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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】スリット管を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20231220BHJP
   B21C 37/08 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B21D5/01 J
B21C37/08 E
B21D5/01 S
B21D5/01 H
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023533318
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021080968
(87)【国際公開番号】W WO2022117287
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020215088.5
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリオ トーメ
(72)【発明者】
【氏名】レギーネ アーレム
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン フォクセン
【テーマコード(参考)】
4E028
4E063
【Fターム(参考)】
4E028CB02
4E028CB06
4E063AA01
4E063BA02
4E063CA03
4E063CA07
4E063DA02
4E063DA03
4E063FA01
4E063FA05
4E063LA01
4E063LA17
4E063MA02
(57)【要約】
本発明は、金属製の平板製品(2)、特に金属薄板からスリット管(1)を製造する方法であって、平板製品(2)を、形成すべき前記スリット管(1)の周方向で、少なくとも1つの曲げ工具(3)と、外側に位置する少なくとも1つの下側工具(4)とを用いた複数の個別の曲げステップにより徐々に変形加工し、その際にまず、個別の曲げステップの複数の位置と、曲げ工具(3)の進入深さとを予備計算し、次いで該予備計算に基づいて、金属製の平板製品(2)を徐々に変形加工してスリット管(1)を形成する方法において、複数の曲げステップのそれぞれの後に、金属製の平板製品(2)の長手方向の延びに沿って配置された位置であって、金属製の平板製品(2)の両エッジ(6a,6b)の間および/または両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の少なくとも1つの位置において、目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、補正アルゴリズムを用いて後続の曲げステップのための補正値を求め、次いで該補正値の分だけ、曲げステップを曲げ工具(3)のための進入深さを調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の平板製品(2)、特に金属薄板からスリット管(1)を製造する方法であって、前記平板製品(2)を、形成すべき前記スリット管(1)の周方向で、少なくとも1つの曲げ工具(3)と外側に位置する少なくとも1つの下側工具(4)とを用いた複数の個別の曲げステップにより徐々に変形加工し、その際にまず、個別の曲げステップの複数の位置と、前記曲げ工具(3)の進入深さとを予備計算し、次いで該予備計算に基づいて、前記金属製の平板製品(2)を徐々に変形加工して前記スリット管(1)を形成する方法において、
前記複数の曲げステップのそれぞれの後に、前記金属製の平板製品(2)の長手方向の延びに沿って配置された位置であって、前記金属製の平板製品(2)の、両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の少なくとも1つの位置において、目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、補正アルゴリズムを用いて後続の曲げステップのための補正値を求め、次いで該補正値の分だけ、前記曲げ工具(3)のための進入深さを調整することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも一方のエッジ(6a,6b)は、少なくとも2つ、好適には少なくとも3つ、さらに好適には少なくとも4つ、よりさらに好適には少なくともn個のエッジ点(9a,9b)を有しており、該エッジ点(9a,9b)を手がかりに、前記金属製の平板製品(2)の前記長手方向の延びに沿って配置された位置であって、前記金属製の平板製品(2)の前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