IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ HOYA株式会社の特許一覧

特表2023-554225レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡
<>
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図1
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図2
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図3
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図4
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図5
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図6
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図7
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図8
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図9
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図10
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図11
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図12
  • 特表-レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A61B1/12 531
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527043
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022065723
(87)【国際公開番号】W WO2022258765
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021114984.3
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シュロッター,ティルマン
(72)【発明者】
【氏名】コルベルグ,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF39
4C161FF40
4C161FF42
4C161HH04
4C161JJ11
4C161NN01
(57)【要約】
本発明は、レンズ要素(20)を有する遠位ハウジング要素(10)を備え、レンズ要素の表面を洗浄するためのノズル要素(30)を備える内視鏡に関する。レンズ要素(20)は、曲面レンズ要素であり、その湾曲は、ハウジング要素(10)から遠位方向に突出する。ノズル要素(30)は、曲面レンズ要素(20)に隣接して遠位ハウジング要素の遠位側に配置される。ノズル要素(30)は、曲面レンズ要素(20)へと向けられた細長い媒体出口スリットの形態の遠位ノズル開口部(31)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ要素(20)を有する遠位ハウジング要素(10)と、
前記レンズ要素の表面を洗浄するためのノズル要素(30)と
を備えており、
前記レンズ要素(20)は、曲面レンズ要素であり、その湾曲は、遠位方向に前記ハウジング要素(10)から突出し、
前記ノズル要素(30)は、前記曲面レンズ要素(20)に隣接して前記遠位ハウジング要素の遠位側に配置され、
前記ノズル要素(30)は、前記曲面レンズ要素(20)へと向けられた細長い媒体出口スリットの形態の遠位ノズル開口部(31)を有する、内視鏡。
【請求項2】
前記細長い媒体出口スリットは、前記内視鏡の延在の方向を横切る方向に延びている、
請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記曲面レンズ要素(20)は、少なくとも露出したレンズ表面の全体によって形成される流れによって覆われるべき面積(Fu)を有し、
前記遠位ノズル開口部(31)は、ノズル開口部面積(Fd)を有し、
30<Fu/Fd<40である、
請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記遠位ノズル開口部(31)は、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁における前記曲面レンズ要素(20)の幅(bu)よりも小さい幅(bd)を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記遠位ノズル開口部(31)は、前記遠位ノズル開口部(31)から出る流れが前記曲面レンズ要素(20)の近位縁に対してほぼ接線方向を向くように、前記曲面レンズ要素(20)に対して整列している、
請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記遠位ノズル開口部(31)から出る流れが、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁に対して-10°<Ltgu<+20°の角度に向けられ、
Ltguは、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁における前記曲面レンズ要素(20)のレンズ表面に対する接線であり、
正の角度は、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁において前記曲面レンズ要素(20)から遠ざかるように広がり、
負の角度は、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁において前記曲面レンズ要素(20)内へと広がる、
