(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】量子コンピューティング装置のキュービットユニットコンポーネントのためのセミアクティブな磁気遮蔽
(51)【国際特許分類】
H10N 60/00 20230101AFI20231220BHJP
H10N 60/12 20230101ALI20231220BHJP
H10N 60/10 20230101ALI20231220BHJP
G06N 10/40 20220101ALI20231220BHJP
【FI】
H10N60/00 S
H10N60/12 Z ZAA
H10N60/10 K
G06N10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533784
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021086952
(87)【国際公開番号】W WO2022136350
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(74)【復代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】モーフ、トーマス
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AA00
4M113AC06
4M113AC45
4M113AC50
4M113AD44
4M113CA12
4M113CA16
(57)【要約】
量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するコンピュータ実装方法であって、
第1の電流信号を、量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加する段階、それにより前記第1のコンポーネントは、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響を与える漂遊磁場を生成する;及び
補償電流信号を、前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する段階、前記補償電流信号は、前記第1の信号の予め定められた関数に従って生成される
を備える、コンピュータ実装方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するコンピュータ実装方法であって、
第1の電流信号を、量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加する段階、それにより前記第1のコンポーネントは、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響を与える漂遊磁場を生成する;及び
補償電流信号を、前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する段階、前記補償電流信号は、前記第1の電流信号の予め定められた関数に従って生成される、
を備える、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記遮蔽回路に印加された前記補償電流信号の振幅は、前記量子コンピューティングチップの前記第1のコンポーネントに印加された前記第1の電流信号の振幅に等しい、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
遮蔽回路に印加された前記補償電流信号の振幅は、前記量子コンピューティングチップの前記第1のコンポーネントに印加された前記第1の電流信号の振幅に対してスケール調整される振幅を有する、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記遮蔽回路に印加された前記補償電流信号の周波数及び位相は、前記量子コンピューティングチップの前記第1のコンポーネントに印加された前記第1の電流信号の周波数及び位相と同期されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記第1のコンポーネントは、超伝導計算キュービット及びチューナブルカプラの1つであり;
請求項1に記載のコンピュータ実装方法は、第1の電流信号を前記量子コンピューティングチップの前記第1のコンポーネントに印加して、前記第1のコンポーネントを駆動する段階をさらに備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記第2のコンポーネントは、超伝導計算キュービットであり;
請求項1に記載のコンピュータ実装方法は、第2の信号を前記量子コンピューティングチップの前記第2のコンポーネントに印加して、前記第2のコンポーネントを駆動する段階をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
1つ又は複数のコンピュータプロセッサ;
1つ又は複数のコンピュータ可読記憶媒体;及び
コンピュータプログラム命令、前記コンピュータプログラム命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによる実行のための前記1つ又は複数のコンピュータ可読記憶媒体に格納されている、
を備える、量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータプログラム命令は、
第1の電流信号を量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加して、前記第1のコンポーネントを動作させる手順、それにより、前記第1のコンポーネントの動作が、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響する漂遊磁場を生成する、及び
補償電流信号を、前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する手順、ここで、前記補償電流信号は前記第1の電流信号の予め定められた関数に従って生成される、 のための命令を有する、コンピュータシステム。
【請求項8】
遮蔽回路、第1のコンポーネント、及び第2のコンポーネントを有するキュービットユニット;及び
第1の電流信号を量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加して、前記第1のコンポーネントを動作させ、それにより、前記第1のコンポーネントの動作が、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響する漂遊磁場を生成する、及び
前記第1の電流信号の予め定められた関数に従って生成される、補償電流信号を前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する、
ための、前記第1のコンポーネント及び前記遮蔽回路のそれぞれに動作可能に接続された制御ユニット
を備える、量子コンピューティング装置。
【請求項9】
前記量子コンピューティングチップは、第1の回路及び第2の回路をさらに備え;
前記制御ユニットは、それぞれ前記第1の回路及び前記第2の回路を介して、前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントに接続され、前記第1の回路を介して前記第1の電流信号を前記第1のコンポーネントに印加するように構成され;
前記遮蔽回路は、前記第1の電流信号の予め定められた関数を有効にするよう前記第1の回路に接続されている、
請求項8に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項10】
前記キュービットユニットは、前記第1の回路、前記第2の回路、及び前記遮蔽回路のそれぞれの少なくとも一部を有する超伝導キュービットユニットであり;
前記制御ユニットは、前記遮蔽回路及び前記第1のコンポーネントのそれぞれに接続された信号生成器を有し、前記信号生成器は、前記第1の回路を介して前記第1のコンポーネントに接続されている、
請求項9に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項11】
前記遮蔽回路及び前記第1の回路は、前記信号生成器に並列して接続されている、
請求項10に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項12】
前記信号生成器は、前記キュービットユニットにおいて、前記第1の回路に接続され、そこに前記遮蔽回路が直列に接続されている、
請求項10に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項13】
前記量子コンピューティング装置は、容量型分圧器又は伝送ラインカプラの1つをさらに備え;
前記信号生成器は、前記第1の電流信号の予め定められた関数を有効にするように、前記容量型分圧器又は前記伝送ラインカプラを介して、前記遮蔽回路及び前記第1のコンポーネントのそれぞれに接続されている、
請求項10から12のいずれか1項に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項14】
前記遮蔽回路に印加された前記補償電流信号の振幅は、前記量子コンピューティングチップの前記第1のコンポーネントに印加された前記第1の電流信号の振幅に等しい、
請求項8から13のいずれか1項に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項15】
前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントのそれぞれは、超伝導キュービット、チューナブルカプラ、及びジョセフソン接合からなる群から選択される少なくとも1つのコンポーネントを有する、
