(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】第XI因子および/または第XIa因子抗体に対する抗薬物抗体を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536045
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 US2021064117
(87)【国際公開番号】W WO2022133263
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243901
【氏名又は名称】アントス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フリードホルム, デブラ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブルームフィールド, ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】グラスプール, ロイストン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン, ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】クデル, ヤセル
(57)【要約】
本開示は、第XI因子および/または第XIa因子治療用抗体に対する抗薬物抗体(ADA)を、例えば前記第XI因子および/または第XIa因子治療用抗体を用いた処置を受けている対象において検出および測定するための方法に関する。第XI因子および/または第XIa因子に結合する抗体が研究されている。本開示は、このような抗体の開発を高め、特定の血栓塞栓性障害を有する患者を所望の安全性および有効性で処置するために、投薬レジメンを含むさらなる臨床的方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対する抗薬物抗体(ADA)を検出する方法であって、
a.試料中に存在する、抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させ、かつ/または抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させて、酸消化物を創出するために、試料を酸と共にインキュベートするステップと、
b.前記酸消化物を、前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片でコーティングされたプレート上でインキュベートするステップと、
c.前記酸消化物を中和するステップと、
d.ルテニウム標識された検出カクテルを使用して前記ADAの存在を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料が、対象由来の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、対象由来の血液、血漿、または血清からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料を調製する最初のステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸が、酢酸、クエン酸、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸が、酢酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酢酸の濃度が、約300mMである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原が、第XI因子および/または第XIa因子である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プレートが、ストレプトアビジンでコーティングされている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プレート上の前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.1μg/ml、約0.25μg/ml、約0.5μg/ml、約0.75μg/ml、および約1μg/mlからなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プレート上の前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.25μg/mlである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記中和するステップにより、前記ADAが前記コーティングされたプレート上の前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に結合することが可能になる、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記中和するステップが、pH約8.0の塩基を使用するものである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記中和するステップが、Tris、リン酸塩、HEPES、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基を使用するものである、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基が、Trisである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ルテニウム標識された検出カクテルが、抗体を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、抗ヒトIgE、抗ウサギIg、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出するステップが、前記ADAを特異的に検出するものであり、第XI因子および/または第XIa因子を検出するものではない、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記インキュベートするステップの後に、洗浄するステップをさらに含む、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.25μg/mLである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)、およびそれに対して90%の同一性を有するVH;ならびに配列番号19、39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)、およびそれに対して90%の同一性を有するVLを含む、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、配列番号31、11のアミノ酸配列を含む重鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する重鎖;ならびに配列番号41、21のアミノ酸配列を含む軽鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する軽鎖を含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項1から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対する抗薬物抗体(ADA)を検出する方法であって、
前記抗体またはその抗原結合性断片が、
i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;
ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;
iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;または
iv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3
を含み、
前記方法が、
a.試料中に存在する、抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させ、かつ/または抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させて、酸消化物を創出するために、試料を酸と共にインキュベートするステップと、
b.前記酸消化物を、前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片でコーティングされたプレート上でインキュベートするステップと、
c.前記酸消化物を中和するステップと、
d.ルテニウム標識された検出カクテルを使用して前記ADAの存在を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項31】
前記試料が、対象由来の試料である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、対象由来の血液、血漿、または血清からなる群から選択される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記試料を調製する最初のステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記酸が、酢酸、クエン酸、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項30から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記酸が、酢酸である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記酢酸の濃度が、約300mMである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗原が、第XI因子および/または第XIa因子である、請求項30から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記プレートが、ストレプトアビジンでコーティングされている、請求項30から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記プレート上の前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.1μg/ml、約0.25μg/ml、約0.5μg/ml、約0.75μg/ml、および約1μg/mlからなる群から選択される、請求項30から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記プレート上の前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.25μg/mlである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記中和するステップにより、前記ADAが前記コーティングされたプレート上の前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に結合することが可能になる、請求項30から40までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記中和するステップが、pH約8.0の塩基を使用するものである、請求項30から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記中和するステップが、Tris、リン酸塩、HEPES、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基を使用するものである、請求項30から42までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記塩基が、Trisである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ルテニウム標識された検出カクテルが、抗体を含む、請求項30から44までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、抗ヒトIgE、抗ウサギIg、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記検出するステップが、前記ADAを特異的に検出するものであり、第XI因子および/または第XIa因子を検出するものではない、請求項30から46までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記インキュベートするステップの後に、洗浄するステップをさらに含む、請求項30から47までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.25μg/mLである、請求項30から48までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9、29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)、およびそれに対して90%の同一性を有するVH;ならびに配列番号19、39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)、およびそれに対して90%の同一性を有するVLを含む、請求項30から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号9および29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項30から50までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、配列番号31、11のアミノ酸配列を含む重鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する重鎖;ならびに配列番号41、21のアミノ酸配列を含む軽鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する軽鎖を含む、請求項30から51までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項30から52までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項30から53までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、ヒトIgG1アイソタイプである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む、請求項54または55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示全体があらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる2020年12月18日出願の米国仮特許出願第63/127,536号の利益および優先権を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含有する。前記ASCIIコピーは、2021年12月14日に作成され、ATD-010WO_ST25.txtという名称であり、サイズは39,185バイトである。
【0003】
本開示の分野
本開示は、一般に、第XI因子および/または第XIa因子治療用抗体に対する抗薬物抗体(ADA)を、例えば前記第XI因子および/または第XIa因子治療用抗体を用いた処置を受けている対象において検出および測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
血栓塞栓性合併症、例えば、脳卒中、全身性塞栓症、認知機能低下および死亡率を低減するための、有効性が既存の療法で示されるものと同等かまたは改善されており、また、出血のリスクが低い、より安全な療法という大きなまだ対処されていない医学的必要性が存在する。
第XI因子(FXI)は、内因性凝固経路と外因性凝固経路の両方で機能するセリンプロテアーゼである。第XI因子は、チモーゲン形態でホモ二量体として存在する;R369-I370のペプチド結合が切断されると、第XI因子が活性化される(第XIa因子、FXIa)。FXIは、高組織因子環境での正常な止血において果たす役割は重要なものではないが、血栓症においては重要な役割を果たす。遺伝第XI因子欠乏症には、虚血性脳卒中および静脈血栓塞栓性事象の発生率の低下が付随する(Salomon et al. 2008; Salomon, et al. (2011) Thromb Haemost.; 105:269-73)。第XI因子欠乏症を有する対象における出血顕在化は、頻度が低く、多くの場合、軽度であり、傷害または外傷に起因し、また、非常に稀に極めて重要な器官に影響を及ぼす(Salomon et al 2011)。
第XI因子および/または第XIa因子に結合する抗体が研究されている。例えば、WO2016/207858には、本出願の表1に抗体1として開示されている、そのような抗第XI因子および/または第XIa因子抗体の1つが記載されている。本開示は、これらの開発を高め、特定の血栓塞栓性障害を有する患者を所望の安全性および有効性で処置するために、投薬レジメンを含むさらなる臨床的方法を提供する。さらに、本開示は、患者への投与に関して十分に安定かつ適切な、そのようなFXIおよび/またはFXIa抗体を含む製剤を提供することにより、当技術分野における以前の開発を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Salomon, et al. (2011) Thromb Haemost.; 105:269-73