請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記遠位ノズル開口部(31)は、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁の近位に配置されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記遠位ノズル開口部(31)は、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁から距離(L)だけ離して配置され、
前記距離(L)は、前記曲面レンズ要素(20)の近位縁における前記曲面レンズ要素(20)の幅(bu)の半分以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記レンズ要素(20)は、曲面レンズ要素であり、その湾曲は、球面または非球面である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記遠位ノズル開口部(31)は、前記ノズル要素(30)の単一の遠位開口部を形成している、
請求項1~9のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項11】
前記曲面レンズ要素(20)は、露出したレンズ表面の全体によって形成される流れによって覆われるべき面積(Fu)を備え、
前記流れによって覆われるべき面積(Fu)は、前記遠位ハウジング要素(10)における前記内視鏡の断面積(Fe)の4分の1よりも大きい、
請求項1~10のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項12】
細長い媒体出口スリットの形態の前記遠位ノズル開口部(31)は、幅(bd)および高さ(hd)を有し、hd<bdである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項13】
細長い媒体出口スリットの形態の前記遠位ノズル開口部(31)は、幅(bd)および高さ(hd)を有し、hd<1mm<bdである、
請求項1~12のいずれか一項に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡に関する。より具体的には、本発明は、レンズ要素と、レンズ要素の表面を洗浄するためのノズル要素とを有する遠位ハウジング要素を備える内視鏡に関する。
【0002】
内視鏡は、検査または外科的介入の目的で、患者へと挿入される。検査の対象において、あるいは内視鏡を対象へと移動させているときに、内視鏡からの光の放射によって内視鏡の環境を照らすことができる。照らされた環境を、カメラによって眺めることができる。カメラによって取り込まれる光は、内視鏡のハウジング要素に配置されたレンズ要素を介して入射する。レンズ要素を汚染のない状態に保つために、レンズ要素は、使用中も、レンズ要素の表面を洗浄するための洗浄媒体を放出するノズル要素によって洗浄される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、レンズ要素を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡であって、高い要求を満たし、レンズ要素を最適に洗浄することができる改善された内視鏡を提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する内視鏡によって達成される。好都合なさらなる実施例が、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明は、レンズ要素を有する遠位ハウジング要素を備え、レンズ要素の表面を洗浄するためのノズル要素を備える内視鏡に関し、レンズ要素は、曲面レンズ要素であり、その湾曲は、ハウジング要素から遠位方向に突出し、ノズル要素は、曲面レンズ要素に隣接して遠位ハウジング要素の遠位側に配置され、ノズル要素は、曲面レンズ要素へと向けられた細長い媒体出口スリットの形態の遠位ノズル開口部を有する。
【0006】
この内視鏡においては、曲面レンズ要素であっても、細長い媒体出口スリットを通って洗浄媒体を放出するノズル要素によって好都合に洗浄することができる。ノズル要素に細長い媒体出口スリットを使用することにより、放出される洗浄媒体のジェットが、ノズル出口においてすでに広がる。曲面レンズ要素へと向けられる洗浄媒体の横方向に広がった流れが生み出される。このようにして、曲面レンズ要素に衝突するときにすでに横方向に広がっている洗浄ジェットを、曲面レンズ要素へと向けることができる。これにより、レンズ要素を最適に洗浄することができる。
【0007】
細長い媒体出口スリットは、内視鏡の延在の方向を横切る方向に延びてよい。そのような媒体出口スリットは、内視鏡の延在の方向を横切る方向の広がりが大きい横方向に拡大された洗浄ジェットをもたらす。このような横方向に広がった洗浄ジェットが、曲面レンズ要素のうちのノズル要素に面する側に衝突するとき、曲面レンズ要素の広い領域および曲面レンズ要素の横方向周囲を、洗浄ジェットに浸すことができる。これは、レンズ要素をさらに良好に洗浄できることを意味する。
【0008】
曲面レンズ要素は、少なくとも露出したレンズ表面の全体によって形成される流れによって覆われるべき面積Fuを有することができ、遠位ノズル開口部はノズル開口部面積Fdを有し、30<Fu/Fd<40である。露出したレンズ表面とは、曲面レンズ要素が埋め込まれたハウジング要素から突出するレンズ表面をいう。本発明の発明者は、流れによって覆われるべきレンズ要素の領域Fuのノズル要素のノズル開口部面積Fdに対する比が30<Fu/Fd<40であると、少なくとも露出したレンズ表面の全体を浸すためのきわめて好都合な流体の流れがもたらされることを発見した。
【0009】