の少なくとも1つの位置において、前記目標値-実際値-間隔調整を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属製の平板製品(2)の前記長手方向の延びに沿って配置された位置であって、前記金属製の平板製品(2)の前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と前記軸方向の中心線(7)との間の少なくとも2つ、好適には少なくとも3つ、好適にはより多くの位置における、前記目標値-実際値-間隔調整を実行する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記金属製の平板製品(2)の前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の前記実際値-間隔の測定結果を、制御ユニットに伝達し、次いで該制御ユニットにより前記目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、前記補正アルゴリズムを用いて前記後続の曲げステップのための補正値を求め、これにより前記制御ユニットは、前記スリット管(1)への前記金属製の平板製品の全自動の変形加工を制御しかつ調整する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線との間の前記実際値の間隔を、前記制御ユニットに信号技術的に接続されているレーザセンサシステム(8)および/またはコンピュータ支援されたカメラにより実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記複数の曲げステップのそれぞれを1回だけ実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記金属製の平板製品(2)は、0.2~10mの幅および6.0~100mmの厚さを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造されたスリット管(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の平板製品、特に金属薄板を変形加工することによりスリット管を製造する方法であって、金属製の平板製品を、形成すべきスリット管の周方向で、少なくとも1つの曲げ工具と外側に位置する少なくとも1つの下側工具とを用いた複数の個別の曲げステップにより徐々に変形加工する方法と、本発明に係る方法により製造されたスリット管とに関する。
【0002】
例えばパイプライン用途のような肉厚の管の製造は通常、平板製品を徐々に変形加工していわゆるスリット管を形成することにより行われ、この場合平板製品を、まずその全長にわたって変形加工して、管半製品とも呼ばれるスリット管を形成し、次いで長手方向シームを導入することにより溶接する。
【0003】
平板製品の変形加工は、通常、2つのステップにおいて行われる。第1の変形加工は、多角形の輪郭を有する半製品をもたらす。次いで、横断面のほぼ円形の輪郭が、第2のステップにおいて拡張器を用いて達成される。しかし、肉厚の管では、拡張器工具に過度の負荷が加わってしまう。
【0004】
曲げ工具と、例えばボトムバーの形態の2つの対向受けまたは下側工具とを用いて、平形製品は、上述の第1の変形加工ステップにおいて局所的に変形加工され、このような多数の変形加工操作を連続させることにより、最終的にはワークの所望の形状が得られる。
【0005】
このような変形は典型的には、経験値と、経験値の数学的考察とに基づいて行われる。各金属製の平板製品は、局所的に異なる強度を有していて、したがって相応して異なる変形特性を有しているので、このようなスリット管の産業的な製造は、例えば金属薄板厚さ変動およびバッチ変動のような種々の外乱に基づいて、極めて複雑なプロセスを成す。
【0006】
したがって、本技術分野ではさらに、このような複雑な変形加工プロセスを自動化し、これにより所望の輪郭、好適には横断面の真円度からできるだけ小さな偏差と、全長にわたって所望の形状とを有する管横断面を製造することができるようになることが望まれている。
【0007】
平板製品を変形加工してスリット管または管半製品を形成する装置および方法は、例えば独国特許出願公開第102011009660号明細書から公知である。装置は、平板製品を、形成すべきスリット管または管半製品の横断面の周方向で少なくとも徐々に変形加工するための少なくとも1つの内側変形加工工具と、平板製品を外側から変形加工するための少なくとも1つの外側変形加工工具とを有しており、少なくとも1つの光源と、少なくともスリット管または管半製品の内側輪郭を測定するための少なくとも1つの受信器とが、少なくとも1つの内側変形加工工具に接続されている。個別の変形加工ステップの輪郭測定に基づく結果を連続的に追跡することによって、このような装置は、偏差を格段に迅速かつ正確に補償し、変形加工された金属薄板構造体を著しく信頼性よく、かつより正確に製造することができるように効率的に方法を実行し、出発材料を制御して変形加工して定義された輪郭または形状を有するスリット管を形成することを可能にする。しかし、この種の閉ループ制御は、光測定システムを介して検出される現在の管輪郭の知識を前提とする。この光測定システムはそれぞれの工具に手間をかけて収容する必要がある。
