(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】熱溶融キャップ
(51)【国際特許分類】
A62C 13/62 20060101AFI20231220BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A62C13/62 A
A62C3/16 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535714
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021085309
(87)【国際公開番号】W WO2022128824
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ショードイ, ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】トゥレ, ティエリ
(57)【要約】
本発明は、車両の蓄電装置(1)内部の火災を消火するための装置(2)に関し、消火装置(2)は、少なくとも1つのキャップ(10)と、火災を消火するための少なくとも1つのガスを収容するシリンダ(12)とを備え、シリンダ(12)は、閉鎖シール(20)を備え、ガスを収容する空間(14)を画成し、キャップ(10)は、少なくとも1つの穿孔装置(22)と、穴開き壁(26)が設けられた基部(24)とを備え、穿孔装置(22)は、シリンダ(12)の気密性を維持しながら、そのシリンダの閉鎖シール(20)を破壊することが可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の蓄電装置(1)内の火災を消火するための消火装置(2)であって、少なくとも1つのキャップ(10)と、少なくとも1つの消火ガスを収容するボトル(12)とを備え、前記ボトル(12)が、シール膜(20)を有し、前記ガスを収容する空間(14)を画成し、前記キャップ(10)が、少なくとも1つの穿孔装置(22)を備える、消火装置(2)において、前記穿孔装置(22)が、少なくとも部分的に熱溶融材から製作され、前記キャップ(10)は、前記穿孔装置(22)が前記ボトル(12)の前記シール膜(20)を裂開するように、かつ前記キャップ(10)が前記ボトル(12)の前記空間(14)を気密にシールするように、前記ボトル(12)に固定され得ることを特徴とする消火装置(2)。
【請求項2】
前記穿孔装置(22)が、少なくとも1つの本体(22)および尖頭(30)を備え、前記本体および尖頭が共に、熱溶融材を含有する、請求項1に記載の消火装置(2)。
【請求項3】
前記キャップ(10)が、前記ガスが通ることを可能にすることができる穴開き壁(26)が設けられた基部(24)を備え、前記基部(24)が、少なくとも1つの耐熱材を含有し、前記穴開き壁(26)が、前記穿孔装置(22)の前記本体(28)を廻って配置され、前記基部(24)が、前記キャップ(10)を前記ボトル(12)に固定する少なくとも1つの固定手段(52)を備える、請求項2に記載の消火装置(2)。
【請求項4】
前記基部(24)が、前記穿孔装置(22)の前記尖頭(30)を廻って配置された少なくとも1つの固定壁(32)を備え、前記キャップ(10)に属する前記固定手段(52)が、前記固定壁(32)に形成されたねじ山(54)であり、前記ボトル(12)に形成された相補的ねじ山(58)と協働することができる、請求項3に記載の消火装置(2)。
【請求項5】
前記キャップ(10)を前記ボトル(12)に固定する前記固定手段(52)が、前記ボトル(12)への前記基部(24)の圧力嵌めである、請求項3に記載の消火装置(2)。
【請求項6】
前記穿孔装置(22)が、少なくとも5%の鉱物材を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の消火装置(2)。
【請求項7】
少なくとも1つの周壁(4)と、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの消火装置(2)とを備える自動車両用の蓄電装置(1)。
【請求項8】
前記消火装置(2)が、前記周壁(4)内に収装される、請求項7に記載の蓄電装置(1)。
【請求項9】
