(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両のための電気エネルギー貯蔵モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20231220BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231220BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20231220BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231220BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20231220BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
H01M10/48 P
H01M50/249
H01M4/58
H01M10/48 A
H01M50/202 401D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535713
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021084444
(87)【国際公開番号】W WO2022128582
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エメリー, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ-ラモス, ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ペトリサンス, シャビエル
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ヤンロン
【テーマコード(参考)】
5H030
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H030AA06
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF51
5H040AA37
5H040AA40
5H040AS04
5H040AS05
5H040AS07
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY08
5H040DD26
5H040NN03
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050GA28
(57)【要約】
本発明は、車両のための電気エネルギー貯蔵モジュール(3)に関し、電気エネルギー貯蔵モジュール(3)は、リチウム金属窒化物から少なくとも部分的に組成される少なくとも1つの負極を含む、少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵バッテリ(5)を含み、電気エネルギー貯蔵モジュール(3)は、空気または湿気の存在下での、負極のリチウム金属窒化物の分解に起因するアンモニアの放出を検出するための、少なくとも1つのアンモニアセンサ(11)をさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のために電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)であって、リチウム金属窒化物から少なくとも部分的に組成される少なくとも1つの負極(15)を含む、少なくとも1つの電気エネルギー蓄電池(5)を含み、電気エネルギーを貯蔵するための前記モジュール(3)は、空気または湿気の存在下での、前記負極(15)の前記リチウム金属窒化物の分解に起因するアンモニアの放出を検出するための、少なくとも1つのアンモニアセンサ(11)をさらに含む、電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項2】
前記リチウム金属窒化物の金属は、遷移金属の群から選択される、請求項1に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項3】
前記リチウム金属窒化物の金属は、鉄、マンガン、および鉄とマンガンの合金を含む群から選択される、請求項1または2に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項4】
前記リチウム金属窒化物は、脱リチウム化される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項5】
前記リチウム金属窒化物は、式がLi
7-xMnN
4であり、x≦2.0であるリチウムマンガン窒化物から、および/または、式がLi
3-xFeN
2であり、x≦1.2であるリチウム鉄窒化物から、少なくとも部分的に組成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項6】
