(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】乳児用の超音波プローブ保持装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559164
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2021085545
(87)【国際公開番号】W WO2022128948
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523225494
【氏名又は名称】イコーヌ
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】517124642
【氏名又は名称】エコール シュペリュール ドゥ フィジーク エ ドゥ シミ アンドゥストゥリエール ドゥ ラ ヴィーユ ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥメーヌ,シャルリエ
(72)【発明者】
【氏名】オスマンスキ,ブルーノ-フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】タンテ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】バランジェ,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ボー,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601BB09
4C601BB16
4C601DD03
4C601DD11
4C601EE04
4C601EE11
4C601FF08
4C601GA03
4C601GA15
4C601GB06
4C601GC03
4C601GC23
4C601LL32
(57)【要約】
一態様によれば、本明細書は、経泉門イメージング用に乳児の頭部に取り付けるように構成された超音波プローブ保持装置(101)であって、前記乳児の前記頭部に接触するように構成され、中央開口(115)を有し、超音波プローブを受けるように構成された、ヘッドパッド(110)と、中央開口(125)を有し、前記ヘッドパッドと協働して、前記乳児の前記頭部に接する表面に対して実質的に垂直な誘導軸(Δ)に沿って前記ヘッドパッドを軸方向に誘導することができるように構成された、パッドスクイーザー(120)と、前記乳児の前記頭部に取り付けられるように構成され、前記誘導軸に沿って、前記パッドスクイーザーに下向きの力を加えるように構成された、装置ホルダー(150)と、前記装置ホルダーが前記パッドスクイーザーに前記下向きの力を加えたときに、前記パッドスクイーザーと前記ヘッドパッドとの間に反発力を加えるように構成された、反発手段と、を備える、超音波プローブ保持装置に関する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経泉門イメージング用に乳児の頭部に取り付けるように構成された超音波プローブ保持装置(101)であって、
前記乳児の前記頭部に接触するように構成され、中央開口(115)を有し、超音波プローブを受けるように構成された、ヘッドパッド(110)と、
中央開口(125)を有し、前記ヘッドパッドと協働して、前記乳児の前記頭部に接する表面に対して実質的に垂直な誘導軸(Δ)に沿って前記ヘッドパッドを軸方向に誘導することができるように構成された、パッドスクイーザー(120)と、
前記乳児の前記頭部に取り付けられるように構成され、前記誘導軸に沿って、前記パッドスクイーザーに下向きの力を加えるように構成された、装置ホルダー(150)と、
前記装置ホルダーが前記パッドスクイーザーに前記下向きの力を加えたときに、前記パッドスクイーザーと前記ヘッドパッドとの間に反発力を加えるように構成された、反発手段と、を備える、超音波プローブ保持装置。
【請求項2】
前記反発手段は、前記ヘッドパッドおよび前記パッドスクイーザーにそれぞれ配置された反発磁石(161、162)を含む、請求項1に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項3】
前記乳児の頭部と接触するように構成された前記ヘッドパッドの表面は、前記頭部の形状に合うように湾曲している、請求項1または2に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項4】
前記湾曲した表面は、2つの直交する平面において異なる曲率を有する、請求項3に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項5】
前記装置ホルダーは、前記パッドスクイーザーに取り付けられた可撓性材料のハーネスを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項6】
前記装置ホルダーは、脳波検査用の電極を取り付けるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項7】
超音波プローブ(140)を受けるように構成されたプローブホルダー(130)をさらに備え、前記プローブホルダーは、前記ヘッドパッドに留められる、請求項1~6のいずれか1項に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項8】
前記プローブホルダーは、取り外し可能に前記ヘッドパッドに留められる、請求項7に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項9】
前記プローブホルダーを、少なくとも2か所で前記ヘッドパッドに固定することが可能である、請求項8に記載の超音波プローブ保持装置。