遠位ノズル開口部は、曲面レンズ要素の近位縁における曲面レンズ要素の幅buよりも小さい幅を有することができる。ノズル要素から放出された流体の流れは、レンズ要素に向かって広がるため、流体の流れの幅が広くなり、少なくとも露出したレンズ表面の全体を覆うことができる。遠位ノズル開口部は、曲面レンズ要素の近位縁における曲面レンズ要素の幅buよりも小さい幅を有することができるため、近位縁における曲面レンズ要素の対応する幅buの全体を占める必要がないより狭いノズル要素を使用することができる。
【0010】
遠位ノズル開口部を、遠位ノズル開口部から出る流れが曲面レンズ要素の近位縁に対してほぼ接線方向を向くように、曲面レンズ要素に対して整列させることができる。これにより、露出したレンズ表面上に好都合なオーバーフローがもたらされる。流体の流れが曲面レンズ要素の露出したレンズ表面の最も遠位の地点(露出したレンズ表面の最高点)を通過する場合、流れは分解せず、遠位ノズル開口部から遠ざかるように露出したレンズ表面を移動し続ける。これにより、露出したレンズ表面のうちのノズル要素から遠い側に位置する部分も、良好に洗浄することができる。
【0011】
遠位ノズル開口部から出る流れを、曲面レンズ要素の近位縁に対して-10°<Ltgu<+20°の角度に向けることができ、Ltguは、曲面レンズ要素の近位縁における曲面レンズ要素のレンズ表面に対する接線であり、正の角度は、曲面レンズ要素の近位縁において曲面レンズ要素から遠ざかるように広がり、負の角度は、曲面レンズ要素の近位縁において曲面レンズ要素内へと広がる。本発明の発明者は、-10°<Ltgu<+20°が、少なくとも露出したレンズ表面全体を浸すためにとくに好都合であることを見出した。
【0012】
遠位ノズル開口部を、曲面レンズ要素の近位縁の近位に配置することができる。このようにして、流体の流れは遠位側に向かって放出される。ノズル要素は、曲面レンズ要素を超えて遠位方向に突出することがない。したがって、内視鏡の挿入がノズル要素の影響を受けることがない。
【0013】
遠位ノズル開口部を、曲面レンズ要素の近位縁から距離Lだけ離して配置することができ、距離Lは、曲面レンズ要素の近位縁における曲面レンズ要素の幅buの半分以下である。この距離Lにおいて、曲面レンズ要素の近位縁に衝突するときに曲面レンズ要素の近位縁の幅に相当する幅(横方向の広がり)を達成している放出された流体ジェットの好都合な広がりが得られる。流体の流れは、曲面レンズ要素の近位縁を通過した後に、少なくとも露出したレンズ表面の全体を浸すようにさらに広がる。
【0014】
レンズ要素は、その湾曲が球面または非球面である曲面レンズ要素であってよい。露出したレンズ表面の形状に関係なく、レンズ要素を好都合に洗い流すことができる。
【0015】
遠位ノズル開口部は、ノズル要素の単一の遠位開口部を形成することができる。ノズル要素に複数の開口部は必要でない。さらに、複数のノズル要素は必要でない。ノズル要素の単一の遠位開口部が単独で、曲面レンズ要素の好都合な洗浄を保証する。
【0016】
曲面レンズ要素は、露出したレンズ表面の全体によって形成される流れによって覆われるべき面積Fuを備えることができ、流れによって覆われるべき面積Fuは、遠位ハウジング要素における内視鏡の断面積Feの4分の1よりも大きくてよい。この大きさであっても、少なくとも曲面レンズ要素の露出したレンズ表面全体を流れによって覆うことができる。少なくとも露出したレンズ表面の全体とは、流体の流れがさらに広く、曲面レンズ要素に当接する曲面レンズ要素に隣接する遠位ハウジング要素の遠位側の縁部分を覆ってもよいことを意味すると理解されるべきである。このようにして、遠位ハウジング要素の遠位側に当接する露出したレンズ表面の縁部も良好に洗浄される。
【0017】
細長い媒体出口スリットの形態の遠位ノズル開口部は、幅bdおよび高さhdを有することができ、hd<bdである。したがって、遠位ノズル開口部は、高さよりも幅が大きく、きわめて小さい高さを有する。このようにして、曲面レンズ要素を好都合に洗浄するために、遠位ハウジング要素の遠位側からの突出がわずかである小さなノズル要素しか必要でない。
【0018】
さらなる例において、細長い媒体出口スリットの形態の遠位ノズル開口部は、幅bdおよび高さhdを有することができ、hd<1mm<bdである。
【0019】
上述した本発明の態様を、適宜組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施例におけるレンズ要素およびノズル要素を備える本発明による遠位ハウジング要素の概略の斜視図を示している。
図2】第1の実施例の遠位ハウジング要素の概略の側面図を示している。
図3】第1の実施例のハウジング要素の遠位側からの概略の平面図を示している。
図4】第2の実施例におけるレンズ要素およびノズル要素を備える本発明による遠位ハウジング要素の概略の斜視図を示している。
図5】第2の実施例のハウジング要素の遠位側からの概略の平面図を示している。
図6】第2の実施例の遠位ハウジング要素の概略の側面図を示している。
図7】第2の実施例のハウジング要素の遠位側からのさらなる概略の平面図を示している。
図8】第3の実施例におけるレンズ要素およびノズル要素を備える遠位ハウジング要素の遠位側からの概略の平面図を示している。
図9】第3の実施例のハウジング要素の遠位側からのさらなる概略の平面図を示している。
図10】第3の実施例におけるレンズ要素およびノズル要素を備える遠位ハウジング要素の概略の側面図を示している。
図11】第3の実施例の遠位ハウジング要素のさらなる概略の側面図を示している。
図12】第3の実施例の遠位ハウジング要素のさらなる概略の斜視図を示している。
図13】第4の実施例における遠位ハウジング要素の概略の側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を、図面を参照して、実施例に基づいて、以下で詳細に説明する。図面の図は、必ずしも縮尺どおりではなく、むしろ、より分かりやすくするために誇張して示される場合がある。
【実施例
【0022】
実施例1
本発明の第1の実施例を、図1図3を参照して以下で説明する。
【0023】
内視鏡が、近位ハンドル本体(図示せず)を有し、挿入管または挿入本体(図示せず)が、ハンドル本体から遠位側へと延びる。遠位ハウジング要素10が、挿入管または挿入本体の遠位端に形成される。
【0024】