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨
本開示は、抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体またはその抗原結合性断片を検出および測定するための方法に関する。
【0008】
したがって、一態様では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対する抗薬物抗体(ADA)を検出する方法であって、(a)試料中に存在する、抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させ、かつ/または抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させて、酸消化物を創出するために、試料を酸と共にインキュベートするステップと、(b)酸消化物を、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片でコーティングされたプレート上でインキュベートするステップと、(c)酸消化物を中和するステップと、(d)ルテニウム標識された検出カクテルを使用してADAの存在を検出するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0009】
一部の実施形態では、試料は、対象由来の試料である。一部の実施形態では、試料は、対象由来の血液、血漿、または血清からなる群から選択される。一部の実施形態では、方法は、試料を調製する最初のステップを含む。
【0010】
一部の実施形態では、酸は、酢酸、クエン酸、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、酸は、酢酸である。一部の実施形態では、酢酸の濃度は約300mMである。
【0011】
一部の実施形態では、抗原は、第XI因子および/または第XIa因子である。一部の実施形態では、プレートは、ストレプトアビジンでコーティングされている。一部の実施形態では、プレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.1μg/ml、約0.25μg/ml、約0.5μg/ml、約0.75μg/ml、および約1μg/mlからなる群から選択される。一部の実施形態では、プレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度は約0.25μg/mlである。
【0012】
一部の実施形態では、中和するステップにより、ADAが、コーティングされたプレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に結合することが可能になる。一部の実施形態では、中和するステップは、pH約8.0の塩基を使用するものである。一部の実施形態では、中和するステップは、Tris、リン酸塩、HEPES、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基を使用するものである。一部の実施形態では、塩基はTrisである。
【0013】
一部の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、抗体を含む。一部の実施形態では、抗体は、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、抗ヒトIgE、抗ウサギIg、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、検出するステップは、ADAを特異的に検出するものであり、第XI因子および/または第XIa因子を検出するものではない。
【0014】
一部の実施形態では、方法は、インキュベートするステップの後に、洗浄するステップをさらに含む。
【0015】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度は約0.25μg/mLである。
【0016】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9または29における相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19または39における相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0017】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片は、i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;またはiv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0018】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9、29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)、およびそれに対して90%の同一性を有するVH;ならびに配列番号19、39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)、およびそれに対して90%の同一性を有するVLを含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9および29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0019】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、配列番号31、11のアミノ酸配列を含む重鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する重鎖;ならびに配列番号41、21のアミノ酸配列を含む軽鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0020】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体はヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである。一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む。
【0021】
別の態様では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対する抗薬物抗体(ADA)を検出する方法であって、抗体またはその抗原結合性断片が、i.配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3;ii.配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3;iii.配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3;またはiv.配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含み、方法が、(a)試料中に存在する、抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させ、かつ/または抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させて、酸消化物を創出するために、試料を酸と共にインキュベートするステップと、(b)酸消化物を、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片でコーティングされたプレート上でインキュベートするステップと、(c)酸消化物を中和するステップと、(d)ルテニウム標識された検出カクテルを使用してADAの存在を検出するステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0022】
一部の実施形態では、試料は、対象由来の試料である。一部の実施形態では、試料は、対象由来の血液、血漿、または血清からなる群から選択される。一部の実施形態では、方法は、試料を調製する最初のステップを含む。
【0023】
一部の実施形態では、酸は、酢酸、クエン酸、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、酸は、酢酸である。一部の実施形態では、酢酸の濃度は約300mMである。
【0024】
一部の実施形態では、抗原は、第XI因子および/または第XIa因子である。一部の実施形態では、プレートは、ストレプトアビジンでコーティングされている。一部の実施形態では、プレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度が、約0.1μg/ml、約0.25μg/ml、約0.5μg/ml、約0.75μg/ml、および約1μg/mlからなる群から選択される。一部の実施形態では、プレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度は約0.25μg/mlである。
【0025】
一部の実施形態では、中和するステップにより、ADAが、コーティングされたプレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に結合することが可能になる。一部の実施形態では、中和するステップは、pH約8.0の塩基を使用するものである。一部の実施形態では、中和するステップは、Tris、リン酸塩、HEPES、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基を使用するものである。一部の実施形態では、塩基はTrisである。
【0026】
一部の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、抗体を含む。一部の実施形態では、抗体は、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、抗ヒトIgE、抗ウサギIg、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、検出するステップは、ADAを特異的に検出するものであり、第XI因子および/または第XIa因子を検出するものではない。
【0027】
一部の実施形態では、方法は、インキュベートするステップの後に、洗浄するステップをさらに含む。
【0028】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度は約0.25μg/mLである。
【0029】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9、29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)、およびそれに対して90%の同一性を有するVH;ならびに配列番号19、39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)、およびそれに対して90%の同一性を有するVLを含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9および29からなる群から選択される重鎖可変領域(VH);ならびに配列番号19および39からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0030】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、配列番号31、11のアミノ酸配列を含む重鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する重鎖;ならびに配列番号41、21のアミノ酸配列を含む軽鎖、およびそれに対して90%の同一性を有する軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0031】
一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである。一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、Fcドメイン内にD265A置換およびP329A置換を含む。
【0032】
本開示の他の実施形態および詳細を本明細書において以下に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、カニクイザル試料中の抗薬物抗体(ADA)を検出するための最初のブリッジングアッセイの概略図である。
【0034】
【
図2】
図2は、カニクイザル試料中のADAを検出するための、第XI因子/第XIa因子枯渇ステップを伴う改変されたブリッジングアッセイの概略図である。
【0035】
【
図3】
図3は、カニクイザル試料中のADAを検出するための、ルテニウム標識された抗サルIgを伴う改変されたブリッジングアッセイの概略図である。
【0036】
【
図4】
図4は、カニクイザル試料についてのADAアッセイの概略図である。
【0037】
【
図5】
図5は、ヒト試料についてのADAアッセイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語および句を以下に定義する。
【0039】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、本明細書で使用される場合、「1つまたは複数の(one or more)」を意味し、文脈上適切でない場合を除き、複数を包含する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「FXIタンパク質」、「FXI抗原」、および「FXI」という用語は、互換的に使用され、異なる種における第XI因子タンパク質を指す。第XI因子は、哺乳動物の血漿凝固第XI因子であり、ヒト血漿中に25~30nMの濃度でチモーゲンとして存在する糖タンパク質であり、タンパク質限定加水分解によって活性なセリンプロテアーゼに変換されると、血液凝固の内因性経路に関与する。
【0041】
「FXIaタンパク質」、「FXIa抗原」、および「FXIa」という用語は、互換的に使用され、異なる種における、活性化されたFXIタンパク質を指す。チモーゲン第XI因子は、その活性型である凝固第XIa因子(FXIa)に、血液凝固の接触相を介してか、または血小板表面でのトロンビン媒介性活性化を通じてのいずれかで変換される。この第XI因子の活性化の間、2本の鎖のそれぞれの内部のペプチド結合が切断され、その結果、ジスルフィド結合によって一緒になって保持された2本の重鎖および2本の軽鎖で構成されるセリンプロテアーゼである、活性化された第XIa因子が生じる。このセリンプロテアーゼFXIaが凝固第IX因子をIXaに変換し、それがその後、凝固第X因子を活性化する(Xa)。次いで、Xaは凝固因子II/トロンビン活性化を媒介し得る。例えば、ヒトFXIは、表1(配列番号1)に記載されている配列を有し、以前の報告および文献に記載されている(Mandle RJ Jr, et al. (1979)Blood; 54 (4): 850; NCBI Reference Sequence: AAA51985)。
【0042】
本開示に関しては、「FXI」および「FXIa」(など)の用語は、それぞれ、上記の報告に記載されているネイティブな一次構造(アミノ酸配列)と実質的に同じアミノ酸配列を有する、天然FXIおよびFXIaタンパク質の突然変異体およびバリアントを包含する。
【0043】
「触媒ドメイン」、「セリンプロテアーゼ触媒ドメイン」という用語、および同様の用語は、本明細書で使用される場合、循環中に存在する成熟タンパク質のN末端のGlu1から数えてアミノ酸Ile370~Val607を意味する。これは、FXIのC末端の残基388~625と記載することもできる。本明細書で使用される場合、「活性部位」という用語は、アミノ酸His413、Asp462およびSer557で構成される触媒三連構造を意味する(Bane and Gailani (2014) Drug Disc. 19 (9))。
【0044】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体全体およびその任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合性部分」)または単鎖を意味する。抗体全体は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とで構成される糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLで構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域と、その間に散在する、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRで構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、種々の免疫系の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1の成分(Clq)を含めた、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。一部の特定の態様では、抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体またはキメラ抗体であり得る。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであってよい。
【0045】
