(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を含有する粒子状組成物
(51)【国際特許分類】
A23G 3/54 20060101AFI20231220BHJP
A23G 4/06 20060101ALI20231220BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A23G3/54
A23G4/06
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534670
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021085727
(87)【国際公開番号】W WO2022129072
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マルモレホ, シンシア ベレニス
(72)【発明者】
【氏名】オルロビッチ, マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ネオ, ハイ リン ハゼリン
(72)【発明者】
【氏名】ハウウェリンゲン‐デ ジョング, ディルケ
(72)【発明者】
【氏名】ファン アレンドンク, ウィリー ギスベルタ コーネリア
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB06
4B014GB13
4B014GE03
4B014GL04
4B014GL10
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP19
4B014GP27
4B014GQ05
(57)【要約】
本発明は、20~180μmの体積加重平均直径D
4,3を有し、リンゴ酸塩粒子群を少なくとも50重量%含む粒子状組成物であって、前記リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含む、粒子状組成物に関する。この粒子状組成物は、有利には菓子製品の中又は表面に付着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~180μmの体積加重平均直径D
4,3を有し、リンゴ酸塩粒子群を少なくとも50重量%含む粒子状組成物であって、前記リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含む、粒子状組成物。
【請求項2】
前記粒子状組成物が、
D
10≧1μm;
40μm≦D
50≦200μm;
D
90≦320μm
(ここで、D
xより小さい直径を有する粒子群の体積%はx体積%に等しく、D
xより大きい直径を有する粒子群の体積%は(100-x)体積%に等しい)の粒度分布を有する、請求項1に記載の粒子状組成物。
【請求項3】
前記リンゴ酸塩粒子群が、前記共結晶を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含有する、請求項1又は2に記載の粒子状組成物。
【請求項4】
前記共結晶が、Na
+(C
4H
5O
5)
-・C
4H
6O
5の式で表される二リンゴ酸三水素ナトリウム又は2[K
+(C
4H
5O
5)
-]・C
4H
6O
5の式で表される三リンゴ酸四水素二カリウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状組成物。
【請求項5】
前記共結晶が、Na
+(C
4H
5O
5)
-・C
4H
6O
5の式で表される二リンゴ酸三水素ナトリウムである、請求項4に記載の粒子状組成物。
【請求項6】
粉砕リンゴ酸塩粉末を調製する方法であって、
リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含むリンゴ酸塩粒子群を少なくとも90重量%含有する粗リンゴ酸塩粉末を用意するステップであり、前記粗リンゴ酸塩粉末が、少なくとも100μmの体積加重平均直径D
4,3を有する、ステップと、
前記粗リンゴ酸塩粉末の粒子径を小さくして、前記粗リンゴ酸塩粉末の粒子径よりも少なくとも50%小さい体積加重平均粒子径D
4,3を有する粉砕リンゴ酸塩粉末を作製するステップとを含む、方法。
【請求項7】
20~180μmの体積加重平均直径D
4,3を有する粉砕リンゴ酸塩粉末をもたらす、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粗リンゴ酸塩粉末が、
結晶性有機酸、結晶性有機酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される結晶性物質を少なくとも80重量%含有する種結晶粒子群を用意するステップと、
ナトリウムとリンゴ酸イオンとをモル比4:10~6:10で含有するか、カリウムとリンゴ酸イオンとをモル比5.5:10~7.5:10で含有する、リンゴ酸塩水溶液を用意するステップと、
前記リンゴ酸塩水溶液を前記種結晶粒子群に噴霧して、コーティングされた粒子群を作製するステップと、
前記コーティングされた粒子群から水分を除去するステップと、によって調製される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
リンゴ酸塩粒子群を0.1~6重量%含有するハードパンニング又はソフトパンニングコーティング;
リンゴ酸塩粒子群を少なくとも0.1~50重量%含有するタブレット状キャンディ;
リンゴ酸塩粒子群を少なくとも0.1~30重量%含有するチョコレート、のうちの少なくとも1つを含み、
前記リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含有する、菓子製品。
【請求項10】
前記リンゴ酸塩粒子群が20~180μmの体積加重平均直径D