請求項8から14のいずれか1項に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項16】
前記第1のコンポーネントは、トランズモンタイプの固定周波数の超伝導キュービットを有し、前記第2のコンポーネントは、前記トランズモンタイプの前記超伝導キュービットに結合されたチューナブルカプラを有する、
請求項8から15のいずれか1項に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項17】
前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記キュービットユニットにおいて同じ平面上に配置されており;
前記遮蔽回路は、1つ又は複数のループを有し、それぞれが、前記キュービットユニットにおいて所与の平面において前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントのうち少なくとも1つを囲み;
前記所与の平面は、前記同じ平面と一致しているか、又はそれに並列している、
請求項8から16のいずれか1項に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項18】
前記遮蔽回路の前記1つ又は複数のループのうち少なくとも1つは、前記所与の平面において前記第2のコンポーネントを囲む、
請求項17に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項19】
前記遮蔽回路は、直列に接続された補償回路及び整形回路の両方を有し;
前記補償回路は、前記1つ又は複数のループを含み;
前記整形回路は、2つ又はそれより多い追加のループを含み、それぞれが前記所与の平面において前記第1のコンポーネントを囲む、
請求項17から18のいずれか1項に記載の量子コンピューティング装置。
【請求項20】
前記1つ又は複数のループは、前記所与の平面において前記追加の2つ又はそれより多いループを囲み;
前記補償回路及び前記整形回路は、前記遮蔽回路に流れる電流が、前記2つ又はそれより多い追加のループにおいて同じ回転方向を有するように共同設計され、前記同じ回転方向は、動作中に前記遮蔽回路に印加された前記補償電流信号に沿って、前記1つ又は複数のループに流れる前記電流の回転方向と反対である、
請求項19に記載の量子コンピューティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、量子処理装置及びそのような装置の動作方法に関する。特に、量子処理装置を動作させる方法に関し、ここで、補償電流信号は、キュービットチップの所与のコンポーネントを、キュービットチップ上の隣接するコンポーネントによって生成される漂遊磁場から磁気的に遮蔽するよう遮蔽回路に印加される。
【背景技術】
【0002】
量子増強センシング及び量子コンピューティングにおける最近の進歩は、これらの技術を、より一層産業上の応用に関連したものにしている。量子センシング及び量子コンピューティングはともに、重ね合わせ及びもつれなどの量子力学的現象を直接利用している。量子センシングは、測定装置の精度を高めることを目的とするのに対し、量子コンピュータは、データのもつれに対して動作を実行する。超伝導回路は、現在の技術を用いて製造することは比較的容易であり、したがって、量子情報技術をさらに拡大するのに有望な候補である。エラー訂正が限られているか、又は存在しない超伝導キュービットを伴う量子コンピュータは、すでに利用可能である。そのような量子コンピュータは、従来のコンピュータには扱いにくいシステムをシミュレートすることが可能である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するコンピュータ実装方法が開示される。コンピュータ実装方法は、第1の電流信号を、量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加する段階、それにより第1のコンポーネントが、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響を与える漂遊磁場を生成する、を備える。コンピュータ実装方法は、補償電流信号を前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する段階、前記補償電流信号は、前記第1の信号の予め定められた関数に従って生成される、をさらに備える。
【0004】
本発明の別の実施形態によれば、量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するためのコンピュータシステムが開示される。コンピュータシステムは、1つ又は複数のコンピュータプロセッサ、1つ又は複数のコンピュータ可読記憶媒体、及びコンピュータプログラム命令を備え、前記コンピュータプログラム命令は、前記1つ又は複数のコンピュータプロセッサによる実行のための前記1つ又は複数のコンピュータ可読記憶媒体に格納されている。前記プログラム命令は、第1の電流信号を量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加して、前記第1のコンポーネントを動作させ、それにより、前記第1のコンポーネントの動作が、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響する漂遊磁場を生成する、命令を有する。前記プログラム命令は、補償電流信号を前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する、前記補償電流信号は前記第1の信号の予め定められた関数に従って生成される、命令をさらに有する。
【0005】
本発明の別の実施形態によれば、量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するための量子コンピューティングが開示される。量子コンピューティング装置は、遮蔽回路、第1のコンポーネント、及び第2のコンポーネントを有するキュービットユニットを備える。量子コンピューティング装置は、(i)第1の電流信号を量子コンピューティングチップの第1のコンポーネントに印加して、前記第1のコンポーネントを動作させ、それにより、前記第1のコンポーネントの動作が、前記量子コンピューティングチップの第2のコンポーネントの動作に影響する漂遊磁場を生成する、及び(ii)補償電流信号を前記量子コンピューティングチップの遮蔽回路に印加して、前記第2のコンポーネントを、前記第1のコンポーネントによって生成される前記漂遊磁場から磁気的に遮蔽する、前記補償電流信号は前記第1の信号の予め定められた関数に従って生成される、ための、前記第1のコンポーネント及び前記遮蔽回路それぞれに動作可能に接続された制御ユニットをさらに備える。
【0006】
本発明を具現化する装置及び方法はここで、非限定的な例によって、また添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
発明とみなされる主題は、本明細書の最終部分に特に指摘されており、また明確に特許請求されている。本発明は、機構及び動作方法の両方に関して、その目的、特性、及び利点とともに、以下の詳細な説明を参照して、添付図面を解釈すると最良に理解され得る。
【0008】
図中では同様の参照符号が、別個の図全体にわたって同一又は機能的に類似した要素を指し、以下の詳細な説明とともに、本明細書に組み込まれるか、又はその一部をなす添付図面は、様々な実施形態をさらに示し、本開示による様々な原理及び利点すべてを説明するのに役立つ。
【0009】
【
図1】本発明の少なくとも1つの実施形態による量子処理装置の選択されたコンポーネントを示す図である。
【0010】
【
図2】本発明の少なくとも1つの実施形態による量子処理装置の選択されたコンポーネントを示す図である。
図2は、
図1に類似しているが、但し、キュービットユニットのコンポーネントを囲む補償ループを含む遮蔽回路をさらに含み、このコンポーネントを、隣接するコンポーネントによって生成される漂遊磁場から遮蔽することを除く。
【0011】
【
図3A】本発明の少なくとも1つの実施形態による、
図2に示されるものと類似した構成で2つの隣接するコンポーネントを含むキュービットチップをシミュレートすることによって得られるコンタープロットである。
【
図3B】本発明の少なくとも1つの実施形態による、
図2に示されるものと類似した構成で2つの隣接するコンポーネントを含むキュービットチップをシミュレートすることによって得られるコンタープロットである。 プロットは、キュービットチップの主要平面に垂直な平面において左側(LHS)コンポーネントによって生成される漂遊磁場の強度のコンターラインを表す。
図3Aは、いかなる磁気遮蔽の非存在下での磁場強度のコンターを示すのに対して、
図3Bは、LHSコンポーネントによって生成される漂遊場が、補償電流信号を、RHSコンポーネントを囲む遮蔽回路のループに印加することによって右側(RHS)コンポーネントの水準で局所的に遮蔽されている場合の磁場強度のコンターを示す。
【0012】
【
図4】本発明の少なくとも1つの実施形態による、第2のコンポーネント(RHSにある)を、第1のコンポーネントによって生成される漂遊磁場から遮蔽するための、キュービットユニットの第1のコンポーネント(LHSにある)に関して回路部分を囲む補償回路ループを概略的に示す。
【0013】
【
図5A】本発明の様々な実施形態による様々な遮蔽回路の構成を示し、ここで、遮蔽回路は、補償回路及び整形回路の両方を含む。
【
図5B】本発明の様々な実施形態による様々な遮蔽回路の構成を示し、ここで、遮蔽回路は、補償回路及び整形回路の両方を含む。
【
図5C】本発明の様々な実施形態による様々な遮蔽回路の構成を示し、ここで、遮蔽回路は、補償回路及び整形回路の両方を含む。
【