抗原結合性部位のCDRは、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)およびKabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991)、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987)、およびMacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996)に記載されている方法によって決定することができる。これらの定義の下で決定されるCDRは、一般には、互いに比較した場合にアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。ある特定の実施形態では、「CDR」という用語は、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996)およびMartin A., Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains, in Antibody Engineering, Kontermann and Dubel, eds., Chapter 31, pp. 422-439, Springer-Verlag, Berlin (2001)によって定義されるCDRである。ある特定の実施形態では、「CDR」という用語は、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)およびKabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991) によって定義されるCDRである。ある特定の実施形態では、抗体の重鎖CDRと軽鎖CDRは異なる慣例を使用して定義される。例えば、ある特定の実施形態では、重鎖CDRはMacCallum(上記)に従って定義され、軽鎖CDRはKabat(上記)に従って定義される。CDRH1、CDRH2およびCDRH3は重鎖CDRを表し、CDRL1、CDRL2およびCDRL3は軽鎖CDRを表す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「薬物送達製剤」または「静脈内薬物送達製剤」という用語は、活性薬剤と不活性または活性な担体の組合せを含めてin vivoまたはex vivoにおける診断または治療への使用に特に適した組成物にした、医薬製剤を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の方法および組成物によって処置される生物体を指す。そのような生物体は、これだけに限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ科の動物、類人猿、ウマ科の動物、ウシ亜科の動物、ブタ、霊長類、イヌ科の動物、ネコ科の動物など)を含むことが好ましく、ヒトを含むことがより好ましい。ある特定の実施形態では、対象はカニクイザルである。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0048】
「血栓塞栓性障害」または同様の用語は、本明細書で使用される場合、内因性および/または共通の凝固経路が異所性に活性化されているかまたは天然には非活性化されない(例えば、治療手段なしで)任意の数の状態または疾患を指す。これらの状態には、これだけに限定されないが、血栓塞栓性脳卒中および他の型の虚血性起源の脳卒中、心房細動、心房細動における脳卒中の防止(SPAF)、深部静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、ならびに肺塞栓症が含まれる。これらには、カテーテルにより血栓が形成されるカテーテル関連血栓症(例えば、腫瘍患者におけるヒックマンカテーテル)、ならびに、チューブおよび膜型人工肺により血餅が生成する体外式膜型人工肺(ECMO)の防止および処置も含まれ得る。
【0049】
「血栓塞栓性障害」または同様の用語は、本明細書で使用される場合、任意の数の、本開示の抗FXIおよび/またはFXIa抗体またはその抗原結合性断片を使用して防止または処置することができる以下のものも指し得る:
-発作性、持続的または永続的な心房細動または心房粗動などの心不整脈の疑いがあるかまたは心不整脈が確認されている対象における血栓塞栓症;
-心房細動による脳卒中の防止(SPAF)、この亜集団は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けているAF患者である;
-出血のリスクが高い患者における急性静脈血栓塞栓性事象(VTE)処置および長期の続発性VTEの防止;
-対象が小児対象である、静脈血栓塞栓症(小児VTE);
-一過性脳虚血発作(TIA)後の二次防止中の大脳および心血管事象または活動不能にならない脳卒中、および洞調律を伴う心不全における血栓塞栓性事象の防止;
-出血性脳卒中;
-左心房における血餅形成および心不整脈に対する電気的除細動を受けている対象における血栓塞栓症;
-心不整脈に対するアブレーション手順の前、その間、およびその後の血栓症;
-静脈血栓症、これには、排他的ではないが、下部メンバーまたは上部メンバーにおける深部静脈または浅静脈血栓症、腹部静脈および胸部静脈における血栓症、洞血栓症ならびに頸静脈の血栓症の処置および二次防止が含まれる;
-カテーテル、ペースメーカーワイヤー、合成動脈グラフト;機械的もしくは生物学的心臓弁または左心室補助デバイスのような静脈または動脈内の任意の人工表面における血栓症;
-静脈血栓症を有する患者または静脈血栓症を有さない患者における肺塞栓症;
-慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH);
-破裂した動脈硬化巣における動脈血栓症、動脈内人工器官またはカテーテルにおける血栓症および見かけ上は正常な動脈における血栓症、これには、これだけに限定されないが、急性冠状動脈症候群、ST上昇心筋梗塞、非ST上昇心筋梗塞、不安定狭心症、ステント血栓症、動脈系内の任意の人工表面の血栓症および肺高血圧症を有する対象または肺高血圧症を有さない患者における肺動脈の血栓症が含まれる;
-経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けている患者における血栓症および血栓塞栓症;
-心原性脳卒中および潜因性脳卒中;
-非中枢神経系性塞栓症(非CNS全身性塞栓症);
-浸潤および非浸潤がん悪性腫瘍を有する患者における血栓症;
-留置カテーテル上の血栓症;
-重症の患者における血栓症および血栓塞栓症;
-これだけに限定されないが、心筋梗塞後の心臓血栓症、心室瘤、心筋線維症、心拡大および心不全、心筋炎ならびに人工心臓表面などの状態に関連する心臓血栓症を含めた心臓血栓症および血栓塞栓症;
-心房細動を伴うまたは伴わない心臓弁膜症を有する患者における血栓塞栓症;
-機械的または生物学的人工弁上の血栓塞栓症;
-単純なまたは複雑な心奇形の心臓修復後に、ネイティブなまたは人工心臓パッチ、動脈または静脈導管を有するようになった患者における血栓塞栓症;
-膝関節置換術、人工股関節置換術、および整形外科手術、胸部または腹部外科手術後の静脈血栓症および血栓塞栓症;
-頭蓋内および脊髄介入を含む脳神経外科手術後の動脈または静脈血栓症;
-排他的ではないが、第V因子ライデン、プロトロンビン突然変異、アンチトロンビンIII、プロテインCおよびプロテインS欠乏症、第XIII因子突然変異、家族性異常フィブリノゲン血症、先天性プラスミノーゲン欠乏症、第XI因子のレベルの上昇、鎌状赤血球症、抗リン脂質症候群、自己免疫疾患、慢性腸疾患、ネフローゼ症候群、溶血性尿毒症、骨髄増殖性疾患、播種性血管内凝固、発作性夜間ヘモグロビン尿症およびヘパリン起因性血小板減少症を含めた、先天性または後天性血栓形成傾向;
-慢性腎疾患における血栓症および血栓塞栓症;ならびに
-血液透析を受けている患者および体外式膜型人工肺を受けている患者における血栓症および血栓塞栓症。
【0050】
本明細書で使用される場合、「トラフ」または「トラフレベル」という用語は、薬物の次の用量が投与される前に到達する薬物の最低濃度を指す。
【0051】
「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」という用語、および他の文法上の等価物は、本開示で使用される場合、疾患、状態もしくは症状を緩和すること、軽減すること、好転させること、もしくは防止すること、追加的な症状を防止すること、症状の基礎をなす代謝的原因を好転させることもしくは防止すること、疾患もしくは状態を阻害すること、例えば、疾患もしくは状態の発生を抑止すること、疾患もしくは状態を和らげること、疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと、疾患もしくは状態によって引き起こされる状態を和らげること、または疾患もしくは状態の症状を止めることを含み、予防法を含むことが意図されている。この用語は、治療的利益および/または予防的利益を実現することをさらに含む。治療的利益は、処置される基礎をなす障害の根絶または好転を意味する。また、治療的利益は、基礎をなす障害に付随する生理的症状の1つもしくは複数の根絶または好転で実現され、したがって、患者が基礎をなす障害に依然として罹患している可能性があるにもかかわらず、患者において改善が観察される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「バイアル」という用語は、薬剤保持する容器を指す。一部の実施形態では、バイアルは、バイアル、バッグ、ペン、またはシリンジであり得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、本明細書に記載の抗第XI/XIa因子抗体、例えば表1に開示されている抗体1、ならびに賦形剤、例えば、ヒスチジン緩衝剤、糖、およびポリソルベートを指す。
【0054】
「約」という用語は、製剤の調製においておよび疾患または障害の処置において作用物質の有効性を変化させない、作用物質の濃度または量の任意の最小の変更を指す。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、指定の数値またはデータ点の±5%、±10%、または±15%を包含し得る。
【0055】
範囲は、本開示では「約」1つの特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表されている場合、別の態様は、1つの特定の値から、かつ/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行する「約」の使用によって概数として表されている場合、特定の値が別の態様を形成することが理解される。さらに、範囲のそれぞれについての終点は他の終点との関連で、および他の終点とは独立してのどちらの意味もあることが理解される。多数の値が本開示において開示されること、および各値が、その値自体に加えて、「約」その特定の値としても開示されることも理解される。本出願全体を通して、データが多数の異なるフォーマットで提示されること、およびこのデータが終点および開始点ならびにデータ点の任意の組合せでの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示される場合、10から15の間だけではなく、10および15よりも大きい、10および15よりも大きいかまたはそれと等しい、10および15よりも小さい、10および15よりも小さいかまたはそれと等しい、ならびに10および15と等しいことも開示されているとみなされることが理解される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0056】
本記載全体を通して、組成物が、特定の成分を有する、含む、もしくはそれらで構成されると記載されている場合、または、プロセスおよび方法が、特定のステップを有する、含む、またはそれらで構成されると記載されている場合、さらに、記載されている成分から本質的になる、またはそれらからなる本発明の組成物が存在すること、および記載されているプロセスステップから本質的になる、またはそれらからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが意図されている。
【0057】
一般事項として、パーセンテージが指定されている組成は、別段の指定がない限り、重量でのパーセンテージである。さらに、変数に定義が付随しない場合、その変数に関する前の定義に支配される。
抗第XI因子および/または活性化第XI因子(第XIa因子)抗体
【0058】
一部の実施形態では、本開示は、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIおよび/またはFXIaに結合する抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法を提供する。ある特定の実施形態では、抗第FXI因子および/または抗第FXIa因子抗体は、配列番号9または29のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含み得る。ある特定の実施形態では、抗体は、配列番号29のアミノ酸配列を有するVHを含む。本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法であって、抗体が、FXIおよび/またはFXIaタンパク質に特異的に結合するものであり、下記の表1に列挙されているVH CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む、方法も提供する。特に、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法であって、抗体が、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合するものであり、下記の表1に列挙されているVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多くのVH CDRを含む(あるいは、それからなる)、方法を提供する(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月24日に出願され、WO2016/207858として公開されたPCT国際特許出願第PCT/IB2016/053790号を参照されたい)。
【0059】
一部の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法であって、抗体が、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合するものであり、配列番号19または39のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を有するVLを含む。本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法であって、抗体が、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合するものであり、下記の表1に列挙されているVL CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む、方法も提供する。特に、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法であって、抗体が、FXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIおよび/またはFXIa)に特異的に結合するものであり、下記の表1に列挙されているVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つまたはそれよりも多くのVL CDRを含む(あるいは、それからなる)、方法を提供する。
【0060】
一部の実施形態では、他の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が本明細書に記載のADAを検出する方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)に使用され、それらは、突然変異しているが、それでも表1に記載の配列に示されているCDR領域に対して少なくとも60、70、80、85、90または95パーセントのCDR領域の同一性を有するアミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に記載の配列に示されているCDR領域と比較して、CDR領域内のアミノ酸の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下が突然変異している、突然変異アミノ酸配列を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【0061】
一部の実施形態では、本明細書に記載のADAを検出する方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)において使用される抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、アミノ酸が突然変異しているが、それでも表1に記載の配列に対して少なくとも60、65、70、75、80、85、90、または95パーセントの同一性を有する、アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、表1に記載の配列に示されている可変領域と比較して、可変領域内のアミノ酸の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下が突然変異しているが、一方で、実質的に同じ抗原結合活性を保持する、突然変異アミノ酸配列を含む。
【0062】
