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特表2023-554322シクロペンテノン誘導体及び抗生物質としてのその使用
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  • 特表-シクロペンテノン誘導体及び抗生物質としてのその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】シクロペンテノン誘導体及び抗生物質としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 49/707 20060101AFI20231220BHJP
   C07D 317/54 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20231220BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 223/04 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 255/56 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 69/157 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 49/753 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 69/00 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 69/78 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 69/92 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 229/60 20060101ALI20231220BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 45/59 20060101ALI20231220BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
C07C49/707
C07D317/54 CSP
A61K31/36
A61P31/04
A61K31/122
C07C223/04
C07C255/56
C07C69/157
C07C49/753 C
C07C69/00
C07C69/78
C07C69/92
C07C229/60
C07F7/18 H
C07C45/59
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535375
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2021085082
(87)【国際公開番号】W WO2022122975
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20306525.5
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ウアッツァーニ シャディ ジャマル-エディン
(72)【発明者】
【氏名】ル ゴフ ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】ダレリー ジャン-フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ベッツァー ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワチュリエ アルノー
(72)【発明者】
【氏名】マリネッティ アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】カシュー ファニー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206CB21
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB35
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB20
4H006AC29
4H006AC41
4H006AC44
4H006AC48
4H006BA08
4H006BA37
4H006BA52
4H006BA66
4H006BA67
4H006BA91
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BN20
4H006BR70
4H006BS30
4H006BU42
4H006BU46
4H039CA40
4H039CA60
4H039CA62
4H039CH90
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ24
4H049VR23
4H049VR41
4H049VU06
4H049VW02
(57)【要約】
本発明は、薬物として、とりわけ抗生物質としての使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物に関する。本発明は、前記式(I)の化合物及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物にも関する。本発明は更に式(I’)の化合物の調製方法に関する。
【化1】
(I)
【化2】
(I’)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物としての使用のための、以下の式(I):
【化1】
(I)
(式中、
XはO又はNHであり、
1はH、置換されていてもよいアリール、C(=O)-C1-C6アルキル、C(=O)-O-C1-C6アルキル若しくはSi(C1-C6アルキル)3であり、
2はH若しくはCH2OR4であり、R4はH、C1-C6アルキル、置換されていてもよいC1-C6アルキルアリール若しくはC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいアリール若しくは置換されていてもよい複素環であるか、又は
1及びR2は一緒に置換されていてもよい複素環を表し、
3は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)
の化合物、並びにそのあらゆる立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体及び混合物、並びにそのあらゆる薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物であって、但し、R3及びX-R1基がトランス位にある、化合物。
【請求項2】
2がH又はCH2OHである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
XがOである、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
1がH又はC(=O)-C1-C6アルキル、好ましくはH又はC(=O)-メチル、より好ましくはHである、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
以下の式(I’):
【化2】
(I’)
に対応する、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
3が、ハロゲン、C1-C6ハロアルキル、C1-C6アルキル、O-C1-C6アルキル及びCNから選択される1個若しくは複数、好ましくは1~3個の基で、又は複素環、例えば1,3-ジオキソランを一緒に形成する2個の置換基で置換されていてもよいアリール、好ましくはフェニルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
以下:
【化3】











からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
【化4】
、好ましくは
【化5】
からなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に定義される少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
細菌感染、例えば泌尿生殖器、呼吸器、消化器、ニューロン及び皮膚感染を処置するための使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための化合物及び請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
以下の式(I):
【化6】
(I)
(式中、
XはO又はNHであり、
1はH、置換されていてもよいアリール、C(=O)-C1-C6アルキル、C(=O)-O-C1-C6アルキル又はSi(C1-C6アルキル)3であり、
2はCH2OR4であり、R4はH、置換されていてもよいC1-C6アルキルアリール又はC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよい複素環であり、
3は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)
の化合物、並びにそのあらゆる立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体及び混合物、並びにそのあらゆる薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物であって、但し、R3及びX-R1基がトランス位にあり、但し、前記化合物が以下:
【化7】
ではない、化合物。
【請求項12】
2がCH2OHであり、且つ/又はXがOであり、且つ/又はR1がH若しくはC(=O)-C1-C6アルキルであり、且つ/又はR3が、ハロゲン、C1-C6ハロアルキル、C1-C6アルキル、O-C1-C6アルキル及びCNから選択される1個若しくは複数の基で置換されていてもよいアリールであり、好ましくは、以下:
【化8】
、好ましくは
【化9】
からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
以下の式:
【化10】
の化合物。
【請求項14】
請求項5又は6に定義される式(I’)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物の調製方法であって、以下の工程
(a)式(II-B)
【化11】
(II-B)
(式中、R3は請求項1~6のいずれか1項に定義した通りである)
の化合物をC1-C6アルコール及び場合によりルイス酸の存在下、マイクロ波加熱下で反応させる工程、
(b)必要に応じて、式(I’)のジアステレオ異性体を単離する工程
を含む方法。
【請求項15】
工程(a)が、ルイス酸の存在下で、好ましくはDyCl3、Dy(OTf)3、Fe(OTf)3、FeCl3.6H2O、ZnCl2、CuCl2、Sc(OTf)3及びこれらの組合せからなる群から選択されるルイス酸の存在下で行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物、特に抗生物質としてのシクロペンテノン誘導体の使用に関する。本発明は、新しいシクロペンタノン誘導体及びその調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
感染性疾患は、世界の罹患率及び死亡率の主因である。特に、多くの病原菌は、公知の広範に用いられる抗生物質にますます耐性を持つようになり、公衆衛生上の大きな問題となっている。WHOは、利用可能な抗生物質に対する耐性が、2050年までに1000万人の死亡をもたらすと指摘している。このタイプの耐性菌の一つの代表例は、MRSA(メチリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus))である。
したがって、広範囲の細菌に対して有効な新しいクラスの抗生物質が必要とされている。とりわけ、グラム陰性菌に対して選択性を示す抗生物質が求められる。
したがって、本発明者らは、広範囲の生物活性を有する薬物としての使用のためのシクロペンタノン誘導体を調査した。新しいクラスの抗生物質を探求したところ、本発明者らは、驚くべきことに、式(I)のシクロペンタノン誘導体が、細菌、とりわけグラム陰性菌に対して強い活性を示すことを発見した。
本明細書に開示されるシクロペンテノン誘導体は、単純な化学構造を有し、クリニックで用いられる伝統的な抗生物質のカタログに存在しない。これらの分子へのアクセスは容易であり、費用効果が高い。その構造を通じて、分子は、様々な構造類似体及び抗生物質の組合せへのアクセスを可能にし、これは処置が困難な感染症例において解決策を提供することができる。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、本発明は、薬物としての使用のための以下の式(I):
【化1】
(I)
(式中、
XはO又はNHであり、
1はH、置換されていてもよいアリール、C(=O)-C1-C6アルキル、C(=O)-O-C1-C6アルキル若しくはSi(C1-C6アルキル)3であり、