図5D】本発明の様々な実施形態による様々な遮蔽回路の構成を示し、ここで、遮蔽回路は、補償回路及び整形回路の両方を含む。 補償回路は、実施形態で見られるように、整形回路の追加のループを囲むループを含み、それらがキュービットチップの電界放射コンポーネントを囲む。
図5Aは、補償回路ループ及び追加のループがすべて、電界放射コンポーネントの第1の回路と並列に接続されている構成を示す。
図5Bでは、整形回路の追加のループは、第1の回路と直列に接続されている一方で、補償回路ループは、第1の回路と並列に接続されている。
図5C~
図5Dは、ループがすべて、電界放射コンポーネントの第1の回路と直列に接続されている変形例を示す。
【0014】
【
図6】制御ユニットがカプラ(容量型分圧器又は伝送ラインカプラ)を介して遮蔽回路及び電界放射コンポーネントの両方に接続されている、本発明の少なくとも1つの実施形態による量子処理装置の選択されたコンポーネントを示す図である。
【0015】
【
図7A】本発明の様々な実施形態による実際の超伝導キュービットチップのレイアウトの図であり、ここで、2つのトランズモンタイプ、計算キュービットはチューナブルカプラを介して結合されており、それにより計算キュービットは、動作中にチューナブルカプラによって放出される漂遊磁場を受ける可能性がある。
【
図7B】本発明の様々な実施形態による実際の超伝導キュービットチップのレイアウトの図であり、ここで、2つのトランズモンタイプ、計算キュービットはチューナブルカプラを介して結合されており、それにより計算キュービットは、動作中にチューナブルカプラによって放出される漂遊磁場を受ける可能性がある。
図7Aは、計算キュービットそれぞれの周辺でコイルされた遮蔽回路を含むキュービットチップを示すのに対して、
図7Bは、唯一のチューナブルカプラの周辺でコイルされた遮蔽回路を示す。両方の場合で、遮蔽回路は、本発明の実施形態による、計算キュービットを、チューナブルカプラによって生成される漂遊磁場から遮蔽する。
【0016】
【
図8】本発明の少なくとも1つの実施形態による量子処理装置を動作させる方法の高度な段階を示すフローチャートである。
【0017】
【
図9】本発明の少なくとも1つの実施形態による量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するための動作を実行するのに好適な、概して900と称されるコンピュータのコンポーネントを表すブロック図である。 例えば、コンピュータ900は、本発明の様々な実施形態による、
図1、
図2、及び
図6に含まれ、
図8に関して説明されるものなどの様々なプロセスを実装する様々なコンピューティングコンポーネントの代表例であり得る。
【0018】
添付図面は、実施形態に含まれるように、デバイス又はパーツの簡略化された代表例を示す。図面に表した技術的な特性は、必ずしもスケール調整されない。特に、
図7A及び
図7Bに示されるキュービット及びチューナブルカプラのレイアウトは、縮尺通り描かれない。図における、類似した又は機能的に類似した要素は、そうでないと明示されない限り、同じ参照符号を割り当てられている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は概して、量子処理装置及びそのような装置の動作方法に関する。それは特に、量子処理装置を動作させる方法に関し、ここで、補償電流信号は、遮蔽回路に印加され、キュービットチップの所与のコンポーネントを、キュービットチップ上の隣接するコンポーネントによって生成される漂遊磁場から磁気的に遮蔽する。
【0020】
本発明の実施形態は、キュービットが外部磁場に対して非常に感受性が高いことを認識している。これは特に、とりわけ直流(DC)磁場が個々の計算キュービットの周波数を調整するのに使用され、及び/又は交流(AC)場がチューナブルカプラを調節するのに使用される超伝導キュービットに当てはまる。本発明の実施形態は、隣接するキュービット又は伝送ラインからの漂遊磁場及びクロストークがまた、キュービットに影響を及ぼす可能性があり、これが望ましくないことをさらに認識している。通常、より高い集積度を用いた場合、数値は、より下限へ移動すると予測される。
【0021】
磁気遮蔽ソリューションは、量子コンピュータ用に開発されてきた。そのようなソリューションは、外部漂遊場の静的磁気遮蔽又は能動的遮蔽に依存し、すなわち、そのようなソリューションは、量子処理機構全体を保護する目的である。
【0022】
本発明の実施形態は、必要とされる領域の外側で磁場を最小限に抑えるか、又は隣接するキュービットに対する磁場を局所的に最小限に抑えるように能動的磁気遮蔽を使用する。本発明の実施形態は、フラックスチューニング可能性が動的カプラを構築するにあたっての利点であることを認識している。そのようなカプラは、ゲート速度を高めるのに電荷又はフラックスキュービット間で使用することができる。本発明の実施形態は、フラックスチューニング可能な要素が、他の及び/又は隣接するスクイド(squid)と相互作用する漂遊磁場を作成することを認識している。有意義なこととして、漂遊場を制御することができれば、フラックスチューニング可能な要素は魅力的であろう。本発明の実施形態は、漂遊磁場の著しい局所化した低減を生成する。
【0023】
本発明の実施形態は、意図される磁場に適用された電流と線形に漂遊場スケールを適用することによって、前述の欠陥を改善する。結果として、フィードバックループは必要とされず、スケール調整された補償電流を使用して、望ましくない漂遊場を最小限に抑える。本発明の実施形態はさらに、補償を簡略化することによって前述の欠陥を改善する。本発明の実施形態は、すべてのキュービット及びコイルを一平面に有し、その結果、チップ表面上の場はすべてがz方向になる。本発明の実施形態は、追加の材料を必要とせずにチップ上で統合される。本発明の実施形態は、局所クロストーク補償を使用して、より少ない周波数クラウディング効果をもたらす。本発明の実施形態はさらに、隣接するキュービットなどの漂遊場の局所遮蔽を使用する。本発明の実施形態は、周波数選択的遮蔽を使用する。本発明の実施形態は、アグレッサの既知の磁場を生成する信号を使用する。本発明のこれらの実施形態において、補償コイルがビクティムを遮蔽するための電流又は形状を導き出すことができ、センサも制御ループも必要とされない。本発明の実施形態において、磁場は、電流を線形的にスケール調整して、アグレッサ電流に比例する補償電流を生じる。本発明の実施形態において、微細な粒径の解像度は、ミクロンなどの小さな寸法での効果の補償を可能にする。
【0024】
本発明の実施形態は、局所磁気遮蔽、コイルの外側の磁気遮蔽、場のキャンセリングのためのスケール調整された電流、及び同一の電流、幾何学的スケーリングによる場のキャンセリングの1つ又は複数の組み合わせを含む。
【0025】
本発明は、任意の可能な技術的詳細レベルの統合におけるシステム、方法、及び/又はコンピュータプログラム製品であり得る。コンピュータプログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させるためにコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読記憶媒体(単数又は複数)を含んでよい。
【0026】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスによって使用される命令を保持及び格納し得る有形のデバイスであり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子ストレージデバイス、磁気ストレージデバイス、光学ストレージデバイス、電磁ストレージデバイス、半導体ストレージデバイス、又は前述したものの任意の好適な組み合わせであってよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非包括的リストは、以下に挙げる、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピディスク、命令が記録されたパンチカード又は溝における凸構造などの機械的に符号化されたデバイス、及び、前述したものの任意の好適な組み合わせを含み得る。コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書において使用される場合、電波又は他の自由に伝搬する電磁波、導波路又は他の伝送媒体を通じて伝搬する電磁波(例えば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)、又はワイヤを通じて伝送される電気信号などの一時的な信号それ自体と解釈されるべきではない。
【0027】
本明細書に説明されるコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体から各々のコンピューティング/処理デバイスに、又は、ネットワーク、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク及び/又は無線ネットワーク経由で外部コンピュータ又は外部ストレージデバイスにダウンロードされてよい。ネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ及び/又はエッジサーバを備え得る。各コンピューティング/処理デバイス内のネットワークアダプタカード又はネットワークインタフェースは、ネットワークからのコンピュータ可読プログラム命令を受信し、コンピュータ可読プログラム命令を、各々のコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読記憶媒体に格納するために転送する。
【0028】