前記電気エネルギー蓄電池(5)のためのハウジングを形成するケーシング(7)を含み、前記アンモニアセンサ(11)は、前記ケーシング(7)の壁(9)上に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項7】
前記アンモニアセンサ(11)は、前記ケーシング(7)の前記壁(9)の内部面上に配置される、請求項6に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項8】
前記アンモニアセンサ(11)は、触媒検出器、熱伝導率検出器、赤外放射の検出器、電気化学検出器、および光イオン化検出器から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール(3)。
【請求項9】
複数のエネルギー貯蔵モジュールを含む車両電気バッテリ(1)であって、前記複数のエネルギー貯蔵モジュールのうちの、電気エネルギーを貯蔵するための少なくとも1つのモジュール(3)は、請求項1から8のいずれか一項に記載のものである、車両電気バッテリ(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの請求項9に記載の電気バッテリ(1)を含む車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを貯蔵するための電気バッテリの分野に関係する。より正確には、本発明は、車両のために、および特にモータ車両のために電気エネルギーを貯蔵するためのモジュールに関係する。
【0002】
よく「リチウムイオンセル」と呼ばれるリチウムイオン電気化学蓄電池に基づく電気バッテリが、特に電気的モビリティに関係付けられる用途において、スタンドアローン電源としてますます使用されている。この傾向は、特に、従前のニッケルカドミウム(Ni-Cd)およびニッケル金属水素化物(Ni-MH)蓄電池のものよりも明らかに高い、単位質量あたりの、および単位体積あたりのエネルギー密度、メモリ効果の非存在、他の蓄電池に対するものとしての低い自己放電、ならびにさらには、キロワットアワーあたりの低いコストにより、納得のゆくものである。
【0003】
電気バッテリは、一般的には、並べて配置され、電気的に接続される、複数のエネルギー貯蔵モジュールを含む。各エネルギー貯蔵モジュールは、複数の電気エネルギー蓄電池を含む。これらの蓄電池は、エネルギー貯蔵モジュールの境界を定めることに関与するケーシング内に並べて配置され、これらの蓄電池は、互いに電気的に接続される。そのような構成によって、バッテリが、大きい量のエネルギーを貯蔵することが、および、車両に給電するために利用可能な電圧が増大されることが可能となり、その一方で、バッテリが、蓄電池のうちの1つの短絡の事例において、動作可能のままであることが可能となるものであり、そのことは特に、その構成によって、追加的なスイッチングおよび制御デバイスが設けられるという条件で、この欠陥のある蓄電池に対応するモジュールが非活動化されることが、および、電力が他のエネルギー貯蔵モジュールによって送り出され続けることが可能となるからである。
【0004】
その電気バッテリの使用中、電気バッテリは、蓄電池内の短絡などの電気的問題、および/または、蓄電池に衝撃を与える激突などの機械的問題を経ることがある。これらの問題は、電気バッテリ内で、特にその電気バッテリがリチウムイオン蓄電池を含むときに、熱暴走につながることがある。この熱暴走は、蓄電池内の、および/もしくはモジュール内の圧力における増大、ガスの放出、煙の放出、火炎の突発、ならびに/または、材料の飛び散りを結果的に生じさせることがある。
【0005】
この背景状況において、一方では、モータ車両の乗員の安全性を保証することを、それらの乗員が、客室が煙の放出によって満ち始める前に車両から降りることを可能とすることにより行うために、および他方では、適した設計の安全手段が、いかなる緊急応答もたやすくすることを目指して、バッテリを電気的に分離することを可能とするために、国際規則は、かなり早期に電気バッテリ熱暴走を検出することをモータ車両製造者に求める。
【0006】
熱暴走の検出は、大部分の事例において、シールされたモジュールの中の圧力の測定に基づく。この圧力測定は、特に、測定される圧力が、あらかじめ決定された臨界しきい値よりも上に上昇するときの、熱暴走情報の送り出しにつながる。そのような技法は、貯蔵モジュールの中の状態における変動に基づき、その技法は、環境状態に左右されることの不利点を有する。非制限的な例として、異なる高度においてモータ車両を運転することは、バッテリ内の、および/または、エネルギー貯蔵モジュールの中の圧力に影響力を与えることがあり、トンネルを通るこの車両の通行は、バッテリ内へと入り込む公算が大きい空気の組成を変え、それゆえに、ガス成分分布、および、とられる圧力測定値を変えることがある。それゆえに、検出しきい値を、熱暴走の点で、誤った警報を回避するのに十分に高くすることが必要である。それゆえに、この検出しきい値に達するために要される時間は、より長く、それゆえに、車両から降りる乗員に利用可能な時間は、著しく減少されることがあり、それらの乗員の安全性が損なわれることがある。
【0007】