4,3を有する、請求項9に記載の菓子製品。
【請求項11】
前記リンゴ酸塩粒子群が、前記共結晶を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%含有する、請求項9又は10に記載の菓子製品。
【請求項12】
前記共結晶が、Na
+(C
4H
5O
5)
-・C
4H
6O
5の式で表される二リンゴ酸三水素ナトリウム又は2[K
+(C
4H
5O
5)
-]・C
4H
6O
5の式で表される三リンゴ酸四水素二カリウムである、請求項9~11のいずれか一項に記載の菓子製品。
【請求項13】
前記共結晶が、Na
+(C
4H
5O
5)
-・C
4H
6O
5の式で表される二リンゴ酸三水素ナトリウムである、請求項12に記載の菓子製品。
【請求項14】
前記菓子製品が、ハードパンニングコーティングでコーティングされた食用コアを含み、前記ハードパンニングコーティングが、結晶化糖、結晶化糖アルコール及びそれらの組み合わせから選択される結晶化甘味料を少なくとも30重量%含有し、前記ハードパンニングコーティングが、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも0.1重量%さらに含有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の菓子製品。
【請求項15】
ハードパンニングされた菓子を調製するプロセスであって、
凝集性の食用コアを用意するステップと、
前記食用コアに少なくとも1つのシロップコーティング層を塗布するステップであり、前記シロップが、結晶化可能な糖、結晶化可能な糖アルコール及びそれらの組み合わせから選択される結晶化可能な甘味料を含む、ステップと、
リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含有するリンゴ酸塩粒子群を含む、少なくとも1つの他のコーティング層を塗布するステップとを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含むリンゴ酸塩粒子群を含む粒子状組成物に関する。本発明は、このような粒子状組成物を調製する方法をさらに提供する。
【0002】
本発明の粒子状組成物は、有利には、菓子製品、特にハード及びソフトパンニングコーティング(panned coating)、タブレット状(tabletted)キャンディ並びにチョコレートの中又は表面に付着させることができる。
【0003】
[発明の背景]
リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)は、アプリコット、ブラックベリー、ブルーベリー、サクランボ、ブドウ、ミラベル、モモ、セイヨウナシ、プラム、マルメロを含む多くの果物の主な酸であり、柑橘類などの他の果物には、それらの果物よりも低濃度で含まれている。リンゴ酸は、青い(熟していない)リンゴの酸味にも寄与する。リンゴ酸が主要な風味物質である植物のルバーブにおいて、リンゴ酸の味は非常に明確で純粋である。リンゴ酸は、非炭酸飲料、ワイン、菓子、チューインガム、デザート、及び焼き菓子の食品添加物として使用されている。
【0004】
シュガーパンニング、又は単にパンニングは、キャンディ又はナッツにキャンディ「シェル」を加える方法である。製造においてこのプロセスを利用している人気のキャンディには、ドラジェ、M&M’s、ゴブストッパー、こんぺいとう、ジェリービーンズが含まれる。ジェリービーンズはソフトパンニングを使用するものであり、他の3つはハードパンニングの例である。
【0005】
ハードパンニング及びソフトパンニングは、どちらも同様の方法で作られるが、異なる成分及び異なる速度が用いられる。ハードパンニングは、転がるコア(tumbling core)の1つ1つに糖又は糖アルコール溶液の薄い被膜を塗布し、その後水分を蒸発させ、糖又は糖アルコールを薄い層に結晶化させるプロセスである。このプロセスは、所望の厚さのハードコーティングが得られるまで繰り返される。自重で変形せず、自由に転がることができる(互いにくっつくことがある平らな面がない)任意の物質は、ハードパンニングの候補となる。ソフトパンニングは、グルコースなどの結晶化しないシロップを使用する。乾燥を助けるため、転がり中に粉砂糖又は上白糖が加えられる。
【0006】
国際公開第2019/063623号において、リンゴ酸を20~70重量%、乳酸を3~40重量%、並びにクエン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、酢酸及びそれらの組み合わせから選択される食用酸を0~40重量%含む、粒子状酸味料組成物であって、
リンゴ酸と、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、及びそれらの組み合わせから選択される、部分的に中和されたポリカルボン酸との共結晶を含むM粒子群であり、リンゴ酸を少なくとも30重量%、及び部分的に中和されたポリカルボン酸を少なくとも30重量%含有するM粒子群40~90重量%、並びに
乳酸と、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、及びそれらの組み合わせから選択される、少なくとも部分的に中和されたカルボン酸との共結晶を含むL粒子群であり、乳酸を少なくとも30重量%、及び少なくとも部分的に中和されたカルボン酸を少なくとも30重量%含有するL粒子群5~60重量%
を含み、M粒子群とL粒子群との組み合わせが、酸味料組成物の少なくとも50重量%を構成する、酸味料組成物が記載されている。
【0007】