本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、Smalltalk(登録商標)、C++などのオブジェクト指向のプログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は類似したプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書き込まれた、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存的命令、マイクロコード、ファームウェア命令、ステートセッティングデータ、又はソースコード又はオブジェクトコードのいずれかであり得る。コンピュータ可読プログラム命令は、ユーザのコンピュータ上で全体的に、ユーザのコンピュータ上で部分的に、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、ユーザのコンピュータ上で部分的に且つリモートコンピュータ上で部分的に、又は、リモートコンピュータ又はサーバ上で全体的に実行し得る。後者のシナリオにおいて、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを通じてユーザのコンピュータに接続され得るか、又は、接続は、(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて)外部コンピュータに行われ得る。いくつかの実施形態において、例えば、プログラマブルロジック回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はプログラマブルロジックアレイ(PLA)を含む電子回路は、本発明の態様を実行するように、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用することによってコンピュータ可読プログラム命令を実行して、電子回路をパーソナライズしてよい。
【0029】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して本明細書で説明される。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、及びフローチャート図及び/又はブロック図にあるブロックの組み合わせは、コンピュータ可読プログラム命令によって実装され得ることが理解されるであろう。
【0030】
これらのコンピュータ可読プログラム命令は、機械を作成するために、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は、他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供され得、それにより、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行する命令は、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又は複数のブロックにおいて指定される機能/動作を実装するための手段を生成する。これらのコンピュータ可読プログラム命令はまた、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、及び/又は他のデバイスに対して特定の方法で機能するよう指示できるコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよく、それにより、命令を格納したコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又は複数のブロックで指定される機能/動作の態様を実装する命令を含む製造品を有する。
【0031】
コンピュータ可読プログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は、他のデバイス上にロードされ得ることにより、一連の動作手順を、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上で実行させ、コンピュータ実装プロセスを生成し、それにより、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上で実行する命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又は複数のブロックにおいて指定される機能/動作を実装する。
【0032】
図面におけるフローチャート及びブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、及び動作を例示する。これに関して、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、指定される論理機能を実装するための1つ又は複数の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、又は部分を表し得る。いくつかの代替的な実装において、ブロックにおいて記載される機能は、図に記載された順序とは別の順序で生じ得る。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行され得るか、又は、関与する機能に応じてブロックが逆の順序で実行されることもあり得る。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロック、及び、ブロック図及び/又はフローチャート図におけるブロックの組み合わせが、指定された機能又は動作を実行するか、又は特別な目的のハードウェア及びコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースシステムによって実装され得ることにも留意されたい。
【0033】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されており、網羅的であることは意図されておらず、あるいは開示の実施形態に限定されることも意図されていない。記載された実施形態の範囲及び主旨から逸脱することなく、多くの修正及び変形が、当業者には明らかであろう。本明細書において使用される専門用語は、実施形態の原理、市場で見られる技術の実用的な適用又はそれに対する技術的改善を最適に説明し、又は、本明細書において開示される実施形態を他の当業者が理解することを可能にするように選択された。
【0034】
以下の説明は次のように構成される。最初に、一般的な実施形態及び高度な変形例をセクション1で説明する。セクション2は、より具体的な実施形態及び技術的実装の詳細に対処し、添付図面の詳細な説明を含む。本方法及びその変形例は、まとめて「本方法」と称されることに留意されたい。同様に、本装置及びその変形例は、まとめて「本装置」と称される。すべての参照Sn(例えば、S5、S10など)は、
図8のフローチャートの方法における段階を指す一方で、参照符号は、例えば
図1、
図2及び
図6に示される装置の物理的パーツ又はコンポーネントに関連する。
【0035】
1.一般的な実施形態及び高度な変形例
図2から
図7Bを参照すると、量子コンピュータ又は量子センシング装置であり得る、量子処理装置1及び1aなどの量子処理装置を動作させる方法に関する本発明の態様がまず説明される。以下は、この方法の本質的な特徴を説明している。
【0036】
量子処理装置1及び1aは、キュービットユニット、例えばキュービットチップを有すると想定される。キュービットユニットは概して、添付図面における参照符号20によって示される。参照20p、20、20a、20b、及び20cは、
図1、
図2、
図6、
図7A及び
図7Bに見られるように、そのようなキュービットユニットの可能な変形例を示す。キュービットユニットはとりわけ、2つのコンポーネント21、22、すなわち第1のコンポーネント21及び第2のコンポーネント22を含む。例えば、第1のコンポーネント21は、チューナブルカプラであり得る一方で、第2のコンポーネント22は、計算キュービットであり得る。一実施形態において、チューナブルカプラは、ゲートシーケンスを適用するのに使用される。さらなる例は、本発明の別の態様を参照して、後に詳細に説明される。
【0037】
さらに、キュービットユニット20は、遮蔽回路31~33s、又はそのような遮蔽回路の少なくとも一部を含む。遮蔽回路は、例えば、少なくとも部分的にコンポーネント21、22の一方又は両方を囲む1つ又は複数のループ(すなわち、らせん、又はコイル)を含み得る。そのようなループはまた、本明細書中で「補償ループ」とも称され得る。補償ループは概して、添付図面における参照符号31によって示される。参照31、31p、31s、31c、31v、及び31aは、
図2から
図7Bに見られるように、そのような補償ループの構成の可能な変形例を示す。
図5A~
図5Dを参照して後で説明されるように、遮蔽回路は場合により、整形回路を含んでよく、ここで、後者は、漂遊場を整形すると意図される追加のループを含む。
【0038】
図2及び
図6の例では、遮蔽回路31、31cは、キュービットチップ20、20aの平面(x、y)において第2のコンポーネント22を部分的に囲む補償ループを含む。さらなる例は、後に詳細に説明され、ここで、遮蔽回路は、第2のコンポーネント22に代わって、第1のコンポーネント21を囲む補償ループを含む。
【0039】
本方法は、第1の電流信号を第1のコンポーネント21に印加する段階を備える。さらに、第2の信号(電流又は電圧)は通常、以下に想定されるように、第2のコンポーネント22に印加され得る。印加された信号は、通例のとおり、量子処理において、2つのコンポーネント21、22を動作することを目的とする(
図8のフローにおける段階S10及びS20を参照)。実際に、そのような信号は、例えばカプラ及び/又はキュービットを駆動するために繰り返し印加される。
【0040】
一実施形態において、第1のコンポーネント21は、印加された第1の信号の結果として漂遊磁場を生成すると想定される。生じた漂遊磁場はさらに、量子コンピューティング装置1及び1aなどの量子処理装置の動作中に第2のコンポーネント22の動作に影響を与えると想定される。この理由から、第1のコンポーネント21は、場合によっては「アグレッサ」と称される一方で、第2のコンポーネント22は、場合によっては本明細書中で「ビクティム」と称される。
