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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】後退可能なバックフラッシュ器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A61F9/007 130C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535694
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 IB2021061418
(87)【国際公開番号】W WO2022130122
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/126,823
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】レト グリューエブラー
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン 二コラ クンツ
(72)【発明者】
【氏名】ニッコロ マシオ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ジーゲンターラー
(57)【要約】
特定の実施形態は、ハンドピースと、ハンドピースに連結された外管と、外管内に収納されるとともに、軟質先端に連結された遠位端部とアダプタに連結された近位端部とを有する内管と、弁の遠位端部に連結されたアダプタの近位端部と、ハンドピースに摺動可能に連結された弁と、ハンドピースに摺動可能に連結されるとともに、弁の近位端部に連結された遠位端部を有するコアとを含む、装置を提供する。軟質先端を後退させるために、弁を後退させ、アダプタ、弁、及びコアをハンドピースに対して近位方向に摺動可能に後退させ、軟質先端を延出させるために、弁を突出させ、アダプタ、弁、及びコアをハンドピースに対して遠位方向に摺動可能に突出させる。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術処置に使用される装置であって、
ハンドピースと、
前記ハンドピースの遠位端部に連結された近位端部を有する外管と、
前記外管内に収納されるとともに、軟質先端に連結された遠位端部とアダプタに連結された近位端部とを有する内管であって、完全延出状態では、前記軟質先端が前記外管の遠位端部を少なくとも部分的に越えて延びる、内管と、
前記ハンドピースの前記遠位端部に摺動可能に連結された前記アダプタであって、弁の遠位端部に連結された近位端部と、前記内管の前記近位端部に連結された遠位端部とを有する、アダプタと、
前記ハンドピースの内部に収納されるとともに、前記アダプタの近位端部に連結された遠位端部を有する前記弁と、
前記ハンドピースに収納され摺動可能に連結されたコアであって、前記弁の近位端部に連結された遠位端部を有する、コアと
を含み、
前記軟質先端を後退させるために、前記弁を後退させ、前記アダプタ、前記弁、及び前記コアを前記ハンドピースに対して近位方向に摺動可能に後退させ、
前記軟質先端を延出させるために、前記弁を突出させ、前記アダプタ、前記弁、及び前記コアを前記ハンドピースに対して遠位方向に摺動可能に突出させる、
装置。
【請求項2】
前記コアの前記遠位端部は、前記弁の前記近位端部に挿入されるように構成され、前記コアの近位端部は、前記ハンドピースを手術用コンソールに接続するためのコネクタに連結されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弁を摺動可能に支持するように構成されたスライダを更に含み、前記スライダは、
前記弁の下に配置された本体部分と、
前記本体部分の近位端部から前記コアの前記遠位端部に長手方向に延びる1対の側壁と
を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
スロットは、前記1対の側壁の間に形成され、前記スロットは、前記弁と前記スライダとの相対移動を防止するために前記弁の基部を収納するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スライダは、前記本体部分から延びる突出部を更に含み、前記突出部は、前記軟質先端の長手方向の延出及び後退を制限するために前記ハンドピース内に形成されたチャネル内に受け入れられる、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記ハンドピース内に形成された前記チャネルは、前記チャネルの長手方向両端部に形成された肩部を有し、前記突出部と前記肩部の各々との接触は、前記軟質先端の延出及び後退を制限するように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
