(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】新規の徐放性プロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20231220BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231220BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20231220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231220BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231220BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231220BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
C07K16/18
C07K19/00
C07K14/47
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K38/16
A61P43/00 105
A61P43/00 123
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536079
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2021061888
(87)【国際公開番号】W WO2022130300
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515146556
【氏名又は名称】モレキュラー パートナーズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ボスハート アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アールスコーグ ユリア
(72)【発明者】
【氏名】シュレーレス ベルント
(72)【発明者】
【氏名】アムステュツ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ シモン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA02
4C084CA53
4C084NA12
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZB21
4C085AA14
4C085DD62
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、結合部分及び薬物分子を含む組成物であって、当該結合部分が、当該薬物分子に可逆的に結合して、インビボでの投与時に薬物分子を徐放するプロドラッグ複合体を形成する、組成物に関する。本発明は更に、そのような組成物を形成する方法、及びそのような組成物を使用する治療方法に関する。結合部分、当該結合部分をコードする核酸、及び宿主細胞を使用してこれらを作製する方法についても記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)結合部分及び(ii)薬物分子を含む組成物であって、
前記結合部分が、前記薬物分子に可逆的に結合し、前記結合部分が、結合した場合に、前記薬物分子の生物学的活性を阻害する、組成物。
【請求項2】
前記結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、前記薬物分子の生物学的標的への結合である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬物分子に対する前記結合部分の結合親和性が、哺乳動物への前記組成物の投与時の時間の関数としての前記薬物分子の放出を可能にする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記結合部分が、10nM未満の解離定数(K
D)で前記薬物分子に結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記結合部分が、約1×10
-8s
-1~約1×10
-4s
-1の前記薬物分子からのオフレート(k
off)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記結合部分が、前記薬物分子と複合体化された場合に遮断半減期(T
1/2)を有し、前記遮断半減期が、以下の式:
【数1】
に従って計算される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記遮断半減期(T
1/2)が、少なくとも約2時間である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記結合部分が、設計アンキリン反復ドメインを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のいずれかにおける最大9個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~10及び(2)配列番号1~10のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬物分子が、CD3に対して結合特異性を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記薬物分子が、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記結合部分の前記TCE薬物分子への結合が、前記TCE薬物分子のT細胞への結合及び/又はT細胞の活性化を阻害する、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
療法に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月16日に出願された米国特許仮出願第63/126,356号、2020年12月22日に出願された欧州特許第20216705号、及び2021年4月30日に出願された米国特許仮出願第63/182,394号に対する優先権の利益を主張するものである。これら特許出願の開示は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年12月16日に作成された前述のASCIIコピーは、13081_0027-00304_SL.txtという名称であり、54,310バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、結合部分及び薬物分子を含む組成物であって、当該結合部分が、当該薬物分子に可逆的に結合して、インビボでの投与時に薬物分子を徐放するプロドラッグ複合体を形成する、組成物に関する。本発明は更に、そのような組成物を形成する方法、及びそのような組成物を使用する治療方法に関する。結合部分、当該結合部分をコードする核酸、及び宿主細胞を使用してこれらを作製する方法についても記載されている。
【背景技術】
【0004】
実行可能な薬物候補が特定の有効性基準を満たす必要があることは明らかであるが、薬物候補が許容できる安全性プロファイルを有することも重要である。多くの薬物分子は、いくつかの有害なオフターゲット及び/又はオンターゲット副作用を有し、いくつかの薬物分子はまた、薬物分子の意図される標的における過剰な有害な薬理作用により、有害なオンターゲット作用を引き起こし得る。特定の薬物では、有害作用を回避することができないので、有害作用を軽減する必要がある。これにはいくつかの選択肢がある。例えば、非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs)(NSAID)は、胃の内膜を損傷し得るため、胃を保護する薬剤、例えば、プロトンポンプ阻害剤オメプラゾールと共投与されることが多い。他の薬物分子については、薬物が複数回用量で、又はより長い期間にわたって連続的に患者に投与されるような特定の投与レジメンを使用して、有害作用又はそのリスクを軽減することができる。これの例は、薬物を1日に複数回服用すること、又は薬物の静脈内(IV)注入を含むことができる。
【0005】
分割投与及び静脈内薬物注入は、認識され受け入れられている投薬の方法であるが、欠点がないわけではない。患者にとって面倒な投与レジメン(例えば、比較的短い期間にわたって複数回の投薬を必要とする投与レジメン)は、患者の服薬遵守不良に結びつき、その結果としてより悪い治療結果となる。静脈内注入法は、患者の服薬遵守不良に悩まされる可能性が低いが、患者は医療を受ける必要がある。これは、患者にとって混乱を起こさせるものであり、医療制度に追加の負担をもたらす。結果として、有害な薬物作用を軽減する改善された方法が当該技術分野において必要とされている。
【0006】
様々な薬物の使用に関連する特に問題となる有害作用は、「サイトカインストーム」としても知られる、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome)(CRS)及び高サイトカイン血症である。例えば、CRS又は高サイトカイン血症は、モノクローナル抗体及びCAR-T細胞などの特定の免疫療法による治療後に起こり得る。高サイトカイン血症は、典型的には、薬物の初回投与後に急速に起こり、体内でのサイトカインの制御されない過剰な放出を特徴とする。サイトカイン放出は正常な免疫機能の重要な部分であるが、血中へのあまりに多くのサイトカインのあまりに急速な放出は、高熱、炎症、重度の倦怠感、吐気などの症状、及び時には更に多臓器不全及び死を引き起こし得る。B細胞慢性リンパ球性白血病及びリウマチ性関節炎の治療を目的としたTheralizumab(セラリズマブ)薬物の臨床治験は、参加者が重度の高サイトカイン血症を発症した後に断念する必要があった。症状の発症は、投薬の1時間以内に生じ、治験の参加者全員が緊急の入院治療を必要とした。CRSはまた、免疫療法によって影響を受けた免疫細胞から血液へのサイトカインの大量かつ急速な放出によって引き起こされる。CRSの症状としては、発熱、悪心、頭痛、発疹、動悸、低血圧、及び呼吸困難が挙げられる。場合により、CRSは重篤であるか、又は生命を脅かすことがある。
【0007】
CRSと関連することが知られている薬物の1種は、T細胞エンゲージャー(T-cell engagers)(TCE)である。TCEはまた、特に初回用量投与後に、全身性内皮活性化及び大量のリンパ球再分布、並びに神経毒性と関連する(Velasquez,Blood,2018,131(1),30-38)。これらの毒性は、臨床治験設計及び用量漸増戦略に影響を与えることが多く、特に高い疾患負担を有する患者において、重症度により用量制限があることが証明されている。前投薬及び/又は積極的な治療介入も必要とされる場合があり、最終的に複雑な臨床治験設計につながる。
【0008】
T細胞エンゲージャーのような薬物の投与に関連するCRSの臨床管理のために、いくつかの戦略が考案されている。これらには、段階的投薬(段階的用量漸増)、ステロイド(特にデキサメタゾン)による前治療、又はトシリズマブ(抗IL6レセプター抗体)による治療が含まれる(例えば、Aldoss et al.,Current Oncology Reports,2019,21:4を参照されたい)。ステロイドによる前治療は、治療の開始を遅らせ、これは侵攻的な疾患状態には推奨されず、ステロイドの使用は、高いボディマス指数(BMI)及び/又は血圧を有する患者において禁忌であることがある。CRSを回避するためのトシリズマブによる治療は、2017年にFDAによって承認された。しかしながら、この薬物の免疫抑制作用により、患者は他の感染性疾患に罹患しやすくなることがある。
【0009】
総合すると、癌を含む疾患の治療に使用される薬物分子の有害作用又はそのリスクを回避、低減又は軽減するための新規の又は改善されたアプローチが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本出願は、薬物分子の投与後の有害作用又はそのリスクを回避又は軽減するための新規アプローチを提供しようとするものである。本発明は、薬物製品の投与時に活性薬物分子を体内に徐放する方法を提供する。本方法は、活性薬物分子を長期間にわたって体内に放出し、それによって投与直後の体内の活性薬物分子濃度のピークを回避する、いわゆる「徐放性」組成物(本明細書ではプロドラッグ複合体とも呼ばれる)を使用する。この方法の有益な適用の例は、TCEを含む徐放性組成物を使用する、TCEの投与後のCRSのリスクの低減である。
【0011】
プロドラッグ戦略は、特定の薬物が吸収され、分布され、代謝され、排出される方法に関連する問題を軽減するために採用されることが多い。一般に入手可能なプロドラッグの多くは、インビボで加水分解される小さな部分(エステル及びアミド基など)、又は投与後にリン酸化若しくは脱リン酸化される基を含有する。
【0012】
本出願において、本発明者らは、薬物分子に可逆的に結合し、結合した場合に、薬物分子の生物学的活性を阻害する結合部分を使用する新規プロドラッグアプローチを記載する。薬物分子のそのような生物学的活性は、例えば、生物学的標的への薬物分子の結合であってもよい。本発明のプロドラッグ複合体は、薬物分子に可逆的に結合したそのような結合部分を含む。薬物分子への結合部分の結合特性は、時間の関数として薬物分子の放出を可能にする。時間の関数としての薬物分子のそのような放出は、例えば、ヒトを含む対象への本発明のプロドラッグ複合体の投与時に起こり得る。本発明の結合部分は、薬物分子に対する高い親和性及び/又は薬物分子からの低いオフレートを有する。本発明の結合部分は、免疫グロブリン分子又は非免疫グロブリン分子などの異なる構造を有する分子を含む。結合部分は、抗体、操作された足場などの代替足場、及びポリペプチドを含む。そのような操作された足場の例は、設計アンキリン反復ドメインである。
【0013】
総合すると、本発明は、結合部分及び薬物分子を含む徐放性組成物、そのような組成物を作製する方法、並びにそのような組成物を使用する治療方法を提供する。本発明は、新規な結合部分、当該結合部分をコードする核酸、及び宿主細胞を用いてこれらを作製する方法を更に提供する。
【0014】
本明細書で提供される開示に基づいて、当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の実施形態(E)によって包含されることが意図される。
1.第1の実施形態では、本発明は、(i)結合部分及び(ii)薬物分子を含む組成物であって、当該結合部分が、当該薬物分子に可逆的に結合し、当該結合部分が、結合した場合に、当該薬物分子の生物学的活性を阻害する、組成物に関する。
2.第2の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、実施形態1に記載の組成物に関する。
3.第3の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、実施形態1又は2に記載の組成物に関する。
4.第4の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、非免疫グロブリン分子を含む、実施形態1又は2に記載の組成物に関する。
5.第5の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6.第6の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー(atrimer)、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれらに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6a.実施形態6aでは、本発明は、当該結合部分が、アドネクチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6b.実施形態6bでは、本発明は、当該結合部分が、モノボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6c.実施形態6cでは、本発明は、当該結合部分が、アフィボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6d.実施形態6dでは、本発明は、当該結合部分が、アフィリンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6e.実施形態6eでは、本発明は、当該結合部分が、アフィマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6f.実施形態6fでは、本発明は、当該結合部分が、アプタマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6g.実施形態6gでは、本発明は、当該結合部分が、アフィチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6h.実施形態6hでは、本発明は、当該結合部分が、アルファボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6i.実施形態6iでは、本発明は、当該結合部分が、反復タンパク質ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6j.実施形態6jでは、本発明は、当該結合部分が、アルマジロ反復ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6k.実施形態6kでは、本発明は、当該結合部分が、アトリマーに由来するか、又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6l.実施形態6lでは、本発明は、当該結合部分が、アビマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6m.実施形態6mでは、本発明は、当該結合部分が、アンキリン反復ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6n.実施形態6nでは、本発明は、当該結合部分が、フィノマーに由来するか、又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6o.実施形態6oでは、本発明は、当該結合部分が、ノッチンに由来するか、又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6p.実施形態6pでは、本発明は、当該結合部分が、クニッツドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
6q.実施形態6qでは、本発明は、当該結合部分が、T細胞受容体(TCR)に由来するか、又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の組成物に関する。
7.第7の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、生物学的標的への当該薬物分子の結合である、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
8.第8の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、酵素活性である、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
9.第9の実施形態では、本発明は、当該薬物分子に対する当該結合部分の結合親和性が、哺乳動物への当該組成物の投与時の時間の関数としての薬物分子の放出を可能にする、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
10.第10の実施形態では、本発明は、当該哺乳動物が、ヒトである、実施形態9に記載の組成物に関する。
11.第11の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、10nM未満、例えば、10nM未満、1nM未満、100pM未満、10pM未満、又は1pM未満の解離定数(KD)で当該薬物分子に結合する、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
12.第12の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は、約1×10-6s-1~約1×10-5s-1の当該薬物分子からのオフレート(koff)を有する、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
13.第13の実施形態では、本発明は、当該解離定数(KD)又はオフレート(koff)が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で測定される、実施形態11又は12に記載の組成物に関する。
14.第14の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、当該薬物分子と複合体化された場合に遮断半減期(T1/2)を有し、当該遮断半減期が、以下の式:
【0015】
【数1】
に従って計算される、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
15.第15の実施形態では、本発明は、当該遮断半減期(T
1/2)が、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、例えば、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約55時間又は少なくとも約60時間である、実施形態14に記載の組成物に関する。
16.第16の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、設計アンキリン反復ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
17.第17の実施形態では、本発明は、当該設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のいずれかにおける最大9個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、実施形態16に記載の組成物に関する。
18.第18の実施形態では、本発明は、当該設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~10及び(2)配列番号1~10のいずれかと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態16に記載の組成物に関する。
19.第19の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
20.第20の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
21.第21の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、非免疫グロブリン分子を含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
22.第22の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23.第23の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー(atrimer)、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれらに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23a.実施形態23aでは、本発明は、当該結合部分が、アドネクチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23b.実施形態23bでは、本発明は、当該結合部分が、モノボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23c.実施形態23cでは、本発明は、当該結合部分が、アフィボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23d.実施形態23dでは、本発明は、当該結合部分が、アフィリンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23e.実施形態23eでは、本発明は、当該結合部分が、アフィマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23f.実施形態23fでは、本発明は、当該結合部分が、アプタマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23g.実施形態23gでは、本発明は、当該結合部分が、アフィチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23h.実施形態23hでは、本発明は、当該結合部分が、アルファボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23i.実施形態23iでは、本発明は、当該結合部分が、反復タンパク質ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23j.実施形態23jでは、本発明は、当該結合部分が、アルマジロ反復ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23k.実施形態23kでは、本発明は、当該結合部分が、アトリマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23l.実施形態23lでは、本発明は、当該結合部分が、アビマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23m.実施形態23mでは、本発明は、当該結合部分が、アンキリン反復ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23n.実施形態23nでは、本発明は、当該結合部分が、フィノマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23o.実施形態23oでは、本発明は、当該結合部分が、ノッチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23p.実施形態23pでは、本発明は、当該結合部分が、クニッツドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
23q.実施形態23qでは、本発明は、当該結合部分が、T細胞受容体(TCR)に由来するか、又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
24.第24の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、CD3に対して結合特異性を有する、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
25.第25の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、腫瘍関連抗原(TAA)に対して結合特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを更に含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
25a.実施形態25aでは、本発明は、当該腫瘍関連抗原(TAA)が、CD33である、実施形態25に記載の組成物に関する。
25b.実施形態25bでは、本発明は、当該腫瘍関連抗原(TAA)が、CD123である、実施形態25に記載の組成物に関する。
26.第26の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
27.第27の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、設計アンキリン反復ドメインを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
28.第28の実施形態では、本発明は、当該設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15のいずれかと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態27に記載の組成物に関する。
29.第29の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、抗体を含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
30.第30の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である抗体である、実施形態29に記載の組成物に関する。
31.第31の実施形態では、本発明は、当該TCEが、CD3に結合する結合ドメインを含み、腫瘍関連抗原(TAA)に結合する結合ドメインを更に含む、実施形態30に記載の組成物に関する。
31a.実施形態31aでは、本発明は、当該腫瘍関連抗原(TAA)が、CD33である、実施形態31に記載の組成物に関する。
31b.実施形態31bでは、本発明は、当該腫瘍関連抗原(TAA)が、CD123である、実施形態31に記載の組成物に関する。
32.第32の実施形態では、本発明は、当該結合部分の当該TCE薬物分子への結合が、当該TCE薬物分子のT細胞への結合及び/又はT細胞の活性化を阻害する、実施形態24~31bのいずれかに記載の組成物に関する。
33.第33の実施形態では、本発明は、当該TCEが、二重特異性抗体である、実施形態24~28及び30~32のいずれか1つに記載の組成物に関する。