2はH若しくはCH2OR4であり、R4はH、C1-C6アルキル、置換されていてもよいC1-C6アルキルアリール若しくはC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいアリール若しくは置換されていてもよい複素環であるか、又は
1及びR2は一緒に置換されていてもよい複素環を表し、
3は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)
の化合物、並びにそのあらゆる異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体及び混合物、並びにそのあらゆる薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物であって、但し、R3及びX-R1基がトランス位にある、化合物に関する。
【0004】
第2の態様において、本発明は、請求項11、12及び13に列挙される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物に関する。
第3の態様において、本発明は、上記の式(I)の化合物の調製方法に関する。
第4の態様において、本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤並びに少なくとも1種の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を含む医薬組成物に関する。
本発明は、薬物としての使用のための上記の医薬組成物にも関する。
【0005】
定義
本明細書で使用する用語「立体異性体」は、配置立体異性体及びより特に光学異性体を指す。
本発明において、光学異性体は、特にキラル炭素原子の置換基の空間における位置の違いから生じる。互いの鏡像ではない光学異性体は、「ジアステレオ異性体」と称され、重ね合わせることができない鏡像である光学異性体は、「鏡像異性体」と称される。
キラル化合物の2種の鏡像異性体の等モル混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と称される。
【0006】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される」は、医薬組成物の調製に有用であり、一般に安全で無毒である、医薬使用のための化合物又は材料を意味することが意図される。
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物」は、上に定義したように薬学的に許容され、対応する化合物の薬理活性を有する化合物の塩及び/又は溶媒和物を称する。
薬学的に許容される塩は:
(1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸等と形成されるか;又は有機酸、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、ジベンゾイル-L25酒石酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸及びトリフルオロ酢酸等と形成される酸付加塩、並びに
(2)化合物中に存在する酸プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンで置き換えられているか;又は有機若しくは無機塩基と配位している場合に形成される塩基付加塩を含む。許容される有機塩基はジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等を含む。許容される無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む。
本発明の化合物の治療使用のための許容される溶媒和物としては、従来の溶媒和物、例えば溶媒の存在による本発明の化合物の調製の最終段階で形成されるものが挙げられる。例として、水(これらの溶媒和物は水和物とも呼ばれる)又はエタノールの存在による溶媒和物を挙げることができる。
本発明で使用する用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素原子を指す。
【0007】
本明細書で使用する用語「C1-C6アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等を含むが、これらに限定されない1~6個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝鎖状の一価の飽和炭化水素鎖を指す。
本明細書で使用する用語「複素環」は、環に好ましくは5~10個、とりわけ5又は6個の原子を含む、非芳香族の、飽和又は不飽和の、単環又は多環(縮合、架橋又はスピロ環を含む)を指し、環の原子は炭素原子及び1個又は複数、有利には1~4個の、より有利には1又は2個のヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄原子で構成され、残りは炭素原子である。複素環はとりわけピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizinyl)、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、アゼパニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾカニル、チアゼパニル、ベンズイミダゾロニル又は式:
【化2】
のクマリンであってよい。
【0008】
本明細書で使用する用語「アリール」は、好ましくは6~14個の炭素原子を含み、1個又は複数の縮合環、例えばフェニル、ナフチル又はフェナントリル基等を含む芳香族炭化水素基を指す。有利には、これはフェニル基である。
本明細書で使用する用語「C1-C6アルキルアリール」は、上に定義したアリール基で置換されている上に定義したアルキルを指す。「C1-C6アルキルアリール」の例としてはベンジル基がある。
【0009】
本明細書で使用する用語「ヘテロアリール」は、1又は数個、とりわけ1又は2個の縮合炭化水素環を含む芳香族基を指し、1又は数個、とりわけ1~4個、有利には1又は2個の炭素原子はそれぞれ、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選択され、好ましくは酸素原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子で置き換えられている。これは、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリル又はインドリルであってよい。好ましくは、これはチエニル、チアゾリル又はインドリルである。
【0010】
基が「置換されていてもよい」といわれる場合、基が、1個又は複数の置換基、典型的には1~3個の置換基で置換されていてもよいことを意味し、これはハロゲン、C1-C6アルキル、C3-C7シクロアルキル、C1-C6ハロアルキル、オキソ、NRab、CORc、CO2d、CONRef、ORg及びCNから選択されてもよく、Ra~Rgは互いに独立してH又はC1-C6アルキルである。一部の実施形態において、2個の置換基は一緒に複素環を形成してもよい。例えば、フェニル基は、複素環、例えば1,3-ジオキソランを一緒に形成する2個の置換基で置換されていてもよい。
本明細書で使用する用語「C3-C7シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを含む、3~7個の炭素を含む、飽和炭化水素環を指す。
本明細書で使用する用語「医薬組成物」は、細菌感染に対して予防及び治療特性を有する組成物を称する。
表現「処置」は、あらゆるタイプの動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを対象とすることが意図される。人間ではない動物の処置の場合、獣医学的処置を指す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
式(I)の化合物
式(I)の化合物は、以下の式:
【化3】
(I)
(式中、
XはO又はNHであり、
1はH、置換されていてもよいアリール、C(=O)-C1-C6アルキル、C(=O)-O-C1-C6アルキル若しくはSi(C1-C6アルキル)3であり、
2はH若しくはCH2OR4であり、R4はH、C1-C6アルキル、置換されていてもよいC1-C6アルキルアリール若しくはC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいアリール若しくは置換されていてもよい複素環であるか、又は
1及びR2は一緒に置換されていてもよい複素環を表し、
3は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)
の化合物、並びにそのあらゆる立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体及び混合物、並びにそのあらゆる薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物であって、但し、R3及びX-R1基がトランス位にある、化合物を示す。
【0012】
式(I)の化合物は、立体異性体の混合物、特にそのラセミ混合物の形態であってよい。
式(I)の化合物は立体異性体又は立体異性体の混合物、例えば鏡像異性体の混合物、例えばラセミ混合物の形態であってよい。好ましくは、化合物は、本出願に例示される1種のジアステレオ異性体のラセミ混合物の形態である。
式(I)の化合物は特定の立体異性体として以下で本明細書に表され得るが、該表現は、そのあらゆる立体異性体を包含し、但し、R3及びX-R1基がトランス位にあることが理解されるべきである。
【0013】
一部の実施形態において、置換基R2はCH2OR4を表し、R4はH、C1-C6アルキル、置換されていてもよいC1-C6アルキルアリール又はC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよい複素環である。一部の実施形態において、R4はH、置換されていてもよいベンジル又はC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいフェニル又はクマリン基である。したがって、例えば、R4はH又は以下の基
【化4】
のうちの1つを表してもよい。
【0014】
一部の好ましい実施形態において、R2はH又はCH2OHを表す。
一部の好ましい実施形態において、R1はH、置換されていてもよいフェニル、C(=O)-メチル、C(=O)-O-tert-ブチル又はtert-ブチルジメチルシリル基である。好ましくは、R1はH、C(=O)-メチル又はアリールであり、前記アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、C1-C6ハロアルキル、O-C1-C6アルキル及びC1-C6アルキルから選択される1個又は複数の基で置換されている。特に、R1がアリールである場合、これは、置換されていないか、又はハロゲン、CF3基及びOMe基から独立して選択される1又は2個の基で置換されている。
【0015】
一部の実施形態において、XはNHである。XがNH基である場合、R1は好ましくは上に定義したアリールである。
一部の実施形態において、Xは酸素原子である。Xが酸素原子である場合、R1は好ましくはH又はC(=O)-メチル、より好ましくはHである。
有利には、R1はH又はC(=O)-C1-C6アルキル、好ましくはH又はC(=O)-メチル、より好ましくはHである。
一部の他の実施形態において、R1及びR2は、一緒に複素環、例えば酸化エチレン又は1,3ジオキソランを表し、これは置換されていないか、又は1個のオキソ若しくはC3-C7シクロアルキル、例えばシクロヘキシルで置換されている。
一部の実施形態において、R1はH又はC(=O)-C1-C6アルキル、好ましくはH又はC(=O)-メチルであり、R2はH又はCH2OHであり、XはOであり、R3は、ハロゲン、フッ素、特にCl、C1-C6アルキル及びO-C1-C6アルキル、特にメチルから選択される1若しくは2個の基で、又は1,3-ジオキソランを一緒に形成する2個の置換基で置換されていてもよいアリール、好ましくはフェニルである。
【0016】
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、R1がHであり、XがOであり、R2がHであり、R3が本明細書に開示される通りである化合物である。
一部の実施形態において、式(I)の化合物は、以下の式(I’):
【化5】
(I’)
(式中、R3は上又は下に開示される通りである)
に対応する。
式(I’)の化合物は、グラム陰性菌に対して効果が高いことが見出された。式(I’)の化合物は有利にはグラム陰性菌に選択性であり得る。
式(I)又は(I’)の化合物の一部の実施形態において、R3は、特にチエニル、チアゾリル又はインドリルから選択されるヘテロアリールであり、前記インドリルは、アルキル基、例えばメチルで置換されていてもよい。
【0017】
