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特表2023-554238モノリシックミラーおよびその設計方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】モノリシックミラーおよびその設計方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20231220BHJP
   H02S 10/30 20140101ALI20231220BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L31/04 620
H02S10/30
G02B5/28
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023530692
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2020082971
(87)【国際公開番号】W WO2022106033
(87)【国際公開日】2022-05-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522082595
【氏名又は名称】シルバット、エナジー、ストレージ、ソリューションズ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】SILBAT ENERGY STORAGE SOLUTIONS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、イグナシオ、ルケ、ロペス
【テーマコード(参考)】
2H148
5F251
【Fターム(参考)】
2H148GA04
2H148GA14
2H148GA33
5F251HA14
5F251HA18
5F251JA25
(57)【要約】
本発明は、複数の一次元フォトニック結晶を含むミラーであって、非常に広い範囲の波長、広い範囲の方向、さらには半球状、および入射光子のすべての偏光において非常に高い反射率を有するミラーに関する。本発明はまた、上記ミラーおよびそのようなミラーを含む光電池を設計するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の最大入射角(θmax)以下の入射角(θ)を有する入射無偏光放射線について、所定の真空波長範囲([λ,λ])における全反射率を有するミラーを設計するための方法であって、
前記ミラーが、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶が、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルが、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料が異なる屈折率を有し、
真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の前記反射率が、前縁波長値
【数1】
と後縁波長値
【数2】
との間の間隔
【数3】
において高さ1の長方形パルスの形状を示し、前記間隔における前記パルスが全反射帯域として識別され、前記前縁波長値および前記後縁波長値が前記入射放射線の前記入射角(θ)および前記偏光に依存し、
前記方法が、i=1,...mについて以下の
(a)θ=0の場合の第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前縁波長値
【数4】
を設定し、前記第iのフォトニック結晶の前記単位セルを形成するために前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)前記第iのフォトニック結晶の前記第1の誘電体材料の前記層の第1の厚さ(hal,i)および前記第iのフォトニック結晶の前記第2の誘電体材料の前記層の第2の厚さ(hbl,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数5】
式中、nal,iおよびnbl,iは、それぞれ、前記第iのフォトニック結晶について選択された前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の前記屈折率である、ステップと、
(c)ステップ(b)で計算された前記第1の厚さ(hal,i)および前記第2の厚さ(hbl,i)の値を用いて、前記第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数6】
を、
【数7】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、所定の最大入射角(θmax)および横磁気(TM)偏光について方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、前記方程式は、初期値がX=1である反復法によって解かれ、
式中、
【数8】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前記前縁波長値
【数9】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=θmaxおよびTM偏光についての第(i-1)のフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数10】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=θmaxおよびTM偏光についての前記第mのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数11】
がλ以上であることを満たす前記フォトニック結晶の数である、方法。
【請求項2】
所定の最大入射角(θmax)以下の入射角(θ)を有する入射無偏光放射線について、所定の真空波長範囲([λ,λ])における最大反射率を有するミラーを設計するための方法であって、
前記ミラーが、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶が、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルが、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料が異なる屈折率を有し、
真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の前記反射率が、前縁波長値
【数12】
と後縁波長値
【数13】
との間の間隔
【数14】
において高さ1の長方形パルスの形状を示し、前記間隔における前記パルスが全反射帯域として識別され、前記前縁波長値および前記後縁波長値が前記入射放射線の前記入射角(θ)および前記偏光に依存し、
前記方法が、i=1,...mについて以下の
(a)θ=θmaxおよびTM偏光についての第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の後縁波長値
【数15】
を設定し、前記第iのフォトニック結晶の前記単位セルを形成するために前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)前記第iのフォトニック結晶の前記第1の誘電体材料の前記層の第1の厚さ(hat,i)および前記第iのフォトニック結晶の前記第2の誘電体材料の前記層の第2の厚さ(hbt,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数16】
式中、nat,iおよびnbt,iは、それぞれ、前記第iのフォトニック結晶について選択された前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の前記屈折率であり、
式中、
【数17】
であるステップと、
(c)ステップ(b)で計算された前記第1の厚さ(hat,i)および前記第2の厚さ(hbt,i)の値を用いて、前記第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数18】
を、
【数19】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、θ=0の場合に方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、前記方程式は、初期値がX=3である反復法によって解かれ、
式中、
【数20】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前記後縁波長値
【数21】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=0についての第(i-1)のフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数22】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=0の場合の前記第mのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数23】
がλ以上であることを満たす前記フォトニック結晶の数である、方法。
【請求項3】
λが可視または近赤外範囲に含まれ、および/またはλが中赤外範囲に含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーを製造する方法であって、以下の
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法に従って前記ミラーを設計するステップと、
積層されたm個の一次元フォトニック結晶を形成するステップと、を含み、
各第iのフォトニック結晶が、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の複数の交互の層を積層することによって形成され、前記第1の誘電体材料が、前記第2の誘電体材料の屈折率(nbl,i,nbt,i)とは異なる屈折率(nal,i,nat,i)を有し、
i=1,...mについて、各第iのフォトニック結晶について、第1の誘電体材料のすべての層の第1の厚さ(hal,i,hat,i)および第2の誘電体材料のすべての層の第2の厚さ(hbl,i,hbt,i)が、請求項1から3のいずれか一項に記載のステップ(b)で決定された値を有する、方法。
【請求項5】
前記フォトニック結晶の前記層が基板上に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板が、反射金属、好ましくは銀または金の層で覆われ、前記フォトニック結晶が前記層上に堆積される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フォトニック結晶の前記層が、保護的な厚い透明層で覆われ、好ましくは[λ,λ]の範囲で透明である、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記フォトニック結晶が、λからλまでのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序でミラー内に配置される、または
(b)前記フォトニック結晶が、λからλまでのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序とは異なる順序でミラー内に配置される、
請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトニック結晶が、前記フォトニック結晶の前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の透明度によって規定される順序で前記ミラー内に配置され、別のフォトニック結晶の全反射帯域に含まれる波長範囲の放射線に対して透明ではない材料で作製されたフォトニック結晶が、入射放射線を意図した方向における前記別のフォトニック結晶の下流に配置される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各フォトニック結晶内の単位セルの数が、5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上である、請求項4から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーであって、
各フォトニック結晶が、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の複数の積層された交互の層を含み、i=1,...mについて、前記第1の誘電体材料が、前記第2の誘電体材料の屈折率(nbl,i,nbt,i)とは異なる屈折率(nal,i,nat,i)を有し、
i=1,...mについて、各第iのフォトニック結晶について、第1の誘電体材料のすべての層の第1の厚さ(hal,i,hat,i)および第2の誘電体材料のすべての層の第2の厚さ(hbl,i,hbt,i)が、請求項1から4のいずれか一項に記載のステップ(b)で決定された値を有する、ミラー。
【請求項12】
透明基板上に堆積され、金属層でコーティングされた請求項11に記載のミラーを備え、光電池または熱光電池である、光電池。
【請求項13】