34.第34の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、当該薬物分子の抗イディオタイプ結合剤である、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
35.第35の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を追加的に含む、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
36.第36の実施形態では、本発明は、療法に使用するための、前述の実施形態のいずれかに記載の組成物に関する。
37.第37の実施形態では、本発明は、増殖性疾患の治療に使用するための、実施形態36に記載の使用のための組成物であって、任意選択で、当該増殖性疾患が、癌である、組成物に関する。
38.第38の実施形態では、本発明は、実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、治療方法に関する。
39.第39の実施形態では、本発明は、増殖性疾患を治療する方法であって、任意選択で、当該増殖性疾患が、癌である、実施形態38に記載の方法に関する。
40.第40の実施形態では、本発明は、T細胞活性化の方法を必要とする対象における、T細胞活性化の方法であって、実施形態24~28及び30~32のいずれか1つに記載の組成物を、当該対象に投与するステップを含み、任意選択で、当該組成物が、薬学的に許容される担体又は賦形剤を追加的に含む、方法に関する。
41.第41の実施形態では、本発明は、実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、インビボで活性薬物分子の放出を制御する方法に関する。
42.第42の実施形態では、本発明は、当該対象が、ヒトである、実施形態38~41のいずれか1つに記載の方法に関する。
43.第43の実施形態では、本発明は、制御放出製剤を作製する方法であって、
(i)実施形態1~6、9及び11~18のいずれか1つに定義される結合部分を提供するステップと、
(ii)実施形態19~23のいずれか1つに定義される薬物分子を提供するステップと、
(iii)当該薬物分子の実質的に全てが当該結合部分によって結合されるように、当該結合部分及び活性薬物分子を平衡に到達させるステップと、を含む、方法に関する。
44.第44の実施形態では、本発明は、薬物分子の生物学的活性を制御する方法であって、実施形態1~6、9及び11~18のいずれか1つに定義される結合部分を実施形態19~23のいずれか1つに定義される薬物分子と組み合わせて、組成物を形成することと、当該組成物を、それを必要とする患者に投与することと、を含む、方法に関する。
45.第45の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、生物学的標的への当該薬物分子の結合である、実施形態44に記載の方法に関する。
46.第46の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、酵素活性である、実施形態45に記載の方法に関する。
47.第47の実施形態では、本発明は、薬物分子に対して結合特異性を有する結合部分であって、当該結合部分が、当該薬物分子に結合した場合に、当該薬物分子の生物学的活性を阻害する、結合部分に関する。
48.第48の実施形態では、本発明は、当該結合部分の当該薬物分子への結合が、当該薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害する複合体を形成する、実施形態47に記載の結合部分に関する。
49.第49の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、生物学的標的への当該薬物分子の結合である、実施形態47又は48に記載の結合部分に関する。
50.第50の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、酵素活性である、実施形態47~49のいずれかに記載の結合部分に関する。
51.第51の実施形態では、本発明は、10nM未満、例えば、10nM未満、1nM未満、100pM未満、10pM未満又は1pM未満の当該薬物分子に対する結合親和性(K
D)を有する、実施形態47~50のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
52.第52の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、約1×10
-8s
-1~約1×10
-4s
-1、約1×10
-8s
-1~約1×10
-5s
-1、約1×10
-8s
-1~約1×10
-6s
-1、約1×10
-8s
-1~約1×10
-7s
-1、約1×10
-7s
-1~約1×10
-4s
-1、約1×10
-7s
-1~約1×10
-5s
-1、約1×10
-7s
-1~約1×10
-6s-1、約1×10
-6s
-1~約1×10
-4s
-1、又は、約1×10
-6s
-1~約1×10
-5s
-1の当該薬物分子からのオフレート(k
off)を有する、実施形態47~51のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
53.第53の実施形態では、本発明は、当該解離定数(K
D)又はオフレート(k
off)が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で測定される、実施形態51又は52に記載の結合部分に関する。
54.第54の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、当該薬物分子と複合体化された場合に遮断半減期(T
1/2)を有し、当該遮断半減期が、以下の式:
【0016】
【数2】
に従って計算される、実施形態47~53のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
55.第55の実施形態では、本発明は、当該遮断半減期(T
1/2)が、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、例えば、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約55時間又は少なくとも約60時間である、実施形態54に記載の結合部分に関する。
56.第56の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、実施形態47~55のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
57.第57の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、実施形態47~56のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
58.第58の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、非免疫グロブリン分子を含む、実施形態47~56のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
59.第59の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~58のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
60.第60の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー(atrimer)、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれらに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
60a.実施形態60aでは、本発明は、当該結合部分が、アドネクチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60b.実施形態60bでは、本発明は、当該結合部分が、モノボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60c.実施形態60cでは、本発明は、当該結合部分が、アフィボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60d.実施形態60dでは、本発明は、当該結合部分が、アフィリンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60e.実施形態60eでは、本発明は、当該結合部分が、アフィマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60f.実施形態60fでは、本発明は、当該結合部分が、アプタマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60g.実施形態60gでは、本発明は、当該結合部分が、アフィチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60h.実施形態60hでは、本発明は、当該結合部分が、アルファボディーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60i.実施形態60iでは、本発明は、当該結合部分が、反復タンパク質ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60j.実施形態60jでは、本発明は、当該結合部分が、アルマジロ反復ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60k.実施形態60kでは、本発明は、当該結合部分が、アトリマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60l.実施形態60lでは、本発明は、当該結合部分が、アビマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60m.実施形態60mでは、本発明は、当該結合部分が、アンキリン反復ドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60n.実施形態60nでは、本発明は、当該結合部分が、フィノマーに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60o.実施形態60oでは、本発明は、当該結合部分が、ノッチンに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60p.実施形態60pでは、本発明は、当該結合部分が、クニッツドメインに由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
60q.実施形態60qでは、本発明は、当該結合部分が、T細胞受容体(TCR)に由来するか、又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態47~59のいずれかに記載の組成物に関する。
61.第61の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、設計アンキリン反復ドメインである、実施形態47~60のいずれか1つに記載の結合部分に関する。
62.第62の実施形態では、本発明は、当該設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のいずれかにおける最大9個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、実施形態61に記載の結合部分に関する。
63.第63の実施形態では、本発明は、当該設計アンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~10及び(2)配列番号1~10のいずれかと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態61又は62に記載の結合部分に関する。
64.第64の実施形態では、本発明は、実施形態47~60のいずれかに記載の結合部分をコードする、核酸に関する。
65.第65の実施形態では、本発明は、実施形態61~63のいずれかに記載の設計アンキリン反復ドメインをコードする、核酸に関する。
66.第66の実施形態では、本発明は、実施形態64又は65に記載の核酸分子を含む、宿主細胞に関する。
67.第67の実施形態では、本発明は、実施形態47~63のいずれか1つに記載の結合部分を作製する方法であって、当該結合部分が発現される条件下で実施形態66に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法に関する。
68.第68の実施形態では、本発明は、当該宿主細胞が、原核宿主細胞である、実施形態67に記載の方法に関する。
69.第69の実施形態では、本発明は、当該宿主細胞が、真核宿主細胞である、実施形態67に記載の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】患者への本発明のプロドラッグ複合体の単回用量投与後の、血漿中の総薬物分子(「総薬物」)、プロドラッグ複合体(「複合体化薬物」)、未結合薬物分子(「遊離薬物」)、及び未結合結合部分(「遊離結合剤」)の濃度のコンピュータシミュレーションである。
図1は、投与時に実質的に完全に複合体化された薬物分子から開始した、経時的な(10週間の期間)異なる分子及びプロドラッグ複合体の濃度の推移を図示する。未結合(活性)薬物の濃度は、約10日後に複合体化(不活性)薬物よりも高い濃度に達し、5週間後に総薬物の大部分を占める。遊離結合剤は、系から迅速に除去され、従って、薬物分子から解離した後に薬物分子に再結合することができない。示されるように、遊離(活性)薬物の濃度は、投与時に総薬物の濃度に決して到達しない。従って、プロドラッグ複合体からの薬物分子の徐放により、本発明のプロドラッグ複合体の投与後に得られる遊離(活性)薬物の最大濃度(C
max)は、複合体化されていない形態の同じ総量の薬物分子の投与後に得られるC
maxと比較して有意に減少する。
【
図2】未結合薬物分子(「結合剤を含まない遊離薬物」、点線)又は結合部分に結合した薬物分子を含むプロドラッグ複合体(「薬物+結合剤」、実線)のいずれかの反復用量投与後の未結合(活性)薬物分子の濃度のコンピュータシミュレーションであり、そこでは、いずれの場合でも、同じ総量の薬物分子が患者に投与される。示されるように、薬物分子に対して異なる結合親和性を有する結合部分を用いて生成された3つの異なるプロドラッグ複合体が示される。
図2は、本発明のプロドラッグ複合体を用いて、C
maxの低下及び活性薬物分子の曝露の増加遅延を達成することができることを示す。更に、C
max減少の程度及び曝露の増加遅延は、薬物分子に対する結合部分の結合親和性に依存する。結合親和性が高いほど、C
maxの減少が強く、曝露の増加が遅延する。
【
図3a】プロドラッグ複合体を患者に投与する前に、結合部分(「結合剤」)は薬物分子(「薬物」)に強固に結合し、それによってプロドラッグ複合体を形成する。プロドラッグ製剤において、結合部分及び薬物の両方の濃度が高いので、k
onは結合平衡を支配し、実質的に全ての薬物分子が結合部分によって結合される。結合部分によって結合される場合、薬物分子の生物学的活性は阻害される。
【
図3b】患者への投与後、溶液中の結合部分及び薬物の両方の濃度は大幅に低下し、平衡はプロドラッグ複合体の解離に有利になるようにシフトする(すなわち、k
offが結合平衡を支配する)。したがって、薬物分子は、経時的に結合部分から脱複合体化され、活性薬物分子を患者の体内に徐放する。
【
図4】結合剤#9の前駆体及び参照としての親結合剤と一緒に試験した異なる結合部分(結合剤#1、#4及び#5)の表面プラズモン共鳴(SPR)データは、親結合剤が1~2時間の遮断T
1/2を有することを示すのに対して、実施例2で試験した結合部分は、2時間の測定期間後にはるかに少ない解離を示す。この解離の大幅な低下は、親結合剤と比較してはるかに長い遮断T
1/2をもたらす。
【
図5a】TCE#1及び3つの異なる結合部分(結合剤#4、#5及び#9)並びに中親和性親結合剤を用いた標準的な腫瘍細胞死滅及びT細胞活性化アッセイである。試料を実施例3に記載のように調製した。腫瘍細胞死滅(乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出、OD
492-OD
620によって決定される)を
図5aに示し、T細胞活性化(CD8+細胞の%としてのCD25+細胞)を
図5bに示す。IC50値(nM)は、示される通りである。
【
図5b】TCE#1及び3つの異なる結合部分(結合剤#4、#5及び#9)並びに中親和性親結合剤を用いた標準的な腫瘍細胞死滅及びT細胞活性化アッセイである。試料を実施例3に記載のように調製した。腫瘍細胞死滅(乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出、OD
492-OD
620によって決定される)を
図5aに示し、T細胞活性化(CD8+細胞の%としてのCD25+細胞)を
図5bに示す。IC50値(nM)は、示される通りである。
【
図6a】連続希釈したTCE(TCE#1)の存在下でのTAA発現腫瘍細胞(NucLight Red(登録商標)で標識)のT細胞媒介増殖阻害(T細胞媒介死滅の代用として使用)をIncucyte(登録商標)によって決定した(実施例4を参照されたい)。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図6b】4.5日目の時点までのIncucyte(登録商標)実験からのTCE#1の濃度に対するAUC(曲線下面積)データのプロットである。EC50値をpMで示す(実施例4を参照されたい)。
【
図7a】実施例4に記載されるように、TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、超高親和性結合部分及び中親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。以下の条件を試験した:TCE又は結合部分の添加なし(バックグラウンド)、10nM結合部分のみの添加(結合剤#4、#5及び#9、
図7e)、TCEのみの添加(TCE#1)、結合部分:TCEの比率を減少させた、予め平衡化したTCE#1及び親結合剤の添加(TCE#1+親結合剤)、結合部分:TCE(の比率を減少させた、予め平衡化したTCE及び超高親和性結合部分(結合剤#5)の添加TCE#1+結合剤#5)。TCE濃度は、先のLDH実験に基づくTCE#1のEC
80にほぼ対応する10pM最終濃度に設定した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図7b】実施例4に記載されるように、TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、超高親和性結合部分及び中親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。以下の条件を試験した:TCE又は結合部分の添加なし(バックグラウンド)、10nM結合部分のみの添加(結合剤#4、#5及び#9、
図7e)、TCEのみの添加(TCE#1)、結合部分:TCEの比率を減少させた、予め平衡化したTCE#1及び親結合剤の添加(TCE#1+親結合剤)、結合部分:TCE(の比率を減少させた、予め平衡化したTCE及び超高親和性結合部分(結合剤#5)の添加TCE#1+結合剤#5)。TCE濃度は、先のLDH実験に基づくTCE#1のEC
80にほぼ対応する10pM最終濃度に設定した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図7c】実施例4に記載されるように、TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、超高親和性結合部分及び中親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。以下の条件を試験した:TCE又は結合部分の添加なし(バックグラウンド)、10nM結合部分のみの添加(結合剤#4、#5及び#9、
図7e)、TCEのみの添加(TCE#1)、結合部分:TCEの比率を減少させた、予め平衡化したTCE#1及び親結合剤の添加(TCE#1+親結合剤)、結合部分:TCE(の比率を減少させた、予め平衡化したTCE及び超高親和性結合部分(結合剤#5)の添加TCE#1+結合剤#5)。TCE濃度は、先のLDH実験に基づくTCE#1のEC
80にほぼ対応する10pM最終濃度に設定した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図7d】実施例4に記載されるように、TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、超高親和性結合部分及び中親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。以下の条件を試験した:TCE又は結合部分の添加なし(バックグラウンド)、10nM結合部分のみの添加(結合剤#4、#5及び#9、
図7e)、TCEのみの添加(TCE#1)、結合部分:TCEの比率を減少させた、予め平衡化したTCE#1及び親結合剤の添加(TCE#1+親結合剤)、結合部分:TCE(の比率を減少させた、予め平衡化したTCE及び超高親和性結合部分(結合剤#5)の添加TCE#1+結合剤#5)。TCE濃度は、先のLDH実験に基づくTCE#1のEC
80にほぼ対応する10pM最終濃度に設定した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図7e】実施例4に記載されるように、TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、超高親和性結合部分及び中親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。以下の条件を試験した:TCE又は結合部分の添加なし(バックグラウンド)、10nM結合部分のみの添加(結合剤#4、#5及び#9、
図7e)、TCEのみの添加(TCE#1)、結合部分:TCEの比率を減少させた、予め平衡化したTCE#1及び親結合剤の添加(TCE#1+親結合剤)、結合部分:TCE(の比率を減少させた、予め平衡化したTCE及び超高親和性結合部分(結合剤#5)の添加TCE#1+結合剤#5)。TCE濃度は、先のLDH実験に基づくTCE#1のEC
80にほぼ対応する10pM最終濃度に設定した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図8a】TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介増殖阻害(T細胞媒介死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、異なる超高親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。一定濃度のTCE(TCE#1、最終濃度10pM)を、滴定した異なる結合部分(結合剤#4、#5及び#9)と混合した。混合物を100×濃度(結合部分によるTCEの99.9%超の結合を可能にするため)で少なくとも24時間プレインキュベートし、次いでIncucyte(登録商標)実験を開始する直前に100倍に希釈した。10nM結合部分のみ(結合剤#4、#5及び#9)についての陰性対照曲線を
図8dに示す。バックグラウンド曲線は、TCE又は結合部分を添加せずに作成した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した(実施例4を参照されたい)。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図8b】TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介増殖阻害(T細胞媒介死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、異なる超高親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。一定濃度のTCE(TCE#1、最終濃度10pM)を、滴定した異なる結合部分(結合剤#4、#5及び#9)と混合した。混合物を100×濃度(結合部分によるTCEの99.9%超の結合を可能にするため)で少なくとも24時間プレインキュベートし、次いでIncucyte(登録商標)実験を開始する直前に100倍に希釈した。10nM結合部分のみ(結合剤#4、#5及び#9)についての陰性対照曲線を
図8dに示す。バックグラウンド曲線は、TCE又は結合部分を添加せずに作成した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した(実施例4を参照されたい)。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図8c】TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介増殖阻害(T細胞媒介死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、異なる超高親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。一定濃度のTCE(TCE#1、最終濃度10pM)を、滴定した異なる結合部分(結合剤#4、#5及び#9)と混合した。混合物を100×濃度(結合部分によるTCEの99.9%超の結合を可能にするため)で少なくとも24時間プレインキュベートし、次いでIncucyte(登録商標)実験を開始する直前に100倍に希釈した。10nM結合部分のみ(結合剤#4、#5及び#9)についての陰性対照曲線を
図8dに示す。バックグラウンド曲線は、TCE又は結合部分を添加せずに作成した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した(実施例4を参照されたい)。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図8d】TAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介増殖阻害(T細胞媒介死滅の代用として使用)を経時的に遮断する能力について、異なる超高親和性結合部分を比較するための「単純な」Incucyte(登録商標)実験である。一定濃度のTCE(TCE#1、最終濃度10pM)を、滴定した異なる結合部分(結合剤#4、#5及び#9)と混合した。混合物を100×濃度(結合部分によるTCEの99.9%超の結合を可能にするため)で少なくとも24時間プレインキュベートし、次いでIncucyte(登録商標)実験を開始する直前に100倍に希釈した。10nM結合部分のみ(結合剤#4、#5及び#9)についての陰性対照曲線を
図8dに示す。バックグラウンド曲線は、TCE又は結合部分を添加せずに作成した。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した(実施例4を参照されたい)。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり4画像)。
【
図9a】機能的シンク区画の非存在下又は存在下でのTAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する超高親和性結合部分の能力を比較するための「複合体」Incucyte(登録商標)実験(実施例6を参照されたい)である。実験は、コーティングされていないビーズを収容する注入口(すなわち、機能的シンク区画の非存在下)(
図9a)又は解離した結合剤を捕捉することができるCD3結合ドメインでコーティングされたビーズを収容する注入口(すなわち、機能的シンク区画の存在下)(
図9b)のいずれかを用いて行った。T細胞及び異なるモル比のTCE#1対結合剤#9で調製されたプロドラッグ複合体の存在下でのTAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害曲線を、コーティングされていないビーズを用いた設定について
図9aに、コーティングされたビーズを用いた設定について
図9bに示す。対照は、示されるように、未結合TCE#1(プロドラッグ複合体の代わりに)を用いて、及びTCE又はプロドラッグ複合体を全く用いずに(バックグラウンド)行った。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり36画像)。
【
図9b】機能的シンク区画の非存在下又は存在下でのTAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害(T細胞媒介性死滅の代用として使用)を経時的に遮断する超高親和性結合部分の能力を比較するための「複合体」Incucyte(登録商標)実験(実施例6を参照されたい)である。実験は、コーティングされていないビーズを収容する注入口(すなわち、機能的シンク区画の非存在下)(
図9a)又は解離した結合剤を捕捉することができるCD3結合ドメインでコーティングされたビーズを収容する注入口(すなわち、機能的シンク区画の存在下)(
図9b)のいずれかを用いて行った。T細胞及び異なるモル比のTCE#1対結合剤#9で調製されたプロドラッグ複合体の存在下でのTAA発現腫瘍細胞のT細胞媒介性増殖阻害曲線を、コーティングされていないビーズを用いた設定について
図9aに、コーティングされたビーズを用いた設定について
図9bに示す。対照は、示されるように、未結合TCE#1(プロドラッグ複合体の代わりに)を用いて、及びTCE又はプロドラッグ複合体を全く用いずに(バックグラウンド)行った。全赤色オブジェクト面積(腫瘍細胞に対応する)を規則的間隔で決定した。エラーバーは、画像当たりの標準誤差を示す(ウェル当たり36画像)。
【