【0041】
この問題点に対処するために、本方法は、(段階S30で)補償電流信号を遮蔽回路31~33sに印加して、第2のコンポーネント22を、第1のコンポーネント21によって生成される漂遊磁場から磁気的に遮蔽する段階をさらに備える。段階S10及びS20で印加された信号は、コンポーネント21、22の所望の動作に応じて、同時に、又は同時ではなく印加され得ることに留意されたい。しかしながら、段階S10及びS30は通常、所望の遮蔽効果を達成するよう同時に実行される。段階S30で印加された補償電流信号は、本発明の別の態様を参照して、後に詳細に説明されるように、遮蔽回路の好ましい構成に起因して、場合により第1の信号を印加する段階(段階S10)の結果として得られ得る。その場合、段階S10及びS30は、同時だけでなく、同期的でもある。
【0042】
段階S30で印加された補償電流信号は、第1の信号の予め定められた関数に従って生成される信号である。予め定められた関数は、遮蔽回路の構成及び補償信号が信号生成器14によって生成される手段に起因して固定される。この予め定められた関数は、遮蔽回路31~33sによって少なくとも部分的に有効となる。予め定められた関数はまた、2項関係(数学的意味合いで)とみなすことができる。しかしながら、予め定められた関数は、遮蔽回路及び必要であれば、装置の他のコンポーネントの明示である。換言すると、遮蔽回路及び(必要に応じて補償信号を生成するための)装置の他のコンポーネントは、共同で、第1の電流信号及び補償電流信号の間で特定の対応を保証するように構成されている。
【0043】
第1の信号は通常、制御ユニット12、14の信号生成器14によって生成されて、第1の回路を介して第1のコンポーネント21に印加される。遮蔽回路は場合により、
図2で想定されるようにこの第1の回路と独立していてもよく、ここでは、遮蔽回路31は、キュービットユニット20に接続する回路20cと独立している。しかしながら、変形例では、遮蔽回路は、
図4から7に示されるように、並列に又は直列に、第1の回路21cに接続されている。すべての場合において、遮蔽回路の提唱される構成は、非常に簡素な回路レイアウトをもたらす。さらに、遮蔽回路を第1の回路に、例えばキュービットユニットにおいて直接、接続することにより、例えばキュービットチップ上のフットプリントを節減するために、信号生成器14から必要とされるコネクタ及びワイヤの数を低減させることが可能となる。
【0044】
遮蔽回路によって有効にされる予め定められた関数に起因して、印加された補償信号は、漂遊磁場を局所的に遮蔽して、それにより、これまでの能動的なソリューションにおいて必要とされたようないかなるセンサもフィードバックループも必要とせずに、第2のコンポーネントを保護することを可能にする。上記方法は、コンポーネント(アグレッサ及びビクティム)の単一ペアを参照して説明されているが、本方法は、多数のアグレッサ-ビクティムペアに(同時に、又は同時でなく)適用され得ることは、当業者に明らかであることに留意されたい。
【0045】
漂遊磁場を生成する第1の電流信号は、制御ユニット12、14によって識別されているので、遮蔽回路に印加された補償電流及び/又は遮蔽回路の形状(例えば、補償ループを含む)補償電流は、いかなるセンサ又は制御ループをも必要とせずに、第2のコンポーネント(ビクティム)の水準で残留磁場を低減するか、又は打ち消すよう最適化することができる。実際に、磁場強度は、電流と線形にスケール調整し、したがって、補償電流は、所望の遮蔽効果に到達するために、第1の電流に比例して、又はそれに等しく設定することができる。さらに、既述のとおり、遮蔽回路は通常、1つ又は複数のループを含み、その形状は、ビクティム22の水準で漂遊場を低減するか、又は打ち消すよう最適化することができる。また、ループに関して到達することができる解像度(サブミクロンレベル)により、漂遊場を、小さなスケール(例えば、数ミクロン)で補償することが可能となる。
【0046】
量子処理装置を動作する方法は通常、(i)静的磁気遮蔽;又は(ii)ヘルムホルツコイル及びキュービットユニットに近接するフィールドセンサを使用した、量子装置全体に対する外部漂遊場の能動的遮蔽に依存する。それに対して、本ソリューションは、局所的であり、すなわち、それは、ビクティムコンポーネントの周囲で局所的に作用する。局所的に印加される補償信号がアグレッサ21に印加された信号に依存する限りは、それは静的ソリューションではない。それがセンサ及びフィードバックループを必要としない限り、それは能動的ソリューションでもない。むしろ、本発明の実施形態は、セミアクティブなソリューションとみなすことができ、隣接するコンポーネント21(例えば、計算キュービット又はチューナブルカプラ)に起因して発生する漂遊磁場を局所的に遮蔽して、ビクティムコンポーネント22(例えば、計算キュービット)を保護することを目的とする。
【0047】
提唱されるアプローチは主に、キュービットユニットの外側で生成される漂遊場ではなく、キュービットユニット20の水準で(例えば、キュービットチップ上で)生成される漂遊場を遮蔽することを目的とすることに留意されたい。しかしながら、遮蔽回路は潜在的に、必要であれば、キュービットユニット20の外側で生成される固定漂遊場をさらに補償するように設計され得る。
【0048】
本発明の実施形態は、追加の(例えば、非適合性)材料を必要とせずに、またキュービットチップを製造するのに使用された製造方法に対して実質的な変更を必要とせずに、キュービットチップと統合することができる。補償回路は必要とされ(
図1及び
図2を比較)、それは好ましくは、
図1のキュービットユニット20pを得るのに使用されるのと同じ処理技術を使用して実現される。すなわち、キュービットユニット(例えば、キュービットチップ)の残りに使用されるのと同じタイプの導体(又は超伝導体)は、遮蔽回路31~33sを得るのに依存され得る。特に、遮蔽回路は、キュービットチップ上で必要とされる他の導体及び構造を製造するのに使用されるのと同じリソグラフィマスクを使用して製造され得る。そのような導体の典型的な寸法は、マイクロメートル未満の解像度を用いて、マイクロメートルのスケールである。
【0049】
興味深いことに、本アプローチはまた、局所クロストーク補償を達成するのに使用することができ、それは、ビクティム、すなわち第2のコンポーネント22の水準で周波数クラウディング効果の低減をもたらす。それでも、提唱されるソリューションは、ビクティムコンポーネントの周波数に影響しない。
【0050】
本方法の追加の特性は、本発明の別の態様、すなわち量子処理装置1、1aに関与する説明の残りにおいて暗黙的に対処されている。ここで、この装置は、
図2~
図6を参照して詳細に説明されている。
【0051】
上述するように、装置は、遮蔽回路31~33sを有するキュービットユニット20及び2つのコンポーネント21、22、すなわち第1のコンポーネント21(アグレッサ)及び第2のコンポーネント22(ビクティム)を備える。本装置は、本方法と矛盾なく、S10、S30の電流信号を印加することが可能であるように、第1のコンポーネント21及び遮蔽回路31~33sのそれぞれに動作可能に接続されている制御ユニット12、14をさらに備える。制御ユニットは、必要に応じて、以下で想定されるように信号をこのコンポーネントに印加して、それを動作することが可能であるように、第2のコンポーネント22にさらに接続され得る。
【0052】
動作中、第1の電流信号及び第2の信号(電流及び電圧)は、それぞれ、第1のコンポーネント21及び第2のコンポーネント22に印加されて、2つのコンポーネント21、22を動作させる。これにより、装置の動作中、第1のコンポーネント21に、第2のコンポーネント22の動作に影響を与える漂遊磁場を生成させる。この問題に対処するために、本装置はさらに、第2のコンポーネント22を、第1のコンポーネント21によって生成される漂遊磁場から磁気的に遮蔽するように、補償電流信号を遮蔽回路31~33sに印加するように構成されている。また、補償電流信号は、第1の信号の予め定められた関数に従って生成され、ここで、先で説明したように、この関数は、装置の遮蔽回路、及び場合により他のコンポーネント(例えば、制御ユニット12、14のコンポーネント)により発現される。
【0053】
制御ユニット12、14はとりわけ、コントローラ12及び1つ又は複数の信号生成器14を有し得る。コントローラ12は、信号生成器14に接続され、ここで、後者は、一方では遮蔽回路に、また他方では各々の回路を介してキュービットユニットのコンポーネント21、22に接続されている。
図2の例では、単一信号生成器14が使用され、それは、遮蔽回路31及びコンポーネント21、22に(回路20cを介して)接続されている。
【0054】
本発明の装置は概して、簡潔のために、2つのコンポーネント21、22のみ、すなわちアグレッサ及びビクティムを参照して説明される。しかしながら、キュービットユニット20は、10個又は100個のコンポーネント、又はそれ以上を有してもよく、本原理は場合により、キュービットユニットにおいて任意数の潜在的なアグレッサ及びビクティムに適用され得る。一実施形態において、遮蔽回路は、いくつかのコンポーネントを遮蔽するように構成されてよく、又はいくつかの遮蔽回路は、それらを達成するように提供されてよい。
【0055】
2つのコンポーネント21、22それぞれが、例えば、(例えば、トランズモンタイプの)固定周波数超伝導キュービット、(固定周波数トランズモンキュービットを結合するための)チューナブルカプラ、又は実際には、単なるジョセフソン接合であり得る。
【0056】