完全延出状態では、前記突出部の遠位端部は、前記チャネルの遠位肩部に接触し、前記ハンドピースに対する前記弁及び前記コアの前記遠位方向への更なる摺動を防止し、完全後退状態では、前記突出部の近位端部は、前記チャネルの近位肩部に接触し、前記ハンドピースに対する前記アダプタ、前記弁、及び前記コアの前記近位方向への更なる摺動を防止する、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、バックフラッシュ器具を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アダプタは、
前記弁の遠位端部に挿入されるように構成された円筒状挿入体と、
前記内管の前記近位端部を収容するように構成された円筒状要素と
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記円筒状要素の遠位端部は、前記アダプタの摺動中に前記アダプタと前記ハンドピースとの位置合わせを維持するためのキャップの内側輪郭に対応する形状を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記弁を後退及び突出させることによって、圧力が制御される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
キャップの内側輪郭に形成された複数の切り欠きを有する前記キャップを更に含み、前記アダプタを取り囲む円盤は、前記複数の切り欠きに接触して前記ハンドピースに対する前記アダプタの前記遠位方向への摺動を制限するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記アダプタ及び前記コアは、互いに撓み可能且つ間接的に連結され、前記撓み可能且つ間接的な連結は、前記キャップの前記内側輪郭内で前記アダプタを自己位置合わせさせるように、前記アダプタが前記コアに対して傾斜することを可能にするように構成される、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、発明者がReto Grueebler、Simon Nicola Kunz、Niccolo Maschio、及びChristoph Siegenthalerである、2021年12月17日に出願された「A RETRACTABLE BACKFLUSH INSTRUMENT」という名称の米国仮特許出願第63/126,823号明細書の優先権の利益を主張するものであり、あたかも本明細書に十分且つ完全に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、後退可能なバックフラッシュ器具に関する。
【背景技術】
【0003】
バックフラッシュ器具は、概して、身体部位(例えば、患者の眼)から流体(例えば、平衡塩溶液(BSS)、シリコーン油、パーフルオロカーボン(PFC))を真空吸引又は吸引するための手術(例えば、眼科手術)中に使用される。例えば、特定の眼科手術中、流体の抽出、網膜下液の内部ドレナージ、網膜ひだ操作、同時又は順次交換(例えば、液体/空気、空気/ガス、液体/ガス、液体/PFC、PFC/ガスなど)のためにバックフラッシュ器具が使用され得る。特定のバックフラッシュ器具は、バックフラッシュ器具が身体部位又は組織に接触したとき、身体部位又は身体部位の任意の組織が損傷を受けないことを確実にするための軟質の遠位先端を含む。一例では、手術の一部として、バックフラッシュ器具を身体部位内に導入するために、バックフラッシュ器具が弁付きカニューレなどのカニューレに挿入される。しかしながら、軟質先端を備えたバックフラッシュ器具をカニューレに挿入することは、困難であり得、バックフラッシュ器具に損傷を与え得る。例えば、バックフラッシュ器具が弁付きカニューレの弁に挿通されているとき、軟質先端が曲がってトロカールカニューレ内に嵌り込んで動かせなくなることがあり得る。ある場合には、軟質先端が過度に曲がると、軟質先端がバックフラッシュ器具を剪断することさえあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、概して、後退可能なバックフラッシュ器具に関する。
【0005】
本明細書で説明する特定の実施形態は、ハンドピースと、ハンドピースの遠位端部に連結された近位端部を有する外管と、外管内に収納されるとともに、軟質先端に連結された遠位端部とアダプタに連結された近位端部とを有する内管であって、完全延出状態では、軟質先端が外管の遠位端部を少なくとも部分的に越えて延びる、内管と、ハンドピースの遠位端部に摺動可能に連結されたアダプタであって、弁の遠位端部に連結された近位端部と、内管の近位端部に連結された遠位端部とを有するアダプタと、ハンドピースの内部に収納されるとともに、アダプタの近位端部に連結された遠位端部を有する弁と、ハンドピースに収納され摺動可能に連結されたコアであって、弁の近位端部に連結された遠位端部を有するコアとを含む、装置を提供する。軟質先端を後退させるために、弁を後退させ、アダプタ、弁、及びコアをハンドピースに対して近位方向に摺動可能に後退させ、軟質先端を延出させるために、弁を突出させ、アダプタ、弁、及びコアをハンドピースに対して遠位方向に摺動可能に突出させる。
【0006】