これらの抗体のそれぞれがFXIおよび/またはFXIaに結合することができるので、本開示の他のFXIおよび/またはFXIa結合性抗体を創出するためにVH、VL、全長軽鎖、および全長重鎖配列(アミノ酸配列およびアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を「混合し、調和させる」ことができる。そのような「混合し、調和させた」FXIおよび/またはFXIa結合性抗体を、当技術分野で公知の結合アッセイ(例えば、ELISA、および実施例の節に記載されている他のアッセイ)を使用して試験することができる。これらの鎖を混合し、調和させる場合、特定のVH/VL対合からのVH配列を構造的に類似したVH配列で置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合からの全長重鎖配列を構造的に類似した全長重鎖配列で置き換えるべきである。同様に、特定のVH/VL対合からのVL配列を構造的に類似したVL配列で置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合からの全長軽鎖配列を構造的に類似した全長軽鎖配列で置き換えるべきである。
【0063】
したがって、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のために、本開示は、配列番号9および29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、ならびに配列番号19および39からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを有する単離された抗体またはその抗原結合性領域であって、抗体がFXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0064】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、それぞれ配列番号9および29;または19および39から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0065】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のためのある特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提供される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0066】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のためのある特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提供される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0067】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のためのある特定の実施形態では、本開示は、(i)配列番号11もしくは31からなる群から選択される、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたアミノ酸配列を含む全長重鎖、および、配列番号21もしくは41からなる群から選択される、哺乳動物細胞における発現のために最適化されたアミノ酸配列を含む全長軽鎖を有する単離された抗体;または(ii)その抗原結合性部分を含む機能的なタンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、それぞれ配列番号11および31;または21および41から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を有する単離された抗体またはその抗原結合性領域を提供する。
【0068】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のためのある特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提供される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0069】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のためのある特定の実施形態では、ヒトFXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する、本明細書に提供される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0070】
「相補性決定領域」、および「CDR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原特異性および結合親和性を付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域内に3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、各軽鎖可変領域内に3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。
【0071】
所与のCDRの厳密なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」番号付けスキーム)、Lefranc et al., (2003)Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77(「IMGT」番号付けスキーム)によって記載されているもの、または「組合せ」系を含めた多数の周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。
【0072】
例えば、Kabatの下では、抗体2のCDRアミノ酸残基は、重鎖可変ドメイン(VH)内のものは31~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~111(HCDR3)と番号付けされ、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3)と番号付けされる。Chothiaの下では、VH内のCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~57(HCDR2)、および99~111(HCDR3)と番号付けされ、VL内のアミノ酸残基は、25~33(LCDR1)、51~53(LCDR2)、および92~99(LCDR3)と番号付けされる。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVHではアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~111(HCDR3)からなり、ヒトVLではアミノ酸残基22~35(LCDR1)、51~57(LCDR2)、および90~100(LCDR3)からなる。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、「組合せ」CDRは、ヒトVHではアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~66(HCDR2)、および99~108(HCDR3)からなり、ヒトVLではアミノ酸残基24~38(LCDR1)、54~60(LCDR2)、および93~101(LCDR3)からなる。別の例として、IMGTの下では、重鎖可変ドメイン(VH)内のCDRアミノ酸残基は、26~33(HCDR1)、51~58(HCDR2)、および97~108(HCDR3)と番号付けされ、軽鎖可変ドメイン(VL)内のCDRアミノ酸残基は、27~36(LCDR1)、54~56(LCDR2)、および93~101(LCDR3)と番号付けされる。表1に、抗FXI/FXIa抗体、例えば抗体2および抗体1についての例示的なKabat、Chothia、組合せ、およびIMGTによるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を提示する。別の態様では、本開示は、表1に記載の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、またはこれらの組合せを含むFXIa結合性抗体を提供する。抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号3および23で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号4および24で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号5および25で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号13および33で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号14および34で示される。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号15および35で示される。これらのCDR領域はKabat系を使用して線引きされたものである。
【0073】
あるいは、Chothia系(Al-Lazikani et al., (1997)JMB 273, 927-948)を使用して定義した場合、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号6および26で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号7および27で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号8および28で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号16および36で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号17および37で示される。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号18および38で示される。
【0074】
あるいは、組合せ系を使用して定義した場合、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号46で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号4で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号5で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号33で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号14で示される。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号15で示される。
【0075】
あるいは、IMGT番号付けスキームを使用して定義した場合、抗体のVH CDR1のアミノ酸配列は配列番号43で示される。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は配列番号44で示される。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は配列番号45で示される。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は配列番号47で示される。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は配列番号37で示される。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は配列番号15で示される。
【0076】
これらの抗体のそれぞれがFXIおよび/またはFXIaに結合することができること、ならびに抗原結合特異性が主にCDR1、2および3領域によってもたらされることを考慮すると、VH CDR1、2および3配列およびVL CDR1、2および3配列を「混合し、調和させる」ことができる(すなわち、本開示の他のFXIおよび/またはFXIa結合性分子を創出するために、異なる抗体からのCDRを混合し、調和させることができるが、各抗体がVH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3を含有することが好ましい)。そのような「混合し、調和させた」FXIおよび/またはFXIa結合性抗体を、当技術分野で公知の結合アッセイおよび実施例に記載されているもの(例えば、ELISA、SET、BIACORE(商標)アッセイ)を使用して試験することができる。VH CDR配列を混合し、調和させる場合、特定のVH配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似したCDR配列(単数または複数)で置き換えるべきである。同様に、VL CDR配列を混合し、調和させる場合、特定のVL配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似したCDR配列(単数または複数)で置き換えるべきである。1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を本開示のモノクローナル抗体に関して本明細書に示されているCDR配列からの構造的に類似した配列で置換することにより、新規のVHおよびVL配列を創出することができることが当業者には容易に明らかになろう。上記に加えて、一実施形態では、本明細書に記載の抗体の抗原結合性断片は、VH CDR1、2、および3、またはVL CDR1、2、および3を含み得、ここで、断片は、FXIおよび/またはFXIaに単一の可変ドメインとして結合する。抗体1および抗体2のCDR配列は同一であることに留意する。
【0077】
本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、抗体またはその抗原結合性断片は、表1に記載のFabの重鎖および軽鎖配列を有し得る。より詳細には、抗体またはその抗原結合性断片は、抗体2および抗体1の重鎖および軽鎖配列を有し得る。
【0078】
本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、Kabatによって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。例えば、本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、Chothiaによって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。他の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、組合せ系によって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、IMGTによって定義され、表1に記載されている重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、および軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0079】
本明細書に記載の方法における使用のための(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための)ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号3の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号13の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0080】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、配列番号23の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号25の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号34の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号35の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0081】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、配列番号6の重鎖可変領域CDR1;配列番号7の重鎖可変領域CDR2;配列番号8の重鎖可変領域CDR3;配列番号16の軽鎖可変領域CDR1;配列番号17の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号18の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0082】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、配列番号26の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号28の重鎖可変領域CDR3;配列番号36の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号38の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体を包含する。
【0083】
ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、配列番号43の重鎖可変領域CDR1;配列番号44の重鎖可変領域CDR2;配列番号45の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号37の軽鎖可変領域CDR2および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体が本発明で提供される。
【0084】
ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、配列番号46の重鎖可変領域CDR1;配列番号4の重鎖可変領域CDR2;配列番号5の重鎖可変領域CDR3;配列番号33の軽鎖可変領域CDR1;配列番号14の軽鎖可変領域CDR2および配列番号15の軽鎖可変領域CDR3を含む、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体が本発明で提供される。
【0085】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、表1に記載されている、FXIおよび/またはFXIaに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片を包含する。本明細書に記載の方法における使用のための特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、FXIおよび/またはFXIaに結合する抗体または抗原結合性断片は、抗体2および抗体1である。
【0086】
本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、その抗体の可変領域または全長鎖がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られたものである場合、特定の生殖細胞系列配列「の産物である」または「に由来する」重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。そのような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫化すること、またはファージにディスプレイさせたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを目的の抗原でスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列「の産物である」または「に由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列と配列が最も近い(すなわち、%同一性が最大である)ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することにより、そのようなものであると同定することができる。
【0087】
特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列「の産物である」または「に由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意図的な導入に起因して、生殖細胞系列配列と比較してアミノ酸の差異を含有し得る。しかし、VHまたはVLフレームワーク領域において、選択されたヒト抗体は、一般には、アミノ酸配列がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、他の種の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合に、ヒト抗体がヒトのものであることがそれによって識別されるアミノ酸残基を含有する。ある特定の場合では、ヒト抗体は、アミノ酸配列が生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、または少なくとも95%、またはさらには少なくとも96%、97%、98%、または99%同一であり得る。
【0088】
一般には、組換えヒト抗体は、VHまたはVLフレームワーク領域内で、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10個以下のアミノ酸の差異を示す。ある特定の場合では、ヒト抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と5個以下、またはさらには4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下のアミノ酸の差異を示し得る。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子の例としては、これだけに限定されないが、下記の可変ドメイン生殖細胞系列断片、ならびにDP47およびDPK9が挙げられる。
相同な抗体
【0089】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のためのさらに他の実施形態では、本開示は、表1に記載の配列(例えば、配列番号29、31、39、または41)と相同であるアミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合性断片であって、FXIおよび/またはFXIaタンパク質(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に結合し、抗体2および抗体1などの表1に記載の抗体の所望の機能的特性を保持する、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、そのような相同な抗体は、表1に記載のCDRアミノ酸配列(例えば、Kabat CDR、Chothia CDR、IMGT CDR、または組合せCDR)を保持する。
【0090】
例えば、一部の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片であって、重鎖可変ドメインが、配列番号9および29からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインが、配列番号19および39からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体が、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、ここで、重鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、ここで、重鎖可変ドメインは、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号39のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列は、Kabatによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号3、4、5、13、14、および15を含む。本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列は、Chothiaによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号6、7、8、16、17、および18を含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列は、組合せ系によって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号46、4、5、33、14、および15を含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列は、IMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号43、44、45、47、37、および15を含む。
【0091】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための他の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体のVHおよび/またはVLアミノ酸配列は、表1に記載の配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下のアミノ酸位におけるアミノ酸置換以外は同一であり得る。表1に記載されているもののVH領域およびVL領域に対して高い(例えば、80%またはそれよりも大きい)同一性を有するVH領域およびVL領域を有する抗体を、それぞれ配列番号10または30および配列番号20および40をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介性突然変異誘発)を行い、その後、コードされる変更された抗体を機能の保持について本明細書に記載の機能アッセイを使用して試験することによって得ることができる。
【0092】
本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための他の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体の全長重鎖および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号11および/もしくは21、または31および/もしくは41)と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。配列番号11または31のいずれかの全長重鎖、および配列番号21または41のいずれかの全長軽鎖に対して高い(例えば、80%またはそれよりも大きい)同一性を有する全長重鎖および全長軽鎖を有する抗体を、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的なまたはPCR媒介性突然変異誘発)を行い、その後、コードされる変更された抗体を機能の保持について本明細書に記載の機能アッセイを使用して試験することによって得ることができる。
【0093】
一態様では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、重鎖および軽鎖を含む単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片であって、重鎖が、配列番号11および31からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号21および41からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体が、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片が本発明で提供される。一実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、単離された抗体またはその機能的抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖は、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、抗体は、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する。本開示のある特定の態様では、重鎖および軽鎖配列は、Kabatによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号3、4、5、13、14、および15をさらに含む。本開示のある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列またはその機能的抗原結合性断片は、Chothiaによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号6、7、8、16、17、および18を含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列またはその機能的抗原結合性断片は、組合せ系によって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号46、4、5、33、14、および15を含む。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための抗体の重鎖および軽鎖配列またはその機能的抗原結合性断片は、IMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列、例えば、それぞれ配列番号43、44、45、47、37、および15を含む。
【0094】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、全長重鎖および/または全長軽鎖ヌクレオチド配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号12および/もしくは22、または32および/もしくは42)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0095】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域ヌクレオチド配列は、表1に記載の配列(例えば、配列番号10および/もしくは20、または30および/もしくは40)と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列を最適にアラインメントするために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性は、同一の位置の数/位置の総数×100と等しい)。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、下の非限定的な例に記載されている通り、数学的アルゴリズムを使用して実現することができる。
【0097】
本明細書に記載の単離された抗FXIおよび/またはFXIa抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナル抗体、ヒトもしくはヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、Fv断片、F(ab’)2断片、もしくはscFv断片、および/またはIgGアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1などのIgG1)であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXIおよび/または抗FXIa抗体は、組換えヒト抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXIおよび/または抗FXIa抗体は、ヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗FXIおよび/または抗FXIa抗体は、エフェクター機能(例えば、ADCCおよび/またはCDC)の潜在性が低減するように工学的に操作されたFcドメイン、例えば、D265Aおよび/またはP329A置換を含むヒトFcドメインを含むヒトIgG1/ラムダ(λ)抗体である。
【0098】
それに加えて、またはその代わりに、例えば、関連する配列を同定するために、本開示のタンパク質配列をさらに「クエリ配列」として使用して、公共のデータベースの検索を実施することができる。例えば、そのような検索は、Altschul, et al., 1990 J. Mol. Biol. 215: 403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。
保存的改変を有する抗体
【0099】
ある特定の他の実施形態では、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための本開示の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的改変に基づいた特定のアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0100】
したがって、本明細書に記載の方法における使用のために、一部の実施形態では、本開示は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号3および23、ならびにその保存的改変からなる群から選択され、重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号4および24、ならびにその保存的改変からなる群から選択され、重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、配列番号5および25、ならびにその保存的改変からなる群から選択され、軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、配列番号13および33、ならびにその保存的改変からなる群から選択され、軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、配列番号14および34、ならびにその保存的改変からなる群から選択され、軽鎖可変領域のCDR3アミノ酸配列が、配列番号15および35、ならびにその保存的改変からなる群から選択され、抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0101】
一態様では、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群から選択され、重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群から選択され、重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群から選択され、軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群から選択され、軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群から選択され、軽鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が、表1に記載されているもの、およびその保存的改変からなる群から選択され、抗体またはその抗原結合性断片が、FXIaに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片が本発明で提供される。
