、代替免疫療法アプローチが必要であることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、不活性な病原性細菌の組み合わせが、腫瘍細胞に由来する抗原と接触したときに特異的な抗腫瘍免疫応答を生じさせることができることを見出した。本出願は、当該免疫応答が、抗原が由来する特定の腫瘍の増殖速度を効果的に減速させることを示す。本出願はまた、当該細菌集団及び腫瘍細胞に由来する抗原を含有する本発明の免疫原性組成物が、腫瘍の消失さえも達成することができ、腫瘍の新たなチャレンジ/再発に対する完全寛解及び記憶応答をもたらし得ることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、a)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ナイセリア・フラバ(Neisseria flava)、大腸菌(Escherichia coli)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)からなる群から選択される少なくとも3つの病原性細菌種を含む細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団、並びに(b)腫瘍抗原決定基を含む、免疫原性組成物を提供する。
【0009】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、腫瘍抗原が、細菌集団によって生成される非特異的免疫応答を指令することによって作用すると仮定する。おそらく、細菌細胞内に位置するパターン認識受容体によって引き起こされる自然免疫を媒介する白血球の活性化は、腫瘍からの抗原の取り込みを増強し、最初に発生した自然免疫応答をその腫瘍に対する特異的適応免疫応答に変える。この意味で、本発明者らはまた、集団中の細菌がそれらの構造的完全性を保持する場合、すなわち細菌が全細菌である場合、当該免疫応答が増強されることを見出した。腫瘍に対する免疫応答もまた、本発明の免疫原性組成物に含まれる細菌種の特定の集団によって増強される。
【0010】
更に、本発明者らはまた、本発明の免疫原性組成物が腫瘍に対する記憶免疫応答も生成し、再発及び/又は転移を効果的に妨げることを見出した(以下の例を参照)。
【0011】
本発明の第2の態様は、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基を、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる群から選択される少なくとも3つの病原性細菌種を含む細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団と接触させることを含む免疫原性組成物を調製する方法を提供する。
【0012】
本発明の免疫原性組成物は、細菌集団を腫瘍から得られた/由来する抗原決定基と接触させることによってインサイチュで調製することができる。この場合、細菌集団が、例えば懸濁液又は凍結乾燥調製物として容易に入手可能であることが好都合である。したがって、本発明の第3の態様は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む細菌集団であって、細菌が不活化細菌であり、細菌細胞壁全体を含む、細菌集団を提供する。
【0013】
本発明の免疫原性組成物はまた、投与を必要とする対象への投与の準備ができている医薬組成物として提供することができる。したがって、本発明の第4の態様は、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第3の態様による細菌集団を含む医薬組成物を指す。
【0014】
本発明の第5の態様は、(a)第3の態様に定義される細菌集団、及び場合により、(b)第1の態様の免疫原性組成物の調製におけるその使用のための説明書を含むキットオブパーツを提供する。
【0015】
第6の態様は、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物を調製するための本発明の第3の態様の細菌集団又は本発明の第5の態様のキットオブパーツの使用を提供する。
【0016】
第7の態様は、医薬品として使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物を提供する。これは、医薬品を調製するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物の使用と言い換えることができる。本発明はまた、予防及び/又は治療を必要とする対象を予防及び/又は治療する方法であって、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物を投与することを含む方法を開示する。
【0017】
第8の態様は、腫瘍を予防及び/又は治療する方法において使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物を提供する。これは、腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品を調製するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物の使用と言い換えることができる。本発明はまた、腫瘍を予防及び/又は治療する方法であって、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物を、予防及び/又は治療を必要とする対象に投与することを含む方法を開示する。
【0018】
第9の態様では、本発明は、腫瘍を予防及び/又は治療するための手術、放射線又は抗腫瘍剤との併用療法で使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物を提供する。この態様はまた、手術、放射線又は抗腫瘍剤との併用療法において腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品を製造するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物の使用として製剤化することができる。この態様はまた、腫瘍を予防及び/又は治療する方法として製剤化することができ、本方法は、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は本発明の第4の態様に定義される当該免疫原性組成物を含む医薬組成物を、手術、放射線又は抗腫瘍剤と組み合わせて、予防及び/又は治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0019】
更に、本発明者らは、驚くべきことに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団が結腸の腫瘍の治療に有効であることを見出した。したがって、本発明の第10の態様は、胃腸管、神経系、造血系、生殖系(例えば、子宮頸部、卵巣、子宮、膣及び外陰など)、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、脳、眼、精巣、筋肉、骨又は乳房の腫瘍の予防及び/又は治療に使用するための、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団を提供する。この態様はまた、胃腸管、神経系、造血系、生殖系(例えば、子宮頸部、卵巣、子宮、膣及び外陰など)、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、脳、筋肉、眼、精巣、骨又は乳房の腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品を製造するための、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団の使用として製剤化することができる。この態様はまた、胃腸管、神経系、造血系、生殖系(例えば、子宮頸部、卵巣、子宮、膣及び外陰など)、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、脳、眼、精巣、筋肉、骨又は乳房の腫瘍を予防及び/又は治療する方法として製剤化することができ、本方法は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団を、予防及び/又は治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0020】
本発明の第11の態様は、腫瘍の予防及び/又は治療に使用するための、第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物を指し、予防及び/又は治療は、細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基の治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を含む。これは、腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬品を調製するための、第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物の使用と言い換えることができ、当該医薬品は、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と共に治療間隔内で同時に、逐次的に、又は別個に投与される。本発明はまた、腫瘍を予防及び/又は治療する方法を開示し、当該方法は、予防及び/又は治療を必要とする対象に、治療有効量の第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物を、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と組み合わせて投与することを含み、細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基は、治療間隔内で同時に、逐次的に、又は別個に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】12週齢のBalb/cマウスの皮下に移植されたCT-26腫瘍の体積の測定を示す図である。試験した4つの実験群(n=5マウス/群)を群1-対照、群2-細菌集団、群3-免疫原性組成物、群4-グルコースを含む免疫原性組成物で示す。
【
図1B】実験群3及び4で観察された抗腫瘍活性の詳細を示す図である(n=5マウス/群)。X軸は、変数「時間」を示し、治療開始から経過した日を示す。Y軸は変数「腫瘍サイズ」を示し、治療開始から腫瘍が獲得する体積(cm
3)を示す。
【発明の詳細な説明】
【0022】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示されるとおりであり、特に明示的に記載された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書及び特許請求の範囲を通して均一に適用することを意図している。
【0023】
本明細書で使用される「癌」は、生理学的機能を果たさない細胞の任意の望ましくない増殖である。一般に、癌細胞は、その正常な細胞分裂制御から解放されており、すなわち、その増殖が細胞環境における通常の生化学的及び物理的影響によって調節されていない細胞である。したがって、「癌」は、異常な制御されない細胞増殖を特徴とする疾患の総称である。ほとんどの場合、癌細胞は増殖して、良性又は悪性のクローン細胞を形成する。生じる塊又は細胞塊、又は「腫瘍、」は、一般に、周囲の正常組織に侵入して破壊することができる。「悪性腫瘍」とは、異常な増殖を有する生物において有害な影響を有する、任意の細胞型又は組織の異常な増殖を意味する。「悪性」又は「癌」という用語は、技術的に良性であるが、悪性になるリスクを有する細胞増殖を含む。腫瘍細胞は、「転移」として知られるプロセスで、それらの元の部位からリンパ系又は血流を介して身体の他の部分に広がり、「転移性癌」疾患をもたらす「二次性腫瘍」を引き起こす可能性がある。