前述の国際特許出願の例において、流動層乾燥機でリンゴ酸粒子群の層へ部分的に中和されたリンゴ酸水溶液を噴霧することによって作製された、ピューラック(登録商標)パウダーMA(リンゴ酸水素ナトリウム42~50重量%及びリンゴ酸50~58重量%)を80重量%含む粉末ブレンドが記載されている。ピューラック(登録商標)パウダーMAは通常、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶を40~50重量%含有する。
【0008】
国際公開第2020/260194号において、リンゴ酸塩粒子群を少なくとも1重量%含む粒子状組成物であって、前記リンゴ酸塩粒子群が50~1,000μmの直径を有し且つリンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含む、粒子状組成物が記載されている。
【0009】
Van Havereら(Crystal structure of bis(potassium hydrogen L-malate)・malic acid,2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5,Journal of Crystallographic and Spectroscopic Research(1985),15(1),45~52)によって、ビス(L-リンゴ酸水素カリウム)・リンゴ酸の結晶構造が記載されている。
【0010】
Fleckら(Dielectric and Pyroelectric Properties of Lithium Hydrogen Dimalate,LiH3(C4H4O5)2.Z.Naturforsch.41a,1289~1296(1986)、1986年7月5日受理)は、化学量論量のLiOH及びリンゴ酸(1:2)を含有する水溶液からLiH3(C4H4O5)2がどのように調製されたかを記載している。290Kで該水溶液からH2Oを緩やかに蒸発させることで、大きな単結晶(15×8×6mm)を成長させることができる。
【0011】
[発明の概要]
本発明者らは、菓子製品の中及び表面に好適に付着し、酸味のある風味を付与することができるリンゴ酸塩粉末を開発した。リンゴ酸塩粉末は、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含む粒子群で構成される。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様は、20~180μmの体積加重平均直径D4,3を有し、リンゴ酸塩粒子群を少なくとも50重量%含む粒子状組成物であって、前記リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含む、粒子状組成物に関する。このような共結晶の例には、リンゴ酸水素ナトリウム・リンゴ酸(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)、並びにビス(L-リンゴ酸水素カリウム)・リンゴ酸、及び三リンゴ酸四水素二カリウム(2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5)が含まれる。
【0013】
本発明の粒子状組成物は、有利には、リンゴ酸塩粒子群がほぼそのままの状態で残るように、菓子製品の中又は表面に付着する。本発明者らは理論に拘束されることを望むものではないが、リンゴ酸塩粒子群が唾液と接触すると、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶は、即座にリンゴ酸2-又はリンゴ酸水素-、Na+/K+及びH+に解離すると考えられる。したがって、本発明のリンゴ酸塩粒子群を含有する菓子製品を摂取すると、リンゴ酸の滑らかな酸味(tart flavour)は直ちに放出される。
【0014】
本発明のリンゴ酸塩粉末は、高温高湿においても流動性を維持し、リンゴ酸塩粒子群の組成が粒子径によって変化しないという利点を有する。したがって、リンゴ酸塩粉末は、粗リンゴ酸塩粉末を所望の粒子径に破砕することにより、微粉の形態で提供することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、粉砕リンゴ酸塩粉末を調製する方法であって、
リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含むリンゴ酸塩粒子群を少なくとも90重量%含有する粗リンゴ酸塩粉末を用意するステップであり、前記粗リンゴ酸塩粉末が、少なくとも100μmの体積加重平均直径D4,3を有する、ステップと、
粗リンゴ酸塩粉末の粒子径を小さくして、粗リンゴ酸塩粉末の粒子径よりも少なくとも50%小さい体積加重平均粒子径D4,3を有する粉砕リンゴ酸塩粉末を作製するステップとを含む、方法に関する。
【0016】
本発明の第3の態様は、
リンゴ酸塩粒子群を0.1~6重量%含有するハードパンニング又はソフトパンニングコーティング;
リンゴ酸塩粒子群を少なくとも0.1~50重量%含有するタブレット状キャンディ;
リンゴ酸塩粒子群を少なくとも0.1~30重量%含有するチョコレート、
のうちの少なくとも1つを含み、
リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含有する、菓子製品に関する。
【0017】
本発明の第4の態様は、ハードパンニングされた菓子を調製するプロセスであって、
凝集性の食用コアを用意するステップと、
前記食用コアに少なくとも1つのシロップコーティング層を塗布するステップであり、前記シロップが、結晶化可能な糖、結晶化可能な糖アルコール及びそれらの組み合わせから選択される結晶化可能な甘味料を含む、ステップと、
リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含有するリンゴ酸塩粒子群を含む、少なくとも1つの他のコーティング層を塗布するステップと
を含む、プロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na