前記周壁(4)が、少なくとも1つの切欠(64)を備え、前記キャップ(10)が、前記ガスが通ることを可能にすることができる穴開き壁(26)が設けられた基部(24)を備え、前記消火装置(2)の前記キャップ(10)の前記基部(24)の前記穴開き壁(26)が、前記切欠(64)に対面して配置される、請求項7または8に記載の蓄電装置(1)。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の消火装置(2)を組み立てる方法であって、前記キャップ(10)を、前記ボトル(12)のシールされた前記シール膜(20)に対面するように配置する少なくとも1つのステップを含み、次いで、少なくとも1つのその後のステップにおいて、前記穿孔装置(22)が前記シール膜(20)を裂開するように、固定手段(52)によって前記キャップ(10)が前記ボトル(12)に固定されて、そのとき、前記キャップ(10)が前記ボトル(12)の前記空間(14)を気密にシールする、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、火災消火装置に関し、より詳細には、車両用蓄電装置内の火を消すための装置に関する。
【0002】
別途バッテリとして知られている蓄電装置は、ハイブリッドおよび/または電気車両内に通常使用される。そのような蓄電装置は、たとえば、自動車両に搭載され担持された電気モータへ電力を供給することができる。しかしながら、バッテリは、たとえば、例として車両が破壊され、または道路交通事故の結果として車両火災が起きた場合、引火する可能性があり得る。したがって、たとえば車両火災では、バッテリの近傍に極めて大きな熱放出が存在するので、バッテリ内に存在する電気化学セルの熱暴走現象が、引き起こされる可能性があり得る。
【0003】
したがって、蓄電装置内部で広がる火を消すための装置の使用が知られており、火災の拡大を止めることが可能な少なくとも1つのガスを充填した少なくとも1つのボトルを備える。特に、文書EP2556857A1は、針を用いてそのシール膜を穿孔するガスのボトルを開示し、その針は、針を拘止する感熱部材の溶融効果の下に作動させられる。
【0004】
上述のような消火装置に伴う1つの短所は、特に、実装に費用が掛かり、定期的点検整備を必要とすることにある。したがって、本発明の目的は、消火装置の使用を、その装置の作動、すなわち火災の拡散を止めることができるガスの放出を全く機械的にし、この作動に必要な部品の数を減らすことによって、簡略化することである。
【0005】
したがって、本発明は、車両の蓄電装置内の火災を消火するための消火装置であって、少なくとも1つのキャップと、少なくとも1つの消火ガスを収容する少なくとも1つのボトルとを備え、ボトルが、シール膜を有し、ガスを収容する空間を画成し、キャップが、少なくとも1つの穿孔装置を備える、消火装置において、穿孔装置が、少なくとも部分的に熱溶融材から製作され、キャップは、穿孔装置が上記ボトルのシール膜を裂開するように、かつキャップがボトルの空間を気密にシールするように、ボトルに固定され得ることを特徴とする消火装置に関する。
【0006】
蓄電装置、または言い換えればバッテリ内の火災を消火するための装置は、電気および/またはハイブリッド自動車両に使用することができるが、静止蓄電設備にも使用することができる。そのようなバッテリは、特に、車両内に収装され、それによって車両が走行するのを可能にする電気モータに電力を供給することができる。その場合、消火装置は、蓄電装置内の火災が広がるのを鎮める目的を有する。そのために、消火装置は、少なくとも、ガスのボトルと、そのボトルの空間を気密にシールすることができるキャップとを備え、キャップは同時に、少なくとも1つの環境パラメータ、この場合には蓄電装置内の空気の温度の影響の下にガスが出て行くことを可能にする。
【0007】
その場合、キャップの穿孔装置は、一方でシール膜を裂開して、ボトルの空間内に収容されているガスを解放することができ、他方で、ボトルから外へ、すなわち上記空間の外部環境に向けて、このガスを排出するのを阻止することができることが理解されよう。ボトルの空間のそのような気密シールは、その場合、少なくとも一部、穿孔装置によって行われる。
【0008】
本発明の一特徴によれば、穿孔装置は、少なくとも1つの本体および尖頭を備え、それら本体および尖頭は共に、熱溶融材を含有する。
