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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】難燃性ポリジケトエナミン
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20231220BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08G73/00
C09K21/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534221
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 CN2021125620
(87)【国際公開番号】W WO2022127373
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】17/126,239
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(74)【復代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】コビルカ、ブランドン エム
(72)【発明者】
【氏名】ワーツ、ジェイスン ティー
(72)【発明者】
【氏名】チァプレウスキ-キャンプベル、サラ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】キャンプベル、エリック ジェイ
【テーマコード(参考)】
4H028
4J043
【Fターム(参考)】
4H028AA44
4H028AA46
4J043PA15
4J043PC065
4J043PC125
4J043PC165
4J043QB64
4J043RA08
4J043SA07
4J043SB01
4J043TB01
4J043UA132
4J043UB382
4J043VA022
4J043XB27
4J043XB39
4J043XB40
4J043YA23
4J043ZB04
4J043ZB47
4J043ZB51
(57)【要約】
組成物、方法、および製造物品が開示される。この組成物は、モノマーを重合することによって形成され、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーおよび少なくとも1つのアミンモノマーを含む。この方法は、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ること、少なくとも1つのアミンモノマーを得ること、およびモノマーを重合して難燃性ポリジケトエナミンを形成することを含む。この製造物品は、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーおよび少なくとも1つのアミンモノマーを重合することによって形成されるポリマーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーと、
少なくとも1つのアミンモノマーと
を含むモノマーを重合することによって形成される、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機リン化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機臭素化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記モノマーが、少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが、ジカルボキシル難燃剤に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが少なくとも2つの第一級アミン基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ることと、
少なくとも1つのアミンモノマーを得ることと、
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーおよび前記少なくとも1つのアミンモノマーを重合して、難燃性ポリジケトエナミンを形成することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記重合がボールミルの中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機リン化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機臭素化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーを前記得ることが、ジカルボキシル難燃剤をジケトン化合物と反応させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ジケトン化合物が1,3-ジケトンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ることと、
前記重合に前記少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーを含めることと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーと、
少なくとも1つのアミンモノマーと
を含むモノマーを重合することによって形成される難燃性ポリマーを含む、製造物品。
【請求項17】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機臭素化合物である、請求項16に記載の製造物品。
【請求項18】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機リン化合物である、請求項16に記載の製造物品。