+(C
4H
5O
5)
-・C
4H
6O
5)として同定される、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶のX線回折パターンである。
【0019】
[発明の詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、20~180μmの体積加重平均直径D4,3を有し、リンゴ酸塩粒子群を少なくとも50重量%含む粒子状組成物であって、前記リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含む、粒子状組成物に関する。
【0020】
本明細書で使用される「リンゴ酸塩」という用語は、リンゴ酸、リンゴ酸の塩及びそれらの組み合わせを指す。
【0021】
本明細書で使用される「共結晶」という用語は、化学量論比で、2種以上の異なる分子又はイオン性化合物が構成する、溶媒和物でも単塩でもない結晶性単相物質を指す。
【0022】
本明細書で使用される「糖」という用語は、甘味のある単糖類及び二糖類を指す。
【0023】
本明細書で使用される「糖アルコール」という用語は、糖ではなく、6~12個の炭素原子を含有する、甘味のあるポリオールを指す。
【0024】
本明細書で使用される「シロップ」という用語は、主に糖及び/又は糖アルコールの水溶液からなる濃厚で粘性のある液体を指す。
【0025】
本明細書で糖又は糖アルコールに関して使用される「結晶化可能」という用語は、糖又は糖アルコールが20℃及び大気温度において結晶状態で存在する能力を指す。
【0026】
「結晶性」又は「結晶化」という用語は、物質が20℃及び大気圧において結晶状態にあることを意味する。
【0027】
本明細書で言及される粒度分布は、好適にはレーザー回折(Malvern社)により求められ得る。
【0028】
二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na
+(C
4H
5O
5)
-・C
4H
6O
5)として同定される、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶のX線回折パターンが
図1に示される。 本発明の粒子状組成物は、その安定性、リンゴ酸塩粒子群によってもたらされる即時の滑らかな酸味、及び非常に微細な粉末の形態で提供され得る(例えば、ハードパンニングに非常に関連がある)ことから、菓子製品の中又は表面への付着に特に好適である。
【0029】
粒子状組成物は、好ましくは40~170μm、最も好ましくは80~160μmの体積加重平均直径D4,3を有する。
【0030】
好ましくは、粒子状組成物中のリンゴ酸塩粒子群は、20~180μm、より好ましくは40~170μm、最も好ましくは80~160μmの体積加重平均直径D4,3を有する。
【0031】
好ましい実施形態によれば、粒子状組成物は、
D10≧1μm;
40μm≦D50≦200μm;
D90≦320μm
(ここで、Dxより小さい直径を有する粒子群の体積%はx体積%に等しく、Dxより大きい直径を有する粒子群の体積%は(100-x)体積%に等しい)の粒度分布を有する。さらにより好ましくは、粒子状組成物は、
D10≧5μm;
60μm≦D50≦140μm;
D90≦280μm、の粒度分布を有する。
【0032】
粒子状組成物中の粒子群は、好ましくは3.5を超えないスパン(D90-D10)/D50を有し、より好ましくは3.0を超えないスパンを有する。
【0033】
粒子状組成物中のリンゴ酸塩粒子群は、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含有する。
【0034】
リンゴ酸塩粒子群に加えて、本発明の粒子状組成物は、砂糖、塩又は酸粉末などの他の粒子成分を含んでもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、リンゴ酸塩粒子群は、粒子状組成物の大部分に相当する。したがって、粒子状組成物は、リンゴ酸塩粒子群を好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%含む。
【0036】
粒子状組成物の含水率は、通常5重量%を超えず、より好ましくは、含水率は3重量%を超えない。
【0037】
特に好ましい実施形態によれば、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶は、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶、又はリンゴ酸とリンゴ酸水素カリウムとの共結晶である。さらにより好ましくは、共結晶は、二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)又は三リンゴ酸四水素二カリウム(2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5)である。最も好ましくは、本発明に従って使用される共結晶は、二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)である。
【0038】
本発明のさらに別の態様は、粉砕リンゴ酸塩粉末を調製する方法であって、
リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含むリンゴ酸塩粒子群を少なくとも90重量%含有する粗リンゴ酸塩粉末を用意するステップであり、前記粗リンゴ酸塩粉末が、少なくとも100μmの体積加重平均直径D4,3を有する、ステップと、
粗リンゴ酸塩粉末の粒子径を小さくして、粗リンゴ酸塩粉末の粒子径よりも少なくとも50%小さい体積加重平均粒子径D4,3を有する粉砕リンゴ酸塩粉末を作製するステップとを含む、方法に関する。
【0039】