請求項11に記載のミラーと、半導体基板と、を備える光電池であって、前記ミラーが前記半導体基板の裏面上に堆積され、金属層でコーティングされ、前記光電池が光電池または熱光電池である、光電池。
【請求項14】
請求項11に記載の少なくとも1つのミラーを含む、白熱体のための断熱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の一次元フォトニック結晶を含むミラーであって、非常に広い範囲の波長、広い範囲の方向、さらには半球状、および入射光子のすべての偏光において非常に高い反射率を有するミラーに関する。本発明はまた、上記ミラーおよびそのようなミラーを含む光電池を設計および製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、可変屈折率の1つまたはいくつかの材料によって形成された単位セルが空間内で周期的かつ無期限に繰り返される構造である。フォトニック結晶は、光子が存在し得ない禁制帯またはエネルギーバンドギャップを含み得る。フォトニック結晶に入射する、上記バンドギャップ内のエネルギーを有する光子は、フォトニック結晶に入ることができず、したがって全反射され、すなわち、上記エネルギーでのフォトニック結晶の反射率は1に等しい。フォトニック結晶への導入は、Joannopoulos, J.D., Meade, R.D.:“Photonic Crystals:Molding the Flow of Light”, Princeton University Press, (2005)に見出すことができる。
【0003】
一次元(1D)フォトニック結晶では、屈折率の変動はzと呼ばれる一次元でのみ生じ、単位セルは通常、高(H)および低(L)と呼ばれる異なる屈折率の2層の誘電体によって形成される。1D-フォトニック結晶もバンドギャップを有するが、それらのエネルギー位置は、z軸に対する光子の入射角(θ)およびそれらの偏光によって変動する。実際には、フォトニック結晶は有限数の単位セルを有し、これは、バンドギャップ内の反射率をいくらか低減するが、通常、反射率の値は1に非常に近いままである。対照的に、屈折率が空間の3つの軸上で変動する周期構造を形成する三次元(3D)フォトニック結晶では、バンドギャップは、存在する場合、入射角に依存しない。しかしながら、適切なバンドギャップを生成することができる既存の空間構造はほとんどなく、大規模な商業化にはほとんど適していない。
【0004】
1Dフォトニック結晶では、z軸および結晶に入射する光子の方向を含む、すなわちそれを表す電磁平面波の波数ベクトルkに従って、基準平面が形成される。この平面は、yz平面と呼ばれ得る。任意の平面波は、電場ベクトルが平面yzに垂直な横電気(TEまたはs偏光)平面波と、磁場が平面yzに垂直な横磁気(TMまたはp偏光)平面波との線形結合である。既に述べたように、バンドギャップ位置は、入射角(θ)およびTEまたはTM偏光によって変化する。
【0005】
これらのバンドギャップのエネルギーの範囲は、真空中の光子波長(λ)の範囲によって表すことができ、波長とエネルギーとの間の関係は、周知の式
【数1】
によって与えられ、hはプランク定数であり、cは真空中の光の速度であり、eは電子の電荷(すべて国際単位系)であり、Eは電子ボルト単位のエネルギーである。本明細書では、バンドギャップのエネルギースパンは、真空中の波長(λ)で表される。したがって、真空中の光子波長(λ)の関数としてのフォトニック結晶の反射率(R)は、バンドギャップスパンに等しい高さ1および幅の長方形によって厳密に表される。この長方形の高さは1であるが、角にはいくらかの丸みが現れ、この丸みは、フォトニック結晶内の単位セルの数が減少するにつれてより顕著になる。長方形の底辺は全反射帯域と呼ばれる。長方形の縁部は、前縁および後縁(後縁は、より高い波長の右側の縁部である)と呼ばれる。この長方形の外側では、縁部を越えて、波状の反射率の領域が現れ、反射率はどこでも1よりも低い。
【0006】
垂直入射(θ=0)下では、z軸および光子の方向が一致し、z軸を含む任意の平面がTEまたはTM平面と見なされ得るので、TE偏光およびTM偏光について差は見られない。非ゼロ角度(θ)で傾斜した入射の場合、全反射帯域は青シフト、すなわち、より低い波長に向かってシフトし、その幅はTE偏光では増加し、TM偏光では減少する。後縁もTE偏光およびTM偏光について青シフトするが、最もシフトするのはTM偏光である。これらの変更は、より大きな角度に対してより強く、水平(θ=π/2rad)入射に対して最も強い。
【0007】
1Dフォトニック結晶の全反射帯域のシフトにもかかわらず、垂直入射、TE水平入射、およびTM水平入射について得られる帯域に共通の全反射を伴う波長範囲が存在する。それは半球状(または全方向性)全反射の帯域であり、本明細書では「半球状全反射帯域」と呼ばれる。一般に、半球状全反射帯域は比較的狭いため、この半球状全反射帯域の前縁は、垂直入射(θ=0rad)下の全反射帯域の前縁であり、この半球状全反射帯域の後縁は、水平TM偏光(θ=π/2rad)下の全反射帯域の後縁である。しかしながら、フォトニック結晶(現在は疑似結晶になっている)の周期構造のわずかな変形によって、半球状全反射帯域は、いくらか拡大することができる(Abdelaziz, K.B., Zaghdoudi, J., Kanzari, M., Rezig, B.:“A broad omnidirectional reflection band obtained from deformed Fibonacci quasi-periodic one dimensional Photonic Crystals”.Journal of Optics a-Pure and Applied Optics 7(10), 544-549 (2005). doi:10.1088/1464-4258/7/10/005)。
【0008】
透過率(T)は、吸収がない場合(これは本発明の場合である)、1から反射率を引いたものであり(T=1-R)、したがって、全反射およびその外側の波状の領域では0であり、これは、一部の光子が透過するがすべてではないことを意味する。
【0009】
1Dフォトニック結晶は層状構造である。層状構造は、特性行列の方法によって古くから研究されており、古典的な本は、BornおよびWolfの本である(Born, M., Wolf, E.:“Principles of Optics”.Pergamon Press, Oxford (1975))。この方法によれば、各フォトニック結晶は、引数αならびに次数N-1およびN-2の、2つの第二種チェビシェフ多項式UN-1(α)およびUN-2(α)が現れる特性行列を有し、Nは、フォトニック結晶内の単位セルの数である。引数αTE|TM(λ、θ、n、n、h、h)は、入射光子の真空波長(λ)、入射角(θ)、単位セル材料の高屈折率および低屈折率(n、n)、ならびに単位セルの層の厚さ(h、h)に依存する関数である。引数(α)は、入射光子の偏光TEまたはTMにも依存する。垂直入射(θ=0)において、引数(α)は、以前に指摘したように、物理的に区別できないTEおよびTMについては同じであり、引数(α)の下付き文字(TE|TM)は省略されてもよい。フォトニック結晶を形成する単位セルの数は、チェビシェフの引数には現れないことに留意されたい。
【0010】
マルチフォトニック結晶が学術文献で時折提案されている。いくつかのフォトニック結晶の使用により、全反射帯域の幅を広げることができる。Carniglia C K.:“Perfect mirrors - from a coating designer’s point of view”.Laser-Induced Damage in Optical Materials:68-84 1999, Proc.of SPIE Vol.3902 (2000)は、この概念を表し、いくつかの単位セル構造を提示している。本開示によれば、「波長パス」(LWP)フィルタ単位セルを有する4つのフォトニック結晶のスタックは、約0.382μm~0.721μmの計算された全反射帯域をもたらし、その効率は計算されないが、単位セルは少なくとも0.95の反射率を目標とし、これは、スタックによって確実に超えられる。単位セルは、各フォトニック結晶の真空波長の設計された「中心」値における波の4分の1(上述の論文では4分の1波とも呼ばれる)に等しい低(L)層の厚さを有するように設計される。しかしながら、このような構成は、狭い全反射帯域をもたらす。
【0011】
Qiang, H., Jiang, L., Li, X.:“Design of broad omnidirectional total reflectors based on one-dimensional dielectric and magnetic Photonic Crystals”.Optics and Laser Technology 42(1), 105-109 (2010).doi:10.1016/j.optlastec.2009.05.006)では、半球状全反射帯域のスパンを拡大する目的のために、マルチフォトニック結晶の使用の別の例が提供されている。しかしながら、この拡大を達成するための手順は、完全に理論的であり、規定されていない性質の磁性材料の層の堆積(したがって、1つずつ異なる透磁率を有する)に基づいており、その誘電率および透磁率の組み合わせ値は、おそらく達成することが不可能である。
【0012】
米国特許出願公開第2012125429号明細書は、異なる層と、その裏面に貼り付けられた3Dフォトニック結晶と、を有する太陽電池を開示しており、その目的は、未使用の光を反射してセル本体に戻すことで、その効率を高めることである。既に述べたように、3Dフォトニック結晶は、本質的に半球状(または全方向性)である全反射帯域を提示することができる。全反射帯域の幅は、可視から近赤外まで延び、太陽電池効率を高めるのに十分であるが、中赤外での高い反射率を必要とする熱光起電力などの他の用途に必要なスパンと比較して桁違いに狭い。
【0013】
米国特許出願公開第2013104983号明細書は、光の最適化された管理を適用することによって任意の太陽電池の効率を改善するための手順を記載している。この管理では、単一のフォトニック結晶の使用を含む様々な方法が使用される。
【0014】
中国特許出願公開第104076530号明細書は、最適と考えられる特定の波長で強く発光するように発光材料でドープされた層のスタックによって太陽電池の効率を改善する手順を記載している。さらに、これらの層は単一のフォトニック結晶を形成してもよい。
【0015】
米国特許出願公開第2011203663号明細書は、光をセル内に捕捉してその効率を高めることを意図した様々な光学構造を有する太陽電池を開示している。これは、反射防止コーティングと、太陽電池の前面にある3Dフォトニック結晶と、裏面にある金属回折格子と、格子上にあってその中に組み込まれた1Dフォトニック結晶と、を含む。
【0016】
上述の最後の3つの文献すべてにおいて、それらが関心の焦点を当てている波長スパンは、可視および近IR(2μm未満)を指し、一方、本発明は、可視から中赤外(20μm超)までを含み得るスパンの全反射率を有する半球状ミラーを提供する。さらに、上述の最後の3つの文献は、単一のフォトニック結晶のみを含み、本発明によるマルチフォトニック結晶ミラーで達成されるスパンを得ることは全くできない。この広いスパンは、とりわけ溶融金属中のエネルギー貯蔵を含む多くの用途に必要である。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、最も広いスパンの半球状全反射帯域を有するミラーを設計および/または製造するための方法を提供する。特許請求の範囲に記載されている方法は、これまでに提案された他の方法よりも効果的で実用的である。
【0018】
本発明は、請求項1および2に記載のミラーを設計するための方法、請求項4に記載のミラー、請求項11に記載のミラー、請求項12に記載の光電池および請求項14に記載の断熱を製造するための方法を規定する。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を規定する。
【0019】
第1の発明の態様では、本発明は、所定の最大入射角(θmax)以下の入射角を有する入射放射線について所定の真空波長範囲([λ,λ])において最大反射率を有するミラーを設計するための方法を規定する。ミラーは、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶は、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルは、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料は異なる屈折率を有する。真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の反射率は、前縁波長値
【数2】
と後縁波長値
【数3】
との間の間隔
【数4】
において長方形パルスの形状を示し、前記間隔内の前記パルスは、フォトニック結晶の全反射帯域として識別される。前縁波長値および後縁波長値は、入射放射線の入射角(θ)および偏光に依存し、偏光は横電気(TE)または横磁気(TM)である。
【0020】
したがって、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層は、フォトニック結晶の単位セルを形成する。前記単位セルがN回繰り返され、誘電体材料の2N層、すなわち第1の誘電体材料のN層および第2の誘電体材料のN層のフォトニック結晶が形成される。単位セル数における下付き文字iは、ミラーを構成するフォトニック結晶が異なる数の単位セルを有し得るという事実を反映している。