【請求項19】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが少なくとも2つの第一級アミン基を有する、請求項16に記載の製造物品。
【請求項20】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーがジカルボキシル難燃剤に由来する、請求項16に記載の製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は難燃性ポリマーに関し、より具体的には、難燃性ポリジケトエナミン(PDK)に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性化合物は、難燃性を提供するためにポリマーに加えることができる。難燃性ポリマー向けの用途としては、プラスチック、フォーム、合成繊維、合成ゴムなどを挙げることができる。ポリマー中の難燃剤は、難燃剤がポリマー・マトリックスにどのように組み入れられるかによって広く分類することができる。添加剤の難燃剤は、混合、硬化、発泡、押し出し、またはその他の加工技術中にポリマーに混合される。反応性難燃剤は、ポリマーに(例えば、ポリマー鎖に沿った部位で結合されるか、コモノマーとして鎖に組み込まれるか、または架橋剤として使用されるか、あるいはその組み合わせにより)共有結合される。添加剤または反応性難燃剤であり得る難燃剤の種類としては、有機臭素化合物および有機リン化合物、例えばホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、ホスホナイト、およびホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
【発明の概要】
【0003】
様々な実施形態は、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーおよび少なくとも1つのアミンモノマーを含むモノマーを重合することにより形成される組成物を対象とする。アミンモノマーの例としては、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリン、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーは有機リン化合物または有機臭素化合物であり得る。モノマーはまた、少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーはジカルボキシル難燃剤に由来する。アミンモノマーは、少なくとも2つの第一級アミン基を有する。
【0004】
追加の実施形態は、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ること、少なくとも1つのアミンモノマーを得ること、およびモノマーを重合して難燃性ポリジケトエナミンを形成することを含む方法を対象とする。重合は、ボールミルの中で行うことができる。アミンモノマーの例としては、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリン、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーは有機リン化合物または有機臭素化合物とすることができる。難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ることは、ジカルボキシル難燃剤を1,3-ジケトンなどのジケトン化合物と反応させることを含むことができる。本方法はまた、少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ること、およびそれを重合に含めることを含むことができる。
【0005】
さらなる実施形態は、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーおよび少なくとも1つのアミンモノマーを重合することによって形成されるポリマーを含む製造物品を対象とする。少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーは、有機リン化合物または有機臭素化合物とすることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーはジカルボキシル難燃剤に由来する。アミンモノマーは、少なくとも2つの第一級アミン基を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示のいくつかの実施形態による、難燃性ポリジケトエナミン(PDK)を形成するプロセスを説明する流れ図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、ジカルボン酸官能化難燃剤を説明する化学構造図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態による、難燃性ビス(トリケトン)モノマーを形成するプロセスを説明する化学反応図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態による、難燃性PDKを形成するプロセスを説明する化学反応図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
難燃剤は安全性を確保し、かつ材料を損傷から保護するために種々様々の材料に添加される。難燃性添加剤を含むことが多い材料の例としては、プラスチック、塗料、コーティング、フォーム、接着剤、合成繊維、音響減衰材料、断熱材および合成ゴムを挙げられる。
【0008】
