IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューヴィール ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2023-554212モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム
<>
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図1
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図2
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図3
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図4
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図5
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図6
  • 特表-モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】モータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステム
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/14 20060101AFI20231220BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20231220BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231220BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B62M7/14
B62B3/00 B
B60T7/12 B
B60T7/12 D
B60T7/12 F
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516269
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2021073047
(87)【国際公開番号】W WO2022058119
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】20196699.1
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518293826
【氏名又は名称】ニューヴィール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】カーン ファハド・アマン
(72)【発明者】
【氏名】カマール モハメド・アリ
【テーマコード(参考)】
3D050
3D246
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG03
3D050JJ09
3D050KK02
3D050KK14
3D246AA12
3D246DA01
3D246DA02
3D246GA02
3D246GB15
3D246GB33
3D246GB37
3D246GC09
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA03A
3D246HA06A
3D246HA51A
3D246HA86A
3D246JB33
3D246KA19
3D246LA03A
(57)【要約】
トレーラ(10)を車両(32)、特に自転車に連結するためのモータ駆動トレーラ(10)および牽引棒(20)のシステムであって、前記牽引棒(20)は、前記車両(32)と結合するための車両側端部(20a)と、前記トレーラ(10)のトレーラ連結部(15)と結合したトレーラ側端部(20b)とを備え、前記牽引棒(20)は、前記トレーラ(10)に対して、前記牽引棒(20)が下降位置(L)と上昇位置(R)との間で旋回経路(P)に沿って旋回可能であるように前記トレーラ(10)に連結され、前記システムは、前記旋回経路(P)に沿って前記牽引棒(20)の位置を検知するための少なくとも1つの第1のセンサ素子(22、24)と、前記少なくとも1つの第1のセンサ素子(22、24)と通信するコントロールユニット(TCU)とを備え、前記コントロールユニット(TCU)は、前記旋回経路(P)に沿った前記牽引棒(20)の位置に応じて、前記システムを、前記トレーラ(10)のモータ(12)が前記トレーラ(10)の移動を支持する場合は動作モードに、前記トレーラ(10)の移動を妨げるために前記トレーラ(10)のブレーキがかけられる場合は駐車モードにするように適合されており、前記システムは、前記牽引棒(20)が前記上昇位置(R)にあるときは前記駐車モードになり、前記牽引棒(20)が前記下降位置(L)にあるときは前記動作モードになる、システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラ(10)を車両(32)、特に自転車に連結するためのモータ駆動トレーラ(10)および牽引棒(20)のシステムであって、