【0021】
2つの単位セルが互いに貼り合わせられている場合、同じ誘電体材料の層の一致はない。対照的に、フォトニック結晶における層の配置では、隣接する単位セルの結合においてさえ、常に第1および第2の誘電体材料が交互になっており、層の配置は常に、2つの異なる材料の層の相関的分布である。
【0022】
本発明の文脈において、横磁気偏光(TM)は、光子の電磁波の磁場が入射光子の方向とフォトニック結晶の層の法線とによって形成される平面に垂直である偏光である。
【0023】
「第1の誘電体材料」および「第2の誘電体材料」という表記は、フォトニック結晶の単位セル内の2つの材料を区別するためのみであることを理解されたい。しかしながら、この表記は、フォトニック結晶の単位セル内の2つの誘電体材料の特定の順序を意味することを意図するものではない。したがって、誘電体材料の層が基板上に堆積されるとき、第1の誘電体材料または第2の誘電体材料のいずれかが最初に基板上に堆積され得る。誘電体材料は、本明細書では高屈折率材料および低屈折率材料とも呼ばれ、高屈折率材料は、フォトニック結晶の単位セル内の他の誘電体材料と比較してより高い屈折率を有する誘電体材料である。各屈折率は材料によって与えられ、したがって、屈折率の値は、第1の発明の態様の方法によって実施される多層ミラーの設計のためのフォトニック結晶単位セル層材料の以前の選択に対応する所定のパラメータである。さらに、ミラー内の複数のフォトニック結晶のうちの異なるフォトニック結晶に、異なる材料の対が使用されてもよく、それらを区別するために下付き文字iが使用される。
【0024】
第1の実施形態では、第1の発明の態様による方法は、i=1,...mについて以下の
(a)θ=0の場合の第iのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数5】
を設定し、上記第iのフォトニック結晶の単位セルを形成するために第1の誘電体材料および第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)第iのフォトニック結晶の第1の誘電体材料の層の第1の厚さ(hal,i)および第iのフォトニック結晶の第2の誘電体材料の層の第2の厚さ(hbl,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数6】
式中、nal,iおよびnbl,iは、それぞれ、第iのフォトニック結晶について選択された第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の屈折率であるステップと、
(c)ステップ(b)で計算された第1の厚さ(hal,i)および第2の厚さ(hbl,i)の値を用いて、第iのフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数7】
を、
【数8】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、所定の最大入射角(θmax)および横磁気(TM)偏光について方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、上記方程式は、初期値がX=1である反復法によって解かれ、
式中、
【数9】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前縁波長値
【数10】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=θmaxおよびTM偏光についての第(i-1)のフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数11】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=θmaxおよびTM偏光についての上記第mのフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数12】
がλ以上であることを満たすフォトニック結晶の数である。
【0025】
第2の実施形態では、第1の発明の態様による方法は、i=1,...mについて以下の
(a)θ=θmaxおよびTM偏光についての第iのフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数13】
を設定し、上記第iのフォトニック結晶の単位セルを形成するために第1の誘電体材料および第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)第iのフォトニック結晶の第1の誘電体材料の層の第1の厚さ(hat,i)および第iのフォトニック結晶の第2の誘電体材料の層の第2の厚さ(hbt,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数14】
式中、nat,iおよびnbt,iは、それぞれ、第iのフォトニック結晶について選択された第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の屈折率であり、
式中、
【数15】
であるステップと、
(c)ステップ(b)で計算された第1の厚さ(hat,i)および第2の厚さ(hbt,i)の値を用いて、第iのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数16】
を、
【数17】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、θ=0の場合に方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、上記方程式は、初期値がX=3である反復法によって解かれ、
式中、
【数18】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、後縁波長値
【数19】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=0についての第(i-1)のフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数20】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=0の場合の上記第mのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数21】
がλ以下であることを満たすフォトニック結晶の数である。
【0026】
したがって、第1の発明の態様の第1の実施形態による方法は、フォトニック結晶の前縁波長値を設定し、層厚さを計算して後縁波長値を得ることによってλからλまでのフォトニック結晶を設計するステップを含み、第1の発明の態様の第2の実施形態による方法は、フォトニック結晶の後縁波長値を設定し、層厚さを計算して前縁波長値を得ることによってλからλまでのフォトニック結晶を設計するステップを含む。
【0027】
本文書を通して、以下の表記が使用される:
αTMは、フォトニック結晶の特性行列の第二種チェビシェフ多項式の引数を示し、本明細書では「チェビシェフ引数」と呼ばれる;
【数22】
は、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値を示す;
【数23】
は、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値を示す;
al,jおよびhbl,jはそれぞれ、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の単位セルの第1および第2の材料の層の厚さを示す;
al,jおよびnbl,jはそれぞれ、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の単位セルの第1および第2の材料の屈折率を示す;
【数24】
は、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値を示す;
【数25】
は、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値を示す;
at,jおよびhbt,jはそれぞれ、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の単位セルの第1および第2の材料の層の厚さを示す;
at,jおよびnbt,jはそれぞれ、λで開始する一連の計算の、第jのフォトニック結晶の単位セルの第1および第2の材料の屈折率を示す。
【0028】
第1の実施形態によれば、垂直入射についての第1のフォトニック結晶の全反射帯域の前縁
【数26】
は、所定の真空波長範囲([λ,λ])の下限(λ)における真空波長に等しい値として設定される。所定の真空波長範囲は、ミラーの特定の用途または意図された使用のために全反射が必要とされる帯域として理解される。同様に、所定の最大入射角(θmax)は、ミラーの特定の用途または意図された使用のために全反射が必要とされる入射光子の最高角度として理解される。θmax=π/2の場合、ミラーは、λからλまでのすべての帯域において半球状または全方向の全反射を提示する。
【0029】
第1のフォトニック結晶の第1の誘電体材料の層の第1の厚さ(hal,1)および第2の誘電体材料の層の第2の厚さ(hbl,1)は、以下の式を適用することによって決定され:
【数27】
式中、nal,1およびnbl,1は、第1のフォトニック結晶の単位セルを形成するように選択された第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の屈折率である。
【0030】
第1の誘電体材料の層の第1の厚さ(hal,1)および第2の誘電体材料の層の第2の厚さ(hbl,1)が計算されると、第1のフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数28】
が、以下の式を適用することによって決定され:
【数29】
式中、パラメータXは、所定の最大入射角(θmax)および横磁気(TM)偏光について方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、上記方程式は、初期値がX=1である反復法によって解かれ、式中、
【数30】
である。
【0031】
TE偏光入射放射線の場合、TM偏光の代わりにTE偏光を方程式で使用すると、より広いフォトニック全反射帯域が得られるが、これは、TM光子、したがって等量のTE光子およびTM光子を含む無偏光放射線には無効である。
【0032】
記載されたステップの結果として、第1のフォトニック結晶の層の厚さおよび全反射帯域の後縁波長値が決定される。
【0033】
計算された第1のフォトニック結晶の後縁波長値は、後続のフォトニック結晶を設計するために使用される。このために、第2のフォトニック結晶の単位セルを形成するための第1および第2の誘電体材料が選択され、垂直入射についての第2のフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数31】
が、θ=θmaxおよびTM偏光についての第1のフォトニック結晶の全反射帯域の計算された後縁波長値
【数32】
に等しい値として設定される。上述の前縁波長値(または別の実施形態では後縁波長値)の設定の結果として、第1および第2のフォトニック結晶は、より広い全反射帯域を形成するように適合する。
【0034】
設定された前縁波長値
【数33】
を用いて、第1の誘電体材料の層の第1の厚さ(hal,2)および第2の誘電体材料の層の第2の厚さ(hbl,2)は、第2のフォトニック結晶に対応するパラメータを使用して、第1のフォトニック結晶について説明したように決定される。
【0035】
以前のステップで計算された第1の厚さ(hal,2)および第2の厚さ(hbl,2)の値を用いて、第2のフォトニック結晶に対応するパラメータを使用して、第1のフォトニック結晶に関連して説明したように、第2のフォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数34】
が決定される。
【0036】
これらのステップの結果として、第2のフォトニック結晶の単位セルの層の厚さおよび全反射帯域の後縁波長値が決定される。
【0037】
ミラーの一部となるすべてのフォトニック結晶を設計するために、第mのフォトニック結晶について、θ=θmaxおよびTM偏光についての全反射帯域の後縁波長値
【数35】
がλ以上であることが満たされるまで、この手順が繰り返される。上記反復において、複数のフォトニック結晶の全反射帯域は、所定の真空波長範囲、すなわち全反射が所望される範囲([λ,λ])の全幅に延びる。
【0038】
第2の実施形態による方法では、θ=θmaxおよびTM偏光についての各フォトニック結晶の全反射帯域の後縁波長値
【数36】
が前縁波長値の代わりに設定されるという違いを有して、開示されたプロセスと同様の反復プロセスが実行され、前縁波長値
【数37】
は、計算された第1の厚さ(hat,i)および第2の厚さ(hbt,i)に基づいて得られ、第1の厚さ(hat,i)および第2の厚さ(hbt,i)の値は、以下の式を使用して得られ:
【数38】
第iのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数39】
は、
【数40】
として計算され、