以下の説明及び関連する図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の例示的な特徴を詳述する。
【0007】
添付の図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の態様を示しており、それゆえ、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】バックフラッシュ器具の従来技術の例を図示する。
図2A】いくつかの実施形態による、例示的な後退可能なバックフラッシュ器具を図示する。
図2B】いくつかの実施形態による、延出状態にある図2Aのバックフラッシュ器具の断面図を図示する。
図2C】いくつかの実施形態による、延出した軟質先端を図示する図2Bの遠位部分の拡大断面図である。
図2D】バックフラッシュ器具の内部を示す図2Bの切断線2D-2Dに沿って切った断面図である。
図3A】いくつかの実施形態による、後退状態にある図2Aのバックフラッシュ器具の断面図を図示する。
図3B】いくつかの実施形態による、後退した軟質先端を図示する図3Aの遠位部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解を促進するために、可能な限り同一の参照符号を使用して、各図面に共通する同一の要素を示している。一実施形態の要素及び特徴は、更なる説明を伴わずに他の実施形態に有益に組み込むことができるように企図される。
【0010】
本開示の態様は、後退可能なバックフラッシュ器具を提供する。
【0011】
上記で説明したように、軟質先端を備えたバックフラッシュ器具を弁付きカニューレなどのカニューレに挿入することは、困難であり得、バックフラッシュ器具の軟質先端に損傷を与え得る。本開示で説明する特定の実施形態は、弁付きカニューレへの器具の挿入前に軟質先端を後退させるための摺動可能な弁を提供し、それにより、挿入中に軟質先端が曲がるか又は損傷を受けることを防止することにより、これらの欠陥を克服することを試みるものである。
【0012】
図1は、コネクタ101と、ハンドピース102と、外管105と、外管105の遠位端部を越えて延びる軟質先端106とを含むバックフラッシュ器具100の従来技術の例を図示する。バックフラッシュ器具100の軟質先端106は、後退可能ではない。外管105の近位端部は、ハンドピース102の遠位端部に位置するキャップ107に連結される。キャップ107は、ホース状であり、且つコネクタ101に直接又は間接的に(例えば、ハンドピース102内のいくつかの他の要素を介して)連結される弁103に連結される。結果として、弁103は、外管105とコネクタ101との間に流体接続を提供する。弁103は、バックフラッシュ器具100が動作中であるモードに応じて機能が異なる孔104も含む。例えば、バックフラッシュ器具100は、以下に説明するように、能動吸引モード又は受動吸引モードで使用され得る。
【0013】
本明細書では、様々な構成要素を特定の形状(ホース状又は円筒状など)で説明するが、構成要素は、当業者により理解されるような他の同様の適切な形状をとり得ることに留意すべきである。
【0014】
コネクタ101は、吸引及び/又は洗浄機構を備えた手術用コンソールにハンドピース102を接続する。一例では、外科医などの使用者は、ハンドピース102を使用して、外管105と軟質先端106とを含むバックフラッシュ器具100の先端を、少なくとも部分的にカニューレを通して身体部位内に案内する。身体部位の内部に入ると、バックフラッシュ器具100は、身体部位からの物質(例えば、BSS、油又は他の流体など)の真空吸引又は吸引などの特定の動作を行う。そのような動作中、流体は、コネクタ101と、弁103と、外管105とを通って流れる。
【0015】
上記で説明したように、特定の実施形態では、バックフラッシュ器具100は、2つの動作モード:能動吸引モード及び受動吸引モードを有し得る。能動吸引モードでは、バックフラッシュ器具100は、流体を能動的に吸引し得る手術用コンソールにコネクタ101を介して接続され得る。能動吸引モードでは、外科医は、孔104を(例えば、指で)覆って、空気が孔104を通して吸引されることを防止する。
【0016】
受動吸引モードでは、バックフラッシュ器具100は、コネクタ101を介して手術用コンソールに接続されることなく使用される。そのような実施形態では、身体部位(例えば、患者の眼)内の圧力は、大気圧よりも高いため、外科医がバックフラッシュ器具100を身体部位に挿入すると、流体が身体部位からバックフラッシュ器具100内に流れて孔104から流出し得る。換言すれば、受動吸引モードでは、孔104を流体出口として使用し得る。
【0017】
外管105は、通常、金属(例えば、ステンレス鋼)などの剛性材料で作製される。軟質先端106は、通常、バックフラッシュ器具100が接触する身体部位に損傷を与えないように、軟質で可撓性の材料(例えば、シリコーン、ゴム、ポリウレタン(PUR))で作製される。しかしながら、外科医が、軟質先端106を備えたバックフラッシュ器具100を弁付きカニューレに挿通することは、面倒又は不可能である場合がある。挿通が面倒又は不可能であるのは、バックフラッシュ器具100の先端が弁付きカニューレの弁に押し通されたとき、軟質先端106を曲げるのに十分な対抗力が弁により軟質先端106に加えられ得るからである。ある場合には、曲がった軟質先端106を外科医がカニューレに無理に押し通すと、軟質先端106が外管105から分離又は剪断することさえある。