好ましくは、粗リンゴ酸塩粉末のリンゴ酸塩粒子群は、少なくとも200μm、最も好ましくは250~600μmの体積加重平均直径D4,3を有する。
【0040】
粗リンゴ酸塩粉末のリンゴ酸塩粒子群は、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含有する。
【0041】
粗リンゴ酸塩粉末のリンゴ酸塩粒子群の含水率は、好ましくは5重量%を超えず、より好ましくは、含水率は3重量%を超えない。
【0042】
特に好ましい実施形態によれば、粗リンゴ酸塩粉末中のリンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶は、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶、又はリンゴ酸とリンゴ酸水素カリウムとの共結晶である。さらにより好ましくは、共結晶は、二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)又は三リンゴ酸四水素二カリウム(2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5)である。最も好ましくは、本発明に従って利用される共結晶は、二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)である。
【0043】
好ましくは、本方法により、20~180μm、より好ましくは40~170μm、最も好ましくは70~160μmの体積加重平均直径D4,3を有する粉砕リンゴ酸塩粉末が得られる。
【0044】
別の好ましい実施形態によれば、この方法により、
D10≧1μm;
40μm≦D50≦200μm;
D90≦320μm
(ここで、Dxより小さい直径を有する粒子群の体積%はx体積%に等しく、Dxより大きい直径を有する粒子群の体積%は(100-x)体積%に等しい)の粒度分布を有する、粉砕リンゴ酸塩粉末が得られる。
【0045】
本方法の一実施形態において、粗リンゴ酸塩粉末は、
結晶性有機酸、結晶性有機酸塩、及びそれらの組み合わせから選択される結晶性物質を少なくとも80重量%含有する種結晶粒子群を用意するステップと、
ナトリウムとリンゴ酸イオンとをモル比4:10~6:10で含有するか、カリウムとリンゴ酸イオンとをモル比5.5:10~7.5:10で含有する、リンゴ酸塩水溶液を用意するステップと、
リンゴ酸塩水溶液を種結晶粒子群に噴霧して、コーティングされた粒子群を作製するステップと、
コーティングされた粒子群から水分を除去するステップと、によって調製される。
【0046】
種結晶粒子群中の結晶性物質は、好ましくは結晶性有機酸、結晶性有機酸塩、及びそれらの組み合わせから選択され、有機酸は、リンゴ酸、乳酸、酢酸、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、及びそれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、結晶性物質は、結晶性リンゴ酸、リンゴ酸の結晶性塩、及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、結晶性物質は、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)、又はリンゴ酸とリンゴ酸水素カリウムとの共結晶(2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5)である。最も好ましくは、結晶性物質は、リンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)との共結晶である。
【0047】
粒子群に噴霧されるリンゴ酸塩水溶液は、好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは少なくとも1.5mol/L、最も好ましくは2~5mol/Lの濃度でリンゴ酸塩を含有する。
【0048】
リンゴ酸塩水溶液は、好ましくは20~70重量%、より好ましくは25~65重量%、最も好ましくは30~60重量%の乾物含量を有する。
【0049】
リンゴ酸塩水溶液は、好ましくは、リンゴ酸を水に溶解し、中和剤を添加することによって、リンゴ酸から調製される。より好ましくは、完全に中和されたリンゴ酸ナトリウム溶液は、リンゴ酸を水に溶解し、中和剤を添加することによって調製されるが、該中和剤は、ナトリウムとリンゴ酸イオン、又はカリウムとリンゴ酸イオンの所望の比率が得られるように、リンゴ酸水溶液と混合される。
【0050】
種結晶粒子群は、好ましくは、水分を除去した後に得られるコーティングされた粒子群の3~70重量%、より好ましくは5~60重量%、さらにより好ましくは9~50重量%に相当する量で、本方法において使用される。
【0051】
リンゴ酸塩水溶液は、好ましくは、種結晶粒子群の流動層に噴霧される。この流動層の層温度は、好ましくは40~100℃の範囲、より好ましくは42~90℃の範囲、さらにより好ましくは44~80℃の範囲、最も好ましくは45~70℃の範囲である。
【0052】
水、リンゴ酸イオン及びナトリウム又はカリウムカチオン以外に、リンゴ酸塩水溶液は、好ましくは、0.1重量%を超える濃度で他の成分を含有しない。
【0053】
リンゴ酸塩水溶液は、リンゴ酸と、リンゴ酸水素ナトリウム又はリンゴ酸水素カリウムのいずれかとを水に溶解することによって調製することができる。或いは、リンゴ酸塩水溶液は、リンゴ酸と、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのいずれかとを水に溶解することによって調製することができる。別の代替案は、リンゴ酸と、リンゴ酸二ナトリウム又はリンゴ酸二カリウムのいずれかとを溶解することによってリンゴ酸塩水溶液を調製することである。