前記牽引棒(20)は、前記車両(32)と結合するための車両側端部(20a)と、前記トレーラ(10)のトレーラ連結部(15)と結合したトレーラ側端部(20b)とを備え、
前記牽引棒(20)は、前記トレーラ(10)に対して、前記牽引棒(20)が下降位置(L)と上昇位置(R)との間で旋回経路(P)に沿って旋回可能であるように前記トレーラ(10)に連結され、
前記システムは、前記旋回経路(P)に沿って前記牽引棒(20)の位置を検知するための少なくとも1つの第1のセンサ素子(22、24)と、前記少なくとも1つの第1のセンサ素子(22、24)と通信するコントロールユニット(TCU)とを備え、
前記コントロールユニット(TCU)は、前記旋回経路(P)に沿った前記牽引棒(20)の位置に応じて、前記システムを、前記トレーラ(10)のモータ(12)が前記トレーラ(10)の移動を支持する場合は動作モードに、前記トレーラ(10)の移動を妨げるために前記トレーラ(10)のブレーキがかけられる場合は駐車モードにするように適合されており、
前記システムは、前記牽引棒(20)が前記上昇位置(R)にあるときは前記駐車モードになり、前記牽引棒(20)が前記下降位置(L)にあるときは前記動作モードになる、システム。
【請求項2】
前記システムは、前記旋回経路(P)に沿った前記牽引棒(20)の移動方向を検知するようにさらに適合されており、前記コントロールユニット(TCU)は、前記牽引棒(20)が前記上昇位置(R)に向かって上方に移動するときに、前記トレーラ(10)のブレーキをかけるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントロールユニット(TCU)は、前記牽引棒(20)が前記上昇位置(R)に近づくにつれて、前記ブレーキの制動力を増加するように適合されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントロールユニット(TCU)は、前記トレーラ(10)のブレーキが、緊急ブレーキを実現するために全制動力でかけられるときに、前記システムを緊急モードにするようにさらに適合されており、前記システムは、前記牽引棒(20)が前記旋回経路(P)に沿って前記下降位置(L)から下方に移動するときに、緊急モードになる、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、設定された制限速度以上の移動速度で、前記牽引棒(20)が前記旋回経路(P)に沿って前記下降位置(L)から下方に移動するときに、前記緊急モードになる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のセンサ素子(22、24)は、近接センサ、角度センサ、角度エンコーダ、スイッチ、特に磁気スイッチのうち1つまたは複数を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のセンサ素子(22、24)は、近接センサ(22a、24a)と対象物(22b、24b)とを含み、前記近接センサ(22a、24a)は、前記近接センサ(22a、24a)と対象物(22b、24b)との間の距離を検知し、前記近接センサ(22a、24a)は、前記牽引棒(20)の前記トレーラ側端部(20b)に配置され、前記対象物(22b、24b)は、前記トレーラ(10)の前記トレーラ連結部(15)で、前記近接センサ(22a、24a)に対向して配置され、あるいは、前記対象物(22b、24b)は、前記牽引棒(20)の前記トレーラ側端部(20b)に配置され、前記近接センサ(22a、24a)は、前記トレーラ(10)の前記トレーラ連結部(15)で、前記対象物(22b、24b)に対向して配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記旋回経路(P)に沿って前記牽引棒(20)の位置を検知するための少なくとも2つの第1のセンサ素子(22、24)を設ける、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも2つの第1のセンサ素子(22、24)は、前記牽引棒(20)が前記旋回経路(P)に沿って移動するときに、異なるセンサ出力を提供する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