【0008】
さらに、中国特許出願公開第110102607号明細書は、いわゆるJCO法によってスリット管を製造する方法を開示している。この方法では、管のために、複数の曲げステップを有するシーケンスが求められ、多数の曲げステップの各個別のステップは、「確実な」押込み深さを起点として、エッジの近傍にある所定の点に対するステップ中心の、予備計算された距離が達成されるまで、もしくは使用された測定ブリッジが予備計算された半径を示すまで、複数回繰り返される。次いでこのシーケンスに基づいて、すべての後続のスリット管が製造される。
【0009】
これを起点として、本発明の課題は、従来技術に対して改善された、スリット管を製造する方法を提供し、特に、全周にわたる閉ループ制御を可能にする、スリット管を製造する方法を提供することである。
【0010】
この課題は、本発明によれば、請求項1記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0011】
金属製の平板製品、特に金属薄板からスリット管を製造するための本発明に係る方法によれば、金属製の平板製品を、形成すべきスリット管の周方向で、少なくとも1つの曲げ工具と外側に位置する少なくとも1つの下側工具とを用いた複数の個別の曲げステップにより徐々に変形加工し、その際にまず、個別の曲げステップの複数の位置と、曲げ工具の侵入深さとを予備計算し、次いでこの予備計算に基づいて、金属製の平板製品を徐々に変形加工してスリット管を形成することが規定されている。
【0012】
この方法は、複数の曲げステップのそれぞれの後に、金属製の平板製品の長手方向の延びに沿って配置された位置であって、金属製の平板製品の両エッジの間および/または両エッジのうち一方のエッジと軸方向の中心線との間の少なくとも1つの位置において、目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、補正アルゴリズムを用いて後続の曲げステップのための補正値を求め、次いでこの補正値の分だけ、曲げ工具のための侵入深さを調整することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る方法によれば、従来技術において通常であるように、内側輪郭全体または内側輪郭の一部が検出されるのではなく、金属製の平板製品の両エッジのエッジ距離および/または両エッジのうち一方のエッジと軸方向の中心線との間の距離を複数の曲げステップのそれぞれの後に求めることにより、スリット管への成形加工プロセス中に金属製の平板製品のエッジの特性が徐々にコントロールされる。このために有利には、適切な評価プログラムを介して距離測定を実施する、レーザ源およびレーザ検出器を備えたレーザセンサシステムおよび/またはコンピュータ支援されたカメラを使用することができる。補足的にかつ/または代替的に、金属製の平板製品の両エッジのエッジ距離および/または両エッジのうち一方のエッジと軸方向の中心線との間の距離を、複数の曲げ工程のそれぞれの後に超音波により求めることができる。個別の曲げステップの複数の位置と、その都度必要となる侵入深さとを予備計算することにより、成形加工プロセス全体のための目標距離値を求めることができる。この目標位置と、次いで求められる実際位置とに基づいて、偏差がある場合に、補正アルゴリズムを用いて、後続の曲げステップのための補正値を求めることができ、次いでこの補正値の分だけ、曲げ工具のために必要となる侵入深さを調整する。本発明に係る方法の別の利点は、曲げ工具により実施される第1の曲げステップ後に既に補正を実施することができ、ひいては従来技術から公知の方法に比べて、より早く補正を実施することができることにある。このことは全体として、ステップ毎のリアルタイム制御を可能にし、このリアルタイム制御は全周にわたる特に高い輪郭精度を保証する。高い輪郭精度は、楕円率に特に有利に作用し、この楕円率は、連続的なプロセス制御に基づき、特に狭いパラメータウィンドウ内に保持され得る。
【0014】
ここで、スリット管の全周にわたる輪郭精度が可能にされることによって、特に少なくとも6.0mm、好適には少なくとも15.0mm、より好適には少なくとも20.0mmまたはそれ以上の肉厚を有する肉厚の管の場合に、拡張器工具により均一に負荷が加えられ得るので、拡張器工具への過剰負荷の恐れが低減される。
【0015】