【請求項10】
乳児の経泉門イメージング用の超音波装置(100)であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の超音波プローブ保持装置と、
前記ヘッドパッドに装着されるように構成された超音波プローブ(140)と、を備え、前記超音波プローブは、前記乳児の脳に向けて超音波を放射するとともに、後方散乱された超音波を受信するように構成されている、超音波装置。
【請求項11】
前記超音波プローブは、前記誘導軸に対して実質的に垂直な回転軸を中心に回転可能である、請求項10に記載の超音波装置。
【請求項12】
前記超音波プローブは、前記誘導軸に対して実質的に平行な回転軸を中心に回転可能である、請求項10または11に記載の超音波装置。
【請求項13】
前記超音波プローブ保持装置は、プローブホルダー(130)を備え、
前記超音波プローブ(140)は、取り外し可能に前記プローブホルダーに留められるように構成されている、請求項10~12のいずれか1項に記載の超音波装置。
【請求項14】
乳児の経泉門イメージング用の超音波イメージングシステムであって、
請求項10~13のいずれか1項に記載の超音波装置(510)と、
前記超音波プローブ(140)によって送信された電気信号を受信するとともに、変換された信号を生成するように構成された電子モジュール(520)と、
前記電子モジュールから前記変換された信号を受信するとともに、前記変換された信号からイメージングデータを計算するように構成されたコンピューター(530)と、を備え、
前記電気信号は、前記後方散乱した超音波の検出によって生じる、超音波イメージングシステム。
【請求項15】
請求項14に記載の前記超音波イメージングシステムを用いた乳児の超音波脳イメージングのための方法であって、
前記ヘッドパッド(110)を前記乳児の前記頭部上で位置決めし、
前記ヘッドパッドの前記開口によって形成される空間に超音波ゲルを充填し、
前記超音波プローブが前記乳児の泉門に超音波接触するように前記超音波プローブ(140)を前記ヘッドパッドに留め、
前記乳児の前記頭部に接する表面に対して実質的に垂直である前記誘導軸に沿った前記ヘッドパッドの前記軸方向の誘導を可能にするように、前記パッドスクイーザーを位置決めし、
前記保持装置(150)を使用して、前記誘導軸に沿って前記パッドスクイーザーに下向きの力を加え、
経泉門イメージング用に、前記超音波プローブ(140)を用いて超音波を放射し、後方散乱した超音波を検出することを含む、方法。
【請求項16】
前記脳の異なる傾斜面を撮像するために、前記超音波プローブを、前記誘導軸に対して実質的に垂直な軸を中心に回転させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記脳の冠状断面および矢状断面を撮像するために、前記超音波プローブを、前記誘導軸に対して実質的に平行な軸を中心に、少なくとも1つの第1の位置から第2の位置まで回転させることをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記保持装置に配置された脳波検査用電極を用いた脳波測定をさらに含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乳児用の超音波プローブ保持装置に関し、特に、経泉門イメージング用に乳児の頭部に取り付けるように構成された装置に関する。本開示はさらに、そのような超音波プローブ保持装置を含む超音波装置、ならびに、そのような超音波装置を用いた乳児の脳イメージング用の超音波イメージングシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、乳児の超音波脳機能イメージング(fUS)用の、そのような超音波装置を使用する超音波イメージングシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
初期の脳機能を評価する効果的かつ効率的なイメージングモダリティが存在しないことで、乳児の臨床管理と神経発達障害に対する理解が制限されている。成人の脳イメージングに利用可能な最良の技術のひとつに機能的磁気共鳴画像法(fMRI)があるが、新生児に実施するには極めて複雑であり、脆弱な乳児に対する脳イメージングにベッドのそばで使用することには特に課題が多い。臨床では、主に近赤外分光法(NIRS)や脳波検査(EEG)、すなわち、空間分解能が低い上に活動の計測が脳の表面に限定された2つの技術が用いられている。したがって、効率的で使いやすい臨床新生児脳機能イメージングモダリティと、乳児の脳機能をリアルタイムでモニタリングし得るようにする携帯型の革新的な手法の開発が必要とされている。
【0003】
最近(M. Tanter et al., “ultrafast imaging in biomedical ultrasound”, IEEE, Trans. Ultrason. Ferroelecr. Freq. Control 61, 102 - 119 (2014)参照)、(従来の超音波スキャナで使用される、一般的な50フレーム/秒と比較して)1秒あたり10,000を超える超音波フレームを達成するために、超高速超音波イメージングが導入された。超高速ドップラー(UfD)イメージングモード(例えば、E. Mace et al., “Functional ultrasound imaging of the brain: Theory and basic principles”, IEEE, Trans. Ultrason. Ferroelecr. Freq. Control 60, 492 - 506 (2013)参照)では、ヒトの脳の血流測定に対する感度が最大で50倍まで向上する。大きな血管のイメージングに限定される従来のドップラー技術とは異なり、UfDイメージングでは、小さな脳血管、すなわち直径200μm未満の血管における微細な血行動態の変化をマッピングすることができる。