【0009】
ここで、尖頭は、ガスボトルのシール膜を裂開する機能を有し、シール膜が裂開されると少なくとも部分的に、ボトルの空間内に延出するように構成されていることが理解されよう。尖頭は、ボトルの空間内に延出すると、本体と連係して、そのボトルの空間をシールすることに寄与することがさらに理解されよう。
【0010】
その場合、熱溶融材が意味するのは、その材料が熱に敏感であることである。別の言い方をすれば、熱溶融材は、熱の影響下で状態を変化させることができ、特に固体状態から液体状態に移行することができる。言い換えれば、穿孔装置は、少なくとも閾値温度、たとえば80℃以上の熱の影響下で溶融することができる。
【0011】
本発明の非限定的例によれば、本体および尖頭は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、および/またはポリアクリロニトリルブタジエンスチレンから製作することができる。
【0012】
本発明の一特徴によれば、キャップが、ガスが通ることを可能にすることができる穴開き壁が設けられた基部を備え、基部が、少なくとも1つの耐熱材を含有し、穴開き壁が、穿孔装置の本体を廻って配置され、基部が、キャップをボトルに固定する少なくとも1つの固定手段を備える。
【0013】
その場合、キャップの基部は、穿孔装置をボトルの所定位置に保持することに寄与し、その結果、この穿孔装置が上記ボトルを気密にシールする。耐熱材が意味するのは、基部が、特に、穿孔装置が製作される熱溶融材の溶融点温度より高い、高温に耐えることができることである。別の言い方をすれば、基部は、たとえば250℃より高い溶融点温度を有する。本発明の一例によれば、基部全体が、耐熱材から製作される。
【0014】
本発明の一部の非限定的例によれば、耐熱材は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、および/またはエポキシ系の合成材料でもよい。
【0015】
穴開き壁が意味するのは、この壁が、その厚さにおいて形成された少なくとも1つの開口を備え、それによって、基部の内部空間をその基部の外部環境と連通させることである。それによって、穿孔装置の少なくとも一部が溶融すると、穴開き壁は、ガスをボトルの空間からボトルの外部環境内へ通すことを可能にすることが理解されよう。本発明の一例によれば、その壁は、基部の外周を廻って延在する複数の開口を備え得る。
【0016】
本発明の一例示的実施形態によれば、固定手段は、穿孔装置の尖頭の周囲を廻って延在する。
【0017】
本発明の一特徴によれば、基部は、穿孔装置の尖頭を廻って配置された少なくとも1つの固定壁を備え、キャップに属する固定手段は、固定壁に形成されたねじ山であり、ボトルに形成された相補的ねじ山と協働することができる。
【0018】
穴開き壁は、固定手段を備える固定壁によって延長され、その固定手段は、この場合、たとえば内ねじまたは外ねじのねじ山である。一例によれば、固定壁は、穿孔装置の尖頭に面している内面を備え、内ねじ山が、固定壁のその内面に形成されている。
【0019】
ボトルは、キャップがボトルに装着される前はシール膜によって覆われるように意図された開口を備え、開口は、特にボトルの首部の端部に作られる。その場合、相補的ねじ山が、ボトルの首部の外周に形成され、その結果、その相補的ねじ山が、キャップの基部の固定壁のねじ山と協働することができることが理解されよう。
【0020】
その場合、本発明のこの例示的実施形態では、キャップが、シール膜を尖頭が裂開するようにボトルにねじ込まれること、およびキャップが、穿孔装置と連係して本体の空間の気密シールを確保するように、ねじ山および相補的ねじ山を用いてボトル上に保持されることが理解されるであろう。
【0021】
本発明の代替実施形態によれば、キャップをボトルに固定する固定手段は、ボトルへの基部の圧力嵌めである。
【0022】
本発明の一例によれば、固定壁の内面が、穿孔装置の尖頭の周囲を廻って延在する追加の厚さを備え得、その追加の厚さは、キャップをボトルに保持することに寄与する。別の言い方をすれば、追加の厚さは、固定壁によって形成される周長を減らすことに寄与し、それによって、ボトルへのキャップの圧力嵌めに寄与する。
【0023】
本発明の一特徴によれば、シールガスケットが、穿孔装置の尖頭の周囲を廻って配置される。