上記で説明された方法に対して代替法として、文書、米国特許第9046580号は、バッテリモジュール内の蓄電池の障害を、モジュールの電気的分離の抵抗における変動の測定を基にして検出するための方法を開示している。この方法は、さらには、例えば、電圧チェーンにおける連続性の喪失、しきい値温度を上回るモジュールの温度、しきい値湿度を上回る湿度、および/または、しきい値冷却温度を上回る、モジュールを冷却するためのシステムと関連付けられる冷却剤の温度などの、蓄電池の、および/またはモジュールの障害の2次的影響について監視することを備えることがある。
【0008】
これらの方法は、それゆえに、蓄電池の、および/またはモジュールの障害を検出することを目指して、環境状態を計算に入れながら、温度における増大、および/または、圧力における増大、および/または、湿度レベルにおける変化を評価することを求められることの欠点を有する。上記で述べられたように、安全へと達するために乗員に関してかけられる時間は、それゆえ、増大されることがあり、このことは、それらの乗員を危険な状況に置くことの成り行きを招く。
【0009】
本発明の目的は、電気車両、および特にモータ車両のバッテリのための、新しいタイプのエネルギー貯蔵モジュールを提供することにより、前に述べられた欠点のうちの少なくとも1つを減ずること、および、他の利点をさらにまた達成することである。
【0010】
本発明は、車両、特にモータ車両のために電気エネルギーを貯蔵するためのモジュールであって、リチウム金属窒化物(lithium-metal nitride)から少なくとも部分的に組成される少なくとも1つの負極を各々が含む、複数の電気エネルギー蓄電池を含む、モジュールを提供し、電気エネルギーを貯蔵するための前記モジュールは、空気の、または湿気の存在下での、負極のリチウム金属窒化物の分解に起因するアンモニアの放出を検出するための、少なくとも1つのアンモニアセンサをさらに含む。
【0011】
用語「アンモニア」は、室温においてガスの形態をとる化学式NH3の化合物を指し示すということが、ここで、および、後に続くすべてにおいて、理解されなければならない。
【0012】
本発明は、従来技術において説明されたような、圧力の、温度の、および/または、湿度レベルの測定の代わりに、アンモニアの存在の検出に基づく。本発明は、車両の通常の運転状態のもとで貯蔵モジュール内に存在しないガスの検出による、熱暴走の早期の検出に基づき、このガスは、少なくとも1つの蓄電池の負極が空気との接触をなすことを結果的に生じさせる、激突または使い古しに起因する、異常な状態のもとでのみ出現するということにおいて、本発明は、従来技術とは有利に異なるということが、そうして留意されるべきである。
【0013】
より詳しくは、リチウムイオン電気エネルギー蓄電池の様々な層が、気密パウチ内に格納され、ゆえに、これらの層の各々、および特に負極は、漏洩がパウチにおいて出現するときにのみ、空気に、および/または、空気に含有される湿気に暴露され得る。蓄電池の使い古しに、または、車両により経験される激突に起因することがある、そのような漏洩の事例において、この暴露は、リチウム金属窒化物の分解、および、そのリチウム金属窒化物のアンモニアへの変質を引き起こす。エネルギー貯蔵モジュールのアンモニアセンサは、次いで、アンモニアの存在を検出することになる。アンモニアセンサはアンモニアに特化しているということを考え合わせれば、そのアンモニアセンサは、それゆえに、環境状態に左右されず、検出しきい値は、非常に低いことがある。機能不全の検出は、それゆえ、1つのアンモニア粒子が検出されてすぐから即時であることがあり、空気内に存在するアンモニアの量が臨界しきい値に達することは、必要なことではない。
【0014】
負極のリチウム金属窒化物の分解は、必ずしも熱暴走と同義ではなく、蓄電池のシールされたパウチにおける漏洩は、おそらくは使い古しに起因し、差し迫った脅威を提起するものではないということは、この背景状況において注目すべきである。しかしながら、車両の乗員が、エネルギー貯蔵モジュールの熱暴走の前に、早期にこの漏洩に気付かされることは有利である。このことによって、エネルギー貯蔵モジュールを、または電気バッテリさえも交換してもらうことを目指して、ディーラを安全に訪問するための乗員の時間が可能となることがある。乗員の安全性は、それゆえに改善される。
【0015】
その上、高い温度において、本発明に特有である、負極のリチウム金属窒化物の分解により形成されるアンモニアは、空気に含有される酸素の存在下で、二窒素ガスの形成を来すことになる。このことによって、それゆえ、電気貯蔵モジュールの内側の酸化剤の量が、例えば火炎が突発するとしても/ときに、減少されることが可能となり、それゆえに、熱暴走が、特に消防士の到着まで遅延させられることが可能となることになる。
【0016】
1つの実施形態にしたがえば、各電気エネルギー蓄電池は、負極に加えて、少なくとも、正極と、セパレータとを含む。
【0017】
1つの実施形態にしたがえば、セパレータは、負極と正極との間に配置構成され、そうしてスタックを形成する。
【0018】