【0004】
機能的超音波イメージング(fUSI)では、これらの血流マップを活用し、局所的な神経活動と脳の血液量(CBV)の相対的な変化を相関させる神経血管カップリングに従って脳の活動を画像化する。時空間分解能の高い脳深部活動のリアルタイム画像を提供することによって、fUSIは、例えば、脳波検査(EGG)で記録されたてんかん発生時の脳活動のイメージングを可能にする。また、fUSIは、脳の機能的「結合」のマッピング、すなわち脳が休んでいるときの脳活動の測定も可能にする。
【0005】
fUSIでは、脳の血液量(CBV)の変動を検討するので、それが実現可能であるか否かは、撮像時間全体の間、すなわち1分のあるいは10分のオーダーの時間にわたって、同一のイメージング領域を観察できるかどうかに左右される。このことは、外部刺激のない状態で安静にした患者を検査する脳の機能的結合のマッピングの場合に、特に重要である。実際のところ、結果は、脳の異なる領域からのCBV信号間の相関に基づいている。したがって、撮像領域が静止していることが不可欠である。
【0006】
小動物における最初の前臨床実験では、モーター駆動されるシステムに取り付けた、3Dプリンターで作製した型に、プローブを固定し、それを関心面内に配置して、撮像の間中、適所に維持することができるようにすることで、上記を可能にした。ラットやマウスについては、脳定位固定装置で固定した。より最近の実験では、動物の頭蓋骨に外科的に直接 埋め込む金属製、プレキシガラス製、歯科用セメント製の支持体が開発され、磁石やねじでこの固定装置にプローブを取り付けるようになった。ヒトにおける術中概念実証では、患者の頭部を脳定位固定装置に固定し、プローブを多関節機械アームで保持した。これらすべての構成において、頭蓋は、開くか、外科的に薄くされた。
【0007】
これらの方法はいずれも、侵襲的で手術を伴うという点で共通している。これらは明らかに乳児には適用できない。
【0008】
加えて、fMRIなどの機能的イメージング技法の中には、ストラップで乳児を固定するしか選択肢がないものもあるが、それでも乳児をできるだけ拘束しないようにすることが望ましい。したがって、頭部の動きを防ぐことを目指している技法は、できるだけ避けるべきである。これは、発育を完了させるため保育器に入れる必要のある未熟児の場合に特に当てはまる。また、心拍数、呼吸数、血中酸素飽和度をモニタリングする装置や、食事や適切な治療を行うためのシリンジポンプも追加される可能性がある。
【0009】
このように、患者の脆弱性と患者の周囲の環境の両方に強い制約があるため、既存の装置と一緒に保育器内で使用可能で、乳児の動きを妨げず、一般的に10分間の撮像中超音波プローブの安定性を確保することができる、乳児の頭部に取り付けるように構成された超音波プローブ保持装置を設計する必要がある。
【0010】
公開実用新案DE 94 05 271 Uには、音波診断プローブを幼児の頭蓋骨に配置して保持装置で固定するために音波診断プローブを受けるための装置すなわちヘッドマウントが記載されている。音波診断プローブに保持装置を取り付けることが可能であり、当該保持装置上で、測定用プローブがプローブベアリングに調整可能に配置される。
【0011】
最近の発表(C. Demene et al., “Functional ultrasound imaging of brain activity in human newborns”, Sci. Transl. Med. 9, eaah6756 (2017)参照)において、新生児の脳に対してリアルタイムで機能的超音波イメージングを実施するためにカスタマイズされた柔軟で非侵襲的なヘッドマウントが報告された。より具体的には、脳微小血管の超高速ドップラー(UfD)イメージングを、同時連続ビデオ脳波(EEG)記録ともさらに組み合わせることによって、fUSIが実現可能であることが示された。プローブを手動で扱う際に通常発生するモーションアーチファクトを回避するために、新規な超音波プローブ保持装置が設計された。超音波ゲルが充填されて単一平面でのピボット運動を可能にしている半剛性の生体適合性シリコン製のヘッドマウントに、超音波プローブを挿入した。この装置を、柔らかい非粘着性ストリップでEEG電極と一緒に保持した。この単純なシステムは非常に優れた堅牢性を示し、新生児に対するfUSIの最初の結果が得られた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、先行技術のヘッドマウントには、その用途を制限するいくつかの欠点が認められる。特に、このようなヘッドマウントは頭皮上で滑る可能性があり、音響ゲルがヘッドマウントから漏れる場合もある。これにより、画像の質が低下し、同時に使用されるEEG電極が使用できなくなる可能性がある。さらに、装置の取り付けは面倒で、一人ではほぼ実施することができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、容易に取り付けることが可能で、乳児の頭部に加わる圧力を抑えつつ、撮像中、超音波プローブの非常に優れた安定性を保証する、乳児の頭部に取り付けるように構成された超音波プローブ保持装置に関する。
【0014】
以下において、「備える/含む(comprise)」は、「含む(include)」および「含む(contains)」の類義語(同じ意味)であり、包括的かつオープンであり、列挙されていない他の要素を排除するものではない。さらに、本開示において、数値に言及する場合、「約」および「実質的に」という語は、数値の80%~120%、好ましくは90%~110%で構成される範囲の類義語(同じ意味)である。
第1の態様によれば、本開示は、経泉門イメージング用に乳児の頭部に取り付けるように構成された超音波プローブ保持装置であって、