記トレーラ(10)は、前記牽引棒(20)の前記車両側端部(20a)と前記車両(32)の結合が確立されているかどうかを検知するための少なくとも1つの第2のセンサ素子(28)をさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントロールユニット(TCU)は、前記少なくとも1つの第2のセンサ素子(28)が前記車両(32)への結合を検知しない場合は、前記システムを手押しモードにするように適合されており、前記手押しモードにおいては、前記コントロールユニット(TCU)は、前記トレーラ(10)の最大速度を第1の制限速度に制限する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントロールユニット(TCU)は、前記少なくとも1つの第2のセンサ素子(28)が前記車両(32)への結合を検知した場合は、前記システムを車両モードにするように適合されており、前記車両モードにおいては、前記コントロールユニット(TCU)は、前記トレーラ(10)の最大速度を第2の制限速度に制限する、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2の制限速度は、前記第1の制限速度よりも速い、請求項11および12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第2のセンサ素子(28)は、前記車両(32)の車両連結部(30)の安全ピン(36)が、前記牽引棒(20)の前記車両側端部(20a)のそれぞれのレセプタクル(27)に挿入されているかどうかを検知する、請求項10~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントロールユニット(TCU)は、前記トレーラ(10)のブレーキが、緊急ブレーキを実現するために全制動力でかけられるときに、前記システムを緊急モードにするようにさらに適合されており、前記システムは、前記牽引棒(20)と前記車両(32)との間の結合が切断されたときに、緊急モードになる、請求項10~14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラを車両、特に自転車に連結させるためのモータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動トレーラは、通常、バッテリを動力源とするモータによって自走する。このようなモータ駆動トレーラは、牽引棒を介して連結されている車両に自動的に追従するように設計可能であり、特に、牽引車両が加速する際には加速し、牽引車両がブレーキをかける際には、ブレーキをかけることが可能である。このように、モータ駆動トレーラと車両との間の距離は測定され、トレーラを加速または減速させることにより、所定の範囲内に維持され得る。このような牽引棒およびトレーラは、例えば、欧州特許第3416860号および英国特許出願公開第2560883号により公知である。
【0003】
モータ駆動トレーラが車両に結合されていないときでも、モータ駆動トレーラを可動にすることは有利となり得る。トレーラは、例えば、牽引棒を手に持った人により、押されたり引っ張られたりしてもよい。一般に、このようなモータ駆動トレーラの手押しモードでの使用中には、上記説明と同様に、トレーラと人との間に一定の距離を維持することによって、トレーラは人に追従し得る。
【0004】
トレーラの使用とは別に、特に駐車しているときに、トレーラが意図せずに移動することを確実に防ぐことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第3416860号
【特許文献2】英国特許出願公開第2560883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、特に安全に使用できるモータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1の主題により、課題を解決する。有利な実施形態が、従属請求項、明細書、ならびに図面に開示される。
【0008】
トレーラを車両、特に自転車に連結するためのモータ駆動トレーラおよび牽引棒の本発明のシステムでは、牽引棒は、車両と結合するための車両側端部と、トレーラのトレーラ連結部に結合されたトレーラ側端部とを備え、牽引棒は、トレーラに対して、牽引棒が下降位置と上昇位置との間で旋回経路に沿って旋回可能であるようにトレーラに連結され、システムは、旋回経路に沿って牽引棒の位置を検知するための少なくとも1つの第1のセンサ素子と、少なくとも1つの第1のセンサ素子と通信するコントロールユニットとを備え、コントロールユニットは、旋回経路に沿った牽引棒の位置に応じて、システムを、トレーラのモータがトレーラの移動を支持する場合は動作モードに、トレーラの移動を妨げるためにトレーラのブレーキがかけられる場合は駐車モードにするように適合されており、システムは、牽引棒が上昇位置にあるときは駐車モードになり、牽引棒が下降位置にあるときは動作モードになる。