前述の用途の中で一般的に使用される難燃剤としては、有機ホスフェート、有機ホスホネート、有機ホスフィネート、有機ホスファイト、および有機ホスホナイトなどの有機リン化合物を挙げられる。有機臭素化合物(「臭素化難燃剤」)も難燃剤として使用される。これらの例としては、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンおよびブロモジフェニルエーテルを挙げることができる。難燃剤は、添加剤であっても反応性であってもよい。反応性難燃剤は、ポリマー・マトリックス中の1つまたは複数の部位で共有結合を形成することができるか、コモノマーとしてポリマー鎖に組み込まれることができるか、または架橋剤として使用されることができるか、あるいはその組み合わせとすることができる官能基を含む。添加剤の難燃剤は、結合することなくポリマーに混合される。
【0009】
反応性難燃剤の利点は、それらが添加剤の難燃剤ほど容易に材料から浸出しないことである。難燃剤が材料から浸出すると、難燃剤の生物蓄積や時間の経過に伴う難燃性の低下につながる可能性がある。生物蓄積、環境残留性、および毒性の可能性があるため、多くの添加剤の難燃剤の使用を削減または排除することが必要であった。したがって、新しい反応性難燃剤が、ポリマー用途での添加剤の難燃剤を置き換えるために必要である。
【0010】
ポリトリケトエナミン(PTK)などのポリジケトエナミン(PDK)および同様のポリマーで作られた再利用可能なプラスチックは、それらが可逆重合反応で形成されるため、注目されている。PDKは、トリケトンおよび芳香族アミンまたは脂肪族アミンを重合することにより形成される。重合反応は、動的共有ジケトエナミン結合をもたらし、副産物として水のみを生成する。これらのポリマーは、トリケトンおよびアミンモノマーに容易に変換することができる(例えば、濃酸を使用)。さらに、この重合および解重合は、触媒、溶媒、または添加剤なしで室温において行うことができる。回収されたモノマーは、従来の再利用プラスチックに通常見られる性能の損失もなく、同じポリマーを再製造するために使用できる。PDKモノマーも異なる特性を有するポリマーを生成するために他の配合物の中で使用することができる。
【0011】
しかしながら、PDKモノマーの回収は、ポリマー・マトリックスに結合した他の種の存在によって複雑になる可能性がある。例えば、これらの化合物とポリマー鎖の間の結合は、ポリマー自体と同じ条件下では可逆的ではない場合がある。さらに、結合が切断されると、他の化合物の存在下でPDKモノマーを回収して再利用することが困難になる可能性がある。本明細書では、アミンおよび難燃性ビス(トリケトン)モノマーから形成される難燃性PDKが開示される。難燃剤をPDKに添加するのではなく、難燃性の有機リンまたは有機臭素ビス(トリケトン)モノマーを形成し、ジアミン、トリアミン、またはポリアミンモノマーあるいはその組み合わせと重合して、難燃性PDKを形成する。難燃性PDKは、重合を逆方向に進めてモノマーを回収することで再利用できる。
【0012】
図1は、本開示のいくつかの実施形態によれば、難燃性PDKを形成するプロセス100を説明する流れ図である。難燃性ビス(トリケトン)モノマーが得られる。これはステップ110に示されている。本明細書では、難燃性ビス(トリケトン)モノマーを「ビス(トリケトン)難燃剤」ともいう。ビス(トリケトン)難燃剤は、有機リンまたは有機臭素難燃剤のジカルボン酸官能化誘導体(「ジカルボキシル難燃剤」)をジケトン(例えば、環状1,3-ジケトン)と反応させることによって得ることができる。この反応は、各カルボキシル基でジケトンを結合してビス(トリケトン)モノマーを形成するための任意の適切な試薬および反応条件を使用して実施することができる。使用することができるジカルボキシル難燃剤の例を図2に示す。ビス(トリケトン)難燃剤を形成するための反応の例を、図3に示す。いくつかの実施形態では、ステップ110で、2種類以上のビス(トリケトン)難燃剤が得られる。これについては、以下で詳しく説明する。
【0013】
次いで、2つ以上の第一級アミン基を有するアミンモノマーが得られる。これはステップ120に示されている。本明細書において、「アミン」または「アミンモノマー」は、別段の指定がない限り、ジアミン、トリアミン、ポリアミン、およびそれらの組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、選択されたアミンはトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)である。しかしながら、少なくとも2つのアミン基を有する任意の適切な脂肪族または芳香族アミンモノマーを使用することができる。これらのアミンの例としては、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリンなどを挙げることができる。いくつかの実施形態では、プロセス100で2種類以上のアミンが得られる。例えば、アミンモノマーは、TRENと4,4’-オキシジアニリンとの混合物であってもよい。
【0014】
ビス(トリケトン)難燃剤とアミンモノマーを反応させて難燃性PDKを形成する。これはステップ130に示されている。いくつかの実施形態では、2種類以上のアミンモノマーまたは2種類以上のビス(トリケトン)難燃性モノマーあるいはその両方が重合に含まれる。重合は、選択された量のモノマーをボールミルの中で機械的に粉砕することによって行うことができる。かかる場合、反応は有機溶媒の非存在下で室温において行うことができる。しかしながら、重合は、いくつかの実施形態では、室温で撹拌しながら溶液中で行うなど、他の技術によって行うことができる。難燃性PDKを形成するための技術は、図4に関してより詳細に議論される。
【0015】
