(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(54)【発明の名称】尿検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/493 20060101AFI20231219BHJP
G01N 21/3577 20140101ALI20231219BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20231219BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N33/493 B
G01N21/3577
G01N21/33
G01N27/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559168
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021085892
(87)【国際公開番号】W WO2022129171
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523225922
【氏名又は名称】ユーセンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オウエリエミ,アミール
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
2G060
【Fターム(参考)】
2G045AA15
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB11
2G045CB12
2G045DB03
2G045FA13
2G045FA25
2G045FA26
2G045FB12
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB13
2G059CC03
2G059CC13
2G059CC17
2G059EE01
2G059EE07
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ01
2G060AA07
2G060AC05
2G060AD06
2G060AF02
2G060AF03
2G060AF08
2G060HE02
2G060KA06
(57)【要約】
本発明は、ハンドル(11)と、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッド(12)とを備える、手持ち式尿検査装置(1)であって、測定ヘッド(12)が、導電率プローブと、光を放出するように構成された照明モジュール(14)と、光を受けるように構成されたマルチスペクトル光学センサ(13)とを備える、手持ち式尿検査装置(1)に関する。本発明はまた、尿を分析する方法及び尿検査システムに関する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(11)と、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッド(12)とを備える、手持ち式尿検査装置(1)であって、前記測定ヘッド(12)が、
a.導電率プローブと、
b.前記尿サンプルの中で光を放出するように構成された照明モジュール(14)と、
c.前記尿サンプルによって放出された光及び/又は前記尿サンプルを透過した光を受けるように構成されたマルチスペクトル光学センサ(13)と、
を備える、手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項2】
充電式バッテリをさらに備える、請求項1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項3】
データ転送を可能にする接続システムをさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項4】
前記導電率プローブは、2つの異なる周波数で導電率を測定するように構成され、前記周波数は約1Hz~1MHzの範囲に含まれる、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項5】
前記照明モジュール(14)は、NIR-Vis光源を備え、390nm~1100nmの範囲の光を放出する、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項6】
前記照明モジュール(14)は、UV光源を備え、270nm~400nmの範囲のUV光を放出する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項7】
前記照明モジュール(14)は、IR光源を備え、800nm~2600nmの範囲のIR光を放出する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項8】
前記マルチスペクトル光学センサ(13)は、400nm~1100nmの範囲の光を収集する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項9】
前記マルチスペクトル光学センサ(13)は、800nm~2600nmの範囲の光を収集する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項10】
温度センサ(16)をさらに備える、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項11】
pHセンサをさらに備える、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項12】
尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)を前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)と、充電モジュール及び/又は洗浄モジュール(22)を備えるドッキングステーション(2)とを含む、尿検査システム。
【請求項14】
前記洗浄モジュール(22)は消毒液を備える、請求項13に記載の尿検査システム。
【請求項15】
尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.請求項13~請求項14のいずれか一項に記載の尿検査システムの手持ち式尿検査装置(1)の測定ヘッド(12)を前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
iv.請求項13~請求項14のいずれか一項に記載の尿検査システムのドッキングステーション(2)に手持ち式尿検査装置(1)を配置し、充電及び/又は洗浄を可能にするステップと、
v.測定ヘッド(12)を消毒液で洗浄するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿検査の分野に属する。特に、本発明は、手持ち式尿検査装置及び尿検査のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿検としても知られている臨床尿検査は、特定のバイオマーカについての尿の検査である。尿検査は、健康診断及び/又は病気の診断のために広く用いられている。
【0003】
現在、尿検査は、主に臨床検査所で様々なパラメータ又はバイオマーカ濃度を測定する様々なマシンを使用して行われている。この方法には、物流上の課題、高度な訓練を受けた人材と高価な機器を必要とするなどのいくつかの欠点がある。検査所で行われる尿検査の主な欠点は、結果が出るまでに時間がかかることである。実際、尿サンプルは、最初に、ほとんどの場合は化学物質の使用によって、異なるパラメータ(光学的又は電気的)を測定する異なるマシンで並行して検査するべく、準備し、いくつかのチューブに分ける必要がある。化学物質の使用の主な欠点はサンプルの劣化である。次いで、各マシンの結果をレポートに集約し、実施者に返す必要がある。結果は、サンプリングから長時間(4時間~48時間)後に生成され、診断の遅れをもたらし、患者に望ましくない無用なストレスが生じる。
【0004】
尿検査はまた、検査結果を色の変化として読み取ることができる尿試験紙を使用して行われる。これは、10分以内に結果が出る迅速な検査を可能にする。しかしながら、この方法は、大量の使い捨て消耗品を必要とし、さらに重要なことに、不正確で、偽陽性につながることが証明されている。尿ディップスティック検査は、ほぼ瞬時に診断できると考えられるが、これらの試験紙は誤診を引き起こす可能性があり、追加検査や、心配及び不必要なフォローアップの必要性が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、尿サンプルの複数のパラメータを同時に測定することによって即時に十分な且つ信頼性のある診断を可能にするポイント・オブ・ケアの尿検査のための装置が必要とされている。可視分光分析、近赤外分光分析、自家蛍光分光分析、及び導電率測定などのいくつかの測定技術を組み合わせて1つだけの再使用可能な尿検査装置を使用することで上記の欠点が克服される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハンドルと、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッドとを備える手持ち式尿検査装置であって、測定ヘッドが、
a.導電率プローブと、
b.前記尿サンプルの中で光を放出するように構成された照明モジュールと
c.前記尿サンプルによって放出された光及び/又は前記尿サンプルを透過した光を受けるように構成されたマルチスペクトル光学センサと、
を備える、装置に関する。
【0007】
一実施形態では、手持ち式尿検査装置は、充電式バッテリをさらに備える。一実施形態では、手持ち式尿検査装置は、データ転送を可能にする接続システムをさらに備える。一実施形態では、導電率プローブは、2つの異なる周波数のDC又はAC電流で導電率を測定するように構成され、前記周波数は約1Hz~1MHzの範囲に含まれる。一実施形態では、照明モジュールは、NIR-Vis光源を備え、390nm~1100nmの範囲の光を放出する。一実施形態では、照明モジュールは、UV光源を備え、270nm~400nmの範囲のUV光を放出する。一実施形態では、照明モジュールは、IR光源を備え、800nm~2600nmの範囲のIR光を放出する。一実施形態では、マルチスペクトル光学センサが、400nm~1100nmの範囲の光を収集する。一実施形態では、マルチスペクトル光学センサは、800nm~2600nmの範囲の光を収集する。一実施形態では、手持ち式尿検査装置は、温度センサをさらに備える。一実施形態では、手持ち式尿検査装置は、pHセンサをさらに備える。
【0008】
本発明はまた、尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.本発明に係る手持ち式尿検査装置を前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
を含む方法に関する。
【0009】
本発明はまた、本発明に係る手持ち式尿検査装置と、充電モジュール及び/又は洗浄モジュールを備えるドッキングステーションとを含む、尿検査システムに関する。一実施形態では、洗浄モジュールは消毒液を備える。
【0010】
本発明はまた、尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.本発明に係る尿検査システムの手持ち式尿検査装置の測定ヘッドを前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
iv.本発明に係る尿検査システムのドッキングステーションに手持ち式尿検査装置を配置し、充電及び/又は洗浄を可能にするステップと、
v.測定ヘッドを消毒液で洗浄するステップと、
を含む方法に関する。
【0011】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
【0012】
「自家蛍光分光分析」は、特定の波長の光、特に紫外光で組織又は溶液を励起した後に前記組織又は溶液によって放出された光の測定を指す。
【0013】
「導電率測定」は、溶液の電解導電率の測定を指す。
【0014】
「IR」は、780nm~2600nmの赤外範囲の波長を指す。
【0015】
「NIR」は、780nm~1100nmの近赤外範囲の波長を指す。
【0016】
「NIR-Vis」は、390nm~1100nmの近赤外及び可視範囲の波長を指す。
【0017】
「近赤外分光分析」は、近赤外範囲の光の吸光度、すなわち、近赤外範囲の入射光に対する透過光の比の定量測定を指す。この技術により、低エネルギー放射を吸収する分子の検出が可能になる。