【0024】
シールガスケットは、特にキャップがボトルに圧力嵌めされたとき、そのキャップによるボトルの空間のシールの気密性を向上させることが理解されよう。
【0025】
本発明の一特徴によれば、穿孔装置は、少なくとも5%の鉱物材を含有する。
【0026】
穿孔装置を少なくとも部分的に構成する鉱物材は、穿孔装置の硬度を増加させることを可能にする。それによって、シール膜を裂開する穿孔装置の能力が、その穿孔装置の熱溶融特性に悪影響なしに増強される。
【0027】
本発明の一特徴によれば、ガスボトルは、少なくとも部分的に2酸化炭素を収容する。2酸化炭素は、特に、蓄電装置内に存在する酸素の少なくとも一部を追い出すことによって、蓄電装置内部に広がる火災を消火することができる優れた特性を有する。
【0028】
本発明の一特徴によれば、穿孔装置は、少なくとも80℃より高い溶融点温度を有する。80℃以上では、穿孔装置が固体状態から液体状態に移行し、それによって、ガスが、特に基部の穴開き壁を用いて、ボトルの空間からボトルの外部環境へ出て行くのを可能になる。一例によれば、穿孔装置の溶融点温度は、80℃より高い。有利には、穿孔装置の溶融点温度は、120℃未満である。
【0029】
本発明はまた、少なくとも1つの周壁と、上記の特徴による少なくとも1つの消火装置とを備える自動車両用の蓄電装置に関する。
【0030】
別途バッテリパックとして知られている蓄電装置は、特に、ハイブリッドまたは全電動車両と呼ばれる車両内に特に使用され、それによって、少なくとも1つの電気モータに電気を供給する。その場合、周壁は、蓄電装置を構成する蓄電セルが収装されるスペースを画成することに寄与する。
【0031】
蓄電装置の一特徴によれば、消火装置が、周壁内に収装される。より具体的には、少なくとも1つの空洞が、蓄電装置の周壁の厚さ内に形成され、消火装置が、その空洞内に収装される。
【0032】
一例によれば、この空洞は、周壁の一縁部に開口する。
【0033】
蓄電装置の一特徴によれば、周壁が、少なくとも1つの切欠を備え、キャップが、ガスが通ることを可能にすることができる穴開き壁が設けられた基部を備え、消火装置のキャップの基部の穴開き壁は、切欠に対面して配置される。
【0034】
切欠は、消火装置を収装する空洞に作られ、その切欠きは、キャップの穴開き壁に対面するように形成されていることが理解されよう。言い換えれば、切欠は、空洞の空間を、電気セルが配置されている蓄電装置の内部スペースと連通させる。そのような特徴は、ガスボトルからのガスの、蓄電装置の内部スペースへの拡散を増強することを可能にする点で有効である。
【0035】
本発明は、さらに、上記特徴による消火装置を組み立てる方法であって、キャップを、ボトルのシールされたシール膜に対面するように配置する少なくとも1つのステップを含み、次いで、少なくとも1つのその後のステップにおいて、穿孔装置がシール膜を裂開するように、固定手段によってキャップがボトルに固定されて、そのとき、キャップがボトルの空間を気密にシールする、方法に関する。
【0036】
したがって、穿孔装置の構造とキャップの固定手段によるキャップの拘止との組合せが、ガスボトルを確実に気密シールすることが理解されよう。熱溶融材を含有する穿孔装置の溶融が、ボトルの空間から底部の外の空間、この場合は蓄電装置の内部スペースへガスが確実に通るようにして、火災を消火するのを可能にすることがさらに理解されよう。
【0037】
本発明のさらに別の特徴、詳細および利点が、図面に関連して目安として以下に示される説明を読むことにより、さらに明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明による消火装置を備える蓄電装置の全体的構成を示す図である。
【
図2】少なくとも1つのキャップおよびガスボトルを備える、
図1の消火装置の概略図である。
【
図3】
図1の消火装置のキャップの全体的構成を示す図である。
【
図4】第1の例示的実施形態による、底部に固定するための少なくとも1つの固定手段を備える、
図1の消火装置のキャップの長手方向概略断面図である。
【
図5】第2の例示的実施形態による、ボトルに固定するための少なくとも1つの固定手段を備える、
図1の消火装置のキャップの長手方向概略断面図である。
【
図6】