さらに、全周にわたる高い輪郭精度に基づいて、個別の曲げステップの繰返しは不要である。したがって有利には、複数の曲げステップのそれぞれを1回だけ実施することが規定されている。このことは、製造時の特に高いサイクルタイムを可能にする。
【0016】
本発明の別の有利な構成は複数の従属請求項に記載されている。これらの従属請求項に個別に記載した特徴は、技術的に有意な形式で互いに組合せ可能であり、本発明の別の構成を定義することができる。さらに、請求項に記載された特徴は、明細書においてより詳細に明示されかつ記載され、この場合に本発明の別の好適な構成を成す。
【0017】
エッジという用語は、本発明の意図において、金属製の平板製品の長手延在長さに沿って延びる金属製の平板製品の端面であると理解される。
【0018】
金属製の平板製品の少なくとも一方のエッジ、好適には両エッジは、基本的には真っ直ぐなエッジとして形成されていてもよく、金属製の平板製品の2つの周面のうち一方の周面に対して垂直に形成された端面であると理解される。さらに、このようなエッジは、センサによって検出され得る2つのエッジ点を有している。
【0019】
しかし、有利な或る実施バリエーションでは、金属製の平板製品の少なくとも一方のエッジ、より好適には両エッジが、後続の溶接プロセスのために最適化された幾何学形状を有しており、この幾何学形状が、2つ、3つまたはn個の部分端面を含んでおり、互いに隣り合うそれぞれ2つの部分端面が、所定の角度を形成していることが規定されている。さらに、このように形成されたエッジは、金属製の平板製品の両エッジの間の距離および/または両エッジのうち一方のエッジと、軸方向の中心線との間の距離を求めるために、センサシステムによって検出され得る少なくとも3つ、4つ、またはn個のエッジ点を有している。これらのエッジ点のうちのどちらが、次に互いに対して観察されるかは、レーザセンサシステムおよび/またはコンピュータ支援されたカメラユニットによるこれらのエッジ点へのアクセス性もしくは認識可能性に応じてステップ毎に変化してもよい。
【0020】
本発明に係る方法は、特に幅広い製造範囲のために適している。したがって、有利には、金属製の平板製品が、0.2~10mの幅、より好適には0.8~8mの幅、最も好適には1.0~6.0mの幅ならびに5.0~100mmの厚さ、より好適には6.0~50mmの厚さを有している。
【0021】
幅という用語は、本発明の意図において、製造すべきスリット管に沿って複数の曲げステップにより形成される、金属製の平板製品の半径方向の延在長さであると理解される。
【0022】
好適な或る実施バリエーションでは、目標値-実際値-間隔調整は、金属製の平板製品の長手方向の延びに沿って配置された位置であって、金属製の平板製品の両エッジ間の、かつ/または両エッジのうちの一方のエッジと、金属製の平板製品の軸方向の中心線との間の少なくとも2つの、より好適には少なくとも3つの、さらにより好適にはより多くの位置において実行されるので、独立した閉ループ制御が形成すべきスリット管の軸方向長さにわたって部分的に可能にされる。
【0023】
有利には、金属製の平板製品の両エッジ間の、かつ/または両エッジのうちの一方のエッジと軸方向の中心線との間の実際値-間隔の測定結果を、制御ユニットに伝達し、次いでこの制御ユニットにより目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、補正アルゴリズムを用いて後続の曲げステップのための補正値を求め、これにより制御ユニットが、金属製の平板製品を全自動で変形加工してスリット管を形成することを、制御(開ループ制御)しかつ調整(閉ループ制御)することが規定されている。
【0024】
特に有利には、両エッジ間および/または両エッジのうち一方のエッジと軸方向の中心線との間の実際値-距離を、特に好適には制御ユニットに信号技術的に接続されているレーザセンサシステムおよび/またはコンピュータ支援されたカメラユニットにより実施する。
【0025】
別の1つの態様では、本発明は、本発明による方法により製造されるスリット管にさらに関する。
【0026】
本発明ならびに技術的な環境を、以下に図面および実施例につき詳細に説明する。本発明が示された実施例により限定されるものではないことに留意されたい。特に、別に明確に述べない限り、図面および/または実施例において説明された実態の一部を抽出して、明細書および/または図面の別の構成要素および知識と組み合わせることも可能である。特に、図面もしくは実施例および特に図示されたサイズ比は単に概略的なものに過ぎないことに留意されたい。同一の対象物には同一の参照符号が付してあり、これによって、場合により、別の図面に基づく説明を補足的に考慮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】a~hは、スリット管を製造する変形加工プロセスの個別の作業ステップを示す図である。
図2】第1の実施バリエーションにおける本発明による測定原理を示す図である。