乳児の頭部に接触するように構成され、中央開口を有し、超音波プローブを受けるように構成された、ヘッドパッドと、
中央開口を有し、ヘッドパッドと協働して、乳児の頭部に接する表面に対して実質的に直交する誘導軸に沿ってヘッドパッドを軸方向に誘導することができるように構成された、パッドスクイーザーと、
乳児の頭部に取り付けられるように構成され、誘導軸に沿って、パッドスクイーザーに下向きの力を加えるように構成された、装置ホルダーと、
装置ホルダーがパッドスクイーザーに下向きの力を加えたときに、パッドスクイーザーとヘッドパッドとの間に反発力を加えるように構成された、反発手段と、を備える、超音波プローブ保持装置に関する。
【0015】
本明細書における乳児とは、泉門が閉じる前の、一般に生後12ヶ月未満の幼い子どもであり、よって、経泉門イメージングが可能である。未熟児や正期産新生児も含まれる。
【0016】
本出願人は、本明細書による超音波プローブ保持装置のこのような独自の配置により、装置ホルダーがパッドスクイーザーに下向きの力を加える際にパッドスクイーザーとヘッドパッドとの間に加わる反発力のおかげで、乳児の頭部に加わる圧力を微調整することが可能であることを示した。
【0017】
超音波プローブ保持装置は、乳児の頭部のいずれかの泉門、すなわち、大泉門、小泉門、前側頭泉門または後側頭泉門を介した経泉門イメージング用に、乳児の頭部に取り付けるように構成されていてもよい。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、反発力は、前記誘導軸に沿って規定されるヘッドパッドとパッドスクイーザーとの間の距離に応じて非線形に増加する振幅を有する。これにより、乳児の頭部に加わる圧力をさらに制限することができる。いくつかの実施形態では、反発力により、動作時において、パッドスクイーザーとヘッドパッドとの間で誘導軸方向での接触がないか、ほとんどない構成となる。
【0019】
1つ以上の実施形態によれば、反発力の振幅は、ヘッドパッドによって乳児の頭部に加わる、結果として生じる圧力が、約1kPa~約500kPa(1kPa=1000N/m2)、より有利には約10kPa~約100kPaの範囲になるようなものである。乳児の頭部に加わる圧力は、十分な静止摩擦を発生させるのに十分な大きさでなければならないが、乳児を快適に保てないほど大き過ぎてはならない。
【0020】
1つ以上の実施形態によれば、前記誘導軸に沿ったヘッドパッドの軸方向の誘導には、横方向の機械的なバックラッシュがあり、誘導軸に対して実質的に垂直な平面内でパッドスクイーザーとヘッドパッドとの間の相対的な移動を可能にしている。そのような横方向のバックラッシュにより、装置ホルダーにより加えられる力のおかげでヘッドパッドと頭部との間に静止摩擦(静摩擦)が維持されたまま、乳児が自分の頭部をわずかに動かすことが可能になる。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、そのような横方向の機械的なバックラッシュは、約4mm未満である。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、そのような横方向の機械的なバックラッシュは、約0.5mmより大きい。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、反発手段は、ヘッドパッドおよびパッドスクイーザーにそれぞれ配置された反発磁石を含む。本出願人は、反発磁石が軸方向の誘導の横方向の機械的なバックラッシュと両立し得ることを示した。さらに、磁石は、誘導軸に沿って、ヘッドパッドとパッドスクイーザーとの間の距離に応じて振幅が非線形に増加する反発力を作用させることを可能にする。
【0024】
しかしながら、他の反発手段、例えば反発ばね、発泡体などのクッション材、弾性壁と液体充填物とを有するクッション、ガスを充填したクッションなども可能である。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、乳児の頭部と接触するように構成されたヘッドパッドの表面は、頭部の形状に合うように湾曲している。これにより、乳児の頭部への容易な取り付け、皮膚の広い範囲へのパッド圧力の分散、重要となる静止摩擦が可能になる。例えば、前記湾曲した表面は、2つの直交する平面、一般に冠状平面/矢状平面において異なる曲率を有する。このような曲率は、乳児の月齢とその特殊な解剖学的構造に合わせて選択すればよいため、異なる月齢で装置を使用する場合、事前に定義されたパネルの中から適合するヘッドパッドを選択することのみを意味し、他の構成要素は変更されないままである。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、乳児の頭部と接触するように構成されたヘッドパッドの表面は、断面が正方形または円形である。断面が正方形であれば、冠状/矢状断面の優先的なイメージング用に、ヘッドパッドおよび/またはプローブの誘導軸を中心とした回転を防止することができ、断面が円形であれば、任意の断面のイメージングを可能にすることができる。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、装置ホルダーは、パッドスクイーザーに取り付けられた可撓性材料のハーネスを含む。このような可撓性材料は、布帛であってもプラスチックであってもよい。いくつかの実施形態では、前記ハーネスは、取り外し可能にパッドスクイーザーに取り付けられてもよく、例えば、パッドスクイーザーのヒンジ付きタブに取り付けられてもよい。他の実施形態では、前記ハーネスとパッドスクイーザーは一体に形成されていてもよい。
【0028】
1つ以上の実施形態によれば、装置ホルダーは、脳波検査用の電極を取り付けるように構成されている。これにより、超音波イメージングに加えて脳波イメージングが可能になる。