図1の消火装置のキャップをその消火装置のボトルに嵌めることに関する少なくとも一部の概略図である。
【
図7】穿孔装置が溶融状態にある、
図1の消火装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
諸図面は、本発明の実施に関して詳細に本発明を説明するが、これら図面は、該当する場合、当然、本発明をより良く定義するのに役立ち得ることに先ず第一に留意されたい。また、これら図面は、本発明の例示的実施形態のみを説明することに留意されたい。最後に、全ての図面を通して、同じ参照符号は同じ要素を意味する。
【0040】
図1は、たとえば自動車両の蓄電装置1を示し、その蓄電装置には、本発明による消火装置2が収装されている。別途バッテリパックとして知られている蓄電装置1は、ハイブリッドまたは電気モータ車両内で特に使用することができ、それら車両に対して、蓄電装置は、少なくとも1つの電気モータ(図示せず)へ電力を供給し、そのようなモータは、車両が動くことを可能にする。
【0041】
蓄電装置1は、その蓄電装置のスペース6を画成する少なくとも1つの周壁4を備え、スペース6は、たとえば、電池(図示せず)を収装することができる。
図1に視られるように、蓄電装置1の周壁4は、その周壁の厚さ内に形成された少なくとも1つの空洞8を備え、本発明による消火装置2が、その空洞8内に収装される。
【0042】
消火装置2は、特に、少なくとも1つの消火ガスを放出することによって、蓄電装置1内の火災の拡大を少なくとも妨げる機能を有する。より具体的には、ガスは、たとえば、少なくとも2酸化炭素であり得、その2酸化炭素は、蓄電装置1のスペース6に充満し、それによって火災に有効な酸素の量を減少させることによって、火災の拡大を抑制することができる。
【0043】
組立前の構成で
図2に視られる消火装置2は、少なくとも1つのキャップ10と、少なくとも消化ガスを入れた少なくとも1つのボトル12とを備える。より具体的には、上記消火装置2のボトル12は、ガスが入る空間14を画成する。ガスボトル12は、主として長手方向Lに延在し、ガスボトルの一方の長手方向端部18に少なくとも1つの開口16を備える。その場合、開口16は、一方で、ガスがボトル12の空間14に入ることを可能にし、他方で、そのガスが、特に消火装置2が蓄電装置に収装されたとき、下記に詳述するある環境状態下で、出て行くように意図されていることが理解されよう。
【0044】
図2の構成では、ガスボトル12の空間14が、ガスボトル12の開口16を覆うシール膜20を用いて閉鎖される。したがって、シール膜20が、ボトル12の空間14からガスが出て行くのを防止する機能を有することが理解されよう。本発明の非限定的一例によれば、シール膜20は、アルミニウム、さもなければプラスチック被覆紙の薄膜など、容易に破ることのできるシートである。
【0045】
消火装置2のキャップ10は、少なくとも1つの穿孔装置22、および穴開き壁26が設けられた基部24を備える。それによって、穿孔装置22は、一方で上記のボトル12のシール部材20を裂開し、他方で、シール膜20が裂開されると、キャップ10の基部24と協働して、ボトル12の気密シールを少なくとも部分的に行う機能を有する。その場合、気密シールが意味するのは、キャップ10が、ボトル12内のガスがボトルの空間14から蓄電装置のスペースの方へ出て行くのを防止することである。キャップ10とボトル12とのそのような協働は、特に
図6における詳細説明で後に説明される。
【0046】
次いで、キャップ10が、
図3~5を参照してより詳細に説明される。
【0047】
キャップ10の穿孔装置22は、少なくとも1つの本体28と、キャップ10の本体28から延出する少なくとも1つの尖頭30とを備える。より具体的には、尖頭30は、キャップ10の本体28からガスボトル12の長手方向Lに延在する。したがって、穿孔装置22は、ボトル12の長手方向Lに細長い形状を有することが理解されよう。本発明の例によれば、穿孔装置22の本体28は、ボトルの長手方向Lに平行な回転中心軸Cを設定することができる円筒形状を有する。それによって、尖頭30は、円錐の斜角面を形成する一方の端部が、本体28の中心軸C上で、本体とは反対側の端部に配置される円錐形状を有する。
【0048】