【0018】
よって、本開示の特定の実施形態は、円筒状中空内管(例えば、図2Bに示す内管212)に取り付けられた後退可能な軟質先端を備えたバックフラッシュ器具を提供する。このようなバックフラッシュ器具を使用して、外科医は、バックフラッシュ器具を弁付きカニューレに押し通す前にバックフラッシュ器具の内管を後退させることができ、それにより弁付きカニューレに挿通されたときに内管の先端(例えば、軟質先端106)が曲がるか又は剪断する可能性を排除又は低減する。
【0019】
図2Aは、本開示の特定の実施形態に係る例示的な後退可能なバックフラッシュ器具200を図示する。図2Bは、バックフラッシュ器具200の例示的な断面図を図示する。図2Cは、延出した軟質先端206を図示する図2Bの遠位部分の拡大断面図である。図2Dは、ハンドピース202の長手方向軸線に沿ったバックフラッシュ器具200の内部を示す、図2Bの切断線2D-2Dに沿って切った断面図である。したがって、明確にするために、本明細書では図2A図2Dを一緒に説明する。
【0020】
図示のように、バックフラッシュ器具200は、ハンドピース202の内部に収納されるとともに、ハンドピース202に対して摺動するように構成された弁203を含む。弁203は、内管212の近位端部に連結されるアダプタ208に連結される。弁203は、(例えば、使用者の指によって)弁203をハンドピース202に対して近位方向に引っ張って軟質先端206を後退させることができるように構成される。弁203は、(例えば、使用者の指によって)弁203をハンドピース202に対して遠位方向に押圧して軟質先端206を延出させることができるように更に構成される。特定の実施形態では、外科医は、弁203を引っ張るか又は押圧するために、弁203を直接把持する。弁203を引っ張る及び押圧する上記で説明した動作は、それぞれ手動後退及び手動突出と呼ばれることがある。
【0021】
図2A及び図2Bに示すように、弁203は、軟質先端206が外管205の遠位端部を少なくとも部分的に越えて延びるように、完全延出状態にある。弁203を後退させることによって、内管が近位方向に後退し、それにより、完全に後退させたときに軟質先端206が外管205の遠位端部を越えて延びないように軟質先端206が後退する。外科医は、指(例えば、親指)を弁203自体に載せて弁203を後退及び突出させるので、軟質先端206を後退及び延出させると同時に、(例えば、指で)孔204を覆って及びその覆いを外して圧力を制御することができる。この機構を使用して、外科医は、バックフラッシュ器具200を弁付きカニューレに押し通す前などに軟質先端206を後退させることができ、それにより軟質先端206への損傷の可能性を排除又は低減する。バックフラッシュ器具200を弁付きカニューレに押し通した後、外科医は、組織との安全な接触を可能にするために軟質先端206を延出させることができる。
【0022】
完全に延出した軟質先端206を示す、図2Bに図示するように、ハンドピース202は、弁203の遠位端部ではアダプタ208に連結され、更に弁203の近位端部ではコア215に連結される弁203を含む。アダプタ208は、キャップ207の近位端部に摺動可能に連結される。本明細書で使用される場合、ハンドピース202の遠位端部は、少なくともキャップ207を含む。アダプタ208の遠位端部は、内管212の近位端部に連結され、内管212の遠位端部は、外管205の遠位端部を越えて延びる軟質先端206に連結される(図2C)。より具体的には、アダプタ208の遠位端部では、アダプタ208は、内管212の近位端部を収容するように構成される円筒状要素211を含む。特定の実施形態では、円筒状要素211の遠位端部は、アダプタ208の摺動中にアダプタ208とハンドピース202との位置合わせを維持するためのキャップ207の内側輪郭に対応する形状を有する。特定の実施形態では、内管212及び円筒状要素211は、接着剤を使用して互いに連結される。特定の実施形態では、内管212及び円筒状要素211は、インサート成形技術を使用して互いに連結される。特定の実施形態では、内管212の近位端部は、円筒状要素211内に圧入される。特定の実施形態では、内管212は、ポリイミド又は鋼で作製され得る。ポリイミドは、より薄い肉厚で製造することができ、より大きな流れを可能にする、より大きな内径を有する内管212をもたらす。その一方で、鋼は、より良好に曲げに抵抗するより大きな全体剛性を有する内管212をもたらす。
【0023】