【0024】
「免疫原性組成物」は、対象に投与された場合、対象において免疫応答を直接的又は間接的に誘発するか、又は誘発することができる組成物である。
【0025】
「訓練された免疫」は、自然免疫系が免疫記憶を生成し、病原体に対する長期的な保護を提供する能力を定義する新しい概念である。それは、自然免疫系に関与する細胞のエピジェネティックな変化を伴う機構ではあるが、事実上の自然免疫記憶における自然免疫プロセスの適応を意味する(Saeedら、Science、2014))。訓練された免疫は、(i)自然免疫細胞(例えば、単球/マクロファージ)の非特異的エフェクター応答を増加させること、及び(ii)樹状細胞の活性化状態を利用して特異的抗原及び非関連(バイスタンダー)抗原の両方に対する適応T細胞応答を増強することによる保護を提供すると考えられる。
【0026】
本発明の文脈において、選択された細菌種からの病原体関連分子パターン及び特定の腫瘍の抗原決定基の両方を含有する本発明の組成物は、特定の種類の腫瘍を標的とするようにそのような訓練された免疫応答を誘発する。
【0027】
「病原体関連分子パターン」は、宿主中のパターン認識受容体によって認識され、それによって宿主中の自然免疫応答を活性化する微生物の表面上の小さな分子モチーフである。
【0028】
本発明の意味において、「細菌細胞壁全体を含む細菌」は、病原体関連分子パターンが含まれる細胞壁の完全性を保持することを意味する「全体」である細菌として理解される。本開示を通して、「細菌細胞壁全体を含む細菌」及び「細菌全体」という表現は互換的に使用される。反対に、「溶解された細菌」は、それらの細胞壁の完全性を保持しないもの、すなわち破壊された細菌である。
【0029】
「抗原」は、免疫応答を引き起こす免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができる、通常は細胞の表面に存在する分子又は分子構造である。「エピトープ」とも呼ばれる「抗原決定基」という用語は、抗原認識分子によって認識される抗原の一部である。
【0030】
「アジュバント」は、非特異的に作用して免疫応答を増加させる薬剤である。
【0031】
「ワクチン」という用語は、対象に投与された場合に、ワクチンが設計された病原体に対する防御免疫応答を直接又は間接的に誘発する、又は誘発することができる、適切な賦形剤及び/又は担体を伴う免疫原性組成物を指す。
本明細書で使用される場合、「対象」又は「宿主」という用語は、本発明の免疫原性組成物が投与される、投与を必要とする標的個体、とりわけ、ヒト、哺乳動物、家畜、又は本発明の組成物で治療されやすい任意の他の動物種を意図する。本発明のほとんどの実施形態では、対象はヒトである。
【0032】
本明細書で使用される「治療有効量」という表現は、投与された場合に、対処される疾患の症状の1つ又は複数の発症を予防するか、又はある程度軽減するのに十分である本発明の免疫原性組成物の量を指す。もちろん、本発明に従って投与される薬剤の特定の用量は、投与される薬剤の量、投与経路、治療される特定の状態、及び同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。
【0033】
「医薬組成物」という表現は、ヒト並びに非ヒト動物を対象とする両方の組成物を包含する(すなわち獣医学組成物)。
【0034】
「薬学的に許容される担体又は賦形剤」という表現は、薬学的に許容される材料、組成物、又は媒体を指す。各成分は、医薬組成物の他の成分と適合性があるという意味で医薬的に許容されなければならない。また、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又はその他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び非ヒト動物の組織又は器官と接触させて使用するのに適していなければならない。
【0035】
本開示においてパーセンテージが示される場合、それらは通常、組成物が液体でない限り、重量あたりのパーセンテージ重量(%w/w)を指し、その場合、パーセンテージは体積あたりのパーセンテージ重量を指す。成分の%w/w又は%w/vは、組成物の総重量又は総体積に対する単一成分の量を指す。
【0036】
上述のように、本発明者らは、本発明の第1の態様に開示される免疫原性組成物が腫瘍の予防及び治療に有効であることを見出した。癌患者に投与された場合、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる群から選択される不活性細菌の適切な組み合わせは、腫瘍抗原決定基の存在下で腫瘍細胞に好都合に向けられる、関連する自然免疫応答を生成すると仮定されている。この訓練された免疫は、腫瘍細胞が破壊の標的となるように、腫瘍細胞が免疫系から逃れることを可能にする免疫調節機構に対抗する。
【0037】
細菌集団
本発明者らは、免疫原性組成物に含めるための病原性細菌の最適な組み合わせを見出した。細菌種の選択は、本発明の意味において免疫系を十分に刺激するために非常に重要である。病原体は、宿主のパターン認識受容体によって認識される病原体関連分子パターンをその表面に含むことが知られている。しかしながら、シグナルの最適な組み合わせに到達することは容易な作業ではない。
【0038】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、細菌集団は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる群から選択される少なくとも4つ又は少なくとも5つの細菌種を含む。他の実施形態では、細菌集団は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる群から選択される少なくとも3つ又は少なくとも4つの種を含む。
【0039】
特定の一実施形態では、細菌集団は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の5つ全てを含む。別の特定の実施形態では、細菌集団は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる。
【0040】
細菌集団の製剤も関連する。ある程度は変動するが、細菌集団中の各種の割合は免疫応答に影響を及ぼす可能性があり、本発明者らは、所望の効果を達成するための最良の製剤を見出した。本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、細菌集団は、以下の組成:5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、15~70%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、1~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び1~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有し、ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である。
【0041】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、細菌集団は、以下の組成:5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、15~50%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、10~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び5~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有し、ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である。
【0042】
他の実施形態では、細菌集団は、以下の組成:10~20%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、5~15%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、20~40%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、15~25%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、5~15%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び10~20%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有し、ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である。特定の実施形態では、細菌集団は以下の組成:15%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、10%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、30%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、20%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、10%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び15%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有する。
【0043】
更に、本発明者らは、細胞の構造的完全性を維持する全細菌細胞の使用が、溶解された細菌細胞の使用よりも本発明の文脈でより良好な結果を達成することを見出した。したがって、特定の実施形態では、不活化細菌は、細菌細胞壁全体を含む。別の実施形態では、不活化細菌は、細菌細胞壁の構造的完全性を維持する。細菌細胞の構造的完全性を保持しながら病原性細菌を不活化する方法は、当技術分野で公知である。これらの不活化方法の非限定的な例は、フェノール化、照射及びホルマリン及びホルムアルデヒド処理(Fanら、J Food Prot 2017;Levinsonら、JAMA、1944;Hankaniemiら、Antiviral Research 2019)である。特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物中に存在する細菌細胞は、フェノールでの処理によって不活化されている。これは、例えば、細菌を室温で12時間フェノール0.5%(w/v)で処理することによって達成することができる。
【0044】
本発明のいくつかの態様は、本発明の第1の態様の免疫原性組成物を調製するために必須であり、特に設計された細菌集団自体を指す。特定の実施形態では、当該細菌集団中の細菌は全細菌である。特定の実施形態では、細菌集団中の細菌はフェノール化によって不活化されている。特定の実施形態では、組み合わせ中の細菌は、細胞壁の構造及び完全性を維持する。
【0045】