1つの実施形態にしたがえば、各電気エネルギー蓄電池は、少なくとも、正極と、セパレータと、負極とにより形成されるスタックが内に配置されるジャケットを含む。上記で説明されたことに対するものとして、ジャケットは、様々な電極が内に配置構成されるシールされたエンクロージャを形成するということ、ならびに、負極が自由空気に暴露されること、および、アンモニアが生み出されることを引き起こすことになるのが、このジャケットのシールの破損であるということが理解されることになる。
【0019】
1つの実施形態にしたがえば、リチウム金属窒化物の金属は、遷移金属の群から選択される。
【0020】
1つの実施形態にしたがえば、リチウム金属窒化物の金属は、鉄、マンガン、ならびに、それらの鉄およびマンガンの合金を含む群から選択される。
【0021】
1つの実施形態にしたがえば、リチウム金属窒化物は、脱リチウム化される(delithiated)。「脱リチウム化される」により、ここで、および、後に続くすべてにおいて、理解されなければならないことは、リチウム金属亜硝酸塩は、その構造内に空孔を含み、それらの空孔によって、特に電気エネルギー蓄電池が再充電されるときにリチウムイオンを収容することが可能となるということである。
【0022】
1つの実施形態にしたがえば、リチウム金属窒化物は、式がLi7-xMnN4であり、x≦2.0であるリチウムマンガン窒化物から、および/または、式がLi3-xFeN2であり、x≦1.2であるリチウム鉄窒化物から、少なくとも部分的に組成される。
【0023】
1つの実施形態にしたがえば、エネルギー貯蔵モジュールは、複数の電気エネルギー蓄電池に共通のアンモニアセンサを含む。より詳しくは、電気エネルギーを貯蔵するためのモジュールは、複数の電気エネルギー蓄電池のためのハウジングを形成するケーシングを含み、アンモニアセンサは、ケーシングの内側に配置される。アンモニアセンサは、ケーシングの壁のうちの1つの内部面に留められることがある。センサがモジュール内のアンモニアの存在を検出するとき、蓄電池の、自由空気への暴露が識別され、モジュール内に存在する蓄電池は、乗員の安全性のために、予防的に交換されなければならない。
【0024】
代替法として、1つのアンモニアセンサが、各電気エネルギー蓄電池のために設けられることがある。この代替法において、検出はより正確であるということ、ならびに、どの蓄電池が不良であるか、および特に、どの蓄電池ジャケットが空気を通しているかを、狙いを定めた様式において識別することが可能であるということが理解されることになる。しかしながら、この代替的な実施形態は、より高い製造コストを招き、折衷案が好まれることがあり、その折衷案により、1つのアンモニアセンサは、コストを減少し、それにもかかわらず、救済的な処置がとられることを可能とするために、複数の蓄電池に共通にされ、この処置は、取り替えられることをすべての蓄電池に求めるのではなく、ただ単に、センサの近傍における蓄電池に求める。
【0025】
1つの実施形態にしたがえば、アンモニアセンサは、触媒検出器、熱伝導率検出器、赤外放射の検出器、電気化学検出器、または光イオン化検出器から選択される。
【0026】
本発明は、その上、複数のエネルギー貯蔵モジュールを含む電気バッテリに関係し、そのバッテリにおいて、複数のモジュールのうちの少なくとも1つのモジュールは、上記で説明された特徴のうちの少なくとも1つを有する。
【0027】
本発明は、さらには、本発明の1つの態様にしたがう少なくとも1つの電気バッテリを含む車両に関係する。
【0028】
車両は、モータ車両、2もしくは3輪のモータ付き電気道路車両、電気軌道自転車、または電気スクータであることがある。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、一方では、後に続く説明から、および他方では、添付される概略的な図面を参照する、表示として提示される、複数の非制限的な例示的な実施形態から、より明白になることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明にしたがう複数のエネルギー貯蔵モジュールを含む車両電気バッテリの概略的表現の図である。
【
図2】本発明の1つの態様にしたがうエネルギー貯蔵モジュールの概略的表現の図である。
【
図3】電気エネルギー蓄電池の概略的表現の図であり、その電気エネルギー蓄電池を、
図2のエネルギー貯蔵モジュールは装備される能力をもつ。
【
図4】
図3の電気エネルギー蓄電池の部分的な概略的表現の図であり、断面によって、
図3において示されるジャケットの内側に収納される蓄電池の構成要素が確認されることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図は、本発明の実現を目指して、詳細な様式において本発明を例解するが、それらの図は、当然ながら、適切な場合に、本発明をより良好に定義することに役立つことがあるということが、最初に留意されることになる。すべての図において、同様である、および/または、同じ機能を実行する要素は、同じ参照番号により指し示されているということが、さらには留意されることになる。
【0032】
本発明は、特に、電気エネルギーを貯蔵するためのモジュールであって、そのモジュールが、少なくとも1つの蓄電池であって、その編成が特異的である、蓄電池を含み、その蓄電池が、従前から用いられる負極とは異なる負極を有するということにおいて、および、そのモジュールが、この背景状況において、アンモニアセンサを含むということにおいて独特である、モジュールに関係する。
