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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-27
(54)【発明の名称】糖尿病を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20231220BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K38/28
A61P3/10 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536129
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 US2021063235
(87)【国際公開番号】W WO2022132712
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/125,165
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】カー,モリー コーベット
(72)【発明者】
【氏名】チエン,ユエー-リン
(72)【発明者】
【氏名】チグツァ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ガリヤン,パラグ
(72)【発明者】
【氏名】ハウプト,アクセル リヒャルト カール-アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】タン,チェン ツァイ
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA59
4C084DB34
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZC351
4C084ZC352
(57)【要約】
毎週の基礎インスリン-Fc(BIF)などの、週1回の投薬に好適な長時間作用型インスリン受容体アゴニストの固定用量及び投薬レジメンが本明細書に記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖制御を必要とする2型糖尿病(T2D)患者においてそれを提供する方法であって、前記患者に、100、150、250及び400Uからなる群から選択される固定用量の基礎インスリン-Fc(BIF)を週1回投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者に投与されるBIFの第1の用量が、100Uである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が同じ用量を少なくとも4週間投与され、前記患者が追加の血糖制御を必要とする場合に前記用量が増加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の空腹時血糖(FG)が、少なくとも4週間の第1の固定用量での治療後に>130mg/dLである場合、前記患者の用量が増加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の用量が、前記患者が血糖<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合にのみ増加される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者のFGが<80mg/dLである場合、前記患者の用量が減少される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
血糖制御を必要とする2型糖尿病(T2D)患者においてそれを改善する方法であって、
a)前記患者に100UのBIFを週1回投与することと、
b)前記100Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の150UのBIFに増加させることと、
c)前記150Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の250UのBIFに増加させることと、
d)前記250Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の400UのBIFに増加させることと、を含む、方法。
【請求項8】
ステップb)~d)が、前記患者のFGを低減するために実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)~d)が、前記患者のFGが>130mg/dLであるときに実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)~d)が、前記患者が血糖<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合にのみ実施される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者のFGが<80mg/dLである場合、前記患者の用量が以前のより低い用量まで減少される、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の低血糖のエピソードを経験する場合、前記患者が治療を中止する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、インスリン未経験である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
患者が、非制御性高血糖を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、7~10%のHbA1cを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、2つ以上の経口抗高血糖薬を受けている、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、GLP-1受容体アゴニストを受けている、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
BIFが、約5~10mMの濃度のリン酸塩、及び約15~35mMの濃度のグリセロールを含み、約5.5~7.5のpHを有する水性組成物で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、前記組成物の前記pHが約6.5である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
水性薬学的組成物であって、
a)100、150、250及び400Uからなる群から選択される量の固定用量のBIFと、
b)約5~10mMの濃度のリン酸塩と、
c)約15~35mMの濃度のグリセロールと、を含み、
約5.5~7.5のpHを有する、水性薬学的組成物。
【請求項22】
ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、前記組成物の前記pHが約6.5である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
血糖制御を必要とする2型T2D患者においてそれを提供する方法であって、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記固定用量のBIFが、単回使用自動注射器で提供される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法で使用するための単回使用自動注射器。
【請求項27】
請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物を含む単回使用自動注射器。
【請求項28】
前記方法が、前記患者の血糖制御を改善することを含む、請求項1~20又は24~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
T2Dの治療における使用のためのBIFであって、前記治療が、100、150、250及び400Uからなる群から選択される固定用量のBIFを週1回投与することによって、血糖制御を改善することを含む、使用のためのBIF。
【請求項30】
BIFの第1の固定用量が、100Uである、請求項29に記載の使用のためのBIF。
【請求項31】
同じ用量が少なくとも4週間投与され、追加の血糖制御が必要な場合に前記用量が増加される、請求項29又は30に記載の使用のためのBIF。
【請求項32】
少なくとも4週間の第1の固定用量での治療後に前記患者のFGが>130mg/dLである場合、前記用量が増加される、請求項29~31のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項33】
前記用量が、前記患者がFG<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合(0回)にのみ増加される、請求項29又は30に記載の使用のためのBIF。
【請求項34】
前記患者のFGが<80mg/dLである場合、前記用量が減少される、請求項29~33のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項35】
T2Dの治療における使用のためのBIFであって、前記治療が、
a)初期用量の100UのBIFを週1回投与することと、
b)前記100Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の150UのBIFに増加させることと、