更に、特定の実施形態では、細菌集団は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の不活性細胞全体を含む。別の特定の実施形態では、細菌集団は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の不活性細胞全体からなる。特定の実施形態では、細菌集団は、以下の組成:5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、15~50%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、10~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び5~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有し、ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100であり、細菌細胞は全体であり不活性である。他の特定の実施形態では、細菌集団は、以下の組成:10~20%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、5~15%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、20~40%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、15~25%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、5~15%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び10~20%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有し、ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100であり、細菌細胞は全体であり不活性である。特定の実施形態では、細菌集団は以下の組成:15%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、10%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、30%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、20%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、10%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び15%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有し、細菌細胞は全体であり不活性である。
【0046】
細菌集団は、例えば、懸濁液又は脱水調製物として提供することができる。脱水は、凍結乾燥プロセスによって行うことができる。いくつかの実施形態では、細菌集団は凍結乾燥調製物である。他の実施形態では、細菌集団は懸濁液として提供される。
【0047】
更に、添加剤又は他の追加の化合物を細菌集団に添加して、細菌細胞を損傷から保護することができる。したがって、本発明はまた、上記の細菌集団を含む細菌組成物にも言及する。細菌組成物に適した添加剤は、防腐剤、アジュバント、加工助剤、凍結保護剤、酸化防止剤などである。この場合も、細菌組成物は、脱水された(例えば、凍結乾燥)組成物として、又は懸濁液として提供することができる。一実施形態では、細菌組成物は凍結乾燥され、グリセロール、スクロース又はトレハロースなどの凍結保護剤を含有する。
【0048】
細菌集団は、適切な割合の所望の種を混合することによって調製することができる。細菌種は、公開されている。例えば、細菌種は、専門会社又は寄託機関から入手することができる。所望の細菌集団はまた、特殊な商業的供給元によって(所望の割合で)提供することができる。Diaterなどの企業は、適切な商業的供給元である。細菌集団の他の可能な商業的供給元は、Roxall、Inmunotek及びAllergy Therapeuticsである。
【0049】
本発明はまた、上記の細菌集団又は細菌組成物を含むキットオブパーツを提供する。特定の実施形態では、キットはまた、第1の態様の免疫原性組成物の調製におけるその使用のための説明書を含有する。細菌集団又は細菌組成物について上述した全ての実施形態は、キットオブパーツにも適用される。
【0050】
本発明はまた、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物を調製するための上記の細菌集団又は細菌組成物又はキットオブパーツの使用を提供する。
【0051】
抗原決定基
本発明の第1の態様による免疫原性組成物は、腫瘍由来の抗原決定基を含有する。ほとんどの実施形態では、腫瘍は悪性腫瘍である。当該抗原決定基は、純粋な単離された抗原又は腫瘍細胞に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、抗原決定基は腫瘍細胞の形態である。これは、免疫原性組成物が、1つだけでなく、特定の種類の腫瘍に特徴的ないくつかの抗原決定基を含有することができ、したがってその特定の種類の腫瘍を標的とする免疫活性化の可能性を改善するという利点を有する。
【0052】
腫瘍細胞は、腫瘍の生検を実施することによって提供することができる。腫瘍細胞は、1人の対象(1つの腫瘍)のみに由来してもよく、又は同じ種類の腫瘍の生検細胞のプールに由来してもよい。腫瘍細胞は、腫瘍細胞株から得ることもできる。
【0053】
いくつかの実施形態では、免疫原性決定基は全腫瘍細胞の形態である。これは、細胞膜全体を含む腫瘍細胞、特に細胞膜の構造的完全性を維持する細胞として理解される。これは、抗原提示細胞との相互作用が増強されるという利点を有することができる。この場合、細胞は、細胞の構造的完全性を破壊しない方法によって不活化されなければならない(上記参照)。他の実施形態では、免疫原性決定基は腫瘍細胞溶解物の形態である。これは、腫瘍細胞の増殖停止並びに使用の容易さを保証するという利点を有する。細胞溶解のための非限定的な方法は、温度処理(すなわち、凍結融解及び/又は熱処理)、高圧処理、超音波処理、機械的処理であり、これらは全て当技術分野で公知である。例えば、腫瘍溶解物は、腫瘍細胞を3サイクルの凍結(-80℃)及び解凍(37℃)からなる手順に供することによって得ることができる。他の非限定的な方法は、細胞を低張溶液中に懸濁すること(浸透圧溶解)、及び/又は細胞壁の特定の成分と相互作用し、内部成分が細胞壁を通って漏出することを可能にすることができる化学物質(例えば、抗生物質、キレート剤、洗浄剤及び/又は溶媒)を使用することに基づく。
【0054】
抗原決定基はまた、純粋な単離された抗原又は純粋な単離された抗原の組み合わせの形態であってもよい。これは、より高い汎用性及びスケーラビリティという利点を有する。関連する腫瘍関連抗原は、例えば、Novellinoら、Cancer Immunol Immunother 2005に開示されている。訓練された免疫応答は、選択された1つ又は複数の抗原が優勢であるいくつかの種類の腫瘍に向けることができる。免疫原性組成物はまた、いくつかの腫瘍から選択された抗原を有するカクテルを含むことができ、したがって同じ免疫原性組成物で異なる腫瘍を治療することを可能にする。これは、優勢な抗原が同定されることを必要とする。例えば、一実施形態では、免疫原性組成物は、AFP、CEA、HER-2、p53、WT1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原を含有することができる。
【0055】
アジュバント
本発明の免疫原性組成物は、更なる化合物を含有することができる。特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物はまた、単糖、アミノ酸、脂肪酸、クレブス回路の基質又は代謝産物、β-グルカン、ケトン体、乳酸塩、グリセルアルデヒド、グリセロール、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物を含有することができる。以下の実施例に示すように、本発明者らは、本発明の免疫原性組成物の添加が免疫原性応答を増強し、それによって治療の有効性を改善する(腫瘍サイズのより大きな減少/腫瘍の根絶及び転移の実質的な排除)ことを見出した。これらの化合物は、単球及びマクロファージが活性化され、免疫原性組成物によって誘導される自然免疫応答を開始するのに十分なエネルギー源を有することを可能にする栄養素であると仮定される。これらの化合物をアジュバントと見なすことができる。
【0056】
上記の化合物の非限定的な例は、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、並びにそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、グルコース、フルクトース、グルタミン、アルギニン、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を更に含む。別の特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物はグルコースを更に含む。
【0057】
本出願はまた、免疫原性アジュバントとして、単糖、アミノ酸、脂肪酸、クレブス回路の基質又は代謝産物、β-グルカン、ケトン体、乳酸塩、グリセルアルデヒド、グリセロール、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物を開示する。ワクチン又は免疫原性組成物の調製における単糖、アミノ酸、脂肪酸、クレブス回路の基質又は代謝産物、β-グルカン、ケトン体、乳酸塩、グリセルアルデヒド、グリセロール、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物の使用も開示される。抗原提示細胞の活性を刺激するための、単糖、アミノ酸、脂肪酸、クレブス回路の基質又は代謝産物、β-グルカン、ケトン体、乳酸塩、グリセルアルデヒド、グリセロール、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物の使用も開示される。対象において訓練された免疫応答を増強するための、単糖、アミノ酸、脂肪酸、クレブス回路の基質又は代謝産物、β-グルカン、ケトン体、乳酸塩、グリセルアルデヒド、グリセロール、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物の使用も開示される。特に、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、及びそれらの組み合わせ、例えばグルコース、フルクトース、グルタミン、アルギニン、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物。特に、当該化合物はグルコースである。
【0058】
本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物中の上記で定義された化合物、例えばグルコースの量は、0.5~10%であってもよい。いくつかの実施形態では、当該量は、1~10%、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10%である。特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物又は医薬組成物中の化合物の量は5%である。
【0059】
本発明の免疫原性組成物はまた、従来のアジュバントを含有することができる。本発明の免疫原性組成物に使用するための非限定的なアジュバントは、無機化合物、例えばミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウム水酸化物、鉱油、例えばパラフィン油、トキソイド、スクアレン、洗剤、例えばQuil A、サイトカイン、例えばIL-1、IL-2、IL-12、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバントである。