【0018】
「UV」は、270nm~400nmの紫外光を指す。
【0019】
「可視分光分析」は、可視範囲のサンプルの光吸収のキャラクタライゼーションを指す。定量的情報の抽出に関連して、普通は、サンプルを透過又は反射した光の強度(I)と、
- 光源によって放出された光の強度、
- サンプルに入射する光の強度、又は
- 参照サンプルを透過又は反射した光の強度、
を表し得る参照光の強度(I0)が測定される。次いで、いくつかの計算が行われ、比I/I0(普通は透過度と呼ばれる)又はこの比の常用対数(普通は吸光度と呼ばれる)が計算される。
【0020】
以下の詳細な説明は、図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。例示する目的で、装置が好ましい実施形態で示されている。しかしながら、本発明は、図示した正確な配置、構造、特徴、実施形態、及び態様に限定されないことを理解されたい。図面は一定の縮尺で描かれておらず、特許請求の範囲を図示の実施形態に限定することを意図していない。したがって、付属の特許請求の範囲で言及される特徴の後に参照符号が続く場合、そのような符号は単に請求項の理解を高める目的で含まれており、特許請求の範囲を決して制限するものではないことを理解されたい。
【0021】
本発明は、手持ち式尿検査装置であって、ハンドルと、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッドとを備え、測定ヘッドが、
a.導電率プローブと、
b.前記尿サンプルの中で光を放出するように構成された照明モジュールと
c.前記尿サンプルによって放出された光及び/又は前記尿サンプルを透過した光を受けるように構成されたマルチスペクトル光学センサと、
を備える、装置に関する。
【0022】
この手持ち式尿検査装置は、4つの技術、すなわち、可視分光分析、近赤外分光分析(又は赤外分光分析)、自家蛍光分光分析、及び導電率測定に基づいて尿サンプルの非侵襲的スキャンを提供する。これにより、尿サンプルの十分な物理化学的キャラクタライゼーションが可能になる。
【0023】
マルチスペクトル光学センサは、可視光及び近赤外光などの前記尿サンプルを透過した光を受けるように構成され、したがって、手持ち式尿検査装置が尿サンプルに可視分光分析、近赤外分光分析を行うことを可能にする。可視分光分析に関して、例えば、ミネラル(例えば、Na、K、Ca、Mg、Cl、P)、クレアチニン、尿素、尿浸透圧、尿比重、尿酸、尿pH、アンモニウム、クエン酸塩、シュウ酸塩、アルブミン、総蛋白、ビリルビン、ウロビリノーゲン、赤血球、白血球、ケトン、グルコース、又は細菌又は結晶の存在などのバイオマーカを検出することが可能である。近赤外分光分析に関して、例えば、ミネラル(例えば、Na、K、Ca、Mg、Cl、P)、クレアチニン、尿素、尿浸透圧、尿比重、尿酸、尿pH、アンモニウム、クエン酸塩、シュウ酸塩、アルブミン、総蛋白、ビリルビン、ウロビリノーゲン、赤血球、白血球、ケトン、グルコース、又は細菌又は結晶の存在などのバイオマーカを検出することが可能である。尿浸透圧及び尿比重は、水分補給のバイオマーカであり、腎臓がどの程度機能しているかを判断するのに非常に有用である。クレアチニンも、腎臓の適切な機能状態を示すバイオマーカである。
【0024】
マルチスペクトル光学センサはまた、尿の自家蛍光を予想するべく前記尿サンプルによって放出された光を受けるように構成され、したがって、手持ち式尿検査装置が尿サンプルに自家蛍光分光分析を行うことを可能にする。蛍光分光分析は、例えば、赤血球、重金属、NADH(水添ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)、エラスチン、コラーゲン、トリプトファン、ポルフィリン、リボフラビン、又は他の内因性蛍光色素などのバイオマーカの検出を可能にする。
【0025】
最後に、導電率プローブは、手持ち式尿検査装置が尿サンプルに導電率測定を行うことを可能にする。尿の導電率は、主に、サンプル中に存在する成分(水和イオン)の移動度から生じ、したがって、サンプルが印加電荷を伝導する能力の尺度を与える。したがって、尿サンプルの導電率を測定することで、前記サンプル中のイオン(例えば、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、H+/CO3
-、又はCl-)の濃度を求めることが可能である。
【0026】
導電率測定によるバイオマーカ検出と、光学分光分析によるバイオマーカ検出とを組み合わせることは、尿サンプルの十分な高速スキャンが可能になり、単一の尿サンプル中のいくつかのバイオマーカの有無及び/又は濃度を同時に測定できるので特に有利である。これはまた、光学測定と電気測定を別々に処理するよりも、より良好な結果を提供する、すなわち、より正確で偽陰性が少ない。さらに、これらの測定は、サンプルを劣化させず、将来の使用に影響を与えることなく数回繰り返すことができる。最後に、サンプル温度の同時測定により、光学測定及び導電率測定の精度を向上させることができる。
【0027】
例えば、近赤外分光分析と導電率測定は、ミネラル濃度(例えば、Na、K、Ca、Mg、Cl、P)を正確に測定するのに相補的である。実際、水性溶液中の無機イオンは、NIR光を直接吸収しないが、イオンと水の相互作用を通じて特定の波長のスペクトルパターンに影響を及ぼす。同様に、尿中飽和度及び結晶化(例えば、シュウ酸カルシウム)は光学的に検出することができる。したがって、光学スペクトルは定性的情報と定量的情報との両方をもたらす。各ミネラル濃度のこの最初の推定は、溶液中のカチオン及びアニオンの総濃度を反映する導電率測定によって完了し、各イオンは特定のモル伝導率を有する。異なる周波数での導電率測定は、各イオン濃度を正確に求めることを可能にする。さらに、イオンの移動度は温度とともに増加するため、光学スペクトルと導電率測定に加えて温度を同時に測定することで、ミネラル濃度をさらに正確に測定することができる。
【0028】