本発明によれば、穿孔装置22の本体28および尖頭30は共に、熱溶融材を含有する。有利には、穿孔装置22の本体28および尖頭30は、完全に熱溶融材から製作される。熱溶融材が意味するのは、穿孔装置22の本体28および尖頭30が、特定の温度の効果の下に固体状態から液体状態へ移行することができることである。すなわち、本体28および尖頭30は、温度が少なくとも閾値温度に達すると軟化し、次いで、温度が少なくとも融点温度に達すると溶融することができる。本体28および尖頭30がそれを超えると溶融する溶融点温度は、この場合少なくとも80℃である。したがって、蓄電装置のスペース内に存在する温度が、本体28および尖頭30の少なくとも溶融点温度に達すると、これら要素は、上述のように状態を変える。
【0049】
本発明の非限定的例によれば、本体28および尖頭30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、および/またはポリアクリロニトリルブタジエンスチレンから製作することができる。
【0050】
本発明の一例によれば、本体28および尖頭30は、少なくとも5%の鉱物材を含有し得る。その場合、本体28および尖頭30を少なくとも部分的に構成する鉱物材は、これら要素の構造を強化する効果、特にこれら要素を硬化する効果を有する。そのような少なくとも5%の鉱物材を含有する組成は、穿孔装置22の本体28および尖頭30に熱溶融特性を維持する利点をさらに示す。鉱物材を混入することによって得られる剛性は、キャップ10をボトル12と組み立てるとき、シール膜20が尖頭30によって穿孔されることを確実にする。
【0051】
キャップ10の基部24は、少なくとも穴開き壁26と、少なくとも1つの固定壁32とを備える。より具体的には、基部24の穴開き壁26は、穿孔装置22の本体28の周りに位置し、一方、固定壁32は、その穿孔装置22の尖頭30の周りに配置される。その場合、基部24の穴開き壁26は、穿孔装置22の本体28の周囲を廻って、主としてボトルの長手方向Lに上記本体28から第1の零でない距離D1にあるように延在し、第1の距離D1は、
図4から明らかなように、本体28の中心軸Cに対する本体の半径方向に取られることが理解されよう。
【0052】
その場合、穴開き壁26が意味するのは、この壁が、少なくとも1つの貫通開口34を備えることである。より具体的には、本発明のこの例に示されているように、穴開き壁26は、穿孔装置22の本体28の周囲を廻って延在する複数の開口34を備える。
【0053】
基部24の固定壁32は、穿孔装置22の尖頭30の周囲を廻って、主としてボトルの長手方向Lに延在する。より具体的には、固定壁32は、少なくとも部分的に、尖頭30から第2の零でない距離D2で延在し、第2の距離D2は、本体28の中心軸Cに対して本体の半径方向に取られる。尖頭30の形状が円錐形なので、尖頭30を固定壁32から離す第2の距離D2は、ボトルの長手方向Lにおいて、穿孔装置22の本体28から離れる距離が増すに従って増加することが理解されよう。さらに、第2の距離D2は、穿孔装置22の本体28を穴開き壁26から離す第1の距離D1より確実に小さい。
【0054】
キャップ10の第1の端部36およびキャップ10の第2の端部38が定義され、それら端部は、ガスボトルの長手方向Lにおいて互いに反対側にある。その場合、第1の端部36は、基部24の穴開き壁26のレベルに位置する端部に対応し、第2の端部38は、基部24の固定壁32のレベルにある端部に対応する。
【0055】
基部24の端部円板40が、キャップ10の第1の端部36に配置される。その場合、端部円板40は、キャップ10の第1の端部36を閉鎖するように構成され、その結果、複数の開口34は、穴開き壁26によって画成されるキャップの内部空間とキャップ10の外部環境との唯一の流体連通手段を構成する。端部円板40は、穴開き壁26によって定義される壁半径R2と少なくとも等しい端部円板半径R1を有する外周縁部41を有し、端部円板外側半径R1および壁半径R2は、穿孔装置22の本体28の中心軸Cに対して定義される。したがって、端部円板40は、キャップ10の第1の端部36において穴開き壁26の一方の端部を覆うように配置されることが理解されよう。
【0056】
蓄電装置のスペース内部の温度が少なくとも溶融点温度に達した場合、穿孔装置22は、溶融し、ガスが開口34に向かって流れることを可能にすることが、さらに理解されよう。