式(I)又は(I’)の化合物の一部の好ましい実施形態において、R3は、ハロゲン、C1-C6ハロアルキル、C1-C6アルキル、O-C1-C6アルキル及びCNから独立して選択される1個若しくは複数、好ましくは1~3個の基で、又は複素環、例えば1,3-ジオキソランを一緒に形成する2個の置換基で置換されていてもよいアリール、例えばフェニル、ナフチル又はアントラセニル、好ましくはフェニルである。有利には、R3は、ハロゲン、特にF又はCl、C1-C6アルキル及びO-C1-C6アルキル、特にメチルから選択される1個若しくは2個の基で、又は1,3-ジオキソランを一緒に形成する2個の置換基で置換されていてもよいフェニルを表す。
【0018】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、以下:
【化6】











並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物から選択される。
【0019】
より好ましくは、式(I)の化合物は、以下:
【化7】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物から選択される。
【0020】
より好ましくは、式(I)の化合物は、以下:
【化8】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物から選択される。
【0021】
更により好ましくは、式(I)の化合物は、以下:
【化9】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物から選択される。
【0022】
一部の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、好ましくは以下:
【化10】
の化合物のうちの一つではない。
【0023】
一部の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、実施例の節に開示される化合物のいずれか、即ち化合物(Ia)~(Im)のいずれかである。
本発明は、式(I):
【化11】
(I)
(式中、
XはO又はNHであり、
1はH、置換されていてもよいアリール、C(=O)-C1-C6アルキル、C(=O)-O-C1-C6アルキル又はSi(C1-C6アルキル)3であり、
2はCH2OR4であり、R4はH、置換されていてもよいC1-C6アルキルアリール又はC(=O)R5であり、R5は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよい複素環であり、
3は置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)
の化合物、並びにそのあらゆる立体異性体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体及び混合物、並びにそのあらゆる薬学的に許容される塩及び/又は溶媒和物であって、但し、R3及びX-R1基がトランス位にあり、但し、前記化合物が以下:
【化12】
ではない化合物、に関する。
【0024】
特に、本発明は、実施例の節に開示される化合物If、Ih、Ig及びIiに関する。
本発明は、実施例の節に開示される化合物(Ic)にも関する。
式(I)の化合物の調製方法
本発明は、Xが酸素原子である上記の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物の調製方法であって、以下の工程:
(i)式(II):
【化13】
(II)
(式中、R2及びR3は上に定義した通りである)
の化合物をC1-C6アルコール及び任意にルイス酸の存在下、加熱下で反応させる工程、
(ii)必要に応じて、式(I)のジアステレオ異性体を単離する工程
を含む方法に関する。
【0025】
好ましくは、式(II)の化合物は、以下:
【化14】
から選択される。
【0026】
式(II)の化合物は、文献に記載される方法に従って好適な置換基を用いて得られ得る。例えば、式(II-A)の化合物は、Wang, H.-Y.;Yang, K.;Bennett, S. R.;Guo, S.-r.;Tang, W. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 8756-8759に記載される方法に従って、フラン又は2-フルアルデヒドから出発して得ることができ、式(II-B)の化合物は、Rajmohan, R.;Gayathri, S.;Vairaprakash, P. RSC Adv. 2015, 5, 100401-100407に記載される方法に従って、ヒドロキシメチルフルフラールから出発して得られ得る。
任意に、当業者に周知の保護/脱保護及び/又は官能化の追加の工程は、上記の置換基R2及びR3を用いて式(II)の化合物を得るために、工程(i)の前に行われてもよい。
【0027】
工程(i)の反応は、C1-C6アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はこれらの混合物、好ましくはtert-ブタノールの存在下で行われる。有利には、C1-C6アルコールは水と混合される。例えば、工程(i)は、1:1~10:1の比、好ましくは5:1の比のtert-ブタノール/水の混合物の存在下で行われる。
反応は、好ましくは不活性雰囲気、例えば窒素(N2)又はアルゴン(Ar)雰囲気下で行われる。
反応は、好ましくは、18℃~250℃、好ましくは80℃~100℃の温度で行われる。加熱は、従来の条件で又はマイクロ波を用いて達成され得る。好ましくは、反応はマイクロ波で行われ、これにより反応時間を10分の1にすることができる。
【0028】
有利には、工程(i)は、ルイス酸の存在下で、好ましくはDyCl3、Dy(OTf)3、Fe(OTf)3、FeCl3.6H2O、ZnCl2、CuCl2、Sc(OTf)3及びこれらの組合せからなる群から選択されるルイス酸の存在下で行われる。より好ましくは、ルイス酸はDyCl3である。
工程(i)により、Xが酸素原子であり、R1がHであり、R2及びR3が上に定義した通りである式(I)の化合物が得られる。
したがって、調製方法は、R1の位置でHを上に定義した別の基に置き換えるために、工程(i)と工程(ii)の間に当業者に周知の官能化の追加の工程を含んでもよい。
【0029】
得られた最終化合物は、当業者に周知の方法によって、例えば抽出、溶媒の蒸発によって又は沈殿若しくは結晶化(次いで濾過)によって工程(ii)において反応媒体から単離する、即ち分離され得る。
化合物は、当業者に周知の方法によって、例えば再結晶化によって、蒸留によって、シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって必要に応じて精製もされ得る。
別の実施形態によれば、本発明は、XがNH基である上記の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物の調製方法であって、以下の工程:
(i)式(II)
【化15】
(II)
(式中、R2及びR3は上に定義した通りである)
の化合物をC1-C6アルコール及び任意にルイス酸の存在下、加熱下で反応させる工程、
(ii)必要に応じて、式(I)のジアステレオ異性体を単離する工程
を含む方法に関する。
【0030】
工程(I’)及び(ii’)の条件は、工程(i)及び(ii)について上に定義した通りである。
【0031】
好ましい実施形態によれば、本発明は上記の式(I’)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物の調製方法であって、以下の工程
(a)式(II-B)
【化16】
(II-B)
(式中、R2及びR3は上に定義した通りである)
の化合物をC1-C6アルコール及び場合によりルイス酸の存在下、マイクロ波加熱下で反応させる工程、
(b)必要に応じて、式(I)のジアステレオ異性体を単離する工程
を含む方法に関する。
好ましくは、工程(a)の反応は、1:1~10:1の比、好ましくは5:1の比のtert-ブタノール/水の混合物の存在下で行われる。反応は、好ましくは不活性雰囲気下、例えば窒素(N2)又はアルゴン(Ar)雰囲気下で行われる。
反応は好ましくは80℃~100℃、より好ましくは100℃の温度で行われる。
有利には、工程(a)は、ルイス酸の存在下で、好ましくはDyCl3、Dy(OTf)3、Fe(OTf)3、FeCl3.6H2O、ZnCl2、CuCl2、Sc(OTf)3及びこれらの組合せからなる群から選択されるルイス酸の存在下で行われる。より好ましくは、ルイス酸はDyCl3である。
【0032】
得られた式(I’)の最終化合物は、当業者に周知の方法によって、例えば抽出、溶媒の蒸発によって又は沈殿若しくは結晶化(次いで濾過)によって工程(b)において反応媒体から分離され得る。化合物は、当業者に周知の方法によって、例えば再結晶化によって、蒸留によって、シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって必要に応じて精製もされ得る。
【0033】
医薬組成物
本発明は、上で本明細書に開示される少なくとも1種の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物にも関する。
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口(例えば皮下、筋肉内、静脈内)投与、好ましくは経口又は静脈内投与を意図することができる。有効成分は、従来の医薬担体と混合した投与の単位形態で動物、好ましくはヒトを含む哺乳動物に投与され得る。
経口投与のために、医薬組成物は固体又は液体(液剤又は懸濁剤)形態であってよい。
【0034】
固体組成物は、錠剤、ゼラチンカプセル剤、散剤、顆粒剤等の形態であってよい。錠剤において、有効成分は、圧縮される前に医薬ビヒクル、例えばゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム等と混合され得る。錠剤は、とりわけスクロースで若しくは他の好適な材料で更に被覆されてもよく、又は延長若しくは遅延活性を有するような方法で処理されてもよい。粉末又は顆粒において、有効成分は、分散剤、湿潤剤又は懸濁化剤と及び風味補正剤又は甘味料と混合又は顆粒化され得る。ゼラチンカプセル剤において、有効成分は、前述したように散剤若しくは顆粒剤の形態で又は後述するように液体組成物の形態で軟又は硬ゼラチンカプセルに導入され得る。
液体組成物は、溶媒、例えば水中に、有効成分を甘味料、味覚増強剤又は好適な着色剤と一緒に含有することができる。液体組成物は、上述したように散剤又は顆粒剤を、液体、例えば水、ジュース、ミルク等に懸濁又は溶解することによっても得られ得る。これは、例えばシロップ又はエリキシルであってよい。
非経口投与のために、組成物は、懸濁化剤及び/又は湿潤剤を含有し得る水性懸濁剤又は液剤の形態であってよい。組成物は有利には滅菌である。これは(特に血液と比較した場合)等張液の形態であってよい。
本発明の化合物は、1日1回用量のみで又は1日を通じて数回用量、例えば1日2回等用量で投与される1日0.01mg~1000mgの範囲の用量で医薬組成物中で使用され得る。1日に投与される用量は、有利には5mg~500mg、より有利には10mg~200mgで構成される。しかし、これらの範囲以外の用量を使用する必要がある場合があり、これは当業者によって認識されるであろう。
【0035】
特定の実施形態によれば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、カプセル形態の医薬組成物中に存在する。これは、高分子界面活性剤ミセル又はリポソーム内にカプセル化され得、高分子界面活性剤は、例えばポリソルベート、例えばポリソルベート80である。このようなカプセル化は、当業者に周知の方法、特にGasser, G. et al., J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 6066-6084に記載される方法に従って実施され得る。カプセル化は、それを必要とする対象の体内における式(I)の化合物の制御、標的及び/又は延長放出に特に有用である。特に、カプセル化は、本発明の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは医薬組成物の見かけの水溶解度を上昇させることによって、そのバイオアベイラビリティーを改善することができる。したがって、非経口注射が促進される。
【0036】
処置
本発明は、薬物としての使用のための、特に細菌感染の処置のための、上で本明細書に開示される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは本発明による医薬組成物に関する。
本発明は、薬物の製造のための、とりわけ細菌感染の処置のための、本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは本発明による医薬組成物の使用に関する。
本発明は、細菌感染の処置のための、本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いはこれらを含む医薬組成物の使用にも関する。
本発明は、細菌感染を処置する方法であって、有効量の本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは本発明による医薬組成物のそれを必要とする人への投与を含む方法にも関する。
【0037】