さらに、可視スペクトル、NIRスペクトル、及びIRスペクトルは、同様の尿バイオマーカと深く関連する特定の波長を含む。したがって、これらのスペクトル情報を組み合わせることで、バイオマーカ濃度の予測が大幅に向上する。例えば、700nm未満、800nmから850nmの間、1000nm付近、1150nm付近、及び1200nm以上の浸透圧に関する情報が見出され、これは、すべての範囲に情報が含まれていることを意味し、場合によっては冗長であり、場合によってはそうではなく、浸透圧測定の向上を可能にする。最後に、蛍光分光法は、可視スペクトルと組み合わせて特異的なバイオマーカを同定するために使用される。例えば、血尿により、尿の色が淡黄色から可視スペクトルで検出可能なピンク色又は赤色に変化することがある。その場合、450~520nmで生じる発光ピークを測定することによって蛍光で血液の存在を確認することができる。
【0029】
バイオマーカの検出を実行するために、手持ち式尿検査装置が尿サンプルに浸漬され、測定を実行するべく作動され、次いで、使用後に洗浄される。代替的に、測定キュベットに入っている尿サンプルを測定ヘッドに、すなわち測定ヘッドの2つの壁の間に配置することができる。
【0030】
尿サンプルは、ヒト又は動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、又は任意の他の動物によって提供され得る。
【0031】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、円筒形の形状を有する。この実施形態の特定の構成では、前記装置は、ペンの形状を有する。これにより、装置が手持ち式になり、使いやすくなり、ある場所から別の場所へ容易に持ち運ぶことができる。
【0032】
一実施形態によれば、測定ヘッドは、センサ、照明モジュール、及び導電率プローブを搭載する2つの壁を備える。この実施形態の特定の構成では、壁は互いに向き合っており(すなわち対向しており)、手持ち式尿検査装置の縦軸に沿って延びる。好ましくは、測定ヘッドの2つの壁は、光路長を形成する空いた空間によって分離される。これは、センサ、照明モジュール、及び導電率プローブを浸すべく壁間の前記空いた空間を尿で満たすことを可能にする。光路長は、光が通過するサンプルのボリュームを決定するため、特に重要である。前記ボリュームがより大きければ、より多くの情報が測定に利用可能になる。好ましくは、光路長は1mmから30mmの間の範囲である。
【0033】
好ましくは、センサ、照明モジュール、及び導電率プローブは、壁の内面、すなわち、他の壁の方に面する表面に配置される。
【0034】
この実施形態の特定の構成では、壁は凸形の形状を有する。好ましくは、壁は、ハンドルから延び、空いた空間によって分離される、シリンダの2つの分割片である。この構成では、センサ、照明モジュール、及び導電率プローブは、壁の凹面に配置される。
【0035】
この実施形態の特定の構成では、一方の壁は他方の壁よりも厚く、特に前記厚い方の壁は照明モジュールを搭載し、薄い方の壁はマルチスペクトル光学センサを搭載する。
【0036】
この実施形態の特定の構成では、一方の壁は他方の壁よりも厚く、特に前記厚い方の壁はマルチスペクトル光学センサを搭載し、薄い方の壁は照明モジュールを搭載する。
【0037】
この実施形態の特定の構成では、導電率プローブは照明モジュール及びマルチスペクトル光学センサよりも測定ヘッドの近位端の近くに配置される、又は導電率プローブは測定ヘッドの近位端に配置される。本明細書では、測定ヘッドの近位端は、ハンドルと接続された端を指し、一方、測定ヘッドの遠位端は、サンプルに浸漬されるように構成された端を指す。
【0038】
この実施形態の特定の構成では、導電率プローブの電極は同じ壁に配置される。代替的な構成では、導電率プローブの電極は、対向して両方の壁に配置される。
【0039】
この実施形態の特定の構成では、導電率プローブの2つの電極が同じ壁に配置される。代替的な構成では、導電率プローブの1つの電極が各壁に配置される、すなわち、2つの電極は対向する。
【0040】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、測定ヘッドとは反対側のハンドルの端に位置する作動ボタン(オン/オフボタンとも呼ばれる)をさらに備える。
【0041】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、その長さの少なくとも10%が尿サンプルに浸漬されるように構成される。この実施形態の特定の構成では、尿サンプルに浸漬される手持ち式尿検査装置の長さは、その全長の10%~50%の範囲である。
【0042】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、5cm~30cm、好ましくは10cm~25cm、より好ましくは10cm~20cmの範囲の長さを有する。
【0043】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、1cm~10cm、好ましくは1cm~5cm、より好ましくは2cm~4cmの範囲の幅を有する。
【0044】
一実施形態によれば、測定ヘッドは、0.5cm~10cm、好ましくは0.5cm~5cm、より好ましくは0.5cm~3cmの範囲の長さを有する。したがって、手持ち式尿検査装置は、0.5cm~10cm、好ましくは0.5cm~5cm、より好ましくは0.5cm~3cmの範囲の長さが尿サンプルに浸漬されるように構成される。
【0045】
一実施形態によれば、測定ヘッドは、手持ち式尿検査装置の長さの3%~80%、好ましくは手持ち式尿検査装置の長さの10%~40%、より好ましくは手持ち式尿検査装置の長さの20%~30%の範囲の長さを有する。
【0046】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は使い捨てではない。前記装置は、使用後に洗浄されるように構成される。
【0047】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、疎水性材料で作製されるか又はコーティングされる。この実施形態は、手持ち式尿検査装置が2つのサンプル間に溶液洗浄を必要としないので特に有利である。
【0048】
一実施形態によれば、導電率プローブは、直流導電率を測定するように構成される。
【0049】
一実施形態によれば、導電率プローブは、1つ以上の異なる周波数で導電率を測定するように構成され、前記周波数は、約1Hz~1MHz、好ましくは約1Hz~100kHzの範囲に含まれる。この実施形態の好ましい構成では、前記周波数は、約10Hz~10kHzの範囲に含まれる。周波数が高くなると、電力消費が高くなり、装置がより複雑になる。
【0050】