難燃性PDKの特性は、ステップ130での重合反応の成分および条件を変えることによって調整することができる。例えば、ビス(トリケトン)難燃剤の種類および量と同様に、アミンモノマーの種類および量を変えることができる。さらに、アミン繰り返し単位、難燃性繰り返し単位、および非難燃性ケトン繰り返し単位(下記参照)とコポリマー(例えばターポリマー)を形成するために、難燃性ではないビス(トリケトン)モノマーを反応混合物に添加することができる。追加することができる追加のモノマーまたは添加剤あるいはその両方(例えば、ボールミリングまたは溶媒系反応、追加の処理ステップなどの際に)は、当業者に知られている任意の適切なポリマー添加剤/成分(例えば、架橋剤、染料、顔料、可塑剤、安定剤など)を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、ステップ130で形成された難燃性PDKを強酸と反応させることができる。この解重合反応は、本明細書では図示されていない。難燃性PDKと強酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸など)の間の反応は、重合反応を逆方向に進め、ステップ110および120で得られたモノマーを回収することができる。このモノマー回収反応は室温で行うことができ、モノマーは新しい材料(例えば、難燃性PDK、他のPDK、他のポリマーおよび化合物、など)を形成するために使用することができる。他の実施形態では、難燃性PDKは強酸と反応しない。
【0017】
図2は、本開示のいくつかの実施形態によって、ジカルボン酸官能化難燃剤を説明する化学構造図200である。各ジカルボン酸官能化難燃剤(「ジカルボキシル難燃剤」)は、2つのカルボキシル置換基(Y)を含んでいる。フェニル環の中心への破線によって表されるフェニル-Y結合は、カルボキシル置換基がそれぞれのフェニル環上の任意の利用可能な位置(例えば、メタ、オルト、またはパラ)で結合できることを示す。本明細書において、「カルボキシル置換基」は、カルボキシル基(-COOH)、またはアルキル(R)基およびカルボキシル基を含む別の置換基を指すことができる。いくつかの実施形態では、Yは-ORCOOHまたは-RCOOHなどの置換基である。例えば、Yは、-O(CHCOOH、-O(C)COOH、-(CHCOOHなどの置換基であってもよく、ここで、nは1以上の整数である。R基としては、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、芳香族基などを挙げることができる。いくつかの実施形態では、R基はヘテロ原子を含むことができる。カルボキシル置換基に含めることができるアルキル基の例は、以下でより詳細に議論される。
【0018】
いくつかの実施形態では、ジカルボキシル難燃剤は、トリフェニルホスフェートのジカルボキシル誘導体210、またはトリ-o-トリルホスフェートまたはトリ-m-トリルホスフェートあるいはその両方などのトリトリルホスフェートのジカルボキシル誘導体(図示せず)である。ジカルボキシル難燃剤としては、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)のジカルボキシル誘導体220;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)のジカルボキシル誘導体230;ペンタン二酸、3-(2-カルボキシ-6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)-1-メチルエステル240(式中、Y=-COOH)またはY=-RCOOHである類似化合物;6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-オキシドのジカルボキシル誘導体250;トリアルキルホスフェートのジカルボキシル誘導体260(式中nは1以上の整数である)を、さらに挙げることができる。
【0019】
例示した有機ホスフェート化合物に加えて、ジカルボキシル難燃剤としては、いくつかの実施形態において、有機ホスホネート、有機ホスフィネート、有機ホスファイト、および有機ホスホナイトの類似のジカルボキシル誘導体を挙げることができる。さらに、ジカルボキシル難燃剤としては、テトラブロモビスフェノール-Aのジカルボキシル誘導体270または他の臭素化難燃剤などの様々な難燃性有機臭素化合物を挙げることができる。使用することができる臭素化難燃剤の例は、上でより詳細に議論されている。いくつかの実施形態では、2つを超えるカルボキシル基を有するカルボキシル難燃剤を使用することができる。
【0020】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、難燃性ビス(トリケトン)モノマーを形成するプロセス300を示す化学反応図である。ジメドン320およびトリフェニルホスフェートジカルボキシル難燃剤310のジクロロメタン(DCM)溶液を調製する。次いで、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の混合物を溶液に添加する。得られた混合物を室温(例えば、約25℃)で反応させる。いくつかの実施形態では、反応混合物を約10分間撹拌するが、反応のために任意の適切な時間を選択することができる(例えば、反応が完了したと判断されるまで)。この反応により、トリフェニルホスフェートビス(トリケトン)難燃剤330が形成される。
【0021】
図示のトリフェニルホスフェートビス(トリケトン)難燃剤330は、トリフェニルホスフェートジカルボキシル難燃剤310に由来するが、他のジカルボキシル難燃剤をプロセス300で使用することができる(例えば、図2に示すジカルボキシル難燃剤)。さらに、代替ジケトン(例えば、他の環状ジケトン、1,3-ジケトンなど)は、いくつかの実施形態においてジメドン320を置き換えることができる。結果として得られる反応は、ジカルボキシル難燃剤およびジケトンの選択に応じて、図示のビス(トリケトン)難燃剤330に類似するビス(トリケトン)難燃剤を生成することができる。例えば、プロセス300は、ジカルボキシルテトラブロモビスフェノールA270(図2)およびジメドン320を用いて行うことができ、ビス(トリケトン)臭素化難燃剤(図示せず)をもたらす。