式中、パラメータXは、θ=0、すなわち垂直入射について、式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、上記方程式は、初期値がX=3である反復法によって解かれ、
【数41】
である。
【0039】
第2の実施形態によれば、ミラーの一部となるすべてのフォトニック結晶を設計するために、第mのフォトニック結晶について、θ=0についての上記第mのフォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数42】
がλ以下であることが満たされるまで、手順が繰り返される。
【0040】
フォトニック結晶の単位セルの数は、チェビシェフ引数には含まれない。実際の全反射は、理論的には無限数の層で得られるが、マルチフォトニック結晶ミラーでは、7個の単位セルが約0.9999の反射率の全反射を与えることができ、10個の単位セルでは反射率は0.999999に達することさえできる。
【0041】
フォトニック結晶の単位セル内の材料は、フォトニック結晶ごとに異なっていてもよい。例えば、フォトニック結晶「i」の第1の誘電体材料は、フォトニック結晶「j」の第1の材料と同じであっても異なっていてもよい。また、単位セルの数は、フォトニック結晶ごとに異なっていてもよい。
【0042】
有利には、本発明は、可視から中赤外(20μm超)まで延びることができる、非常に広い範囲の電磁放射線に対して実質的に1に等しい反射率を示す複数の誘電体層の堆積に基づいてミラーを設計および製造することを可能にし、さらに、設計されたミラーは、放射線および両方の偏光の半球状入射に対してこの1の反射率を示す。そのために、誘電体層は、同じ基板上にモノリシックに堆積され、本発明の方法によって設計されるいくつかのフォトニック結晶においてグループ化される。本発明の方法は、半球状全反射の最も広い帯域を生成することを可能にする。また、これまでに提案された他の方法よりも効果的かつ実用的である。
【0043】
今日、基板上に堆積された単一のフォトニック結晶を有するミラーは、光学および通信に頻繁に使用されている。これらのミラーは、単一の波長ならびに単一の方向および偏光において、すなわち、単一の放射線モードまたは束の接近モードにおいて非常に高い反射率を有することが要求される。
【0044】
背景技術のセクションでは、フォトニック結晶の特性行列に、異なる次数および同じ引数αのいくつかの第二種チェビシェフ多項式が含まれることが説明されている。本明細書では、第二種チェビシェフ多項式の引数がα=±1の間隔の外側であるときに全反射帯域が生成されることが開示されている。より具体的には、チェビシェフ引数αは、一般性をもって、λ→∞(光子エネルギー0eV)に対して漸近線+1を有する。λが減少するとき、チェビシェフ引数は、値α=-1に達して、間隔を出るまで減少し、全反射帯域の後縁に達する。λがさらに減少すると、チェビシェフ引数は最小に達し、次いでλの特定の値で再び値α=-1に達して、α=±1の間隔に再び入り、全反射帯域の前縁を生じる。これにより、全反射帯域およびその前縁および後縁の位置を計算することが可能になる。λがさらに減少する場合、チェビシェフ引数は、α=±1間隔の外側に部分的に波状の曲線を記述し、さらなる全反射帯域(フォトニックバンドギャップ)が生成されるが、これらは本発明にとって関心のあるものではない。
【0045】
任意のフォトニック結晶の全反射帯域の前縁および後縁の位置は、θ、n、n、h、hおよび偏光が既知である場合、方程式αTE|TM(λ,θ,n,n,h,h)+1=0を解くことによって計算することができる。本発明は、フォトニック結晶の全反射帯域の前縁または代替的に後縁を選択することによって、所定の値θ、na、について、フォトニック結晶の単位セルの第1の厚さ(h)および第2の厚さ(h)を解析的に決定することができるように、チェビシェフ引数を記述することを可能にする変数の変化に基づく。
【0046】
また、方程式α+1=0を、決定されたフォトニック結晶単位セルの第1の厚さ(h)および第2の厚さ(h)を使用して波長で解くとき、最大根は全反射帯域の後縁波長値であり、2番目に大きい根は前縁波長値である。
【0047】
これまで述べてきたことは、任意の入射角および偏光に対して有効であり、全反射帯域は異なる位置および幅を有する。単一のフォトニック結晶を考慮すると、このフォトニック結晶の帯域の異なる位置および幅のうち、最も低い波長に位置する前縁(λ)は垂直入射に対応する。最も高い波長に位置する後縁(λ)は、TM偏光および選択された角度スパン(好ましくは水平入射、すなわちθmax=π/2rad)の最高角度(θmax)に対応する。任意の入射についての全反射帯域は、λからλまで延びる。θmax=π/2radの場合、この全反射帯域は、半球状または全方向性全反射帯域と呼ばれ得る。外部から(空気から)来る放射線の場合、λ<λが常に満たされ、半球状全反射帯域が存在する。
【0048】
いくつかのフォトニック結晶が同じ基板上に堆積されるとき(それらはモノリシックである)、反射率曲線は、分離されたフォトニック結晶の反射率曲線と比較して変更されるが、全反射帯域は、本明細書で説明されるように、それらのチェビシェフ引数によって決定されるように位置する。実際、反射率の変更は、チェビシェフ引数がα=±1間隔内であるλの領域に影響を及ぼし、全反射帯域には影響しない。これにより、各フォトニック結晶の単位セルを形成する層の材料を適切に選択し、その厚さを計算することによって、異なる全反射帯域を所望の位置に配置することが可能になる。
【0049】
非常に広い半球状全反射帯域が、単一の基板上にいくつかのフォトニック結晶をモノリシックに堆積することによって形成され得る。
【0050】
平面波によって表される光子が誘電体層のスタック内を進行するとき、層j、kなどにおけるその角度はスネルの法則に従うため、sinθ=nsinθ=nsinθ...である(nは層の屈折率であり、θはそれらの内部の角度である)。層内の波長はλ=λ/ncosθであり、h/λ(hは層の厚さである)は内部波長の分数である。層内の波長は真空内の波長とは異なることに留意されたい。hcosθ=hcosθの関係を満たすように比h/hを選択することによって、特定のフォトニック結晶の全反射帯域のスパンが最大化される(高屈折率層および低屈折率層について下付き文字aおよびb、またはその逆)。言い換えれば、最大スパンは、高屈折率層および低屈折率層の厚さがそれらの内部波長の同じ分数であるときに生じる。この関係は、高屈折率および低屈折率の層の厚さ間の関係を課す。この条件は単一の入射角の場合のみ満たされ得るため、半球状全反射率の所与のスパンを得るためのモノリシックアレイ内のフォトニック結晶の最小数は、TM偏光水平光線について上記条件が満たされたときに生じる(これは、水平入射についての個々のフォトニック結晶の小さなTMスパンを可能な限り最大にする)。
【0051】
一実施形態では、第iのフォトニック結晶の単位セルを形成するように選択された第1および第2の誘電体材料は、
【数43】
を含む波長範囲の放射線に対して透明である。第1の発明の態様の方法によれば、各フォトニック結晶の全反射帯域の前縁波長値
【数44】
または後縁波長値
【数45】
が設定されるため、第1および第2の誘電体材料は、設定された波長値を含む範囲の波長を有する放射線に対して透明であるように、フォトニック結晶のために選択することができる。
【0052】
一実施形態では、θmax=π/2である。
【0053】
一実施形態では、λは可視範囲(400~700nm)または近赤外範囲(700~2500nm)に含まれる。
【0054】
一実施形態では、λは、赤外範囲、好ましくは中赤外線範囲(2.5~50μm)に含まれる。
【0055】
好ましい実施形態では、λは可視または近赤外範囲に含まれ、および/またはλは中赤外範囲に含まれる。
【0056】
一実施形態では、フォトニック結晶の少なくとも1つの第1の誘電体材料および/または第2の誘電体材料は、MgF、CaF、ZnS、TiO、SiおよびGeから選択される。好ましくは、フォトニック結晶の少なくとも1つの第1および第2の誘電体材料の一方は、MgF、CaFから選択され、上記フォトニック結晶の第1および第2の誘電体材料の他方は、ZnS、TiO、SiおよびGeから選択される。
【0057】
第2の本発明の態様では、本発明は、m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーを製造する方法であって、以下のステップを含み:
第1の発明の態様の実施形態のいずれかの方法に従ってミラーを設計するステップと、
積層されたm個の一次元フォトニック結晶を形成するステップ、
各第iのフォトニック結晶が、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の複数の交互の層を積層することによって形成され、第1の誘電体材料が、第2の誘電体材料の屈折率(nbl,i,nbt,i)とは異なる屈折率(nal,i,nat,i)を有し、
i=1,...mについて、各第iのフォトニック結晶について、第1の誘電体材料のすべての層の第1の厚さ(hal,i,hat,i)および第2の誘電体材料のすべての層の第2の厚さ(hbl,i,hbt,i)が、第1の発明の態様の実施形態のいずれかの方法のステップ(b)で決定された値を有する、方法を規定する。
【0058】
このような複数の積層されたフォトニック結晶を含むミラーは、本明細書では、マルチフォトニック結晶のモノリシックミラーと呼ばれる。
【0059】
一実施形態では、フォトニック結晶の層は、不透明または透明のいずれかの基板上に堆積される。不透明基板の場合、高い反射率を有する可能性がある。フォトニック結晶のうちの1つの層が最初に基板上に堆積され、後続のフォトニック結晶が以前に堆積されたフォトニック結晶上に堆積される。
【0060】
一実施形態では、ミラーの最外層は、透明層または反射金属(基板が透明である場合)、好ましくは銀または金で覆われる。ミラーの最外層は、基板から最も遠くに位置する層として理解されるものとする。有利には、最外層を反射金属で覆うことにより、所定の真空波長範囲([λ,λ])外(すなわち、ミラーの全反射帯域の外側)の入射放射線の波長の反射率は大幅に増加するが、所定の真空波長範囲内の入射放射線の波長について、反射率は変動しないままである。これは、特定の用途において実用的な関心を有する可能性がある。あるいは、マルチフォトニック結晶のモノリシックミラーは、同じ効果を有する反射金属コーティング(好ましくは銀または金)で覆われ、最外層に配置された保護的な厚い透明層で覆われているかまたは覆われていない基板上に堆積されてもよい。ミラーが反射金属コーティングを含む場合、使用時に、ミラーは、入射放射線に向けられる層が反射金属コーティングから最も遠い層であるように配置されることが好ましい。
【0061】
ミラーが所定の真空波長範囲で最大反射率を有するために、所望の範囲に延びる全反射帯域を有する複数の一次元フォトニック結晶が積層されてミラーが形成される。
【0062】
一実施形態では、フォトニック結晶は、所定の真空波長範囲の下限(λ)から所定の真空波長範囲の上限(λ)までのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序でミラー内に配置される。本実施形態によれば、上限(λ)に近い全反射帯域を有するフォトニック結晶は、ミラーを使用する状況の入射放射線方向において、下限(λ)に近い全反射帯域を有するフォトニック結晶の下流に配置される。言い換えれば、放射線は、最初に下限(λ)に近い全反射帯域を有するフォトニック結晶に到達し、続いて上限(λ)に近い全反射帯域を有するフォトニック結晶に到達する。これは、フォトニック結晶がλからλに設計される実施形態、すなわち、前縁波長値を設定する実施形態、およびフォトニック結晶がλからλに設計される実施形態、すなわち、後縁波長値を設定する実施形態の両方に当てはまる。
【0063】
別の実施形態では、フォトニック結晶は、所定の真空波長範囲の下限(λ)から所定の真空波長範囲の上限(λ)までのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序とは異なる順序でミラー内に配置される。この実施形態では、条件
【数46】
は、依然として満たされている。しかしながら、フォトニック結晶がミラーを形成するために堆積されるとき、それらは異なる順序で堆積される。
【0064】
一実施形態では、フォトニック結晶は、フォトニック結晶の第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の透明度によって規定される順序でミラー内に配置され、別のフォトニック結晶の全反射帯域に含まれる波長範囲の放射線に対して透明ではない材料で作製されたフォトニック結晶が、入射放射線を意図した方向の、上記別のフォトニック結晶の下流に配置される。言い換えれば、フォトニック結晶は、最初に入射放射線を受光するように意図されたフォトニック結晶の材料が、その後に入射放射線を受光するように配置されたフォトニック結晶の全反射帯域に含まれる波長範囲の放射線に対して透明であるように、配置される。
【0065】
一実施形態では、各フォトニック結晶内の単位セルの数は、5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上である。
【0066】
第3の発明の態様では、本発明は、m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーであって、