【0057】
キャップ10の基部24は、穴開き壁26と基部24の固定壁32との間に配置された、少なくとも1つの連結円板44をさらに備える。別の言い方をすれば、連結円板44は、本体の中心軸Cに沿って、穴開き壁26を固定壁32に連結するように、穿孔装置22の外周から半径方向に延出する。連結円板44は、穿孔装置22の本体28周りに延在する内周縁部48を有する円形孔46をさらに備える。内周縁部48は、その内周縁部48と本体28とが互いに接触するように、本体28の周りに特に密接して嵌められ、すなわち、本体の中心軸Cに対して本体28の半径方向に測定して、零の第1の距離D3で嵌められる。本発明の図示された例によれば、連結円板44は、中心軸Cと連結円板44の外縁部50との間で測定される、上記で定義された壁半径R2と少なくとも等しい連結円板半径R3を有する。
【0058】
したがって、穿孔装置22の本体28周りの連結円板44の特定の配置が、固定壁32によって画成された空間と穴開き壁26によって画成された空間との間のガスの流れを阻止することを可能にすることが上記から理解されよう。
【0059】
本発明によれば、キャップ10の基部24は、少なくとも1つの耐熱材を含有する。その場合、耐熱材が意味するのは、基部24が、上記で説明された穿孔装置22の溶融点温度より確実に高い高温に耐えることができることである。より具体的には、本発明による耐熱材は、少なくとも250℃より高い温度に耐えることができ、その温度は、決して到達されない筈であり、その理由は、その温度に到達する前に、穿孔装置が溶融することにより、火災を鎮火してしまうからである。本発明の非限定的例によれば、耐熱材は、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、および/またはエポキシ系のプラスチック材でもよい。
【0060】
本発明の一特徴によれば、キャップ10の基部24の耐熱材は、鉱物材を含有してもよい。少なくとも部分的に基部24を構成する鉱物材は、この基部の機械的特性および高温に耐えるこの基部の能力を向上させることを可能にする。
【0061】
さらに本発明によれば、基部24は、キャップ10をガスボトル12に固定する少なくとも1つの固定手段52を備える。すなわち、
図4に視られる本発明の第1の例によれば、キャップ10に属する固定手段52は、基部24の固定壁32に形成されたねじ山54、この例では内ねじ山である。より具体的には、固定壁32の内面56は、穿孔装置22の尖頭30の方に向いている固定壁32の面であると定義される。その場合、内面56は、
図2に視られるように、ボトル12の開口16に形成された相補的ねじ山58と協働することができる少なくともねじ山54を備える。この場合、相補的ねじ山58は、ボトル12の首部59の外周に作られる。
【0062】
図5に視られる固定手段52の第2の例によれば、ガスボトル12へのキャップ10の固定は、ボトルの首部59への少なくとも固定壁32の圧力嵌めである。以降の本説明では、第2の実施形態と第1の実施形態とで異なる特徴のみ、および特に固定手段52が、詳細に説明されると見做されたい。両方に共通な要素に関しては、上記の説明を参照されたい。
【0063】
追加の厚さ60が、固定壁32の内面56から周上に延出する。より具体的には、追加の厚さ60が、キャップ10の第2の端部38における内面56から、穿孔装置22の尖頭30の周囲を廻って延在する。その結果、追加の厚さ60は、固定壁32の内径T1を減少させる機能を有し、それによって、上記固定壁32をボトル12の首部59に圧力嵌めすることを可能にし、その首部59は、固定壁32の内径T1より確実に大きい、
図2に視られる首部直径T2を有する。
【0064】
図5に示された本発明の例によれば、シールガスケット62が、固定壁によって画成された空間内で、固定壁の追加の厚さ60と上記の連結円板44との間に配置され得る。より具体的には、シールガスケット62は、穿孔装置22の尖頭30の周囲を廻って延在する。したがって、シールガスケット62は、キャップ10がボトルに固定されたとき、ボトルの空間と基部24によって画成された空間との間の気密性を確保することに寄与することが理解されよう。
【0065】
次いで、消火装置2を組み立てる方法が、
図6および
図7を用いてより詳細に説明される。
【0066】