一実施形態において、潜在的なビクティムは、固定周波数量子回路22、23、すなわち本装置において計算キュービットとして構成されている回路である。量子回路22、23はそれぞれ、チューナブルカプラ21にさらに結合されてもよい。チューナブルカプラ21の周波数は、例えば量子処理装置における選択的に対処可能なエネルギー転換を駆動するよう調節することができる。チューナブル結合要素は、例えば、周波数をチューナブル超伝導キュービットとして具現化されてよく、すなわちSQUIDループを伴っている。量子回路22、23それぞれは通常、非線形量子回路であり、それらは、計算キュービットとして使用され得る。「非線形」とは、量子回路の少なくとも2つの別個のエネルギーレベル(すなわち、異なるエネルギーの)に対処することが可能であることを意味する。しかしながら、固定周波数量子回路はまた、変形例において調和振動子でもあり得る。周波数チューナブル結合要素として作用するチューナブルカプラ21はまた、所望ではない漂遊場を生成する可能性があり、したがって提唱されるソリューションの有益性を生成する可能性がある。
【0057】
「超伝導」要素は、潜在的にある特定の条件下で超伝導性になり得る要素であることに留意されるべきである。したがって、本明細書中で超伝導コンポーネントと言及されるコンポーネント(例えば、超伝導キュービット、チャネル、回路など)は、1つ又は複数の潜在的に超伝導性の材料を有するコンポーネントである。すなわち、そのような材料は、例えば、温度及び磁場のある特定の条件下で超伝導性になり得るアルミニウム(Al)又は窒化チタン(TiN)を有し得る。したがって、キュービットユニットが超伝導ユニット(例えば、超伝導体を含むチップ)である場合、キュービットユニットは、アグレッサ21に接続している第1の回路(例えば、回路21c)、ビクティムに接続している第2の回路(例えば、回路22c)、及び遮蔽回路31~33sの少なくとも一部を有してもよく、ここで、そのような回路部分は、潜在的に超伝導状態になり得る。
【0058】
しかしながら、トランズモンを超えて、エックスモン及びゲートモンキュービットを含む他のタイプの超伝導キュービットは、場合により本アプローチから利益を受ける場合がある。超伝導キュービットユニットに加えて、本アプローチは、スピンベースの量子回路(又はショート用のスピンキュービット)及びトポロジカルキュービットを含む、他のソリッドステートキュービットアーキテクチャに好適に適用され得ることは、当業者に明らかである。
【0059】
図4~
図7Bに示されるように、第1の電流信号は通常、第1の回路21cを介して第1のコンポーネント21に印加されるS10。この回路21cの末端部分は通常、
図6、
図7A及び
図7Bの場合のように、実際に第1のコンポーネント21の一部をなすとみなされてもよく、ここで、フラックスライン21cの末端部分は、チューナブルカプラ21の一部をなすとみなすことができる。一実施形態において、
図5A~
図5Dに見られる中心ループ21cは、チューナブルカプラ又はジョセフソン接合の一部をなす。
【0060】
一実施形態において、遮蔽回路31~33sは、第1の回路21cに接続して、装置が、先述の予め定められた関数を有効にして実装させる。例えば、遮蔽回路は、回路部分21cと直列に接続されたループを含んでよく、例えば
図5C及び
図5Dにおけるループ31sを参照のこと。変形例では、遮蔽回路は、回路部分21cと並列に接続されたループを含んでよく、例えば
図4、
図5A、
図5B、
図6、
図7A及び
図7Bにおけるループ31p、31c、31v及び31aを参照のこと。並列接続は、超伝導回路に関して回路部分21cにおいて、及び補償ループ31p、31c、31v、31aにおいて同一の電流が適用されることをもたらす。直列接続は、2つの回路において各々の抵抗に関係なく、同一の電流を保証する。
【0061】
より一般的には、S10で印加された第1の電流信号と同じ振幅を有するS30で印加された補償電流信号をもたらすいくつかの構成が、遮蔽回路に関して企図され得る。変形例では、遮蔽回路は、S30で印加された補償電流信号が、S10で印加された第1の電流信号の振幅に関してスケール調整される振幅を有することを保証するよう設計され得る。これはとりわけ、例えば
図2に示される配置を用いて達成されてもよく、ここで、遮蔽回路は、キュービットユニット20を制御ユニット12、14に接続している回路20cとは独立している。両方の場合で、遮蔽回路は、漂遊場の打ち消しを保証するように、補償電流信号及び第1の電流信号が同期された周波数及び位相を有することをさらに保証するように構成され得る。
【0062】
第1のコンポーネント21に接続している第1の回路の他に、量子処理装置1、1aは、
図6、
図7A及び
図7Bに表されるように、キュービットユニット20、20aのコンポーネント22、23を接続している、1つ又は複数の第2の回路22cを含んでよい。超伝導キュービットチップの文脈で、回路21c及び22cは、場合によりカプラ/共振器として構成されるチャネルを含む。
図2における回路20cと同様に、回路21c、22cを使用して、動作中に第1及び第2の信号を第1のコンポーネント21及び第2のコンポーネント22、23に印加する。別個の信号は通常、第2のコンポーネント22、23、例えばキュービットに印加される。回路20c、22cを介してキュービットに印加された信号は通常、
図6及び
図7A及び
図7Bの例にみられるように、あるキュービット23を、チューナブルカプラ21を介して別のキュービット22に結合する伝送ラインに沿って伝送された信号を生じ得る。
【0063】
例えば、
図6において、制御ユニット12、14は、第1の回路21cを介して第1のコンポーネント21に接続され、さらに第2の回路22cを介して第2のコンポーネント22、23に接続されている。遮蔽回路31c及び第1の回路21cは、予め定められた関数を有効にするように、制御ユニット12、14に並列に接続されている。第1の回路21c及び遮蔽回路31cは、この例では超伝導回路であるので、並列接続は、各回路経路において同一の電流を保証する。
【0064】
一実施形態において、制御ユニット12、14は、遮蔽回路31c、第1の回路21c、及び第2の回路22cのそれぞれに接続している単一信号生成器14を有する。一実施形態において、信号生成器14は、予め定められた関数を有効にするように、例えば容量型分圧器又は伝送ラインカプラであり得るカプラ40を介して遮蔽回路31c及び第1のコンポーネント21それぞれに接続されている。容量型分圧器及び伝送ラインカプラは、当業者に既知である。しかしながら、結合メカニズムの物理学は、
図6に使用した描写にもかかわらず、様々である。
【0065】
遮蔽回路が第1の回路21cを囲むループ31pを本質的に有する他の並列構成は、
図4、
図5A及び
図5Bに示されるように企図され得ることが理解されるべきである。そのような例において、ループ31pは、第1の回路21cから、又は第1の回路21cにつながる導体から、単に並列に接続している。
【0066】
並列構成の他に、
図5C及び
図5Dに示されるように、補償ループ31sが、第1の回路21cに接続している導体と直列に接続している単なる直列構成が企図され得る。
図4~
図5Dに示される回路レイアウトにおいて、信号生成器14は、第1の回路21cに、直接的に又は間接的に接続されている一方で、遮蔽回路31~33sのループは、キュービットユニット内で(例えば、キュービットチップ上で)、第1の回路21cに(並列に及び/又は直列に)接続していることに留意されたい。
【0067】
さらに、
図4~
図7Bのそれぞれにおいて、第1のコンポーネント21及び第2のコンポーネント22は、本質的にキュービットユニット20における同じ平面(x,y)、すなわちキュービットチップの主要平面上に配置されている。
図4、
図5A~
図5D、
図6及び
図7Bのそれぞれにおいて、遮蔽回路は、平面(x,y)において、第1のコンポーネント21(アグレッサ)を囲む外側ループを有する。変形例において、遮蔽回路のループのいくつか又はすべては、チップの別の層又は別の側面上に、すなわちコンポーネント21、22、23が配置されている平面(x,y)とは別個であり、依然として並列であり、且つその近くにある平面において形成され得る。
【0068】
対比して、
図2、
図3A、
図3B及び
図7Aでは、遮蔽回路のループは、第2のコンポーネント22、23、すなわちビクティムを囲む。遮蔽回路は、
図2~
図6において単一ループを含む。より一般的には、遮蔽回路は、それぞれ、例えば
図7Aを参照して平面(x,y)、又は平面(x,y)と並列であるが非常に近い平面において、コンポーネント21、22、23の1つ又はそれぞれを囲む、1つ又は複数の補償ループを含み得る。しかし、回路レイアウトの制約から、そのようなループは、添付図面に想定されるように、それらの各々のコンポーネントを完全に囲み得るわけではない。また、
図7Aに示されるように、補償回路はまた、潜在的なビクティム22、23の2つ又はそれ以上のそれぞれを囲むように、コイルされているいくつかのループを含み得る。
【0069】
図5A~
図5Dの例において、遮蔽回路31~33sは、補償回路及び整形回路32p~33sの両方を有する。補償回路は、内側ループを囲む外側ループ31p、31sを含む。内側ループはとりわけ、整形回路の2つ又はそれより多い追加のループ32p~33sを含んでもよく、ここで、追加のループ32p~33sのそれぞれは、チップの平面における第1のコンポーネント21(そのループ21cを含む)を囲む。そのような例において、追加のループは、後者によって放出される漂遊場を整形するようにアグレッサ21の周辺でコイルされている。
【0070】
整形回路のループ32p~33sは、好ましくは補償回路ループ31p、31sと同じ平面に配置される。生じたループ31p、31s、32p、32s、33p、33sはすべて、外側補償ループ31p、31sが、チップの平面における2つ又はそれより多い追加のループ32p~33sを囲むように同心円状であり得る。一実施形態において、これらのループの幾何学は、ビクティムの位置にある漂遊場強度を最小限に抑えるように共同で最適化される(例えば、