好ましい実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは医薬組成物は、細菌感染、例えば耐性病原性グラム陰性菌又はグラム陽性菌に関連する細菌感染の処置に有用である。他の点では、本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは医薬組成物は、抗生物質、とりわけ広域スペクトル抗生物質として、特に耐性病原性グラム陰性菌又はグラム陽性菌に対する抗生物質として有用である。
本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、或いは医薬組成物は、泌尿生殖器、呼吸器、消化器、ニューロン及び皮膚感染に関与する耐性病原性細菌に関連する細菌感染の処置に有用であり得る。
【0038】
したがって、本実施形態によれば、式(I)の化合物は、好ましくは以下
【化17】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶解和物から、より好ましくは以下
【化18】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶解和物から選択されてもよい。
【0039】
例えば、細菌感染は、大腸菌(Eschericha coli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)から選択される耐性病原性グラム陰性菌によって、又は耐性病原性グラム陽性菌、例えば黄色ブドウ球菌によって誘発され得る。
【0040】
好ましくは、式(I)の化合物が、耐性病原性グラム陰性菌に関連する細菌感染の処置に用いられる場合、R1はHを表し、R2はH又はCH2OR4を表し、R4は好ましくはH又はC1-C6アルキルであり、X及びR3は上に定義した通りである。より好ましくは、R1はHを表し、R2はH又はCH2OHを表し、XはOを表し、R3は上に定義した通りである。更により好ましくは、本実施形態によれば、式(I)の化合物は、以下:
【化19】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶解和物から、特に以下
【化20】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶解和物から選択される。
【0041】
好ましくは、式(I)の化合物が、耐性病原性グラム陽性菌に関連する細菌感染の処置に用いられる場合、R1はH又はC(=O)-C1-C6アルキルを表し、R2はH又はCH2OR4を表し、R4は好ましくはH又はC1-C6アルキルであり、Xは酸素原子であり、R3は上に定義した通りである。より好ましくは、R1はH又はC(=O)-メチルを表し、R2はH又はCH2OHを表し、Xは酸素原子であり、R3は上に定義した通りである。更により好ましくは、本実施形態によれば、式(I)の化合物は、以下:
【化21】
並びにその薬学的に許容される塩及び/又は溶解和物から選択される。
【0042】
特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、耐性病原性グラム陰性菌に選択性であり得る。他の点では、式(I)の化合物は、耐性病原性グラム陽性菌又は他の病原性微生物に対して不活性でありながら、耐性病原性グラム陰性菌に対して活性であり得ることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】化合物Ia、Ib及びIc 12.5、25、50及び100μg並びに参照ゲンタマイシン10μgによる黄色ブドウ球菌ATCC25923に対するKirby-Bauerディスク拡散感受性試験;左:各試料の関数としての阻害ゾーンの直径を表すグラフである;右:Ic 12.5、25、50及び100μgによる阻害ゾーンを例示するペトリ皿の写真である。
図2】化合物Ia及びIb 12.5、25、50及び100μg並びに参照ゲンタマイシン10μgによるエンテロバクター・クロアカATCC13047に対するKirby-Bauerディスク拡散感受性試験;左:各試料の関数としての阻害ゾーンの直径を表すグラフである;右:Ia 12.5、25、50及び100μgによる阻害ゾーンを例示するペトリ皿の写真である。
図3】化合物Ib及びIc 12.5、25、50及び100μg並びに参照ゲンタマイシン10μgによるアシネトバクター・バウマンニATCC19606に対するKirby-Bauerディスク拡散感受性試験;左:各試料の関数としての阻害ゾーンの直径を表すグラフである;右:Ib及びIc 12.5、25、50及び100μgによる阻害ゾーンを例示するペトリ皿の写真である。
図4】化合物Ia及びIb 12.5、25、50及び100μg並びに参照ゲンタマイシン10μgによる大腸菌ATCC25922に対するKirby-Bauerディスク拡散感受性試験;左:各試料の関数としての阻害ゾーンの直径を表すグラフである;右:Ia 12.5、25、50及び100μgによる阻害ゾーンを例示するペトリ皿の写真である。
【実施例
【0044】
1)合成
材料、装置及び方法
反応を、オーブン乾燥したガラス器具を用いてアルゴン雰囲気下で実施した。分離は全て、CombiFlash Companionを用いた中圧(20psi)でのシリカゲル(Redi Sepプレパックカラム、230~400メッシュ)上のフラッシュクロマトグラフィー条件下で又は分取HPLCによって行った。反応は、紫外線によって及びEtOH中のバニリン(15%)+硫酸(2.5%)をスプレーし、続いて加熱することによって可視化したMerckシリカゲルプレート(60 F254アルミニウムシート)上の薄層クロマトグラフィーによって監視した。試薬グレードの化学物質を、様々な商業的供給者から得、受け取ったまま使用した。
マイクロ波補助反応を、ホウケイ酸ガラス標準バイアルG10を用いてマイクロ波300マイクロ波反応器で実施した。密閉反応容器を使用した。反応温度を外面センサーで監視し、該温度を各実験で維持した。
【0045】
1H NMR(500又は300MHz)及び13C NMR(125又は75MHz)スペクトルを、別段明記されない限り、Bruker Avanceスペクトロメーターに298Kで記録した。化学シフトはppm(δ)で示され、内部溶媒シグナルを参照する。多重度は以下のように示される:s(シングレット)、brs(ブロードシングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(クアドラプレット)、dd(ダブレットのダブレット)、m(マルチプレット)。結合定数JはHzで示される。炭素多重度をDEPT135実験によって決定した。
【0046】
赤外線スペクトル(IR)を、ダイヤモンド窓Dura SamplIR IIを用いたPerkin-Elmer FT-IRシステムに記録した。データを逆数センチメートル(cm-1)で報告する。
高分解能質量分析(HRMS)を、正イオン又は負イオン検出モードでエレクトロスプレーイオン化(ESI)及び飛行時間(TOF)分析器を用いて実施した。
【0047】
中間体の合成
(フラン-2-イル)フェニルメタノール
【化22】
無水Et2O(15mL)中の2-フルアルデヒド(500mg、5.20mmol、1当量)溶液に、0℃、アルゴン下で臭化フェニルマグネシウム(Et2O中の1M溶液、6.76mL、6.76mmol、1.3当量)を添加した。反応混合物を、0℃から室温まで2時間撹拌し、次いで飽和NH4Cl水溶液(20mL)の添加によってクエンチした。水層を酢酸エチル(3×50mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~70:30)によって精製して、所望のカルビノール(900mg、定量)を淡黄色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 70:30):0.42。
【0048】
スペクトルデータは、文献(D'Auria, M. Heterocycles 2000, 52, 185-194)中の先に記載の化合物(CAS番号[60907-91-7])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 500.2 MHz) δ 7.45 (bd, J = 7.8 Hz, 2H), 7.40-7.37 (m, 3H), 7.33 (bt, J = 7.8 Hz, 2H), 6.32 (dd, J = 3.2, 1.8 Hz, 1H), 6.12 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.84 (bs, 1H), 2.38 (bs, 1H). 13C NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 156.1 (C), 142.7 (CH), 140.9 (C), 128.6 (CH), 128.2 (CH), 126.7 (CH), 110.4 (CH), 107.6 (CH), 70.3 (CH).
(4-クロロフェニル)(フラン-2-イル)メタノール
【化23】
無水Et2O(15mL)中の2-フルアルデヒド(500mg、5.20mmol、1当量)の溶液に、0℃、アルゴン下で臭化4-クロロフェニルマグネシウム(Et2O中の1M溶液、6.76mL、6.76mmol、1.3当量)を添加した。反応混合物を、0℃から室温まで2時間撹拌し、次いで飽和NH4Cl水溶液(20mL)の添加によってクエンチした。水層を酢酸エチル(3×50mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~70:30)によって精製して、所望のカルビノール(1.08g、定量)を淡黄色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 70:30):0.48。
【0049】
スペクトルデータは、文献(E. Riva, S. Gagliardi, M. Martinelli, D. Passarella, D. Vigo, A. Rencurosi, Tetrahedron 2010, 66, 3242-3247)中の先に記載の化合物(CAS番号[143747-66-4])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 300.2 MHz) δ 7.39 (dd, J = 1.8, 0.8 Hz, 1H), 7.37-7.34 (m, 4H), 6.33 (dd, J = 3.5, 1.8 Hz, 1H), 6.12 (ddd, J = 3.5, 0.8, 0.8 Hz, 1H), 5.81 (bd, J = 3.3 Hz, 1H), 2.44 (bd, J = 3.3 Hz, 1H). 13C NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 155.6 (C), 142.9 (CH), 139.3 (C), 134.0 (C), 128.8 (CH), 128.1 (CH), 110.4 (CH), 107.7 (CH), 69.6 (CH). IR (n/cm-1) 3343, 1596, 1491, 1407, 1225, 1186, 1141, 1089, 1010, 813, 765, 738. HRMS (ESI+) C12H8OCl [M+H-H2O]+の計算値: 191.0264, 実測値: 191.0263.
【0050】
(2-クロロフェニル)(フラン-2-イル)メタノール
【化24】
無水Et2O(60mL)中のフラン(2.20mL、30.0mmol、2.0当量)溶液に、0℃、アルゴン下でn-ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M溶液、7.2mL、17.9mmol、1.2当量)を滴下した。反応混合物を、0℃で1時間及び室温で15分間撹拌した。次いで、混合物を-78℃で冷却し、無水THF(10mL)中の2-クロロベンズアルデヒド(2.10g、14.9mmol、1.0当量)をゆっくり添加し、反応混合物を-78℃で2時間及び室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を、飽和NH4Cl水溶液(20mL)の添加によってクエンチした。水層を酢酸エチル(3×60mL)で3回抽出した。合わせた有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固して、粗カルビノール(2.99g、96%)を得、これを更なる精製なしで使用した。
【0051】
スペクトルデータは、文献(M. B. Plutschack, P. H. Seeberger, K. Gilmore, Organic Letters 2017, 19, 30-33.)中の先に記載の化合物(CAS番号[60907-97-3])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 500.2 MHz) δ 7.68 (dd, J = 7.7, 1.9 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.36-7.32 (m, 2H), 7.26 (td, J = 7.9, 1.9 Hz, 1H), 6.31 (dd, J = 3.3, 1.8 Hz, 1H), 6.22 (bd, J = 3.1 Hz, 1H), 6.08 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 2.59 (bd, J = 3.1 Hz, 1H).