【0033】
図1を参照すると、電気エネルギーを貯蔵するための複数のこれらのモジュール3が例解されており、各々は、複数の電気エネルギー蓄電池5を含む。電気エネルギーを貯蔵するためのそのようなモジュール3は、電気バッテリ1を、ただしさらには、キャパシタまたはスーパーキャパシタを形成することがある。電気バッテリは、任意の車両、例えば、モータ車両、2もしくは3輪のモータ付き電気道路車両、電気軌道自転車、または電気スクータにおいて使用されることがある。
【0034】
電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール3は、ケーシング7を含み、そのケーシング7の壁9が、複数の電気エネルギー蓄電池5、および、少なくとも1つのアンモニアセンサ11のためのハウジングを形成する。例解される例において、ケーシング7は、ここでは、6つの壁を伴う平行六面体形状を有し、それらの壁の中で、
図2において、より詳しく見てわかるように、底壁90と、側壁92と、閉じ蓋94との間で区別することが可能である。
【0035】
電気エネルギー蓄電池5は、底壁90に対して、適切な場合には、マトリックス96内に配置され、そのマトリックス96によって、蓄電池は、互いに対するものとして、および、ケーシング7の壁に対するものとして、位置を定められることが可能となる。
【0036】
アンモニアセンサ11は、ケーシングの内側に、すなわち、
図2において例解されるように、電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール3のケーシング7の壁9により形成されるハウジング内に配置構成される。そうして、1つのアンモニアセンサ11は、複数の蓄電池5に共通である。
【0037】
アンモニアセンサ11は、乗員に警告信号を送信すること、および/または、電気バッテリの、もしくは少なくとも、対応するエネルギー貯蔵モジュールの電力の供給を止めるための命令を送信することができる制御モジュールにアンモニア検出情報を送信するように構成される通信手段12を含む、あるいは、その通信手段12と関連付けられる。例解される例において、通信手段は、ワイヤレス通信手段からなるが、本発明は、そのワイヤレス通信手段に制限されないということが理解されることになる。
【0038】
図2において例解される例において、アンモニアセンサ11は、ケーシング7の壁9のうちの1つの内部面8上に、およびより詳しくは、ここでは、閉じ蓋94の内部面上に配置構成される。本発明は、閉じ蓋上のアンモニアセンサのこの位置に制限されないということが留意されるべきである。しかしながら、一方では、アンモニアセンサ11が、電気エネルギー蓄電池5と機械的接触をなさないことが、および他方では、アンモニアセンサ11が、このアンモニアセンサと、センサが最も遠い蓄電池5との間の距離が可能な限り小さいように、中央位置において配置されることが有利である。
【0039】
アンモニアセンサ11は、触媒検出器、熱伝導率検出器、赤外放射の検出器、電気化学検出器、または光イオン化検出器であることがある。
【0040】
触媒検出器は、金属触媒の表面上のアンモニア分子の燃焼の熱度の測定に基づく。
【0041】
熱伝導率検出器は、アンモニアの存在により引き起こされる雰囲気の熱伝導率における変動を測定するように構成される。
【0042】
赤外放射の検出器は、アンモニア分子による赤外放射の吸収に基づく。
【0043】
電気化学検出器は、室温におけるレドックス反応に基づく。アンモニア分子は、触媒の表面上で吸収し、溶液のイオンと反応し、そのことが、電流が流れることを引き起こす。
【0044】
光イオン化検出器は、アンモニアガスの分子をイオン化するために、紫外レンジ内の、エネルギーの高い光子を使用するイオン検出器である。アンモニアガスは光子を当てられ、このことは、電子がガス分子からはぎ取られることを可能とし、そうして、それらのガス分子をカチオンへと変換する。ガス分子は、それゆえにイオン化され、このことによって、電流が流れることが可能となる。電流の検出は、そうして、アンモニアの存在と同意義と考えられることがある。このタイプの検出器は非破壊的であり、なぜならば、その検出器は、その検出器が検出するアンモニアガスの分子を変えないからである。
【0045】
そのような、または、そのようなタイプのアンモニアセンサの選択は、特に、前に述べられた検出器の嵩に、および、エネルギー貯蔵モジュールのケーシング内で利用可能な空間に左右されてなされることがある。
【0046】
本発明にしたがえば、エネルギー貯蔵モジュール内のアンモニアセンサ11の存在は、特徴であって、それにしたがって少なくとも1つの蓄電池が特異的な電極を含む、特徴と組み合わされる。
【0047】
図3および
図4を参照すると、各電気エネルギー蓄電池5は、少なくとも1つの正極13と、少なくとも1つの負極15と、少なくとも1つのセパレータ17とを含む。電気エネルギー蓄電池5は、各々、正極13、負極15、およびセパレータ17を積み重ねることにより組み立てられ、そのセパレータ17は、2つの電極13、15の間に配置される。セパレータ17は、少なくとも1つの電解質を含有する溶液を含浸させられることがある。