c)前記150Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の250UのBIFに増加させることと、
d)前記250Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の400UのBIFに増加させることと、によって血糖制御を改善することを含む、使用のためのBIF。
【請求項36】
ステップb)~d)が、前記患者のFGを低減するために実施される、請求項35に記載の使用のためのBIF。
【請求項37】
ステップb)~d)が、前記患者のFGが>130mg/dLである場合に実施される、請求項35に記載の使用のためのBIF。
【請求項38】
ステップb)~d)が、前記患者が血糖<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合(0回)にのみ実施される、請求項35~37のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項39】
前記患者のFGが<80mg/dLである場合、前記用量が以前の用量まで減少される、請求項35~38のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項40】
前記患者が1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の低血糖のエピソードを経験した場合、前記治療が中止される、請求項28~33のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項41】
前記患者が、インスリン未経験である、請求項28~40のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項42】
前記患者が、非制御性高血糖を有する、請求項28~41のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項43】
前記患者が、7~10%のHbA1cを有する、請求項28~42のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項44】
前記患者が、2つ以上の経口抗高血糖薬を受けている、請求項28~43のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項45】
前記患者が、GLP-1受容体アゴニストを受けている、請求項28~44のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項46】
BIFが、約5~10mMの濃度のリン酸塩、及び約15~35mMの濃度のグリセロールを含み、約5.5~7.5のpHを有する水性組成物で投与される、請求項28~45のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項47】
前記組成物が、ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、請求項46に記載の使用のためのBIF。
【請求項48】
前記リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、前記組成物の前記pHが約6.5である、請求項47に記載の使用のためのBIF。
【請求項49】
BIFの前記用量が、単回使用自動注射器で投与される、請求項29~48のいずれか一項に記載の使用のためのBIF。
【請求項50】
前記治療が、請求項21~23のいずれか一項に記載の組成物を投与することによって血糖制御を改善することを含む、T2Dの治療に使用するためのBIF。
【請求項51】
請求項29~50のいずれか一項に記載の糖尿病の治療に使用するための薬剤の製造におけるBIFの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病を治療するための方法、使用、投与レジメン及び製品に関する。より具体的には、本発明は、長時間作用型インスリン受容体アゴニストを含む組成物及び製品を用いて糖尿病を治療する方法に関する。本明細書に記載の方法は、毎週の基礎インスリン-Fc(BIF)などの週1回の投薬に好適な長時間作用型インスリン受容体アゴニストの固定用量及び投薬レジメン、並びにそのようなレジメンで使用するための製品提示を含む。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリン分泌、インスリン作用、又は両方の欠陥に起因する高血糖症を特徴とする慢性疾患である。2型糖尿病(T2D)は、インスリン分泌不全、インスリン抵抗性、過剰な肝臓でのグルコース生産、及び/又は上記のうちの全ての寄与に起因する血糖値の上昇を特徴とする。T2D患者の治療は典型的に、処方された減量、運動、及び糖尿病食から始まるが、これらの手段で血糖の上昇を制御できない場合は、経口薬及びインクレチンベースの治療法が必要になることがある。これらの薬剤が依然として不十分である場合、インスリンによる治療が検討される。疾患がインスリン療法を必要とするところまで進行しているT2D患者は、一般に、長期作用型の基礎インスリンの1日1回の注射を始める。
【0003】
現在入手可能な基礎インスリン類似体には、商品名LANTUS(登録商標)、TOUJEO(登録商標)、BASALGLAR(登録商標)及びSEMGLEE(登録商標)で販売されているインスリングラルギン、商品名LEVEMIR(登録商標)で販売されているインスリンデテミル、並びに商品名TRESIBA(登録商標)で販売されているインスリンデグルデクが含まれる。これらのインスリンは、各々1日1回の投与に適応される。多くのT2D患者は、インスリン療法の開始及び/又は遵守をためらうが、一部には毎日の注射の必要性、及び定期的に可変用量の計算を必要とする用量要件を理由とする。したがって、インスリン療法の開始後であっても、多くの糖尿病患者は、血糖値の厳密な制御を維持するために必要なインスリン療法に従うことを望まないか若しくは従うことができない、又は従う能力がない。
【0004】
作用期間がより長く、故に必要な注射頻度が現在利用可能なインスリン製品よりも少ない(週1回程度の頻度を含む)インスリン製品を特定するための研究が行われている。例えば、WO2014/009316は、糖尿病患者がインスリンの十分な基礎投与を得るために、週に約1回の頻度でそれらを投与するのに十分な、十分に長い作用時間を有すると述べられているインスリン誘導体を記載している。これらの誘導体の治療レジメンは、WO2016/001185で提案されている。US2016/0324932は、BIFを含め、週1回程度の頻度で投薬するのに十分なインスリン受容体での作用持続時間を延長した融合タンパク質を記載している。具体的な投薬レジメンは記載されていない。
【0005】
これらの開示にもかかわらず、現在利用可能なインスリン製品よりも注射回数が少なく、依然として十分な血糖制御を提供しながら単純で便利な投薬レジメンで投与することができるインスリン療法が依然として必要とされている。より簡素で、より便利で、かつ/又は痛みの少ない患者経験を提供するような治療法を提示する必要性も依然として存在する。現在利用可能なインスリン製品と比較して、低血糖のリスクを増加させずに、又は低減して、そのようなインスリン療法を使用する治療方法の必要性も残っている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、血糖制御を必要とする2型糖尿病(T2D)患者においてそれを提供する方法であって、当該患者に、100、150、250及び400Uからなる群から選択される固定用量のBIFを週1回投与することを含む、方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、
a)当該患者に、100Uの基礎インスリン-Fc(BIF)の初期用量を週1回投与することと、
b)100Uの用量での少なくとも4週間後に、用量を週1回の150UのBIFに増加させることと、
c)150Uの用量での少なくとも4週間後に、用量を週1回の250UのBIFに増加させることと、
d)250Uの用量での少なくとも4週間後に、用量を週1回の400UのBIFに増加させることと、を含む、2型糖尿病(T2D)患者における血糖制御を提供する方法を提供する。
【0008】
ある特定の実施形態では、ステップb)~d)は、患者の空腹時血糖(FG)が>130mg/dLである場合に実施される。
【0009】
本発明はまた、
a)100、150、250及び400Uからなる群から選択される量の固定用量のBIFと、
b)約5~10mMの濃度のリン酸塩と、
c)約15~35mMの濃度のグリセロールと、を含み、
約5.5~7.5のpHを有する、水性薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明はまた、100、150、250及び400Uからなる群から選択される固定用量のBIFを含む、T2D患者の血糖制御の改善に使用するための単回使用自動注射器を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願は、BIFを含む、米国特許出願公開第2016/0324932号に記載されるものなど、週1回の投薬に好適な長時間作用型インスリン受容体アゴニストの投薬レジメン、使用及び治療方法の複数の態様を提供する。ある特定の態様では、本明細書に記載のレジメン及び方法は、固定用量のBIFの投与を含む。他の態様では、本明細書に記載のレジメン及び方法は、T2D患者を治療するために使用されているBIFの固定用量を変更すべきかどうかの決定を含む。他の態様では、本明細書に記載のレジメン及び方法は、固定用量のBIFを投与するための単純で便利なデバイスの特定を含む。他の態様では、本明細書のレジメン及び方法は、固定用量のBIFを提供する際に使用するための非保存製剤を記載する。