挿入管または挿入本体を検査対象の体内へと挿入するとき、内視鏡は、遠位ハウジング要素10を前方にして挿入される。遠位ハウジング要素10は、例えば、筒状に形成される。遠位ハウジング要素10を、円形断面を有する筒または楕円形の筒として形成することができる(図3を参照)。
【0025】
遠位ハウジング要素10は、遠位方向、すなわち近位ハンドル本体から遠ざかる方を向いた遠位側12を有する。好ましくは、遠位ハウジング要素10の遠位側12は、遠位ハウジング要素10の縁部から内側へと向かうにつれて遠位方向に盛り上がる(図1および図2を参照)。
【0026】
遠位ハウジング要素10は、光学系を収容することができる。光学系を、画像取得装置(カメラ対物レンズ)および照明装置から構成することができる。照明装置は、遠位ハウジング要素10の周囲のシーンを照明する。これにより、この環境の画像を、画像取得装置によって取り込むことができる。
【0027】
この例において、画像取得装置は、きわめて広い視野を可能にするために、広角レンズまたは魚眼レンズを有する。
【0028】
したがって、レンズ要素20が、遠位ハウジング要素10において遠位側12に配置される。好ましくは、レンズ要素20は、遠位側12のうちの遠位方向に最も遠く位置する領域に配置される。レンズ要素20は、曲面レンズ要素であり、その湾曲は、ハウジング要素10から遠位方向に突出する。この例において、レンズ要素20は、球面曲率を有する曲面レンズ要素である。したがって、レンズ要素20は、そのような広角レンズまたは魚眼レンズである。
【0029】
この例において、レンズ要素20は、遠位ハウジング要素10の外周縁から離して配置される。換言すると、レンズ要素20は、遠位側12から遠位方向に突出するレンズ要素20の本体が、遠位方向に延びた遠位ハウジング要素10の外周縁から常に離れているようなやり方で、遠位側12に配置される。
【0030】
レンズ要素20のレンズ表面は、内視鏡の使用中に、例えば有機物質によって汚染される可能性がある。レンズ要素20のレンズ表面を洗浄するために、洗浄ノズルが遠位ハウジング要素10に配置される。洗浄ノズルに、洗浄ノズルから放出される洗浄媒体が、媒体管路(図示せず)を介して近位側から供給される。水、空気、または別の適切な適合する洗浄媒体を、洗浄媒体として使用することができる。洗浄媒体の放出を、必要性に応じて制御することができる。
【0031】
洗浄ノズルは、遠位ハウジング要素10の遠位側に配置されたノズル要素30を有する。ノズル要素30は、レンズ要素20に隣接かつレンズ要素20から離して配置される。ノズル要素30は、遠位側12に配置される。
【0032】
ノズル要素30は、レンズ要素20の方を向いたノズル開口部31を有する。ノズル開口部31は、細長い媒体出口スリットとして形成される(図1参照)。細長い媒体出口スリットは、遠位ハウジング要素10の延在方向に対して横方向、かつ内視鏡の延在方向に対して横方向に延在する。換言すると、細長い媒体出口スリットは、遠位ハウジング要素10の中心軸線に対して横方向に延在する。媒体管路は、内視鏡を通って延び、ノズル要素30の遠位側12に開口する。
【0033】
ノズル要素30は、レンズ要素20に面する側において開口する側壁32を有する。側壁32のレンズ要素20に向かって開口する側は、ノズル開口部31を形成する。側壁32は、遠位側12から遠位方向に突出している。換言すると、側壁32は、遠位ハウジング要素10の遠位側12に配置される。
【0034】
遠位側において、側壁32は、ノズルカバー33によって覆われる。レンズ要素20に面するノズルカバー33のへりが、ノズル開口部31の上側(遠位側)境界を形成する。ノズル開口部31の側面は、それぞれ側壁32の一部分によって境界付けられている。ノズル開口部31の下側(近位側)境界は、遠位ハウジング要素10の遠位側12によって形成される。ノズル開口部31の上側(遠位側)境界は、直線状である。ノズル開口部31の下側(近位側)境界は、遠位側に向かって湾曲しており、すなわちノズルカバー33に向かって内側に湾曲している。したがって、ノズル開口部31の下側(近位側)境界は、凹状に湾曲している。ノズル開口部31の下側境界の凹状の湾曲は、遠位ハウジング要素10の縁から中心に向かって遠位方向に盛り上がる遠位側12の形状に起因する。
【0035】
したがって、ノズル開口部31は、スリットの形態のノズル要素30の単一の遠位開口部を形成する。スリットは細長く、遠位ハウジング要素10の軸線を横切る方向に延びる。ノズル開口部31のノズル開口面法線は、レンズ要素20へと向けられている(図3の矢印を参照)。ノズル開口部31のスリットの中心と曲面レンズ要素20の中心とを直線で結ぶと、この直線は、ノズル開口部31のスリットの延長面に対して垂直である。ノズル要素30の出口において、ノズル開口部31は狭い。
【0036】
この例において、遠位ノズル開口部31は、曲面レンズ要素20の近位縁の近位に配置されている(図2を参照)。曲面レンズ要素20の近位縁とは、遠位側12から遠位方向に突出するレンズ要素20の近位部分を指す。したがって、遠位ハウジング要素10を側面から見ると、ノズルカバー33、とりわけノズル開口部31を境界付けるノズルカバー33のへりが、曲面レンズ要素20の近位縁の近位に配置される。
【0037】
第1の実施例におけるサイズ関係
【0038】
本発明をよりよく理解するために、ノズル要素30とレンズ要素20との間の詳細な関係を、以下で説明する。
【0039】
ノズル要素30は、レンズ要素20から離して配置される。とくには、ノズル開口部31が、曲面レンズ要素20の近位縁から距離Lにある。距離Lは、ノズル要素30から放出される流体の流出方向Luに測定され、すなわちノズル開口部31の断面積に垂直に測定される。
【0040】
レンズ要素20は、流れによって覆われるべき領域Fuを有し、領域Fuは、曲面レンズ要素20の近位縁において測定される幅buを有する。
【0041】
本発明の発明者は、ノズル要素30およびレンズ要素20による最適化された構造を見出すべく、シミュレーションを検討および実施した。
【0042】
これらの検討およびシミュレーションの結果は、以下に示す具体的なサイズ仕様およびサイズ関係に反映される。より詳細な結果を第2の実施例に示す。