各フォトニック結晶が、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の複数の積層された交互の層を含み、i=1,...mについて、第1の誘電体材料が、第2の誘電体材料の屈折率(nbl,i,nbt,i)とは異なる屈折率(nal,i,nat,i)を有し、
i=1,...mについて、各第iのフォトニック結晶について、第1の誘電体材料のすべての層の第1の厚さ(hal,i,hat,i)および第2の誘電体材料のすべての層の第2の厚さ(hbl,i,hbt,i)が、第1の発明の態様の実施形態のいずれかの方法のステップ(b)で決定された値を有する、ミラーを規定する。
【0067】
本発明の第3の発明の態様によるそのようなミラーは、第1の発明の態様の方法によって得ることができるミラーに対応する。上記ミラーは、取り付けられたミラーの一部を実施するとき、電子顕微鏡法および写真法が、各フォトニック結晶の第1および第2の誘電体材料の交互の層をそれらの厚さおよび化学組成と共に区別することを可能にすることを考えると、認識可能である。
【0068】
上記値は、製造されたミラーの全反射エリアおよび全反射がないエリアと共に、第1の発明の態様による方法の性能に対応するミラーの構成を区別することを可能にし、したがって、そのような完成したミラーは、そのパラメータによって、上述の方法によって設計されたミラーとして特徴付けることができる。
【0069】
一実施形態では、第3の発明の態様によるミラーは、第2の発明の態様による方法を使用して製造される。
【0070】
本発明は、透明基板上に堆積され、金属層でコーティングされた第3の発明の態様によるミラーを備える光電池であって、光電池が光電池または熱光電池である、光電池をさらに規定する。
【0071】
本発明は、第3の発明の態様によるミラーと、半導体基板とを備える光電池であって、ミラーが、半導体基板の裏面上に配置され、金属層でコーティングされ、光電池が光電池または熱光電池である、光電池をさらに規定する。半導体基板は、半導体電子バンドギャップ未満のエネルギーの光子のための透明基板として挙動する。
【0072】
本発明はまた、白熱体のための断熱をさらに規定し、断熱は、第3の発明の態様による少なくとも1つのミラーを備える。有利には、断熱は、受け取った光子を効果的に反射する。一実施形態では、断熱は、少なくとも1つの光電池、少なくとも1つの熱光電池、少なくとも1つの放射電力収集装置および/または少なくとも1つの冷却装置を含む。
【0073】
本明細書(特許請求の範囲、明細書、および図面を含む)に記載されたすべての特徴および/または記載された方法のすべてのステップは、相互に排他的であるような特徴および/またはステップの組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0074】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、図面を参照して、単に例として与えられ、それに限定されない、本発明の好ましい実施形態から明らかになる本発明の詳細な説明を考慮して明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】本発明の一実施形態による、マルチフォトニック結晶で作製されたモノリシックミラーの概略図を示す。
図2】入射光子の垂直入射(実線)、π/4rad入射およびTE偏光(破線)、ならびにπ/4rad入射およびTM偏光(点線)について、フォトニック結晶の反射率を真空波長(メートル単位)の関数として示す。さらに、チェビシェフ引数の絶対値は、垂直入射(実線)、π/4rad入射およびTE偏光(破線)、ならびにπ/4rad入射およびTM偏光(点線)について示されている。
図3】Z=3(実線の太線)、Z=2(破線の太線)、Z=0.35(実線の細線)、およびZ=0.55(破線の細線)についての、Y=0のときのα対Xを示す。
図4】Y=0(実線)、Y=0.5X(破線)、およびX=-0.45Y(点線)についての、Z=3のときのα対Xを示す。
図5】2つのフォトニック結晶および異なる入射角についての入射光子の真空波長(メートル単位)の関数として、反射率曲線(プロット上部)およびチェビシェフの引数(主にプロット下部)を示す。
図6図5の第1のフォトニック結晶のα対Xを示す。Y=0の垂直入射については実線;Y≠0の場合は破線。半球状全反射帯域の前縁および後縁のX値がプロットにマークされている。
図7】異なる入射角についての真空波長(メートル単位)の関数としてのマルチフォトニック結晶で作製されたモノリシックミラーの反射率曲線を示す。
図8】真空波長がメートル単位であるのに対して、1410℃での黒体の1メートルあたりのW/cmでのスペクトルパワーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、本発明の一実施形態による、いくつかの一次元フォトニック結晶(1、2、3)を含むモノリシックミラーの概略図を示し、すべてのフォトニック結晶は単一の基板(図示せず)上に堆積されている。この図では、第1のフォトニック結晶(1)、第2のフォトニック結晶(2)、および第3のフォトニック結晶(3)が示されているが、図の中央の空白は、より多くのフォトニック結晶がミラー内に存在し得ることを意味している。各フォトニック結晶は、複数の単位セル(U1、U2、U3)を含み、各単位セル(U1、U2、U3)は、高屈折率および低屈折率の2つの誘電体層(1.1、1.2;2.1、2.2;3.1、3.2)を含み、異なる厚さで複数回繰り返されている。図1では、単位セルの一部のみが識別されている。ミラーに含まれるフォトニック結晶は、異なる特性を有することができ、すなわち、各フォトニック結晶の単位セルを形成する誘電体は、各フォトニック結晶において異なり、したがって異なる屈折率を有することができ、異なる厚さを有することができ、層の厚さは、本発明の方法に従って規定される。このように形成されたミラーは、非常に広い範囲の波長、広い範囲の方向(さらには半球状)、および入射光子の異なる偏光において非常に高い反射率を有する。
【0077】
図2は、一次元フォトニック結晶の真空波長(λ、メートル単位)の関数としての反射率(R)を示している。反射率(R)は、入射光子の垂直入射(実線)、π/4rad入射およびTE偏光(破線)、ならびにπ/4rad入射およびTM偏光(点線)についてプロットされている。図に見られるように、フォトニック結晶の全反射帯域は、垂直入射の光子については点7と点8との間、π/4入射のTE光子については点9と点10との間、およびπ/4入射のTM光子については点11と点12との間に延びている。図2では、異なる入射角および偏光について全反射帯域がどのようにシフトされるかを理解することができる。
【0078】
フォトニック結晶の禁制帯またはバンドギャップは、フォトニック結晶の特性行列の第二種チェビシェフ多項式の引数αが-1<α<+1の範囲を出るときに生じる。チェビシェフ引数の絶対値は、図2のフォトニック結晶について、垂直入射(実線、図に「17」として示す)、π/4rad入射およびTE偏光(破線、図に「18」として示す)、ならびにπ/4rad入射およびTM偏光(点線、図に「19」として示す)について表される。
【0079】
チェビシェフ引数の絶対値が値1を超えるとき、全反射帯域が現れることが分かる。全反射帯域の縁部は、垂直入射については点7から点8まで延びるセグメントの端部の横座標であり、π/4rad入射およびTE偏光については点9から点10まで延びるセグメントの横座標であり、π/4rad入射およびTM偏光については点11から点12まで延びるセグメントの横座標である。本発明によれば、全反射帯域の縁部に対応する波長は、チェビシェフ引数の解析を用いて計算され、これは、完全に解析的であり得る。これは、反射率曲線を計算するよりもはるかに速く簡単である。
【0080】
所与の1Dフォトニック結晶について、全反射帯域は、光子入射角およびその偏光によって位置および幅が変動することが、図2から明らかである。点7から点12まで延びる帯域では、π/4radまでの任意の入射角および任意の偏光について全反射が生成されることも観察することができる。同じ結果が、π/2radの最大入射角(水平入射)について生じるが、そのような場合、半球状全反射の帯域はより狭くなる。上記のセグメントによって表される全反射帯域の外側では、反射率曲線は、本明細書で既に述べたように、波状の挙動を示す。
【0081】
図2に示すフォトニック結晶は、2.3の屈折率および98ナノメートル(nm)の厚さを有する硫化亜鉛の誘電体層と1.35の屈折率および261nmの厚さを有するフッ化マグネシウムの誘電体層との対から形成された、30個の単位セルを含む。すべての層は、屈折率1.52のガラス基板上に堆積される。基板のこの材料は、禁制帯(バンドギャップ)に影響を及ぼさないが、それらの外側で生成される反射に影響を及ぼす。全反射帯域の角にわずかな丸みが生成される。これは、フォトニック結晶内の層の有限数(この場合は60)に起因する。この丸みは、層の数が低減された場合、増大する。
【0082】
本方法は、チェビシェフ引数の研究に基づく。放射線の所与の入射角(θ)に対して、反射率は、|αTE|TM|<1のとき、波状で1未満であり、|αTE|TM|>1のとき、1(全反射率)である。所与の入射角に対して、全反射帯域の縁部は、|αTE|TM|=1のときに起こる。半球状放射線に対応する、θmax=π/2を含む最大入射角(θmax)の場合、前縁は垂直放射線に対応し、後縁はTM偏光θmax入射(半球状放射線に対して水平)に対応する。
【0083】
本発明は、所望の波長スパンがカバーされるまで、所定の角度スパン(場合によっては半球)にわたって個々の全反射帯域を追加する複数のフォトニック結晶の使用を提案する。
【0084】
本発明は、フォトニック結晶の全反射帯域の前縁または代替的に後縁を選択することによって、フォトニック結晶の単位セルの第1の厚さ(h)および第2の厚さ(h)を解析的に決定することができるように、チェビシェフ引数を記述することを可能にする変数の変化に基づく。計算された厚さに基づいて、各1D-フォトニック結晶に固有の全反射帯域の他方の縁部が得られる。
【0085】
有利には、本方法は、計算された効率が最大0.999999であり、広いスパンの全反射率帯域を有する、例えば1.77~20μmの極めて高い効率のミラーを提供する。
【0086】
対照的に、(背景技術のセクションで引用したCarnigliaの参考文献のような)単色ミラーに使用される多層フィルタに基づく構成は、数十マイクロメートルを含む、したがって可視から中赤外までの波長を含む全反射帯域を可能にせず、フォトニック結晶の前縁および後縁も提供しない。
【0087】
本明細書では、半球状または全方向性反射率を参照しているが、本発明は、全反射率が最大入射角θmax<π/2内で保証される場合にも適用することができる。
【0088】
この目的のために、チェビシェフの引数αTE|TM(λ、θ、n、n、h、h)の式は、引用されたBornおよびWolfの書籍の式からの何らかの数学的取り扱いの後に、以下のように書くことができ、
【数47】
スネルの法則に従って、θ=arcsin(θ)/n、θ=arcsin(θ)/nであり、θは空気中の軸zに対する入射角であり、θ、θは厚さh、hの層の内側の光子(または平面波波数ベクトル)の角度である。
【0089】
以下の変数の変更を行うことにより、
【数48】
αTE|TMは、以下のように書くことができる:
【数49】
【0090】
変数のこの変更は、チェビシェフ引数特性に関する大きな洞察を提供する。αTE|TM(X,Y,ZTE|TM)関数は、異なる放射線入射角に対して変動することに留意されたい。図3および図4には、αTE|TM(X,Y,ZTE|TM)対Xの2つのプロットが提示されている。
【0091】
図3のプロットは、Y=0の場合に対応する。これが起こるとき、αTE|TM(X,Y,ZTE|TM)は周期4で変数X上で周期的である。図3では、Z=3の場合が太い連続線でプロットされ、Z=0.35(おおよそ3の逆数)の場合が細い連続線でプロットされている。これは、Zの値およびその逆数が同じ曲線を与えることを強調するためである。Z=2およびZ=0.55(おおよそ1/2)の場合が、太い点線および細い点線でプロットされている。全反射帯域は、αが-1グレーラインを下回るときに発生する。Z>1の場合、Zがより大きいとき、より広い。Z<1の場合、全反射帯域は、1/Zがより大きいとき、より広い。Y=0の場合、高屈折率層および低屈折率層における同等の波長の分数が達成される。
【0092】
図4では、Z=3および3つの値のYの場合が示されている。Y=0(太い実線)は、図3の曲線のうちの1つを繰り返す。この場合は、最も大きい全反射帯域スパンを有する場合である。図に示す他の場合では、すなわちY=0.5(破線)およびY=-0.45(点線)の場合、曲線はおおよそ同じである。これは、Yの反対の値が同じαを与えることを強調するためである。Y≠0の場合、αはもはや周期的ではない。ここでは、高屈折率層および低屈折率層における波長の分数は異なる。
【0093】
本明細書におけるグラフィックスの多くは、λの関数として表される。XおよびYはλに反比例するが、それらの比Y/X=rTE|TMはそれとは無関係であり、Zも同様である。この比は、以下である
【数50】
【0094】
さらに、λ→∞に対して生じる、X=Y=0に最も近い第1のフォトニックバンドギャップが最も興味深いものである。この帯域(図3に見られるように)は、αTE|TM=-1のときに生成され、したがって、第1のフォトニックバンドギャップを包含する2つの第1の根(それぞれ第1の全反射帯域の後縁および前縁に対応する)が関心のあるものである。