【0012】
インスリンエフシトラアルファとしても知られるBIFは、ヒトIgG Fc領域に融合したインスリン受容体アゴニストの二量体を含み、インスリン受容体アゴニストは、第1のペプチドリンカーの使用によってインスリンA鎖類似体に融合したインスリンB鎖類似体を含み、インスリンA鎖類似体のC末端残基は、第2のペプチドリンカーのN末端残基に直接融合され、第2のペプチドリンカーのC末端残基は、ヒトIgG Fc領域のN末端残基に直接融合される。BIFは、CAS登録番号2131038-11-2によって識別され、次の化学名が付けられている:(1)免疫グロブリンG2(ヒトFc断片)、二量体を有するペプチド(合成20-アミノ酸リンカー)融合タンパク質を有するインスリン[47-トレオニン、51-アスパラギン酸、58-グリシン](ヒトA鎖)融合タンパク質を有するペプチド(合成7-アミノ酸リンカー)融合タンパク質を有するインスリン[16-グルタミン酸、25-ヒスチジン、27-グリシン、28-グリシン、29-グリシン、30-グリシン](ヒトB鎖)融合タンパク質;及び(2)アルファグリコシル化されたCHO細胞中で発現されたトリス(テトラグリシルグルタミニル)ペンタグリシル(59-78)ホモサピエンス免疫グロブリン重鎖定常γ2{del-CH1、ヒンジ-(7-12)、CH2、CH3[K107>del(300)]}(79-299)、二量体(80-80’:83-83’)-ビスジスルフィドを有するジグリシルセリルテトラグリシル(31-37)インスリンA鎖[I10>T(47)、Y14>D(51)、N21>G(58)](38-58)融合タンパク質を有するホモサピエンスインスリンB鎖[Y16>Y(16)、F25>H(25)、TPKT27-30>GGGG(27-30)](1-30)融合タンパク質。
【0013】
BIFの各単量体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する。
【化1】
(配列番号1)。各単量体は、7位と44位、19位と57位、43位と48位、114位と174位、及び220位と278位のシステイン残基間に鎖内ジスルフィド結合を含む。2つの単量体は、80位と83位のシステイン残基間のジスルフィド結合によって結合して二量体を形成する。BIFの構造、機能及び産生については、米国特許出願公開第2016/0324932号でより詳細に記載されている。
【0014】
本明細書で使用される場合、「BIF」という用語は、配列番号1のアミノ酸配列を有する2つの単量体で構成された任意のインスリン受容体アゴニストを指し、インスリン受容体アゴニスト製品の承認を求める当事者が、実際にそのインスリン受容体アゴニストをBIFとして同定しているか、又はいくつかの他の用語を使用しているかにかかわらず、BIFに関してEli Lilly and Companyによって規制当局に提出された全体的又は部分的なデータに依存する、当該製品の承認を求める規制提出書類の対象である任意のタンパク質を含む。
【0015】
BIFは、長時間作用型インスリン受容体アゴニストであり、週1回以下の頻度で投与される場合、食事間の血糖値を制御するために十分に持続する薬物動態学的及び薬力学的プロファイルを有する。所与の時点での患者のニーズに合わせて個別化された可変用量の決定を必要とする既存のインスリン療法とは異なり、BIFの比較的平坦な薬物動態プロファイルは、1に近いピーク対トラフ比を有するため、個別数の固定用量の投与を含む簡素かつ便利な投薬レジメンでの使用が可能である。そのようなアプローチは、限られた数の用量強度が提供され、利用可能な最大用量が制限されているという点で、固定用量の薬物療法に似ている。
【0016】
この簡素化された用量数の提供により、インスリン療法を受けていないT2DM患者のインスリン療法への移行が促進されることが期待される。そのようなレジメンは、実際の診療で基礎インスリンの効果的な滴定を制限する臨床的慣性を緩和するのに役立つ可能性がある。したがって、本発明の方法、使用及びレジメンは、広範囲のT2D患者において血糖制御を提供するために使用され得るが、それらは、現在基礎インスリンで治療されておらず、週1回のインスリン受容体アゴニストで開始している患者(本明細書では「インスリン未経験」患者と呼ばれる)に特に好適である。
【0017】
ある特定の実施形態では、患者は、7.0%~10.0%の糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)値を有する。ある特定の実施形態では、患者はまた、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)阻害剤、ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストからなる群から選択される0~最大3つの追加の抗高血糖療法で治療されている。ある特定の実施形態では、患者は、体格指数(BMI)≦45kg/m2を有する。ある特定の実施形態では、そのような固定用量レジメンで治療される患者は、HbA1cが7.5%~10.0%(両端値を含む)であり、GLP-1 RAを含む又は含まない2つ以上の経口抗高血糖薬を受けているインスリン未経験のT2DM患者である。
【0018】
ある特定の実施形態では、患者は、初期用量で治療を開始し、所与の期間、初期用量で治療した後、必要に応じて次のより高い用量に漸増する。例えば、患者は、同じ固定用量を数週間、例えば4週間投与され、次いで患者が更なる血糖制御を必要とする場合、次の固定用量レベルまで用量を漸増させてもよい。ある特定の実施形態では、患者のFGがある特定のレベル、典型的には約120~140mg/dLを超える場合、患者は更なる血糖制御を必要としているとみなされる。ある特定の実施形態では、患者のFGが>120mg/dLである場合、患者は更なる血糖制御を必要としているとみなされる。ある特定の実施形態では、患者のFGが>140mg/dLである場合、患者は更なる血糖制御を必要としているとみなされる。ある特定の好ましい実施形態では、患者のFGが>130mg/dLである場合、患者は更なる血糖制御を必要としているとみなされる。ある特定の実施形態では、患者が最高固定用量での治療後に更なる血糖制御を必要とする場合、患者は、本開示の範囲外の可変用量レジメンでの治療に移行する。
【0019】
ある特定の実施形態では、患者のFGがある特定のレベルを下回っている場合、患者は以前のより低い用量まで減少させることができる。ある特定の実施形態では、患者のFGがある特定のレベルを下回っている場合(例えば、<80mg/dL)、患者は以前のより低い用量まで減少させることができる。ある特定の実施形態では、患者が最低用量を受けている間に1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の任意の低血糖のエピソードを経験した場合、患者は治療を中止することができる。
【0020】
本発明の方法、使用及びレジメンにおける使用のためのBIFの用量は、インスリン単位(IU若しくはU)又はBIFのmgのいずれかとして表すことができる。BIFの用量がUで表されるある特定の実施形態では、利用可能な用量は、約50~約1050Uである。ある特定の実施形態では、用量は、約100~500Uである。ある特定の実施形態では、用量は、100、150、200、250、300、350、400、450及び500Uからなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態では、利用可能な用量は、100、150、250及び400Uである。本明細書に記載される固定用量は、週1回提供されることが意図されるため、所与の用量について特定された単位は、その用量が1週間にわたって提供することを意図したインスリン活性の総単位数を示す。
【0021】
そのような用量で構成される好ましい投薬レジメンは、以下の表1に記載されている。
【表1】
【0022】
表1に示されるレジメンによれば、患者は100Uの初期用量で開始し、患者のFGが130mg/dLを超える場合、少なくとも4週間の治療後に150Uの用量まで増加する。同様に、150Uの用量で治療されている患者の用量は、患者のFGが130mg/dLを超える場合、150Uの用量での少なくとも4週間の治療後に250Uまで増加する。同様に、250Uの用量で治療されている患者の用量は、患者のFGが130mg/dLを超える場合、250Uの用量での少なくとも4週間の治療後に400Uまで増加する。最後に、患者のFGが80mg/dLを下回っている場合、患者はいつでも以前のより低い用量に減少させることができる。加えて、患者が最低用量を受けている間に1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の任意の低血糖のエピソードを経験した場合、患者は治療を中止することができる。
【0023】
BIFの用量がmgで表されるある特定の実施形態では、利用可能な用量は、1、1.5、2、2.5、2.85、3、3.5、4、4.3、4.5、5、5.5、5.7、6.5、7、7.15、8、8.6、9、10、11、11.45、12、12.85、13、14、14.3、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30mgからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、利用可能な用量は、1、1.5、2、2.85、3、4.3、4.5、6、7.15、10、11.45、12、12.85及び14.3mgからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、利用可能な用量は、2.85、4.3、7.15及び11.45mgである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「固定用量」という用語は、単一剤形で利用可能であり、それから投与される特定の用量を指す。本明細書に記載のBIFの固定用量の剤形は、バイアル、カートリッジ、ペン型注射器又はポンプなど、水溶液の皮下投与に使用できる任意の剤形であり得るが、好ましい実施形態では、固定用量は、米国特許第8,734,394号に記載されているものなどの単回使用自動注射器で提供される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「固定用量レジメン」という用語は、複数の固定用量を含む治療レジメン、及び所与の時点でどの固定用量を投与すべきかを決定するためのガイドラインを指す。例えば、固定用量レジメンは、複数の固定用量のセットと、それらの固定用量のうちのどれを所与の週に投与すべきかを決定するためのガイドラインとを含み得る。