【0054】
方法の特に好ましい実施形態によれば、リンゴ酸塩水溶液の噴霧、及びコーティングされた粒子群からの水分の除去は同時に実施される。
【0055】
本方法の好ましい実施形態において、噴霧及び水分の除去は、流動層乾燥機で実施される。別の好ましい実施形態において、噴霧及び水分の除去は、(種結晶として機能するために)噴霧ノズルに微粉を再循環させる並流型噴霧乾燥機で実施される。
【0056】
本発明の代替実施形態において、粗リンゴ酸塩粉末は、
リンゴ酸を少なくとも80重量%含有するリンゴ酸粒子群を用意するステップと、
リンゴ酸水素ナトリウムを少なくとも80重量%含有するリンゴ酸水素ナトリウム粒子群、又はリンゴ酸水素カリウムを少なくとも80重量%含有するリンゴ酸水素カリウム粒子群を用意するステップと、
100重量部のリンゴ酸粒子群を、100~138重量部のリンゴ酸水素ナトリウム粒子群又は200~300重量部のリンゴ酸水素カリウムのいずれか、及び1~10重量部の水と組み合わせるステップと、
得られた組み合わせを機械的せん断にさらすステップと
によって調製される。
【0057】
本発明のさらなる態様は、
リンゴ酸塩粒子群を0.1~6重量%含有するハードパンニング又はソフトパンニングコーティング;
リンゴ酸塩粒子群を少なくとも0.1~50重量%含有するタブレット状キャンディ;
リンゴ酸塩粒子群を少なくとも0.1~30重量%含有するチョコレート、のうちの少なくとも1つを含み、
リンゴ酸塩粒子群が、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含有する、菓子製品に関する。
【0058】
本発明の菓子製品は、好ましくは0.2~500g、より好ましくは0.4~400g、最も好ましくは0.5~350gの範囲の重量を有する。
【0059】
菓子製品のハードパンニング又はソフトパンニングコーティングは、リンゴ酸塩粒子群を好ましくは0.5~5.0重量%、より好ましくは1.0~4.5重量%、最も好ましくは2.0~4.0重量%含有する。
【0060】
菓子製品のタブレット状キャンディは、リンゴ酸塩粒子群を好ましくは0.2~45重量%、より好ましくは0.5~40重量%、最も好ましくは1.0~30重量%含有する。
【0061】
菓子製品のチョコレート成分は、リンゴ酸塩粒子群を好ましくは0.2~25重量%、より好ましくは0.5~20重量%、最も好ましくは1.0~15重量%含有する。
【0062】
コーティング、タブレット状キャンディ又はチョコレートに含有されるリンゴ酸塩粒子群は、好ましくは20~180μmの体積加重平均直径D4,3を有する。より好ましくは、これらのリンゴ酸塩粒子群は、50~170μm、最も好ましくは80~160μmの体積加重平均直径D4,3を有する。
【0063】
好ましい実施形態によれば、リンゴ酸塩粒子群は、
D10≧1μm;
40μm≦D50≦200μm;
D90≦320μm
(ここで、Dxより小さい直径を有する粒子群の体積%はx体積%に等しく、Dxより大きい直径を有する粒子群の体積%は(100-x)体積%に等しい)の粒度分布を有する。さらにより好ましくは、リンゴ酸塩粒子群は、
D10≧5μm;
60μm≦D50≦140μm;
D90≦280μm、の粒度分布を有する。
【0064】
リンゴ酸塩粒子群は、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含有する。
【0065】
好ましい実施形態によれば、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶は、式Na+(C4H5O5)-・C4H6O5で表される二リンゴ酸三水素ナトリウム又は式2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5で表される三リンゴ酸四水素二カリウムである。最も好ましくは、共結晶は、式Na+(C4H5O5)-・C4H6O5で表される二リンゴ酸三水素ナトリウムである。
【0066】
本発明の菓子製品は、好ましくは、ハードパンニングコーティングでコーティングされた食用コアを含み、前記ハードパンニングコーティングは、結晶化糖、結晶化糖アルコール及びそれらの組み合わせから選択される結晶化甘味料を少なくとも50重量%含有し、前記ハードパンニングコーティングは、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも0.1重量%さらに含有する。
【0067】
好ましくは、ハードパンニングコーティングは0.1~5ミリメートル、より好ましくは0.2~3ミリメートル、最も好ましくは0.3~2.5ミリメートルの平均厚さを有する。
【0068】
本発明のハードパンニングコーティングは、通常10~300コーティング層、より好ましくは20~100コーティング層、最も好ましくは30~60コーティング層を含有する。
【0069】
好ましくは、パンニングコーティングは、結晶化甘味料を少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%含有する。
【0070】
ハードパンニングコーティング中の結晶化糖として付着させる1種又は複数の糖は、好ましくは、スクロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、前記糖は、スクロース、グルコース、フルクトース及びそれらの組み合わせから選択される。
【0071】
結晶化糖アルコールとして付着させる1種又は複数の糖アルコールは、好ましくは、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、糖アルコールはキシリトール、マンニトール、イソマルト及びそれらの組み合わせから選択される。
【0072】
特に好ましい実施形態によれば、結晶化甘味料は、スクロース、グルコース、フルクトース及びそれらの組み合わせから選択される。