【0052】
(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)(フェニル)メタノール
【化25】
無水THF(0.25M)中の5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(1.00g、7.93mmol、1.0当量)溶液に、0℃で臭化フェニルマグネシウム溶液(Et2O中の1.0M溶液、19.8mL、19.8mmol、2.5当量)を添加した。反応混合物を、0℃から室温まで2時間撹拌した。次いで、混合物を、0.1M塩化水素溶液でクエンチした。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(10~60% EtOAc/ヘプタン)によって精製して、所望の化合物(1.25g、77%)を淡黄色油状物として得た。Rf0.24(50% EtOAc/ヘプタン)。
【0053】
1H-NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.48 -7.44 (m, 2H), 7.37 - 7.28 (m, 3H), 6.16 (d, 1H, J = 3.0 Hz), 6.03 (d, 1H, J = 3.0 Hz), 5.75 (d, 1H, J = 4.8 Hz), 4.88 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.45 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 4.11 (t, J = 5.8 Hz, 1H); 13C-NMR (アセトン-d6, 75 MHz) δ 157.8 (C), 156.0 (C), 143.5 (C), 128.9 (CH), 128.2 (CH), 127.5 (CH), 108.2 (CH), 108.0 (CH), 70.3 (CH), 57.4 (CH2); IR (ν/cm-1) 3351, 2866, 1494, 1452, 1365, 1189, 1012, 791, 745, 699; HRMS (ESI) m/z = 187.0757, C12H11O2 [M-H2O+H]+の計算値: 187.0759.
【0054】
(4-フルオロフェニル)(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)メタノール
【化26】
無水THF(0.25M)中の5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(450mg、3.56mmol、1.0当量)溶液に、0℃で臭化4-フルオロフェニルマグネシウム溶液(THF中の1.0M溶液、12.5mL、12.5mmol、3.5当量)を添加した。反応混合物を、0℃から室温まで2時間撹拌した。次いで、混合物を、0.1M塩化水素溶液でクエンチした。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(10~60% EtOAc/ヘプタン)によって精製して、所望の化合物(766mg、77%)を淡黄色固体として得た。Rf0.46(60% EtOAc/ヘプタン)。Mp:95~98℃。
【0055】
1H-NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.51-7.47 (m, 2H), 7.13-7.07 (m, 2H), 6.18 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.06 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.78 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 5.02 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.45 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 4.19 (t, J = 6.0 Hz, 1H); 13C-NMR (アセトン-d6, 75 MHz) δ 163.0 (d, JCF = 240 Hz, C), 157.5 (C), 156.0 (CH), 139.6 (CH) , 129.4 (d, JCF = 9 Hz, CH), 115.5 (d, JCF = 21 Hz, CH), 108.2 (CH), 108.1 (CH), 69.6 (CH), 57.3 (CH2); 19F-NMR (アセトン-d6, 282 MHz) 60.4; IR (ν/cm-1) 3324, 1604, 1508, 1414, 1221, 1185, 1157, 1011, 843, 800, 777; HRMS (ESI): m/z = 205.0655, C12H10O2F [M-H2O+H]+の計算値: 205.0665.
【0056】
(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)(4-メトキシフェニル)メタノール
【化27】
無水THF(0.25M)中の5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(600mg、4.76mmol、1.0当量)溶液に、0℃で臭化4-メトキシフェニルマグネシウム溶液(THF中の1.0M溶液、16.7mL、16.7mmol、3.5当量)を添加した。反応混合物を、0℃から室温まで2時間撹拌した。次いで、混合物を、0.1M塩化水素溶液でクエンチした。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(10~60% EtOAc/ヘプタン)によって精製して、所望の化合物(1.11g、99%)を淡黄色油状物として得た。Rf0.47(70% EtOAc/ヘプタン)。
【0057】
1H-NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.89 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.16 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 6.03 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 5.70 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.81 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.44 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 4.16 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H); 13C-NMR (アセトン-d6, 75 MHz) δ160.0 (C), 158.1 (C), 155.8 (C), 135.6 (C), 128.7 (CH), 114.2 (CH), 108.1 (CH), 107.7 (CH), 70.0 (CH), 57.4 (CH2), 55.5 (CH3); IR (ν/cm-1) 3356, 1611, 1512, 1463, 1303, 1247, 1173, 1012, 838, 800, 781; HRMS (ESI): m/z = 217.0863, C13H13O3 [M-H2O+H]+の計算値: 217.0865.
【0058】
ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)メタノール
【化28】
無水THF(0.20M)中のマグネシウム(462mg、19.0mmol、6.0当量)懸濁液に、アルゴン下で5-ブロモ-1,3-ベンゾジオキソール及び1,2-ジブロモエタンを数滴添加した。反応混合物を2分間昇温して、反応を開始し、5-ブロモ-1,3-ベンゾジオキソール(2.55g、12.7mmol、4.0当量)を滴下した。アルゴン下で2時間還流した後、混合物を0℃に冷却し、THF中の5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(400mg、3.17mol、1.0当量)溶液を滴下した。0℃から室温まで2時間撹拌した後、反応を、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(10~60% EtOAc/ヘプタン)によって精製して、所望の化合物(262mg、33%)を淡黄色固体として得た。Rf0.24(50% EtOAc/ヘプタン)。Mp:90~92℃。
【0059】
1H-NMR (アセトン-d6, 300 MHz) δ 6.96 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 6.93 (dd, J = 8.0, 1.5 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.17 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 6.07 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 5.97 (s, 2H), 5.68 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 4.86 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 4.45 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 4.14 (t, J = 6.0 Hz, 1H); 13C-NMR (アセトン-d6, 75 MHz) δ 157.8 (C), 155.9 (C), 148.5 (C), 147.8 (C), 137.6 (C), 120.9 (CH), 108.5 (CH), 108.2 (CH), 108.0 (CH), 107.7 (CH), 101.9 (CH2), 70.1 (CH), 57.3 (CH2); IR (ν/cm-1) 3329, 1502, 1488, 1443, 1242, 1095, 1036, 1011, 928, 868, 776; HRMS (ESI): m/z = 231.0665, C13H11O4 [M-H2O+H]+の計算値: 231.0657.
【0060】
(4-クロロフェニル)(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)メタノール
【化29】
無水THF(15mL)中のヒドロキシメチルフルフラール(HMF)(500mg、3.96mmol、1当量)溶液に、0℃、アルゴン下で臭化4-フルオロフェニルマグネシウム(Et2O中の1M溶液、9.90mL、6.76mmol、2.5当量)を添加した。反応混合物を、0℃から室温まで2時間撹拌した。次いで、混合物を、1M HCL水溶液(15mL)の添加によってクエンチした。水層を酢酸エチル(3×20mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~50:50)によって精製して、所望のビスカルビノール(773mg、82%)を淡黄色固体として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.31。
1H-NMR (アセトン-d6, 300.2 MHz) δ 7.47 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.18 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 6.07 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.78 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 5.09 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.45 (d, J = 5.8 Hz, 2H), 4.20 (t, J = 5.8 Hz, 1H). 13C-NMR (アセトン-d6, 75.5 MHz) δ157.2 (C), 156.2 (C), 142.4 (C), 133.4 (C), 129.2 (CH), 129.0 (CH), 108.3 (CH), 108.2 (CH), 69.6 (CH), 57.3 (CH2). IR (ν/cm-1) 3350, 2871, 1666, 1490, 1408, 1189, 1089, 1013, 843, 799, 774. HRMS (ESI+): m/z = 221.0364, C12H10O2Cl [M+H-H2O]+の計算値: 221.0369.
【0061】
(フラン-2-イル)(4-メトキシフェニル)メタノール
【化30】
無水THF(15mL)中の4-ブロモアニソール(500mg、2.67mmol、1.0当量)溶液に、-78℃、アルゴン下でn-ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液、1.8mL、2.94mmol、1.1当量)を滴下した。反応混合物を、-78℃で30分間撹拌し、フルアルデヒド(0.23mL、2.81mmol、1.05当量)を添加した。反応混合物を、-78℃で2時間撹拌し、飽和NH4Cl溶液(10mL)でクエンチした。水層を酢酸エチル(3×50mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~60:40)によって精製して、所望の化合物(443mg、81%)を淡橙色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 70:30):0.27。
【0062】
スペクトルデータは、文献(Nandy, S. K.;Liu, J.;Padmapriya, A. A. Tetrahedron Lett. 2008, 49, 2469-2471)中の先に記載の化合物(CAS番号[100518-86-3])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): 7.39 (bs, 1H), 7.36 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.90 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.32-6.31 (m, 1H), 6.12 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 5.79 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H). IR (ν/cm-1): 1739, 1610, 1511, 1463, 1303, 1248, 1175, 1032, 838, 742. HRMS (ESI): m/z = 187.0751, C12H11O2 [M-H2O+H]+の計算値: 187.0759.