図3A及び
図3Bで実行されているように、シミュレーションを使用したトライアルアンドエラーによって)。
【0071】
図4でさらに示されるように、補償ループ31pの電流方向は通常、アグレッサに含まれる内側ループ21cの電流方向とは反対である。同様に、
図5A~
図5Dにおいて、遮蔽回路は、印加された電流信号が、整形回路のループにおいて同じ回転方向に従って循環するように設計されているのに対して、外側ループ31p、31sに流れる電流は、反対の回転方向を有する。さらなる設計が得られてもよく、例えば、ビクティムの水準で残留磁場強度を適切に改造するように、電流の流れに関して交互の回転方向をもたらす。実施形態において、いくつかのループは、磁場を整形するようにアグレッサを囲み得る一方で、補償ループは、ビクティムを囲む(図示されていない)。
【0072】
一実施形態において、遮蔽回路に印加された補償信号は、(振幅において)第1の電流に等しいか、又は第1の電流に関してスケール調整され得る。その目的で、遮蔽回路は、第1の回路に、並列に又は直列に接続され得る。したがって、第1の電流信号及び補償電流信号のそれぞれは、場合により1つの同じ初期電流信号として印加され得る。さらに、この初期信号は最終的に、別個のコンポーネント21、22、23に達して、これはとりわけ、(アグレッサに適用された)第1の電流及び(補償ループに適用された)補償電流を生じる。
【0073】
上記実施形態は、添付図面を参照して簡潔に説明されており、多数の変形例を含み得る。上述特性のいくつかの組み合わせが企図され得る。次のセクションで、例が与えられる。
【0074】
2.特定の実施形態、技術的実装の詳細、及び図面の詳細な説明
2.1 好ましい量子回路の説明
好ましくは、量子回路22、23(すなわち、潜在的な「ビクティム」キュービット)は、超伝導量子回路として具現化されており、基礎計算要素を成す。本装置1、1aは通常、高周波スペクトルで動作するよう設計され、通常、希釈冷凍器を使用して、100mK未満の温度まで下げて冷却される必要がる。それにもかかわらず、装置のコンポーネントは、従来の電子機器で対処することができる。一実施形態において、量子処理装置1、1aは、通常50~400キュービットの範囲で、多数のソリッドステートキュービットを備える。一実施形態において、量子装置は、特にいくつかの物理的重複性キュービットが論理的エラー訂正キュービットを形成するのに必要とされる場合に、より少数又はより多数のキュービットを含み得る。
【0075】
特に、本量子回路は好ましくは、固定周波数のトランズモンタイプの量子回路として、すなわち単一ジョセフソン接合超伝導キュービットとして実現される。このようにして、処理装置は、固定周波数トランズモンのコヒーレンス時間を活用することができる。一実施形態において、キュービット22、23は、チューナブルカプラ21を介して結合され、潜在的にカプラ21からの残留漂遊場のビクティムである。一実施形態において、カプラ21はそれぞれ、トランズモンとして実現され得るが、後者は、基礎計算要素の一部をなさない。
【0076】
一実施形態において、チューナブルカプラ21は、1つ又は複数の量子回路22、23に容量的に結合される。例えば、
図6に示されるように、チップ20aは、2つの固定周波数の、単一ジョセフソン接合超伝導キュービット22、23及びチューナブルカプラ21を含み得る。この例において、チューナブルカプラ21は、トランズモンタイプのキュービットとして、非調和振動子回路としてレイアウトされる。さらに、カプラ21は、当業者に既知であるように、追加のジョセフソン接合により余分な自由度が付与され(図示されていない)、これは超伝導量子干渉デバイス(SQUID)ループを形成する。次に、SQUIDループは、カプラの周波数を調整するのに使用され得る。同様のチップアーキテクチャは、
図7A及び
図7Bで想定される。
【0077】
トランズモンタイプの超伝導量子回路は、高周波数(RF)技術によって制御され、数mKの温度のみで動作される。RF信号は通常、同軸ケーブルでクライオスタットに供給される。2つのチャネルは通常、キュービットを制御するのに十分である。減衰器(図示されていない)は通常、中間温度のプラットフォーム上に設置されて、上向き及び下向きの経路のそれぞれで、信号を熱運動化する。変形例では、キュービットは、スピンベースの量子回路、又はショート用のスピンキュービットとして構成される。他の変形例では、キュービットは、トポロジカルキュービットである。すべての場合において、キュービットが配置されているプラットフォームは通常、非常に低温で動作されると意図される。
【0078】
2.2 図面の詳細な説明
2.2.1
図1
図1は、それ自体では本発明に従わない。しかしながら、
図1は、通常実施形態に関与され得る量子処理装置のコンポーネントを示す。実際に、実施形態において、また
図1に示されるように、量子処理装置は、(少なくとも)3つのプラットフォームを備え得る。これらは、キュービットが配置される第1のプラットフォームを備える。第1のプラットフォームは、1つ又は複数のキュービットチップ20pを含有し、極低温T
1(例えば、20mK)にまで冷却されるよう設計されている。T
1よりも高い第2の温度T
2にまで冷却されるよう設計されている第2のプラットフォームが提供される。温度T
2は通常、2K及び6Kの間、例えば3K又は4Kである。第3のプラットフォームは、T
2よりも高い第3の温度T
3で(例えば、室温、300Kで)動作される。
【0079】
(必要とされる電流及び/又は電圧信号を生成する)信号生成器14pは、それ自体が量子処理装置を外界とインタフェースで接続するようにコンピュータ11に接続されている(とりわけ、シーケンシングを実行する)制御電子回路12pに接続されている。
【0080】
2.2.2
図2
図2は、簡潔にするために3つのプラットフォームのみを示す。しかしながら、当技術分野では通例であるように、1つ又は複数の中間プラットフォームがさらに提供されてもよい。例えば、第1のプラットフォームは20mKで、第2のプラットフォームは3Kで動作させられてよく、例えば50Kで動作させられるさらなる中間プラットフォームは、室温プラットフォーム未満で提供され得る。
【0081】
図2は、
図1の配置と本質的に類似した配置を示す。但し、
図2は、生成器14に接続されている遮蔽回路31をさらに含み、ここで、遮蔽回路31は、キュービットチップ20のコンポーネント22を部分的に囲み、コンポーネント22を、隣接するコンポーネント21によって生成される漂遊場から磁気的に遮蔽する補償ループを有する。コンポーネント21、22に印加されると意図される信号はまず、制御電子回路12の水準で並べられ、相当する信号は、信号生成器14によって生成され、回路20cを介してキュービットチップ20へと渡される。一実施形態において、補償ループ31に印加された補償信号は、この例においてコンポーネント21に適用された電流に関してスケール調整される。
【0082】
2.2.3
図3
図3A及び
図3Bは、
図2の構成と類似した構成で、補償の非存在下で(
図3A)、又はセミアクティブな補償を使用して(
図3B)、シミュレーションによって得られたコンタープロットを示す。すなわち、補償コイル31は、ベクトルrによってマッピングされた点に、すなわちアグレッサ21のr=|r|の距離で中心に置かれたビクティム22を囲む。
【0083】
図3A及び
図3Bは、コンポーネント21、22が配置されるキュービットチップの主要平面に相当する平面(x,z)における総磁場強度の選択されたコンターラインを示す。コンター値は、0.1、0.5、1、2、10、20、100、200である。コンター値はすべて(値200以外)は、それら各々のコンターの近傍に示されている。図は、補償電流信号を、ビクティム22を囲む遮蔽回路のループ31に印加することによって、アグレッサ21によって生成される漂遊場がビクティム22の水準でどのように局所的に遮蔽され得るかを示している。
【0084】
プロットは、インタフェースの両側にある材料の組成間の相違に起因して、水平面に対して(y=0で)完全に対称的ではないことに留意されるべきである。平面y=0未満の材料は、この実施例ではケイ素であると想定され、それは空気に曝されて、したがって、わずかな非対称性が観察される。透磁率は、ケイ素及び空気に関してはほぼ同じであるが、誘電率は、空気に関しておよそ10倍低い(11.9対1.0)。ケイ素材料は、いかなる自由キャリアも伴わずにロスレスであると想定される。
【0085】
コイルの直径は、120ミクロンに等しいと想定され、コンポーネント21、22の2つの中心間の距離は、250ミクロンであり、コイルを形成するワイヤの幅は2ミクロンであり、その高さは、1ミクロンである。アグレッサ電流は10mAであるのに対して、補償電流は、0.111mAである。磁(H)場強度は、補償電流を適用しない場合、第2のコンポーネント22の水準で0.82A/mである(
図3A)。補償コイルはすでに漂遊場を幾分低減することに留意されたい。磁(H)場強度は、補償電流を適用すると、0.015A/mに低減する(
図3B)。
【0086】
2.2.4
図4
図4は、外側補償ループ31pがどのように、原点に位置付けられるアグレッサ21の一部をなす内側回路21cと並列に接続され得るかを示している。ビクティム22はまた、r上で、すなわちアグレッサ21の距離r=|r|で中心に置かれている。補償コイル31pは、コイル21cを囲む。破線は、ショートを含まない、並列接続を保証するのに使用される導体(例えば、thoughバイアスを含む)、すなわち、安全な接続を保証するように平面外で実現された回路部分を示す。(いかなる整形ループも用いずに)アグレッサ21で中心に置かれた単一の外側補償ループ31pのみを使用することにより、通常はビクティム22の水準で漂遊場の過補償をもたらす。
【0087】
したがって、
図5A~
図5Dに見られるように整形回路の追加のループを使用すること、又は