【0060】
免疫原性組成物の調製
上述のように、本発明の免疫原性組成物は、細菌集団を腫瘍由来の抗原決定基と接触させることによってインサイチュで調製することができる。これは、例えば、免疫原性組成物が治療される対象から得られた腫瘍細胞又は細胞溶解物を含む自己治療の場合であってもよい。この場合、細菌集団が、例えば懸濁液又は凍結乾燥調製物として容易に入手可能であることが好都合である。
【0061】
抗原決定基は、上に開示した通りであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、免疫原性組成物を調製する方法は、患者の腫瘍から、又はいくつかの患者からの同じ種類の腫瘍(腫瘍細胞のプール)から、又は腫瘍細胞株から得られた腫瘍細胞を提供し、当該腫瘍細胞を不活化することを企図する。したがって、一実施形態では、本発明の免疫原性組成物を調製する方法は、以下の工程:(i)腫瘍細胞を不活化すること、及び(ii)工程(i)の不活化腫瘍細胞を上記で定義された細菌集団と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、照射又はフェノール化などの細胞膜の構造的完全性を維持する方法によって不活化される。いくつかの実施形態では、免疫原性組成物を調製する方法は、腫瘍細胞溶解物を提供することを企図する。細胞を溶解するための適切な方法が上に開示されている。例えば、腫瘍溶解物は、腫瘍組織又は細胞株から得られた試料を3サイクルの凍結(-80℃)及び解凍(37℃)からなる手順に供することによって得ることができる。特定の実施形態では、免疫原性組成物を調製する方法は、追加の化合物、例えばグルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、及びそれらの組み合わせ、例えばグルコース、フルクトース、グルタミン、アルギニン、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物、特にグルコースを添加することを含む。
【0062】
なお更なる実施形態では、免疫原性組成物は、純粋な単離された腫瘍抗原を上に定義される細菌集団と接触させ、場合により、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、及びそれらの組み合わせ、例えばグルコース、フルクトース、グルタミン、アルギニン、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物、特にグルコースを添加することよって調製することができる。
【0063】
接触工程は、室温で行い、使用するまで氷上で保持してもよい。接触は、穏やかに混合することによって、例えばピペッティングによって行うことができる。1つの特定の例では、免疫原性組成物は、抗原決定基(例えば、約0.5×10e6個の腫瘍細胞を溶解して得られた腫瘍溶解物)を約50uLの細菌集団(10e8/mL)と室温でピペッティングして混合することによって調製することができる。
【0064】
医薬組成物
本発明の別の態様は、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の上記に定義される免疫原性組成物を含む医薬組成物に関する。本出願はまた、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の上記に定義される細菌集団を含む医薬組成物を開示する。本発明の医薬組成物は、ワクチンと見なすことができる。したがって、この態様はまた、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の上記に定義される免疫原性組成物を含むワクチンとも呼ぶことができる。薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の上記に定義される細菌集団を含むワクチンも開示される。
【0065】
本発明の医薬組成物中の細菌集団、免疫原性決定基、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の追加の成分の相対量は、治療される対象の同一性、サイズ、及び/又は状態に応じて、更に組成物が投与される経路に応じて変化する。
【0066】
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤としては、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤及び/又は油が挙げられるが、これらに限定されない。着色剤、コーティング剤、甘味剤、及び香味剤などの賦形剤は、処方者の判断に従って、組成物中に存在することができる。
【0067】
本発明の免疫学的組成物を含有する医薬組成物は、任意の剤形、例えば固体又は液体で提供することができ、任意の適切な経路、例えば経口、非経口、直腸、局所、鼻腔内又は舌下経路によって投与することができ、そのために、所望の剤形の製剤、例えば局所製剤(軟膏、クリーム、リポゲル、ヒドロゲルなど)、点眼剤、エアロゾルスプレー、注射液、浸透圧ポンプなどに必要な薬学的に許容される賦形剤が含まれる。
【0068】
例示的な希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉末化糖及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
例示的な造粒剤及び/又は分散剤としては、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム、クレー、アルギン酸、グアーガム、柑橘類パルプ、寒天、ベントナイト、セルロース及び木材製品、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、カルボキシメチルスターチナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500)、微結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
例示的な結合賦形剤としては、デンプン(例えば、コーンスターチ及びデンプンペースト);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、トチャカの抽出物、パンワーガム(panwar gum)、ガティガム(ghatti gum)、イサポールハスク(isapol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、及びカラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan);アルギン酸塩;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコール;及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
例示的な防腐剤としては、酸化防止剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び他の防腐剤を挙げることができる。例示的な酸化防止剤としては、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、オレイン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸及びエデト酸三ナトリウムが挙げられる。
【0072】
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプチン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は非経口組成物である。一実施形態では、本発明の医薬組成物は皮内組成物である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は経皮組成物である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は静脈内組成物である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は舌下組成物である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は皮下組成物である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は経口組成物である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は鼻咽頭組成物である。
【0074】
一実施形態では、医薬組成物は、10e7~10e12の不活化細菌細胞/用量を含む。一実施形態では、医薬組成物は、10e8~10e11不活化細菌細胞/用量、例えば10e8、10e9又は10e10不活化細菌細胞/用量を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、及びアジュバントを含む。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、及びそれらの組み合わせから選択される化合物を含む。他の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、グルコース、フルクトース、グルタミン、アルギニン、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物はグルコースを含む。
【0076】
治療的使用
本発明の第8から第11の態様は、腫瘍の予防及び/又は治療における本発明の組成物の治療的使用に関する。ほとんどの実施形態では、治療される腫瘍は悪性腫瘍である。したがって、本出願は、本質的に癌の予防及び/又は治療を指す。
【0077】
上述のように、細菌細胞内に位置するパターン認識受容体によって引き起こされる自然免疫を媒介する白血球の活性化は、腫瘍からの抗原の取り込みを増強し、最初に発生した自然免疫応答をその腫瘍に対する特異的適応免疫応答に変えると仮定される。自然免疫を媒介する当該白血球としては、単球、マクロファージ及び樹状細胞などの抗原提示細胞、好塩基球、好酸球、ランゲルハンス細胞、肥満細胞、好中球、NK及びNKT細胞が挙げられる。
【0078】
腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発するのに使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物も開示される。これは、誘発を必要とする対象において腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発するための医薬品の調製において使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物と言い換えることができる。腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発する方法であって、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む方法も開示される。
【0079】