図10a】サイトカイン放出は、エクスビボアッセイにおいて、対照又は薬物分子を、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する新鮮なヒト全血に添加し、試料を、血液凝固を回避するための回転ホイール上でインキュベートことによって決定される。試験した対照及び薬物分子は、ビヒクル(星印)、1nMのα-CD123×α-CD3産業対照(黒塗りの三角形)、及び1nMのTCE#1(白塗りの四角形)、又はそれと比較して、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5(白塗りのダイヤ)を含んだ。(A)及び(B)は、未結合形態(A)及び結合剤#5との複合体化形態(B)のTCE薬物分子を示す。Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間で、TNF-α(C)、IFN-γ(D)、IL-2(E)及びIL-6(F)のサイトカイン放出を測定した。データは、1人の健康なヒトドナーからの血を用いてImmuneed AB,Swedenで行われた単一の実験からのものである。
【
図10b】サイトカイン放出は、エクスビボアッセイにおいて、対照又は薬物分子を、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する新鮮なヒト全血に添加し、試料を、血液凝固を回避するための回転ホイール上でインキュベートことによって決定される。試験した対照及び薬物分子は、ビヒクル(星印)、1nMのα-CD123×α-CD3産業対照(黒塗りの三角形)、及び1nMのTCE#1(白塗りの四角形)、又はそれと比較して、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5(白塗りのダイヤ)を含んだ。(A)及び(B)は、未結合形態(A)及び結合剤#5との複合体化形態(B)のTCE薬物分子を示す。Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間で、TNF-α(C)、IFN-γ(D)、IL-2(E)及びIL-6(F)のサイトカイン放出を測定した。データは、1人の健康なヒトドナーからの血を用いてImmuneed AB,Swedenで行われた単一の実験からのものである。
【
図10c】サイトカイン放出は、エクスビボアッセイにおいて、対照又は薬物分子を、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する新鮮なヒト全血に添加し、試料を、血液凝固を回避するための回転ホイール上でインキュベートことによって決定される。試験した対照及び薬物分子は、ビヒクル(星印)、1nMのα-CD123×α-CD3産業対照(黒塗りの三角形)、及び1nMのTCE#1(白塗りの四角形)、又はそれと比較して、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5(白塗りのダイヤ)を含んだ。(A)及び(B)は、未結合形態(A)及び結合剤#5との複合体化形態(B)のTCE薬物分子を示す。Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間で、TNF-α(C)、IFN-γ(D)、IL-2(E)及びIL-6(F)のサイトカイン放出を測定した。データは、1人の健康なヒトドナーからの血を用いてImmuneed AB,Swedenで行われた単一の実験からのものである。
【
図10d】サイトカイン放出は、エクスビボアッセイにおいて、対照又は薬物分子を、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する新鮮なヒト全血に添加し、試料を、血液凝固を回避するための回転ホイール上でインキュベートことによって決定される。試験した対照及び薬物分子は、ビヒクル(星印)、1nMのα-CD123×α-CD3産業対照(黒塗りの三角形)、及び1nMのTCE#1(白塗りの四角形)、又はそれと比較して、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5(白塗りのダイヤ)を含んだ。(A)及び(B)は、未結合形態(A)及び結合剤#5との複合体化形態(B)のTCE薬物分子を示す。Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間で、TNF-α(C)、IFN-γ(D)、IL-2(E)及びIL-6(F)のサイトカイン放出を測定した。データは、1人の健康なヒトドナーからの血を用いてImmuneed AB,Swedenで行われた単一の実験からのものである。
【
図10e】サイトカイン放出は、エクスビボアッセイにおいて、対照又は薬物分子を、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する新鮮なヒト全血に添加し、試料を、血液凝固を回避するための回転ホイール上でインキュベートことによって決定される。試験した対照及び薬物分子は、ビヒクル(星印)、1nMのα-CD123×α-CD3産業対照(黒塗りの三角形)、及び1nMのTCE#1(白塗りの四角形)、又はそれと比較して、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5(白塗りのダイヤ)を含んだ。(A)及び(B)は、未結合形態(A)及び結合剤#5との複合体化形態(B)のTCE薬物分子を示す。Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間で、TNF-α(C)、IFN-γ(D)、IL-2(E)及びIL-6(F)のサイトカイン放出を測定した。データは、1人の健康なヒトドナーからの血を用いてImmuneed AB,Swedenで行われた単一の実験からのものである。
【
図10f】サイトカイン放出は、エクスビボアッセイにおいて、対照又は薬物分子を、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する新鮮なヒト全血に添加し、試料を、血液凝固を回避するための回転ホイール上でインキュベートことによって決定される。試験した対照及び薬物分子は、ビヒクル(星印)、1nMのα-CD123×α-CD3産業対照(黒塗りの三角形)、及び1nMのTCE#1(白塗りの四角形)、又はそれと比較して、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5(白塗りのダイヤ)を含んだ。(A)及び(B)は、未結合形態(A)及び結合剤#5との複合体化形態(B)のTCE薬物分子を示す。Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間で、TNF-α(C)、IFN-γ(D)、IL-2(E)及びIL-6(F)のサイトカイン放出を測定した。データは、1人の健康なヒトドナーからの血を用いてImmuneed AB,Swedenで行われた単一の実験からのものである。
【
図11a】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図11b】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図11c】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図11d】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図11e】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図11f】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図11g】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEとB)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEとの抗腫瘍活性を比較するインビボ有効性試験である。C)インビボでの有効性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を6日目に腫瘍サイズ約70mm
3で開始した。2つの異なる用量200μg/kg及び1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対して異なる親和性を有する2つの異なる結合剤と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った非半減期延長α-CD33×α-CD3産業対照(第2群)を除いて、週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。D)ドナーBについてのヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群(産業対照)を除いて、ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。6日目に開始し、16日目に終了する治療期間が示されている。E)ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。F)ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線である。G)6つ全ての治療群の凡例である。
【
図12a】治療開始時に腫瘍が比較的小さい(約70mm
3)インビボ有効性試験中の初回投与前(pre)又は投与4時間後に採取された血液試料由来の血清において測定した、ヒトサイトカインレベルである。個々の動物のサイトカインレベルは、
図11に導入された6つの治療群について黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均はバー±SDとして表示されている。
図11と同様に、ドナーBについてヒト化が成功しなかったために、第2治療群の2匹のマウスを除外する必要があった。A)pg/ml単位のTNF-αレベルである。B)pg/ml単位のIFN-γレベルである。C)pg/ml単位のIL-2レベル及びD)pg/ml単位のIL-6レベルである。
【
図12b】治療開始時に腫瘍が比較的小さい(約70mm
3)インビボ有効性試験中の初回投与前(pre)又は投与4時間後に採取された血液試料由来の血清において測定した、ヒトサイトカインレベルである。個々の動物のサイトカインレベルは、
図11に導入された6つの治療群について黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均はバー±SDとして表示されている。
図11と同様に、ドナーBについてヒト化が成功しなかったために、第2治療群の2匹のマウスを除外する必要があった。A)pg/ml単位のTNF-αレベルである。B)pg/ml単位のIFN-γレベルである。C)pg/ml単位のIL-2レベル及びD)pg/ml単位のIL-6レベルである。
【
図12c】治療開始時に腫瘍が比較的小さい(約70mm
3)インビボ有効性試験中の初回投与前(pre)又は投与4時間後に採取された血液試料由来の血清において測定した、ヒトサイトカインレベルである。個々の動物のサイトカインレベルは、
図11に導入された6つの治療群について黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均はバー±SDとして表示されている。
図11と同様に、ドナーBについてヒト化が成功しなかったために、第2治療群の2匹のマウスを除外する必要があった。A)pg/ml単位のTNF-αレベルである。B)pg/ml単位のIFN-γレベルである。C)pg/ml単位のIL-2レベル及びD)pg/ml単位のIL-6レベルである。
【
図12d】治療開始時に腫瘍が比較的小さい(約70mm
3)インビボ有効性試験中の初回投与前(pre)又は投与4時間後に採取された血液試料由来の血清において測定した、ヒトサイトカインレベルである。個々の動物のサイトカインレベルは、
図11に導入された6つの治療群について黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均はバー±SDとして表示されている。
図11と同様に、ドナーBについてヒト化が成功しなかったために、第2治療群の2匹のマウスを除外する必要があった。A)pg/ml単位のTNF-αレベルである。B)pg/ml単位のIFN-γレベルである。C)pg/ml単位のIL-2レベル及びD)pg/ml単位のIL-6レベルである。
【
図13a】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEのサイトカイン放出を、B)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEと比較する独立したインビボ安全性試験である。C)インビボ安全性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、MOLM-13腫瘍細胞を2日目に後側腹部に皮下(s.c.)注射し、単回用量(感作誘発)を腫瘍サイズ約300~800mm
3で14日目に静脈内(i.v.)注射した。1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対してK
D≦1pMから二桁のpMまでの範囲の異なる親和性を有する3つの異なる結合剤と複合体化したTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。投与前、初回治療投与の2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に血液試料を採取して、中程度のサイズの腫瘍でのサイトカインレベルを決定した。D)確立した腫瘍(300~800mm
3)を用いたインビボ安全性試験における単回投与治療前又は単回投与治療後に採取された血液試料由来の血清中のヒトサイトカインレベル(TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6)である。サイトカインレベルは、CBAヒトTh1/Th2/Th17キット(BD Biosciences)によって、無希釈血清試料で決定した。個々の動物のサイトカインレベルは、黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均値は、非遮断TCE#2対TCE#2+結合剤治療群について、それぞれ黒実線及び灰色実線として示される。インビボ安全性試験1は、TCE#2±結合剤#1又は結合剤#4を使用して実施し、一方、別個であるが比較可能なインビボ安全性試験2は、TCE#2±結合剤#10に焦点を当てた。
【
図13b】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEのサイトカイン放出を、B)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEと比較する独立したインビボ安全性試験である。C)インビボ安全性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、MOLM-13腫瘍細胞を2日目に後側腹部に皮下(s.c.)注射し、単回用量(感作誘発)を腫瘍サイズ約300~800mm
3で14日目に静脈内(i.v.)注射した。1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対してK
D≦1pMから二桁のpMまでの範囲の異なる親和性を有する3つの異なる結合剤と複合体化したTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。投与前、初回治療投与の2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に血液試料を採取して、中程度のサイズの腫瘍でのサイトカインレベルを決定した。D)確立した腫瘍(300~800mm
3)を用いたインビボ安全性試験における単回投与治療前又は単回投与治療後に採取された血液試料由来の血清中のヒトサイトカインレベル(TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6)である。サイトカインレベルは、CBAヒトTh1/Th2/Th17キット(BD Biosciences)によって、無希釈血清試料で決定した。個々の動物のサイトカインレベルは、黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均値は、非遮断TCE#2対TCE#2+結合剤治療群について、それぞれ黒実線及び灰色実線として示される。インビボ安全性試験1は、TCE#2±結合剤#1又は結合剤#4を使用して実施し、一方、別個であるが比較可能なインビボ安全性試験2は、TCE#2±結合剤#10に焦点を当てた。
【
図13c】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEのサイトカイン放出を、B)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEと比較する独立したインビボ安全性試験である。C)インビボ安全性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、MOLM-13腫瘍細胞を2日目に後側腹部に皮下(s.c.)注射し、単回用量(感作誘発)を腫瘍サイズ約300~800mm
3で14日目に静脈内(i.v.)注射した。1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対してK
D≦1pMから二桁のpMまでの範囲の異なる親和性を有する3つの異なる結合剤と複合体化したTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。投与前、初回治療投与の2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に血液試料を採取して、中程度のサイズの腫瘍でのサイトカインレベルを決定した。D)確立した腫瘍(300~800mm
3)を用いたインビボ安全性試験における単回投与治療前又は単回投与治療後に採取された血液試料由来の血清中のヒトサイトカインレベル(TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6)である。サイトカインレベルは、CBAヒトTh1/Th2/Th17キット(BD Biosciences)によって、無希釈血清試料で決定した。個々の動物のサイトカインレベルは、黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均値は、非遮断TCE#2対TCE#2+結合剤治療群について、それぞれ黒実線及び灰色実線として示される。インビボ安全性試験1は、TCE#2±結合剤#1又は結合剤#4を使用して実施し、一方、別個であるが比較可能なインビボ安全性試験2は、TCE#2±結合剤#10に焦点を当てた。
【
図13d】Molm-13腫瘍担持PBMC移植NOGマウスにおける、A)未結合TCEのサイトカイン放出を、B)2つの異なる結合剤と複合体化したTCEと比較する独立したインビボ安全性試験である。C)インビボ安全性試験の試験デザインである。2人のヒトドナー由来のPBMCを0日目に移植し、MOLM-13腫瘍細胞を2日目に後側腹部に皮下(s.c.)注射し、単回用量(感作誘発)を腫瘍サイズ約300~800mm
3で14日目に静脈内(i.v.)注射した。1000μg/kgで投与された未結合TCE#2を、CD3結合ドメインに対してK
D≦1pMから二桁のpMまでの範囲の異なる親和性を有する3つの異なる結合剤と複合体化したTCE#2と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時にTCEの100%複合体化速度を保証した。投与前、初回治療投与の2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に血液試料を採取して、中程度のサイズの腫瘍でのサイトカインレベルを決定した。D)確立した腫瘍(300~800mm
3)を用いたインビボ安全性試験における単回投与治療前又は単回投与治療後に採取された血液試料由来の血清中のヒトサイトカインレベル(TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6)である。サイトカインレベルは、CBAヒトTh1/Th2/Th17キット(BD Biosciences)によって、無希釈血清試料で決定した。個々の動物のサイトカインレベルは、黒塗りの記号(ドナーA、n=5)又は白塗りの記号(ドナーB、n=5)としてプロットされ、平均値は、非遮断TCE#2対TCE#2+結合剤治療群について、それぞれ黒実線及び灰色実線として示される。インビボ安全性試験1は、TCE#2±結合剤#1又は結合剤#4を使用して実施し、一方、別個であるが比較可能なインビボ安全性試験2は、TCE#2±結合剤#10に焦点を当てた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概要
本発明は、結合部分及び薬物分子を含む組成物であって、当該結合部分が薬物分子に可逆的に結合し、当該結合部分が、結合した場合に、薬物分子の生物学的活性を阻害する、組成物に関する。本発明のそのような組成物は、インビボでの投与時に薬物分子を徐放するプロドラッグ複合体である。投与時に活性薬物分子を徐放することによって、そうでなければ薬物分子に関連する有害作用又はそのリスクを最小限に抑えることができる。
【0019】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載の結合部分は、薬物分子に非共有結合様式で強固に結合することが理解される。結合は、薬物分子の活性部位で、又は薬物分子上の別の部位で生じ得る。結合は、抗イディオタイプであってもよい。結合位置に関係なく、結合部分が結合することによって、薬物分子の生物学的活性(すなわち、作用機序)を阻害する。薬物分子を過剰な結合部分と共に製剤化することで、薬物分子の完全な又はほぼ完全な複合体化及び阻害、並びに組成物(すなわち、プロドラッグ複合体)の形成をもたらす。患者への投与時、i)体内の結合部分及び薬物の濃度が非常に低いこと、並びにii)結合部分が系から急速に排除されることにより、プロドラッグ複合体は強く希釈され、結合部分の再結合が無視できる程度になるため、活性薬物分子を、時間をかけて連続的に放出することになる。
【0020】
図1~
図3は、徐放の概念、並びに本発明の結合部分及び組成物(プロドラッグ複合体)の特性の更なる例示及び説明を提供する。
【0021】
本発明は更に、そのような組成物を形成する方法、そのような組成物を使用する治療方法、及び療法におけるそのような組成物の使用に関する。例えば、本発明は、癌などの増殖性疾患の治療における、そのような組成物の使用に関する。
【0022】
薬物分子に対して結合特異性を有する結合部分であって、当該結合部分の当該薬物分子への結合が、当該薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害する複合体を形成する、結合部分についても記載されている。例えば、当該薬物分子のそのような生物学的活性は、生物学的標的への当該薬物分子の結合である。
【0023】
本発明は更に、当該結合部分をコードする核酸、及び宿主細胞を用いてこれらを作製する方法に関する。
【0024】
定義
本明細書で別途定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、及びタンパク質並びに核酸化学の技術に関連して使用される命名法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0025】
用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有/収容する(containing)」は、特に明記しない限り、非限定的用語として解釈されるべきである。本発明の態様で、ある特徴について、「~を含む」と説明されている場合、実施形態では、その特徴について「~からなる」又は「~から本質的になる」も考えられる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示を意味する文言(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図するものであり、別段の請求がない限り、本開示の範囲に制限を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない任意の要素を本開示の実施に不可欠なものとして示すものとして解釈されるべきではない。実施されている例以外、又は別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語が当業者によって解釈されるように、その用語によって修飾されると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特に明記しない限り、所与の数値の±10%に相当する。
【0026】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内に入る各別個の値及び各エンドポイントを個々に指す簡略法として役立つことを単に意図しており、各別個の値及びエンドポイントは、本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明の文脈において、用語「タンパク質」とは、ポリペプチドを含む分子を指し、ポリペプチドの少なくとも一部は、単一のポリペプチド鎖内及び/又は複数のポリペプチド鎖間において二次、三次、又は四次構造を形成することによって、定義された三次元配列を有する、又は獲得することができる。タンパク質が2つ以上のポリペプチド鎖を含む場合、個々のポリペプチド鎖は、非共有結合又は共有結合により、例えば、2つのポリペプチド間のジスルフィド結合により、結合され得る。二次及び/又は三次構造を形成することによって定義された三次元配列を個別に有する、又は獲得することができるタンパク質の一部は、「タンパク質ドメイン」と呼ばれる。そのようなタンパク質ドメインは、当業者に周知である。
【0028】
用語「薬物分子」(用語「薬物」と本明細書で相互交換可能に使用される)は、ポリペプチド又はタンパク質を含む治療剤を指し、当該ポリペプチド又はタンパク質は、結合部分によって結合することができる部位を含有する。
【0029】
組換えタンパク質及び組換えポリペプチドなどで使用される用語「組換え」とは、当該タンパク質又はポリペプチドが、当業者に周知の組換えDNA技術の使用によって産生されることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードする組換えDNA分子(例えば遺伝子合成によって生産される)を細菌発現プラスミド(例えばpQE30、QIAgen)、酵母発現プラスミド、哺乳動物発現プラスミド、若しくは植物発現プラスミド、又はin vitro発現を可能にするDNAにクローニングすることができる。例えば、そのような組換え細菌発現プラスミドを適切な細菌(例えば、大腸菌)に挿入すると、これらの細菌は、この組換えDNAによってコードされたポリペプチドを生産することができる。それに応じて生産されたポリペプチド又はタンパク質は、組換えポリペプチド又は組換えタンパク質と呼ばれる。
【0030】
本発明の文脈において、用語「結合部分」又は「結合剤」は、ポリペプチド又はタンパク質を含む結合剤を指し、当該ポリペプチド又はタンパク質は、薬物分子に非共有結合することができる。結合部分は、必ずしも薬物分子の活性部位に結合する必要はない。しかしながら、結合部分は、薬物の作用機序を阻害するような様式で結合する必要がある。これは、薬物の活性部位に結合することによるものであってもよいが、薬物分子上の別の部位に結合して、当該薬物の立体構造を変化させる(すなわち、アロステリック阻害)か、又は薬物分子の活性部位の立体障害になることによるものであってもよい。薬物分子の活性部位は、薬物分子の生物学的活性に関与する。生物学的活性は、酵素活性又は生物学的標的への結合であり得る。薬物分子への結合部分の結合は、薬物分子の生物学的活性を阻害する。例えば、薬物分子への結合部分の結合は、薬物分子の酵素活性を阻害するか、又は生物学的標的への薬物分子の結合を阻害する。薬物分子への結合部分の結合は、抗イディオタイプであってもよい。したがって、結合部分は、薬物分子の抗イディオタイプ結合剤であってもよい。
【0031】
本発明において使用される結合部分は、抗体、代替足場、及びポリペプチドを含む。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、免疫系が外来抗原を検出するときに典型的に生成されるものなどのインタクトな抗体分子だけでなく、抗原結合能力を保持する抗体分子の任意の断片、バリアント及び合成又は操作された類似体も指す。そのような断片及びバリアントもまた、当該技術分野で周知であり、インビトロ及びインビボの両方で正しく使用されている。したがって、用語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン分子、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2などの抗体断片、及び単鎖V領域断片(scFv)、二重特異性又は多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合タンパク質、非従来型抗体、並びに免疫グロブリン分子由来の抗原結合ドメインを含むタンパク質を包含する。本明細書で使用される場合、用語「代替足場」は、タンパク質を含むか、又はタンパク質からなるが、抗体ではない任意の分子を指す。
【0032】
これらの異なる構造型のいずれかの結合部分は、薬物分子に強固に結合し、薬物分子の作用機序を遮断し、プロドラッグ複合体を形成することができる。プロドラッグ複合体はゆっくりとインビボで脱複合体化し、薬物分子を体内に放出する。好ましい一実施形態では、結合部分は、薬物分子に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含む。別の好ましい実施形態では、結合部分は、薬物分子に対して結合特異性を有する抗体を含む。別の好ましい実施形態では、結合部分は、薬物分子に対して結合特異性を有する代替足場を含み、代替足場は、アンキリン反復ドメインを含まない。好ましい一実施形態では、薬物分子は、抗体を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該抗体に対して結合特異性を有する抗イディオタイプ抗体である。別の好ましい実施形態では、薬物分子は、抗体を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該抗体に対して結合特異性を有する、例えばアンキリン反復ドメインなどの抗イディオタイプ代替足場である。別の好ましい実施形態では、薬物分子は、例えばアンキリン反復ドメインなどの代替足場を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該代替足場に対して結合特異性を有する抗イディオタイプ抗体である。別の好ましい実施形態では、薬物分子は、例えばアンキリン反復ドメインなどの代替足場を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該代替足場に対して結合特異性を有する、例えばアンキリン反復ドメインなどの抗イディオタイプ代替足場である。