【0102】
本明細書に記載の方法における使用のための他の実施形態では、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、ここで、これらの配列の1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体またはその保存的改変に基づいた特定のアミノ酸配列を有し、抗体は、本開示のFXIa結合性抗体の所望の機能的特性を保持する。したがって、本開示は、哺乳動物細胞における発現のために最適化された、全長重鎖および全長軽鎖からなる単離された抗体であり、全長重鎖が、配列番号11または31、およびその保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し、全長軽鎖が、配列番号21または41、およびその保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し、抗体が、FXIおよび/またはFXIa(例えば、ヒト、ウサギ、ヒヒ、およびカニクイザルFXIa)に特異的に結合する、単離された抗体を提供する。
同じエピトープに結合する抗体
【0103】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための、表1に記載のFXIおよび/またはFXIa結合性抗体と、同じエピトープについて競合する抗体を提供する。したがって、追加的な抗体を、FXIおよび/またはFXIa結合アッセイにおいて本開示の他の抗体と競合する(例えば、同じまたは重複するエピトープに結合することにより、結合を、統計的に優位に、競合的に阻害する)それらの能力に基づいて同定することができる。試験抗体の、本開示の抗体のFXIおよび/またはFXIaタンパク質への結合を阻害する能力により、試験抗体が、FXIおよび/またはFXIaへの結合についてその抗体と競合し得ることが実証される;そのような抗体は、非限定的な理論に従って、それが競合する抗体と同じまたは関連する(例えば、構造的に類似したまたは空間的に近位の)FXIおよび/またはFXIaタンパク質上のエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、本開示の抗体と同じFXIおよび/またはFXIa上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、本明細書に記載の通り調製することおよび単離することができる。
【0104】
本明細書で使用される場合、抗体が結合について「競合する」とは、その競合抗体が等モル濃度で存在する場合に、競合抗体が本開示の抗体または抗原結合性断片(例えば抗体1または抗体2)と同じFXIおよび/またはFXIaエピトープに結合し、本開示の抗体または抗原結合性断片のFXIおよび/またはFXIaへの結合を50%よりも大きく(例えば、80%、85%、90%、95%、98%または99%)阻害する場合である。これは、例えば、競合結合アッセイにおいて当業者に周知の方法のいずれかによって決定することができる。
【0105】
本明細書で使用される場合、抗体またはその抗原結合性断片は、前記競合抗体またはその抗原結合性断片が本開示の抗体または抗原結合性断片と同じFXIおよび/もしくはFXIaエピトープ、または重複するFXIおよび/もしくはFXIaエピトープに結合しない限り、本開示のFXIおよび/またはFXIa抗体または抗原結合性断片(例えば抗体1または抗体2)と「競合」しない。本明細書で使用される場合、競合抗体またはその抗原結合性断片は、(i)本開示の抗体もしくは抗原結合性断片のその標的への結合を立体的に遮断するもの(例えば、前記競合抗体が近くの重複しないFXIおよび/もしくはFXIaエピトープに結合し、本開示の抗体もしくは抗原結合性断片のその標的への結合を物理的に妨げる場合);ならびに/または(ii)異なる、重複しないFXIおよび/もしくはFXIaエピトープに結合し、FXIおよび/またはFXIaタンパク質のコンフォメーションの変化を誘導し、その結果、前記タンパク質に本開示のFXIおよび/もしくはFXIa抗体もしくは抗原結合性断片がもはや前記コンフォメーションの変化がない場合に起こるように結合できなくするもの、は包含しない。
工学的に操作されたおよび改変された抗体
【0106】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための、本開示の抗体はさらに、本明細書に示されているVHおよび/またはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を、改変された抗体を工学的に操作するための出発材料として使用して調製することができ、ここで、改変された抗体は、出発抗体から変更された特性を有し得る。可変領域の一方または両方(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することにより、抗体を工学的に操作することができる。それに加えて、またはその代わりに、例えば、抗体のエフェクター機能(単数または複数)を変更するために、定常領域(単数または複数)内の残基を改変することにより、抗体を工学的に操作することができる。
【0107】
行うことができる可変領域の工学的操作の1つの型は、CDRグラフティングである。抗体は、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて標的抗原と優勢に相互作用する。このような理由で、CDR内のアミノ酸配列は個々の抗体間での多様性がCDRの外側の配列よりも大きい。CDR配列は大多数の抗体-抗原相互作用に関与するので、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが、その特定の天然に存在する抗体のCDR配列を異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列にグラフティングしたものを含む発現ベクターを構築することによって可能である(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332: 323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321: 522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad., U.S.A. 86: 10029-10033; Winterに対する米国特許第5,225,539号、およびQueen et al.に対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照されたい)。
【0108】
したがって、本開示の別の実施形態は、それぞれ配列番号3および23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号4および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;配列番号5および25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびにそれぞれ配列番号13および33からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号14および34からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;および配列番号15および35からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、単離された抗体またはその抗原結合性断片に関する。したがって、そのような抗体は、モノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含有するが、それにもかかわらず、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含有し得る。
【0109】
そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは公開された参考文献から入手することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース、ならびに、それぞれの内容が明白に参照により本明細書に組み込まれるKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242;Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. Mol. Biol. 227: 776-798;およびCox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24: 827-836に見出すことができる。
【0110】
本開示の抗体への使用のためのフレームワーク配列の例は、本開示の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似したもの、例えば、本開示のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列である。VH CDR1、2および3配列、ならびにVL CDR1、2および3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子において見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフティングすることができる、または、CDR配列を、生殖細胞系列配列と比較して1つまたは複数の突然変異を含有するフレームワーク領域にグラフティングすることができる。例えば、ある特定の場合には、抗体の抗原結合能が維持または増強されるように、フレームワーク領域内の残基を突然変異させることが有益であることが見出されている(例えば、Queen et alに対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照されたい)。本明細書に記載の抗体および抗原結合性断片を築くための足場として利用することができるフレームワークとしては、これだけに限定されないが、VH1A、VH1B、VH3、Vk1、Vl2、およびVk2が挙げられる。
【0111】
したがって、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための、本開示の別の実施形態は、配列番号9および29からなる群から選択されるアミノ酸配列またはそのような配列のフレームワーク領域内に1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、配列番号19もしくは39からなる群から選択されるアミノ酸配列またはそのような配列のフレームワーク領域内に1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む、単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0112】
別の型の可変領域改変は、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異させて、それにより、目的の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することであり、これは、「親和性成熟」として公知である。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発を実施して、突然変異(単数または複数)を導入することができ、抗体結合性または他の目的の機能特性に対する影響を、本明細書に記載され、実施例の節に提示されるin vitroまたはin vivoアッセイにおいて評価することができる。保存的改変(上記の通り)を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失であり得る。さらに、一般には、CDR領域内の残基の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下が変更される。
【0113】
したがって、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための別の実施形態では、本開示は、配列番号3および23を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号3および23と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号4および24からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号4および24と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号5および25からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号5および25と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号13および33からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号13および33と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号14および34からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号14および34と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号15および35からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号15および35と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0114】
したがって、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための別の実施形態では、本開示は、配列番号6および26を有する群から選択されるアミノ酸配列または配列番号6および26と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号7および27からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号7および27と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号8および28からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号8および28と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域;配列番号16および36からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号16および36と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号17および37からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号17および37と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号18および38からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号18および38と比較して1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域からなる単離されたFXIa結合性抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
半減期が延長された抗体
【0115】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための、in vivoにおける半減期が延長された、FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体を提供する。半減期が延長された抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は、患者を処置する方法において抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体が使用され、したがって、ADAの方法および治療用抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体の生理的および臨床的相関が患者の疾患または障害を処置または維持するために有益である場合、ADAを検出する方法において有意義であり得る。
【0116】
in vivoにおけるタンパク質の半減期には多くの因子が影響を及ぼし得る。例えば、腎臓濾過、肝臓における代謝、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による分解、および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質中和ならびにマクロファージおよび樹状細胞による取り込み)。種々の戦略を使用して本開示の抗体の半減期を延長することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性リガンド、および炭水化物シールドとの化学的連結によって;アルブミンなどの血清タンパク質に結合するタンパク質、IgG、FcRnとの遺伝子融合、および移入によって;血清タンパク質に結合する他の結合性部分、例えば、ナノボディ、Fab、DARPin、アビマー、アフィボディ、およびアンチカリンなどとのカップリング(遺伝学的にまたは化学的に)によって;rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合性タンパク質、およびFcとの遺伝子融合によって;またはナノ担体、緩効性製剤、または医療機器への組み入れによって。