【0095】
本解析から抽出され得る特性のうち、第1のフォトニックバンドギャップは、Y=0のとき、すなわち高屈折率材料および低屈折率材料の内部の波長の分数が同じであるときに最も大きいことが分かる。単色光学で非常に多く使用されている、従来の波形等化器の使用は、この条件を満たす。また、比n/nまたはn/nがより大きくなるとき、バンドギャップはより大きくなることが分かる。
【0096】
Y=0の場合、方程式(3)はcos(πX/2)に支配される周期関数(Xにおける周期4を有する)になり、αTE/TM+1=0の解は解析的である。これによれば、特定の後縁波長
【数51】
が選択された場合、以下の式が得られ:
【数52】
方程式が両方の偏光について有効であることを意味するためにZの下付き文字は削除されている。特定の前縁が選択された場合、方程式は以下の通りである:
【数53】
【0097】
arccos関数は、無限の解{γ,2π-γ,2π+γ,4π-γ,4π+γ...}を有する。解γは全反射帯域の後縁に対応し、解2π-γは全反射帯域の前縁に対応する。
【0098】
後縁波長または前縁波長のいずれかを設定することによって、単位セルの層の厚さが決定されると、フォトニック結晶は、結晶を形成する単位セルの数Nのデフォルトで完全かつ一意に規定され、上記のようにチェビシェフ引数には含まれない。単位セルが多いほど、フォトニック結晶の全反射帯域はより正方形になる。
【0099】
本方法によれば、本方法の開始時に設定された帯域縁部とは反対の未知の帯域縁部が得られる。上記目的のために、方程式(1)が使用され、α+1=0のλ根が数値反復分解によって得られる。いくつかの根があるため、反復を開始するために設定された初期λが、見つけられた根を決定する。
【0100】
この場合、正規化された方程式(3)を使用して、初期値1から開始して後縁を取得し、初期値3から開始して前縁を見つける数値反復分解によって、Xにおいてα(X,rX,Z)+1=0を解く。不要であるため、下付き文字は削除されている。これらの初期値は、図3の精査から見つけられる。Xが抽出されると、方程式(2)の使用により、以下を書くことが可能になる。
【数54】
【0101】
θおよびθ(rTMにも存在する)に関して、それらは、前縁については0とすることができ、それらの値は、真空(または空気)入射角θmaxから開始するスネルの法則の関係から導き出すことができ、半球状照明については、π/2である:θ=ArcSin(θ)/n、θ=ArcSin(θ)/n
【0102】
屈折率/nおよびnに関して、それらの値は、使用される材料によって規定され、より少ない程度まで、材料の調製によって規定される。一実施形態では、単位セルの層に使用される材料は、光に対して透明な絶縁体である。低屈折率層には、それぞれ屈折率1.37397および1.4328、ならびに電子バンドギャップ12.2および10eVを有するMgFまたはCaFが好ましい。高屈折率層には、それぞれ屈折率2.3677、2.614および2.609、ならびに電子バンドギャップ2.54、2.42および3.05eVを有するZnS、CdSおよびTiOが好ましい。しかしながら、ポリマーおよび有機材料を含む他の材料が使用されてもよい。
【0103】
一実施形態では、フォトニック結晶をミラー内に配置するとき、光子が干渉を受けなければならない深さに達する前の光子の吸収を回避するために、小さな電子バンドギャップを有する材料の層は、放射線の経路内に配置されない。例えば、CdSに対応する真空波長は、λ=hc/2.42e=5.12×10-7mであり、これは、この材料を512nm未満では透明にせず、したがって青色およびUV放射線に対して不透明にする。中程度のIR放射線の場合、半導体の使用が好ましい。SiおよびGeは可視範囲の放射線に対して透明ではないため、屈折率3.42および4.04を有するSiおよびGeは、λ(Si)=hc/1.12e=1.107×10-6mおよびλ(Ge)=hc/0.67e=1.85051×10-6mを超える高屈折率層として理想的である。
【0104】
したがって、これらの半導体を含むフォトニック結晶は、入射放射線が半導体に到達したときに高エネルギー光子が上記フォトニック結晶によって既に反射されているように、より高い電子バンドギャップ誘電体を有するフォトニック結晶の下流のミラー内に配置されることが好ましい。
【0105】
フォトニック結晶の層を製造するために、多くの可能な技術がある。スパッタリング技術は、価格および信頼性に関して興味深いが、MBE(分子線エピタキシ)またはMOVPE(有機金属気相エピタキシ)のような他の技術は、高屈折率層を探索するために非常に興味深いものであり得る。
【0106】
図5は、2つのフォトニック結晶の入射光子の真空波長(メートル単位)の関数として、反射率曲線(グラフの上部)およびチェビシェフ引数(主にグラフの下部)を示す。両方のフォトニック結晶について、2つの場合、すなわち垂直入射(θ=0)下、ならびに水平入射(θ=π/2rad)およびTM偏光下の場合が表され、実線は、垂直入射(θ=0)下の第1のフォトニック結晶の反射率(R)およびチェビシェフ引数(α)を表し、点線は、水平入射(チェビシェフ引数についてはθ=π/2rad、反射率についてはθ=0.99×π/2rad)およびTM偏光下の第1のフォトニック結晶の反射率(R)およびチェビシェフ引数(α)を表す。破線は、垂直入射(θ=0)下の第2のフォトニック結晶の反射率(R)およびチェビシェフ引数(α)を表す。一点破線は、水平入射(チェビシェフ引数についてはθ=π/2rad、反射率についてはθ=0.99×π/2rad)およびTM偏光下の第2のフォトニック結晶の反射率(R)およびチェビシェフ引数(α)を表す。反射率については、略水平(θ=0.99×π/2rad)の入射が使用されている。反射率において「略」水平の光線を使用する理由は、実際にはフォトニック結晶に入らない光線によって形成される誤った全反射帯域の存在を回避するためである。これは、水平入射(θ=π/2rad)が使用されているチェビシェフ引数では必要ではない。
【0107】
第1のフォトニック結晶の場合、その前縁を画定する、垂直入射についての第1のフォトニック結晶のチェビシェフ引数を、α=-1に位置するフレーム縁部に分割する点24(実線)と、その後縁を画定する、水平入射およびTM偏光についての第1のフォトニック結晶のチェビシェフ引数が上記フレームに出現する点25(点線)との間に、半球状全反射帯域が形成され、これは、図2の議論で説明したように、第1のフォトニック結晶の半球状全反射帯域(点24から点25まで延びる)である。第2のフォトニック結晶の場合、その前縁を画定する、垂直入射についての第2のフォトニック結晶のチェビシェフ引数を分割する点26(破線)と、その後縁を画定する、水平入射およびTM偏光についての第2のフォトニック結晶のチェビシェフ引数が出現する点27(一点破線)との間に、半球状全反射帯域が形成され、これは、第2のフォトニック結晶の半球状全反射帯域(点26から点27まで延びる)である。
【0108】
第1のフォトニック結晶の後縁波長値(25)と第2のフォトニック結晶の前縁波長値(26)とが一致するという事実は、2つのフォトニック結晶が同じ基板上に堆積された場合に2つのフォトニック結晶を適合させ、点24から点27まで延びるより広い半球状全反射帯域を形成する。2つのフォトニック結晶を含むミラーの反射率は、図には描かれておらず、分離されたフォトニック結晶について提示されたものよりも正方形に近い。
【0109】
垂直入射についての第1のフォトニック結晶の前縁(24)が分かると、単位セルの2つの層の厚さは、垂直入射に特化した方程式(6)を使用して計算される(X横座標の図6では「前側」ともラベル付けされている)。次いで、水平放射線およびTM偏光の後縁波長が計算され、第1のフォトニック結晶の半球状全反射帯域の後縁が得られる。既に説明したように、これは、水平入射およびTM偏光について、X=1から開始して、方程式α(X,rX,Z)+1=0をXで解くことによって得られる。Xが得られると、後縁波長(25)は、再び水平入射およびTM偏光について、方程式(7)を用いて計算される(図6では後側とラベル付けされている)。図6は、垂直入射(実線)ならびに水平入射およびTM偏光(図6の破線)についての関数α(X,rX,Z)Xのプロットを示す。図示のように、破線の曲線はわずかに非周期的であり、これはこの曲線についてY≠0であることを意味する。図では、前側帯域縁部および後側帯域縁部のXの値は、太いドットでマークされている。
【0110】
第2のフォトニック結晶の場合、上記で得られた第1のフォトニック結晶の後縁が前縁(26)になるため、2つの全反射帯域の完全な適合がもたらされる。第1のフォトニック結晶について説明した計算方法が、第2のフォトニック結晶について繰り返される。3つ以上のフォトニック結晶を含むミラーの場合、このプロセスは、最後のフォトニック結晶の後縁が、半球状全反射帯域が延びることが望ましい最高真空波長(λ)以上になるまで、すなわち、最後のフォトニック結晶の水平(θmax=π/2rad)入射およびTM偏光のチェビシェフ引数の出現点で、2つのフォトニック結晶ごとに繰り返される。ミラーの半球状全反射帯域の初期波長に関しては、第1のフォトニック結晶の半球状全反射帯域の前縁(λ)、すなわち、第1のフォトニック結晶の垂直入射についてのチェビシェフ引数の分割点に位置する。
【0111】
図5の例では、最初に堆積されたフォトニック結晶の高屈折率および低屈折率は、3.43(シリコン)および1.37(フッ化マグネシウム)であり、層厚さは、それぞれ166nmおよび413nmである。2番目に堆積されたフォトニック結晶について、屈折率は、4.04(ゲルマニウム)および1.37(フッ化マグネシウム)であり、層厚さは、それぞれ186nmおよび557nmである。2つのフォトニック結晶は、前面保護(空気)なしで、屈折率1.52の2つの別々のガラス基板に堆積される。第1のおよび第2のフォトニック結晶のモノリシック組み合わせを含むミラーの全反射帯域の前縁(24)は、1.77μmであり、0.7eVの電子バンドギャップの光電池に対応し、得られたミラーの全反射帯域の後縁(27)は、3.32μmである。好都合に適合された3つ以上のフォトニック結晶を含むミラーの場合、後縁ははるかに高くなる。
【0112】
図5では、異なる入射角および偏光における全反射帯域は、点24から点27まで延びる半球状全反射の全反射帯域をはるかに超えて延びることが理解され得る。これは、多くの光子がそれらを反射することができる2つ以上のフォトニック結晶を見つけるという意味で冗長性があることを意味する。TE偏光を伴う水平光子でも同じことが起こり、その反射率は描かれていないが、より広い全反射帯域を形成し、一般に、すべての光子で同じことが起こる。これは、単位セルがほとんどない非常に薄いフォトニック結晶を使用しても良好な結果が得られたことを説明する。図5の結果は、フォトニック結晶あたり10個の単位セルに対応するが、7個のみの単位セルがしばしば良好な結果をもたらし、この数は、低減され得る。
【0113】
図7は、メートル単位の真空波長の関数として、マルチフォトニック結晶で作製されたモノリシックミラーの反射率(R)曲線を示す。モノリシックミラーは、1.77~20μmの範囲の、半球状に受けた放射線を反射するように意図されている。この実施形態では、ミラーは、8つのフォトニック結晶のモノリシックスタックで形成され、各フォトニック結晶は、10個の単位セルを有し、すべて、0.7eVの電子バンドギャップ(ゲルマニウムのものに近い)の光電池の裏面にモノリシックに堆積され、厚い銀層で覆われている。合計で、スタックは、160層の異なる誘電体を有する。
【0114】
この図では、実線は、垂直入射下の反射率であり、破線および点線は、それぞれθ=0.99×π/2radならびにTEおよびTM偏光下の反射率曲線である。1410℃(冶金シリコンの融点)で黒体によって放出され、図8にその放出スペクトルが示され、無偏光であり(TM光子と同数のTE光子)、すべての半球状入射角でエネルギースペクトルによって平均化された、1.77~20μmの範囲の放射線スペクトル下の平均反射率は、0.999999である。したがって、この例では、18.24μmの幅を有する半球状全反射帯域が、平均された所与のエネルギー効率で達成される。Qiang, H., Jiang, L., Li, X.:“Design of broad omnidirectional total reflectors based on one-dimensional dielectric and magnetic Photonic Crystals”, Optics and Laser Technology 42(1), 105-109 (2010), doi:10.1016/j.optlastec.2009.05.006の理論的磁性材料および遺伝的アルゴリズムを用いて得られた最良の結果が6.80μmの半球状全反射帯域をもたらし、これは、図7の例で達成された18.24μmとは対照的であり、効率のデータは与えられていないことに注意すべきである。
【0115】
この実施形態では、フォトニック結晶の高屈折率材料は、(特定のフォトニック結晶に応じて)硫化亜鉛、シリコンまたはゲルマニウムであり、低反射率材料はフッ化マグネシウムであり、それらの厚さは各フォトニック結晶で異なる。図5の実施形態に関連して説明した層は、このミラーの一部である。既に述べたように、略水平の入射(θ=0.99×π/2rad)の使用は、ミラーに入らない光子の見かけの全反射を回避するためである。
【0116】