【0026】
本明細書に記載の固定用量及びレジメンの利点は、防腐剤の使用を必要としない製剤を使用して実行できることである。既存のインスリン療法は典型的に、規制要件を満たすのに十分な抗菌効果を有する保存製剤を必要とする複数回使用の提示を伴う可変用量レジメンを使用して投与されるが、本明細書に記載の固定用量は、好ましくは単回使用デバイスから投与されるため、非保存製剤で提供され得る。メタクレゾール及びフェノールなどの既存のインスリン療法で使用されるフェノール系防腐剤は、タンパク質及びペプチドに安定性の問題を引き起こすことが知られているため、そのような非保存製剤の使用は、安定性の観点から従来の保存インスリン製剤よりも有利である可能性がある。したがって、そのような製剤は、典型的に、十分な安定性を確保するために追加の賦形剤を含める必要がある。
【0027】
本発明の固定用量レジメンで使用するための非保存製剤は、固定用量のBIF、緩衝液及び等張化剤を含む。ある特定の実施形態では、BIFの濃度は、約5~約25mg/mLである。ある特定の実施形態では、BIFは、100、150、250及び400インスリン単位(IU又はU)からなる群から選択される固定用量の投与を可能にする濃度である。ある特定の実施形態では、BIFは、100、150、250及び400インスリン単位(IU又はU)からなる群から選択される量である。ある特定の実施形態では、BIFは、2.85、4.3、7.15及び11.45mgからなる群から選択される量である。ある特定の実施形態では、固定用量のBIFは、5.7、8.6、14.3及び22.9mg/mLからなる群から選択されるBIF濃度を有する0.5mL溶液で提供される。
【0028】
緩衝剤の例は、二塩基性リン酸ナトリウム、クエン酸塩、酢酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、又はTRISなどのリン酸塩である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、約5~約10mMの範囲の濃度でクエン酸緩衝液を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、約5~約10mMの範囲の濃度でリン酸塩を含む。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、リン酸塩を約5、6、7、8、9又は10mMの濃度で含む。ある特定の実施形態では、緩衝液は、約10mMである。
【0029】
典型的な等張化剤には、グリセロール(グリセリン)、マンニトール及び塩化ナトリウムが含まれる。等張化剤の添加が必要な場合、グリセリンが好ましい。ある特定の実施形態では、グリセロールの濃度は、約10~約50mg/mLである。ある特定の実施形態では、グリセロールの濃度は、約15~約35mg/mLである。ある特定の実施形態では、グリセロールの濃度は、約15、17、20、21及び35mg/mLからなる群から選択される。ある特定の好ましい実施形態では、グリセリンの濃度は、約25mg/mLである。
【0030】
ある特定の実施形態では、組成物は、約5.5~約7.5、好ましくは少なくとも約6.1のpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは、約6.2~約7.4の範囲である。ある特定の実施形態では、pHは、約6.3~約6.9の範囲である。特に好ましい実施形態では、pHは、約6.5である。
【0031】
組成物はまた、界面活性剤などの安定化剤を含む、他の賦形剤を含んでもよい。非経口薬学的組成物に使用するために開示された界面活性剤の例には、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)及びポリソルベート80(TWEEN80)などのポリソルベート、PEG400、PEG3000、TRITON(商標)X-100などのポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(CAS番号:9002-92-0、商品名BRIJ(登録商標)で販売)などのポリエチレングリコール、MYRJ(商標)などのアルコキシル化脂肪酸、ポリプロピレングリコール、ポロキサマー188(CAS番号9003-11-6、PLURONIC(登録商標)F-68の商品名で販売)及びポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)などのブロックコポリマー、ソルビタンアルキルエステル(例えば、SPAN(登録商標))、ポリエトキシル化ヒマシ油(例えば、KOLLIPHOR(登録商標)、CREMOPHOR(登録商標))、並びにトレハロース及びトレハロースラウレートエステルなどのその誘導体が含まれる。
【0032】
ある特定の好ましい実施形態では、組成物は、ポリソルベート20、ポリソルベート80及びポロキサマー188からなる群から選択される界面活性剤を含む。ポロキサマー188が最も好ましい。ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.01~約10mg/mL又は約0.1~約0.5mg/mLの範囲である。界面活性剤がポロキサマー188である好ましい実施形態では、ポロキサマー188の濃度は、約0.4mg/mLである。
【0033】
ある特定の実施形態では、組成物は、2.5~25mg/mLの濃度のBIF、緩衝液、及び等張化剤を含み、5.5~7.5のpHを有する。ある特定の実施形態では、組成物は、100~400Uの量でBIFを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、約100、150、250又は400Uからなる群から選択される量でBIFを含む。ある特定の実施形態では、緩衝液は、5~10mMの濃度のリン酸緩衝液であり、等張化剤は、15~35mg/mLの濃度のグリセロールであり、pHは、6.3~6.9である。ある特定の実施形態では、組成物は、界面活性剤を更に含む。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、0.01~10mg/mLの濃度のポロキサマー188である。ある特定の実施形態では、組成物は、約100、150、250又は400Uからなる群から選択される量のBIF、約10mMの濃度のリン酸塩、約25mg/mLの濃度のグリセロール、約0.4mg/mLの濃度のポロキサマー188を含み、約6.5のpHを有する。ある特定の実施形態では、組成物は、防腐剤を含有しない。ある特定の実施形態では、組成物は、安定化剤として亜鉛を含有しない。
【0034】
好ましい組成物は、安定性を失うことなく、5℃で少なくとも24ヶ月、30℃までの温度で少なくとも2週間の保存を可能にするのに十分な化学的及び物理的安定性を有する。ある特定の実施形態では、組成物は、25℃で8週間の保存を可能にするのに十分に安定している。ある特定の実施形態では、組成物は、25℃で12週間の保存を可能にするのに十分に安定している。ある特定の実施形態では、組成物は、30℃で8週間の保存を可能にするのに十分に安定している。ある特定の実施形態では、組成物は、30℃で12週間の保存を可能にするのに十分に安定している。
【0035】
本明細書で使用される場合、「およそ」及び「約」という用語は、測定の性質又は精度を考慮して、示された量(amount)又は量(quantity)の許容誤差の程度を指すことを意図している。例えば、誤差の程度は、当技術分野で理解されているように、測定のために提供された有効数字の数によって示すことができ、量(amount)又は量(quantity)について報告された最も正確な有効数字の±1の変動を含むが、これに限定されない。典型的には、例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。本明細書に示される数値は、別段の記載がない限り近似値であり、「約」という用語は、明示的に記載されていない場合に推測できることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「用量」又は「用量(複数)」という用語は、特定の時点で個別の量で個体に投与される週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの量を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「空腹時グルコース」、「FG」、「空腹時血糖」、「FBG」、「空腹時血漿グルコース」又は「FPG」という用語は、患者が一晩絶食した後の持続グルコースモニタリング(CGM)によって採取又は取得された血液試料からの血漿グルコースレベルを指す。患者に投与される週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの用量を決定する文脈で使用される場合、本明細書で別段の指定がない限り、患者のFGは、複数日、典型的には少なくとも3日~7日以内のFG中央値として決定される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」、「治療すること」などの用語は、疾患又は障害の進行を遅延又は減衰させることを含むことを意味する。また、これらの用語は、障害又は状態が実際に排除されていない場合でも、かつ障害又は状態の進行自体が遅延又は反転されない場合でも、障害又は状態の1つ以上の症状を緩和、寛解、減衰、排除、又は軽減することも含む。