本出願はまた、自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させるのに使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物を開示する。これは、自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させるための医薬品の調製に使用するための、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物と言い換えることができる。自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させる方法であって、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む方法も開示される。いくつかの実施形態では、自然免疫を媒介する当該白血球は、単球、マクロファージ及び樹状細胞などの抗原提示細胞、好塩基球、好酸球、ランゲルハンス細胞、肥満細胞、好中球、NK及びNKT細胞、特に単球、マクロファージ及び樹状細胞から選択される。
【0080】
本出願はまた、腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発するのに使用するための、第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物を開示し、訓練された自然免疫応答を誘発することは、細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基の治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を含む。これは、腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発するための医薬品を調製するための、第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物の使用と言い換えることができ、当該医薬品は、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と共に治療間隔内で同時に、逐次的に、又は別個に投与される。本発明はまた、腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発する方法を開示し、当該方法は、誘発を必要とする対象に、治療有効量の第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物を、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と組み合わせて投与することを含み、細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基は、治療間隔内で同時に、逐次的に、又は別個に投与される。
【0081】
本出願はまた、自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させるのに使用するための、第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物を開示し、非特異的エフェクター応答を増加させることは、細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基の治療間隔内での同時、逐次又は別個の投与を含む。これは、自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させるための医薬品を調製するための、第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物の使用と言い換えることができ、当該医薬品は、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と共に治療間隔内で同時に、逐次的に、又は別個に投与される。本発明はまた、自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させる方法を開示し、当該方法は、増加を必要とする対象に、治療有効量の第3の態様に定義される細菌集団又は第4の態様に定義される細菌集団を含む医薬組成物を、1つ又は複数の腫瘍抗原決定基と組み合わせて投与することを含み、細菌集団及び1つ又は複数の腫瘍抗原決定基は、治療間隔内で同時に、逐次的に、又は別個に投与される。
【0082】
本発明の免疫原性組成物の使用によって予防又は治療することができる腫瘍は、腫瘍細胞又は腫瘍由来の抗原が利用可能である限り、特に限定されない。本発明の意味において予防又は治療することができる非限定的な種類の腫瘍は、癌腫、肉腫及び血液腫瘍である。癌腫は、高頻度に見られる癌であり、上皮細胞、又は器官、腺若しくは他の身体構造(例えば、皮膚、子宮、肺、乳房、前立腺、胃、腸)の外表面若しくは内表面を覆う細胞の癌であり、転移する傾向がある。癌腫は、腺癌、例えば、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌又は膀胱癌、及び扁平上皮癌であってもよい。肉腫は、結合組織又は支持組織(例えば、骨、軟骨、腱、靭帯、脂肪、及び筋肉)に由来する。肉腫は、骨肉腫若しくは骨原性肉腫(骨)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫若しくは中皮腫(体腔の膜性内面)、線維肉腫(線維組織)、血管肉腫若しくは血管内皮腫(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、神経膠腫若しくは星細胞腫(脳に見られる神経原性結合組織)、粘液肉腫(原始胚性結合組織)、又は間葉若しくは混合性中胚葉腫瘍(混合性結合組織型)であってもよい。血液腫瘍は、骨髄及びリンパ組織に由来する。血液腫瘍は、骨髄の形質細胞に起源を有する骨髄腫;「液体腫瘍」であってもよく、骨髄の腫瘍であり、骨髄性又は顆粒球性白血病(骨髄性及び顆粒球性白血球)、リンパ性、リンパ球性若しくはリンパ芽球性白血病(リンパ球性及びリンパ球性血液細胞)又は真性赤血球増加症若しくは赤血病(様々な血球生成物であるが、赤血球が支配的である)であってもよい白血病;又は固形腫瘍であってもよく、リンパ系の腺又はリンパ節に発生し、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫であってもよいリンパ腫であってもよい。更に、腺扁平上皮癌、混合性中胚葉腫瘍、癌肉腫又は奇形癌などの混合型腫瘍も存在する。これらの全ての種類の腫瘍、並びに当業者に明らかであろう他の腫瘍は、本発明の意味において企図される。
【0083】
本発明の免疫学的組成物によって治療することができる腫瘍はまた、それらが起源を有する器官、すなわち、「原発部位」、例えば、乳房、脳、肺、肝臓、皮膚、前立腺、精巣、膀胱、結腸及び直腸、子宮頸部、子宮などの腫瘍又は癌に基づいて命名することができる。この命名は、腫瘍が原発部位とは異なる身体の別の部分に転移した場合でも持続することが多い。この意味で、本発明の第8から10の態様で企図される腫瘍は、胃腸管、呼吸器系、神経系、造血系、上皮、生殖器系(例えば、子宮頸部、卵巣、子宮、膣及び外陰など)、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、脳、眼、精巣、筋肉、骨又は乳房の腫瘍であってもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明の第8から10の態様で企図される腫瘍は、胃腸管、呼吸器系、造血系、上皮、生殖器系(例えば、子宮頸部、卵巣、子宮、膣及び外陰など)、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、筋肉、骨又は乳房の腫瘍である。特定の実施形態では、腫瘍は、結腸、肺、肝臓又は乳房の腫瘍である。
【0084】
本発明の免疫原性組成物及びそれを含む医薬組成物について上記の全ての実施形態は、その全ての成分についての実施形態を含めて、このセクションに記載される治療的使用にも適用される。例えば、特定の実施形態では、細菌は不活化細菌全体であり、組み合わせは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含むか又はそれらからなる。
【0085】
いくつかの実施形態では、予防又は治療は自己である。これは、免疫原性組成物に含まれる抗原決定基が、治療されている同じ対象に由来することを意味する。この場合、免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物は、腫瘍を予防又は治療する方法で使用するためのものであり、予防及び/又は治療のための方法は、以下の工程:(i)対象から得られた腫瘍細胞を不活性化すること、(ii)不活性腫瘍細胞を細菌集団と接触させて免疫原性組成物を得ること、(iii)免疫原性組成物を腫瘍細胞が得られた対象と同じ対象に投与することを含む。当該方法からの工程(i)及び(ii)はインビトロであることを理解されたい。
【0086】
他の実施形態では、治療は自己ではなく同種異系である。これは、抗原決定基が、治療されている対象ではない1又は複数の対象に由来することを意味する。この場合、本発明の第1の態様に定義される免疫原性組成物又は第3の態様に定義される細菌集団又は本発明の第4の態様に定義される医薬組成物は、腫瘍を予防または治療する方法で使用するためのものであり、予防及び/又は治療のための方法は、以下の工程:(i)対象又は対象の群から得られた同じ種類の腫瘍の腫瘍細胞を不活性化すること、(ii)不活性腫瘍細胞を細菌集団と接触させて免疫原性組成物を得ること、(iii)(i)と同じ種類の腫瘍に罹患している患者に免疫原性組成物を投与することを含む。当該方法からの工程(i)及び(ii)はインビトロであることを理解されたい。
【0087】
一実施形態では、腫瘍細胞が得られる対象は、レシピエントに適合するHLAである(同種処置)。他の実施形態では、腫瘍細胞は、レシピエントと必ずしもHLAが一致しない異なる1又は複数の対象に由来する(異種処置)。
【0088】
上述のように、腫瘍細胞は、生検を行うことによって1又は複数の対象から抽出することができる。腫瘍細胞が自己でない場合、生検された腫瘍細胞のプールから、又は腫瘍細胞株から当該細胞を得ることが可能である。次いで、腫瘍細胞を不活化して、不活化細胞全体又は細胞溶解物を得て、続いてこれを細菌集団と接触させて免疫原性組成物を得て、次いでこれを患者に投与する。
【0089】
投与経路は非経口であってもよい。一実施形態では、投与経路は皮内である。別の実施形態では、投与経路は皮下である。別の実施形態では、投与経路は経皮である。別の実施形態では、投与経路は静脈内である。別の実施形態では、投与経路は舌下である。別の実施形態では、投与経路は経口である。
【0090】
以下の実施例に示すように、本発明の免疫原性組成物は、悪性腫瘍の増殖を予防し、悪性腫瘍のサイズを縮小し、更には悪性腫瘍を排除することができる。したがって、本発明の第8から10の態様の一実施形態は、悪性腫瘍の増殖を予防するためのものである。本発明の第8から10の態様の別の実施形態は、癌を予防するためのものである。本発明の第8から第10の態様の別の実施形態は、悪性腫瘍を治療するためのものである。本発明の第8から10の態様の別の実施形態は、癌を治療するためのものである。
【0091】
重要なことに、免疫原性組成物が転移を効果的に妨げることも以下の実施例によって示される。したがって、本発明の第8から10の態様の別の実施形態は、二次性腫瘍の増殖を予防するためのものである。本発明の第8から10の態様の別の実施形態は、転移を予防するためのものである。本発明の第8から第10の態様の別の実施形態は、二次性腫瘍を治療するためのものである。本発明の第8から10の態様の別の実施形態は、転移性癌を予防するためのものである。
【0092】