図2に示されるようにビクティムの水準で補償ループを設置することが好ましい。
【0088】
2.2.5
図5A~
図5D
図5A~
図5Dはまた、内側コイル21c並びに2つの追加のコイル32p、33p;32s、33sを囲む外側補償ループ31p、31sを示す。ビクティムは図示されていない。
図5A、
図5Bにおいて、外側ループ31pは、内側コイル21cと並列に接続されている。
図5Aにおいて、整形コイル32p、33pもそれぞれ、内側コイル21cと並列に接続されているのに対して、
図5Bにおいて、コイル32s、33sは、内側コイル21cと直列に接続されている。
図5C及び
図5Dにおいて、コイルはすべて、別個の回路設計のために直列に接続されている。また、破線は、ショートを含まない接続を保証するように平面外で実現された回路部分を表す。
【0089】
2.2.6
図6
図6の例では、量子コンピューティング装置1aのコンポーネント21~23は、セクション1で説明したように、制御ユニット12、14に接続されている。アグレッサ21は、第1の回路21cを介して制御ユニットに接続され、遮蔽回路31cは、カプラ40を介して回路21cから接続している。キュービットユニット20aは、2つの超伝導計算キュービット(トランズモン)22、23を有する超伝導キュービットユニットであると想定される。第1のコンポーネント21は、チューナブルカプラであり、第1の回路21cは、この場合、フラックスラインである。トランズモン22、23は、伝送ラインを介してカプラに接続されている。第1の電流信号は、カプラ21を駆動するよう回路21cを介して印加される一方で、追加の電流信号は、トランズモン22、23を駆動するよう第2の回路22cを介して印加される。
【0090】
一実施形態において、別の遮蔽回路(図示されていない)は通常、第2のキュービット23を保護するのに使用され得る。
【0091】
2.2.7
図7A及び
図7B
図7A及び
図7Bは、超伝導キュービットチップレイアウト20b、20cを表し、ここで、2つのトランズモンタイプの計算キュービット22、23は、チューナブルカプラ21を介して結合される。その結果、計算キュービット22、23が動作中にチューナブルカプラ21によって放出される漂遊磁場を受け得る。キュービット22、23は、回路22cに接続されている。伝送ラインは、各キュービット22、23をチューナブルカプラ21に接続している。
【0092】
より正確には、キュービットは、固定周波数トランズモン22、23であり、それらは、
図6に類似して、チューナブルカプラ21として作用するフラックスチューナブルトランズモンに容量的に結合されている。チューナブルカプラ21は、カプラ21の超伝導量子干渉デバイス(SQUID)ループを通り抜ける、電流I(t)及び結果として生じるフラックスΦ(t)を提供するフラックスライン21cによって制御されている。固定周波数キュービット22、23のそれぞれは、個々の読み出し共振器R1、R2に結合されている。
【0093】
図7Aはさらに、計算キュービットそれぞれの周辺でコイルされた遮蔽回路(破線)31vを示す。遮蔽回路は、並列にフラックスライン21cから分岐している。
【0094】
図7Bは、唯一のチューナブルカプラ21の周辺でコイル巻きされた遮蔽回路(破線)31aを示す。両方の場合において、実施形態によれば、遮蔽回路は、計算キュービットを、チューナブルカプラによって生成される漂遊磁場から遮蔽する。
【0095】
2.2.8
図8
図8は、
図2又は
図6で表されるような装置を用いて実行される動作の高度なフローである。段階S5では、第1の電流信号をアグレッサに、また補償信号を遮蔽回路に同時に印加するようにS10、S30、それ自体がコントローラによって制御された信号生成器のシンセサイザ(図示されていない)により、入力信号が合成される。別の信号は、必要に応じて、ビクティムコンポーネントに適宜印加されるS20。出力信号は、例えばコントローラによって正式に収集されるS40。そのような段階は、必要に応じて量子計算を実行するよう繰り返す。
【0096】
本発明は限定数の実施形態、変形例、及び添付図面を参照して説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が成され得て、均等物で置換され得ることが当業者らには理解されるだろう。特に、所与の実施形態、変形例において記載されるか、図面において示される特性(デバイスのような、又は方法のような)は、本発明の範囲から逸脱することなく、別の実施形態、変形例又は図面における別の特性と組み合わされ得るか、又は置き換えられ得る。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内に留まる、上記実施形態又は変形例のいずれかに関して説明された特性の様々な組み合わせが企図され得る。さらに、特定の状況又は材料を、本発明の教示に、その範囲から逸脱することなく適合させるべく、多数の軽微な変更が成され得る。故に、本発明は開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。さらに、上記で明示的に触れたもの以外に多くの他の変形例が企図され得る。
【0097】
2.2.9
図9
図9は、本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減する動作を実行するのに好適な、概して900と称されるコンピューティングデバイスのコンポーネントを表すブロック図である。コンピューティングデバイス900は、1つ又は複数のプロセッサ904(1つ又は複数のコンピュータプロセッサを有する)、通信ファブリック902、RAM916及びキャッシュ918を含むメモリ906、永続ストレージ908、通信ユニット912、I/Oインタフェース914、ディスプレイ922、及び外部デバイス920を備える。
図9は、一実施形態の単なる例示を提供し、異なる実施形態が実装され得る環境に関していかなる限定も示唆するものではないことが理解されるべきである。表した環境に対する多くの修正が行われ得る。
【0098】
表されるように、コンピューティングデバイス900は、通信ファブリック902で動作して、それが、コンピュータプロセッサ904,メモリ906、永続ストレージ908、通信ユニット912、及び入力/出力(I/O)インタフェース914の間の通信を提供する。通信ファブリック902は、データを渡すのに好適な任意のアーキテクチャで実装され得るか、又はプロセッサ904(例えば、マイクロプロセッサ、通信プロセッサ、及びネットワークプロセッサ)、メモリ906、外部デバイス920、及びシステム内の任意の他のハードウェアコンポーネント間の情報を制御し得る。例えば、通信ファブリック902は、1つ又は複数のバスを用いて実装され得る。
【0099】
メモリ906及び永続ストレージ908は、コンピュータ可読記憶媒体である。表される実施形態において、メモリ906は、ランダムアクセスメモリ(RAM)916及びキャッシュ918を有する。一般的に、メモリ906は、任意の好適な揮発性又は不揮発性の1つ又は複数のコンピュータ可読記憶媒体を有し得る。
【0100】
本発明の実施形態による量子コンピューティングチップのコンポーネントに対する漂遊磁場の影響を低減するためのプログラム命令は、メモリ806の1つ又は複数のメモリを介して、各々のコンピュータプロセッサ904の1つ又は複数による実行のために、永続ストレージ908、又はより一般的には任意のコンピュータ可読記憶媒体に格納され得る。永続ストレージ908は、磁気ハードディスクドライブ、ソリッドステートディスクドライブ、半導体ストレージデバイス、リードオンリメモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、又はプログラム命令又はデジタル情報を格納することが可能な任意の他のコンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0101】
永続ストレージ908によって使用される媒体はまた、着脱可能である。例えば、着脱可能なハードドライブが永続ストレージ908に使用されてよい。他の例には、永続ストレージ908の一部でもある別のコンピュータ可読記憶媒体に転送するためにドライブに挿入される光及び磁気ディスク、サムドライブ、及びスマートカードが含まれる。
【0102】
通信ユニット912は、これらの例において、他のデータ処理システム又はデバイスとの通信を提供する。これらの例において、通信ユニット912は、1つ又は複数のネットワークインタフェースカードを有し得る。通信ユニット912は、物理的及び無線通信リンクのいずれか又は両方を用いて通信を提供してよい。本発明のいくつかの実施形態の文脈において、各種入力データの情報源は、入力データが受信されて、出力が同様に通信ユニット912を介して伝送され得るように、コンピューティングデバイス900に対して物理的に遠隔であってよい。
【0103】
I/Oインタフェース914は、コンピューティングデバイス900と連動して動作し得る他のデバイスとのデータの入力及び出力を可能にする。例えば、I/Oインタフェース914は、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、又は他の好適な入力デバイスとして存在し得る外部デバイス920への接続を提供し得る。外部デバイス920はまた、ポータブルコンピュータ可読記憶媒体、例えばサムドライブ、ポータブル光又は磁気ディスク、及びメモリカードを有し得る。本発明の実施形態を実施するのに使用されるソフトウェア及びデータは、そのようなポータブルコンピュータ可読記憶媒体に格納することができ、I/Oインタフェース914を介して永続ストレージ908にロードし得る。I/Oインタフェース914はまた、同様にディスプレイ922に接続することができる。ディスプレイ922は、データをユーザに表示するメカニズムを提供し、例えば、コンピュータモニタであり得る。
【国際調査報告】