【0039】
「血糖制御」とは、例えば血糖値及び/又はHbA1cレベルによって測定される、対象の血糖値を指し、血糖制御を「提供する」とは、血糖制御を維持又は改善することを指し、血糖制御を「維持する」とは、血糖値が目標範囲内にある時間を維持すること、及び/又はHbA1cを維持又は低減することを指し、血糖制御を「改善する」とは、血糖値が目標範囲内にある時間を延長すること、及び/又はHbA1cを低減することを指し、「更なる血糖制御を必要とする」とは、血糖値が目標範囲内にある時間の延長及び/又はHbA1cの低減の必要性を指す。
【0040】
「HbA1c」は、ヘモグロビンが血中のグルコースと接合するときに発生する糖化ヘモグロビンレベルを指す。HbA1cレベルは、糖尿病を有する患者における血糖制御の一般的に使用される尺度である。
【0041】
「低血糖」は、低い血糖を指し、低血糖の「エピソード」は、例えば、血漿グルコース試験又は個人用血糖測定器(BGM)若しくはCGMデバイスからの値で観察される低血糖の事例を指し、多くの場合、約70mg/dL未満である。
【0042】
「重度の」低血糖のエピソードは、低血糖の治療に介助を必要とする精神状態及び/又は身体状態の変化を特徴とする重度の事象である。例えば、精神状態が変化し、自身の世話を手伝うことができなかった、又は半意識若しくは無意識であった、又は発作を伴う若しくは伴わない昏睡状態を経験し、炭水化物、グルカゴン、若しくは他の組成措置を積極的に投与するために別のヒトの介助が必要であった対象。そのような事象中はグルコース測定値が得られない場合があるが、グルコース濃度が正常に戻ることに起因する神経学的回復は、事象が低グルコース濃度によって誘導されたという十分な証拠と考えられる。
【0043】
本明細書に記載の治療方法、レジメン及び使用は、メトホルミン、インクレチン及び/又は他の注射可能な薬剤などの経口T2D薬を含む、他のT2D治療と同時又は順次に組み合わせて提供され得る。インクレチンの例には、デュラグルチド又はセマグルチドなどのGLP-1受容体アゴニスト、チルゼパチドなどのGIP/GLP-1コアゴニスト、及びGIP/GLP-1/グルカゴントリプルアゴニストが含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の治療方法、レジメン及び使用は、他の基礎インスリン及び/又は速効型インスリンと同時又は順次に組み合わせて提供され得る。
【0044】
本明細書に記載の方法、使用及び治療のある特定の実施形態は、以下のとおりである。
【0045】
実施形態1.糖尿病を有する対象における血糖制御を改善する方法であって、
a)糖尿病を有する対象を特定することと、
b)当該対象に、1週間以上の週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第1の用量を投与することと、
c)第1の用量の最新の投与に続く週に、対象のFGを複数回測定することと、
d)ステップc)に記載された測定値からの対象のFG中央値が>130mg/dLであったかどうかを決定することと、
e)(i)対象のFGが>130mg/dLであった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量に切り替える、又は(ii)対象のFGが<130mg/dLであった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第1の用量で維持するという基準に従って、投与されるインスリン受容体アゴニストの次の用量を選択することと、
f)ステップe)で選択された用量を対象に投与することと、を含む、方法。
【0046】
実施形態2.ステップf)で投与されるインスリン受容体アゴニストの用量が、週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量であり、週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量が、1週間以上投与されており、
g)第2の用量の最新の投与に続く週に、対象のFGを複数回測定することと、
h)ステップg)に記載された測定値からの対象のFG中央値が>130mg/dLであったかどうかを決定することと、
i)(i)対象のFGが>130mg/dLであった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量に切り替える、(ii)対象のFGが<81~130mg/dLであった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量で維持する、又は(iii)対象のFGが<81であった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第1の用量に切り替えるという基準に従って、投与されるインスリン受容体アゴニストの次の用量を選択することと、
j)ステップi)で選択された用量を対象に投与することと、更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0047】
実施形態3.ステップj)で投与されるインスリン受容体アゴニストの用量が、週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量であり、週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量が、1週間以上投与されており、
k)第3の用量の最新の投与に続く週に、対象のFGを複数回測定することと、
l)ステップk)に記載された測定値からの対象のFG中央値が>130mg/dLであったかどうかを決定することと、
m)(i)対象のFGが>130mg/dLであった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第4の用量に切り替える、(ii)対象のFGが81~130mg/dLであった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量で維持する、又は(iii)対象のFGが<81であった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量に切り替えるという基準に従って、投与されるインスリン受容体アゴニストの次の用量を選択することと、
n)ステップm)で選択された用量を対象に投与することと、更に含む、実施形態2に記載の方法。
【0048】
実施形態4.ステップn)で投与されるインスリン受容体アゴニストの用量が、週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第4の用量であり、第4の用量が、1週間以上投与されており、
o)第4の用量の最新の投与に続いて、対象のFGを複数回測定することと、
p)ステップo)に記載された測定値からの対象のFG中央値が、少なくとも2週間連続して>140mg/dLであったかどうかを決定することと、
q)(i)対象のFGが2週間連続して>140mg/dLであった場合、請求項11~17、23~24、30、32若しくは36のいずれか1つに記載の基準に従って投与される次の用量を決定する、(ii)対象のFGが最新の用量の投与後に<81であった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量に切り替える、又は(iii)対象のFGが最新の用量の投与後に>81であり、2週間連続して>140mg/dLでなかった場合、対象を週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第4の用量で維持するという基準に従って投与されるインスリン受容体アゴニストの次の用量を選択することと、
r)ステップq)で選択された用量を対象に投与することと、更に含む、実施形態3に記載の方法。
【0049】
実施形態5.第1の用量を受けている間に患者が1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の低血糖のエピソードを経験する場合、患者が治療を中止する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
実施形態6.患者が、T2DMを有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施形態7.患者が、インスリン未経験である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態8.患者が、非制御性高血糖症を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態9.患者が、7.5~10.0%のHbA1cを有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態10.患者が、2つ以上の経口抗高血糖薬を受けている、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態11.患者が、GLP-1受容体アゴニストを受けている、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態12.週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストが、BIFである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態13.BIFの第1の用量が、1.5mgである、実施形態12に記載の方法。