【0029】
1つ以上の実施形態によれば、超音波プローブ保持装置は、超音波プローブを受けるように構成されたプローブホルダーをさらに備え、前記プローブホルダーは、ヘッドパッドに留められる。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、プローブホルダーは、取り外し可能にヘッドパッドに留められる。例えば、プローブホルダーは、磁石を用いて取り外し可能にヘッドパッドに留められる。ヘッドパッドに留める場合、プローブホルダーが動かないように強く固定しなければならない。
【0031】
1つ以上の実施形態によれば、プローブホルダーとヘッドパッドが、一体に形成されていてもよい。
【0032】
1つ以上の実施形態によれば、プローブホルダーを取り外し可能にヘッドパッドに留める場合、少なくとも2か所でプローブホルダーをヘッドパッドに留めることが可能であり、前記少なくとも2つの位置は、誘導軸に平行な軸を中心とした回転から生じる。例えば、90°回転させて生じる2か所で、プローブホルダーをヘッドパッドに留めることができる。これにより、動作時、脳内の異なる平面、例えば、冠状断面および矢状断面を撮像することが可能になる。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、プローブホルダーは、誘導軸に平行な軸を中心に回転可能にヘッドパッドに装着することが可能である。
第2の態様によれば、本開示は、乳児の経泉門イメージング用の超音波装置であって、
第1の態様による超音波プローブ保持装置と、
前記ヘッドパッドに装着されるように構成された超音波プローブと、を備え、超音波プローブは、乳児の脳に向けて超音波を放射するとともに、後方散乱された超音波を受信するように構成されている、超音波装置に関する。
【0034】
1つ以上の実施形態によれば、超音波プローブは、前記誘導軸に対して実質的に垂直な回転軸を中心に回転可能である。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、超音波プローブは、前記誘導軸に対して実質的に平行な回転軸を中心に回転可能である。
【0036】
1つ以上の実施形態によれば、超音波プローブ保持装置は、プローブホルダーを備え、超音波プローブは、取り外し可能に前記プローブホルダーに留められるように構成されている。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、超音波プローブは、トランスデューサのマトリックスを含み、トランスデューサの前記マトリックスは、前記誘導軸に対して実質的に垂直な軸を中心に回転可能および/または前記誘導軸に対して実質的に平行な軸を中心に回転可能である。
【0038】
第3の態様によれば、本開示は、乳児の経泉門イメージング用の超音波イメージングシステムであって、
第2の態様による超音波装置と、
超音波プローブによって送信された電気信号を受信するとともに、変換された信号を生成するように構成された電子モジュールと、
前記電子モジュールから変換された信号を受信するとともに、前記変換された信号からイメージングデータを計算するように構成されたコンピューターと、を備え、
前記電気信号は、後方散乱した超音波の検出によって生じる、超音波イメージングシステムに関する。
第4の態様によれば、本開示は、第3の態様の超音波イメージングシステムを用いた乳児の超音波脳イメージングのための方法であって、
ヘッドパッドを乳児の頭部上で位置決めし、
ヘッドパッドの開口によって形成される空間に超音波ゲルを充填し、
超音波プローブが乳児の泉門に超音波接触するように超音波プローブをヘッドパッドに留め、
乳児の頭部に接する表面に対して実質的に垂直である前記誘導軸に沿ったヘッドパッドの前記軸方向の誘導を可能にするように、パッドスクイーザーを位置決めし、
前記保持装置を使用して、前記誘導軸に沿ってパッドスクイーザーに下向きの力を加え、
経泉門イメージング用に、超音波プローブを用いて超音波を放射し、後方散乱した超音波を検出することを含む、方法に関する。
【0039】
本明細書による方法では、超音波プローブ保持装置の反発手段のおかげで、乳児の頭部に対する圧力を制御した状態に維持しつつ、保持装置を用いて誘導軸に沿ってパッドスクイーザーに加えられる下向きの力によって、乳児の頭部とヘッドパッドとの間に静止摩擦(すなわち静摩擦)を生じさせ、ヘッドパッドのあらゆる移動を制限する。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、超音波プローブの視野を調整するためにヘッドパッドの位置を調整することをさらに含む。そのような工程は、保持装置を用いてパッドスクイーザーに下向きの力を加える前に、超音波画像を取得することによって行ってもよい。
【0041】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、脳の異なる傾斜面を撮像するために、超音波プローブを、前記誘導軸に対して実質的に垂直な軸を中心に回転させることをさらに含む。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、脳の傾斜した冠状断面および矢状断面を撮像するために、超音波プローブを、前記誘導軸に対して実質的に平行な軸を中心に、少なくとも1つの第1の位置から第2の位置まで回転させることをさらに含む。
【0043】
1つ以上の実施形態によれば、本方法は、前記保持装置に配置された脳波検査用電極を用いた脳波測定をさらに含む。
【0044】
本発明の他の利点および特徴は、以下の図面によって示される説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1A】