【0073】
本発明の別の態様は、ハードパンニングされた菓子を調製するプロセスであって、
凝集性の食用コアを用意するステップと、
前記食用コアに少なくとも1つのシロップコーティング層を塗布するステップであり、前記シロップが、結晶化可能な糖、結晶化可能な糖アルコール及びそれらの組み合わせから選択される結晶化可能な甘味料を含む、ステップと、
リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70重量%含有するリンゴ酸塩粒子群を含む、少なくとも1つの他のコーティング層を塗布するステップとを含む、プロセスに関する。
【0074】
凝集性の食用コアは、通常0.2~400g、より好ましくは0.3~250gの範囲の重量を有する。
【0075】
利用されるシロップは、結晶性甘味料を好ましくは60~80重量%、より好ましくは結晶性甘味料を65~78重量%含有する。
【0076】
シロップの含水率は、好ましくは20~40重量%、より好ましくは22~35重量%の範囲である。
【0077】
甘味料と水は、合計で、好ましくはシロップの80~100重量%、より好ましくは90~100重量%を構成する。
【0078】
結晶化可能な糖は、好ましくはスクロース、グルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、結晶化可能な糖は、スクロース、グルコース、フルクトース及びそれらの組み合わせから選択される。
【0079】
結晶化可能な糖アルコールは、好ましくは、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール及びそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、糖アルコールはキシリトール、マンニトール、イソマルト及びそれらの組み合わせから選択される。
【0080】
特に好ましい実施形態によれば、結晶化可能な甘味料は、スクロース、グルコース、フルクトース及びそれらの組み合わせから選択される。
【0081】
特に好ましい実施形態によれば、ハードパンニングされた菓子を調製するプロセスで利用されるリンゴ酸塩粒子群は、以上に規定された粒子状組成物の形態で付着する。
【0082】
リンゴ酸塩粒子群の含水率は、通常5重量%を超えず、より好ましくは、含水率は3重量%を超えない。
【0083】
好ましい実施形態において、リンゴ酸塩粒子群は、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含有する。
【0084】
リンゴ酸塩粒子群中のリンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶は、好ましくはリンゴ酸とリンゴ酸水素ナトリウムとの共結晶、又はリンゴ酸とリンゴ酸水素カリウムとの共結晶である。さらにより好ましくは、共結晶は、二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)又は三リンゴ酸四水素二カリウム(2[K+(C4H5O5)-]・C4H6O5)である。最も好ましくは、本発明に従って利用される共結晶は、二リンゴ酸三水素ナトリウム(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5)である。
【0085】
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに説明される。
【0086】
[実施例]
実施例1
リンゴ酸水素ナトリウムとリンゴ酸との共結晶(Na+(C4H5O5)-・C4H6O5、以下、結晶性MASHMと呼ぶ)を含有する粉末は、ラボスケールのバッチ式流動層造粒機を使用して作製された。
【0087】
まず、等モル量のリンゴ酸水素ナトリウム及びリンゴ酸を含有する水溶液から結晶化し、その後、質量加重平均直径が約200μmになるように粉砕することによって、MASHMの種結晶を作製した。3種の異なる種結晶組成物が調製された。1種の種結晶組成物はMASHM結晶で構成された(組成物1)。MASHM結晶をリンゴ酸粒子群と表1に示す比率で混合することにより、2種の種結晶組成物(組成物2及び3)が調製された。
【0088】
さらに、1,304mMのC4H5NaO5と、1,304mMのC4H6O5とを含有する噴霧水溶液を調製した。
【0089】
【0090】
次いで、造粒機に種結晶を充填して、種結晶の流動層を作製し、55℃まで加熱した。所望の層温度に達したとき、噴霧水溶液の噴霧を開始した。噴霧中、層温度は55℃に維持された。種結晶層に噴霧された噴霧水溶液の総量は、種結晶組成物1の場合は3.18mL/g、種結晶組成物2及び3の場合は4.46mL/gであった。
【0091】
噴霧が終了した後、粉末は造粒機から放出された。粉末の質量加重平均直径は約300μmであった。
【0092】
MASHM粉末とリンゴ酸粉末とを85:15の重量比で乾式ブレンドすることによって、別の粉末を作製した(粉末4)。
【0093】
そのように調製された4種の粉末、及び市販のリンゴ酸粉末(ピューラック(登録商標)パウダーMA-リンゴ酸水素ナトリウムでコーティングされたリンゴ酸粒子群)からなる対照の組成を表2に示す。
【0094】
【0095】
サンプルのMASHM含量は、DSC分析により調べた。DSC分析は、サンプルが加熱されている間の吸熱及び発熱を伴う相転移を示す。MASHM及びリンゴ酸の融解ピークが知られている。ピーク下の面積は、物質の量と相関関係があり、純粋なMASHMサンプルの融解ピーク下の面積と比較される(X線分析で確認)。次いで、物質収支又はNa、K含量分析によって組成を確認する。このようにして、粉末1、2、3、及び4が完全に結晶化してMASHMになっていることが確認された。
【0096】