【0048】
このスタックは、電気化学コア19を形成し、その電気化学コア19は、次いで、ジャケット21内に配置され、そのことによって、
図3において確認され得る、電気エネルギー蓄電池5の正端子23および負端子25が、ジャケット21の外方からアクセス可能であり、車両の電気バッテリの中の電気フィードネットワークに接続されることがある。
【0049】
ジャケット21は、空気から電気化学コア19を保護する、シールされたエンクロージャを形成する。図において例解される例において、ジャケットは、実質的に平坦なパウチからなり、このジャケットの中の、電極の、およびセパレータのスタックは、実質的に平坦な層の重畳からなる。本発明はそのことに制限されないということ、ならびに、例えば円筒形ジャケットを伴い、そのジャケットの内側で、電極の、およびセパレータのスタックは、さらには、ジャケット内に収納されるためにロール形状を有する、他の蓄電池実施形態が、ここでは実現され得るということが留意されるべきである。
【0050】
正極13は、電気エネルギー蓄電池5が放電しているとき、およびそれゆえに、電気バッテリ1が放電しているときにカソードを形成する。正極13は、少なくとも1つの活物質から、任意選択で、少なくとも1つの電子伝導の剤から、および任意選択で、少なくとも1つのバインダから組成されることがある。
【0051】
正極13の活物質は、脱リチウム化され、すなわち、リチウムイオンは、特に、負極15の動作電位よりも高い電位において、その活物質内に可逆的に挿入され得る。
【0052】
正極13の総重量に対するものとして、正極13内の活物質の含有量は、5から98重量%であることがあり、電子伝導の剤の含有量は、0.1から30重量%であることがあり、バインダの含有量は、0から25重量%であることがある。
【0053】
正極13の活物質は、ある決まった数の酸化物から組成されることがある。例として、正極13の活物質は、二酸化マンガン(MnO2);酸化鉄;酸化銅;酸化ニッケル;複合リチウムマンガン酸化物(例えば、LixMn2O4またはLixMnO2);複合リチウムニッケル酸化物(例えば、LixNiO2);複合リチウムコバルト酸化物(例えば、LixCoO2);複合リチウムニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi1-yCoyO2);複合リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、x+y+z=1であるLiNixMnyCozO2);複合リチウム富化リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、Li1+x(NiMnCo)1-xO2);リチウムの、および遷移金属の複合酸化物;スピネル構造の複合リチウムマンガンニッケル酸化物(例えば、LixMn2-yNiyO4);オリビン構造のリチウムリン酸化物(例えば、LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、またはLixCoPO4);硫酸鉄(Fe2(SO4)3);ならびに、酸化バナジウム(例えば、V2O5)であることがある。
【0054】
電子伝導の剤は、炭素含有材料、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、天然もしくは合成黒鉛、カーボンナノチューブ、または、それらの混合物のうちの1つであることがある。
【0055】
バインダは、例えば、架橋を可能とする繰り返し単位を任意選択で含有するエチレンおよびプロピレンの共重合体;例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)などのスチレンブタジエン共重合体;アクリロニトリルブタジエン共重合体(ABR);例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリ(テトラフルオロエチレン)、または二フッ化ポリビニリデン(PVDF);例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)などのセルロース誘導体から選択される重合体であることがある。
【0056】
負極15は、少なくとも1つの活物質と、任意選択で、電子伝導の剤と、任意選択で、バインダとを含む。負極15の活物質は、脱リチウム化され、すなわち、リチウムイオンは、特に、正極13の動作電位よりも低い電位において、その活物質内に可逆的に挿入され得る。
【0057】
本発明にしたがえば、負極15の活物質は、リチウム金属窒化物から組成される。エネルギー貯蔵モジュールの潜在的な機能不全の早期の検出を可能とするのは、蓄電池の電極のこの独特の構成であって、上記で述べられたような、すなわち、前記蓄電池が位置を定められるエネルギー貯蔵モジュールおよび/またはバッテリ内に存在する、アンモニアセンサ11の存在と組み合わさった、この独特の構成である。
【0058】
負極15の活物質は、リチウム金属窒化物の金属が、遷移金属の群から選択されるようなものであることがある。
【0059】