【0117】
抗体のin vivoにおける血清循環を長引かせるために、高分子量PEGなどの不活性なポリマー分子を、抗体またはその断片に、多機能性リンカーを用いてまたは用いずに、抗体のN末端もしくはC末端へのPEGの部位特異的コンジュゲーションを通じてか、またはリシン残基に存在するイプシロンアミノ基を介してのいずれかで付着させることができる。抗体をペグ化するために、一般には、抗体またはその断片と、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)を、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどの、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEGを包含することが意図されている。ある特定の実施形態では、ペグ化される抗体は、グリコシル化されていない抗体である。生物活性の喪失が最小になる直鎖または分枝ポリマー誘導体化を使用する。コンジュゲーションをSDS-PAGEおよび質量分析によって密接にモニタリングして、PEG分子の抗体への適当なコンジュゲーションを確実にすることができる。未反応のPEGを抗体-PEGコンジュゲートからサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって分離することができる。PEGで誘導体化された抗体を、結合活性について、ならびにin vivoにおける有効性について、当業者に周知の方法を使用して、例えば、本明細書に記載のイムノアッセイによって試験することができる。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野で公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、Nishimura et al.によるEP 0 154 316およびIshikawa et alによるEP 0 401 384を参照されたい。
【0118】
他の改変されたペグ化技術としては、化学的に指定された側鎖を生合成タンパク質にtRNA合成酵素およびtRNAを含む再構成された系を介して組み入れる、再構成化学的直交性定方向操作技術(ReCODE PEG)が挙げられる。この技術により、E.coli、酵母、および哺乳動物細胞において30個よりも多くの新しいアミノ酸を生合成タンパク質に組み入れることが可能になる。tRNAによりネイティブでないアミノ酸が、アンバーコドンが位置付けられている任意の場所に組み入れられ、アンバーが終止コドンから化学的に指定されたアミノ酸の組み入れをシグナル伝達するコドンに変換される。
【0119】
組換えペグ化技術(rPEG)も血清中半減期の延長に使用することができる。この技術は、300~600アミノ酸の構造化されていないタンパク質尾部を既存の医薬タンパク質と遺伝子融合することを伴う。そのような構造化されていないタンパク質鎖の見かけの分子量は実際の分子量の約15倍であるので、タンパク質の血清中半減期は著しく増大する。化学的コンジュゲーションおよび再精製が必要な従来のPEG化とは対照的に、製造プロセスは著しく簡易化され、生成物は均一である。
【0120】
別の技術はポリシアル酸化であり、これは、天然ポリマーポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿命を引き延ばし、治療用ペプチドおよびタンパク質の安定性を改善するものである。PSAは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療用ペプチド薬物送達のために使用される場合、ポリシアル酸により、コンジュゲーションに保護的な微小環境がもたらされる。これにより、治療用タンパク質の循環中の活性寿命が増大し、また、治療用タンパク質の免疫系による認識が防止される。PSAポリマーはヒトの体内に天然に見出される。PSAポリマーは、数百万年かけて進化したある特定の細菌により、その壁を被覆するために利用された。その結果、これらの天然にポリシアル酸化された細菌は、分子模倣により、体の防御系に箔を裏打ちすることができた。天然の究極のステルス技術であるPSAは、そのような細菌により、多量に、所定の物理的特徴を持たせて、容易に産生させることができる。細菌PSAは、ヒトの体内のPSAと化学的に同一であるので、タンパク質とカップリングした場合であっても完全に非免疫原性である。
【0121】
別の技術としては、抗体と連結したヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用が挙げられる。HESは、蝋様トウモロコシデンプンに由来する改変された天然ポリマーであり、体の酵素によって代謝され得る。HES溶液は、通常、不足した血液量を補充し、血液の流体力学的特性を改善するために投与される。抗体のHES化により、分子の安定性を増大させることによって、ならびに腎クリアランスを低減することによって循環半減期を引き延ばし、その結果、生物活性の増大をもたらすことが可能になる。HESの分子量などの種々のパラメータを変動させることにより、広範囲のHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることができる。
【0122】
in vivoにおける半減期が増大した抗体は、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合性断片(好ましくはFcまたはヒンジFcドメイン断片)に1つまたは複数のアミノ酸改変(すなわち、置換、挿入または欠失)を導入して生成することもできる。例えば、国際公開第WO98/23289号;国際公開第WO97/34631号;および米国特許第6,277,375号を参照されたい。
【0123】
さらに、抗体をアルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;HSA)とコンジュゲートして、in vivoにおいてより安定であるまたはin vivoにおける半減期がより長い抗体または抗体断片を作出することができる。この技法は当技術分野で周知である。例えば、国際特許公開第WO93/15199号、同第WO93/15200号、および同第WO01/77137号;ならびに欧州特許公開第EP 413,622号を参照されたい。さらに、上記の二重特異性抗体に関しては、抗体の特異性を、抗体の1つの結合性ドメインがFXIaに結合し、一方、抗体の第2の結合性ドメインが血清アルブミン、好ましくはHSAに結合するように設計することができる。
【0124】
半減期を増大させるための戦略は、ナノボディ、フィブロネクチンに基づく結合物質、およびin vivoにおける半減期の増大が望まれる他の抗体またはタンパク質に対して特に有用である。
抗体コンジュゲート
【0125】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法(例えば、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法)における使用のための、FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片であって、異種タンパク質またはポリペプチド(またはその断片、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペプチド)と組換えによって融合または化学的にコンジュゲートして(共有結合性のコンジュゲーションおよび非共有結合性のコンジュゲーションのどちらも含む)融合タンパク質を生成する、抗体またはその断片を提供する。特に、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、本明細書に記載の抗体の抗原結合性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメインまたはVL CDR)と、異種タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを抗体または抗体断片と融合またはコンジュゲートするための方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、および同第5,112,946号;欧州特許第EP307,434号および同第EP367,166号;国際公開第WO96/04388号および同第WO91/06570号;Ashkenazi et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539; Zheng et al., 1995, J. Immunol. 154: 5590-5600;およびVil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 11337-11341を参照されたい。
【0126】
追加的な融合タンパク質を、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリング、および/またはコドンシャッフリング(集合的に「DNAシャッフリング」と称される)の技法によって生成することができる。DNAシャッフリングを使用して、本開示の抗体またはその断片の活性を変化させることができる(例えば、親和性がより高く、解離速度がより低い抗体またはその断片)。一般に、米国特許第5,605,793号、同第5,811,238号、同第5,830,721号、同第5,834,252号、および同第5,837,458号;Patten et al., 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8: 724-33;Harayama,1998, Trends Biotechnol. 16 (2): 76-82;Hansson, et al., 1999, J. Mol. Biol. 287: 265-76;およびLorenzo and Blasco, 1998, Biotechniques 24 (2): 308-313を参照されたい(これらの特許および刊行物はそれぞれの全体がこれによって参照により組み込まれる)。抗体またはその断片、またはコードされる抗体またはその断片を、組換えの前にエラープローンPCR、ランダムなヌクレオチド挿入または他の方法によるランダム突然変異誘発に供することによって変更することができる。FXIaタンパク質に特異的に結合する抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを、1つまたは複数の異種分子の1つまたは複数の成分、モチーフ、切片、部分、ドメイン、断片などを用いて組み換えることができる。
【0127】
さらに、精製を容易にするために、抗体またはその断片をペプチドなどのマーカー配列と融合することができる。ある特定の実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、CA、91311)で提供されるタグなどのヘキサ-ヒスチジンペプチド(配列番号48)であり、その多くが市販されている。Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821-824に記載されている通り、例えば、ヘキサ-ヒスチジン(配列番号48)により、融合タンパク質の都合のよい精製がもたらされる。精製のために有用な他のペプチドタグとしては、これだけに限定されないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する赤血球凝集素(「HA」)タグ(Wilson et al., 1984, Cell 37: 767)、および「flag」タグが挙げられる。
【0128】
他の実施形態では、ADAを検出するための抗体を診断用または検出可能な作用物質とコンジュゲートすることができる。そのような検出は、抗体を、これだけに限定されないが、種々の酵素、例えば、これだけに限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなど;補欠分子族、例えば、これだけに限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなど;蛍光材料、例えば、これだけに限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンなど;発光材料、例えば、これだけに限定されないが、ルミノールなど;生物発光材料、例えば、これだけに限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンなど;放射性材料、例えば、これだけに限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tinなど;ならびに種々の陽電子放出断層撮影法に使用される陽電子放出性金属、および非放射性常磁性金属イオンを含む、検出可能な物質とカップリングすることによって実現することができる。ある特定の実施形態では、ADAを検出するための抗体を、ルテニウム標識された検出カクテルに含める。
【0129】
一部の実施形態では、本開示は、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法における使用のための、治療用部分とコンジュゲートした抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその断片の使用をさらに包含する。抗体またはその断片を、細胞毒、例えば、細胞増殖抑制剤または細胞破壊剤、治療剤または放射性金属イオン、例えば、アルファ-エミッターなどの治療用部分とコンジュゲートすることができる。細胞毒または細胞傷害剤は、細胞に対して有害である任意の作用物質を含む。
【0130】
さらに、抗体またはその断片を、所与の生物学的応答を改変させる治療用部分または薬物部分とコンジュゲートすることができ、およびそのようなコンジュゲートした抗体を、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対するADAを検出する方法において使用することができる。治療用部分または薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものとは解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質は、例えば、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素など;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス性作用物質、抗血管新生剤など;または、生物学的反応修飾物質、例えば、リンフォカインなどを包含し得る。
【0131】
さらに、抗体を、これだけに限定されないが、131In、131LU、131Y、131Ho、131Smを含めた放射性金属イオンとポリペプチドへのコンジュゲートに有用な放射性金属イオン、例えば、アルファ-エミッター、例えば、213Biまたは大環状キレート剤治療用部分とコンジュゲートすることができる。ある特定の実施形態では、大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体に付着させることができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は一般に当技術分野で公知であり、また、それぞれの全体が参照により組み込まれる、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res. 4 (10): 2483-90; Peterson et al., 1999, Bioconjug. Chem. 10 (4): 553-7;およびZimmerman et al., 1999, Nucl. Med. Biol. 26 (8): 943-50に記載されている。
【0132】
治療用部分と抗体をコンジュゲートするための技法は周知である。例えばArnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62: 119-58を参照されたい。
【0133】
抗体を固体支持体に付着させることもでき、これは、標的抗原のイムノアッセイまたは精製に特に有用である。そのような固体支持体としては、これだけに限定されないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙げられる。
抗薬物抗体(ADA)の検出および測定
【0134】
本発明者らは、試料から抗第XI/XIa因子ADAを定性的かつ/または定量的に検出するための新規の手法を開発した。この手法は、ADA検出における薬物または標的の存在によって引き起こされる干渉問題の低減および排除に有効である。
ADAについてのアッセイ
【0135】
したがって、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片に対する抗薬物抗体(ADA)を検出する方法であって、試料中に存在する、抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させ、かつ/または抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させて、酸消化物を創出するために、試料を酸と共にインキュベートするステップと、酸消化物を、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片でコーティングされたプレート上でインキュベートするステップと、酸消化物を中和するステップと、ルテニウム標識された検出カクテルを使用してADAの存在を検出するステップとを含む、方法が本明細書に記載される。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体は抗体1である。
【0136】