これら5種の粉末の吸湿性は、30℃において75%の相対湿度で測定された。結果を表3に示す。
【0097】
【0098】
粉末1の結果は、該物質の動的蒸気吸着試験の結果と一致しており、湿度0~90%で吸着を行った後、生成物の質量にほとんど変化が現れず、該物質が非吸湿性であることを示している。
【0099】
実施例2
100mlのジャケット付きガラス容器に、51.36g(0.383mol)のDL-リンゴ酸、及び30.17gの脱塩水を充填した。容器を循環恒温槽に接続し、マグネチックスターラーで攪拌しながら55℃まで加熱し、リンゴ酸結晶を完全に溶解させた。次いで、水酸化カリウム50%(9.37g、0.083mol)を添加した。67℃まで昇温し、透明な黄色の溶液を得た。攪拌しながら、溶液を室温まで冷却した。
【0100】
種結晶を得るために、少量の液体を開口アルミニウムカップに移し、水の緩やかな蒸発によって周囲温度で濃縮させた。2週間後、存在したすべての水分が蒸発し、結晶性生成物が形成された。
【0101】
この結晶性物質の小片は、残りの液体(現時点でガラス瓶に入っている)における種晶として使用された。一週末後、小さな結晶を含有する、わずかに濁った溶液が形成された。
【0102】
結晶の分析により、これらの結晶がビス(DL-リンゴ酸水素カリウム)・リンゴ酸からなることが示された。
【0103】
実施例3
100mlのジャケット付きガラス容器に、51.26g(0.382mol)のDL-リンゴ酸、15.50gの脱塩水、及び9.39gの50%水酸化カリウム(0.084mol)を充填した。容器を循環恒温槽に接続し、マグネチックスターラーで攪拌しながら40℃まで加熱し、リンゴ酸を完全に溶解させた。次いで、溶液を緩やかに冷却した。30℃で、実施例1から得られたいくらかの結晶スラリーを種結晶として添加した。さらに21.5℃まで冷却しても、結晶はあまり形成されなかった。一晩後、針状/棒状の結晶を含有する、粘性のあるスラリーが形成された。
【0104】
さらに3日間緩やかに攪拌した後、スラリーを55mmのペーパーフィルターで濾過した(200mbar)。濾過時間は約5分であった。洗浄は行わなかった。
【0105】
結晶ケーキ(8.38g)を、室温において10mbar未満の圧力で2.5時間乾燥させた。乾燥させた生成物(7.49g)を、乳鉢及び乳棒で粉砕した。
【0106】
結晶の分析により、これらの結晶がビス(DL-リンゴ酸水素カリウム)・リンゴ酸からなることが示された。
【0107】
この結晶性物質の動的蒸気吸着試験により、該物質は湿度70%まで安定しているが、より高レベルの湿度で湿気を吸収し始めたことが明らかとなった。
【0108】
実施例4
実施例1に記載したように、バッチ式流動層造粒機を使用して結晶性MASHMをプラントスケールで作製した。次いで、このようにして得られた粉末をペンミル(pen mill)で破砕した。
【0109】
ペンミルは金属リブ付きピン480本を有していた。ミル自体を窒素で冷却した。結晶性MASHM粉末は、バッグ排出ステーション、真空輸送、輸送スクリューを経由してミルに導入され、破砕された。
【0110】
使用されたミルの設定を表4に示す。
【0111】
【0112】
流動性破砕粉末の粒度分布は以下の通りであった:
98%<150μm
90%<100μm
合計1140kgの破砕粉末が作製され、箱中の20kgバッグに詰められた。
【0113】
実施例5
実施例1に記載したように、バッチ式流動層造粒機を使用して結晶性MASHMをプラントスケールで作製した。このようにして得られた粉末のほぼ100重量%が、180~μmの範囲の粒子径を有していた(ふるいにより求められた)。次いで、ホソカワ社製ファインインパクトミルUPZ160で、ピンディスク粉砕ユニットを使用して、このMASHM粉末を破砕した。
【0114】
使用されたミルの設定を表5に示す。
【0115】
【0116】
このようにして得られた流動性破砕粉末の特性を表6に示す。
【0117】
【0118】
また、この破砕粉末を3つのサイズのふるいにかけて、粒度分布を求めた。結果を表7に示す。
【0119】
【0120】
40℃/相対湿度75%で1週間保存した後も、破砕粉末は流動性があることが確認された。
【0121】
実施例6
実施例5の破砕MASHM粉末を使用して、ハードパンニングされたチューインガムを調製した。
【0122】
内径1200mmの包囲回転釜(enclosed rotating pan)システムを使用した。チューリップ型回転釜の中に35kgのチューインガムセンター(0.9g)を入れた。既製のエングロスシロップ(engrossing syrup)は、マンニトールとキシリトールとの組み合わせ68重量%、水28重量%、アラビアガム3重量%及び二酸化チタン1重量%を含有していた。エングロスシロップをバッファータンクに入れ、該タンクからノズルを通してシロップを回転釜に送り込むことができた。シロップは75~80℃に維持された。
【0123】
チューインガムセンターは、17の「被膜」(各被膜が1~5コーティング層を含む)を塗布することによってコーティングされた。プロセスの詳細を表8に示す。
【0124】
【0125】
このようにして得られたチューインガムを5カ月間保存した。チューインガムは、作製から1週間後及び5カ月後にパネルによって評価された。この5カ月間で、製品の外観に大きな変化はなかった。5カ月後、チューインガムは、作製1週間後と同程度の酸味を有していたことがわかった。
【0126】
実施例7
実施例5の破砕MASHM粉末を使用して、表9に示すレシピに基づいてキャンディを調製した。
【0127】
【0128】
キャンディは、上記の成分を混合し、その後、得られた混合物をFETTEタブレットプレス機でプレスしてタブレットにすることにより調製された。
【0129】
異なる温度及び湿度において、タブレットの吸湿性を求めた。結果を表10に示す。
【0130】
【国際調査報告】