【0033】
用語「核酸」又は「核酸分子」は、リボ核酸(RNA)分子又は一本鎖若しくは二本鎖のいずれかのデオキシリボ核酸(DNA)分子であることができるポリヌクレオチド分子を指し、DNA又はRNAの修飾形態及び人工形態を含む。核酸分子は、単離された形態で存在するか、又は組換え核酸分子若しくはベクターに含まれているかのいずれかであることができる。
【0034】
用語「生物学的標的」は、核酸分子、ポリペプチド若しくはタンパク質、炭水化物、又は任意の他の天然に存在する分子などの個々の分子を指し、そのような個々の分子の任意の一部を含むか、又はそのような分子の2つ以上の複合体、又は細胞全体若しくは組織試料、又は任意の非天然化合物を指す。好ましくは、標的は天然に存在する、若しくは、非天然のポリペプチド若しくはタンパク質、又は、例えば、天然に存在する若しくは非天然のリン酸化、アセチル化、若しくはメチル化によって修飾された、化学修飾を含むポリペプチド若しくはタンパク質である。いくつかの実施形態では、生物学的標的は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は別のタイプの免疫細胞などの免疫細胞である。いくつかの他の実施形態では、生物学的標的は、腫瘍細胞である。
【0035】
本発明の文脈において、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって結合された、複数、すなわち2つ以上のアミノ酸の鎖からなる分子に関する。好ましくは、ポリペプチドは、ペプチド結合によって結合された8個超のアミノ酸からなる。用語「ポリペプチド」はまた、システインのS-S架橋によって結合されたアミノ酸の複数の鎖も含む。ポリペプチドは、当業者に周知である。
【0036】
特許出願第2002/020565号及びForrerら、2003(Forrer,P.,Stumpp,M.T.,Binz,H.K.,Pluckthun,A.,2003.「FEBS Letters」第539巻第2~6頁)には、反復タンパク質の特徴及び反復ドメインの特徴、技術、及び用途の一般的な説明が含まれる。用語「反復タンパク質」とは、1つ以上の反復ドメインドメインを含むタンパク質を指す。好ましくは、反復タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの反復ドメインを含む。更に、当該反復タンパク質は、追加の非反復タンパク質ドメイン、ポリペプチドタグ、及び/又はペプチドリンカーを含んでもよい。反復ドメインは、結合ドメインであり得る。
用語「反復ドメイン」は、構造単位として2つ以上の連続する反復モジュールを含むタンパク質ドメインを指し、この反復モジュールは、構造相同性及び配列相同性を有する。好ましくは、反復ドメインはまた、N末端及び/又はC末端キャッピングモジュールも含む。明確にするために、キャッピングモジュールは、反復モジュールであり得る。そのような反復ドメイン、反復モジュール、及びキャッピングモジュール、配列モチーフ、並びに構造相同性及び配列相同性は、アンキリン反復ドメイン(Binz et al.,J.Mol.Biol.332,489-503,2003;Binz et al.,Nature Biotech.第22巻(第5号):575-582(2004)、国際公開第2002/020565号、国際公開第2012/069655号)、高ロイシン反復ドメイン(国際公開第2002/020565号)、テトラトリコペプチド反復ドメイン(Main,E.R.,Xiong,Y.,Cocco,M.J.,D’Andrea,L.,Regan,L.,Structure 11(5),497-508,2003)、及びアルマジロ反復ドメイン(国際公開第2009/040338号)の例から当業者に周知である。そのような反復ドメインが反復されるアミノ酸配列を含むタンパク質とは異なることは、当業者には更に周知であり、反復されるアミノ酸配列は全て、個々のドメイン(例えば、フィブロネクチンのFN3ドメイン)を形成することができる。
【0037】
用語「アンキリン反復ドメイン」は、構造単位として2つ以上の連続するアンキリン反復モジュールを含む反復ドメインを指す。アンキリン反復ドメインは、標準的な組換えDNA技術を使用して、任意選択で半減期延長ドメインと共に、より大きなアンキリン反復タンパク質にモジュール式に組み立てられてもよい(例えば、Forrer,P.,et al.,FEBS letters 539,2-6,2003、国際公開第2002/020565号、国際公開第2016/156596号、国際公開第2018/054971号を参照されたい)。
【0038】
設計アンキリン反復タンパク質及び設計アンキリン反復ドメインなどにおいて使用される用語「設計/設計された」は、そのような反復タンパク質及び反復ドメインがそれぞれ人工のものであり、自然界では生じないという特性を指す。本明細書に記載の設計反復タンパク質は、少なくとも1つの設計反復ドメインを含む。好ましくは、設計反復ドメインは、設計アンキリン反復ドメインである。
【0039】
用語「標的相互作用残基」は、薬物分子との直接相互作用に寄与する結合部分のアミノ酸残基を指す。例えば、結合部分が設計アンキリン反復ドメインである場合、用語「標的相互作用残基」は、薬物分子との直接相互作用に寄与する設計アンキリン反復ドメインのアミノ酸残基を指す。
【0040】
用語「フレームワーク残基」又は「フレームワーク位置」は、反復モジュールのアミノ酸残基を指し、これは、折り畳みトポロジーに寄与する、すなわち、当該反復モジュールの折り畳みに寄与するか、又は隣接モジュールとの相互作用に寄与する。そのような寄与は、反復モジュール内の他の残基との相互作用、又はα-ヘリックス若しくはβ-シートに見られるポリペプチド骨格構造への影響、又は直鎖ポリペプチド若しくはループを形成するアミノ酸ストレッチへの関与であってもよい。
【0041】
そのようなフレームワーク及び標的相互作用残基は、X線結晶解析、NMR及び/若しくはCD分光法などの物理化学法によって得られる構造データの分析によって、又は構造生物学及び/若しくはバイオインフォマティクスにおいて当業者に周知の既知の関連する構造情報と比較することによって同定され得る。
【0042】
用語「反復モジュール」は、元々は天然に生じる反復タンパク質の反復単位に由来する、設計反復ドメインの反復アミノ酸配列及び構造単位を指す。反復ドメインに含まれる各反復モジュールは、天然に存在する反復タンパク質のファミリー又はサブファミリー、好ましくは、アンキリン反復タンパク質ファミリーの1つ以上の反復単位に由来する。更に、反復ドメインに含まれる各反復モジュールは、標的上で選択された反復ドメインから得られた、同じ標的特異性を有する相同反復モジュールから推定される「反復配列モチーフ」を含み得る。
【0043】
したがって、用語「アンキリン反復モジュール」は、元々天然に存在するアンキリン反復タンパク質の反復単位に由来する反復モジュールを指す。アンキリン反復タンパク質は、当業者に周知である。設計アンキリン反復タンパク質は、以前に記載されており、例えば、国際公開第2002/020565号、同第2010/060748号、同第2011/135067号、同第2012/069654号、同第2012/069655号、同第2014/001442号、同第2014/191574号、同第2014/083208号、同第2016/156596号、及び同第2018/054971号を参照されたく、これらは全て、その全体が参照により組み込まれる。典型的には、アンキリン反復モジュールは、ループによって分離された2つのアルファヘリックスを形成する約31~33個のアミノ酸残基を含む。
【0044】
反復モジュールは、標的特異的反復ドメインを選択する目的で、ライブラリー内でランダム化されていないアミノ酸残基を有する位置(本明細書で相互交換可能に使用される「非ランダム化された位置」又は「固定された位置」)及び標的特異的反復ドメインを選択する目的で、ライブラリー内でランダム化されたアミノ酸残基を有する位置(「ランダム化された位置」)を含み得る。非ランダム化された位置は、フレームワーク残基を含む。ランダム化された位置は、標的相互作用残基を含む。「ランダム化された」とは、例えば、反復モジュールのアミノ酸位置で2つ以上のアミノ酸が許可され、通常の20個の天然に存在するアミノ酸のいずれかが許可された、若しくはシステイン以外のアミノ酸、又はグリシン、システイン、及びプロリン以外のアミノ酸などの、20個の天然に存在するアミノ酸のほとんどが許可されたことを意味する。
【0045】
用語「反復配列モチーフ」は、1つ以上の反復モジュールから推定されるアミノ酸配列を指す。好ましくは、当該反復モジュールは、同じ標的に対して結合特異性を有する反復ドメインに由来する。そのような反復配列モチーフは、フレームワーク残基位置及び標的相互作用残基位置を含む。当該フレームワーク残基位置は、反復モジュールのフレームワーク残基の位置に対応する。同様に、当該標的相互作用残基位置は、反復モジュールの標的相互作用残基の位置に対応する。反復配列モチーフは、非ランダム化位置及びランダム化位置を含む。
【0046】
用語「反復単位」は、1つ以上の天然に存在するタンパク質の配列モチーフを含むアミノ酸配列を指し、当該「反復単位」は、複数のコピーに見出され、タンパク質の折り畳みを決定する全ての当該モチーフに共通の定義された折り畳みトポロジーを示す。そのような反復単位の例としては、ロイシンに富む反復単位、アンキリン反復単位、アルマジロ反復単位、テトラトリコペプチド反復単位、HEAT反復単位、及びロイシンに富むバリアント反復単位が挙げられる。
【0047】
結合部分は、代替標的(例えば、細胞又は物質)の場合よりも、特定の薬物分子とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、より高い親和性及び/又はより高い親和力で反応又は会合する場合、薬物分子に「特異的に結合する」又は「優先的に結合する」(本明細書で互換的に使用される)。結合部分は、所与のセットの条件下で、適切な薬物分子への結合を代替の薬物分子への結合と比較することによって、結合の特異性について試験され得る。いくつかの実施形態では、結合分子が、代替の薬物分子に対するよりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍高い親和性で適切な薬物分子に結合する場合、それは特異的であるとみなされる。また、この定義を読むことにより、例えば、第1の薬物分子に特異的又は優先的に結合する結合部分が、第2の薬物分子に特異的又は優先的に結合してもしなくてもよいことが理解される。したがって、「特異的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要としない(しかし、それを含むことができる)。概して、結合部分は、指定されたアッセイ条件下で特定の薬物分子に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の成分に有意な量で結合しない。
【0048】
任意の分子の別の分子への結合は、2つの力、すなわち、会合速度(kon)及び解離速度(koff)によって支配されている。次いで、標的[T]に対する任意の結合剤[B]の親和性は、平衡解離定数KDによって表すことができ、これはkoff/konの商である。
【0049】
【数3】
k
onは、単位M
-1s
-1を有する結合反応の二次速度定数であり、解離反応k
offは、単位s
-1を有する一次速度定数である。このことから、会合反応は反応物の濃度に依存するが、解離は濃度に依存せず、単純な指数関数的減衰関数に従うことが明らかになる。したがって、プロドラッグ複合体の形成は、k
on及びk
offによって支配されている。
【0050】
プロドラッグ複合体の半減期は、プロドラッグ複合体(又はその中の結合部分)が薬物の作用機序を「遮断」又は「阻害」するため、本明細書では「遮断半減期」又は「遮断T1/2」と呼ばれる。遮断T1/2は、以下の式:
【0051】
【数4】
に従って計算することができ、
式中、「ln(2)」は、数2の自然対数(logarsus naturalis)であり、約0.693である。同様に、結合部分は、本発明の組成物中で薬物分子と複合体化された場合に、遮断半減期(又は遮断T
1/2)を有すると言うことができる。様々なアッセイ形式を使用して、目的の薬物分子に特異的に結合する結合部分を選択又は特徴付けることができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)及びウエスタンブロット分析は、標的薬物分子に特異的に結合する結合部分を同定するために使用され得る多くのアッセイの一部である。典型的には、特異的又は選択的結合は、少なくとも2倍のバックグラウンドシグナル又はノイズ、より典型的には10倍超のバックグラウンドシグナルである。より具体的には、結合部分は、平衡解離定数(K
D)値が<1μM、例えば、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<100pM、<10pM、又は<1pMである場合、標的に「特異的に結合する」と言われる。
【0052】
結合親和性を測定する様々な方法は、技術分野で周知であり、それらのいずれも、本発明の目的のために使用することができる。例えば、本明細書に例示されるように、薬物分子標的に対する特定の結合部分の結合親和性は、KD値として表すことができ、これは、結合部分及び薬物分子標的の解離定数を指す。KDは、「オフレート(Koff)」とも呼ばれる解離速度と、会合速度又は「オンレート(Kon)」との比率である。したがって、KDはKoff/Konに等しく、モル濃度(M)として表され、KDが小さいほど、結合の親和性が強くなる。
【0053】
KD値は、任意の適切な方法を使用して決定することができる。KDを測定するための1つの例示的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である(例えば、Nguyen et al.Sensors(Basel).2015 May 5;15(5):10481-510を参照されたい)。KD値は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用するSPRによって測定されてもよい。BIAcore動的分析は、例えば、それらの表面上の固定化分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)を有するチップからの抗原の結合及び解離を分析することを含む。タンパク質のKDを決定するための別の方法は、Bio-Layer Interferometryを使用することである(例えば、Shah et al.J Vis Exp.2014;(84):51383を参照されたい)。KD値は、OCTET(登録商標)テクノロジー(Octet QKe system、ForteBio)を使用して測定することができる。代替的に又は追加的に、Sapidyne Instruments(Boise,Id.)から入手可能なKinExA(登録商標)(動的排除アッセイ)アッセイを使用することもできる。2つの結合パートナー間の結合親和性を評価するのに好適な任意の方法が本明細書に包含される。表面プラズモン共鳴(SPR)が特に好ましい。最も好ましくは、KD値は、PBS中及びSPRによって決定される。
【0054】
用語「PBS」は、137mM NaCl、10mMリン酸塩及び2.7mM KClを含み、pHが7.4であるリン酸緩衝水溶液を意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、少なくとも95%を意味する。したがって、本明細書で使用される場合、句「実質的に全ての薬物分子が結合部分によって結合される」などは、全ての薬物分子の少なくとも95%が結合部分によって結合されることを意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、少なくとも99.9%を意味する。
【0056】
「治療する」という用語、並びにそれに関連する単語は、必ずしも100%又は完全な治癒を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有するものとして認識する治療の程度は様々である。この点で、本明細書に記載の治療方法及び医薬使用は、任意の量又は任意のレベルの治療を提供することができる。更に、本開示の方法によって提供される治療は、1つ又は複数の病態又は症状の治療(すなわち、緩和する)を含むことができる。例示的な態様では、本発明は、患者へのプロドラッグ複合体の投与を含む、薬物分子による治療方法であって、患者が体験する有害作用又はそのリスクが、同量の薬物分子がプロドラッグ複合体中に(すなわち、本発明の結合部分との複合体中に)存在せずに投与された場合に患者が体験する有害作用又はそのリスクと比較して低減される、方法を提供する。したがって、プロドラッグ複合体を形成するための、本発明の結合部分の使用は、低減された有害作用若しくは低減されたそのリスクを伴う治療方法、及び/又はより高用量の薬物分子若しくは短期間にわたる薬物分子の投与を伴う、治療方法を可能にする。
【0057】
任意の所与の疾患又は状態における治療応答は、その疾患又は状態に特異的な標準化された応答基準によって決定することができる。療法を受けている対象は、治療剤の投与に関連する有害作用又はそのリスクの低減と共に、疾患に関連する症状の改善という有益な効果を体験し得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「増殖性疾患」は、細胞の過剰産生を特徴とする疾患を指す。増殖性疾患の例としては、癌、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、乾癬、特発性肺線維症、強皮症及び肝硬変が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、増殖性疾患は、癌である。
【0059】
結合部分
本明細書に記載の結合部分は、薬物分子に対して高い親和性で結合することができる、様々な異なる構造を有するポリペプチド又はタンパク質である。本発明で使用するための結合部分は、抗体、代替足場、及びポリペプチドを含む。
【0060】
抗体は、抗体又は免疫グロブリン分子に由来する抗原結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質を含む。抗原結合ドメインは、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び単一ドメイン抗体、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、及び例えば、ヒト又はラクダ科動物起源の可変ドメイン(VHH)に由来し得る。いくつかの例では、抗原結合ドメインが、結合部分が最終的に使用されるのと同じ種に由来することが有益である。例えば、ヒトにおける使用のために、本明細書に記載の結合部分の抗原結合ドメインが、ヒト又はヒト化抗原結合ドメインを含むことは有益であり得る。抗体は、当該技術分野で周知の技術を用いて得ることができる。
【0061】
一実施形態では、結合部分は、ラクダ科ナノボディーである。ラクダ科ナノボディー(ラクダ科単一ドメイン抗体又はVHHとしても知られる)は、ラマ、ラクダ、及びアルパカなどの哺乳動物のラクダ科に由来する。他の抗体とは異なり、ラクダ科抗体は軽鎖を欠き、2つの同一の重鎖から構成される。ラクダ科抗体は、典型的には、約15kDaの領域の比較的低い分子量を有する。
【0062】
一実施形態では、結合部分は、サメ抗体ドメインである。ラクダ科ナノボディーと同様に、サメ抗体ドメインも軽鎖を欠いている。
【0063】
抗原(薬物分子など)に結合することができ、抗体又は免疫グロブリン分子に由来しない結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質を、代替足場は含む。代替足場の結合ドメインは、様々な異なるポリペプチド又はタンパク質構造を含んでもよく、又はそれに由来してもよい。代替足場としては、アドネクチン(モノボディー)、アフィボディー、アフィリン、アフィマー及びアプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベースの足場、アトリマー、アビマー、アンキリン反復タンパク質ベースの足場(例えば、DARPin(登録商標)タンパク質)、フィノマー、ノッチン、及びクニッツドメインペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。代替足場は、例えば、Yu et al.,Annu Rev Anal Chem(Palo Alto Calif).2017 June 12;10(1):293-320.doi:10.1146/annurevanchem-061516-045205に記載されている。
【0064】
アドネクチンは、元々はヒトフィブロネクチンIII型タンパク質型タンパク質(10Fn3)の10番目の細胞外ドメインに由来する。フィブロネクチンIII型ドメインは、7又は8個のβ鎖を有し、これらは2つのβシートの間に分布しており、βシート自体が互いにパッキングしてタンパク質のコアを形成し、更にループ(CDRに類似)を含み、ループはベータ鎖を互いに接続し、溶媒が露出している。βシートサンドイッチの各縁部には少なくとも3つのそのようなループが存在し、縁部は、β鎖の方向に垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6818418号を参照されたい)。この構造のために、この非抗体足場は、抗体の抗原結合特性の性質及び親和性に類似した抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスに類似するインビトロでのループ無作為化及びシャッフリング手法において使用することができる。
【0065】
アフィボディー親和性リガンドは、細菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の表面タンパク質であるプロテインAのIgG結合ドメインのうちの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルから構成される。この足場ドメインは58個のアミノ酸からなり、そのうちの13個を無作為化して、多数のリガンドバリアントを有するアフィボディーライブラリーを作製する(例えば、米国特許第5831012号を参照されたい)。アフィボディー分子は抗体を模倣しているが、抗体の場合の約150kDaと比較して、約6kDaの分子量を有し、かなり小さくなっている。サイズの違いにもかかわらず、アフィボディー分子の結合部位は抗体の結合部位と類似性を有する。
【0066】
アフィリンは、構造的にヒトユビキチンに由来する(歴史的にはγ-Bクリスタリンにも由来する)合成抗体模倣物である。アフィリンは、主にβシート構造及び約20kDaの総分子量を有する2つの同一のドメインからなる。アフィリンは、修飾に好適ないくつかの表面露出したアミノ酸を含有する。アフィリンは、抗原に対する親和性及び特異性において抗体に似ているが、構造においては似ていない。
【0067】
アフィマーは、ペプチドアプタマの一種であり、SQT(Stefin A quadruple mutant-Tracy)(ステフィンA四重変異体-トレイシー)として知られる構造を有する。アプタマー及びアフィマーは、結合ペプチドのN末端及びC末端両方が不活性な足場に埋め込まれた、構造上の制約のために不活性で剛性のあるタンパク質足場と親和的に結合する原因となる短いペプチドである。
【0068】
アフィチンは、特異的結合親和性を得るように操作されたDNA結合タンパク質Sac7dのバリアントである。Sac7dは、元々は超好熱菌古細菌Sulfolobus acidocaldariusに由来し、DNAと結合してそれの熱変性を防止する。アフィチンは、商業的にはNanofitinとして知られている。
【0069】
アルファボディーは、様々な抗原に結合するように操作された小さな(約10kDa)タンパク質であり、したがって抗体模倣物である。アルファボディー足場は、コイルドコイル構造に基づいてコンピュータで設計される。標準的なアルファボディー足場は、高グリシン/セリンリンカーを介して連結された、各々4つのヘプタッド反復(7残基のストレッチ)から構成される3つのαヘリックスを含有する。標準的なヘプタッド配列は、「IAAIQKQ」である。細胞外及び細胞内タンパク質を標的とするアルファボディーの能力は、それらの高い結合親和性と組み合わせて、抗体では到達することができない標的にそれらが結合することを可能にし得る。
【0070】
アンチカリンは、リポカリンに見出される強固で保存的なβバレル構造を有する結合タンパク質の群である。リポカリンは、シグナル伝達分子などの様々な生物学的分子の認識、貯蔵、及び輸送を担う1つのペプチド鎖(150~190アミノ酸)を含む細胞外タンパク質の一種である。
【0071】
アルマジロ反復タンパク質ベースの足場は、真核生物において豊富であり、広範な生物学的プロセス、特に核輸送に関連するプロセスに関与する。アルマジロ反復タンパク質ベースの足場は、通常、3~5個の内部反復及び2個のキャッピングエレメントからなる。それらはまた、タンデム伸長スーパーヘリックス構造を有し、これは、伸長された立体構造で対応するペプチドリガンドと結合することが可能である。
【0072】
アトリマーは、テトラネクチンとして知られるトリマー血漿タンパク質に由来する足場であり、3つの同一の単位からなるC型レクチンのファミリーに属する。テトラネクチン内のC型レクチンドメイン(CTLD)の構造は、標的化分子との相互作用を媒介する5つの柔軟なループを有する。
【0073】
アビマーは、HER3などの天然のAドメイン含有タンパク質に由来し、アミノ酸リンカーを介して連結された多数の異なる「Aドメイン」モノマー(2~10)からなる。例えば、米国特許出願公開第2004/0175756号、同第2005/0053973号、同第2005/0048512号、及び同第2006/0008844号に記載される方法論を使用して、標的抗原に結合することができるアビマーを作製することができる。
【0074】
一実施形態では、結合部分は、アンキリン反復タンパク質である。設計又は操作されたアンキリン反復タンパク質(DARPin(登録商標)タンパク質など)は、抗体模倣タンパク質のように機能することができ、典型的には、特異性の高いかつ高親和性の標的結合を示す。設計アンキリン反復タンパク質は、1つ以上の設計アンキリン反復ドメインを含む。設計アンキリン反復ドメインは、天然アンキリン反復タンパク質に由来し、各設計アンキリン反復ドメインは、典型的には、高い特異性及び高親和性で標的タンパク質に結合する。設計アンキリン反復タンパク質は、その高い特異性、安定性、効力及び親和性により、並びに単一特異性、二重特異性又は多重特異性タンパク質を生成するためのフォーマッティングにおけるその柔軟性により、高親和性結合部分としての使用に特に好適である。設計アンキリン反復タンパク質薬物候補はまた、迅速、低コスト及び高収率製造並びに4℃での数年までの貯蔵寿命を含む好ましい開発特性を示す。設計アンキリン反復タンパク質は、本発明の結合部分の好ましい実施形態である。DARPin(登録商標)は、Molecular Partners AG.所有の登録商標である。
【0075】
フィノマーは、ヒトFynチロシンキナーゼのSrc相同ドメイン3(SH3)のアミノ酸83~145から進化した小さな球状タンパク質(約7kDa)である。フィノマーは、その高い熱安定性、システインを含まない足場、及びヒト起源により、潜在的な免疫原性を低減する、魅力的な結合分子である。
【0076】
システインノットミニタンパク質としても知られているノッチンは、典型的には、3つの逆平行βシートと、システインノットを作り出すジスルフィド結合によって縛られた拘束ループとを含む30アミノ酸長のタンパク質である。このジスルフィド結合が高い熱安定性を与え、ノッチンを魅力的な抗体模倣物にしている。
【0077】
クニッツドメインペプチド又はクニッツドメイン阻害剤は、構造フレームワークを不安定化することなく変異され得る3つのジスルフィド結合及び3つのループを有する約60個のアミノ酸を含む不規則な二次構造を有するプロテアーゼ阻害剤の一種である。
【0078】
一実施形態では、結合部分は、T細胞受容体(TCR)に由来する抗原結合ドメインを含むポリペプチド又はタンパク質である。
【0079】
結合部分の例
本発明で使用するためのアンキリン反復ドメインの例は、配列番号1~10(実施例を参照されたい)によって提供される。
【0080】
配列番号1~10のアンキリン反復ドメインは、配列番号12~15から選択されるアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に高い親和性で特異的に結合する。例えば、配列番号1~10のアンキリン反復ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に高い親和性で特異的に結合する。一実施形態では、配列番号1~10のアンキリン反復ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。別の実施形態では、配列番号1~10のアンキリン反復ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。配列番号12~15から選択されるアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子は、腫瘍関連抗原(TAA)に対して特異性を有する別の結合分子に遺伝的に融合され、T細胞エンゲージャー(TCE)薬物分子を形成することができる。そのようなT細胞エンゲージャー薬物分子への、配列番号1~10のいずれかのアンキリン反復ドメインの結合は、T細胞エンゲージャー薬物分子のCD3への結合を阻害し、ひいてはT細胞エンゲージャー薬物分子の生物学的活性を阻害する。