本発明はまた、白熱体のための断熱を規定し、断熱は、本発明による少なくとも1つのミラーを備える。好ましくは、断熱は、本発明による複数のミラーを備える。白熱体は、とりわけ、炉またはエネルギー貯蔵のためのシステムの一部であってもよい。
【0117】
上記の実施形態では、低波長から高波長までの反復によって、本発明の方法に従って、非常に高品質のミラーが設計されている。本発明では、高波長から開始し、次いでより短い波長に向かって反復する同様の構造を設計することが同様に可能である。後縁波長が分かった場合、方程式(5)を使用して、水平入射について単位セルの層の厚さが容易に得られ、連続する前縁は、X=3で開始して、α(X,rX,Z)+1=0のXにおける解を用いて計算され、それを方程式(7)を用いて波長に変換する。
【0118】
本発明の可能な用途は、1410℃での溶融シリコンのエネルギーを貯蔵するための炉のライニングである。シリコンは、抵抗器、マイクロ波、または他の手段によって加熱された容器内に保持される。このエネルギーは、熱光起電力によって電力として最終的に抽出される。
【0119】
本発明の一実施形態では、白熱容器の断熱は、複数のマルチフォトニック結晶のモノリシックミラーを含む包装材である。これらのミラーは、白熱容器によって放出された光子を非常に高い効率で反射する。すべての半球方向の無偏光放射線について0.6μm~35μm(この範囲外ではパワーは無視できる)の1410℃での黒体の場合の平均反射率は、0.9998であり、非常に良好な断熱材を構成する。実際、容器を加熱する抵抗器への接続、および容器を適所に保持するために必要ないくつかのピボットは、熱を漏らすが、それらは、電気入力および機械的安定性を保証するために厳密に必要な程度まで低減されるべきである。
【0120】
好ましい実施形態では、上述のような白熱体の断熱のためのミラーは、銀または金の厚い層で覆われた金属上にモノリシックに堆積された、それぞれ7個の単位セルを含む15個のフォトニック結晶を含む。いくつかの材料が高屈折率層に使用され、すなわち、硫化亜鉛(2.614)、シリコン(3.42)およびゲルマニウム(4.04)である。低屈折率層には、あらゆるフォトニック結晶においてフッ化マグネシウム(1.374)が使用される。ミラーは、合計210個の層を含む。ミラーは、高-低屈折率厚さの比に関する方程式n=n(方程式6、垂直入射)を使用して、本発明の方法で設計されている。上記の手順を使用して、0.6~20μmの帯域幅内の1410℃での黒体の放射線スペクトルパワー密度によって重み付けし、この重み付けされた平均を入射放射線のすべての半球状衝突角度および偏光に拡張して、99.9899%の平均効率が計算される。シュテファン=ボルツマンの法則に従い、1683K(1410℃)での黒体の放射線パワーは45.5098W/cmであり、計算された平均反射率で、0.6~20μmの範囲の反射パワーは45.3341W/cmであり、この範囲外の反射率は発明者らによって70%で推定され、最も左側の範囲0~0.6μmでは、反射パワー0.0158632W/cmがもたらされ、最も右側の範囲20~∞μmでは、反射パワー0.150173W/cmがもたらされる。入射したパワーと合計3つの成分の反射されたパワーとの差は、0.00970275W/cmであり、これは、ライニングの断熱で吸収されて損失したパワーである。このパワーは、ミラーの温度を実質的に上昇させることなく、周囲に容易に放散される。耐火性/断熱性の最先端のライニングの典型的な損失は、1W/cmを超える。したがって、本計算は、本ミラーライニングによる100倍を超えて少ない熱損失を与える。
【0121】
一実施形態では、ミラーの包装材の一部が熱光電池によって置き換えられる。それらの製造において、マルチフォトニック結晶を組み込んだミラーを熱光電池の裏面に堆積して、光電流を生成するには低すぎるエネルギーを有する光子の多くを高温容器に反射し、したがってほとんど吸収されないようにすることができる。溶融シリコン温度(1410℃)で黒体スペクトルを変換するように適合された熱光電池では、無駄な光子は0.7eV未満であり、1.77μmの波長に対応する。ミラーは、半導体セルの製造中にセルの裏面に堆積され、裏面電気接点を形成するために銀または金の層で仕上げることが好都合である。反射率曲線は図7に現れており、それらの挙動は本明細書で以前に説明されている。ここで述べたように、0.999999の平均半球反射率は、1.77~20μmで得られる。しかしながら、反射されるパワーは、熱光電池における異なる損失のために今日では実質的に少ないが、この結果は、熱光起電力効率の重要な進歩を刺激し得る。
【0122】
マルチフォトニック結晶のモノリシックミラーを銀または金でコーティングすることに関して、全反射のゾーンは変動しないままだが、その外側のゾーンはその反射率を大幅に増加させ、しかしながら、全反射のゾーンほどではない。これは、多くの用途において実用的な関心を有する可能性がある。
【0123】
別の用途では、本発明によるモノリシックミラーは、六角形のテッセラに堆積された天体望遠鏡の放物面ミラーに使用することができ、テッセラは、通常、放物面ミラーを構成し、テッセラの小さな曲率はその製造に影響を及ぼさない。このミラーは、単一のフォトニック結晶で達成することができる中程度の波長帯域内の望遠鏡に垂直な光のみを受光する代わりに、完全なフィラメントの光を非常に広いスペクトルで受光するように動作することができる。
【0124】
本発明に従って設計および/または製造されたミラーについて、他の多くの用途が想定され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の最大入射角(θmax)以下の入射角(θ)を有する入射無偏光放射線について、所定の真空波長範囲([λ,λ])における全反射率を有するミラーを設計するための方法であって、
前記ミラーが、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶が、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルが、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料が異なる屈折率を有し、
真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の前記反射率が、前縁波長値
【数1】
と後縁波長値
【数2】
との間の間隔
【数3】
において高さ1の丸まった角を有する長方形パルスの形状を示し、前記間隔における前記パルスが全反射帯域として識別され、前記前縁波長値および前記後縁波長値が前記入射放射線の前記入射角(θ)および前記偏光に依存し、
前記方法が、i=1,...mについて以下の
(a)θ=0の場合の第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前縁波長値
【数4】
を設定し、前記第iのフォトニック結晶の前記単位セルを形成するために前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)前記第iのフォトニック結晶の前記第1の誘電体材料の前記層の第1の厚さ(hal,i)および前記第iのフォトニック結晶の前記第2の誘電体材料の前記層の第2の厚さ(hbl,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数5】
式中、nal,iおよびnbl,iは、それぞれ、前記第iのフォトニック結晶について選択された前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の前記屈折率である、ステップと、
(c)ステップ(b)で計算された前記第1の厚さ(hal,i)および前記第2の厚さ(hbl,i)の値を用いて、前記第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数6】
を、
【数7】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、所定の最大入射角(θmax)および横磁気(TM)偏光について方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、前記方程式は、初期値がX=1である反復法によって解かれ、
式中、
【数8】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前記前縁波長値
【数9】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=θmaxおよびTM偏光についての第(i-1)のフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数10】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=θmaxおよびTM偏光についての前記第mのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数11】
がλ以上であることを満たす前記フォトニック結晶の数である、方法。
【請求項2】
所定の最大入射角(θmax)以下の入射角(θ)を有する入射無偏光放射線について、所定の真空波長範囲([λ,λ])における最大反射率を有するミラーを設計するための方法であって、
前記ミラーが、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶が、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルが、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料が異なる屈折率を有し、
真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の前記反射率が、前縁波長値
【数12】
と後縁波長値
【数13】
との間の間隔
【数14】
において高さ1の丸まった角を有する長方形パルスの形状を示し、前記間隔における前記パルスが全反射帯域として識別され、前記前縁波長値および前記後縁波長値が前記入射放射線の前記入射角(θ)および前記偏光に依存し、
前記方法が、i=1,...mについて以下の
(a)θ=θmaxおよびTM偏光についての第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の後縁波長値
【数15】
を設定し、前記第iのフォトニック結晶の前記単位セルを形成するために前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)前記第iのフォトニック結晶の前記第1の誘電体材料の前記層の第1の厚さ(hat,i)および前記第iのフォトニック結晶の前記第2の誘電体材料の前記層の第2の厚さ(hbt,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数16】
式中、nat,iおよびnbt,iは、それぞれ、前記第iのフォトニック結晶について選択された前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の前記屈折率であり、
式中、
【数17】
であるステップと、
(c)ステップ(b)で計算された前記第1の厚さ(hat,i)および前記第2の厚さ(hbt,i)の値を用いて、前記第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数18】
を、
【数19】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、θ=0の場合に方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、前記方程式は、初期値がX=3である反復法によって解かれ、
式中、
【数20】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前記後縁波長値
【数21】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=0についての第(i-1)のフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数22】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=0の場合の前記第mのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数23】
がλ以上であることを満たす前記フォトニック結晶の数である、方法。
【請求項3】
λが可視または近赤外範囲に含まれ、および/またはλが中赤外範囲に含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーを製造する方法であって、以下の
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法に従って前記ミラーを設計するステップと、
積層されたm個の一次元フォトニック結晶を形成するステップと、を含み、
各第iのフォトニック結晶が、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の複数の交互の層を積層することによって形成され、前記第1の誘電体材料が、前記第2の誘電体材料の屈折率(nbl,i,nbt,i)とは異なる屈折率(nal,i,nat,i)を有し、