併用療法で使用される場合、併用は、抗腫瘍剤、放射線療法又は手術との併用であってもよい。より具体的には、本発明の免疫原性組成物又は細菌集団は、抗腫瘍剤、放射線療法又は外手術と共に、治療有効間隔内で、任意の順序で別々に投与される。特定の実施形態では、併用療法は手術を含む。別の特定の実施形態では、併用療法は放射線を含む。特定の実施形態では、併用療法は抗腫瘍剤を含む。抗腫瘍剤は、特異性を改善する、例えばアルキル化剤、葉酸アンタゴニスト、プリン及びピリミジン類似体を含む代謝拮抗物質、アントラサイクリン及びビンカアルカロイドを含む抗生物質及び他の天然産物、並びに抗体などの細胞傷害剤であってもよい。抗腫瘍剤は、ホルモン剤又はシグナル伝達阻害剤であってもよい。特定の実施形態では、併用療法は化学療法を含む。併用療法はまた、異なる免疫療法を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、併用は、免疫チェックポイント分子を遮断するモノクローナル抗体、活性化ナチュラルキラー細胞、(CAR)T細胞、腫瘍浸潤リンパ球又は腫瘍抗原負荷樹状細胞との組み合わせであってもよい。
【0093】
完全を期すために、本発明は、以下の番号付けされた実施形態にも記載されている。
【0094】
1.a)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Streptococcus viridans)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ナイセリア・フラバ(Neisseria flava)、大腸菌(Escherichia coli)及びプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)からなる群から選択される少なくとも3つの病原性細菌種を含む細菌集団であって、細菌が不活化細菌である細菌集団、並びに
(b)1つ又は複数の腫瘍抗原決定基を含む、免疫原性組成物。
【0095】
2.細菌集団が、細菌種のうちの少なくとも4つを含む、実施形態1に記載の免疫原性組成物。
【0096】
3.細菌集団が、細菌種のうちの少なくとも5つを含む、実施形態2に記載の免疫原性組成物。
【0097】
4.細菌集団が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む、実施形態1から3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0098】
5.細菌集団が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる、請求項実施形態4に記載の免疫原性組成物。
【0099】
6.細菌集団が、
5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
15~70%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
1~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
1~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態5に記載の免疫原性組成物。
【0100】
7.細菌集団が、
5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
15~50%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
10~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
5~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態6に記載の免疫原性組成物。
【0101】
8.細菌集団が、
10~20%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
5~15%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
20~40%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
15~25%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
5~15%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
10~20%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態7に記載の免疫原性組成物。
【0102】
9.細菌集団が、
15%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
10%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
30%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
20%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
10%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
15%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む、実施形態8に記載の免疫原性組成物。
【0103】
10.不活化細菌が細菌細胞壁全体を含む、実施形態1から9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0104】
11.不活化細菌が細菌細胞の構造的完全性を維持する、実施形態1から10のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0105】
12.不活化細菌が溶解細菌である、実施形態1から9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0106】
13.抗原決定基が不活化腫瘍細胞の形態である、実施形態1から12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0107】
14.不活化腫瘍細胞が細胞膜全体を含む、実施形態13に記載の免疫原性組成物。
【0108】
15.不活化腫瘍細胞が細胞膜の構造的完全性を維持する、実施形態14に記載の免疫原性組成物。
【0109】
16.不活化腫瘍細胞が溶解細胞である、実施形態13に記載の免疫原性組成物。
【0110】
17.抗原決定基が単離された抗原の形態である、実施形態1から12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0111】
18.単離された抗原が、AFP、CEA、HER-2、p53、WT1及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態17に記載の免疫原性組成物。
【0112】
19.抗原決定基が悪性腫瘍由来である、実施形態1から18のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0113】
20.2つ以上の抗原決定基を含み、2つ以上の抗原決定基が同じ腫瘍に由来する、実施形態1から19のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0114】
21.2つ以上の抗原決定基を含み、2つ以上の抗原決定基が異なる腫瘍に由来する、実施形態1から19のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0115】
22.組成物が、単糖、アミノ酸、脂肪酸、クレブス回路の基質又は代謝産物、β-グルカン、ケトン体、乳酸塩、グリセルアルデヒド、グリセロール、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される化合物を更に含有する、実施形態1から21のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0116】
23.追加の化合物が、グルコース、フルクトース、乳酸塩、グリセルアルデヒド、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、フマル酸塩、α-ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、グリセロール、グルタミン、アルギニン、ケトン体、β-グルカン、一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態22に記載の免疫原性組成物。
【0117】
24.追加の化合物が、グルコース、フルクトース、グルタミン、アルギニン、リンゴ酸塩、グルタミン酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態23に記載の免疫原性組成物。
【0118】
25.追加の化合物がグルコースである、実施形態24に記載の免疫原性組成物。
【0119】
26.追加の化合物の量が0.5~10%である、実施形態22から25のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0120】
27.追加の化合物の量が2~8%である、実施形態26に記載の免疫原性組成物。
【0121】
28.追加の化合物の量が5%である、実施形態27に記載の免疫原性組成物。
【0122】
29.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む細菌集団であって、細菌が不活化細菌である、細菌集団。
【0123】
30.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる、実施形態29に記載の細菌集団。
【0124】
31.細菌集団が、
5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
15~70%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
1~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
1~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態30に記載の細菌集団。
【0125】
32.細菌集団が、
5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
15~50%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
10~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
5~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態31に記載の細菌集団。
【0126】
33.細菌集団が、
10~20%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
5~15%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
20~40%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
15~25%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
5~15%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
10~20%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態32に記載の細菌集団。
【0127】
34.細菌集団が、