【0081】
したがって、一実施形態では、本発明の結合部分は、配列番号1~10からなる群から選択されるアンキリン反復ドメインと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアンキリン反復ドメインである。
【0082】
一実施形態では、結合部分は、配列番号1~10からなる群から選択されるアンキリン反復ドメインと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアンキリン反復ドメインである。
【0083】
一実施形態では、結合部分は、アンキリン反復ドメインであり、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号1~10からなる群から選択される。
【0084】
一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号1~10及び(2)配列番号1~10のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む設計アンキリン反復ドメインである。
【0085】
一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大9個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大8個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大7個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大6個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大5個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大4個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大3個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大2個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号30~51及び(2)配列番号30~51のうちいずれかにおける最大1個のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む設計アンキリン反復タンパク質である。
【0086】
本明細書に記載の結合部分の全てにおいて、結合部分のアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸によって置換され得る。いくつかの実施形態では、最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個の置換が、本明細書に記載の結合部分のいずれかにおいて行われる。
【0087】
いくつかの実施形態では、最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個の置換が、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、任意のアンキリン反復ドメインにおいて行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大15個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大14個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大13個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大12個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大11個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大10個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大9個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大8個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大7個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大6個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大5個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大4個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大3個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大2個の置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~10の配列のいずれかに対して、最大1個の置換が行われる。
【0088】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は全て、フレームワーク位置で行われる。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は全て、非無作為化位置で行われる。設計アンキリン反復ドメインにおける無作為化位置の場所は、例えば、Binz et al.,Nature Biotech.22(5):575-582(2004)に開示されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、非置換結合部分のKD値と比較して、KD値を約1000倍超、約100倍超、又は約10倍超変化させない。例えば、いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1~10の配列のいずれかを含む結合部分を、配列番号12~15の配列のいずれかを含む薬物分子の結合のKD値と比較して、KD値を約1000倍超、約300倍超、約100倍超、約50倍超、約25倍超、約10倍超、又は約5倍超変化させない。
【0090】
特定の実施形態では、結合部分におけるアミノ酸置換は、以下の表1による保存的置換である。
【0091】
【0092】
結合部分が、アンキリン反復ドメインである場合、いくつかの実施形態では、置換は、アンキリン反復ドメインの構造的コア残基の外側、例えば、アルファヘリックスを接続するベータループ内で行われ得る。他の実施形態では、置換は、アンキリン反復ドメインの構造的コア残基内で行われ得る。例えば、アンキリンドメインは、コンセンサス配列:xDxxGxTPLHLAxxxGxxxlVxVLLxxGADVNA(配列番号52)を含んでもよく、式中、「x」は、任意のアミノ酸(好ましくはシステイン、グリシン、又はプロリンではない)を表し、又はxDxxGxTPLHLAAxxGHLEIVEVLLKzGADVNA(配列番号53)を含んでもよく、式中、「x」は、任意のアミノ酸(好ましくはシステイン、グリシン、又はプロリンではない)を表し、「z」は、アスパラギン、ヒスチジン、又はチロシンからなる群から選択される。一実施形態では、置換は、「x」として指定される残基に対して行われる。別の実施形態では、置換は、「x」として指定される残基の外側で行われる。
【0093】
加えて、結合部分の任意のアンキリン反復ドメインの最後から2番目の位置は、「A」若しくは「L」であり得、かつ/又は最後の位置は、「A」若しくは「N」であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列1~10のいずれか1つと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、最後から2番目の位置のAがLで置換されており、かつ/又は最後の位置のAがNで置換されている。例示的な実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、最後から2番目の位置のAがLで置換されており、かつ/又は最後の位置のAがNで置換されている。更に、結合部分の任意のアンキリン反復ドメインの配列は、任意選択で、そのN末端でG、S、又はGSを含んでもよい(以下を参照されたい)。
【0094】
加えて、結合部分の各アンキリン反復ドメインは、任意選択で、そのN末端に「G」、「S」、又は「GS」配列を含む。したがって、いくつかの実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列1~10のいずれか1つと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含み、更に任意選択で、そのN末端にG、S、又はGSを含む。例示的な実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、当該アンキリン反復ドメインは、任意選択で、そのN末端にG、S、又はGSを更に含む。更に、結合部分の任意のアンキリン反復ドメインの配列は、任意選択で、Lで置換された最後から2番目の位置のA、及び/又はNで置換された最後の位置のAを有していてもよい(上記を参照されたい)。
【0095】
N末端及びC末端キャッピング配列
本明細書に記載の結合部分がアンキリン反復ドメインを含む場合、アンキリン反復ドメインは、N末端又はC末端キャッピング配列を含み得る。キャッピング配列は、アンキリン反復配列モチーフ又はモジュールのN末端又はC末端に融合された追加のポリペプチド配列を指し、当該キャッピング配列は、隣接アンキリン反復配列モチーフ又はアンキリン反復ドメインのモジュールとの強固な三次相互作用(すなわち、三次構造相互作用)を形成し、それによって、側面のアンキリン反復ドメインの疎水性コアを、溶媒に曝露することから遮蔽するキャップを提供する。
【0096】
N末端及び/又はC末端のキャッピング配列は、キャッピング単位、又は反復単位に隣接する天然に存在する反復タンパク質中に見出される他の構造単位に由来してもよい。キャッピング配列の例は、国際公開第2002/020565号及び同第2012/069655号、米国特許公開第20130296221号、並びにInterlandi et al.,J Mol Biol.2008 Jan 18;375(3):837-54に記載されている。N末端アンキリンキャッピングモジュール(すなわち、N末端キャッピング反復)の例は、配列番号21から23であり、C末端キャッピングモジュール(すなわち、C末端キャッピング反復)の例は、配列番号28を含む。
【0097】
薬物分子
本発明の文脈内で、薬物分子は、ポリペプチド又はタンパク質を含む治療剤であり、当該ポリペプチド又はタンパク質は、結合部分によって結合することができる部位を含有する。本発明で使用するための薬物分子は、結合部分によって結合され得る限り、特に限定されない。これは、例えば、薬物分子が結合部分と同じ「クラス/種(class)」に属してもよく、結合部分と異なる「クラス/種」に属してもよいことを意味し、その結果、例えば、薬物分子及び結合部分の両方が抗体であり得るか、又は薬物分子及び結合部分の両方が代替足場(例えば、アンキリン反復タンパク質)であり得るか、又は薬物分子が抗体であり得、結合部分が代替足場(例えば、アンキリン反復タンパク質)であり得るか、又は薬物分子が代替足場(例えば、アンキリン反復タンパク質)であり得、結合部分が抗体であり得る。これは更に、例えば、薬物分子自体が異なる構造部分、例えば、抗体部分と代替足場部分との組み合わせ、又は異なる代替足場構造の部分の組み合わせを含み得ることを意味する。薬物分子及び結合部分の両方が抗体である場合、抗体が、結合特異性に関するものを含めて、互いに異なることは当業者には明らかであろう。同様に、薬物分子及び結合部分の両方が代替足場である場合、代替足場が、結合特異性に関するものを含めて、互いに異なることは当業者には明らかであろう。
【0098】
更に、本発明で使用するための薬物分子は、半減期延長部分を含有し得る。半減期延長部分は、半減期延長部分を有していない同じタンパク質と比較して、薬物分子のインビボでの血清半減期を延長する。半減期延長部分の例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメイン、又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、半減期延長部分は、HSAに対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み得る。他の例では、半減期延長部分は、免疫グロブリンドメイン、例えば、Fcドメイン、例えば、ヒトIgG1のFcドメイン、又はそのバリアント若しくは誘導体を含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、代替足場を含み、代替足場は、アドネクチン(モノボディー)、アフィボディー、アフィリン、アフィマー及びアプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベースの足場、アトリマー、アビマー、アンキリン反復タンパク質ベースの足場(DARPin(登録商標)タンパク質など)、フィノマー、ノッチン、及びクニッツドメインペプチドから選択される。代替足場は、例えば、Yu et al.,Annu Rev Anal Chem(Palo Alto Calif).2017 June 12;10(1):293-320.doi:10.1146/annurevanchem-061516-045205に記載されている。
【0100】
本発明で使用するための薬物分子としてはまた、以下のものなどの臨床使用のために現在承認されている異なるカテゴリーの薬物が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、
(2)二重特異性抗体、及び
(3)遺伝子改変された免疫細胞、例えばT細胞、特にキメラ抗原受容体(CAR)発現免疫細胞、例えばCAR-T細胞。
【0101】
本発明で使用するための薬物分子としてはまた、本明細書において「免疫チェックポイント調節因子」と呼ばれる、免疫チェックポイントの活性を上方制御又は下方制御する分子が挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイントは、免疫シグナルを増加させる(共刺激分子)又は減少させる(阻害分子)免疫系における分子である。癌患者において、腫瘍は、これらの免疫チェックポイントを使用して、特にT細胞による免疫系攻撃から自身を保護することがある。免疫チェックポイント療法において使用される薬物分子は、阻害性免疫チェックポイント分子を遮断するか、又は刺激性免疫チェックポイント分子を活性化し、それによって免疫系機能を回復させることができる。近年、免疫チェックポイント薬は、重要な新規の癌治療選択肢となっている。免疫チェックポイント分子としては、CD27、CD137、CD137L、2B4、TIGIT、CD155、ICOS、HVEM、CD40L、LIGHT、TIM-1、OX40、OX40L、DNAM-1、PD-L1、PD1、PD-L2、CTLA-4、CD8、CD40、CEACAMI、CD48、CD70、A2AR、CD39、CD73、B7-H3、B7-H4、BTLA、C5AR1、CCR8、CD226、CD28、CD33、CD38、CD3e、CD47、CD94、ETAR、NKG2A、SIRPα、TLR8、TNFRSF18、IDO1、IDO2、TDO、KIR、LAG-3、TIM-3、TIM-4及びVISTAが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、薬物分子は、免疫チェックポイント調節因子である。
【0102】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、抗体を含む。別の実施形態では、薬物分子は、二重特異性抗体を含む。別の実施形態では、薬物分子は、多重特異性抗体を含む。別の実施形態では、薬物分子は、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である抗体を含む。
【0103】
二重特異性抗体にはTCEが含まれる。TCEである二重特異性抗体の例は、BiTE(商標)分子として知られる分子である。これらは、単一のペプチド鎖上の2つの単鎖可変断片(scFv)からなる抗癌薬である。そのようなTCEは、scFvのうちの1つを介してT細胞の表面上のCD3(表面抗原分類3)分子に結合し、一方、他のscFvは、腫瘍細胞の表面上の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する。CD3に結合し、T細胞を腫瘍細胞に連結することによって、T細胞は、「活性化」され、腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を発揮することができる。TCEである二重特異性抗体の一例はブリナツモマブであり、これはT細胞の表面上のCD3及びB細胞の表面上のCD19に結合する。ブリナツモマブは、急性リンパ芽球性白血病の治療での使用が承認されている。
【0104】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、二重特異性代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、多重特異性代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である代替足場分子を含む。好ましい実施形態では、当該代替足場は、アンキリン反復ドメインである。更に好ましい実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、代替足場を含み、当該代替足場は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインであり、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号12~15から選択されるアミノ酸配列を含む。更に好ましい実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号12~15から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号13~14から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号13を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号14を含む。
【0105】
二重特異性又は多重特異性代替足場分子にはTCEが含まれる。一実施形態では、薬物分子は、二重特異性又は多重特異性代替足場分子であり、当該代替足場分子は、(i)アンキリン反復ドメインであるCD3特異的結合ドメイン、及び(ii)アンキリン反復ドメインであるTAA特異的結合ドメインを含むTCEである。BiTE(商標)分子として知られるTCEと同様に、代替足場を含むそのようなTCEは、結合ドメインの1つを介してT細胞の表面上のCD3分子に結合する一方で、他の結合ドメインが腫瘍細胞の表面上の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗癌薬である。CD3に結合し、T細胞を腫瘍細胞に連結することによって、T細胞は、「活性化」され、腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を発揮することができる。
【0106】
薬物分子がTCEである場合、本発明の結合部分の好ましい結合部位は、TCEのCD3特異的結合ドメインである。TCEのCD3特異的結合ドメインに結合することによって、結合部分は、TCEがT細胞に結合するのを妨げることによって、TCEの作用機序を遮断する。一実施形態では、TCEのCD3特異的結合ドメインへの結合部分の結合は、抗イディオタイプである。
【0107】
以下に列挙されるものを含む、TCEである多数の二重特異性抗体が記載されており、それらのそれぞれの結合標的が括弧内に提供されている。例えば、上記のように、ブリナツモマブ(CD19xCD3、Amgen)は、T細胞上のCD3抗原、及びB細胞系統から生じた腫瘍細胞上のCD19抗原に結合する。TCEである他の二重特異性抗体としては、AMG330(CD33xCD3)、フロテツズマブ(CD123xCD3、Macrogenics)、MCLA117(Clec12AXCD3、Merus)、AMG160(HLE PSMAxCD3、Amgen)、AMG427(HLE FLT3xCD3、Amgen)、AMG562(HLE CD19xCD3、Amgen)、AMG596(HLE EGFRvIIIxCD3、Amgen)、AMG673(HLE CD33xCD3、Amgen)、AMG701(HLE BCMAxCD3、Amgen)、AMG757(HLE DLL3xCD3、Amgen)、AMG910(HLE Claudin18.2xCD3、Amgen)、オドロンエクスタマブ(CD20xCD3、Regeneron)、モスネツツズマブ(CD20xCD3、Roche)、glofitamab(CD20xCD3、Roche)、及びエピコリタマブ(CD20xCD3、Genmab)が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなTCEのいずれも、本発明の組成物中の薬物分子として使用され得る。
【0108】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、抗体及び代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、2つの異なる代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、T細胞受容体(TCR)由来抗原認識ドメインを含む。
【0109】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、遺伝子改変された免疫細胞を含む。好ましい実施形態では、当該遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。一実施形態では、当該遺伝子改変された免疫細胞は、CAR発現T細胞(CAR-T細胞)などの遺伝子改変されたT細胞である。別の実施形態では、当該遺伝子改変された免疫細胞は、CAR発現NK細胞(CAR-NK細胞)などの遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0110】
結合親和性
本明細書に記載の結合部分及び薬物分子は、非共有結合様式で結合して、プロドラッグ複合体を形成する。任意の分子の別の分子への結合は、2つの力、すなわち、会合速度(kon)及び解離速度(koff)によって支配されている。次いで、標的[T]に対する任意の結合剤[B]の親和性は、平衡解離定数KDによって表すことができ、これはkoff/konの商である。
【0111】
【0112】
特定の実施形態では、薬物分子に対する結合部分の結合親和性は、KDに関して記載される。例示的な実施形態では、KDは、約10-7M以下、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、約10-11M以下、約10-12M以下、約10-13M以下、約10-14M以下、約10-7M~約10-15M、約10-8M~約10-15M、約10-9M~約10-15M、約10-10M~約10-15M、約10-11M~約10-15M、約10-12M~約10-15M、約10-7M~約10-14M、約10-8M~約10-14M、約10-9M~約10-14M、約10-10M~約10-14M、約10-11M~約10-14M、約10-12M~約10-14M、約10-7M~約10-13M、約10-8M~約10-13M、約10-9M~約10-13M、約10-10M~約10-13M、約10-11M~約10-13M、又は約10-12M~約10-13Mである。
【0113】
例示的な実施形態では、結合部分は、約100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM以下のKD値で薬物分子に結合する。例示的な一実施形態では、結合部分は、約1nM以下のKD値で薬物分子に結合する。別の例示的な実施形態では、結合部分は、約100pM以下のKD値で薬物分子に結合する。別の例示的な実施形態では、結合部分は、約10pM以下のKD値で薬物分子に結合する。更に別の例示的な実施形態では、結合部分は、約1pM以下のKD値で薬物分子に結合する。
【0114】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号1と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号1と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0115】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号2と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号2と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0116】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号3と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号3と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0117】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号4と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号4と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0118】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号5と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号5と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0119】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号6と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号6と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0120】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号7と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号7と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0121】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号8と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号8と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0122】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号9と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号9と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0123】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号10と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約100nM未満、例えば、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、約10pM、約5pM、約2pM、約1pM、約500fM、約250fM、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、又は約1fM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号10と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1~約100pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0124】
例示的な実施形態では、結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は、約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で薬物分子に結合する。