より具体的には、本発明者らは、負極15の活物質は、式がLi7-xMnN4であり、x≦2.0であるリチウムマンガンから、および/または、式がLi3-xFeN2であり、x≦1.2であるリチウム鉄窒化物から、少なくとも部分的に組成されることがあるということに気が付くことができた。リチウムに対するものとしてのリチウムマンガン窒化物の電気化学電位は1.18Vであり、リチウム鉄窒化物の電気化学電位は1.24Vであり、それらの値は、リチウムチタン酸化物(LTO:Li4Ti5O12)の作用電位(1.5V)よりも低い(-0.25V)電位において利用可能な、高い比容量(それぞれ、300mAh/gおよび200mAh/g)についてのものである。150mAh/gに制限される比容量を伴うリチウムチタン酸化物は、リチウムイオン電力バッテリのために現在利用可能な、最も高い性能の負極材料である。リチウムマンガン窒化物およびリチウム鉄窒化物は、それゆえに、より高いエネルギー密度を有する。リチウムマンガン窒化物およびリチウム鉄窒化物は、さらには、高い電流密度の用途に対して良好な抵抗を有し、このことは、ハイブリッド車両の蓄電池について特に有利である。
【0060】
電子伝導の剤、およびバインダは、それぞれ、電気エネルギー蓄電池5の正極13に関して上記で説明された、電子伝導の剤、およびバインダであることがある。
【0061】
負極15の総重量に対するものとして、負極15内の活物質の含有量は、少なくとも60重量%からであることがあり、電子伝導の剤の含有量は、0から30重量%であることがあり、バインダの含有量は、0から30重量%であることがある。
【0062】
電気エネルギー蓄電池5の電極どうしの間に場所を定められるセパレータ17は、電気絶縁体の役割を果たす。セパレータ17は、一般的には多孔質重合体から組成され、特にポリオレフィンから、ならびに好ましくは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンから作製される。そのセパレータ17は、さらには、ガラスマイクロファイバから作製されることがある。セパレータ17は、Whatmanにより販売されるガラスマイクロファイバセパレータ(カタログ番号1823-070(登録商標))であることがある。
【0063】
セパレータは、一般的には、電解質の少なくとも1つの溶液に浸される。使用される電解質は、少なくとも1つのリチウム塩と、少なくとも1つの溶媒とを含む。
【0064】
リチウム塩は、例えば六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などの無機塩であることがある。リチウム塩は、さらには、例えばリチウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド(LiN(CF3SO2)2)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、またはなおも、リチウムフルオロ(オキサラト)ボレート(LiFOB)などの有機塩であることがある。
【0065】
リチウム塩は、好ましくは、極性非プロトン溶媒、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、および炭酸エチルメチル(EMC)から選択される少なくとも1つの溶媒に溶解される。
【0066】
1つもしくは複数の蓄電池5の変形につながる激突の後に続いて、またはさらに言えば、これらの蓄電池のうちの1つの早められた使い古しの後に続いて、電気エネルギー蓄電池5の電気化学コア19を保護する少なくとも1つのジャケット21は、損傷され、それゆえに、空気を通過させることがある。負極15は、次いで、空気に、および/または、空気に含有される湿気に暴露される。この暴露は、負極15のリチウム金属窒化物の分解を引き起こし、このことは、アンモニア結果物の放出を結果的に生じさせる。
【0067】
電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール3内に存在するアンモニアセンサ11は、次いで、リチウム金属窒化物の分解により放出されるアンモニア分子を検出することができる。アンモニアセンサ11はアンモニアに特化しているということを考え合わせれば、そのアンモニアセンサ11は、それゆえに、環境状態に左右されず、検出しきい値は、非常に低いことがあり、ゆえに、機能不全の警告は、アンモニアが空気内に出現してすぐに送出されることがある。
【0068】
上記で述べられたように、機能不全中の本発明にしたがって生起するアンモニアの放出、およびより詳しくは、蓄電池5のジャケットのシールの喪失は、引き続いて、空気の存在下で、および、高い温度において、二窒素ガスが形成されることを引き起こす傾向がある。このことは、電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール3の内側で利用可能な酸化剤の量を減少することの効果を有し、それゆえに、電気エネルギーを貯蔵するためのモジュール3の、およびそれゆえに、電気バッテリ1の熱暴走を遅らせることがある。
【0069】
当然ながら、本発明は、先程説明された例に制限されず、多くの変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの例に対してなされることがある。
【国際調査報告】