【0058】
実施形態14.BIFの第2の用量が、3.0mgである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態15.BIFの第3の用量が、4.5mgである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態16.BIFの第4の用量が、6.0mgである、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
実施形態17.1.5、3.0、4.5及び6.0mgからなる群から選択される固定用量のBIFを投与することを含む、糖尿病を有する患者の血糖制御を改善する方法。
【0062】
実施形態18.投与されるインスリン受容体アゴニストの次の用量を選択する前に、インスリン受容体アゴニストの用量が少なくとも4週間投与されている、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
実施形態19.糖尿病を有し、更なる血糖制御を必要とする対象において血糖制御を提供する方法であって、
a)更なる血糖制御を必要とする対象を特定することと、
b)当該対象に、最低4週間の週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第1の用量を投与することと、
c)対象が更なる血糖制御を必要としているかどうかを決定し、ステップc)で決定されたように、対象が更なる血糖制御を必要とする場合、当該対象に、最低4週間の週1回の投与に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量を投与することと、を含む、方法。
【0064】
実施形態20.対象が、最低4週間の週1回の投与に好適なインスリン受容体アゴニストの第2の用量を投与されており、
d)対象が更なる血糖制御を必要としているかどうかを決定することと、
e)対象が更なる血糖制御を必要とする場合、当該対象に、最低4週間の週1回の投薬に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量を投与することと、を更に含む、実施形態19に記載の方法。
【0065】
実施形態21.対象が、最低4週間の週1回の投与に好適なインスリン受容体アゴニストの第3の用量を投与されており、
f)対象が更なる血糖制御を必要としているかどうかを決定することと、
g)対象が更なる血糖制御を必要とする場合、当該対象に、最低2週間の週1回の第4の用量を投与することと、を更に含む、実施形態20に記載の方法。
【0066】
実施形態22.インスリン受容体アゴニストが、BIFである、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態23.第1の用量が、1.5mgである、実施形態22に記載の方法。
【0068】
実施形態24.第2の用量が、3.0mgである、実施形態23に記載の方法。
【0069】
実施形態25.第3の用量が、4.5mgである、実施形態24に記載の方法。
【0070】
実施形態26.第4の用量が、6.0mgである、実施形態25に記載の方法。
【0071】
実施形態27.対象が、6.0mgのBIFを週1回、最低2週間投与されており、
h)対象が更なる血糖制御を必要としているかどうかを決定することと、
i)対象が更なる血糖制御を必要とする場合、当該対象に、請求項11~17、23~24、30、32又は36のいずれか1つに記載の基準に従って決定された用量のBIFを投与することと、を更に含む、実施形態26に記載の方法。
【0072】
実施形態28.血糖制御を必要とする2型糖尿病(T2D)患者においてそれを提供する方法であって、当該患者に、100、150、250及び400Uからなる群から選択される固定用量の基礎インスリン-Fc(BIF)を週1回投与することを含む、方法。
【0073】
実施形態29.患者に投与されるBIFの第1の用量が、100Uである、実施形態28に記載の方法。
【0074】
実施形態30.患者が同じ用量を少なくとも4週間投与され、患者が追加の血糖制御を必要とする場合に用量が増加される、実施形態28又は29に記載の方法。
【0075】
実施形態31.患者のFGが、少なくとも4週間の第1の固定用量での治療後に>130mg/dLである場合、患者の用量が増加される、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態32.患者の用量が、患者が血糖<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合にのみ増加される、実施形態30又は31に記載の方法。
【0077】
実施形態33.患者のFGが<80mg/dLである場合、患者の用量が減少される、実施形態28~32のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態34.血糖制御を必要とする2型糖尿病(T2D)患者においてそれを改善する方法であって、
a)当該患者に、100Uの基礎インスリン-Fc(BIF)の初期用量を週1回投与することと、
b)100Uの用量での少なくとも4週間後に、用量を週1回の150UのBIFに増加させることと、
c)150Uの用量での少なくとも4週間後に、用量を週1回の250UのBIFに増加させることと、
d)250Uの用量での少なくとも4週間後に、用量を週1回の400UのBIFに増加させることと、を含む、方法。
【0079】
実施形態35.ステップb)~d)が、患者の空腹時血糖(FG)を低減するために実施される、実施形態34に記載の方法。
【0080】
実施形態36.ステップb)~d)が、患者のFGが>130mg/dLであるときに実施される、実施形態34に記載の方法。
【0081】
実施形態37.ステップb)~d)が、患者がFG<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合にのみ実施される、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態38.患者のFGが<80mg/dLである場合、患者の用量が以前の用量まで減少される、実施形態34~37のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態39.患者が1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の低血糖のエピソードを経験する場合、患者が治療を中止する、実施形態28~38のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態40.患者が、インスリン未経験である、実施形態28~39のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態41.患者が、非制御性高血糖を有する、実施形態28~40のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態42.患者が、7~10%のHbA1cを有する、実施形態28~41のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態43.患者が、2つ以上の経口抗高血糖薬を受けている、実施形態28~42のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態44.患者が、GLP-1受容体アゴニストを受けている、実施形態28~43のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態45.BIFが、約5~10mMの濃度のリン酸塩、及び約15~35mMの濃度のグリセロールを含み、約5.5~7.5のpHを有する水性組成物で投与される、実施形態28~44のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態46.組成物が、ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、実施形態45に記載の方法。
【0091】
実施形態47.リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、組成物のpHが約6.5である、実施形態46に記載の方法。
【0092】
実施形態48.方法が、患者の血糖制御を改善することを含む、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態49.水性薬学的組成物であって、
a)100、150、250及び400Uからなる群から選択される量の固定用量のBIFと、
b)約5~10mMの濃度のリン酸塩と、
c)約15~35mMの濃度のグリセロールと、を含み、
約5.5~7.5のpHを有する、水性薬学的組成物。
【0094】
実施形態50.ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、実施形態49に記載の組成物。
【0095】
実施形態51.リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、組成物のpHが約6.5である、実施形態50に記載の組成物。
【0096】
実施形態52.血糖制御を必要とする2型T2D患者においてそれを改善する方法であって、当該対象に、実施形態49~51のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0097】