【0125】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号1と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号1と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0126】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号2と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号2と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0127】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号3と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号3と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0128】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号4と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号4と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0129】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号5と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号5と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0130】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号6と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号6と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0131】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号7と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号7と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0132】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号8と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号8と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0133】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号9と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号9と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0134】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号10と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-8s-1~約1×10-4s-1、例えば、約1×10-8s-1~約1×10-7s-1、約1×10-8s-1~約1×10-6s-1、約1×10-8s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1、約1×10-7s-1~約1×10-5s-1、約1×10-7s-1~約1×10-6s-1、約1×10-6s-1~約1×10-4s-1、又は約1×10-6s-1~約1×10-5s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号10と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13又は14と少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1×10-7s-1~約1×10-4s-1のkoff値で当該薬物分子に結合する。
【0135】
結合部分及び薬物分子が一緒に結合される場合、薬物分子は、生物学的活性、例えば、生物学的標的分子への結合を発揮することができない。したがって、結合部分が薬物に結合している間、薬物の活性は「遮断」される。遮断半減期(以下、「遮断T1/2」と呼ばれる)は、プロドラッグ複合体の半分が解離するのにかかる時間である。したがって、T1/2は、プロドラッグ複合体の「半減期」である。遮断T1/2は、以下の式:
【0136】
【0137】
対象への薬物の徐放を達成するために、遮断半減期は、少なくとも約2時間、少なくとも約5時間、少なくとも約10時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間であるべきである。遮断半減期は、上記の値のいずれの間にあってもよい。例えば、遮断半減期は、約10~約250時間、約20~約250時間、約40~約200時間、又は約50~約100時間の範囲内であってもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号2と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号3と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0141】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号4と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号5と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0143】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号6と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号7と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0145】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号8と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号9と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0147】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、配列番号10と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分、及び配列番号12~15のいずれかと少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、当該プロドラッグ複合体は、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、少なくとも約25時間、少なくとも約30時間、少なくとも約35時間、少なくとも約40時間、少なくとも約45時間、少なくとも約50時間、少なくとも約60時間、少なくとも約70時間、少なくとも約80時間、少なくとも約90時間、少なくとも約100時間、少なくとも約150時間、又は少なくとも約200時間の遮断半減期を示す。
【0148】
遮断半減期に特定の上限はない。しかしながら、ある特定の疾患適応症及び関連する薬物分子について、当業者は、プロドラッグ複合体の遮断半減期が長すぎる場合、薬物が体内に放出されるのが遅すぎて所望の治療利益を得ることができない場合があることを理解するであろう。結果として、遮断半減期は、所与の薬物分子の所望の治療利益が依然として観察可能であるようなものであるべきである。
【0149】
組成物
一実施形態では、本発明は、本明細書で定義される結合部分及び本明細書で定義される薬物分子を含む組成物であって、当該結合部分が、薬物分子に可逆的に結合し、当該結合部分が、結合した場合に、当該薬物分子の生物学的活性を阻害する、組成物に関する。一実施形態では、当該生物学的活性は、当該薬物分子の生物学的標的への結合である。一実施形態では、当該薬物分子に対する当該結合部分の結合親和性は、インビボ投与時の時間の関数としての薬物分子の放出を可能にする。本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、「プロドラッグ複合体」と互換的に使用される。
【0150】
上に列挙した任意のタンパク質結合部分は、結合部分が薬物分子に対する所望の結合親和性及び特異性を有する限り、上に列挙した任意の薬物分子と組み合わせて組成物(すなわち、プロドラッグ複合体)を形成することができる。
【0151】
組成物は、上記の結合部分及び薬物分子の組み合わせのいずれか、特に、明確に開示された結合係数(例えば、KD及びkoff)又は遮断半減期を有する具体的に開示された組み合わせのいずれかを含み得る。
【0152】
上記のように、設計アンキリン反復ドメインは、本発明で使用するための好ましい結合部分である。したがって、一実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分を含む。別の実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、設計アンキリン反復ドメインを含む薬物分子とを含む。別の実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の設計アンキリン反復ドメインを含む薬物分子とを含む。別の実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、代替足場を含む薬物分子とを含む。別の実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、抗体を含む薬物分子とを含む。別の実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、T細胞受容体(TCR)に由来する抗原結合ドメインを含む薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、T細胞エンゲージャー薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、免疫チェックポイント調節因子薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復タンパク質を含む結合部分と、二重特異性抗体薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分と、CAR発現免疫細胞、例えば、CAR-T細胞又はCAR-NK細胞である薬物分子とを含む。
【0153】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号1、及び(2)配列番号1と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0154】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号1と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0155】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号1と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0156】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号1の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0157】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号1の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号1の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0158】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0159】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号2、及び(2)配列番号2と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0160】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号2と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0161】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号2と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号1と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0162】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号2の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0163】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号2の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号2の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0164】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号2を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号2を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0165】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号3、及び(2)配列番号3と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0166】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号3と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0167】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号3と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号3と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0168】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号3の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0169】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号3の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号3の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0170】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号3を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号3を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0171】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号4、及び(2)配列番号4と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0172】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号4と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0173】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号4と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号4と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0174】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号4の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0175】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号4の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号4の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0176】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号4を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号4を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0177】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号5、及び(2)配列番号5と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0178】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号5と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0179】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号5と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号5と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0180】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号5のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号5の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0181】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号5のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号5の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号5のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号5の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0182】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号5を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号5を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0183】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号6、及び(2)配列番号6と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0184】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号6と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0185】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号6と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号6と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0186】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号6のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号6の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0187】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号6のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号6の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号6のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号6の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0188】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号6を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号6を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0189】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号7、及び(2)配列番号7と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0190】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号7と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0191】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号7と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号7と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0192】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号7の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0193】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号7の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号7の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0194】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号7を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号7を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0195】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号8、及び(2)配列番号8と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0196】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号8と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0197】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号8と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号8と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0198】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号8のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号8の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0199】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号8のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号8の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号8のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号8の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0200】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号8を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号8を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0201】
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号9、及び(2)配列番号9と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0202】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号9と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0203】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号9と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号9と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0204】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号9のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号9の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0205】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号9のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号9の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号9のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号9の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0206】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号9を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号9を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
一実施形態では、組成物は、(i)(1)配列番号10、及び(2)配列番号10と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0207】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号10と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13及び14のいずれかと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0208】
一実施形態では、組成物は、(1)配列番号10と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号10と少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0209】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号10の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号12~15及び(2)配列番号12~15と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0210】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号10の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号10の最大15、最大14、最大13、最大12、最大11、最大10、最大9、最大8、最大7、最大6、最大5、最大4、最大3、最大2、又は最大1個のアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0211】