図1Aは、本明細書の一実施形態による超音波装置の右側4分の3の分解図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本明細書の一実施形態による超音波装置の左側4分の3の分解図を示す。
【
図2A】
図2Aは、本明細書の一実施形態による超音波装置におけるヘッドパッドの一実施形態の分解図を示す。
【
図2B】
図2Bは、本明細書の一実施形態による超音波装置におけるヘッドパッドの一実施形態の分解図を示す。
【
図2C】
図2Cは、本明細書の一実施形態による超音波装置におけるヘッドパッドの一実施形態の上面図を示す。
【
図2D】
図2Dは、本明細書の一実施形態による超音波装置におけるヘッドパッドの一実施形態の側面図を示す。
【
図3】
図3は、本明細書の一実施形態による超音波装置におけるプローブホルダーの一実施形態の分解図を示す。
【
図4A】
図4Aは、本明細書の一実施形態において、乳児の頭部に配置された
図1Aおよび
図1Bに示すような超音波装置の図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本明細書の一実施形態において、乳児の頭部に配置された
図1Aおよび
図1Bに示すような超音波装置の図を示す。
【
図5】
図5は、本明細書による超音波装置を実装した、乳児の経泉門イメージング用の超音波イメージングシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、本明細書の一実施形態による超音波装置100の右側4分の3の分解図および左側4分の3の分解図を示す。
【0047】
図1A、
図1Bの例の超音波装置100は、乳児の脳に向けて超音波を放射するとともに、後方散乱された超音波を受信するように構成された超音波プローブ140と、ヘッドパッド110およびパッドスクイーザー120を含む超音波プローブ保持装置101と、を備える。ヘッドパッド110は、乳児の頭部に接触するように構成されており、中央開口115を含む。パッドスクイーザー120は、中央開口125を含み、ヘッドパッド110と協働して誘導軸(Δ)に沿ってヘッドパッドを軸方向に誘導することができるように構成されている。動作時、誘導軸Δは、乳児の頭部に接する表面に対して実質的に垂直である。詳細については後述するように、超音波プローブ保持装置は、乳児の頭部に取り付けられるように構成された装置ホルダーであって、誘導軸Δに沿って、パッドスクイーザーに下向きの力をかけるように構成された装置ホルダー(
図1A、
図1Bには図示せず)をさらに備える。
図1A、
図1Bの例では、超音波プローブ保持装置101は、超音波プローブ140を受けるように構成されたプローブホルダー130をさらに備え、前記プローブホルダーは、ヘッドパッド110に固定されるように構成されている。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、前記誘導軸に沿ったヘッドパッドの軸方向への誘導には、横方向の機械的なバックラッシュがあり、誘導軸に対して実質的に垂直な平面内でパッドスクイーザーとヘッドパッドとの間の相対移動を可能にしている。例えば、横方向の機械的なバックラッシュは約4mm未満であり、約0.5mmより大きい。そのような横方向のバックラッシュによって、装置ホルダーにより加えられる力のおかげで、ヘッドパッドと頭部との間に静止摩擦力(静止摩擦)が保たれつつ、乳児が自分の頭部をわずかに動かすことが可能になる。
【0049】
図2A、
図2Bは、それぞれ、
図1A、
図1Bに示す超音波プローブ保持装置101のヘッドパッド110およびパッドスクイーザー120の詳細を示す分解図であり、
図2Cおよび
図2Dは、それぞれ、その上面図および側面図である。
【0050】
【0051】
図4Aおよび
図4Bは、装置ホルダー150を用いて乳児の頭部10上に配置された、
図1Aおよび
図1Bに示すような超音波装置100の2つの異なる図を示す。
図5は、本明細書による超音波装置を用いた経泉門イメージング用の超音波イメージングシステム500を示す。
【0052】
図5の超音波イメージングシステムは、乳児10の脳に向けて超音波を放射するとともに、後方散乱した超音波を受信するように構成された超音波プローブを有する、本明細書による超音波装置510を備える。また、超音波イメージングシステムは、超音波プローブ140によって送信された電気信号を受信するとともに、変換された信号を生成するように構成された電子モジュール520と、変換された信号を前記電子モジュールから受信するとともに、前記変換された信号からイメージングデータを計算するように構成されたコンピューター530と、をさらに備え、前記電気信号は、後方散乱した超音波の検出によって生じる。
【0053】
以下でさらに詳細に説明するように、
図1A、
図1B、
図2A~
図2Dおよび
図3に示す実施形態では、超音波プローブ140はプローブホルダー130から取り外し可能であり、プローブホルダー130は取り外し可能にヘッドパッド110に固定されている。しかしながら、図示しない実施形態によっては、プローブホルダー130とヘッドパッド110とが1つの部品をなしていてもよい。換言すれば、超音波プローブ140が、プローブホルダーとして構成されたヘッドパッド110に直接取り付けられていてもよい。また、超音波プローブ140は、詳細については後述するように、回転移動が可能なままプローブホルダーに固定されていてもよい。
【0054】
図2A、
図2Bに示すように、超音波プローブ保持装置101は、装置ホルダー150(図示せず)がパッドスクイーザー120に下向きの力を作用させたときに、パッドスクイーザー120とヘッドパッド110との間に反発力を作用させるように構成された反発手段をさらに備える。本明細書において、下向きの力とは、誘導軸に沿って、乳児の頭部に向かって加えられる力として理解される。
【0055】