実施形態53.固定用量のBIFが、単回使用自動注射器で提供される、実施形態28~48のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態54.実施形態28~48のいずれか1つに記載の方法で使用するための単回使用自動注射器。
【0099】
実施形態55.実施形態49~51のいずれか1つに記載の組成物を含む、単回使用自動注射器。
【0100】
実施形態56.上記実施形態のいずれか1つに記載の方法に従って糖尿病を治療する際に使用するためのBIF。
【0101】
実施形態57.上記実施形態のいずれか1つに記載の糖尿病の治療に使用するための薬剤の製造におけるBIFの使用。
【0102】
実施形態58.組成物が、防腐剤を含まない、実施形態49~51のいずれか1つに記載の組成物。
【0103】
実施形態59.組成物が、亜鉛を含まない、実施形態49~51又は58のいずれか1つに記載の組成物。
【0104】
実施形態60.組成物が、追加の安定剤を含まない、実施形態49~51又は58~59のいずれか1つに記載の組成物。
【0105】
実施形態61.組成物が、安定性を失うことなく、5℃で少なくとも24ヶ月、30℃までの温度で少なくとも2週間の保存を可能にするのに十分な化学的及び物理的安定性を有する、実施形態49~51又は58~60のいずれか1つに記載の組成物。
【0106】
実施形態62.組成物が、25℃で8週間の保存を可能にするのに十分に安定である、実施形態49~51又は58~61のいずれか1つに記載の組成物。
【0107】
実施形態63.組成物が、25℃で12週間の保存を可能にするのに十分に安定である、実施形態49~51又は58~62のいずれか1つに記載の組成物。
【0108】
実施形態64.組成物が、30℃で8週間の保存を可能にするのに十分に安定である、実施形態49~51又は58~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0109】
実施形態65.組成物が、30℃で12週間の保存を可能にするのに十分に安定である、実施形態49~51又は58~64のいずれか1つに記載の組成物。
【0110】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0111】
臨床研究
第1相及び第2相の臨床データを利用したモデリング及びシミュレーションアプローチを使用して、第3相臨床評価のための自動注射器による固定用量の形態での固定投薬レジメンを開発する。
【0112】
第3相、並行設計、非盲検、無作為化対照治験は、研究に入る前にGLP-1 RAを含む又は含まないバックグラウンド経口抗高血糖薬を服用しており、T2D患者におけるグラルギンと比較して、固定用量レジメンを使用したBIFの有効性及び安全性を評価するように設計されている。参加者は、研究中に最大3つの許可された非インスリン糖尿病薬による以前の安定した治療法を継続する。
【0113】
参加者は、プレフィルド自動注射器インスリンペンを使用した皮下投与による週1回のBIF、又はKwikPenデバイスを使用して投与される1日1回のグラルギンのいずれかを受けるように、1:1の比で治療に無作為に割り当てられる。自動注射器は、100U、150U、250U及び400Uの単回用量デバイスとして利用可能である。両方の治療群において、参加者には血糖の自己測定のための血糖測定器が提供され、低血糖の認識及び治療について指導され、プロトコル関連のタスクについて訓練される。BIFに無作為化された参加者は、100単位/週の初期用量で4週間から開始し、各用量で80~130mg/dLの目標空腹時血糖が達成されない場合、4週間毎に次の用量に順次に移行する。最終自動注射器投与ペン(400ユニット/週)を使用して4週間後に目標グルコースが達成されない場合、患者は、BIFを含有するKwikPenに移行される(これは、より多くの柔軟な用量を投与するために使用できる)。
【0114】
治験責任医師は、プロトコルに従って参加者の毎日のグラルギンインスリン用量を決定し、低血糖を回避しながら同様の血糖目標(80~130mg/dL)を達成するための用量調整を監督する。研究参加者は、プロトコルにより割り当てられた治療を合計52週間継続し、主要評価項目の分析は、52週間で行われる予定である。
【0115】
主な設計上の特徴を以下の表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0116】
包含基準には以下が含まれる。1.スクリーニング時に少なくとも18歳(又は現地の規制によりそれ以上)である。2.WHO基準に従って2型糖尿病(T2D)の診断を有し、インスリンで治療されていない。3.スクリーニング時に7.0%~10.0%(両端値を含む)のベースライン糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)値を有する。4.許容される非インスリン糖尿病療法には、以下のうちの0~最大3つが含まれ得る:チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、ナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害剤、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、又はグルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト(注記:全ての非インスリン糖尿病療法は、スクリーニング時に対応する現地の製品ラベルに従って使用しなければならず、参加者は、プロトコルに従って研究全体を通して安定した投薬を続ける意思がなければならない。患者は、スクリーニングより少なくとも3ヶ月前に安定した用量を服用している必要があり、研究全体を通して安定した投薬を継続する意思がある必要がある)。5.インスリン未経験であるか、又は妊娠糖尿病のスクリーニング及び/又は以前のインスリン治療の前に最大14日間、短期インスリン治療で治療されている。6.スクリーニング時に≦45kg/m2のBMIを有し、過去3ヶ月に著しい体重増加又は減少がない(≧5%)。
【0117】
除外基準には以下が含まれる。1.1型真性糖尿病若しくは潜在性自己免疫性糖尿病、又はT2D以外の特定のタイプの糖尿病(例えば、単一遺伝子性糖尿病、外分泌膵臓の疾患、薬物誘発性若しくは化学物質誘発性糖尿病)の診断を有する。2.グリニド、プラムリンチド、スルホニル尿素、インスリンを含む、スクリーニング前の30日以内に次の許可されていない糖尿病薬のうちのいずれかを受けていた、3.1型真性糖尿病若しくは潜在性自己免疫性糖尿病、又はT2D以外の特定のタイプの糖尿病(例えば、単一遺伝子性糖尿病、外分泌膵臓の疾患、薬物誘発性若しくは化学物質誘発性糖尿病)の診断を有する、4.グリニド、プラムリンチド、スルホニル尿素、インスリンを含む、スクリーニング前の30日以内に次の許可されていない糖尿病薬のうちのいずれかを受けていた、5.治験責任医師の意見で、研究参加者に重大なリスクをもたらし、研究参加者がプロトコルに従い、完了することを妨げる、任意の他の重篤な疾患又は状態(例えば、既知の薬物若しくはアルコール乱用又は精神障害)を有する、6.血液学:訪問1前の3ヶ月以内に輸血若しくは重度の失血があったか、又は治験責任医師の意見で、異常ヘモグロビン症、溶血性貧血若しくは鎌状赤血球貧血、又はHbA1cの測定を妨げることが知られている任意の他のヘモグロビン異常の特徴がわかっている、7.慢性(>14日)の全身グルココルチコイド療法(局所、眼内、鼻腔内、若しくは吸入製剤を除く)を受けているか、又はスクリーニングの前の月に14日を超えてそのような治療を受けている。
【0118】
有効性及び安全性の目的、評価及び評価項目を以下の表3に示す。
【表3】
【0119】
表3に示されるように、主要な有効性測定値はHbA1cであり、過去2~3ヶ月の血糖値の累積履歴を反映する、広く使用されている血糖制御の測定値である。これは、長期にわたる糖尿病合併症のリスクとよく相関することがわかっている。これは、薬物のグルコース低下効果を評価する際に広く受け入れられている尺度である。他の副次的な目的は、血糖制御に関する補足的な情報を提供する。低血糖、有害事象、及び免疫原性を評価して、安全性を特徴付ける。
【0120】
上記のものと同様の研究は、mg単位の4つの固定用量(例えば、1.5、3.0、4.5、6.0mg)を含む別の例示的なレジメンを研究するように設計されている。そのような提示は、経口又は注射可能な抗糖尿病薬で治療されているT2DMのインスリン未経験の患者向けに設計されている。第3相研究は、これらの固定用量を評価するように設計されている。研究集団には、注射可能なGLP-1 RAを含む又は含まない2つ以上の経口抗高血糖薬を受けている、非制御性高血糖症(例えば、7.5%~10.0%(両端値を含む)のHbA1c)を有するインスリン未経験のT2DM患者が含まれる。
【0121】
主要な目的は、注射可能なGLP-1受容体アゴニストを含む又は含まない経口抗高血糖薬を受けているインスリン未経験のT2DM患者において、固定用量BIFがインスリングラルギンと比較して血糖制御に対して非劣性であることを実証することである。
【0122】
患者は、固定用量BIF又は個別化された用量のインスリングラルギンを受けるように無作為化される。固定用量のBIFに無作為化された患者は、最低用量(例えば、1.5mg/週)で治療を開始し、必要に応じて4週間毎により高い用量に漸増する。現在のモデリング結果は、FG中央値が>130mg/dLである場合に用量を漸増できることを示唆している。FPG中央値が<80mg/dLである場合、患者は以前のより低い用量に減少させることができる。患者が最低用量を受けている間に1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の任意の低血糖のエピソードを経験した場合、患者は治療を中止する。