別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号10を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号12~15のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)配列番号10を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~14のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0212】
一実施形態では、上記の当該組成物のいずれかに含まれる当該薬物分子は、二重特異性又は多重特異性薬物分子である。別の実施形態では、上記の当該組成物のいずれかに含まれる当該薬物分子は、T細胞エンゲージャー薬物分子である。
【0213】
上記のように、抗体及び代替足場もまた、本発明で使用するための結合部分である。したがって、一実施形態では、組成物は、抗体又は代替足場を含む結合部分を含む。別の実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)設計アンキリン反復ドメインを含む薬物分子とを含む。別の実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)抗体を含む薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)T細胞エンゲージャー薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)免疫チェックポイント阻害剤薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)二重特異性抗体薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)免疫細胞活性化薬物分子である薬物分子とを含む。一実施形態では、組成物は、(1)抗体又は代替足場を含む結合部分と、(2)遺伝子改変された免疫細胞、例えば、CAR発現免疫細胞、例えば、CAR-T細胞又はCAR-NK細胞である薬物分子とを含む。
【0214】
本発明の組成物は、実質的に全ての薬物分子が結合部分に結合していることを必要とするため、医薬組成物は、そのような結合が起こり、平衡に達するのに十分な時間が与えられることが好ましい。平衡を形成するのに必要な時間は、結合定数(kon及びkoff)に依存する。
【0215】
したがって、一実施形態では、本発明は、制御放出製剤を作製する方法であって、
(i)本明細書で定義される結合部分を提供するステップと、
(ii)本明細書で定義される薬物分子を提供するステップと、
(iii)薬物分子の実質的に全てが結合部分によって結合されるように、当該結合部分及び活性薬物分子を平衡に到達させるステップと、を含む、方法に関する。
【0216】
一実施形態では、薬物分子及び結合部分を、少なくとも約1時間、例えば少なくとも約2時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間平衡化させた。
【0217】
組成物中の結合部分の濃度は、kon平衡定数がkoff平衡定数よりもかなり高いことを実現するために比較的高くあるべきであり、これは、実質的に全ての薬物分子が結合部分によって結合され、薬物分子の作用機序が実質的に阻害されることを意味する。一実施形態では、結合部分及び薬物分子は、1:1のモル比で提供される。いくつかの実施形態では、結合部分は、薬物分子の量と比較してモル過剰で存在すべきである。したがって、これらの実施形態では、結合部分は、少なくとも1.2:1、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも200:1、少なくとも400:1、又は少なくとも1000:1の薬物分子に対するモル比で提供される。
【0218】
本発明は更に、本明細書に記載の組成物及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む、医薬組成物に関する。当該医薬組成物の使用及びそれを用いる治療方法も本明細書に記載されている。本発明に包含される方法及び使用は、以下により詳細に記載されている。医薬組成物、方法及び使用により、医薬組成物を作製するために使用される薬物分子によって治療される疾患適応症を治療することに留意されたい。
【0219】
結合部分の主な機能は、薬物分子に結合して薬物分子の徐放をもたらすことである。したがって、いくつかの実施形態では、結合部分は、タンパク質結合部分との事前の複合体形成を伴わない直接投与よりも遅い速度で薬物分子を体内に放出すること以外に、インビボでの薬物分子の生物学的効果を実質的に変化させない。しかしながら、結合部分は、追加の機能的部分を含み得る。そのような追加の機能的部分は、生物学的活性などの特定の利点を提供し得るか、又は例えば検出目的のための結合部分のタグ化/標識において有用であり得る。
【0220】
本明細書に記載の医薬組成物は、当該技術分野で公知の方法を用いて調製することができる。
【0221】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい。標準的な医薬担体としては、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水又は水/油エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々な種類の湿潤剤が挙げられる。
【0222】
医薬組成物は、例えば、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアロゾル推進剤、空気置換剤、アルカリ化剤、抗硬化剤、抗凝固剤、抗菌防腐剤、抗酸化剤、消毒剤、基材、結合剤、緩衝剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗剤、希釈剤、消毒薬、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、染料、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、充填剤、フィルム形成剤、調味料、香味料、フローエンハンサー、ゲル化剤、造粒剤、保湿剤、潤滑剤、粘膜付着剤、軟膏基剤、軟膏、油性ビヒクル、有機基剤、パステル基剤、顔料、可塑剤、研磨剤、防腐剤、封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶剤、安定剤、坐剤基剤、界面活性剤、界面活性物質、懸濁剤、甘味剤、治療剤、増粘剤、張性剤、毒性剤、増粘剤、吸水性剤、水混和性共溶媒、軟水剤、又は湿潤剤を含む、任意の他の薬学的に許容される成分を含むことができる。例えば、参照によりその全体が組み込まれる、Handbook of Pharmaceutical Excipients,Third Edition,A.H.Kibbe(Pharmaceutical Press,London,UK,2000)を参照されたい。参照によりその全体が組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)。
【0223】
医薬組成物は、生理学的に適合性のあるpHを達成するように製剤化することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、例えば、約4又は約5~約8.0、又は約4.5~約7.5、又は約5.0~約7.5であり得る。例示的な実施形態では、医薬組成物のpHは、約5.5~約7.5である。
【0224】
一実施形態では、本発明は、T細胞活性化又はNK細胞活性化などの免疫細胞活性化を、それを必要とする対象において行う方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を、当該対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0225】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、インビボで活性薬物分子の放出を制御する方法に関する。
【0226】
別の実施形態では、本発明は、対象を治療する方法であって、有効量の本明細書で定義される医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、増殖性疾患を治療する方法である。いくつかの実施形態は、本方法は、癌を治療する方法である。
【0227】
別の実施形態では、本発明は、療法に使用するための、本明細書で定義される組成物に関する。別の実施形態では、本発明は、療法に使用するための、本明細書で定義される医薬組成物に関する。好ましくは、本明細書で定義される医薬組成物は、増殖性疾患の治療で使用するために提供される。好ましい実施形態では、増殖性疾患は、癌である。
【0228】
本発明の医薬組成物は、典型的には、薬物分子に典型的に関連する特定の副作用について高いリスクを有するとして、及び/又は問題となる副作用の可能性が高まるような大量の薬物分子を必要とするとして特定された対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物である。好ましい実施態様では、対象は、ヒトである。
【0229】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単回投与が十分であり得る。他の実施形態では、反復投与が必要であり得る。対象の年齢及び全般的な健康状態、並びに薬物分子の性質及び典型的な投与レジメンなどの様々な因子が、投与の回数及び頻度に影響を及ぼす。
【0230】
本明細書に記載の医薬組成物は、非経口、経鼻、経口、肺、局所、膣内、又は直腸投与などの任意の好適な投与経路を介して対象に投与することができる。非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含むことができる水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。詳細については、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630(1986))を参照されたい。
【0231】
本明細書に記載の医薬組成物は、別の治療剤と組み合わせて使用され得る。各治療剤は、同時に(例えば、同じ薬剤で、又は同時に)、並行して(すなわち、任意の順序で一方が他方の直後に投与される別個の薬剤中で)、又は任意の順序で逐次的に投与されてもよい。逐次投与は、併用療法における治療剤が異なる剤形(例えば、1つの薬剤が錠剤又はカプセルであり、別の薬剤が滅菌液体である)である場合、及び/又は異なる投与スケジュールで投与される場合(例えば、少なくとも毎日投与される鎮痛剤、及び週に1回又は2週間に1回などのより少ない頻度で投与される生物療法剤の場合)に有用である。
【0232】
追加の治療剤としては、鎮痛剤、ステロイド、抗癌剤、抗生物質、ペニシリン、降圧薬、抗糖尿病薬、抗痙攣薬、制吐薬、抗うつ薬、チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1、PD-L1、Tim-3、LAG-3など)、免疫アゴニスト(例えば、41-BB、CD28、CD40など)、サイトカイン(IL-15、IL-12など、又は抗TGFb、抗IL-10など)、免疫刺激剤、T細胞刺激剤、免疫腫瘍学モダリティー(例えば、CAR-T及び細胞療法、抗体薬物コンジュゲート(ADC)、腫瘍溶解性ウイルスなど)、化学療法、放射免疫コンジュゲートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
核酸及び方法
本発明は更に、本明細書に記載の結合部分をコードする、核酸に関する。一実施形態では、核酸は、本明細書で定義される設計アンキリン反復ドメインを含む結合部分をコードする。そのような核酸の例は、配列番号16~19によって提供される。本発明は更に、当該核酸を含む、宿主細胞に関する。
【0234】
本発明は更に、本明細書で定義される結合部分を作製する方法であって、当該組換え結合タンパク質が発現される条件下で本明細書で定義される宿主細胞を培養することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、当該宿主細胞は、真核宿主細胞である。他の実施形態では、当該宿主細胞は、原核宿主細胞である。一実施形態では、結合部分を作製する方法は、当該組換え結合タンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養することを含み、当該結合部分は、設計アンキリン反復ドメインを含み、当該宿主細胞は、例えば大腸菌などの原核宿主細胞である。別の実施形態では、結合部分を作製する方法は、当該組換え結合タンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養することを含み、当該結合部分は、抗体を含み、当該宿主細胞は、例えば、CHO細胞などの真核宿主細胞である。
【実施例】
【0235】
以下に開示の出発物質及び試薬は、当業者に既知であり、市販されている、及び/又は周知の技術を用いて調製することができる。
【0236】
材料
化学物質はSigma-Aldrich(USA)より購入した。オリゴヌクレオチドはMicrosynth(Switzerland)より購入した。特に明記しない限り、DNAポリメラーゼ、制限酵素、及び緩衝液は、New England Biolabs(USA)又はFermentas/Thermo Fisher Scientific(USA)より購入した。誘導性大腸菌発現株は、例えば、大腸菌XL1-blue(Stratagene、USA)又はBL21(Novagen、USA)などのクローニング及びタンパク質産生に使用した。SPR測定のためのNLCチップは、BioRad(BioRad、USA)製であった。HTRF試薬は、Cisbio(Cisbio、France)製であった。Pan-T細胞単離キットは、Miltenyi Biotec(Germany)製であった。24ウェル形式の「複合」Incucyteのためのポリエステル注入口は、Corning(USA)製であり、ニュートラアビジンビーズは、Thermo Fischer(USA)製であった。Nuclight Red Lentivirusは、Sartorius(ドイツ)製であった。細胞毒性検出(LDH放出による)キットは、Roche製であった。
【0237】
分子生物学
特に明記しない限り、方法は、既知のプロトコルに従って実施される(例えば、Sambrook J.、Fritsch E.F.、及びManiatis T.、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory(1989年)、New York参照)。
【0238】
設計アンキリン反復タンパク質ライブラリー
設計アンキリン反復タンパク質ライブラリーを生成する方法は、例えば、米国特許第7,417,130号;Binz et al.2003年、上記引用;Binzら、(2004年)、上記引用に記載されている。このような方法により、ランダム化アンキリン反復モジュール及び/又はランダム化キャッピングモジュールを有する、設計アンキリン反復タンパク質ライブラリーを構築することができる。例えば、そのようなライブラリーはしたがって、固定化N末端キャッピングモジュール(例えば、配列番号21、22、若しくは23のN末端キャッピングモジュール)、又は配列番号24によるランダム化N末端キャッピングモジュール、配列番号25、26、若しくは27の配列モチーフによる1個以上のランダム化反復モジュール、及び固定化C末端キャッピングモジュール(例えば、配列番号28のC末端キャッピングモジュール)又は配列番号29によるランダム化C末端キャッピングモジュールに基づいて組み立てることができた。好ましくは、そのようなライブラリーは、反復又はキャッピングモジュールのランダム化された位置にアミノ酸C、G、M、N(G残基の前)及びPのいずれも有することがないように組み立てられる。
【0239】
更に、そのようなライブラリー内のそのようなランダム化されたモジュールは、ランダム化されたアミノ酸位置を有する追加のポリペプチドループ挿入を含んでもよい。そのようなポリペプチドループ挿入の例は、抗体又はデノボ生成ペプチドライブラリーの補体決定領域(CDR)ループライブラリーである。例えば、そのようなループ挿入は、ガイダンスとして、ヒトリボヌクレアーゼLのN末端アンキリン反復ドメインの構造を用いて設計することができた(Tanaka,N.、Nakanishi,M、Kusakabe,Y、Goto,Y.、Kitade,Y、Nakamura,K.T.、「EMBO J.」第23巻第30号第3929~3938頁(2004年))。2つのアンキリン反復の境界近くに存在するβターンに10個のアミノ酸が挿入されている、このアンキリン反復ドメインと同様に、アンキリン反復タンパク質ライブラリーは、アンキリン反復ドメインの、1つ以上のβターンに挿入された可変長(例えば、1~20個のアミノ酸)のランダム化ループ(固定化及びランダム化位置を有する)を含有してもよい。
【0240】
アンキリン反復タンパク質ライブラリーのN末端キャッピングモジュールは、好ましくはRILLAA、RILLKA又はRELLKAモチーフを有し、アンキリン反復タンパク質ライブラリーの任意のそのようなC末端キャッピングモジュールは、好ましくはKLN、KLA又はKAAモチーフを有する。
【0241】
そのようなアンキリン反復タンパク質ライブラリーの設計は、標的と相互作用するアンキリン反復ドメインの既知の構造によって誘導され得る。蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank:PDB)の独自の受託コード又は識別コード(PDB-ID)によって識別される、そのような構造の例は、1WDY、3V31、3V30、3V2X、3V2O、3UXG、3TWQ-3TWX、1N11、1S70、及び2ZGDである。
【0242】
N2C及びN3Cで設計アンキリン反復タンパク質ライブラリーなどの、設計アンキリン反復タンパク質ライブラリーの例が説明されている(米国特許第7,417,130号、Binzら、2003年、上記引用;Binzら、2004年、上記引用)。N2C及びN3Cの数字は、N末端及びC末端のキャッピングモジュール間に存在するランダム化反復モジュールの数を説明している。
【0243】
反復単位及びモジュール内の位置を定義するために使用される命名法は、Binzら(2004年)の上記引用に基づき、アンキリン反復モジュールとアンキリン反復単位との境界が、1アミノ酸位置シフトするという修飾を伴う。例えば、Binzら(2004年)の上記引用のアンキリン反復モジュールの位置1は、本開示のアンキリン反復モジュールの位置2に対応し、結果として、Binzら(2004年)の上記引用のアンキリン反復モジュールの位置33は、本開示の以下のアンキリン反復モジュールの位置1に相当する。
【0244】
実施例1:CD3特異的結合ドメインに対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインの選択
概要
リボソームディスプレイ(Hanes,J.and Pluckthun,A.,PNAS 94,4937-42,1997)を用いて、二重特異性T細胞エンゲージャー分子(TCE)のCD3特異的結合ドメインに対して結合特異性を有する複数のアンキリン反復ドメインを、Binz et al.2004(loc.cit.)によって説明されているものと同様の方法で、DARPin(登録商標)ライブラリーから選択し、具体的な条件及び追加の選択解除ステップは以下であった。CD3特異的結合ドメインに対する選択されたクローンの結合及び特異性を、大腸菌粗抽出物ホモジニアス時間分解蛍光測定(Homogeneous Time Resolved Fluorescence、HTRF)によって評価したところ、CD3特異的結合ドメインに特異的に結合する複数の結合タンパク質が首尾よく選択されたことが示された。これらの最初に同定された結合タンパク質を更に開発して、TCEのCD3特異的結合ドメインに対して更に高い親和性及び/又はそれからの更に低いオフレートを有する結合タンパク質を得た。例えば、配列番号1~10のアンキリン反復ドメインは、二重特異性T細胞エンゲージャー分子のCD3特異的結合ドメインに対する結合特異性並びに高い結合親和性及び/又はそれからの低いオフレートを有するアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質のアミノ酸配列を構成する。
【0245】
標的及び選択材料としてのCD3特異的結合ドメイン
二重特異的TCEのCD3特異的結合ドメインを標的及び選択材料として使用した。そのような標的ドメインは、配列番号11~15のポリペプチドから選択された。標的タンパク質を、標準的な方法を用いてビオチン化した。
【0246】
リボソームディスプレイによる標的特異的アンキリン反復タンパク質の選択
設計アンキリン反復タンパク質ライブラリー(N2C及びN3C)を、標的として使用されるCD3特異的結合ドメイン(配列番号11)に対するリボソームディスプレイ選択において使用した(Binz et al.,Nat Biotechnol 22,575-582(2004)、Zahnd et al.,Nat Methods 4,269-279(2007)、Hanes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,14130-14135(1998)を参照されたい)。
【0247】
標的及びライブラリーごとに4回の選択ラウンドを行った。4ラウンドの選択は、標準的なリボソームディスプレイ選択を採用し、標的濃度を減少させ、洗浄ストリンジェンシを増加させて、ラウンド1からラウンド4への選択圧力を増加させる(Binz et al.2004年、上記引用)。各選択ラウンドの後の逆転写(RT)-PCRサイクルの数を、結合剤の濃縮により、収率に合わせて調整して、連続的に減少させた。次いで、得られた3つのプールを、結合剤スクリーニングに供した。
【0248】
選択されたクローンは、粗抽出物HTRFによって示されるように、TCEのCD3特異的結合ドメインに特異的に結合する。
溶液中でTCEのCD3特異的結合ドメインに特異的に結合する個々に選択されたアンキリン反復タンパク質を、標準的なプロトコルを用いて、アンキリン反復タンパク質発現大腸菌細胞の粗抽出物を使用するホモジニアス時間分解蛍光測定(HTRF)アッセイによって特定した。リボソームディスプレイによって選択されたアンキリン反復タンパク質クローンを、クローンがヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメイン及びCD3結合ドメイン(配列番号11)に共有結合したフォーマットでpQE30(Qiagen)発現ベクターの誘導体にクローニングし、大腸菌XL1-Blue(Stratagene)に形質転換し、LB-寒天(1%のグルコース及び50μg/mLのアンピシリンを含有)上に播種し、次いで、37℃で一晩インキュベートした。165μLの成長培地(1%のグルコース及び50μg/mLのアンピシリンを含有するLB)を含有する96ウェルプレートに単一のコロニーを播種し(単一のウェル中に各クローン)、37℃で、800rpmで振盪しながら、一晩インキュベートした。アンピシリン50μg/mLを含有する150μLの新鮮なLB培地に、新しい96ディープウェルプレート中8.5μLの一晩培養物を播種した。37℃及び850rpmで120分間インキュベートした後、発現をIPTG(最終濃度0.5mM)で誘導し、6時間続けた。プレートの遠心分離によって細胞を収集し、上清を廃棄し、ペレットを-20℃で一晩凍結させた後、10μLμLのB-PERII(Thermo Scientific)中に再懸濁し、振盪(600rpm)しながら室温で1時間インキュベートした。次いで、160μLのPBSを添加し、細胞片を遠心分離によって除去した(3220gで10分間)。
【0249】
溶解した各クローンの抽出物を、PBSTB(0.1%のTween20(登録商標)及び0.1%(w/v)のBSAを補充したPBS、pH7.4)中の1:800希釈物(最終濃度)として、12.5nM(最終濃度)のビオチン化CD3結合ドメイン、1:300(終濃度)の抗FLAG-D2 HTRF抗体-FRETアクセプターコンジュゲート(Cisbio)、及び1:300(最終濃度)の抗strep-Tb抗体FRETドナーコンジュゲート(Cisbio、France)と共に、384ウェルプレートのウェルに適用し、4℃で120分間インキュベートした。HTRFを、340nm励起波長並びにバックグラウンド蛍光検出用の620±10nm発光フィルタ及び特異的結合についての蛍光シグナルを検出するための665±10nm発光フィルタを使用して、Tecan M1000において読み出した。
【0250】
同じ溶解物を、12.5nM(最終濃度)のビオチン化HSA、1:300(最終濃度)の抗FLAGD2 HTRF抗体-FRETアクセプターコンジュゲート(Cisbio)、及び1:300(最終濃度)の抗strep-Tb抗体FRETドナーコンジュゲート(Cisbio、France)と、384ウェルプレートのウェルに混合し、4℃で120分間インキュベートした。HTRFを、340nm励起波長並びにバックグラウンド蛍光検出用の620±10nm発光フィルタ及び特異的結合についての蛍光シグナルを検出するための665±10nm発光フィルタを使用して、Tecan M1000において読み出した。
【0251】
各溶解クローンの抽出物を、ビオチン化CD3結合標的ドメインへの結合の阻害及びビオチン化HSAへの妨害されない結合について試験して、CD3結合ドメインへの特異的結合を評価した。
【0252】
標的タンパク質に対して非常に高い親和性を有する結合タンパク質の更なる分析及び選択
合計744個の結合タンパク質が最初に同定された。結合プロファイルに基づいて、172個の候補を選択して96ウェルフォーマットで発現させ、DNA配列決定と並行して均質になるまで精製した。候補を、サイズ排除クロマトグラフィ、Sypro-Orange熱安定性評価(Niesen et al.,Nat Protoc 2,2212-2221,(2007)を参照)、ProteOn表面プラズモン共鳴(SPR)標的親和性評価、ELISA、標的タンパク質競合HTRF実験、及び/又はSDS-PAGEによって生物物理学的に特徴付けた。
【0253】
最初に同定された結合タンパク質の更なる開発において、標的タンパク質に対する非常に高い親和性及び/又はそれからの非常に低いオフレートを有する結合剤が、2つの異なるアプローチを用いて生成された。第1のアプローチにおいて、1つの最初に同定された結合タンパク質(「親」結合タンパク質)を、親和性成熟のための好適な出発点として選択した。親和性成熟手順は、出発点として使用されるアンキリン反復ドメインの各無作為化位置の飽和変異誘発を伴った。親和性成熟手順によって生成された配列を、競合HTRFによってより低いオフレートについてスクリーニングした。それによって同定された有益な変異を、タンパク質操作によって結合タンパク質に組み合わせた。親和性成熟及び操作された結合タンパク質の結合特性を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって検証した。結合剤#1~#4(配列番号1~4)は、この方法によって生成され、親結合剤に由来した。
【0254】
第2のアプローチにおいて、標的タンパク質(配列番号11)に対する4ラウンドのリボソームディスプレイ選択後に得られた選択プールを、追加のオフレート選択のための出発点として使用した。プールからのオフレート選択は、2つの更なるビオチン化標的タンパク質(配列番号13及び配列番号14)に対して連続的に行われ、各回とも過剰の非ビオチン化標的タンパク質の存在下で行われた。いくつかの例では、オフレート選択プロセスをエラープローンPCRと組み合わせた。次いで、この手順によって生成された数百の結合タンパク質を、SPRによってそれらの結合特性について評価した。
【0255】
これらの第2のアプローチに基づいて、CD3特異的結合標的ドメインに対して高い親和性及び/又は低いオフレートで結合する、結合剤#5~#10(配列番号5~10)を、更なる分析のために選択した。
総合すると、これら2つの異なるアプローチによって誘導された10個の結合タンパク質(配列番号1~10)は、本発明の結合部位を構成する。
【0256】
TCE CD3結合ドメインに対して結合特異性を有するこれらの選択された結合タンパク質を、N末端Hisタグ(配列番号20)を提供するpQE(QIAgen、Germany)ベースの発現ベクターにクローニングして、以下に説明されるような単純なタンパク質精製を容易にした。以下の結合剤をコードする発現ベクターを構築した:
結合剤#1(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号1)、
結合剤#2(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号2)、
結合剤#3(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号3)、
結合剤#4(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号4)、
結合剤#5(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号5)、
結合剤#6(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号6)、
結合剤#7(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号7)、
結合剤#8(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号8)、
結合剤#9(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号9)、及び
結合剤#10(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号20)を有する配列番号10)。