一実施形態によれば、導電率プローブは2つ以上の電極を含む。
【0051】
一実施形態によれば、照明モジュールは、NIR-Vis光源を備え、390nm~1100nmの範囲の光を放出する。この実施形態の特定の構成では、NIR-Vis光源は、LED(発光ダイオード)、レーザ、スーパールミネセントLED(sLED)、又は白熱電球である。
【0052】
一実施形態によれば、照明モジュールは、UV光源を備え、270nm~400nm、好ましくは365nm~400nmの範囲のUV光を放出する。この実施形態の特定の構成では、UV光源は、UV LED(発光ダイオード)、レーザ、スーパールミネセントLED(sLED)、又は白熱電球である。
【0053】
一実施形態によれば、照明モジュールは、IR光源を備え、800nm~2600nm、好ましくは800nm~1350nmの範囲のIR光を放出する。
【0054】
一実施形態によれば、マルチスペクトル光学センサは、400nm~1100nmの範囲の光を収集する。
【0055】
一実施形態によれば、マルチスペクトル光学センサは、800nm~2600nmの範囲の光を収集する。
【0056】
一実施形態によれば、マルチスペクトル光学センサは、少なくとも1つの光検出器、好ましくは2つ以上の光検出器を含む。この実施形態の特定の構成において、マルチスペクトル光学センサは、400nm~1100nmの範囲の光を収集する第1の光検出器、すなわち可視光コレクタと、800nm~2600nmの範囲の光を収集する第2の光検出器、すなわち赤外光コレクタを含む。
【0057】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、温度センサをさらに備える。温度センサは、尿サンプルの温度測定を可能にし、この温度は、その後、前記温度に関連する電気信号に変換される。また、光学信号及び導電率信号を正規化することもできる。
【0058】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、pHセンサをさらに備える。pHセンサは、尿サンプルのpH測定を可能にし、このpHは、その後、前記pHに関連する電気信号に変換される。
【0059】
一実施形態によれば、センサは測定ヘッドに一体化される。
【0060】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、ハンドルと、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッドとを備え、測定ヘッドは、
a.導電率プローブと、
b.前記尿サンプルの中で光を放出するように構成された照明モジュールと、
ここで、照明モジュールは、390nm~1100nmの範囲の光を放出するNIR-Vis光源、270nm~400nmの範囲のUV光を放出するUV光源、及び800nm~2600nmの範囲のIR光を放出するIR光源を備える、
c.前記尿サンプルによって放出された光及び/又は前記尿サンプルを透過した光を受けるように構成されたマルチスペクトル光学センサと、
ここで、マルチスペクトル光学センサは、400nm~1100nmの範囲の光を収集する第1の光検出器と、800nm~2600nmの範囲の光を収集する第2の光検出器を備える、
d.温度センサと、
e.pHセンサと、
を備える。
【0061】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、超音波センサをさらに備える。前記超音波センサは、密度、細胞及び/又は結晶の存在などの尿サンプルの物理的、機械的、及び化学的性質に関する情報を提供する。
【0062】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、充電式バッテリをさらに備える。
【0063】
この実施形態の特定の構成では、充電式バッテリは、充電しなくても24時間動作するように構成される。バッテリを節約するために、装置の不使用時にスタンバイモードを自動的に起動することができる。
【0064】
この実施形態の別の特定の構成では、充電式バッテリは、迅速に充電するように構成され、例えば、バッテリは1時間で満充電される。
【0065】
この実施形態の別の特定の構成では、充電式バッテリは、2cm×6cm未満のサイズを有する。
【0066】
一実施形態によれば、充電式バッテリは、リチウムイオンバッテリ、LiCFxバッテリ、Li-FeS2バッテリ、LiFePO4バッテリ、Li-SO2バッテリ、Li-I2バッテリ、Li-Ag2CrO4バッテリ、Li-Ag2V4O11バッテリ、Li-SVOバッテリ、Li-CSVOバッテリ、又はリチウムポリマーバッテリの中から選択される。好ましくは、充電式バッテリは、リチウムベースのバッテリである。
【0067】
代替的な実施形態では、手持ち式尿検査装置は、非充電式のバッテリ、例えばアルカリ電池をさらに備える。
【0068】
代替的な実施形態では、手持ち式尿検査装置は、誘導によって再充電することができる。
【0069】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、データ転送を可能にする接続システムをさらに備える。この実施形態の特定の構成では、手持ち式尿検査装置は、有線又は無線(Bluetooth、wifi)接続を介して、例えば、スマートフォン、タブレット、又はコンピュータなどのコンピューティングモジュールと無線接続を介して通信するように構成される。
【0070】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、装置のセンサ/プローブによって収集されたデータ、及び/又はデータの処理後に得られた結果を表示するように構成されたディスプレイモジュールをさらに備える。
【0071】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、手持ち式尿検査装置の不使用時に測定ヘッドを覆うように構成されたキャップをさらに備える。
【0072】
一実施形態によれば、手持ち式尿検査装置は、尿サンプルの水位が測定するのに十分であるどうかをユーザに示すように構成された測定ヘッド上のLEDをさらに備える。
【0073】
この発明はまた、尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.本発明に係る手持ち式尿検査装置を前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