例えば、反発手段は、ヘッドパッド110とパッドスクイーザー120にそれぞれ配置された反発磁石161、162を含む。より具体的には、
図2A、
図2Bの例では、ヘッドパッドには複数の反発磁石が設けられており、この例では4個である。各々の磁石161は、この例では、パッドスクイーザー120の溝122に嵌められた対応する反発磁石162と協働するように、突起113内に配置されている。例えば、パッドスクイーザー120の磁石162の極は、
図2A、
図2Dに二重矢印で示すように、ヘッドパッド110の磁石161に反発するような向きに配置されている。よって、磁石161および162は、圧縮されたばねのように機能し、パッドスクイーザー120をヘッドパッド110から離す方向に移動させる傾向にある。このため、パッドスクイーザー120がヘッドパッド110に押しつけられれば押しつけられるほど、ヘッドパッド110が乳児の頭蓋骨に押し付けられる。
【0056】
反発手段として磁石を使用することにより、前記誘導軸に沿って規定されるヘッドパッドとパッドスクイーザーとの間の距離に応じて非線形に増加する振幅を有する反発力を作用させることができる。このような距離は、例えば、各々の磁石161と162との間に規定される。これにより、乳児の頭部に加わる圧力をさらに制限することができる。実用的に言うと、磁石は、誘導軸に沿った、ヘッドパッドとパッドスクイーザーとの直接的な接触を防止するように構成されていてもよい。この配慮により、乳児の頭部にかかる圧力を完全に制御することができる。これにより、パッドスクイーザーとヘッドパッドとの間のバックラッシュと相まって、ヘッドパッド110により乳児の頭部に加えられる圧力を維持しつつ、誘導軸に垂直な平面内でのパッドスクイーザー120の実質的な動きも可能にする。この配慮により、例えば乳児の頭部の動きによるパッドスクイーザー120および/または装置ホルダー150の動きとは無関係に、ヘッドパッド110およびプローブホルダー130を乳児の頭部の一定の位置に維持することができる。
【0057】
もちろん、磁石に代えて、ばねやクッション材など、他の公知の反発手段を使用することもできる。
【0058】
先に説明したように、
図1A、
図1Bの例では、ヘッドパッド110とプローブホルダー130は2つの別個の部品をなしている。この構成により、設置が容易になり、特に動作時における超音波ゲルの供給が容易になる。ヘッドパッド110は、乳児の頭部に取り付けられるように構成されるとともに、動作時に、開口115と頭部の皮膚(図示せず)とによって形成される空間内に超音波ゲルを受容するように構成されている。
図2A、
図2Bに示すように、ヘッドパッド110には、3Dプリントされたプラスチック支持体112が含まれていてもよい。この支持体112にはシリコーンパッド111が取り付けられている。ヘッドパッド110については、磁石(図示せず)でプローブホルダー130に取り付けてもよい。
【0059】
図2Aに示すように、ヘッドパッド110の形状は、ほとんどの乳児に適していると考えられる。乳児の頭蓋骨は、球形ではなく、むしろ卵形であるため、乳児の頭部と接触するように構成されたヘッドパッドの表面は湾曲していてもよく、前記表面の曲率が矢状方向と冠状方向で異なっていてもよい。そのため、2つの曲率半径のデータによって、すべての解剖学的構造に適応するのに必要なだけの数の形状を作成することが可能になる。所与の曲率で、ヘッドパッドの所望の形状を中空に取り込んだカウンターモールドを3Dプリントすることができる。
【0060】
図1A、
図1Bおよび
図2A~
図2Dに示す実施形態では、保持装置の異なる部分は、断面が正方形である。明らかに、本明細書は正方形の形状に限定されず、ヘッドパッド110および/またはパッドスクイーザー120の断面が、例えば円形などの異なる形状であってもよい。本明細書に記載のすべての実施形態を、ヘッドパッドおよび/またはパッドスクイーザーの異なる形状に同じように適用することができる。
【0061】
以下に詳述するように、ヘッドパッド110を乳児の頭部に固定するために、ヘッドパッドの上にパッドスクイーザー120が配置される。図示のように、パッドスクイーザー120には、
図4A、
図4Bに示すように、例えば額と後頭部にそれぞれ載置されるように構成された関節タブ126、127を有するフレーム121が含まれていてもよい。
【0062】
図4A、
図4Bに示すように、パッドスクイーザー120は、例えばハーネスなどの装置ホルダー150を介して頭部に取り付けられる。ハーネスには、布帛やプラスチックなどの可撓性の材料が含まれていてもよい。
図4A、
図4Bに示す例では、ハーネス150は、パッドスクイーザー120のヒンジ付きタブ126、127を通り、例えば、ベルクロ(登録商標)ストリップなどのファスナーストリップで、ハーネスに取り付けられるストラップを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、ハーネスとパッドスクイーザーが一体に形成されていてもよい。先に説明したように、上述したような反発磁石を使用することにより、ハーネスストラップの張力にかかわらず、ヘッドパッド110を適所に保持するのに必要な力をヘッドパッド110に加えることができる。
【0063】
図3は、超音波プローブ140を保持するように構成されたプローブホルダー130の非限定的な例をさらに詳細に示している。この実施形態では、プローブホルダー130はヘッドパッド110から独立している。
【0064】
図3に示す例では、超音波プローブ140は、例えばリニアマトリックスなどのマトリックス141に配置された超音波トランスデューサと、
図3に一部を示す電気プローブケーブル145と、ストラップ類142と、を含み、前記ストラップ類は、誘導軸に垂直な軸Δ1に沿って関節接合されている。ストラップ類142は、この例では、プローブホルダーの回転ブロッカーモジュール132のほぞ135を受けるように構成されたほぞ穴143を含む。プローブホルダー130は、本体131をさらに備える。回転ブロッカーモジュール132については、