【0063】
(フラン-2-イル)(3-メトキシフェニル)メタノール
【化31】
フルフラール(150mg、1.56mmol、1.0当量)、3-メトキシベンゼンホウ酸(474mg、3.12mmol、2.0当量)、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(I)(12mg、0.04mmol、3mol%)、1,1’-フェロセンジイル-ビス(ジフェニルホスフィン)(26mg、0.04mmol、3mol%)を、アルゴン下でDME(5mL)及び水(3mL)に溶解した。反応混合物を、80℃で16時間撹拌した。水層を酢酸エチル(10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)によって精製した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~40:60)によって精製して、所望の化合物(278mg、87%)を淡橙色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 70:30):0.27。
【0064】
スペクトルデータは、文献(DeBerardinis, A. M.;Turlington, M.;Ko, J.;Sole, L.;Pu, L. J. Org. Chem. 2010, 75, 2836-2850)中の先に記載の化合物(CAS番号[944523-02-8])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 7.39 (dd, J = 1.8, 0.9 Hz, 1H), 7.29 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.02-6.99 (m, 2H), 6.88-6.84 (m, 1H), 6.32 (dd, J = 3.0, 1.8 Hz, 1H), 6.14 (dd, J = 3.0, 0.9 Hz, 1H), 5.81 (bs, 1H), 3.81 (s, 3H). 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 159.9 (C), 155.9 (C), 142.7 (CH), 142.6 (C), 129.6 (CH), 119.0 (CH), 113.8 (CH), 112.0 (CH), 110.4 (CH), 107.6 (CH), 70.2 (CH), 55.4 (CH3). IR (ν/cm-1): 3419, 1585, 1489, 1464, 1454, 1434, 1255, 1143, 1037, 1009, 882, 748, 694. HRMS (ESI): m/z = 187.0737, C12H11O2 [M-H2O+H]+の計算値: 187.0759.
【0065】
(フラン-2-イル)(ナフタレン-2-イル)メタノール
【化32】
無水THF(25mL)中の2-ブロモナフタレン(600mg、2.90mmol、1.0当量)溶液に、-78℃、アルゴン下でn-ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液、4.0mL、6.37mmol、2.2当量)を滴下した。反応混合物を、-78℃で30分間撹拌し、フルアルデヒド(0.31mL、3.77mmol、1.3当量)を添加した。反応混合物を、-78℃で3時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液(10mL)でクエンチした。水層を酢酸エチル(3×50mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~30:70)によって精製して、所望の化合物(309mg、48%)を淡橙色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.39。
【0066】
スペクトルデータは、文献(Kuriyama, M.;Shimazawa, R.;Shirai, R. J. Org. Chem. 2008, 73, 1597-1600)中の先に記載の化合物(CAS番号[944649-38-1])と一致する。
1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz): δ 8.01 (s, 1H), 7.92-7.86 (m, 3H), 7.60 (dd, J = 1.7, 8.6 Hz, 1H), 7.58-7.45 (m, 3H), 6.36 (dd, J = 3.3, 1.7 Hz, 1H), 6.23 (dd, J = 3.3, 0.7 Hz, 1H), 6.01 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 5.15 (d, J = 4.5 Hz, 1H). 13C NMR (アセトン-d6, 75 MHz): δ 158.3 (C), 143.0 (CH), 141.0 (C), 134.2 (C), 133.9 (C), 128.8 (CH), 128.5 (CH), 128.3 (CH), 126.9 (CH), 126.6 (CH), 125.9 (CH), 125.8 (CH), 110.9 (CH), 107.4 (CH), 70.3 (CH). IR (ν/cm-1): 3371, 1738, 1602, 1508, 1365, 1217, 1142, 1122, 1010, 782, 742. HRMS (ESI): m/z = 207.0814, C15H11O [M-H2O+H]+の計算値: 207.0810.
【0067】
(フラン-2-イル)(ナフタレン-1-イル)メタノール
【化33】
フルフラール(250mg、2.60mmol、1.0当量)、1-ナフタレンホウ酸(895mg、5.20mmol、2.0当量)、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(I)(20mg、0.08mmol、3mol%)、1,1’-フェロセンジイル-ビス(ジフェニルホスフィン)(43mg、0.08mmol、3mol%)を、アルゴン下でDME(6mL)及び水(4mL)に溶解した。反応混合物を、80℃で16時間撹拌した。水層を酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/酢酸エチル)によって精製した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~50:50)によって精製して、所望の化合物(450mg、77%)を淡黄色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.48。
【0068】
スペクトルデータは、文献(Duan, W.;Ma, Y.;He, F.;Zhao, L.;Chen, J.;Song, C. Tetrahedron Asym. 2013, 24, 241-248)中の先に記載の化合物(CAS番号[873974-71-1])と一致する。
1H NMR (アセトン-d6, 300 MHz): δ 8.16-8.13 (m, 1H), 7.93-7.85 (m, 2H), 7.81 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.55-7.44 (m, 4H), 6.55 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 6.32 (dd, J = 3.3, 1.9 Hz, 1H), 6.13 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 5.13 (d, J = 4.6 Hz, 1H). 13C NMR (アセトン-d6, 75 MHz): δ 158.2 (C), 142.8 (CH), 138.8 (C), 134.8 (C), 131.7 (C), 129.4 (CH), 128.9 (CH), 126.6 (CH), 126.3 (CH), 126.2 (CH), 125.2 (CH), 124.9 (CH), 111.0 (CH), 107.8 (CH), 67.7 (CH). IR (ν/cm-1): 3379, 3051, 1757, 1687, 1598, 1510, 1220, 1173, 1141, 1054, 1010, 783. HRMS (ESI): m/z = 207.0815, C15H11O [M-H2O+H]+の計算値: 207.0810.
【0069】
式(I)の化合物の合成
一般的手段A
t-BuOH/H2O 5:1(0.1M)混合物中の好適な中間体(1等量)溶液に、DyCl3(10mol%)を添加した。反応混合物を、MW放射下、100℃で1.5時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を飽和NaHCO3溶液でクエンチした。水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル)によって精製した。
【0070】
(4S*,5R*)-4-ヒドロキシ-5-フェニル-シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ia)
【化34】
t-BuOH/H2O 5:1(0.077M溶液、各々65mL及び13mL)中の(フラン-2-イル)フェニルメタノール(1.06mg、6.08mmol、1当量)溶液に、Dy(OTf)3(371mg、0.61mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酸化ジエチル(3×50mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(30mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~50:50)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノンIa(850mg、80%)を淡黄色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 40:60):0.17。
【0071】
スペクトルデータは、文献(Ulbrich, K.;Kreitmeier, P.;Reiser, O. Synlett 2010, 2037-2040.)中の先に記載の化合物(CAS番号[70951-36-9])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 500.2 MHz) δ 7.61 (dd, J = 5.7, 2.2 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.32 (dd, J = 5.7, 1.4 Hz, 1H), 4.97 (bs, 1H), 3.45 (bd, J = 2.8 Hz, 1H), 2.57 (bs, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 206.3 (CO), 162.7 (CH), 136.9 (C), 134.0 (CH), 128.9 (CH), 128.4 (CH), 127.5 (CH), 78.7 (CH), 62.0 (CH).
【0072】
(4S*,5R*)-5-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシシクロペンタ-2-エン-1-オン(Ib)
【化35】
t-BuOH/H2O 5:1(0.077M溶液、各々18mL及び3.6mL)中の(4-クロロフェニル)(フラン-2-イル)メタノール(340mg、1.63mmol、1当量)溶液に、Dy(OTf)3(99.4mg、0.16mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酸化ジエチル(3×10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~50:50)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノンIb(242mg、71%)を淡黄色固体として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.25。
【0073】
スペクトルデータは、文献(Schober, L.;Sako, M.;Takizawa, S.;Groger, H.;Sasai, H. Chem. Comm. 2020, 56, 10151-10154.)中の先に記載の化合物(CAS番号[2470798-26-4])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 500.2 MHz) δ 7.63 (dd, J = 5.8, 2.2 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.09 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.35 (dd, J = 5.8, 1.4 Hz, 1H), 4.98 (bs, 1H), 3.45 (bd, J = 3.0 Hz, 1H), 2.26 (bs, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 204.8 (CO), 161.8 (CH), 135.3 (C), 134.5 (CH), 133.6 (C), 129.8 (CH), 129.2 (CH), 78.9 (CH), 61.5 (CH). IR (ν/cm-1) 3395, 1698, 1590, 1492, 1409, 1338, 1182, 1161, 1091, 1033, 1014, 878, 814, 775. HRMS (ESI+): m/z = 209.0361, C11H10O2Cl [M+H]+の計算値: 209.0369.
【0074】
(4S*,5R*)-5-(2-クロロフェニル)-4-ヒドロキシシクロペンタ-2-エン-1-オン(Ic)
【化36】
t-BuOH/H2O 5:1(0.077M溶液、各々18mL及び3.6mL)中の(2-クロロフェニル)(フラン-2-イル)メタノール(342mg、1.64mmol、1当量)溶液に、Dy(OTf)3(99.4mg、0.16mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酸化ジエチル(3×10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~50:50)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノンIc(236mg、69%)を淡黄色固体として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.30。
1H NMR (CDCl3, 500.2 MHz) δ 7.60 (dd, J = 5.8, 2.2 Hz, 1H), 7.43-7.40 (m, 1H), 7.29-7.25 (m, 2H), 7.15-7.11 (m, 1H), 6.41 (dd, J = 5.8, 1.4 Hz, 1H), 5.15 (bs, 1H), 3.77 (bd, J = 3.0 Hz, 1H), 2.39 (bs, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 204.0 (CO), 160.8 (CH), 134.9 (C), 134.7 (CH), 134.2 (C), 131.6 (CH), 130.2 (CH), 129.2 (CH), 127.4 (CH), 78.1 (CH), 61.4 (CH). IR (ν/cm-1) 3404, 1705, 1475, 1444, 1338, 1161, 1107, 1055, 753. HRMS (ESI+): m/z = 209.0375, C11H10O2Cl [M+H]+の計算値: 209.0369.