【0043】
シミュレーションにおいて、曲面レンズ要素20を洗浄するための洗浄媒体(ここでは、水を用いた)を放出する際の効果と、曲面レンズ要素20を乾燥させるために空気を放出する際の効果とを想定した。
【0044】
本発明に従って形成されたハウジング要素10、レンズ要素20、およびノズル要素30の組み合わせは、標準的な圧力、速度、および体積流量であっても、水の放出に関して好都合な結果を示した。
【0045】
レンズ要素20のほぼ半球状の露出したレンズ表面は、レンズ要素20の近位縁から遠位方向に突出している。
【0046】
ノズル開口部31のスリットは、幅bdおよび高さhdを有する(図1を参照)。高さhdは、側壁32と接するノズル開口部31のふちにおいて測定される。ノズル開口部31の開口面積はFdである。ノズル開口部31のスリットにおいて、幅bdは高さhdよりも大きい。
【0047】
ノズル開口部31を出る流れの方向および角度が考慮される場合、ノズル要素30を使用してレンズ要素20のレンズ表面を洗浄するときに、良好な結果が見出される。
【0048】
図2が、洗浄ノズルから放出される流れの方向および角度を側面図において示している。Ltguは、曲面レンズ要素20の近位縁における曲面レンズ要素20のレンズ表面の接線を表す。
【0049】
とくに好都合な洗浄結果を、流れによって覆われるべき表面の縁における接線Ltguに対する流出流Luの方向が以下の角度範囲、すなわち-10°<Au<+20°をカバーする場合に、達成することができる。
【0050】
流出流Luの方向は、ノズル開口部31の断面積に垂直にノズル要素30から放出され、ノズル開口部31の断面積の幾何学的中心を通過する流体の流出方向であると仮定される(図2を参照)。
【0051】
換言すると、遠位ノズル開口部31を出る流れは、曲面レンズ要素20の近位縁へと向けられる。曲面レンズ要素20の近位縁における接線Ltguに対する流出流の方向は、-10°<Ltgu<+20°の角度をカバーし、ここで正の角度は、曲面レンズ要素20の近位縁において曲面レンズ要素20から離れるように広がり、負の角度は、曲面レンズ要素20の近位縁において曲面レンズ要素20内へと広がる。曲面レンズ要素20のレンズ表面へと遠位ノズル開口部を出る流れの曲面レンズ要素の縁における接線に対する角度は、とりわけ、遠位ハウジング要素10の軸線に対するノズルカバー33の傾きによって決定される。換言すると、これは、遠位ハウジング要素10の遠位側12に対するノズルカバー33の傾きである。好都合には、ノズルカバー33は、遠位ハウジング要素10の遠位側12に対して5°傾けられる。とくに好都合には、ノズルカバー33は、遠位ハウジング要素10の遠位側12に対して10°傾けられる。
【0052】
動作の態様
ユーザは、内視鏡の使用中に、曲面レンズ要素20のレンズ表面の汚染に起因してレンズ要素20を介して取り込まれる画像の画質が低下したことを検出した場合に、洗浄処理を開始する。
【0053】
ノズル要素30を有する洗浄ノズルに、近位側から洗浄媒体が供給される。加圧された洗浄媒体が、ノズル要素30の内部に進入する。ノズル要素30の内部は、側面において側壁32によって境界付けられ、遠位側においてノズルカバー33によって境界付けられている。細長く、すなわちスリット状であるノズル開口部31のみが、洗浄媒体の流出を可能にする。したがって、ノズル要素30の内部の洗浄媒体は、レンズ要素20へと向かう方向の反転を被る。ノズル開口部31のスリット状の構造ゆえに、ノズル開口部31の形状に調和した流れ、すなわち寸法hdによって高さが制限された幅広い流れが、ノズル開口部31から放出される。
【0054】
遠位ノズル開口部31は、曲面レンズ要素20の近位縁から距離Lだけ離して配置されている。ノズル開口部31から放出された洗浄媒体の流れは、ノズル開口部31から出た後の領域において、ノズル開口部31から離れるにつれて幅が広くなる。
【0055】
ノズル開口部31から放出された洗浄媒体の流れがノズル要素30に面するレンズ要素20の近位縁に到達すると、洗浄媒体の流れは、少なくともレンズ要素20の近位縁の全体を包含する図3の幅bu1をとる。流れが進むにつれて、流れの幅は拡大し、レンズ要素20の第1の3分の1において、レンズ要素20の近位縁から始まって幅bu2でレンズ要素20の第1の3分の1を覆うより広い範囲に達する。
【0056】
流れがさらに進むにつれて、流れの幅はさらに拡大し、結果として、レンズ要素20の中心に到達するとき、少なくとも流れによって覆われるべき表面の最大幅bを覆う。
【0057】
図3によるオーバーフロー速度ΔVが、各々の幅の線bu1、bu2、bu3、・・・、buiにおいて測定されるオーバーフロー速度の差ΔV=Vumax-Vuminが平均オーバーフロー速度の最大で20%であるように挙動することが明らかになる。したがって、オーバーフロー速度ΔVについて、-20%<ΔV>+20%が当てはまる。
【0058】
したがって、湾曲した形状にもかかわらず、レンズ要素20上を均一に、レンズ表面の全体にわたって流れることによって、レンズ要素20を洗浄することができる。
【0059】
レンズ要素20を、液体の表面張力を使用することによって、利用場所(例えば、病院、診療所、など)において内視鏡に典型的な洗浄媒体(水など)のための圧力および速度で、流れによって覆うことができる。レンズ要素20のレンズ表面のうち、ノズル要素30から遠ざかる方を向いた部分についても、効果的な洗浄が達成された。
【0060】
レンズ要素20のレンズ表面を覆って流体を流すことによって汚染を除去した後に、洗浄媒体の放出を停止させる。
【0061】
次に、同じノズル要素30からレンズ要素20に向かって空気を吹き付け、レンズ要素20のレンズ表面を乾燥させる。
【0062】
ノズル要素30を備える洗浄ノズルに、近位側から空気が供給される。加圧された空気が、ノズル要素30の内部に進入する。ノズル要素30の内部は、最も狭い地点(狭窄部)としての細長い、すなわちスリット状のノズル開口部31を有し、空気を逃がすことができる。ノズル開口部31のスリット状の構造ゆえに、ノズル開口部31の形状に調和した気流、すなわち寸法hdによって高さが制限された幅広い流れが、ノズル開口部31から放出される。