を含む方法に関する。
【0074】
尿サンプルは任意の容器に採取することができる。
【0075】
浸漬する前に、手持ち式尿検査装置をオンにすることができる。特定の構成では、前記装置は、光を発することによって前記装置がうまくオンになっているかどうかを示す、例えば、青色LED、緑色LED、又は赤色LEDなどの、好ましくは青色LEDの、第1の外部LEDをさらに備える。
【0076】
浸漬する前に、手持ち式尿検査装置はまた、無線接続を介して、コンピュータ、スマートフォン、又はタブレットなどのコンピューティングモジュールに接続することができる。
【0077】
尿サンプルの物理的特性を測定するために、作動ボタンと係合することによって、浸漬された手持ち式尿検査装置が作動される。尿サンプルに浸漬すると、センサ、導電率プローブ、照明モジューのすべてが尿に浸されたときに手持ち式装置が測定を実行する。測定の開始は、すべての測定要素が尿に浸されたことを装置が検出するときにユーザが手動で又は自動的に命令することができる。
【0078】
特定の構成では、前記装置は、光を発する及び/又は振動することによって測定が実行されたかどうかを示す、例えば、青色LED、緑色LED、又は赤色LEDなどの、好ましくは緑色LEDの、第2の外部LEDをさらに備える。
【0079】
本発明の方法は、手持ち式装置の測定ヘッドを前記サンプルに浸漬する前に、サンプルを調製、分離、又はなんらかの処理にかけることを必要としない。実際、前記測定ヘッドは、尿サンプルの収集後すぐに浸漬することができる。それでもなお、尿サンプルは、手持ち式尿検査装置を浸漬する前に試薬と混合することができる。このような試薬は蛍光プローブであり得る。
【0080】
この発明はまた、本発明に係る手持ち式尿検査装置と、充電モジュール及び/又は洗浄モジュールを備えるドッキングステーションとを含む、尿検査システムに関する。
【0081】
ドッキングステーションは、手持ち式尿検査装置を洗浄、再充電、及び/又は乾燥するように構成される。
【0082】
尿サンプルの測定後に、手持ち式尿検査装置は、ドッキングステーションに配置され、そこで再充電する及び/又は測定ヘッドを洗浄モジュールに浸漬することによって洗浄する及び/又は乾燥することができる。
【0083】
一実施形態によれば、ドッキングステーションは、手持ち式尿検査装置を再充電及び保管するための保管位置を備える。
【0084】
一実施形態によれば、ドッキングステーションは、手持ち式尿検査装置を前記ドッキングステーション上に支持し、測定ヘッドを洗浄モジュールに浸すために、アーム、好ましくは機械的多関節アームを備える。
【0085】
一実施形態によれば、洗浄モジュールは、消毒液(洗浄液とも呼ばれる)を備える。
【0086】
この実施形態の特定の構成では、消毒液は、界面活性剤を含む水性溶液である。これは、前記溶液が発泡、好ましくは熱により生じる泡を形成し、手持ち式尿検査装置に生体分子が付着するのを防ぐ一助となるので特に有利である。
【0087】
この実施形態の特定の構成では、消毒液は、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、複合洗剤(ポリアルコキシル化脂肪アルコール、ラウリルジメチルアミンオキシド)、封鎖剤、及び分散剤を含む。
【0088】
この実施形態の代替的な構成では、消毒液は、水と溶媒(例えば、エタノール)の交互の溶液を指す、すなわち、測定ヘッドが最初に水に浸され、次いで、溶媒に浸される、又は最初に水ですすがれ、次いで溶媒ですすがれる。
【0089】
一実施形態によれば、ドッキングステーションは、乾燥モジュールをさらに備え得る。この実施形態の特定の構成では、乾燥モジュールは空気流モジュールである。この空気流モジュールは、手持ち式尿検査装置と接触することなく洗浄後の残留消毒液を蒸発させるのに特に有用である。
【0090】
好ましくは、ドッキングステーションは、乾燥モジュールを備えず、手持ち式尿検査装置は非接触で周囲空気によって乾燥される。
【0091】
一実施形態によれば、充電モジュールは、アーム内に配置される。前記充電モジュールは、手持ち式尿検査装置のバッテリを再充電するために接触(配線を介する)又は磁気誘導を使用することができる。
【0092】
代替的な実施形態によれば、充電モジュールは、手持ち式尿検査装置を再充電及び保管するための保管位置に配置される。前記充電モジュールは、手持ち式尿検査装置のバッテリを再充電するために接触(配線を介する)又は磁気誘導を使用することができる。この実施形態では、前記保管位置は、前記保管位置に手持ち式尿検査装置が配置されたときに再充電を可能にするべくハンドルの2つの穴と協働するように構成された2つの電気ピンを備える。
【0093】
一実施形態によれば、ドッキングステーションは、タブレットのための支持体、又はタブレットをさらに備える。この実施形態では、タブレットは、尿サンプルの測定後に得られた結果の表示及び/又はコンピューティングモジュールとして機能する。
【0094】
一実施形態によれば、ドッキングステーションは、手持ち式尿検査装置を輸送するように構成され得る。この実施形態では、前記ドッキングステーションは可搬型である、すなわち、前記ドッキングステーションはキャリングケースに変わることができ、手持ち式尿検査装置は前記キャリングケースの内部にある。輸送中に、手持ち式尿検査装置は、手持ち式尿検査装置を再充電及び保管するための保管位置に配置され、タブレットは、ドッキングステーション上の保管位置に配置される。
【0095】
この発明はまた、尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.本発明に係る尿検査システムの手持ち式尿検査装置の測定ヘッドを前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
iv.本発明に係る尿検査システムのドッキングステーションに手持ち式尿検査装置を配置し、充電及び/又は洗浄を可能にするステップと、
v.測定ヘッドを消毒液で洗浄するステップと、
を含む方法に関する。
【0096】
消毒液は上記のとおりである。
【0097】
洗浄ステップ(v)は、迅速で危険のないステップであり、ユーザがほぼ直ちに装置を再使用することを可能にする。
【0098】
本発明はまた、尿を分析するための手持ち式尿検査装置の使用に関する。前記尿は、ヒトの尿又は動物の尿であり得る。
【0099】