【0075】
(4S*,5R*)-5-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-シクロペンタ-2-エン-1-オン(Id)
【化37】
この化合物を、ビスカルビノール(4-クロロフェニル)[5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル]メタノール(100mg、0.42mmol、1当量)を用いて一般的手段Aに従って調製した。
1H NMR (CDCl3, 300.2 MHz) δ 7.56 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.38 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 3.81 (s, 1H), 3.32 (s, 2H), 1.67 (bs, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 204.7 (CO), 162.6 (CH), 134.5 (CH), 134.0 (C), 132.5 (C), 131.1 (CH), 129.2 (CH), 82.0 (C), 66.8 (CH2), 62.6 (CH). IR (ν/cm-1) 3404, 2926, 1702, 1592, 1493, 1409, 1339, 1217, 1170, 1091, 1034, 1016, 880. HRMS (ESI+): m/z = 239.0479, C12H12O3Cl [M+H]+の計算値: 239.0475.
【0076】
(4S*,5R*)-4-アセトキシ-5-フェニル-シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ie)
【化38】
無水酢酸(1.5mL)中の(4S*,5R*)-4-ヒドロキシ-5-フェニル-シクロペンタ-2-エン-1-オン(39mg、0.22mmol、1当量)溶液に、0℃でトルエン-4-スルホン酸一水和物(2.3mg、0.02mmol、10mol%)を添加し、混合物を室温まで4時間昇温させた。次いで、シリカゲル(500mg)を添加し、無水酢酸を減圧除去して、固体試料を得、カラムクロマトグラフィーに充填した。粗生成物をシリカゲル(溶離液:n-ヘプタン/EtOAc 0:100~3:7)上で精製して、表題化合物Ie(38mg、収率79%)を無色の油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 20:80):0.38。
【0077】
1H NMR (CDCl3, 500.2 MHz) δ 7.69 (dd, J = 5.8, 2.3 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 2H), 7.29 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 6.45 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 5.93 (bs, 1H), 3.59 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 2.11 (s, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 75.5 MHz) δ 204.0 (CO), 170.3 (CO2), 158.3 (CH), 136.2 (C), 136.1 (CH), 128.9 (CH), 128.1 (CH), 127.6 (CH), 79.4 (CH), 57.6 (CH), 20.8 (CH3). IR (ν/cm-1) 3062, 3039, 2943, 1739, 1721, 1498, 1454, 1373, 1325, 1229, 1111, 1078, 1027, 977, 931, 910. HRMS (ESI+): m/z = 217.0855, C13H13O3 [M+H]+の計算値: 217.0865.
【0078】
4-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-5-フェニルシクロペンタ-2-エン-1-オン(If)
【化39】
この化合物を、50mgの(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)(フェニル)メタノール(0.25mmol、1当量)を用いて一般的手段Aに従って調製した。フラッシュクロマトグラフィー(トルエン/アセトン:80:20~70:30)後、If(26mg、収率51%、dr95:5超)を淡黄色油状物として得た。Rf0.39(40% アセトン/トルエン)。1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.53 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.39-7.30 (m, 3H), 7.22-7.16 (m, 2H), 6.40 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 3.85 (s, 1H), 3.42-3.33 (m, 2H); 13C-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 205.2 (C), 162.2 (CH), 134.9 (CH), 134.2 (C), 129.7 (CH), 129.3 (CH), 128.1 (CH), 82.1 (C), 66.9 (CH2), 63.6 (CH); IR (ν/cm-1) 3401, 2924, 1699, 1497, 1453, 1338, 1170, 1079, 1033, 925, 814, 739, 699; HRMS (ESI): m/z = 205.0876, C12H13O3 [M+H]+の計算値: 205.0865.
【0079】
(5-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ig)
【化40】
この化合物を、60mgの(4-フルオロフェニル)(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)メタノール(0.3mmol、1当量)を用いて一般的手段Aに従って調製した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル:100:0~20:80)後、Ig(34mg、収率59%、dr=90:10)を白色固体として得た。Rf0.31(60% EtOAc/ヘプタン)。MP:111~113℃ 1H-NMR (アセトン-d6300 MHz)δ7.57 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 7.32-7.27 (m, 2H), 7.10-7.03 (m, 2H), 6.31 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 4.80 (s, 1H), 3.81 (dd, J = 6.3, 4.8 Hz, 1H), 3.77 (s, 1H), 3.30 (dd, J = 10.8, 4.8 Hz, 1H), 3.16 (dd, J = 10.8, 6.3 Hz, 1H); 13C-NMR(アセトン-d6, 75 MHz) δ 204.3 (C), 163.7 (CH), 162.7 (d, JCF = 241 Hz, C), 134.1 (CH), 133.1 (d, JCF = 9 Hz, CH), 132.0 (C), 115.3 (d, JCF = 21 Hz, CH), 83.3 (C), 66.1 (CH2), 63.8 (CH); 19F-NMR (アセトン-d6, 282 MHz) 60.0; IR (ν/cm-1) 3418, 2919, 1704, 1606, 1510, 1225, 1162, 1035, 841, 812; HRMS (ESI): m/z = 223.0764, C12H12FO3 [M+H]+の計算値: 223.0770.
【0080】
4-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-5-(4-メトキシフェニル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ih)
【化41】
この化合物を、70mgの(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)(4-メトキシフェニル)メタノール(0.3mmol、1当量)を用いて一般的手段Aに従って調製した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル:100:0~20:80)後、Ih(25mg、収率35%、dr95:5超)を淡黄色固体として得た。MP:134~136℃ 1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ7.51 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.36 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.77 (s, 1H), 3.38-3.29 (m, 2H); 13C-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 205.7 (C), 162.4 (CH), 159.3 (C), 134.7 (CH), 130.8 (CH), 125.9 (C), 114.7 (CH), 82.1 (C), 66.9 (CH2), 62.8 (CH), 55.4 (CH3); IR (ν/cm-1) 3411, 2934, 1703, 1612, 1514, 1250, 1180, 1087, 1033, 836; HRMS (ESI): m/z = 235.0972, C13H15O4 [M+H]+の計算値: 235.0970.
【0081】
5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-4-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ii)
【化42】
この化合物を、74.4mgのベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル(5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-イル)メタノール(0.30mmol)を用いて一般的手段Aに従って調製した。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル:40:60~30:70)後、Ii(40.4mg、収率54%、dr>95:5)を茶色油状物として得た。Rf0.29(50% EtOAc/ヘプタン)。 1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 7.52 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 6.76 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.62 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.60 (s, 1H), 6.33 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 5.93 (s, 2H), 3.72 (s, 1H), 3.38-3.28 (m, 2H); 13C-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ 205.5 (C), 162.8 (CH), 148.1 (C), 147.3 (C), 134.3 (CH), 127.4 (C), 123.3 (CH), 109.8 (CH), 108.8 (CH), 101.3 (CH2), 82.0 (C), 66.9 (CH2), 63.0 (CH); IR (ν/cm-1) 3411, 2898, 1700, 1504, 1489, 1442, 1234, 1035, 929, 806, 733; HRMS (ESI): m/z = 249.0759, C13H13O5 [M+H]+の計算値: 249.0763.
【0082】
(4S*,5R*)-4-ヒドロキシ-5-(4-メトキシフェニル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ij)
【化43】
t-BuOH/H2O 5:1(0.068M溶液、各々5mL及び0.8mL)中の(フラン-2-イル)(4-メトキシフェニル)メタノール(80mg、0.39mmol、1.0当量)溶液に、DyCl3(10.5mg、0.04mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酢酸エチル(3×10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:70:30~50:50)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノン(18mg、23%)を淡黄色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.20。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 7.61 (dd, J = 6.0, 2.1 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.0 Hz, 2H,), 6.33 (dd, J = 6.0, 1.5 Hz, 1H), 4.96-4.95 (m, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.41 (d, J = 3.0 Hz, 1H). 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 205.6 (C), 161.5 (CH), 159.1 (C), 134.7 (CH), 129.5 (CH), 114.6 (CH), 79.3 (CH), 61.7 (CH), 55.5 (CH3). IR (ν/cm-1): 3409, 1705, 1613, 1582, 1514, 1302, 1251, 1179, 1033, 825, 762. HRMS (ESI): m/z = 205.0865, C12H13O3 [M+H]+の計算値: 205.0865.
【0083】
(4S*,5R*)-4-ヒドロキシ-5-(3-メトキシフェニル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Ik)
【化44】
【0084】
t-BuOH/H2O 5:1(0.082M溶液、各々3mL及び0.6mL)中の(フラン-2-イル)(3-メトキシフェニル)メタノール(60mg、0.29mmol、1.0当量)溶液に、DyCl3(7.9mg、0.03mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酢酸エチル(3×10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~60:40)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノン(42mg、70%)を淡黄色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.33。
【0085】
スペクトルデータは、文献(Schober, L.;Sako, M.;Takizawa, S.;Groger, H.;Sasai, H. Chem. Comm. 2020, 56, 10151-10154)中の先に記載の化合物(CAS番号[2470798-31-1])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 7.61 (dd, J = 5.7, 2.4 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.83 (ddd, J =8.0, 2.7, 1.2 Hz, 1H), 6.73-6.66 (m, 2H), 6.33 (dd, J = 5.7, 1.2 Hz, 1H), 4.98 (bs, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.40 (d, J = 3.0 Hz, 1H). 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 205.2 (C), 161.8 (CH), 160.1 (C), 138.4 (C), 134.6 (CH), 130.1 (CH), 120.7 (CH), 114.4 (CH), 112.9 (CH), 79.1 (CH), 62.2 (CH), 55.4 (CH3). IR (ν/cm-1): 3419, 2940, 1705, 1601, 1584, 1491, 1454, 1437, 1340, 1260, 1157, 1041, 782. HRMS (ESI): m/z = 205.0860, C12H13O3 [M+H]+の計算値: 205.0865.