アダプタ208の近位端部では、アダプタ208は、上記で説明したように、管状又はホース状であり得る弁203の遠位端部に連結される。図示のように、アダプタ208の近位端部は、弁203の遠位端部に挿入されるように構成される円筒状挿入体210を含む。特定の実施形態では、円筒状挿入体210及び弁203は、接着剤を用いて互いに連結される。特定の実施形態では、円筒状挿入体210は、弁203内に圧入される。アダプタ208は、アダプタ208を取り囲む円盤223を含む。円盤223は、アダプタ208用のエンドストッパとして機能する。完全突出位置(図2B)では、円盤223は、ハンドピース202に対するアダプタ208の遠位方向への摺動を制限し、それにより、軟質先端206が外管205の遠位端部を過度に越えて延びるのを阻止するために、キャップ207の内側輪郭に形成された複数の切り欠き226に接触するように構成される。
【0024】
図2Bに更に示すように、弁203の近位端部では、弁203は、ハンドピース202に摺動可能に連結されるコア215の遠位端部214に連結される。コア215の遠位端部214は、弁203の近位端部に挿入されるように構成される。コア215の近位端部213では、コア215は、ハンドピース202を手術用コンソールに接続するためのコネクタ(例えば、コネクタ101)に連結されるように構成される。
【0025】
動作中に、弁203を近位方向に後退させることによって、弁203、コア215、アダプタ208、ひいては軟質先端206が、ハンドピース202に対して近位方向に摺動可能に後退する。完全後退状態は、図3A及び図3Bにより詳細に図示されている。軟質先端206を延出させるために、弁203を遠位方向に突出させることによって、弁203、コア215、アダプタ208、ひいては軟質先端206が、ハンドピース202に対して遠位方向に摺動可能に延出する。
【0026】
上記で説明したように、アダプタ208及びコア215は、弁203とともにハンドピース202に対して摺動可能に後退及び突出するように構成される。しかしながら、アダプタ208及びコア215は、可撓性材料で構成された、弁203を介して互いに撓み可能且つ間接的に連結される。換言すれば、アダプタ208とコア215との強固な接続部を形成するのではなく、弁203は、湾曲及び/又は伸長して、キャップ207とハンドピース202及び/又はコア215との位置ずれに対応することができる。弁203の可撓性材料によって、アダプタ208がキャップ207の内側輪郭内で自己位置合わせできるように、アダプタ208がコア215に対して傾斜することが可能となる。したがって、キャップ207に対するアダプタ208の位置合わせは、コア215とキャップ207との位置合わせとは無関係である。本明細書で説明するように、キャップ207は、外管205に連結され、アダプタ208は、内管212に連結される。それゆえ、内管212と外管205との位置合わせは、アダプタ208とキャップ207との位置合わせに直接依存する。したがって、本明細書で説明するアダプタ208とコア215との撓み可能且つ間接的な連結は、アダプタ208とコア215との位置合わせを改善することによって、外管205内で摺動する内管212の摩擦及び固着を低減する。
【0027】
以下により詳細に説明するように、完全突出位置では、コア215は、アダプタ208とキャップ207との間に設けられたエンドストッパとは別体である、ハンドピース202に接触するエンドストッパを有する。コア215に関連するエンドストッパ機構は、図2Bに関して以下で更に説明するように、ハンドピース202内に形成されたチャネル221の遠位肩部224に接触するスライダ217上に形成された突出部220の遠位端部を指す。アダプタ208とキャップ207との間に設けられたエンドストッパは、図2Bに関して上記で説明したように、キャップ207の内側輪郭に形成された複数の切り欠き226に接触するアダプタ208の円盤223を指す。ハンドピース202に対するそれぞれの構成要素の遠位方向への移動を制限する、アダプタ208のエンドストッパ及びコア215のエンドストッパは、互いに切り離されている。エンドストッパの切り離しは、上記で説明したように、ハンドピース202及び/又はコア215に対するキャップ207の位置ずれを許容すると同時に、コア215によって提供されるエンドストッパが、完全突出位置に移動したときのエンドストッパの所定の感覚を使用者に与えることができるようにする。
【0028】
図2Bに更に示すように、コア215の遠位端部では、コア215は、弁203を摺動可能に支持するように構成されるスライダ217に連結される。スライダ217の詳細は、図2Bの切断線2D-2Dに沿って切った断面図を図示する図2Dにより明確に描かれている。スライダ217は、本体部分218と、本体部分218の近位端部からコア215の遠位端部214に長手方向に延びる1対の側壁219とを含む。スロット222は、弁203の略正方形状の基部209を受け入れるように1対の側壁219の間に形成される。スロット222は、弁203とスライダ217との相対移動を防止するために、弁203の正方形状の基部209を収納する。例えば、弁203は、回転すること又はハンドピース202内に過度に押し下げられることが防止され得る。
【0029】