【0022】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、難燃性PDKを形成するプロセス400を示す化学反応図である。プロセス400では、トリフェニルホスフェートビス(トリケトン)難燃剤330(図3)とTREN410を、モノマーを一緒に機械的に粉砕するボールミルの中で反応させ、難燃性PDK420を形成する。この無溶媒の重合反応は、室温で行うことができる。難燃性PDK420は、少なくとも2つの難燃性繰り返し単位および少なくとも2つのTREN繰り返し単位を含む。繰り返し単位の数は、モノマーの量と重合反応時間に依存する。例えば、各繰り返し単位の数は、2から1,000,000の間の整数(例えば、約2~25,000、約500~25,000、約1,000~25,000、約2,000~25,000、約5,000~25,000、約25,000~50,000、約50,000~500,000など)であってもよい。図4では、TREN窒素原子およびさらなる難燃性繰り返し単位の間の結合は、波線によって表されている。
【0023】
いくつかの実施形態において、難燃性PDKは、ボールミリング以外の技術を使用して形成することができる。例えば、ビス(トリケトン)難燃剤(例えばトリフェニルホスフェートビス(トリケトン)難燃剤330)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、室温で撹拌することができる。次いで、TREN410または別のジアミン、トリアミン、またはポリアミン、あるいはその組み合わせを溶液に添加して、粘稠溶液を形成することができる。粘稠溶液を、水分を蒸発させるために、開放容器内で撹拌しながら加熱(例えば、約110℃まで)することができる。いくつかの実施形態では、これらの反応条件は約1時間維持されるが、時間は変えることができる。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、精製し(例えば、混合物をジクロロメタンで希釈し、ジエチルエーテルからポリマー生成物を沈殿させることにより)、乾燥することができる。
【0024】
さらに、プロセス400を実行して、他のジカルボキシル難燃剤またはアミン、あるいはその両方を重合させることによって、様々な難燃性PDKを形成することができる。例えば、図4に示されるビス(トリケトン)難燃剤330は、他のビス(トリケトン)難燃剤で置き換えることができる。使用できる他のビス(トリケトン)難燃剤の例は、図3に関してより詳細に議論される。さらに、TREN410は、他のジアミン、トリアミン、またはポリアミンに置き換えたり、組み合わせたりすることができる。使用することができるアミンの例は、図1に関して詳細に議論される。さらに、他のビス(トリケトン)モノマーをビス(トリケトン)難燃剤330およびTREN410との重合に含めることができる。例えば、難燃性ターポリマーは、ビス(トリケトン)難燃剤330、TREN410、およびジケトンをアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸と反応させることによって生成されるビス(トリケトン)モノマー(図示せず)の混合物から形成することができる。これらの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーは、プロセス300(図3)のものなどの反応条件下で形成することができる。
【0025】
図1~4に関して議論した化合物および反応に加えて、他の官能基と構造を有する有機リン難燃性モノマーおよび有機臭素ビス(トリケトン)難燃性モノマーを形成し、ジアミン、トリアミン、またはポリアミンあるいはその組み合わせと反応させて難燃性PDKを形成することができる。例えば、ビス(トリケトン)難燃剤またはアミンあるいはその両方は、エポキシド、ヒドロキシル、炭酸プロピレン、ハロゲン化アルキル、エステル、アルキン、アミン、イソシアネート、酸塩化物、クロロホルメート、アルキルなどの追加の部分と共に形成することができる。本明細書において、「アルキル」は、直鎖状、分枝状、または環状であってもよいC~C100基を指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルを挙げることができる。いくつかの実施形態では、アルキルは不飽和である(例えば、アルケンおよびアルキン)。
【0026】
本明細書に示される化合物に含めることができる部分の追加の例には、環状アルキル基の置換類似体を含んでもよい。環状の場合、アルキル基は芳香族でも非芳香族であってもよい。本明細書において、「芳香族」という用語は、芳香族複素環配位子に類似の特性および構造(ほぼ平面)を有するが、定義上芳香族ではない複素環置換基である疑似芳香族複素環も意味する。使用できる環状芳香族アルキルの例としては、6炭素芳香環(フェニル)およびその置換変形体(例えば、2-メチル-フェニル、キシリル、トリルなど)、C~C60芳香環、C~C20芳香環などを挙げることができる。環状基は、環状構造中の少なくとも1つの炭素原子を置換するヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、または硫黄)を任意に含むことができる。
【0027】
本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含むことができる。特に断りのない限り、開示された構造は、表された化合物のすべての立体異性体、配座異性体、回転異性体、異性体、および鏡像異性体を網羅する。さらに、開示された化合物を含むポリマーまたは他の材料は、個々の立体異性体に加えて、化合物のラセミ形態、ならびにこれらのいずれかを含む混合物を含むことができる。本明細書に記載の化合物の置換基は、合成、分解、一重置換または二重置換あるいはその両方、酸化/還元、酸/塩基、求核置換、求電子置換およびラジカル置換、付加/脱離反応、架橋反応、および重合反応を含むことができる追加の化学反応、変換、または相互作用に関与することができる。