【0009】
本発明のシステムでは、牽引棒は、トレーラに対して旋回可能である。牽引棒は、下降位置から上昇位置に向かって上向きに、または上昇位置から下降位置に向かって下向きに旋回可能である。下降位置は、例えば、基本的に牽引棒の水平位置であってもよく、上昇位置は、例えば、基本的に牽引棒の垂直配置であってもよい。下降位置および/または上昇位置は、トレーラに対する牽引棒の特定の角度位置により画定され得るが、トレーラに対する牽引棒の角度範囲として理解されてもよい。例えば、牽引棒の水平位置の周囲+/-10~20°の角度範囲は、下降位置として理解され得る。上昇位置に牽引棒が無いと、牽引棒が下降位置にあるとみなしてもよく、したがってシステムは、動作モードである。
【0010】
本発明によると、牽引棒は、トレーラに対して、旋回経路に沿って牽引棒の位置を検知し、特に牽引棒の角度位置を検知するように適合される少なくとも1つの第1のセンサ素子を備える。センサ素子により測定されたデータは、コントロールユニットにより受信され、コントロールユニットは、牽引棒の位置に応じて、システムを異なるモードにする。コントロールユニットは、トレーラおよび/または牽引棒の一部であってもよい。好ましくは、コントロールユニットは、トレーラのさらなる機能、特にトレーラと、牽引棒または牽引棒を持っている人によってトレーラに結合された車両との距離に応じてトレーラの移動を制御する、トレーラコントロールユニットの一部である。本発明によると、コントロールユニットは、牽引棒の位置に応じて、システムを動作モードまたは駐車モードのいずれかにすることができる。動作モードでは、モータ駆動トレーラのモータは、上で説明した方法でトレーラの移動を支持するために作動する。特に、車両またはトレーラを押したり引っ張ったりする人とトレーラとの間の距離が一定に維持されるように、トレーラを移動させてもよい。したがって、車両または人とトレーラとの間の距離が増加すると、モータはトレーラを加速し、車両または人とトレーラとの間の距離が減少すると、モータはトレーラを逆に移動させ、かつ/あるいはブレーキをかけてもよい。この動作モードでは、牽引棒は下降位置にあり、車両に連結されているか、または人により保持されている。
【0011】
一方、上昇位置においては、トレーラをコントロールユニットにより駐車モードにし、トレーラのブレーキをかけて、トレーラのさらなる移動を妨げるようにする。駐車モードでは、モータを停止させて、トレーラのいかなる移動も支持しないようにしてもよい。このように、牽引棒が上昇位置にあるときは、トレーラの移動が安全に妨げられる。ブレーキがかけられ、あるいはモータが停止しているため、不要な移動が起こり得ないので、このモータ駆動トレーラを使用しているときは、さらに高いレベルの安全性がもたらされる。
【0012】
実施形態によると、システムは、旋回経路に沿って牽引棒の移動方向を検知するようにさらに適合され、コントロールユニットは、牽引棒が上昇位置に向かって上方に移動したときには、トレーラのブレーキをかけるように適合される。特に、少なくとも1つの第1のセンサおよび/またはコントロールユニットは、牽引棒の移動方向を検知するように適合されてもよい。この実施形態によると、牽引棒が下降位置または上昇位置にあるか否かだけでなく、移動が、旋回経路に沿って上方または下方のいずれであるかも検知される。牽引棒が上昇位置に達したときだけでなく、既に牽引棒が下降位置を離れて上昇位置に向かって上方に移動しているときにも、トレーラのブレーキがかけられる。それぞれの実施形態によると、コントロールユニットは、牽引棒が上昇位置に近づくにつれて、ブレーキの制動力を増加するように適合される。したがって、牽引棒が上昇位置に近づくほど、制動力は大きくなり得る。この実施形態により、牽引棒が下降位置を上方向に離れた際に素早く反応して、トレーラを緩停止させることができる。牽引棒の上方または下方の移動方向は、これらの2つの移動方向に対して、センサが異なる出力を提供することにより検知され得る。この点について、以下に説明するように、さらなるセンサを設けてもよい。
【0013】