図2Bに更に示すように、特定の実施形態では、突出部220は、本体部分218から径方向に延び、ハンドピース202内に形成されたチャネル221内に受け入れられる。突出部220及び対応するチャネル221は、回転方向の位置合わせを維持するのに役立つように且つハンドピース202に対するスライダ217と弁203とコア215の摺動中の引っ掛かりを防止するように構成される。突出部220及び対応するチャネル221は、ハンドピース202に対するスライダ217と弁203とコア215の摺動の範囲を制限するように構成される。より具体的には、弁203を完全に突出させると、突出部220の遠位端部がチャネル221の遠位肩部224に接触し、それにより、ハンドピース202に対するスライダ217と弁203とコア215の遠位方向への更なる摺動を防止する(図2B)。更に、弁203を完全に後退させると、突出部220の近位端部がチャネル221の近位肩部225に接触し、ハンドピース202に対するスライダ217と弁203とアダプタ208とコア215の近位方向への更なる摺動を防止する(図3A)。
【0030】
図2Bはアダプタ208と弁203とを別個の構成要素として示しているが、特定の実施形態では、アダプタ208及び弁203は、単一部品として製造され得る。例えば、アダプタ208及び弁203の両方は、同じ材料から作製され得る。別の例では、アダプタ208及び弁203は、2成分射出成形プロセスで製造され得る。また、図2Bは、単一部品として製造されたコア215及びスライダ217を示しているが、特定の実施形態では、コア215及びスライダ217は、別個の部品として製造され得る。コア215及びスライダ217は、異なる部品として製造されるか又は同じ部品として製造されるかにかかわらず、本明細書では互いに連結されたものとみなされることに留意されたい。また、図2Cは、軟質先端206及び内管212を、互いに取り付けられる別個の構成要素として示しているが、特定の実施形態では、内管212及び軟質先端206は、同じ材料を使用して単一部品として製造され得る。そのような実施形態では、内管212は、可撓性で軟質の材料(例えば、シリコーン、PURなど)でも作製される。内管212及び軟質先端206は、異なる部品として製造されるか又は同じ部品として製造されるかにかかわらず、本明細書では互いに連結されたものとみなされることに留意されたい。
【0031】
図3Aは、完全後退状態にあるバックフラッシュ器具200の例示的な断面図を示す。図3Aに示すように、近位方向への弁203の後退によって、弁203、アダプタ208、コア215、及びスライダ217がハンドピース202に対して近位方向に摺動可能に後退する。完全後退状態では、コア215の近位端部213は、完全延出状態(図2B)と比較して、近位方向にハンドピース202の更に外側に延出している。図3Aに示すように、突出部220の近位端部は、チャネル221の近位肩部225に接触しており、ハンドピース202に対する弁203とアダプタ208とコア215とスライダ217の近位方向への更なる摺動を防止する。チャネル221の長さは、アダプタ208がキャップ207の内側輪郭から完全に外れないように構成される。換言すれば、突出部220は、アダプタ208がキャップ207から外れる前に近位肩部225に接触し、これにより、アダプタ208の引っ掛かりが生じる可能性がある。図3Bに示すように、軟質先端206は、外管205内に完全に後退させる。
【0032】
図示の実施形態は、弁203、アダプタ208、及びコア215の手動突出によって生じる軟質先端206の延出を示しているが、いくつかの他の実施形態では、弁203の突出は、後退ステップ中に蓄積されたエネルギーによって作動される。例えば、特定の実施形態では、弁203を近位方向に後退させることにより、弁203が圧縮され、この弁203は、可撓性及び/又は圧縮性材料で作製される。例えば、弁203は、シリコーンで作製され得る。特定の実施形態では、弁203の圧縮は、孔204と弁203の近位端部との間に位置する弁203の一部に沿って生じ得る。したがって、後退した弁203が解放されると、弁203は、(例えば、ばね力に基づいて)自動的に復元して、弁203とアダプタ208とコア215を元の位置に押し戻し、それにより、図2Cに示すように、内管212の軟質先端206が外管205の遠位端部を越えて延びる。いくつかの他の実施形態では、バックフラッシュ器具は、弁203、アダプタ208、及びコア215を突出させるためのばね(例えば、コイルばね)を有するように構成され得る。例えば、ばねが、コア215をハンドピース202に対して遠位方向に付勢するためにハンドピース202の一部とコア215、スライダ217又は突出部220のうちの1つとの間に位置し得る。
【0033】
前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な実施形態を実践できるようにするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正形態は、当業者に容易に明らかであり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言に一致する全範囲が認められるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
【国際調査報告】