15%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
10%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
30%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
20%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
10%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
15%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む、実施形態33に記載の細菌集団。
【0128】
35.不活化細菌が細菌細胞壁全体を含む、実施形態29から34のいずれか一項に記載の細菌集団。
【0129】
36.不活化細菌が細菌細胞の構造的完全性を維持する、実施形態29から35のいずれか一項に記載の細菌集団。
【0130】
37.1つ又は複数の腫瘍抗原決定基を実施形態29~36のいずれか一項に定義される細菌集団と接触させることを含む、免疫原性組成物を調製する方法。
【0131】
38.方法が、以下の工程:
(i)腫瘍細胞を不活化すること、及び
(ii)工程(i)の不活化腫瘍細胞を上記で定義された細菌集団と接触させることを含む、実施形態37に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0132】
39.腫瘍細胞が、細胞膜の構造的完全性を維持する方法によって不活化される、実施形態38に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0133】
40.腫瘍細胞が、フェノール化、照射及びホルマリン又はホルムアルデヒドによる処理からなる群から選択される方法によって不活化される、実施形態39に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0134】
41.腫瘍細胞がフェノール化によって不活化される、実施形態40に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0135】
42.腫瘍細胞が同じ種類の腫瘍に由来する、実施形態38から41のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0136】
43.腫瘍細胞が対象又は対象の群から得られる、実施形態42に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0137】
44.腫瘍細胞が同じ対象から得られる、実施形態43に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0138】
45.腫瘍細胞が腫瘍細胞株に由来する、実施形態42に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0139】
46.腫瘍細胞が溶解によって不活化される、実施形態38に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0140】
47.腫瘍抗原決定基が単離された抗原の形態である、実施形態37に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0141】
48.単離された抗原が、AFP、CEA、HER-2、p53、WT1及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態47に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0142】
49.腫瘍が悪性腫瘍である、実施形態37から48のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0143】
50.実施形態22から25のいずれか一項に定義される化合物を添加する更なる工程(iii)を含む、実施形態37から49のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0144】
51.追加の化合物が総免疫原性組成物の0.5~10%で添加される、実施形態50に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0145】
52.追加の化合物が、総免疫原性組成物の2~8%、例えば総免疫原性組成物の5%で添加される、実施形態51に記載の免疫原性組成物を調製する方法。
【0146】
53.薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、治療有効量の実施形態1から28のいずれか一項に定義される免疫原性組成物又は実施形態29から36のいずれか一項に定義される細菌集団を含む医薬組成物。
【0147】
54.10e7~10e12の不活化細菌細胞/用量を含む、実施形態53に記載の医薬組成物。
【0148】
55.10e9~10e11の不活化細菌細胞/用量を含む、実施形態54に記載の医薬組成物。
【0149】
56.医薬組成物が、皮内、経皮、皮下、舌下、静脈内、鼻咽頭又は経口組成物である、実施形態53から55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0150】
57.医薬組成物が皮内組成物である、実施形態56に記載の医薬組成物。
【0151】
58.医薬組成物が舌下組成物である、実施形態56に記載の医薬組成物。
【0152】
59.アジュバントを更に含む、実施形態53から58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0153】
60.医薬品として使用するための、実施形態1から28のいずれか一項に定義される免疫原性組成物若しくは実施形態29から36のいずれかに定義される細菌集団、又は実施形態53から59のいずれか一項に定義される医薬組成物。
【0154】
61.腫瘍に対する訓練された自然免疫応答を誘発するのに使用するための、実施形態1から28のいずれか一項に定義される免疫原性組成物若しくは実施形態29から36のいずれか一項に定義される細菌集団、又は実施形態53から59のいずれか一項に定義される医薬組成物。
【0155】
62.自然免疫を媒介する白血球の非特異的エフェクター応答を増加させるのに使用するための、実施形態1から28のいずれか一項に定義される免疫原性組成物若しくは実施形態29から36のいずれか一項に定義される細菌集団、又は実施形態53から59のいずれか一項に定義される医薬組成物。
【0156】
63.抗原提示細胞が、単球、マクロファージ、樹状細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態62に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0157】
64.腫瘍の予防及び/又は治療のための方法に使用するための、実施形態1から28のいずれか一項に定義される免疫原性組成物若しくは実施形態29から36のいずれか一項に定義される細菌集団、又は実施形態53から59のいずれか一項に定義される医薬組成物。
【0158】
65.腫瘍が悪性腫瘍である、実施形態61から64のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0159】
66.腫瘍が二次性腫瘍である、実施形態61から65のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0160】
67.腫瘍が、呼吸器系、胃腸管、神経系、造血系、生殖系(例えば、子宮頸部、卵巣、子宮、膣および外陰など)、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、脳、眼、精巣、筋肉、骨又は乳房に由来し、特に腫瘍が、呼吸器系、胃腸管、造血系、生殖系、尿路、内分泌系、皮膚、心臓、筋肉、骨又は乳房に由来する、実施形態61から66のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0161】
68.腫瘍が乳房腫瘍である、実施形態67に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0162】
69.腫瘍が胃腸管に由来する、実施形態67に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0163】
70.腫瘍が結腸に由来する、実施形態67に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0164】
71.不活化細菌細胞が細菌細胞壁全体を含む、実施形態60から70のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0165】
72.細菌集団が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む、実施形態71に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0166】
73.細菌集団が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)からなる、実施形態72に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0167】
74.細菌集団が、
5~25%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
1~20%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
15~50%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
10~30%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
1~20%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
5~25%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態73に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0168】
75.細菌集団が、
10~20%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
5~15%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
20~40%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
15~25%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
5~15%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
10~20%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含み、
ここで、細菌集団中の種に対するパーセンテージの合計は100である、実施形態74に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0169】
76.細菌集団が、
15%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
10%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、