【0123】
最高の固定用量(例えば、6mg/週)を受けている間に追加の血糖制御が依然として必要な患者は、可変用量のペーパーアルゴリズムに移行することができる。例えば、最高の固定用量を受けている間に2週間連続でFG>140mg/dLを有する参加者は、上記の可変用量アルゴリズムに移行することができる。安全対策は、上記の可変用量アルゴリズム研究で説明されているものと同様である。
【0124】
この治療レジメンの結果は、その製品で使用される標準治療、目標達成に向けた治療アルゴリズムに基づいて、インスリングラルギン治療と比較される。この設計は、インスリン用量の毎日の滴定に関連する複雑さを制限しながら、基礎インスリンを開始する必要があるT2DM患者のための簡素化された毎週の固定用量オプションの評価を可能にする。この設計により、追加の血糖制御を必要とするヒトのために、最高の固定用量からペーパーアルゴリズムへの移行の評価も可能になる。
【0125】
シミュレーションの結果は、インスリン未経験のT2DM患者において、BIFが、標準的な無制限の滴定レジメンに従って調整された1日1回の基礎インスリンと比較して、3~4用量強度で同等のベネフィット-リスクプロファイルを達成できることを裏付けている。BIFは、手軽に開始できる毎週の基礎インスリンとして、インスリングラルギンと比較して非劣性の有効性及び低血糖率をもたらすことが期待される。固定用量アプローチのための4つの選択された用量レベルは、この母集団の大多数の患者によって使用される対応するグラルギン用量に合理的に近似している。
【0126】
製剤研究
研究は、本明細書に記載の用量範囲にわたる非保存BIF医薬品の安定性を試験するように設計されている。2.5mg/mL及び25mg/mLの濃度のBIF、10mMの濃度のリン酸緩衝液、25mg/mLの濃度のグリセリン及び0.4mg/mLの濃度のポロキサマー188を含み、6.5+/-0.2のpHを有する組成物が調製される。0.5mLの組成物を半完成の注射器に充填することによって試料を調製し、4つの保存条件のうちの1つで最大24ヶ月間保存する:5℃、25℃/60%相対湿度(RH)、0.5℃、30℃/65% RH。
【0127】
試料は、0、1、3、6、9、12、18及び24ヶ月の時点で回収され、インビトロ有効性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(純度、凝集物、断片)、RP-HPLC(主なピーク純度、関連物質)、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)(電荷の不均一性、主なピーク、全酸性バリアント、全塩基性バリアント)、非還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)、ポロキサマー含有量、pH、マイクロフローイメージング(MFI)、高精度液体粒子計数(HIAC)、及び機能性テストを含む、様々な安定性指標アッセイによって分析される。
【0128】
結果は、化学的及び物理的安定性が、安定性を失うことなく、5℃で少なくとも24ヶ月、30℃までの温度で少なくとも2週間の保存を可能にするのに十分であることを示す。
【0129】
配列
配列番号1
【化2】
【配列表】
2023554358000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病(T2D)の治療のための、インスリンエフシトラアルファを含む薬学的組成物であって、前記治療が、100、150、250及び400Uからなる群から選択される固定用量のインスリンエフシトラアルファを週1回投与することによって、血糖制御を提供することを含む、薬学的組成物。
【請求項2】
インスリンエフシトラアルファの第1の固定用量が、100Uである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
同じ用量が少なくとも4週間投与され、追加の血糖制御が必要な場合に前記用量が増加される、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
少なくとも4週間の第1の固定用量での治療後に患者の空腹時血糖(FG)が>130mg/dLである場合、前記用量が増加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記用量が、前記患者がFG<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合(0回)にのみ増加される、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記患者のFGが<80mg/dLである場合、前記用量が減少される、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
T2Dの治療のための、インスリンエフシトラアルファを含む薬学的組成物であって、前記治療が、
a)初期用量の100Uのインスリンエフシトラアルファを週1回投与することと、
b)前記100Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の150Uのインスリンエフシトラアルファに増加させることと、
c)前記150Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の250Uのインスリンエフシトラアルファに増加させることと、
d)前記250Uの用量での少なくとも4週間後に、前記用量を週1回の400Uのインスリンエフシトラアルファに増加させることと、によって血糖制御を改善することを含む、薬学的組成物。
【請求項8】
ステップb)~d)が、患者のFGを低減するために実施される、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ステップb)~d)が、前記患者のFGが>130mg/dLである場合に実施される、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
ステップb)~d)が、前記患者が血糖<70mg/dLのエピソードを有していなかった場合(0回)にのみ実施される、請求項7~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記患者のFGが<80mg/dLである場合、前記用量が以前の用量まで減少される、請求項7~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記患者が1回以上の夜間低血糖のエピソード又は2回以上の低血糖のエピソードを経験した場合、前記治療が中止される、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記患者が、インスリン未経験である、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記患者が、非制御性高血糖を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記患者が、7~10%のHbA1cを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記患者が、2つ以上の経口抗高血糖薬を受けている、請求項1~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記患者が、GLP-1受容体アゴニストを受けている、請求項1~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
水性組成物中に製剤化され、約5~10mMの濃度のリン酸塩、及び約15~35mMの濃度のグリセロールを更に含み、約5.5~7.5のpHを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記水性組成物が、ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、前記組成物の前記pHが約6.5である、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
水性薬学的組成物であって、
a)100、150、250及び400Uからなる群から選択される量の固定用量のインスリンエフシトラアルファと、
b)約5~10mMの濃度のリン酸塩と、
c)約15~35mMの濃度のグリセロールと、を含み、
約5.5~7.5のpHを有する、水性薬学的組成物。
【請求項22】
ポロキサマー188を約0.1~約0.5mg/mLの濃度で更に含む、請求項21に記載の水性薬学的組成物。
【請求項23】
前記リン酸塩が約10mMの濃度であり、グリセロールが約25mMの濃度であり、ポロキサマー188が約0.4mg/mLの濃度であり、前記組成物の前記pHが約6.5である、請求項22に記載の水性薬学的組成物。
【請求項24】
血糖制御を必要とするT2D患者においてそれを提供するための、請求項21~23のいずれか一項に記載の水性薬学的組成物。
【請求項25】
血糖制御を改善するための、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
インスリンエフシトラアルファの前記用量が、単回使用自動注射器で投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物を含む単回使用自動注射器。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の糖尿病の治療のための薬剤の製造におけるインスリンエフシトラアルファの使用。
【国際調査報告】