【0028】
アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、または他の官能基の名称のついた異性体が存在する場合(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチル)、特定の異性体(例えば、ブチル)を特定せずにその群のメンバーを参照することは、そのファミリー(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチル)内のすべての異性体を含むことを意図している。さらに、別段の指定がない限り、群のなかの1つのメンバー(例えば、n-ブチル)への言及は、ファミリー内の残りの異性体(例えば、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチル)を含む。
【0029】
特に断りのない限り、化学反応は周囲条件、または特別な雰囲気やヘッド・スペースのなくわずかな加熱下で実行され、粘度やフロー・インデックスなどの混合特性を管理するために標準的な有機溶媒を使用して実行することができる。反応のクエンチング、溶媒除去、および精製のための標準的な手順が実行される。室温は、特に別の指示がない限り、約15℃~30℃である。本明細書に示される範囲(例えば、時間、濃度、温度など)は、両方の端点および端点間のすべての数を含む。別段の指定がない限り、範囲に関連する「約」、「およそ」、またはチルダ(~)の使用は、範囲の両端に適用される(例えば、「およそ1g~5g」は「およそ1g~およそ5g」と解釈する必要がある)。「約」、「およそ」、「~」などの修飾用語は、記載された値、値の範囲、または1つまたは複数の値の範囲の端点の+/-10%を示す。
【0030】
本明細書で議論されるプロセスおよびそれに付随する図面は、限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、最終的に難燃性ポリジケトエナミンを生成する条件、成分、方法などを変える様々な技術を使用できることを認識するはずである。また、プロセスの過程を通じて、条件を任意に変更することも可能である。さらに、いくつかの実施形態では、当業者には理解されるように、プロセスを追加、省略、または別の順序で実行することができるが、それでもなお本開示の範囲内にある。プロセスは、単一のエンティティまたは複数のエンティティによって実行できることにも留意されたい。例えば、第1のエンティティはビス(トリケトン)難燃剤を形成することができ、第2のエンティティは重合プロセスを実行することができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーと、
少なくとも1つのアミンモノマーと
を含むモノマーを重合することによって形成される、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機リン化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機臭素化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記モノマーが、少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが、ジカルボキシル難燃剤に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが少なくとも2つの第一級アミン基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ることと、
少なくとも1つのアミンモノマーを得ることと、
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーおよび前記少なくとも1つのアミンモノマーを重合して、難燃性ポリジケトエナミンを形成することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記重合がボールミルの中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアミンモノマーが、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ジプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノオクタン、4,4’-オキシジアニリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機リン化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーが有機臭素化合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの難燃性ビス(トリケトン)モノマーを前記得ることが、ジカルボキシル難燃剤をジケトン化合物と反応させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ジケトン化合物が1,3-ジケトンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーを得ることと、
前記重合に前記少なくとも1つの非難燃性ビス(トリケトン)モノマーを含めることと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
難燃性ポリマーを含む物品であって、
前記難燃性ポリマーは、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の組成物を含む、物品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【国際調査報告】