【0257】
分析のために選択された結合タンパク質の高レベル及び可溶性発現。
更なる分析のために、結合剤を大腸菌細胞において発現させ、標準的なプロトコルに従ってそれらのHisタグを使用して精製した。50mlの静置一晩培養物(TB、1%のグルコース、50mg/lのアンピシリン;37℃)を使用して、1000mLの培養物(TB、50mg/lのアンピシリン、37℃)に接種した。600nmで1.0~1.5の吸光度において、培養物を0.5mM IPTGで誘導し、振盪しながら37℃で4~5時間インキュベートした。培養物を遠心分離し、得られたペレットを、25mLのTBS500(50mMのTris-HCl、500mMのNaCl、pH8)中に再懸濁し、溶解した(超音波処理又はフレンチプレス)。溶解後、試料を50KU DNase/mLと混合し、62.5℃で30分間の熱処理ステップの前に15分間インキュベートし、遠心分離し、上清を回収し、濾過した。Triton X100(1%(v/v)の最終濃度)及びイミダゾール(20mMの最終濃度)をホモジネートに添加した。タンパク質を、Ni-ニトリロ三酢(Ni-NTA)酸カラム、続いて、AKTAxpress(商標)システム上のサイズ排除クロマトグラフィで、当業者に既知の標準的なプロトコル及び樹脂に従って精製した。TCE CD3結合ドメインに対して結合特異性を有する高可溶性アンキリン反復タンパク質は、4~12%のSDS-PAGEから推定される95%超の純度で、大腸菌培養物から精製した(培養物1リットル当たり最大200mgのアンキリン反復タンパク質)。
【0258】
実施例2:SPR結合アッセイ
本発明の結合部分の重要な特徴は、薬物分子に対するその親和性である。関連する態様には、薬物分子からの結合部分のオフレート及び得られる遮断半減期が含まれる。薬物分子が結合部分によって可逆的に結合されている複合体からの薬物分子の徐放を達成するためには、高親和性、低オフレート及び大きな遮断半減期が必要である。本発明のプロドラッグ複合体の機能及び特性の更なる例示及び説明については、
図1~
図3を参照されたい。
【0259】
表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して、TCE薬物分子のCD3結合ドメインに対するアンキリン反復結合ドメインの結合親和性及びオフレートを決定した。
【0260】
全てのSPRデータを、ランニングバッファーとしてPBS-T(0.005%のTween 20)を用いてBio-Rad ProteOn XPR36装置を使用して生成した。新しいニュートラアビジンセンサーチップ(NLC)を空気で初期化し、Bio-Radマニュアルに従って調整した。
【0261】
結合剤#1、#4、#5、及び結合剤#9の前駆体(上記の実施例1に列挙されるような)、並びに親和性成熟アプローチ(実施例1を参照されたい)に使用される親結合剤について、チップ上に配列番号13及び14をそれぞれ有するビオチン化CD3特異的結合ドメインに結合して、SPRデータを生成した。データは、25℃で、100nM(すなわち、シングルトレース)の1つの結合剤濃度を用いて、2時間、オフレートを測定して生成した。標的タンパク質として配列番号13で得られたSPRトレースを
図4に示す。結合剤#1、#4、#5、及び結合剤#9の前駆体は全て、親結合剤と比較して著しく減少したオフレートを示した。同様の結果が標的タンパク質として配列番号1で得られた。
【0262】
チップ上に配列番号13及び14をそれぞれ有するビオチン化CD3特異的結合ドメインに結合する結合剤#1~#9(上記の実施例1に列挙される)について、更なるSPRデータを生成した。33℃で、いくつかの結合剤濃度(26.7nM、3nM、1nM)(すなわち、マルチトレース)でデータを生成し、2時間、オンレート(kon)、オフレート(koff)を測定して平衡解離定数(KD)を導出した。次いで、遮断半減期(T1/2)を計算した。結果を以下の表2に示す。
【0263】
【0264】
表2は、2つの異なるCD3結合タンパク質(配列番号13及び配列番号14)に対するいくつかの超高親和性結合(分析物)のkon、koff及びKD値を提供し、遮断T1/2は、オフレート(koff)から式T1/2=ln2/koff=0.693/koffを用いて計算している。結合剤のオフレートは全て1×10-4s-1未満であった。KD値は全て1×10-10M未満であった。結合剤#5~#9(配列番号5~9)についてのSPR測定は、少なくとも10%の解離期(koff計算の基礎となる)のシグナル低下の欠如のために、表2に示される値よりも正確な値をもたらさなかった。
【0265】
全ての結合剤は、少なくとも3時間の遮断半減期(T1/2)を示し、それらのうちのいくつかは、少なくとも10時間の遮断半減期を示した。したがって、これらの実験は、結合剤#1~#9が、TCE薬物分子において使用されるCD3特異的結合ドメインに対して非常に高い結合親和性を有することを示した。更に、結合剤#1~#9は、これらの標的タンパク質からの非常に低いオフレートを有し、それゆえ非常に大きな遮断半減期を有する。結合剤#10は、同等のSPRアッセイで試験した場合、結合剤#9と同様の特性を示す。
【0266】
実施例3:T細胞活性化/死滅アッセイ
本実施例では、本発明の3つの結合部分及び親結合剤を、T細胞エンゲージャー(本明細書ではTCE#1と呼ぶ)によるT細胞活性化及び活性化T細胞による腫瘍細胞の死滅を阻害するそれらの能力について試験した。TCE#1は、腫瘍関連抗原(TAA)特異的結合ドメイン(TAA結合ドメイン)に共有結合したCD3特異的結合ドメイン(配列番号13)を含む。TAAは、アッセイに使用される腫瘍細胞上で発現される。
【0267】
実質的に全てのTCEが結合部分によって結合されることを実現するために、最終アッセイ濃度と比較して100倍高い濃度で、プロドラッグ複合体試料を以下に示すように調製した。
【0268】
プロドラッグ複合体試料の調製及びT細胞活性化/死滅アッセイへの添加
1.最終10pM 200×濃縮(2nM)でTCE定数を調製する
2.最終開始10nM、200×濃縮(開始2000nM、1:3連続希釈:2000nM、666nM、222nM、74nM、25nM、8.2nM、2.7nM、0.91nM、0.30nM)で結合部分滴定を準備する
3.TCEを結合部分滴定と1:1で混合する(又はTCEのみ若しくは結合部分のみとアッセイ培地を混合)→100x
4.pH制御インキュベーター内で、37℃で少なくとも24時間平衡化する
5.アッセイ開始直前にT細胞活性化/死滅実験に1:100(200μl容量中2μl)に希釈する→1x
6.48時間インキュベートする
【0269】
T細胞活性化アッセイのために、標的腫瘍細胞及びエフェクターT細胞(健康な血液ドナーからのPan-T細胞)を、5:1のエフェクター対標的細胞比で組み合わせ、プロドラッグ複合体試料を添加し、混合物を37℃で48時間インキュベートした。死滅した腫瘍細胞のLDH放出について上清を分析し、CD8+T細胞上の活性化マーカー(CD25)のレベルをFACS(CD25モノクローナル抗体(BC96)、PerCP-Cyanine5.5、eBioscience(商標)を使用)によって決定した。
図5a及び5bに示すように、様々な対照を含めた(すなわち、T細胞のみ、腫瘍細胞のみ、Triton対照、結合部分のみ)。
【0270】
結果を
図5a及び5bに示す。本発明の3つの結合部分(結合剤#4(配列番号4)、結合剤#5(配列番号5)、結合剤#9(配列番号9)は、本発明の結合部分のはるかに高い結合親和性と一致して、親結合剤よりもはるかに低い濃度でT細胞活性化及び腫瘍細胞死滅を阻害した。IC50値(nM単位)を
図5a及び5bに示す。
【0271】
実施例4:「単純な」Incucyte(登録商標)アッセイ
上記の実施例3のものなどの標準的なT細胞活性化アッセイは、定義された時点の後に単一の読み出しを提供する。本発明の目的のために、T細胞媒介性腫瘍細胞死滅の代用物として使用される、T細胞媒介性腫瘍細胞増殖阻害に関する時間分解図を得るためには、異なる時点での複数の読み出しが望まれる。Incucyte(登録商標)アッセイ(https://www.essenbioscience.com/en/products/incucyte/を参照されたい)は、そのような情報を提供することができる。Incucyteアッセイ原理は、T細胞(hPBMCのいずれかのPan-T細胞)を、細胞を赤色にするNucLight Red Lentivirusで形質導入された腫瘍細胞と共インキュベートしてIncucyteカメラで検出できるようにし、赤色物体(すなわち、Incucyte Nulight(登録商標)、核限定mKate2タンパク質(赤色蛍光タンパク質)によって標識される腫瘍細胞)の面積を決定することによって、T細胞が存在する場合の腫瘍細胞増殖を、時間分解方式でIncucyteカメラによってモニターすることができるというものである。
【0272】
最初の実験において、T細胞エンゲージャー(TCE#1)を、2nMの濃度(アッセイにおいて20pMの最終濃度)から出発して、2倍連続希釈で100倍濃縮して調製した。TCE#1を、TAAを発現するpan T細胞及び腫瘍細胞に添加し、Incucyte(登録商標)によって検出するためにNucLight Redで標識した。赤色標識腫瘍細胞の増殖が、4.5日間にわたってIncucyte(登録商標)デバイスにおいて観察された。
図6aは、より高濃度のTCE#1において(20pMから開始)、TCE#1が腫瘍細胞増殖を効率的に阻害したこと、及び濃度を減少させると(2倍ステップで)、腫瘍細胞増殖の阻害が徐々に減少し、0.16~0.64pMで推移したことを示す(約0.27pMのEC
50)。したがって、0.1pM未満では、TCEは腫瘍細胞増殖に有意な影響を及ぼさなかったが、0.1~1pMでは、TCEはT細胞媒介性腫瘍細胞増殖阻害のダイナミックレンジ内にあり、1pM超では、TCEは完全なT細胞媒介性腫瘍細胞増殖阻害(T細胞媒介性腫瘍細胞死滅の代用として使用)をもたらした。
図6bは、これらの知見を示し、TCE活性のEC50が約0.27pMであったことを示す。
【0273】
プロドラッグ複合体の滴定による「単純な」Incucyte(登録商標)アッセイ設定
TAA発現腫瘍細胞増殖のTCE媒介性阻害に対する本発明の結合部分の効果を調査するために、更なるIncucyte(登録商標)アッセイを、様々な薬物複合体試料を用いて行った。一定濃度のTCE(TCE#1)に対する結合部分の滴定を用いて、薬物複合体試料を調製した。実質的に全ての薬物分子が実験(すなわち、T細胞及び腫瘍細胞へのプロドラッグ複合体の添加)の開始時に結合部分によって複合体化されることを実現するために、混合物を100×濃縮ストックとして調製した。平衡化された100×濃縮ストックを細胞に添加することによって100倍に希釈し、赤色標識腫瘍細胞の増殖の変化を、T細胞媒介性腫瘍細胞死滅の代わりとして4.5日間にわたって追跡した(
図7及び
図8を参照されたい)。
【0274】
プロドラッグ複合体試料の調製及びIncucyte(登録商標)実験への添加:
1.最終10pM 200×濃縮(2nM)で一定したTCEを調製する
2.10nM、200×濃縮(開始2μM)の最終開始濃度で結合部分滴定を準備する
3.TCEを結合部分滴定と1:1で混合する(又はTCEのみ若しくは結合部分のみとアッセイ培地を混合)→100×濃縮ストック試料
4.pH制御インキュベーター内で、37℃で少なくとも24時間平衡化する
5.アッセイ開始直前に実験(NucLight Redで標識されたT細胞+腫瘍細胞)に1:100で希釈する(200μl容量中2μl)
6.Incucyte(登録商標)中で最大5日間、腫瘍細胞増殖を決定する
【0275】
第1の実験では、親結合剤(KD約200pM)と配列番号5(K
D約6pM以下)(結合剤#5)を有する超高親和性結合部分とを区別する単純なIncucyte(登録商標)アッセイの能力を調査した。
図7a~7dは、親結合剤が、試料中の薬物分子に対して330~110倍モル過剰の親結合剤の遮断の喪失を示したのに対して、超高親和性結合部分(結合剤#5)は、プロドラッグ複合体試料中の薬物分子に対してはるかに低い4倍モル過剰の結合部分であっても、薬物分子の活性を完全に遮断したことを明確に示す。
【0276】
第2の実験では、異なる超高親和性結合部分を類似の設定で調査した(
図8a~8c)。薬物複合体試料中の薬物分子(TCE#1)に対する結合部分のモル過剰を減少させると、薬物分子の抗腫瘍活性の阻害の喪失が観察された。この阻害の喪失は、薬物分子に対する結合部分の結合親和性との相関性を示した。結合剤#4は、4倍モル過剰で既にTCE活性の阻害の喪失を示し、腫瘍細胞増殖の阻害の増加につながったが、他の2つの結合部分、結合剤#5及び結合剤#9は、4倍モル過剰でTCE活性を依然として効果的に阻害し、T細胞媒介性阻害の全くない正常な増殖曲線をもたらした。モル比が1:1に減少した場合にのみ、結合剤#5及び結合剤#9は、TCE活性の阻害の喪失を示し、腫瘍細胞増殖のT細胞媒介性阻害の増加につながった。1:1のモル比であっても、結合剤#9は、TCE活性をある程度まで阻害することができ、腫瘍細胞増殖の弱い阻害をもたらした。
【0277】
これらのデータにより、Incucyte(登録商標)アッセイが、超高親和性結合部分によるTCE遮断を調査するための高感度の方法であること、及び結合部分が、実施例2においてSPRによって示される超高親和性から予想されるような遮断活性を示すことが確認されている。
全体として、これらの実験により、本発明の結合部分が、薬物分子としてTCE#1及び結合部分として実施例1に記載される結合剤を用いて例示的な様式で本明細書において実証されるように、薬物分子に対する結合部分の結合親和性に応じて、薬物分子の生物学的活性を効果的に阻害し得ることが示された。
【0278】
実施例5:「複合」Incucyte(登録商標)アッセイ
インビボ状況において、結合部分は、その短い半減期のために薬物分子から解離するとすぐに迅速に排除される。対照的に、薬物分子は、それが長い半減期を有するように設計されている場合、複合体化されているかどうかは無関係に、はるかに長い時間体内を循環することができる。長い半減期を有する薬物分子を生成するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、半減期延長部分への融合を伴う。結合剤の迅速な腎排出を模倣するために、「複合」Incucyte(登録商標)設定は、追加のいわゆる「シンク」チャンバを備える。このシンクチャンバにおいて、試験された結合部分の大過剰のビーズ固定化標的タンパク質を添加する(主チャンバに添加したプロドラッグ複合体に含まれる結合部分の量に対して10,000倍超モル過剰)。この固定化標的タンパク質は、遊離結合部分がプロドラッグ複合体から解離し、シンクチャンバ内に拡散するとすぐに遊離結合部分を捕捉する。
【0279】
本明細書に記載の実験では、TCE(TCE#1)を薬物分子として使用した。したがって、シンクチャンバ内に添加した固定化スカベンジャータンパク質は、試験された結合部分によって高い親和性で結合しているCD3特異的結合ドメイン(配列番号11)であった。
【0280】
実験設定
実施例4と同様に、TAAを発現する腫瘍細胞株を、Incucyte(登録商標)カメラによる検出のためにIncucyte Nuclight Red Lentivirusで形質導入された標的細胞株として使用した。Pan T細胞を、異なるプロドラッグ複合体と共に添加した。プロドラッグ複合体を、10pMのTCE#1(最終濃度)を、123pM(12.3倍モル過剰)、41pM(4.1倍モル過剰)及び13.7pM(1.37倍モル過剰)の異なる量の結合剤#9と予め平衡化することによって生成した。次いで、これらのプロドラッグ複合体の各々を、陰性対照として遊離結合部分を隔離しないコーティングされていないビーズ(
図9a)、又はCD3特異的結合ドメインコーティングされたビーズ(したがって、機能的シンクを有する(
図9b))のいずれかと共に、「複合」Incucyte(登録商標)設定で使用した。追加的に、未結合TCE#1(10pM)並びにバックグラウンド(すなわち、プロドラッグ複合体もTCEもないが、ビーズを含む)を対照とした。腫瘍細胞増殖を、Incucyte(登録商標)カメラによって検出された赤色物体の面積を決定することによって、5日間測定した。
【0281】
図9aは、コーティングされていないビーズを収容するシンクチャンバを有するウェルにおいて、試験された結合部分がTCE活性を完全に阻害し、それにより、最も低い結合剤:TCE比(1.37:1)で生成されたプロドラッグ複合体を除いて、腫瘍細胞増殖のT細胞媒介性阻害が観察されなかったことを示す。これは、実施例4に示した結果と一致する。対照的に、CD3特異的結合ドメインでコーティングされたビーズを収容する機能的シンクチャンバを有するウェル(
図9b)において、試験された結合部分はTCE活性を部分的にしか阻害せず、それにより、最も高い結合剤:TCE比(12.3:1)であっても、腫瘍細胞増殖のT細胞媒介性阻害が観察された。未結合TCEを用いた対照とは対照的に、プロドラッグ複合体を有するウェルにおける腫瘍細胞増殖のT細胞媒介性阻害(T細胞媒介性腫瘍細胞死滅の代わりとして)は、実験開始後わずか約1.5~2日で、大幅な遅延を伴って開始した。未結合TCEを有するウェルにおける腫瘍細胞増殖の阻害は、実験開始後約1日で既に開始していた。腫瘍細胞増殖の遅延阻害に反映されるTCE薬物分子の遅延活性により、結合部分が、薬物分子と複合体化してプロドラッグ複合体を形成する場合、薬物分子の生物学的活性を遅延させ得ることが実証された。これらのデータから、本発明の結合部分が薬物分子とプロドラッグ複合体を形成することができ、未結合薬物分子の投与と比較して、患者へのプロドラッグ複合体の投与時、薬物分子の放出が遅くなり、それにより薬物分子の活性が下方調節されるという考えが裏付けられる。
【0282】
実施例6:結合剤との複合体化によるTCE薬物分子のCD3エフェクター部分の一過性遮断は、エクスビボでのヒト全血アッセイにおけるサイトカイン放出を減少させる。
TCE薬物分子(本実施例では、TCE#1(配列番号54)、α-CD123×α-CD33×α-CD3 T細胞エンゲージャー)のサイトカイン放出プロファイルに対する結合剤の効果を調査するために、エクスビボでのヒト全血アッセイを、Immuneed AB,Swedenで実施した。
【0283】
適用された全血ループシステムは、血液と薬物試料との間の相互作用(サイトカイン放出に対する効果を含む)を試験するために使用され得る。血流ループシステムは、血中の免疫細胞、免疫グロブリン、並びにインタクトな補体及び凝固カスケード系の両方を独自に含む(Fletcher,E.A.K.,et al.,Int Immunopharmacol,2018.54:p.1-11.)。サイトカイン放出は、CD123+及びCD33+標的細胞を含有する1人の健康なヒトドナーからの新鮮なヒト全血に試験物質を添加し、その後、試料を回転ホイール上でインキュベートして血液凝固を回避し、血液循環を模倣することによって決定した。
【0284】
対照として、ビヒクル又は1nMの抗CD123×抗CD3産業対照試験物質をヒト全血に添加した。TCE#1分子を1nMの濃度で添加し、1nMのTCE#1+1.2nMの結合剤#5と比較した。複合体化TCEを1.2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、実験開始時にTCEの100%複合体化率を保証した。試験物質を
図10A及び10Bに示す。
【0285】
ヒトTNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6についてのサイトカイン放出を、Meso Scale MULTI-ARRAY(登録商標)技術によって、0時間、2時間、4時間、8時間、24時間の時点で決定した。
【0286】
図10 C~Fに示すように、測定した24時間中、α-CD123×α-CD3産業対照に応答して、かつより少ない程度で未結合TCE#1に応答して、ビヒクルを超える全てのサイトカインのレベルの増加が観察された。しかしながら、結合剤#5と複合体化したTCE#1からなる複合体化TCEは、全ての時点で、未結合TCE#1と比較して、TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6についてのサイトカイン放出を大きく減少させた。
【0287】
結論として、結合剤(結合剤#5など)と複合体化したTCE(TCE#1など)を含むTCEプロドラッグ複合体は、エクスビボでのヒト全血アッセイにおいてサイトカイン放出を効果的に抑制することが示された。
【0288】
実施例7:TCEプロドラッグ複合体は、インビボ有効性試験において最適な抗腫瘍活性を維持する。
インビボ有効性試験の目的は、未結合TCE薬物分子の抗腫瘍活性(本実施例では、TCE#2(配列番号55)、半減期延長部分(α-HSA)を含むα-HSA×α-CD123×α-CD33×α-CD3 T細胞エンゲージャー)及び複合体化TCE薬物分子(TCEプロドラッグ複合体)(本実施例では、2桁のpM(結合剤#4)又は更に1pM以下の範囲(結合剤#10)のいずれかの親和性を有する2つの異なる結合剤のうちの1つと複合体化したTCE#2)を比較することであった。NOGマウスを、2人のヒトドナー(n=5ドナーA及びn=5ドナーB)由来のPBMCを用いて0日目にヒト化した。1×106Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、治療を腫瘍サイズ約70mm3で無作為化後6日目に開始した。品質管理には、単離1日後のPBMC亜集団及びFCによる生存率の分析、並びに19日目のFCによるマウス血液のヒト化の成功が含まれた。注射の1日前に、Molm-13細胞を生存率及びCD33陽性について試験した。
【0289】
インビボ有効性試験のための試験物質を
図11A及び11Bに示す。試験デザイン及び治療群を
図11Cに概説する。TCE#2は200μg/kg又は1000μg/kgのいずれかの用量で投与され、結合剤#4(K
D約20pM)又は結合剤#10(K
D≦1pM)と複合体化した1000μg/kgのTCE#2と比較した。複合体を、2倍モル過剰の結合剤を使用して予め平衡化して、治療開始時に100%の複合体化率を保証した。治療は、ビヒクルを含む全ての治療群について、200μg/kgで毎日治療を行った抗CD33×抗CD3産業対照(第2群)を除いて、6日目から16日目まで週3回静脈内投与した。これらの比較的小さな腫瘍での治療開始時のサイトカインレベルを決定するために、初回治療投与の前及び初回治療投与4時間後に血液試料を採取した。腫瘍増殖をモニターし、キャリパーを用いて週に3回、幅及び長さを測定し、その腫瘍体積を、長さ×幅×高さ×π/6の式を用いて計算した。
【0290】
ドナーA又はBのいずれかのPBMCでヒト化されたn=10マウスについて平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線を
図11Dに示す。第2群(α-CD33×α-CD3産業対照)については、ドナーBからのPBMCでヒト化された2匹の動物を、ヒト化が成功しなかったために分析から除外した。
【0291】
ドナーA及びBの組み合わせでは、200μg/kgで毎日投与された非半減期延長抗CD33×抗CD3産業対照群で強い腫瘍増殖阻害が観察され、1000μg/kgで週3回投与された半減期延長TCE#2で腫瘍消失が観察された。200μg/kgでTCE#2を週3回投与された場合、並びに1000μg/kgでTCE#2+2倍モル過剰の結合剤#4を含むTCEプロドラッグ複合体を週3回投与された場合、あまり顕著でない腫瘍増殖阻害が観察された。同様の腫瘍増殖阻害は、1000μg/kgのTCE#2+2倍モル過剰の結合剤#10を含むTCEプロドラッグ複合体について、これらの実験条件下で観察されなかった。
【0292】
インシリコモデリングでは、200μg/kgの遊離TCEと、結合剤#4で一過的に遮断されたTCE#2からなる1000μg/kgのTCE-結合剤複合体との間で同様のAUCが予測される(KD約20pM)。対照的に、TCE#2のPKと結合剤#10の非常に高い親和性(KD≦1pM)との組み合わせは、結合剤が活性TCE#2を放出することができる前に、より大きな割合のTCE#2+結合剤#10複合体が循環から排除され得るので、活性TCEのより低い曝露をもたらすことが予想される。したがって、完全な抗腫瘍効果を維持しながらサイトカイン放出を最適に減少させるという点での「スイートスポット」は、結合剤親和性とTCEの血清半減期との相互作用である。提示された徐放性TCEプロドラッグツールボックスは、適切な結合剤をTCEに適合させることを可能にする。
【0293】
図11Eは、ドナーAのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線を示し、
図11Fは、ヒト化が成功しなかったために2匹の動物が除外された第2群を除いて、ドナーBのPBMCでヒト化されたn=5マウスについての平均±SEMとしてプロットされた6つ全ての治療群についての腫瘍増殖曲線を示す。顕著なドナー間変動がこの実験で観察され、ドナーA由来のPBMCは、ドナーB由来のPBMCよりもMolm-13細胞の増殖に対してより強い阻害作用を示した。
図11Gは、
図11D~
図11Fの凡例を示す。
【0294】
図12は、腫瘍がまだ比較的小さい場合に、インビボ有効性試験の初回治療投与の前及び4時間後に採取された血液試料の血清中で決定されたサイトカインレベルを示す。ヒトサイトカインレベルは、CBAヒトTh1/Th2/Th17キット(BD Biosciences)によって、無希釈血清試料で決定した。
【0295】
0時間から4時間までのサイトカインの顕著な増加は、α-CD33×α-CD3産業対照について測定された全てのサイトカイン(TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6)について観察することができ、投与された両方の用量でTCE#2についてより少ない程度で観察することができる。しかしながら、サイトカインのこの増加は、TCE#2+結合剤#4又は結合剤#10を含むTCEプロドラッグ複合体で防止され、TCE薬物分子と高親和性結合剤との複合体化が活性TCEの徐放をもたらし、ひいては曝露プロファイルの変化をもたらすという知見を裏付けている。
【0296】
要約すると、徐放性TCEプロドラッグ複合体(結合剤#4と複合体化したTCE#2を含む(CD3エフェクター部分に対するKD約20pM))は、低用量で未結合TCEと同等の抗腫瘍効力を示し、初回治療投与の4時間後にTCE#2の軽度サイトカインレベルを減少させた。
【0297】
実施例8:徐放性TCEプロドラッグ複合体は、インビボ安全性試験においてサイトカイン放出を減少させる。
2つの独立したインビボ安全性試験の目的は、未結合のTCE薬物分子(本実施例では、TCE#2、α-HSA×α-CD123×α-CD33×α-CD3 T細胞エンゲージャー)及び徐放性TCEプロドラッグ複合体(本実施例では、2桁のpM(結合剤#1及び結合剤#4、試験1)又は更に≦1pMの範囲(結合剤#10、試験2)の親和性を有する3つの異なる結合剤のうちの1つと複合体化したTCE#2)によって引き起こされるサイトカイン放出の程度を比較することであった。
【0298】
インビボ安全性試験のための試験物質を
図13A及び13Bに示す。試験デザイン及び治療群を
図13Cに概説する。インビボ安全性試験をインビボ有効性試験から切り離した理由は、TCEの初回投与時に十分な量の標的細胞を有し、それにより測定可能なサイトカイン応答が誘発されるためには、中程度のサイズの腫瘍が必要であるからである。
【0299】
NOGマウスを、2人のヒトドナー(n=5ドナーA及びn=5ドナーB)由来のPBMCを用いて0日目にヒト化した。1×10
6Molm-13腫瘍細胞を2日目に皮下注射し、単回用量(感作誘発)を腫瘍サイズ約300~800mm
3で14日目に静脈内投与した。品質管理には、単離1日後のPBMC亜集団及びFCによる生存率の分析、並びに15日目(試験1)又は19日目(試験2)のFCによるマウス血液のヒト化の成功が含まれた。1000μg/kgで投与された半減期延長未結合TCE#2を、TCEプロドラッグ複合体(結合剤#1、結合剤#4又は結合剤#10と複合体化したTCE#2)と比較した。複合体を2倍モル過剰の結合剤で予め平衡化して、治療開始時に100%の複合体化率を保証した。投与前、初回治療投与の2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に血液試料を採取して、中程度のサイズの腫瘍でのサイトカインレベルを決定した。
図13Dは、単回用量治療の前又は後の指示された時点で採取された血液試料からの血清中のヒトサイトカインレベル(TNF-α、IFN-γ、IL-2及びIL-6)を示す。サイトカインレベルは、CBAヒトTh1/Th2/Th17キット(BD Biosciences)によって、無希釈血清試料で決定した。
【0300】
全てのサイトカインは、未結合TCE#2の単回投与後に上昇するが、試験した3つの異なるTCEプロドラッグ複合体について、サイトカイン放出の減少を観察することができる。サイトカイン放出の減少は、実際に結合剤親和性と相関し、結合剤親和性が上段(KD約40pMを有する結合剤#1)から中段(KD約20pMを有する結合剤#4)、下段(KD≦1pMを有する結合剤#10)まで増加するにつれてより顕著になる。結合剤#10はサイトカイン放出をほぼ完全に阻害した。
【0301】
結論として、徐放性TCEプロドラッグ複合体は、未結合TCEと比較して、インビボでのサイトカイン放出を減少させることができた。更に、TCE中のCD3エフェクター部分に対する結合剤親和性は、サイトカイン放出の減少と相関していた。
【0302】
本明細書は、明細書内で引用された参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供し、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明に包含されることを容易に認識する。本開示で引用された全ての刊行物、特許、及びGenBank配列は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾するか、又は一致しない限り、本明細書は、任意のそのような資料に優先する。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0303】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
【配列表】
【国際調査報告】