本発明はまた、例えば、血液、汗、涙液、唾液、又は母乳などの体液の分析のための手持ち式尿検査装置の使用に関する。
【0100】
様々な実施形態を説明及び図示してきたが、詳細な説明はそれに限定されるものとして解釈されるべきではない。当業者は、特許請求の範囲によって定義される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な修正を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1A】本発明の手持ち式尿検査装置の概略的な側面図である。
【
図1B】本発明の手持ち式尿検査装置の概略図である。
【
図2A】導電率プローブ、照明モジュール、及びマルチスペクトル光学センサを備える本発明の手持ち式尿検査装置の概略的な側面図である。
【
図2B】温度センサをさらに備える本発明の手持ち式尿検査装置の概略的な側面図である。
【
図3】本発明の手持ち式尿検査装置及びドッキングステーションの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図1A~
図1Bに示すように、手持ち式尿検査装置1は、ハンドル11と、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッド12とを備える。前記測定ヘッド12は、第1の壁121及び第2の壁122を備え、各壁は、導電率プローブ、照明モジュール14、及びマルチスペクトル光学センサ13のうちの少なくとも1つを搭載するように構成される。
【0103】
手持ち式尿検査装置1は、ハンドル11の端に位置する作動ボタン111をさらに備える。尿サンプルに浸漬すると、導電率プローブ、照明モジュール14、及びマルチスペクトル光学センサ13のすべてが尿に浸されたときに手持ち式装置1が測定を実行する。有利なことに、測定の開始は、ユーザが作動ボタン111を押すことによって手動で命令することができる。
【0104】
壁(121、122)は、対向しており、手持ち式尿検査装置1の縦軸に沿って延びる。それらは、光路長を形成する空いた空間によって分離される。
【0105】
これは、導電率プローブ、照明モジュール14、及びマルチスペクトル光学センサ13を浸すべく壁(121、122)間の前記空いた空間を尿で満たすことを可能にするので特に有利である。
【0106】
さらに、壁(121、122)を分離する空いた空間によって生じる光路長は、光が通過するサンプルのボリュームを決定するため、特に重要である。前記ボリュームがより大きければ、より多くの情報が測定に利用可能になる。
【0107】
図2Aに示すように、手持ち式尿検査装置1は、ハンドル11と、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッド12とを備える。前記ハンドル11は作動ボタン111を備える。前記測定ヘッド12は、第1の壁121及び第2の壁122を備える。
【0108】
第1の壁121は、第2の壁122よりも厚く、
・導電率プローブの電極15と、
・赤外光コレクタ131及び可視光コレクタ132を備えるマルチスペクトル光学センサ13と、
を搭載する。
【0109】
第2の壁122は、
・導電率プローブの第2の電極15と、
・前記尿サンプルの中で光を放出するように構成された照明モジュール14と、
を搭載する。
【0110】
尿サンプルに浸漬すると、例えば作動ボタン111を押すことによって、手持ち式尿検査装置1が作動される。次いで、照明モジュール14が前記尿サンプルの中で光を放出し、この光は、サンプルを透過する光の波長に応じて赤外光コレクタ131と可視光コレクタ132の両方によって収集される。この光学測定と同時に、導電率プローブの2つの電極15が前記サンプルの導電率を測定する。
【0111】
これは、手持ち式尿検査装置1が、4つの技術、すなわち、可視分光分析、近赤外分光分析、自家蛍光分光分析、及び導電率測定に基づいて尿サンプルの非侵襲的スキャンを提供するので特に有利である。これにより、尿サンプルの十分な物理化学的キャラクタライゼーションが可能になる。
【0112】
図2Bでは、手持ち式尿検査装置1は、同じ(
図2Aと同じ)構成を有し、温度センサ16をさらに備える。
【0113】
温度センサ16は、尿サンプルの温度測定を可能にし、この温度は、その後、前記温度に関連する電気信号に変換される。また、光学信号及び導電率信号を正規化することもできる。
【0114】
有利なことに、尿サンプル温度の同時測定により、光学測定及び導電率測定の精度を向上させることができる。
【0115】
図3に示すように、ドッキングステーション2は、多関節アーム21によって支持された手持ち式尿検査装置1と、光学測定及び導電率測定の結果を読み出すためのタブレット3を搭載することができる。前記ドッキングステーション2は、消毒液の受け皿となるように構成された洗浄モジュール22と、手持ち式尿検査装置1を使用後に保管できる引き出し23をさらに備える。多関節アームは、再充電の目的で手持ち式尿検査装置1を支持する、及び、前記手持ち式尿検査装置1を洗浄モジュール22に格納された消毒液に浸すように構成される。
【0116】
尿サンプルの測定後に、手持ち式尿検査装置1は、該装置を再充電できるドッキングステーション2に配置され、及び/又は測定ヘッド12を洗浄モジュール22に浸漬することによって洗浄され、及び/又は乾燥される。
【0117】
有利なことに、ドッキングステーションは、手持ち式尿検査装置1を再充電、洗浄、及び乾燥するための独自のステーション、並びに、結果の容易な読み出しのためのタブレットの支持体を提供する。
【0118】
実施例
本発明は以下の実施例によってさらに例示される。
【0119】
実施例1:
方法
採取したての尿サンプルを添加剤/保存料なしに120mLの滅菌尿容器に収集した。本発明の手持ち式尿検査装置の分析性能を評価するために、ゴールドスタンダードの方法論を用いて中央研究所で参照試験を実施した。
【0120】
光学スペクトル(可視分光分析、近赤外分光分析、自家蛍光分光分析)と電気伝導率を測定するために本発明の手持ち式尿検査装置を使用して同じサンプルを並行して分析した。次いで、各サンプルの濃度値、すなわち、一方では光学データに基づく濃度値、他方では光学データと電気データの組み合わせに基づく濃度値を求めるべく、数値データを特定のアルゴリズムで処理した。
【0121】