図3】第2の実施バリエーションにおける本発明による測定原理を示す図である。
図4】a~cは、一定であると仮定されている、予め規定された肉厚と予め規定された降伏強度とを有する金属薄板のための理想的な前提条件における幾何学的な結果を示す図である。
図5】a~cは、第1の実際の例による結果を示す図である。
【0028】
図1a~図1hにつき、金属製の平板製品2からスリット管1を製造するための基本原理を、個別の8つの作業ステップもしくは曲げステップにつき示している。金属製の平板製品2は、形成すべきスリット管1の周方向で、少なくとも1つの曲げ工具3と、外側に位置する2つの下側工具4とを用いた複数の個別の曲げステップにより徐々に変形加工される。
【0029】
ステップa)では、既に予備変形加工されたエッジ領域5a,5bを有する平板製品2が図示されている。エッジ領域5a,5bは、一般に、変形加工プレス(図示せず)により予め形成される。ステップb)が示すように、変形加工工程は、下側工具4の2つの対向受け4a,4bと曲げ工具3との間に金属製の平板製品2を挿通することにより開始し、曲げ工具3は、軸部3aと曲げラム3bとを含んでいる。曲げ工具3は、2つの対向受け4a,4bの間で平板製品2に向かって実質的に垂直方向に行程を行うように移動することができる。次いで、対向受け4a,4bならびに曲げラム3bの協働において、平板製品2の局所的な変形加工が行われる。作業ステップa)~d)では、スリット管横断面を形成するように平板製品2の第1の側の変形加工が行われるが、ステップe)~h)では、平板製品2の右側が徐々に変形加工されてスリット管1を形成する。両変形加工プロセスは、通常、側方エッジ5a,5bから内方に向かって行われる複数の局所的な変形加工ステップの連なりとして行われる。
【0030】
図2には、測定原理の1つの実施バリエーションが図示されている。図面から確認可能であるように、図1に示されているように実施された曲げステップのそれぞれの後に、レーザセンサシステム8を介して測定が実施され、これにより、金属製の平板製品2の両エッジ6a,6bの間および/または両エッジのうち一方のエッジ6aと、軸方向の中心線7との間の実際距離が求められる。レーザセンサシステム8は、ここではそれぞれのエッジ6a,6bのそれぞれ1つの検出可能なエッジ点9a,9bを検出する。
【0031】
図3には、測定原理の別の実施バリエーションが図示されている。第1の実施バリエーションとは異なり、金属製の平板製品のエッジ6a,6bのそれぞれが、複数の部分端面10a,10bを有している。この図面から確認可能であるように、互いに隣り合う2つのそれぞれ2つの部分端面10a,10bは、所定の角度を成しており、それぞれ1つのエッジ点9a,9bを形成する。このエッジ点9a,9bは、レーザセンサシステム8によって検出することができ、これにより、金属製の平板製品2の両エッジ6a,6bの間および/または両エッジのうち一方のエッジ6aと軸方向の中心線7との間の実際距離を求めることができる。
【0032】

比較例:
813mmの外径、12.7mmの肉厚および10mの長さを有するスリット管を製造するために、600MPaの降伏強度を有する、10000×2554×12.7mm(L×B×H)の寸法を有する金属薄板が提供された。曲げラムとして、120mmの半径を有するユニバーサル曲げラムが使用された。
【0033】
材料の寸法、降伏強度、使用される曲げラムの半径ならびに下側工具、下側工具距離ならびに弾性率パラメータに基づいて、個別の曲げステップの数および対応する侵入深さ(図4a)を予備計算した。200.3mmの目標スリット幅を有するスリット管のためには、17回の曲げステップが求められた。
【0034】
次いで、まずエッジ領域が変形加工プレスにより従来の形式で形成された。次いで、金属薄板を曲げ工具と2つの対向受けを備えた下側工具との間に挿通し、次いで計算したように個別の曲げステップ1~17(図3a)が実施された。金属薄板が、事前計算において想定されるように、材料厚さに関しても、降伏強度に関しても、面にわたって理想的ではないので、比較例における変形加工プロセス全体は、スリット幅において3%を超える偏差をもたらした。
【0035】
本発明による例:
比較例とは異なり、予備計算された18mmの侵入深さに基づいて実施された第1の曲げステップ(図5aを参照)の後に既に、目標値-実際値-間隔調整が実施された。このために、両エッジ点9a,9bの間ならびに、付加的には一方のエッジ点9aと中心線7との間で、図2および図3に示されているようにレーザセンサシステムによって距離が求められた。求められた距離は、予備計算された目標距離と比較され、その後に、補正アルゴリズムを用いて後続の第2の曲げステップのための補正値が求められた(図5a参照)。次いで、第2の曲げ工程の侵入深さを、図5aに示されているように、補正値の分だけ調整する。後続の曲げステップ3~17は、同じように実施された。
【0036】