【0063】
ノズル開口部31から放出された気流は、ノズル開口部31から出た後の領域において、ノズル開口部31から離れるにつれて幅が広くなる。
【0064】
ノズル開口部31から放出された気流の先頭がノズル要素30に面するレンズ要素20の近位縁に到達すると、気流は、少なくともレンズ要素20の近位縁の全体を包含する図3の幅bu1をとる。気流が進むにつれて、気流の幅はさらに拡大し、結果として、レンズ要素20の第1の3分の1において、レンズ要素20の近位縁から始まって幅bu2でレンズ要素20の第1の3分の1を覆うより広い領域に達する。
【0065】
気流がさらに進むにつれて、気流の幅はさらに拡大し、結果として、レンズ要素20の中心に到達するとき、少なくとも流れによって覆われるべき表面の最大幅bを覆う。
【0066】
図3によるオーバーフロー速度ΔVが、各々の幅の線bu1、bu2、bu3、・・・、buiにおいて測定されるオーバーフロー速度の差ΔV=Vumax-Vuminが平均オーバーフロー速度の最大で20%であるように挙動することが明らかになる。したがって、オーバーフロー速度ΔVについて、-20%<ΔV>+20%が当てはまる。
【0067】
したがって、湾曲した形状にもかかわらず、空気をレンズ要素20上に均一に、レンズ表面の全体を覆って流すことによって、レンズ要素を乾燥させることができる。
【0068】
気流がレンズ表面から離れるように上昇することなく、レンズ要素20を高速の流れで覆うことができる。
【0069】
レンズ要素20のレンズ表面のうち、ノズル要素30から遠ざかる方を向いた部分についても、効果的な乾燥が達成された。
【0070】
以下の第2の実施例において、この好都合なオーバーフロー効果を、さらに詳細に説明する。
【0071】
実施例2
本発明の第2の実施例を、図4図7を参照して以下で説明する。
【0072】
図4図7は、本発明による構造における好都合な流れの挙動を示している。
【0073】
本実施例は、図4図7の流れの挙動をもたらした特定の構造の具体的な構造例の効果を調べる。
【0074】
この実施例は、遠位ハウジング要素10に作業管路40が設けられているという点で第1の実施例から相違する。
【0075】
管状または管路状の作業管路要素41が、近位側から遠位ハウジング要素10まで延在し、遠位ハウジング要素10の遠位側において開口するように、内視鏡に設けられる。作業管路要素41の内部が、器具を案内することができる作業管路40を形成する。遠位ハウジング要素10の遠位側における作業管路要素41の開口部は、遠位作業管路開口部を形成する。
【0076】
あるいは、作業管路要素41は、遠位作業管路開口部の近位で終わり、遠位ハウジング要素10に形成された作業管路部分へと開口してもよい。
【0077】
作業管路40の遠位作業管路開口部は、遠位ハウジング要素10の遠位側において、第1の実施例の曲面レンズ要素20に隣接する位置に開口する。
【0078】
第1の実施例のノズル要素30は、曲面レンズ要素20の近位に配置されている。
【0079】
ノズル要素30は、遠位ノズル開口部31が、遠位側へと突出する曲面レンズ要素20のレンズ表面の中心へと向くように、遠位ハウジング要素10の遠位側に配置される。遠位ノズル開口部31は、曲面レンズ要素20の近位縁から距離Lだけ離れて位置する。
【0080】
図4図7の流れの挙動をもたらした具体的構造
【0081】
幾何学的仕様
【0082】
L=3mm
bu=6.4mm
hD=0.46mm
bD=2.7mm
【0083】
上述の構造を備えるこの内視鏡は、レンズ要素20を乾燥させるためのノズル要素30からの好都合な流体の放出をもたらした。流体の流れが、図4図7において、流体の流線によって示されている。流体の流線は、ノズル要素30の内側からレンズ要素20の露出したレンズ表面を覆って流れるまでの流体の流れの経路を示す。流体の流線の方向は、流体の流れの方向を示す。図4図7に見られるように、放出されたジェットにおける流速は、ジェットにおいて間隔の広い勾配線の数が少ないことから分かるように、流れによって覆われるレンズ要素20の露出したレンズ表面の領域に、比較的均一に分布している。
【0084】
とくには、流体を、ポンプ(図示せず)によってノズル要素30へと搬送した。流体は、ノズル要素30の内部においてノズルカバー33に衝突した。ノズルカバー33において、流体の方向は、出口に向かって、すなわち遠位ノズル開口部31に向かって変化した。側壁32、ノズルカバー33、およびハウジング要素10の遠位側12の傾斜した遠位面によって封じ込まれ、流体は、遠位ノズル開口部31を通ってノズル要素30から出て、ハウジング要素10の遠位側12の傾斜した遠位面に沿ってレンズ要素20へと移動し、そこで、流体の流れは、図4図5、および図7に示されるように、わずかに横方向に広がった。ノズル要素30に面するレンズ要素30の近位縁に到達すると、流体の流れは、ノズル要素30に面するレンズ要素20の近位縁の全体を覆う横方向の広がりを呈した。次いで、流体の流れは、レンズ要素20の湾曲している露出したレンズ表面を上昇するとともに、横方向にさらに広がり、ノズル要素30に面するレンズ要素20の半分全体を覆って流れた。遠位方向に最も遠く突出するレンズ要素20の露出したレンズ表面の中心を越えて流れた後に、流体は、層流ゆえにレンズ要素20の露出したレンズ表面に付着して流れ続けた(図6を参照)。流体は、少なくともレンズ要素20の露出したレンズ表面を覆い、レンズ要素20の露出したレンズ表面に当接するハウジング要素10の遠位側12の縁部分も部分的に覆って、確実に流れた。
【0085】
図4図7には、流体の流線に加えて、流体の流線を横切る流体の流れの等速度の線が示されている。したがって、ノズル要素30に面するレンズ要素20の近位縁に到達するとき、流体が、レンズ要素20の露出したレンズ表面の中心へと向かう流体の流れの中心よりも流体の流れの縁領域においてより高い速度を有することを、見て取ることができる。
【0086】