実施形態によると、コントロールユニットは、システムを、緊急ブレーキを実現するためにトレーラのブレーキを全制動力でかける緊急モードにするようにさらに適合されており、システムは、牽引棒が旋回経路に沿って下降位置から下方に移動したときに、緊急モードになる。この実施形態によると、コントロールユニットは、システムを、さらなるモード、緊急モードにするように適合される。これは、牽引棒が、下降位置から上方ではなく下方に移動するときに行われる。牽引棒がその下方への移動中に下降位置を離れるとすぐに、トレーラのブレーキが全力でかけられる。全制動力がかかることにより、緊急ブレーキが実現し、モータ駆動トレーラは、可能な限り迅速に停止する。牽引棒が下降位置から下方に移動すると、動作モードは終了し、これは、通常、事故が起きたことを意味する。例えば、牽引棒によりトレーラに連結された自転車に乗っている自転車乗用者が事故を起こしたり、または牽引棒を引っ張っている人が牽引棒から手を離したりする場合がある。この場合、ユーザとの衝突を避けるために、トレーラを停止させることが重要である。それぞれの実施形態によると、システムは、設定された制限速度以上の移動速度で、牽引棒が旋回経路に沿って下降位置から下方に移動したときに、緊急モードになる。この実施形態によると、緊急ブレーキは、最小速度またはそれ以上の速度で牽引棒が下方に移動した場合にのみ実行される。ユーザが牽引棒をそっと下ろした場合ではなく、倒れ落ちた場合にのみ緊急ブレーキが実施されるように、制限速度を設定してもよい。
【0014】
実施形態によると、第1のセンサ素子は、近接センサ、角度センサ、角度エンコーダ、スイッチ、特に磁気スイッチのうち1つまたは複数を備える。一般に、第1のセンサ素子は、第1のセンサおよび対象物を含んでもよく、センサを牽引棒に配置し、対象物をトレーラに配置してもよく、あるいはセンサをトレーラに配置し、対象物を牽引棒に配置してもよい。近接センサは、センサと対象物との間の距離および/または距離の変化を検知してもよい。角度センサまたは角度エンコーダは、出力として角度位置を提供し得る。ただし、第1のセンサ素子は、牽引棒が上昇位置に達したときに作動するスイッチとしてもよい。スイッチが作動すると、コントロールユニットが駐車モードを作動させ、それによってブレーキが作動する。本発明によると、スイッチが作動していない場合は、牽引棒は上昇位置に無く、牽引棒は下降位置にあるとみなしてもよく、したがって、システムは動作モードである。
【0015】
実施形態において、第1のセンサ素子は、近接センサと対象物とを含み、近接センサは、近接センサと対象物との間の距離を検知する。近接センサを、牽引棒のトレーラ側端部に配置してもよく、近接センサに対向する対象物を、トレーラのトレーラ連結部に配置してもよい。あるいは、対象物を、牽引棒のトレーラ側端部に配置してもよく、対象物に対向する近接センサを、トレーラのトレーラ連結部に配置してもよい。近接センサは、近接センサと対象物との間の距離および/または距離の変化を検知する。その距離または距離の変化に応じて、牽引棒が上昇位置にあるか下降位置にあるか、それにより動作モードまたは駐車モードのいずれを適用し得るかを導出してもよい。牽引棒の移動方向も、このようなセンサ素子により検知可能である。さらに、このようなセンサにより、説明した緊急モードが適用できるようになる。すなわち、牽引棒が下降位置から下方に移動しているかどうか、およびその速度を検知できる。
【0016】
実施形態によると、旋回経路に沿って牽引棒の位置を検知するための少なくとも2つの第1のセンサ素子が設けられる。2つの第1のセンサ素子は、両方とも、上で説明したように設計および適合され得る。2つの第1のセンサ素子を設けることで、冗長性により、さらに高いレベルの安全性がもたらされる。万が一、一方のセンサ素子が機能しない場合でも、もう一方のセンサ素子が機能する可能性がある。また、少なくとも2つの第1のセンサ素子を設けることにより、牽引棒の移動方向の決定が可能となる。それぞれの実施形態によると、少なくとも2つの第1のセンサ素子は、牽引棒が旋回経路に沿って移動するときに、異なるセンサ出力を提供する。特に、少なくとも2つの第1のセンサ素子は、牽引棒が旋回経路に沿って上方または下方に移動するときに、異なるセンサ出力を提供する。
【0017】
実施形態によると、トレーラは、牽引棒の車両側端部と車両の結合が確立されているかどうかを検知するための少なくとも1つの第2のセンサ素子をさらに備える。少なくとも1つの第2のセンサ素子は、好ましくは、牽引棒の車両側端部に配置される。少なくとも1つの第2のセンサ素子は、牽引棒が車両に結合されているか否かを検知できる。例えば、牽引棒が、車または自転車のトレーラヒッチまたはトレーラ連結部に結合されているかどうかを、第2のセンサ素子により検知できる。そのような結合が検知されるか否かに応じて、コントロールユニットは、システムを異なるモードにする。
【0018】