図3に点線で示した軸に沿って2本のレール内を摺動させることによって本体131に固定し、磁石でプローブホルダーの本体に引きつけることができる。実線の矢印は磁石の位置を示す。プローブホルダー130には、さらに、ほぞ135に挿入されたねじで取り付けられ、円弧状レール内を摺動するロッククランク133が含まれていてもよい。このクランク133によって、ねじを締めることができるようになり、それにより、ほぞをモジュールの本体上にしっかりと配置して、プローブの回転を防止する。
【0065】
図3に示す実施形態では、回転ブロッカーモジュール132は容易に交換されるように設計された。レールと磁石のシステムにより、モジュール交換を病室で直接行うことができる。
【0066】
プローブ電動化システムを設計し、プローブの手動回転を、例えばサーボモーターを使用した、電子的に制御された回転に置き換えることも可能である。このような電子的に制御された回転により、超音波断層撮影を容易にすることができる。実際、Bモード画像とドップラー画像を平面ごとに取得することにより、これらの取得画像から3Dボリュームを再構成することが可能になる。
【0067】
あるいは、平面ごとのBモード画像やドップラー画像を取得するために、回転可能なマトリックス状のトランスデューサを含む超音波プローブを使用してもよい。
【0068】
本明細書による超音波プローブ保持装置を用いて超音波プローブを設置する手順は、大幅に簡略化される。
【0069】
まず、例えば
図1A、
図1Bに示すようなヘッドパッド110を乳児の泉門に配置してもよい。
図4A、
図4Bには、大泉門を介した経泉門イメージングを示したが、経泉門イメージングを実施するのに乳児のどの泉門を介してもよい。次に、パッドスクイーザー120ならびにハーネス150(
図4A、
図4B)を位置決めし、ヘッドパッド110を乳児の頭部10に配置する。頭部の皮膚がヘッドパッド110とともに密閉空間を形成し、この空間に超音波ゲルを充填することができる。その後、例えばヘッドパッド110の内側に装着された磁石を使用して、例えば
図3に示したようなプローブホルダー130をヘッドパッドに固定してもよい。このように、ヘッドパッド110を調整して、できるだけ遊びがない状態でプローブホルダー130を収容してもよい。次に、軸Δ1(
図3)を中心にして超音波プローブ140を傾け、所望の平面を撮像することができる。プローブを泉門の中央に適切に配置するために、必要であれば、パッドスクイーザー120とホルダー150のストラップとを調整することで、すべて手動でわずかにずらすことも可能である。
【0070】
図1A、
図1Bに示す例では、プローブホルダー130をヘッドパッド110から取り外すことが可能であるため、ヘッドパッド110の位置を変えることなく、必要に応じてゲルを追加することができる。また、ヘッドパッドの両湾曲により、ゲルを溜めておく場所の良好な密閉が可能となり、例えば、脳波図を同時に使用して、ゲルを介して電極間に電気的ブリッジを発生させる危険性なしに、電極をヘッドパッドに可能な限り近づけることができる。さらに、
図4A、
図4Bに示すようなハーネスを使用したパッドスクイーザーの取り付けは非常に短時間で実施され、そのようなハーネスは、乳児の形態に最適に適応するように異なる大きさで利用可能である。
図4A、
図4Bに示すような超音波装置100の総重量については、約50g未満とすることができる。
【0071】
超音波プローブ保持装置はモジュール状に設計されており、ヘッドパッド110に触れることなくパッドスクイーザー120の固定性を向上させることが可能である。さらに、超音波装置のコンパクト性が向上する。
【0072】
本明細書による超音波プローブ保持装置により、超音波画像の画質を大幅に向上させることが可能となり、最長20分の長時間の記録が実現された。
【0073】
本明細書に記載されているような超音波装置を備えた、
図5に示すような超音波イメージングシステムを使用して、乳児の睡眠相に関する最初の研究を実施した。基本ブロックの繰り返しによって形成されるシーケンスを実行した。各ブロックは、パルス繰り返し周波数1800Hzで放射され、600Hzのフレームレートになる、[-3°、0°、3°]で傾いた3つの平面波で構成される超高速ドップラー撮像からなる。これらの平面波は、570msの間に放射され、深さ30mmで342枚の画像の撮像を可能にする。その後、データの転送、ビームフォーミング、ハードディスクへの保存の時間を確保するために、430ミリ秒の中断がなされる。よって、この基本ブロックの総所要時間は、1秒である。心拍数が毎分120回の乳児の心周期を少なくとも1回登録できるように、有効送信時間570msを選択した。この基本ブロックを20分間繰り返し、最終的に1Hzのレートで1200枚のPower Doppler画像のフィルムが得られる。
【0074】
超音波プローブ保持装置を取り付けた後、脳波検査用(EEG)電極を乳児の頭皮の皮膚のあいている場所に取り付けてもよい。これらの電極も装置ホルダーの一部であってもよく、乳児の頭部に超音波プローブ保持装置を固定するのと同時に設置してもよい。その後、脳微小血管系の超高速ドップラー(UfD)イメージングと同時連続ビデオ脳波(EEG)記録とを組み合わせた、ジョイントEEG-fUSI記録用に、EEGレコーダーにEEG電極を接続してもよい。
【0075】
以上、本発明を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、本開示の利益を有する当業者であれば、本明細書に開示した本発明の意図から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】