次いで、参照機器によって求められた濃度を対照値として使用し、手持ち式尿検査装置によって得られた、光学データに基づく濃度値と、光学データと電気データの組み合わせに基づく濃度値との両方と比較した。
【0122】
結果
表1は、ゴールドスタンダードの装置によるバイオマーカ濃度と、手持ち式尿検査装置によって光学データを用いて及び光学データと電気データの組み合わせを用いて得られた結果との相関関係を示している。
【表1】
【0123】
光学データのみではなく光学データと電気データの組み合わせに対してアルゴリズムを使用すると、参照値と比較して本発明の手持ち式装置のより良好な予測精度が得られることが観察された。
【0124】
実施例2:
材料:
採取したての早朝尿サンプルを収集した。前記尿サンプル中の結晶の存在を評価するために、尿路結石症患者の選択を行った。各第一尿サンプルを、添加剤/保存料なしに120mLの滅菌尿容器に収集した。
【0125】
手持ち式尿検査装置によって尿サンプルを分析し、光学分析(可視分光分析、近赤外分光分析、自家蛍光分光分析)と電気分析(導電率測定)によって得られた物理化学的プロファイルをキャラクタライズして、サンプル濃度を求める。
【0126】
結果
手持ち式装置で測定される尿のプロファイルは非常に特異的であり、個人によって異なる。これらの差異は、個人の健康状態などのパラメータに依存し、尿中に結晶の形成を引き起こす尿路結石症などの病状によって生じ得る。
【0127】
サンプルを分析するとき、機器によって得られるデータは物理化学的パラメータによって異なる。例えば、導電率は、サンプル中のイオン濃度及び結晶の存在によって異なる。健康な人では、導電率は、11.49~16.85mS.cm-1の範囲で異なる。
【0128】
手持ち式装置によって測定された導電率値により、健康なサンプルから結晶リスクの高いサンプル(導電率>25mS.cm-1)までを特定し、バイオマーカ濃度を予測するアルゴリズムを適応させることができた。結晶の存在は、偏光デバイスを装備したコントラスト顕微鏡で尿サンプルを観察することによって確認された。
【符号の説明】
【0129】
1: 手持ち式尿検査装置
11: ハンドル
111: 作動ボタン
12: 測定ヘッド
121: 第1の壁
122: 第2の壁
13: マルチスペクトル光学センサ
131: 赤外光コレクタ
132: 可視光コレクタ
14: 照明モジュール
15: 導電率プローブの電極
16: 温度センサ
2: ドッキングステーション
21: 多関節アーム
22: 洗浄モジュール
23: 引き出し
3: タブレット
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(11)と、尿サンプルに浸漬されるように構成された測定ヘッド(12)とを備える、手持ち式尿検査装置(1)であって、前記測定ヘッド(12)が、
a.導電率プローブと、
b.前記尿サンプルの中で光を放出するように構成された照明モジュール(14)と、
c.前記尿サンプルによって放出された光及び/又は前記尿サンプルを透過した光を受けるように構成されたマルチスペクトル光学センサ(13)と、
を備える、手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項2】
充電式バッテリをさらに備える、請求項1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項3】
データ転送を可能にする接続システムをさらに備える、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項4】
前記導電率プローブは、2つの異なる周波数で導電率を測定するように構成され、前記周波数は約1Hz~1MHzの範囲に含まれる、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項5】
前記照明モジュール(14)は、NIR-Vis光源を備え、390nm~1100nmの範囲の光を放出する、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項6】
前記照明モジュール(14)は、UV光源を備え、270nm~400nmの範囲のUV光を放出する、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項7】
前記照明モジュール(14)は、IR光源を備え、800nm~2600nmの範囲のIR光を放出する、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項8】
前記マルチスペクトル光学センサ(13)は、400nm~1100nmの範囲の光を収集する、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項9】
前記マルチスペクトル光学センサ(13)は、800nm~2600nmの範囲の光を収集する、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項10】
温度センサ(16)をさらに備える、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項11】
pHセンサをさらに備える、請求項
1に記載の手持ち式尿検査装置(1)。
【請求項12】
尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)を前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の手持ち式尿検査装置(1)と、充電モジュール及び/又は洗浄モジュール(22)を備えるドッキングステーション(2)とを含む、尿検査システム。
【請求項14】
前記洗浄モジュール(22)は消毒液を備える、請求項13に記載の尿検査システム。
【請求項15】
尿を分析する方法であって、
i.尿サンプルを容器に採取するステップと、
ii.請求項
13に記載の尿検査システムの手持ち式尿検査装置(1)の測定ヘッド(12)を前記尿サンプルに浸漬するステップと、
iii.前記サンプルの以下の物理的特性:
・導電率、
・NIR-Visスペクトル、IRスペクトル、及び/又は蛍光スペクトル、
を測定するステップと、
iv.請求項
13に記載の尿検査システムのドッキングステーション(2)に手持ち式尿検査装置(1)を配置し、充電及び/又は洗浄を可能にするステップと、
v.測定ヘッド(12)を消毒液で洗浄するステップと、
を含む方法。
【国際調査報告】