30%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、
20%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
10%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び
15%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を含む、実施形態75に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0170】
77.予防及び/又は治療のための方法が以下の工程:
(i)対象から得られた腫瘍細胞を不活性化すること、
(ii)不活性腫瘍細胞を細菌集団と接触させて免疫原性組成物を得ること、
(iii)免疫原性組成物を腫瘍細胞が得られた対象と同じ対象に投与することを含む、実施形態61から76のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0171】
78 予防及び/又は治療のための方法が、実施形態22から25のいずれか一項に定義される化合物を免疫原性組成物に添加する更なる工程を含む、実施形態77に記載の使用のための免疫原性組成物、細菌集団又は医薬組成物。
【0172】
79.実施形態1から28のいずれか一項に定義される免疫原性組成物を調製するためのキットオブパーツであって、当該キットが、(a)実施形態29から36のいずれか一項に定義される細菌集団を含む、キットオブパーツ。
【0173】
80.(b)1つ又は複数の免疫原性決定基を更に含む、実施形態79に記載のキットオブパーツ。
【0174】
81.(c)実施形態22から25のいずれか一項に定義される化合物を更に含む、実施形態79から80のいずれかに記載のキットオブパーツ。
【0175】
全体を通して、説明及び特許請求の範囲の単語「含む」及びその変形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素、又はステップを除外することを意図するものではない。更に、単語「含む」は、「からなる」の場合を包含する。本発明の追加の目的、利点、及び特徴は、説明を検討することで当業者に明らかになるか、又は本発明の実施によって学ぶことができる。以下の実施例及び図面は、例示として提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。更に、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態の全ての可能な組合せをカバーする。
【実施例】
【0176】
実施例1:細菌細胞壁全体を含む細菌集団と腫瘍溶解物との組み合わせは、特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する
【0177】
本研究は、固形腫瘍に対する特異的免疫応答をその後に発生させるために、腫瘍溶解物でプライミングされた不活化病原性細菌(「細菌集団」)の特定の組み合せが自然免疫応答を誘導する能力を評価することを目的とした。
【0178】
この実施例で使用した細菌集団は以下の組成:15%の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、10%の化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、30%の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、20%のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、10%の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び15%のモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)を有する。組み合わせは、Laboratorios Diater S.A.によって提供された。細菌集団をフェノール化によって不活化した。
【0179】
CT26.CL25細胞をATCC(登録商標)CRL-2639(商標)から入手した。これらは、接着状態で増殖する線維芽細胞形態を有するマウス由来細胞(ハツカネズミ(Mus musculus)、系統Balb/c)である。これらの細胞は、T抗原SV40ウイルス)を形質転換する能力によってBalb/cマウス誘発結腸癌に由来する。CT-26細胞は、Balb/cマウスに注射されると、それらが由来する腫瘍と同様の特徴を有する固形腫瘍を誘導することができる。このため、CT-26細胞は、免疫療法プロトコル並びに宿主免疫応答の発生の研究を試験するためのモデルとして一般的に使用されている。
【0180】
グルコースをSigma-Aldrich(G8270)から入手した。
【0181】
0.5×10e6のCT26.CL25細胞のペレット(ATCC(登録商標)CRL-2639(商標))を3回の凍結(-80℃)及び解凍(37℃)に供することによって、CT26.CL25細胞溶解物を調製した。
【0182】
0.5×10e6のCT26.CL25細胞に由来する溶解物を50uL(10e8/mL)のフェノール不活化細菌集団と室温でピペッティングして混合することによって免疫原性組成物を調製し、使用するまで氷上に保管した。
【0183】
CT-26細胞を12週齢の雄Balb/cマウスに皮下接種した(0.5×10e6/マウス)。16日後、注射された細胞は、5×5mmのサイズを示す皮下腫瘍を生じた。この時点で、マウスを以下の4つの実験群に分けた。
群1.-対照:腫瘍の反対側への50μLの生理食塩水の投与。
群2.-細菌集団:腫瘍の反対側に50uL(10e8/mL)の細菌集団の投与。
群3.-免疫原性組成物:腫瘍溶解物(0.5×10e6のCT-26細胞から得られる)と組み合わせた50uLの細菌集団(10e8/mL)の腫瘍の反対側への投与
群4.-グルコースを含む免疫原性組成物:腫瘍溶解物(0.5×10e6のCT-26細胞から得られる)+5%グルコースと組み合わせた50uLの細菌集団(10e8/mL)の腫瘍の反対側への投与。
【0184】
続いて、
図1Aに示すように、異なる実験群に含まれるマウスにおいて誘導された皮下腫瘍のサイズを毎週測定した。
【0185】
得られた結果は、腫瘍と反対側の細菌集団の投与(群2)は、増殖速度が対照群(生理食塩水を投与された、群1)と同様であるので、CT-26細胞の皮下投与によって誘導される腫瘍に対する免疫応答を誘導することができないことを実証している。CT-26細胞腫瘍溶解物と組み合わせて細菌集団を投与されたマウス(群3)は、埋め込まれた腫瘍の増殖を防ぐことができ(
図1Aの詳細を参照)、この群に含まれる5匹のマウスのうち2匹が完全な寛解を示した。細菌集団と、5%グルコースを添加したCT-26細胞腫瘍溶解物との組み合わせ(群4)の投与は、群3よりも小さい腫瘍サイズを示し、この群に含まれる5匹のマウスのうち3匹も完全な寛解を示したので、更に効果的であることが判明した(
図1Aの詳細を参照)。
【0186】
一方、免疫記憶応答を起こす能力を有する特異的抗腫瘍応答の発達を評価するために、実験群3及び4では、CT-26腫瘍株(マウスあたり0.5×10e6細胞)を、最初の腫瘍が注射された反対側に再注射した。デノボ腫瘍(二次性腫瘍)の発生は、これらの2つの実験群に含まれるマウスのいずれにおいても観察されず、これらのマウスが腫瘍に対する特異的記憶応答が起きたことを示し、したがってこのタイプの腫瘍による新たなチャレンジから保護された。
【0187】
実施例2;細菌細胞壁全体を含む細菌集団と腫瘍溶解物との組み合わせは、腫瘍の発生を予防する
【0188】
また、本発明者らは、CT-26細胞腫瘍溶解物と実施例1に定義されるフェノール不活化細菌集団の組み合わせが、この腫瘍に対して予防的免疫応答(ワクチン接種)を発揮する能力を試験した。このために、雄balb/cマウスを以下の実験群に分けた。
群1.-細菌集団:50uL(10e8cfu/mL)の細菌集団の皮下投与。
群2.-腫瘍溶解物対照:0.5×10e6のCT-26細胞から得られた腫瘍溶解物の皮下投与。
群3.-免疫原性腫瘍ワクチン接種:腫瘍溶解物(0.5×10e6のCT-26細胞から得られる)と組み合わせた50uLの細菌集団(10e8cfu/mL)の皮下投与。
【0189】
細菌集団(群1)、腫瘍溶解物(群2)又は免疫原性組成物(群3)を投与した2週間後、腫瘍を誘導するために、全ての実験群に0.5×10e6のCT-26細胞を皮下接種した。得られた結果は、腫瘍細胞の接種の2週間後、実験群1及び2に含まれるマウスが直径1cmを超えるサイズの皮下腫瘍を発症したが、群3は腫瘍形成を観察しなかったことを示した。これらの結果は、腫瘍溶解物と不活化細菌との組み合わせが、腫瘍溶解物を得るために使用される細胞で生成された腫瘍のその後の発生を保護することができることを示し、腫瘍ワクチン接種効果を示唆し、したがって、実施された最初の実験で既に実証された記憶免疫応答を強化する。
【0190】
実施例3:細菌細胞壁全体を含む細菌集団と腫瘍溶解物との組み合わせは、イヌにおいて特異的な抗腫瘍免疫応答を誘発する
【0191】
第3の一連の実験では、本発明者らは、イヌの乳房腫瘍の治療のために、実施例1に定義されるフェノール不活化細菌集団と組み合わせた腫瘍溶解物の組み合わせの有効性を試験した。このために、2匹の異なるイヌから外科的に切除した乳癌から独立した生検(直径約2.5cm)を得た。腫瘍溶解物を生成するために、生検を3回の凍結(-80℃)及び解凍(37℃)に供した。最後の凍結解凍過程の後、1.5mLの腫瘍溶解物が得られ、これをそれぞれ0.5mLの腫瘍溶解物を含有する3つの独立したアリコートで凍結した。
【0192】
3用量の免疫原性組成物を、各用量間に2週間の間隔をおいて皮下注射によってレシピエント動物に投与した。各用量は、500ulアリコートを解凍し、それを500uL(10e8cfu/mL)のフェノール不活化細菌集団と組み合わせることによって投与前に調製した。各動物に自身の乳癌から生検された腫瘍細胞を用いて調製された免疫原性組成物を投与した(自己処置)。腫瘍溶解物と不活化細菌との組み合わせの皮下注射中、又は各投与後のその後の日のいずれにおいても有害反応は観察されなかった。6ヶ月後、2匹の動物は依然として乳癌の発症がない。
【0193】
要約すると、得られた結果は、以下の通りである。
1.細菌細胞壁全体を含む細菌集団は、腫瘍に由来する抗原と組み合わせられる限り、特異的な抗腫瘍免疫応答を生成することができた(結果、群3及び4、
図1を参照されたい)。腫瘍溶解物由来の腫瘍抗原は、細菌集団によって生成される非特異的免疫応答を指示することによって作用する。
2.細菌集団のみの投与は、抗腫瘍応答を生じさせることができない(結果、群2、
図1を参照されたい)。
3.細菌集団及び腫瘍溶解物を含有する免疫学的組成物のグルコース(5%)の添加は、細菌集団+腫瘍溶解物によって生成される特異的抗腫瘍応答を増強する(結果、群4、
図1を参照されたい)。抗腫瘍免疫応答が開始される環境におけるグルコースの添加は、このプロセスに介在する細胞(主に、代謝的に非常に活性であり、食作用プロセス及び免疫系の特定の細胞への提示のための抗原プロセシングの間にエネルギーの大きな寄与を必要とする抗原提示細胞)へのエネルギーの寄与のおかげで、その発達を助けると仮定される。
4.細菌ワクチンと腫瘍溶解物との組み合わせ(グルコースの存在下又は非存在下)は、腫瘍に対する記憶応答を起こすことができる(結果、群3及び4、
図2を参照されたい)。
5.細菌集団と腫瘍溶解物との組み合わせは、腫瘍に対する予防的免疫応答を誘発する。したがって、この組み合わせは腫瘍ワクチンとして有効である。
6.細菌集団と腫瘍溶解物との組み合わせは、イヌにおいて特異的な抗腫瘍免疫応答を起こす。
【国際調査報告】