i=1,...mについて、各第iのフォトニック結晶について、第1の誘電体材料のすべての層の第1の厚さ(hal,i,hat,i)および第2の誘電体材料のすべての層の第2の厚さ(hbl,i,hbt,i)が、請求項1から3のいずれか一項に記載のステップ(b)で決定された値を有する、方法。
【請求項5】
前記フォトニック結晶の前記層が基板上に堆積される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板が、反射金属、好ましくは銀または金の層で覆われ、前記フォトニック結晶が前記層上に堆積される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フォトニック結晶の前記層が、保護的な厚い透明層で覆われ、好ましくは[λ,λ]の範囲で透明である、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記フォトニック結晶が、λからλまでのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序でミラー内に配置される、または
(b)前記フォトニック結晶が、λからλまでのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序とは異なる順序でミラー内に配置される、
請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトニック結晶が、前記フォトニック結晶の前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の透明度によって規定される順序で前記ミラー内に配置され、別のフォトニック結晶の全反射帯域に含まれる波長範囲の放射線に対して透明ではない材料で作製されたフォトニック結晶が、入射放射線を意図した方向における前記別のフォトニック結晶の下流に配置される、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各フォトニック結晶内の単位セルの数が、5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上である、請求項4から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーであって、請求項4から10のいずれか一項に記載の方法にしたがって製造され、前記所定の最大入射角(θ max )は、π/2である、ミラー。
【請求項12】
透明基板上に堆積され、金属層でコーティングされた請求項11に記載のミラーを備え、熱光電池である、光電池。
【請求項13】
請求項11に記載のミラーと、半導体基板と、を備える光電池であって、前記ミラーが前記半導体基板の裏面上に堆積され、金属層でコーティングされ、前記光電池が熱光電池である、光電池。
【請求項14】
請求項11に記載の少なくとも1つのミラーを含む、白熱体のための断熱。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の最大入射角(θmax)以下の入射角(θ)を有する入射無偏光放射線について、所定の真空波長範囲([λ,λ])における全反射率を有するミラーを設計するための方法であって、
前記ミラーが、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶が、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルが、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料が異なる屈折率を有し、
真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の前記反射率が、前縁波長値
【数1】
と後縁波長値
【数2】
との間の間隔
【数3】
において高さ1の丸まった角を有する長方形パルスの形状を示し、前記間隔における前記パルスが全反射帯域として識別され、前記前縁波長値および前記後縁波長値が前記入射放射線の前記入射角(θ)および前記偏光に依存し、
前記方法が、i=1,...mについて以下の
(a)θ=0の場合の第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前縁波長値
【数4】
を設定し、前記第iのフォトニック結晶の前記単位セルを形成するために前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)前記第iのフォトニック結晶の前記第1の誘電体材料の前記層の第1の厚さ(hal,i)および前記第iのフォトニック結晶の前記第2の誘電体材料の前記層の第2の厚さ(hbl,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数5】
式中、nal,iおよびnbl,iは、それぞれ、前記第iのフォトニック結晶について選択された前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の前記屈折率である、ステップと、
(c)ステップ(b)で計算された前記第1の厚さ(hal,i)および前記第2の厚さ(hbl,i)の値を用いて、前記第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数6】
を、
【数7】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、所定の最大入射角(θmax)および横磁気(TM)偏光について方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、前記方程式は、初期値がX=1である反復法によって解かれ、
式中、
【数8】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前記前縁波長値
【数9】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=θmaxおよびTM偏光についての第(i-1)のフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数10】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=θmaxおよびTM偏光についての前記第mのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記後縁波長値
【数11】
がλ以上であることを満たす前記フォトニック結晶の数である、方法。
【請求項2】
所定の最大入射角(θmax)以下の入射角(θ)を有する入射無偏光放射線について、所定の真空波長範囲([λ,λ])における最大反射率を有するミラーを設計するための方法であって、
前記ミラーが、層を形成する複数の一次元フォトニック結晶を含み、各フォトニック結晶が、所定の回数、同一に繰り返される複数の単位セルを含み、各単位セルが、第1の誘電体材料の層および第2の誘電体材料の層を含み、前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料が異なる屈折率を有し、
真空波長(λ)の関数としての各フォトニック結晶の前記反射率が、前縁波長値
【数12】
と後縁波長値
【数13】
との間の間隔
【数14】
において高さ1の丸まった角を有する長方形パルスの形状を示し、前記間隔における前記パルスが全反射帯域として識別され、前記前縁波長値および前記後縁波長値が前記入射放射線の前記入射角(θ)および前記偏光に依存し、
前記方法が、i=1,...mについて以下の
(a)θ=θmaxおよびTM偏光についての第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の後縁波長値
【数15】
を設定し、前記第iのフォトニック結晶の前記単位セルを形成するために前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料を選択するステップと、
(b)前記第iのフォトニック結晶の前記第1の誘電体材料の前記層の第1の厚さ(hat,i)および前記第iのフォトニック結晶の前記第2の誘電体材料の前記層の第2の厚さ(hbt,i)を以下の通り決定するステップであって、:
【数16】
式中、nat,iおよびnbt,iは、それぞれ、前記第iのフォトニック結晶について選択された前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の前記屈折率であり、
式中、
【数17】
であるステップと、
(c)ステップ(b)で計算された前記第1の厚さ(hat,i)および前記第2の厚さ(hbt,i)の値を用いて、前記第iのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数18】
を、
【数19】
として決定するステップであって、
式中、パラメータXは、θ=0の場合に方程式αTM+1=0をXで解くことによって得られ、前記方程式は、初期値がX=3である反復法によって解かれ、
式中、
【数20】
であるステップと、を含み、
ステップ(a)において、前記後縁波長値
【数21】
は、
i=1の場合、λに等しい値、および
i>1の場合、θ=0についての第(i-1)のフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数22】
に等しい値に設定され、
ここで、mは、θ=0の場合の前記第mのフォトニック結晶の前記全反射帯域の前記前縁波長値
【数23】
がλ以上であることを満たす前記フォトニック結晶の数である、方法。
【請求項3】
λが可視または近赤外範囲に含まれ、および/またはλが中赤外範囲に含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の最大入射角(θ max )は、θ max <π/2である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の最大入射角(θ max )は、0.99π/2である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーを製造する方法であって、以下の
請求項1からのいずれか一項に記載の方法に従って前記ミラーを設計するステップと、
積層されたm個の一次元フォトニック結晶を形成するステップと、を含み、
各第iのフォトニック結晶が、第1の誘電体材料および第2の誘電体材料の複数の交互の層を積層することによって形成され、前記第1の誘電体材料が、前記第2の誘電体材料の屈折率(nbl,i,nbt,i)とは異なる屈折率(nal,i,nat,i)を有し、
i=1,...mについて、各第iのフォトニック結晶について、第1の誘電体材料のすべての層の第1の厚さ(hal,i,hat,i)および第2の誘電体材料のすべての層の第2の厚さ(hbl,i,hbt,i)が、請求項1からのいずれか一項に記載のステップ(b)で決定された値を有する、方法。
【請求項7】
前記フォトニック結晶の前記層が基板上に堆積される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が、反射金属、好ましくは銀または金の層で覆われ、前記フォトニック結晶が前記層上に堆積される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトニック結晶の前記層が、保護的な厚い透明層で覆われ、好ましくは[λ,λ]の範囲で透明である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記フォトニック結晶が、λからλまでのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序でミラー内に配置される、または
(b)前記フォトニック結晶が、λからλまでのそれらの全反射帯域の位置によって規定される順序とは異なる順序でミラー内に配置される、
請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フォトニック結晶が、前記フォトニック結晶の前記第1の誘電体材料および前記第2の誘電体材料の透明度によって規定される順序で前記ミラー内に配置され、別のフォトニック結晶の全反射帯域に含まれる波長範囲の放射線に対して透明ではない材料で作製されたフォトニック結晶が、入射放射線を意図した方向における前記別のフォトニック結晶の下流に配置される、請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各フォトニック結晶内の単位セルの数が、5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上である、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
m>1であるm個の一次元フォトニック結晶を含むミラーであって、請求項から12のいずれか一項に記載の方法にしたがって製造され、前記所定の最大入射角(θmax)は、0.99π/2である、ミラー。
【請求項14】
透明基板上に堆積され、金属層でコーティングされた請求項13に記載のミラーを備え、熱光電池である、光電池。
【請求項15】
請求項13に記載のミラーと、半導体基板と、を備える光電池であって、前記ミラーが前記半導体基板の裏面上に堆積され、金属層でコーティングされ、前記光電池が熱光電池である、光電池。
【請求項16】
請求項13に記載の少なくとも1つのミラーを含む、白熱体のための断熱。
【国際調査報告】