図4図7のシミュレーションにおいては、遠位ハウジング要素10が直立し、レンズ要素20が上方を向くように、内視鏡を保持された。さらなる調査において、空間における遠位ハウジング要素10の他のすべての配置においても、同様の結果が見られることが示された。たとえレンズ要素20が下方を向いていても、レンズ要素20を洗浄媒体で洗浄し、空気で乾燥させるための有益な効果が達成できた。
【0087】
ハウジング要素10、レンズ要素20、およびノズル要素30の一般的な構造のシミュレーション、およびシミュレーションからの結論
【0088】
以下のシミュレーションにおいて、第1および第2の実施例においてどのような条件下で最適なオーバーフロー結果が生じるかを見出した。
【0089】
以下のシミュレーションにおいては、供給される空気の接続圧力について、先行の実施例と同じ条件を適用した。これは、内視鏡を、病院/診療所などに存在する一般的な加圧空気の供給源に相当する加圧空気の供給源に接続したことを意味する。流れ断面を持つ典型的なサイズの媒体管路を有する内視鏡を使用した。
【0090】
さまざまな幅bu(および、対応する面積Fu)のレンズ要素20を、さまざまなノズル開口部面積Fd(幅bDおよび高さhD)のノズル要素30と組み合わせ、どの組み合わせが好都合なオーバーフロー結果をもたらすかを見出すためにシミュレーションで試験した。
【0091】
以下のシミュレーションにおける構成において、ハウジング要素10の遠位側12における流れの分解を伴うことなく、レンズ要素20の完全なオーバーフロー/乾燥のきわめて好都合なオーバーフロー結果が得られた。
【0092】
以下の表において、
buは、流れによって覆われたレンズ要素20の幅(単位はmm)であり、
Fuは、流れによって覆われたレンズ要素20の面積(単位はmm)であり、
bDは、ノズルの幅(単位はmm)であり、
hDは、ノズルの高さ(単位はmm)であり、
Lは、ノズル要素30の出口面からレンズ要素20の近位縁までの距離(単位はmm)である。
【0093】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0094】
それぞれのレンズ要素20について、上記に列挙した幅bDおよび高さhDの値よりも大きい幅bDおよび高さhDをそれぞれ有するノズル要素30と組み合わせたときに、不完全なオーバーフローによる悪い結果が得られた。
【0095】
例えば、以下の構成において、レンズ要素20のオーバーフローが不完全であった。
【0096】
【表2】
【0097】
シミュレーションの評価
遠位ハウジング要素10の遠位側12での流れの分解を伴わないレンズ要素20の完全なオーバーフロー/乾燥のための最適な結果を、以下の条件を満たす幾何学的構造を使用する設計で達成することができた。
【0098】
Bu/bD>1→bu>bD(1)
30<Fu/Fd<40(2)
L<0.5*bu(3)
bD/hD>1(4)
【0099】
ここで、ノズル要素30の出口面の断面積Fdを、ほぼbD*hDであると仮定した。
【0100】
本発明に従って形成されたハウジング要素10、レンズ要素20、およびノズル要素30の組み合わせは、通常の圧力、速度、および体積流量での水および空気の放出に関しても好都合な結果を示すことが明らかになった。
【0101】
要約すると、洗浄媒体によるレンズ要素20の少なくとも露出したレンズ表面の全体の充分なオーバーフローおよび空気による乾燥という所望の結果を達成する上で、以下の条件が決定的であると結論付けることができた。
【0102】
bu/bD>1→bu>bD(1)
【0103】
bu<bDおよびbu=bDであると、レンズ要素20の露出したレンズ表面の層流によるオーバーフローがより困難になった。結果は悪化した。
【0104】
30<Fu/FD<40(2)
【0105】
換言すると、流れによって覆われる表面は、ノズルの開口面積よりも少なくとも30倍かつ最大で40倍の大きさでなければならない。
【0106】
この範囲を外れると、レンズ要素20の少なくとも露出したレンズ表面のオーバーフローが悪化した。
【0107】
L<0.5*bu(3)
【0108】
L、すなわちレンズの縁からのノズルの距離は、最大でもレンズの直径buの1/2倍である。
【0109】
距離Lがさらに大きくなると、レンズ要素20の露出したレンズ表面のオーバーフローが悪化した。
【0110】
内視鏡に使用されるレンズについて可能な寸法の範囲:
3mm<bu<14mm→L=1.5…7mm
bD/hD>1(4)
【0111】
すなわち、bD(ノズル開口部の幅)は常にhD(ノズル開口部の高さ)より大きく、
かつ
ノズルの幅は、流れによって覆われる幅よりも小さくなければならない((1)を参照)。
ノズルの断面は、ノズル開口部の高さhがノズル開口部の幅bDよりもわずかに小さい場合、ほぼ正方形になり得る((4)を参照)。
【0112】
bD=hDにおいて、低下したが依然として許容可能なオーバーフロー結果が見られている。
【0113】
hDがbDよりも大きいと、レンズ要素20の露出したレンズ表面のオーバーフローが悪化した。
【0114】
結果が根本的に悪化することなく、上記の値の10%の偏差を許容することができた。
【0115】
さらに、シミュレーションにより、使用されるレンズ要素のオーバーフロー幅が5.0mm<bu<9.0mmであると、きわめて良好な結果が得られることが明らかになった。
【0116】
5.0mm>buの例では、光強度が低すぎる結果となり、bu>9.0mmでは、遠位ハウジング要素10上の構造が大きすぎる結果となった。
【0117】
このように、5.0mm>buのレンズ要素は、適切な視野をもたらすことができず、bu>9.0mmのレンズ要素では、内視鏡の直径に対してレンズの直径が望ましくないものになった。
【0118】
さらに、1.0mm>Lの場合には完全なオーバーフローを確保できず、L>3.0mmの場合には得られる構造が大きすぎることが明らかになった。
【0119】
本発明の構造、効果、および利点をよりよく理解するために、さらなる実施例が以下で説明される。
【0120】
実施例3
第3の実施例では、第1および第2の実施例のノズル要素30に代えて、別のノズル要素130を使用する。その他の構造は、実施例2と同様である。
【0121】