それぞれの実施形態によると、コントロールユニットは、少なくとも1つの第2のセンサ素子が車両への結合を検知しない場合は、システムを手押しモードにするように適合されており、手押しモードにおいては、コントロールユニットは、トレーラの最大速度を第1の制限速度に制限する。このように、トレーラが車両に結合していない場合は、トレーラは、牽引棒を持っている人が引っ張る、手押し車として使用可能である。手押しモードにおいて、トレーラの最大速度を制限することは、安全性を向上させる。また、さらなるそれぞれの実施形態によると、コントロールユニットは、少なくとも1つの第2のセンサ素子が車両への結合を検知した場合は、システムを車両モードにするように適合可能であり、車両モードにおいては、コントロールユニットは、トレーラの最大速度を第2の制限速度に制限する。第2の制限速度は、第1の制限速度よりも速くてよい。したがって、車両への結合が検知されるか否かに応じて、システムは、異なる制限速度に制限され得る。特に、より遅い制限速度としての第1の制限速度は、トレーラが比較的低速で移動するように設定される。例えば、第1の制限速度は、歩行速度であってもよい。これにより、安全性が高まる。設定された制限速度を守るために、コントロールユニットは、モータが提供する支持を制限してもよく、かつ/あるいはブレーキをかけてもよい。第2の制限速度は、トレーラの最高速度であってもよい。
【0019】
実施形態によると、少なくとも1つの第2のセンサ素子は、車両の車両連結部の安全ピンが、牽引棒の車両側端部のそれぞれのレセプタクルに挿入されているかどうかを検知する。安全ピンを検知した少なくとも1つの第2のセンサは、トレーラが車両に結合されているものとして認識され得る。また、コントロールユニットは、そのような結合が検知されなくても、車両への結合が検知された場合は、特にシステムを車両モードにすることにより、モータを制御し、それによりトレーラの移動を異なる方法で制御するように適合されてもよい。例えば、より機敏な移動を実現するために、トレーラの移動を制御するためのコントロールユニットで実行される制御アルゴリズムを、車両モードに変更してもよい。車両モードの自動起動により、ユーザが手動で、例えばボタンを押すこと(ユーザが忘れる場合がある)などにより、システムを車両モードに切り替える必要もなくなるであろう。また、第2のセンサ素子は、安全ピンが正確に取り付けられているか否か、例えば、安全ピンが完全にレセプタクルに挿入されているかどうかも検知し得る。
【0020】
実施形態によると、コントロールユニットは、システムを、緊急ブレーキを実現するためにトレーラのブレーキを全制動力でかける緊急モードにするようにさらに適合されており、システムは、牽引棒と車両との間の結合が切断されたときに、緊急モードになる。この緊急モードは、一旦確立されていた牽引棒と車両との間の結合が、何らかの理由により切断されたときに作動する。特に、トレーラの動作中にそれぞれのレセプタクルから安全ピンが離れたことが少なくとも1つの第2のセンサ素子により検知されると、このような不要な結合切断として判断され得る。これは、例えば、車両のドライバが事故を起こした場合に起こり得る。例えば、自転車乗用者が地面に倒れた場合である。
【0021】
本発明の実施形態は、図面に関連して、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるモータ駆動トレーラおよび牽引棒のシステムを側面図で示し、牽引棒は、下降位置ならびに上昇位置にて示される。
図2図1のトレーラを、牽引棒が下降位置に有する移動範囲によって示す
図3a】トレーラのトレーラ連結部と牽引棒のトレーラ側端部との間の結合を示す。
図3b】トレーラのトレーラ連結部と牽引棒のトレーラ側端部との間の結合を示す。
図4a】牽引棒の車両側端部と、牽引棒の車両側端部の車両への結合を示す。
図4b】牽引棒の車両側端部と、牽引棒の車両側端部の車両への結合を示す。
図5】手押しモードで動作するシステムを示す。
図6】車両モードで動作する自転車に結合されたシステムを示す。
図7】コントロールユニットの入出力を概略的に示す。
【0023】
以下では、特に断りのない限り、同じ参照符号は同じものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、トレーラ10を車両に連結させるためのモータ駆動トレーラ10および牽引棒20のシステムを示す。トレーラ10は、バッテリ14を動力源とするモータ12を備える。この実施形態では、モータ12を、前輪を駆動する前車軸に配置する。ただし、モータは、一般的にトレーラのいずれの箇所に配置してもよく、後輪を駆動するようにも適合され得る。トレーラ10は、図1には示されていないが、トレーラコントロールユニットを備える。以下においてTCUと呼ばれる、トレーラコントロールユニットは、トレーラ10の移動を制御し得る。トレーラ10は、トレーラ10と牽引棒20との間の距離、したがってトレーラと車両または牽引棒20によりトレーラを引っ張る、もしくは押す人との間の距離を検知可能であり、一定に維持され得るように、モータにより自走する。これにより、トレーラ10が、見かけ上は無重量であるように、車両または人に追従することができる。これを実現するために、欧州特許第3416860号に詳しく説明されているように、当該距離測定を可能にするコントロールボックス16が設けられ、特に牽引棒とトレーラ10との間の可変距離を測定し、一定に維持することができる。