上記に説明されたキャップ10およびガスボトル12が、
図6に視られるように互いに分離されている初期状態では、上記ボトル12のシール膜20は、ガスを収容するボトル12の空間14をシールする流体密封シールを形成する。その場合、本方法は、シール膜20を担持するボトル12の開口16にキャップ10を向かい合わせる少なくとも1つのステップを含む。より具体的には、キャップ10の第2の端部38を、ガスボトル12の開口16に向かい合わせる。それによって、穿孔装置22の尖頭30を、ボトル12のシール膜20に向かい合わせて配置する。
【0067】
その後、さらに後のステップで、キャップ10を、基部24の固定壁32に形成された固定手段52によって、ボトル12の開口16に固定する。すなわち、固定手段52が、固定壁32の内面56に形成されたねじ山54に対応する場合、キャップ10を、首部59に形成された相補的ねじ山58を用いて、ボトル12の上記首部59にねじ込む。より具体的には、キャップ10を、少なくとも、ボトル12の開口16を横断して配置されたシール膜20を穿孔装置22の尖頭30が裂開する迄、その首部59にねじ込む。
【0068】
キャップ10の特有な構造、特に、固定壁32によって画成された空間と穴開き壁26によって画成された空間との間のシールが、ガスボトル12をシールされたままにすることになる。言い換えれば、ボトル12のシール膜20が、裂開され、上記ボトル12の開口16をガスが通過するのを可能にしたにも拘わらず、キャップ10の上記の構造、およびキャップが首部59の所定位置に保持されていることが、確実に上記ボトル12を気密シールされたままにする。
【0069】
消火装置の代替構成によれば、穿孔装置がボトルの開口を完全にシールするように、キャップをボトルに固定するよう対処することができる。すなわち、穿孔装置の尖頭が、開口を画成するボトルの縁部に当たる迄、ボトルの空間内に延出する。ガスボトルの気密シールが、それによって強化される。
【0070】
消火装置2が、
図1に視られるように蓄電装置1の空洞8内に配置されたとき、少なくとも溶融点温度までの蓄電装置1のスペース6内部の温度の上昇が、穿孔装置22を溶融させる結果になる。そのようにして、固体状態から少なくとも液体状態への穿孔装置22の状態の変化が、キャップ10のシール特性を変える結果になる。
【0071】
別の言い方をすれば、
図7に視られるような穿孔装置の溶融が、特に連結円板44およびその連結円板の円形孔46において、ガスが流れるのを可能にする結果になる。具体的には、穿孔装置の溶融が、少なくとも内周縁部48と穿孔装置22との間に間隙を発生させ、これら要素間の間隙は、穿孔装置がさらに溶融するにつれて広がる。別の言い方をすれば、円形孔46の内周縁部48と穿孔装置22とはもはや互いに接触していない。
【0072】
この場合、穴開き壁26に形成された開口34が、連結円板44の円形孔46を通過したガスが、キャップ10から出て拡散することを可能にする機能を有することが理解されよう。
【0073】
図1に視られる本発明の有利な一特徴によれば、蓄電装置1の周壁4は、消火装置2を収装する空洞8に開口する少なくとも1つの切欠64を備え、その切欠64は、消火装置2の基部の穴開き壁に少なくとも部分的に対面するように形成されている。これが、その結果、ガスがボトルの空間から蓄電装置1のスペース6に向かって拡散するのを容易にする。
【0074】
図6、
図7および
図1に関して今説明してきた、キャップ10に関する組立方法ならびに構造および機能上の特徴は、
図5において説明された、固定手段がガスボトルの開口へのキャップの圧力嵌めである場合、必要な変更を加えて適用されることが理解されよう。
【0075】
今説明してきたような消火装置は、その消火装置が、簡単かつその構造に固有な手段によって、蓄電装置が正常な作動状態下にある場合、すなわち温度が穿孔装置の溶融点温度未満である場合、ガスを収容するボトルの空間を気密にシールすることを可能にし、他方同時に、温度が穿孔装置の溶融点温度を超えた場合、ガスを上記蓄電装置のスペース内に解放することを可能にする点で有利である。
【0076】
しかしながら、本発明は、専一的に説明され例示された手段および形態に限定すべきではなく、同等なあらゆる手段または形態、およびそのような手段または形態のあらゆる組合せにさらに当てはまる。
【国際調査報告】