ノズル要素130が、遠位ハウジング要素10の遠位側12に配置される。ノズル要素130は、レンズ要素20に隣接かつレンズ要素20から離して配置される。ノズル要素130は、筒状の断面を有し、遠位ハウジング要素10の遠位側12から管状に延びる。
【0122】
ノズル要素130は、レンズ要素20の方を向いたノズル開口部133を有する。ノズル開口部133は、細長い媒体出口スリットとして形成される(図11を参照)。細長い媒体出口スリットは、遠位ハウジング要素10の延在方向に対して横方向、かつ内視鏡の延在方向に対して横方向に延在する。換言すると、細長い媒体出口スリットは、遠位ハウジング要素10の中心軸線に対して横方向に延在する。
【0123】
遠位側において、管状のノズル要素130は、管状のノズル要素130の遠位側を閉じるノズルカバー132を有する。遠位側において、ノズルカバー132は、遠位方向への内視鏡の挿入を容易にするために、遠位側に向かって湾曲している。ノズルカバー132の近位において、ノズル開口部133が、ノズル要素130の外周に形成されている。
【0124】
ノズル開口部133の横側は、それぞれ管状のノズル要素130の一部分によって形成されている。ノズル開口部133の下側(近位側)境界は、管状のノズル要素130の遠位側12によって形成される。ノズル開口部133の上側(遠位側)境界は、ノズルカバー132の近位側によって形成される。したがって、ノズル要素30の出口において、ノズル開口部133は平坦である。
【0125】
したがって、ノズル開口部133は、スリットの形態のノズル要素130の単一の遠位開口部を形成する。スリットは細長く、遠位ハウジング要素10の軸線を横切る方向に延びる。ノズル開口部133のスリットは、レンズ要素20の中心へと向けられている。ノズル開口部133のスリットの中心と曲面レンズ要素20の中心とを直線で結ぶと、この直線は、ノズル開口部133のスリットの延長面に対して垂直である。
【0126】
この例において、遠位ノズル開口部133は、曲面レンズ要素20の近位縁に対向して配置されている(図11を参照)。
【0127】
ノズル要素130から放出された流体の流れの挙動は、先行の実施例よりもわずかに悪いだけであった。
【0128】
放出されたジェットにおける流速は、ジェットにおける多数の狭い間隔の勾配線から見て取ることができるとおり、流れによって覆われるレンズ要素20の露出したレンズ表面の領域において、先行の実施例と比べて分布の均一性が低かった。
【0129】
したがって、第3の実施例の構造は、内視鏡に適用することが可能であるが、第1および第2の実施例の構造が好ましい。
【0130】
実施例4
図13が、第4の実施例における遠位ハウジング要素の概略の側面図を示している。
【0131】
第1~第3の実施例において、レンズ要素20は、球面曲率を有する曲面レンズ要素である。
【0132】
この実施例においては、レンズ要素20が、非球面の曲率を有する曲面レンズ要素である。レンズ要素20は、遠位側へと向いた露出したレンズ表面の中央において、半径rを有する(図13参照)。遠位側へと向いた露出したレンズ表面の中央は、露出したレンズ表面の近位縁から遠位方向に高さhだけ突出している。
【0133】
露出したレンズ表面の中央よりも近位側において、レンズ要素20の半径は、凹面が形成されるように減少している。レンズ要素20の凹面は、露出したレンズ表面の遠位中央部と露出したレンズ表面の近位縁との間に位置する。
【0134】
この非球面のレンズ要素20も、第1~第3の実施例の本発明によるノズルと好都合に組み合わせることができる。
【0135】
代替例
上述の実施例におけるレンズ要素20のほぼ半球状の露出したレンズ表面は、レンズ要素20の近位縁から遠位方向に、約2mmの高さを有することができる。上述の実施例におけるレンズ要素20は、露出したレンズ表面の表面積が40mm超であり得る。
【0136】
これらの実施例において、レンズ要素20は、遠位ハウジング要素10の外周縁から離して配置される。本発明はこれに限定されない。レンズ要素20を、遠位ハウジング要素10の外周縁に配置することも可能である。したがって、遠位側から見たときに、レンズ要素20を、遠位側12に偏心させて配置することができる。
【0137】
遠位ハウジング要素10を、円形断面の筒または楕円形の筒以外の他の形状に形成することも可能である。内視鏡を挿入するとき、遠位ハウジング要素10が障害物を形成したり干渉を引き起こしたりしないことだけを、考慮に入れるべきである。
【0138】
実施例において、ノズル要素30の側壁を、遠位ノズル開口部31に向かって互いに近づくように設計することができる。これにより、遠位ノズル開口部31における断面積がノズル要素30の最小の断面積を形成する構造を生成することができる。
【0139】
さらにより好都合な代替例において、遠位ノズル開口部31における断面積は、ノズル要素30およびノズル要素30に通じる媒体管路によって形成される流体供給システム全体の最小の断面積である。結果として、ノズル要素30の出口開口部を形成する遠位ノズル開口部31における媒体の流速が、最大になる。
【0140】
ノズル要素30の側壁を、遠位ノズル開口部31に向かって均一に互いに近づくように設計することができる。
【0141】
内視鏡は、剛体または可撓な内視鏡であってよい。
【0142】
実施例のさらなる組み合わせが可能である。
【0143】
本発明を、照明を使用して画像を取り込む任意の内視鏡において好都合に使用することができる。本発明を、任意の種類のノズルを洗浄するために使用することができる。
【符号の説明】
【0144】
10 遠位ハウジング要素
12 ハウジング要素の遠位側
20 レンズ要素
30 ノズル要素
31 遠位ノズル開口部
32 側壁
33 ノズルカバー
40 作業管路
41 作業管路要素
bd 遠位ノズル開口部の幅
bu 曲面レンズ要素の幅
hd 遠位ノズル開口部の高さ
Fd ノズル開口部の面積
Fe 遠位ハウジング要素における内視鏡の断面積
Fu 流れによって覆われるべきレンズ要素の表面
L 曲面レンズ要素の近位縁からの遠位ノズル開口部の距離
Lu 流出流の方向
Ltgu 曲面レンズ要素の近位縁における接線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】