以下の表1には、理論的に計算された値の背景で、比較例と本発明による例とに基づく結果が示されている。表1から看取されるように、スリット管の輪郭に対する本発明に係る方法の好適な影響を明確に確認することができる。
【0037】
【表1】
【符号の説明】
【0038】
1 スリット管
2 平板製品
3 曲げ工具
3a 軸部
4 下側工具
4a 対向受け
4b 対向受け
5a エッジ領域
5b エッジ領域
6a エッジ
6b エッジ
7 中心線
8 レーザセンサシステム
9a エッジ点
9b エッジ点
10a 部分端面
10b 部分端面
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図1d)】
図1e)】
図1f)】
図1g)】
図1h)】
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の平板製品(2)、特に金属薄板からスリット管(1)を製造する方法であって、前記平板製品(2)を、形成すべき前記スリット管(1)の周方向で、少なくとも1つの曲げ工具(3)と外側に位置する少なくとも1つの下側工具(4)とを用いた複数の個別の曲げステップにより徐々に変形加工し、その際にまず、個別の曲げステップの複数の位置と、前記曲げ工具(3)の進入深さとを予備計算し、次いで該予備計算に基づいて、前記金属製の平板製品(2)を徐々に変形加工して前記スリット管(1)を形成し、
前記複数の曲げステップのそれぞれの後に、前記金属製の平板製品(2)の長手方向の延びに沿って配置された位置であって、前記金属製の平板製品(2)の、両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の少なくとも1つの位置において、目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、補正アルゴリズムを用いて後続の曲げステップのための補正値を求め、次いで該補正値の分だけ、前記曲げ工具(3)のための進入深さを調整する方法において、
前記両エッジ(6a,6b)のうち少なくとも一方のエッジは、少なくとも3つのエッジ点(9a,9b)を有しており、該エッジ点(9a,9b)を手がかりに、前記目標値-実際値-間隔調整を実施することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも一方のエッジ(6a,6b)は、なくとも4つ、らに好適には少なくともn個のエッジ点(9a,9b)を有しており、記金属製の平板製品(2)の前記長手方向の延びに沿って配置された位置であって、前記金属製の平板製品(2)の、前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の少なくとも1つの位置において、前記目標値-実際値-間隔調整を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属製の平板製品(2)の前記長手方向の延びに沿って配置された位置であって、前記金属製の平板製品(2)の前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と前記軸方向の中心線(7)との間の少なくとも2つ、好適には少なくとも3つ、好適にはより多くの位置における、前記目標値-実際値-間隔調整を実行する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記金属製の平板製品(2)の前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線(7)との間の前記実際値-間隔の測定結果を、制御ユニットに伝達し、次いで該制御ユニットにより前記目標値-実際値-間隔調整を実施し、偏差がある場合に、前記補正アルゴリズムを用いて前記後続の曲げステップのための補正値を求め、これにより前記制御ユニットは、前記スリット管(1)への前記金属製の平板製品の全自動の変形加工を制御しかつ調整する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記両エッジ(6a,6b)の間および/または前記両エッジのうち一方のエッジ(6a)と軸方向の中心線との間の前記実際値の間隔を、前記制御ユニットに信号技術的に接続されているレーザセンサシステム(8)および/またはコンピュータ支援されたカメラにより実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記複数の曲げステップのそれぞれを1回だけ実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記金属製の平板製品(2)は、0.2~10mの幅および6.0~100mmの厚さを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【国際調査報告】