【0086】
(4S*,5R*)-4-ヒドロキシ-5-(ナフタレン-2-イル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Il)
【化45】
t-BuOH/H2O 5:1(0.050M溶液、各々6mL及び1.2mL)中の(フラン-2-イル)(ナフタレン-2-イル)メタノール(80mg、0.36mmol、1.0当量)溶液に、DyCl3(9.6mg、0.04mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酢酸エチル(3×10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~40:60)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノン(32mg、40%)を淡橙色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.25。
【0087】
スペクトルデータは、文献(Schober, L.;Sako, M.;Takizawa, S.;Groger, H.;Sasai, H. Chem. Comm. 2020, 56, 10151-10154)中の先に記載の化合物(CAS番号[1612765-18-0])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 7.81-7.74 (m, 3H), 7.56 (s, 1H), 7.50 (dd, J = 5.7, 2.4 Hz, 1H), 7.48-7.46 (m, 2H), 7.07 (dd, J = 8.4, 1.9 Hz, 1H), 6.24 (dd, J = 5.7, 1.5 Hz, 1H), 4.90 (bs, 1H), 3.49 (d, J = 2.9 Hz, 1H). 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 205.8 (C), 162.2 (CH), 138.4 (C), 134.3 (CH), 134.2 (C), 133.5 (C), 132.7 (C), 128.9 (CH), 127.8 (CH), 126.5 (CH), 126.1 (CH), 125.8 (CH), 78.8 (CH), 62.3 (CH). IR (ν/cm-1): 3387, 3054, 2919, 1696, 1633, 1599, 1508, 1336, 1156, 1106, 1032, 907, 813. HRMS (ESI): m/z = 225.0920, C15H13O2 [M+H]+の計算値: 225.0916.
【0088】
(4S*,5R*)-4-ヒドロキシ-5-(ナフタレン-1-イル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(Im)
【化46】
t-BuOH/H2O 5:1(0.063M溶液、各々6mL及び1.2mL)中の(フラン-2-イル)(ナフタレン-1-イル)メタノール(100mg、0.45mmol、1.0当量)溶液に、DyCl3(12mg、0.05mmol、10mol%)を添加し、反応混合物を80℃に予熱した油浴に直ちに入れた。得られた反応混合物を80℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3水溶液に注入した。この混合物を酢酸エチル(3×10mL)で3回抽出した。合わせた有機層を塩水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EtOAc:100:0~50:50)によって精製して、所望の置換されたシクロペンテノン(99mg、99%)を淡橙色油状物として得た。Rf(n-ヘプタン/EtOAc 50:50):0.25。
【0089】
スペクトルデータは、文献(Schober, L.;Sako, M.;Takizawa, S.;Groger, H.;Sasai, H. Chem. Comm. 2020, 56, 10151-10154)中の先に記載の化合物(CAS番号[2470798-35-5])と一致する。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 7.91-7.86 (m, 1H), 7.81 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.71-7.67 (m, 1H), 7.66 (dd, J = 5.8, 2.3 Hz, 1H), 7.53-7.47 (m, 2H), 7.43 (dd, J = 8.4, 7.1 Hz, 1H), 7.22 (dd, J = 7.1, 1.1 Hz, 1H), 6.48 (dd, J = 5.8, 1.4 Hz, 1H), 5.12 (bs, 1H), 4.07 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 2.41 (bs, 1H). 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 205.8 (C), 162.1 (CH), 135.0 (CH), 134.4 (C), 133.5 (C), 132.1 (C), 129.3 (CH), 128.5 (CH), 127.3 (CH), 126.7 (CH), 126.0 (CH), 125.7 (CH), 123.6 (CH), 79.0 (CH), 60.5 (CH). IR (ν/cm-1): 3405, 3051, 2920, 1699, 1595, 1510, 1397, 1337, 1158, 1106, 1026, 797, 776, 731. HRMS (ESI): m/z = 225.0913, C15H13O2 [M+H]+の計算値: 225.0916.
【0090】
抗生物質活性
トランス配置のラセミ分子に対する抗生物質活性を、病原性微生物パネルに対して評価した。
A.阻害ゾーン技術(Kirby-Bauerディスク拡散感受性試験)
前接種材料の調製
細菌を、ATCCプロトコルで推奨される好適な培地:2%寒天(顆粒状寒天、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)を補足したルリア-ベルターニブロス(LB、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)、トリプシン大豆ブロス(TSB、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)、栄養ブロス(NB、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)を含有する100mmペトリ皿で30~37℃で終夜画線することによって病原性細菌を復活させた。
【0091】
接種材料の調製
各病原体について、幾つかのコロニーをループで収集し、5mlの滅菌NB培地に移し、ロータリーシェーカー(130rpm)上で30~37℃で終夜インキュベートした。
【0092】
アッセイ
150mmの栄養ブロス寒天プレートを、接種材料でスワブし、15分間保持して吸収させた。滅菌済みの6mmのWhatman No.1ディスクをペトリ皿に入れ、DMSO(10mg/ml)中の12.5、25、50及び100μgの被験化合物を滅菌ディスクペーパーに塗布した。標準薬であるゲンタマイシン(10μg)を、陽性参照基準として使用して、各細菌種の感受性を決定し、DMSOを陰性対照とした。次いで、プレートを30℃又は37℃で24時間インキュベートし、阻害直径を測定した。
化合物Ia~Icは、ペトリ皿阻害ゾーン法により、これらの阻害有効性を評価するために以下の病原性細菌についても試験した:
- 黄色ブドウ球菌 ATCC25923-グラム陽性(被験化合物Ia、Ib及びIc)
- エンテロバクター・クロアカATCC13047-グラム陰性(被験化合物Ia及びIb)
- アシネトバクター・バウマンニATCC19606-グラム陰性(被験化合物Ib及びIc)
- 大腸菌ATCC25922-グラム陰性(被験化合物Ia及びIb)。
この技術は、標的病原性細菌の増殖を阻害する可能性を可視化することができる。
【0093】
12.5、25、50及び100μgの各化合物での用量応答研究を、10μgのゲンタマイシンと阻害ゾーンを比較して行った。結果を、図1~4に示す。被験生成物Ia、Ib及び/又はIcは全て、各被験病原性細菌に対して阻害活性を示す。最善の結果は、図2に表されるように、グラム陰性菌、とりわけエンテロバクター・クロアカに対して得られた。
化合物Ib、Ic、Ij、Ik、Il、Im、Ih、Ig、Ii、Id及びIfは、ペトリ皿阻害ゾーン法により、これらの阻害有効性を評価するために以下の病原性細菌についても試験した:
- マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)ATCC10240;
- バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)ATCC6633;
- 大腸菌ATCC25922。
100μgの各被験化合物での阻害増殖%を決定した。結果を以下の表に示す。
【0094】
【表1】


B.最小阻害濃度(MIC)技術
前接種材料
細菌を、ATCCプロトコルで推奨される好適な培地:2%寒天(顆粒状寒天、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)を補足したルリア-ベルターニブロス(LB、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)、トリプシン大豆ブロス(TSB、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)、栄養ブロス(NB、Difco、Thermo Fisher Scientific Inc.)を含有する100mmペトリ皿で30~37℃で終夜画線することによって病原性細菌を復活させた。
【0095】
接種材料の調製
各病原体について、幾つかのコロニーをループで収集し、10mlの滅菌ミューラーヒントンブロス(Sigma)培地に移し、ロータリーシェーカー(130rpm)上で30~37℃で数時間インキュベートした。600nmでのODを測定し、0.5ODに調整し、次いで溶液を400倍希釈して、適当な接種材料にした。
【0096】
アッセイ
抗微生物感受性を、ブロス微量希釈法で行った。試験を、100μLのミューラーヒントンブロス(Sigma)培地最終量及び5.105CUF/mlの最終細菌濃度で96-ウェルプレートで実施した。被験化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶化して、10mg/mL(次いで、μMで表す)の原液を得た。原液を100μg/mLから0.195μg/mLに希釈して試験した。
化合物Ia~Ieは、MIC(最小阻害濃度)測定のスクリーニング法を使用することによって、黄色ブドウ球菌ATCC25923株及び黄色ブドウ球菌BAA-1766(MRSA)株(いずれもグラム陽性)についても試験した。
【0097】
この技術は、標的病原体の増殖を完全に阻害する最小濃度を決定することを可能にする。以下の表は、生成物Ia~Ie全てが良好な抗生物質活性を示すことを示す。良好な抗生物質活性は分子Ic~Ieで得られ、MICは6.25μg/mLである。
【表2】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】