【0025】
牽引棒20は、車両としての自転車と結合するための車両側端部20aと、コントロールボックス16を介してトレーラ10と結合されたトレーラ側端部20bとを備える。牽引棒20は、牽引棒20が、下降位置Lと上昇位置Rとの間で旋回経路Pに沿って旋回可能であるように、トレーラ10に連結される。牽引棒20が下降位置Lにあるときは、システムは自転車に結合されてもよく、または牽引棒20を持った人により引っ張られてもよい。上昇位置Rにおいては、システムは使用されず、以下で説明するように、駐車モードにある。
【0026】
下降位置Lおよび上昇位置Rは、旋回経路に沿った角度値として理解され得る。ただし、図2に見られるように、それらはまた、旋回経路Pに沿った角度範囲としても理解され得、旋回経路Pに沿った牽引棒20の移動範囲は、牽引棒20の下降位置として理解され得る。この実施形態において、牽引棒20が、牽引棒20の水平位置の周りのおよそ30°の移動角度範囲内にある限り、牽引棒20は下降位置にある。下降位置は、特に位置P1およびP2を含む。位置P3は、牽引棒20が、上昇位置の方向で下降位置よりも高いことを示す。
【0027】
本発明によるシステムは、図3に見られる2つの第1のセンサ素子22、24を備える。センサ素子22、24は、牽引棒20とトレーラ10との間の結合部に配置される。第1のセンサ素子22、24の両方が、それぞれ牽引棒20のトレーラ側端部20bに配置された近接センサ22a、24a、およびトレーラ10のトレーラ連結部15に配置された対象物22b、24bを含む。牽引棒20は、トレーラ10のトレーラ連結部15に対して、軸Aの周りを旋回可能である。図3aでは、この連結部が断面図で示されているため、第1のセンサ素子24のみが見えている。図3bでは、この連結部の上面図が示されているため、第1のセンサ素子22、24の両方が見られる。近接センサ22aは、近接センサ22aと対象物22bとの間の距離を検知し、近接センサ24aは、近接センサ24aと対象物24bとの間の距離を検知する。図3に見られるように、対象物22b、24bは、異なる形状のものである。対象物22b、24bの形状が異なるため、近接センサ22a、24aは、軸Aの周りの旋回経路Pに沿って、牽引棒20のそれぞれの角度位置に対する異なる距離を測定する。したがって、2つの第1のセンサ素子22、24は、牽引棒20が旋回経路Pに沿って移動するときに、異なるセンサ出力を提供する。対象物22b、24bは強磁性素子であってもよく、近接センサ22a、24aはこれらの強磁性対象物22b、24bの磁気的特性を測定してもよい。2つの第1のセンサ素子22、24により、旋回経路Pに沿った牽引棒20の角度位置を決定してもよい。
【0028】
本発明によると、システムは、TCUの一部であってもよいコントロールユニットを備え、TCUは、旋回経路Pに沿った牽引棒20の位置に応じて、システムを異なるモードにするように適合される。特に、コントロールユニットは、システムを、トレーラ10のモータ12がトレーラ10の移動を支持している場合は動作モードに、トレーラのブレーキがかけられて、トレーラ10の移動が妨げられている場合はシステムを駐車モードにするように適合される。牽引棒20が下降位置Lにあるときは、コントロールユニットはシステムを動作モードにし、牽引棒20が上昇位置Rにあるときは、コントロールユニットはシステムを駐車モードにする。牽引棒20の位置は、2つの第1のセンサ素子22、24により検知される。センサ素子はまた、異なるセンサ出力により、旋回経路Pに沿った牽引棒20の移動方向を提供するように適合される。このおかげで、コントロールユニットは、牽引棒20が上昇位置Rに達したときだけでなく、既に牽引棒20が上方に移動しているときにも、トレーラ10のブレーキをかけることができる。特に、牽引棒20が上昇位置Rに近づくにつれて、ブレーキの制動力が増加し得る。
【0029】
したがって、本発明によるシステムは、動作モードとブレーキモードとの間の区別が可能である。動作モードでは、牽引棒、したがってトレーラを車両に結合するか、または人により引っ張られてもよく、動作モードにあるトレーラのモータは、トレーラの移動を支持するために作動している。しかしながら、駐車モードでは、トレーラはブレーキをかけることにより停止させられる。また、駐車モードでは、トレーラのモータを停止させて、トレーラの移動をそれ以上支持しないようにし得る。したがって、駐車モードでは、トレーラは安全に停止する。
【0030】