一部の実施形態では、試料は、対象、例えば、ヒト対象由来の試料である。一部の実施形態では、試料は、対象、例えば、ヒト対象から得た血液、血漿、または血清からなる群から選択される。一部の実施形態では、試料は、対象から得たものではない。一部の実施形態では、試料は、試験のために調製されたin vitro試料、例えば、薬物、標的、およびADAを含む試料である。方法のある特定の実施形態では、方法は、試料を調製する最初のステップを含む。
【0137】
抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させるため、ならびに/または抗第XI因子および/もしくは抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させるために適した酸としては、例えば、これだけに限定することなく、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸またはリン酸、またはそれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、酸は、酢酸、クエン酸、リン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、酸は、酢酸である。本明細書では、特定の酸または酸の組合せのpHを、例えば、当技術分野で公知の方法を使用して、所望のpHに調整することができることが意図されている。酸、例えば酢酸の濃度は、約50mM、約100mM、約150mM、約200mM、約250mM、約300mM、約350mM、約400mM、または約500mMであり得る。ある特定の実施形態では、酸、例えば酢酸の濃度は、約300mMであり得る。
【0138】
試料を、酸と一緒に、解離のために所望の時間の長さにわたってインキュベートすることができる。例えば、試料を、酸と一緒に約5分間、約10分間、約15分間、約30分間、約45分間、または約60分間インキュベートすることができる。ある特定の実施形態では、試料を、酸と一緒に約10分間インキュベートする。ある特定の実施形態では、試料を、酸と一緒に室温でインキュベートする。本明細書では、前記インキュベーションの温度が、必要なインキュベーション時間に影響を及ぼし得る、すなわち、試料を室温よりも低い温度でインキュベートする場合には、より長いインキュベーション時間が必要になり、試料を室温よりも高い温度でインキュベートする場合には、より短いインキュベーション時間が必要になることが意図されている。
【0139】
アッセイプレートを、まず、薬物(例えば、抗体1)のプレートに対する親和性を増強するために、分子(例えば、タンパク質)でコーティングすることができる。ある特定の実施形態では、プレートをストレプトアビジンでコーティングし、薬物をビオチン標識する。ある特定の実施形態では、プレートをニッケルでコーティングし、薬物にヒスチジンタグ(例えば、6x-His)を持たせる。ある特定の実施形態では、プレートを、低分子ペプチドタグに対する抗体でコーティングし、薬物を、前記タグ(例えば、V5、Flag、Myc、HA、GST、GFPなど)を発現するように改変する(例えば、遺伝学的にまたは化学的に)。薬物/タンパク質について親和性を増強するための代替技法は当技術分野で公知である。
【0140】
抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、アッセイ条件に応じて変動し得る。一部の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)の濃度は、約0.05μg/mlから約0.45μg/mlの間、約0.10μg/mlから約0.40μg/mlの間、約0.15μg/mlから約0.35μg/mlの間、または約0.20μg/mlから約0.30μg/mlの間である。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)の濃度は、0.1μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、0.75μg/ml、および1μg/mlからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)の濃度は、約0.25μg/mlである。
【0141】
一部の実施形態では、方法は、中和するステップを含み、中和するステップにより、ADAが、コーティングされたプレート上の抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体1)に結合することが可能になる。ある特定の実施形態では、中和するステップは、pH約8.0の塩基を使用するものである。本明細書では、特定の塩基または塩基の組合せのpHを、例えば、当技術分野で公知の方法を使用して、中和のための所望のpHに調整することができることが意図されている。
【0142】
中和ステップのための適切な塩基としては、例えば、Tris、リン酸塩、CAPS、CHAPS、EDTA、EGTA、HEPES、PIPES、MOPS、トリシン、グリシン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物が挙げられ、これだけに限定されない。ある特定の実施形態では、塩基は、Tris、リン酸塩、HEPES、トリエタノールアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、塩基はTrisである。ある特定の実施形態では、塩基は、pH約8.0のTrisである。
【0143】
一部の実施形態では、ADAを、ルテニウム標識された検出カクテルを使用して検出する。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、抗体を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、抗ヒトIgE、抗ウサギIg、またはこれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、ルテニウム標識された抗ヒトIgGを含む。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、ルテニウム標識された抗ヒトIgMを含む。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、ルテニウム標識された抗ヒトIgEを含む。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、ルテニウム標識された抗ウサギIgを含む。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルは、前記ルテニウム標識された抗体の組合せを含む。
【0144】
一部の実施形態では、方法は、上記のステップのいずれかの後に洗浄するステップを含む。ある特定の実施形態では、方法は、インキュベートするステップの後に、洗浄するステップを含む。洗浄するステップは、適切な洗浄緩衝剤、例えば、Tris-HCl緩衝生理食塩水(TBS)、TBS Tween(登録商標)20、リン酸緩衝食塩水(PBS)、PBS Tween20などを用いて実施することができる。一部の実施形態では、洗浄するステップを、PBS Tween20を用いて実施する。ある特定の実施形態では、洗浄するステップを、PBS 0.05%Tween20を用いて実施する。
【0145】
一部の実施形態では、プレートを試料の添加前にブロッキングする。例示的なブロッキング緩衝剤は、例えば、これだけに限定することなく、ウシ血清アルブミン(BSA)、乳、ヤギ血清、ウシ胎仔血清(FBS)、ウマ血清(HS)、またはカゼインを含み得る。ある特定の実施形態では、ブロッキング緩衝剤は、tween-20を伴うリン酸緩衝食塩水(PBS-T)中にBSAを含むものである。ある特定の実施形態では、PBS-T中BSAの濃度は、約1%、約2.5%、約5%、約7.5%、および約10%である。ある特定の実施形態では、PBS-T中BSAの濃度は約5%である。
【0146】
図1に示されている通り、本明細書に記載のアッセイの一部の実施形態では、ビオチン標識抗体1 1、ルテニウム標識された抗体1 2、および抗抗体1抗体 3を含むカクテルを、試料(例えば、血液、血漿、または血清)と一緒にインキュベートし、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート 4に添加する。ある特定の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、化学発光シグナル、例えば、光 5)が抗抗体1抗体の濃度に比例して生成する。ある特定の実施形態では、試料(例えば、血液、血漿、または血清)はカニクイザルに由来するものである。
【0147】
図2に示されている通り、本明細書に記載のアッセイの一部の実施形態では、抗体1 10、抗抗体1 11、ホモ二量体FXIおよび/またはFXIa 12、抗抗体1-FXI/FXIa複合体 13、ならびに抗抗体1-抗体1複合体 14を含む試料(例えば、血液、血漿、または血清)を、抗FXI抗体 16とカップリングしたビーズ(例えば、ストレプトアビジンビーズ)15と一緒にインキュベートして、枯渇試料を形成する。次に、枯渇試料中に存在する抗体1-抗抗体1複合体を解離させて解離試料を形成するために、枯渇試料を酸 17と一緒にインキュベートする。解離試料を、ビオチン標識抗体1 18、ルテニウム標識された抗体1 19、および抗抗体1抗体を含むカクテルと一緒にインキュベートし、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート 20に添加する。ある特定の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、化学発光シグナル、例えば、光)が抗抗体1抗体の濃度に比例して生成する。ある特定の実施形態では、試料(例えば、血液、血漿、または血清)はカニクイザルに由来するものである。
【0148】
図3に示されている通り、本明細書に記載のアッセイの一部の実施形態では、ビオチン標識抗体1 30、ルテニウム標識された抗サル免疫グロブリン 31、および抗抗体1抗体32を含むカクテルを、ホモ二量体FXIおよび/またはFXIa 33を含む試料(例えば、血液、血漿、または血清)と一緒にインキュベートし、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート 34に添加する。ある特定の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、化学発光シグナル、例えば、光 35)が抗抗体1抗体の濃度に比例して生成する。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された抗サル免疫グロブリンにより、内在性FXI/FXIa二量体は検出されない。ある特定の実施形態では、試料(例えば、血液、血漿、または血清)はカニクイザルに由来するものである。
【0149】
図4に示されている通り、本明細書に記載のアッセイの一部の実施形態では、試料中に存在する抗体1-抗抗体1複合体を解離させて酸消化物を形成するために、抗体1 40、抗抗体1 41、ホモ二量体FXIおよび/またはFXIa 42、抗体1-FXI/FXIa複合体 43、ならびに抗抗体1-抗体1複合体 44を含む試料(例えば、血液、血漿、または血清)を、酸 45と一緒にインキュベートする。酸消化物を、ビオチン標識抗体1、ルテニウム標識された抗サルまたは抗ウサギ免疫グロブリン46、および抗抗体1抗体を含むカクテルと一緒にインキュベートし、高結合性プレート(例えば、高結合性ELISAプレート47)に添加する。ある特定の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、化学発光シグナル、例えば、光48)が抗抗体1抗体の濃度に比例して生成する。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された抗サルまたは抗ウサギ免疫グロブリンにより、内在性FXI/FXIa二量体は検出されない。ある特定の実施形態では、試料(例えば、血液、血漿、または血清)はカニクイザルに由来するものである。
【0150】
図5に示されている通り、本明細書に記載のアッセイの一部の実施形態では、試料中に存在する抗体1-抗抗体1複合体および/または抗体1-FXI/FXIa複合体を解離させて酸消化物を形成するために、抗体1 50、抗抗体1 51、ホモ二量体FXIおよび/またはFXIa 52、抗体1-FXI/FXIa複合体53、および抗抗体1-抗体1複合体54を含む試料(例えば、血液、血漿、または血清)を、酸55と一緒にインキュベートする。酸消化物を、抗体1でコーティングされたプレート56に添加し、適切な塩基57(例えば、Tris)を添加することによって酸消化物を中和する。ルテニウム標識された抗ヒトIgG、抗ヒトIgM、ルテニウム標識された抗ヒトIgE、およびルテニウム標識された抗ウサギIgを含むルテニウム標識された検出カクテル58。ある特定の実施形態では、検出可能なシグナル(例えば、化学発光シグナル、例えば、光)が抗抗体1抗体の濃度に比例して生成する。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルにより、内在性FXI/FXIa二量体は検出されない。ある特定の実施形態では、ルテニウム標識された検出カクテルにより抗体1は検出されない。ある特定の実施形態では、試料(例えば、血液、血漿、または血清)はヒトに由来するものである。
【実施例】
【0151】
ここで概して説明されている本開示は、ただ単に本開示のある特定の態様および実施形態を例示するためのものであり、本開示の範囲をいかようにも限定するものではない、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。
(実施例1)
カニクイザル試料についての第XI因子および/または第XIa因子抗薬物抗体アッセイ(ADA)の開発
【0152】
最初に、カニクイザル血清中の抗第XI因子および抗第XIa因子(FXI/FXIa)抗薬物抗体(ADA)の存在を、標準のブリッジングアッセイを使用してアッセイした(
図1)。ビオチン標識抗体1、ルテニウム標識された抗体1、および抗体1ADAを含むカクテルをストレプトアビジンでコーティングされたプレートに添加した。化学発光反応からの光の生成がADAに比例してもたらされた。しかし、この手法では、内在性のタンパク質標的ホモ二量体FXI/FXIaが、標識された抗体1にブリッジングしたので、高いパーセンテージの偽陽性が生じた。
【0153】
したがって、内在性ホモ二量体FXI/FXIa標的の枯渇ステップを導入することにより高偽陽性率が低下するという仮説を立てた。したがって、さらなる2つのステップ:抗FXI/FXIaでコーティングされたビーズを用いた内在性FXI/FXIaの枯渇、その後、薬物の抗体からの酸解離を上記のブリッジングアッセイの前に追加した(
図2)。しかし、抗FXI抗体を用いた枯渇ステップは非効率的であり、血清中の標的干渉の改善は検出されなかった。したがって、ルテニウム標識された抗サルIgを検出体として利用する新しいアッセイ形式を試験した(
図3)。以下の表2に示される通り、シグナル:ノイズ比の決定から、FXI干渉の有意な改善が明らかになった。
【表2】
【0154】
カニクイザルADA検出の最終的なアッセイ形式の概略図が
図4に示されている。アッセイバリデーションパラメータの要約を表3に示す。薬物耐性および標的干渉の結果を表4に要約する。
【表3】
【表4】
(実施例2)
ヒト試料についての第XI因子および/または第XIa因子抗薬物抗体アッセイ(ADA)の開発
【0155】
カニクイザルについてのアッセイをヒト血清におけるバリデーションに適合させた。抗体1の試験は、抗ヒトIgによる非特異的結合を回避するために、Fabフォーマットで行う必要があると仮定した。抗体1を、ペプシンまたはパパインを使用して消化して、F(ab’)2断片を生成した。しかし、得られたFc断片では、バックグラウンドが許容されないレベルまで上昇した。Fc断片を保持するための負の精製ではF(ab’)2断片が非常に低収率で生成され、反応性がなかった。したがって、全長抗体フォーマットを使用することに決定した。
【0156】
アッセイ形式の概略図が
図5に示されている。簡単に述べると、96ウェルプレートを0.25μg/mlの濃度の抗体1でコーティングし、続いて、PBS-T中5%BSAを用いてブロッキングした。抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体-抗原複合体を解離させるため、および抗第XI因子および/または抗第XIa因子抗体-ADA複合体を解離させるために試料を300mMの酢酸と一緒に10分間インキュベートし、それにより、酸消化物を形成させた。ブロッキングしたプレートを洗浄し、酸を中和するために1MのTris、pH8.0を添加した。次いで、酸消化物を、抗体1でコーティングされたプレート上でインキュベートした。抗ヒトIgG/IgM、ルテニウム標識された抗ヒトIgE、およびルテニウム標識された抗ウサギIgの検出カクテルを添加した。プレートを、酸消化物と一緒にインキュベートした後洗浄した。次いで、化学発光を数量化して、抗体1ADAを検出した。
【0157】
FDAにより推奨されている3階層ADAアッセイ条件について試験した:スクリーニングアッセイにおける5%偽陽性率のカットポイント、確証的アッセイにおける薬物に対する応答の特異性、および力価アッセイにおけるADA濃度の半定量的推定。
【0158】
スクリーニングアッセイの結果を表5に要約する。プレートを0.25μg/mlの濃度でコーティングした。ルテニウム標識された検出カクテル、0.1μg/mLの抗ウサギ、0.01μg/mL抗ヒトIgG/M、および0.01μg/mLの抗ヒトIgE。プレートを、PBS-T中5%ウシ血清アルブミン(BSA)である緩衝剤を使用してブロッキングした。アッセイ結果から、高感度であり、バックグラウンド、FXIおよび薬物干渉が最小限であることが実証される。
【表5】
【0159】
確証的アッセイの結果を表6に要約する。示されている通り、少なくとも1.23ng/mLまで感度が確立された。
【表6-1】
【表6-2】
【0160】
薬物耐性力価測定の結果を表7に要約する。示されている値はシグナル:ノイズ比である。
【表7】
【配列表】
【国際調査報告】