図4に、牽引棒20の結合、すなわちトレーラ10と自転車の結合を、概略的に示す。特に、牽引棒20の車両側端部20aは、自転車32のバーに連結されている自転車連結部30のトレーラヒッチ34を受ける第1のレセプタクル26を備える。牽引棒20の車両側端部20aには、牽引棒20の車両側端部20aと自転車32の結合が確立されているかどうかを検知するための第2のセンサ素子28が設けられる。第2のセンサ素子28は、安全ピン36が、それぞれの第2のレセプタクル27に挿入されているかどうかを検知する。
【0031】
第2のセンサ素子28がピン36を検知し、それにより自転車32への結合を検知すると、コントロールユニットはシステムを車両モードにし、車両モードにおいては、コントロールユニットは、トレーラの最大速度を第2の制限速度に制限する。第2のセンサ素子28がピン36を検知しない場合は、自転車との安全な結合が確立されていないと想定され、コントロールユニットは、システムを手押しモードにし、手押しモードにおいては、コントロールユニットは、トレーラの最大速度を第1の制限速度に制限する。第2の制限速度は、第1の制限速度よりも速い。したがって、このような第2のセンサ素子を用いることにより、システムは、人が牽引棒を握ってトレーラを引っ張ることを望む場合の手押しモードと、トレーラを自転車によって引っ張る車両モードとを区別し得る。手押しモードに対してより低い制限速度を設定することにより、安全性が向上する。特に、第2のレセプタクル中に安全ピンが受容されているときは、トレーラは最高速度でのみ移動可能であるからである。このように、安全ピンが挿入されているか否かがユーザに示される。安全ピン36は、リーシュ38により連結部30に固定される。しかしながら、第2のセンサ素子28はまた、あるいは代替的に、トレーラヒッチ34が、第1のレセプタクル26中に挿入されているかどうかを検知し得る。
【0032】
さらに、コントロールユニットは、システムを、緊急ブレーキを実現するためにトレーラのブレーキが全制動力でかけられる緊急モードにするように適合され得る。コントロールユニットは、例えば、牽引棒20が旋回経路Pに沿って下降位置Lから下方に移動した場合、特に、そのような下方移動が設定された制限速度以上の移動速度で起きた場合、システムを緊急モードにし得る。このため、牽引棒が意図せずに倒れた場合は、トレーラが停止する。また、牽引棒20と自転車との間の結合が切断され、例えば、第2のセンサ素子28が安全ピン36を検知しなくなった場合も、緊急モードに設定可能であり、それにより緊急ブレーキが作動する。
【0033】
図5に、人40により引っ張られる際の手押しモードにおけるシステムを示す。前述したように、コントロールユニットはシステムを手押しモードにし、それによって例えば、ブレーキをかけ、かつ/あるいはトレーラのモータが提供する支持を制限することにより、トレーラの制限速度を制限し得る。ユーザ40の力が失われたり、または子供がトレーラを引っ張っていて牽引棒20が倒れたり、あるいは下降位置よりも下になった場合は、それぞれ、緊急ブレーキが実施される。
【0034】
図6に、自転車32に連結されたシステムを示す。ここでは、第1のセンサ素子22、24により検知された牽引棒20が下降位置にあるので、システムは動作モードである。第2のセンサ素子28は、牽引棒と自転車32との間の結合を検知し、それによりシステムは、より早い制限速度を設定する車両モードになる。特に、車両モードでは、トレーラの最高速度を制限速度に設定してもよい。また、車両モードでは、コントロールユニットは、モータの制御を、より機敏にするように適合してもよい。
【0035】
図7に、TCUが受信する入力を概略的に示す。本発明によるコントロールユニットは、前述したように、TCUの一部であってもよい。TCU100は、第1のセンサ素子22、24の両方から、牽引棒の位置に関する入力を受信する。また、TCU100は、牽引棒と自転車の結合を示す入力を第2のセンサ素子28から、および車両またはユーザとトレーラとの間の距離に関する入力をコントロールボックス16から受信する。バッテリ14は、TCU100への電力供給源として機能する。TCUは、これらの入力に基づいてモータ12を制御し、さらにブレーキの適用も制御する。
【符号の説明】
【0036】
10 トレーラ
12 モータ
14 バッテリ
15 トレーラ連結部
16 コントロールボックス
20 牽引棒
20a 牽引棒の車両側端部
20b 牽引棒のトレーラ側端部
22、24 第1のセンサ素子
22a、24a 近接センサ
22b、24b 対象物
26 第1のレセプタクル
27 第2のレセプタクル
28 第2のセンサ素子
30 自転車連結部
32 自転車
34 トレーラヒッチ
36 安全ピン
38 リーシュ
40 人/ユーザ
100 TCU(トレーラコントロールユニット)
A 軸
L 下降位置
P 旋回経路
P1、P2、P3 位置
R 上昇位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】